説明

紙葉類集積装置

【課題】羽根部13の回転により紙幣2aを引寄せて集積部ガイド41に整列させるときに、前記集積部ガイド41と集積紙幣42との間に紙幣2aが引き込まれることを確実に防止し、集積異常が発生しないようにする。
【解決手段】可撓性を有する複数の羽根部13を備え回転可能な羽根車11により紙幣2aを叩いて集積部ガイド41に沿って集積部に集積する紙葉類集積装置21において、前記羽根車11側の前記集積部28内側の上部近傍に引き込み防止形状43を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙葉状の媒体を羽根車を用いて集積部ガイドに沿って整列して集積する紙葉類集積装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、媒体として例えば紙幣などの紙葉類を取り扱う現金自動預払機等において、入金取引にて入金された紙葉類を金種ごとに紙葉類集積装置に集積して収納し、出金取引にて紙葉類集積装置から繰り出して出金できるようになっている。
【0003】
図11は前記紙葉類の集積および繰出し可能な従来の紙葉類集積装置の要部の構成を示す側面図であり、図12はその正面図を示す。
【0004】
同図に示したように、従来の紙葉類集積装置121は、(図11左上記載の)紙幣2xの搬送をガイドする搬送路35と、集積のときに、時計方向(以下、「CW方向」という)に回転する搬送ローラ36と、羽根部13を具備した羽根車11と、プレッシャローラ24と、反時計方向(以下、「CCW方向」という)に回転するフィードローラ23を備える。
【0005】
また、繰出しのときに、図示しないリンク機構により回動して集積紙幣42の最上位の紙幣に当接させてCW方向に回転させるピックアップローラ34が設けられている。
【0006】
さらに、集積部28側には、可動ステージ22が備えられており、可動ステージ22の両端部にはスライダ部25が設けられており、スライダ部25はシャフト26に摺動可能に取付けられているとともに、ベルト27に固着されている。
【0007】
そして、図示しない駆動モータによりベルト27を矢印C方向またはD方向に回転させると、スライダ部25はシャフト26に沿って矢印Aまたは矢印Bのように上下動しこれに伴い可動ステージ22も上下動する。
【0008】
集積空間29は、可動ステージ22を下降させることにより集積紙幣42の上部に形成される空間である。可動ステージ22の上下動は、図示しないセンサやエンコーダを使用して駆動モータに対するパルス制御等により制御される。
【0009】
図12のように、フィードローラ23はシャフト30に取付けられ図示しない駆動モータにより回転駆動され、プレッシャローラ24および羽根車11は可動軸31に取付けられており、可動軸31は図示しないリンク機構により、プレッシャローラ24をフィードローラ23に圧接または離隔させることができるようになっている。
【0010】
そして、プレッシャローラ24をフィードローラ23に圧接させることにより、フィードローラ23の回転がプレッシャローラ24および羽根車11に伝達されるようになっている。
【0011】
羽根車11は、図12に示すように、プレッシャローラ24の両側に設けられ、1つのプレッシャローラ24と2つの羽根車11とで羽根車アッセンブリ32を構成し、2つの羽根車アッセンブリ32a、32bは集積紙幣42の両側部に対向した位置にそれぞれ配設される。
【0012】
そして、以上の構成により、従来の紙葉類集積装置121は以下のように動作していた。なお、ここでは、簡略化のために、搬送されてきた紙幣2xを集積部28に集積する動作のみを説明し、繰出し動作は省略する。
【0013】
まず、図11のように図示しないモータによりベルト27を矢印D方向に回転させ、可動ステージ22を矢印B方向に下降させる。
【0014】
可動ステージ22の下降により、すでに集積されている集積紙幣42の上部に集積空間29が確保され、図示しない駆動モータによりフィードローラ23を駆動させるとともに、図示しないリンク機構によりプレッシャローラ24をフィードローラ23に圧接させ、フィードローラ23およびピックアップローラ34を図11のようにCCW方向に回転させるとともに、プレッシャローラ24および羽根車11をCW方向に回転させる。
【0015】
そして、搬送路35から紙幣2xが搬送されてくると、紙幣2xはフィードローラ23とプレッシャローラ24とに挟まれて集積空間29の方向、すなわち矢印Xのように搬出され、紙幣2xの後端部がフィードローラ23とプレッシャローラ24から抜け出ると、紙幣2xは羽根車11の羽根部13により後端部を押され、集積空間29に入り込む。
【0016】
集積空間29に入り込んだ紙幣2は、その後端部を、回転している羽根部13により上方から叩かれ、すでに集積されている集積紙幣42の上に落下する。
【0017】
そして、集積紙幣42の上に落下した紙幣2aは、図11のa部のようにその後端部が羽根車11の羽根部13により集積部ガイド41側に引寄せられ集積部ガイド41に突き当てられて整列する。
【0018】
以上の動作により落下した紙幣2xは集積部ガイド41に整列されるが、さらに、二つ折れ癖のついた紙幣が送られてきた場合でも紙幣を損傷させることなく集積空間を十分に確保する技術として、羽根車11の回転により紙幣2aに接触すると回転軸方向に撓む羽根部13が中心部に対して斜めに形成された羽根車11を備え、羽根部13に接触している紙幣2aを回転軸方向に移動させて、紙幣が湾曲している場合でもその湾曲をなだらかにする技術はあった(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特開2007−145547号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
しかしながら、上記従来の紙葉類集積装置では、図11のa部拡大図となる図13に示すように、羽根車11の羽根部13により、集積空間29に叩き落とされた紙幣2aを浮き上がらないように叩き続け、矢印Eのように集積部ガイド41に引き寄せて整列するときに、紙幣2aをすでに集積されている集積紙幣42と集積部ガイド41の間に引き込んでしまい、整列状態が乱れてしまうという問題があった。その結果、繰出しの際に、スムーズな繰出しができず繰出しエラーが発生することがあった。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は、前述の課題を解決するため次の構成を採用する。すなわち、可撓性を有する複数の羽根部を備え回転可能な羽根車により紙葉状の媒体を叩いて集積部ガイドに沿って集積部に集積する紙葉類集積装置において、前記羽根車側の前記集積部内側の上部近傍に引き込み防止形状を設けた。
【発明の効果】
【0022】
本発明の紙葉類集積装置によれば、可撓性を有する複数の羽根部を備え回転可能な羽根車により紙葉状の媒体を叩いて集積部ガイドに沿って集積部に集積する紙葉類集積装置において、前記羽根車側の前記集積部内側の上部近傍に引き込み防止形状を設けたので、羽根部の回転により紙幣を引寄せて前記集積部ガイドに整列させるときに、前記集積部ガイドとすでに集積された紙幣との間に紙幣が引き込まれることを確実に防止し、整列状態が乱れることがない。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】実施例1の紙葉類集積装置の要部構成図である。
【図2】実施例1の紙葉類集積装置の要部構成図である。
【図3】実施例1の紙葉類集積装置の引き込み防止部材の構成図である。
【図4】実施例1の紙葉類集積装置の引き込み防止部材の動作説明図である。
【図5】実施例1の紙葉類集積装置の引き込み防止部材の動作説明図である。
【図6】実施例1の紙葉類集積装置の要部構成図である。
【図7】実施例1の紙葉類集積装置の要部構成図である。
【図8】実施例2の紙葉類集積装置の引き込み防止部材の構成図である。
【図9】実施例2の紙葉類集積装置の引き込み防止部材の動作説明図である。
【図10】実施例2の紙葉類集積装置の引き込み防止部材の動作説明図である。
【図11】従来の紙葉類集積装置の要部構成図である。
【図12】従来の紙葉類集積装置の要部構成図である。
【図13】従来の紙葉類集積装置の集積時の動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係わる実施の形態例を、図面を用いて説明する。なお、図面に共通する要素には同一の符号を付す。
【実施例1】
【0025】
(構成)
図1は実施例1の紙葉類集積装置21の要部の構成を示す側面図、図2はその正面図、図3は集積部ガイド41の引き込み防止形状43の例示図、図4は引き込み防止形状43周辺の構成図である。
【0026】
図1および図2に示したように、実施例1の紙葉類集積装置21は、集積部ガイド41の上部、すなわち、集積紙幣42の上面にあたる位置に引き込み防止形状43を設けた構成となっている。なお、引き込み防止形状43は、図2のように1箇所にのみ設けるようにしてもよいし、横方向を複数に分けて分散させて設けるようにしてもよい。
【0027】
引き込み防止形状43は、例えば、図3(a)に示したような、鋸歯状となっており、角aの角度は略90度の略鋭角、角bの角度は180度に近い略鈍角に設定されている。なお、角a、角bは、図3(a)に示した角度とは異なる角度としてもよいし、図3(b)のように角cのみを設けた鋸歯状としてもよいし、図3(c)のように角dを備えた三角波形状としてもよい。
【0028】
(動作)
以上の構成により実施例1の紙葉類集積装置1は以下のように動作する。この動作を前述の図1ないし図3の構成図、並びに図4および図5の動作説明図を用いて以下詳細に説明する。
【0029】
前述の図1に示したように集積空間29に入り込んだ紙幣2xは、その後端部を、CW方向に回転している羽根部13により上方から叩かれ、すでに集積されている集積紙幣42の上に落下する。
【0030】
そして、集積紙幣42の上に落下した紙幣2aは、その後端部が羽根車11の羽根部13により図1のa部拡大図となる図4の矢印Eにように集積部ガイド41側に引寄せられ集積部ガイド41に突き当てられて整列する。
【0031】
このとき、羽根車11の羽根部13により集積部ガイド41と集積紙幣42との間に紙幣2aが引き込まれようとすると、引き込み防止形状43は、引き込み防止形状43の角aの部分に紙幣2aの先端が引っかかり、それ以上引き込まれない。
【0032】
また、図5に示したように、繰出し等の際に、可動ステージ22を矢印Aのように上昇させ、可動ステージ22の上部にすでに集積されている集積紙幣42を、引き込み防止形状43を通過してさらに上昇させるときは、角bの部分に当接するが、角bの部分は引っ掛かり難い形状になっているため、引き込み防止形状43に引っかかって可動ステージ22が移動できなくなる等の問題も発生しない。
【0033】
一方、可動ステージ22を矢印Bのように下降させ、可動ステージ22の上部のすでに集積されている集積紙幣42を、引き込み防止形状43を通過してさらに下降させる場合では、集積紙幣42が引き込み防止形状43を通過する間、羽根車11をCW方向に回転させて羽根車11の羽根部13で紙幣2aを叩くことにより、紙幣2a先端が引き込み防止形状43に引っ掛かることを防止でき、集積状態が悪くならないようにすることができる。
【0034】
(実施例1の効果)
以上のように、実施例1の紙葉類集積装置によれば、可撓性を有する複数の羽根部を備え回転可能な羽根車により紙葉状の媒体を叩いて集積部ガイドに沿って集積部に集積する紙葉類集積装置において、前記羽根車側の前記集積部内側の上部近傍に引き込み防止形状を設けたので、羽根部の回転により紙幣を引寄せて前記集積部ガイドに整列させるときに前記集積部ガイドとすでに集積された紙幣との間に紙幣が引き込まれることを確実に防止し整列状態が乱れることがない。
【実施例2】
【0035】
(構成)
図6は実施例2の紙葉類集積装置の要部構成を示す側面図であり、図7はその正面図であり、図8は引き込み防止部材51の構成図である。
【0036】
実施例2の紙葉類集積装置では、図8に示した引き込み防止部材51を、羽根車11側の集積部28内側の上部近傍に2個設けた構成となっている。なお、引き込み防止部材51は1個としてもよいし、3つ以上設けるようにしてもよい。
【0037】
そして、引き込み防止部材51は、図8に示したように、実施例1の紙葉類集積装置21と同様の鋸歯状の引き込み防止形状43を有し、回転支点52を備えている。その他の構成は実施例1の構成と同様であるので簡略化のためにその詳細な説明は省略する。
【0038】
(動作)
以上の構成により実施例2の紙葉類集積装置1は、以下のように動作する。この動作を図9および図10の動作説明図を用いて以下詳細に説明する。
【0039】
まず、紙幣がすでに集積されている可動ステージ22上に、さらに紙幣を集積させるときは、引き込み防止部材51を、図9の状態から図10の状態のように、図示しない駆動系およびモータ等の動力により回転支点52を支点として矢印F方向に回動させて集積部ガイド41側に退避させた後、可動ステージ22を下降し集積紙幣42の上部に集積空間29を確保した後、矢印G方向に回動し、図9の状態に戻す。なお、回転支点52を支点として回動して退避するのはなく、スライドさせて退避するようにしてもよい。
【0040】
そして、実施例1と同様に、紙幣2xの集積を開始すると、図6の矢印Xのように集積空間29に入り込んだ紙幣2xは、その後端部を、CW方向に回転している羽根部13により上方から叩かれ、すでに集積されている集積紙幣42の上に落下する。
【0041】
そして、集積紙幣42の上に落下した紙幣2aは、その後端部が羽根車11の羽根部13により図9の矢印Eにように集積部ガイド41側に引寄せられ集積部ガイド41に突き当てられて整列する。
【0042】
このとき、羽根車11の羽根部13により集積部ガイド41と集積紙幣42との間に紙幣2aが引き込まれようとすると、引き込み防止形状43は、引き込み防止形状43の角aの部分に紙幣2aの先端が引っかかり、それ以上引き込まれない。
【0043】
そして、集積紙幣42の上部に集積空間29をさらに確保し可動ステージ22を下降させるときは、引き込み防止部材51を、回転支点52を支点として矢印F方向に回動して退避し図10の状態とした後、可動ステージ22を下降させる。
【0044】
また、可動ステージ22とその上部のすでに集積されている集積紙幣42を、引き込み防止部材51を通過して上昇するときも、引き込み防止部材51を、回転支点52を支点として矢印F方向に回動して退避し図10の状態とした後、可動ステージ22を上昇させる。
【0045】
以上にように動作させることにより、実施例1と同様に、可動ステージ22上の集積紙幣42が引き込み防止部材51に引っかかり、可動ステージ22を移動させることができなくなったり、集積状態が悪くなったりすることがない。
【0046】
さらに、可動ステージ22とその上部のすでに集積されている集積紙幣42を、引き込み防止形状43を通過して下降させる場合、実施例1の紙葉類集積装置では、羽根車11をCW方向に回転させて、羽根車11の羽根部13が紙幣を叩くことにより、引き込み防止形状43に集積紙幣42の紙幣が引っかかることを防止する必要があったが、実施例2の紙葉類集積装置では、引き込み防止部材51を回動して集積部ガイド41側に退避させることができるので、羽根車11を回転させることもなく下降させることができる。
【0047】
(実施例2の効果)
以上のように実施例2の紙葉類集積装置1によれば、鋸歯状の引き込み防止形状と回転支点を備えた引き込み防止部材を羽根車側の集積部内側の上部近傍に設け、前記回転支点を支点として前記引き込み防止形状を回動させ集積部ガイド側に退避または突出できるようにしたので、実施例1の効果に加え、集積紙幣とともに可動ステージを下降させるときに、集積紙幣が引き込み防止形状に引っ掛からないように羽根車を回転させる必要がない。
【産業上の利用可能性】
【0048】
以上述べたように、本発明は紙葉状の媒体を羽根車を用いて集積部ガイドに沿って整列して集積する紙葉類集積装置、さらには紙葉類集積装置を備える現金自動預払機等に広く用いることができる。
【符号の説明】
【0049】
2a、2x 紙幣
11 羽根部
13 羽根車
21 紙葉類集積装置
22 可動ステージ
29 集積空間
41 集積部ガイド
42 集積紙幣
43 引き込み防止形状
51 引き込み防止部材
52 回転支点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有する複数の羽根部を備え回転可能な羽根車により紙葉状の媒体を叩いて集積部ガイドに沿って集積部に集積する紙葉類集積装置において、
前記羽根車側の前記集積部内側の上部近傍に引き込み防止形状を設けたことを特徴とする紙葉類集積装置。
【請求項2】
前記引き込み防止形状は略鋭角と略鈍角からなり、略鋭角側を上側とした鋸歯状であることを特徴とする請求項1記載の紙葉類集積装置。
【請求項3】
前記引き込み防止形状は、前記集積部ガイドに設けたことを特徴とする請求項1記載の紙葉類集積装置。
【請求項4】
前記引き込み防止形状は、回転支点を備えて当該回転支点を支点として回動させて前記集積部ガイド側に退避または突出できるようにした引き込み防止部材に設けたことを特徴とする請求項1記載の紙葉類集積装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−14621(P2012−14621A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−152977(P2010−152977)
【出願日】平成22年7月5日(2010.7.5)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】