説明

紙製密封容器及び紙製密封容器用素材

【課題】紙製密封容器に特別な開封機構を設けずに、鋏、ナイフ等の開封用治具を用いて容易に解体可能な鋏、ナイフ等の開封用治具を用いて開封、解体可能な紙製密封容器提供すること。
【解決手段】頂部、胴部、及び底部からなり、少なくとも前記胴部が、外側から厚み方向に順に合成樹脂層、板紙からなる紙基材層、プラスチックフイルム基材層、合成樹脂シーラント層を積層した積層材料を用いた紙製密封容器であって、前記胴部の頂部近傍位置、及び底部近傍位置に、前記積層材料の紙基材層に開封溝を設けることにより解決した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジュース、お茶、コーヒー、酒、ワイン等の液体を充填密封する紙製密封容器に関する。
【背景技術】
【0002】
液体用紙容器は、例えば、外側から厚み方向に順に、ポリエチレン樹脂層、板紙からなる基材層、接着層、ガスバリア層、接着層、シーラント層を積層した積層材料を用い、この積層材料を所定の形状に打ち抜き、組み立て、製函されている。
この液体用紙容器にお茶類、コーヒー、乳飲料、スープなどの液体飲料を充填、密封した紙製密封容器である。
そして、液体飲料を使用後、液体紙容器を再利用するため、容器本体に解体用テープを周回するように設け、その端部が、外部に露出するように設けた構造が示されている(特許文献1参照)。
また、液体用紙容器を解体するために、頂部のシール部に解体用切れ目を一定の深さに設けた構成が提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平09−290822号公報
【特許文献2】特開2008−143532号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に示された解体用テープを別に設けた構成は、紙層を安定して、切断するためには、前記紙層に、前記解体用テープに沿って解体用切れ目を予め設けておかなければならなかった。
このように予め紙層に、前記解体用テープに沿って解体用切れ目を設けた構成の紙容器は、液体を収納した強度を保つのが困難となり、大容量の液体を収納することは問題である。
【0005】
また、特許文献2に示した屋根型頂部を有する紙容器は、頂部貼り合せ部に一定に深さの切れ目を形成した紙容器である。しかし、開封性、密封性を考慮すると、前記容器頂部貼り合せ部の長さを長くしなければならなかった。
また、前記のように容器頂部貼り合せ部のない、例えば、図6に示すような、円筒状胴部(10)の頂部に天板(11)、底部に底板(12)を設けた円筒状紙容器の場合、前記切れ目を設けることは困難であった。
そこで、前記円筒状紙容器を、前記のような開封機構を設けず、リサイクルするために、鋏、ナイフ等の開封用治具を用いて開封、解体する場合、開封のきっかけがなく、図7に示すように、胴部(10)の上部に天板(11)、下部に底板(12)がつながった状態に、開封、解体するのが困難であった。
また、屋根型頂部を有する紙容器を胴部から開封する場合、前記円筒状紙容器と同様の開封のきっかけがない問題があった。
【0006】
本発明の課題は、紙製密封容器をリサイクルするために、特別な開封機構を設けずに、鋏、ナイフ等の開封用治具を用いて容易に解体可能な紙製密封容器提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1に係る発明は、頂部、胴部、及び底部からなり、少なくとも前記胴部が、外側から厚み方向に順に合成樹脂層、板紙からなる紙基材層、プラスチックフイルム基材層、合成樹脂シーラント層を積層した積層材料を用いた紙製密封容器であって、前記胴部の頂部近傍位置、及び底部近傍位置に、前記積層材料の紙基材層に開封溝を設けたことを特徴とする紙製密封容器である。
【0008】
本発明の請求項2に係る発明は、前記開封溝が、周方向に連続して設けられていることを特徴とする紙製密封容器である。
【0009】
本発明の請求項3に係る発明は、前記開封溝が、前記積層材料の合成樹脂層から紙基材層に達する開封溝を設けたことを特徴とする紙製密封容器である。
【0010】
本発明の請求項4に係る発明は、前記紙製密封容器が屋根型頂部を有することを特徴とする紙製密封容器である。
【0011】
本発明の請求項5に係る発明は、前記紙製密封容器が円筒状であることを特徴とする紙製密封容器である。
【0012】
本発明の請求項6に係る発明は、頂部、胴部、及び底部からなる紙製密封容器を作成する素材であって、外側から厚み方向に順に合成樹脂層、板紙からなる紙基材層、プラスチックフイルム基材層、合成樹脂シーラント層を積層した積層材料の、前記胴部の頂部近傍位置、及び底部近傍位置に、前記紙基材層に開封溝を設け、所定外形形状としたことを特徴とする紙製密封容器用素材である。
【0013】
本発明の請求項7に係る発明は、前記開封溝が、前記胴部材を構成する積層材料の合成樹脂層から紙基材層に達する開封溝を設けたことを特徴とする紙製密封容器用素材である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の請求項1の発明によると、紙容器胴部を構成する積層材料が、上方位置、及び下方位置に、前記紙基材層に開封溝が設けられているので、リサイクルに際し、鋏、ナイフ等の開封用治具を用いて、前記開封溝をきっかけとして容易に解体可能となる。
【0015】
また、請求項2の発明によると、前記開封溝を周方向に連続した状態とすることにより、開封方向が安定して、容易に開封・解体することができる。
また、請求項3の発明によると、前記開封溝が、合成樹脂層から紙基材層に達しているので、開封方向が安定して、容易に解体することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の紙製密封容器の一例を示す説明図である。
【図2】図1の開封溝の状態を示す断面説明図である。
【図3】本発明の紙製密封容器の他の例を示す説明図である。
【図4】図2の開封溝の状態を示す断面説明図である。
【図5】本発明の紙製密封容器の他の例を示す説明図である。
【図6】円筒状紙容器の説明図である。
【図7】図6に示した円筒状紙容器を、開封・解体した状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の開封、解体が容易な紙製密封容器、及び紙製密封容器用素材について、実施の形態に沿って以下に詳細に説明する。
【0018】
図1、及び図2に示すように、円筒状胴部(10)の頂部(20)に飲み口(21)を密封した密封片(22)を設けた天板(24)及び底部(30)に底板(31)を設けた容器であって、前記胴部(20)が、外側から厚み方向に順に合成樹脂層(41)、板紙からなる紙基材層(42)、プラスチックフイルム基材層(43)、合成樹脂シーラント層(44)を積層した積層材料を用いた紙製密封容器である。
そして、前記胴部(10)の頂部近傍位置、及び底部近傍位置に、前記積層材料の紙基材層(42)に開封溝(48)(48)を、開封開始箇所に設けた紙製密封容器である。
【0019】
また、図3、及び図4に示すように、円筒状胴部(10)の頂部(20)に飲み口(21)を密封した密封片(22)を設けた天板(24)及び底部(30)に底板(31)を設けた容器であって、前記胴部(20)が、外側から厚み方向に順に合成樹脂層(41)、板紙からなる紙基材層(42)、プラスチックフイルム基材層(43)、合成樹脂シーラント層(44)を積層した積層材料を用いた紙製密封容器である。
そして、前記胴部(10)の頂部近傍位置、及び底部近傍位置に、前記積層材料の、合成樹脂層(41)から紙基材層(42)に達する開封溝(49)(49)を周方向に連続して設けた紙製密封容器である。
【0020】
図1、図3に示した円筒状容器以外に、図5に示すように、屋根型の頂部を有する容器に、前記開封溝を設けた紙製密封容器であってもよい。
【0021】
前記開封溝は、図1に示すように開封開始位置に設けるだけでなく、図3に示すように周方向に連続して設けることにより、開封方向が安定して、確実な開封・解体が可能となる。
また、開封開始箇所に、図1に示したような、広い開封溝とし、ここから周方向に延びる開封溝を図3に示すように、狭い開封溝とすることで、開封開始がしやすく、しかも周方向の開封・解体が安定する。
また、周方向に連続する開封溝は、連続線に限らず、不連続な鎖線であってもよい。
【0022】
また、前記開封溝は、胴部となる素材に予め設けるか、または、素材の胴部となる位置に設け、これらの素材を用いて、成形することで紙製密封容器とすることができる。
また、前記開封溝は、成形された容器、または、成形後、内容物が充填密封された容器の胴部に、レーザ等を用いて設けてもよい。
【0023】
次に、本発明に密封容器を構成する積層材料について説明する。
まず。外側の合成樹脂層(41)は、シール性があり、臭気等が少ない樹脂であれば特に限定されないが、低温シール性などの点から低密度ポリエチレン樹脂、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂等が好ましい。厚みは10μm〜100μmの範囲のものを使用する。
【0024】
前記紙基材層(42)は、一定に保形性を有すればよく、坪量100〜500g/m2 の板紙を使用することが好ましい。
【0025】
前記プラスチックフィルム基材層(43)は、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ナイロンフィルム、ポリオレフィンフィルムのいずれかがが好ましく、さらに、二軸延伸したフィルムが好ましい。このプラスチックフィルム基材層(43の厚さは5μm〜25μmのものが好ましい。
そして、前記フィルムに、さらに、酸化珪素、酸化アルミニウム、アルミニウム等の蒸着層を設けることで、水蒸気、酸素等のガスバリア性を向上させた構成としてもよい。
また、前記フィルムに、アルミニウム箔を貼り合わせることで、水蒸気、酸素等のガスバリア性を向上させた複合材料としてもよい。
【0026】
前記合成樹脂シーラント層(44)としては、シール性があり、臭気等が少ない樹脂であれば特に限定されないが、低温シール性などの点から低密度ポリエチレン樹脂、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂等が好ましい。
また、厚みは10μm〜100μmの範囲のものを使用することが好ましい。
【符号の説明】
【0027】
10…胴部
20…頂部
30…底部
24…天板
31…底板
41…合成樹脂層
42…紙基材層
43…プラスチックフィルム基材層
44…合成樹脂シーラント層
48、49…開封溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
頂部、胴部、及び底部からなり、少なくとも前記胴部が、外側から厚み方向に順に合成樹脂層、板紙からなる紙基材層、プラスチックフイルム基材層、合成樹脂シーラント層を積層した積層材料を用いた紙製密封容器であって、前記胴部の頂部近傍位置、及び底部近傍位置に、前記積層材料の紙基材層に開封溝を設けたことを特徴とする紙製密封容器。
【請求項2】
前記開封溝が、周方向に連続して設けられていることを特徴と請求項1に記載の紙製密封容器。
【請求項3】
前記開封溝が、前記積層材料の合成樹脂層から紙基材層に達する開封溝を設けたことを特徴とする請求項1または2に記載の紙製密封容器。
【請求項4】
前記紙製密封容器が屋根型頂部を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の紙製密封容器。
【請求項5】
前記紙製密封容器が円筒状であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の紙製密封容器。
【請求項6】
頂部、胴部、及び底部からなる紙製密封容器を作成する素材であって、外側から厚み方向に順に合成樹脂層、板紙からなる紙基材層、プラスチックフイルム基材層、合成樹脂シーラント層を積層した積層材料の、前記胴部の頂部近傍位置、及び底部近傍位置に、前記紙基材層に開封溝を設け、所定外形形状としたことを特徴とする紙製密封容器用素材。
【請求項7】
前記開封溝が、前記胴部材を構成する積層材料の合成樹脂層から紙基材層に達する開封溝を設けたことを特徴とする請求項6に記載の紙製密封容器用素材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−6075(P2011−6075A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−148515(P2009−148515)
【出願日】平成21年6月23日(2009.6.23)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】