細胞の中に核酸を導入する医薬組成物及びその方法
本発明は、多量体タンパク質導入ドメイン(PTD)又はスペーサ組み込み型PTDを含む核酸結合分子を用いて、細胞の中に核酸を導入する方法に関する。また、本発明は、核酸結合分子と複合又は接合している核酸を含む新規の組成物に関する。核酸結合分子は、多量体PTD又はスペーサ組み込み型PTDを含んでいてもよく、さらに核酸結合領域を含んでいてもよい。本発明の核酸複合体又は核酸接合体は、標的遺伝子の発現の阻害及び/又は標的遺伝子の機能の判定に用いられてもよい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インビボ又はインビトロにおいて、多量体であり且つ/又はスペーサ組み込み型であるタンパク質導入ドメイン(PTD)を含む核酸結合分子を用いて、細胞の中に核酸を導入する方法に関する。また、本発明は、核酸結合分子と複合又は接合している核酸を含む新規の組成物に関する。さらに、本発明は、標的遺伝子の発現を阻害する方法、及び標的遺伝子の機能を判定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
RNA干渉(RNAi)は、mRNAの分解を誘導してmRNAのタンパク質合成を阻害するために、低分子RNA断片を遺伝子発現における重要なメディエーターであるメッセンジャーRNA(mRNA)と干渉させる方法である。低分子RNA断片の塩基がmRNAと対になると、2本鎖RNAが形成され、細胞内においてその部分が分解される。遺伝子発現におけるRNAiの選択的な作用は、特異的な遺伝子の機能を調べる際の有用な研究手段となる。また、RNAiは、標的遺伝子の発現を特異的に抑制する新規の薬物の開発に頻繁に用いられている。
【0003】
低分子RNA断片は、その起源に依存して、これが細胞外の原料に由来する場合はスモールインターフェアリングRNA(siRNA)に分類され(Elbashir, S. M.等.,Nature 411:494-498(2001))、細胞自身のゲノムにおけるRNAにコードされた遺伝子から生成された場合はマイクロRNA(miRNA)に分類される。
【0004】
siRNAの使用は、大きく2つの分類に分けられる。(1)化学合成又は生物学合成によりインビトロにおいて生成されたsiRNA又はショートヘアピンRNA(shRNA)が細胞内に直接に導入される。(2)siRNAを発現できる種々のDNAベクターが細胞内に導入され、導入された細胞がsiRNAを生成する(例えば、米国特許第6278039号、米国特許出願2002/0006664号、国際公開WO99/32619号、国際公開WO01/29058号、国際公開WO01/68836号及び国際公開WO01/96584号を参照)。これら2つの分類に基づいた種々の応用技術は、これらの利点が効果的に利用されるように用いられることができる。近年、後者において、癌のような病気を起こす遺伝子を下方制御するために、siRNAを生成できる導入ベクターを作ることが試されている(Mayer,M及びWagner,E.,Hum,Gene Ther.17(11):1062-1076(2006))。
【0005】
RNAiにおいて、インビボ又はインビトロにおける細胞内に核酸が導入される効率が、RNAiの効率を決定する。しかしながら、細胞内にsiRNA又はsiRNAを生成するためのDNAベクターを導入する効率は、この2つの技術の実用的な適応のための主な障害として残存する。この原因は、RNA又はDNAのような核酸が細胞膜を透過するのに大きすぎることである。実験においては、その機構がはっきりとわからなくても、それらの核酸は、物理的又は化学的手段の必要が無く細胞内に導入され得た。しかしながら、核酸の導入は、非常に低い効率であるため、実用的に用いることは困難である。
【0006】
研究室内のインビトロの実験において、最もよく用いられる一方法は、核酸の導入を助けるリポソームを用いることである。しかしながら、この場合の効率は、インビトロの実験では高く、インビボでは血液又は体液が原因で顕著に減少する。また、リポソームは毒性が強く、多量のリポソームを用いることは困難であるため、ヒトの体内にこれを適用することは制限される。
【0007】
細胞内に核酸を導入するための他の方法としては、ウイルスベクターが用いられる。ウイルスベクターは、効率的なキャリアとして用いられるが、細胞の発癌のような重大な副作用を有することが発見されており、さらに、ヒトの細胞内に外来性の遺伝子を導入するという倫理的な問題もあるため、安全を保証するために詳細な臨床研究が強く要求されている。このため、現代の状況において、インビボにおけるウイルスベクターの導入は、多くの研究にもかかわらず、信頼して臨床又は産業に用いることはできない。
【0008】
インビボにおいて、直接的に裸の核酸(すなわち、核酸の導入を助けるための組成物を有さない核酸)を物理的に導入する他の方法は、例えば、電気穿孔法及び水力学的導入法があり、これらも研究されてきた。近年の研究結果は、静脈、腹腔又は眼球の中への裸のRNAの導入が特異的な遺伝子の発現を減少させることができることを示している(Herweijer,H.及びWolff,J.A.,Gene Ther.10(6):453-458(2003); Hagstrom,J.E.等.,Mol.Ther.10(2):386-398(2004))。しかしながら、これらの方法の特性は、実用的な適用に制限がある。
【0009】
さらに、導入ベクターとしてポリエチレンイミン(PEI)等を含むナノ粒子を用いることに着目した研究が活発に行われている。
【0010】
実用的にsiRNAを用いるための障害は、低い導入効率の他に、インビボにおいてその半減期が短いことであり、その使用量を増やすことが必要となる。RNAseに耐性があるホスホロチオエート等をRNAのリン酸骨格に修飾する試みが行われている。さらに、ポリエチレングリコール(PEG)又はコレステロール等を用いて、RNAを修飾してRNAの半減期を増大させることに注目した研究が行われている。しかしながら、種々の試み及び研究にもかかわらず、核酸の低い導入効率が、RNAiの実用的な利用における主な問題である。
【0011】
近年、タンパク質導入ドメイン(PTD)を用いることが提案されている。PTDsは、細胞内に生物学的活性分子の導入のために有用な低分子量のペプチドである(VIehl C.T.等.,Ann.Surg.Oncol.12:517-525(2005); Noguchi H.等.,Nat.Med.10:305-309(2004); Fu A.L.等.,Neurosci.Lett.368:258-62(2004))。種々のPTDsは公知であり、ほとんどの場合、PTDにおける正電荷アミノ酸の数は非常に多い。一般に知られているPTDは、HIVのTatであり、さらに、Antp、VP22及び合成ポリアルギニン等である。近年、MPH−1及びSim−2等が発見された。
【0012】
PTDsは、その種類又は細胞の種類に関係なく、インビトロ又はインビボにおいて、分子の効率的な導入をできることが知られている。ほとんどのPTDsは、核酸と安定な非共有結合を形成することができ、細胞内に核酸を導入できる。アンテナペディアホメオドメインの第3螺旋は、安定な非共有結合により低分子のオリゴヌクレオチドと複合体を形成し、それらの内部移行を促進する(Dom,G.等.,Nucleic Acid Res.31:556-561(2003))。Pep−3は非共有結合的な相互作用を介してペプチド核酸と安定な複合体を形成し、それらの細胞内への導入を促進することが報告されている(Morris,M.C.,等,Nucleic Acids Res.35(2007))。HIV gp41の融合配列由来の疎水性ドメイン及びSV40 T-抗原の核移行配列由来の親水性ドメインを含むMPGペプチドは、培養哺乳動物の細胞内にオリゴヌクレオチドを導入するために、アンチセンスオリゴヌクレオチドと非共有結合を形成することが証明されている(Morris.M.C.等.,Nucleic Acid Res.25:2730-2736(1997))。Tatペプチドの2量体、3量体及び4量体は、非共有結合的な相互作用を介してプラスミドDNAと安定な粒子を形成し、細胞内へのそれらの導入を促進することが報告されている。(Rudolph,C.,等.,J.Biol.Chem.278:11411-11418(2003))。
【0013】
また、PTDsは、核酸の導入を促進するために、核酸と安定な共有結合を形成できる。リポソームに共有結合的に吸着したTatペプチドは、DNAの急速な導入を促進する(Torchilin,V.P.等.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 98:8786-8791(2001), Torchilin,V.P.等.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 100:1972-1977(2003))。ジスルフィド結合のような不安定な結合を介して、ペプチド核酸分子が細胞膜を通過して導入されるために、ペネトラチン及びトランスポータンを用いることも提示されている(米国特許第6025140号を参照)。
【0014】
siRNAと共有結合を形成するPTDは提示されている。siRNAと共有結合的に吸着したTatペプチドは、siRNAの核への導入を促進する(Chiu,Y.等.,Chem.Biol.11(8):1165-1175(2004))。siRNAと共有結合的に吸着したペネトラチン及びトランスポータンは、siRNAの細胞への効率的な導入を促進する(Davidson,.T.J.等.,J.Neurosci.24(45):10040-10046(2004); Muratovska,A及びEccles,M.R.,FEBS 558:63-68(2004))。
【0015】
いくつかの研究において、高い効率の導入が達成されているが、siRNA又はsiRNAを発現するためのDNAベクターの導入にPTDを用いて、安定且つ高効率のRNAi効果は見られていない。また、PTDを用いてもわずかな効果しか見られないという報告がある。TaT又はペネトラチンペプチドと共有結合的に吸着したsiRNAは、インビボにおいてRNAiの効果は示さなかった(Moschos,S.A.等.,UK生化学会フォーカスミーティングにおけるポスター発表(2007))。
【0016】
前記の通り、ほとんどのPTDsは、正電荷を有するアミノ酸を多く含んでおり、これは負電荷を有する核酸のリン酸骨格と結合できる。この核酸とPTDsとの結合は、PTDsと核酸とが非共有結合を形成すること、及びこれらが共有結合を形成することの両方が可能である。ほとんどの研究では、単一のPTDのみを用いている。PTDと核酸との弱い結合でさえも、その導入機能の維持のために重要なPTDの構造に影響する。従って、PTDの導入効率は、顕著に減少され得る。核酸と結合していないPTDは、細胞内に導入される特性を維持するが、核酸の導入に用いることはできない。また、核酸と結合しているPTDは、細胞内に導入される特性が減弱している。結果として、従来の研究におけるPTDsを用いた細胞内への核酸の導入法は、効果がない又は非効率的である。
【0017】
従って、細胞内に核酸を導入するために、本発明は、多量体PTD分子又はスペーサ組み込み型PTD分子を設計し、この多量体PTD分子又はスペーサ組み込み型PTD分子は、細胞内への導入特性を維持することを特徴とする。
【発明の概要】
【0018】
本発明の1つの目的は、インビボ又はインビトロにおいて、核酸結合分子を用いて細胞内への核酸の導入を効率的に行うことである。
【0019】
前記の目的を達成するために、本発明は、1つ又はそれ以上の多量体PTDs又はスペーサ組み込み型PTDsを含む核酸結合分子と複合又は接合した核酸を含む複合体又は接合体を提供する。スペーサ組み込み型PTDsは、1kd〜250kd、5kd〜180kd、5kd〜150kd又は5kd〜30kdの分子量相当の長さを有してもよい。核酸と核酸結合分子との結合はPTDの構造に影響しないため、細胞内への核酸の導入効率は顕著に増大し、これにより、この導入機能は維持される。
【0020】
本発明の他の実施形態は、1つ又はそれ以上のPTD分子を含む1つ又はそれ以上の多量体PTDs又はスペーサ組み込み型PTDsを備えている核酸結合分子と複合又は接合しているリン酸骨格を含む1本鎖核酸である。
【0021】
他の実施形態は、1つ又はそれ以上のPTD分子を含む1つ又はそれ以上の多量体PTDs又はスペーサ組み込み型PTDsを備えている核酸結合分子と複合又は接合している2本鎖RNAである。
【0022】
さらなる実施形態は、1つ又はそれ以上のPTD分子を含む1つ又はそれ以上の多量体PTDs又はスペーサ組み込み型PTDsを備えている核酸結合分子と複合又は接合している2本鎖核酸とである。
【0023】
一実施形態は、5つ又はそれ以上のPTD分子を含む1つ又はそれ以上の多量体PTDsを備えている核酸結合分子と複合又は接合している2本鎖RNAである。
【0024】
また、本発明は、1つ又はそれ以上のPTD分子を含む1つ又はそれ以上の多量体PTDs又はスペーサ組み込み型PTDsを備えている核酸結合分子と複合又は接合しているリン酸骨格を含む1本鎖核酸を備える組成物を含む。
【0025】
さらなる実施形態は、1つ又はそれ以上のPTD分子を含む1つ又はそれ以上の多量体PTDs又はスペーサ組み込み型PTDsを備えている核酸結合分子と複合又は接合している2本鎖RNAを備える組成物である。
【0026】
さらなる実施形態は、1つ又はそれ以上のPTDを含む1つ又はそれ以上の多量体PTDs又はスペーサ組み込み型PTDsを備えている核酸結合分子と複合又は接合している2本鎖核酸を備える組成物である。
【0027】
また、本発明は、1つ又はそれ以上のPTDを含む1つ又はそれ以上の多量体PTDs又はスペーサ組み込み型PTDsを備えている核酸結合分子を含む。
【0028】
また、本発明は、前記の1つ又はそれ以上の核酸結合分子と複合又は接合している核酸分子のいずれか1つを製造する方法を含む。
【0029】
また、この発明は、前記の1つ又はそれ以上の核酸結合分子と複合又は接合している核酸分子のいずれか1つが細胞内に導入されるのを促進する方法を含む。
【0030】
また、この発明は、1つ又はそれ以上の核酸結合分子と複合又は接合している核酸を用いて、細胞内の標的遺伝子の機能を判定する方法を含む。
【0031】
また、この発明は、1つ又はそれ以上の核酸結合分子と複合又は接合している核酸を用いて、細胞内の標的遺伝子の発現を阻害する方法を含む。
【0032】
前記の全ての実施例において、核酸結合分子は、さらに1つ又はそれ以上の核酸結合領域を含んでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】核酸と核酸結合分子との関係を示す図である。Aは核酸結合領域を有する核酸結合分子を示し、PTDが核酸と複合していない様子を示す模式図である。Bは核酸結合領域を有する核酸結合分子を示し、核酸と複合したPTD及びたの物質との組み合わせを示す模式図である。Cは核酸と複合したPTDである核酸結合領域を有する核酸結合分子を示す模式図である。Dは核酸と結合した核酸結合領域を有する核酸結合分子を示す模式図である。Eは核酸と複合した核酸結合領域を有する核酸結合分子を示す模式図である。核酸結合領域は、多量体PTDと、多量体PTDの中又は端部のいずれかに設けられたスペーサとを含む。スペーサは立体障害効果を有している。
【図2A】Sim-2UB(v)PTD(2)、Sim-2UB(v)PTD(4)、AntpUB(v)PTD(2)及びAntpUB(v)PTD(4)の組み換え型タンパク質の発現ベクターの製造方法を示す図である。
【図2B】Sim-2UB(v)PTD(2)、Sim-2UB(v)PTD(4)、AntpUB(v)PTD(2)及びAntpUB(v)PTD(4)のN末端ユビキチン融合タンパク質の発現ベクターの製造方法を示す図である。
【図2C】PTD(2)UB及びPTD(4)UBのN末端ユビキチン融合タンパク質の発現ベクターの製造方法を示す図である。図2A、図2B、図2C及び図2DのPTDsは、HPh−1を表している。
【図2D】ユビキチンを有するMPH-1-PTDの8量体の融合タンパク質の発現ベクターの製造方法を示す図である。
【図2E】ユビキチンを有するMPH-1-PTDの4量体及び6量体の融合タンパク質の発現ベクターの製造方法を示す図である。
【図3】ユビキチンを有するN末端融合タンパク質を発現させる際に、可溶性タンパク質として多量体であり且つ/又はスペーサ組み込み型であるPTDを精製する方法を示す図である。
【図4】Src様アダプタータンパク質(SLAP)を有する融合タンパク質を発現させる際に、難溶性タンパク質として多量体PTDを精製する方法を示す図である。
【図5】ジスルフィド結合を介した接合により、2つのPTD2量体からPTD4量体を合成し、PTD4量体とPTD2量体とからPTD6量体を合成する方法を示す図である。
【図6】異なる共有結合を介した接合により、siRNA−多量体PTDを合成する方法を示す図である。
【図7】スペーサ組み込み型タンパク質によるsiRNAの導入効率を示すグラフである。siRNAの1つの鎖をカルボキシフルオセイン(FAM)により標識した。siRNAを単独(siRNA CTL)でした場合、又はAUBP2(AntpUB(v)PTD(2))、SUBP2(Sim-2UB(v)PTD(2))、P2UB(PTD(2)UB)若しくはリポソーム(Lipo)と複合して導入した場合を示している。導入された細胞は、FACSにより解析した。
【図8】siRNAの導入と多量体PTDにおけるPTDの数量との関係を示すグラフである。導入細胞はFACSにより解析した。図8は530/30フィルタ(FL−1H)における蛍光強度の高さを示している。
【図9】細胞内への相対的な導入効率におけるPTDとsiRNAとの比率の影響を示すグラフである。siRNAは、多量体のPTD又はスペーサ組み込み型PTDsと複合体又は接合体を形成したものを用いた。導入細胞はFACSにより解析した。図9は530/30フィルタ(FL−1H)における蛍光強度の高さを示している。
【図10】スペーサ組み込み型タンパク質と共に導入されたsiRNAは、標的遺伝子であるPKCAの転写を阻害する能力を保持していることを示すグラフである。
【図11】多量体PTDsと共に導入されたsiRNAは、標的遺伝子であるGAPDHの活性を阻害する能力を保持していることを示すグラフである。
【図12】PTD4量体はEGFPをコードしているプラスミドDNAを細胞内に導入できることを示すグラフである。導入効率は、FACSを用いてEGFPの蛍光を測定することにより解析した。図12は530/30フィルタ(FL−1H)における蛍光強度の高さを示している。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明は、インビボ又はインビトロにおいて、1つ又はそれ以上の核酸結合分子を用いて細胞内に核酸を効率的に導入する方法を含む。核酸結合分子は、多量体であり且つ/又はスペーサ組み込み型であるPTDを含み、核酸と結合する能力を有し、細胞内に核酸を導入する分子として定義されてもよい。細胞内に導入された核酸は、生物学的に活性でも活性でなくてもよい。
【0035】
本発明の一実施形態は、1つ又はそれ以上のPTD分子を備える1つ又はそれ以上の多量体であり且つ/又はスペーサ組み込み型であるPTDsを含む核酸結合分子と複合又は接合しているリン酸骨格を備える1本鎖核酸である。
【0036】
本発明の好ましい実施形態は、3つ又はそれ以上のPTD分子を備える多量体であり且つ/又はスペーサ組み込み型であるPTDを含む核酸結合分子と複合又は接合しているリン酸骨格を備える1本鎖核酸である。
【0037】
リン酸骨格を備える1本鎖核酸は、shRNA、アンチセンスRNA又はcDNA(相補的DNA)であってもよい。
【0038】
本明細書において用いられる「低分子ヘアピンRNA」又は「shRNA」という用語は、低分子のループ部を有し、基部は19対〜27対の塩基対を有するRNA分子を意味する。shRNAは、2本鎖の基部における配列と相同な遺伝子を選択的に発現抑制することができる。哺乳動物の細胞は、選択的な遺伝子発現の抑制を媒介するためにshRNAをsiRNAに変換できる(Paddison等.,Genes and Dev.16(8):948-58(2002))。shRNAは、2本鎖構造を形成するために1本鎖RNAが折り畳まれたものであり(ヘアピン基部−ループ構造)、2本鎖核酸と同様でありながら1本鎖とみなされ得る。
【0039】
本明細書において用いられる「ペプチド核酸」又は「PNA」という用語は、核酸及び他のポリ核酸塩基鎖と配列特異的にハイブリッド形成できる合成核酸塩基オリゴマー類を意味する。PNA骨格は、DNA及びRNAにおける荷電したリン酸群を有するデオキシリボース及びリボース糖骨格ではなく、ペプチド結合により結合されたN−(2−アミノエチル)−グリシン単位の繰り返しにより構成される。ポリ核酸塩基鎖の核酸塩基同士のハイブリッド形成は、一般に水素結合における確立した法則に従う。ワトソン−クリックの塩基対形成の法則によると、一般に、アデニン(A)はチミン(T)と塩基対を形成し、シトシン(C)はグアニン(G)と塩基対を形成する。他の種々の塩基対のモチーフは、当業者に知られている。
【0040】
本発明の他の実施形態は、1つ又はそれ以上のPTD分子を備えている1つ又はそれ以上の多量体であり且つ/又はスペーサ組み込み型であるPTDsを含む核酸結合分子と複合又は接合している2本鎖RNAである。
【0041】
好ましい実施形態は、2又はそれ以上のPTD分子を備えている多量体であり且つ/又はスペーサ組み込み型であるPTDを含む核酸結合分子と複合又は接合している2本鎖RNAである。
【0042】
多量体であり且つ/又はスペーサ組み込み型であるPTDは、その中又はPTD(s)のC末端若しくはN末端に1又はそれ以上のスペーサを含むことができる。スペーサは、核酸と複合できないタンパク質又はタンパク質のドメインであってもよい。スペーサ組み込み型PTDsは、1kd〜250kd、5kd〜180kd、5kd〜150kd又は5kd〜30kdの分子量に相当する長さを有していてもよい。例えば、抗体のFcドメイン、全抗体、アルブミン、アデュシン(α)、アデュシン(β)、α−シヌクレイン、αAクリスタリン(ヒートショックタンパク質β−4、HspB4)、αBクリスタリン(ヒートショックタンパク質β−5、Hsp5)、アポリポタンパク質A−1(Apo−A1)、β−ガラクトシダーゼ、クラスリンコートアセンブリタンパク質 AP50、シトクロム−c−オキシダーゼ、緑色蛍光タンパク質(GFP)、GTP結合タンパク質 Rheb、赤血球凝集素、Ras GTPアーゼ、Rho−GTPアーゼ−活性化タンパク質(p50−RhoGAP)、スモールプロリン−リッチタンパク質2E(SPR−2E)、チューブリンαー1、チューブリンβ−1、ユビキチン様タンパク質1−活性化酵素 E1A、又はユビキチン様タンパク質1−活性化酵素 E1Bは、スペーサとして用いられ得る。好ましいスペーサは、ユビキチン(UB)である。
【0043】
本発明の一実施形態は、スペーサ組み込み型PTDを含む核酸結合分子であり、このスペーサ組み込み型PTDは、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個又は10個のPTDsと1つ又はそれ以上のスペーサを含む(例えば、配列番号1〜60)。従って、スペーサ組み込み型PTDは、1個〜20個、2個〜15個、2個〜10個、1個〜5個、2個〜8個、2個〜5個、又は2個〜4個のPTDsと1つ又はそれ以上のスペーサを含んでいてもよい。スペーサは、核酸と結合しないアミノ酸の配列である。
【0044】
2本鎖RNAは、siRNA、架橋型siRNA誘導体、shRNA、miRNA又は操作型RNA前駆体を含むがこれらだけに限られない。2本鎖RNAは、化学合成、インビトロにおけるDNAの鋳型からの転写、又はインビボにおける操作型RNA前駆体からの転写をされることができる。
【0045】
本明細書において用いられる「低分子干渉RNA」又は「siRNA」という用語は、自己相補的なセンス領域及びアンチセンス領域を備えている2本鎖RNA分子を意味し、ここで、アンチセンス領域は、発現を下方制御させる標的核酸分子又はその一部のヌクレオチド配列と相補的な核酸配列を含んでおり、センス領域は、標的核酸配列又はその一部に相当するヌクレオチド配列を含む。センス領域は、標的核酸配列又はその一部と実質的に同一の配列を有する。
【0046】
好ましい実施形態において、本発明のsiRNAは、16個〜30個のヌクレオチドを有する2本鎖RNAを備え、より好ましくは、19個のヌクレオチドを有する2本鎖領域と5’末端及び3’末端のそれぞれにおける2つのヌクレオチドの突出部を有するように、21個のヌクレオチドを有するセンス鎖と21個のヌクレオチドを有するアンチセンス鎖との対を備えている。3’末端における2つのヌクレオチドの突出部は、2’デオキシヌクレオチドを含むことが好ましい(例えば、ヌクレアーゼに耐性があるTT)。
【0047】
本明細書において用いられる「マイクロRNA」又は「miRNA」という用語は、細胞自身のゲノムにおけるRNAコード化遺伝子から生成された約22個のヌクレオチドの長さを有する非常に低分子の非コード化RNAを意味し、これはmRNAの制御及び分解の種々の面に関わることが示されている(Zeng等.,Proc.natl.acad.sci.USA,100(17):9779-84(2003))。
【0048】
架橋型siRNA誘導体は、米国特許出願10/672069号に提示され、これは、参照として全て本明細書に援用される。架橋化は組成物の薬物動態を変化させるために、例えば、体内における半減期を増大させるために用いられることができる。従って、本発明は、2本鎖が架橋されるように、核酸の2つの相補鎖を有するsiRNAを含むsiRNA誘導体を含む。例えば、2本鎖のうちの1つの鎖の3’OH末端は、修飾されていてもよく、また、2本鎖が架橋され且つ3’OH末端が修飾されていてもよい。siRNA誘導体は単一の架橋を含んでいてもよい(例えば、ソラレン架橋)。他の実施形態において、siRNA誘導体は、3’末端にビオチン分子(例えば、光切断性ビオチン)、ペプチド、ペプチド模倣体、ナノ粒子、有機化合物(例えば、蛍光色素のような色素)、又はデンドリマーを有する。このような修飾siRNA誘導体によると、細胞の取り込みを改善できる、又はsiRNA誘導体を対応するsiRNAと比較して、細胞標的活性を増大できる。また、細胞内におけるsiRNAの追跡に有用となる、又は対応するsiRNAと比較してsiRNA誘導体の安定性が改善する。従って、架橋型siRNAが一般に知られているRNAiを媒介する特性を保持している間に、改善された特性を有するかどうかを判定するために、当業者は、種々の方法を用いて修飾された架橋型siRNAを選別できる。
【0049】
本明細書において用いられる、操作型RNA前駆体の「操作型」という用語は、自然界において発見されていない前駆体を指し、その前駆体の核酸配列の全部又は一部はヒトにより作られている又は選択されている。一度作られた又は選択された配列は、細胞内の機構による複製、翻訳、転写又はその他の過程を行われ得る。従って、例えば導入遺伝子といった操作型核酸分子により、細胞内において生成されたRNA前駆体は、操作型RNA前駆体である。操作型RNA前駆体は、体内においてsiRNAに加工され、自然に生じる低分子テンポラルRNA(stRNA)の前駆体に類似する人工のコンストラクトである。操作型RNA前駆体は、この分野において公知の標準の方法により、例えば、自動DNA合成を用いる(バイオサーチ社及びアプライドバイオシステムズ社等から入手できる)又は核酸分子にコードさせることにより合成できる。
【0050】
さらなる実施形態は、1つ又はそれ以上のPTD分子を備える多量体であり且つ/又はスペーサ組み込み型である1つ又はそれ以上のPTDsを含む核酸結合分子と複合又は接合している2本鎖核酸である。
【0051】
一実施形態は、5つ又はそれ以上のPTD分子を備える多量体であるPTDを含む核酸結合分子と複合又は接合している2本鎖核酸である。
【0052】
2本鎖核酸は、siRNAを発現できる2本鎖DNAベクター、2本鎖RNA、ハイブリッド2本鎖核酸及び環状RNAを含むがこれらだけに限られない。
【0053】
本明細書において用いられる「DNAベクター」という用語は、細胞内においてsiRNA部分を生成するRNAを発現するために用いられ、複製できる核酸コンストラクトを意味し、このコンストラクトは細胞内において発現される。このようなベクターは、(1)例えば、プロモーター、オペレーター又はエンハンサーのような遺伝子発現における制御的役割を有する遺伝子配列、それに効果的に連結された(2)2本鎖RNA(siRNA又はsiRNAに加工され得るshRNA)を生成するために転写されるコード化配列、及び(3)適当な転写開始配列及び終止配列のアセンブリを備えている転写単位を含む。一般に、プロモーター及び他の制御配列は、対象となる宿主細胞によって異なる。DNAベクターは、環状若しくは線状プラスミド、又は非感染性で且つ組み込まれない(すなわち、脊椎動物の細胞のゲノムの中に組み込まれない)他の線状のDNAであってもよい。線状プラスミドは、環状であったプラスミドを、例えば制限酵素を用いて切断することにより線状化されたプラスミドである。線状DNAは、例えば、Cherng,J.Y.等.,J.Control.Release 60:343-53(1999),及びChen,Z.Y.等.,Mol.Ther.3:403-10(2001)において述べられているように、状況によっては有利である。また、これらの文献は、参照として本明細書に援用される。DNAベクターにおいて、転写を調節する制御配列は、一般に、哺乳動物、微生物、ウイルス又は昆虫の遺伝子に由来する。通常、複製の開始点により与えられる宿主における複製の能力、及び翻訳の認識を促進するための選択遺伝子がさらに組み込まれていてもよい。レトロウイルス及びアデノウイルス等のウイルス由来のベクターが用いられてもよい。
【0054】
本明細書において用いられる「ハイブリッド2本鎖核酸」という用語は、2本鎖RNAと類似の機能を有する2本鎖核酸を意味する。ハイブリッド2本鎖核酸は、RNA鎖及びDNA鎖を含んでいてもよい。RNA鎖はアンチセンス鎖であり、標的mRNAに結合することが好ましい。DNA及びRNA鎖のハイブリッドにより形成されたハイブリッド2本鎖核酸は、ハイブリッド化された相補的部分、及び好ましくは少なくとも1つの突出している3’末端を有している。
【0055】
本明細書において用いられる「環状RNA」という用語は、2つのループモチーフを含むRNA分子を意味し、環状RNAの1つ又は両方のループ部は、生分解性である。例えば、本発明の環状RNAは、インビボにおけるループ部の分解により、3’末端が突出した2本鎖siRNAを生成できるように設計されており、ここで、3’末端は、約2つのヌクレオチドが突出している。
【0056】
一実施形態は、5つ又はそれ以上のPTD分子を備える多量体PTDを含む核酸結合分子に複合又は接合している2本鎖RNAである。
【0057】
タンパク質導入ドメイン(PTD)
PTDはインビボ及びインビトロにおいて、所望のタンパク質、ペプチド、核酸及び化合物を細胞内に導入する又は細胞に取り込ませることを効率的にできることで知られている。
【0058】
本発明における多量体であり且つ/又はスペーサ組み込み型であるPTDとして用いるために、本発明の発明者は、組み換え型タンパク質生成工程又は化学合成工程により生成された数種のペプチドを作成した。他の種類のPTDは、所望の導入領域及び用いたリンカーの種類に依存して用いられることが理解される。PTDは3個〜30個のアミノ酸、好ましくは5個〜15個のアミノ酸からなり、そのうちアルギニン残基が10%〜30%含まれていることが好ましい。しかしながら、アルギニン残基を含まないPTDsも考えられる。
【0059】
多量体であり且つ/又はスペーサ組み込み型であるPTDは、例えば、複数のホモ2量体、ホモ4量体、ホモ6量体及びホモ多量体を含むホモ多量体、又は例えば、複数のヘテロ2量体、ヘテロ4量体、ヘテロ6量体及び他のヘテロ多量体を含むヘテロ多量体であってもよい。本発明の実施形態は、以下の一又はそれ以上の組み合わせを含み、ホモ多量体若しくはヘテロ多量体であり且つ/又はスペーサ組み込み型であるPTDsを含む。
マウス転写因子(MPH−1)又はヒト転写因子(HPH−1)
YARVRRRGPRR(配列番号1)、
Tat−PTD(YGRKKRRQRRR)(配列番号2)、
Antp又はペネトラチン(RQIKIWFQNRRMKWKK)(配列番号3)、
トランスポータン(CLIKKALAALAKLNIKLLYGASNLTWG)(配列番号4)、
HSV−1構築タンパク質Vp22
(DAATATRGRSAASRPTERPRAPARSASRPRRPVE)(配列番号5)、
ポリアルギニンR7(RRRRRRR)(配列番号6)、
膜移行配列(MTS)
(AAVALLPAVLLALLAPAAADQNQLMP)(配列番号8)、
少なくとも以下のPep−1、Pep−2及びPep−3のいずれかを含む低分子両親媒性ペプチドキャリア
Pep−1(KETWWETWWTEWSQPKKKRKV)(配列番号9)
Pep−2(KETWFETWFTEWSQPKKKRKV)(配列番号10)
Pep−3(YGFKKFRKPWTWWETWWTE)(配列番号11)、
Sim−2(AKAARQAAR)(配列番号12)、
MPG(GALFLGFLGAAGSTMGAWSQPKKKRKV)(配列番号13)、
KALA(WEAKLAKALAKALAKHLAKALAKALKACEA)(配列番号14)、及び
分枝型ポリリジン(米国特許出願2006/0041058号及びEom,K.D.等.,J.Nanosci.Nanotechnol.6(11):3532-3538(2006)に記載)。
【0060】
C末端に括弧書きのシステインを有する本発明の配列(配列番号15〜20、21、31〜42、45及び57〜60)において、そのシステインは任意であることを意味する([表1]及び[表2]を参照)。従って、そのC末端のシステインを除いた配列も本発明として考えられ、本発明の実施形態である。C末端のシステインは、siRNAと接合するために用いられてもよい。逆に、C末端にCysを有さない本発明の配列(配列番号1〜14、22〜30、43、44及び46〜56)は、siRNAと接合する際にC末端にシステインを含んでもよい。
【0061】
本発明の多量体であり且つ/又はスペーサ組み込み型であるPTDsの特異的な例を[表1]及び[表2]に示す。
【0062】
【表1】
【0063】
【表2】
【0064】
これらのPTDsに実質的に類似な変異体、例えば、それらと少なくとも65%は同一である変異体も考えられる。もちろん、同一性の割合は、例えば、65%、67%、69%、70%、73%、75%、77%、83%、85%、87%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%のように、より高くてもよい。一般に、置換は、保存的な置換である。PTDの変異体を作る方法は、この分野においては、機械的である。
【0065】
また、PTDs又はこれらの変異体は、これらの中の置換、欠損又は付加があってもよい。これらの変更は、保存的又は非保存的なアミノ酸の置換、欠損又は付加であってもよい。いくつかの実施形態では、1つ、2つ、3つ、4つ又は5つのアミノ酸の置換、欠損又は付加である。当業者は、タンパク質の機能に有意な影響がほとんど無い又は全く無いアミノ酸の置換を十分に知っている(例えば、2次脂肪族アミノ酸を用いた1つの脂肪族アミノ酸の置換)。例えば、表現型においては変化の無いアミノ酸の置換の方法は、Bowie,J,U.等の「タンパク質配列のメッセージの解読:アミノ酸置換の寛容性」Science 247:1306-1310(1990)に示されている。
【0066】
PTD又はそれらの変異体は、修飾骨格、例えば、オリゴカルバミン酸骨格又はオリゴ尿素骨格を有していてもよい(例えば、Wang等.,J.Am.Chem.Soc.119:6444-6445(1997);Tamilarasu等.,J.Am.Chem.Soc.121:1597-1598(1999);Tamilarasu等.,Bioorg.Of Med Chem.Lett.11:505-507(2001)を参照)。
【0067】
核酸結合領域
前記で説明した全ての実施形態において、核酸結合分子は、さらに、1つ又はそれ以上の核酸結合領域を備えてもよい。「核酸結合領域」は、核酸に結合できる領域として定義される。核酸に静電気的に結合できるカチオン性物質、例えば、ポリリジン、ポリアルギニン、その他の塩基性側鎖を有するアミノ酸のポリマー又はポリエチレンイミン(PEI)等が用いられてもよい。カチオン性物質は、カチオン性物質とアニオン性の核酸のリン酸骨格との静電気的相互作用を介して、配列非依存的に核酸と結合すると考えられている。カチオン性物質とDNAとの相互作用の力は、数ある中でも、カチオン性物質の全体の純電荷を反映すると当業者には理解されている。
【0068】
適当なカチオン性物質は、ポリリジン、例えば、10個〜20個のリジン残基又は15個〜17個の残基、特に16個の残基、すなわち、K16を有する。また、3.4kDaの分子量を有するポリ−L−リジン及びポリ−D−リジン(分子毎に平均16個の正電荷を有する)が好ましい。他の適当なポリマーは、2kDaの分子量を有するPEI(中性pHにおいて分子毎に平均12個の正電荷を有する)を含む。PTD自身は、高正電荷分子であり、同様によく用いられ得る。「核酸結合領域」という用語は、前記に示した物質と同一の機構を用いて核酸と結合できる物質を含むことを意図する。
【0069】
多量体であり且つ/又はスペーサ組み込み型であるPTDに加えて、核酸結合領域が核酸結合分子の一部である際に、核酸結合領域が核酸と結合すると、核酸とPTDとの結合の可能性が減少され得る。従って、細胞内に核酸を導入させるために、これらがPTDの特性を維持するようにPTD本来の構造を維持させる可能性を増大させることができる。細胞内に核酸を導入させるPTDの特性は、核酸に直接に結合していなくても発揮される。核酸結合領域が存在し、核酸とPTDとの直接の結合を妨げる場合でさえ、PTDの導入効果は維持される(図1A)。
【0070】
従って、PTDが核酸結合領域として用いられ、また、多量体であり且つ/又はスペーサ組み込み型であるPTDが、細胞内に核酸を導入するための核酸キャリアとして用いられる場合に、細胞内に核酸を導入する効率は顕著に増大する(図1B)。
【0071】
製造方法
本発明は、核酸結合領域を有する又は有さない多量体であり且つ/又はスペーサ組み込み型であるPTDを備える核酸結合分子と複合又は接合している前記の核酸分子のいずれか1つを製造する方法も含む。
【0072】
多量体であり且つ/又はスペーサ組み込み型であるPTDは、化学合成又は組み換え型タンパク質の生成により製造され得る。4量体又は6量体を製造するために、ジスルフィド結合のような共有結合を介した複数の2量体の接合を用いることができる。好ましい実施形態としては、システイン残基は2つのPTD2量体の末端に位置する。ジスルフィド結合の誘導は、pH8〜pH11の低温における緩やかな撹拌による大気酸化法を用いて行われる。6量体はこの方法おける2量体と4量体との組み合わせにより調製され得る。
【0073】
核酸と核酸結合分子との結合が静電気的相互作用を介する場合、その結合は非共有結合であってもよい。核酸と核酸結合分子とが所定の比率で混合されると、複合体が形成される。1:1〜1:20、1:1〜1:3又は1:2である核酸と核酸結合分子との比率は、複合体を生成するために用いられ得る。
【0074】
核酸と核酸結合分子との結合は、ジスルフィド結合又はアミド結合のような共有結合を介して生じることができる。適当な結合(例えば、エステル結合、カルバメート結合、スルホネート結合、チオエステル結合及びチオエーテル結合等)は、一般的な方法及び当業者に知られた方法に従って形成されてもよい。核酸と核酸結合分子とのジスルフィド結合を形成するために、これらの2つの分子はチオール基を生じるように誘導されてもよく、それらのうちの1つは脱離基を生じてもよい。核酸と核酸結合分子とのジスルフィド結合を形成するための十分な時間(また、温度、pH及びモル濃度の比率等の適当な条件下)において、修飾型核酸を、結合を形成するために調製された核酸結合分子と共に温置する。共有結合を形成するための多数の方法及びストラテジは、効率的な結合に必要な条件として、当業者に知られている。
【0075】
本発明は、核酸結合分子と複合又は接合された前記の核酸分子のいずれか1つの細胞内への導入を促進する方法を含み、この方法は、多量体であり且つ/又はスペーサ組み込み型であるPTDを含む核酸結合分子と複合又は接合している核酸を生成する工程(i)と、細胞培養培地の中に核酸結合分子と複合又は接合している核酸を加える工程(ii)と、工程(ii)において調製された細胞培養培地の中で細胞を培養する工程(iii)とを備えている。
【0076】
細胞培養培地の中の細胞を培養する工程は、細胞内に核酸が導入されるような培養時間並びに濃度、温度及びpH等の培養条件において、細胞が培養されることとして定義される。特に、本発明において用いられるプロトコールは、多くの要因(細胞の型、核酸の大きさ及び用いられるPTD等)に従って異なる。但し、当業者には明白である。
【0077】
生物学的使用
本発明は、多量体であり且つ/又はスペーサ組み込み型であるPTDを含む核酸結合分子と複合又は接合された核酸を用いて細胞内の標的遺伝子の機能を判定する方法を含み、この方法は、細胞培養培地の中に核酸結合分子と複合又は接合している核酸を加える工程(i)と、工程(i)において調製された細胞培養培地の中で細胞を培養する工程(ii)と、細胞を維持し、標的遺伝子に対応するmRNAを分解させる工程(iii)と、その細胞の表現型と対照細胞の表現型とを観察及び比較し、それによって細胞内の標的遺伝子の機能に関する情報を得る工程(iv)とを備えている。
【0078】
多くの選択肢が標的遺伝子の発現の直接的な阻害のために有用である。適当な試験法は、例えば、ドットブロット法、ノーザンブロット法、インサイツハイブリッド法、ELISA、免疫沈降法及び酵素機能を用いた方法等のような当業者に知られている技術、また当業者に知られている他の試験法を用いて、標的遺伝子によりコードされるタンパク質のレベル又は標的遺伝子から転写されるmRNAのレベルの測定法を含む。多くの方法は、標的遺伝子のmRNAのレベルを検出するのに有用である。そのような方法は、例えば、ドットブロット法、インサイツハイブリッド法、RT−PCR法、定量性逆転写PCR法、ノーザンブロット法及び核酸プローブアレイ法を含む。同様に、種々の方法は、タンパク質のレベルの変化を検出するのに有用である。例えばその方法は、タンパク質と特異的に結合する抗体を用いて免疫学的試験を行い、抗体とタンパク質とにより形成された複合体を検出するウエスタンブロット法、及び用意されたタンパク質が検出できる活性を有するかどうかを試験する活性試験法を含むがそれらに限られない。一般に、核酸が細胞内に導入され、標的遺伝子の発現が阻害されているかどうかを判定するために、核酸結合分子と複合又は接合された核酸と共に培養された細胞の中のタンパク質又はmRNAのレベルは、核酸結合分子と複合又は接合された核酸と共に培養されていない対照細胞と比較される。
【0079】
標的遺伝子の発現の阻害と相関する表現型の変化を検出するために、細胞の表現型を観察することができる。このような表現型の変化は、例えば、アポトーシス、形態的変化及び細胞増殖の変化、また、他の細胞活性の変化を含み得る。特定の遺伝子発現との干渉が、前記の細胞活性のうちの1つ又はそれ以上の減少又は増大を引き起こす場合、標的遺伝子の機能は、細胞の経路のうちの1つ又はそれ以上に起因し得る。本発明は、標的遺伝子の発現を抑制する又は活性化する治療的方法にも向けられる。
【0080】
「標的遺伝子」とは、その発現を選択的に阻害又は抑制される遺伝子である。この抑制は、shRNA、アンチセンスRNA、miRNA、siRNA、操作型RNA前駆体、ハイブリッド2本鎖核酸又は環状RNAと標的遺伝子のmRNAとの結合により誘導される標的遺伝子のmRNAの分解が促進されて起こる。これらの分子の1つの部分又はセグメントは、標的遺伝子のmRNAの一部、例えば、約16個〜約40個又はそれ以上のヌクレオチドと実質的に相補的であるアンチセンス鎖である。これまでに、遺伝学的に又は配列決定により同定された遺伝子は、標的となり得る。標的遺伝子は、発生に関わる遺伝子及び制御遺伝子、また、代謝若しくは構造に関わる遺伝子又は酵素をコードしている遺伝子を含んでもよい。本発明の標的遺伝子は、制御遺伝子又は天然型のタンパク質をコードしている遺伝子の場合では細胞内在性の遺伝子であり、逆に、ウイルス若しくは細菌の遺伝子、トランスポゾン又は導入遺伝子の場合、異種起源又は細胞外因性の遺伝子であってもよい。
【0081】
本明細書において用いられる「細胞」は、通常の生物学的な意味で用いられ、多細胞生物全体を意味するのでなく、例えば、特異的にヒトを意味するのでない。ここでの細胞とは、例えば、鳥類、植物並びにヒト、牛、羊、霊長類、猿、豚、犬及び猫のような哺乳動物といった生物に含まれていてもよい。ここでの細胞は、原核生物(例えば、細菌細胞)又は真核生物(例えば、哺乳動物細胞又は植物細胞)であってもよい。ここでの細胞は、体細胞系又は生殖系起源、全能性又は多能性、及び、分裂性又は非分裂性の細胞であってもよい。ここでの細胞は、生殖母細胞、胚細胞、幹細胞又は完全に分化した細胞に由来する又はこれらを含んでいてもよい。
【0082】
本発明は、単一の標的遺伝子の機能を判定する方法に限られず、また、ゲノム全体の遺伝子の機能を判定する方法も含む。ゲノムの機能におけるRNAiライブラリを設計するためのアプローチは、Huesken,D.等.,Nat.Biotechnol.23(8):995-1001(2005), Vanhecke,D.及びJanitz,M.Drug Dicov.Today 10(3):205-12(2005),及びJanitz,M.等.,Handb.Exp.Pharmacol.97-104(2006)に提示されている。
【0083】
治療的使用
本発明は、核酸結合分子と複合又は接合された核酸を用いて、細胞内の標的遺伝子の発現を阻害する治療的方法も含む。従って、本発明の一実施形態は、遺伝子発現の変更により治療できる広範な疾病及び疾患を治療する方法を含む。本発明は、患者の病状又は他の有害状態の防止、その発生率若しくは重症度の調節、又はその治療(検出できる又は測定できる範囲の1つ又はそれ以上の症状の緩和)のために、効果的に用いられることができる。これら及びこれらに関連する治療的組成物及び方法の中において、架橋型siRNA誘導体の使用は、その修飾されたsiRNAの特性を未変性のsiRNA分子の特性と比較して改善させる。これは、例えば、インビボにおけるヌクレアーゼ分解に対する耐性が増大される及び/又は細胞の取り込みが改善されることによる。複数の化学修飾を有する架橋型siRNA誘導体がRNA干渉(RNAi)活性を維持することは、本明細書において提示している方法に従って容易に判定され得る。従って、本発明は、種々の治療、診断、標的確認、ゲノムの発見、ゲノムの操作及びゲノム薬理学の適用のために有用な試薬及び方法を提供する。
【0084】
本発明は、患者における特定の病状又は他の有害状態に関する遺伝子発現を変化させる核酸又はその断片を提供することにより、付加的な目的及び利点を満足する。一般に、ここでの核酸は、患者の病状又は有害状態に関して原因となる又は寄与する因子として発現レベルが増大している遺伝子を標的とする。これと関連して、遺伝子の発現は、病状に関する1つ又はそれ以上を阻害する、緩和する又は重症度若しくは再発率を減少するレベルに効果的に下方制御される。また、疾病又は他の有害状態の結果又はその後の状態として、標的遺伝子の発現が増大されることは必然でない種々の異なる疾病モデルにおいて、標的遺伝子の下方制御は、遺伝子発現をより低下すること(すなわち、選択された標的遺伝子のmRNA及び/又はタンパク質の生成のレベルを減少させるための低下)による治療結果を生じる。
【0085】
また、本発明は、一遺伝子のより低い発現を目的とし、その遺伝子は、結果として標的遺伝子の生成又は活性化により発現が抑制される「下流」の遺伝子を活性化させる。また、同等の方法としては、対象動物の選択された病状に関する1つ又はそれ以上の異なる遺伝子の発現を標的にし、ここでの遺伝子とは選択された病状に関して原因となる又は寄与する因子として、発現が異常に増大することが知られている多数の遺伝子のいずれかを含む。本発明は、標的とされる病状のための他の標準的な治療剤と組み合わせて投与され得る。
【0086】
「遺伝子発現の調節」は、標的遺伝子の発現が上方制御又は下方制御されることを意味し、その上方制御又は下方制御は、標的遺伝子によりコードされた細胞内に存在するmRNAレベル、mRNAの翻訳又はタンパク質若しくはタンパク質サブユニットの合成の上方制御又は下方制御を含むことができる。遺伝子発現の調節は、対象のタンパク質又はタンパク質のサブユニットの発現、レベル又は活性が修飾因子(例えば、siRNA)の非存在下において観察された場合よりも大きい又は小さいように上方制御又は下方制御をさせる標的遺伝子によりコードされた1つ又はそれ以上のタンパク質又はタンパク質サブユニットの存在、質又は活性により判定されることができる。例えば、「調節」という用語は、「阻害する」又は「低減する」ことを意味し得るが、これらに限られない。
【0087】
発現を「阻害する」、「下方制御する」又は「減少する」とは、遺伝子の発現、RNA分子のレベル、1つ若しくはそれ以上のタンパク質若しくはタンパク質サブユニットをコードしている同等のRNA分子のレベル、又は標的遺伝子によりコードされている1つ若しくはそれ以上のタンパク質若しくはタンパク質サブユニットのレベル若しくは活性が、本発明の核酸分子の非存在下において観察されるよりも減少することを意味する。一実施形態において、阻害、下方制御又は減少とは、不活性化又は減弱化分子の存在下において観察されるレベルよりも低いことを意味する。他の実施形態において、阻害、下方制御又は減少とは、例えば、スクランブル配列又はミスマッチ配列を有する核酸の存在下において観察されるレベルよりも低いことを意味する。他の実施形態において、本発明の核酸を用いた遺伝子発現の阻害、下方制御又は減少は、その核酸の非存在下よりも存在下の方が顕著である。
【0088】
「標的遺伝子の発現阻害」という用語は、標的遺伝子を下方制御するための本発明の分子の特性を意味する。下方制御の程度を判定するために、特定のコンストラクトを発現している目的の生物又は培養細胞の治療対象体又は分析物は、そのコンストラクトの発現が欠損している対照体と比較される。対照体(コンストラクトの発現が欠損している)の相対値を100%とする。標的遺伝子の発現阻害は、対照体に対する測定値が約90%、多くは50%、また、所定の実施形態では25%〜0%の際に達成される。適当な試験法としては、例えば、ドットブロット法、ノーザンブロット法、インサイツハイブリッド法、ELISA法、免役沈降法、酵素の機能を用いた方法、及び当業者に知られた表現型アッセイのような当業者に知られた技術を用いてタンパク質又はmRNAのレベルを測定することを含む。
【0089】
「治療対象体」とは、生物、組織又は細胞を意味し、これらは、治療対象体となる生物、移植細胞の提供側若しくは受取側となるような生物又は自身が核酸導入の対象である細胞を含む。従って、「治療対象体」は、生物、臓器、組織又は細胞を意味し、これらは、インビトロ又はエクスビボにおける臓器、組織又は細胞を含み、本発明の核酸分子は、本明細書において提示されたポリヌクレオチド導入増強ポリペプチドにより投与され増強される。治療対象体の例としては、哺乳動物の個体又は細胞、例えば、ヒトの患者又は細胞である。
【0090】
好ましい実施形態において、本発明の組成物又は方法は、関節リウマチ(RA)の症状の治療又は予防をするために、腫瘍壊死因子−α(TNF−α)の発現を制御する治療手段として有用である。これと関連して、さらに本発明は、2本鎖RNAを用いるRNAiによってTNF−αの発現及び活性を調節するのに有用な化合物、組成物及び方法を提供する。さらに詳細な実施形態において、本発明は、siRNA、miRNA及びshRNAのような2本鎖RNA並びにこれに関連する方法を提供し、これらは、哺乳動物の治療対象体におけるRAの症状の抑制又は緩和をするために、TNF−α及び/又はTNF−α遺伝子の発現を調節するのに効果的である。
【0091】
本発明は、種々の形式、例えば、経皮的に又は局所注射により投与してもよい(例えば、乾癬の治療のために乾癬プラークの領域に局所注射を行う、又は乾癬性関節炎又はRAによって痛みのある患者の関節内に局所注射を行う)。さらに詳細な実施形態において、本発明は、TNF−αのmRNAに対して作用する2本鎖RNAの治療上効果的な量を投与するための製剤及び方法を提供し、それは、TNF−αRNAを効果的に下方制御し、また、これにより1つ又はそれ以上のTNF−αに関連する炎症状態を抑制する又は予防する。他の実施形態において、本発明は、腫瘍細胞における上方制御遺伝子又は細胞分裂に関わる遺伝子を抑制することにより、癌の治療をする方法も含む。
【0092】
本発明の分子は、当業者に知られている種々の方法により細胞に投与され、これは、核酸結合分子単独又はこれに薬剤的に許容されるキャリア、希釈剤、賦形剤、免疫賦活剤、乳化剤、緩衝剤、安定剤及び保存剤等の1つ又はそれ以上の付加成分をさらに備えた物質と複合又は接合している核酸を含む製剤を投与することを含むが、これらに限られない。他の実施形態において、核酸結合分子と複合又は接合している核酸は、リポソームに被抱され得る、又はハイドロゲル、シクロデキストリン、生分解性のナノカプセル、生物接着性の微粒子若しくはタンパク質性のベクターのような媒体に組み込まれ得る(例えば、PCTの国際公開WO00/53722号を参照)。あるいは、核酸、核酸結合分子及び媒体の組み合わせは、直接注入又は注入ポンプを用いることにより局所的に導入できる。皮下、筋肉内又は皮内のいずれの直接注入であっても、標準的な針及びシリンジを用いて、又はConry等.,Clin.Cancer Res.5:2330-2337(1999)及びPCTの国際公開WO99/31262号に提示されているような針を用いない技術を用いて行われ得る。本発明の組成物は、経口投与のための錠剤、カプセル又はエリキシル剤、直腸投与のための坐薬、注射投与のための無菌溶液又は懸濁液、及び当業者に知られている他の組成物として調製され、用いられることができる。
【0093】
薬理学的組成物又は製剤は、例えば、細胞又はヒトを含む患者の中への全身投与といった投与法に適する形式の組成物又は製剤を意味する。適する形式は、その用途又は例えば、経口的、経皮的又は注射による移行経路に部分的に依存する。このような形式は、組成物又は製剤を標的細胞に送ることを妨げるべきでない(すなわち、細胞に導入するには負電荷を有する核酸が望ましい)。例えば、血流内に注入される薬理学的組成物は、可溶性であるべきである。他の要因は、当業者に知られており、毒性等の配慮をすることを含む。
【0094】
「全身投与」とは、インビボにおいて、薬剤が体全体にくまなく分配され、全身の血流内において薬剤を吸収する又は集積することを意味する。全身に吸収させるための投与経路は、静脈内、皮下、腹腔、吸入、経口、肺内及び筋肉内を含むが、これらに限られない。これらのそれぞれの投与経路によって、到達可能な病気の組織に、所望の負電荷を有する核酸が曝露される。血液循環内に薬剤が入る割合は、分子量又は大きさで決定すると示されてきた。本発明の組成物を含むリポソーム又は他の薬剤キャリアの使用は、例えば、細網内皮系(RES)の組織のような所定の組織の型に、薬剤を強く局在化させることができる。リポソーム製剤は、リンパ球及びマクロファージのような細胞の表面と薬剤との結合を促進できるため有用である。このアプローチは、ガン細胞のような異常細胞に対するマクロファージ及びリンパ球に特異的な免疫認識の利点を用いることによって、標的細胞への薬剤の導入を増強させることができる。
【0095】
「薬剤的に許容できる製剤」とは、組成物又は製剤の所望の活性に最も適する身体の部位に本発明の核酸分子を効果的に分配できる組成物又は製剤を意味する。本発明の核酸分子を有する製剤に適する薬剤の例としては、CNS内への薬剤の移行を増強できるP−糖タンパク質阻害剤(例えば、プルロニックP85)(Jolliet-Riant及びTillement,Fundam.Clin.Pharmacol.13:16-26(1999))、脳内への移行の後に放出し導入を維持するためのポリ(DL−ラクチド−コグリコリド)微粒子のような生分解性ポリマー(Emerich,D.F.等.,Cell Transplant8:47-58(1999))、及び血液脳関門を渡って薬剤を移行させ、神経細胞の取り込み機構を変更させることができるポリブチルシアノアクチレートからなる荷電ナノ粒子(Schroeder,U.等.,Prog.Neuropsychopharmacol.Biol.Psychiatry23(5):941-949(1999))を含むが、これらに限られない。他の本発明の核酸分子のための導入ストラテジの例としては、Boado等.,J.Pharm.Sci.87:1308-1315(1998)、Tyler等.,FEBS Lett.421:280-284(1999)、Pardridge等.,PNAS USA 92:5592-5596(1995)、Boado,Adv.Drug Delivery Rev.15:73-107(1995)、Aldrian-Herrada等.,Nucleic Acids Res.26:4910-4916(1998)、及びTyler等.,PNAS USA 96:7053-7058(1999)に提示された材料を含むが、これらに限られない。
【0096】
本発明は、保存又は投与のために調製された組成物を含み、これは、薬剤的に許容されるキャリア又は希釈剤において、所望の化合物の薬剤的有効量を含む。治療的用途のために受け入れられるキャリア又は希釈剤は、医薬品分野においてよく知られており、例えば、Remington's Pharmaceutical Science,Mack Publishing Co.(A.R.Gennaro edit.1985)に記載されている。例えば、保存剤、安定剤、色素及び香味料が挙げられる。これらは、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸及びp−ヒドロキシ安息香酸のエステルを含む。さらに、酸化防止剤及び懸濁剤が用いられてもよい。
【0097】
「薬剤的有効量」とは、病状を予防する、病状の発生を阻害する、又は病状を治療する(ある程度の症状、好ましくは全ての症状を緩和する)のに必要な量である。薬剤的有効量は、病気の型、用いられる組成物、投与経路、治療する哺乳動物の分類、治療する哺乳動物の特異的な身体的特徴、併用する薬物及び当業者が認識する他の要因に依存する。このような化合物の投与量は、循環させる濃度が毒性がほとんど無い又は全く無いED50を含む範囲内にあることが好ましい。投与量は、用いられる剤形及び用いられる投与経路に依存する範囲内において変動してもよい。投与量は、循環血漿濃度が細胞培養において測定されるようなIC50(すなわち、症状の阻害を半分達成する試験化合物の濃度)を含む範囲にある動物モデルにおいて調製されてもよい。このような情報は、ヒトにおける有効量をより正確に決定するために用いられ得る。血漿内のレベルは、例えば、高速液体クロマトグラフィにより測定されてもよい。
【0098】
本明細書において定義されたように、本発明の薬剤的有効量は、選択された核酸に依存する。例えば、shRNAがコードされたプラスミドが選択された場合、約1μg〜1000mgの範囲内の単一用量が投与され、一実施形態においては、10μg、30μg、100μg又は1000μgが投与され得る。他の実施形態においては、1g〜5gの組成物を投与できる。組成物は、1日〜1週間に1回又はそれ以上の回数を投与され得る。ここでは1日おきの投与も含まれる。当業者は、これらに限られないが、病気若しくは障害の重症度、以前の処置、全身の健康状態及び/又は治療対象体の年齢という要因、さらに、その他の病気の存在を含むいくらかの要因が治療対象体の効果的な処置に必要な投与量及び回数に影響することを理解している。さらに、治療対象体の処置は単一の処置を含み、好ましくは、一連の処置を含む。
【0099】
経口投与のために、本発明は、カプセル剤、錠剤、粉末剤、顆粒剤又は懸濁剤としてもよい。経口組成物は、うがい薬として用いられるために液体キャリアを用いて調製されることもできる。薬剤適合性結合剤及び/又は補助材料を組成物の一部として含むこともできる。錠剤、丸剤、カプセル剤及びトローチ剤等は、以下の成分又は性質が類似した化合物のいずれかを含むことができる。それは、結晶セルロース、トラガントゴム若しくはゼラチンのような結合剤、ゼラチン若しくはラクトースのような賦形剤、アルギン酸、プリモゲル又はコーンスターチのような分解剤、ステアリン酸マグネシウム若しくはステローツのような潤滑剤、コロイド性二酸化シリコンのような流動促進剤、スクロース若しくはサッカリンのような甘味剤、又はペパーミント、サリチル酸メチル若しくはオレンジ甘味剤のような甘味剤である。組成物は、簡便な単位量形状に調製されてもよく、また、放出調節製剤、緩衝剤及び/又は腸液コーティングを用いて調製されてもよい。
【0100】
水性の懸濁液は、これを製造するのに適する賦形剤を有する混合物内の活性材料を含む。このような賦形剤は、例えば、カルボキシルメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガントゴム及びアラビアゴムのような懸濁剤であってもよい。また、分散剤又は湿潤剤は、例えばレクチンのような天然のリン脂質、例えばステアリン酸ポリオキシエチレンのような脂肪酸を有するアルキレンの縮合物、例えばヘプタデカエチレンオキシセタノールのような長鎖脂肪族アルコールを有するエチレン酸化物の縮合物、例えばポリオキシエチレンソルビトールモノオレイン酸のような脂肪酸及びヘキシトールに由来する部分エステルを有するエチレン酸化物の縮合物、又は例えばポリエチレンソルビタンモノオレイン酸のような脂肪酸及びヘキシトール無水物に由来する部分エステルを有するエチレン酸化物の縮合物であってもよい。水性の懸濁液は、1つ又はそれ以上の、例えばエチル又はn−プロピルp−ヒドロキシ安息香酸のような保存剤、1つ又はそれ以上の着色剤、1つ又はそれ以上の香味剤、及び1つ又はそれ以上のスクロース又はサッカリンのような甘味剤を含むことができる。
【0101】
油性の懸濁液は、例えば、ラッカセイ油、オリーブ油、ゴマ油若しくはヤシ油のような植物油又は液体パラフィンのような鉱物油に活性成分を懸濁することにより調製され得る。油性の懸濁液は、例えば、ミツロウ、硬質のパラフィン又はセチルアルコールのような増粘安定剤を含むことができる。甘味剤及び香味剤により、美味な経口製剤を提供することができる。これらの組成物は、アスコルビン酸のような抗酸化剤を加えられることにより、保存され得る。
【0102】
水の添加によって水性の懸濁液を調製するのに適する分散性の粉末及び顆粒は、分散又は湿潤剤、懸濁剤及び1つ又はそれ以上の保存剤を有する混合物の活性成分を提供する。適当な分散若しくは湿潤剤又は懸濁剤は、前記に例証した通りである。例えば、甘味剤、香味剤及び着色剤のような賦形剤をさらに加えることもできる。
【0103】
本発明の医薬組成物は、水に油を含む乳濁液の形態であってもよい。油層は、植物油、鉱物油又はそれらの混合物であってもよい。適当な乳化剤は、例えばアラビアゴム又はトラガントゴムのような天然のゴム、例えば大豆、レシチン、脂肪酸及びヘキシトールに由来するエステル若しくは部分エステルのような天然のリン脂質、例えばソルビタンモノオレイン酸のような無水物、並びに、例えばポリオキシエチレンソルビタンモノオレイン酸のようなエチレン酸化物を有する部分エステルの懸濁物であってもよい。乳濁液は、甘味剤及び香味剤も含むことができる。
【0104】
医薬組成物は、無菌の注射用の水性懸濁液又は油性懸濁液の形態にできる。この懸濁液は、前記の適当な分散又は湿潤剤及び懸濁剤を用いて公知の技術に従って調製され得る。無菌注射用製剤は、例えば、1,3−ブタンジオールのような非毒性の許容できる希釈剤及び溶剤による無菌注射用の溶液又は懸濁液であってもよい。許容される溶媒及び溶剤の中で用いられ得るのは、水、リンガー液及び等張性塩化ナトリウム溶液である。さらに、無菌固定油は、溶剤又は懸濁剤として従来から用いられている。この目的のために、無菌固定油は、合成モノ又はジグリセリドを含ませて用いることができる。さらに、オレイン酸のような脂肪酸が注射用に調製するのに用いられ得る。
【0105】
本発明は、例えば、薬剤の直腸投与のために坐薬の形態で投与することもできる。これらの組成物は、室温では個体であり、直腸の温度では液体となる適当な非刺激性の賦形剤を有する薬剤を混合することにより調製され得る。従って、これは、薬剤が放出されるために直腸において融解される。このような材料は、カカオバター及びポリエチレングリコールを含む。
【0106】
吸入による投与のために、本発明は、例えば、二酸化炭素のようなガスである適当な噴霧剤を含む圧力容器若しくは分注器、又はネブライザからエアロゾルスプレの形態で導入されてもよい。このような方法は、米国特許第6468798号に提示されているものを含む。
【0107】
全身投与は、経粘膜的又は経皮的手段により行うことができる。経粘膜又は経皮投与のために、障害を透過するのに適する浸潤剤は、調製の際に用いられる。このような浸潤剤は、一般に当業者に知られ、また、例えば、経粘膜的投与のために、界面活性剤、胆汁酸塩及びフシジン酸誘導体を含む。経粘膜投与は、点鼻薬又は坐薬を用いて投与できる。経皮投与のために、活性化合物は、当業者に一般に知られている軟膏剤、ゲル剤、又はクリーム剤の中に入れられている。
【0108】
本発明は、例えば遺伝子銃、バイオインジェクタ及び皮膚に対するパッチのような核酸剤の投与に適する方法、また、米国特許第6194389号に提示された微粒子DNAワクチン技術のような針を用いない方法、及び米国特許第6168587号に提示された粉末状ワクチンを用いた哺乳動物における針を使用しない経皮的なワクチン接種により投与できる。さらに、鼻腔内導入は、特に、Hamajima等.,Clin.Immunol.Immunopathol.88(2):205-210(1998)に提示されるように可能である。リポソーム(例えば、米国特許第6472375号に提示されている)及びマイクロカプセル化も用いられ得る(例えば、米国特許第6471996号に提示されている)。
【0109】
定義
便宜上、明細書、実施例及び添付した特許請求の範囲において用いた用語を、ここにまとめる。他に定義されない限り、本明細書において用いられた全ての技術用語及び科学用語は、本発明の分野における当業者により一般に理解される意味と同様の意味を有する。
【0110】
本明細書において用いられている「核酸」という用語は、デオキシリボ核酸(DNA)及び適当な場合はリボ核酸(RNA)のようなポリヌクレオチドを意味する。この用語は、1本鎖(例えば、センス鎖又はアンチセンス鎖)ポリヌクレオチド及び2本鎖ポリヌクレオチドが開示された実施形態に適用できるものとして理解されるべきである。この用語は、公知のヌクレオチドアナログ又は修飾骨格の残基若しくは結合を含む核酸、また、それは合成物、天然物及び非天然物の核酸、さらに、それは参照の核酸と類似の結合特性を有する核酸、さらに、参照ヌクレオチドと類似の様式で代謝される核酸を含む。このようなアナログの例は、ホスホロチオエート、ホスホロアミド酸、メチルホスホン酸、キラルメチルホスホン酸、2−O−メチルリボヌクレオチド及びペプチド核酸(PNAs)を含むが、これらに限られない。
【0111】
糖、塩基及びリン酸の修飾は、血清リボヌクレアーゼによる核酸の分解を防ぐために核酸分子に対して行われ、これにより効果が増大する。例えば、オリゴヌクレオチドは、例えば、2’−アミノ、2’−C−アリル、2’−フルオロ、2’−O−メチル、2’−O−アリル及び2’−Hヌクレオチド塩基の修飾といったヌクレアーゼ耐性基を用いた修飾による安定性の増強及び/又は生化学活性の増強のために修飾され得る(Usman及びCedergren,TIBS 17:34(1992)、Usman等.,Nucleic Acid Symp.Ser.31:163(1994)、及びBurgin等.,Biochemistry 35:14090(1996)を参照)。核酸分子の糖の修飾は、この分野において広く提示されている。これについて、PCT国際公開WO91/03162号、PCT国際公開WO92/07065号、PCT国際公開WO93/15187号、PCT国際公開WO97/26270号、PCT国際公開WO98/13526号、米国特許第5334711号、米国特許第5627053号、米国特許第5716824号、米国特許第6300074号、Perrault等.,Nature 344:565-568(1990)、Pieken等.,Science 253:314-317(1991)、Usman及びCedergren,Trend in Biochem.Sci.17:334-339(1992)、Beigelman等.,J.Biol.Chem.270:25702(1995)、Karpeisky等.,Tetrahedron Lett.39:1131(1998)、Earnshaw及びGait,Biopolymers (Nucleic Acid Science) 48:39-55(1998)、Verma及びEskstein,Annu.Rev.Biochem.67:99-134(1998)、及びBurlina等.,Bioorg.Med.Chem.5:1999-2010(1997)を参照するとよい。前記の参考文献の全ては、触媒作用を調節することなく核酸分子の中に、糖、塩基及び/又はリン酸の修飾等を組み込む位置を決定するための一般的な方法及びストラテジが記載されている。
【0112】
このような方法等の観点において、同様の修飾は、細胞内のRNAiを促進するための能力が有意に阻害されない限り、本発明の核酸を修飾するために本明細書において記載されたように用いられることができる。ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート及び/又は5’−メチルホスホン酸結合を有するオリゴヌクレオチドのインターヌクレオチド結合の化学修飾は、安定性を改善する一方で、過剰な修飾は、毒性を又は活性の減少を引き起こし得る。従って、核酸分子を設計する際に、これらのインターヌクレオチド結合の量を最小化するべきである。これらの結合の量を減少することは、毒性をより低下させ、これらの分子の効力の増大及び特異性の増大を引き起こす。
【0113】
例えば、核酸をCy3、フルオレセイン又はローダミンのようなフルオロフォアを用いて標識するといった公知の方法を用いて、本発明の核酸を標識できる。この標識は、例えば、SILENCER(登録商標)siRNA標識キット(アンビオン)のようなキットを用いて行うことができる。さらに、核酸を例えば、3H、32P又は他の適当な同位体を用いて放射標識できる。
【0114】
「RNA」は少なくとも1つのリボヌクレオチド残基を含む分子を意味する。「リボヌクレオチド」は、β−D−リボ−フラノース部の2’位にヒドロキシル基を有するヌクレオチドを意味する。その用語は、2本鎖RNA、1本鎖RNA、部分的に精製されたRNAのような分離RNA、本質的に精製されたRNA、合成RNA、組み換えにより生成されたRNA、並びに1つ又はそれ以上のヌクレオチドの付加、欠損、置換及び/又は改変により天然型のRNAとは異なる改変型RNAを含む。このような改変は、ヌクレオチドでない材料を、siRNAの末端に、又は、例えば、RNAの1つ又はそれ以上のヌクレオチドの内部に付加することを含むことができる。本発明のRNA分子のヌクレオチドは、非天然型のヌクレオチド又は化学合成されたヌクレオチド若しくはデオキシヌクレオチドのような非標準的なヌクレオチドを含むこともできる。このような改変型RNA分子は、RNAアナログ又は天然型RNAのアナログとして適用され得る。
【0115】
「センス領域」とは、核酸のアンチセンス領域と相補性を有する核酸のヌクレオチド配列を意味する。さらに、核酸のセンス領域は、標的核酸配列と相同性を有する核酸配列を含むことができる。
【0116】
「アンチセンス領域」とは、核酸のセンス領域と相補性を有する核酸のヌクレオチド配列を意味する。さらに、核酸のアンチセンス領域は、標的核酸配列と相同性を有する核酸配列を含むことができる。
【0117】
本明細書において用いられている「複合する」という用語は、非共有結合を介して2つの分子が相互作用していることを意味する。非共有結合には、水素結合、イオン間相互作用、ファンデルワールス力及び疎水結合の4つの主たる型がある。正に荷電したPDTは、凝集体、ナノ粒子又は可溶性複合体として、負に荷電した核酸と静電気的に非共有結合による複合体を形成することができる。
【0118】
本明細書において用いられている「接合する」という用語は、共有結合を介して2つの分子が相互作用していることを意味する。共有結合は一般に、安定である。共有結合の例は、ジスルフィド結合又はアミド結合を含むがこれらに限られない。しかしながら、種々の共有結合が許容されるように、種々の官能基が用いられることは当業者には明白である(例えば、エステル結合、カルバミン酸結合、スルホン酸結合、チオエステル結合又はチオエーテル結合)。共有結合は、化学修飾された核酸分子のセンス鎖、アンチセンス鎖又はその両方の鎖における3’末端、5’末端又はその両方に形成され得る。
【0119】
本明細書において用いられている「多量体PTD」という用語は、1つよりも多くドメインを含み、そのドメイン同士が結合しているペプチド鎖を意味する。本発明の多量体ペプチドの中のドメインは、ホモ多量体を形成するために同一となり得る、又はヘテロ多量体を形成するために互いに異なり得る。ホモ多量体又はヘテロ多量体は、2量体、3量体、4量体、5量体、6量体又はそれ以上の多量体を含むことができる。一般に、リンカーは、他の単量体と架橋が形成できるシステイン残基のようなアミノ酸残基に続く1つ〜5つのアミノ酸からなる。システイン残基は2つのペプチド分子の間にジスルフィド架橋を形成できるため、システイン残基を用いることが好ましい。但し、他の多量体ペプチド鎖の形成の手段も当業者に知られている。例えば、システイン残基の位置において、アミノ酸残基又は人工のアミノ酸のような化学物質は、化学的な架橋形性能を含み得る(例えば、糖残基、Marcaurelle等.,Tetrahedron Lett.39:8417-8420(1998)、これは、本明細書に参照として援用される)。
【0120】
「標的遺伝子」は、発現を選択的に阻害又は抑制される遺伝子である。この発現抑制は、標的遺伝子のmRNAの分解を促進することにより、又は標的遺伝子のmRNAの翻訳を阻害することにより達成される。その分解又は翻訳の阻害は、標的遺伝子のmRNAと、shRNA、アンチセンスRNA、miRNA、siRNA、操作型RNA前駆体、ハイブリッド2本鎖核酸又は環状RNAとの結合により誘導される。前記の分子の一部又は一セグメントは、例えば、標的遺伝子のmRNAの約16個〜約40個のヌクレオチドを有する部分と実質的に相補的であるアンチセンス鎖である。遺伝学的に又は配列決定によりこれまでに同定された遺伝子は、標的となり得る。標的遺伝子は、発生に関わる遺伝子及び制御遺伝子を含んでもよく、また、代謝若しくは構造に関わる遺伝子又は酵素をコードしている遺伝子を含んでもよい。標的遺伝子は、表現型が研究されている細胞、又は表現型の特徴に直接的又は間接的に影響する態様を有する生物において発現されてもよい。本発明の標的遺伝子が、制御遺伝子又は未変性のタンパク質をコードしている遺伝子の場合は、細胞に内在的な遺伝子であり、また、標的遺伝子がウイルス若しくは微生物の遺伝子、トランスポゾン又は導入遺伝子の場合は、細胞に関して異種性又は外因性であってもよい。いずれかの場合において、阻害されない標的遺伝子の発現は、病気又は異常を引き起こし得る。
【0121】
2つの核酸の関係における「実質的に同一」という用語は、例えば、以下に記載されているような配列比較アルゴリズムを用いて、又は視覚的な検査により測定できるように、比較され且つ最大限に一致するように整列させた場合に、少なくとも75%、好ましくは少なくとも80%又は85%、さらに好ましくは少なくとも90%、95%、96%、97%、98%又は99%のヌクレオチドの同一性を有する2又はそれ以上の配列又はサブ配列を意味する。実質的な同一性は、少なくとも約16個〜40個のヌクレオチドの長さ、又は少なくとも約40個〜60個のヌクレオチドの長さの配列の領域にわたって存在し、他の例では、少なくとも60個〜80個のヌクレオチドの長さの領域にわたって存在し、さらに他の例では、少なくとも90個〜100個のヌクレオチドの長さにわたって存在し、さらに他の例では、ヌクレオチドのコード領域のような比較される配列の全長の配列が実質的に同一である。
【0122】
本明細書において用いられている「実質的に相補的」という用語は、特定化された条件下において、ハイブリッド形成するために十分に相補的である2つの配列として定義される。ハイブリッド形成の多様な条件は、本発明において用いられてもよく、それは、高い厳密性、中程度の厳密性及び低い厳密性の条件を含む。高い厳密性を有する条件は、当業者に知られており、例えば、Maniatis等.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,第2版(1989)、及びAusubel等.,Short Protocols in Molecular Biology(1989)を参照するとよく、これらは参照として本明細書に援用される。一般に、高い厳密性を有する条件は、規定されたイオン強度及びpHにおける特定の配列の融点(Tm)よりも約5℃〜10℃低いように選定される。Tmは、平衡状態における標的配列に対して、標的配列に相補的なプローブの50%がハイブリッド形成する(規定されたイオン強度、pH及び核酸濃度における)温度である(Tmにおいて、標的配列が過剰に存在する条件で、平衡状態に50%のプローブが占められる)。高い厳密性を有する条件は、塩濃度としてナトリウムイオンが約1.0Mよりも低く、例えば、pHが7.0〜8.3であり、短いプローブ(例えば10個〜50個のヌクレオチド)では低くとも約30℃、長いプローブ(例えば50個のヌクレオチドよりも長い)では低くとも約60℃の温度において、ナトリウムイオン(又は他の塩)が約0.01M〜1.0Mの濃度である。高い厳密性を有する条件は、ホルムアミドのような不安定化剤の添加によって達成されてもよい。中程度の厳密性又は低い厳密性を有する条件は、この分野において公知なものを用いてもよい。
【0123】
本発明は、本発明の理解を助けるために明らかにした実施例を以下に記載し、これにより、いかなる場合もその後の特許請求の範囲に規定された本発明の範囲を限定するように解釈されない。
【実施例】
【0124】
(第1の実施例)
多量体PTDの化学合成
ペプチドは、ペプチドオートシンセサイザ(Symphony,PTI,Tucson,Arizona)を有する2−クロロトリチルリジンを用いて、フルオレン−9−イルメトキシカルボニル(Fmoc)固相法の標準的な段階に従って合成させた。Fmocアミノ酸は、0.2Mの1−メチル−2−ピロリドン(NMP)溶液に保存した。カップリング試薬は、0.2MのNMP溶液に前溶解した。全てのFmocアミノ酸は、カップリング試薬の5倍以上とした。カップリングは30分間行った。Fmocの脱保護は、NMP溶液に溶解した20%ピペリジンを用いて行った。アミノ酸側鎖の樹脂からのペプチド切断は、トリフルオロ酢酸(TFA)/水(95:5)を用いて3時間行った。樹脂はTFAを用いて洗浄し、膜は部分的に蒸発させた。未精製の生成物は、ジエチルエーテルを用いて沈殿させ、遠心分離により収集し、水に溶解し、凍結乾燥した。ペプチドは、UV検出器(230nm)を備えているSCL−10A VP Shimadzu装置及びShimadzu Shim−PackC18カラム(250×4.6mm,5μm,100Å,流速1ml/分)を用い、RP−HPLCにより解析及び精製させた。精製された多量体PTDsのアミノ酸配列は、以下の通りであった。
化学合成によるMPH−1−PTD単量体:YARVRRRGPRR(C)(配列番号15)、
化学合成によるMPH−1−PTD2量体a:YARVRRRGPRRGGYARVRRRGPRRGG(C)(配列番号16)、
化学合成によるMPH−1−PTD2量体b:CGGYARVRRRGPRRGGYARVRRRGPRRGG(C)(配列番号17)、及び
化学合成によるMPH−1−PTD3量体:YARVRRRGPRRGYARVRRRGPRRGYARVRRRGPRRG(C)(配列番号18)。
【0125】
(第2の実施例)
多量体であり且つ/又はスペーサ組み込み型である多量体PTDの可溶性発現
多量体PTDの化学合成は、比較的簡便であるが、化学合成による大きな多量体PTDsの調製は、技術的及び経済的に制限され得る。この理由のために、2量体を含むオリゴマーを、組み換えタンパク質技術を組み合わせた化学合成を介して調製し、また、4量体よりも大きなオリゴマー及びスペーサ組み込み型PTDを、組み換え型タンパク質として調製した。本発明の組み換え型タンパク質の発現のために調製したベクターを図2に示している。
【0126】
PTDsは、強い正電荷を有する低分子ペプチドであるため、それらは、単独で発現すると、容易に分解される傾向がある。従って、種々のPTDs及びスペーサ組み込み型PTDsを、ユビキチン(UB)を有する融合タンパク質の調製、調製された融合タンパク質の精製、及びその後のユビキチンタンパク質分解酵素(UBP)を用いて精製された融合タンパク質を分離することにより構築した(図3に示す)。
【0127】
多量体であり且つ/又はスペーサを有してスペーサ組み込み型であることを満たすPTDsを、N末端UB融合タンパク質又は非融合タンパク質として調製した。スペーサとして用いられるUBは、UBPにより分離されるため、UBPによる分離を防ぐために、UBスペーサのC末端のグリシン残基をバリンに置換した。この変異ドメインは、UB(v)として表している(図2に示す)。PTD(2)UBのようにC末端にUBが位置する場合、C末端のUBはUBPにより分離されないため、野生型UBを用いた。
【0128】
大腸菌(BL21)を、従来のヒートショック法に従い、図2及び図3に示すプラスミドにより形質転換した(Sambrook等.,Molecular cloning 第2版)。組み換え型タンパク質の発現は、IPTGを加えることにより誘導させた。誘導から2時間〜8時間後に、細胞を遠心分離により収集し、沈殿した細胞を適当な溶解緩衝液を用いて再懸濁した。細胞懸濁液に対して20分間の超音波処理を行い、それを遠心分離により清澄化した。組み換え型タンパク質を精製するために、遠心分離による上清をイオン交換クロマトグラフィカラム(SP FF、GEヘルスケア)に通した。PTDのアルギニン残基は、中性pHにおいて正電荷を有しているため、その組み換え型タンパク質は、高いpI値を有している。従って、大腸菌自身のタンパク質のほとんどは高い伝導率においてSP FF樹脂に結合しない一方で、組み換え型タンパク質は、高い伝導率においてSP FFカラムから溶出された。IEXにおける選択的N末端UB融合又は非融合タンパク質は、より質の高い精製のために逆相高速液体クロマトグラフィ(RP−HPLC)を用いて精製させ、その後に凍結乾燥させた。
【0129】
UB融合タンパク質の場合、凍結乾燥させたその融合タンパク質は、適当な緩衝液に再懸濁させ、UBとPTDsとの分離を誘導するためにUBPをそれに加えた。その後に、多量体であり且つ/又はスペーサ組み込み型であるPTDsをRP−HPLCを用いて精製し、凍結乾燥した。
【0130】
調製された多量体であり且つ/又はスペーサ組み込み型であるPTDsのアミノ酸配列は以下のようになる。
組み換え型MPH−1−PTD2量体
YRFYARVRRRGPRRGGARFYARVRRRGPRRGGARV(C)(配列番号19)、
組み換え型MPH−1−PTD3量体
YRFYARVRRRGPRRGGARFYARVRRRGPRRGGARFYARVRRRGPRRGGARFYARVRRRGPRRGGARV(C)(配列番号20)、
組み換え型MPH−1−PTD8量体
YRFYARVRRRGPRRGGARFYARVRRRGPRRGGARFYARVRRRGPRRGGARFYARVRRRGPRRGGYRFYARVRRRGPRRGGARFYARVRRRGPRRGGARFYARVRRRGPRRGGARFYARVRRRGPRRGGARV(C)(配列番号21)、
組み換え型ペネトラチン−UB(v)+MPH(2)
RQIKIWFQNRRMKWKKGGGQIFVKTLTGKTITLEVESSDTIDNVKSKIQDKEGIPPDQQRLIFAGKQLEDGRTLSDYNIQKESTLHLVLRLRGVSRVYARVRRRGPRRGGARFYARVRRRGPRRGGARV(C)(配列番号52)、
組み換え型ペネトラチン−UB(v)+MPH(4)
RQIKIWFQNRRMKWKKGGGQIFVKTLTGKTITLEVESSDTIDNVKSKIQDKEGIPPDQQRLIFAGKQLEDGRTLSDYNIQKESTLHLVLRLRGVSRVYARVRRRGPRRGGARFYARVRRRGPRRGGARFYARVRRRGPRRGGARFYARVRRRGPRRGGARV(C)(配列番号58)、
組み換え型Sim−2−UB(v)+PTD(Hph−1)−(2)
AKAARQAARGGGQIFVKTLTGKTITLEVESSDTIDNVKSKIQDKEGIPPDQQRLIFAGKQLEDGRTLSDYNIQKESTLHLVLRLRGVSRVYARVRRRGPRRGGARFYARVRRRGPRRGGARV(C)(配列番号59)、
組み換え型Sim−2−UB(v)+PTD(Hph−1)−(4)
AKAARQAARGGGQIFVKTLTGKTITLEVESSDTIDNVKSKIQDKEGIPPDQQRLIFAGKQLEDGRTLSDYNIQKESTLHLVLRLRGVSRVYARVRRRGPRRGGARFYARVRRRGPRRGGARFYARVRRRGPRRGGARFYARVRRRGPRRGGARV(C)(配列番号60)、
組み換え型PTD(2)UB
YARVRRRGPRRGGARFYARVRRRGPRRGGQIFVKTLTGKTITLEVESSDTIDNVKSKIQDKEGIPPDQQRLIFAGKQLEDGRTLSDYNIQKESTLHLVLRLRGG(配列番号44)、及び
組み換え型PTD(4)UB
YRFYARVRRRGPRRGGARFYARVRRRGPRRGGARFYARVRRRGPRRGGARFYARVRRRGPRRGGARVQIFVKTLTGKTITLEVEPSDTIENVKAKIQDKEGIPPDQQRLIFAGKQLEDGRTLSDYNIQKESTLHLVLRLRGG(配列番号46)。
【0131】
(第3の実施例)
接合による多量体PTDの拡大
多量体PTDの大きさを大きくするために、ジスルフィド結合を2つのPTD分子同士の間に形成させるには、システイン残基をPTDの末端のいずれか一方又は両方に位置させる。例えば、システインを有する2つのPTD2量体同士がジスルフィド結合を介して結合すると、4量体が形成され、2量体と4量体とが結合すると、6量体が形成される(図5を参照)。
【0132】
ジスルフィド結合の誘導は、pH8〜11且つ低温で、緩やかに撹拌した状態における大気酸化法を用いて行われる。
【0133】
前記の方法を用いて調製された多量体PTDsは、N末端配列決定法及び飛行時間型マトリックス支援レーザ脱離イオン化質量分析法(MALDI−TOF)を用いて解析される。
【0134】
多量体PTDの強い正電荷は、負に荷電したドデシル硫酸ナトリウムと複合体を形成するため、多量体PTDの最終生成物を分離するためにドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)を用いることは困難である。また、多量体PTDの高いpIのため、一般的なPAGE分析法を行うことも困難である。この理由のため、多量体PTDのPAGE分析は、PAGEのpHを変化させ、電極を逆に接続した後に行われる。
【0135】
(第4の実施例)
組み換え型多量体PTDの難溶性発現
多量体PTDsは、大腸菌から発現すると毒性を示し、また、急速に分解される傾向にある。さらに、PTDsのうちのいくつか、例えば、TAT−PTD又はMPH−1−PTDは、メチオニンを含まない。従って、本発明は、融合する相手と多量体PTDとの間にメチオニンを挿入することを含む方法を用いた。さらに、本発明は、ユビキチン、例えば、Src様アダプタタンパク質(SLAP)又はゼータ鎖結合タンパク質キナーゼ(Zap70)の代わりに、容易に凝集するタンパク質を用いて多量体PTDと融合する相手を置換することを含む方法も用いた。容易に凝集するタンパク質は、封入体に集積するため、これらの融合は簡便であり、従って、一般に毒性は低い。さらに、比較的容易に、それらが分解することを防ぎ、それらを精製することができる。しかしながら、封入体は、中程度の条件及び生理学的条件において溶解されない。封入体を溶解するために尿素、塩酸グアニジンのようなカオトロビック剤若しくは界面活性剤が用いられ、又は極度の範囲のpHの緩衝液が用いられる。一般に、生物のタンパク質分解酵素は、このような条件においては活性化されない。従って、本発明は化学的な分離を採用する。臭化シアン(CNBr)は、メチオニン残基のカルボキシル末端側におけるペプチド結合を特異的に切断する。多くのPTDsはメチオニン残基を有さないため、CNBrを用いて融合タンパク質を分離して多量体PTDsを精製できるように、メチオニンをPTDのアミノ末端に挿入する(図4)。
【0136】
例えば、第2の実施例と同様のベクターのおいて、UBの代わりの融合タンパク質としてSLAPを用いることにより難溶性発現をさせる。SLAPベクターの構築は、第2の実施例に記載したように行った。発酵、誘導、細胞の収集及び細胞の溶解は、第2の実施例に記載したように行った。細胞の溶解の後に、細胞懸濁液を遠心分離し、その後の上清を除去した。残存した封入体を8Mの尿素緩衝液に溶解し、IEX(SP FF、GEヘルスケア)を用いて精製した。0.3M〜1Mの範囲における精製された融合タンパク質の分画にHClを加えた。分離のためにCNBrを加え、その溶液を遮光し、室温で12時間静置した。CNBrを用いた分離の後に、多量体PTDを第2の実施例に記載の方法と同一のRP−HPLCを用いて精製し、その後に、それを凍結乾燥した。SLAPは数個のメチオニン残基を有するため、CNBrを用いた融合タンパク質の分離により、UB−融合タンパク質における2つのみのピークと比較して、多くのピークを示すいくつかの分画が生成された。
【0137】
(第5の実施例)
核酸と多量体PTDとの複合体の生成
PTDと核酸とは、これらの間の安定な非共有結合の形成を介して複合体を形成できる(図1)。核酸と多量体PTDとの複合体を形成するために、核酸と多量体PTDsとを規定された比率で混合した。過剰量の多量体PTDsは、難溶性の凝集体の形成を引き起こすため、その比率は重要である。対照的に、過剰量の核酸は、複合体の導入効率を低減させる。これは、以下の実験により証明された。
【0138】
4量体PTDとsiRNAとは凍結乾燥粉末の状態で準備した。4量体PTDを2×PBS溶液に溶解し、siRNAを脱イオン水(D.W.)に溶解した。PTD及びsiRNAの濃度は1μMとした。100μlのGAPDHのsiRNA溶液を含む遠心チューブに、100μl、150μl、200μl、400μl、700μl又は1000μlの第2の実施例の4量体PTDを加えた。チューブ内の溶液をよく混合し、室温で20分間静置させた。それぞれの混合液に対して、FACS装置を用いて導入効率を分析した。その結果を図9に示している。その混合液は、100μlのsiRNAに対してPTDの量が700μl以上の場合、凝集し、濁りが見られるようになる。従って、核酸の効率的な導入は、PTD:siRNAが1:1〜7:1の比率の場合に起こる。特に効率的な導入は、PTD:siRNAが3:1の場合に達成される。最低限のタンパク質の凝集と効率的な核酸の導入とは、PTD:siRNAが2:1の場合に見られる。
【0139】
(第6の実施例)
核酸と多量体であり且つ/又はスペーサ組み込み型であるPTDとの接合体の生成
第4の実施例における多量体PTDsを拡大する方法と同様に、多量体であり且つ/又はスペーサ組み込み型である満たすPTDの末端におけるシステイン残基と接合できるように、核酸の5’末端にチオール基(−SH)が導入される。接合体は、第2の実施例に記載された大気酸化法を用いて形成される。
【0140】
多量体である且つ/又はスペーサ組み込み型であるPTDと核酸とが接合するために、他の化学結合を用いることもできる。例えば、核酸にアルデヒドを導入することにより、ペプチドのアミン基と接合させることを誘導させる。核酸にカルボキシル基を導入すると、ペプチドのアミン基とアミド結合を形成することができる(図6)。
【0141】
(第7の実施例)
多量体であり且つ/又はスペーサ組み込み型であるPTD−siRNAの細胞内導入の媒介
siRNAの細胞内導入を媒介するための多量体であり且つ/又はスペーサ組み込み型であるPTDsの特性を調べた。ここでの実験において、siRNAを、多量体であり且つ/又はスペーサ組み込み型であるPTDs、例えば、スペーサを有するMPH−1の2量体(配列番号44〜47)、MPH−1の単量体(配列番号19)又はMPH−1の4量体(配列番号20)と複合させた。MPH−1の単量体は化学的に合成した。2量体及び4量体は、第2の実施例に記載のように組み替えにより生成した。細胞内のsiRNAを定量化するために、蛍光材料であるカルボキシフルオセイン(FAM)を用いてsiRNAの1つの鎖を標識した。多量体であり且つ/又はスペーサ組み込み型であるPTDsと複合したsiRNAは、凍結乾燥粉末として準備した。多量体であり且つ/又はスペーサ組み込み型であるPTDは、2×PBS溶液に溶解し、siRNAはD.W.に溶解した。siRNAの濃度は1μMとした。スペーサ組み込み型の単量体、2量体及び4量体PTDsの濃度は、それぞれ4μM、2μM及び1μMとした。異なるPTD多量体同士の異なる濃度は、それぞれ異なる電荷の割合を補償するためである。スペーサ組み込み型PTDsにおいて、タンパク質の濃度は、試験デザインに依存する。siRNA溶液とPTD溶液とは、同量で混合した。混合液におけるsiRNAの最終濃度は100nMとした。
【0142】
siRNAと多量体PTDとの複合体は、培養HeLa細胞に導入させた。CO2インキュベータ内で0.5時間〜2時間培養した後に、培地を除去し、細胞をPBSにより3回洗浄し、1mlのPBSを添加し、ゴム製のスクレイパを用いて細胞を収集した。収集した細胞を遠心分離した。その後の上清を除去し、細胞を1mlのPBSに再懸濁した。この洗浄工程を3度繰り返した。
【0143】
洗浄の後、蛍光活性細胞選別装置(FACS)を用いて、siRNAの導入効率を分析した。その結果を図7及び図8に示している。図8は530/30フィルタ(FL−1H)における蛍光強度の高さを示している。
【0144】
予想されたとおり、単量体PTDの導入効率は低かった。これは、導入単位としてのPTDの機能を損失している単量体PTDとsiRNAとの相互作用のためである。2量体PTDは中程度の導入効率を示し、4量体PTDは最も高い効率を示した。これらの結果は、PTD多量体のPTDsの数に比例してsiRNAの導入効率が増大することを証明している。これは、導入効率は導入単位としての機能を利用できるフリーのPTDsに依存することを示している。
【0145】
スペーサが組み込まれたPTDsの場合、全ての検体が高い導入効率を示した。
【0146】
(第8の実施例)
細胞内に導入されたsiRNAの活性
PTDにより導入されたsiRNAの活性を評価した。ここでの試験において、第7の実施例に記載した4量体のMPH−1 PTD(配列番号20)及びスペーサ組み込み型PTDs(配列番号43〜60)を用いた。4量体PTDを、グリセルアルデヒド3−リン酸脱水素酵素(GAPDH)siRNAと複合させた。この複合体をHeLa細胞に導入し、GAPDHの発現に対する影響を試験した。GAPDHの発現レベルは、GAPDHの酵素活性を測定することにより評価した。
【0147】
スペーサ組み込み型タンパク質を、ヒトプロテインキナーゼCのa−サブユニット(PKCA)を標的とするsiRNAと複合させた。この複合体をHeLa細胞に導入し、PKCAのmRNAレベルに対する影響を試験した。PKCAのmRNAレベルを定量性リアルタイムPCRにより測定した。その複合体の混合液を、培養したDMEM培地を用いてHeLa細胞に導入した。その2時間後、新鮮な培地を用いて、細胞を3度洗浄した。洗浄後に、細胞に再び新鮮な培地を加え、24時間培養した。24時間の培養後、Trizol(インビトロジェン(Carlsbad,CA))の説明書に従って、細胞からRNAsを抽出した。High capacity RNA to cDNAキット(アプライドバイオシステムズ, Foster city,CA)を用い、その説明書に従って、抽出したRNAからcDNAを合成した。製造者の説明書(アプライドバイオシステムズ 7500 system)に従って、合成したcDNAを用いてqRT−PCRを行った。内部補償のために、GAPDHのmRNAレベルを測定した。
【0148】
図10に示すように、PKCAのsiRNAを単独で導入すると、PKCAのmRNAレベルは減少しなかった。しかしながら、PKCAのsiRNAをスペーサ組み込み型PTDと複合させた場合、全ての検体においてPKCAのmRNAレベルは減少した。このデータは、スペーサ組み込み型PTDによりsiRNAsが導入されると、siRNAsは阻害活性を保持することを証明している。
【0149】
これらの試験において、4量体PTDを第2の実施例に記載されたように調製し、第4の実施例に記載された方法と同一の方法により、siRNAと混合した。培養したDMEM培地を用いて、その混合液をHeLa細胞に導入した。その2時間後、細胞を新鮮な培地を用いて3度洗浄した。洗浄した後に、新鮮な培地を細胞に再び加え、2日間培養し、その後に、KDalert(アンビオン(アプライドバイオシステムズ,Forster city,CA))の説明書に従いGAPDHの活性を分析した。
【0150】
図11に示すように、GAPDHのsiRNAを単独で導入すると、GAPDHの活性は減少しなかった。しかしながら、GAPDHのsiRNAを4量体PTDと複合させると、その濃度依存的にGAPDHの活性は減少した。このデータは、4量体PTDにより導入すると、siRNAsは活性を保持することを証明している。
【0151】
(第9の実施例)
DNAベクターの細胞内の導入を媒介する多量体PTD
HeLa細胞の中にDNAベクターを導入するための多量体PTDの特性を評価した。高感度緑色蛍光タンパク質(EGFP)をコードしているベクター(pEGFP−N1(クロンテック,Mountain Viee,CA))をここでの試験に用いた。
【0152】
4量体PTDを第2の実施例に記載したように調製し、DNAベクターをDNA prep Kit(プロメガ,Madison,Wiscconsin)を用いて調製した。PTDを濃度が0.4mg/mlになるように2×PBSを用いて溶解した。DNAの濃度をD.W.を用いて0.1mg/mlに調製した。それぞれ等量のDNA溶液とPTD溶液とを混合した。それを室温で30分間静置した後に、20μlの混合液を6mm培養皿内の培地に加えた。細胞内へのDNAベクターの導入の後、EGFPの発現のために細胞を48時間培養した。DNAベクターの導入効率を評価するために、FACSによりEGFPの蛍光を測定した。陽性対照としてlipofectamine 2000(インビトロジェン,Carlbad,CA)導入試薬を用いて、同様の導入を行った。
【0153】
図12に示すように、DNAの導入効率は、lipofectamineを用いるよりも4量体PTDを用いた方が高かった。図12は、530/30フィルタ(FL−1H)における蛍光強度の高さを示している。
【技術分野】
【0001】
本発明は、インビボ又はインビトロにおいて、多量体であり且つ/又はスペーサ組み込み型であるタンパク質導入ドメイン(PTD)を含む核酸結合分子を用いて、細胞の中に核酸を導入する方法に関する。また、本発明は、核酸結合分子と複合又は接合している核酸を含む新規の組成物に関する。さらに、本発明は、標的遺伝子の発現を阻害する方法、及び標的遺伝子の機能を判定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
RNA干渉(RNAi)は、mRNAの分解を誘導してmRNAのタンパク質合成を阻害するために、低分子RNA断片を遺伝子発現における重要なメディエーターであるメッセンジャーRNA(mRNA)と干渉させる方法である。低分子RNA断片の塩基がmRNAと対になると、2本鎖RNAが形成され、細胞内においてその部分が分解される。遺伝子発現におけるRNAiの選択的な作用は、特異的な遺伝子の機能を調べる際の有用な研究手段となる。また、RNAiは、標的遺伝子の発現を特異的に抑制する新規の薬物の開発に頻繁に用いられている。
【0003】
低分子RNA断片は、その起源に依存して、これが細胞外の原料に由来する場合はスモールインターフェアリングRNA(siRNA)に分類され(Elbashir, S. M.等.,Nature 411:494-498(2001))、細胞自身のゲノムにおけるRNAにコードされた遺伝子から生成された場合はマイクロRNA(miRNA)に分類される。
【0004】
siRNAの使用は、大きく2つの分類に分けられる。(1)化学合成又は生物学合成によりインビトロにおいて生成されたsiRNA又はショートヘアピンRNA(shRNA)が細胞内に直接に導入される。(2)siRNAを発現できる種々のDNAベクターが細胞内に導入され、導入された細胞がsiRNAを生成する(例えば、米国特許第6278039号、米国特許出願2002/0006664号、国際公開WO99/32619号、国際公開WO01/29058号、国際公開WO01/68836号及び国際公開WO01/96584号を参照)。これら2つの分類に基づいた種々の応用技術は、これらの利点が効果的に利用されるように用いられることができる。近年、後者において、癌のような病気を起こす遺伝子を下方制御するために、siRNAを生成できる導入ベクターを作ることが試されている(Mayer,M及びWagner,E.,Hum,Gene Ther.17(11):1062-1076(2006))。
【0005】
RNAiにおいて、インビボ又はインビトロにおける細胞内に核酸が導入される効率が、RNAiの効率を決定する。しかしながら、細胞内にsiRNA又はsiRNAを生成するためのDNAベクターを導入する効率は、この2つの技術の実用的な適応のための主な障害として残存する。この原因は、RNA又はDNAのような核酸が細胞膜を透過するのに大きすぎることである。実験においては、その機構がはっきりとわからなくても、それらの核酸は、物理的又は化学的手段の必要が無く細胞内に導入され得た。しかしながら、核酸の導入は、非常に低い効率であるため、実用的に用いることは困難である。
【0006】
研究室内のインビトロの実験において、最もよく用いられる一方法は、核酸の導入を助けるリポソームを用いることである。しかしながら、この場合の効率は、インビトロの実験では高く、インビボでは血液又は体液が原因で顕著に減少する。また、リポソームは毒性が強く、多量のリポソームを用いることは困難であるため、ヒトの体内にこれを適用することは制限される。
【0007】
細胞内に核酸を導入するための他の方法としては、ウイルスベクターが用いられる。ウイルスベクターは、効率的なキャリアとして用いられるが、細胞の発癌のような重大な副作用を有することが発見されており、さらに、ヒトの細胞内に外来性の遺伝子を導入するという倫理的な問題もあるため、安全を保証するために詳細な臨床研究が強く要求されている。このため、現代の状況において、インビボにおけるウイルスベクターの導入は、多くの研究にもかかわらず、信頼して臨床又は産業に用いることはできない。
【0008】
インビボにおいて、直接的に裸の核酸(すなわち、核酸の導入を助けるための組成物を有さない核酸)を物理的に導入する他の方法は、例えば、電気穿孔法及び水力学的導入法があり、これらも研究されてきた。近年の研究結果は、静脈、腹腔又は眼球の中への裸のRNAの導入が特異的な遺伝子の発現を減少させることができることを示している(Herweijer,H.及びWolff,J.A.,Gene Ther.10(6):453-458(2003); Hagstrom,J.E.等.,Mol.Ther.10(2):386-398(2004))。しかしながら、これらの方法の特性は、実用的な適用に制限がある。
【0009】
さらに、導入ベクターとしてポリエチレンイミン(PEI)等を含むナノ粒子を用いることに着目した研究が活発に行われている。
【0010】
実用的にsiRNAを用いるための障害は、低い導入効率の他に、インビボにおいてその半減期が短いことであり、その使用量を増やすことが必要となる。RNAseに耐性があるホスホロチオエート等をRNAのリン酸骨格に修飾する試みが行われている。さらに、ポリエチレングリコール(PEG)又はコレステロール等を用いて、RNAを修飾してRNAの半減期を増大させることに注目した研究が行われている。しかしながら、種々の試み及び研究にもかかわらず、核酸の低い導入効率が、RNAiの実用的な利用における主な問題である。
【0011】
近年、タンパク質導入ドメイン(PTD)を用いることが提案されている。PTDsは、細胞内に生物学的活性分子の導入のために有用な低分子量のペプチドである(VIehl C.T.等.,Ann.Surg.Oncol.12:517-525(2005); Noguchi H.等.,Nat.Med.10:305-309(2004); Fu A.L.等.,Neurosci.Lett.368:258-62(2004))。種々のPTDsは公知であり、ほとんどの場合、PTDにおける正電荷アミノ酸の数は非常に多い。一般に知られているPTDは、HIVのTatであり、さらに、Antp、VP22及び合成ポリアルギニン等である。近年、MPH−1及びSim−2等が発見された。
【0012】
PTDsは、その種類又は細胞の種類に関係なく、インビトロ又はインビボにおいて、分子の効率的な導入をできることが知られている。ほとんどのPTDsは、核酸と安定な非共有結合を形成することができ、細胞内に核酸を導入できる。アンテナペディアホメオドメインの第3螺旋は、安定な非共有結合により低分子のオリゴヌクレオチドと複合体を形成し、それらの内部移行を促進する(Dom,G.等.,Nucleic Acid Res.31:556-561(2003))。Pep−3は非共有結合的な相互作用を介してペプチド核酸と安定な複合体を形成し、それらの細胞内への導入を促進することが報告されている(Morris,M.C.,等,Nucleic Acids Res.35(2007))。HIV gp41の融合配列由来の疎水性ドメイン及びSV40 T-抗原の核移行配列由来の親水性ドメインを含むMPGペプチドは、培養哺乳動物の細胞内にオリゴヌクレオチドを導入するために、アンチセンスオリゴヌクレオチドと非共有結合を形成することが証明されている(Morris.M.C.等.,Nucleic Acid Res.25:2730-2736(1997))。Tatペプチドの2量体、3量体及び4量体は、非共有結合的な相互作用を介してプラスミドDNAと安定な粒子を形成し、細胞内へのそれらの導入を促進することが報告されている。(Rudolph,C.,等.,J.Biol.Chem.278:11411-11418(2003))。
【0013】
また、PTDsは、核酸の導入を促進するために、核酸と安定な共有結合を形成できる。リポソームに共有結合的に吸着したTatペプチドは、DNAの急速な導入を促進する(Torchilin,V.P.等.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 98:8786-8791(2001), Torchilin,V.P.等.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 100:1972-1977(2003))。ジスルフィド結合のような不安定な結合を介して、ペプチド核酸分子が細胞膜を通過して導入されるために、ペネトラチン及びトランスポータンを用いることも提示されている(米国特許第6025140号を参照)。
【0014】
siRNAと共有結合を形成するPTDは提示されている。siRNAと共有結合的に吸着したTatペプチドは、siRNAの核への導入を促進する(Chiu,Y.等.,Chem.Biol.11(8):1165-1175(2004))。siRNAと共有結合的に吸着したペネトラチン及びトランスポータンは、siRNAの細胞への効率的な導入を促進する(Davidson,.T.J.等.,J.Neurosci.24(45):10040-10046(2004); Muratovska,A及びEccles,M.R.,FEBS 558:63-68(2004))。
【0015】
いくつかの研究において、高い効率の導入が達成されているが、siRNA又はsiRNAを発現するためのDNAベクターの導入にPTDを用いて、安定且つ高効率のRNAi効果は見られていない。また、PTDを用いてもわずかな効果しか見られないという報告がある。TaT又はペネトラチンペプチドと共有結合的に吸着したsiRNAは、インビボにおいてRNAiの効果は示さなかった(Moschos,S.A.等.,UK生化学会フォーカスミーティングにおけるポスター発表(2007))。
【0016】
前記の通り、ほとんどのPTDsは、正電荷を有するアミノ酸を多く含んでおり、これは負電荷を有する核酸のリン酸骨格と結合できる。この核酸とPTDsとの結合は、PTDsと核酸とが非共有結合を形成すること、及びこれらが共有結合を形成することの両方が可能である。ほとんどの研究では、単一のPTDのみを用いている。PTDと核酸との弱い結合でさえも、その導入機能の維持のために重要なPTDの構造に影響する。従って、PTDの導入効率は、顕著に減少され得る。核酸と結合していないPTDは、細胞内に導入される特性を維持するが、核酸の導入に用いることはできない。また、核酸と結合しているPTDは、細胞内に導入される特性が減弱している。結果として、従来の研究におけるPTDsを用いた細胞内への核酸の導入法は、効果がない又は非効率的である。
【0017】
従って、細胞内に核酸を導入するために、本発明は、多量体PTD分子又はスペーサ組み込み型PTD分子を設計し、この多量体PTD分子又はスペーサ組み込み型PTD分子は、細胞内への導入特性を維持することを特徴とする。
【発明の概要】
【0018】
本発明の1つの目的は、インビボ又はインビトロにおいて、核酸結合分子を用いて細胞内への核酸の導入を効率的に行うことである。
【0019】
前記の目的を達成するために、本発明は、1つ又はそれ以上の多量体PTDs又はスペーサ組み込み型PTDsを含む核酸結合分子と複合又は接合した核酸を含む複合体又は接合体を提供する。スペーサ組み込み型PTDsは、1kd〜250kd、5kd〜180kd、5kd〜150kd又は5kd〜30kdの分子量相当の長さを有してもよい。核酸と核酸結合分子との結合はPTDの構造に影響しないため、細胞内への核酸の導入効率は顕著に増大し、これにより、この導入機能は維持される。
【0020】
本発明の他の実施形態は、1つ又はそれ以上のPTD分子を含む1つ又はそれ以上の多量体PTDs又はスペーサ組み込み型PTDsを備えている核酸結合分子と複合又は接合しているリン酸骨格を含む1本鎖核酸である。
【0021】
他の実施形態は、1つ又はそれ以上のPTD分子を含む1つ又はそれ以上の多量体PTDs又はスペーサ組み込み型PTDsを備えている核酸結合分子と複合又は接合している2本鎖RNAである。
【0022】
さらなる実施形態は、1つ又はそれ以上のPTD分子を含む1つ又はそれ以上の多量体PTDs又はスペーサ組み込み型PTDsを備えている核酸結合分子と複合又は接合している2本鎖核酸とである。
【0023】
一実施形態は、5つ又はそれ以上のPTD分子を含む1つ又はそれ以上の多量体PTDsを備えている核酸結合分子と複合又は接合している2本鎖RNAである。
【0024】
また、本発明は、1つ又はそれ以上のPTD分子を含む1つ又はそれ以上の多量体PTDs又はスペーサ組み込み型PTDsを備えている核酸結合分子と複合又は接合しているリン酸骨格を含む1本鎖核酸を備える組成物を含む。
【0025】
さらなる実施形態は、1つ又はそれ以上のPTD分子を含む1つ又はそれ以上の多量体PTDs又はスペーサ組み込み型PTDsを備えている核酸結合分子と複合又は接合している2本鎖RNAを備える組成物である。
【0026】
さらなる実施形態は、1つ又はそれ以上のPTDを含む1つ又はそれ以上の多量体PTDs又はスペーサ組み込み型PTDsを備えている核酸結合分子と複合又は接合している2本鎖核酸を備える組成物である。
【0027】
また、本発明は、1つ又はそれ以上のPTDを含む1つ又はそれ以上の多量体PTDs又はスペーサ組み込み型PTDsを備えている核酸結合分子を含む。
【0028】
また、本発明は、前記の1つ又はそれ以上の核酸結合分子と複合又は接合している核酸分子のいずれか1つを製造する方法を含む。
【0029】
また、この発明は、前記の1つ又はそれ以上の核酸結合分子と複合又は接合している核酸分子のいずれか1つが細胞内に導入されるのを促進する方法を含む。
【0030】
また、この発明は、1つ又はそれ以上の核酸結合分子と複合又は接合している核酸を用いて、細胞内の標的遺伝子の機能を判定する方法を含む。
【0031】
また、この発明は、1つ又はそれ以上の核酸結合分子と複合又は接合している核酸を用いて、細胞内の標的遺伝子の発現を阻害する方法を含む。
【0032】
前記の全ての実施例において、核酸結合分子は、さらに1つ又はそれ以上の核酸結合領域を含んでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】核酸と核酸結合分子との関係を示す図である。Aは核酸結合領域を有する核酸結合分子を示し、PTDが核酸と複合していない様子を示す模式図である。Bは核酸結合領域を有する核酸結合分子を示し、核酸と複合したPTD及びたの物質との組み合わせを示す模式図である。Cは核酸と複合したPTDである核酸結合領域を有する核酸結合分子を示す模式図である。Dは核酸と結合した核酸結合領域を有する核酸結合分子を示す模式図である。Eは核酸と複合した核酸結合領域を有する核酸結合分子を示す模式図である。核酸結合領域は、多量体PTDと、多量体PTDの中又は端部のいずれかに設けられたスペーサとを含む。スペーサは立体障害効果を有している。
【図2A】Sim-2UB(v)PTD(2)、Sim-2UB(v)PTD(4)、AntpUB(v)PTD(2)及びAntpUB(v)PTD(4)の組み換え型タンパク質の発現ベクターの製造方法を示す図である。
【図2B】Sim-2UB(v)PTD(2)、Sim-2UB(v)PTD(4)、AntpUB(v)PTD(2)及びAntpUB(v)PTD(4)のN末端ユビキチン融合タンパク質の発現ベクターの製造方法を示す図である。
【図2C】PTD(2)UB及びPTD(4)UBのN末端ユビキチン融合タンパク質の発現ベクターの製造方法を示す図である。図2A、図2B、図2C及び図2DのPTDsは、HPh−1を表している。
【図2D】ユビキチンを有するMPH-1-PTDの8量体の融合タンパク質の発現ベクターの製造方法を示す図である。
【図2E】ユビキチンを有するMPH-1-PTDの4量体及び6量体の融合タンパク質の発現ベクターの製造方法を示す図である。
【図3】ユビキチンを有するN末端融合タンパク質を発現させる際に、可溶性タンパク質として多量体であり且つ/又はスペーサ組み込み型であるPTDを精製する方法を示す図である。
【図4】Src様アダプタータンパク質(SLAP)を有する融合タンパク質を発現させる際に、難溶性タンパク質として多量体PTDを精製する方法を示す図である。
【図5】ジスルフィド結合を介した接合により、2つのPTD2量体からPTD4量体を合成し、PTD4量体とPTD2量体とからPTD6量体を合成する方法を示す図である。
【図6】異なる共有結合を介した接合により、siRNA−多量体PTDを合成する方法を示す図である。
【図7】スペーサ組み込み型タンパク質によるsiRNAの導入効率を示すグラフである。siRNAの1つの鎖をカルボキシフルオセイン(FAM)により標識した。siRNAを単独(siRNA CTL)でした場合、又はAUBP2(AntpUB(v)PTD(2))、SUBP2(Sim-2UB(v)PTD(2))、P2UB(PTD(2)UB)若しくはリポソーム(Lipo)と複合して導入した場合を示している。導入された細胞は、FACSにより解析した。
【図8】siRNAの導入と多量体PTDにおけるPTDの数量との関係を示すグラフである。導入細胞はFACSにより解析した。図8は530/30フィルタ(FL−1H)における蛍光強度の高さを示している。
【図9】細胞内への相対的な導入効率におけるPTDとsiRNAとの比率の影響を示すグラフである。siRNAは、多量体のPTD又はスペーサ組み込み型PTDsと複合体又は接合体を形成したものを用いた。導入細胞はFACSにより解析した。図9は530/30フィルタ(FL−1H)における蛍光強度の高さを示している。
【図10】スペーサ組み込み型タンパク質と共に導入されたsiRNAは、標的遺伝子であるPKCAの転写を阻害する能力を保持していることを示すグラフである。
【図11】多量体PTDsと共に導入されたsiRNAは、標的遺伝子であるGAPDHの活性を阻害する能力を保持していることを示すグラフである。
【図12】PTD4量体はEGFPをコードしているプラスミドDNAを細胞内に導入できることを示すグラフである。導入効率は、FACSを用いてEGFPの蛍光を測定することにより解析した。図12は530/30フィルタ(FL−1H)における蛍光強度の高さを示している。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明は、インビボ又はインビトロにおいて、1つ又はそれ以上の核酸結合分子を用いて細胞内に核酸を効率的に導入する方法を含む。核酸結合分子は、多量体であり且つ/又はスペーサ組み込み型であるPTDを含み、核酸と結合する能力を有し、細胞内に核酸を導入する分子として定義されてもよい。細胞内に導入された核酸は、生物学的に活性でも活性でなくてもよい。
【0035】
本発明の一実施形態は、1つ又はそれ以上のPTD分子を備える1つ又はそれ以上の多量体であり且つ/又はスペーサ組み込み型であるPTDsを含む核酸結合分子と複合又は接合しているリン酸骨格を備える1本鎖核酸である。
【0036】
本発明の好ましい実施形態は、3つ又はそれ以上のPTD分子を備える多量体であり且つ/又はスペーサ組み込み型であるPTDを含む核酸結合分子と複合又は接合しているリン酸骨格を備える1本鎖核酸である。
【0037】
リン酸骨格を備える1本鎖核酸は、shRNA、アンチセンスRNA又はcDNA(相補的DNA)であってもよい。
【0038】
本明細書において用いられる「低分子ヘアピンRNA」又は「shRNA」という用語は、低分子のループ部を有し、基部は19対〜27対の塩基対を有するRNA分子を意味する。shRNAは、2本鎖の基部における配列と相同な遺伝子を選択的に発現抑制することができる。哺乳動物の細胞は、選択的な遺伝子発現の抑制を媒介するためにshRNAをsiRNAに変換できる(Paddison等.,Genes and Dev.16(8):948-58(2002))。shRNAは、2本鎖構造を形成するために1本鎖RNAが折り畳まれたものであり(ヘアピン基部−ループ構造)、2本鎖核酸と同様でありながら1本鎖とみなされ得る。
【0039】
本明細書において用いられる「ペプチド核酸」又は「PNA」という用語は、核酸及び他のポリ核酸塩基鎖と配列特異的にハイブリッド形成できる合成核酸塩基オリゴマー類を意味する。PNA骨格は、DNA及びRNAにおける荷電したリン酸群を有するデオキシリボース及びリボース糖骨格ではなく、ペプチド結合により結合されたN−(2−アミノエチル)−グリシン単位の繰り返しにより構成される。ポリ核酸塩基鎖の核酸塩基同士のハイブリッド形成は、一般に水素結合における確立した法則に従う。ワトソン−クリックの塩基対形成の法則によると、一般に、アデニン(A)はチミン(T)と塩基対を形成し、シトシン(C)はグアニン(G)と塩基対を形成する。他の種々の塩基対のモチーフは、当業者に知られている。
【0040】
本発明の他の実施形態は、1つ又はそれ以上のPTD分子を備えている1つ又はそれ以上の多量体であり且つ/又はスペーサ組み込み型であるPTDsを含む核酸結合分子と複合又は接合している2本鎖RNAである。
【0041】
好ましい実施形態は、2又はそれ以上のPTD分子を備えている多量体であり且つ/又はスペーサ組み込み型であるPTDを含む核酸結合分子と複合又は接合している2本鎖RNAである。
【0042】
多量体であり且つ/又はスペーサ組み込み型であるPTDは、その中又はPTD(s)のC末端若しくはN末端に1又はそれ以上のスペーサを含むことができる。スペーサは、核酸と複合できないタンパク質又はタンパク質のドメインであってもよい。スペーサ組み込み型PTDsは、1kd〜250kd、5kd〜180kd、5kd〜150kd又は5kd〜30kdの分子量に相当する長さを有していてもよい。例えば、抗体のFcドメイン、全抗体、アルブミン、アデュシン(α)、アデュシン(β)、α−シヌクレイン、αAクリスタリン(ヒートショックタンパク質β−4、HspB4)、αBクリスタリン(ヒートショックタンパク質β−5、Hsp5)、アポリポタンパク質A−1(Apo−A1)、β−ガラクトシダーゼ、クラスリンコートアセンブリタンパク質 AP50、シトクロム−c−オキシダーゼ、緑色蛍光タンパク質(GFP)、GTP結合タンパク質 Rheb、赤血球凝集素、Ras GTPアーゼ、Rho−GTPアーゼ−活性化タンパク質(p50−RhoGAP)、スモールプロリン−リッチタンパク質2E(SPR−2E)、チューブリンαー1、チューブリンβ−1、ユビキチン様タンパク質1−活性化酵素 E1A、又はユビキチン様タンパク質1−活性化酵素 E1Bは、スペーサとして用いられ得る。好ましいスペーサは、ユビキチン(UB)である。
【0043】
本発明の一実施形態は、スペーサ組み込み型PTDを含む核酸結合分子であり、このスペーサ組み込み型PTDは、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個又は10個のPTDsと1つ又はそれ以上のスペーサを含む(例えば、配列番号1〜60)。従って、スペーサ組み込み型PTDは、1個〜20個、2個〜15個、2個〜10個、1個〜5個、2個〜8個、2個〜5個、又は2個〜4個のPTDsと1つ又はそれ以上のスペーサを含んでいてもよい。スペーサは、核酸と結合しないアミノ酸の配列である。
【0044】
2本鎖RNAは、siRNA、架橋型siRNA誘導体、shRNA、miRNA又は操作型RNA前駆体を含むがこれらだけに限られない。2本鎖RNAは、化学合成、インビトロにおけるDNAの鋳型からの転写、又はインビボにおける操作型RNA前駆体からの転写をされることができる。
【0045】
本明細書において用いられる「低分子干渉RNA」又は「siRNA」という用語は、自己相補的なセンス領域及びアンチセンス領域を備えている2本鎖RNA分子を意味し、ここで、アンチセンス領域は、発現を下方制御させる標的核酸分子又はその一部のヌクレオチド配列と相補的な核酸配列を含んでおり、センス領域は、標的核酸配列又はその一部に相当するヌクレオチド配列を含む。センス領域は、標的核酸配列又はその一部と実質的に同一の配列を有する。
【0046】
好ましい実施形態において、本発明のsiRNAは、16個〜30個のヌクレオチドを有する2本鎖RNAを備え、より好ましくは、19個のヌクレオチドを有する2本鎖領域と5’末端及び3’末端のそれぞれにおける2つのヌクレオチドの突出部を有するように、21個のヌクレオチドを有するセンス鎖と21個のヌクレオチドを有するアンチセンス鎖との対を備えている。3’末端における2つのヌクレオチドの突出部は、2’デオキシヌクレオチドを含むことが好ましい(例えば、ヌクレアーゼに耐性があるTT)。
【0047】
本明細書において用いられる「マイクロRNA」又は「miRNA」という用語は、細胞自身のゲノムにおけるRNAコード化遺伝子から生成された約22個のヌクレオチドの長さを有する非常に低分子の非コード化RNAを意味し、これはmRNAの制御及び分解の種々の面に関わることが示されている(Zeng等.,Proc.natl.acad.sci.USA,100(17):9779-84(2003))。
【0048】
架橋型siRNA誘導体は、米国特許出願10/672069号に提示され、これは、参照として全て本明細書に援用される。架橋化は組成物の薬物動態を変化させるために、例えば、体内における半減期を増大させるために用いられることができる。従って、本発明は、2本鎖が架橋されるように、核酸の2つの相補鎖を有するsiRNAを含むsiRNA誘導体を含む。例えば、2本鎖のうちの1つの鎖の3’OH末端は、修飾されていてもよく、また、2本鎖が架橋され且つ3’OH末端が修飾されていてもよい。siRNA誘導体は単一の架橋を含んでいてもよい(例えば、ソラレン架橋)。他の実施形態において、siRNA誘導体は、3’末端にビオチン分子(例えば、光切断性ビオチン)、ペプチド、ペプチド模倣体、ナノ粒子、有機化合物(例えば、蛍光色素のような色素)、又はデンドリマーを有する。このような修飾siRNA誘導体によると、細胞の取り込みを改善できる、又はsiRNA誘導体を対応するsiRNAと比較して、細胞標的活性を増大できる。また、細胞内におけるsiRNAの追跡に有用となる、又は対応するsiRNAと比較してsiRNA誘導体の安定性が改善する。従って、架橋型siRNAが一般に知られているRNAiを媒介する特性を保持している間に、改善された特性を有するかどうかを判定するために、当業者は、種々の方法を用いて修飾された架橋型siRNAを選別できる。
【0049】
本明細書において用いられる、操作型RNA前駆体の「操作型」という用語は、自然界において発見されていない前駆体を指し、その前駆体の核酸配列の全部又は一部はヒトにより作られている又は選択されている。一度作られた又は選択された配列は、細胞内の機構による複製、翻訳、転写又はその他の過程を行われ得る。従って、例えば導入遺伝子といった操作型核酸分子により、細胞内において生成されたRNA前駆体は、操作型RNA前駆体である。操作型RNA前駆体は、体内においてsiRNAに加工され、自然に生じる低分子テンポラルRNA(stRNA)の前駆体に類似する人工のコンストラクトである。操作型RNA前駆体は、この分野において公知の標準の方法により、例えば、自動DNA合成を用いる(バイオサーチ社及びアプライドバイオシステムズ社等から入手できる)又は核酸分子にコードさせることにより合成できる。
【0050】
さらなる実施形態は、1つ又はそれ以上のPTD分子を備える多量体であり且つ/又はスペーサ組み込み型である1つ又はそれ以上のPTDsを含む核酸結合分子と複合又は接合している2本鎖核酸である。
【0051】
一実施形態は、5つ又はそれ以上のPTD分子を備える多量体であるPTDを含む核酸結合分子と複合又は接合している2本鎖核酸である。
【0052】
2本鎖核酸は、siRNAを発現できる2本鎖DNAベクター、2本鎖RNA、ハイブリッド2本鎖核酸及び環状RNAを含むがこれらだけに限られない。
【0053】
本明細書において用いられる「DNAベクター」という用語は、細胞内においてsiRNA部分を生成するRNAを発現するために用いられ、複製できる核酸コンストラクトを意味し、このコンストラクトは細胞内において発現される。このようなベクターは、(1)例えば、プロモーター、オペレーター又はエンハンサーのような遺伝子発現における制御的役割を有する遺伝子配列、それに効果的に連結された(2)2本鎖RNA(siRNA又はsiRNAに加工され得るshRNA)を生成するために転写されるコード化配列、及び(3)適当な転写開始配列及び終止配列のアセンブリを備えている転写単位を含む。一般に、プロモーター及び他の制御配列は、対象となる宿主細胞によって異なる。DNAベクターは、環状若しくは線状プラスミド、又は非感染性で且つ組み込まれない(すなわち、脊椎動物の細胞のゲノムの中に組み込まれない)他の線状のDNAであってもよい。線状プラスミドは、環状であったプラスミドを、例えば制限酵素を用いて切断することにより線状化されたプラスミドである。線状DNAは、例えば、Cherng,J.Y.等.,J.Control.Release 60:343-53(1999),及びChen,Z.Y.等.,Mol.Ther.3:403-10(2001)において述べられているように、状況によっては有利である。また、これらの文献は、参照として本明細書に援用される。DNAベクターにおいて、転写を調節する制御配列は、一般に、哺乳動物、微生物、ウイルス又は昆虫の遺伝子に由来する。通常、複製の開始点により与えられる宿主における複製の能力、及び翻訳の認識を促進するための選択遺伝子がさらに組み込まれていてもよい。レトロウイルス及びアデノウイルス等のウイルス由来のベクターが用いられてもよい。
【0054】
本明細書において用いられる「ハイブリッド2本鎖核酸」という用語は、2本鎖RNAと類似の機能を有する2本鎖核酸を意味する。ハイブリッド2本鎖核酸は、RNA鎖及びDNA鎖を含んでいてもよい。RNA鎖はアンチセンス鎖であり、標的mRNAに結合することが好ましい。DNA及びRNA鎖のハイブリッドにより形成されたハイブリッド2本鎖核酸は、ハイブリッド化された相補的部分、及び好ましくは少なくとも1つの突出している3’末端を有している。
【0055】
本明細書において用いられる「環状RNA」という用語は、2つのループモチーフを含むRNA分子を意味し、環状RNAの1つ又は両方のループ部は、生分解性である。例えば、本発明の環状RNAは、インビボにおけるループ部の分解により、3’末端が突出した2本鎖siRNAを生成できるように設計されており、ここで、3’末端は、約2つのヌクレオチドが突出している。
【0056】
一実施形態は、5つ又はそれ以上のPTD分子を備える多量体PTDを含む核酸結合分子に複合又は接合している2本鎖RNAである。
【0057】
タンパク質導入ドメイン(PTD)
PTDはインビボ及びインビトロにおいて、所望のタンパク質、ペプチド、核酸及び化合物を細胞内に導入する又は細胞に取り込ませることを効率的にできることで知られている。
【0058】
本発明における多量体であり且つ/又はスペーサ組み込み型であるPTDとして用いるために、本発明の発明者は、組み換え型タンパク質生成工程又は化学合成工程により生成された数種のペプチドを作成した。他の種類のPTDは、所望の導入領域及び用いたリンカーの種類に依存して用いられることが理解される。PTDは3個〜30個のアミノ酸、好ましくは5個〜15個のアミノ酸からなり、そのうちアルギニン残基が10%〜30%含まれていることが好ましい。しかしながら、アルギニン残基を含まないPTDsも考えられる。
【0059】
多量体であり且つ/又はスペーサ組み込み型であるPTDは、例えば、複数のホモ2量体、ホモ4量体、ホモ6量体及びホモ多量体を含むホモ多量体、又は例えば、複数のヘテロ2量体、ヘテロ4量体、ヘテロ6量体及び他のヘテロ多量体を含むヘテロ多量体であってもよい。本発明の実施形態は、以下の一又はそれ以上の組み合わせを含み、ホモ多量体若しくはヘテロ多量体であり且つ/又はスペーサ組み込み型であるPTDsを含む。
マウス転写因子(MPH−1)又はヒト転写因子(HPH−1)
YARVRRRGPRR(配列番号1)、
Tat−PTD(YGRKKRRQRRR)(配列番号2)、
Antp又はペネトラチン(RQIKIWFQNRRMKWKK)(配列番号3)、
トランスポータン(CLIKKALAALAKLNIKLLYGASNLTWG)(配列番号4)、
HSV−1構築タンパク質Vp22
(DAATATRGRSAASRPTERPRAPARSASRPRRPVE)(配列番号5)、
ポリアルギニンR7(RRRRRRR)(配列番号6)、
膜移行配列(MTS)
(AAVALLPAVLLALLAPAAADQNQLMP)(配列番号8)、
少なくとも以下のPep−1、Pep−2及びPep−3のいずれかを含む低分子両親媒性ペプチドキャリア
Pep−1(KETWWETWWTEWSQPKKKRKV)(配列番号9)
Pep−2(KETWFETWFTEWSQPKKKRKV)(配列番号10)
Pep−3(YGFKKFRKPWTWWETWWTE)(配列番号11)、
Sim−2(AKAARQAAR)(配列番号12)、
MPG(GALFLGFLGAAGSTMGAWSQPKKKRKV)(配列番号13)、
KALA(WEAKLAKALAKALAKHLAKALAKALKACEA)(配列番号14)、及び
分枝型ポリリジン(米国特許出願2006/0041058号及びEom,K.D.等.,J.Nanosci.Nanotechnol.6(11):3532-3538(2006)に記載)。
【0060】
C末端に括弧書きのシステインを有する本発明の配列(配列番号15〜20、21、31〜42、45及び57〜60)において、そのシステインは任意であることを意味する([表1]及び[表2]を参照)。従って、そのC末端のシステインを除いた配列も本発明として考えられ、本発明の実施形態である。C末端のシステインは、siRNAと接合するために用いられてもよい。逆に、C末端にCysを有さない本発明の配列(配列番号1〜14、22〜30、43、44及び46〜56)は、siRNAと接合する際にC末端にシステインを含んでもよい。
【0061】
本発明の多量体であり且つ/又はスペーサ組み込み型であるPTDsの特異的な例を[表1]及び[表2]に示す。
【0062】
【表1】
【0063】
【表2】
【0064】
これらのPTDsに実質的に類似な変異体、例えば、それらと少なくとも65%は同一である変異体も考えられる。もちろん、同一性の割合は、例えば、65%、67%、69%、70%、73%、75%、77%、83%、85%、87%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%のように、より高くてもよい。一般に、置換は、保存的な置換である。PTDの変異体を作る方法は、この分野においては、機械的である。
【0065】
また、PTDs又はこれらの変異体は、これらの中の置換、欠損又は付加があってもよい。これらの変更は、保存的又は非保存的なアミノ酸の置換、欠損又は付加であってもよい。いくつかの実施形態では、1つ、2つ、3つ、4つ又は5つのアミノ酸の置換、欠損又は付加である。当業者は、タンパク質の機能に有意な影響がほとんど無い又は全く無いアミノ酸の置換を十分に知っている(例えば、2次脂肪族アミノ酸を用いた1つの脂肪族アミノ酸の置換)。例えば、表現型においては変化の無いアミノ酸の置換の方法は、Bowie,J,U.等の「タンパク質配列のメッセージの解読:アミノ酸置換の寛容性」Science 247:1306-1310(1990)に示されている。
【0066】
PTD又はそれらの変異体は、修飾骨格、例えば、オリゴカルバミン酸骨格又はオリゴ尿素骨格を有していてもよい(例えば、Wang等.,J.Am.Chem.Soc.119:6444-6445(1997);Tamilarasu等.,J.Am.Chem.Soc.121:1597-1598(1999);Tamilarasu等.,Bioorg.Of Med Chem.Lett.11:505-507(2001)を参照)。
【0067】
核酸結合領域
前記で説明した全ての実施形態において、核酸結合分子は、さらに、1つ又はそれ以上の核酸結合領域を備えてもよい。「核酸結合領域」は、核酸に結合できる領域として定義される。核酸に静電気的に結合できるカチオン性物質、例えば、ポリリジン、ポリアルギニン、その他の塩基性側鎖を有するアミノ酸のポリマー又はポリエチレンイミン(PEI)等が用いられてもよい。カチオン性物質は、カチオン性物質とアニオン性の核酸のリン酸骨格との静電気的相互作用を介して、配列非依存的に核酸と結合すると考えられている。カチオン性物質とDNAとの相互作用の力は、数ある中でも、カチオン性物質の全体の純電荷を反映すると当業者には理解されている。
【0068】
適当なカチオン性物質は、ポリリジン、例えば、10個〜20個のリジン残基又は15個〜17個の残基、特に16個の残基、すなわち、K16を有する。また、3.4kDaの分子量を有するポリ−L−リジン及びポリ−D−リジン(分子毎に平均16個の正電荷を有する)が好ましい。他の適当なポリマーは、2kDaの分子量を有するPEI(中性pHにおいて分子毎に平均12個の正電荷を有する)を含む。PTD自身は、高正電荷分子であり、同様によく用いられ得る。「核酸結合領域」という用語は、前記に示した物質と同一の機構を用いて核酸と結合できる物質を含むことを意図する。
【0069】
多量体であり且つ/又はスペーサ組み込み型であるPTDに加えて、核酸結合領域が核酸結合分子の一部である際に、核酸結合領域が核酸と結合すると、核酸とPTDとの結合の可能性が減少され得る。従って、細胞内に核酸を導入させるために、これらがPTDの特性を維持するようにPTD本来の構造を維持させる可能性を増大させることができる。細胞内に核酸を導入させるPTDの特性は、核酸に直接に結合していなくても発揮される。核酸結合領域が存在し、核酸とPTDとの直接の結合を妨げる場合でさえ、PTDの導入効果は維持される(図1A)。
【0070】
従って、PTDが核酸結合領域として用いられ、また、多量体であり且つ/又はスペーサ組み込み型であるPTDが、細胞内に核酸を導入するための核酸キャリアとして用いられる場合に、細胞内に核酸を導入する効率は顕著に増大する(図1B)。
【0071】
製造方法
本発明は、核酸結合領域を有する又は有さない多量体であり且つ/又はスペーサ組み込み型であるPTDを備える核酸結合分子と複合又は接合している前記の核酸分子のいずれか1つを製造する方法も含む。
【0072】
多量体であり且つ/又はスペーサ組み込み型であるPTDは、化学合成又は組み換え型タンパク質の生成により製造され得る。4量体又は6量体を製造するために、ジスルフィド結合のような共有結合を介した複数の2量体の接合を用いることができる。好ましい実施形態としては、システイン残基は2つのPTD2量体の末端に位置する。ジスルフィド結合の誘導は、pH8〜pH11の低温における緩やかな撹拌による大気酸化法を用いて行われる。6量体はこの方法おける2量体と4量体との組み合わせにより調製され得る。
【0073】
核酸と核酸結合分子との結合が静電気的相互作用を介する場合、その結合は非共有結合であってもよい。核酸と核酸結合分子とが所定の比率で混合されると、複合体が形成される。1:1〜1:20、1:1〜1:3又は1:2である核酸と核酸結合分子との比率は、複合体を生成するために用いられ得る。
【0074】
核酸と核酸結合分子との結合は、ジスルフィド結合又はアミド結合のような共有結合を介して生じることができる。適当な結合(例えば、エステル結合、カルバメート結合、スルホネート結合、チオエステル結合及びチオエーテル結合等)は、一般的な方法及び当業者に知られた方法に従って形成されてもよい。核酸と核酸結合分子とのジスルフィド結合を形成するために、これらの2つの分子はチオール基を生じるように誘導されてもよく、それらのうちの1つは脱離基を生じてもよい。核酸と核酸結合分子とのジスルフィド結合を形成するための十分な時間(また、温度、pH及びモル濃度の比率等の適当な条件下)において、修飾型核酸を、結合を形成するために調製された核酸結合分子と共に温置する。共有結合を形成するための多数の方法及びストラテジは、効率的な結合に必要な条件として、当業者に知られている。
【0075】
本発明は、核酸結合分子と複合又は接合された前記の核酸分子のいずれか1つの細胞内への導入を促進する方法を含み、この方法は、多量体であり且つ/又はスペーサ組み込み型であるPTDを含む核酸結合分子と複合又は接合している核酸を生成する工程(i)と、細胞培養培地の中に核酸結合分子と複合又は接合している核酸を加える工程(ii)と、工程(ii)において調製された細胞培養培地の中で細胞を培養する工程(iii)とを備えている。
【0076】
細胞培養培地の中の細胞を培養する工程は、細胞内に核酸が導入されるような培養時間並びに濃度、温度及びpH等の培養条件において、細胞が培養されることとして定義される。特に、本発明において用いられるプロトコールは、多くの要因(細胞の型、核酸の大きさ及び用いられるPTD等)に従って異なる。但し、当業者には明白である。
【0077】
生物学的使用
本発明は、多量体であり且つ/又はスペーサ組み込み型であるPTDを含む核酸結合分子と複合又は接合された核酸を用いて細胞内の標的遺伝子の機能を判定する方法を含み、この方法は、細胞培養培地の中に核酸結合分子と複合又は接合している核酸を加える工程(i)と、工程(i)において調製された細胞培養培地の中で細胞を培養する工程(ii)と、細胞を維持し、標的遺伝子に対応するmRNAを分解させる工程(iii)と、その細胞の表現型と対照細胞の表現型とを観察及び比較し、それによって細胞内の標的遺伝子の機能に関する情報を得る工程(iv)とを備えている。
【0078】
多くの選択肢が標的遺伝子の発現の直接的な阻害のために有用である。適当な試験法は、例えば、ドットブロット法、ノーザンブロット法、インサイツハイブリッド法、ELISA、免疫沈降法及び酵素機能を用いた方法等のような当業者に知られている技術、また当業者に知られている他の試験法を用いて、標的遺伝子によりコードされるタンパク質のレベル又は標的遺伝子から転写されるmRNAのレベルの測定法を含む。多くの方法は、標的遺伝子のmRNAのレベルを検出するのに有用である。そのような方法は、例えば、ドットブロット法、インサイツハイブリッド法、RT−PCR法、定量性逆転写PCR法、ノーザンブロット法及び核酸プローブアレイ法を含む。同様に、種々の方法は、タンパク質のレベルの変化を検出するのに有用である。例えばその方法は、タンパク質と特異的に結合する抗体を用いて免疫学的試験を行い、抗体とタンパク質とにより形成された複合体を検出するウエスタンブロット法、及び用意されたタンパク質が検出できる活性を有するかどうかを試験する活性試験法を含むがそれらに限られない。一般に、核酸が細胞内に導入され、標的遺伝子の発現が阻害されているかどうかを判定するために、核酸結合分子と複合又は接合された核酸と共に培養された細胞の中のタンパク質又はmRNAのレベルは、核酸結合分子と複合又は接合された核酸と共に培養されていない対照細胞と比較される。
【0079】
標的遺伝子の発現の阻害と相関する表現型の変化を検出するために、細胞の表現型を観察することができる。このような表現型の変化は、例えば、アポトーシス、形態的変化及び細胞増殖の変化、また、他の細胞活性の変化を含み得る。特定の遺伝子発現との干渉が、前記の細胞活性のうちの1つ又はそれ以上の減少又は増大を引き起こす場合、標的遺伝子の機能は、細胞の経路のうちの1つ又はそれ以上に起因し得る。本発明は、標的遺伝子の発現を抑制する又は活性化する治療的方法にも向けられる。
【0080】
「標的遺伝子」とは、その発現を選択的に阻害又は抑制される遺伝子である。この抑制は、shRNA、アンチセンスRNA、miRNA、siRNA、操作型RNA前駆体、ハイブリッド2本鎖核酸又は環状RNAと標的遺伝子のmRNAとの結合により誘導される標的遺伝子のmRNAの分解が促進されて起こる。これらの分子の1つの部分又はセグメントは、標的遺伝子のmRNAの一部、例えば、約16個〜約40個又はそれ以上のヌクレオチドと実質的に相補的であるアンチセンス鎖である。これまでに、遺伝学的に又は配列決定により同定された遺伝子は、標的となり得る。標的遺伝子は、発生に関わる遺伝子及び制御遺伝子、また、代謝若しくは構造に関わる遺伝子又は酵素をコードしている遺伝子を含んでもよい。本発明の標的遺伝子は、制御遺伝子又は天然型のタンパク質をコードしている遺伝子の場合では細胞内在性の遺伝子であり、逆に、ウイルス若しくは細菌の遺伝子、トランスポゾン又は導入遺伝子の場合、異種起源又は細胞外因性の遺伝子であってもよい。
【0081】
本明細書において用いられる「細胞」は、通常の生物学的な意味で用いられ、多細胞生物全体を意味するのでなく、例えば、特異的にヒトを意味するのでない。ここでの細胞とは、例えば、鳥類、植物並びにヒト、牛、羊、霊長類、猿、豚、犬及び猫のような哺乳動物といった生物に含まれていてもよい。ここでの細胞は、原核生物(例えば、細菌細胞)又は真核生物(例えば、哺乳動物細胞又は植物細胞)であってもよい。ここでの細胞は、体細胞系又は生殖系起源、全能性又は多能性、及び、分裂性又は非分裂性の細胞であってもよい。ここでの細胞は、生殖母細胞、胚細胞、幹細胞又は完全に分化した細胞に由来する又はこれらを含んでいてもよい。
【0082】
本発明は、単一の標的遺伝子の機能を判定する方法に限られず、また、ゲノム全体の遺伝子の機能を判定する方法も含む。ゲノムの機能におけるRNAiライブラリを設計するためのアプローチは、Huesken,D.等.,Nat.Biotechnol.23(8):995-1001(2005), Vanhecke,D.及びJanitz,M.Drug Dicov.Today 10(3):205-12(2005),及びJanitz,M.等.,Handb.Exp.Pharmacol.97-104(2006)に提示されている。
【0083】
治療的使用
本発明は、核酸結合分子と複合又は接合された核酸を用いて、細胞内の標的遺伝子の発現を阻害する治療的方法も含む。従って、本発明の一実施形態は、遺伝子発現の変更により治療できる広範な疾病及び疾患を治療する方法を含む。本発明は、患者の病状又は他の有害状態の防止、その発生率若しくは重症度の調節、又はその治療(検出できる又は測定できる範囲の1つ又はそれ以上の症状の緩和)のために、効果的に用いられることができる。これら及びこれらに関連する治療的組成物及び方法の中において、架橋型siRNA誘導体の使用は、その修飾されたsiRNAの特性を未変性のsiRNA分子の特性と比較して改善させる。これは、例えば、インビボにおけるヌクレアーゼ分解に対する耐性が増大される及び/又は細胞の取り込みが改善されることによる。複数の化学修飾を有する架橋型siRNA誘導体がRNA干渉(RNAi)活性を維持することは、本明細書において提示している方法に従って容易に判定され得る。従って、本発明は、種々の治療、診断、標的確認、ゲノムの発見、ゲノムの操作及びゲノム薬理学の適用のために有用な試薬及び方法を提供する。
【0084】
本発明は、患者における特定の病状又は他の有害状態に関する遺伝子発現を変化させる核酸又はその断片を提供することにより、付加的な目的及び利点を満足する。一般に、ここでの核酸は、患者の病状又は有害状態に関して原因となる又は寄与する因子として発現レベルが増大している遺伝子を標的とする。これと関連して、遺伝子の発現は、病状に関する1つ又はそれ以上を阻害する、緩和する又は重症度若しくは再発率を減少するレベルに効果的に下方制御される。また、疾病又は他の有害状態の結果又はその後の状態として、標的遺伝子の発現が増大されることは必然でない種々の異なる疾病モデルにおいて、標的遺伝子の下方制御は、遺伝子発現をより低下すること(すなわち、選択された標的遺伝子のmRNA及び/又はタンパク質の生成のレベルを減少させるための低下)による治療結果を生じる。
【0085】
また、本発明は、一遺伝子のより低い発現を目的とし、その遺伝子は、結果として標的遺伝子の生成又は活性化により発現が抑制される「下流」の遺伝子を活性化させる。また、同等の方法としては、対象動物の選択された病状に関する1つ又はそれ以上の異なる遺伝子の発現を標的にし、ここでの遺伝子とは選択された病状に関して原因となる又は寄与する因子として、発現が異常に増大することが知られている多数の遺伝子のいずれかを含む。本発明は、標的とされる病状のための他の標準的な治療剤と組み合わせて投与され得る。
【0086】
「遺伝子発現の調節」は、標的遺伝子の発現が上方制御又は下方制御されることを意味し、その上方制御又は下方制御は、標的遺伝子によりコードされた細胞内に存在するmRNAレベル、mRNAの翻訳又はタンパク質若しくはタンパク質サブユニットの合成の上方制御又は下方制御を含むことができる。遺伝子発現の調節は、対象のタンパク質又はタンパク質のサブユニットの発現、レベル又は活性が修飾因子(例えば、siRNA)の非存在下において観察された場合よりも大きい又は小さいように上方制御又は下方制御をさせる標的遺伝子によりコードされた1つ又はそれ以上のタンパク質又はタンパク質サブユニットの存在、質又は活性により判定されることができる。例えば、「調節」という用語は、「阻害する」又は「低減する」ことを意味し得るが、これらに限られない。
【0087】
発現を「阻害する」、「下方制御する」又は「減少する」とは、遺伝子の発現、RNA分子のレベル、1つ若しくはそれ以上のタンパク質若しくはタンパク質サブユニットをコードしている同等のRNA分子のレベル、又は標的遺伝子によりコードされている1つ若しくはそれ以上のタンパク質若しくはタンパク質サブユニットのレベル若しくは活性が、本発明の核酸分子の非存在下において観察されるよりも減少することを意味する。一実施形態において、阻害、下方制御又は減少とは、不活性化又は減弱化分子の存在下において観察されるレベルよりも低いことを意味する。他の実施形態において、阻害、下方制御又は減少とは、例えば、スクランブル配列又はミスマッチ配列を有する核酸の存在下において観察されるレベルよりも低いことを意味する。他の実施形態において、本発明の核酸を用いた遺伝子発現の阻害、下方制御又は減少は、その核酸の非存在下よりも存在下の方が顕著である。
【0088】
「標的遺伝子の発現阻害」という用語は、標的遺伝子を下方制御するための本発明の分子の特性を意味する。下方制御の程度を判定するために、特定のコンストラクトを発現している目的の生物又は培養細胞の治療対象体又は分析物は、そのコンストラクトの発現が欠損している対照体と比較される。対照体(コンストラクトの発現が欠損している)の相対値を100%とする。標的遺伝子の発現阻害は、対照体に対する測定値が約90%、多くは50%、また、所定の実施形態では25%〜0%の際に達成される。適当な試験法としては、例えば、ドットブロット法、ノーザンブロット法、インサイツハイブリッド法、ELISA法、免役沈降法、酵素の機能を用いた方法、及び当業者に知られた表現型アッセイのような当業者に知られた技術を用いてタンパク質又はmRNAのレベルを測定することを含む。
【0089】
「治療対象体」とは、生物、組織又は細胞を意味し、これらは、治療対象体となる生物、移植細胞の提供側若しくは受取側となるような生物又は自身が核酸導入の対象である細胞を含む。従って、「治療対象体」は、生物、臓器、組織又は細胞を意味し、これらは、インビトロ又はエクスビボにおける臓器、組織又は細胞を含み、本発明の核酸分子は、本明細書において提示されたポリヌクレオチド導入増強ポリペプチドにより投与され増強される。治療対象体の例としては、哺乳動物の個体又は細胞、例えば、ヒトの患者又は細胞である。
【0090】
好ましい実施形態において、本発明の組成物又は方法は、関節リウマチ(RA)の症状の治療又は予防をするために、腫瘍壊死因子−α(TNF−α)の発現を制御する治療手段として有用である。これと関連して、さらに本発明は、2本鎖RNAを用いるRNAiによってTNF−αの発現及び活性を調節するのに有用な化合物、組成物及び方法を提供する。さらに詳細な実施形態において、本発明は、siRNA、miRNA及びshRNAのような2本鎖RNA並びにこれに関連する方法を提供し、これらは、哺乳動物の治療対象体におけるRAの症状の抑制又は緩和をするために、TNF−α及び/又はTNF−α遺伝子の発現を調節するのに効果的である。
【0091】
本発明は、種々の形式、例えば、経皮的に又は局所注射により投与してもよい(例えば、乾癬の治療のために乾癬プラークの領域に局所注射を行う、又は乾癬性関節炎又はRAによって痛みのある患者の関節内に局所注射を行う)。さらに詳細な実施形態において、本発明は、TNF−αのmRNAに対して作用する2本鎖RNAの治療上効果的な量を投与するための製剤及び方法を提供し、それは、TNF−αRNAを効果的に下方制御し、また、これにより1つ又はそれ以上のTNF−αに関連する炎症状態を抑制する又は予防する。他の実施形態において、本発明は、腫瘍細胞における上方制御遺伝子又は細胞分裂に関わる遺伝子を抑制することにより、癌の治療をする方法も含む。
【0092】
本発明の分子は、当業者に知られている種々の方法により細胞に投与され、これは、核酸結合分子単独又はこれに薬剤的に許容されるキャリア、希釈剤、賦形剤、免疫賦活剤、乳化剤、緩衝剤、安定剤及び保存剤等の1つ又はそれ以上の付加成分をさらに備えた物質と複合又は接合している核酸を含む製剤を投与することを含むが、これらに限られない。他の実施形態において、核酸結合分子と複合又は接合している核酸は、リポソームに被抱され得る、又はハイドロゲル、シクロデキストリン、生分解性のナノカプセル、生物接着性の微粒子若しくはタンパク質性のベクターのような媒体に組み込まれ得る(例えば、PCTの国際公開WO00/53722号を参照)。あるいは、核酸、核酸結合分子及び媒体の組み合わせは、直接注入又は注入ポンプを用いることにより局所的に導入できる。皮下、筋肉内又は皮内のいずれの直接注入であっても、標準的な針及びシリンジを用いて、又はConry等.,Clin.Cancer Res.5:2330-2337(1999)及びPCTの国際公開WO99/31262号に提示されているような針を用いない技術を用いて行われ得る。本発明の組成物は、経口投与のための錠剤、カプセル又はエリキシル剤、直腸投与のための坐薬、注射投与のための無菌溶液又は懸濁液、及び当業者に知られている他の組成物として調製され、用いられることができる。
【0093】
薬理学的組成物又は製剤は、例えば、細胞又はヒトを含む患者の中への全身投与といった投与法に適する形式の組成物又は製剤を意味する。適する形式は、その用途又は例えば、経口的、経皮的又は注射による移行経路に部分的に依存する。このような形式は、組成物又は製剤を標的細胞に送ることを妨げるべきでない(すなわち、細胞に導入するには負電荷を有する核酸が望ましい)。例えば、血流内に注入される薬理学的組成物は、可溶性であるべきである。他の要因は、当業者に知られており、毒性等の配慮をすることを含む。
【0094】
「全身投与」とは、インビボにおいて、薬剤が体全体にくまなく分配され、全身の血流内において薬剤を吸収する又は集積することを意味する。全身に吸収させるための投与経路は、静脈内、皮下、腹腔、吸入、経口、肺内及び筋肉内を含むが、これらに限られない。これらのそれぞれの投与経路によって、到達可能な病気の組織に、所望の負電荷を有する核酸が曝露される。血液循環内に薬剤が入る割合は、分子量又は大きさで決定すると示されてきた。本発明の組成物を含むリポソーム又は他の薬剤キャリアの使用は、例えば、細網内皮系(RES)の組織のような所定の組織の型に、薬剤を強く局在化させることができる。リポソーム製剤は、リンパ球及びマクロファージのような細胞の表面と薬剤との結合を促進できるため有用である。このアプローチは、ガン細胞のような異常細胞に対するマクロファージ及びリンパ球に特異的な免疫認識の利点を用いることによって、標的細胞への薬剤の導入を増強させることができる。
【0095】
「薬剤的に許容できる製剤」とは、組成物又は製剤の所望の活性に最も適する身体の部位に本発明の核酸分子を効果的に分配できる組成物又は製剤を意味する。本発明の核酸分子を有する製剤に適する薬剤の例としては、CNS内への薬剤の移行を増強できるP−糖タンパク質阻害剤(例えば、プルロニックP85)(Jolliet-Riant及びTillement,Fundam.Clin.Pharmacol.13:16-26(1999))、脳内への移行の後に放出し導入を維持するためのポリ(DL−ラクチド−コグリコリド)微粒子のような生分解性ポリマー(Emerich,D.F.等.,Cell Transplant8:47-58(1999))、及び血液脳関門を渡って薬剤を移行させ、神経細胞の取り込み機構を変更させることができるポリブチルシアノアクチレートからなる荷電ナノ粒子(Schroeder,U.等.,Prog.Neuropsychopharmacol.Biol.Psychiatry23(5):941-949(1999))を含むが、これらに限られない。他の本発明の核酸分子のための導入ストラテジの例としては、Boado等.,J.Pharm.Sci.87:1308-1315(1998)、Tyler等.,FEBS Lett.421:280-284(1999)、Pardridge等.,PNAS USA 92:5592-5596(1995)、Boado,Adv.Drug Delivery Rev.15:73-107(1995)、Aldrian-Herrada等.,Nucleic Acids Res.26:4910-4916(1998)、及びTyler等.,PNAS USA 96:7053-7058(1999)に提示された材料を含むが、これらに限られない。
【0096】
本発明は、保存又は投与のために調製された組成物を含み、これは、薬剤的に許容されるキャリア又は希釈剤において、所望の化合物の薬剤的有効量を含む。治療的用途のために受け入れられるキャリア又は希釈剤は、医薬品分野においてよく知られており、例えば、Remington's Pharmaceutical Science,Mack Publishing Co.(A.R.Gennaro edit.1985)に記載されている。例えば、保存剤、安定剤、色素及び香味料が挙げられる。これらは、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸及びp−ヒドロキシ安息香酸のエステルを含む。さらに、酸化防止剤及び懸濁剤が用いられてもよい。
【0097】
「薬剤的有効量」とは、病状を予防する、病状の発生を阻害する、又は病状を治療する(ある程度の症状、好ましくは全ての症状を緩和する)のに必要な量である。薬剤的有効量は、病気の型、用いられる組成物、投与経路、治療する哺乳動物の分類、治療する哺乳動物の特異的な身体的特徴、併用する薬物及び当業者が認識する他の要因に依存する。このような化合物の投与量は、循環させる濃度が毒性がほとんど無い又は全く無いED50を含む範囲内にあることが好ましい。投与量は、用いられる剤形及び用いられる投与経路に依存する範囲内において変動してもよい。投与量は、循環血漿濃度が細胞培養において測定されるようなIC50(すなわち、症状の阻害を半分達成する試験化合物の濃度)を含む範囲にある動物モデルにおいて調製されてもよい。このような情報は、ヒトにおける有効量をより正確に決定するために用いられ得る。血漿内のレベルは、例えば、高速液体クロマトグラフィにより測定されてもよい。
【0098】
本明細書において定義されたように、本発明の薬剤的有効量は、選択された核酸に依存する。例えば、shRNAがコードされたプラスミドが選択された場合、約1μg〜1000mgの範囲内の単一用量が投与され、一実施形態においては、10μg、30μg、100μg又は1000μgが投与され得る。他の実施形態においては、1g〜5gの組成物を投与できる。組成物は、1日〜1週間に1回又はそれ以上の回数を投与され得る。ここでは1日おきの投与も含まれる。当業者は、これらに限られないが、病気若しくは障害の重症度、以前の処置、全身の健康状態及び/又は治療対象体の年齢という要因、さらに、その他の病気の存在を含むいくらかの要因が治療対象体の効果的な処置に必要な投与量及び回数に影響することを理解している。さらに、治療対象体の処置は単一の処置を含み、好ましくは、一連の処置を含む。
【0099】
経口投与のために、本発明は、カプセル剤、錠剤、粉末剤、顆粒剤又は懸濁剤としてもよい。経口組成物は、うがい薬として用いられるために液体キャリアを用いて調製されることもできる。薬剤適合性結合剤及び/又は補助材料を組成物の一部として含むこともできる。錠剤、丸剤、カプセル剤及びトローチ剤等は、以下の成分又は性質が類似した化合物のいずれかを含むことができる。それは、結晶セルロース、トラガントゴム若しくはゼラチンのような結合剤、ゼラチン若しくはラクトースのような賦形剤、アルギン酸、プリモゲル又はコーンスターチのような分解剤、ステアリン酸マグネシウム若しくはステローツのような潤滑剤、コロイド性二酸化シリコンのような流動促進剤、スクロース若しくはサッカリンのような甘味剤、又はペパーミント、サリチル酸メチル若しくはオレンジ甘味剤のような甘味剤である。組成物は、簡便な単位量形状に調製されてもよく、また、放出調節製剤、緩衝剤及び/又は腸液コーティングを用いて調製されてもよい。
【0100】
水性の懸濁液は、これを製造するのに適する賦形剤を有する混合物内の活性材料を含む。このような賦形剤は、例えば、カルボキシルメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガントゴム及びアラビアゴムのような懸濁剤であってもよい。また、分散剤又は湿潤剤は、例えばレクチンのような天然のリン脂質、例えばステアリン酸ポリオキシエチレンのような脂肪酸を有するアルキレンの縮合物、例えばヘプタデカエチレンオキシセタノールのような長鎖脂肪族アルコールを有するエチレン酸化物の縮合物、例えばポリオキシエチレンソルビトールモノオレイン酸のような脂肪酸及びヘキシトールに由来する部分エステルを有するエチレン酸化物の縮合物、又は例えばポリエチレンソルビタンモノオレイン酸のような脂肪酸及びヘキシトール無水物に由来する部分エステルを有するエチレン酸化物の縮合物であってもよい。水性の懸濁液は、1つ又はそれ以上の、例えばエチル又はn−プロピルp−ヒドロキシ安息香酸のような保存剤、1つ又はそれ以上の着色剤、1つ又はそれ以上の香味剤、及び1つ又はそれ以上のスクロース又はサッカリンのような甘味剤を含むことができる。
【0101】
油性の懸濁液は、例えば、ラッカセイ油、オリーブ油、ゴマ油若しくはヤシ油のような植物油又は液体パラフィンのような鉱物油に活性成分を懸濁することにより調製され得る。油性の懸濁液は、例えば、ミツロウ、硬質のパラフィン又はセチルアルコールのような増粘安定剤を含むことができる。甘味剤及び香味剤により、美味な経口製剤を提供することができる。これらの組成物は、アスコルビン酸のような抗酸化剤を加えられることにより、保存され得る。
【0102】
水の添加によって水性の懸濁液を調製するのに適する分散性の粉末及び顆粒は、分散又は湿潤剤、懸濁剤及び1つ又はそれ以上の保存剤を有する混合物の活性成分を提供する。適当な分散若しくは湿潤剤又は懸濁剤は、前記に例証した通りである。例えば、甘味剤、香味剤及び着色剤のような賦形剤をさらに加えることもできる。
【0103】
本発明の医薬組成物は、水に油を含む乳濁液の形態であってもよい。油層は、植物油、鉱物油又はそれらの混合物であってもよい。適当な乳化剤は、例えばアラビアゴム又はトラガントゴムのような天然のゴム、例えば大豆、レシチン、脂肪酸及びヘキシトールに由来するエステル若しくは部分エステルのような天然のリン脂質、例えばソルビタンモノオレイン酸のような無水物、並びに、例えばポリオキシエチレンソルビタンモノオレイン酸のようなエチレン酸化物を有する部分エステルの懸濁物であってもよい。乳濁液は、甘味剤及び香味剤も含むことができる。
【0104】
医薬組成物は、無菌の注射用の水性懸濁液又は油性懸濁液の形態にできる。この懸濁液は、前記の適当な分散又は湿潤剤及び懸濁剤を用いて公知の技術に従って調製され得る。無菌注射用製剤は、例えば、1,3−ブタンジオールのような非毒性の許容できる希釈剤及び溶剤による無菌注射用の溶液又は懸濁液であってもよい。許容される溶媒及び溶剤の中で用いられ得るのは、水、リンガー液及び等張性塩化ナトリウム溶液である。さらに、無菌固定油は、溶剤又は懸濁剤として従来から用いられている。この目的のために、無菌固定油は、合成モノ又はジグリセリドを含ませて用いることができる。さらに、オレイン酸のような脂肪酸が注射用に調製するのに用いられ得る。
【0105】
本発明は、例えば、薬剤の直腸投与のために坐薬の形態で投与することもできる。これらの組成物は、室温では個体であり、直腸の温度では液体となる適当な非刺激性の賦形剤を有する薬剤を混合することにより調製され得る。従って、これは、薬剤が放出されるために直腸において融解される。このような材料は、カカオバター及びポリエチレングリコールを含む。
【0106】
吸入による投与のために、本発明は、例えば、二酸化炭素のようなガスである適当な噴霧剤を含む圧力容器若しくは分注器、又はネブライザからエアロゾルスプレの形態で導入されてもよい。このような方法は、米国特許第6468798号に提示されているものを含む。
【0107】
全身投与は、経粘膜的又は経皮的手段により行うことができる。経粘膜又は経皮投与のために、障害を透過するのに適する浸潤剤は、調製の際に用いられる。このような浸潤剤は、一般に当業者に知られ、また、例えば、経粘膜的投与のために、界面活性剤、胆汁酸塩及びフシジン酸誘導体を含む。経粘膜投与は、点鼻薬又は坐薬を用いて投与できる。経皮投与のために、活性化合物は、当業者に一般に知られている軟膏剤、ゲル剤、又はクリーム剤の中に入れられている。
【0108】
本発明は、例えば遺伝子銃、バイオインジェクタ及び皮膚に対するパッチのような核酸剤の投与に適する方法、また、米国特許第6194389号に提示された微粒子DNAワクチン技術のような針を用いない方法、及び米国特許第6168587号に提示された粉末状ワクチンを用いた哺乳動物における針を使用しない経皮的なワクチン接種により投与できる。さらに、鼻腔内導入は、特に、Hamajima等.,Clin.Immunol.Immunopathol.88(2):205-210(1998)に提示されるように可能である。リポソーム(例えば、米国特許第6472375号に提示されている)及びマイクロカプセル化も用いられ得る(例えば、米国特許第6471996号に提示されている)。
【0109】
定義
便宜上、明細書、実施例及び添付した特許請求の範囲において用いた用語を、ここにまとめる。他に定義されない限り、本明細書において用いられた全ての技術用語及び科学用語は、本発明の分野における当業者により一般に理解される意味と同様の意味を有する。
【0110】
本明細書において用いられている「核酸」という用語は、デオキシリボ核酸(DNA)及び適当な場合はリボ核酸(RNA)のようなポリヌクレオチドを意味する。この用語は、1本鎖(例えば、センス鎖又はアンチセンス鎖)ポリヌクレオチド及び2本鎖ポリヌクレオチドが開示された実施形態に適用できるものとして理解されるべきである。この用語は、公知のヌクレオチドアナログ又は修飾骨格の残基若しくは結合を含む核酸、また、それは合成物、天然物及び非天然物の核酸、さらに、それは参照の核酸と類似の結合特性を有する核酸、さらに、参照ヌクレオチドと類似の様式で代謝される核酸を含む。このようなアナログの例は、ホスホロチオエート、ホスホロアミド酸、メチルホスホン酸、キラルメチルホスホン酸、2−O−メチルリボヌクレオチド及びペプチド核酸(PNAs)を含むが、これらに限られない。
【0111】
糖、塩基及びリン酸の修飾は、血清リボヌクレアーゼによる核酸の分解を防ぐために核酸分子に対して行われ、これにより効果が増大する。例えば、オリゴヌクレオチドは、例えば、2’−アミノ、2’−C−アリル、2’−フルオロ、2’−O−メチル、2’−O−アリル及び2’−Hヌクレオチド塩基の修飾といったヌクレアーゼ耐性基を用いた修飾による安定性の増強及び/又は生化学活性の増強のために修飾され得る(Usman及びCedergren,TIBS 17:34(1992)、Usman等.,Nucleic Acid Symp.Ser.31:163(1994)、及びBurgin等.,Biochemistry 35:14090(1996)を参照)。核酸分子の糖の修飾は、この分野において広く提示されている。これについて、PCT国際公開WO91/03162号、PCT国際公開WO92/07065号、PCT国際公開WO93/15187号、PCT国際公開WO97/26270号、PCT国際公開WO98/13526号、米国特許第5334711号、米国特許第5627053号、米国特許第5716824号、米国特許第6300074号、Perrault等.,Nature 344:565-568(1990)、Pieken等.,Science 253:314-317(1991)、Usman及びCedergren,Trend in Biochem.Sci.17:334-339(1992)、Beigelman等.,J.Biol.Chem.270:25702(1995)、Karpeisky等.,Tetrahedron Lett.39:1131(1998)、Earnshaw及びGait,Biopolymers (Nucleic Acid Science) 48:39-55(1998)、Verma及びEskstein,Annu.Rev.Biochem.67:99-134(1998)、及びBurlina等.,Bioorg.Med.Chem.5:1999-2010(1997)を参照するとよい。前記の参考文献の全ては、触媒作用を調節することなく核酸分子の中に、糖、塩基及び/又はリン酸の修飾等を組み込む位置を決定するための一般的な方法及びストラテジが記載されている。
【0112】
このような方法等の観点において、同様の修飾は、細胞内のRNAiを促進するための能力が有意に阻害されない限り、本発明の核酸を修飾するために本明細書において記載されたように用いられることができる。ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート及び/又は5’−メチルホスホン酸結合を有するオリゴヌクレオチドのインターヌクレオチド結合の化学修飾は、安定性を改善する一方で、過剰な修飾は、毒性を又は活性の減少を引き起こし得る。従って、核酸分子を設計する際に、これらのインターヌクレオチド結合の量を最小化するべきである。これらの結合の量を減少することは、毒性をより低下させ、これらの分子の効力の増大及び特異性の増大を引き起こす。
【0113】
例えば、核酸をCy3、フルオレセイン又はローダミンのようなフルオロフォアを用いて標識するといった公知の方法を用いて、本発明の核酸を標識できる。この標識は、例えば、SILENCER(登録商標)siRNA標識キット(アンビオン)のようなキットを用いて行うことができる。さらに、核酸を例えば、3H、32P又は他の適当な同位体を用いて放射標識できる。
【0114】
「RNA」は少なくとも1つのリボヌクレオチド残基を含む分子を意味する。「リボヌクレオチド」は、β−D−リボ−フラノース部の2’位にヒドロキシル基を有するヌクレオチドを意味する。その用語は、2本鎖RNA、1本鎖RNA、部分的に精製されたRNAのような分離RNA、本質的に精製されたRNA、合成RNA、組み換えにより生成されたRNA、並びに1つ又はそれ以上のヌクレオチドの付加、欠損、置換及び/又は改変により天然型のRNAとは異なる改変型RNAを含む。このような改変は、ヌクレオチドでない材料を、siRNAの末端に、又は、例えば、RNAの1つ又はそれ以上のヌクレオチドの内部に付加することを含むことができる。本発明のRNA分子のヌクレオチドは、非天然型のヌクレオチド又は化学合成されたヌクレオチド若しくはデオキシヌクレオチドのような非標準的なヌクレオチドを含むこともできる。このような改変型RNA分子は、RNAアナログ又は天然型RNAのアナログとして適用され得る。
【0115】
「センス領域」とは、核酸のアンチセンス領域と相補性を有する核酸のヌクレオチド配列を意味する。さらに、核酸のセンス領域は、標的核酸配列と相同性を有する核酸配列を含むことができる。
【0116】
「アンチセンス領域」とは、核酸のセンス領域と相補性を有する核酸のヌクレオチド配列を意味する。さらに、核酸のアンチセンス領域は、標的核酸配列と相同性を有する核酸配列を含むことができる。
【0117】
本明細書において用いられている「複合する」という用語は、非共有結合を介して2つの分子が相互作用していることを意味する。非共有結合には、水素結合、イオン間相互作用、ファンデルワールス力及び疎水結合の4つの主たる型がある。正に荷電したPDTは、凝集体、ナノ粒子又は可溶性複合体として、負に荷電した核酸と静電気的に非共有結合による複合体を形成することができる。
【0118】
本明細書において用いられている「接合する」という用語は、共有結合を介して2つの分子が相互作用していることを意味する。共有結合は一般に、安定である。共有結合の例は、ジスルフィド結合又はアミド結合を含むがこれらに限られない。しかしながら、種々の共有結合が許容されるように、種々の官能基が用いられることは当業者には明白である(例えば、エステル結合、カルバミン酸結合、スルホン酸結合、チオエステル結合又はチオエーテル結合)。共有結合は、化学修飾された核酸分子のセンス鎖、アンチセンス鎖又はその両方の鎖における3’末端、5’末端又はその両方に形成され得る。
【0119】
本明細書において用いられている「多量体PTD」という用語は、1つよりも多くドメインを含み、そのドメイン同士が結合しているペプチド鎖を意味する。本発明の多量体ペプチドの中のドメインは、ホモ多量体を形成するために同一となり得る、又はヘテロ多量体を形成するために互いに異なり得る。ホモ多量体又はヘテロ多量体は、2量体、3量体、4量体、5量体、6量体又はそれ以上の多量体を含むことができる。一般に、リンカーは、他の単量体と架橋が形成できるシステイン残基のようなアミノ酸残基に続く1つ〜5つのアミノ酸からなる。システイン残基は2つのペプチド分子の間にジスルフィド架橋を形成できるため、システイン残基を用いることが好ましい。但し、他の多量体ペプチド鎖の形成の手段も当業者に知られている。例えば、システイン残基の位置において、アミノ酸残基又は人工のアミノ酸のような化学物質は、化学的な架橋形性能を含み得る(例えば、糖残基、Marcaurelle等.,Tetrahedron Lett.39:8417-8420(1998)、これは、本明細書に参照として援用される)。
【0120】
「標的遺伝子」は、発現を選択的に阻害又は抑制される遺伝子である。この発現抑制は、標的遺伝子のmRNAの分解を促進することにより、又は標的遺伝子のmRNAの翻訳を阻害することにより達成される。その分解又は翻訳の阻害は、標的遺伝子のmRNAと、shRNA、アンチセンスRNA、miRNA、siRNA、操作型RNA前駆体、ハイブリッド2本鎖核酸又は環状RNAとの結合により誘導される。前記の分子の一部又は一セグメントは、例えば、標的遺伝子のmRNAの約16個〜約40個のヌクレオチドを有する部分と実質的に相補的であるアンチセンス鎖である。遺伝学的に又は配列決定によりこれまでに同定された遺伝子は、標的となり得る。標的遺伝子は、発生に関わる遺伝子及び制御遺伝子を含んでもよく、また、代謝若しくは構造に関わる遺伝子又は酵素をコードしている遺伝子を含んでもよい。標的遺伝子は、表現型が研究されている細胞、又は表現型の特徴に直接的又は間接的に影響する態様を有する生物において発現されてもよい。本発明の標的遺伝子が、制御遺伝子又は未変性のタンパク質をコードしている遺伝子の場合は、細胞に内在的な遺伝子であり、また、標的遺伝子がウイルス若しくは微生物の遺伝子、トランスポゾン又は導入遺伝子の場合は、細胞に関して異種性又は外因性であってもよい。いずれかの場合において、阻害されない標的遺伝子の発現は、病気又は異常を引き起こし得る。
【0121】
2つの核酸の関係における「実質的に同一」という用語は、例えば、以下に記載されているような配列比較アルゴリズムを用いて、又は視覚的な検査により測定できるように、比較され且つ最大限に一致するように整列させた場合に、少なくとも75%、好ましくは少なくとも80%又は85%、さらに好ましくは少なくとも90%、95%、96%、97%、98%又は99%のヌクレオチドの同一性を有する2又はそれ以上の配列又はサブ配列を意味する。実質的な同一性は、少なくとも約16個〜40個のヌクレオチドの長さ、又は少なくとも約40個〜60個のヌクレオチドの長さの配列の領域にわたって存在し、他の例では、少なくとも60個〜80個のヌクレオチドの長さの領域にわたって存在し、さらに他の例では、少なくとも90個〜100個のヌクレオチドの長さにわたって存在し、さらに他の例では、ヌクレオチドのコード領域のような比較される配列の全長の配列が実質的に同一である。
【0122】
本明細書において用いられている「実質的に相補的」という用語は、特定化された条件下において、ハイブリッド形成するために十分に相補的である2つの配列として定義される。ハイブリッド形成の多様な条件は、本発明において用いられてもよく、それは、高い厳密性、中程度の厳密性及び低い厳密性の条件を含む。高い厳密性を有する条件は、当業者に知られており、例えば、Maniatis等.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,第2版(1989)、及びAusubel等.,Short Protocols in Molecular Biology(1989)を参照するとよく、これらは参照として本明細書に援用される。一般に、高い厳密性を有する条件は、規定されたイオン強度及びpHにおける特定の配列の融点(Tm)よりも約5℃〜10℃低いように選定される。Tmは、平衡状態における標的配列に対して、標的配列に相補的なプローブの50%がハイブリッド形成する(規定されたイオン強度、pH及び核酸濃度における)温度である(Tmにおいて、標的配列が過剰に存在する条件で、平衡状態に50%のプローブが占められる)。高い厳密性を有する条件は、塩濃度としてナトリウムイオンが約1.0Mよりも低く、例えば、pHが7.0〜8.3であり、短いプローブ(例えば10個〜50個のヌクレオチド)では低くとも約30℃、長いプローブ(例えば50個のヌクレオチドよりも長い)では低くとも約60℃の温度において、ナトリウムイオン(又は他の塩)が約0.01M〜1.0Mの濃度である。高い厳密性を有する条件は、ホルムアミドのような不安定化剤の添加によって達成されてもよい。中程度の厳密性又は低い厳密性を有する条件は、この分野において公知なものを用いてもよい。
【0123】
本発明は、本発明の理解を助けるために明らかにした実施例を以下に記載し、これにより、いかなる場合もその後の特許請求の範囲に規定された本発明の範囲を限定するように解釈されない。
【実施例】
【0124】
(第1の実施例)
多量体PTDの化学合成
ペプチドは、ペプチドオートシンセサイザ(Symphony,PTI,Tucson,Arizona)を有する2−クロロトリチルリジンを用いて、フルオレン−9−イルメトキシカルボニル(Fmoc)固相法の標準的な段階に従って合成させた。Fmocアミノ酸は、0.2Mの1−メチル−2−ピロリドン(NMP)溶液に保存した。カップリング試薬は、0.2MのNMP溶液に前溶解した。全てのFmocアミノ酸は、カップリング試薬の5倍以上とした。カップリングは30分間行った。Fmocの脱保護は、NMP溶液に溶解した20%ピペリジンを用いて行った。アミノ酸側鎖の樹脂からのペプチド切断は、トリフルオロ酢酸(TFA)/水(95:5)を用いて3時間行った。樹脂はTFAを用いて洗浄し、膜は部分的に蒸発させた。未精製の生成物は、ジエチルエーテルを用いて沈殿させ、遠心分離により収集し、水に溶解し、凍結乾燥した。ペプチドは、UV検出器(230nm)を備えているSCL−10A VP Shimadzu装置及びShimadzu Shim−PackC18カラム(250×4.6mm,5μm,100Å,流速1ml/分)を用い、RP−HPLCにより解析及び精製させた。精製された多量体PTDsのアミノ酸配列は、以下の通りであった。
化学合成によるMPH−1−PTD単量体:YARVRRRGPRR(C)(配列番号15)、
化学合成によるMPH−1−PTD2量体a:YARVRRRGPRRGGYARVRRRGPRRGG(C)(配列番号16)、
化学合成によるMPH−1−PTD2量体b:CGGYARVRRRGPRRGGYARVRRRGPRRGG(C)(配列番号17)、及び
化学合成によるMPH−1−PTD3量体:YARVRRRGPRRGYARVRRRGPRRGYARVRRRGPRRG(C)(配列番号18)。
【0125】
(第2の実施例)
多量体であり且つ/又はスペーサ組み込み型である多量体PTDの可溶性発現
多量体PTDの化学合成は、比較的簡便であるが、化学合成による大きな多量体PTDsの調製は、技術的及び経済的に制限され得る。この理由のために、2量体を含むオリゴマーを、組み換えタンパク質技術を組み合わせた化学合成を介して調製し、また、4量体よりも大きなオリゴマー及びスペーサ組み込み型PTDを、組み換え型タンパク質として調製した。本発明の組み換え型タンパク質の発現のために調製したベクターを図2に示している。
【0126】
PTDsは、強い正電荷を有する低分子ペプチドであるため、それらは、単独で発現すると、容易に分解される傾向がある。従って、種々のPTDs及びスペーサ組み込み型PTDsを、ユビキチン(UB)を有する融合タンパク質の調製、調製された融合タンパク質の精製、及びその後のユビキチンタンパク質分解酵素(UBP)を用いて精製された融合タンパク質を分離することにより構築した(図3に示す)。
【0127】
多量体であり且つ/又はスペーサを有してスペーサ組み込み型であることを満たすPTDsを、N末端UB融合タンパク質又は非融合タンパク質として調製した。スペーサとして用いられるUBは、UBPにより分離されるため、UBPによる分離を防ぐために、UBスペーサのC末端のグリシン残基をバリンに置換した。この変異ドメインは、UB(v)として表している(図2に示す)。PTD(2)UBのようにC末端にUBが位置する場合、C末端のUBはUBPにより分離されないため、野生型UBを用いた。
【0128】
大腸菌(BL21)を、従来のヒートショック法に従い、図2及び図3に示すプラスミドにより形質転換した(Sambrook等.,Molecular cloning 第2版)。組み換え型タンパク質の発現は、IPTGを加えることにより誘導させた。誘導から2時間〜8時間後に、細胞を遠心分離により収集し、沈殿した細胞を適当な溶解緩衝液を用いて再懸濁した。細胞懸濁液に対して20分間の超音波処理を行い、それを遠心分離により清澄化した。組み換え型タンパク質を精製するために、遠心分離による上清をイオン交換クロマトグラフィカラム(SP FF、GEヘルスケア)に通した。PTDのアルギニン残基は、中性pHにおいて正電荷を有しているため、その組み換え型タンパク質は、高いpI値を有している。従って、大腸菌自身のタンパク質のほとんどは高い伝導率においてSP FF樹脂に結合しない一方で、組み換え型タンパク質は、高い伝導率においてSP FFカラムから溶出された。IEXにおける選択的N末端UB融合又は非融合タンパク質は、より質の高い精製のために逆相高速液体クロマトグラフィ(RP−HPLC)を用いて精製させ、その後に凍結乾燥させた。
【0129】
UB融合タンパク質の場合、凍結乾燥させたその融合タンパク質は、適当な緩衝液に再懸濁させ、UBとPTDsとの分離を誘導するためにUBPをそれに加えた。その後に、多量体であり且つ/又はスペーサ組み込み型であるPTDsをRP−HPLCを用いて精製し、凍結乾燥した。
【0130】
調製された多量体であり且つ/又はスペーサ組み込み型であるPTDsのアミノ酸配列は以下のようになる。
組み換え型MPH−1−PTD2量体
YRFYARVRRRGPRRGGARFYARVRRRGPRRGGARV(C)(配列番号19)、
組み換え型MPH−1−PTD3量体
YRFYARVRRRGPRRGGARFYARVRRRGPRRGGARFYARVRRRGPRRGGARFYARVRRRGPRRGGARV(C)(配列番号20)、
組み換え型MPH−1−PTD8量体
YRFYARVRRRGPRRGGARFYARVRRRGPRRGGARFYARVRRRGPRRGGARFYARVRRRGPRRGGYRFYARVRRRGPRRGGARFYARVRRRGPRRGGARFYARVRRRGPRRGGARFYARVRRRGPRRGGARV(C)(配列番号21)、
組み換え型ペネトラチン−UB(v)+MPH(2)
RQIKIWFQNRRMKWKKGGGQIFVKTLTGKTITLEVESSDTIDNVKSKIQDKEGIPPDQQRLIFAGKQLEDGRTLSDYNIQKESTLHLVLRLRGVSRVYARVRRRGPRRGGARFYARVRRRGPRRGGARV(C)(配列番号52)、
組み換え型ペネトラチン−UB(v)+MPH(4)
RQIKIWFQNRRMKWKKGGGQIFVKTLTGKTITLEVESSDTIDNVKSKIQDKEGIPPDQQRLIFAGKQLEDGRTLSDYNIQKESTLHLVLRLRGVSRVYARVRRRGPRRGGARFYARVRRRGPRRGGARFYARVRRRGPRRGGARFYARVRRRGPRRGGARV(C)(配列番号58)、
組み換え型Sim−2−UB(v)+PTD(Hph−1)−(2)
AKAARQAARGGGQIFVKTLTGKTITLEVESSDTIDNVKSKIQDKEGIPPDQQRLIFAGKQLEDGRTLSDYNIQKESTLHLVLRLRGVSRVYARVRRRGPRRGGARFYARVRRRGPRRGGARV(C)(配列番号59)、
組み換え型Sim−2−UB(v)+PTD(Hph−1)−(4)
AKAARQAARGGGQIFVKTLTGKTITLEVESSDTIDNVKSKIQDKEGIPPDQQRLIFAGKQLEDGRTLSDYNIQKESTLHLVLRLRGVSRVYARVRRRGPRRGGARFYARVRRRGPRRGGARFYARVRRRGPRRGGARFYARVRRRGPRRGGARV(C)(配列番号60)、
組み換え型PTD(2)UB
YARVRRRGPRRGGARFYARVRRRGPRRGGQIFVKTLTGKTITLEVESSDTIDNVKSKIQDKEGIPPDQQRLIFAGKQLEDGRTLSDYNIQKESTLHLVLRLRGG(配列番号44)、及び
組み換え型PTD(4)UB
YRFYARVRRRGPRRGGARFYARVRRRGPRRGGARFYARVRRRGPRRGGARFYARVRRRGPRRGGARVQIFVKTLTGKTITLEVEPSDTIENVKAKIQDKEGIPPDQQRLIFAGKQLEDGRTLSDYNIQKESTLHLVLRLRGG(配列番号46)。
【0131】
(第3の実施例)
接合による多量体PTDの拡大
多量体PTDの大きさを大きくするために、ジスルフィド結合を2つのPTD分子同士の間に形成させるには、システイン残基をPTDの末端のいずれか一方又は両方に位置させる。例えば、システインを有する2つのPTD2量体同士がジスルフィド結合を介して結合すると、4量体が形成され、2量体と4量体とが結合すると、6量体が形成される(図5を参照)。
【0132】
ジスルフィド結合の誘導は、pH8〜11且つ低温で、緩やかに撹拌した状態における大気酸化法を用いて行われる。
【0133】
前記の方法を用いて調製された多量体PTDsは、N末端配列決定法及び飛行時間型マトリックス支援レーザ脱離イオン化質量分析法(MALDI−TOF)を用いて解析される。
【0134】
多量体PTDの強い正電荷は、負に荷電したドデシル硫酸ナトリウムと複合体を形成するため、多量体PTDの最終生成物を分離するためにドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)を用いることは困難である。また、多量体PTDの高いpIのため、一般的なPAGE分析法を行うことも困難である。この理由のため、多量体PTDのPAGE分析は、PAGEのpHを変化させ、電極を逆に接続した後に行われる。
【0135】
(第4の実施例)
組み換え型多量体PTDの難溶性発現
多量体PTDsは、大腸菌から発現すると毒性を示し、また、急速に分解される傾向にある。さらに、PTDsのうちのいくつか、例えば、TAT−PTD又はMPH−1−PTDは、メチオニンを含まない。従って、本発明は、融合する相手と多量体PTDとの間にメチオニンを挿入することを含む方法を用いた。さらに、本発明は、ユビキチン、例えば、Src様アダプタタンパク質(SLAP)又はゼータ鎖結合タンパク質キナーゼ(Zap70)の代わりに、容易に凝集するタンパク質を用いて多量体PTDと融合する相手を置換することを含む方法も用いた。容易に凝集するタンパク質は、封入体に集積するため、これらの融合は簡便であり、従って、一般に毒性は低い。さらに、比較的容易に、それらが分解することを防ぎ、それらを精製することができる。しかしながら、封入体は、中程度の条件及び生理学的条件において溶解されない。封入体を溶解するために尿素、塩酸グアニジンのようなカオトロビック剤若しくは界面活性剤が用いられ、又は極度の範囲のpHの緩衝液が用いられる。一般に、生物のタンパク質分解酵素は、このような条件においては活性化されない。従って、本発明は化学的な分離を採用する。臭化シアン(CNBr)は、メチオニン残基のカルボキシル末端側におけるペプチド結合を特異的に切断する。多くのPTDsはメチオニン残基を有さないため、CNBrを用いて融合タンパク質を分離して多量体PTDsを精製できるように、メチオニンをPTDのアミノ末端に挿入する(図4)。
【0136】
例えば、第2の実施例と同様のベクターのおいて、UBの代わりの融合タンパク質としてSLAPを用いることにより難溶性発現をさせる。SLAPベクターの構築は、第2の実施例に記載したように行った。発酵、誘導、細胞の収集及び細胞の溶解は、第2の実施例に記載したように行った。細胞の溶解の後に、細胞懸濁液を遠心分離し、その後の上清を除去した。残存した封入体を8Mの尿素緩衝液に溶解し、IEX(SP FF、GEヘルスケア)を用いて精製した。0.3M〜1Mの範囲における精製された融合タンパク質の分画にHClを加えた。分離のためにCNBrを加え、その溶液を遮光し、室温で12時間静置した。CNBrを用いた分離の後に、多量体PTDを第2の実施例に記載の方法と同一のRP−HPLCを用いて精製し、その後に、それを凍結乾燥した。SLAPは数個のメチオニン残基を有するため、CNBrを用いた融合タンパク質の分離により、UB−融合タンパク質における2つのみのピークと比較して、多くのピークを示すいくつかの分画が生成された。
【0137】
(第5の実施例)
核酸と多量体PTDとの複合体の生成
PTDと核酸とは、これらの間の安定な非共有結合の形成を介して複合体を形成できる(図1)。核酸と多量体PTDとの複合体を形成するために、核酸と多量体PTDsとを規定された比率で混合した。過剰量の多量体PTDsは、難溶性の凝集体の形成を引き起こすため、その比率は重要である。対照的に、過剰量の核酸は、複合体の導入効率を低減させる。これは、以下の実験により証明された。
【0138】
4量体PTDとsiRNAとは凍結乾燥粉末の状態で準備した。4量体PTDを2×PBS溶液に溶解し、siRNAを脱イオン水(D.W.)に溶解した。PTD及びsiRNAの濃度は1μMとした。100μlのGAPDHのsiRNA溶液を含む遠心チューブに、100μl、150μl、200μl、400μl、700μl又は1000μlの第2の実施例の4量体PTDを加えた。チューブ内の溶液をよく混合し、室温で20分間静置させた。それぞれの混合液に対して、FACS装置を用いて導入効率を分析した。その結果を図9に示している。その混合液は、100μlのsiRNAに対してPTDの量が700μl以上の場合、凝集し、濁りが見られるようになる。従って、核酸の効率的な導入は、PTD:siRNAが1:1〜7:1の比率の場合に起こる。特に効率的な導入は、PTD:siRNAが3:1の場合に達成される。最低限のタンパク質の凝集と効率的な核酸の導入とは、PTD:siRNAが2:1の場合に見られる。
【0139】
(第6の実施例)
核酸と多量体であり且つ/又はスペーサ組み込み型であるPTDとの接合体の生成
第4の実施例における多量体PTDsを拡大する方法と同様に、多量体であり且つ/又はスペーサ組み込み型である満たすPTDの末端におけるシステイン残基と接合できるように、核酸の5’末端にチオール基(−SH)が導入される。接合体は、第2の実施例に記載された大気酸化法を用いて形成される。
【0140】
多量体である且つ/又はスペーサ組み込み型であるPTDと核酸とが接合するために、他の化学結合を用いることもできる。例えば、核酸にアルデヒドを導入することにより、ペプチドのアミン基と接合させることを誘導させる。核酸にカルボキシル基を導入すると、ペプチドのアミン基とアミド結合を形成することができる(図6)。
【0141】
(第7の実施例)
多量体であり且つ/又はスペーサ組み込み型であるPTD−siRNAの細胞内導入の媒介
siRNAの細胞内導入を媒介するための多量体であり且つ/又はスペーサ組み込み型であるPTDsの特性を調べた。ここでの実験において、siRNAを、多量体であり且つ/又はスペーサ組み込み型であるPTDs、例えば、スペーサを有するMPH−1の2量体(配列番号44〜47)、MPH−1の単量体(配列番号19)又はMPH−1の4量体(配列番号20)と複合させた。MPH−1の単量体は化学的に合成した。2量体及び4量体は、第2の実施例に記載のように組み替えにより生成した。細胞内のsiRNAを定量化するために、蛍光材料であるカルボキシフルオセイン(FAM)を用いてsiRNAの1つの鎖を標識した。多量体であり且つ/又はスペーサ組み込み型であるPTDsと複合したsiRNAは、凍結乾燥粉末として準備した。多量体であり且つ/又はスペーサ組み込み型であるPTDは、2×PBS溶液に溶解し、siRNAはD.W.に溶解した。siRNAの濃度は1μMとした。スペーサ組み込み型の単量体、2量体及び4量体PTDsの濃度は、それぞれ4μM、2μM及び1μMとした。異なるPTD多量体同士の異なる濃度は、それぞれ異なる電荷の割合を補償するためである。スペーサ組み込み型PTDsにおいて、タンパク質の濃度は、試験デザインに依存する。siRNA溶液とPTD溶液とは、同量で混合した。混合液におけるsiRNAの最終濃度は100nMとした。
【0142】
siRNAと多量体PTDとの複合体は、培養HeLa細胞に導入させた。CO2インキュベータ内で0.5時間〜2時間培養した後に、培地を除去し、細胞をPBSにより3回洗浄し、1mlのPBSを添加し、ゴム製のスクレイパを用いて細胞を収集した。収集した細胞を遠心分離した。その後の上清を除去し、細胞を1mlのPBSに再懸濁した。この洗浄工程を3度繰り返した。
【0143】
洗浄の後、蛍光活性細胞選別装置(FACS)を用いて、siRNAの導入効率を分析した。その結果を図7及び図8に示している。図8は530/30フィルタ(FL−1H)における蛍光強度の高さを示している。
【0144】
予想されたとおり、単量体PTDの導入効率は低かった。これは、導入単位としてのPTDの機能を損失している単量体PTDとsiRNAとの相互作用のためである。2量体PTDは中程度の導入効率を示し、4量体PTDは最も高い効率を示した。これらの結果は、PTD多量体のPTDsの数に比例してsiRNAの導入効率が増大することを証明している。これは、導入効率は導入単位としての機能を利用できるフリーのPTDsに依存することを示している。
【0145】
スペーサが組み込まれたPTDsの場合、全ての検体が高い導入効率を示した。
【0146】
(第8の実施例)
細胞内に導入されたsiRNAの活性
PTDにより導入されたsiRNAの活性を評価した。ここでの試験において、第7の実施例に記載した4量体のMPH−1 PTD(配列番号20)及びスペーサ組み込み型PTDs(配列番号43〜60)を用いた。4量体PTDを、グリセルアルデヒド3−リン酸脱水素酵素(GAPDH)siRNAと複合させた。この複合体をHeLa細胞に導入し、GAPDHの発現に対する影響を試験した。GAPDHの発現レベルは、GAPDHの酵素活性を測定することにより評価した。
【0147】
スペーサ組み込み型タンパク質を、ヒトプロテインキナーゼCのa−サブユニット(PKCA)を標的とするsiRNAと複合させた。この複合体をHeLa細胞に導入し、PKCAのmRNAレベルに対する影響を試験した。PKCAのmRNAレベルを定量性リアルタイムPCRにより測定した。その複合体の混合液を、培養したDMEM培地を用いてHeLa細胞に導入した。その2時間後、新鮮な培地を用いて、細胞を3度洗浄した。洗浄後に、細胞に再び新鮮な培地を加え、24時間培養した。24時間の培養後、Trizol(インビトロジェン(Carlsbad,CA))の説明書に従って、細胞からRNAsを抽出した。High capacity RNA to cDNAキット(アプライドバイオシステムズ, Foster city,CA)を用い、その説明書に従って、抽出したRNAからcDNAを合成した。製造者の説明書(アプライドバイオシステムズ 7500 system)に従って、合成したcDNAを用いてqRT−PCRを行った。内部補償のために、GAPDHのmRNAレベルを測定した。
【0148】
図10に示すように、PKCAのsiRNAを単独で導入すると、PKCAのmRNAレベルは減少しなかった。しかしながら、PKCAのsiRNAをスペーサ組み込み型PTDと複合させた場合、全ての検体においてPKCAのmRNAレベルは減少した。このデータは、スペーサ組み込み型PTDによりsiRNAsが導入されると、siRNAsは阻害活性を保持することを証明している。
【0149】
これらの試験において、4量体PTDを第2の実施例に記載されたように調製し、第4の実施例に記載された方法と同一の方法により、siRNAと混合した。培養したDMEM培地を用いて、その混合液をHeLa細胞に導入した。その2時間後、細胞を新鮮な培地を用いて3度洗浄した。洗浄した後に、新鮮な培地を細胞に再び加え、2日間培養し、その後に、KDalert(アンビオン(アプライドバイオシステムズ,Forster city,CA))の説明書に従いGAPDHの活性を分析した。
【0150】
図11に示すように、GAPDHのsiRNAを単独で導入すると、GAPDHの活性は減少しなかった。しかしながら、GAPDHのsiRNAを4量体PTDと複合させると、その濃度依存的にGAPDHの活性は減少した。このデータは、4量体PTDにより導入すると、siRNAsは活性を保持することを証明している。
【0151】
(第9の実施例)
DNAベクターの細胞内の導入を媒介する多量体PTD
HeLa細胞の中にDNAベクターを導入するための多量体PTDの特性を評価した。高感度緑色蛍光タンパク質(EGFP)をコードしているベクター(pEGFP−N1(クロンテック,Mountain Viee,CA))をここでの試験に用いた。
【0152】
4量体PTDを第2の実施例に記載したように調製し、DNAベクターをDNA prep Kit(プロメガ,Madison,Wiscconsin)を用いて調製した。PTDを濃度が0.4mg/mlになるように2×PBSを用いて溶解した。DNAの濃度をD.W.を用いて0.1mg/mlに調製した。それぞれ等量のDNA溶液とPTD溶液とを混合した。それを室温で30分間静置した後に、20μlの混合液を6mm培養皿内の培地に加えた。細胞内へのDNAベクターの導入の後、EGFPの発現のために細胞を48時間培養した。DNAベクターの導入効率を評価するために、FACSによりEGFPの蛍光を測定した。陽性対照としてlipofectamine 2000(インビトロジェン,Carlbad,CA)導入試薬を用いて、同様の導入を行った。
【0153】
図12に示すように、DNAの導入効率は、lipofectamineを用いるよりも4量体PTDを用いた方が高かった。図12は、530/30フィルタ(FL−1H)における蛍光強度の高さを示している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
核酸結合分子と複合又は接合している核酸の配列を備え、
前記核酸結合分子は、1つ又はそれ以上のタンパク質導入ドメイン(PTDs)と1つ又はそれ以上のスペーサとを含む1つ又はそれ以上のスペーサ組み込み型PTDsを含み、
前記スペーサは、前記核酸の配列と結合しない1つ又はそれ以上のアミノ酸の配列を含む複合体又は接合体。
【請求項2】
前記核酸は、リン酸骨格を含む1本鎖核酸である請求項1に記載の複合体又は接合体。
【請求項3】
前記スペーサ組み込み型PTDsは、2つ若しくはそれ以上、3つ若しくはそれ以上、4つ若しくはそれ以上又は5つ若しくはそれ以上のPTDsを含む請求項1に記載の複合体又は接合体。
【請求項4】
前記1本鎖核酸は、shRNA、アンチセンスRNA及びcDNAからなる群から選択される請求項1に記載の複合体又は接合体。
【請求項5】
前記スペーサ組み込み型PTDは、ホモマーPTD及びヘテロマーPTDからなる群から選択される請求項1に記載の複合体又は接合体。
【請求項6】
前記PTDは、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42及び分枝型ポリリジンからなる群から選択される配列を含む請求項1に記載の複合体又は接合体。
【請求項7】
前記PTDは、配列番号43、配列番号44、配列番号45、配列番号46、配列番号47、配列番号48、配列番号49、配列番号50、配列番号51、配列番号52、配列番号53、配列番号54、配列番号55、配列番号56、配列番号57、配列番号58、配列番号59、配列番号60からなる群から選択される配列を含む請求項1に記載の複合体又は接合体。
【請求項8】
前記核酸結合分子は、1つ又はそれ以上の核酸結合領域をさらに含む請求項1に記載の複合体又は接合体。
【請求項9】
前記核酸結合領域は、カチオン性物質を含む請求項8に記載の複合体又は接合体。
【請求項10】
前記カチオン性物質は、ポリリジン、ポリアルギニン及びポリエチレンイミンからなる群から選択される請求項9に記載の複合体又は接合体。
【請求項11】
前記ポリリジンは、ポリ−L−リジン及びポリ−D−リジンからなる群から選択される請求項10に記載の複合体又は接合体。
【請求項12】
前記核酸結合分子に複合又は接合している前記核酸の配列は、ナノ粒子を形成する請求項1に記載の複合体又は接合体。
【請求項13】
可溶性である請求項1に記載の複合体又は接合体。
【請求項14】
前記核酸は、2本鎖RNAであり、2本の鎖のうちの1つは実質的に標的遺伝子と相補的である請求項1に記載の複合体又は接合体。
【請求項15】
前記2本鎖RNAは、siRNA、miRNA、操作型RNA前駆体及びshRNAからなる群から選択される請求項14に記載の複合体又は接合体。
【請求項16】
前記核酸は、2本鎖核酸である請求項1に記載の複合体又は接合体。
【請求項17】
核酸結合分子と複合又は接合している核酸を備え、
前記核酸は、リン酸骨格を含む1本鎖又は2本鎖の核酸であり、
前記核酸結合分子は、1つ又はそれ以上のPTDsと1つ又はそれ以上のスペーサとを含む1つ又はそれ以上のスペーサ組み込み型PTDsを含み、
前記スペーサは、前記核酸と結合しない1つ又はそれ以上のアミノ酸の配列を含む組成物。
【請求項18】
1つ又はそれ以上のスペーサ組み込み型PTDsを備え、
前記PTDsは、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号43、配列番号44、配列番号45、配列番号46、配列番号47、配列番号48、配列番号49、配列番号50、配列番号51、配列番号52、配列番号53、配列番号54、配列番号55、配列番号56、配列番号57、配列番号58、配列番号59、配列番号60及び分枝型ポリリジンからなる群から選択される核酸結合分子。
【請求項19】
1本鎖核酸と結合する請求項18に記載の核酸結合分子。
【請求項20】
前記1本鎖核酸は、shRNA、アンチセンスRNA及びcRNAからなる群から選択される請求項19に記載の核酸結合分子。
【請求項21】
2本鎖核酸と結合する請求項18に記載の核酸結合分子。
【請求項22】
前記2本鎖核酸は、2本鎖DNAベクター、2本鎖RNA、ハイブリッド2本鎖核酸及び環状RNAからなる群から選択される請求項21に記載の核酸結合分子。
【請求項23】
1つ又はそれ以上の核酸結合領域をさらに備えている請求項18に記載の核酸結合分子。
【請求項24】
前記核酸結合領域は、カチオン性物質を含む請求項23に記載の核酸結合分子。
【請求項25】
前記カチオン性物質は、ポリリジン、ポリアルギニン及びポリエチレンイミンからなる群から選択される請求項24に記載の核酸結合分子。
【請求項26】
前記ポリリジンは、ポリ−L−リジン及びポリ−D−リジンからなる群から選択される請求項25に記載の核酸結合分子。
【請求項27】
核酸と複合又は接合することにより、ナノ粒子を形成する請求項18に記載の核酸結合分子。
【請求項28】
核酸との複合又は接合により形成された複合体又は接合体は可溶性である請求項18に記載の核酸結合分子。
【請求項29】
組み換え型タンパク質の生成又は合成工程により請求項18に記載の核酸結合分子を生成する工程(i)と、
複合体を形成するために核酸と前記核酸結合分子とを混合する工程(ii)とを備えている前記核酸結合分子と複合している核酸の製造方法。
【請求項30】
前記複合体は、前記核酸結合分子と前記核酸とを1:1から4:1までの間の比率で含む請求項29に記載の製造方法。
【請求項31】
前記比率は、2:1から3:1までの間である請求項30に記載の製造方法。
【請求項32】
前記比率は、2:1である請求項31に記載の製造方法。
【請求項33】
前記核酸結合分子と複合している前記核酸は、ナノ粒子を形成する請求項29に記載の製造方法。
【請求項34】
前記核酸結合分子と複合している前記核酸は、可溶性である請求項29に記載の製造方法。
【請求項35】
スペーサ組み込み型PTDを含む核酸結合分子と複合又は接合している核酸を生成する工程(i)と、
細胞培養培地の中に、前記核酸結合分子と複合又は接合している前記核酸を加える工程(ii)と、
前記細胞培養培地を、培養する工程(iii)とを備え、
前記核酸は、細胞の中に導入される、細胞内への核酸の導入を促進する方法。
【請求項36】
前記核酸は、1本鎖RNA、2本鎖RNA、1本鎖DNA及び2本鎖DNAからなる群から選択される請求項35に記載の方法。
【請求項37】
細胞培養培地の中に請求項2に記載の複合体又は接合体を加える工程(i)と、
前記工程(i)において調製された前記細胞培養培地を培養して、標的遺伝子の発現を阻害するのに十分な量の前記複合体又は前記接合体を細胞内に導入させる工程(ii)と、
前記細胞を維持し、前記標的遺伝子に対応するmRNAを分解させる工程(iii)と、
前記細胞の表現型と、適当な対照細胞の表現型とを観察及び比較する工程(iv)とを備え、
前記細胞内の前記標的遺伝子の機能に関する情報を得る、細胞内の標的遺伝子の機能を判定する方法。
【請求項38】
細胞培養培地の中に請求項14に記載の複合体又は接合体を加える工程(i)と、
前記工程(i)において調製された前記細胞培養培地を培養して、標的遺伝子の発現を阻害するのに十分な量の前記複合体又は前記接合体を細胞内に導入させる工程(ii)と、
前記細胞を維持し、前記標的遺伝子に対応するmRNAを分解させる工程(iii)と、
前記細胞の表現型と、適当な対照細胞の表現型とを観察及び比較する工程(iv)とを備え、
前記細胞内の前記標的遺伝子の機能に関する情報を得る、細胞内の標的遺伝子の機能を判定する方法。
【請求項39】
細胞培養培地の中に請求項16に記載の複合体又は接合体を加える工程(i)と、
前記工程(i)において調製された前記細胞培養培地を培養して、標的遺伝子の発現を阻害するのに十分な量の前記複合体又は前記接合体を細胞内に導入させる工程(ii)と、
前記細胞を維持し、前記標的遺伝子に対応するmRNAを分解させる工程(iii)と、
前記細胞の表現型と、適当な対照細胞の表現型とを観察及び比較する工程(iv)とを備え、
前記細胞内の前記標的遺伝子の機能に関する情報を得る、細胞内の標的遺伝子の機能を判定する方法。
【請求項40】
核酸結合分子と複合又は接合している核酸を備え、
前記核酸は、リン酸骨格を含む1本鎖核酸であり、
前記核酸結合分子は、3個から10個までのPTDsを有する多量体PTDを含む複合体又は接合体。
【請求項41】
前記1本鎖核酸は、shRNA、アンチセンスRNA及びcRNAからなる群から選択される請求項40に記載の複合体又は接合体。
【請求項42】
前記多量体PTDは、ホモマーPTD及びヘテロマーPTDからなる群から選択される請求項40に記載の複合体又は接合体。
【請求項43】
前記多量体PTDは、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42及び分枝型ポリリジンからなる群から選択される配列を含む請求項42に記載の複合体又は接合体。
【請求項44】
核酸結合分子と複合又は接合している核酸を備え、
前記核酸は、2本鎖RNAであり、2本の鎖のうちの1つは標的遺伝子と実質的に相補的であり、
前記核酸結合分子は、2個から10個までのPTDsを有する多量体PTDを含む複合体又は接合体。
【請求項45】
前記2本鎖RNAは、siRNA、miRNA、操作型RNA前駆体及びshRNAからなる群から選択される請求項44に記載の複合体又は接合体。
【請求項46】
前記多量体PTDは、ホモマーPTD及びヘテロマーPTDからなる群から選択される請求項44に記載の複合体又は接合体。
【請求項47】
前記多量体PTDは、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42及び分枝型ポリリジンからなる群から選択される配列を含む請求項46に記載の複合体又は接合体。
【請求項48】
核酸結合分子と複合又は接合している核酸を備え、
前記核酸は、2本鎖核酸であり、
前記核酸結合分子は、5個から10個までのPTDsを有する多量体PTDを含む複合体又は接合体。
【請求項49】
前記核酸は、2本鎖DNAベクター、2本鎖RNA、ハイブリッド2本鎖核酸及び環状RNAからなる群から選択される請求項48に記載の複合体又は接合体。
【請求項50】
前記多量体PTDは、ホモマーPTD及びヘテロマーPTDからなる群から選択される請求項48に記載の複合体又は接合体。
【請求項51】
前記多量体PTDは、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42及び分枝型ポリリジンからなる群から選択される配列を含む請求項50に記載の複合体又は接合体。
【請求項52】
配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42及び分枝型ポリリジンからなる群から選択される2つ又はそれ以上のPTDsを含む多量体PTDを備えている核酸結合分子。
【請求項53】
1本鎖核酸と結合する請求項52に記載の核酸結合分子。
【請求項54】
2本鎖核酸と結合する請求項52に記載の核酸結合分子。
【請求項55】
細胞培養培地の中に請求項1に記載の複合体又は接合体を加える工程(i)と、
前記工程(i)において調製された前記細胞培養培地を培養して、標的遺伝子の発現を阻害するのに十分な量の前記複合体又は前記接合体を細胞内に導入させる工程(ii)と、
前記細胞を維持し、前記標的遺伝子に対応するmRNAを分解させる工程(iii)と、
前記細胞の表現型と、適当な対照細胞の表現型とを観察及び比較する工程(iv)とを備え、
前記細胞内の前記標的遺伝子の機能に関する情報を得る、細胞内の標的遺伝子の機能を判定する方法。
【請求項56】
細胞培養培地の中に請求項40に記載の複合体又は接合体を加える工程(i)と、
前記工程(i)において調製された前記細胞培養培地を培養して、標的遺伝子の発現を阻害するのに十分な量の前記複合体又は前記接合体を細胞内に導入させる工程(ii)と、
前記細胞を維持し、前記標的遺伝子に対応するmRNAを分解させる工程(iii)と、
前記細胞の表現型と、適当な対照細胞の表現型とを観察及び比較する工程(iv)とを備え、
前記細胞内の前記標的遺伝子の機能に関する情報を得る、細胞内の標的遺伝子の機能を判定する方法。
【請求項57】
細胞培養培地の中に請求項44に記載の複合体又は接合体を加える工程(i)と、
前記工程(i)において調製された前記細胞培養培地を培養して、標的遺伝子の発現を阻害するのに十分な量の前記複合体又は前記接合体を細胞内に導入させる工程(ii)と、
前記細胞を維持し、前記標的遺伝子に対応するmRNAを分解させる工程(iii)と、
前記細胞の表現型と、適当な対照細胞の表現型とを観察及び比較する工程(iv)とを備え、
前記細胞内の前記標的遺伝子の機能に関する情報を得る、細胞内の標的遺伝子の機能を判定する方法。
【請求項58】
細胞培養培地の中に請求項48に記載の複合体又は接合体を加える工程(i)と、
工程(i)において調製された前記細胞培養培地を培養して、標的遺伝子の発現を阻害するのに十分な量の前記複合体又は前記接合体を細胞内に導入させる工程(ii)と、
前記細胞を維持し、前記標的遺伝子に対応するmRNAを分解させる工程(iii)と、
前記細胞の表現型と、適当な対照細胞の表現型とを観察及び比較する工程(iv)とを備え、
前記細胞内の前記標的遺伝子の機能に関する情報を得る、細胞内の標的遺伝子の機能を判定する方法。
【請求項1】
核酸結合分子と複合又は接合している核酸の配列を備え、
前記核酸結合分子は、1つ又はそれ以上のタンパク質導入ドメイン(PTDs)と1つ又はそれ以上のスペーサとを含む1つ又はそれ以上のスペーサ組み込み型PTDsを含み、
前記スペーサは、前記核酸の配列と結合しない1つ又はそれ以上のアミノ酸の配列を含む複合体又は接合体。
【請求項2】
前記核酸は、リン酸骨格を含む1本鎖核酸である請求項1に記載の複合体又は接合体。
【請求項3】
前記スペーサ組み込み型PTDsは、2つ若しくはそれ以上、3つ若しくはそれ以上、4つ若しくはそれ以上又は5つ若しくはそれ以上のPTDsを含む請求項1に記載の複合体又は接合体。
【請求項4】
前記1本鎖核酸は、shRNA、アンチセンスRNA及びcDNAからなる群から選択される請求項1に記載の複合体又は接合体。
【請求項5】
前記スペーサ組み込み型PTDは、ホモマーPTD及びヘテロマーPTDからなる群から選択される請求項1に記載の複合体又は接合体。
【請求項6】
前記PTDは、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42及び分枝型ポリリジンからなる群から選択される配列を含む請求項1に記載の複合体又は接合体。
【請求項7】
前記PTDは、配列番号43、配列番号44、配列番号45、配列番号46、配列番号47、配列番号48、配列番号49、配列番号50、配列番号51、配列番号52、配列番号53、配列番号54、配列番号55、配列番号56、配列番号57、配列番号58、配列番号59、配列番号60からなる群から選択される配列を含む請求項1に記載の複合体又は接合体。
【請求項8】
前記核酸結合分子は、1つ又はそれ以上の核酸結合領域をさらに含む請求項1に記載の複合体又は接合体。
【請求項9】
前記核酸結合領域は、カチオン性物質を含む請求項8に記載の複合体又は接合体。
【請求項10】
前記カチオン性物質は、ポリリジン、ポリアルギニン及びポリエチレンイミンからなる群から選択される請求項9に記載の複合体又は接合体。
【請求項11】
前記ポリリジンは、ポリ−L−リジン及びポリ−D−リジンからなる群から選択される請求項10に記載の複合体又は接合体。
【請求項12】
前記核酸結合分子に複合又は接合している前記核酸の配列は、ナノ粒子を形成する請求項1に記載の複合体又は接合体。
【請求項13】
可溶性である請求項1に記載の複合体又は接合体。
【請求項14】
前記核酸は、2本鎖RNAであり、2本の鎖のうちの1つは実質的に標的遺伝子と相補的である請求項1に記載の複合体又は接合体。
【請求項15】
前記2本鎖RNAは、siRNA、miRNA、操作型RNA前駆体及びshRNAからなる群から選択される請求項14に記載の複合体又は接合体。
【請求項16】
前記核酸は、2本鎖核酸である請求項1に記載の複合体又は接合体。
【請求項17】
核酸結合分子と複合又は接合している核酸を備え、
前記核酸は、リン酸骨格を含む1本鎖又は2本鎖の核酸であり、
前記核酸結合分子は、1つ又はそれ以上のPTDsと1つ又はそれ以上のスペーサとを含む1つ又はそれ以上のスペーサ組み込み型PTDsを含み、
前記スペーサは、前記核酸と結合しない1つ又はそれ以上のアミノ酸の配列を含む組成物。
【請求項18】
1つ又はそれ以上のスペーサ組み込み型PTDsを備え、
前記PTDsは、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号43、配列番号44、配列番号45、配列番号46、配列番号47、配列番号48、配列番号49、配列番号50、配列番号51、配列番号52、配列番号53、配列番号54、配列番号55、配列番号56、配列番号57、配列番号58、配列番号59、配列番号60及び分枝型ポリリジンからなる群から選択される核酸結合分子。
【請求項19】
1本鎖核酸と結合する請求項18に記載の核酸結合分子。
【請求項20】
前記1本鎖核酸は、shRNA、アンチセンスRNA及びcRNAからなる群から選択される請求項19に記載の核酸結合分子。
【請求項21】
2本鎖核酸と結合する請求項18に記載の核酸結合分子。
【請求項22】
前記2本鎖核酸は、2本鎖DNAベクター、2本鎖RNA、ハイブリッド2本鎖核酸及び環状RNAからなる群から選択される請求項21に記載の核酸結合分子。
【請求項23】
1つ又はそれ以上の核酸結合領域をさらに備えている請求項18に記載の核酸結合分子。
【請求項24】
前記核酸結合領域は、カチオン性物質を含む請求項23に記載の核酸結合分子。
【請求項25】
前記カチオン性物質は、ポリリジン、ポリアルギニン及びポリエチレンイミンからなる群から選択される請求項24に記載の核酸結合分子。
【請求項26】
前記ポリリジンは、ポリ−L−リジン及びポリ−D−リジンからなる群から選択される請求項25に記載の核酸結合分子。
【請求項27】
核酸と複合又は接合することにより、ナノ粒子を形成する請求項18に記載の核酸結合分子。
【請求項28】
核酸との複合又は接合により形成された複合体又は接合体は可溶性である請求項18に記載の核酸結合分子。
【請求項29】
組み換え型タンパク質の生成又は合成工程により請求項18に記載の核酸結合分子を生成する工程(i)と、
複合体を形成するために核酸と前記核酸結合分子とを混合する工程(ii)とを備えている前記核酸結合分子と複合している核酸の製造方法。
【請求項30】
前記複合体は、前記核酸結合分子と前記核酸とを1:1から4:1までの間の比率で含む請求項29に記載の製造方法。
【請求項31】
前記比率は、2:1から3:1までの間である請求項30に記載の製造方法。
【請求項32】
前記比率は、2:1である請求項31に記載の製造方法。
【請求項33】
前記核酸結合分子と複合している前記核酸は、ナノ粒子を形成する請求項29に記載の製造方法。
【請求項34】
前記核酸結合分子と複合している前記核酸は、可溶性である請求項29に記載の製造方法。
【請求項35】
スペーサ組み込み型PTDを含む核酸結合分子と複合又は接合している核酸を生成する工程(i)と、
細胞培養培地の中に、前記核酸結合分子と複合又は接合している前記核酸を加える工程(ii)と、
前記細胞培養培地を、培養する工程(iii)とを備え、
前記核酸は、細胞の中に導入される、細胞内への核酸の導入を促進する方法。
【請求項36】
前記核酸は、1本鎖RNA、2本鎖RNA、1本鎖DNA及び2本鎖DNAからなる群から選択される請求項35に記載の方法。
【請求項37】
細胞培養培地の中に請求項2に記載の複合体又は接合体を加える工程(i)と、
前記工程(i)において調製された前記細胞培養培地を培養して、標的遺伝子の発現を阻害するのに十分な量の前記複合体又は前記接合体を細胞内に導入させる工程(ii)と、
前記細胞を維持し、前記標的遺伝子に対応するmRNAを分解させる工程(iii)と、
前記細胞の表現型と、適当な対照細胞の表現型とを観察及び比較する工程(iv)とを備え、
前記細胞内の前記標的遺伝子の機能に関する情報を得る、細胞内の標的遺伝子の機能を判定する方法。
【請求項38】
細胞培養培地の中に請求項14に記載の複合体又は接合体を加える工程(i)と、
前記工程(i)において調製された前記細胞培養培地を培養して、標的遺伝子の発現を阻害するのに十分な量の前記複合体又は前記接合体を細胞内に導入させる工程(ii)と、
前記細胞を維持し、前記標的遺伝子に対応するmRNAを分解させる工程(iii)と、
前記細胞の表現型と、適当な対照細胞の表現型とを観察及び比較する工程(iv)とを備え、
前記細胞内の前記標的遺伝子の機能に関する情報を得る、細胞内の標的遺伝子の機能を判定する方法。
【請求項39】
細胞培養培地の中に請求項16に記載の複合体又は接合体を加える工程(i)と、
前記工程(i)において調製された前記細胞培養培地を培養して、標的遺伝子の発現を阻害するのに十分な量の前記複合体又は前記接合体を細胞内に導入させる工程(ii)と、
前記細胞を維持し、前記標的遺伝子に対応するmRNAを分解させる工程(iii)と、
前記細胞の表現型と、適当な対照細胞の表現型とを観察及び比較する工程(iv)とを備え、
前記細胞内の前記標的遺伝子の機能に関する情報を得る、細胞内の標的遺伝子の機能を判定する方法。
【請求項40】
核酸結合分子と複合又は接合している核酸を備え、
前記核酸は、リン酸骨格を含む1本鎖核酸であり、
前記核酸結合分子は、3個から10個までのPTDsを有する多量体PTDを含む複合体又は接合体。
【請求項41】
前記1本鎖核酸は、shRNA、アンチセンスRNA及びcRNAからなる群から選択される請求項40に記載の複合体又は接合体。
【請求項42】
前記多量体PTDは、ホモマーPTD及びヘテロマーPTDからなる群から選択される請求項40に記載の複合体又は接合体。
【請求項43】
前記多量体PTDは、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42及び分枝型ポリリジンからなる群から選択される配列を含む請求項42に記載の複合体又は接合体。
【請求項44】
核酸結合分子と複合又は接合している核酸を備え、
前記核酸は、2本鎖RNAであり、2本の鎖のうちの1つは標的遺伝子と実質的に相補的であり、
前記核酸結合分子は、2個から10個までのPTDsを有する多量体PTDを含む複合体又は接合体。
【請求項45】
前記2本鎖RNAは、siRNA、miRNA、操作型RNA前駆体及びshRNAからなる群から選択される請求項44に記載の複合体又は接合体。
【請求項46】
前記多量体PTDは、ホモマーPTD及びヘテロマーPTDからなる群から選択される請求項44に記載の複合体又は接合体。
【請求項47】
前記多量体PTDは、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42及び分枝型ポリリジンからなる群から選択される配列を含む請求項46に記載の複合体又は接合体。
【請求項48】
核酸結合分子と複合又は接合している核酸を備え、
前記核酸は、2本鎖核酸であり、
前記核酸結合分子は、5個から10個までのPTDsを有する多量体PTDを含む複合体又は接合体。
【請求項49】
前記核酸は、2本鎖DNAベクター、2本鎖RNA、ハイブリッド2本鎖核酸及び環状RNAからなる群から選択される請求項48に記載の複合体又は接合体。
【請求項50】
前記多量体PTDは、ホモマーPTD及びヘテロマーPTDからなる群から選択される請求項48に記載の複合体又は接合体。
【請求項51】
前記多量体PTDは、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42及び分枝型ポリリジンからなる群から選択される配列を含む請求項50に記載の複合体又は接合体。
【請求項52】
配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42及び分枝型ポリリジンからなる群から選択される2つ又はそれ以上のPTDsを含む多量体PTDを備えている核酸結合分子。
【請求項53】
1本鎖核酸と結合する請求項52に記載の核酸結合分子。
【請求項54】
2本鎖核酸と結合する請求項52に記載の核酸結合分子。
【請求項55】
細胞培養培地の中に請求項1に記載の複合体又は接合体を加える工程(i)と、
前記工程(i)において調製された前記細胞培養培地を培養して、標的遺伝子の発現を阻害するのに十分な量の前記複合体又は前記接合体を細胞内に導入させる工程(ii)と、
前記細胞を維持し、前記標的遺伝子に対応するmRNAを分解させる工程(iii)と、
前記細胞の表現型と、適当な対照細胞の表現型とを観察及び比較する工程(iv)とを備え、
前記細胞内の前記標的遺伝子の機能に関する情報を得る、細胞内の標的遺伝子の機能を判定する方法。
【請求項56】
細胞培養培地の中に請求項40に記載の複合体又は接合体を加える工程(i)と、
前記工程(i)において調製された前記細胞培養培地を培養して、標的遺伝子の発現を阻害するのに十分な量の前記複合体又は前記接合体を細胞内に導入させる工程(ii)と、
前記細胞を維持し、前記標的遺伝子に対応するmRNAを分解させる工程(iii)と、
前記細胞の表現型と、適当な対照細胞の表現型とを観察及び比較する工程(iv)とを備え、
前記細胞内の前記標的遺伝子の機能に関する情報を得る、細胞内の標的遺伝子の機能を判定する方法。
【請求項57】
細胞培養培地の中に請求項44に記載の複合体又は接合体を加える工程(i)と、
前記工程(i)において調製された前記細胞培養培地を培養して、標的遺伝子の発現を阻害するのに十分な量の前記複合体又は前記接合体を細胞内に導入させる工程(ii)と、
前記細胞を維持し、前記標的遺伝子に対応するmRNAを分解させる工程(iii)と、
前記細胞の表現型と、適当な対照細胞の表現型とを観察及び比較する工程(iv)とを備え、
前記細胞内の前記標的遺伝子の機能に関する情報を得る、細胞内の標的遺伝子の機能を判定する方法。
【請求項58】
細胞培養培地の中に請求項48に記載の複合体又は接合体を加える工程(i)と、
工程(i)において調製された前記細胞培養培地を培養して、標的遺伝子の発現を阻害するのに十分な量の前記複合体又は前記接合体を細胞内に導入させる工程(ii)と、
前記細胞を維持し、前記標的遺伝子に対応するmRNAを分解させる工程(iii)と、
前記細胞の表現型と、適当な対照細胞の表現型とを観察及び比較する工程(iv)とを備え、
前記細胞内の前記標的遺伝子の機能に関する情報を得る、細胞内の標的遺伝子の機能を判定する方法。
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図2E】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図4】
【図5】
【図6】
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図2E】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公表番号】特表2011−504375(P2011−504375A)
【公表日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−535876(P2010−535876)
【出願日】平成20年11月26日(2008.11.26)
【国際出願番号】PCT/KR2008/006962
【国際公開番号】WO2009/069935
【国際公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【出願人】(509025588)フォーヒューマンテック カンパニー リミテッド (2)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年11月26日(2008.11.26)
【国際出願番号】PCT/KR2008/006962
【国際公開番号】WO2009/069935
【国際公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【出願人】(509025588)フォーヒューマンテック カンパニー リミテッド (2)
【Fターム(参考)】
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