説明

紫外線硬化型色補正粘着剤組成物、色補正粘着剤および色補正粘着フィルム

【課題】速やかに硬化が可能かつ優れた色補正機能を発揮することができ、その機能を持続させることができる色補正粘着組成物およびそれを紫外線照射により硬化してなる色補正粘着剤および色補正粘着フィルムを提供する。
【解決手段】紫外線硬化型色補正粘着剤組成物は、側鎖に(メタ)アクリロイル基を有する反応性(メタ)アクリル系重合体(A成分)と、重合性不飽和基を有するカルボン酸モノマー(B成分)と、光重合開始剤(C成分)と、シラン化合物(D成分)と、色素(E成分)とを含む。A成分はガラス転移温度が−55〜0℃、重量平均分子量が20万〜100万である。A成分とB成分の合計を100質量部とした場合に、A成分が80〜99質量部、B成分が1〜20質量部、C成分が0.1〜0.9質量部、D成分が0.1〜2質量部である。A成分とB成分とC成分とD成分との合計を100質量部とした場合に、E成分が0.02〜2質量部である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばプラズマディスプレイパネルに貼着して使用され、色素を含有する色補正粘着剤組成物およびそれを紫外線照射により硬化してなる色補正粘着剤およびそれを用いた色補正粘着フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子画像表示装置(電子ディスプレイ)は、テレビジョン用やモニター用として広く普及している。中でもプラズマディスプレイパネル(PDP)は大画面フラットディスプレイパネルに最適であるとして多くの注目を浴びており、その表面には反射防止などの機能フィルムが設けられている。係る機能フィルムの機能層とは反対側の透明基材フィルム上にもその他の機能層や前面板に使用されるガラスに貼着するために必要な粘着剤が塗布されているのが一般的である。
【0003】
該粘着剤としては、例えばアクリル系ポリマーとイソシアネート化合物とからなる粘着剤組成物を架橋反応させた光学部材用粘着剤が知られている(例えば、特許文献1を参照)。この粘着剤は、アクリル系ポリマーとイソシアネート化合物とからなる粘着剤組成物を例えば23℃、7日間熟成させることによって得られる。しかしながら、係る粘着剤は、アクリル系ポリマーとイソシアネート化合物とを混合し、架橋反応が完了して粘着性能が安定するまでに常温で7日間のエージング(養生)時間が必要である。そこで、このエージング時間を短縮するために、紫外線照射によって短時間に得られる紫外線硬化型粘着剤の開発が行われている。
【0004】
そのような紫外線硬化型粘着剤組成物としては、反応性ポリマーおよび光重合開始剤を必須成分として含有する組成物が知られている(例えば、特許文献2を参照)。この紫外線硬化型粘着剤組成物によれば、紫外線の照射によって速やかに硬化し、粘着力を発現させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−91500号公報(第2頁および第7頁)
【特許文献2】特開2006−282805号公報(第2頁、第14頁および第17頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2に記載されている紫外線硬化型粘着剤組成物は、紫外線を照射することにより硬化するため、係る光重合開始剤を含有する紫外線硬化型粘着剤組成物に色素を添加した場合、系中に存在する光重合開始剤により色素が分解し、退色を招く。従って、そのような色補正粘着剤を反射防止フィルムなどの裏面に適用し、プラズマディスプレイパネルなどに使用すると、パネルから放出される光によってディスプレイの色調を著しく損なう。
【0007】
そこで、本発明の目的とするところは、速やかに硬化が可能かつ優れた色補正機能を発揮することができ、その機能を持続させることができる色補正粘着組成物およびそれを紫外線照射により硬化してなる色補正粘着剤および色補正粘着フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の紫外線硬化型色補正粘着剤組成物は、側鎖に(メタ)アクリロイル基を有する反応性(メタ)アクリル系重合体(A成分)と、重合性不飽和基を有するカルボン酸モノマー(B成分)と、光重合開始剤(C成分)と、シラン化合物(D成分)と、色素(E成分)とを構成成分として含み、A成分はガラス転移温度が−55〜0℃、重量平均分子量が20万〜100万であり、A成分とB成分の合計を100質量部とした場合に、A成分が80〜99質量部、B成分が1〜20質量部、A成分とB成分の合計を100質量部とした場合に、光重合開始剤(C成分)が0.1〜0.9質量部、シラン化合物(D成分)が0.1〜2質量部であり、A成分とB成分とC成分とD成分との合計を100質量部とした場合に色素(E成分)が0.02〜2質量部を含むことを特徴とする。
【0009】
請求項2の色補正粘着剤は、請求項1の紫外線硬化型色補正粘着剤組成物を紫外線硬化してなるものである。
請求項3の色補正粘着フィルムは、透明基材上に請求項2の色補正粘着剤による粘着剤層が積層されてなるものである。
【0010】
請求項4の色補正粘着フィルムは、請求項3の色補正粘着フィルムの粘着剤層とは反対側の透明基材の面に機能層が積層されているものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、次のような効果を発揮することができる。
色素を有する色補正粘着フィルムでは、粘着剤層に色素が含まれていることから、その粘着剤層において色補正機能を発現することができる。また、A成分の反応性(メタ)アクリル系重合体が側鎖に(メタ)アクリロイル基を有し、B成分のカルボン酸モノマーが重合性不飽和基を有していることから、速やかな紫外線硬化性を発揮することができる。さらに、特定のA成分およびB成分の機能に加え、C成分である光重合開始剤およびE成分である色素の含有量の設定などに基づいて、色補正機能の持続性を発現することができ、耐久性試験後における色素の劣化を抑制することができる。
【0012】
よって、この色補正粘着剤を反射防止フィルムなどの機能フィルムに貼着し、複合化することでプラズマディスプレイなどの電子ディスプレイパネルに好適に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を具体化した実施形態について詳細に説明する。
[色補正粘着フィルム]
色補正粘着フィルムは、紫外線硬化型色補正粘着剤組成物(単に、粘着剤組成物ともいう)を離型フィルム上に塗工し、紫外線を照射することにより硬化させた後、離型フィルムとは反対側の面を、透明基材または機能フィルムの一方の面の機能層が積層された透明基材フィルムの機能層とは反対側の面に接合させて得られるものである。このため、粘着剤組成物を紫外線照射により速やかに硬化させることができ、従来の常温硬化型粘着剤で必要であった大型の乾燥機が不要になると共に、透明基材および機能層に影響を与えることなく、簡便に製造することができる。
[粘着剤組成物]
粘着剤組成物は、反応性(メタ)アクリル系重合体(A成分)と、重合性不飽和基を有するカルボン酸モノマー(B成分)と、光重合開始剤(C成分)と、シラン化合物(D成分)と、色素(E成分)とを必須成分として含有する組成物である。この粘着剤組成物が紫外線硬化されることにより、色補正粘着剤が形成される。以下、粘着剤組成物の成分毎に説明する。
〔A成分の反応性(メタ)アクリル系重合体〕
反応性(メタ)アクリル系重合体として、主鎖中に(メタ)アクリル系単量体由来の繰り返し単位を含み、側鎖中に(メタ)アクリロイル骨格を含む官能基〔(メタ)アクリロイル系官能基〕を有する変性(メタ)アクリル系重合体を用いる。
<変性(メタ)アクリル系重合体の主鎖>
反応性(メタ)アクリル系重合体は、主鎖中に(メタ)アクリル系単量体由来の繰り返し単位(以下、「単量体X由来の繰り返し単位」を単に「X単位」と記す場合がある)を含むものである。換言すれば、変性(メタ)アクリル系重合体は、(メタ)アクリル系重合体を基本骨格とするものである。主鎖中に(メタ)アクリル系単量体単位を含ませるのは、そのことによって優れた耐候性、光学的性質(透光性、透明性)を発揮させることが可能となるからである。なお、本明細書において「主鎖」というときは、変性(メタ)アクリル系重合体において最も炭素数の多い炭素鎖を意味するものとする。
【0014】
一般に、「(メタ)アクリル系単量体」とは、アクリル酸やメタクリル酸またはこれらの誘導体を意味する。具体的には、アクリル酸、メタクリル酸の他、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、n−へキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルへキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート類;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリレート類;(メタ)アクリル酸アンモニウム、(メタ)アクリル酸ナトリウム、(メタ)アクリル酸カリウム等の(メタ)アクリル酸塩類;(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド類;等を挙げることができる。
【0015】
変性(メタ)アクリル系重合体は、前記(メタ)アクリル系単量体の中でも、エチルアクリレート、ブチルアクリレートまたは2−エチルヘキシルアクリレート由来の繰り返し単位を含むものが好ましく、エチルアクリレートまたはブチルアクリレート由来の繰り返し単位を含むものが更に好ましく、エチルアクリレート由来の繰り返し単位を含むものが特に好ましい。これらの繰り返し単位を含ませることによって、良好な粘着性能を発揮させることが可能となるからである。
【0016】
また、変性(メタ)アクリル系重合体は、主鎖が1種の(メタ)アクリル系単量体単位のみを含む単独重合体であってもよいし、2種以上の(メタ)アクリル系単量体単位を含む共重合体であってもよい。但し、粘着剤組成物とした際に、その塗膜(粘着剤層)の物性を精密に調整することが容易であるという理由から、2種以上の(メタ)アクリル系単量体単位を含む共重合体であることが好ましい。
【0017】
なお、A成分は、(メタ)アクリル系単量体単位を含むものであれば足り、全ての繰り返し単位が(メタ)アクリル系単量体単位であることを要しない。即ち、本発明の効果を阻害しない限りにおいて、(メタ)アクリル系単量体以外の単量体単位を含むものであってもよい。
【0018】
「(メタ)アクリル系単量体以外の単量体」の種類については特に制限されないが、重合性不飽和結合を有する単量体を用いることができる。具体的には、スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のカルボン酸ビニル類、無水マレイン酸、イタコン酸、フマル酸等の不飽和ジカルボン酸類;N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム等のN−ビニルラクタム類;(メタ)アクリロニトリル等の(メタ)アクリロニトリル類等を挙げることができる。
【0019】
変性(メタ)アクリル系重合体の(メタ)アクリル系単量体単位においては、(メタ)アクリル系単量体単位の含有率は、変性(メタ)アクリル系重合体の主鎖を構成する単量体単位の合計を100質量%とした場合に、50質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることが更に好ましく、100質量%であることが特に好ましい。即ち、主鎖の全てが(メタ)アクリル単量体単位によって構成されていることが最も好ましい。(メタ)アクリル系単量体単位の含有率が50質量%未満であると、色補正粘着組成物の粘着性能が低下する傾向があるため好ましくない。
<変性(メタ)アクリル系重合体の側鎖>
変性(メタ)アクリル系重合体は、側鎖中に(メタ)アクリロイル骨格を含む官能基を有するものである。換言すれば、基本骨格となる(メタ)アクリル系重合体に対して、化学修飾によって(メタ)アクリロイル系官能基を導入し変性させたものである。なお、本明細書において「側鎖」というときは、変性(メタ)アクリル系重合体の主鎖から分岐している炭素鎖を意味するものとする。
【0020】
側鎖中に(メタ)アクリロイル系官能基(即ち、重合性の官能基)を有する重合体は、紫外線照射によってその重合体同士が架橋されるため、紫外線硬化性が発現される。また、耐候性が高いことに加えて、粘着剤層を剥離した際に被着体への糊残りが少なく、被着体を汚染し難いという好ましい効果が発揮される。
【0021】
本明細書において「(メタ)アクリロイル骨格を含む官能基」というときは、「アクリロイル骨格」または「メタクリロイル骨格」を含む官能基を意味し、アクリロイル骨格やメタクリロイル骨格を構成する水素原子の全部または一部が他の原子や官能基によって置換された置換誘導体も含むものとする。本明細書においては、これらの官能基を「(メタ)アクリロイル系官能基」と称する場合がある。代表的なものとしては、例えばアクリロイル基、メタクリロイル基等が挙げられる。アクリロイル基は優れた重合性(ひいては紫外線硬化性)を付与することができる点において好ましく、メタクリロイル基はアクリロイル基と比較して取扱性が良い点において好ましい。
【0022】
また、(メタ)アクリロイル系官能基はアクリロイル骨格やメタクリロイル骨格が直接的に主鎖に結合し得る構造の官能基である必要はなく、アクリロイル骨格やメタクリロイル骨格が何らかの原子や官能基を介して間接的に主鎖に結合し得る構造の官能基であってもよい(例えば、アクリロイルオキシ基等)。
【0023】
(メタ)アクリロイル系官能基の好ましい含有量は、主鎖の構造、重量平均分子量、ガラス転移温度、粘着物性等によっても異なるが、変性(メタ)アクリル系重合体100g当たり0.1〜100mmolであることが好ましく、0.3〜50mmolであることが更に好ましく、1〜40mmolであることが特に好ましい。例えば、重量平均分子量が30万程度の変性(メタ)アクリル系重合体であれば、(メタ)アクリロイル系官能基を重合体1分子当たり0.33〜330個有しているものが好ましく、1.0〜165個有しているものが更に好ましく、3.3〜132個有しているものが特に好ましい。
【0024】
この含有量が0.1mmol/100gより少ない場合には、(メタ)アクリロイル系官能基による変性効果(具体的には、紫外線硬化性、高耐候性、被着体への糊残りが少ない等の効果)が十分に得られなくなるおそれがある。その一方、100mmol/100gより多い場合には、重合体組成等によっても異なるが、高粘度とそれに伴う塗工不良を招く傾向がある。
<変性(メタ)アクリル系重合体の重量平均分子量>
本明細書において「重量平均分子量」というときは、GPC−LS法(Gel Permeation Chromatography−Light Scattering Method:GPC−光散乱法)で測定されたポリスチレン換算の重量平均分子量を意味するものとする。反応性(メタ)アクリル系重合体を形成する変性(メタ)アクリル系重合体の重量平均分子量(Mw)は、20万〜100万であり、30万〜80万であることが好ましい。重量平均分子量を20万〜100万の範囲内に設定することにより、C成分の単量体との混和性がよく、均一な組成物となって、粘着剤層が良好な粘着性とその持続性を発現することができると共に、被着体への糊残りが少なく、被着体を汚染し難くなる。重量平均分子量が20万を下回る場合には、粘着剤層を形成した際に被着体への糊残りが増加し、被着体を汚染する結果を招く。その一方、100万を上回る場合には、単量体との混和性が不良となって粘着剤層の良好な粘着性を発揮することができなくなる。
【0025】
重量平均分子量は、主鎖となる(メタ)アクリル系重合体を重合する際の重合条件、例えば重合開始剤の種類および量、連鎖移動剤の種類および量、溶媒の種類および量、反応温度、反応時間等を適切に制御することによって、上記の範囲内に調整することができる。また、市販の(メタ)アクリル系重合体の中から所望の重量平均分子量を有するものを適宜選択し、これを変性に供してもよい。
〔変性(メタ)アクリル系重合体のガラス転移温度(Tg)〕
本明細書において「ガラス転移温度」というときは、JIS K7121(プラスチックの転移温度測定方法)に準拠して測定されたガラス転移温度を意味するものとする。A成分である変性(メタ)アクリル系重合体は、そのガラス転移温度(Tg)が−55〜0℃のものである。ガラス転移温度をこの範囲内に設定することによって、粘着剤組成物を調製した際に良好な粘着性能を発現することができる。ガラス転移温度が0℃より高くなると、粘着剤組成物を調製した際に粘着強度が低下する傾向を示す。一方、−55℃より低くなると、粘着剤組成物を調製した際に被着体への糊残りが増加し、被着体を汚染する傾向がある。
<変性(メタ)アクリル系重合体の製造方法>
変性(メタ)アクリル系重合体の製造方法は特に限定されないが、例えば基本骨格となる(メタ)アクリル系重合体に対して、化学修飾によって(メタ)アクリロイル系官能基を導入する方法(化学修飾法)によって製造することができる。化学修飾法の具体例としては、例えば水酸基を有する(メタ)アクリル系重合体をベース重合体とし、このベース重合体の水酸基に、イソシアネート基を有する(メタ)アクリル系化合物を直接的に結合させることによって、(メタ)アクリロイル系官能基を導入する方法を挙げることができる(直接結合法)。
【0026】
「水酸基を有する(メタ)アクリル系重合体」は、2−ヒドロキシエチルアクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル類と他の(メタ)アクリル系単量体とを共重合させることにより得ることができる。「イソシアネート基を有する(メタ)アクリル系化合物」としては、例えば2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート〔昭和電工(株)製の商品名:カレンズMOI〕や2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート〔昭和電工(株)製の商品名:カレンズAOI〕等を挙げることができる。
【0027】
また、化学修飾法としては、ベース重合体の水酸基に、ポリイソシアネート化合物等の多官能性化合物を結合させ、その多官能性化合物を介して水酸基を有する(メタ)アクリル系化合物を間接的に結合させることによって、(メタ)アクリロイル系官能基を導入する方法を採ってもよい(間接結合法)。
【0028】
「ポリイソシアネート化合物」としては、例えばメチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)等を挙げることができる。「水酸基を有する(メタ)アクリル系化合物」としては、既に述べた水酸基含有(メタ)アクリレート類等を挙げることができる。
【0029】
変性(メタ)アクリル系重合体の好ましい含有量は、変性(メタ)アクリル系重合体の構造、C成分である光重合開始剤の種類、被着体の種類、要求される粘着特性等によっても異なるが、A成分とB成分の合計を100質量部とした場合に80〜99質量部であり、85〜98質量部であることが好ましく、90〜97質量部であることが特に好ましい。この含有量が80質量部より少ないと、粘着剤層の粘着力が低下する傾向がある。一方、99質量部より多いと、B成分その他の単量体を用いる際にそれらの単量体との混和性が低下する傾向がある。なお、粘着剤組成物を構成する各成分の含有量は、固形分に基づくものである。
〔B成分:重合性不飽和基を有するカルボン酸モノマー〕
重合性不飽和基を有するカルボン酸モノマー(B成分)を含有させることにより、被着体に対する密着性が向上するとともに、熱架橋剤を使用しなくとも(粘着物性の発現に養生が不要)、耐熱・耐湿熱条件下においても粘着特性が低下し難い粘着剤組成物を得ることができる(無養生性)。
【0030】
「重合性不飽和基を有するカルボン酸」とは、重合性二重結合または重合性三重結合を有するカルボン酸を意味する。いわゆる不飽和カルボン酸、より具体的には、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、グルタコン酸、イタコン酸、アクリルアミドN−グリコール酸、ケイ皮酸等を挙げることができる。
【0031】
B成分の好ましい含有量は、A成分の変性(メタ)アクリル系重合体の構造、C成分の種類、被着体の種類、要求される粘着特性等によって異なるが、A成分とB成分の合計を100質量部とした場合に1〜20質量部であり、2〜15質量部であることが好ましく、3〜10質量部であることが特に好ましい。この含有量が1質量部未満であると、粘着剤層の粘着耐久性が低下する傾向がある一方、20質量部を超えると、再剥離時の糊残りが多くなる傾向がある。また、光学特性に大きな影響を与えない範囲であれば、B成分以外の重合性不飽和基を有する化合物を加えてもよい。
(B成分以外の重合性不飽和基を有する化合物)
「重合性不飽和基」とは、重合性を有する不飽和結合、即ちビニル基等の重合性二重結合、アセチレン基等の重合性三重結合等を意味する。これらの不飽和結合は重合性を有する限り、その構造は特に限定されるものではない。例えば、シクロヘキセニル基のように、環状構造の一部を構成しているものであってもよい。
【0032】
なお、「化合物」とは、重合性不飽和結合を有する物質を広く包含する概念である。即ち、重合性不飽和結合を有する限り、その化学的構造は特に限定されず、モノマーであってもよいし、オリゴマーであってもよい。
【0033】
重合性不飽和基を有するモノマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、n−へキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルへキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル類;1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等の多官能アクリレート類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のカルボン酸ビニル類;スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル類;等を挙げることができる。
【0034】
重合性不飽和基を有するオリゴマーとしては、(メタ)アクリロイル基を有し、単官能、2官能または多官能のエポキシアクリレート系オリゴマー、ウレタンアクリレート系オリゴマー、ポリエステルアクリレート系オリゴマー、ポリエーテルアクリレート系オリゴマー、ポリビニルアルコール系オリゴマー、シリコーンアクリレート系オリゴマー等が挙げられる。これらは単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0035】
エポキシアクリレート系オリゴマーは、ビスフェノールAのジグリシジルエーテルジアクリレート、エポキシ樹脂とアクリル酸とメチルテトラヒドロフタル酸無水物との反応生成物、エポキシ樹脂と2−ヒドロキシエチルアクリレートとの反応生成物、エポキシ樹脂とアクリル酸との反応生成物等が挙げられる。ウレタンアクリレート系オリゴマーは、ウレタン結合を介してポリオキシアルキレンセグメントまたは飽和ポリエステルセグメント、飽和ポリエーテルセグメントあるいはその両方が結合し、両末端にアクリロイル基またはメタクロイル基を有するオリゴマー等が挙げられる。ポリエステルアクリレート系オリゴマーは、グリシジルジアクリレートと無水フタル酸との開環共重合エステル、メタクリル酸二量体とポリオールとのエステル、アクリル酸と無水フタル酸とプロピレンオキシドから得られるポリエステル、ポリエチレングリコールと無水マレイン酸とグリシジルメタクリレートとの反応生成物などのようなオリゴマー等が挙げられる。
【0036】
ポリエーテルアクリレート系オリゴマーは、トリメチロールプロパンやペンタエリスリトール等のポリオールと、エチレンオキサイドやプロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドと、(メタ)アクリル酸との反応生成物、メチルビニルエーテル無水マレイン酸共重合体と2−ヒドロキシエチルアクリレートとの反応生成物またはこれにさらにグリシジルメタクリレートを反応させたものなどのオリゴマー等が挙げられる。ポリビニルアルコール系オリゴマーは、ポリビニルアルコールとN−メチロールアクリルアミドとの反応生成物、ポリビニルアルコールを無水コハク酸でエステル化した後、グリシジルメタクリレートを付加させたオリゴマー等が挙げられる。シリコーンアクリレート系オリゴマーは、ウレタン結合を介してシリコーンの両末端にアクリロイル基またはメタクロイル基を有するオリゴマー等が挙げられる。
〔C成分の光重合開始剤〕
C成分としての光重合開始剤とは、重合系に添加しておくことにより、光照射によって重合反応を惹起する触媒作用を示す添加剤を意味する。この光重合開始剤は、光の波長220〜450nmに吸収域を有し、光の波長200〜450nmの紫外線の照射によりその機能を発現することができる。
【0037】
前記光重合開始剤としては、例えばα−ヒドロキシアセトフェノン(チバスペシャリティケミカルズ(株)製、商品名イルガキュア184)、α−アミノアセトフェノン、ベンゾイン系化合物およびアシルフォスフィンオキサイド系化合物(例えば、チバスペシャリティケミカルズ(株)製、商品名イルガキュア819、BASF社製、商品名LucirinTPO)等の光重合開始剤が挙げられる。中でも、反応性が高いという理由から、α−ヒドロキシアセトフェノン、α−アミノアセトフェノンおよびアシルフォスフィンオキサイド系化合物が好ましく、α−ヒドロキシアセトフェノン、アシルフォスフィンオキサイド系化合物が特に好ましい。
【0038】
光重合開始剤の好ましい含有量は、A成分である変性(メタ)アクリル系重合体の構造、C成分である光重合開始剤の種類、被着体の種類、要求される粘着特性等によって異なるが、A成分とB成分の合計を100質量部とした場合に0.1〜0.9質量部であり、0.1〜0.7質量部であることが好ましく、0.1〜0.5質量部であることが特に好ましい。この含有量が0.1質量部より少ないと、光重合開始剤としての作用が十分に発揮されなくなるおそれがある。一方、0.9質量部より多いと、光重合開始剤の残留により色素の退色を招き、色補正の性能が低下する傾向がある。
〔D成分のシラン化合物〕
本発明の粘着剤組成物は、シラン化合物(D成分)を構成成分として含む。D成分を配合することにより、ガラス等の被着体との接合用途において良好な粘着性を発揮させることができる。また、D成分を含有することにより、B成分の量が少ない場合でも、耐熱・耐湿熱条件下においても粘着特性が低下し難い粘着組成物を得ることができる。
【0039】
D成分としては、一般的に「シランカップリング剤」と称されているものを広く用いることができる。具体的な化合物としては、アルキルアルコキシシラン等を挙げることができる。プラズマディスプレイの前面板等、ガラス基材に対する密着性を向上させるという理由から、グリシドキシ基、メタクリロキシ基、アクリロキシ基等の官能基を有するシランカップリング剤を用いることが好ましい。
【0040】
例えば、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン〔商品名:KBM−403(信越化学工業(株)製)等〕、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、およびβ−(3,4−エポキシシクロへキシル)エチルトリメトキシシラン等を挙げることができる。これらのシランカップリング剤は、一種を単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0041】
D成分の含有量は、A成分の重合体の構造、被着体の種類、要求される粘着特性等によっても異なるが、A成分およびB成分の総量を100質量部とした場合に、0.1〜2質量部である。この含有量が0.1質量部未満であると、ガラス等の被着体との接合用途において粘着性が不十分となる場合がある。一方、5質量部を超えると、再剥離時に糊残りが発生するおそれがある。前記の効果をより確実に得るためには、D成分の含有量を0.5〜1質量部とすることが好ましい。
〔E成分の色調補正の色素〕
色補正機能とは、パネルからの発光の色純度や色再現範囲、電源OFF時のディスプレイ色などの改善のためにディスプレイ用フィルタの色を調整する機能である。特に光の波長575〜595nmにピークをもつオレンジ色が色再現性を悪化させる原因となっており、この波長を吸収することよって真赤性を高めて色の再現性を向上させたものである。具体的には、ネオン発光の吸収機能をもたせて色調の調節を行うものが挙げられ、シアニン系、ポルフィリン系、スクアリリウム系、アントラキノン系、フタロシアニン系、メチン系、ポリメチン系、ポリアゾ系、アズレニウム系、ジフェニルメタン系、トリフェニルメタン系、サブフタロシアニン系等が挙げられる。
【0042】
更にこのほかにも、前記とは異なる可視光線を吸収するアントラキノン系、ナフタレン系、アゾ系、フタロシアニン系、ピロメテン系、テトラアザポルフィリン系、スクアリリウム系、シアニン系、アズレニウム系、ジフェニルメタン系、トリフェニルメタン系、オキサジン系、アジン系、チオピリリウム系、ビオローゲン系、アゾ金属錯塩系、ビスアゾ系、インジゴ系色素、アゾメチン系、キサンテン系、オキソノール系等の色素を使用することができる。色補正色素の含有量は、補正すべき色に合わせて適宜調整され、粘着剤組成物中にA成分とB成分とC成分とD成分の合計を100質量部とした場合に0.02〜2質量部である。E成分の含有量が0.02質量部未満の場合には、色補正粘着フィルムは色補正効果を十分に発揮することができない。その一方、2質量部を超える場合には、色補正粘着フィルムの全光線透過率が低下する結果を招く。また、光学特性に大きな影響を与えない範囲であれば、紫外線吸収剤、酸化防止剤を加えてもよい。
【0043】
紫外線吸収剤としては、例えば紫外線による化学作用から物質を保護する目的で添加される紫外線吸収剤等を挙げることができる。紫外線吸収剤としては、例えばベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物の他、サリチル酸エステル類、トリアジン系化合物、シアノアクリレート系化合物等の有機系紫外線吸収剤;酸化亜鉛、酸化チタン等の無機系紫外線吸収剤;等を挙げることができる。
【0044】
酸化防止剤としては、例えばIrganoxシリーズ(商品名、チバスペシャリティケミカルズ(株)製)の245、259、565、1010、1035、1076、1081、1098、1222、1330(いずれも商品名、チバスペシャリティケミカルズ(株)製)等を挙げることができる。
〔色補正粘着フィルム〕
色補正粘着フィルムは、透明基材上に前述した色補正粘着剤による粘着剤層が積層されて形成される。この色補正粘着フィルムの粘着剤層とは反対側の透明基材の面には機能層が積層される。
【0045】
次に、機能層について説明する。
機能層は、例えばハードコート層、反射防止層、減反射層、防眩層、減反射防眩層、ペン入力時の表面での筆記感を向上させることができる自己修復性を有する軟質樹脂層などである。これらは、公知のいずれの機能層も適用することができる。
(機能層の形成方法)
前記機能層を形成するための透明基材への塗布方法は特に限定されず、通常行なわれている塗布方法、例えばロールコート法、スピンコート法、ディップコート法、スプレーコート法、バーコート法、ナイフコート法、ダイコート法、インクジェット法、グラビアコート法等公知のいかなる方法も採用される。塗布に際しては、密着性を向上させるために、予め透明基材(フィルム)表面にコロナ放電処理等の前処理を施すことができる。
【0046】
前記機能層の硬化方法としては、例えば高圧水銀ランプ、ハロゲンランプ、キセノンランプ、窒素レーザ、電子線加速装置、放射性元素等の活性エネルギー線源等が使用される。この場合、活性エネルギー線の照射量は、紫外線の波長365nmでの積算光量として50〜5000mJ/cmであることが好ましい。照射量が50mJ/cm未満のときには、硬化が不十分となるため好ましくない。一方、5000mJ/cmを超えるときには、機能層を形成する活性エネルギー線硬化型樹脂が着色する傾向を示すため好ましくない。
【実施例】
【0047】
以下、実施例および比較例を挙げて前記実施形態をさらに具体的に説明するが、本発明はそれら実施例の範囲に限定されるものではない。
(a)光学的特性
(a−1)透過色の測定
被着体としてのガラス板に、離型フィルムを除去した色補正粘着フィルムを貼着したサンプルを作製した。このサンプルについて測色計(コニカミノルタ(株)製、CM−3600d)を用い、透過色(Yおよびx、y)を測定した。
(b)物理物性
(b−1)密着性
密着性は、機能フィルムがガラスに対して位置ずれ、剥がれなどのない場合に良好と判断し(○)、位置ずれ、剥がれなどが見られた場合に不良と判断した(×)。
(c)耐久性試験
被着体としてのガラス板に、離型フィルムを除去した色補正粘着フィルムを貼着したサンプルを作製した。このサンプルを550W/m(放射エネルギー:300nm〜800nm)、BST65℃、波長380nm以下をカットした環境下に24時間放置し、透過色および被着体(ガラス)との密着性について評価を行った。
(製造例1、A成分である変性(メタ)アクリル系重合体の調製)
冷却器、滴下ロートおよび温度計を備えた四つ口フラスコ(2L)に、下記に示すアクリル系共重合体〔根上工業(株)製の商品名:パラクロンAW4500H、固形分40%、トルエン溶媒〕586g、溶媒(酢酸エチル)890g、反応触媒(ジブチル錫ラウレート)0.3gを仕込み、撹拌しながら40℃に加熱した。前記アクリル系共重合体は、ブチルアクリレート単位、エチルアクリレート単位、メチルメタクリレート単位、ヒドロキシブチルアクリレート単位およびヒドロキシエチルアクリレート単位を含み、重量平均分子量が330,000、ガラス転移温度が−8℃のものであった。また、このアクリル系共重合体の水酸基含有量は、アクリル系共重合体100g当たり15mmol(アクリル系共重合体1分子当たり50個)であった。
【0048】
続いて、予め調製しておいた(メタ)アクリル系化合物(2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、昭和電工(株)製の商品名:カレンズMOI)1.8gを溶媒(酢酸エチル)120gに溶解させた混合液を、前記滴下ロートを通じて四つ口フラスコ内に滴下させた。この滴下は、前記四つ口フラスコ内部の温度を40℃に保持しながら、約1時間かけて行った。滴下終了後も温度40℃で反応を継続し、反応液の滴定分析により、イソシアネート基の消失が確認できた時点で反応終了とし、変性(メタ)アクリル系重合体を得た。反応時間は前記混合液の滴下開始から5時間であった。得られた変性(メタ)アクリル系重合体の重量平均分子量は331,000、ガラス転移温度は−8℃であった。
(実施例1)
変性(メタ)アクリル系重合体(A成分)溶液に、変性(メタ)アクリル系重合体(A成分)の固形分換算で93質量部に対して、アクリル酸(B成分)〔大阪有機化学工業(株)製、商品名:98%アクリル酸〕7質量部、光重合開始剤(C成分)〔BASF社製、商品名:ルシリンTPO)0.2質量部、シラン化合物(D成分)〔信越化学工業社製、商品名: KBM−403)0.7質量部を混合し紫外線硬化型粘着剤組成物溶液を調製した。
【0049】
この紫外線硬化型粘着剤組成物に色素(E−1成分)〔山田化学工業(株)製の商品名:TAP−18〕0.26質量部、色素(E−2成分)〔チバ・スペシャルティケミカルズ(株)製の商品名:ORAZOL BLACK RLI〕0.16質量部、色素(E−3成分)〔チバ・スペシャルティケミカルズ(株)製の商品名:ORAZOL RED 2B〕0.07質量部、色補正色素(E−4成分)〔オリヱント化学工業(株)製の商品名:VARIFAST ORANGE 3209〕0.08質量部を混合し、紫外線硬化型色補正粘着組成物を調製した。
【0050】
この紫外線硬化型色補正粘着組成物を離型フィルム上にダイコート法により塗布、乾燥し、膜厚15μmの塗布膜を形成した。次いで、高圧水銀ランプにより、80mJ/cm2の積算光量で紫外線を照射して光重合性化合物を重合させた後、反射防止フィルム〔日油(株)製の商品名:リアルック9100〕の機能層とは反対面に常法に従って転写することによって、色補正粘着フィルムを作製した。このようにして得られた色補正粘着フィルムについて、透過色および密着性に関する耐久性を測定し、それらの結果を表1に示した。
(実施例2および比較例1〜2)
C成分の量を表1に示すように変更したことを除いては実施例1と同様にして色補正粘着フィルムを作製した。そして、得られた色補正粘着フィルムについて実施例1と同様に物性を測定し、それらの結果を表1に示した。
(比較例3)
市販のアクリル系共重合体〔根上工業(株)製、商品名:パラクロンAW4500H、固形分40質量%、トルエン溶媒〕100gに対し、硬化剤〔日本ポリウレタン工業(株)製、商品名:コロネートL〕0.5gを混合し、熱硬化型粘着剤を調製した。そして、該熱硬化型粘着剤を離型フィルム上にダイコート法により塗布して乾燥させ、膜厚25μmの塗布膜を形成し、前記反射防止フィルムの機能層とは反対面に転写することによって、機能フィルムを作製した。
【0051】
【表1】

表1に示した結果より、実施例1、2の反射防止フィルムは、養生がなくても密着性に優れ、さらに初期および耐久性試験後において色素の劣化もなく、色補正機能に優れていることが明らかになった。
【0052】
これに対して、比較例1においては、色補正粘着剤組成物を構成する光重合開始剤(C成分)の量が多いため、光重合開始剤(C成分)が色素(E成分)を分解し、退色を招いた。比較例2では光重合開始剤(C成分)量が少ないため、粘着力が十分に発揮されず、粘着剤層が離型フィルムに残り、色補正粘着フィルムへの転写が不可能となった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
側鎖に(メタ)アクリロイル基を有する反応性(メタ)アクリル系重合体(A成分)と、重合性不飽和基を有するカルボン酸モノマー(B成分)と、光重合開始剤(C成分)と、シラン化合物(D成分)と、色素(E成分)とを構成成分として含み、A成分はガラス転移温度が−55〜0℃、重量平均分子量が20万〜100万であり、A成分とB成分の合計を100質量部とした場合に、A成分が80〜99質量部、B成分が1〜20質量部、A成分とB成分の合計を100質量部とした場合に、光重合開始剤(C成分)が0.1〜0.9質量部、シラン化合物(D成分)が0.1〜2質量部であり、A成分とB成分とC成分とD成分との合計を100質量部とした場合に色素(E成分)が0.02〜2質量部を含む紫外線硬化型色補正粘着剤組成物。
【請求項2】
請求項1の紫外線硬化型色補正粘着剤組成物を紫外線硬化してなる色補正粘着剤。
【請求項3】
透明基材上に請求項2の色補正粘着剤による粘着剤層が積層されてなる色補正粘着フィルム。
【請求項4】
請求項3の色補正粘着フィルムの粘着剤層とは反対側の透明基材の面に機能層が積層されている色補正粘着フィルム。


【公開番号】特開2010−270236(P2010−270236A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−123839(P2009−123839)
【出願日】平成21年5月22日(2009.5.22)
【出願人】(000004341)日油株式会社 (896)
【出願人】(000230397)株式会社イーテック (49)
【Fターム(参考)】