説明

紙葉類処理装置、及び、紙葉類処理方法

【課題】 紙葉類の種類及びシリーズを判別することが出来る紙葉類処理装置、及び、紙葉類処理方法を提供する。
【解決手段】 複数種類の紙葉類の各画像を予め記憶しておく。紙葉類に対して投光し、投光した光が前記紙葉類により反射された反射光を受光して電気信号に変換して紙葉類画像を取得する。取得した前記紙葉類画像と、記憶されている前記各種類の紙葉類の画像とから搬送されている前記紙葉類の種類を判別する。判別した前記紙葉類の種類に応じてそれぞれ種類の異なるセキュリティ要素の検知を行なう複数種類のセキュリティ検知手段から前記紙葉類のセキュリティ要素の検知に用いるセキュリティ検知手段を選択し、選択したセキュリティ検知手段により前記紙葉類のセキュリティ要素の検知を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、搬送される紙葉類の鑑査を行なう紙葉類処理装置、及び、紙葉類処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、有価証券、または紙幣などの紙葉類を計数及び鑑査し、この鑑査結果に応じて施封処理や裁断処理を行なう機器本体と、この機器本体とUSBもしくはLANなどのケーブルにより接続され、上記機器本体の計数情報を管理する管理端末とからなる紙葉類検査装置(紙葉類処理装置)が実用化されている。
【0003】
このような紙葉類処理装置では、投入部に投入された紙葉類を1枚ずつ取り込み、取り込んだ紙葉類を搬送ベルトによって挟持して読取装置に搬送し、この読取装置により紙葉類の表面から読み取った情報に基づいて、紙葉類を区分して集積する。
【0004】
紙葉類処理装置の読取装置として、紙葉類に対して光を投光し、紙葉類の表面により反射された反射光を受光してデータ(紙葉類の画像)を取得し、予め記憶されている各種の紙葉類の画像と比較し、紙葉類の種類を判別する紙葉類処理装置が提供されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平7−311867号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、微細印刷及び透かし印刷などが施された旧シリーズの紙葉類と、偽造防止のためにさらにセキュリティが強化された新シリーズの紙葉類とが混在して流通している。新シリーズの紙葉類は、セキュリティ要素として、赤外吸収インク印刷、ホログラム、あるいは、磁気スレッドなどが用いられている。現在流通している紙葉類を旧シリーズから新シリーズに切り替える為に、紙葉類の種類の判別に加え、紙葉類のシリーズを判別し、旧シリーズの紙葉類を回収することが求められている。
【0006】
しかし、旧シリーズの紙葉類と新シリーズの紙葉類とで図柄にほとんど差がなく、セキュリティ要素のみで判別することが出来る紙葉類があり、上記した紙葉類の画像から種類を判別する紙葉類処理装置では紙葉類のシリーズを判別できない場合があるという問題がある。
【0007】
そこで、本発明の一形態は、上記した問題点を解決するものであり、紙葉類の種類及びシリーズを判別することが出来る紙葉類処理装置、及び、紙葉類処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態としての紙葉類処理装置は、複数種類の紙葉類の各画像を予め記憶している第1の記憶手段と、紙葉類に投光する光源と、前記紙葉類により反射された反射光を受光して電気信号に変換して紙葉類画像を取得する画像取得手段と、前記画像取得手段により取得した前記紙葉類画像と、前記第1の記憶手段により記憶されている前記各種類の紙葉類の画像とから前記紙葉類の種類を判別する券種判別手段と、それぞれ種類の異なるセキュリティ要素の検知を行なう複数種類のセキュリティ検知手段と、前記券種判別手段により判別した種類に応じてセキュリティ検知手段を前記複数種類のセキュリティ検知手段から選択する選択手段と、前記選択手段により選択した前記セキュリティ検知手段により前記紙葉類のセキュリティ要素の検知を行う制御手段と、を具備する。
【0009】
また、本発明の一実施形態としての紙葉類処理方法は、複数種類の紙葉類の各画像を予め記憶し、紙葉類に投光し、前記紙葉類により反射された反射光を受光して電気信号に変換して紙葉類画像を取得し、前記取得した前記紙葉類画像と予め記憶している前記各種類の紙葉類の各画像とから前記紙葉類の種類を判別し、前記判別した種類に応じたセキュリティ要素の検知を複数種類の異なるセキュリティ要素の検知から選択し、前記選択したセキュリティ要素の検知を行う。
【発明の効果】
【0010】
この発明の一形態によれば、紙葉類の種類及びシリーズを判別することが出来る紙葉類処理装置、及び、紙葉類処理方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態に係る紙葉類処理装置、及び、紙葉類処理方法について詳細に説明する。
【0012】
図1は、紙葉類処理装置1の構成例を概略的に示す図である。紙葉類処理装置1は、例えば、サイズ、図柄、セキュリティ要素などが異なる複数種類の紙葉類(ここでは、各紙葉類は長方形状であるものとする)が一括して投入され、投入された全ての紙葉類の画像を取得し、セキュリティ要素を検知し、取得した画像及び検知結果に基づいて各紙葉類の種別及びシリーズを判定し、各紙葉類を種別ごとに分類して集積などの処理を行うものである。
【0013】
ここでは、紙葉類処理装置1に投入される紙葉類は、新旧のシリーズが混在した複数種類の紙幣であるとする。旧シリーズの紙幣として、例えば、微細印刷及び透かし印刷などが施されたものがある。また、新シリーズの紙幣として、例えば、赤外吸収インク印刷、ホログラム、あるいは、磁気スレッドなどが施されたものがある。
【0014】
微細印刷は、通常の印刷では再現が不可能な微細文字の印刷であり、コピー、またはスキャンによる偽造を防止する。透かし印刷は、紙幣に用いる紙の繊維の厚みを加減することにより形成された図柄である。
【0015】
赤外吸収インク印刷は、赤外光を吸収し、可視光を反射する特性を有するインクによる印刷である。赤外画像において赤外吸収インクにより印刷されている箇所は暗点となる。紙葉類処理装置1は、紙幣の赤外画像を取得し、赤外吸収インクによる印刷箇所の有無を判別することが出来る。なお、赤外吸収インクは、赤外光のみを吸収し、他の可視光は反射するため、肉眼では確認することができない。
【0016】
磁気スレッドは、磁気を有する磁粉体が配合された磁気インクによる印刷箇所である。紙葉類処理装置1は、紙幣に対して磁気検知を行い、磁気の有無により磁気スレッドの有無を判別することが出来る。
【0017】
ホログラムは、例えばアルミ等の金属箔にレーザー光を用いて模様を描いたものであり、見る角度によって見える像や色が変化する。紙葉類処理装置1は、紙幣に対して金属検知を行い、金属の有無によりホログラムの有無を判別することが出来る
紙葉類処理装置1は、第1モジュール1Aと第2モジュール1Bと第3モジュール1Cとから構成されているものとする。第1モジュール1Aは、主に、オペレータによる操作、紙幣の取出し、紙幣に対する検査及び鑑査などを行うものである。第2モジュール1Bは、主に、紙幣の集積及び施封を行うものである。第3モジュール1Cは、主に、紙幣の集積、施封、及び裁断を行うものである。
【0018】
紙葉類処理装置1は、装置内部に制御部11を具備している。制御部11は、当該紙葉類処理装置1の全体の制御を司るものであり、CPU、CPUの作業領域として機能するRAMなどのバッファメモリ、CPUが実行する種々のプログラムや制御データなどが記憶されているROMなどのプログラムメモリ、あるいは不揮発性メモリなどから構成される。制御部11は、CPUがプログラムメモリに記憶されているプログラムを実行することにより種々の機能を実現している。例えば、制御部11は、紙幣に対する処理の実行、停止、再開などの動作を制御する。また、制御部11は、例えば集計装置などの外部機器とのデータ通信などを行う。
【0019】
紙葉類処理装置1には、複数の紙幣が一括投入される投入部35が設けられている。この投入部35は、全ての紙幣の長手方向に沿った下端辺(一方の長端辺)をステージに当接せしめて整位するとともに、ステージに沿って紙幣の面方向に図示しないバックアッププレートを移動せしめる。これにより、投入部35内の紙幣は、取出し部35aへ移動する。この取出し部35aは、一対の取出しローラにより構成される。この一対の取出しローラが回転すると、ステージ上の紙幣は、端のものから順に搬送路36上に取出される。
【0020】
搬送路36は、主搬送路36aと、その主搬送路36aから各ゲートG(G11、G21、G22、G51、G52、G53)により分岐される複数の分岐搬送路36b〜36hとにより構成される。各搬送路36は、上下1対のベルト及び複数のローラなどにより構成され、ローラが回転することにより紙幣を挟み入れた搬送ベルトが可動し、紙幣を搬送する。
【0021】
投入部35直後の主搬送路36a上には、図示しない整列整位部が設けられている。整列整位部は、取出し部35aにより主搬送路36a上に取出された紙幣のスキューやシフトに起因した不具合を防止するため、各紙幣のスキューおよびシフトを補正するものである。さらに、整列整位部直後の主搬送路36a上には、紙幣の種類、表裏、天地、汚れや破損の有無、セキュリティ要素等の特徴を検出する検査ユニット37が設けられている。
【0022】
この検査ユニット37は、例えば、光学検知部37a、セキュリティ検知部37bなどの複数の検知部を有する。光学検知部37aは、搬送されている紙幣を撮像することにより紙幣の画像を取得する機能を有し、例えば、Charge−Coupled Device(CCD)などを具備している。セキュリティ検知部37bは、搬送されている紙幣のセキュリティ要素を検知する機能を有し、例えば、紙幣の赤外画像を取得する赤外画像取得部、磁気検知部、及び、金属検知部などを具備している。
【0023】
また、検査ユニット37は、各検知部による処理結果を制御部11へ出力する。制御部11は、検査ユニット37によって取得した紙幣の画像に基づいて紙幣の検査を行ない、紙幣が正券か損券か排除券かを判別し、さらに、紙幣の種類を判別する。また、制御部11は、正券と判別した紙幣のセキュリティ要素の検知結果などに基づいてシリーズの新旧などを判別する。さらに、制御部11は、集積、及び裁断した紙幣の種類毎の枚数を計数する計数処理を行なう。
【0024】
検査ユニット37より下流側の主搬送路36a上には、制御部11による制御に基づいて紙幣の搬送方向を選択的に切換えるための複数のゲートG11、G21、G22、G51、G52、G53が設けられている。
【0025】
最も上流側に設けられたゲートG11は、紙幣の搬送方向を主搬送路36aから分岐搬送路36bとしての排除搬送路へ分岐するものである。このゲートG11を介して分岐された分岐搬送路36bの終端には、排除すべき紙幣を排除集積するためのリジェクト部Rejが設けられている。
【0026】
このリジェクト部Rejへ搬送される排除すべき紙幣とは、制御部11により2枚取りが判定された紙幣などの後段の処理部における処理が不可能であることが判定された紙幣、及び所定のレベルを超えて大きくスキューしたことが判定された紙幣などである。また、制御部11により偽券の可能性があると判定された紙幣、或は検査ユニット37において特徴量が検出されなかった紙幣もリジェクト部Rejへ排除される。リジェクト部Rejは、投入部35の近傍に配置され、外部からのアクセスが可能となっている。
【0027】
また、ゲートG11の下流側の主搬送路36a上には、ゲートG21、G22、G51、G52、G53が順に設けられている。ゲートG21は、主搬送路36a上を搬送される紙幣を集積装置A1への分岐搬送路36cの方向へ分岐搬送させるものである。ゲートG22は、主搬送路36a上を搬送される紙幣を集積装置A2への分岐搬送路36dの方向へ分岐搬送させるものである。ゲートG51は、主搬送路36a上を搬送される紙幣を集積装置B1への分岐搬送路36eの方向へ分岐搬送させるものである。ゲートG52は、主搬送路36a上を搬送される紙幣を集積装置B2への分岐搬送路36fの方向へ分岐搬送させるものである。また、ゲートG53は、主搬送路36a上を搬送される紙幣を損券集積部Audへの分岐搬送路36g、あるいは裁断処理部SDへの分岐搬送路36hの何れかに選択的に振り分けるものである。
【0028】
各集積装置A1、A2、B1、B2は、それぞれ施封処理部41、帯収納部42、及び収納部43を有している。施封処理部41には、主搬送路36aから分岐搬送された紙幣が所定数に達するまで各紙幣を順次集積する。施封処理部41は、紙幣が所定数に達した場合、帯収納部42に収納されている帯を用いて所定数に達した紙幣を束ねる。この帯により束ねられた所定数の紙幣を1束に束ねる。収納部43は、施封処理部41により1束に把ねられた紙幣を順次収納するものである。通常、収納部43に収納された段階で当該紙幣の数が確定する。
【0029】
また、制御部11により損券、若しくは、旧シリーズの紙幣と判定された紙幣は、主搬送路36a上を搬送されて各ゲートG21、G22、G51、及びG52を通過し、ゲートG53へ至る。ゲートG53に至った紙幣は、ゲートG53により選択的に損券集積部Audあるいは裁断処理部SDへ搬送される。裁断処理部SDは、損券と判定され搬送されてきた紙幣を全て裁断するものである。損券集積部Audは、損券と判定された紙幣の一部を集積し、集積した紙幣が損券とすべき券であったか否かを検査するものである。例えば、損券集積部Audへの集積率を10%とする場合、損券集積部Audには、100枚中10枚の紙幣が集積される。
【0030】
また、主搬送路36a及び各分岐搬送路36b〜36h上には、複数の検知センサが設けられている。各検知センサは、搬送路36上の紙幣の有無を検知するものである。各検知センサの検知出力は、制御部11へ供給されるようになっている。従って、制御部11は、各検知センサからの検知出力に基づいて搬送路36内の紙幣の位置を判断したり、紙葉類処理装置1内のジャムなどの搬送異常を判断したりできるようになっている。
【0031】
さらに、紙葉類処理装置1には、投入部35近傍に、表示部としてのディスプレイパネル38及び操作部としてのオペレーションパネル39が設けられている。ディスプレイパネル38には、オペレータに対する操作案内、あるいは処理状況などを表示される。また、オペレーションパネル39は、オペレータが操作指示を行うものである。
【0032】
制御部11は、搬送路36、ゲートG、取出し部35a、集積装置A1、A2、B1、B2あるいは裁断処理部SDなどの各部の駆動機構(図示しない)に接続され、各部の動作を制御するようになっている。また、検知センサ、ディスプレイパネル38、オペレーションパネル39なども制御部11に接続されて制御されている。
【0033】
図2は、図1に示す検査ユニット37の各機能を示すブロック図である。
検査ユニット37は、光学検知部37a、及びセキュリティ検知部37bを具備している。光学検知部37a、及びセキュリティ検知部37bは、バスなどを介して制御部11に接続されている。また制御部11には、搬送制御部12及びゲート制御部などがバスなどを介して接続されている。
【0034】
搬送制御部12は、制御部11の制御に基づいて搬送路36のローラを回転させることにより、紙幣を挟み入れたベルトを可動させる。ゲート制御部13は、制御部11の制御に基づいて複数のゲートG11、G21、G22、G51、G52、G53を駆動することにより、搬送路36上を搬送されている紙幣の搬送方向を選択的に切り替える。搬送制御部12及びゲート制御部13は搬送手段を構成している。
【0035】
光学検知部37aは、搬送路36に隣接して設けられており、搬送されている紙幣を撮像することにより紙幣の画像を取得する。光学検知部37aは、光源14及び画像取得部15などを備えている。光源14は、ハロゲンランプなどの照明装置であり、搬送路36a上の所定の領域に対して投光する。画像取得部15は、光源14から投光された光が紙幣により反射された反射光を受光する光学系、及び、受光した光を電気信号に変換する画素を複数備えたCCDなどを含む画像取得手段である。この画像取得部15は、搬送路37aを搬送される紙幣の表裏の両側を撮像するように搬送路37aを挟んで両側に設けられている。
【0036】
制御部11は、画像取得部15により、搬送路36a上の所定の領域を順次撮像して紙幣を読み取って画像を取得する。制御部11は、取得した画像に、例えばAutomatic Gain Control(AGC)補正、及びシェーディング補正などの所定の画像処理を施し、搬送路36aにより搬送される紙幣の券面の画像(紙葉類画像)を取得する。
【0037】
セキュリティ検知部37bは、搬送路36に隣接して設けられており、搬送されている紙幣のセキュリティ要素を検知する。セキュリティ検知部37bは、光源14、フィルタ16、赤外画像取得部17(赤外画像取得手段)、磁気検知部18(磁気検知手段)、及び、金属検知部19(金属検知手段)などの複数のセキュリティ検知手段を備えている。
【0038】
フィルタ16は、赤外光を透過し、可視光をカットする特性を有するフィルタである。フィルタ16は、光源14から投光され、紙幣により反射された反射光の赤外光のみを透過するように設置されている。
【0039】
赤外画像取得部17は、フィルタ16を透過した赤外光を電気信号に変換する画素を複数備えたCCDなどを含む。赤外画像取得部17は、搬送路36a上の所定の領域を順次撮像することにより、搬送路36aにより搬送される紙幣の券面の赤外画像を取得し、制御部11へ出力する。なお、赤外画像取得部17により取得される赤外画像において、赤外吸収インクにより印刷された領域は暗点となる。
【0040】
磁気検知部18は、紙幣が有する磁気スレッドを検知することができる。磁気検知部18は、例えば、磁気抵抗効果素子を含むMagnetResistance(MR)センサなどにより構成される。磁気検知部18は、搬送される紙幣と接近することにより磁気を検知し、磁気の強度に比例した電気信号を磁気検知の検知結果として制御部11に出力する。なお、磁気検知部18は、例えば、磁気の強度に比例した電圧値V1の電気信号を検知結果として出力する。
【0041】
金属検知部19は、紙幣が有するホログラムなどの金属を検知することができる。金属検知部19は、例えば検知コイルとLC発振器などにより構成される。金属検知部19は、検知コイルを用いて紙幣の搬送エリアに磁界を発生させ、紙幣が磁界を通過した場合の検知コイルのインダクタンスの値に比例した電気信号を金属検知の検知結果として制御部11に出力する。なお、金属検知部19は、例えば、検知コイルのインダクタンスの値に比例した電圧値V2の電気信号を検知結果として出力する。
【0042】
制御部11は、不揮発性メモリに、券種辞書11a、基準値メモリ11b、及び判定パラメータメモリ11cなどを記憶している。券種辞書11aは、複数種類の紙幣の券面の基準となる画像(基準紙葉類画像)と紙幣の種類(券種)を示す情報とを対応付けて記憶している記憶手段である。
【0043】
制御部11は、光学検知部37aにより取得した紙葉類画像と、券種辞書11aに記憶されている複数種類の紙幣の基準紙葉類画像とを比較することにより、光学検知部37aにより読み取った紙幣の種類を判別する。即ち、この場合、制御部11は、光学検知部37aにより取得した紙葉類画像と一致、若しくは近似している画像を券種辞書11aから検索することにより、紙幣の種類を判別する券種判別手段として機能する。
【0044】
また、制御部11は、複数のセキュリティ検知手段から判別した紙幣の券種に応じたセキュリティ検知手段を選択し、選択したセキュリティ検知手段によりセキュリティ検知を行う。即ち、この場合、制御部11は、セキュリティ検知手段を選択する選択手段、及び、選択したセキュリティ検知手段によりセキュリティ要素の検知を行うように各部を制御する制御手段として機能する。
【0045】
基準値メモリ11bは、各種の新シリーズの真の紙幣における各セキュリティ要素の値(検出基準値)を複数記憶している記憶手段である。即ち、基準値メモリ11bは、真の紙幣から取得した基準赤外画像、真の紙幣に対する磁気検知の検知結果、及び、真の紙幣に対する金属検知の検知結果などを記憶している。
【0046】
基準値メモリ11bは、例えば、真の紙幣に対する磁気検知の検知結果である基準電圧値V3の電気信号を真の紙幣に対する磁気検知結果の検出基準値として記憶している。また、基準値メモリ11bは、例えば、真の紙幣に対する金属検知の検知結果である基準電圧値V4の電気信号を真の紙幣に対する金属検知結果の検出基準値として記憶している。
【0047】
制御部11は、セキュリティ検知部37bにより紙幣に対して行ったセキュリティ検知の検知結果と、基準値メモリ11bに記憶されている基準値とに基づいてセキュリティ要素の有無を判定する。即ち、制御部11は、セキュリティ検知部37bの赤外画像取得部17により取得した赤外画像と、基準値メモリ11bに記憶されている基準赤外画像とを比較し、赤外吸収インクによる印刷の有無を判定する。また、制御部11は、セキュリティ検知部37bの磁気検知部18による磁気検知の検知結果と、基準値メモリ11bに記憶されている真の紙幣に対する磁気検知の検知結果とを比較し、磁気スレッドの有無を判定する。また、制御部11は、セキュリティ検知部37bの金属検知部19による金属検知の検知結果と、基準値メモリ11bに記憶されている真の紙幣に対する金属検知の検知結果とを比較し、金属箔、即ち、ホログラムの有無を判定する。
【0048】
判定パラメータメモリ11cは、各種の紙幣におけるセキュリティ要素の有無を示す情報である。判定パラメータメモリ11cは、紙幣に施されているセキュリティ要素の種類を示す情報と、該紙幣の種類及びシリーズを示す情報とが対応付けられて記憶されている。制御部11は、セキュリティ検知部37bによる検知結果と判定パラメータメモリ11cに記憶されている紙幣に施されているセキュリティ要素の種類を示す情報とを比較し、紙幣の種類及びシリーズを判別するシリーズ判別手段として機能する。
【0049】
図3は、本実施形態に関わる紙葉類処理装置1により処理される紙幣の例を説明するための説明図である。
図3(A)は、額面が100であり、旧シリーズの紙幣100Aの例を示す図である。図3(B)は、額面が100であり、新シリーズの紙幣100Bの例を示す図である。図3(B)に示す様に、新シリーズの紙幣100Bは、赤外吸収インクによる印刷が施された領域101を有している。
【0050】
図3(C)は、図3(A)に示す紙幣100Aの赤外画像である。図3(D)は、図3(B)に示す紙幣100Bの赤外画像である。図3(D)に示すように、紙幣100Bの赤外吸収インクによる印刷が施されている領域101が暗点となっている。図3(C)及び図3(D)に示す様に、紙葉類処理装置1は、赤外吸収インクによる印刷の有無により、紙幣100のシリーズの新旧を判別することができる。
【0051】
図3(E)は、額面が500であり、旧シリーズの紙幣500Aの例を示す図である。図3(F)は、額面が500であり、新シリーズの紙幣500Bの例を示す図である。図3(F)に示す様に、新シリーズの紙幣500Bは、磁気インクによる印刷が施された磁気スレッド501を有している。図3(E)及び図3(F)に示す様に、紙葉類処理装置1は、磁気スレッド501の有無により、紙幣500のシリーズの新旧を判別することができる。
【0052】
図3(G)は、額面が1000であり、旧シリーズの紙幣1000Aの例を示す図である。図3(H)は、額面が1000であり、新シリーズの紙幣1000Bの例を示す図である。図3(H)に示す様に、新シリーズの紙幣1000Bは、例えばアルミなどの金属箔により構成されたホログラムが貼付されたアルミスレッド1001を有している。図3(G)及び図3(H)に示す様に、紙葉類処理装置1は、アルミスレッド1001の有無により、紙幣1000のシリーズの新旧を判別することができる。
【0053】
図4は、紙幣の種類及びシリーズを判別する場合の紙葉類処理装置1の処理を説明するためのフローチャートである。ここで鑑査する紙幣は、図3(A)乃至(b)に示す様に、紙幣100、紙幣500、及び紙幣1000の3種類の額面にそれぞれ新旧の2シリーズが存在する紙幣であるとする。
紙葉類処理装置1を動作させる前に、係員は、複数種類の紙幣が多数重ねられた束を図1に示す投入部35に投入する。紙葉類処理装置1の制御部11は、搬送制御部12により、投入部35から紙幣を図1に示す取出し部35aのローラにより個々に取り込み、紙幣を搬送路36aへ導入するように各部を制御する。
【0054】
制御部11は、検査ユニット37の光学検知部37aにより、搬送路36aを搬送される紙幣を読み取り、画像を取得する(ステップS11)。即ち、制御部11は、光源14により紙幣に対して投光し、投光した光が紙幣によって反射された反射光を画像取得部15により受光し、電気信号に変換する。制御部11は、光学検知部37aにより取得した画像の補正を行い、紙幣の券面の画像(紙葉類画像)を取得する(ステップS12)。
【0055】
制御部11は、取得した紙幣の券面の画像と、券種辞書11aに記憶されている複数種類の紙幣の基準紙葉類画像とに基づいて、搬送路36aを搬送されている紙幣の種類を判別する(ステップS13)。即ち、制御部11は、取得した紙幣の券面の画像と一致、若しくは近似する画像を券種辞書11aに記憶されている複数種類の紙幣の基準紙葉類画像から検索し、検索した画像に対応付けられている紙幣の種類を示す情報を参照することにより、搬送路36aを搬送されている紙幣が紙幣100であるか、紙幣500であるか、若しくは紙幣1000であるかを判別する。
【0056】
ステップS13において、紙幣が紙幣100であると判別した場合、制御部11は、赤外画像取得部17により紙幣100の赤外画像を取得する(ステップS21)。即ち、制御部11は、光源14により紙幣100に対して投光し、投光した光が紙幣100によって反射された反射光のうちの赤外光のみをフィルタ16により抽出し、赤外画像取得部17により赤外光を受光し、受光した赤外光を電気信号に変換する。
【0057】
制御部11は、基準値メモリ11bに記憶されている基準赤外画像を取得する(ステップS22)。制御部11は、赤外画像取得部17により取得した赤外画像と、基準値メモリ11bから取得した基準赤外画像とを比較し、赤外吸収インクによる印刷の有無を判定する(ステップS23)。即ち、制御部11は、赤外画像と基準赤外画像とが一致、若しくは近似する場合、赤外吸収インクによる印刷が有ると判定する。また、制御部11は、赤外画像と基準赤外画像とが不一致である場合、赤外インクによる印刷が無いと判定する。
【0058】
制御部11は、判定パラメータメモリ11cを参照し、赤外吸収インクによる印刷の有無に応じて紙幣100のシリーズを判定するシリーズ判定処理を行なう(ステップS24)。即ち、制御部11は、赤外吸収インクによる印刷が有ると判定した場合、紙幣100は新シリーズであると判定する。また、制御部11は、赤外吸収インクによる印刷が無いと判定した場合、紙幣100は旧シリーズであると判定する。
【0059】
ステップS13において、紙幣が紙幣500であると判別した場合、制御部11は、磁気検知部18により紙幣500に対して磁気検知処理を行なう(ステップS31)。即ち、制御部11は、磁気検知部18を搬送される紙幣500に接近させ、磁気抵抗効果素子により紙幣500の磁気スレッドの磁気の強度を検知し、検知した磁気強度に応じた値の電圧値V1を取得する。
【0060】
制御部11は、基準値メモリ11bに記憶されている真の紙幣に対する磁気検知の検知結果である基準電圧値V3を取得する(ステップS32)。制御部11は、磁気検知部18により取得した電圧値V1と、基準値メモリ11bから取得した基準電圧値V3とを比較し、磁気インクによる印刷の有無を判定する(ステップS33)。即ち、制御部11は、電圧値V1と基準電圧値V3とが一致、若しくは近似する場合、磁気インクによる印刷が有ると判定する。また、制御部11は、電圧値V1と基準電圧値V3とが不一致である場合、磁気インクによる印刷が無いと判定する。
【0061】
制御部11は、判定パラメータメモリ11cを参照し、磁気インクによる印刷の有無に応じて紙幣500のシリーズを判定するシリーズ判定処理を行なう(ステップS34)。即ち、制御部11は、磁気インクによる印刷が有ると判定した場合、紙幣500は新シリーズであると判定する。また、制御部11は、磁気インクによる印刷がないと判定した場合、紙幣500は旧シリーズであると判定する。
【0062】
ステップS13において、紙幣が紙幣1000であると判別した場合、制御部11は、金属検知部19により紙幣1000に対して金属検知処理を行なう(ステップS41)。即ち、制御部11は、検知コイルを用いて紙幣1000の搬送エリアに磁界を発生させ、紙幣1000が磁界を通過した場合の検知コイルのインダクタンスの値に応じた値の電圧値V2を取得する。
【0063】
制御部11は、基準値メモリ11bに記憶されている真の紙幣に対する金属検知の検知結果である基準電圧値V4を取得する(ステップS42)。制御部11は、金属検知部19により取得した電圧値V2と、基準値メモリ11bから取得した基準電圧値V4とを比較し、ホログラムの有無を判定する(ステップS43)。即ち、制御部11は、電圧値V2と基準電圧値V4とが一致、若しくは近似する場合、紙幣にホログラムが施されていると判定する。また、制御部11は、電圧値V2と基準電圧値V4とが不一致である場合、紙幣にホログラムが施されていないと判定する。
【0064】
制御部11は、判定パラメータメモリ11cを参照し、ホログラムの有無に応じて紙幣1000のシリーズを判定するシリーズ判定処理を行なう(ステップS44)。即ち、制御部11は、ホログラムが有ると判定した場合、紙幣1000は新シリーズであると判定する。また、制御部11は、ホログラムが無いと判定した場合、紙幣1000は旧シリーズであると判定する。
【0065】
なお、制御部11は、ゲート制御部13により、新シリーズであると判定した紙幣をその種類に対応した収納部43へ搬送するように各ゲートGを制御する。また、制御部11は、ゲート制御部13により、旧シリーズであると判定した紙幣を裁断処理部SDへ搬送するように各ゲートGを制御する。すなわち、上記した処理により、旧シリーズの紙幣を再流通させないように回収することができる。
【0066】
上述したように、本発明の一実施形態によると、紙葉類処理装置の検査ユニットにおいて、紙葉類の画像に基づいて紙葉類の種類を判別し、判定した紙葉類の種類に応じたセキュリティ検知を行い、さらに、セキュリティ要素の有無によりその紙葉類のシリーズを判別する。これにより、例えば、同額面のシリーズ違いなどの図柄が酷似している紙葉類のシリーズを判別することが出来る。この結果として、紙葉類の種類及びシリーズを判別することが出来る紙葉類処理装置、及び、紙葉類処理方法を提供することができる。
【0067】
なお、この発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具現化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【0068】
上記した実施形態では、処理対象として3種類でそれぞれに2つのシリーズがある紙幣を例に挙げたが、処理対象はこれに限定されない。券面の画像、及びセキュリティスレッドにより判別が可能なものであれば、如何なる紙幣(紙葉類)であっても判別することが出来る。この場合、紙葉類処理装置のセキュリティ検知部は、処理対象である紙幣が有するセキュリティ要素に対応するセキュリティ検知手段を備える必要がある。
【0069】
また、上記した実施形態では、1種類のセキュリティ要素を有する紙幣を処理対象として例に挙げたが、これに限定されない。処理対象である紙幣は、複数のセキュリティ要素を有していてもよい。この場合、紙葉類処理装置は、必要に応じて、1枚の紙幣に対して複数または1種類のセキュリティ検知処理を行なう。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】図1は、本実施形態に係わる紙葉類処理装置本体の構成例を概略的に示す図である。
【図2】図2は、図1に示す検査ユニットの機能の一部を示したブロック図である。
【図3】図3は、本実施形態に関わる紙葉類処理装置により処理される紙葉類の例を説明するための説明図である。
【図4】図4は、図1に示す紙葉類処理装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0071】
1…紙葉類処理装置、11…制御部、11a…券種辞書、11b…基準値メモリ、11c…判定パラメータメモリ、12…搬送制御部、13…ゲート制御部、14…光源、15…画像取得部、16…フィルタ、17…赤外画像取得部、18…磁気検知部、19…金属検知部、35…投入部、36…搬送路、37…検査ユニット、37a…光学検知部、37b…セキュリティ検知部、43…収納部、SD…裁断処理部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数種類の紙葉類の各画像を予め記憶している第1の記憶手段と、
紙葉類に投光する光源と、
前記紙葉類により反射された反射光を受光して電気信号に変換して紙葉類画像を取得する画像取得手段と、
前記画像取得手段により取得した前記紙葉類画像と、前記第1の記憶手段により記憶されている前記各種類の紙葉類の画像とから前記紙葉類の種類を判別する券種判別手段と、
それぞれ種類の異なるセキュリティ要素の検知を行なう複数種類のセキュリティ検知手段と、
前記券種判別手段により判別した種類に応じてセキュリティ検知手段を前記複数種類のセキュリティ検知手段から選択する選択手段と、
前記選択手段により選択した前記セキュリティ検知手段により前記紙葉類のセキュリティ要素の検知を行う制御手段と、
を具備する紙葉類処理装置。
【請求項2】
前記セキュリティ検知手段は、前記紙葉類の赤外画像を取得する赤外画像取得手段を具備する請求項2に記載の紙葉類処理装置。
【請求項3】
前記セキュリティ検知手段は、前記紙葉類に金属検知処理を行なう金属検知手段を具備する請求項2に記載の紙葉類処理装置。
【請求項4】
前記セキュリティ検知手段は、前記紙葉類に磁気検知処理を行なう磁気検知手段を具備する請求項2に記載の紙葉類処理装置。
【請求項5】
前記セキュリティ要素にそれぞれ対応する複数の検出基準値を予め記憶する第2の記憶手段と、
前記セキュリティ検知手段による検知結果と前記第2の記憶手段により記憶されている検出基準値とに基づいて前記紙葉類のシリーズを判別するシリーズ判別手段と、
をさらに具備する請求項1乃至4のいずれかに記載の紙葉類処理装置。
【請求項6】
前記光源と前記画像取得手段と前記セキュリティ検知手段とに紙葉類を搬送する搬送手段をさらに具備する請求項1乃至5のいずれかに記載の紙葉類処理装置。
【請求項7】
複数種類の紙葉類の各画像を予め記憶し、
紙葉類に投光し、
前記紙葉類により反射された反射光を受光して電気信号に変換して紙葉類画像を取得し、
前記取得した前記紙葉類画像と予め記憶している前記各種類の紙葉類の各画像とから前記紙葉類の種類を判別し、
前記判別した種類に応じたセキュリティ要素の検知を複数種類の異なるセキュリティ要素の検知から選択し、
前記紙葉類に前記選択したセキュリティ要素の検知を行う、
紙葉類処理方法。
【請求項8】
前記セキュリティ要素にそれぞれ対応する複数の検出基準値を予め記憶し、
前記セキュリティ検知による検知結果と前記記憶されている検出基準値とに基づいて前記紙葉類のシリーズを判別する請求項7に記載の紙葉類処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−73048(P2010−73048A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−241462(P2008−241462)
【出願日】平成20年9月19日(2008.9.19)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】