説明

紡績機

【課題】糸貯留ローラ上に残留した紡績糸の除去を効率的に行うことのできる紡績機を提供する。
【解決手段】精紡機は、糸貯留ローラと、電動モータと、ユニットコントローラと、を備える。糸貯留ローラは、紡績装置で生成された紡績糸を外周面に巻き付けて回転することで、紡績糸を一時的に貯留する。電動モータは、糸貯留ローラを回転駆動する。ユニットコントローラは、糸貯留ローラに巻き付いた紡績糸の解舒が必要になった場合に、糸貯留ローラを逆回転させるように電動モータを制御する第1制御を行う。その後、ユニットコントローラは、第1制御における回転速度より高速で糸貯留ローラを逆回転させるように電動モータを制御する第2制御を行う。そして、ユニットコントローラは、第2制御において糸貯留ローラの逆転速度を一時的に増加させてフライヤー等に絡まった糸を振り払う制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糸貯留ローラを備えた紡績機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、紡績装置と、糸弛み取り装置(糸貯留装置)と、糸吸引装置(吸引装置)と、を備えた構成の紡績機を開示する。
【0003】
糸弛み取り装置は、デリベリローラの下流側に配置され、その外周に糸を巻き付けることが可能な糸弛み取りローラ(糸貯留ローラ)を備える。この糸弛み取りローラは回転駆動され、紡績装置から連続的に送り出される糸(紡績糸)をその外周に巻き付けて一時的に貯留することで、糸継時に発生する糸の弛みを防止するものである。
【0004】
糸吸引装置は、紡績装置と糸弛み取りローラとの間に配置され、糸吸引口に吸引流を発生させている。この糸吸引装置は、糸弛み取り装置の下流側で糸切れが発生した際に貯留ローラ上の糸を吸引除去する役割等を有する。
【0005】
次に、糸弛み取り装置の下流側で糸切れが発生した際における、糸弛み取りローラ上の糸の除去について説明する。通常の巻取時においては、糸弛み取りローラ上に一時的に貯留された糸は、巻取装置によって張力が加えられることで下流側に向かって解舒され、巻取装置に巻き取られる。しかし、糸弛み取り装置の下流側(糸弛み取り装置と巻取装置との間)で糸切れが発生した場合、糸弛み取りローラ上の糸に巻取装置によって張力を与えることができないので、糸弛み取りローラ上に糸が残留することになる。
【0006】
そこで、糸弛み取り装置の下流で糸切れが発生した場合に、糸弛み取りローラ上の糸を除去するため、特許文献1のような紡績機においては以下のような処理を行う。即ち、糸切れが検知されると、糸弛み取りローラを停止させた後に、糸弛み取りローラを逆回転させる。そして、糸弛み取りローラの上流側(糸弛み取り装置と紡績装置との間)で糸を切断して、糸吸引装置にこの糸を吸引させていく。このようにして、糸弛み取りローラ上に残留していた糸を、糸吸引装置によって吸引除去することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−124333号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記特許文献1のような紡績機は、経験的に定めた一定の速度及び時間で糸弛み取りローラを逆回転させているため、紡績の条件を変更するごとに速度及び時間を再設定する必要があった。しかも経験的に定めた値では正確性に欠け、糸弛み取りローラを余分に回転してしまうこともあった。
【0009】
更に、糸弛み取りローラの逆回転によって解舒された糸が、糸弛み取りローラの周辺に絡んでしまうことがある。このような糸の絡みがあると、糸の吸引除去を続行することができず、糸の絡み付きを手作業でほどく必要があった。従って、紡績作業における多大な時間ロスの原因となっていた。
【0010】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その目的は、糸貯留ローラ上に残留した紡績糸の除去を効率的に行うことのできる紡績機を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0011】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0012】
本発明の観点によれば、以下の構成の紡績機が提供される。即ち、この紡績機は、糸貯留ローラと、駆動モータと、制御部と、を備える。前記糸貯留ローラは、紡績装置で生成された紡績糸を外周面に巻き付けて回転することで、紡績糸を一時的に貯留する。前記駆動モータは、前記糸貯留ローラを回転駆動する。前記制御部は、前記糸貯留ローラに巻き付いた紡績糸の解舒が必要になった場合に、前記糸貯留ローラを巻取時の回転方向と逆方向に回転させるように前記駆動モータを制御する第1制御を行う。その後、前記制御部は、前記第1制御における回転速度より高速で前記糸貯留ローラを巻取時の回転方向と逆方向に回転させるように前記駆動モータを制御する第2制御を行う。また、前記制御部は、前記第2制御において前記糸貯留ローラの逆転速度を一時的に増加させる制御を行う。
【0013】
これにより、糸貯留ローラを逆回転させる前後において糸貯留ローラの周囲に紡績糸が絡んだ場合でも、糸貯留ローラの逆転速度を一時的に増加させることで、糸貯留ローラの周囲に絡んだ紡績糸を遠心力で振り払うことができる。そのため、このような紡績糸の絡み付きを手作業で除去する必要がなくなり、紡績作業を効率良く行うことができる。
【0014】
前記の紡績機においては、前記制御部は、前記第2制御の後に、前記糸貯留ローラを巻取時の回転方向に回転させるように前記駆動モータを制御する第3制御を行うことが好ましい。
【0015】
これにより、糸貯留ローラを巻取時の方向に回転させることで、逆回転時に除去しきれずに糸貯留ローラ上に残留した紡績糸を振り払うことができる。そのため、このような紡績糸を手作業で除去する必要がなくなり、紡績作業を効率良く行うことができる。
【0016】
前記の紡績機においては、前記制御部は、前記第2制御における、前記糸貯留ローラを回転させる速度、前記糸貯留ローラを回転させる量、及び前記糸貯留ローラを回転させる時間、のうち少なくとも1つを紡績速度に応じて変更することが好ましい。
【0017】
これにより、糸貯留ローラに巻き付いている紡績糸の量を紡績速度に基づいて見積もることができるので、糸貯留ローラを余分に回転させることなく、巻き付いた紡績糸を解舒することができる。
【0018】
前記の紡績機においては、前記糸貯留ローラに貯留されている紡績糸が所定量以上であるか所定量未満であるかを検出する貯留量センサを備えることが好ましい。
【0019】
これにより、糸貯留ローラに残留した紡績糸の除去時においては、この紡績糸が一定量以上から一定量未満に変化することを調べることができる。そのため、この紡績糸を逆回転により解舒できているか否かを検出できる。また、紡績時においては、糸貯留ローラに溜める糸量を制御して適量に保つことができる。
【0020】
前記の紡績機においては、前記制御部は、前記糸貯留ローラに貯留されている紡績糸が所定量未満であると前記貯留量センサが検出したときに、前記第1制御から前記第2制御に移行することが好ましい。
【0021】
これにより、糸貯留ローラに残留した紡績糸が解舒され始めたことを貯留量センサで検出してから、第2制御で糸貯留ローラの回転速度を増加させることができる。そのため、紡績糸の解舒に失敗した状態で高速回転をして当該紡績糸が様々な箇所に絡み付くことを防止できる。そのため、絡んだ糸の処理に要する時間を著しく低減できる。
【0022】
前記の紡績機においては、前記制御部は、前記第2制御において、前記糸貯留ローラに貯留されている紡績糸が所定量以上であると前記貯留量センサが検出したときに、前記糸貯留ローラの回転を停止させることが好ましい。
【0023】
これにより、逆回転の影響で紡績糸が糸貯留ローラに逆向きに巻き付いてしまった場合でも、それを貯留量センサで検出して直ちに糸貯留ローラの回転を停止させることができる。そのため、紡績糸の解舒に失敗したときの影響を小さくでき、例えば糸貯留ローラへの糸の大量の巻付きを防止することができる。
【0024】
前記の紡績機においては、前記制御部は、前記第1制御において、前記糸貯留ローラの回転量が所定数に達したとき、又は所定の時間が経過したときに、前記糸貯留ローラに貯留されている紡績糸が所定量未満であると前記貯留量センサが検出しない場合は、前記糸貯留ローラの回転を停止させることが好ましい。
【0025】
これにより、紡績糸の解舒が開始しないことを貯留量センサで検出して糸貯留ローラの回転を停止させることができる。そのため、紡績糸が長時間にわたって糸貯留ローラの周囲を回転することを防止でき、糸貯留ローラの周囲に糸が絡み付く可能性を低くすることができる。
【0026】
前記の紡績機においては、前記糸貯留ローラの外周面近傍に配置された吸引口に吸引流を発生させることが可能な吸引装置を備えることが好ましい。
【0027】
これにより、糸貯留ローラに巻き付いていた紡績糸が解舒されたときに即座に除去することができる。従って、ほどかれた糸が再び糸貯留ローラに巻き付くことを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】精紡機の全体的な構成を示す正面図。
【図2】精紡機の縦断面図。
【図3】精紡機の主要な構成を示すブロック図。
【図4】糸貯留装置の縦断面図。
【図5】糸貯留装置の外観斜視図。
【図6】糸切れ等の検出及び第1制御を説明するフローチャート。
【図7】糸貯留ローラが第1速度で逆回転している様子を示す斜視図。
【図8】糸貯留ローラが第2速度で逆回転を開始する直前の様子を示す斜視図。
【図9】第2制御を説明するフローチャート。
【図10】糸貯留ローラが第3速度で逆回転している様子を示す斜視図。
【図11】第3制御を説明するフローチャート。
【図12】サクションパイプとサクションマウスによって上糸と下糸を捕捉している様子を示す縦断面図。
【図13】スプライサに上糸と下糸を案内した時の様子を示す縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
次に、本発明の一実施形態に係る精紡機(紡績機)1について、図面を参照して説明する。なお、以下において「上流」及び「下流」とは、紡績時での糸の走行方向における上流及び下流を意味するものとする。図1は精紡機1の全体的な構成を示す正面図、図2は精紡機1の縦断面図、図3は精紡機1の主要な構成を示すブロック図である。
【0030】
図1に示す紡績機としての精紡機1は、並べて配置された多数の錘(紡績ユニット2)を備えている。また、この精紡機1は、糸継台車3と、ブロアボックス80と、原動機ボックス5と、を備えている。
【0031】
図1に示すように、各紡績ユニット2は、上流から下流へ向かって順に、ドラフト装置7と、紡績装置9と、糸貯留装置12と、下糸センサ31と、巻取装置13と、を主要な構成として備えている。ドラフト装置7は精紡機1が備えるフレーム6の上端近傍に設けられており、このドラフト装置7から送られてくる繊維束8を紡績装置9で紡績するように構成している。紡績装置9から送出された紡績糸10は後述のヤーンクリアラ52を通過した後、糸貯留装置12で送られて巻取装置13によって巻き取られ、これによりパッケージ45が形成される。
【0032】
ドラフト装置7は、スライバ15を延伸して繊維束8にするためのものである。このドラフト装置7は図2に示すように、バックローラ16、サードローラ17、エプロンベルト18を装着したミドルローラ19、及びフロントローラ20の4つのローラを備えている。これらのローラは図略のモータと接続されており、これらのモータを駆動することでドラフト装置7が駆動し、これらのモータを停止させることでドラフト装置7を停止させることができる。なお、これらのモータの駆動及び停止は、図3に示すようにユニットコントローラ(制御部)60によって制御されている。
【0033】
紡績装置9の詳細な構成は図示しないが、本実施形態では、旋回気流を利用して繊維束8に撚りを与える空気式のものを採用している。この旋回気流を紡績装置9内部に発生させることで、紡績糸10を生成することができる。また、旋回気流の発生を停止させることにより、紡績糸10の生成を停止させることもできる。なお、この旋回気流の発生及び停止は、図3に示すようユニットコントローラ60によって制御されている。
【0034】
紡績装置9の下流には、糸貯留装置12が設けられている。この糸貯留装置12は、紡績糸10に所定の張力を与えて紡績装置9から引き出す機能と、糸継台車3による糸継時などに紡績装置9から送出される紡績糸10を滞留させて糸の弛みを防止する機能と、巻取装置13側の張力の変動が紡績装置9側に伝わらないように張力を調節する機能と、を有している。図2に示すように、糸貯留装置12は、糸貯留ローラ21と、糸掛け部材22と、上流側ガイド23と、電動モータ(駆動モータ)25と、下流側ガイド26と、貯留量センサ27と、を備えている。
【0035】
糸掛け部材22は、紡績糸10に係合する(引っ掛ける)ことが可能に構成されており、紡績糸10に係合した状態で糸貯留ローラ21と一体的に回転することで、当該糸貯留ローラ21の外周面に紡績糸10を案内できるように構成されている。
【0036】
糸貯留ローラ21は、その外周面に紡績糸10を巻き付けて貯留できるように構成されている。また、糸貯留ローラ21は、電動モータ25によって回転駆動される。この構成で、糸掛け部材22によって糸貯留ローラ21の外周面に案内された紡績糸10は、糸貯留ローラ21が回転することにより当該糸貯留ローラ21を締め付けるようにして巻かれ、糸貯留装置12よりも上流側の紡績糸10を引っ張る。これにより、紡績装置9から紡績糸10を連続的に引き出すことができる。
【0037】
貯留量センサ27は、糸貯留ローラ21上に貯留されている紡績糸10の貯留量が所定量以上であるか所定量未満であるかを非接触式で検出し、ユニットコントローラ60に送信するように構成されている。
【0038】
上流側ガイド23は、糸貯留ローラ21のやや上流側に配置されている。この上流側ガイド23は、糸貯留ローラ21の外周面に対して糸を適切に案内する案内部材として構成されるとともに、紡績装置9から伝播してくる紡績糸10の撚りが当該上流側ガイド23よりも下流側に伝わることを防止する撚り止めの役割を兼ねている。
【0039】
下流側ガイド26は、糸貯留ローラ21のやや下流側に配置されている。この下流側ガイド26は、回転する糸掛け部材22によって振り回される紡績糸10の軌道を規制し、これより下流側の糸の走行経路を安定させて紡績糸10を案内する案内部材として構成されている。
【0040】
また、糸貯留ローラ21の近傍には、吸引装置30が配置されている。この吸引装置30には接続チューブ30aが接続されており、この接続チューブ30aはブロアボックス80が備える図略のブロアに接続されている。この構成で、吸引装置30に吸引流を発生させることができる。
【0041】
精紡機1のフレーム6の前面側であって前記紡績装置9と前記糸貯留装置12との間の位置には、ヤーンクリアラ(糸欠陥検出装置)52が設けられている。そして、紡績装置9で紡出された紡績糸10は、糸貯留装置12で巻き取られる前に前記ヤーンクリアラ52を通過するようになっている。ヤーンクリアラ52は走行する紡績糸10の太さを監視し、紡績糸10の糸欠点を検出した場合に、糸欠点検出信号をユニットコントローラ60へ送信するように構成されている。また、ヤーンクリアラ52の近傍には、パッケージ45が満管になったとき等に紡績糸10を切断するためのカッタ57が配置されている。
【0042】
糸継台車3は、図1及び図2に示すように、スプライサ(糸継装置)43と、サクションパイプ44と、サクションマウス46と、を備えている。糸継台車3は、ある紡績ユニット2で糸切れや糸切断が発生すると、フレーム6に固定されたレール41上を当該紡績ユニット2まで走行し、停止して糸継ぎを行うように構成されている。
【0043】
前記サクションパイプ44は、軸を中心に上下方向に回動可能であり、紡績装置9から送出される糸端(上糸)を吸い込みつつ捕捉して、スプライサ43へ案内できるように構成されている。サクションマウス46は、軸を中心に上下方向に回動可能であり、前記巻取装置13に支持されたパッケージ45から糸端(下糸)を吸引しつつ捕捉して、スプライサ43へ案内できるように構成されている。スプライサ43の詳細な構成については省略するが、旋回空気流によって糸端同士を撚り合わせることにより、上糸と下糸とを糸継ぎするように構成されている。
【0044】
前記下糸センサ31は、糸貯留装置12と巻取装置13との間に配置され、当該位置において紡績糸10が存在するか否かを検出するように構成されている。この下糸センサ31が検出した下糸信号は、ユニットコントローラ60へ送信される。
【0045】
巻取装置13は、支軸70まわりに揺動可能に支持されたクレードルアーム71を備える。このクレードルアーム71は、紡績糸10を巻き取るためのボビン48を回転可能に支持することができる。
【0046】
また、前記巻取装置13は、巻取ドラム72と、トラバース装置75と、を備えている。巻取ドラム72は、前記ボビン48やそれに紡績糸10を巻き付けて形成されるパッケージ45の外周面に接触して駆動できるように構成されている。また、トラバース装置75は、紡績糸10に係合可能なトラバースガイド76を備えている。この構成で、トラバースガイド76を図略の駆動手段によって往復動させながら巻取ドラム72を図略の電動モータによって駆動することで、巻取ドラム72に接触するパッケージ45を回転させ、紡績糸10を綾振りしつつ巻き取るようになっている。
【0047】
次に、糸貯留装置12の詳細な構成について図4及び図5を参照して説明する。図4は、糸貯留装置12の縦断面図である。図5は、糸貯留装置12の外観斜視図である。
【0048】
前記糸貯留ローラ21は耐摩耗性を有する材料で構成されたローラ部材であって、電動モータ25のモータ軸25aに固定されている。この糸貯留ローラ21の外周面21aは、糸掛け部材22を有する側を先端、電動モータ25が配置されている側を基端とすると、基端から先端に向かって順に、基端側テーパ部21bと、円筒部21cと、先端側テーパ部21dと、を備えている。
【0049】
円筒部21cは、先端側が僅かに細まる形状に構成されるとともに、両側のテーパ部21b,21dに対し段差なく連続する形状になっている。また、前記貯留量センサ27(図5では図示していない)がこの円筒部21cに対向するように備えられており、糸貯留ローラ21に巻き付いている糸の貯留量を検知してユニットコントローラ60に送信するように構成されている。具体的には、貯留量センサ27は図5に示す検出位置P1(図5の鎖線で囲まれた範囲)を監視しており、この検出位置P1に紡績糸10が巻き付いていれば、ユニットコントローラ60への出力がONになる。一方、この検出位置P1に紡績糸10が巻き付いておらず、円筒部21cが露出していればユニットコントローラ60への出力はOFFになる。
【0050】
基端側テーパ部21b及び先端側テーパ部21dは、それぞれ端面側を大径側とする緩やかなテーパ状に構成されている。糸貯留ローラ21の外周面21aにおいて、基端側テーパ部21bは、供給された紡績糸10を大径部分から小径部分に向かって円滑に移動させて円筒部21cへ到達させることで、紡績糸10を円筒部21cの表面に整然と巻き付かせるように構成されている。また、先端側テーパ部21dは、紡績糸10を下流側に向かって解舒する際に、巻き付いている紡績糸10が一度に抜けてしまう輪抜け現象を防止すると同時に、紡績糸10を小径部分から端面側の大径部分へ順送りに巻き戻して、紡績糸10の円滑な引出しを確保する機能を有している。
【0051】
また、糸貯留ローラ21の近傍には吸引装置30が配置されている。この吸引装置30は、パイプ状に形成された吸引パイプ30cを備える。この吸引パイプ30cの一端側は開放端となっており、吸引流を発生させる吸引口30bを構成している。この吸引口30bは、糸貯留ローラ21の外周面近傍であって、当該糸貯留ローラ21の基端側端部に寄せて配置されている。この構成で、糸貯留ローラ21の基端側に巻かれている紡績糸10は、吸引装置30による吸引流の作用を受ける。なお、この吸引パイプ30cは、前述の接続チューブ30aと連通している。これにより、吸引口30bから吸い込まれた繊維屑や屑糸は、接続チューブ30aを介して除去され、最終的に所定の場所に集めて廃棄される。
【0052】
前記電動モータ25の駆動(駆動させる方向を含む)及び停止は、図3に示すようにユニットコントローラ60によって制御されている。これにより、ユニットコントローラ60は、糸貯留ローラ21の駆動等を制御することが可能になっている。通常の巻取時においては、ユニットコントローラ60は、通常の巻取時の回転方向に一定速度で糸貯留ローラ21を回転駆動する。これにより、一定速度で糸貯留ローラ21に紡績糸10が巻かれ、この巻かれた紡績糸10に引っ張られることで、紡績装置9から紡績糸10が一定速度で引き出される。
【0053】
なお、以下の説明では、通常の巻取時の回転方向に糸貯留ローラ21を回転させることを単に正回転と呼び、通常とは逆方向に回転させることを単に逆回転と呼ぶことがある。
【0054】
糸貯留ローラ21の先端側に配置される糸掛け部材22は、図4及び図5に示すように、前記糸貯留ローラ21と軸線を一致させて配置される。この糸掛け部材22は、フライヤー軸33と、その先端に固定されるフライヤー38と、を備えている。
【0055】
フライヤー軸33は、糸貯留ローラ21に対して相対回転可能に支持されている。一方、フライヤー軸33又は糸貯留ローラ21の何れか一方には永久磁石が取り付けられ、他方には磁気ヒステリシス材が取り付けられている。これらの磁気的手段により、糸掛け部材22が糸貯留ローラ21に対し相対回転するのに抗するトルクが発生するように構成されている。この抵抗トルクにより、糸掛け部材22は糸貯留ローラ21の回転に追従して回転し、結果として両者が一体的に回転できるように構成されている。一方、この抵抗トルクに打ち勝つような力が糸掛け部材22に加わった場合は、糸掛け部材22は糸貯留ローラ21に対して相対的に回転することができる。
【0056】
また、前記フライヤー38は、前記糸貯留ローラ21の外周面21aに向かって適宜湾曲し、紡績糸10と係合する(紡績糸10を引っ掛ける)ことができる形状に構成されている。糸貯留ローラ21上に糸が巻き付けられていない状態で、フライヤー38が糸貯留ローラ21と一体的に正回転すると、このフライヤー38が紡績糸10に係合する。そして、この回転するフライヤー38に係合した紡績糸10は、当該フライヤー38によって振り回され、正回転する糸貯留ローラ21の外周面へ案内されて巻き付けられる。
【0057】
図5のように糸貯留ローラ21の外周面に紡績糸10が巻き付けられると、紡績糸10と糸貯留ローラ21との間に摩擦力が働く。従って、この状態で糸貯留ローラ21が一定速度で正回転すると、当該糸貯留ローラ21より上流側の紡績糸10を引っ張る力が働き、紡績装置9から一定速度で紡績糸10を引き出すことができる。
【0058】
正回転する糸貯留ローラ21に巻き付けられた紡績糸10の様子を説明すると、以下のとおりである。即ち、上流側ガイド23を通った紡績糸10は、基端側から外周面21aに案内され、円筒部21cに複数回巻き付けられる。円筒部21cに巻き付けられた紡績糸10は、糸貯留ローラ21の正回転により紡績糸10が基端側に新たに巻かれることによって、基端側から徐々に先端側へ送られる。そして、外周面21aの先端側から引き出された紡績糸10は、フライヤー38を通過した後、下流側ガイド26を通って下流に送られる。
【0059】
また、図5のように糸貯留ローラ21に紡績糸10が巻き付いた状態で、フライヤー38に係合している紡績糸10を下流側に引っ張る力が与えられると、糸貯留ローラ21の先端側から紡績糸10を解舒するように糸掛け部材22を回転させようとする力が、フライヤー38に加わる。従って、糸貯留装置12の下流側の糸張力(糸貯留装置12と巻取装置13と間の糸張力)が前記抵抗トルクに打ち勝つほど強ければ、糸掛け部材22が糸貯留ローラ21と独立して回転することにより、糸貯留ローラ21の先端側からフライヤー38を介して紡績糸10が徐々に解舒される。
【0060】
逆に、糸貯留装置12の下流側の糸張力が前記抵抗トルクに打ち勝つほど強くない場合は、糸掛け部材22が糸貯留ローラ21と一体的に回転する。この場合、糸掛け部材22は、回転する糸貯留ローラ21の先端側から紡績糸10が解舒されることを阻止するように働く。
【0061】
このように、糸貯留装置12は、下流側の糸の張力が上がると糸を解舒し、糸の張力が下がる(糸が弛みそうになる)と糸の解舒を止めるように動作することで、糸の弛みを解消して適切な張力を付与することができる。
【0062】
また、糸貯留装置12は、糸継中においても糸の弛みを解消している。即ち、糸継動作中は巻取装置13による巻取りは停止しているが、この間にも紡績糸10は紡績装置9から連続的に送出されている。そのため、紡績糸10をそのままにしていると糸の弛みが発生してしまう。そこで、紡績糸10を糸貯留ローラ21に巻き付かせることで、紡績糸10の弛みを防止している。
【0063】
また、上記のように、糸貯留装置12から巻取装置13までの間における紡績糸10の張力変動を吸収するように糸掛け部材22が動作することで、その張力変動が、紡績装置9から糸貯留装置12までの間の紡績糸10に影響を及ぼすことを防止できる。以上の構成の糸貯留装置12により、紡績装置9から紡績糸10をより安定した速度で引き出すことができる。
【0064】
次に、本実施形態の精紡機1において糸貯留装置12より下流側で糸切れ等が生じ、糸貯留ローラ21に巻き付いた紡績糸10を除去する必要が生じた場合にユニットコントローラ60が行う制御について説明する。この制御は、第1制御、第2制御及び第3制御を含んでいる。なお、以下の説明では、所定の時点から糸貯留ローラ21が回転した回数を単に回転量と称することがある。
【0065】
初めに、ユニットコントローラ60の一連の制御のうち、糸切れ等が生じたことを検出して第1制御を行うまでの部分について、図6、図7及び図8を参照して説明する。図6は、糸切れ等の検出及び第1制御を説明するフローチャートである。図7は、糸貯留ローラ21が第1速度で逆回転している様子を示す斜視図である。図8は、糸貯留ローラ21が第2速度で逆回転を開始する直前の様子を示す斜視図である。
【0066】
紡績中に糸貯留装置12の下流側(糸貯留装置12と巻取装置13との間)で糸切れが発生した場合又はスプライサ43が糸継ぎに失敗した場合は、糸貯留ローラ21上の糸に巻取装置13によって張力を与えることができない。そのため、紡績糸10を下流側に向かって解舒することができなくなる。
【0067】
このような糸切れ及び糸継ぎミスは、下糸センサ31によって検出される。つまり、下糸センサ31が紡績糸10を所定時間(例えば1秒程度)検知しなくなると、ユニットコントローラ60は、糸貯留装置12と巻取装置13との間で糸が切れており、巻取作業の続行が不可能であると判断する(S101)。ユニットコントローラ60は、糸切れ等が生じたと判定された場合、即座にドラフト装置7や紡績装置9等を停止させ、紡績糸10を切断する(S102)。
【0068】
また、ユニットコントローラ60は紡績糸10の切断後も糸貯留ローラ21の正回転を継続させ、これにより、紡績装置9等の停止により切断された糸端を糸貯留ローラ21に巻き取る。この後、第1制御に移行する(S103)。
【0069】
第1制御において、ユニットコントローラ60は、電動モータ25を停止させ、更に逆回転する方向へ駆動させることで、糸貯留ローラ21を逆回転させる(S104)。この逆回転は比較的低速度な第1速度で行われる。
【0070】
また、糸貯留ローラ21の基端側近傍には、吸引装置30の吸引口30bが配置され、吸引流を発生させている。紡績装置9等の停止によって切断された紡績糸10の糸端は、糸貯留ローラ21に巻き取られる際に基端側から巻き取られるため、吸引口30bに吸引される。仮に、ここで糸端が吸引されなかった場合においても、前記第1速度は比較的低速度であり糸端は緩やかに基端側を半径方向に回転するため、糸端は殆ど場合、吸引流の作用を受けて吸引口30bに吸い込まれる。なお、糸端が吸引口30bに吸引される直前の様子を図7に示す。
【0071】
また、糸貯留ローラ21を正回転させていた時は、当該糸貯留ローラ21の基端側から紡績糸10が巻き付いていたため、糸貯留ローラ21を逆回転させると、当該基端側から紡績糸10が解舒されることとなる。そして、上記のように糸端が吸引された状態で糸貯留ローラ21が逆回転することにより、当該糸貯留ローラ21の基端側から、当該糸貯留ローラ21上に貯留されていた紡績糸10が次々と解舒されていく。そして、この解舒とともに、糸貯留ローラ21上に残留した紡績糸10は、吸引装置30に順次吸引されていく。
【0072】
また、前述したように、糸貯留ローラ21の基端側に対向する位置には、貯留量センサ27(図7では図示していない)が配置されている。ユニットコントローラ60は、この貯留量センサ27からの出力(ON又はOFF)に基づいて制御を行っている(S105)。
【0073】
以下、具体的に説明する。図7においては、検出位置P1において紡績糸10が巻き付いているため、貯留量センサ27のユニットコントローラ60への出力はONのままである。一方、基端側から紡績糸10が解舒されていき、図8に示すように検出位置P1における紡績糸10が解舒されると、貯留量センサ27の出力がOFFになる。貯留量センサ27の出力信号がOFFになると、ユニットコントローラ60は、紡績糸10の解舒に成功していると判断して第2制御へ移行する。また、糸貯留ローラ21を逆回転させる前後において、糸貯留ローラ21のフライヤー38等に紡績糸が絡んでしまうことがあり、この様子を図8に示している。
【0074】
なお、上記の第1制御において、第1制御に移行してからの回転量が所定数に達したとき、又は第1制御に移行してから所定時間が経過したときに、貯留量センサ27の出力がONのままである場合は、紡績糸10が解舒されていない(紡績糸10が吸引口30bに吸引されていない)と判断される。この場合、ユニットコントローラ60は電動モータ25を停止させて糸貯留ローラ21の回転を停止させる(S106)。
【0075】
次に第2制御について図9及び図10を参照して説明する。図9は、第2制御を説明するフローチャートである。図10は、糸貯留ローラ21が第3速度で逆回転している様子を示す斜視図である。
【0076】
第2制御に移行すると、ユニットコントローラ60は、電動モータ25の回転数を上げ、糸貯留ローラ21を第1速度より高速な第2速度で逆回転させる(S107)。このように高速で逆回転させることで、糸貯留ローラ21に残留している紡績糸10を高速で解舒することができる。
【0077】
また、第2制御においても貯留量センサ27からの信号は常時ユニットコントローラ60に送られている(S108)。ユニットコントローラ60は、この出力がOFFのままであれば、特に制御を行わない。しかし、貯留量センサ27の出力信号がONになれば、解舒した紡績糸10が糸貯留ローラ21に再び巻き付いていると判断し、紡績は停止される(S108,S111,S114)。なお、この巻付きは、通常時と逆方向に(即ち、先端側から基端側に向かって)進んでいく。
【0078】
また、ユニットコントローラ60は、第2速度で逆回転させてからの回転量及び時間をカウントしている(S109)。そして、この回転量又は時間が所定値を超えると、電動モータ25の回転数を上げ、糸貯留ローラ21を第2速度よりも高速な第3速度で逆回転させる(S110)。
【0079】
この第3速度で一時的に回転させることにより、紡績糸10がフライヤー38に絡んでいたとしても、図10に示すように、遠心力によって絡んだ紡績糸10を振り払うことができる。
【0080】
また、第3速度は、紡績糸10が吸引装置30に吸引される速度よりも相当に速くなっており、第3速度で紡績糸10の解舒を継続すると吸引が追いつかず、糸貯留ローラ21の近傍に紡績糸10が溜まってしまう。この場合、紡績糸10が糸貯留ローラ21周辺の各所に絡んでしまう。そのため、第3速度で糸貯留ローラ21を駆動する回転量又は時間は、比較的短く設定されている。この第3速度で逆回転させてからの回転量又は時間は、S109と同様にユニットコントローラ60がカウントしている(S112)。そして、ユニットコントローラ60は、この回転量又は時間が所定値を超えると電動モータ25を制御して、再び第2速度で逆回転させる(S113)。
【0081】
ユニットコントローラ60は、上記のような第2速度による(2度目の)逆回転を、当該速度で逆回転させてからの回転量又は時間が所定値を超えるまで行い、その後に第3制御に移行する。この所定時間についても、S109及びS112と同様にユニットコントローラ60がカウントしている(S115)。
【0082】
なお、第2制御において糸貯留ローラ21を逆回転させる時間は、設定された条件からユニットコントローラ60によって自動的に求められている。この求め方としては例えば以下の方法が考えられる。
【0083】
即ち、糸貯留ローラ21に残留した紡績糸10の長さの想定される最大値を予め見積もっておく。なお、通常は、糸貯留ローラ21に紡績糸10が巻き付く長さが最大となるのは、糸継作業の直後の時点である。なぜなら、前述のように、糸継中においても糸貯留ローラ21は正方向に回転しており、上流から走行してくる紡績糸10を巻き続けている。一方、糸継中は糸貯留ローラ21の下流に紡績糸10が供給されないため、糸継作業の時間(本実施形態においては、1秒程度の時間)において紡績装置9から供給される紡績糸10が糸貯留ローラ21に溜まることになる。
【0084】
また、前述のとおり、糸切れ等が生じてから所定の時間(例えば1秒程度)が経過するまでは、糸切れ等が生じたと判断されない。そのため、この所定の時間に紡績装置9から供給される紡績糸10が糸貯留ローラ21に更に巻き付いていると考えられる。
【0085】
また、紡績速度は、予め設定されており、糸継ぎの所要時間と、糸切れと判断されるまでの時間と、も同様に設定可能である。そのため、上記の時間の和に紡績速度を乗じることで、紡績糸10の長さの想定される最大値を求めることができる。ユニットコントローラ60は、糸貯留ローラ21に巻き付いている紡績糸10の長さがこの最大値であったとしても紡績糸10が全て解舒できるように、糸貯留ローラ21の回転速度と、回転量及び回転時間に対する所定値を定めている。
【0086】
次に第3制御について図11〜図13を参照して説明する。図11は、第3制御を説明するフローチャートである。図12は、サクションパイプ44とサクションマウス46によって上糸と下糸を捕捉している様子を示す縦断面図である。図13は、スプライサ43に上糸と下糸を案内した時の様子を示す縦断面図である。
【0087】
第2制御が終わった段階では、糸貯留ローラ21に巻き付いている紡績糸10は全て除去されているはずである。しかし、第3速度での逆回転時に除去しきれなかった紡績糸10が未だフライヤー38等に引っ掛かっている可能性もあり、このような紡績糸10を振り払うために、ユニットコントローラ60は糸貯留ローラ21を正回転させる(S116)。
【0088】
糸貯留ローラ21の正回転は、当該速度で正回転させてからの回転量又は時間が所定値を超えるまで継続されるが(S117)、この所定値は比較的小さく設定されている。そして、ユニットコントローラ60は糸継台車3に制御信号を送り、当該紡績ユニット2の前まで走行させて、糸継動作を開始させる(S118)。まず、ユニットコントローラ60は、サクションマウス46をパッケージ45の表面近傍まで回動させ(図12を参照)、吸引流を作用させるとともに、巻取装置13によってパッケージ45を逆回転させる。これにより、パッケージ45の外周面から糸端(下糸)が引き出され、サクションマウス46によって吸引捕捉される。
【0089】
続いて、パッケージ45を逆回転させつつ、下糸を吸引した状態でサクションマウス46を上方に回動させて当該下糸をスプライサ43へ案内する(図13を参照)。スプライサ43に下糸が案内されると、パッケージ45の回転を停止させる。
【0090】
また、上記サクションマウス46の回動動作と前後して、ユニットコントローラ60は、サクションパイプ44を紡績装置9の下流側近傍まで回動させる(図12を参照)。そして、ユニットコントローラ60は、紡績装置9等を再び駆動して紡績を再開させるとともに、サクションパイプ44に吸引流を発生させて紡績装置9側の糸端(上糸)を捕捉する。続いて、吸引を続行しながらサクションパイプ44を下方に回動させることで、紡績装置9から紡績糸10を引き出しつつ、スプライサ43へ案内する(図13を参照)。
【0091】
そして、スプライサ43による糸継ぎが完了すると、巻取装置13による通常の巻取りが再開する。
【0092】
以上で説明したように、本実施形態の精紡機1は、糸貯留ローラ21と、電動モータ25と、ユニットコントローラ60と、を備える。糸貯留ローラ21は、紡績装置9で生成された紡績糸10を外周面に巻き付けて回転することで、紡績糸10を一時的に貯留する。電動モータ25は、糸貯留ローラ21を回転駆動する。ユニットコントローラ60は、糸貯留ローラ21に巻き付いた紡績糸10の解舒が必要になった場合に、糸貯留ローラ21を逆回転させるように電動モータ25を制御する第1制御を行う。その後、ユニットコントローラ60は、第1制御における回転速度より高速で糸貯留ローラ21を逆回転させるように電動モータ25を制御する第2制御を行う。そして、ユニットコントローラ60は、第2制御において糸貯留ローラ21の逆転速度を一時的に増加させる制御を行っている。
【0093】
これにより、糸貯留ローラ21を逆回転させる前後においてフライヤー38等に紡績糸10が絡んだ場合でも、糸貯留ローラ21の逆転速度を第3速度にして、速度を一時的に増加させることで、フライヤー38等に絡んだ糸を遠心力で振り払うことができる。そのため、絡み付いた紡績糸10を手作業で除去する必要がなくなり、紡績作業を効率良く行うことができる。
【0094】
また、本実施形態の精紡機1において、ユニットコントローラ60は、第2制御の後に、糸貯留ローラ21を正回転させるように電動モータ25を制御する第3制御を行っている。
【0095】
これにより、糸貯留ローラ21を巻取時の方向に回転させることで、逆回転時に除去しきれなかった紡績糸10を振り払うことができる。そのため、糸貯留ローラ21の周囲の不要糸を手作業で除去する必要がなくなり、紡績作業を効率良く行うことができる。
【0096】
また、本実施形態の精紡機1において、ユニットコントローラ60は、第2制御における糸貯留ローラ21の回転速度、糸貯留ローラ21の回転量、及び糸貯留ローラ21の回転時間を、紡績速度に応じて変更している。
【0097】
これにより、糸貯留ローラ21を余分に回転させることなく、巻き付いた紡績糸10を解舒することができる。
【0098】
また、本実施形態の精紡機1は、糸貯留ローラ21に貯留されている紡績糸10が所定量以上であるか所定量未満であるかを検出する貯留量センサ27を備えている。
【0099】
これにより、糸貯留ローラ21に残留した紡績糸10の除去時においては、この紡績糸10が一定量以上から一定量未満に変化することを調べることができるので、糸貯留ローラ21に巻き付いた紡績糸10を逆回転により解舒できているか否かを検出できる。また、紡績時においては、糸貯留ローラ21に溜める糸量を制御して適量に保つことができる。
【0100】
また、本実施形態の精紡機1において、ユニットコントローラ60は、糸貯留ローラ21に貯留されている紡績糸10が所定量未満であると貯留量センサ27が検出したときに、第1制御から第2制御に移行している。
【0101】
これにより、糸貯留ローラ21に巻き付いた紡績糸10が解舒され始めたことを貯留量センサ27で検出してから、第2制御で糸貯留ローラ21の回転速度を増加させることができる。そのため、紡績糸10の解舒に失敗した状態で高速回転をして当該紡績糸10が様々な箇所に絡み付くことを防止できる。そのため、絡んだ糸の処理に要する時間を著しく低減できる。
【0102】
また、本実施形態の精紡機1において、ユニットコントローラ60は、第2制御において、糸貯留ローラ21に貯留されている紡績糸10が所定量以上であると貯留量センサ27が検出したときに、糸貯留ローラ21の回転を停止させている。
【0103】
これにより、逆回転の影響で紡績糸10が糸貯留ローラ21に逆向きに巻き付いてしまった場合でも、それを貯留量センサ27で検出して直ちに糸貯留ローラ21の回転を停止させることができる。そのため、紡績糸10の解舒に失敗したときの影響を小さくでき、例えば糸貯留ローラ21への糸の大量の巻付きを防止することができる。
【0104】
また、本実施形態の精紡機1において、ユニットコントローラ60は、第1制御において、回転量又は時間が所定値を超えても、糸貯留ローラ21に貯留されている紡績糸10が所定量未満であると貯留量センサ27が検出しないときに、糸貯留ローラ21の回転を停止させている。
【0105】
これにより、紡績糸10の解舒が開始しないことを貯留量センサ27で検出して糸貯留ローラ21の回転を停止させることができる。そのため、紡績糸10が長時間にわたって糸貯留ローラ21の周囲を回転することを防止でき、フライヤー38等に糸が絡み付く可能性を低くすることができる。
【0106】
また、本実施形態の精紡機1において、糸貯留ローラ21の外周面近傍に配置された吸引口30bに吸引流を発生させることが可能な吸引装置30を備える。
【0107】
これにより、糸貯留ローラ21に巻き付いていた紡績糸10が解舒されたときに即座に除去することができる。従って、ほどかれた糸が再び糸貯留ローラ21に巻き付くことを防止できる。
【0108】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0109】
第2制御において、糸貯留ローラ21の逆転速度として、第2速度及び第3速度の2段階の速度を用いたが、一時的に高速度で逆回転させる限り変化させる速度は、例えば、3段階、4段階以上に変化させても良い。また、一時的に高速度にするタイミングも任意である。
【0110】
糸継台車3によって糸継ぎを行う構成に代えて、各紡績ユニット2がそれぞれ糸継ぎのための構成を備えていても良い。
【0111】
糸掛け部材22と糸貯留ローラ21との間にトルクを加える方法は、上記のような磁気的な手段に限らず、例えば摩擦力でも良く、電磁気的な手段でも良い。
【0112】
また、糸掛け部材22と糸貯留ローラ21は相対回転可能でなくても良く、例えば特許文献1が開示する弛み取り装置のように、弛み取りローラに形成された切欠き部を糸掛け部として機能させることができる。
【0113】
吸引装置30の形状は上記のものに限らない。例えば、吸引パイプ30cの先端に吸引口30bを形成する構成に代えて、四角筒状の部材の先端に吸引口を形成するように構成しても良い。
【符号の説明】
【0114】
1 精紡機(紡績機)
10 紡績糸
12 糸貯留装置
21 糸貯留ローラ
25 電動モータ(駆動モータ)
27 貯留量センサ
30 吸引装置
30b 吸引口
31 下糸センサ
60 ユニットコントローラ(制御部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紡績装置で生成された紡績糸を外周面に巻き付けて回転することで、紡績糸を一時的に貯留する糸貯留ローラと、
前記糸貯留ローラを回転駆動する駆動モータと、
前記糸貯留ローラに巻き付いた紡績糸の解舒が必要になった場合に、
前記糸貯留ローラを巻取時の回転方向と逆方向に回転させるように前記駆動モータを制御する第1制御を行った後、前記第1制御における回転速度より高速で前記糸貯留ローラを巻取時の回転方向と逆方向に回転させるように前記駆動モータを制御する第2制御を行い、前記第2制御において前記糸貯留ローラの逆転速度を一時的に増加させる制御を行う制御部と、
を備えることを特徴とする紡績機。
【請求項2】
請求項1に記載の紡績機であって、
前記制御部は、前記第2制御の後に、前記糸貯留ローラを巻取時の回転方向に回転させるように前記駆動モータを制御する第3制御を行うことを特徴とする紡績機。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の紡績機であって、
前記制御部は、前記第2制御における、前記糸貯留ローラを回転させる速度、前記糸貯留ローラを回転させる量、及び前記糸貯留ローラを回転させる時間、のうち少なくとも1つを紡績速度に応じて変更することを特徴とする紡績機。
【請求項4】
請求項1から3までの何れか一項に記載の紡績機であって、
前記糸貯留ローラに貯留されている紡績糸が所定量以上であるか所定量未満であるかを検出する貯留量センサを備えることを特徴とする紡績機。
【請求項5】
請求項4に記載の紡績機であって、
前記制御部は、前記糸貯留ローラに貯留されている紡績糸が所定量未満であると前記貯留量センサが検出したときに、前記第1制御から前記第2制御に移行することを特徴とする紡績機。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の紡績機であって、
前記制御部は、前記第2制御において、前記糸貯留ローラに貯留されている紡績糸が所定量以上であると前記貯留量センサが検出したときに、前記糸貯留ローラの回転を停止させることを特徴とする紡績機。
【請求項7】
請求項4から6までの何れか一項に記載の紡績機であって、
前記制御部は、前記第1制御において、前記糸貯留ローラの回転量が所定数に達したとき、又は所定の時間が経過したときに、前記糸貯留ローラに貯留されている紡績糸が所定量未満であると前記貯留量センサが検出しない場合は、前記糸貯留ローラの回転を停止させることを特徴とする紡績機。
【請求項8】
請求項1から7までの何れか一項に記載の紡績機であって、
前記糸貯留ローラの外周面近傍に配置された吸引口に吸引流を発生させることが可能な吸引装置を備えることを特徴とする紡績機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−37572(P2011−37572A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−186065(P2009−186065)
【出願日】平成21年8月10日(2009.8.10)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】