説明

紫外線ミラーコート装置

【課題】
紫外線ミラーコート装置を搬送中に印刷紙が位置ずれを起こさず、かつ、ミラーコート後の印刷紙をフィルムから容易に剥がせる紫外線ミラーコート装置を提供する。
【解決手段】
紫外線硬化樹脂塗料がコーティングされた印刷紙が搬送コンベア7に取り付けられた咥え棒11の咥え爪12に先端を掴まれ上面にフィルム1が重ね合わされた状態で紫外線ミラーコート装置を搬送される。印刷紙上面の紫外線硬化樹脂塗料は紫外線照射装置4から紫外線の照射を受けて硬化し印刷面に対して艶出し又は艶出しと絵柄の転写が行われる。印刷紙は、紫外線ミラーコート装置を通過する間中、咥え棒11の咥え爪12によって咥えられて搬送され位置ずれを起こさない。フィルム1と搬送コンベア7とが離れるとき、咥え爪12によって掴まれた印刷紙は搬送コンベア7と共に移動を続け、密着していたフィルム1から確実に剥がされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷された紙面に対して紫外線硬化樹脂塗料を塗布し、その塗布面にフィルムを重ね合わせ、その印刷紙面上の紫外線硬化樹脂塗料に対し上記フィルムを介して紫外線を照射して紫外線硬化樹脂塗料を硬化させたあとフィルムを剥がすことからなる艶出しのためのミラーコートを施す紫外線ミラーコート装置に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷した紙面に対して艶出しのため上記した紫外線ミラーコート処理を施すことがあり、この紫外線ミラーコート処理を施すための紫外線ミラーコート装置がよく知られている(特許文献1から3など)。従来の紫外線ミラーコート装置の構成を図2により説明すると、図2において、21はエンドレスのフィルムで、複数のガイドローラ22の周りに矢印方向に走行される。23は加圧ローラで、印刷面上に紫外線硬化樹脂塗料がコーティングされて送られて来た印刷紙に走行するフィルム21が重ね合わせられたのを上方に配置されたガイドローラ22との間で挟んで圧着させる。24は紫外線ランプである。25はベルトコンベアを示しバキュームによって印刷紙を保持させて搬送するものなどが用いられる。加圧ローラ23によってフィルム21と圧着されてベルトコンベア25で搬送される印刷紙に塗布されている紫外線硬化樹脂塗料に対してフィルム21を通して紫外線ランプ24から紫外線を照射し紫外線硬化樹脂塗料を硬化させる。
【0003】
表面に塗布された紫外線硬化樹脂塗料が紫外線の照射によって硬化された印刷紙はベルトコンベア25によって、図示していない排紙装置に送られる。なお、図示した紫外線ミラーコート装置の前には紫外線ミラーコート処理を施すべき印刷紙を供給する給紙装置、給紙装置から送られて来る印刷紙の印刷面に対し紫外線硬化樹脂塗料を塗布するコータ装置が配置されているが図示を省略してある。
フィルム21としては平滑なものを用いる他、エンボス加工を施したフィルムを用い、そのエンボス形状を印刷紙面上の紫外線硬化樹脂塗料に転写して絵柄を施すことも行われることがある。紫外線ミラーコートを施す装置は、例えば特許文献1から3に開示されているように種々のものが提案されている。
【特許文献1】特開昭56−37398号公報
【特許文献2】特開平6−166170号公報
【特許文献3】特公平7−106627号公報
【0004】
ミラーコート装置では、前記したように紫外線ミラーコート処理を施すよう紫外線硬化樹脂塗料がコーティングされた印刷紙にフィルム21が重ね合わせられてベルトコンベア25で搬送され紫外線照射を受けるように構成されているが、このようにベルトコンベア25上に印刷紙を置いた状態で印刷紙の搬送を行わせる従来の装置では、ベルトコンベア25上における印刷紙に対する位置規制が出来ず、ベルトコンベア25に対し印刷紙が変位することが起こる。紫外線ミラーコート処理において、エンボス加工されたフィルムを使って印刷紙面に絵柄を転写する場合には印刷紙との位置がずれて、印刷紙に対する絵柄の転写位置がずれる(見当が合わない)という問題が大きな障害となる。このような印刷紙の位置ずれを避けるため、バキュームによって印刷紙をベルトコンベア上に保持させて搬送するものなどが用いられるが、紙質によって変位が避けられない場合がある。
【0005】
上記のようにして紫外線ミラーコート処理を行ったあと、印刷紙はフィルムから剥離することが必要で、そのため紫外線ミラーコート装置の排出端において圧縮エアを印刷紙とフィルムの重ね合わせ面に吹き付けて印刷紙をフィルムから剥離することが行われている。しかしながら、紫外線ミラーコート処理が高速で行われて高速で搬送されている印刷紙をフィルムからエア圧で確実に剥離させるのは難しく、特に、腰の無い薄紙の場合はエア圧で確実に剥離させるのが更に難しくなる。このように、紫外線ミラーコート処理を施す印刷紙をベルトコンベア上に置いて搬送し紫外線照射を行うようにした紫外線ミラーコート装置では、紫外線硬化樹脂塗料を塗布された印刷紙に重ねられたフィルムの絵柄を転写する場合には印刷紙の位置がずれて印刷紙に対する絵柄の転写位置にずれが生じ易いという問題と、紫外線硬化樹脂塗料の硬化後の印刷紙をこれに重ねられているフィルムから確実に剥がすのが難しく確実性に欠けるという問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、従来の紫外線ミラーコート装置が上記した問題点を有していたことに鑑み、ベルトコンベアとフィルムに重ね合わせられて搬送されている間に印刷紙が位置ずれを起こすことがなく、かつ、紫外線硬化樹脂塗料の硬化後に、このフィルムに密着している印刷紙を確実に剥がすことができ、高速化が可能な紫外線ミラーコート装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は前記した課題を解決するため、印刷紙面上に紫外線硬化樹脂塗料を塗布し、同紫外線硬化樹脂塗料が塗布された印刷紙面上にフィルムを重ね合わせて搬送コンベアで搬送しつつ前記フィルムを通して前記印刷紙面上の紫外線硬化樹脂塗料に対して紫外線を照射し同紫外線硬化樹脂塗料を硬化させたのち前記フィルムの剥離を行う印刷紙面に対する艶出しを行うための紫外線ミラーコート装置であって、前記搬送コンベアを、前記紫外線硬化塗料が塗布された印刷紙を咥えて搬送する咥え爪を備えた咥え棒を有する構成とした紫外線ミラーコート装置を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明による紫外線ミラーコート装置においては、紫外線硬化塗料が塗布された印刷紙の先端を咥えて搬送する咥え爪を備えた咥え棒を有する搬送コンベアを使用していて、印刷紙は紫外線照射装置を搬送される間、搬送コンベアの咥え爪に先端を咥えられて紫外線ミラーコート装置を搬送されるので、搬送コンベア上の印刷紙は搬送コンベア上にしっかりと位置決めされており、位置ずれを起こすことがなく高速運転が可能で、また、絵柄がエンボス加工されたフィルムを使って印刷紙面に所定どおりの絵柄転写を行うことができる。
本発明による紫外線ミラーコート装置で採用する咥え爪及び咥え爪を備えた咥え棒としては、既に知られている種々の構成のものを含め適宜のものを採用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明による紫外線ミラーコート装置を添付した図1に示した実施例により具体的に説明する。図1において、1は樹脂製のフィルムで、ガイドローラ2及び駆動ローラ3の周りにエンドレスに掛け渡され矢印方向に走行されるように構成されている。4は紫外線照射装置であり、紫外線ランプ5、冷却装置6を有している。7は紫外線ミラーコートを施す印刷紙を搬送する搬送コンベアである。この搬送コンベア7は、スプロケット8、9の周りにエンドレスに掛け渡たされて走行するように構成された2本のチェーン10が、紙面と直角な方向に互いに平行に間隔を保って配置され、その2本のチェーンに咥え棒11が所定間隔で取付けられた構造のチェーンコンベアとなっている。その咥え棒11には、搬送すべき印刷紙の咥え端を掴む咥え爪12が取り付けられている。この咥え爪12、これを取付けた咥え棒11は、種々の構造のものが知られており、それらを含め適宜のものを採用してよいのでその具体的構造については説明を省略する。
【0010】
13はギャップ14付き加圧胴で、フィルム1が掛け渡されている駆動ローラ3に対して付勢され、上面に紫外線硬化樹脂塗料がコーティングされた印刷紙を、その紫外線硬化樹脂塗料コーティング面にフィルム1が重ねられた状態で、駆動ローラ3との間で圧着する。加圧胴13は、表面をブランケットやゴムシートで覆った構造で、駆動ローラ3との間の圧着機能を発揮させるようになっており、加圧胴13のギャップ14はチェーンコンベアに取付けられた咥え棒11を通過させる。
なお、図示した紫外線ミラーコート装置の前には紫外線ミラーコート処理を施すべき印刷紙を供給する給紙装置、給紙装置から送られて来る印刷紙の印刷面に対し紫外線硬化樹脂塗料を塗布するコータ装置が配置されているが図示を省略してある。
【0011】
図1に示す紫外線ミラーコート装置は以上説明した構成を有しており、その作用について以下説明する。図示していないコータ装置によって上面に紫外線硬化樹脂塗料がコーティングされコータ装置から排出された印刷紙が、搬送コンベア7を構成している咥え棒11の咥え爪12に先端を掴まれて図1の右側からコーティング層を上にして搬送コンベア7によって送られて来る。印刷紙は上面にフィルム1が重ね合わされつつ加圧胴13と駆動ローラ3によって挟まれ、印刷紙にコーティングされている紫外線硬化樹脂塗料の上にフィルム1が圧着され、その密着した重ね合わせ状態で、紫外線硬化樹脂塗料は紫外線照射装置4からフィルム1を介して紫外線の照射を受けて硬化され印刷面に対して艶出し又は艶出しと絵柄の転写が行われる。
【0012】
印刷紙は、紫外線ミラーコート装置を通過する間中、搬送コンベア7の咥え棒11の取付けられている咥え爪12によって咥えられて搬送されるので位置ずれを起こすことがなく、紫外線ミラーコート装置でフィルムから絵柄が転写される場合も絵柄の転写位置がずれる事態が防止される。
図1に示した紫外線ミラーコート装置において、フィルム1と搬送コンベア7とが離れるとき、印刷紙は搬送コンベア7の咥え爪12によって掴まれたまま搬送コンベア7と共に移動を続けるので、それまでフィルム1に密着していた印刷紙はフィルム1から確実に剥がされる。そのあと、咥え棒11の咥え爪12がカムとの接触などによって印刷紙に対する咥えを開放し、紫外線ミラーコートが形成された印刷紙がミラーコート装置から排出される。
【0013】
以上、本発明によるミラーコート装置を図示した実施例に基づいて具体的に説明したが、本発明はこの実施例に示された構造に制限されるものではなく、種々の変更を加えてよいことはいうまでもない。
例えば前記した実施例では、3個の紫外線ランプ5と冷却装置6を備えた紫外線照射装置4を示してあるが、他の紫外線照射装置を適宜採用してよいことはいうまでもない。また、図示したものでは、ブランケットやゴムシートをギャップに取付けた加圧胴13を採用しているが、これに限らず適宜の構造をもつ加圧胴を採用してよい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施例による紫外線ミラーコート装置の構成を示す説明図。
【図2】従来の紫外線ミラーコート装置の構成を示す説明図。
【符号の説明】
【0015】
1 フィルム
2 ガイドローラ
3 駆動ローラ
4 紫外線照射装置
5 紫外線ランプ
6 冷却装置
7 搬送コンベア(チェーンコンベア)
8 スプロケット
9 スプロケット
10 チェーン
11 咥え棒
12 咥え爪
13 加圧胴
14 ギャップ
21 フィルム
22 ガイドローラ
23 加圧ローラ
24 紫外線ランプ
25 ベルトコンベア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷紙面上に紫外線硬化樹脂塗料を塗布し、同紫外線硬化樹脂塗料が塗布された印刷紙面上にフィルムを重ね合わせて搬送コンベアで搬送しつつ前記フィルムを通して前記印刷紙面上の紫外線硬化樹脂塗料に対して紫外線を照射し同紫外線硬化樹脂塗料を硬化させたのち前記フィルムの剥離を行う印刷紙面に対する艶出しを行うための紫外線ミラーコート装置であって、前記搬送コンベアを、前記紫外線硬化塗料が塗布された印刷紙を咥えて搬送する咥え爪を備えた咥え棒を有する構成としたことを特徴とする紫外線ミラーコート装置。
【請求項2】
前記重ね合わせられた印刷紙とフィルムを圧着させるギャップ付き加圧胴を設けたことを特徴とする請求項1に記載の紫外線ミラーコート装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2008−264629(P2008−264629A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−108382(P2007−108382)
【出願日】平成19年4月17日(2007.4.17)
【出願人】(591003460)三原菱重エンジニアリング株式会社 (12)
【Fターム(参考)】