紙葉類搬送装置
【課題】
搬送路上を搬送紙葉の長さを意識せずに、紙葉のくっつきや離れに対応した搬送監視が出来るようにする。
【解決手段】
搬送路上を搬送される紙葉類の搬送を制御する搬送制御装置において、搬送中の紙葉類を検知する第1及び第2のセンサを含む複数のセンサと、紙葉の搬送の開始を起点とする搬送量もしくは実時間の経過を時刻に換算する時刻機構と、紙葉類の通過を監視する監視制御部と、第1のセンサと第2のセンサの間を通過した紙葉類の通過時刻及び紙葉間隔に関する情報を記憶する記憶部とを有する。監視制御部は、記憶部に記憶された情報を用いて、紙葉の搬送方向に対して第1のセンサで間隔の狭い複数枚の紙葉を検出した場合、第2のセンサで1枚目の紙葉を検出した時刻から2枚目の紙葉を正常通過と判断し、第2のセンサで検出した紙葉に2枚目の紙葉通過予定時刻が含まれている場合に2枚目の紙葉も正常通過と判断して、紙葉類の搬送を制御する。
搬送路上を搬送紙葉の長さを意識せずに、紙葉のくっつきや離れに対応した搬送監視が出来るようにする。
【解決手段】
搬送路上を搬送される紙葉類の搬送を制御する搬送制御装置において、搬送中の紙葉類を検知する第1及び第2のセンサを含む複数のセンサと、紙葉の搬送の開始を起点とする搬送量もしくは実時間の経過を時刻に換算する時刻機構と、紙葉類の通過を監視する監視制御部と、第1のセンサと第2のセンサの間を通過した紙葉類の通過時刻及び紙葉間隔に関する情報を記憶する記憶部とを有する。監視制御部は、記憶部に記憶された情報を用いて、紙葉の搬送方向に対して第1のセンサで間隔の狭い複数枚の紙葉を検出した場合、第2のセンサで1枚目の紙葉を検出した時刻から2枚目の紙葉を正常通過と判断し、第2のセンサで検出した紙葉に2枚目の紙葉通過予定時刻が含まれている場合に2枚目の紙葉も正常通過と判断して、紙葉類の搬送を制御する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は紙葉類搬送装置に係り、特に金融機関等で使用される現金自動入出金装置(ATM)における紙幣や単票等の紙葉類の搬送制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ATMの現金自動取引き処理においては、紙幣や単票等の紙葉をスタック場所から円滑に分離して搬送し、目的とする処理を確実に行わせることが必要である。そのために搬送路上にセンサを配置して紙葉の搬送状態を監視し、異常なく紙葉を搬送するように制御している。
【0003】
この種の紙幣搬送装置として、例えば特開平7−237784公報(特許文献1)には、搬送路上に複数の光学センサを配置し、搬送路上を紙葉が正常に搬送されていることを監視し、制御する紙葉類搬送制御装置が開示されている。
【0004】
すなわち、搬送の開始を起点とする搬送路の移動量を示す時刻機構を設け、各センサを通過した紙葉の時刻、紙葉の長さ、次の紙葉との間隔を登録する通過時刻登録エリアに紙葉の情報を登録しておき、2つのセンサ間の監視区間において、第1のセンサで検出した紙葉の情報に対して第2のセンサで検出した紙葉の情報を比較することにより、監視区間内を紙葉が正常に搬送されたか否かを監視している。
【0005】
特に監視区間内で離れていた紙葉が重なった場合、又は重なっていた紙葉が離れた場合について、通過時刻登録エリアに登録している紙葉長さ、紙葉間隔を使用して、第1のセンサで通常長さよりも長い紙葉を検出した場合、重なっていた紙葉が離れる可能性があることに対する補正を行う。また第1のセンサで間隔の狭い2枚の紙葉を検出した場合には、第2のセンサで紙幣が通常の寸法より長ければ、重なって1枚に見える可能性があることに対する補正を行う。このように補正を行うことにより、異常の誤検出による装置のダウンを低減し、稼働率を向上させることができる。
【0006】
【特許文献1】特開平7−237784公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記従来技術によれば、監視区間内で間隔の狭い紙葉が重なった場合や重なっている紙葉が離れた場合、紙葉の長さを使用してセンサで検出した紙葉長さを補正するか否かの判定基準としているため、以下のような問題がある。
【0008】
(1)光学センサにより紙葉先端及び後端を検出して、検出した時刻から紙葉長さを算出しているため、様々な長さの紙葉が搬送される環境においては、補正対象とする紙葉長さの基準値を、搬送される可能性のある最大長さの紙葉を基に決定する必要がある。このため、短い紙葉ほど補正され難くなり、異常の誤検出となり易い。
【0009】
(2)重なっている紙葉の判定は、補正基準値以上であることが条件であるため、完全に重なっているなどで紙葉長さが基準補正値未満の場合、補正対象とならないため、異常の誤検出となる。
【0010】
本発明の目的は、複数のセンサ間で搬送要因等による紙葉のくっつきや離れが発生しても、異常とせずに引き続き紙葉の通過監視ができる紙葉類搬送装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の紙葉類搬送制御装置は、搬送路上を搬送される紙葉類の搬送を制御する搬送制御装置において、搬送路に沿って配設された、搬送中の紙葉類を検知する第1及び第2のセンサを含む複数のセンサと、紙葉の搬送の開始を起点とする搬送量もしくは実時間の経過を時刻に換算する時刻機構と、紙葉類の通過を監視する監視制御部と、時計機構及び監視制御部により第1のセンサと第2のセンサの間を通過した紙葉類の通過時刻及び紙葉間隔に関する情報を記憶する記憶部とを有し、監視制御部は、記憶部に記憶された情報を用いて、紙葉の搬送方向に対して第1のセンサで間隔の狭い複数枚の紙葉を検出した場合、第2のセンサで1枚目の紙葉を検出した時刻から2枚目の紙葉を正常通過と判断し、第2のセンサで検出した紙葉に2枚目の紙葉通過予定時刻が含まれている場合に2枚目の紙葉も正常通過と判断して、紙葉類の搬送を制御するように構成したものである。
また、本発明は、搬送路上を搬送される紙葉類の搬送を制御する搬送制御装置において、搬送路に沿って配設された、搬送中の紙葉類を検知する第1及び第2のセンサを含む複数のセンサと、紙葉の搬送の開始を起点とする搬送量もしくは実時間の経過を時刻に換算する時刻機構と、紙葉類の通過を監視する監視制御部と、時計機構及び監視制御部により第1のセンサと第2のセンサの間を通過した紙葉類の通過時刻及び紙葉間隔に関する情報を記憶する記憶部とを有し、監視制御部は、搬送方向に対して第1のセンサで1枚の紙葉を検出し、第2のセンサで紙幣を検出することができたが、その後第1のセンサで検出していない紙葉を第2のセンサで検出した場合に、第1のセンサで検出した紙葉の後端時刻から第2のセンサで後端が検出される後端通過予定時刻を算出し、後端通過予定時刻から一定搬送量許容するわきだし許可時刻を算出することにより、第2のセンサで検出した2枚目の紙葉の先端時刻がわきだし許可時刻より早ければ、紙葉をわきだし異常とせずにくっついていた紙葉が離れたと判断して紙葉の搬送を制御するように構成したものである。
好ましい例では、紙幣の先端時刻を保持する第1のポインタと、紙幣の長さ、後端時刻、及び紙幣間隔を保持する第2のポインタと、記憶部内に格納された紙幣情報の監視位置を示す処理ポインタを使用して、第1のセンサと第2のセンサ間を搬送される紙幣を監視する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、多様な長さの紙葉が搬送される環境においても、複数のセンサ間で搬送要因等による紙葉のくっつき、離れが発生しても、これを異常とせずに引き続き紙葉の搬送を制御し、その通過監視を行うことができる。これにより紙葉が搬送されているにも拘わらず、誤って装置をダウンさせることが防止でき、装置の稼働率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施例について詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施例による紙幣搬送装置の概略図である。この紙幣搬送装置はATMに搭載されており、紙幣の入出金時や紙幣の補充時等にその搬送の監視及び制御を行う。
【0014】
図1において、1は装置内の各部へ紙幣を搬送する搬送路、2は紙幣の金種、真偽を鑑別する鑑別部、3、4、5は紙幣を分離又は収納する紙幣の収納ボックス、6はリジェクト紙幣を収納するためのリジェクト庫、7は紙幣の分離及び収納するための着脱可能なカセット、8は紙幣を巻き取って一時的に保管する一時保管庫、9は利用者に対して紙幣の受け渡しを行う入出金部、21〜27は紙幣の搬送方向を切り替えるゲート、31〜41は紙幣の通過を検出するセンサである。
【0015】
図2は紙幣搬送装置の制御部のブロック図である。
図2において、201は紙幣搬送装置を搭載するATMなどの上位装置である。主制御部202は紙幣搬送装置の各部を制御するための制御部であり、各制御部に対してスケジューリング制御を行なう共に、上位装置201から指示された動作を管理制御する。回線制御部203は上位装置201と主制御部202間の情報の送受信を行う。搬送モータ制御部204は搬送路1を駆動する搬送モータ(図示せず)に接続され、搬送モータの駆動制御を行うと共に、搬送モータの回転量(即ち紙葉の移動量に比例する)をカウントして、記憶部の時刻エリア205に記憶する。
【0016】
センサ制御部206は、搬送路1上のセンサ31〜41の制御を行う。具体的には、各センサから得られる検知信号をデジタル信号に変換し、センサ毎にその検知情報を主制御部202へ送信する。搬送監視制御部207は、主制御部202の指示により、センサ制御部206を介して得られる搬送路1上のセンサ31〜41からの検出信号を処理し、搬送される紙幣の監視を行う。搬送監視制御部207は、検出した紙幣の情報を、記憶部の搬送監視情報エリア208に記憶すると共に、搬送監視情報エリア208に記憶された情報を基に紙幣の通過監視を行う。
【0017】
図3は搬送監視情報エリア208に格納される情報と紙幣の搬送の関係を示す図である。
図3において、搬送路1の2つの第1センサ302と第2センサ303は、例えば紙幣搬送装置(図1)の鑑別部2の両側に配置されたセンサ33、センサ34に該当し、搬送監視制御部207は、2つのセンサ間(監視区間と言う)を紙幣が正常に搬送されるかを監視する。
【0018】
紙幣情報登録エリア310は、第1センサ302で検出した紙幣情報を格納するエリアであり、格納ポインタ0(312)を使用して先端時刻を格納し、格納ポインタ1(311)を使用して紙幣長さ、後端時刻、紙幣間隔を格納する。ここで、ポインタは先頭からの紙幣登録位置を格納している。また、紙幣情報登録エリア310は搬送監視情報エリア208(図2)内に形成されると考えてよい。
【0019】
処理ポインタ313は、紙幣情報登録エリア310内の監視紙幣情報位置を指し、第2センサ303で次に検出すべき紙幣情報位置を指している。格納ポインタ0(312)と処理ポインタ313は紙幣情報登録エリアの同じ位置を指している場合は、第1センサ302と第2センサ303の間に監視する紙幣が無い状態であり、搬送開始時はこの状態となっている。
【0020】
図3に示すように、初期状態(第1センサ−第2センサ間に紙幣が無い場合)では、処理ポインタ=格納ポインタ0となっている。この状態から第1センサで検出した枚数分格納ポインタ0を更新し、第2センサで検出した枚数分処理ポインタを更新する。このため区間内に紙幣がある場合、処理ポインタ≠格納ポインタ0となり、処理ポインタの示す紙幣は監視中となる。
【0021】
わきだし許可時刻エリア314は、第2センサ303で紙幣を検出した時に、紙幣情報登録エリア310に該当する紙幣の情報が登録されていなくてもわきだし異常としない範囲の時刻を格納するエリアである。前幣間隔登録エリア315は、処理ポインタ313により監視している紙幣の1つ前の紙幣との紙幣間隔を登録するエリアである。ショートフィードフラグ316は、第1センサで登録した紙幣情報に対して、第2センサで監視時に紙幣間隔の狭い紙幣を検出したことを示すフラグである。予定到着時刻エリアは、第1センサで検出した紙幣が第2センサで検出される予定時刻を登録するエリアである。
【0022】
次に、図4、図5、図9を参照して、搬送監視制御部207が搬送監視情報エリア208、時刻エリア205を使用した基本的な搬送監視手順について説明する。
図4は第1センサで検出した紙幣情報の登録手順を示す図である。また、図9は、紙幣の搬送監視制御部207によるの制御フロ−チャ−トである。
【0023】
搬送監視制御部207は、第1センサと第2センサの区間内の紙幣搬送を監視する時、第1センサで検出した紙幣情報を紙幣情報登録エリア310に登録する。まず第1センサでA紙幣先端を検出すると(ステップ901、図4(1))、搬送監視制御部207は格納ポインタ0位置の先端時刻に時刻エリア205を参照し、搬送開始から現在までの搬送量である「100」を登録すると共に、格納ポインタ0を+1更新する(ステップ905、906)。次に第1センサでA紙幣の後端を検出すると(ステップ907、図4(2))、現在の時刻176を格納ポインタ1位置の後端時刻欄に「176」を登録すると共に、後端時刻から先端時刻を減算した結果「76」を紙幣長さ欄に登録する(ステップ908)。
【0024】
その後、A紙幣はそのまま搬送する。その後、第1センサで次のB紙幣の先端を検出すると(ステップ901、図4(3))、現在の時刻「256」から格納ポインタ1位置のA紙幣の後端時刻「176」を減算した結果「80」を格納ポインタ1位置の紙幣間隔欄に登録する。併せて格納ポインタ1を+1更新する(ステップ902、903、904)。また、B紙幣に関して、格納ポインタ0位置の先端時刻欄にB紙幣の先端時刻として現在の時刻「256」を登録する。併せて格納ポインタ0を+1更新する(ステップ905、906)。以後、このような手順により第1センサで検出した紙幣の情報を紙幣情報登録エリア310に登録する。
【0025】
図5は第2センサによる紙幣情報の監視手順を示す図である。
搬送監視制御部207は、第1センサで検出した紙幣情報が登録されている紙幣情報登録エリア310を基に、格納ポインタ0(312)と処理ポインタ313を使用して、第1センサ302と第2センサ303の区間内に入った紙幣の監視を行う。
【0026】
区間内に監視中の紙幣がある場合、処理ポインタ≠格納ポインタ0となり、現在監視中の紙幣情報を処理ポインタ313が指している。A,B紙幣が区間内搬送中の場合(図5(1))、処理ポインタ313はA紙幣が第1センサで検出された時の情報を指している。A紙幣が正常に搬送された場合、第1センサで紙幣先端が検出された時刻から区間距離分(例えば「400」とする)搬送した時に第2センサで検出される。
【0027】
これに対して、A紙幣が搬送中にスリップ又は搬送路上でのひっかかりなどの要因で搬送路上の当該区間内に障害が発生したと判定する搬送量をジャムチェック値(例えば区間距離「400」に対して「600」を設定)として設定し、ジャムチェック値以上搬送しても監視している紙幣を検出できない場合に、ジャム異常とする(ステップ960、961、962)。また、処理ポインタの紙幣を区間距離分搬送していないのに第2センサで検出した場合に、A紙幣以外の紙幣を検出したことを判定するためにわきだしチェック値(スキューなどを考慮して例えば「区間距離−10」の「390」)を設定し、第2センサで検出した紙幣の搬送量がわきだしチェック値以下の場合、又は区間内に紙幣が登録されてないのに第2センサで紙幣を検出した場合にわきだし異常とする(ステップ920、921、922、929)。
【0028】
第2センサでA紙幣先端を検出すると(ステップ920、図5(2))、わきだしチェックを行い(ステップ921、922)、正常であれば処理ポインタ313を+1更新する(ステップ925)。この時点で監視中の紙幣はA紙幣からB紙幣になり、B紙幣のジャム監視が開始される。紙幣を引き続き搬送して次に第2センサでB紙幣先端を検出(503)すると、A紙幣の検出時と同様にわきだしチェックを行い、処理ポインタを+1更新する。この時点で処理ポインタ=格納ポインタ0となり、第1センサ302と第2センサ303区間には監視中の紙幣が無い状態となる。
【0029】
次に、図6を参照して、異常検出の場合の動作について説明する。図6は、異常誤検出パターンを示す図であり、異常誤検出パターンとして、(1)ジャム異常誤検出、及び(2)わきだし異常誤検出を示す。
ジャム異常誤検出については(図(1)、第1センサ302でA,B2枚の紙幣を検出しているのに対して、第2センサ303ではA,B紙幣がくっついたために紙幣先端は1枚分としか検出されない。このため処理ポインタ313は+1更新のみとなる。実際には区間内を紙幣は通過しているのだが、処理ポインタ≠格納ポインタ0のためA,B紙幣が区間通過後も処理ポインタの指すB紙幣を監視し続けることになり、ジャムチェック値を超えた所でジャム異常となる。
【0030】
わきだし異常誤検出については(図6(2))、第1センサ302で重なっているA,B2枚の紙幣を1枚として紙幣情報登録エリアに登録している。しかし、第2センサ303ではA,B紙幣が離れたために紙幣先端が2枚分となり、B紙幣先端を検出した時には既に、処理ポインタ=格納ポインタ0になっており、区間内に紙幣は無い状態であるはずのため、区間内に紙幣がわきだしたと判断し、わきだし異常となる。
【0031】
ここで、わきだし異常の検出目的については、図3、図6には記載してないが、例えば図1のセンサ31からセンサ33の区間でのチェックなどでは区間内に入出金口9からの搬送路が合流しているため、意図していないタイミングで紙幣が区間内に入り込むことが考えられ、他搬送路からの侵入を検出する、又は前回取引で残留していた紙幣が、今回搬送されたことを検出することにある。
【0032】
次に、図7、図9〜12を使用して図6のジャム異常誤検出の対策となる処理を説明する。
第1センサで2枚の紙幣が第2センサでくっつくことに関して、2枚の紙幣の間隔が狭いほどくっつく可能性が高いと考えられるため、例えば通常の紙幣間隔を「80」とした場合に紙幣間隔が半分以下の「35」以下の場合をショートフィード紙幣としてジャム異常にならないよう補正する。
【0033】
図7において、(1)は、第1センサ検出時にショートフィード紙幣が登録されていることを示す。このA,B2枚の紙幣は第2センサでは、(2)のようにA,B2枚とも検出される予定であり、第1センサでB紙幣先端を検出した時刻をT0とすると、第2センサでB紙幣先端を検出する予定時刻はT1’=T1+区間距離となる。
【0034】
これに対して、実際には(3)のようにA紙幣はスリップしてB紙幣とくっついたため、第2センサでB紙幣の先端は検出されないが、第2センサでくっついたA,B2枚の紙幣の後端検出時刻T0よりもB紙幣の先端検出予定時刻であるT1’が早ければB紙幣はくっついたものとして処理済、つまり区間内を通過したものとして処理することにより処理ポインタ=格納ポインタとして、ジャム異常誤検出とならないようにする。制御フローチャートでは、第2センサで紙幣先端を検出した時に(ステップ920)、A紙幣は正常にわきだしチェックを終了し(ステップ921、922)、次のB紙幣との紙幣間隔を前紙幣間隔登録エリア315に登録する(ステップ923)と共に処理ポインタを+1更新する(ステップ925)。
【0035】
ここで、まだ区間内に紙幣があるかを判定し(ステップ926)、紙幣があれば、前紙幣間隔登録エリア315を参照してショートフィードかどうかを判定する(ステップ927)。ショートフィード値以下であれば、処理ポインタ313の示す紙幣先端時刻に、第1センサと第2センサの区間距離を加算した値を予定到着時刻エリア317に格納し(ステップ930)、ショートフィードフラグ316をONする(ステップ931)。
【0036】
さらに搬送して、第2センサ紙幣有りの状態において(ステップ950)、ショートフィードフラグ316がONであれば(ステップ951)、現在の時刻205と予定通過時刻317を比較して(ステップ952)、現在の時刻の方が大きくなった場合、処理ポインタ313の指す紙幣は第2センサで検出されたものとして、処理ポインタ313を+1更新すると共にショートフィードフラグ316をOFFする(ステップ953、954)。ステップ952で予定通過時刻317を越える前に紙幣後端を検出した場合は、ショートフィードフラグ316をOFFする。これによりショートフィード間隔の紙幣がくっついた場合にも異常とせずに、引き続き紙幣の通過監視を行うことができる。但し、この補正処理によりB紙幣を第2センサで検出済とするために、補正対象となったB紙幣が区間内でジャムとなった場合、異常は検出されない(図7(4))。
【0037】
次に、図6(2)に示すわきだし異常誤検出の対策となる処理について、図8、図9〜12を使用して説明する。
第1センサで、重なっている2枚のAB紙幣が第2センサで離れて2枚の紙幣を検出した場合の補正処理として、第2センサで紙幣検出後の一定搬送量の間はわきだし紙幣を検出しても、前紙幣から離れた紙幣と判断し、わきだし異常としないようにする。
【0038】
図8(1)のように、第1センサで紙幣検出時の後端時刻T0を元に第2センサ検出予定(図8(2))の紙幣後端予定通過時刻T0’を算出し、T0’にわきだし許容搬送量(通常紙幣間隔以下の値で、通常間隔80mmとすると例えば30mm)のわきだし許容搬送量を加算した時刻をわきだし許可時刻Twとして、わきだし許可時刻Twまでは、わきだし紙幣を検出してもわきだし異常とせずに無視する。
【0039】
制御フローチャートでは、第2センサで紙幣先端を検出した時に(ステップ920)、処理ポインタ313の示す紙幣後端時刻に区間距離を加算することで、紙幣後端が第2センサを通過する予定時刻を算出し、これにわきだし許容搬送量を加算したものをわきだし許可時刻エリア314に登録する(ステップ924)。併せて処理ポインタを+1更新する。803でB紙幣先端を検出した場合(ステップ920)、処理ポインタ=格納ポインタ0の状態なのでわきだし紙幣となるが(ステップ921)、B紙幣先端通過時刻T1がわきだし許可時刻Twより早い場合はわきだし異常としない(ステップ928)。
【0040】
これにより、重なっていた紙幣が離れた場合にも異常とせずに、引き続き紙幣の通過監視を行うことができる。但し、B紙幣がわきだし許可時刻Tw以上になるほど極端に遅れた場合には、わきだし異常を検出する(図8(4))(ステップ928、929)。
【0041】
上述したような異常誤検出に対する処理により、搬送される紙幣の本来の長さを意識すること無く、搬送中の紙幣のくっつき及び離れに対する補正を行うことができる。
【0042】
なお、上記実施例は本発明の一実施例であり、本発明はこれに限定されず、上記以外にも種々変形し、或いは応用して実施し得る。例えば、上記実施例ではATMの紙幣搬送制御に適用した例について説明したが、本発明はこれ以外にも、他の一般的な紙葉類の搬送制御に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の一実施例による紙幣搬送装置の概略図。
【図2】図1の紙幣搬送装置における制御ブロック図。
【図3】紙幣搬送装置における紙幣の搬送と搬送監視情報エリア208の関係の説明に供する図。
【図4】紙幣情報登録手順の説明に供する図。
【図5】紙幣情報監視手順の説明に供する図。
【図6】異常誤検出パターンの説明に供する図。
【図7】ジャム異常誤検出に対する補正の説明に供する図。
【図8】わきだし異常誤検出に対する補正の説明の供する図。
【図9】一実施例における紙幣監視の制御フロ−チャ−ト図。
【図10】一実施例における紙幣監視の制御フロ−チャ−ト図。
【図11】一実施例における紙幣監視の制御フロ−チャ−ト図。
【図12】一実施例における紙幣監視の制御フロ−チャ−ト図。
【符号の説明】
【0044】
1…搬送路、 2…鑑別部、 3、4、5…紙幣ボックス、
6…リジェクト庫、 7…カセット、 8…一時保管庫、
9…入出金部、 21〜27…ゲート、 31〜41…センサ
201…上位装置、 202…主制御部、 203…回線制御部、204…搬送モータ制御部、 205…時刻エリア、
206…センサ制御部、 207…搬送監視制御部、 208…搬送監視情報エリア。
【技術分野】
【0001】
本発明は紙葉類搬送装置に係り、特に金融機関等で使用される現金自動入出金装置(ATM)における紙幣や単票等の紙葉類の搬送制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ATMの現金自動取引き処理においては、紙幣や単票等の紙葉をスタック場所から円滑に分離して搬送し、目的とする処理を確実に行わせることが必要である。そのために搬送路上にセンサを配置して紙葉の搬送状態を監視し、異常なく紙葉を搬送するように制御している。
【0003】
この種の紙幣搬送装置として、例えば特開平7−237784公報(特許文献1)には、搬送路上に複数の光学センサを配置し、搬送路上を紙葉が正常に搬送されていることを監視し、制御する紙葉類搬送制御装置が開示されている。
【0004】
すなわち、搬送の開始を起点とする搬送路の移動量を示す時刻機構を設け、各センサを通過した紙葉の時刻、紙葉の長さ、次の紙葉との間隔を登録する通過時刻登録エリアに紙葉の情報を登録しておき、2つのセンサ間の監視区間において、第1のセンサで検出した紙葉の情報に対して第2のセンサで検出した紙葉の情報を比較することにより、監視区間内を紙葉が正常に搬送されたか否かを監視している。
【0005】
特に監視区間内で離れていた紙葉が重なった場合、又は重なっていた紙葉が離れた場合について、通過時刻登録エリアに登録している紙葉長さ、紙葉間隔を使用して、第1のセンサで通常長さよりも長い紙葉を検出した場合、重なっていた紙葉が離れる可能性があることに対する補正を行う。また第1のセンサで間隔の狭い2枚の紙葉を検出した場合には、第2のセンサで紙幣が通常の寸法より長ければ、重なって1枚に見える可能性があることに対する補正を行う。このように補正を行うことにより、異常の誤検出による装置のダウンを低減し、稼働率を向上させることができる。
【0006】
【特許文献1】特開平7−237784公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記従来技術によれば、監視区間内で間隔の狭い紙葉が重なった場合や重なっている紙葉が離れた場合、紙葉の長さを使用してセンサで検出した紙葉長さを補正するか否かの判定基準としているため、以下のような問題がある。
【0008】
(1)光学センサにより紙葉先端及び後端を検出して、検出した時刻から紙葉長さを算出しているため、様々な長さの紙葉が搬送される環境においては、補正対象とする紙葉長さの基準値を、搬送される可能性のある最大長さの紙葉を基に決定する必要がある。このため、短い紙葉ほど補正され難くなり、異常の誤検出となり易い。
【0009】
(2)重なっている紙葉の判定は、補正基準値以上であることが条件であるため、完全に重なっているなどで紙葉長さが基準補正値未満の場合、補正対象とならないため、異常の誤検出となる。
【0010】
本発明の目的は、複数のセンサ間で搬送要因等による紙葉のくっつきや離れが発生しても、異常とせずに引き続き紙葉の通過監視ができる紙葉類搬送装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の紙葉類搬送制御装置は、搬送路上を搬送される紙葉類の搬送を制御する搬送制御装置において、搬送路に沿って配設された、搬送中の紙葉類を検知する第1及び第2のセンサを含む複数のセンサと、紙葉の搬送の開始を起点とする搬送量もしくは実時間の経過を時刻に換算する時刻機構と、紙葉類の通過を監視する監視制御部と、時計機構及び監視制御部により第1のセンサと第2のセンサの間を通過した紙葉類の通過時刻及び紙葉間隔に関する情報を記憶する記憶部とを有し、監視制御部は、記憶部に記憶された情報を用いて、紙葉の搬送方向に対して第1のセンサで間隔の狭い複数枚の紙葉を検出した場合、第2のセンサで1枚目の紙葉を検出した時刻から2枚目の紙葉を正常通過と判断し、第2のセンサで検出した紙葉に2枚目の紙葉通過予定時刻が含まれている場合に2枚目の紙葉も正常通過と判断して、紙葉類の搬送を制御するように構成したものである。
また、本発明は、搬送路上を搬送される紙葉類の搬送を制御する搬送制御装置において、搬送路に沿って配設された、搬送中の紙葉類を検知する第1及び第2のセンサを含む複数のセンサと、紙葉の搬送の開始を起点とする搬送量もしくは実時間の経過を時刻に換算する時刻機構と、紙葉類の通過を監視する監視制御部と、時計機構及び監視制御部により第1のセンサと第2のセンサの間を通過した紙葉類の通過時刻及び紙葉間隔に関する情報を記憶する記憶部とを有し、監視制御部は、搬送方向に対して第1のセンサで1枚の紙葉を検出し、第2のセンサで紙幣を検出することができたが、その後第1のセンサで検出していない紙葉を第2のセンサで検出した場合に、第1のセンサで検出した紙葉の後端時刻から第2のセンサで後端が検出される後端通過予定時刻を算出し、後端通過予定時刻から一定搬送量許容するわきだし許可時刻を算出することにより、第2のセンサで検出した2枚目の紙葉の先端時刻がわきだし許可時刻より早ければ、紙葉をわきだし異常とせずにくっついていた紙葉が離れたと判断して紙葉の搬送を制御するように構成したものである。
好ましい例では、紙幣の先端時刻を保持する第1のポインタと、紙幣の長さ、後端時刻、及び紙幣間隔を保持する第2のポインタと、記憶部内に格納された紙幣情報の監視位置を示す処理ポインタを使用して、第1のセンサと第2のセンサ間を搬送される紙幣を監視する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、多様な長さの紙葉が搬送される環境においても、複数のセンサ間で搬送要因等による紙葉のくっつき、離れが発生しても、これを異常とせずに引き続き紙葉の搬送を制御し、その通過監視を行うことができる。これにより紙葉が搬送されているにも拘わらず、誤って装置をダウンさせることが防止でき、装置の稼働率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施例について詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施例による紙幣搬送装置の概略図である。この紙幣搬送装置はATMに搭載されており、紙幣の入出金時や紙幣の補充時等にその搬送の監視及び制御を行う。
【0014】
図1において、1は装置内の各部へ紙幣を搬送する搬送路、2は紙幣の金種、真偽を鑑別する鑑別部、3、4、5は紙幣を分離又は収納する紙幣の収納ボックス、6はリジェクト紙幣を収納するためのリジェクト庫、7は紙幣の分離及び収納するための着脱可能なカセット、8は紙幣を巻き取って一時的に保管する一時保管庫、9は利用者に対して紙幣の受け渡しを行う入出金部、21〜27は紙幣の搬送方向を切り替えるゲート、31〜41は紙幣の通過を検出するセンサである。
【0015】
図2は紙幣搬送装置の制御部のブロック図である。
図2において、201は紙幣搬送装置を搭載するATMなどの上位装置である。主制御部202は紙幣搬送装置の各部を制御するための制御部であり、各制御部に対してスケジューリング制御を行なう共に、上位装置201から指示された動作を管理制御する。回線制御部203は上位装置201と主制御部202間の情報の送受信を行う。搬送モータ制御部204は搬送路1を駆動する搬送モータ(図示せず)に接続され、搬送モータの駆動制御を行うと共に、搬送モータの回転量(即ち紙葉の移動量に比例する)をカウントして、記憶部の時刻エリア205に記憶する。
【0016】
センサ制御部206は、搬送路1上のセンサ31〜41の制御を行う。具体的には、各センサから得られる検知信号をデジタル信号に変換し、センサ毎にその検知情報を主制御部202へ送信する。搬送監視制御部207は、主制御部202の指示により、センサ制御部206を介して得られる搬送路1上のセンサ31〜41からの検出信号を処理し、搬送される紙幣の監視を行う。搬送監視制御部207は、検出した紙幣の情報を、記憶部の搬送監視情報エリア208に記憶すると共に、搬送監視情報エリア208に記憶された情報を基に紙幣の通過監視を行う。
【0017】
図3は搬送監視情報エリア208に格納される情報と紙幣の搬送の関係を示す図である。
図3において、搬送路1の2つの第1センサ302と第2センサ303は、例えば紙幣搬送装置(図1)の鑑別部2の両側に配置されたセンサ33、センサ34に該当し、搬送監視制御部207は、2つのセンサ間(監視区間と言う)を紙幣が正常に搬送されるかを監視する。
【0018】
紙幣情報登録エリア310は、第1センサ302で検出した紙幣情報を格納するエリアであり、格納ポインタ0(312)を使用して先端時刻を格納し、格納ポインタ1(311)を使用して紙幣長さ、後端時刻、紙幣間隔を格納する。ここで、ポインタは先頭からの紙幣登録位置を格納している。また、紙幣情報登録エリア310は搬送監視情報エリア208(図2)内に形成されると考えてよい。
【0019】
処理ポインタ313は、紙幣情報登録エリア310内の監視紙幣情報位置を指し、第2センサ303で次に検出すべき紙幣情報位置を指している。格納ポインタ0(312)と処理ポインタ313は紙幣情報登録エリアの同じ位置を指している場合は、第1センサ302と第2センサ303の間に監視する紙幣が無い状態であり、搬送開始時はこの状態となっている。
【0020】
図3に示すように、初期状態(第1センサ−第2センサ間に紙幣が無い場合)では、処理ポインタ=格納ポインタ0となっている。この状態から第1センサで検出した枚数分格納ポインタ0を更新し、第2センサで検出した枚数分処理ポインタを更新する。このため区間内に紙幣がある場合、処理ポインタ≠格納ポインタ0となり、処理ポインタの示す紙幣は監視中となる。
【0021】
わきだし許可時刻エリア314は、第2センサ303で紙幣を検出した時に、紙幣情報登録エリア310に該当する紙幣の情報が登録されていなくてもわきだし異常としない範囲の時刻を格納するエリアである。前幣間隔登録エリア315は、処理ポインタ313により監視している紙幣の1つ前の紙幣との紙幣間隔を登録するエリアである。ショートフィードフラグ316は、第1センサで登録した紙幣情報に対して、第2センサで監視時に紙幣間隔の狭い紙幣を検出したことを示すフラグである。予定到着時刻エリアは、第1センサで検出した紙幣が第2センサで検出される予定時刻を登録するエリアである。
【0022】
次に、図4、図5、図9を参照して、搬送監視制御部207が搬送監視情報エリア208、時刻エリア205を使用した基本的な搬送監視手順について説明する。
図4は第1センサで検出した紙幣情報の登録手順を示す図である。また、図9は、紙幣の搬送監視制御部207によるの制御フロ−チャ−トである。
【0023】
搬送監視制御部207は、第1センサと第2センサの区間内の紙幣搬送を監視する時、第1センサで検出した紙幣情報を紙幣情報登録エリア310に登録する。まず第1センサでA紙幣先端を検出すると(ステップ901、図4(1))、搬送監視制御部207は格納ポインタ0位置の先端時刻に時刻エリア205を参照し、搬送開始から現在までの搬送量である「100」を登録すると共に、格納ポインタ0を+1更新する(ステップ905、906)。次に第1センサでA紙幣の後端を検出すると(ステップ907、図4(2))、現在の時刻176を格納ポインタ1位置の後端時刻欄に「176」を登録すると共に、後端時刻から先端時刻を減算した結果「76」を紙幣長さ欄に登録する(ステップ908)。
【0024】
その後、A紙幣はそのまま搬送する。その後、第1センサで次のB紙幣の先端を検出すると(ステップ901、図4(3))、現在の時刻「256」から格納ポインタ1位置のA紙幣の後端時刻「176」を減算した結果「80」を格納ポインタ1位置の紙幣間隔欄に登録する。併せて格納ポインタ1を+1更新する(ステップ902、903、904)。また、B紙幣に関して、格納ポインタ0位置の先端時刻欄にB紙幣の先端時刻として現在の時刻「256」を登録する。併せて格納ポインタ0を+1更新する(ステップ905、906)。以後、このような手順により第1センサで検出した紙幣の情報を紙幣情報登録エリア310に登録する。
【0025】
図5は第2センサによる紙幣情報の監視手順を示す図である。
搬送監視制御部207は、第1センサで検出した紙幣情報が登録されている紙幣情報登録エリア310を基に、格納ポインタ0(312)と処理ポインタ313を使用して、第1センサ302と第2センサ303の区間内に入った紙幣の監視を行う。
【0026】
区間内に監視中の紙幣がある場合、処理ポインタ≠格納ポインタ0となり、現在監視中の紙幣情報を処理ポインタ313が指している。A,B紙幣が区間内搬送中の場合(図5(1))、処理ポインタ313はA紙幣が第1センサで検出された時の情報を指している。A紙幣が正常に搬送された場合、第1センサで紙幣先端が検出された時刻から区間距離分(例えば「400」とする)搬送した時に第2センサで検出される。
【0027】
これに対して、A紙幣が搬送中にスリップ又は搬送路上でのひっかかりなどの要因で搬送路上の当該区間内に障害が発生したと判定する搬送量をジャムチェック値(例えば区間距離「400」に対して「600」を設定)として設定し、ジャムチェック値以上搬送しても監視している紙幣を検出できない場合に、ジャム異常とする(ステップ960、961、962)。また、処理ポインタの紙幣を区間距離分搬送していないのに第2センサで検出した場合に、A紙幣以外の紙幣を検出したことを判定するためにわきだしチェック値(スキューなどを考慮して例えば「区間距離−10」の「390」)を設定し、第2センサで検出した紙幣の搬送量がわきだしチェック値以下の場合、又は区間内に紙幣が登録されてないのに第2センサで紙幣を検出した場合にわきだし異常とする(ステップ920、921、922、929)。
【0028】
第2センサでA紙幣先端を検出すると(ステップ920、図5(2))、わきだしチェックを行い(ステップ921、922)、正常であれば処理ポインタ313を+1更新する(ステップ925)。この時点で監視中の紙幣はA紙幣からB紙幣になり、B紙幣のジャム監視が開始される。紙幣を引き続き搬送して次に第2センサでB紙幣先端を検出(503)すると、A紙幣の検出時と同様にわきだしチェックを行い、処理ポインタを+1更新する。この時点で処理ポインタ=格納ポインタ0となり、第1センサ302と第2センサ303区間には監視中の紙幣が無い状態となる。
【0029】
次に、図6を参照して、異常検出の場合の動作について説明する。図6は、異常誤検出パターンを示す図であり、異常誤検出パターンとして、(1)ジャム異常誤検出、及び(2)わきだし異常誤検出を示す。
ジャム異常誤検出については(図(1)、第1センサ302でA,B2枚の紙幣を検出しているのに対して、第2センサ303ではA,B紙幣がくっついたために紙幣先端は1枚分としか検出されない。このため処理ポインタ313は+1更新のみとなる。実際には区間内を紙幣は通過しているのだが、処理ポインタ≠格納ポインタ0のためA,B紙幣が区間通過後も処理ポインタの指すB紙幣を監視し続けることになり、ジャムチェック値を超えた所でジャム異常となる。
【0030】
わきだし異常誤検出については(図6(2))、第1センサ302で重なっているA,B2枚の紙幣を1枚として紙幣情報登録エリアに登録している。しかし、第2センサ303ではA,B紙幣が離れたために紙幣先端が2枚分となり、B紙幣先端を検出した時には既に、処理ポインタ=格納ポインタ0になっており、区間内に紙幣は無い状態であるはずのため、区間内に紙幣がわきだしたと判断し、わきだし異常となる。
【0031】
ここで、わきだし異常の検出目的については、図3、図6には記載してないが、例えば図1のセンサ31からセンサ33の区間でのチェックなどでは区間内に入出金口9からの搬送路が合流しているため、意図していないタイミングで紙幣が区間内に入り込むことが考えられ、他搬送路からの侵入を検出する、又は前回取引で残留していた紙幣が、今回搬送されたことを検出することにある。
【0032】
次に、図7、図9〜12を使用して図6のジャム異常誤検出の対策となる処理を説明する。
第1センサで2枚の紙幣が第2センサでくっつくことに関して、2枚の紙幣の間隔が狭いほどくっつく可能性が高いと考えられるため、例えば通常の紙幣間隔を「80」とした場合に紙幣間隔が半分以下の「35」以下の場合をショートフィード紙幣としてジャム異常にならないよう補正する。
【0033】
図7において、(1)は、第1センサ検出時にショートフィード紙幣が登録されていることを示す。このA,B2枚の紙幣は第2センサでは、(2)のようにA,B2枚とも検出される予定であり、第1センサでB紙幣先端を検出した時刻をT0とすると、第2センサでB紙幣先端を検出する予定時刻はT1’=T1+区間距離となる。
【0034】
これに対して、実際には(3)のようにA紙幣はスリップしてB紙幣とくっついたため、第2センサでB紙幣の先端は検出されないが、第2センサでくっついたA,B2枚の紙幣の後端検出時刻T0よりもB紙幣の先端検出予定時刻であるT1’が早ければB紙幣はくっついたものとして処理済、つまり区間内を通過したものとして処理することにより処理ポインタ=格納ポインタとして、ジャム異常誤検出とならないようにする。制御フローチャートでは、第2センサで紙幣先端を検出した時に(ステップ920)、A紙幣は正常にわきだしチェックを終了し(ステップ921、922)、次のB紙幣との紙幣間隔を前紙幣間隔登録エリア315に登録する(ステップ923)と共に処理ポインタを+1更新する(ステップ925)。
【0035】
ここで、まだ区間内に紙幣があるかを判定し(ステップ926)、紙幣があれば、前紙幣間隔登録エリア315を参照してショートフィードかどうかを判定する(ステップ927)。ショートフィード値以下であれば、処理ポインタ313の示す紙幣先端時刻に、第1センサと第2センサの区間距離を加算した値を予定到着時刻エリア317に格納し(ステップ930)、ショートフィードフラグ316をONする(ステップ931)。
【0036】
さらに搬送して、第2センサ紙幣有りの状態において(ステップ950)、ショートフィードフラグ316がONであれば(ステップ951)、現在の時刻205と予定通過時刻317を比較して(ステップ952)、現在の時刻の方が大きくなった場合、処理ポインタ313の指す紙幣は第2センサで検出されたものとして、処理ポインタ313を+1更新すると共にショートフィードフラグ316をOFFする(ステップ953、954)。ステップ952で予定通過時刻317を越える前に紙幣後端を検出した場合は、ショートフィードフラグ316をOFFする。これによりショートフィード間隔の紙幣がくっついた場合にも異常とせずに、引き続き紙幣の通過監視を行うことができる。但し、この補正処理によりB紙幣を第2センサで検出済とするために、補正対象となったB紙幣が区間内でジャムとなった場合、異常は検出されない(図7(4))。
【0037】
次に、図6(2)に示すわきだし異常誤検出の対策となる処理について、図8、図9〜12を使用して説明する。
第1センサで、重なっている2枚のAB紙幣が第2センサで離れて2枚の紙幣を検出した場合の補正処理として、第2センサで紙幣検出後の一定搬送量の間はわきだし紙幣を検出しても、前紙幣から離れた紙幣と判断し、わきだし異常としないようにする。
【0038】
図8(1)のように、第1センサで紙幣検出時の後端時刻T0を元に第2センサ検出予定(図8(2))の紙幣後端予定通過時刻T0’を算出し、T0’にわきだし許容搬送量(通常紙幣間隔以下の値で、通常間隔80mmとすると例えば30mm)のわきだし許容搬送量を加算した時刻をわきだし許可時刻Twとして、わきだし許可時刻Twまでは、わきだし紙幣を検出してもわきだし異常とせずに無視する。
【0039】
制御フローチャートでは、第2センサで紙幣先端を検出した時に(ステップ920)、処理ポインタ313の示す紙幣後端時刻に区間距離を加算することで、紙幣後端が第2センサを通過する予定時刻を算出し、これにわきだし許容搬送量を加算したものをわきだし許可時刻エリア314に登録する(ステップ924)。併せて処理ポインタを+1更新する。803でB紙幣先端を検出した場合(ステップ920)、処理ポインタ=格納ポインタ0の状態なのでわきだし紙幣となるが(ステップ921)、B紙幣先端通過時刻T1がわきだし許可時刻Twより早い場合はわきだし異常としない(ステップ928)。
【0040】
これにより、重なっていた紙幣が離れた場合にも異常とせずに、引き続き紙幣の通過監視を行うことができる。但し、B紙幣がわきだし許可時刻Tw以上になるほど極端に遅れた場合には、わきだし異常を検出する(図8(4))(ステップ928、929)。
【0041】
上述したような異常誤検出に対する処理により、搬送される紙幣の本来の長さを意識すること無く、搬送中の紙幣のくっつき及び離れに対する補正を行うことができる。
【0042】
なお、上記実施例は本発明の一実施例であり、本発明はこれに限定されず、上記以外にも種々変形し、或いは応用して実施し得る。例えば、上記実施例ではATMの紙幣搬送制御に適用した例について説明したが、本発明はこれ以外にも、他の一般的な紙葉類の搬送制御に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の一実施例による紙幣搬送装置の概略図。
【図2】図1の紙幣搬送装置における制御ブロック図。
【図3】紙幣搬送装置における紙幣の搬送と搬送監視情報エリア208の関係の説明に供する図。
【図4】紙幣情報登録手順の説明に供する図。
【図5】紙幣情報監視手順の説明に供する図。
【図6】異常誤検出パターンの説明に供する図。
【図7】ジャム異常誤検出に対する補正の説明に供する図。
【図8】わきだし異常誤検出に対する補正の説明の供する図。
【図9】一実施例における紙幣監視の制御フロ−チャ−ト図。
【図10】一実施例における紙幣監視の制御フロ−チャ−ト図。
【図11】一実施例における紙幣監視の制御フロ−チャ−ト図。
【図12】一実施例における紙幣監視の制御フロ−チャ−ト図。
【符号の説明】
【0044】
1…搬送路、 2…鑑別部、 3、4、5…紙幣ボックス、
6…リジェクト庫、 7…カセット、 8…一時保管庫、
9…入出金部、 21〜27…ゲート、 31〜41…センサ
201…上位装置、 202…主制御部、 203…回線制御部、204…搬送モータ制御部、 205…時刻エリア、
206…センサ制御部、 207…搬送監視制御部、 208…搬送監視情報エリア。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送路上を搬送される紙葉類の搬送を制御する搬送制御装置において、
該搬送路に沿って配設された、搬送中の紙葉類を検知する第1及び第2のセンサを含む複数のセンサと、紙葉の搬送の開始を起点とする搬送量もしくは実時間の経過を時刻に換算する時刻機構と、紙葉類の通過を監視する監視制御部と、該時計機構及び該監視制御部により該第1のセンサと該第2のセンサの間を通過した紙葉類の通過時刻及び紙葉間隔に関する情報を記憶する記憶部とを有し、
該監視制御部は、該記憶部に記憶された該情報を用いて、紙葉の搬送方向に対して該第1のセンサで間隔の狭い複数枚の紙葉を検出した場合、該第2のセンサで1枚目の紙葉を検出した時刻から2枚目の紙葉を正常通過と判断し、該第2のセンサで検出した紙葉に2枚目の紙葉通過予定時刻が含まれている場合に2枚目の紙葉も正常通過と判断して、該紙葉類の搬送を制御することを特徴とする紙葉類搬送制御装置。
【請求項2】
搬送路上を搬送される紙葉類の搬送を制御する搬送制御装置において、
搬送路に沿って配設された、搬送中の紙葉類を検知する第1及び第2のセンサを含む複数のセンサと、紙葉の搬送の開始を起点とする搬送量もしくは実時間の経過を時刻に換算する時刻機構と、紙葉類の通過を監視する監視制御部と、該時計機構及び該監視制御部により該第1のセンサと該第2のセンサの間を通過した紙葉類の通過時刻及び紙葉間隔に関する情報を記憶する記憶部とを有し、
該監視制御部は、搬送方向に対して該第1のセンサで1枚の紙葉を検出し、該第2のセンサで該紙幣を検出することができたが、その後該第1のセンサで検出していない紙葉を第2のセンサで検出した場合に、該第1のセンサで検出した紙葉の後端時刻から第2のセンサで後端が検出される後端通過予定時刻を算出し、後端通過予定時刻から一定搬送量許容するわきだし許可時刻を算出することにより、該第2のセンサで検出した2枚目の紙葉の先端時刻がわきだし許可時刻より早ければ、該紙葉をわきだし異常とせずにくっついていた紙葉が離れたと判断して紙葉の搬送を制御することを特徴とする紙葉類搬送制御装置。
【請求項3】
紙幣の先端時刻を保持する第1のポインタと、紙幣の長さ、後端時刻、及び紙幣間隔を保持する第2のポインタと、該記憶部内に格納された紙幣情報の監視位置を示す処理ポインタを使用して、該第1のセンサと該第2のセンサ間を搬送される紙幣を監視することを特徴とする請求項1又は2の紙葉類搬送制御装置。
【請求項1】
搬送路上を搬送される紙葉類の搬送を制御する搬送制御装置において、
該搬送路に沿って配設された、搬送中の紙葉類を検知する第1及び第2のセンサを含む複数のセンサと、紙葉の搬送の開始を起点とする搬送量もしくは実時間の経過を時刻に換算する時刻機構と、紙葉類の通過を監視する監視制御部と、該時計機構及び該監視制御部により該第1のセンサと該第2のセンサの間を通過した紙葉類の通過時刻及び紙葉間隔に関する情報を記憶する記憶部とを有し、
該監視制御部は、該記憶部に記憶された該情報を用いて、紙葉の搬送方向に対して該第1のセンサで間隔の狭い複数枚の紙葉を検出した場合、該第2のセンサで1枚目の紙葉を検出した時刻から2枚目の紙葉を正常通過と判断し、該第2のセンサで検出した紙葉に2枚目の紙葉通過予定時刻が含まれている場合に2枚目の紙葉も正常通過と判断して、該紙葉類の搬送を制御することを特徴とする紙葉類搬送制御装置。
【請求項2】
搬送路上を搬送される紙葉類の搬送を制御する搬送制御装置において、
搬送路に沿って配設された、搬送中の紙葉類を検知する第1及び第2のセンサを含む複数のセンサと、紙葉の搬送の開始を起点とする搬送量もしくは実時間の経過を時刻に換算する時刻機構と、紙葉類の通過を監視する監視制御部と、該時計機構及び該監視制御部により該第1のセンサと該第2のセンサの間を通過した紙葉類の通過時刻及び紙葉間隔に関する情報を記憶する記憶部とを有し、
該監視制御部は、搬送方向に対して該第1のセンサで1枚の紙葉を検出し、該第2のセンサで該紙幣を検出することができたが、その後該第1のセンサで検出していない紙葉を第2のセンサで検出した場合に、該第1のセンサで検出した紙葉の後端時刻から第2のセンサで後端が検出される後端通過予定時刻を算出し、後端通過予定時刻から一定搬送量許容するわきだし許可時刻を算出することにより、該第2のセンサで検出した2枚目の紙葉の先端時刻がわきだし許可時刻より早ければ、該紙葉をわきだし異常とせずにくっついていた紙葉が離れたと判断して紙葉の搬送を制御することを特徴とする紙葉類搬送制御装置。
【請求項3】
紙幣の先端時刻を保持する第1のポインタと、紙幣の長さ、後端時刻、及び紙幣間隔を保持する第2のポインタと、該記憶部内に格納された紙幣情報の監視位置を示す処理ポインタを使用して、該第1のセンサと該第2のセンサ間を搬送される紙幣を監視することを特徴とする請求項1又は2の紙葉類搬送制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2006−315801(P2006−315801A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−139365(P2005−139365)
【出願日】平成17年5月12日(2005.5.12)
【出願人】(504373093)日立オムロンターミナルソリューションズ株式会社 (1,225)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年5月12日(2005.5.12)
【出願人】(504373093)日立オムロンターミナルソリューションズ株式会社 (1,225)
【Fターム(参考)】
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