説明

紫外線硬化型ホットメルト粘着剤、並びにこれを用いた粘着シート及び粘着ラベル

【課題】少ない紫外線の照射量でも硬化が可能であり、ポットライフが長く、さらに硬化後に優れた剥離性及び保持力を示す紫外線硬化型ホットメルト粘着剤を提供する。
【解決手段】電子供与性基を有しない(メタ)アクリル酸アルキルエステル及び電子供与性基を有する(メタ)アクリル酸エステルを含む単量体成分を下記一般式(1)で示されるイニファーター及び/又は下記一般式(2)で示されるイニファーターの存在下で重合させることにより得られ且つ重量平均分子量Mwが10万〜60万であるアクリル系重合体(A)100重量部と、光重合開始剤(B)0.05〜5重量部とを含有することを特徴とする紫外線硬化型ホットメルト粘着剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクリル系重合体を含む紫外線硬化型ホットメルト粘着剤であって、特に支持体にホットメルト塗工が可能な紫外線硬化型ホットメルト粘着剤に関する
【背景技術】
【0002】
従来から、ホットメルト型粘着剤、溶剤型粘着剤、及びエマルション型粘着剤などの粘着剤が知られている。ホットメルト型粘着剤は、粘着シート等として用いることができる。粘着シートは、例えば、ホットメルト型粘着剤を熱溶融させた後に支持体上に塗布し、塗布した粘着剤に紫外線を照射して硬化させることにより製造される。このようなホットメルト型粘着剤は、粘着剤の製造工程だけでなく塗工工程においても有機溶剤を全く使用しないので、環境汚染や水質汚濁の問題がなく、作業環境が向上し、さらに乾燥工程が不要となり生産性が向上する。
【0003】
ホットメルト型粘着剤としては種々のものが提案されている。例えば、特許文献1では、塊状重合により得られたアクリル系重合体、アクリロイル基を有する単量体、及び光重合開始剤を含有する紫外線硬化型ホットメルト粘着剤が開示されている。
【0004】
しかしながら、特許文献1の紫外線硬化型ホットメルト粘着剤では、重合系内の温度を高温に維持しながら粘着剤に紫外線を照射する必要があるため、製造工程で多くのエネルギーを必要とする。生産性やコスト性の観点から、紫外線硬化型ホットメルト粘着剤には少ない紫外線の照射量で硬化できることが求められている。
【0005】
さらに、従来の紫外線硬化型ホットメルト粘着剤では、塗工温度で数時間保持するとゲル化が生じて流動性が低下し、塗工が困難であった。したがって、紫外線硬化型ホットメルト粘着剤には、長いポットライフを有していることも求められている。そこで、特許文献2には、特定の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを重合して得られるアクリル系重合体と、ベンゾフェノン系光重合開始剤とを含有する紫外線硬化型ホットメルト粘着剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4362564号公報
【特許文献2】特開平9−40928号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2の紫外線硬化型ホットメルト粘着剤では、硬化後の剥離性及び保持力が十分ではない問題があった。剥離性の低い紫外線硬化型ホットメルト粘着剤では、この粘着剤を用いた粘着シートを被着体に張り付けた後、この粘着シートを剥がした際に接着剤層が剥離して被着体に残る問題(糊残り)がある。さらに、保持力が低い紫外線硬化型ホットメルト粘着剤は、この粘着剤を用いた粘着シートを特に高温環境下で長時間に亘り使用すると、粘着シートが流動して被着体から徐々に剥がれる問題がある。
【0008】
したがって、本発明の目的は、少ない紫外線の照射量でも硬化が可能であり、ポットライフが長く、さらに硬化後に優れた剥離性及び保持力を示す紫外線硬化型ホットメルト粘着剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
電子供与性基を有しない(メタ)アクリル酸アルキルエステル及び電子供与性基を有する(メタ)アクリル酸エステルを含む単量体成分を下記一般式(1)で示されるイニファーター及び/又は下記一般式(2)で示されるイニファーターの存在下で重合させることにより得られ且つ重量平均分子量Mwが10万〜60万であるアクリル系重合体(A)100重量部と、光重合開始剤(B)0.05〜5重量部とを含有することを特徴とする紫外線硬化型ホットメルト粘着剤により上記課題を解決する。
【0010】
【化1】

【0011】
【化2】

【0012】
以下に、本発明の紫外線硬化型ホットメルト粘着剤の好適な態様を列挙する。
(1)電子供与性基を有しない(メタ)アクリル酸アルキルエステルが、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルである。
(2)(メタ)アクリル酸エステルが有する電子供与性基が、メトキシ基、エトキシ基、ベンジル基、及びヒドロキシル基よりなる群から選択される少なくとも一種である。
(3)(メタ)アクリル酸エステルが有する電子供与性基が、ベンジル基である。
(4)光重合開始剤が、水素引き抜き型光重合開始剤である。
(5)紫外線硬化型ホットメルト粘着剤が、さらに架橋剤(C)を含む。
(6)支持体の少なくとも一方の面上に粘着剤層が形成されている粘着シートであって、上記粘着剤層が上記紫外線硬化型ホットメルト粘着剤を硬化させてなるものである。
(7)粘着剤層のゲル分率が、50〜90重量%である。
(8)上記粘着シートは、これを所定の形状に打ち抜くことにより粘着ラベルとして好適に用いられる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の紫外線硬化型ホットメルト粘着剤は、少ない紫外線の照射量でも硬化することができる。また、本発明の紫外線硬化型ホットメルト粘着剤は、ポットライフが長く、ホットメルト塗工性にも優れる。このような粘着剤は、粘着シートの生産性の向上及び製造コストの低減が可能となる。さらに、本発明の紫外線硬化型ホットメルト粘着剤は、硬化後の剥離性及び保持力などの基本的な粘着特性にも優れている。したがって、このような粘着剤は、粘着シート、粘着ラベル、及び粘着テープ等として好適に用いられる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の紫外線硬化型ホットメルト粘着剤(単に「粘着剤」とも言う)は、アクリル系重合体(A)、及び光重合開始剤(B)を含有する。
【0015】
[アクリル系重合体(A)]
アクリル系重合体の重量平均分子量Mwは、10万〜60万、好ましくは15万〜25万である。アクリル系重合体の重量平均分子量が10万未満であると、粘着剤の凝集力が不足するため、粘着シート等とした時に高温雰囲気下での保持力に劣る恐れがある。また、アクリル系重合体の重量平均分子量が60万を超えると、溶融粘度が上昇するためホットメルト塗工性が低下する恐れがある。
【0016】
また、アクリル系重合体の分子量分布[重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)]は、9.0以下が好ましく、5.5以下がより好ましく、3.5以下であるのが特に好ましい。このようなアクリル系重合体を用いることにより、硬化後に、剥離性に優れ、特に高温環境下であっても長時間に亘り高い保持力を維持することが可能な粘着剤とすることができる。
【0017】
アクリル系重合体の重量平均分子量Mw、及び重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの比Mw/Mnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いた一般的な方法により測定することができる。例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用い、下記条件で標準ポリスチレン換算により求めることができる。
【0018】
測定条件:
装置:waters2690(waters社製)
カラム:カラムLF−804(SHOKO社製)
サンプル濃度:0.50重量%(テトラヒドロフランで希釈)
移動相溶媒:テトラヒドロフラン
流速:1ml/min
カラム温度:40℃
【0019】
アクリル系重合体(A)としては、電子供与性基を有しない(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a1)と、電子供与性基を有する(メタ)アクリル酸エステル(a2)とを含む単量体成分を、イニファーターの存在下で、重合させることにより得られる共重合体を用いる。イニファーターの存在下で重合されたアクリル系重合体(A)の末端には、イニファーターが分解して形成された、比較的安定であり解離可能なラジカルが結合している。このようなアクリル系重合体(A)を用いた粘着剤に塗工工程において紫外線が照射されると、イニファーター由来のラジカルが解離することでアクリル系重合体(A)の末端にラジカルが生じ、このラジカルがアクリル系重合体(A)の分子間に架橋や重合などの反応を生じさせることができる。これにより、少ない紫外線の照射量であっても粘着剤を十分に硬化させることができ、さらに硬化後の粘着剤の基本的な粘着特性、特に剥離性及び保持力を向上させることができる。
【0020】
[(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a1)]
(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、電子供与性基を有しておらず、好ましくはアルキル基の炭素原子数が1〜18個の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。具体的には、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、及び(メタ)アクリル酸ドデシルなどが挙げられる。なかでも、得られる粘着剤の基本的な粘着特性、特に剥離性及び保持力を考慮すると、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸メチル、及び(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルが好ましく挙げられ、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルがより好ましく挙げられる。これらの(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、単独で又は2種類以上を混合して使用できる。
【0021】
なお、本発明において、(メタ)アクリルとは、アクリル又はメタクリルを意味する。
【0022】
単量体成分における(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a1)の含有量は、単量体成分の全量に対して、60〜99重量%が好ましく、80〜99重量%がより好ましい。(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a1)の含有量が60重量%未満であると、アクリル系重合体(A)の凝集力が高くなり、硬化後に十分な粘着性を有する粘着剤が得られない恐れがある。また、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a1)の含有量が99重量%を超えると、アクリル重合体(A)の凝集力が低下して、硬化後に十分な保持力を有する粘着剤が得られない恐れがある。
【0023】
[電子供与性基を有する(メタ)アクリル酸エステル(a2)]
本発明の粘着剤に塗工工程において紫外線が照射されると、光重合開始剤及びイニファーターによって、アクリル系重合体(A)において(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a1)部分よりも電子供与性基を有する(メタ)アクリル酸エステル(a2)部分から優先的に水素が引き抜かれるなどして重合を開始する。これにより、本発明の粘着剤は、少ない紫外線の照射量であっても十分に硬化することができる。
【0024】
電子供与性基としては、メトキシ基、エトキシ基、ベンジル基、及びヒドロキシル基が挙げられ、メトキシ基、エトキシ基、及びベンジル基が好ましい。これらは一種又は二種以上を用いることができる。
【0025】
電子供与性基として上述したもののうちベンジル基がより好ましく挙げられる。ベンジル基を有する(メタ)アクリル酸エステル(a2)は、硬化後の粘着剤が優れた剥離性を有し、従来の粘着剤では凝集破壊して剥離が困難となるような60℃以上の温水中に浸漬させた後であっても凝集破壊することなく完全に剥離することが可能な粘着剤層を提供することが可能となる。また、ベンジル基を有する(メタ)アクリル酸エステル(a2)を含む粘着剤を用いて形成された粘着剤層は、上記の通り剥離性が向上されるのにも関わらず、60℃以上の空気中で長期間放置されても被着体から剥がれたりズレたりすることなく優れた保持性を維持することも可能となる。このような効果が得られるメカニズムは明らかではないが、ベンゼン環同士のπ−π相互作用によって、アクリル系重合体(A)の分子運動性が抑制されるためと考えられる。
【0026】
ベンジル基を有する(メタ)アクリル酸エステル(a2)として具体的には、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸3,5‐ジ‐tert‐ブチル‐4‐ヒドロキシベンジル、N‐ベンジル(メタ)アクリルアミド、N,N‐ジベンジル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸4‐(ジフェニルアミノ)ベンジル、(メタ)アクリル酸α‐メチルベンジル、(メタ)アタクリル酸4‐メチルベンジル、及び(メタ)アタクリル酸4‐メトキシベンジルなどが挙げられる。なかでも(メタ)アクリル酸ベンジルが好ましく挙げられる。
【0027】
また、ベンジル基を有する(メタ)アクリル酸エステル(a2)は、上述した(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a1)のうちアクリル酸2−エチルヘキシルと組み合わせて用いるのが好ましく、(メタ)アクリル酸ベンジルとアクリル酸2−エチルヘキシルと組み合わせて用いるのがより好ましい。アクリル酸2−エチルヘキシルとベンジル基を有する(メタ)アクリル酸エステル(a2)とを用いて製造されたアクリル系重合体(A)によれば、剥離性、特に温水中に浸漬後の剥離性と、高温環境下での保持性との双方が特に優れる粘着剤層を提供することが可能となる。また、これらを重合することにより得られたアクリル系重合体(A)の分子量分布が5.0〜9.0と比較的高い値であっても、上記効果を呈することが可能となる。このような分子量分布が比較的高いアクリル系重合体は、分子量分布が小さいアクリル系重合体よりも、分子量の制御を厳密に行う必要がなく容易に合成することができる。
【0028】
また、他の電子供与性基を有する(メタ)アクリル酸エステル(a2)としては、(メタ)アクリル酸メトキシメチル、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、及び(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチルを挙げることもできる。
【0029】
なお、上述した電子供与基を有する(メタ)アクリル酸エステル(a2)は単独で又は2種類以上を混合して使用できる。
【0030】
単量体成分における(メタ)アクリル酸エステル(a2)の含有量は、1〜40重量%が好ましく、1〜20重量%がより好ましい。(メタ)アクリル酸エステル(a2)の含有量が1重量%未満であると、アクリル重合体(A)の凝集力が低下して、硬化後に十分な保持力を有する粘着剤が得られない恐れがある。(メタ)アクリル酸エステル(a2)の含有量が40重量%を超えると、アクリル系重合体(A)の凝集力が高くなり、硬化後に十分な粘着性を有する粘着剤が得られない恐れがある。
【0031】
[他の単量体(a3)]
単量体成分としては、上記した(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a1)及び(メタ)アクリル酸エステル(a2)の他に、共重合可能な他の単量体(a3)をさらに併用してもよい。共重合可能な他の単量体(a3)の代表的な例として、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、及びフマル酸等のカルボキシル基を含有する単量体が挙げられる。なかでも、アクリル酸が好ましい。このカルボキシル基を含有する単量体成分は、重合体に凝集力を生じさ、粘着特性、特に剥離性及び保持力を向上せることが可能となる。
【0032】
単量体成分における共重合可能な他の単量体(a3)の含有量は、単量体成分の全量に対して、好ましくは5重量%以下、より好ましくは0.1〜5重量%である。この時、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a1)の含有量は、55〜98.9重量%が好ましく、(メタ)アクリル酸エステル(a2)の含有量は、1〜40重量%が好ましい。
【0033】
[イニファーター]
本発明においてイニファーターとは、ラジカル連鎖移動による重合停止機能を有するラジカル開始剤のことであり、活性エネルギー線又は熱を受けることによって重合開始能を有するラジカルと、連鎖移動可能であって一旦、連鎖移動した後、再度、解離可能な比較的安定なラジカルとを発生するものをいう。活性エネルギー線としては、紫外線、電子線、α線、β線、及びγ線などが挙げられる。
【0034】
イニファーターとしては、下記一般式(1)で示される化合物、又は下記一般式(2)で示される化合物が用いられる。
【0035】
【化3】

【0036】
【化4】

【0037】
なかでも、N,N,N’,N’−テトラエチルチウラムジスルフィド、及びジエチルジチオカルバミン酸ベンジルが好ましい。これらのイニファーターは、粘着剤を硬化させる際に粘着剤への紫外線の照射量を少なくすることができ、さらに剥離性、保持力など粘着剤の粘着特性を向上させることができる。上記したイニファーターは、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0038】
イニファーターの使用量は、単量体成分100重量部に対して、0.001〜0.5重量部が好ましく、0.005〜0.10重量部がより好ましく、0.005〜0.05重量部が特に好ましい。イニファーターの使用量が0.001重量部未満であるとアクリル重合体(A)に取り込まれるイニファーターの量が少なくなり、アクリル系重合体(A)の凝集力が低下して、硬化後に十分な保持力を有する粘着剤が得られない恐れがある。また、イニファーターの使用量が0.5重量部を超えると、アクリル系重合体(A)が黄色に変色する恐れがある。
【0039】
[熱重合開始剤]
本発明では、上述した(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a1)と電子供与性基を有する(メタ)アクリル酸エステル(a2)とを含む単量体成分の重合は、イニファーターの存在下で行われるが、上記重合をイニファーター及び熱重合開始剤の存在下で行うのが好ましい。このようにイニファーターに熱重合開始剤を組合せて用いることにより、重合時に未反応の単量体を少なくすることができ、重合反応終了後に未反応の単量体を除去するための減圧乾燥工程を省略して製造工程の簡略化やコストの削減が図れる。
【0040】
熱重合開始剤は、熱エネルギーが与えることにより、熱重合開始剤が分解して重合性のラジカルを発生し、これにより重合反応を開始させることが可能な化合物である。
【0041】
熱重合開始剤としては、10時間半減期温度が30〜210℃である有機過酸化物が好ましく用いられる。このような熱重合開始剤として、具体的には、ジ−3−メトキシブチルパーオキシジカルボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカルボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカルボネート、ジイソプロピルパーオキシジカルボネート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジミリスチルパーオキシカルボネート、1,1,3,3−テトラメチルブチルネオデカノエート、α―クミルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、1,1ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサン、2,5ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシアセテート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブテン、t−ブチルパーオキシベンゾエート、n−ブチル−4,4−ビス(t−ベルオキシ)バレラート、ジ−t−ブチルベルオキシイソフタレート、ジクミルパーオキサイド、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、1,3−ビス(t−ブチルパーオキシジイソプロピル)ベンゼン、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド、及び2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3などが挙げられる。これらの熱重合開始剤は、一種のみを用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0042】
なかでも、重合時に未反応の単量体を少なくすることができることから、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、及びt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサンが好ましく挙げられる。
【0043】
熱重合開始剤の使用量は、単量体成分100重量部に対して、0.01〜1.0重量部が好ましく、0.1〜0.8重量部がより好ましい。熱重合開始剤の使用量が0.01重量部未満であると熱重合開始剤による効果が十分に得られない恐れがある。また、熱重合開始剤の使用量が0.8重量部を超えると、得られるアクリル系重合体(A)の分子量分布が広くなり過ぎてアクリル系重合体の凝集力が低下して、硬化後に十分な保持力を有する粘着剤が得られない恐れがある。
【0044】
[アクリル系重合体(A)の重合]
アクリル系重合体(A)は、溶液重合法、塊状重合法、乳化重合法、又は懸濁重合法など公知の重合法を用いて製造することができる。なかでも、溶剤を用いないでアクリル系重合体(A)を製造できることから、塊状重合法を用いるのが好ましい。
【0045】
単量体成分を塊状重合する場合、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a1)及び電子供与性基を有する(メタ)アクリル酸エステル(a2)を含む単量体成分を、イニファーター及び必要に応じて熱重合開始剤の存在下、100〜165℃の重合温度で塊状重合させるのが好ましい。このような方法であれば、得られるアクリル系重合体(A)の重量平均分子量を制御することができ、所望の重量平均分子量を有するアクリル系重合体(A)を高重合転化率且つ短時間で得ることが可能となる。
【0046】
単量体成分の重合温度は、100〜165℃が好ましく、110〜150℃がより好ましい。重合温度が100℃未満であると重合時間が長くなり、生産性が低下する恐れがある。また、重合温度が165℃を超えると熱架橋が発生したり、重合温度の制御が困難になる恐れがある。
【0047】
上記重合温度で単量体成分の塊状重合を行う際に各成分を添加する順序や加熱する時期は特に制限されないが、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a1)及び電子供与性基を有する(メタ)アクリル酸エステル(a2)を含む単量体成分を上記重合温度に加熱した後、上記単量体成分にイニファーターを添加することにより塊状重合を行うのが好ましい。この場合、イニファーターを添加した後に塊状重合が開始する。このような方法によれば、重量平均分子量をより高く制御できる。なお、塊状重合を行う間は上記重合温度で単量体成分の加熱を続ける。
【0048】
重合時間は、好ましくは180〜600分、特に好ましくは300〜450分である。単量体成分を加熱する方法としては、特に限定されず、オイルバス、及びホットプレートなどの従来の加熱手段の他、遠赤外線を照射する方法などが用いられる。
【0049】
[光重合開始剤(B)]
本発明の粘着剤は、上述したアクリル系重合体(A)の他に、光重合開始剤をさらに含有する。
【0050】
光重合開始剤としては、水素引き抜き型光重合開始剤が用いられるのが好ましい。水素引き抜き型光重合開始剤は、アクリル系重合体(A)等の他の分子から水素を引き抜くことによりラジカルを生成して重合反応や架橋反応を開始させることができる。
【0051】
水素引き抜き型光重合開始剤としては、ベンゾフェノン系光重合開始剤が好ましく用いられる。ベンゾフェノン系光重合開始剤として具体的には、ベンゾフェノン、ベンゾフェノン誘導体を用いる。ベンゾフェノン誘導体としては、4−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジメチルベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチル−ジフェニルサルファイド、4−モルフォリノベンゾフェノン、4,4’−ジフェノキベンゾフェノン、4−ヒドロキシベンゾフェノン、2−カルボキシベンゾフェノン、及び2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オンなどが挙げられる。なかでも、少ない紫外線の照射量で硬化でき、基本的な粘着特性に優れる粘着剤が得られることから、ベンゾフェノン、及び2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オンが好ましく用いられる。これらは単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0052】
光重合開始剤の含有量は、アクリル系重合体100重量部に対して、0.05〜5重量部であるが、0.05〜4.0重量部が好ましく、0.05〜1.0重量部がより好ましい。光重合開始剤の含有量が0.05重量部未満であると、紫外線の照射により粘着剤が十分に硬化できない恐れがある。光重合開始剤の含有量が5重量部を超えると、アクリル系重合体(A)の凝集力が高くなり過ぎ、硬化後に十分な粘着性を有する粘着剤が得られない恐れがある。
[架橋剤(C)]
本発明の粘着剤は、上述したアクリル系重合体(A)及び光重合開始剤(B)の他に架橋剤(C)をさらに含んでいるのが好ましい。架橋剤を用いてアクリル系重合体(A)を架橋させることにより、アクリル系重合体(A)の凝集力を向上させ、粘着特性、特に剥離性及び保持力を向上せることが可能となる。
【0053】
架橋剤としては、(メタ)アクリロイル基を有する単量体、ポリイソシアネート系化合物、エポキシ系化合物、アジリジン系化合物、多価金属塩、金属キレート系化合物、及びメラミン系化合物が好ましく用いられる。これらの架橋剤は、一種のみが用いられてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0054】
(メタ)アクリロイル基を有する単量体としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリリレート、ペンタエリストールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、及びペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0055】
ポリイソシアネート系化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートの二重体、トリメチロールプロパンとトリレンジイソシアネートとの反応生成物、トリメチロールプロパンとヘキサメチレンジイソシアネートとの反応生成物、ポリエーテルポリイソシアネート、及びポリエステルポリイソシアネート等が挙げられる。
【0056】
エポキシ系化合物としては、ビスフェノールA・エピクロルヒドリン型のエポキシ樹脂、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエリスリトール、及びジグリセロールポリグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0057】
アジリジン系化合物としては、テトラメチロールメタン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、トリメチロールプロパン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、N,N’−ジフェニルメタン−4,4’−ビス(1−アジリジンカルボキシアミド)、及びN,N′−ヘキサメチレン−1,6−ビス(1−アジリジンカルボキシアミド)等が挙げられる。
【0058】
多価金属塩としては、例えば、マグネシウム、カルシウム、バリウム、亜鉛等の2価金属またはアルミニウム、鉄等の3価金属のハロゲン化物、硫酸塩、硝酸塩等が挙げられる。具体的には、硫酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、塩化第2鉄、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化アルミウム、ポリ塩化アルミウム、硝酸鉄、硝酸カルシウム、及び硝酸アルミウム等が挙げられる。
【0059】
金属キレート系化合物としては、アルミニウム、鉄、銅、亜鉛、スズ、チタン、ニッケル、アンチモン、マグネシウム、パナジウム、クロム、及びジルコニウム等の多金属のアセチルアセトンやアセトアセチルエステル配位化合物等が挙げられる。
【0060】
メラミン系化合物としては、へキサメトキシメチルメラミン、ヘキサエトキシメチルメラミン、ヘキサプロポキシメチルメラミン、ヘキサプトキシメチルメラミン、ヘキサペンチルオキシメチルメラミン、ヘキサヘキシルオキシメチルメラミン、及びメラミン樹脂等が挙げられる。
【0061】
粘着剤における架橋剤の含有量は、アクリル系重合体100重量部に対して、0.1〜10重量部が好ましく、0.1〜3.0重量部がより好ましい。架橋剤の含有量が0.1重量部未満であるとアクリル系重合体を十分に架橋できない恐れがある。また、架橋剤の含有量が10重量部を超えるとアクリル系重合体(A)の凝集力が高くなり過ぎ、硬化後に十分な粘着性を有する粘着剤が得られない恐れがある。
【0062】
[他の添加剤]
本発明の粘着剤には、上述した成分の他にも、必要に応じて添加剤を含有していてもよい。添加剤としては、例えば、粘着付与樹脂(例えば、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、石油樹脂、クマロン・インデン樹脂、スチレン系樹脂など)、可塑剤、炭酸カルシウム、微粉末シリカなどの充填剤、着色剤、紫外線吸収剤、架橋剤、酸化防止剤などが挙げられる。これらの添加剤の使用量は、いずれもアクリル系粘着剤に適用される通常の量でよい。
【0063】
粘着剤における粘着付与樹脂の含有量は、アクリル系重合体(A)100重量部に対して、通常は50重量部以下である。しかしながら、本発明の粘着剤は上述した通り剥離性及び保持性に優れることから、粘着付与樹脂を含まなくても又は粘着付与樹脂の含有量が少なくても粘着シートを被着体に貼着し保持することが可能となる。したがって、粘着剤における粘着付与樹脂の含有量は、アクリル系重合体100重量部に対して、0〜20重量部が好ましく、0〜5.0重量部がより好ましく、0〜1.0重量部が特に好ましく、0〜0.5重量部が最も好ましい。
【0064】
[粘着シート]
本発明の粘着剤は、粘着シートとして好ましく用いられる。粘着シートの構成は、用いられる用途に応じて決定すればよく、特に制限されない。支持体の少なくとも一方の面上に、本発明の紫外線硬化型ホットメルト粘着剤が硬化されてなる粘着剤層が形成された粘着シートが好ましい。
【0065】
本発明の粘着シートは、上述した粘着剤を用いることにより、ゲル分率が高い粘着剤層を有する。具体的には、粘着剤層のゲル分率を、50〜90重量%とすることができる。このように高いゲル分率を有する粘着剤層は、剥離性に優れ、特に高温環境下であっても長時間に亘り高い保持力を維持することができる。
【0066】
また、粘着剤に用いられるアクリル系重合体(A)がベンジル基を有する(メタ)アクリル酸エステル(a2)を用いて得られている場合、特にベンジル基を有する(メタ)アクリル酸エステル(a2)とアクリル酸2−エチルヘキシル(a1)とを組み合わせて用いて得られている場合には、このような粘着剤を用いてなる粘着剤層は常温及び高温環境下において高い剪断貯蔵弾性率を有し、剥離性、特に温水中に浸漬後の剥離性、及び高温環境下に優れた保持性を発現することができる。
【0067】
具体的には、粘着シートにおける粘着剤層の23℃、周波数10Hzで測定された剪断貯蔵弾性率が3.0×10Pa以上、特に4.0×10〜6.0×10Paである。また、粘着シートにおける粘着剤層の100℃、周波数10Hzで測定された剪断貯蔵弾性率が0.8×10Pa以上、特に3.0×10〜5.0×10Paである。
【0068】
粘着シートにおける粘着剤層の100℃、周波数10Hzで測定された剪断貯蔵弾性率に対する23℃、周波数10Hzで測定された剪断貯蔵弾性率の比が、1.1〜2.0であるのが好ましく、1.1〜1.6であるのがより好ましい。当該比が2.0を超えると粘着剤層の高温雰囲気下における保持力が低下する恐れがある。また、当該比が1.1未満であると、アクリル系重合体(A)の凝集力が高くなり過ぎ、硬化後に十分な粘着性を有する粘着剤が得られない恐れがある。
【0069】
支持体としては、特に制限されず、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、ポリアミド等からなるプラスチックのフィルム、シート、フォーム及びフラットヤーン;和紙、クレープ紙、金属板、金属箔、織布、不織布、及び木材などが挙げられる。また、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、又はポリオレフィンなどのプラスチックからなるシュリンクフィルムが好ましく用いられる。シュリンクフィルムは、所定以上の温度に加熱されることにより収縮することができる。このようなシュリンクフィルムを用いた接着シートは、温水などに浸漬することにより被着体から容易に剥がすことができる。
【0070】
粘着シートを製造するには、熱溶融させた粘着剤を支持体上に塗布し、紫外線を照射することにより硬化させて粘着剤層を形成する方法が用いられる。
【0071】
本発明の粘着剤ではアクリル系重合体(A)の末端にイニファーターが分解して生成されるラジカルが結合している。粘着剤に紫外線が照射されると、アクリル系重合体(A)の末端に結合しているイニファーター由来のラジカルが解離し、これによりアクリル系重合体(A)の末端にラジカルが生じるとともに、光重合開始剤の分解によってもラジカルが生じる。これらのラジカルにより、アクリル系重合体(A)の分子間で架橋や重合などの反応が生じて粘着剤が硬化する。このようにイニファーター由来のラジカルも粘着剤の硬化に寄与することができるため、粘着剤に用いられる光重合開始剤の量を少なくすることができる。
【0072】
また、光重合開始剤は紫外線を吸収して分解することによりラジカルを発生する化合物である。光重合開始剤が分解するために必要となる紫外線量よりも、イニファーター由来のラジカルがアクリル系重合体(A)の末端から解離するために必要となる紫外線量の方が少ないと考えられる。したがって、本発明の粘着剤は、光重合開始剤のみを用いた従来の粘着剤と比較して少ない紫外線の照射量で十分に硬化することができる。さらに、紫外線を多く吸収する光重合開始剤の量を少なくすることで、粘着剤に入射した紫外線が粘着剤中を透過する途上において、光重合開始剤によって吸収される紫外線量が少なくなり、支持体上に塗布された粘着剤の深部にまで到達できる紫外線量を多くして、粘着剤をその厚み方向において均一に硬化させることができ、均質な粘着剤層を提供することが可能となる。また、光重合開始剤の量を少なくすることで、光重合開始剤に起因した粘着剤層の黄変を抑制することも可能となる。
【0073】
粘着剤の溶融温度は、通常は40〜180℃であるが、好ましくは60〜160℃である。熱溶融させた粘着剤を塗布するには、特に制限されず、ロールコーター、カーテンコーター、ビード、スパイラル、スプレー、スロット、及び押出機などが用いられる。
【0074】
熱溶融させた粘着剤に照射する紫外線の波長領域は、UV−C領域であるのが好ましく、より好ましくは100〜280nmであり、特に好ましくは200〜280nmである。紫外線を照射する光源としては、特に限定されず、例えば、キセノンランプ、及びメタルハライドランプなどが好ましく挙げられる。
【0075】
支持体上に塗布された粘着剤に、UV−C領域の紫外線を、好ましくは100〜600mJ/cm2、より好ましくは200〜550mJ/cm2の積算光量となるまで照射するのが好ましい。なお、紫外線の積算光量は、積算光量計(UV Power Puck フュージョンUV社製)などを用いて測定することができる。
【0076】
粘着シートの製造方法は、上記に限定されず、例えば、粘着剤を離型フィルム上に上記と同様に塗布した後、紫外線を照射し、これにより得られた粘着剤層を支持体上に転写する方法であってもよい。また、粘着剤層を離型フィルムから剥がしてそのまま粘着フィルムとして使用することもできる。
【0077】
粘着シートにおける粘着剤層の厚さは、通常は1〜200μm、好ましくは1〜50μmである。
【0078】
本発明の粘着シートは、さらに所定の形状に打ち抜くことにより、ラベル、シール、ステッカー、及びワッペン等として使用することができる。これらは、商品名や各種情報を表示することを主な目的として被着体に貼り付けて使用される。特に粘着剤層が優れた剥離性を有するので、使用後に被着体から糊残りせずに容易に粘着シートを剥がせることから、ラベルとして用いるのが好ましい。
【0079】
優れた保持力及び剥離性を有する本発明の粘着シートは、プラスチックボトルやガラス瓶などの被着体に貼着することにより好適に使用され、被着体を使用している間は被着体が長期間に亘って高温環境下に放置されても粘着シートが剥がれたりずれたりすることなく、被着体に貼着されたままの状態を維持することができる。また、被着体を使用した後は、本発明の粘着シートを、常温雰囲気下の他、温水中に浸漬後であっても被着体から容易に且つ糊残りすることなく剥離することができる。したがって、使用後のプラスチックボトルやガラス瓶などの被着体を綺麗な状態でリサイクル等へ回すことが可能となる。
【実施例】
【0080】
以下に、本発明を実施例を用いてより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されない。
【0081】
(アクリル系重合体(A1)の製造)
攪拌機、冷却器、温度計及び、窒素ガス導入口を備えた2Lセパラプルフラスコに、単量体成分としてアクリル酸2―エチルヘキシル(日本触媒社製)95重量部、及びメタクリル酸ベンジル(共栄社製)5重量部を含む混合液を仕込み、窒素ガスを用いて30分間バブリングすることにより溶存酸素を除去した後、セパラブルフラスコ内を窒素ガスで置換し、混合液を攪拌しながらオイルバスにて混合液が120℃になるまで昇温した。混合液が120℃に到達した時点で、混合液にイニファーターとしてN,N,N’,N’−テトラエチルチウラムジスルフィド(サンセラーTET 三新化学工業社製)0.03重量部を加え、この混合液の温度を120℃に維持しつつ420分間塊状重合した後、減圧乾燥により未反応単量体を除去した。この結果、重量平均分子量16万、Mw/Mn=2.6のアクリル系重合体(A1)が得られた。
【0082】
(アクリル系重合体(A2)の製造)
単量体成分として、アクリル酸2―エチルヘキシル94.5重量部、アクリル酸2−メトキシエチル5重量部、及びアクリル酸0.5重量部を用い、イニファーターとしてジエチルジチオカルバミン酸ベンジルを0.01重量部を用いた以外は、アクリル系重合体(A1)の製造と同様にして、アクリル系重合体(A2)を得た。アクリル系重合体(A2)の重量平均分子量は32万、Mw/Mn=3.4であった。
【0083】
(アクリル系重合体(A3)の製造)
単量体成分として、アクリル酸2―エチルヘキシル95重量部、及びアクリル酸ヒドロキシエチル5重量部を用い、イニファーターとしてN,N,N’,N’−テトラエチルチウラムジスルフィド0.02重量部を用いた以外は、アクリル系重合体(A1)の製造と同様にして、アクリル系重合体(A3)を得た。アクリル系重合体(A3)の重量平均分子量は20万、Mw/Mn=2.9であった。
【0084】
(アクリル系重合体(A4)の製造)
単量体成分として、アクリル酸2―エチルヘキシル95重量部、及びアクリル酸2−メトキシエチル5重量部を用い、イニファーターとしてN,N,N’,N’−テトラエチルチウラムジスルフィド0.01重量部を用いた以外は、アクリル系重合体(A1)の製造と同様にして、アクリル系重合体(A4)を得た。アクリル系重合体(A4)の重量平均分子量は55万、Mw/Mn=4.5であった。
【0085】
(アクリル系重合体(A5)の製造)
単量体成分として、アクリル酸2―エチルヘキシル95重量部、及びメタクリル酸ベンジル(共栄社製)5重量部を用い、イニファーターとしてN,N,N’,N’−テトラエチルチウラムジスルフィド0.035重量部を用いた以外は、アクリル系重合体(A1)の製造と同様にして、アクリル系重合体(A5)を得た。アクリル系重合体(A5)の重量平均分子量は14万、Mw/Mn=2.9であった。
【0086】
(アクリル系重合体(A6)の製造)
単量体成分として、アクリル酸2―エチルヘキシル95重量部、メタクリル酸ベンジル(共栄社製)4.5重量部、及びアクリル酸0.5重量部を用い、イニファーターとしてN,N,N’,N’−テトラエチルチウラムジスルフィド0.028重量部を用いた以外は、アクリル系重合体(A1)の製造と同様にして、アクリル系重合体(A6)を得た。アクリル系重合体(A6)の重量平均分子量は17万、Mw/Mn=3.3であった。
【0087】
(アクリル系重合体(A7)の製造)
攪拌機、冷却器、温度計及び、窒素ガス導入口を備えた2Lセパラプルフラスコに、単量体成分としてアクリル酸2―エチルヘキシル(日本触媒社製)60重量部、及びメタクリル酸ベンジル(共栄社製)40重量部を含む混合液を仕込み、窒素ガスを用いて30分間バブリングすることにより溶存酸素を除去した後、セパラブルフラスコ内を窒素ガスで置換し、混合液を攪拌しながらオイルバスにて混合液が120℃になるまで昇温した。混合液が120℃に到達した時点で、混合液にイニファーターとしてN,N,N’,N’−テトラエチルチウラムジスルフィド(サンセラーTET 三新化学工業社製)0.016重量部を加え、混合液の温度を120℃に維持しつつ480分間塊状重合した後、さらに混合液に熱重合開始剤としてt−ブチルパーオキシラウレート(パーブチル(登録商標)L 日油株式会社製)0.1重量部を加え、混合液の温度を120℃に維持しつつ600分間塊状重合した。この結果、重量平均分子量24万、Mw/Mn=5.4のアクリル系重合体(A7)が得られた。
【0088】
(アクリル系重合体(A8)の製造)
単量体成分として、アクリル酸2―エチルヘキシル90重量部、及びメタクリル酸ベンジル(共栄社製)10重量部を用い、イニファーターとしてN,N,N’,N’−テトラエチルチウラムジスルフィド0.012重量部を用い、熱重合開始剤としてt−ブチルパーオキシラウレート(パーブチル(登録商標)L 日油株式会社製)0.2重量部を用いた以外は、アクリル系重合体(A7)の製造と同様にして、アクリル系重合体(A8)を得た。アクリル系重合体(A8)の重量平均分子量は20万、Mw/Mn=6.4であった。
【0089】
(アクリル系重合体(A9)の製造)
単量体成分として、アクリル酸2―エチルヘキシル90重量部、及びメタクリル酸ベンジル(共栄社製)10重量部を用い、イニファーターとしてN,N,N’,N’−テトラエチルチウラムジスルフィド0.012重量部を用い、熱重合開始剤としてt−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート(パーヘキシル(登録商標)I 日油株式会社製)0.05重量部及びt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサン(パーブチル(登録商標)O 日油株式会社製)0.5重量部を用いた以外は、アクリル系重合体(A7)の製造と同様にして、アクリル系重合体(A9)を得た。アクリル系重合体(A9)の重量平均分子量は20万、Mw/Mn=7.4であった。
【0090】
(アクリル系重合体(A10)の製造)
単量体成分として、アクリル酸2―エチルヘキシル80重量部、及びメタクリル酸ベンジル(共栄社製)20重量部を用い、イニファーターとしてN,N,N’,N’−テトラエチルチウラムジスルフィド0.016重量部を用い、熱重合開始剤としてt−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート(パーヘキシル(登録商標)I 日油株式会社製)0.05重量部及びt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサン(パーブチル(登録商標)O 日油株式会社製)0.5重量部を用いた以外は、アクリル系重合体(A7)の製造と同様にして、アクリル系重合体(A10)を得た。アクリル系重合体(A10)の重量平均分子量は25万、Mw/Mn=7.4であった。
【0091】
(アクリル系重合体(A11)の製造)
単量体成分として、アクリル酸2―エチルヘキシル90重量部、及びメタクリル酸ベンジル(共栄社製)10重量部を用い、イニファーターとしてN,N,N’,N’−テトラエチルチウラムジスルフィド0.016重量部を用い、熱重合開始剤としてt−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート(パーヘキシル(登録商標)I 日油株式会社製)0.05重量部及びt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサン(パーブチル(登録商標)O 日油株式会社製)0.6重量部を用いた以外は、アクリル系重合体(A7)の製造と同様にして、アクリル系重合体(A10)を得た。アクリル系重合体(A11)の重量平均分子量は24万、Mw/Mn=8.2であった。
【0092】
(アクリル系重合体(A12)の製造)
単量体成分として、アクリル酸2―エチルヘキシル95重量部、及びアクリル酸2−メトキシエチル5重量部を用い、イニファーターとしてN,N,N’,N’−テトラエチルチウラムジスルフィド0.016重量部を用い、塊状重合を540分間行った以外は、アクリル系重合体(A1)の製造と同様にして、アクリル系重合体(A12)を得た。アクリル系重合体(A12)の重量平均分子量は24万、Mw/Mn=4.7であった。
【0093】
(アクリル系重合体(A13)の製造)
単量体成分として、アクリル酸2―エチルヘキシル95重量部、及びアクリル酸2−メトキシエチル5重量部を用い、イニファーターとしてN,N,N’,N’−テトラエチルチウラムジスルフィド0.016重量部を用い、熱重合開始剤としてt−ブチルパーオキシラウレート(パーブチル(登録商標)L 日油株式会社製)0.1重量部を用いた以外は、アクリル系重合体(A7)の製造と同様にして、アクリル系重合体(A12)を得た。アクリル系重合体(A12)の重量平均分子量は24万、Mw/Mn=4.7であった。
(アクリル系重合体(A14)の製造)
単量体成分として、アクリル酸2―エチルヘキシル95重量部、及びアクリル酸2−メトキシエチル5重量部を用い、イニファーターとしてN,N,N’,N’−テトラエチルチウラムジスルフィド0.012重量部を用い、熱重合開始剤としてt−ブチルパーオキシラウレート(パーブチル(登録商標)L 日油株式会社製)0.2重量部を用いた以外は、アクリル系重合体(A7)の製造と同様にして、アクリル系重合体(A14)を得た。アクリル系重合体(A14)の重量平均分子量は21万、Mw/Mn=6.5であった。
(アクリル系重合体(A15)の製造)
単量体成分として、アクリル酸2―エチルヘキシル97重量部、及びアクリル酸2−メトキシエチル3重量部を用い、イニファーターとしてN,N,N’,N’−テトラエチルチウラムジスルフィド0.03重量部を用い、熱重合開始剤としてt−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート(パーヘキシル(登録商標)I 日油株式会社製)0.05重量部及びt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサン(パーブチル(登録商標)O 日油株式会社製)0.6重量部を用いた以外は、アクリル系重合体(A7)の製造と同様にして、アクリル系重合体(A8)を得た。アクリル系重合体(A8)の重量平均分子量は16万、Mw/Mn=8であった。
【0094】
(アクリル系重合体(B1)の製造)
攪拌機、冷却器、温度計及び、窒素ガス導入口を備えた2Lセパラプルフラスコに、単量体成分として、アクリル酸2―エチルヘキシル(日本触媒社製)95重量部、及びメタクリル酸ベンジル(共栄社製)5重量部、連鎖移動剤としてドデシルメルカプタン(和光純薬社製)1重量部、酢酸エチル50重量部を含む混合液を仕込み、窒素ガスを用いて30分間バブリングすることにより溶存酸素を除去した後、セパラブルフラスコ内を窒素ガスで置換し、混合液を攪拌しながらオイルバスにて混合液が70℃になるまで昇温した。混合液が70℃に到達した時点で、過酸化物開始剤(日油社製 パーヘキシルPV)0.18重量部を数回に分けて混合液に添加し、この混合液の温度を70℃に維持しつつ420分間重合させた後、減圧乾燥にて酢酸エチルを除去した。この結果、重量平均分子量41万、Mw/Mn=2.1のアクリル系重合体(B1)が得られた。
【0095】
(アクリル系重合体(B2)の製造)
単量体成分として、アクリル酸2―エチルヘキシル100重量部を用い、イニファーターとしてN,N,N’,N’−テトラエチルチウラムジスルフィド0.1重量部を用いた以外は、アクリル系重合体(A1)の製造と同様にして、アクリル系重合体(B2)を得た。アクリル系重合体(B2)の重量平均分子量は7万、Mw/Mn=2.4であった。
【0096】
(実施例1)
アクリル系重合体(A1)100重量部に、ベンゾフェノン系光重合開始剤として2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン(イルガキュア127 チバスペシャル社製)3.5重量部、粘着付与剤として(イーストマンケミカル社製 フォーラル85)13重量部を添加し、十分に攪拌混合することにより粘着剤を得た。
【0097】
次に、粘着剤を130℃で加熱溶融させてホットメルトコーターを用いてPETフィルム(厚さ50mm)上に厚さ15μmとなるように塗布して室温まで冷却した後、これにメタルハライドランプ(出力120W/cm、アイグラフィックス社製)を用いてUV−C領域(280〜200nm)の紫外線を260mJ/cm2の積算光量となるように照射して、粘着剤層(厚さ15μm)を形成した。これにより粘着シートを得た。
【0098】
(実施例2)
アクリル系重合体(A2)100重量部に、ベンゾフェノン系光重合開始剤としてベンゾフェンン(和光純薬社製)0.8重量部、粘着付与剤(イーストマンケミカル社製 フォーラル85)5重量部を添加し、十分に攪拌混合することにより粘着剤を得た。このようにして得られた粘着剤を用いて、実施例1と同様にして粘着シートを作製した。
【0099】
(実施例3〜16、比較例1〜3)
アクリル系重合体の種類、粘着付与剤の添加量、ベンゾフェノン系光重合開始剤の種類及び添加量、並びに紫外線照射時の積算光量を、表1の通りに変更した以外は、実施例2と同様にして粘着剤を作製し、これを用いて粘着シートを得た。
【0100】
(評価)
上記で作製したアクリル系重合体の重量平均分子量(Mw)及び重量平均分子量と数平均分子量との比(Mw/Mn)を表2にまとめて示す。また、上記で作製した粘着剤のポットライフ、並びに粘着シートにおける粘着剤層のゲル分率、剥離性、及び保持力を下記手順に従って評価した。評価結果をまとめて表3に示す。
【0101】
(ポットライフ)
粘着剤を140℃の雰囲気下に4時間放置して、放置前後の粘着剤の130℃における粘度を、ブルックフィールド社製B型粘度計スピンドルSC4−29を用いて、JIS K6862に準処して測定した。
【0102】
(ゲル分率)
粘着シートを50mm×100mmの平面長方形状に裁断して試験片を作製し、この試験片の重量(W1)を測定した。この試験片を酢酸エチル中に23℃にて24時間浸漬した後、試験片を酢酸エチルから取り出して、110℃の条件下で1時間乾燥させた。そして、乾燥後の試験片の重量(W2)を測定し、下記式を用いてゲル分率を算出した。なお、試験片におけるPETフィルムをないものとみなすため、ゲル分率の算出時には各試験片の重量からPETフィルムの重量(W0)を引いた。
ゲル分率(重量%)=(W2−W0)/(W1−W0)×100
0:PETフィルムの重量(g)
1:浸漬前の試験片の重量(g)
2:浸漬及び乾燥後の試験片の重量(g)
(剪断貯蔵弾性率)
粘着シートにおける粘着剤層の剪断貯蔵弾性率(Pa)を、動的粘弾性スペクトル測定装置(IT計測制御株式会社製 製品名DVA200)を用いて、周波数10Hz、昇温速度6℃/分で−50℃〜+200℃の範囲で測定した。23℃及び100℃における剪断貯蔵弾性率を表3に示す。
【0103】
(保持力)
粘着シートを25mm×25mmの平面正方形状に裁断して試験片を作製した。JIS Z 0237に準じ、#280の耐水研磨紙で予め研磨したステンレス板(SUS304)上に試験片をステンレス板と粘着剤層とが接するように載せ、2kgゴムローラーを試験片上で1往復させてステンレス板と試験片とを圧着し、40℃の雰囲気下で60分間試験片を放置した後、一方の端に1kgの荷重をかけ、接着面に対してせん断方向に力がかかるようにしてステンレス板を設置し、40℃の雰囲気下に1時間放置した。その後、試験片がずれた距離の平均を0.1mm単位で測定した。
【0104】
また、ステンレス板に圧着した試験片に荷重をかけた後、放置する際の温度と時間を「40℃の雰囲気下及び1時間」から「80℃の雰囲気下及び3日間」に変更した以外は上記と同様にして保持力を評価した。比較例1〜3の試験片は、保持力が十分ではなくステンレス板から落下した。
【0105】
(23℃での粘着力及び剥離性)
粘着シートを幅25mm、長さ250mmの平面長方形状に裁断して試験片を作製した。JIS Z 0237に準じ、#280の耐水研磨紙で予め研磨したステンレス板(SUS304)上に試験片をステンレス板と粘着剤層とが接するように載せ、2kgゴムローラーを試験片上で1往復させてステンレス板と試験片とを圧着し、23℃で20分間放置した後に180°方向に速度300mm/分で剥離したときの180°剥離強度(N/25mm)を測定した。この時、粘着剤層の凝集破壊を観察することにより剥離性も評価した。表3において、ステンレス板から粘着剤層が完全に剥離したものを「◎」とし、ステンレス板から粘着剤層が剥離したがステンレス板が雲りが生じたものを「○」とし、一部の粘着剤層が凝集破壊したものを「△」とし、ほぼ全ての粘着剤層が凝集破壊したものを「×」として示す。
【0106】
(80℃での剥離性)
また、粘着シートを25mm×250mmの平面正方形状に裁断して試験片を作製した。ガラス板上に試験片をガラス板と粘着剤層とが接するように載せ、2kgゴムローラーを試験片上で1往復させてガラス板と試験片とを圧着し、23℃雰囲気下に20分間放置して養生した後、80℃の温水中に試験片が圧着されたガラス板を1時間放置し、温水中から試験片を取り出し、試験片の表面に付いた水を拭き取った。その後、180°方向に速度300mm/分で剥離した時の粘着剤層の凝集破壊を観察することにより剥離性を評価した。表3において、ガラス板から粘着剤層が完全に剥離したものを「◎」とし、ガラス板から粘着剤層が剥離したがガラス板に雲りが生じたものを「○」とし、一部の粘着剤層が凝集破壊したものを「△」とし、ほぼ全ての粘着剤層が凝集破壊したものを「×」として示す。
【0107】
【表1】


【0108】
【表2】

【0109】
表1及び2において、単量体、イニファーター、及び光重合開始剤をそれぞれ以下の通り省略して記載する。
2EHA:アクリル酸2−エチルヘキシル
BzMA:メタクリル酸ベンジル
MEA :アクリル酸2−メトキシエチル
2HEA :アクリル酸2−ヒドロキシエチル
Ac :アクリル酸
イニファーターa:N,N,N’,N’−テトラエチルチウラムジスルフィド
イニファーターb:ジエチルジチオカルバミン酸ベンジル
熱重合開始剤L:t−ブチルパーオキシラウレート
熱重合開始剤I:t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート
熱重合開始剤O:t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサン
光重合開始剤(B1):ベンゾフェノン
光重合開始剤(B2):2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン
【0110】
【表3】

【0111】
表3に示す通り、本発明の紫外線硬化型ホットメルト粘着剤は、高温雰囲気化に長時間に亘って放置された後でも、ホットメルト塗工ができるほど低い粘度を維持することができ、ポットライフが長いことが分かる。また、本発明の紫外線硬化型ホットメルト粘着剤は、紫外線の照射量が少なくても十分に硬化することができ、上記粘着剤を用いて得られた粘着剤層は剥離性及び保持力が優れていることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子供与性基を有しない(メタ)アクリル酸アルキルエステル及び電子供与性基を有する(メタ)アクリル酸エステルを含む単量体成分を下記一般式(1)で示されるイニファーター及び/又は下記一般式(2)で示されるイニファーターの存在下で重合させることにより得られ且つ重量平均分子量Mwが10万〜60万であるアクリル系重合体(A)100重量部と、光重合開始剤(B)0.05〜5重量部とを含有することを特徴とする紫外線硬化型ホットメルト粘着剤。
【化1】


【化2】

【請求項2】
電子供与性基を有しない(メタ)アクリル酸アルキルエステルが、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルであることを特徴とする請求項1に記載の紫外線硬化型ホットメルト粘着剤。
【請求項3】
(メタ)アクリル酸エステルが有する電子供与性基が、メトキシ基、エトキシ基、ベンジル基、及びヒドロキシル基よりなる群から選択される少なくとも一種であることを特徴とする請求項1又は2に記載の紫外線硬化型ホットメルト粘着剤。
【請求項4】
(メタ)アクリル酸エステルが有する電子供与性基が、ベンジル基であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の紫外線硬化型ホットメルト粘着剤。
【請求項5】
光重合開始剤が、水素引き抜き型光重合開始剤であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の紫外線硬化型ホットメルト粘着剤。
【請求項6】
架橋剤(C)を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の紫外線硬化型ホットメルト粘着剤。
【請求項7】
支持体の少なくとも一方の面上に粘着剤層が形成されている粘着シートであって、
上記粘着剤層が、請求項1〜6のいずれか1項に記載の紫外線硬化型ホットメルト粘着剤を硬化させてなることを特徴とする粘着シート。
【請求項8】
粘着剤層のゲル分率が、50〜90重量%であることを特徴とする請求項7に記載の粘着シート。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の粘着シートを所定の形状に打ち抜いてなることを特徴とする粘着ラベル。

【公開番号】特開2012−21127(P2012−21127A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−186827(P2010−186827)
【出願日】平成22年8月24日(2010.8.24)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】