紫外線励起発光蛍光体およびそれを有する混合蛍光体、並びにそれを用いた蛍光ランプ及び冷陰極蛍光ランプ
【課題】ランプ光束維持率の改善された蛍光ランプなどに使用されるYVO蛍光体の提供。
【解決手段】Euで付活された希土類バナジン酸塩、又は、該希土類バナジン酸塩の一部若しくは全部が希土類リン酸塩で置換された蛍光体(Y(V,P)O4:Eu)にアンチモンの酸化物を被覆させた蛍光体、また、それを有する蛍光ランプとすることで、ランプ光束維持率の向上が図れ、尚かつ、色度の変位についても改善が観られる。
【解決手段】Euで付活された希土類バナジン酸塩、又は、該希土類バナジン酸塩の一部若しくは全部が希土類リン酸塩で置換された蛍光体(Y(V,P)O4:Eu)にアンチモンの酸化物を被覆させた蛍光体、また、それを有する蛍光ランプとすることで、ランプ光束維持率の向上が図れ、尚かつ、色度の変位についても改善が観られる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷陰極蛍光ランプ、一般照明用の蛍光ランプ、Hg封入式平面ランプ、高負荷蛍光ランプ等に使用される蛍光体、並びにその蛍光ランプ及び液晶表示装置のバックライト用光源などに用いられる冷陰極蛍光ランプ、平面ランプに係り、特に、デバイスにおける発光エネルギーの維持率が良好な蛍光体、さらに色変化の小さい白色光源及びそれを用いたカラー液晶表示装置を提供することを目的とする。
【背景技術】
【0002】
蛍光ランプなどに用いられる赤色蛍光体として、Y(P,V)O4蛍光体が用いられている。また、蛍光体には蛍光ランプだけでなく、様々な用途、例えばPDP、があるが、各用途及び蛍光体の種類に応じて、蛍光体の粉体、膜には様々な表面処理、例えば被覆膜の形成、などが施される。
【0003】
【特許文献1】特開平10−330746号公報
【特許文献2】特開昭53−119793号公報
【特許文献3】特開平01−176652号公報
【特許文献4】特開昭55−131083号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
紫外線励起発光装置に用いられる蛍光体の特性、特にその蛍光体の使用環境(例えば放電管内)における耐久性(例えば光束維持率)を向上させるために、様々な被覆膜を形成することが提案され、実施されている。
【0005】
アンチモンの被覆膜については、引例1にアルミン酸塩蛍光体にアンチモンの酸化物を被覆させること、引例3に錫付活アルカリ土類正リン酸塩蛍光体又は錫付活アルカリ土類ピロリン酸塩蛍光体と三酸化アンチモンとの混合体とすること、が開示されている。
【0006】
しかしながら、蛍光体の種類、特に母体の化学的分類(リン酸塩、アルミン酸塩など)、結晶学的分類(結晶構造)、また賦活剤と母体の組成、構成元素など、に依存して、劣化機構が異なる。また、蛍光体の用途、特にその蛍光体の使用環境により、劣化要因が異なるため、例えば引例4では電子線励起用蛍光体において、Y2O2S:Euの他、Y2O3:Eu、YVO4:Euなどに導電性膜としてアンチモンを含有する酸化錫を被覆することで、導電性を高めて、励起電子線を低速化する方法が開示されている。しかし、本発明とは、異なる使用環境であり、その機能も導電性を付与するものである。
Y(P,V)O4:Eu蛍光体は、高圧水銀ランプ用赤色蛍光体として用いられているが、一般照明用の蛍光ランプに使用した場合、又カラー液晶バックライト照明として用いられる冷陰極蛍光ランプに使用した場合に、光束維持率が問題となる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題に鑑み、鋭意検討した結果なされたものであり、下記(1)〜(11)により課題を解決できる。
(1)Euで付活された希土類バナジン酸塩、又は、該希土類バナジン酸塩の一部若しくは全部が希土類リン酸塩で置換された蛍光体の粒子表面に、アンチモンの酸化物が被覆されている蛍光体である。この構成により、希土類バナジン酸塩蛍光体、及びそれを一部若しくは全部希土類リン酸塩で置換した蛍光体、好ましくは希土類バナジン酸塩蛍光体とその一部希土類リン酸塩で置換した蛍光体、において、紫外線励起の蛍光ランプなど、放電空間内での使用において、蛍光体劣化を防ぎ、良好な光束維持率のランプを得ることができる。具体的には、蛍光ランプの劣化(初光束低下、光束維持率低下)要因として、蛍光体、その蛍光体膜が、イオン衝撃、水銀吸着などにより劣化することが考えられるが、上記構成におけるアンチモンの酸化物の被膜により、これが改善して、その結果光束維持率に優れた蛍光ランプ(一般照明用、液晶バックライト用)が得られると考えられる。
(2)前記蛍光体が、Y(V,P)O4:Euの一般式で表される上記(1)記載の蛍光体である。
(3)前記一般式がY(V1-x,Px)O4:Euであって、xが0≦x<1である上記(2)記載の紫外線励起発光蛍光体である。紫外線励起赤色発光蛍光体として好適に用いられる十分な輝度、ランプ・白色光源の光束を有するY(V1-x,Px)O4:Euであって、xが0≦x<1において、上記アンチモンの酸化物の被覆による輝度・ランプ光束維持率向上の効果を奏することから、上記蛍光体劣化防止作用が好適に機能するためと考えられる。
(4)前記アンチモンの酸化物が、前記蛍光体100重量部に対しSbとして、0重量部より大きく1重量部以下の範囲である上記(1)乃至(3)記載の蛍光体。上記希土類バナジン酸塩・リン酸塩蛍光体において、蛍光体100重量部に対して、1重量部以下でSb(アンチモンの酸化物の換算量)を有することで、いずれのアンチモン量においても、光束維持率の改善効果を奏する。
(5)前記アンチモンの酸化物が、前記蛍光体100重量部に対しSbとして、0重量部より大きく0.5重量部以下の範囲である(4)記載の蛍光体とすることであり、この範囲でアンチモンの酸化物を有することで、優れた光束維持率の蛍光体、蛍光ランプを得ることができる。
更に好ましくは蛍光体100重量部に対し0.01重量部以上0.3重量部以下の範囲でアンチモンの酸化物を有することで、該範囲外でアンチモンの酸化物の被覆を具備する場合よりも光束維持率に優れ、高光束であると共に、被覆無しの場合に比べて、光束比99%以上となる。
更に好ましくは、蛍光体100重量部に対して0.05重量部以上0.2重量部以下である。
(6)上記(1)乃至(5)記載の蛍光体を赤色発光蛍光体として、更に青色、緑色発光蛍光体を具備する白色光源の混合蛍光体である。
(7)前記青色蛍光体が、BaMgAl10O19:Eu系蛍光体を備える上記(6)記載の白色光源の混合蛍光体である。SCA{(Sr, Ca, Ba)5(PO4)3Cl:Eu}蛍光体、(Sr, Ca, Ba)10(PO4)6Cl2:Eu蛍光体、なども用いることができる。
(8)前記緑色蛍光体が、BaMgAl10O17:Eu,Mn系蛍光体、(Ce, Tb)(Mg, Mn)Al11O19系蛍光体、Zn2SiO4:Mn系蛍光体のいずれかを備える上記(6)又は(7)記載の白色光源の混合蛍光体。
(9)上記(6)乃至(8)記載の前記混合蛍光体又は各発光色の蛍光体をそれぞれ備えた冷陰極蛍光ランプ。
(10)上記(1)乃至(5)記載の紫外線励起発光蛍光体を有する蛍光ランプ。
(11)上記(6)乃至(8)記載の混合蛍光体を有する蛍光ランプ。
【発明の効果】
【0008】
ランプ形成時において、初期光束がアンチモンの酸化物による被覆膜を用いない従来とほぼ同等、若しくは僅かな低下であり、アンチモンの酸化物でYVO蛍光体が被覆されることで、良好な光束維持率が実現され、それにより、初期光束が従来に比して低下したものでも100時間〜500時間経過後の光束では、逆転して、アンチモン酸化物の被覆を用いたものの光束が高くなる。加えて、粉体、蛍光体層(蛍光体膜)の状態のいずれでも、また、他の蛍光体、例えば緑、青色発光の蛍光体との混合蛍光体層(蛍光体膜)においても、その特性が損なわれることなく、優れた光束維持率が実現できる。このことにより、一般照明用蛍光ランプ、液晶表示装置用の様々な形態のバックライト照明に利用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明における被覆された紫外線励起発光蛍光体、その混合蛍光体、それを用いた蛍光ランプなどについて説明する。尚、本発明の紫外線励起発光蛍光体(Euで付活された希土類バナジン酸塩、並びにその一部、全部を希土類リン酸塩で置換)については、YVO蛍光体、YVO4:Eu蛍光体、Y(P,V)O4蛍光体などと記載する。
【0010】
<被覆膜形成・被覆方法>
被覆方法としては、乾式混合、湿式混合により、蛍光体粒子と酸化アンチモンとを混合して、酸化アンチモンを蛍光体粒子の表面に被覆させる。最も簡単には、適量の酸化アンチモンの微粒子を乾式で蛍光体に混合することで蛍光体の粒子表面に酸化アンチモンが被覆した蛍光体を得ることができる。均一な被覆を得るには、蛍光体と酸化アンチモンを水等の溶媒に懸濁しておき、ボールミル等により十分に混合し、その後に懸濁液を分離し、乾燥することでより均一に酸化アンチモンを蛍光体粒子の表面に被覆することができる。これら方法は、酸化アンチモンをそのまま蛍光体に混合する方法である。湿式混合として例えば、実施例2などに示すように、蛍光体バインダー樹脂に酸化アンチモン粒子を懸濁させてもよい。
【0011】
さらに均一な酸化アンチモンの被覆を得るには次のような化学反応を利用する方法を適用することができる。例えば、蛍光体を水に懸濁させ、その懸濁液に水溶性の酸性のアンチモン塩を加え、その懸濁液に塩基性物質の水溶液を加えて中和することでアンチモンの水酸化物を蛍光体の粒子表面に析出させ、それを固液分離し、100℃以上の温度で乾燥することで、アンチモンの酸化物により粒子表面を被覆された蛍光体を得ることができる。水溶性の酸性のアンチモン塩としては、塩化アンチモン、弗化アンチモン等ハロゲン化アンチモン、硫酸アンチモン、或いは硝酸アンチモン等、硫酸アンチモンを用いることができる。懸濁液を中和する塩基性物質にはアンモニア、苛性ソーダ等が使用できる。
【0012】
被覆膜の形成方法としては、例えばガラス管に蛍光体を塗布し、バインダー除去した後のベーキング工程において、焼き付けをすることで、光学的に安定した膜が形成される。
【0013】
<被覆アンチモン酸化物の焼き付け条件>
焼き付け温度としては、例えば500℃以上、650℃以下である。また、雰囲気としては、特に限定されないが、大気中、若しくはN2,Arの中性雰囲気が挙げられる。
【0014】
<組成>
本発明でいう酸化アンチモンの被覆は、Sb2O3、Sb2O4、Sb2O5のいずれでも、またこれらの混合物、複合物でも良い。また、これら酸化物に被覆する工程から混入、若しくは混合蛍光体において、他の(発光色の)蛍光体の被覆膜材料として混入し得る塩素等のハロゲン元素或いは水酸化物が微量混合して、その他に、蛍光体粒子の被覆膜として例えば希土類金属炭酸塩、具体的には炭酸ランタン、炭酸イットリウム、などの炭酸塩化合物など、の混入、混在した被覆となっても本発明の効果を損なうことはない。
【0015】
後述するように、被覆膜の形成方法、特に混合方式(湿式・乾式)、被覆形成温度(ランプの蛍光体層形成時のベーク温度)・雰囲気(蛍光体バインダー組成、他の発光色の蛍光体が混在する環境、放電空間内のHg(水銀)、封止ガス(不活性ガス[Ar,Xe])、に依存して、膜質も変化すると考えられ、また、アンチモン(Sb)がIII価とIV価とがあるため、上記酸化物膜の構造は、複雑な構造、例えばIII価とIV価とが混在して酸素(O)で架橋された鎖状構造などを形成すると考えられる。しかしながら、後述の実施例などに観るように、Sb量、他の発光色の蛍光体との混合比率(バインダー、湿式混合中の混合蛍光体の懸濁液など)、が変化しても、本発明の効果が得られることから、上記組成式の酸化物及び/又はその混合・複合物で良いと考えられる。またその時、その構造も変化すると考えられるが、それでも本発明の効果が得られることから、構造変化が小さい若しくは効果の構造依存性が低いと考えられる。また、蛍光ランプについては、後述の実施例に示すように、顕著な光束維持率の向上が確認されたことから、従来の劣化原因として考えられるイオン衝撃、Hg吸着を考慮すると、そのようなガス封入の蛍光ランプ若しくはHgを有する蛍光ランプ、特にその両方が封入された蛍光ランプにおいて、本発明のアンチモンの酸化物被覆構造が好適に使用できる。更に、後述の実施例に示すように、色度ズレにおいてもその改善効果が得られる。
【0016】
<Sb被覆量依存性:ランプ光束とその維持率のSb被覆量依存性>
図1Aは酸化アンチモンを被覆したYVO4:Eu蛍光体について、ランプ光束の経時変化と酸化アンチモンのSb分析値の関係をプロットしたものである。
【0017】
図1より100時間点灯後において、Sbを被覆しない蛍光体のランプ光束維持率は93%であるが、Sbの被覆により、ほぼ100%の光束維持率を示す。更に、300時間、500時間経過しても、その傾向は変わらず、被覆無しの蛍光体では光束維持率が低下し続け、他方、アンチモン酸化物で被覆された蛍光体ではほぼ同等な光束を維持している。また、色度点については、点灯時間に対してほとんど変化せず、初期における色度変化(0〜100時間)後はその色度座標が維持される傾向にあり、初期の色度座標の変位は、被覆無しの蛍光体はΔx,Δyが下がり、アンチモン酸化物で被覆された蛍光体ではΔx,Δyが上がる傾向にある。
【0018】
<各色蛍光体>
赤色発光蛍光体としては、Y2O3:Eu系蛍光体、3.5MgO・0.5MgF2・GeO2:Mn4+系蛍光体
などが挙げられる。これらの蛍光体と、本件発明のY(P,V)O4:Euと混合して、赤色発光の混合蛍光体として用いる。
【0019】
緑色発光蛍光体としては、LaPO4:Ce,Tb蛍光体、(Ce, Tb)(Mg, Mn)Al11O19+系蛍光体、Y2SiO5:Tb, Ce系蛍光体、Zn2SiO4:Mn蛍光体、MII1-xEuxO・a(Mg1-yMny)O・bAl2O3蛍光体(MIIはBa、Sr及びCaよりなる群から選ばれた少なくとも1種の原子を表し、a、b、x、yは0.8≦a≦1.2、4.5 ≦b≦5.5、0.05 ≦x≦0.3、0.02 ≦y≦0.5を満たす実数)が挙げられる。
【0020】
青色発光蛍光体としては、BaMgAl10O17:Eu蛍光体、(Sr,Ca,Ba)10(PO4)6Cl2:Eu蛍光体又は(Sr,Ca,Ba,Mg)10(PO4)6Cl2:Eu蛍光体などが挙げられる。
【0021】
[YVO蛍光体の作製]
Y2O3、Eu2O3、V2O5、(Y(P,V)O4の場合は更にH3PO4、(NH3)2HPO4追加)、の原料を各所望量秤量し、調製し、水とアルミナボールなどと共に、磁器製ポットに入れて、ボールミルで例えば15時間混練した後、乾燥し、例えば1250℃、6時間の条件で、焼成して所望の組成の蛍光体を得る。その後、分散処理、篩にかけて、水洗乾燥処理することにより三価のユーロピウム付活バナジン酸(燐酸)蛍光体が得られる。
【0022】
以下の各実施例では、日亜化学工業社製の「NP−310−10」(Y(P,V)O蛍光体)、及び「NP−312」(YVO蛍光体)を用いる。
【0023】
[蛍光ランプ作製]
上記YVO4:Eu蛍光体と、所定量のアンチモン酸化物Sb2O3を、混合用容器に入れて、乾式混合する工程とする。その工程により得られる混合物を溶媒、ここでは塗布用の蛍光体バインダー樹脂、に懸濁させて、蛍光ランプとなるガラス管内にそのバインダーを塗布して、例えば580〜600℃、15分の熱処理条件、でベーキングして、ガラス管内に蛍光体層を形成する。このとき、蛍光体層は、ガラス質性の膜が観察され、上記アンチモン酸化物が変質して、蛍光体粒子表面に被覆されていると考えられ、また、アンチモン酸化物の量が多くなるに従って褐色を帯びて観察される。このことが、下記の各実施例において、アンチモンの酸化物量の増加に伴って光束が低下している原因の一つと考えられる。続いて、通常の方法により、Hg,Arガス封入し、電極で管を封装して、赤色単色のFL40SS規格の蛍光ランプ(直管形)を作製する。
【0024】
後述の各実施例における蛍光ランプは、各実施例の蛍光体を用いて、上記方法により、蛍光ランプを作製・評価している。
【0025】
[実施例1]
実施例1として上記製法により得られるYVO蛍光体(日亜化学工業社製:NP−312、発光波長620nm、253.7nm励起波長用)(組成[YVO4:Eu])と、酸化アンチモンSb2O3とを純水に懸濁させて、該懸濁液を分離、乾燥、篩の工程を経て、粉体の蛍光体混合物を得る。ここで、アンチモンの酸化物(Sb2O3)量は蛍光体100重量部に対し0.2重量部(Sbが0.167重量部)である。このように湿式混合により得られる蛍光体混合物と、下記比較例1の蛍光体と、それぞれ、その粉体輝度を測定したところ、ほぼ同等な輝度、色度(x,y)のものであった。
【0026】
これらの粉体の蛍光体を、上記蛍光ランプ作製工程におけるベーク条件に近い条件で焼き付け処理すると、その蛍光体輝度、色度は、比較例1の蛍光体では変化がほとんど観られないが、本実施例1の蛍光体混合物では、輝度の減少(5%)、色度変化(±0.004)が観られる。
【0027】
このことから、僅かながらアンチモン酸化物の被覆膜形成(ベーク工程)により粉体輝度が低下しているため、被覆膜若しくは被覆するアンチモン酸化物の組成・構造などの変化していると考えられる。
【0028】
[比較例1]
上記蛍光体作製方法において、得られるYVO蛍光体粉体(組成[YVO4:Eu])を用意して、上記実施例1との粉体評価に供する。更に、上記ランプ作製方法により蛍光ランプを作製して、以下の実施例2とのランプ評価に供する。
【0029】
[実施例2]
上記蛍光体作製方法において得られるYVO蛍光体を、上記ランプ作製方法において、アンチモン酸化物を湿式混合して、蛍光ランプを作製する。このとき、アンチモン酸化物Sb2O3を、蛍光体100重量部に対して、0.2重量部(Sbが0.167重量部)とする。
【0030】
【表1】
【0031】
表1は、実施例2と比較例1のランプについて、初期(0hr)の色度・相対光束比と各時間(100hr, 500hr)点灯後の色度変位量Δx,Δy([0hrのx(y)値]−[各時間経過後のx(y)値])・光束維持率を示すものであり、ランプ化直後(0時間)では、比較例1の方が高光束であるが、100時間経過後では、逆転して実施例2の方が高光束となり、光束維持率において、実施例2ではほぼ100%であるのに対し、比較例2のランプでは10%以上の低下が観られ、実施例2が光束維持率に優れることが分かる。
【0032】
[実施例3,4]
実施例1と同様に乾式混合した蛍光体混合物を1%NC酢酸ブチル(トリセルロース)溶媒に懸濁させて蛍光体バインダーを用意し、その後は上記ランプ作製方法により、ランプを作製する。このとき、乾式混合におけるアンチモン酸化物Sb2O3は、蛍光体100重量部に対して、それぞれ0.1、0.2重量部(Sbが0.0835、0.167重量部)として、表2に示すようにそれぞれ実施例3,4とする。
【0033】
【表2】
【0034】
以下の比較例2のランプと比較すると、表2に示すように、ランプ作製時(0hr)の光束(lm)では、実施例3とはほとんど差違が見られないが、実施例4では低下している傾向が観られる。100時間経過後のランプ特性では、実施例3,4とではほぼ同程度の光束維持率であるが、比較例2は10%以上の低下が観られ、実施例4よりも光束が低下している。
【0035】
また、色度については、比較例2ではx値の変位量Δxが下がる傾向がある一方で、実施例では上がる傾向が観られる。
【0036】
[比較例2]
上記実施例2において、アンチモン酸化物を混合せずに蛍光ランプを作製する。
【0037】
[実施例5〜9]
実施例5〜9として、上記蛍光体作製方法において得られるY(P,V)O4蛍光体、ここではY(P0.35,V0.65)O4:Eu(日亜化学工業社製:NP−310−10、発光波長620nm、253.7nm励起波長用)を用い、上記ランプ作製方法において、アンチモン酸化物を湿式混合して、単色の蛍光ランプを作製する。このとき、アンチモン酸化物Sb2O3を、蛍光体100重量部に対して、表3に示すようにそれぞれ0.2,0.4,0.6,1.0,2.0重量部として、Sb量が0.167,0.334,0.501,0.835,1.670重量部となる。
【0038】
【表3】
【0039】
図1Aは、実施例5〜9と比較例3の蛍光ランプについて、ランプ作製時(0時間)、100時間、300時間、500時間経過後のランプ光束について、各時間の比較例3に対する光束相対比(相対lm(%):[実施例の光束]/[比較例の光束])を示すものであり、図1Bは、実施例5〜9と比較例3の蛍光ランプについて、100時間、300時間、500時間経過後のランプ光束について、各実施例・比較例におけるランプ作製時(0時間)の光束[光束(0hr)]に対する各時間点灯後の光束[光束(100, 300, 500hr)]の比([光束(100, 300, 500hr)]/[光束(0hr)])をlm維持率として示すものである。即ち、光束相対比及び光束維持率のSb量(Sb2O3量)依存性と、その時間変化を示すものである。ランプ作製時の光束では、比較例3の方が4%以下の範囲で高くなる傾向にあるが、100時間経過後では、実施例5〜9の光束維持率がほぼ100%程度で、比較例3のランプでは10%以上の低下が観られる。これにより、100時間経過後のランプ光束は、光束維持率の低い比較例3よりも実施例5〜9の方が高くなる。
【0040】
また、図2A,Bは、それぞれ実施例5〜10、比較例3の色度xとyについて、そのランプ作製時(0時間)からの変位(ΔxとΔy)を、各ランプ点灯時間(100,300,500時間経過後)について示すものであり、色度点のx,y変位量Δx,ΔyのSb量・Sb2O3量依存性と、その時間変化を示すものである。
【0041】
[比較例3]
上記実施例5において、アンチモン酸化物を混合せずに蛍光ランプを作成する。
【0042】
[実施例10,11]
実施例10,11として、上記蛍光体作製方法において得られるY(P,V)O4蛍光体、上記ランプ作製方法において、アンチモン酸化物を湿式混合して、蛍光ランプを作製する。このとき、アンチモン酸化物Sb2O3を、蛍光体100重量部に対して、表4に示すように、それぞれ0.1,0.2重量部として、Sb量をそれぞれ0.0835、0.167重量部とする。
【0043】
【表4】
【0044】
上記実施例5〜9(図1A,B)と同様に、図3Aと図3Bは、それぞれ各点灯時間における対比較例4の光束相対比と光束維持率を示すもので、光束相対比及び光束維持率のSb量(Sb2O3量)依存性と、その時間変化を示すものである。また図4Aと図4Bも上記実施例5〜9(図2A,B)と同様に、図4Aと図4Bは、それぞれ色度xとyについて、そのランプ作製時(0時間)からの変位(ΔxとΔy)を、各ランプ点灯時間(100,300,500時間経過後)について示すものであり、色度点のx,y変位量Δx,ΔyのSb量・Sb2O3量依存性と、その時間変化を示すものである。
【0045】
[比較例4]
上記実施例10において、アンチモン酸化物を混合せずに蛍光ランプを作成する。
【0046】
[実施例12〜14]
実施例13〜15として、上記蛍光体作製方法において得られるY(P,V)O4蛍光体、上記ランプ作製方法において、アンチモン酸化物を湿式混合して、蛍光ランプを作製する。このとき、アンチモン酸化物Sb2O3を、表5に示すように蛍光体100重量部に対して、それぞれ5,10,20重量部として、Sb量を4.175,8.350,16.70重量部とする。
【0047】
【表5】
【0048】
図5A,Bは上記実施例5〜9(図1A,B)と同様に、実施例12〜14のランプの各点灯時間(0,100,300,500時間経過後)の光束と各時間における対比較例5の光束の相対比と、100,300,500時間経過後の光束維持率と、を示すものである。即ち、光束相対比及び光束維持率のSb量(Sb2O3量)依存性と、その時間変化を示すものである。また図6Aと図6Bも上記実施例5〜9(図2A,B)と同様に、図6Aと図6Bは、それぞれ色度xとyについて、そのランプ作製時(0時間)からの変位(ΔxとΔy)を、各ランプ点灯時間(100,300,500時間)について示すものであり、色度点のx,y変位量Δx,ΔyのSb量・Sb2O3量依存性と、その時間変化を示すものである。ここで、300時間点灯後の実施例12については、ランプ破損のため測定除外している。
【0049】
ランプ作製時の光束は、Sb2O3で5〜20重量部(Sbで4.175〜16.70重量部)の領域(実施例12〜14)において単純な減少傾向がみられるが、光束維持率はほとんど変化しないことがわかる。比較例5と比して、当該範囲で100時間経過後のランプ光束が低くなる。以上からSb2O3で5重量部(Sbで4.175重要部)の範囲で、比較例5に比して初期ランプ光束が10%以上低下し、100時間経過後のランプ光束が低く、Sb2O3で5重量部(Sbで4.175重要部)以下の範囲で用いることが好ましい傾向が観られる。
【0050】
[比較例5]
上記実施例12において、アンチモン酸化物を混合せずに蛍光ランプを作成する。
【0051】
[実施例15,16]
実施例15,16として、上記ランプ作製方法において、表6に示すように実施例1のアンチモン酸化物(Sb2O3)量を0.1重量部(Sbが0.0835重量部)とした乾式混合のYVO蛍光体と、緑色発光のBAM:Mn蛍光体と青色発光のBAM蛍光体とを、重量比40%:20%:40%で上記バインダーで湿式混合して、白色の三波長蛍光ランプとしたものを実施例15とする。実施例16として表6に示すように、実施例2のアンチモン酸化物(Sb2O3)量を0.1重量部(Sbが0.0835重量部)とした蛍光体バインダーに上記と同様に、BAM:Mn蛍光体(緑色)、BAM蛍光体(青色)とを混合して、上記ランプ作製方法にて白色の三波長蛍光ランプとする。
【0052】
【表6】
【0053】
表6は、上記実施例15,16と後述の比較例6について、ランプ作製時の光束、色度点、比較例6との光束の相対比と、100時間点灯後の色度点と光束維持率・色度点変位量を示すものである。
【0054】
表から明らかなように、乾式混合、湿式混合のいずれにおいても、比較例6に比して、100時間経過後の光束維持率が向上していることがわかる。
【0055】
また、比較例ではΔx(色度x値の変位量)が下がる傾向にあるのに対し、実施例では上がる傾向にあり、このことから実施例では単色の赤色(Y(P,V)O4)蛍光体からの発光(光束)が減少していないことを示す。
【0056】
[比較例6]
比較例6として、上記実施例15においてアンチモン酸化物を混合せずに作製される蛍光ランプを用いる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明の蛍光体は、一般照明用の蛍光ランプ、カラー若しくは単色などの液晶表示装置のバックライト用照明などに用いられる冷陰極蛍光ランプまたは平面ランプ、Hg封入式平面ランプ、高負荷蛍光ランプ、或いは希ガス放電ランプ等において、紫外線励起の赤色発光蛍光体として、またその赤色発光の蛍光体と、他の発光色の蛍光体との混合蛍光体、例えば三波長蛍光体、白色光源として使用され、特に、発光デバイスにおける発光エネルギー・光束の維持率が良好な蛍光体、さらに色変化の小さい蛍光ランプ、白色光源などに適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1A】本件発明の実施例5〜9、比較例3の光束相対比([実施例]/[比較例])のSb量(Sb2O3量)依存性と、その時間変化を示す図。
【図1B】本件発明の実施例5〜9、比較例3の光束維持率とSb量(Sb2O3量)依存性と、その時間変化を示す図。
【図2A】本件発明の実施例5〜9、比較例3の色度座標xの変位(Δx)のSb量(Sb2O3量)依存性と、その時間変化を示す図。
【図2B】本件発明の実施例5〜9、比較例3の色度座標yの変位(Δy)のSb量(Sb2O3量)依存性と、その時間変化を示す図。
【図3A】本件発明の実施例10,11、比較例4の光束相対比([実施例]/[比較例])のSb量(Sb2O3量)依存性と、その時間変化を示す図。
【図3B】本件発明の実施例10,11、比較例4の光束維持率とSb量(Sb2O3量)依存性と、その時間変化を示す図。
【図4A】本件発明の実施例10,11、比較例4の色度座標xの変位(Δx)のSb量(Sb2O3量)依存性と、その時間変化を示す図。
【図4B】本件発明の実施例10,11、比較例4の色度座標yの変位(Δy)のSb量(Sb2O3量)依存性と、その時間変化を示す図。
【図5A】本件発明の実施例12〜14、比較例5の光束相対比([実施例]/[比較例])のSb量(Sb2O3量)依存性と、その時間変化を示す図。
【図5B】本件発明の実施例12〜14、比較例5の光束維持率とSb量(Sb2O3量)依存性と、その時間変化を示す図。
【図6A】本件発明の実施例12〜14、比較例5の色度座標xの変位(Δx)のSb量(Sb2O3量)依存性と、その時間変化を示す図。
【図6B】本件発明の実施例12〜14、比較例5の色度座標yの変位(Δy)のSb量(Sb2O3量)依存性と、その時間変化を示す図。
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷陰極蛍光ランプ、一般照明用の蛍光ランプ、Hg封入式平面ランプ、高負荷蛍光ランプ等に使用される蛍光体、並びにその蛍光ランプ及び液晶表示装置のバックライト用光源などに用いられる冷陰極蛍光ランプ、平面ランプに係り、特に、デバイスにおける発光エネルギーの維持率が良好な蛍光体、さらに色変化の小さい白色光源及びそれを用いたカラー液晶表示装置を提供することを目的とする。
【背景技術】
【0002】
蛍光ランプなどに用いられる赤色蛍光体として、Y(P,V)O4蛍光体が用いられている。また、蛍光体には蛍光ランプだけでなく、様々な用途、例えばPDP、があるが、各用途及び蛍光体の種類に応じて、蛍光体の粉体、膜には様々な表面処理、例えば被覆膜の形成、などが施される。
【0003】
【特許文献1】特開平10−330746号公報
【特許文献2】特開昭53−119793号公報
【特許文献3】特開平01−176652号公報
【特許文献4】特開昭55−131083号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
紫外線励起発光装置に用いられる蛍光体の特性、特にその蛍光体の使用環境(例えば放電管内)における耐久性(例えば光束維持率)を向上させるために、様々な被覆膜を形成することが提案され、実施されている。
【0005】
アンチモンの被覆膜については、引例1にアルミン酸塩蛍光体にアンチモンの酸化物を被覆させること、引例3に錫付活アルカリ土類正リン酸塩蛍光体又は錫付活アルカリ土類ピロリン酸塩蛍光体と三酸化アンチモンとの混合体とすること、が開示されている。
【0006】
しかしながら、蛍光体の種類、特に母体の化学的分類(リン酸塩、アルミン酸塩など)、結晶学的分類(結晶構造)、また賦活剤と母体の組成、構成元素など、に依存して、劣化機構が異なる。また、蛍光体の用途、特にその蛍光体の使用環境により、劣化要因が異なるため、例えば引例4では電子線励起用蛍光体において、Y2O2S:Euの他、Y2O3:Eu、YVO4:Euなどに導電性膜としてアンチモンを含有する酸化錫を被覆することで、導電性を高めて、励起電子線を低速化する方法が開示されている。しかし、本発明とは、異なる使用環境であり、その機能も導電性を付与するものである。
Y(P,V)O4:Eu蛍光体は、高圧水銀ランプ用赤色蛍光体として用いられているが、一般照明用の蛍光ランプに使用した場合、又カラー液晶バックライト照明として用いられる冷陰極蛍光ランプに使用した場合に、光束維持率が問題となる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題に鑑み、鋭意検討した結果なされたものであり、下記(1)〜(11)により課題を解決できる。
(1)Euで付活された希土類バナジン酸塩、又は、該希土類バナジン酸塩の一部若しくは全部が希土類リン酸塩で置換された蛍光体の粒子表面に、アンチモンの酸化物が被覆されている蛍光体である。この構成により、希土類バナジン酸塩蛍光体、及びそれを一部若しくは全部希土類リン酸塩で置換した蛍光体、好ましくは希土類バナジン酸塩蛍光体とその一部希土類リン酸塩で置換した蛍光体、において、紫外線励起の蛍光ランプなど、放電空間内での使用において、蛍光体劣化を防ぎ、良好な光束維持率のランプを得ることができる。具体的には、蛍光ランプの劣化(初光束低下、光束維持率低下)要因として、蛍光体、その蛍光体膜が、イオン衝撃、水銀吸着などにより劣化することが考えられるが、上記構成におけるアンチモンの酸化物の被膜により、これが改善して、その結果光束維持率に優れた蛍光ランプ(一般照明用、液晶バックライト用)が得られると考えられる。
(2)前記蛍光体が、Y(V,P)O4:Euの一般式で表される上記(1)記載の蛍光体である。
(3)前記一般式がY(V1-x,Px)O4:Euであって、xが0≦x<1である上記(2)記載の紫外線励起発光蛍光体である。紫外線励起赤色発光蛍光体として好適に用いられる十分な輝度、ランプ・白色光源の光束を有するY(V1-x,Px)O4:Euであって、xが0≦x<1において、上記アンチモンの酸化物の被覆による輝度・ランプ光束維持率向上の効果を奏することから、上記蛍光体劣化防止作用が好適に機能するためと考えられる。
(4)前記アンチモンの酸化物が、前記蛍光体100重量部に対しSbとして、0重量部より大きく1重量部以下の範囲である上記(1)乃至(3)記載の蛍光体。上記希土類バナジン酸塩・リン酸塩蛍光体において、蛍光体100重量部に対して、1重量部以下でSb(アンチモンの酸化物の換算量)を有することで、いずれのアンチモン量においても、光束維持率の改善効果を奏する。
(5)前記アンチモンの酸化物が、前記蛍光体100重量部に対しSbとして、0重量部より大きく0.5重量部以下の範囲である(4)記載の蛍光体とすることであり、この範囲でアンチモンの酸化物を有することで、優れた光束維持率の蛍光体、蛍光ランプを得ることができる。
更に好ましくは蛍光体100重量部に対し0.01重量部以上0.3重量部以下の範囲でアンチモンの酸化物を有することで、該範囲外でアンチモンの酸化物の被覆を具備する場合よりも光束維持率に優れ、高光束であると共に、被覆無しの場合に比べて、光束比99%以上となる。
更に好ましくは、蛍光体100重量部に対して0.05重量部以上0.2重量部以下である。
(6)上記(1)乃至(5)記載の蛍光体を赤色発光蛍光体として、更に青色、緑色発光蛍光体を具備する白色光源の混合蛍光体である。
(7)前記青色蛍光体が、BaMgAl10O19:Eu系蛍光体を備える上記(6)記載の白色光源の混合蛍光体である。SCA{(Sr, Ca, Ba)5(PO4)3Cl:Eu}蛍光体、(Sr, Ca, Ba)10(PO4)6Cl2:Eu蛍光体、なども用いることができる。
(8)前記緑色蛍光体が、BaMgAl10O17:Eu,Mn系蛍光体、(Ce, Tb)(Mg, Mn)Al11O19系蛍光体、Zn2SiO4:Mn系蛍光体のいずれかを備える上記(6)又は(7)記載の白色光源の混合蛍光体。
(9)上記(6)乃至(8)記載の前記混合蛍光体又は各発光色の蛍光体をそれぞれ備えた冷陰極蛍光ランプ。
(10)上記(1)乃至(5)記載の紫外線励起発光蛍光体を有する蛍光ランプ。
(11)上記(6)乃至(8)記載の混合蛍光体を有する蛍光ランプ。
【発明の効果】
【0008】
ランプ形成時において、初期光束がアンチモンの酸化物による被覆膜を用いない従来とほぼ同等、若しくは僅かな低下であり、アンチモンの酸化物でYVO蛍光体が被覆されることで、良好な光束維持率が実現され、それにより、初期光束が従来に比して低下したものでも100時間〜500時間経過後の光束では、逆転して、アンチモン酸化物の被覆を用いたものの光束が高くなる。加えて、粉体、蛍光体層(蛍光体膜)の状態のいずれでも、また、他の蛍光体、例えば緑、青色発光の蛍光体との混合蛍光体層(蛍光体膜)においても、その特性が損なわれることなく、優れた光束維持率が実現できる。このことにより、一般照明用蛍光ランプ、液晶表示装置用の様々な形態のバックライト照明に利用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明における被覆された紫外線励起発光蛍光体、その混合蛍光体、それを用いた蛍光ランプなどについて説明する。尚、本発明の紫外線励起発光蛍光体(Euで付活された希土類バナジン酸塩、並びにその一部、全部を希土類リン酸塩で置換)については、YVO蛍光体、YVO4:Eu蛍光体、Y(P,V)O4蛍光体などと記載する。
【0010】
<被覆膜形成・被覆方法>
被覆方法としては、乾式混合、湿式混合により、蛍光体粒子と酸化アンチモンとを混合して、酸化アンチモンを蛍光体粒子の表面に被覆させる。最も簡単には、適量の酸化アンチモンの微粒子を乾式で蛍光体に混合することで蛍光体の粒子表面に酸化アンチモンが被覆した蛍光体を得ることができる。均一な被覆を得るには、蛍光体と酸化アンチモンを水等の溶媒に懸濁しておき、ボールミル等により十分に混合し、その後に懸濁液を分離し、乾燥することでより均一に酸化アンチモンを蛍光体粒子の表面に被覆することができる。これら方法は、酸化アンチモンをそのまま蛍光体に混合する方法である。湿式混合として例えば、実施例2などに示すように、蛍光体バインダー樹脂に酸化アンチモン粒子を懸濁させてもよい。
【0011】
さらに均一な酸化アンチモンの被覆を得るには次のような化学反応を利用する方法を適用することができる。例えば、蛍光体を水に懸濁させ、その懸濁液に水溶性の酸性のアンチモン塩を加え、その懸濁液に塩基性物質の水溶液を加えて中和することでアンチモンの水酸化物を蛍光体の粒子表面に析出させ、それを固液分離し、100℃以上の温度で乾燥することで、アンチモンの酸化物により粒子表面を被覆された蛍光体を得ることができる。水溶性の酸性のアンチモン塩としては、塩化アンチモン、弗化アンチモン等ハロゲン化アンチモン、硫酸アンチモン、或いは硝酸アンチモン等、硫酸アンチモンを用いることができる。懸濁液を中和する塩基性物質にはアンモニア、苛性ソーダ等が使用できる。
【0012】
被覆膜の形成方法としては、例えばガラス管に蛍光体を塗布し、バインダー除去した後のベーキング工程において、焼き付けをすることで、光学的に安定した膜が形成される。
【0013】
<被覆アンチモン酸化物の焼き付け条件>
焼き付け温度としては、例えば500℃以上、650℃以下である。また、雰囲気としては、特に限定されないが、大気中、若しくはN2,Arの中性雰囲気が挙げられる。
【0014】
<組成>
本発明でいう酸化アンチモンの被覆は、Sb2O3、Sb2O4、Sb2O5のいずれでも、またこれらの混合物、複合物でも良い。また、これら酸化物に被覆する工程から混入、若しくは混合蛍光体において、他の(発光色の)蛍光体の被覆膜材料として混入し得る塩素等のハロゲン元素或いは水酸化物が微量混合して、その他に、蛍光体粒子の被覆膜として例えば希土類金属炭酸塩、具体的には炭酸ランタン、炭酸イットリウム、などの炭酸塩化合物など、の混入、混在した被覆となっても本発明の効果を損なうことはない。
【0015】
後述するように、被覆膜の形成方法、特に混合方式(湿式・乾式)、被覆形成温度(ランプの蛍光体層形成時のベーク温度)・雰囲気(蛍光体バインダー組成、他の発光色の蛍光体が混在する環境、放電空間内のHg(水銀)、封止ガス(不活性ガス[Ar,Xe])、に依存して、膜質も変化すると考えられ、また、アンチモン(Sb)がIII価とIV価とがあるため、上記酸化物膜の構造は、複雑な構造、例えばIII価とIV価とが混在して酸素(O)で架橋された鎖状構造などを形成すると考えられる。しかしながら、後述の実施例などに観るように、Sb量、他の発光色の蛍光体との混合比率(バインダー、湿式混合中の混合蛍光体の懸濁液など)、が変化しても、本発明の効果が得られることから、上記組成式の酸化物及び/又はその混合・複合物で良いと考えられる。またその時、その構造も変化すると考えられるが、それでも本発明の効果が得られることから、構造変化が小さい若しくは効果の構造依存性が低いと考えられる。また、蛍光ランプについては、後述の実施例に示すように、顕著な光束維持率の向上が確認されたことから、従来の劣化原因として考えられるイオン衝撃、Hg吸着を考慮すると、そのようなガス封入の蛍光ランプ若しくはHgを有する蛍光ランプ、特にその両方が封入された蛍光ランプにおいて、本発明のアンチモンの酸化物被覆構造が好適に使用できる。更に、後述の実施例に示すように、色度ズレにおいてもその改善効果が得られる。
【0016】
<Sb被覆量依存性:ランプ光束とその維持率のSb被覆量依存性>
図1Aは酸化アンチモンを被覆したYVO4:Eu蛍光体について、ランプ光束の経時変化と酸化アンチモンのSb分析値の関係をプロットしたものである。
【0017】
図1より100時間点灯後において、Sbを被覆しない蛍光体のランプ光束維持率は93%であるが、Sbの被覆により、ほぼ100%の光束維持率を示す。更に、300時間、500時間経過しても、その傾向は変わらず、被覆無しの蛍光体では光束維持率が低下し続け、他方、アンチモン酸化物で被覆された蛍光体ではほぼ同等な光束を維持している。また、色度点については、点灯時間に対してほとんど変化せず、初期における色度変化(0〜100時間)後はその色度座標が維持される傾向にあり、初期の色度座標の変位は、被覆無しの蛍光体はΔx,Δyが下がり、アンチモン酸化物で被覆された蛍光体ではΔx,Δyが上がる傾向にある。
【0018】
<各色蛍光体>
赤色発光蛍光体としては、Y2O3:Eu系蛍光体、3.5MgO・0.5MgF2・GeO2:Mn4+系蛍光体
などが挙げられる。これらの蛍光体と、本件発明のY(P,V)O4:Euと混合して、赤色発光の混合蛍光体として用いる。
【0019】
緑色発光蛍光体としては、LaPO4:Ce,Tb蛍光体、(Ce, Tb)(Mg, Mn)Al11O19+系蛍光体、Y2SiO5:Tb, Ce系蛍光体、Zn2SiO4:Mn蛍光体、MII1-xEuxO・a(Mg1-yMny)O・bAl2O3蛍光体(MIIはBa、Sr及びCaよりなる群から選ばれた少なくとも1種の原子を表し、a、b、x、yは0.8≦a≦1.2、4.5 ≦b≦5.5、0.05 ≦x≦0.3、0.02 ≦y≦0.5を満たす実数)が挙げられる。
【0020】
青色発光蛍光体としては、BaMgAl10O17:Eu蛍光体、(Sr,Ca,Ba)10(PO4)6Cl2:Eu蛍光体又は(Sr,Ca,Ba,Mg)10(PO4)6Cl2:Eu蛍光体などが挙げられる。
【0021】
[YVO蛍光体の作製]
Y2O3、Eu2O3、V2O5、(Y(P,V)O4の場合は更にH3PO4、(NH3)2HPO4追加)、の原料を各所望量秤量し、調製し、水とアルミナボールなどと共に、磁器製ポットに入れて、ボールミルで例えば15時間混練した後、乾燥し、例えば1250℃、6時間の条件で、焼成して所望の組成の蛍光体を得る。その後、分散処理、篩にかけて、水洗乾燥処理することにより三価のユーロピウム付活バナジン酸(燐酸)蛍光体が得られる。
【0022】
以下の各実施例では、日亜化学工業社製の「NP−310−10」(Y(P,V)O蛍光体)、及び「NP−312」(YVO蛍光体)を用いる。
【0023】
[蛍光ランプ作製]
上記YVO4:Eu蛍光体と、所定量のアンチモン酸化物Sb2O3を、混合用容器に入れて、乾式混合する工程とする。その工程により得られる混合物を溶媒、ここでは塗布用の蛍光体バインダー樹脂、に懸濁させて、蛍光ランプとなるガラス管内にそのバインダーを塗布して、例えば580〜600℃、15分の熱処理条件、でベーキングして、ガラス管内に蛍光体層を形成する。このとき、蛍光体層は、ガラス質性の膜が観察され、上記アンチモン酸化物が変質して、蛍光体粒子表面に被覆されていると考えられ、また、アンチモン酸化物の量が多くなるに従って褐色を帯びて観察される。このことが、下記の各実施例において、アンチモンの酸化物量の増加に伴って光束が低下している原因の一つと考えられる。続いて、通常の方法により、Hg,Arガス封入し、電極で管を封装して、赤色単色のFL40SS規格の蛍光ランプ(直管形)を作製する。
【0024】
後述の各実施例における蛍光ランプは、各実施例の蛍光体を用いて、上記方法により、蛍光ランプを作製・評価している。
【0025】
[実施例1]
実施例1として上記製法により得られるYVO蛍光体(日亜化学工業社製:NP−312、発光波長620nm、253.7nm励起波長用)(組成[YVO4:Eu])と、酸化アンチモンSb2O3とを純水に懸濁させて、該懸濁液を分離、乾燥、篩の工程を経て、粉体の蛍光体混合物を得る。ここで、アンチモンの酸化物(Sb2O3)量は蛍光体100重量部に対し0.2重量部(Sbが0.167重量部)である。このように湿式混合により得られる蛍光体混合物と、下記比較例1の蛍光体と、それぞれ、その粉体輝度を測定したところ、ほぼ同等な輝度、色度(x,y)のものであった。
【0026】
これらの粉体の蛍光体を、上記蛍光ランプ作製工程におけるベーク条件に近い条件で焼き付け処理すると、その蛍光体輝度、色度は、比較例1の蛍光体では変化がほとんど観られないが、本実施例1の蛍光体混合物では、輝度の減少(5%)、色度変化(±0.004)が観られる。
【0027】
このことから、僅かながらアンチモン酸化物の被覆膜形成(ベーク工程)により粉体輝度が低下しているため、被覆膜若しくは被覆するアンチモン酸化物の組成・構造などの変化していると考えられる。
【0028】
[比較例1]
上記蛍光体作製方法において、得られるYVO蛍光体粉体(組成[YVO4:Eu])を用意して、上記実施例1との粉体評価に供する。更に、上記ランプ作製方法により蛍光ランプを作製して、以下の実施例2とのランプ評価に供する。
【0029】
[実施例2]
上記蛍光体作製方法において得られるYVO蛍光体を、上記ランプ作製方法において、アンチモン酸化物を湿式混合して、蛍光ランプを作製する。このとき、アンチモン酸化物Sb2O3を、蛍光体100重量部に対して、0.2重量部(Sbが0.167重量部)とする。
【0030】
【表1】
【0031】
表1は、実施例2と比較例1のランプについて、初期(0hr)の色度・相対光束比と各時間(100hr, 500hr)点灯後の色度変位量Δx,Δy([0hrのx(y)値]−[各時間経過後のx(y)値])・光束維持率を示すものであり、ランプ化直後(0時間)では、比較例1の方が高光束であるが、100時間経過後では、逆転して実施例2の方が高光束となり、光束維持率において、実施例2ではほぼ100%であるのに対し、比較例2のランプでは10%以上の低下が観られ、実施例2が光束維持率に優れることが分かる。
【0032】
[実施例3,4]
実施例1と同様に乾式混合した蛍光体混合物を1%NC酢酸ブチル(トリセルロース)溶媒に懸濁させて蛍光体バインダーを用意し、その後は上記ランプ作製方法により、ランプを作製する。このとき、乾式混合におけるアンチモン酸化物Sb2O3は、蛍光体100重量部に対して、それぞれ0.1、0.2重量部(Sbが0.0835、0.167重量部)として、表2に示すようにそれぞれ実施例3,4とする。
【0033】
【表2】
【0034】
以下の比較例2のランプと比較すると、表2に示すように、ランプ作製時(0hr)の光束(lm)では、実施例3とはほとんど差違が見られないが、実施例4では低下している傾向が観られる。100時間経過後のランプ特性では、実施例3,4とではほぼ同程度の光束維持率であるが、比較例2は10%以上の低下が観られ、実施例4よりも光束が低下している。
【0035】
また、色度については、比較例2ではx値の変位量Δxが下がる傾向がある一方で、実施例では上がる傾向が観られる。
【0036】
[比較例2]
上記実施例2において、アンチモン酸化物を混合せずに蛍光ランプを作製する。
【0037】
[実施例5〜9]
実施例5〜9として、上記蛍光体作製方法において得られるY(P,V)O4蛍光体、ここではY(P0.35,V0.65)O4:Eu(日亜化学工業社製:NP−310−10、発光波長620nm、253.7nm励起波長用)を用い、上記ランプ作製方法において、アンチモン酸化物を湿式混合して、単色の蛍光ランプを作製する。このとき、アンチモン酸化物Sb2O3を、蛍光体100重量部に対して、表3に示すようにそれぞれ0.2,0.4,0.6,1.0,2.0重量部として、Sb量が0.167,0.334,0.501,0.835,1.670重量部となる。
【0038】
【表3】
【0039】
図1Aは、実施例5〜9と比較例3の蛍光ランプについて、ランプ作製時(0時間)、100時間、300時間、500時間経過後のランプ光束について、各時間の比較例3に対する光束相対比(相対lm(%):[実施例の光束]/[比較例の光束])を示すものであり、図1Bは、実施例5〜9と比較例3の蛍光ランプについて、100時間、300時間、500時間経過後のランプ光束について、各実施例・比較例におけるランプ作製時(0時間)の光束[光束(0hr)]に対する各時間点灯後の光束[光束(100, 300, 500hr)]の比([光束(100, 300, 500hr)]/[光束(0hr)])をlm維持率として示すものである。即ち、光束相対比及び光束維持率のSb量(Sb2O3量)依存性と、その時間変化を示すものである。ランプ作製時の光束では、比較例3の方が4%以下の範囲で高くなる傾向にあるが、100時間経過後では、実施例5〜9の光束維持率がほぼ100%程度で、比較例3のランプでは10%以上の低下が観られる。これにより、100時間経過後のランプ光束は、光束維持率の低い比較例3よりも実施例5〜9の方が高くなる。
【0040】
また、図2A,Bは、それぞれ実施例5〜10、比較例3の色度xとyについて、そのランプ作製時(0時間)からの変位(ΔxとΔy)を、各ランプ点灯時間(100,300,500時間経過後)について示すものであり、色度点のx,y変位量Δx,ΔyのSb量・Sb2O3量依存性と、その時間変化を示すものである。
【0041】
[比較例3]
上記実施例5において、アンチモン酸化物を混合せずに蛍光ランプを作成する。
【0042】
[実施例10,11]
実施例10,11として、上記蛍光体作製方法において得られるY(P,V)O4蛍光体、上記ランプ作製方法において、アンチモン酸化物を湿式混合して、蛍光ランプを作製する。このとき、アンチモン酸化物Sb2O3を、蛍光体100重量部に対して、表4に示すように、それぞれ0.1,0.2重量部として、Sb量をそれぞれ0.0835、0.167重量部とする。
【0043】
【表4】
【0044】
上記実施例5〜9(図1A,B)と同様に、図3Aと図3Bは、それぞれ各点灯時間における対比較例4の光束相対比と光束維持率を示すもので、光束相対比及び光束維持率のSb量(Sb2O3量)依存性と、その時間変化を示すものである。また図4Aと図4Bも上記実施例5〜9(図2A,B)と同様に、図4Aと図4Bは、それぞれ色度xとyについて、そのランプ作製時(0時間)からの変位(ΔxとΔy)を、各ランプ点灯時間(100,300,500時間経過後)について示すものであり、色度点のx,y変位量Δx,ΔyのSb量・Sb2O3量依存性と、その時間変化を示すものである。
【0045】
[比較例4]
上記実施例10において、アンチモン酸化物を混合せずに蛍光ランプを作成する。
【0046】
[実施例12〜14]
実施例13〜15として、上記蛍光体作製方法において得られるY(P,V)O4蛍光体、上記ランプ作製方法において、アンチモン酸化物を湿式混合して、蛍光ランプを作製する。このとき、アンチモン酸化物Sb2O3を、表5に示すように蛍光体100重量部に対して、それぞれ5,10,20重量部として、Sb量を4.175,8.350,16.70重量部とする。
【0047】
【表5】
【0048】
図5A,Bは上記実施例5〜9(図1A,B)と同様に、実施例12〜14のランプの各点灯時間(0,100,300,500時間経過後)の光束と各時間における対比較例5の光束の相対比と、100,300,500時間経過後の光束維持率と、を示すものである。即ち、光束相対比及び光束維持率のSb量(Sb2O3量)依存性と、その時間変化を示すものである。また図6Aと図6Bも上記実施例5〜9(図2A,B)と同様に、図6Aと図6Bは、それぞれ色度xとyについて、そのランプ作製時(0時間)からの変位(ΔxとΔy)を、各ランプ点灯時間(100,300,500時間)について示すものであり、色度点のx,y変位量Δx,ΔyのSb量・Sb2O3量依存性と、その時間変化を示すものである。ここで、300時間点灯後の実施例12については、ランプ破損のため測定除外している。
【0049】
ランプ作製時の光束は、Sb2O3で5〜20重量部(Sbで4.175〜16.70重量部)の領域(実施例12〜14)において単純な減少傾向がみられるが、光束維持率はほとんど変化しないことがわかる。比較例5と比して、当該範囲で100時間経過後のランプ光束が低くなる。以上からSb2O3で5重量部(Sbで4.175重要部)の範囲で、比較例5に比して初期ランプ光束が10%以上低下し、100時間経過後のランプ光束が低く、Sb2O3で5重量部(Sbで4.175重要部)以下の範囲で用いることが好ましい傾向が観られる。
【0050】
[比較例5]
上記実施例12において、アンチモン酸化物を混合せずに蛍光ランプを作成する。
【0051】
[実施例15,16]
実施例15,16として、上記ランプ作製方法において、表6に示すように実施例1のアンチモン酸化物(Sb2O3)量を0.1重量部(Sbが0.0835重量部)とした乾式混合のYVO蛍光体と、緑色発光のBAM:Mn蛍光体と青色発光のBAM蛍光体とを、重量比40%:20%:40%で上記バインダーで湿式混合して、白色の三波長蛍光ランプとしたものを実施例15とする。実施例16として表6に示すように、実施例2のアンチモン酸化物(Sb2O3)量を0.1重量部(Sbが0.0835重量部)とした蛍光体バインダーに上記と同様に、BAM:Mn蛍光体(緑色)、BAM蛍光体(青色)とを混合して、上記ランプ作製方法にて白色の三波長蛍光ランプとする。
【0052】
【表6】
【0053】
表6は、上記実施例15,16と後述の比較例6について、ランプ作製時の光束、色度点、比較例6との光束の相対比と、100時間点灯後の色度点と光束維持率・色度点変位量を示すものである。
【0054】
表から明らかなように、乾式混合、湿式混合のいずれにおいても、比較例6に比して、100時間経過後の光束維持率が向上していることがわかる。
【0055】
また、比較例ではΔx(色度x値の変位量)が下がる傾向にあるのに対し、実施例では上がる傾向にあり、このことから実施例では単色の赤色(Y(P,V)O4)蛍光体からの発光(光束)が減少していないことを示す。
【0056】
[比較例6]
比較例6として、上記実施例15においてアンチモン酸化物を混合せずに作製される蛍光ランプを用いる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明の蛍光体は、一般照明用の蛍光ランプ、カラー若しくは単色などの液晶表示装置のバックライト用照明などに用いられる冷陰極蛍光ランプまたは平面ランプ、Hg封入式平面ランプ、高負荷蛍光ランプ、或いは希ガス放電ランプ等において、紫外線励起の赤色発光蛍光体として、またその赤色発光の蛍光体と、他の発光色の蛍光体との混合蛍光体、例えば三波長蛍光体、白色光源として使用され、特に、発光デバイスにおける発光エネルギー・光束の維持率が良好な蛍光体、さらに色変化の小さい蛍光ランプ、白色光源などに適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1A】本件発明の実施例5〜9、比較例3の光束相対比([実施例]/[比較例])のSb量(Sb2O3量)依存性と、その時間変化を示す図。
【図1B】本件発明の実施例5〜9、比較例3の光束維持率とSb量(Sb2O3量)依存性と、その時間変化を示す図。
【図2A】本件発明の実施例5〜9、比較例3の色度座標xの変位(Δx)のSb量(Sb2O3量)依存性と、その時間変化を示す図。
【図2B】本件発明の実施例5〜9、比較例3の色度座標yの変位(Δy)のSb量(Sb2O3量)依存性と、その時間変化を示す図。
【図3A】本件発明の実施例10,11、比較例4の光束相対比([実施例]/[比較例])のSb量(Sb2O3量)依存性と、その時間変化を示す図。
【図3B】本件発明の実施例10,11、比較例4の光束維持率とSb量(Sb2O3量)依存性と、その時間変化を示す図。
【図4A】本件発明の実施例10,11、比較例4の色度座標xの変位(Δx)のSb量(Sb2O3量)依存性と、その時間変化を示す図。
【図4B】本件発明の実施例10,11、比較例4の色度座標yの変位(Δy)のSb量(Sb2O3量)依存性と、その時間変化を示す図。
【図5A】本件発明の実施例12〜14、比較例5の光束相対比([実施例]/[比較例])のSb量(Sb2O3量)依存性と、その時間変化を示す図。
【図5B】本件発明の実施例12〜14、比較例5の光束維持率とSb量(Sb2O3量)依存性と、その時間変化を示す図。
【図6A】本件発明の実施例12〜14、比較例5の色度座標xの変位(Δx)のSb量(Sb2O3量)依存性と、その時間変化を示す図。
【図6B】本件発明の実施例12〜14、比較例5の色度座標yの変位(Δy)のSb量(Sb2O3量)依存性と、その時間変化を示す図。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Euで付活された希土類バナジン酸塩、又は、該希土類バナジン酸塩の一部若しくは全部が希土類リン酸塩で置換された蛍光体の粒子表面に、アンチモンの酸化物が被覆されている蛍光体。
【請求項2】
前記蛍光体が、Y(V,P)O4:Euの一般式で表される請求項1記載の発光蛍光体。
【請求項3】
前記一般式がY(V1-x,Px)O4:Euであって、xが0≦x<1である請求項2記載の蛍光体。
【請求項4】
前記アンチモンの酸化物が、前記蛍光体100重量部に対しSbとして、0重量部より大きく1重量部以下の範囲である請求項1乃至3記載の蛍光体。
【請求項5】
前記アンチモンの酸化物が、前記蛍光体100重量部に対しSbとして、0重量部より大きく0.5重量部以下の範囲である請求項4記載の蛍光体。
【請求項6】
請求項1乃至5記載の蛍光体を赤色発光蛍光体として、更に青色、緑色発光蛍光体を具備する白色光源用の混合蛍光体。
【請求項7】
前記青色蛍光体が、BaMgAl10O19:Eu系蛍光体を備える請求項6記載の白色光源用の混合蛍光体。
【請求項8】
前記緑色蛍光体が、BaMgAl10O17:Eu,Mn系蛍光体、(Ce, Tb)(Mg, Mn)Al11O19系蛍光体、Zn2SiO4:Mn系蛍光体のいずれかを備える請求項6又は7記載の白色光源の混合蛍光体。
【請求項9】
請求項6乃至8記載の前記混合蛍光体又は各発光色の蛍光体をそれぞれ備えた冷陰極蛍光ランプ。
【請求項10】
請求項1乃至5記載の蛍光体を有する蛍光ランプ。
【請求項11】
請求項6乃至8記載の混合蛍光体を有する蛍光ランプ。
【請求項1】
Euで付活された希土類バナジン酸塩、又は、該希土類バナジン酸塩の一部若しくは全部が希土類リン酸塩で置換された蛍光体の粒子表面に、アンチモンの酸化物が被覆されている蛍光体。
【請求項2】
前記蛍光体が、Y(V,P)O4:Euの一般式で表される請求項1記載の発光蛍光体。
【請求項3】
前記一般式がY(V1-x,Px)O4:Euであって、xが0≦x<1である請求項2記載の蛍光体。
【請求項4】
前記アンチモンの酸化物が、前記蛍光体100重量部に対しSbとして、0重量部より大きく1重量部以下の範囲である請求項1乃至3記載の蛍光体。
【請求項5】
前記アンチモンの酸化物が、前記蛍光体100重量部に対しSbとして、0重量部より大きく0.5重量部以下の範囲である請求項4記載の蛍光体。
【請求項6】
請求項1乃至5記載の蛍光体を赤色発光蛍光体として、更に青色、緑色発光蛍光体を具備する白色光源用の混合蛍光体。
【請求項7】
前記青色蛍光体が、BaMgAl10O19:Eu系蛍光体を備える請求項6記載の白色光源用の混合蛍光体。
【請求項8】
前記緑色蛍光体が、BaMgAl10O17:Eu,Mn系蛍光体、(Ce, Tb)(Mg, Mn)Al11O19系蛍光体、Zn2SiO4:Mn系蛍光体のいずれかを備える請求項6又は7記載の白色光源の混合蛍光体。
【請求項9】
請求項6乃至8記載の前記混合蛍光体又は各発光色の蛍光体をそれぞれ備えた冷陰極蛍光ランプ。
【請求項10】
請求項1乃至5記載の蛍光体を有する蛍光ランプ。
【請求項11】
請求項6乃至8記載の混合蛍光体を有する蛍光ランプ。
【図1A】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【公開番号】特開2006−274088(P2006−274088A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−96496(P2005−96496)
【出願日】平成17年3月29日(2005.3.29)
【出願人】(000226057)日亜化学工業株式会社 (993)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年3月29日(2005.3.29)
【出願人】(000226057)日亜化学工業株式会社 (993)
【Fターム(参考)】
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