説明

紙葉類処理装置

【課題】手動設定による煩わしさやミスの発生を防止し、温度変化や経年劣化等により生ずる設定値と適正値との偏差を修正して、往復搬送部を所望の停止位置に適切に移動させる。
【解決手段】通電により駆動するモータ4と、モータ4の出力量を検出する出力量検出部5と、紙葉類Paを搬送するためにモータ4の出力により往復運動する往復搬送部26aと、往復搬送部26aを停止させる停止位置sp1に往復搬送部26aがあることを検出する停止位置センサ7aと、停止位置センサ7aに対応して設けられ停止位置sp1とは異なる基準位置bs1に往復搬送部26aがあることを検出する基準位置センサ8aとを有し、往復搬送部26aが基準位置センサ8aで検出される時点から往復搬送部26aが停止するまでの間に出力量検出部5で検出される出力量が予め定めた設定値Dsと一致するようにモータ4に対する通電制御を通じて往復搬送部26aを移動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙幣等の紙葉類を搬送するためのフォーク等の往復運動部を有する紙葉類処理装置に係り、特に往復運動部を所望の停止位置に適切に移動し得るようにした紙葉類処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の紙葉類処理装置は、例えば特許文献1等に示されるように、紙葉類を収納する収納部と、この収納部内外間で紙葉類を搬送するため往復運動するプッシャやフォーク等の往復搬送部が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−308233号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような紙葉類処理装置は、図7に示すように、通電により駆動するモータ104の回転(出力)を用いて往復運動するように構成した紙葉類Paを搬送するための往復搬送部126aと、モータ回転位置、回転角又は回転数等のモータ104の出力量を検出するエンコーダを用いた出力量検出部105と、所望の停止位置sp1に往復搬送部126aがあることを検出する停止位置センサ107aと、所望の停止位置sp1とは異なる基準位置bs1に往復搬送部126aがあることを検出する基準位置センサ108aとを有し、モータ104に対する通電制御を通じて往復搬送部126aを所望の停止位置sp1に停止する移動制御を行う構成が通例である。
【0005】
この移動制御について、往復搬送部126aを所望の停止位置sp1へ移動させる具体例を挙げて説明すると、まず往復搬送部126aを所望の停止位置sp1へ向けて移動させ、往復搬送部126aが基準位置センサ108aで検出される時点から往復搬送部126aが停止するまでに出力量検出部105で検出されるモータ104の出力量が予め定めた設定値Dsと一致するようにモータ104に対する通電制御を行うことにより往復搬送部126aを設定値Dsに対応する位置に停止させ、停止した往復搬送部126aが所望の停止位置sp1にあるか否かを停止位置センサ107aによる検出結果を通じて確認する。この設定値Dsは、往復搬送部126aが所望の停止位置sp1に停止するように工場出荷時等に手動で設定されるものである。
【0006】
しかしながら、設定値Dsを手動で行うことは煩わしいばかりか、設定ミスにより設定値Dsが適切でないものに設定されると往復搬送部126aが所望の停止位置sp1に至らずに停止したり、所望の停止位置sp1を通り過ぎて停止したりする、いわゆる停止位置ズレ現象を招いてしまう。また、設定値Dsとすべき適正値は、温度変化や経年等の環境に応じて変化するので、設定値Dsの設定後に適正値と偏差が生じて往復搬送部126aが所望の停止位置sp1に停止しない停止位置ズレ現象が生じる場合がある。
【0007】
また、図7に示すように、所望の停止位置sp1、sp2、…というように複数箇所とする場合は、所望の停止位置sp1、sp2、…毎に停止位置センサ107a、107b、…を配置する必要があるうえ、各停止位置センサ107a、107b、…の配置に併せて基準位置センサ108a、108bを増設する必要があるので、センサが増加して故障リスクや製造コストが高まり好ましくない。
【0008】
本発明は、このような課題に着目してなされたものであって、その目的は、往復搬送部の停止位置を決定する設定値に関し、手動設定による煩わしさやミスの発生を防止するとともに、温度変化や経年劣化等により生ずる設定値と適正値との偏差を修正して、往復搬送部を所望の停止位置に適切に移動させる紙葉類処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、かかる目的を達成するために、次のような手段を講じたものである。
【0010】
すなわち、本発明の紙葉類処理装置は、通電により駆動するモータと、前記モータの出力量を検出する出力量検出部と、紙葉類を搬送するために前記モータの出力により往復運動する往復搬送部と、前記往復搬送部を停止させる停止位置に当該往復搬送部があることを検出する停止位置センサと、前記停止位置センサに対応して設けられ前記停止位置とは異なる基準位置に前記往復搬送部があることを検出する基準位置センサと、前記往復搬送部が前記基準位置センサで検出される時点から当該往復搬送部が停止するまでの間に前記出力量検出部で検出される出力量が予め定めた設定値と一致するように前記モータに対する通電制御を通じて前記往復搬送部を移動させる制御部とを具備してなり、前記制御部は、所定のタイミングで、前記往復搬送部を前記基準位置から前記停止位置へ移動させ、前記往復搬送部が前記基準位置センサで検出される時点から前記停止位置センサで検出される時点までの前記モータの出力量を前記出力量検出部により検出し、検出した出力量を前記設定値とすることを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、往復搬送部が基準位置センサで検出される時点から往復搬送部が停止するまでの間に出力量検出部で検出されるモータの出力量が予め定めた設定値と一致するようにモータに対する通電制御を通じて往復搬送部を移動させる。この場合、所定のタイミングで、往復搬送部を基準位置から停止位置へ移動し、往復搬送部が基準位置センサで検出される時点から停止位置センサで検出される時点までモータの出力量を検出し、検出した出力量を設定値とするので、手動設定による煩わしさや設定ミスを防止するとともに、温度変化や経年劣化等により生ずる設定値と適正値との偏差を自動修正して、往復搬送部を所望の停止位置に適切に移動させることができる。
【0012】
所望の停止位置を複数箇所設置することにより生ずるセンサの増加を抑えて故障リスクや製造コストを低減させるためには、前記停止位置センサは、第1の停止位置センサと、第1の停止位置センサが往復搬送部を検出する位置とは異なる位置に前記往復搬送部があることを検出する第2の停止位置センサとを有し、第1の停止位置センサを第2の停止位置センサに対応する第2の基準位置センサとし、第2の停止位置センサを第1の停止位置センサに対応する第1の基準位置センサとして共用していることが好ましい。
【0013】
紙葉類を搬送するための既存の動作に影響を与えることなく、設定値の自動設定を実行するためには、前記所定のタイミングは、電源投入時に実行される初期化処理時であることが望ましい。
【0014】
往復搬送部を着脱可能な金庫に設けることにより生じ易くなる不具合を適切に回避するためには、前記往復搬送部は、着脱可能な金庫に設けられており、前記所定のタイミングは、前記金庫を装着したときであることが効果的である。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、以上説明した構成であるから、往復搬送部の停止位置を決定する設定値が所望の停止位置となるように所定のタイミングで自動設定するので、手動設定による煩わしさや設定ミスを防止することが可能となるとともに、温度変化や経年劣化等により生ずる設定値と適正値との偏差を自動修正して、往復搬送部を所望の停止位置に適切に移動させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係る紙葉類処理装置の概略的な全体構成図。
【図2】一部の金庫を抜き取った状態を示す図1に対応した図。
【図3】同実施形態の構成および機能の概要を示すブロック図。
【図4】同実施形態において紙幣を搬送する往復搬送部を示す模試的な図
【図5】同実施形態の往復搬送部の動作を制御する構成を示す模式的な図。
【図6】同実施形態の制御部で実行される制御処理ルーチンを示すフローチャート。
【図7】従来の紙葉類処理装置における往復搬送部の動作を制御する構成を示す模式的な図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。本実施形態では紙幣を取り扱う紙幣ブロックとしての紙葉類処理装置を例に挙げて説明する。
【0018】
図1に示す本実施形態の紙葉類処理装置は、例えば乗車券やカード、精算切符等の券売を行う券売機として用いられるもので、紙幣ブロック1と、これにセットされて紙幣の収納場所となる4つの金庫A〜Dと、投入される紙幣の金種を識別部22で識別して金庫A〜Dのうち対応する金庫に搬送経路21を介して搬送する搬送手段2とを具備する。
【0019】
紙幣ブロック1は、利用者に近い側に挿入口11、出金口13、返却口14(以下、出金口13及び返却口14を合わせて払出口12ともいう)を設けたもので、同じく利用者に近い側に固定式の混合金庫Dを内設し、側方であり係員が操作を行う側に3つのカセット式の金庫A〜Cを設けている。また、紙幣ブロック1には、搬送経路21上の紙幣を一時的に保留する一時保留部Eや出金保留部F、読み取り不能、重送発生、異常検知時の不良券を回収する不良券回収部G等も設けられている。カセット式の金庫A〜Cは、図2に例示するように把手hを把持して引き出すことが可能とされた着脱可能な金庫であり、金庫A〜Cが装着されたか否かを検出する図3に示す金庫着脱センサ9が設けられている。
【0020】
識別部22は、図3に示すように、紙幣の金種判定を主として行うもので、挿入口11から投入される紙幣の金種のみ識別する。これに対して、各金庫A〜Dに紙幣が補給される場合や、各金庫A〜Dから紙幣が回収される場合等には、図1に示す補給回収用の簡易型の識別部20(以下、簡易識別部と称する)で金種識別を行う。ここに言う簡易型とは、金種識別のみを行い、紙幣の真性(偽造か否か)までは識別しないものを言う。
【0021】
各金庫A〜Cには、図4に示すように、紙幣を積み重ねた状態で収納する集積部a2と、搬送手段2の一部であって集積部a2と搬送経路21との間で紙幣を搬送するため上下方向に往復運動するフォークを用いた往復搬送部26aが設けられている。往復搬送部26aは、図3及び図5に示すように、紙葉類たる紙幣Paの両側端部を保持した状態で上下方向に往復運動可能に支持部26bに支持されており、通電部pwからの通電により駆動するモータ4から出力される回転動作を利用して往復運動する。モータ4の出力端にはモータの回転角(回転量)を検出するエンコーダを用いた出力量検出部5が設けられており、所定の回転角(回転量)を検出する毎にエンコーダパルス信号を出力する。また、本実施形態では、往復運動経路の上限位置又はその近傍並びに下限位置又はその近傍の二箇所に停止位置sp1、sp2が設定されており、これら停止位置sp1、sp2に往復搬送部26aがあることを検出する停止位置センサ7が設けられている。停止位置センサ7は、上側の停止位置sp1に往復搬送部26aがあることを検出する第1の停止位置センサ7aと、下側の停止位置sp2に往復搬送部26aがあることを検出する第2の停止位置センサ7bとを有している。
【0022】
ここで、従来であれば、第1の停止位置センサ7a及び第2の停止位置センサ7bに対応して基準位置センサ8をそれぞれ別途設けていたが、センサが増加して故障リスクや製造コストが高まり好ましくない問題がある。そこで、本実施形態では、停止位置sp1に往復搬送部26aを停止する制御を行う際には、停止位置sp1とは異なる停止位置sp2を基準位置bs1として取り扱い、第2の停止位置センサ7bを第1の停止位置センサ7aに対応する第1の基準位置センサ8aとする一方、停止位置sp2に往復搬送部26aを停止する制御を行う際には、停止位置sp2とは異なる停止位置sp1を基準位置bs2として取り扱い、第1の停止位置センサ7aを第2の停止位置センサ7bに対応する第2の基準位置センサ8bとして、一つのセンサに停止位置センサ及び基準位置センサの両役割を果たさせて共用している。
【0023】
搬送手段2は、図3に示すように、周知の紙幣処理装置と同様に、図示しない挾持ローラ、搬送ベルト、ウィング等の方向変換部などから構成される前記搬送経路21と、上記の往復搬送部26a及び支持部26bと、搬送される紙幣の金種を識別する前記識別部22および簡易識別部20と、この識別部22或いは簡易識別部20の識別結果等に基づいて前記搬送経路21を制御する制御部23(図3参照)とから構成される。そして、挿入口11から投入された紙幣を識別部22に通過させた後、搬送経路21に沿って流通させ、随所に設けた分岐部a〜gで必要に応じて紙幣を方向変換して、金庫A〜D、一時保留部E、出金保留部F、払出口12、一次保留部a1〜c1、不良券回収部G等へ搬送する動作を行うとともに、金庫A〜D等から搬送経路21上への紙幣の繰り出し動作、簡易識別部20における金種識別、更には次なる搬送先である払出口12や金庫A〜Dへの搬送動作などを含む統括的な制御を行うように構成されている。
【0024】
この搬送制御の一例として制御部23は、基準位置センサ8a、8b及び出力量検出部5からの検出結果と、予め定められた設定値Dsとに基づいてモータ4に対する通電制御を行うことにより往復搬送部26aを所望の停止位置sp1、sp2に停止する移動制御を実行する。具体的には、制御部23は、基準位置センサ8a、8bにより往復搬送部26aの検出がなされた時点から往復搬送部26aを停止するまでの間に出力量検出部5で検出されるモータの出力量(エンコードパルス数)が設定値Dsと一致するようにモータ4に対する通電を行う。また、移動制御部24は、この設定値Dsを適正値に設定するために、金庫着脱センサ9により金庫A〜Cが装着されたことが検出されたときや初期処理時等の所定のタイミングで基準位置bs1から停止位置sp1へ往復搬送部26aを移動させ、往復搬送部26aが基準位置センサ8aで検出される時点から停止位置センサ7aで検出される時点までに出力量検出部5でモータ4の出力量(エンコードパルス数)を検出し、検出したモータ4の出力量を設定値Dsとして記憶する。
【0025】
上記の制御を行うために、制御部23は、CPU、メモリ及びインターフェースを具備する通常のマイクロコンピュータユニットにより構成されて、メモリ内には図6に示す制御処理ルーチン等の所要のプログラムが書き込まれており、CPUは適宜必要なプログラムを呼び出して実行することにより、周辺ハードリソースと協働して、所期の搬送動作や上記の往復搬送部26aの移動に関する制御を行う移動制御部24が実現される。また、各金庫A〜Dに紙幣を装填し、或いは各金庫A〜Dから紙幣を繰り出す際には、各金庫A〜Dの一部または搬送経路21の一部に設けた図示しない計数部によって紙幣の枚数が計数されるようにしている。
【0026】
次に、往復搬送部26aの移動制御について図5及び図6を参照しつつ説明する。まず、移動制御部24は、電源投入時に実行される初期化処理の実行中であるか否かと、金庫着脱センサ9により金庫A〜Cが装着されたか否かを判定する(図6に示す処理ST1)。初期化処理の実行中である、又は、金庫A〜Cが装着されたと判定した場合には(処理ST1:YES)、第1の基準位置bs1及び第1の停止位置sp1を通るように往復搬送部26aを下方から上方へ向けて移動させる(処理ST2)。この場合、モータ4の出力量が出力量検出部5で検出されるとともに、往復搬送部26aの移動に伴って往復搬送部26aが第1の基準位置センサ8a及び第1の停止位置センサ7aで順に検出されるので、第1の基準位置センサでの検出時から第1の停止位置センサ7aでの検出時までのモータ4の出力量を検出特定する(処理ST3)。移動制御部24は、検出したモータ4の出力量(例えば100エンコードパルスとする)を設定値Dsとして記憶し、処理ST1の実行に戻る(処理ST4)。
【0027】
一方、移動制御部24は、処理ST1において初期化処理の実行中でなく、且つ、金庫A〜Cが装着されたときでないと判定した場合には(処理ST1:NO)、上位の制御部等から第1の停止位置sp1への移動指令がなされたか否かを判定する(図6に示す処理ST5)。第1の停止位置sp1への移動指令がなされていないと判定した場合には(処理ST5:NO)、処理ST1の実行に戻る。一方、第1の停止位置sp1への移動指令がなされたと判定した場合には(処理ST5:YES)、移動制御部24は、通電部pwを通じてモータ4に対する通電を行い、第1の基準位置bs1及び第1の停止位置sp1を通るように往復搬送部26aを下方から上方へ向けて移動させる(処理ST6)。第1の基準位置センサ8aでの検出がなされるまで往復搬送部26aの上昇を継続し(処理ST7:NO)、第1の基準位置センサ8aでの検出がなされると(処理ST7:YES)、この検出時から出力量検出部5によるモータ4の出力量(エンコードパルス数)の計測を開始し、検出されるモータ4の出力量(エンコードパルス数)が予め記憶している設定値Ds(100エンコードパルス)と一致するようにモータ4に対する通電を行い、往復搬送部26aを停止させる(処理ST8)。すると、上記処理ST2〜処理ST4において第1の基準位置bs1から第1の停止位置sp1までの間のモータ4の出力量(エンコードパルス数)が適正な設定値Ds(100エンコードパルス)に設定されているので、往復搬送部26aが所望の停止位置である第1の停止位置sp1に停止する。
【0028】
なお、上記では、説明の簡略化のために、往復搬送部26aを第1の停止位置sp1に移動させる例についてのみ説明しているが、第2の停止位置sp2に移動させる場合は、第1の停止位置sp1を第2の停止位置sp2に、第1の基準位置bs1を第2の基準位置bs2に、第1の停止位置センサ7aを第2の停止位置センサ7bに、第1の基準位置センサ8aを第2の基準位置センサ8bに代えて上記と同様の動作を行うとよい。
【0029】
以上のように、本実施形態に係る紙葉類処理装置は、通電により駆動するモータ4と、モータ4の出力量を検出する出力量検出部5と、紙葉類Paを搬送するためにモータ4の出力により往復運動する往復搬送部26aと、往復搬送部26aを停止させる停止位置sp1、sp2に往復搬送部26aがあることを検出する停止位置センサ7を(第1の停止位置センサ7a、第2の停止位置センサ7b)と、停止位置センサ7に対応して設けられ停止位置sp1、sp2とは異なる基準位置bs1、bs2に往復搬送部26aがあることを検出する基準位置センサ8(第1の基準位置センサ8a、第2の基準位置センサ8b)と、往復搬送部26aが基準位置センサ8で検出される時点から往復搬送部26aが停止するまでの間に出力量検出部5で検出される出力量が予め定めた設定値Dsと一致するようにモータ4に対する通電制御を通じて往復搬送部26aを移動させる制御部23とを具備してなり、制御部23は、所定のタイミングで、往復搬送部26aを基準位置bs1、bs2から停止位置sp1、sp2へ移動させ、往復搬送部26aが基準位置センサ8で検出される時点から停止位置センサ7で検出される時点までのモータ4の出力量を出力量検出部5により検出し、検出した出力量を設定値Dsとすることを特徴とする。
【0030】
本実施形態によれば、往復搬送部26aが基準位置センサ8で検出される時点から往復搬送部26aが停止するまでの間に出力量検出部5で検出されるモータ4の出力量が予め定めた設定値Dsと一致するようにモータ4に対する通電制御を通じて往復搬送部26aを移動させる。この場合、所定のタイミングで、往復搬送部26aを基準位置bs1、bs2から停止位置sp1、sp2へ移動し、往復搬送部26aが基準位置センサ8で検出される時点から停止位置センサ7で検出される時点までモータ4の出力量を検出し、検出した出力量を設定値Dsとするので、手動設定による煩わしさや設定ミスを防止するとともに、温度変化や経年劣化等により生ずる設定値Dsと適正値との偏差を自動修正して、往復搬送部26aを所望の停止位置センサ7に適切に移動させることが可能となる。
【0031】
従来では、停止位置センサ7を増やすとそれに併せて基準位置センサ8も増設する必要があり、センサが増加して故障リスクや製造コストが高まり好ましくなかったが、本実施形態では、停止位置センサ7は、第1の停止位置センサ7aと、第1の停止位置センサ7aが往復搬送部26aを検出する位置sp1、bs2とは異なる位置sp2、bs1に往復搬送部26aがあることを検出する第2の停止位置センサ7bとを有し、第1の停止位置センサ7aを第2の停止位置センサ7bに対応する第2の基準位置センサ8bとし、第2の停止位置センサ7bを第1の停止位置センサ7aに対応する第1の基準位置センサ8aとして、一つのセンサに停止位置センサ及び基準位置センサの両役割を果たさせて共用しているので、停止位置を複数箇所設定してもセンサの増加を抑えることができ、故障リスクや製造コストを低減させることが可能となる。
【0032】
さらに、本実施形態では、上記の所定のタイミングを電源投入時に実行される初期化処理時としており、初期化処理時には、紙葉類Paの搬送制御を行うことがないので、紙葉類Paを搬送するための既存の動作に影響を与えることなく、設定値Dsを自動設定することが可能となる。
【0033】
その他、本実施形態では、往復搬送部26aは着脱可能なカセット式の金庫A〜Cに設けているので、同種の金庫A〜Cでも組み付け精度等の相違によって金庫A〜Cの個体毎に適切な設定値Dsが異なり、異なる金庫A〜Cの着脱により設定値Dsと適正値との偏差が生じて停止位置ズレを招きやすいほか、金庫着脱による著しい温度変化によっても停止位置ズレを生じ易くなるものの、上記の所定のタイミングを金庫A〜Cを装着したときとして、金庫A〜Cを装着したときに設定値Dsの自動調整を行うので、往復搬送部26aを着脱可能な金庫A〜Cに設けたことにより生じ易くなった不具合を適切に回避して、往復搬送部26aを所望の停止位置sp1、sp2に適切に移動させることができる。
【0034】
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものでないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明だけではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0035】
例えば、本実施形態では、紙葉類を紙幣Paとしているが、乗車券やカード、精算切符等のその他の紙葉類に適用してもよい。
【0036】
最後に、各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0037】
4…モータ
5…出力量検出部(エンコーダ)
26a…往復搬送部
7……停止位置センサ
7a…第1の停止位置センサ
7b…第2の停止位置センサ
8……基準位置センサ
8a…第1の基準位置センサ
8b…第2の基準位置センサ
sp1、sp2…停止位置
bs1、bs2…基準位置
Pa…紙葉類(紙幣)
Ds…設定値


【特許請求の範囲】
【請求項1】
通電により駆動するモータと、
前記モータの出力量を検出する出力量検出部と、
紙葉類を搬送するために前記モータの出力により往復運動する往復搬送部と、
前記往復搬送部を停止させる停止位置に当該往復搬送部があることを検出する停止位置センサと、
前記停止位置センサに対応して設けられ前記停止位置とは異なる基準位置に前記往復搬送部があることを検出する基準位置センサと、
前記往復搬送部が前記基準位置センサで検出される時点から当該往復搬送部が停止するまでの間に前記出力量検出部で検出される出力量が予め定めた設定値と一致するように前記モータに対する通電制御を通じて前記往復搬送部を移動させる制御部とを具備してなり、
前記制御部は、所定のタイミングで、前記往復搬送部を前記基準位置から前記停止位置へ移動させ、前記往復搬送部が前記基準位置センサで検出される時点から前記停止位置センサで検出される時点までの前記モータの出力量を前記出力量検出部により検出し、検出した出力量を前記設定値とすることを特徴とする紙葉類処理装置。
【請求項2】
前記停止位置センサは、第1の停止位置センサと、第1の停止位置センサが往復搬送部を検出する位置とは異なる位置に前記往復搬送部があることを検出する第2の停止位置センサとを有し、
第1の停止位置センサを第2の停止位置センサに対応する第2の基準位置センサとし、第2の停止位置センサを第1の停止位置センサに対応する第1の基準位置センサとして共用している請求項1に記載の紙葉類処理装置。
【請求項3】
前記所定のタイミングは、電源投入時に実行される初期化処理時である請求項1又は2に記載の紙葉類処理装置。
【請求項4】
前記往復搬送部は、着脱可能な金庫に設けられており、前記所定のタイミングは、前記金庫を装着したときである請求項1〜3のいずれかに記載の紙葉類処理装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2011−93693(P2011−93693A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−251264(P2009−251264)
【出願日】平成21年10月30日(2009.10.30)
【出願人】(000002059)シンフォニアテクノロジー株式会社 (1,111)
【Fターム(参考)】