説明

紙葉類判定装置

【課題】紙葉類を損券と判定する時間を短縮する手段を提供する。
【解決手段】基準ローラと、基準ローラの中央に対向させて紙幣の幅方向の全長の半分よりも長い長さを有する中央ローラを設け、中央ローラの両側に、基準ローラに対向させて側部ローラを設け、さらに中央ローラの変位を検出する中央変位検出センサを設けたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金融機関の自動取引装置等に備えられ、紙幣等の紙葉類の正損等を判別する紙葉類判定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の紙幣判定装置は、中央ローラとその両側に配置した側部ローラを紙幣の幅方向の長さを3等分した長さに形成し、中央ローラおよび側部ローラが挟持した厚みを検出し、中央ローラが挟持した厚みが標準厚より厚い場合は損券であると判定し、側部ローラが挟持した厚みが標準厚よりも厚い場合は反射透過センサにより紙幣の形状と状態を検出し、それが角折れによるもので無く、テープ等が貼られたものであると判別したときはその紙幣が損券であると判定している(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平7−14048号公報(段落0021−段落0033、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
一般に折り畳まれた紙幣等の紙葉類は折り目から破れることがあり、顧客は破れた箇所にテープを貼って補強することがある。
しかしながら、上述した従来の技術においては、均等に3分割した中央ローラおよび側部ローラに紙幣を挟持させ、中央ローラおよび側部ローラが挟持した厚みにより紙幣の正損を判定しているため、紙幣の短手方向と平行に折り目がつくように4つ折りにされていた紙幣を扱う場合に中央部および両側部の範囲それぞれに折り目が含まれ、紙幣の幅方向の端部に近い側の折り目、つまり側部ローラが挟持する範囲に含まれる折り目がテープで補強されている場合、反射透過センサにより角折れであるか否かを判定しているので、側部ローラが検出する異常回数が増加し、紙幣の判定処理に時間がかかるという問題がある。
【0004】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたもので、紙葉類を損券と判定する時間を短縮する手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題を解決するために、基準ローラと、該基準ローラの中央に対向させて紙幣の幅方向の全長の半分よりも長い長さを有する中央ローラを設け、該中央ローラの両側に、前記基準ローラに対向させて側部ローラを設け、さらに前記中央ローラの変位を検出する中央変位検出センサを設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
これにより、本発明は、中央ローラが4つ折りにされた紙幣の全ての折り目を挟持する長さであるので、紙幣の幅方向の端部に近い側の折り目に貼られたテープをも中央ローラが検出するため、折り目にテープが貼られた紙幣を損券と判定する時間を短縮するという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下に、図面を参照して本発明による紙幣判定装置の実施例について説明する。
【実施例1】
【0008】
図1は実施例1の紙幣判定装置を示す正面図、図2は実施例1の紙幣判定装置を示す側面図、図3は実施例1の紙幣判定装置を示すブロック図である。
図1において、1は紙葉類判定装置としての紙幣判定装置である。
2は基準ローラであり、両端部を紙幣判定装置1のフレームに固定されているベアリング3に回転可能に支持されて図示しない駆動機構により回転駆動される。
【0009】
4は中央ローラであり、基準ローラ2と対向配置され、両端部が中央アーム6a、6bのベアリング5により回転可能に支持され、長さは紙幣の幅方向の全長の半分よりも長く、かつ顧客に返却してもクレームとならない紙幣の角折れKの手前までの長さ(紙幣の幅方向の両端からそれぞれ10mm程度。)に形成される。
7、8は側部ローラであり、基準ローラ2と対向して中央ローラ4の両側に配置され、両端部を側部アーム11、12のベアリング9、10により支持されている。
【0010】
中央アーム6a、6bおよび側部アーム11、12は、図2に示すように紙幣判定装置1のフレームに固定されたシャフト13により揺動するように支持されると共に、圧縮コイルスプリング等のバネ部材14により、支持している中央ローラ4および側部ローラ7、8を基準ローラ2に押圧し、基準ローラ2に従動させる。
16a、16bは中央変位検出センサであり、渦電流式の非接触式の変位センサであって、基準ローラ2と中央ローラ4との間に挟持した紙幣の厚みの分だけ中央ローラ4と共に持ち上がる中央アーム6a、6bの変位を検出する。
【0011】
17、18は側部変位検出センサであり、中央変位検出センサ16a、16bと同様に、基準ローラ2と側部ローラ7、8との間に挟持した紙幣の厚みの分だけ側部ローラ7、8と共に持ち上がる側部アーム11、12の変位を検出する
図3において、20は紙幣判定装置1の制御部であり、紙幣判定装置1の各部を制御して紙幣の正損判定処理等を行う。
【0012】
21は記憶部であり、制御部20が実行するプログラムやそれに用いる各種のデータおよび制御部20による処理結果等が格納される。
上記の記憶部21には、中央アーム6a、6bおよび側部アーム11、12の変位検出処理を実行する機能を有する変位検出処理プログラムが格納されており、制御部20と変位検出処理プログラムにより本実施例のハードウェアとしての各種の機能手段が形成される。
【0013】
また、記憶部21は基準ローラ2と中央ローラ4および基準ローラ2と側部ローラ7、8の間に紙幣を挟持したときに、紙幣にテープTが貼り付けられたことや角折れがあることを判定するための、中央変位検出センサ16a、16bや側部変位検出センサ17、18の変位の判定値(紙幣の厚みを超え、紙幣にテープTを貼ったときの厚み未満の範囲内の値。)が格納される。
【0014】
上述した構成の作用について説明する。
短手方向と平行な折り目(以下、単に折り目という。)がつくように4つ折りにされた紙幣であって、図4に示すように幅方向の端に近い折り目にテープTが貼られた紙幣が搬送された場合について説明する。
図5は折り目にテープが貼られた紙幣が通過するまでの中央アームおよび側部アームの変位を示す出力波形図である。
【0015】
図5(a)は紙幣が通過するまでの側部変位検出センサ17が検出する側部アーム11の変位の出力波形図であり、時間と共に変化する側部アーム11の変位の波形をA1で示す。
図5(b)は紙幣が通過するまでの中央変位検出センサ16aが検出する中央アーム6aの変位の出力波形図であり、時間と共に変化する中央アーム6aの変位の波形をB1で示す。
【0016】
図5(c)は紙幣が通過するまでの中央変位検出センサ16bが検出する中央アーム6bの変位の出力波形図であり、時間と共に変化する中央アーム6bの変位の波形をC1で示す。
図5(d)は紙幣が通過するまでの側部変位検出センサ18が検出する側部アーム12の変位の出力波形図であり、時間と共に変化する側部アーム12の変位の波形をD1で示す。
【0017】
図示しない紙幣搬送路から搬送された紙幣を回転する基準ローラ2と、中央ローラ4および側部ローラ7、8との間で挟持すると、中央ローラ4と共に中央アーム6a、6bそして側部ローラ7、8と共に側部アーム11、12が持ち上がり紙幣の厚みに応じて変位する。
このとき、テープTが貼られた折り目を中央ローラ4が挟持するため、図5(C)から分かるように紙幣が挟持され、中央ローラ4の中央アーム6b近傍がテープTの貼られた箇所に乗り上げると中央アーム6bの変位が判定値を超え、中央ローラ4がテープTの貼られた箇所を乗り越えると中央アーム6bの変位が判定値よりも低くなる。これを認識した制御部20は紙幣が損券であると判断する。
【0018】
テープTが貼られた折り目が図4に示した折り目と異なる場合であっても、中央ローラ4はどの折り目に対してもその厚みを検出できる長さであるため、上記と同様にして制御部20はその紙幣を損券と判断する。
次に、図6に示すように前端部が角折れとなっている紙幣が搬送された場合について説明する。
【0019】
図7は、角折れの紙幣が通過するまでの中央アームおよび側部アームの変位を示す出力波形図である。
図7(a)は紙幣が通過するまでの側部変位検出センサ17が検出する側部アーム11の変位の出力波形図であり、時間と共に変化する側部アーム11の変位の波形をA2で示す。
【0020】
図7(b)は紙幣が通過するまでの中央変位検出センサ16aが検出する中央アーム6aの変位の出力波形図であり、時間と共に変化する中央アーム6aの変位の波形をB2で示す。
図7(c)は紙幣が通過するまでの中央変位検出センサ16bが検出する中央アーム6bの変位の出力波形図であり、時間と共に変化する中央アーム6bの変位の波形をC2で示す。
【0021】
図7(d)は紙幣が通過するまでの側部変位検出センサ18が検出する側部アーム12の変位の出力波形図であり、時間と共に変化する側部アーム12の変位の波形をD2で示す。
図示しない紙幣搬送路から搬送された紙幣を回転する基準ローラ2と、中央ローラ4および側部ローラ7、8との間に挟持すると、中央ローラ4と共に中央アーム6a、6bそして側部ローラ7、8と共に側部アーム11、12が持ち上がり紙幣の厚みに応じて変位する。
【0022】
このとき、角折れKの箇所を側部ローラ8が挟持するため、図7(D)の波形D2から分かるように紙幣が挟持され、角折れKの箇所に側部ローラ8が乗り上げると側部アーム12の変位が判定値を超え、側部ローラ8が角折れKの箇所を乗り越えると側部アーム12の変位が判定値よりも低くなる。
波形D2を認識した制御部20は、紙幣の前端部が角折れであると判断して紙幣を通常通りに搬送する。
【0023】
なお、紙幣を挟持してから側部変位検出センサ17、18が検出した変位の波形が、最初は判定値よりも低い変位で、途中から最後にかけては判定値を超えた変位となった場合は、制御部20は紙幣の後端が角折れしていると判断して紙幣を通常通りに搬送する。
また、紙幣を挟持してから側部変位検出センサ17、18が検出した変位の波形が、最初と最後の変位が判定値よりも低く、途中の変位だけが判定値を超えた場合は、制御部20は紙幣にテープが貼られている等として紙幣を損券であると判断する。
【0024】
以上説明したように、本実施例では、中央ローラの長さを紙幣の幅方向の全長の半分の長さよりも長く、角折れの部分に至らない長さに形成して4つ折りの紙幣の折り目を中央ローラが挟持し、折り目にテープが貼られた箇所は中央変位検出センサで検出するので、折り目にテープが貼られた紙幣を損券と判断する時間を短縮することができる。
また、紙幣を挟持してから側部変位検出センサが検出する変位の出力波形の形が最初と最後は判定値よりも低く、途中の変位だけが判定値を超えた場合にその紙幣をテープが貼られている等として損券と判断しているので、紙幣の形状を検知するための反射透過センサで紙幣の形状を検知するよりも短時間で損券の判断を行うことができる。
【実施例2】
【0025】
図8は実施例2の紙幣判定装置を上方から見た図、図9は実施例2の紙幣判定装置のQ―Q断面線断面図である。
なお、上記実施例1と同様の部分は、同一の符号を付してその説明を省略する。
本実施例の中央ローラ4には、長手方向の中央付近にベルト24を巻き掛けたときにベルト24が中央ローラ4からはみ出ないようにするための溝25が形成されている。
【0026】
また、側部ローラ7、8には中央ローラ4と反対側の端部で側部アーム11、12よりも外側に側部プーリ26、27が形成されている。
また、中央アーム6a、6bと側部アーム11、12には後述するリミッタ45に係止される先端部28が形成されている。
図8、図9において、30は揺動軸であり、矢印Fで示す紙幣の搬送方向の下流で中央ローラ4および側部ローラ7、8と平行に紙幣判定装置1のフレームに固定され、中央ローラ4に巻き掛けるベルト24を巻き掛けるためのアイドルプーリ31および側部プーリ26、27に巻き掛けるベルト32、33を巻き掛けるためのアイドルプーリ34、35を備え、それぞれのアイドルプーリ31、34、35を回転させるためのアイドルギア36、37、38が設けられている。
【0027】
40は駆動軸であり、揺動軸30と平行に配置されて揺動軸30のアイドルギア36、37、38と噛み合う駆動ギア41、42、43を備え、図示しない駆動機構により回転する。
45はリミッタであり、中央アーム6a、6bと側部アーム11、12の先端部28を係止することにより中央アーム6a、6bと側部アーム11、12の揺動を制限し、基準ローラ2と、中央ローラ4および側部ローラ7、8との間に紙幣の厚みよりも狭い間隙Gを形成すると共に、基準ローラ2と、中央ローラ4および側部ローラ7、8とが接触しないようにする。
【0028】
上述した構成の作用について説明する。
図示しない紙幣搬送路から搬送された紙幣の厚みを検出するとき、基準ローラ2を回転させると共に、駆動軸40を回転させると駆動ギア41、42、43が回転する。
駆動ギア41、42、43の回転は、駆動ギア41、42、43に噛み合っているアイドルギア36、37、38に伝達するため、アイドルプーリ31、34、35が回転し、アイドルプーリ31、34、35に巻き掛けられたベルト24、32、33を介して中央ローラ4および側部プーリ26、27が回転する。
【0029】
そして、基準ローラ2と、中央ローラ4および側部ローラ7、8との間隙Gに紙幣が入り込むと中央ローラ4や側部ローラ7、8と共に中央アーム6a、6bや側部アーム11、12が押し上げられ、そのときの中央アーム6a、6bの変位を中央変位検出センサ16a、16bが検出し、側部アーム11、12の変位を側部変位検出センサ17、18で検出する。
【0030】
このように、中央ローラ4および側部ローラ7、8の先端部28をリミッタ45に係止させることにより、中央アーム6a、6bと側部アーム11、12の揺動を制限して基準ローラ2と、中央ローラ4および側部ローラ7、8との間に間隙Gを形成し、基準ローラ2と、中央ローラ4および側部ローラ7、8との間に紙幣が突入したときに中央ローラ4と共に中央アーム6a、6b、そして側部ローラ7、8と共に側部アーム11、12が瞬間的に変位し、その慣性でバウンドするのを防止してテープが貼られていない紙幣を損券と誤判断するのを防止できる。
【0031】
以上説明したように、本実施例では、上記実施例1と同様の効果に加えて、基準ローラと、中央ローラおよび側部ローラとに紙幣の厚みよりも狭い間隙を設けたことにより、基準ローラと、中央ローラおよび側部ローラとの間に紙幣が突入したときに中央ローラや側部ローラと共に中央アームや側部アームがバウンドするのを防止し、更に精度の高い紙幣の厚み検出を行うことができる。
【0032】
なお、上記各実施例においては、金融機関の自動取引装置で扱う紙幣の厚みを検出する場合を例に説明したが、印刷装置やOCR(Optical Charactar Reader)等で利用する紙葉類判定装置の紙葉類の厚み検出に用いても上記と同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】実施例1の紙葉類判定装置を示す正面図
【図2】実施例1の紙葉類判定装置を示す側面図
【図3】実施例1の紙葉類判定装置を示すブロック図
【図4】折り目にテープが貼られた紙葉類が搬送される様子を上方から見た図
【図5】折り目にテープが貼られた紙葉類が通過するまでの中央アームおよび側部アームの変位を示す出力波形図
【図6】角折れの紙葉類が搬送される様子を上方から見た図
【図7】角折れの紙葉類が通過するまでの中央アームおよび側部アームの変位を示す出力波形図
【図8】実施例2の紙葉類判定装置を上方から見た図
【図9】実施例2の紙葉類判定装置のQ―Q断面線断面図
【符号の説明】
【0034】
1 紙葉類判定装置
2 基準ローラ
3、5、9、10 ベアリング
4 中央ローラ
6a、6b 中央アーム
7、8 側部ローラ
11、12 側部アーム
13 シャフト
14 バネ部材
16a、16b 中央変位検出センサ
17,18 側部変位検出センサ
19 反射透過センサ
20 制御部
21 記憶部
24、32、33 ベルト
26、27 側部プーリ
28 先端部
30 揺動軸
31、34、35 アイドルプーリ
36、37、38 アイドルギア
40 駆動軸
41、42、43 駆動ギア
45 リミッタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準ローラと、
該基準ローラの中央に対向させて紙幣の幅方向の全長の半分よりも長い長さを有する中央ローラを設け、
該中央ローラの両側に、前記基準ローラに対向させて側部ローラを設け、
さらに前記中央ローラの変位を検出する中央変位検出センサを設けたことを特徴とする紙葉類判定装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記基準ローラと前記中央ローラとの間に、紙葉類の厚みよりも狭い間隙を設けたことを特徴とする紙葉類判定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−259822(P2006−259822A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−72637(P2005−72637)
【出願日】平成17年3月15日(2005.3.15)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】