説明

紙製容器及び紙製容器の製造方法

【課題】製函用糊を用いることなく製造することがきて食品を収納するのに適していて、かつ、短時間に製造を行うことができる紙製容器とその製造方法を提供する。
【解決手段】紙製容器5は、熱可塑性の樹脂によりコーティングされたブランクにより形成され、側面部14と接続部20、22及び側面部18と接続部24、26とは、加熱により樹脂を溶着することにより接着されている。樹脂としては、ポリブチレンテレフタレートや、ポリエチレンテレフタレートが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙製容器とその製造方法に関するものであり、特に、食品を入れるのに適した紙製容器とその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、紙製容器においては、1枚のブランクにより構成され、該ブランクを組み立てて容器状に形成するものが存在する。そのような紙製容器においては、ブランクの一部(例えば、糊代部分)に接着剤(具体的には、製函用糊)を塗布して、容器状に組み立てるものが存在する。
【0003】
なお、食品容器に用いる紙製包装容器として、出願人は、特許文献1に示す出願を知得している。
【特許文献1】特開2004−123230号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、製函用糊により接着を行って容器を組み立てる場合には、該製函用糊が容器の別の部分(例えば、内部)に付着してしまうおそれがあり、食品収納用に用いると、食品の熱で製函用糊が溶けてしまって、食品内に製函用糊が混ざってしまうおそれがあるという問題があった。
【0005】
また、製函用糊は臭いがあるため、紙製容器を食品収納用に用いると、食品の風味を損なうおそれがあった。
【0006】
また、製函用糊により容器の接着を行う場合には、製函用糊の乾燥は自然乾燥による場合が一般的であり、乾燥に時間が掛かり、紙製容器の製造に時間が掛かるという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、紙製容器であって、製函用糊を用いることなく製造することがきて食品を収納するのに適していて、かつ、短時間に製造を行うことができる紙製容器とその製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記問題点を解決するために創作されたものであって、第1には、紙製容器であって、該紙製容器が、表側の面と裏側の面とが熱可塑性の樹脂によりコーティングされたブランクにより形成され、該紙製容器が、該ブランクを構成する一方の部分と、該ブランクを構成する他方の部分とを接着することにより組み立てられ、該一方の部分と他方の部分とは、ブランクにコーティングされた樹脂を溶着することにより接着されていることを特徴とする。
【0009】
この第1の構成の紙製容器においては、ブランクを構成する一方の部分と他方の部分とを接着する際に製函用糊を使用しなくてもよいので、食品を収納した場合でも、食品内に製函用糊が混ざるおそれがなく、また、製函用糊の臭いにより食品の風味を損なうことがない。また、コーティングされた樹脂を溶着することにより接着されているので、乾燥時間を要せず紙製容器の製造時間を短くすることができる。またブランクの表側の面と裏側の面とが樹脂によりコーティングされているので、耐水性を得ることができ、食品を収納するのに適している。
【0010】
また、第2には、紙製容器であって、該紙製容器が、表側の面と裏側の面とが熱可塑性の樹脂によりコーティングされたブランクにより形成され、少なくとも、底面部と、該底面部の各辺から折れ線を介して立ち上がる複数の側面部と、側面部の隣り合う側縁部間に連設された折込み片部とを有し、折込み片部を側面部に接着することにより隣り合う側面部同士を連結するよう形成され、該折込み片部と側面部とは、ブランクにコーティングされた樹脂を溶着することにより接着されていることを特徴とする。
【0011】
この第2の構成の紙製容器においては、折込み片部と側面部とを接着する際に製函用糊を使用しなくてもよいので、食品を収納した場合でも、食品内に製函用糊が混ざることがなく、また、製函用糊の臭いにより食品の風味を損なうことがない。また、コーティングされた樹脂を溶着することにより接着されているので、乾燥時間を要せず紙製容器の製造時間を短くすることができる。またブランクの表側の面と裏側の面とが樹脂によりコーティングされているので、耐水性を得ることができ、食品を収納するのに適している。
【0012】
また、第3には、上記第1又は第2の構成において、樹脂を加熱して溶解した後に、溶解した樹脂を固化させることにより、樹脂の溶着がされていることを特徴とする。
【0013】
また、第4には、上記第1から第3までのいずれかの構成において、上記樹脂が、ポリブチレンテレフタレート又はポリエチレンテレフタレートであることを特徴とする。よって、ポリブチレンテレフタレートやポリエチレンテレフタレートは、融点が高いので、温度の高い食品を収納した場合や電子レンジに使用した場合でも、樹脂が溶融することがなく、よって、食品に混ざったり食品の風味を損なうことがなく、また、接着部分が外れることがない。
【0014】
また、第5には、上記第1から第4までのいずれかの構成において、紙製容器を構成するブランクは、両面段ボール材により構成されていることを特徴とする。よって、保温機能を得ることができ、紙製容器5内の食品の保温を行なうことができる。
【0015】
また、第6には、紙製容器の製造方法であって、
表側の面と裏側の面とが樹脂によりコーティングされたシート状部材を形成するシート状部材形成工程と、
該シート状部材を用いて紙製容器の展開状態のブランクを形成するブランク形成工程と、
該ブランクを構成する一方の部分と、該ブランクを構成する他方の部分とを接着することにより組み立てる接着工程で、該一方の部分と他方の部分とを、ブランクにコーティングされた樹脂を溶着することにより接着する接着工程と、
を有することを特徴とする。
【0016】
この第6の構成の紙製容器の製造方法においては、ブランクを構成する一方の部分と他方の部分とを接着する際に製函用糊を使用しなくてもよいので、食品を収納した場合でも、食品内に製函用糊が混ざることがなく、また、製函用糊の臭いにより食品の風味を損なうことがない。また、コーティングされた樹脂を溶着することにより接着されているので、乾燥時間を要せず紙製容器の製造時間を短くすることができる。
【0017】
また、第7には、上記第6の構成において、上記接着工程において、樹脂を加熱して溶解した後に、溶解した樹脂を固化させることにより、樹脂を溶着することを特徴とする。
【0018】
また、第8には、上記第6又は第7の構成において、上記樹脂が、ポリブチレンテレフタレート又はポリエチレンテレフタレートであることを特徴とする。よって、ポリブチレンテレフタレートやポリエチレンテレフタレートは、融点が高いので、温度の高い食品を収納した場合や電子レンジに使用した場合でも、樹脂が溶融することがなく、よって、食品に混ざったり食品の風味を損なうことがなく、また、接着部分が外れることがない。
【0019】
また、第9には、上記第6から第8までのいずれかの構成において、上記シート状部材が、両面段ボール材により構成されていることを特徴とする。よって、保温機能を得ることができ、紙製容器5内の食品の保温を行なうことができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に基づく紙製容器及び紙製容器の製造方法によれば、ブランクを構成する一方の部分と他方の部分とを接着する際に製函用糊を使用しなくてもよいので、食品を収納した場合でも、食品内に製函用糊が混ざるおそれがなく、また、製函用糊の臭いにより食品の風味を損なうことがない。また、コーティングされた樹脂を溶着することにより接着されているので、乾燥時間を要せず紙製容器の製造時間を短くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明においては、製函用糊を用いることなく製造することがきて食品を収納するのに適していて、かつ、短時間に製造を行うことができる紙製容器とその製造方法を提供するという目的を以下のようにして実現した。
【実施例1】
【0022】
本発明の実施例1に基づく紙製容器5は、図1、図2に示すように構成され、1枚のシート状部材により形成されたブランク(図2参照)の要所を折り曲げ、組み立てることにより形成されたものであり、底面部10と、側面部12と、側面部14と、蓋フラップ15と、側面部16と、側面部18と、蓋フラップ19と、接続部20と、接続部22と、接続部24と、接続部26と、蓋部28と、蓋掛止片部30とを有している。シート状部材としては、段ボール(具体的には、両面段ボール)が好適であるが、他に紙板材でもよい。なお、図2において、一点鎖線は、山折り線を示し、実線は、外形線又は切込みを示している。
【0023】
底面部10は、長方形状の板状を呈している。側面部12は、底面部10の正面側の辺部から折れ線を介して連設され、側面部14は、底面部10の右側面側の辺部から折れ線を介して連設され、側面部16は、底面部10の背面側の辺部から折れ線を介して連設され、側面部18は、底面部10の左側面側の辺部から折れ線を介して連設されている。側面部12と側面部14と側面部16と側面部18とは、ともに台形形状の板状を呈し、側面部12と側面部16は、同大同形状に形成され、側面部14と側面部18は、同大同形状に形成されている。
【0024】
接続部20と接続部24は、側面部12の両側から折れ線を介して連設され、ともに略台形形状を呈していて、接続部22と接続部26は、側面部16の両側から折れ線を介して連設され、ともに略台形形状を呈している。接続部20の外側の面と接続部22の外側の面は、側面部14の内側の面に接着され、接続部24の外側の面と接続部26の外側の面は、側面部18の内側の面に接着されている。
【0025】
また、蓋フラップ15は、帯状を呈し、側面部14の上端から折れ線を介して連設され、蓋フラップ19は、帯状を呈し、側面部18の上端から折れ線を介して連設されている。
【0026】
また、蓋部28は、略長方形状の板状を呈し、側面部16の上端から折れ線を介して連設されている。また、蓋掛止片部30は、略台形形状を呈し、蓋部28の端部から折れ線を介して連設されている。
【0027】
この紙製容器5を構成する1枚のブランクは、表側の面と裏側の面にそれぞれ樹脂がコーティングされていて、紙製容器5の組立て状態においては、接続部20、22、24、26の部分においては、図1の領域Rにおいて、樹脂が溶着して接着されることにより、側面部14と接続部20、22とが接着され、側面部18と接続部24、26とが接着されている。つまり、側面部側の樹脂と接続部側の樹脂を、側面部と接続部とが接した状態で加熱により溶解させた後に固化させることにより、側面部と接続部とを溶着している。なお、樹脂を加熱により溶解させる方法としては、熱を加える方法や、高周波を与える方法や、超音波振動を与える方法が考えられる。
【0028】
また、コーティングされる樹脂としては、熱可塑性樹脂であり、ポリブチレンテレフタレートや、ポリエチレンテレフタレートのように融点が高い(融点が200℃以上)ものが好ましい。つまり、ポリブチレンテレフタレートは、融点が218〜219℃とされており、また、ポリエチレンテレフタレートは、融点が256℃とされているので、これらの樹脂を使用するのが好ましい。また、ポリトリメチレンテレフタレートとしてもよい。ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート以外の熱可塑性樹脂でもよい。
【0029】
なお、互いに接着されている側面部と接続部とは、一方が、ブランクを構成する一方の部分に当たり、他方が、ブランクを構成する他方の部分に当たる。
【0030】
上記構成の紙製容器5の製造方法について、図3に従い説明すると、まず、段ボールのライナーを構成する紙材に樹脂をコーティングして、樹脂コーティングした紙材を製造する(S10)。
【0031】
その後、該樹脂コーティングした紙材を用いて、段ボール材(シート状部材)を製造する(S11、シート状部材形成工程)。つまり、樹脂コーティングした紙材を段ボール材の両面のライナーに使用し、コーティングした側を外側にして段ボール材を形成する。すなわち、図4に示すように、ライナー52とライナー54の間に断面略波状の中芯56が接着して設けられ、ライナー52の外側の面に樹脂層60が設けられ、ライナー54の外側の面に樹脂層62が設けられた段ボール材50を製造する。
【0032】
そして、製造した段ボール材を用いて、図2に示す展開状態のブランクを形成する(S12、ブランク形成工程)。つまり、図2に示す外形を有し、折れ線部分に罫線が形成されたブランクを形成する。
【0033】
その後、展開状態のブランクを折れ線に沿って折り曲げて、接続部20、22、24、26の部分において、側面部と接続部とを溶着させる(S13、接着工程)。つまり、側面部と接続部とが接した状態で、領域Rに加熱を行い、側面部の内側の樹脂と接続部の外側の樹脂を溶解させ、その後、加熱を中止して溶解部分を冷却することにより、領域Rの部分において、側面部の内側の樹脂と接続部の外側の樹脂を固化させることにより溶着させる。
【0034】
なお、加熱の方法としては、加熱した端子を圧接させる方法や、高周波を与える方法や、超音波振動子を圧接させる方法が考えられる。加熱した端子を圧接させる方法としては、容器の内側、つまり、側面部14や側面部18の内側に台部を配置した後に、加熱した端子を側面部14や側面部18の外側から圧接させることにより、側面部と接続部とを溶着させる方法が考えられる。また、超音波振動子を圧接させる方法としては、容器の内側、つまり、側面部14や側面部18の内側に台部を配置した後に、超音波振動子を側面部14や側面部18の外側から圧接させることにより、高い周波数の機械的振動を樹脂に伝達して樹脂自体を振動させることにより、結果的に加熱により樹脂を熱溶解させ、その後、樹脂を固化させることにより、側面部と接続部とを溶着させる方法が考えられる。
【0035】
なお、上記の説明では、領域Rの部分に対して加熱するとしたが、接続部の領域全体に加熱を行うようにしてもよい。
【0036】
上記のように製造された紙製容器5においては、製造に際して製函用糊を使用しないので、食品、特に、温度の高い食品を収納した場合でも、食品内に製函用糊が混ざることがなく、また、製函用糊の臭いにより食品の風味を損なうことがない。特に、ポリブチレンテレフタレートやポリエチレンテレフタレートのように融点が高い樹脂をコーティングしているので、温度の高い食品を収納したり、電子レンジにより加熱しても、樹脂が溶融することがなく、食品に混ざったり食品の風味を損なうことがなく、また、側面部と接続部の接続部分が外れるおそれがない。すなわち、食品は通常水分を含むため、電子レンジで加熱しても通常は100℃以下となり、油を含む食品の場合でも180℃以下となるので、ポリブチレンテレフタレートやポリエチレンテレフタレートのように融点が高い樹脂をコーティングすることにより樹脂が溶解するおそれがない。
【0037】
また、側面部と接続部の接続に際しては、樹脂を加熱した後に固化させて溶着するので、乾燥時間を要せず製造時間を短くすることができる。
【0038】
また、上記構成の紙製容器5においては、容器を構成するブランクの表側の面と裏側の面が樹脂によりコーティングされているので、耐水、耐油の効果を期待でき、食品を入れた場合でも水や油によりブランクを構成する段ボール材のライナーが弱体化することがなく、容器の強度を保つことができ、例えば、食品の入った紙製容器5を低温で輸送、保管した場合に、水蒸気の結露による水に対して耐水効果を期待でき、容器の強度を保つことができ、食品を収納するのに適している。
【0039】
また、紙製容器5は、一対のライナーと52、54と中芯56により構成された段ボール材により形成されているので、保温機能を得ることができ、紙製容器5内の食品の保温を行なうことができる。
【実施例2】
【0040】
次に、本発明の実施例2に基づく紙製容器105は、図5、図6に示すように構成され、1枚のシート状部材により形成されたブランク(図6参照)の要所を折り曲げ、組み立てることにより形成されたものであり、底面部110と、側面部112と、側面部114と、側面部116と、側面部118と、折込み片部120と、折込み片部122と、折込み片部124と、折込み片部126と、折込み片部130と、折込み片部132と、折込み片部134と、折込み片部136と、蓋フラップ140と、蓋フラップ142と、蓋フラップ144と、蓋フラップ146とを有している。シート状部材としては、段ボール(具体的には、両面段ボール)が好適であるが、他に紙板材でもよい。なお、図6において、一点鎖線は、山折り線を示し、二点鎖線は、谷折り線を示し、実線は、外形線又は切込みを示している。
【0041】
底面部110は、長方形状の板状を呈している。側面部112は、底面部110の正面側の辺部から折れ線を介して連設され、側面部114は、底面部110の左側面側の辺部から折れ線を介して連設され、側面部116は、底面部110の背面側の辺部から折れ線を介して連設され、側面部118は、底面部110の右側面側の辺部から折れ線を介して連設されている。側面部112と側面部114と側面部116と側面部118とは、ともに台形形状の板状を呈し、側面部112と側面部116は、同大同形状に形成され、側面部114と側面部118は、同大同形状に形成されている。
【0042】
また、折込み片部120は、側面部112の側端から折れ線を介して連設され、略三角形状を呈している。また、折込み片部122は、側面部114の側端から折れ線を介して連設され、略三角形状を呈している。折込み片部120と折込み片部122とは、底面部110の角部から伸びた折れ線を介して連設されている。折込み片部122は、側面部114の上端にまで伸びているが、折込み片部120は、側面部112の上端の一部を余して形成され、これにより、折込み片部120を折込み片部122と側面部112の間に挟設しても、折込み片部122から折込み片部120がはみ出ないように形成されている。
【0043】
同様に、折込み片部124は、側面部112の側端から折れ線を介して連設され、略三角形状を呈している。また、折込み片部126は、側面部118の側端から折れ線を介して連設され、略三角形状を呈している。折込み片部124と折込み片部126とは、底面部110の角部から伸びた折れ線を介して連設されている。折込み片部126は、側面部118の上端にまで伸びているが、折込み片部124は、側面部112の上端の一部を余して形成され、これにより、折込み片部124を折込み片部126と側面部112の間に挟設しても、折込み片部126から折込み片部124がはみ出ないように形成されている。
【0044】
同様に、折込み片部130は、側面部116の側端から折れ線を介して連設され、略三角形状を呈している。また、折込み片部132は、側面部114の側端から折れ線を介して連設され、略三角形状を呈している。折込み片部130と折込み片部132とは、底面部110の角部から伸びた折れ線を介して連設されている。折込み片部132は、側面部114の上端にまで伸びているが、折込み片部130は、側面部116の上端の一部を余して形成され、これにより、折込み片部130を折込み片部132と側面部116の間に挟設しても、折込み片部132から折込み片部130がはみ出ないように形成されている。
【0045】
同様に、折込み片部134は、側面部116の側端から折れ線を介して連設され、略三角形状を呈している。また、折込み片部136は、側面部118の側端から折れ線を介して連設され、略三角形状を呈している。折込み片部134と折込み片部136とは、底面部110の角部から伸びた折れ線を介して連設されている。折込み片部136は、側面部118の上端にまで伸びているが、折込み片部134は、側面部116の上端の一部を余して形成され、これにより、折込み片部134を折込み片部136と側面部116の間に挟設しても、折込み片部136から折込み片部134がはみ出ないように形成されている。
【0046】
折込み片部122は、折込み片部120を内側に重ねた状態で、側面部112に接着されていて、折込み片部126は、折込み片部124を内側に重ねた状態で、側面部112に接着されていて、折込み片部132は、折込み片部130を内側に重ねた状態で、側面部116に接着されていて、折込み片部136は、折込み片部134を内側に重ねた状態で、側面部116に接着されている。
【0047】
この紙製容器105を構成する1枚のブランクは、表側の面と裏側の面にそれぞれ樹脂がコーティングされていて、紙製容器105の組立て状態においては、折込み片部122、126、132、136の上端領域において、樹脂が溶着して接着されることにより、折込み片部122と側面部112が接着され、折込み片部126と側面部112とが接着され、折込み片部132と側面部116とが接着され、折込み片部136と側面部116とが接着されている。例えば、折込み片部122と折込み片部126においては、図5の領域Rにおいて、樹脂が溶着して接着されることにより、折込み片部122、126と側面部112とが接着されている。つまり、側面部側の樹脂と折込み片部側の樹脂を、側面部と折込み片部とが接した状態で加熱により溶解させた後に固化させることにより、側面部と折込み片部とを溶着している。樹脂を加熱により溶解させる方法としては、上記実施例1と同様に、熱を加える方法や、高周波を与える方法や、超音波振動を与える方法が考えられる。
【0048】
また、コーティングされる樹脂としては、熱可塑性樹脂であり、ポリブチレンテレフタレートや、ポリエチレンテレフタレートのように融点が高い(融点が200℃以上)ものが好ましい。また、ポリトリメチレンテレフタレートとしてもよい。ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート以外の熱可塑性樹脂でもよい。
【0049】
なお、互いに接着されている側面部と折込み片部とは、一方が、ブランクを構成する一方の部分に当たり、他方が、ブランクを構成する他方の部分に当たる。
【0050】
上記構成の紙製容器105の製造方法は、上記実施例1の紙製容器の場合と同様であり、樹脂コーティングした紙材を製造した(S10)後に、該樹脂コーティングした紙材を用いて、段ボール材を製造し(S11)、その段ボール材を用いて図6に示す展開状態のブランクを形成し(S12)、その後、展開状態のブランクを折れ線に沿って折り曲げて、折込み片部122、126、132、136の上端部分において、側面部と折込み片部とを溶着させる(S13)。つまり、側面部と折込み片部とが接した状態で、折込み片部の上端領域(例えば、領域R)に加熱を行い、折込み片部の内側の樹脂と側面部の外側の樹脂を溶解させ、その後、加熱を中止して溶解部分を冷却することにより、側面部の内側の樹脂と接続部の外側の樹脂を固化させることにより溶着させる。
【0051】
なお、加熱の方法としては、上記実施例1と同様に、加熱した端子を圧接させる方法や、高周波を与える方法や、超音波振動子を圧接させる方法が考えられる。加熱した端子を圧接させる方法としては、容器の内側、つまり、側面部112や側面部116の内側に台部を配置した後に、加熱した端子を側面部112や側面部114の外側から圧接させることにより、側面部と折込み片部とを溶着させる方法が考えられる。また、超音波振動子を圧接させる方法としては、容器の内側、つまり、側面部112や側面部116の内側に台部を配置した後に、超音波振動子を側面部112や側面部116の外側から圧接させることにより、高い周波数の機械的振動を樹脂に伝達して樹脂自体を振動させることにより、結果的に加熱により樹脂を熱溶解させ、その後、樹脂を固化させることにより、側面部と接続部とを溶着させる方法が考えられる。
【0052】
なお、図5の例では、1つの側面において、2つの領域Rにおいて溶着を行うものとして説明したが、2つの領域Rを含む1つの領域において樹脂を溶解させて、折込み片部を側面部に溶着させるようにしてもよい。
【0053】
また、折込み片部の領域全体に加熱を行うようにしてもよい。例えば、折込み片部120、122については、折込み片部122の領域全体に加熱を行い、折込み片部120及び折込み片部122と側面部112とを溶着させるとともに、折込み片部120と折込み片部122とを溶着させて、折込み片部120と折込み片部122を側面部112に溶着させるようにしてもよい。
【0054】
上記のように製造された紙製容器105においては、製造に際して製函用糊を使用しないので、食品、特に、温度の高い食品を収納した場合でも、食品内に製函用糊が混ざることがなく、また、製函用糊の臭いにより食品の風味を損なうことがない。特に、ポリブチレンテレフタレートやポリエチレンテレフタレートのように融点が高い樹脂をコーティングしているので、温度の高い食品を収納したり、電子レンジにより加熱しても、樹脂が溶融することがなく、側面部と接続部の接続部分が外れるおそれがない。
【0055】
また、側面部と接続部の接続に際しては、樹脂を加熱した後に固化させて溶着するので、乾燥時間を要せず製造時間を短くすることができる。
【0056】
また、上記構成の紙製容器105においては、容器を構成するブランクの表側の面と裏側の面が樹脂によりコーティングされているので、耐水、耐油の効果を期待でき、食品を入れた場合でも水や油によりブランクを構成する段ボール材のライナーが弱体化することがなく、容器の強度を保つことができ、例えば、食品の入った紙製容器105を低温で輸送、保管した場合に、水蒸気の結露による水に対して耐水効果を期待でき、容器の強度を保つことができき、食品を収納するのに適している。
【0057】
また、紙製容器105は、一対のライナーと52、54と中芯56により構成された段ボール材により形成されているので、保温機能を得ることができ、紙製容器105内の食品の保温を行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の実施例1に基づく紙製容器の構成を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施例1に基づく紙製容器の構成を示す展開図である。
【図3】本発明の紙製容器の製造工程を示すフローチャートである。
【図4】紙製容器を構成する段ボール材の要部断面図である。
【図5】本発明の実施例2に基づく紙製容器の構成を示す斜視図である。
【図6】本発明の実施例2に基づく紙製容器の構成を示す展開図である。
【符号の説明】
【0059】
5、105 紙製容器
10、110 底面部
12、14、16、18、112、114、116、118 側面部
20、22、24、26 接続部
120、122、124、126、130、132、134、136 折込み片部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙製容器であって、
該紙製容器が、表側の面と裏側の面とが熱可塑性の樹脂によりコーティングされたブランクにより形成され、
該紙製容器が、該ブランクを構成する一方の部分と、該ブランクを構成する他方の部分とを接着することにより組み立てられ、該一方の部分と他方の部分とは、ブランクにコーティングされた樹脂を溶着することにより接着されていることを特徴とする紙製容器。
【請求項2】
紙製容器であって、
該紙製容器が、表側の面と裏側の面とが熱可塑性の樹脂によりコーティングされたブランクにより形成され、
少なくとも、底面部と、該底面部の各辺から折れ線を介して立ち上がる複数の側面部と、側面部の隣り合う側縁部間に連設された折込み片部とを有し、
折込み片部を側面部に接着することにより隣り合う側面部同士を連結するよう形成され、
該折込み片部と側面部とは、ブランクにコーティングされた樹脂を溶着することにより接着されていることを特徴とする紙製容器。
【請求項3】
樹脂を加熱して溶解した後に、溶解した樹脂を固化させることにより、樹脂の溶着がされていることを特徴とする請求項1又は2に記載の紙製容器。
【請求項4】
上記樹脂が、ポリブチレンテレフタレート又はポリエチレンテレフタレートであることを特徴とする請求項1又は2又は3に記載の紙製容器。
【請求項5】
紙製容器を構成するブランクは、両面段ボール材により構成されていることを特徴とする請求項1又は2又は3又は4に記載の紙製容器。
【請求項6】
紙製容器の製造方法であって、
表側の面と裏側の面とが樹脂によりコーティングされたシート状部材を形成するシート状部材形成工程と、
該シート状部材を用いて紙製容器の展開状態のブランクを形成するブランク形成工程と、
該ブランクを構成する一方の部分と、該ブランクを構成する他方の部分とを接着することにより組み立てる接着工程で、該一方の部分と他方の部分とを、ブランクにコーティングされた樹脂を溶着することにより接着する接着工程と、
を有することを特徴とする紙製容器の製造方法。
【請求項7】
上記接着工程において、樹脂を加熱して溶解した後に、溶解した樹脂を固化させることにより、樹脂を溶着することを特徴とする請求項6に記載の紙製容器の製造方法。
【請求項8】
上記樹脂が、ポリブチレンテレフタレート又はポリエチレンテレフタレートであることを特徴とする請求項6又は7に記載の紙製容器の製造方法。
【請求項9】
上記シート状部材が、両面段ボール材により構成されていることを特徴とする請求項6又は7又は8に記載の紙製容器の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−201423(P2008−201423A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−36337(P2007−36337)
【出願日】平成19年2月16日(2007.2.16)
【出願人】(000129493)株式会社クラウン・パッケージ (21)
【Fターム(参考)】