説明

細胞内標的タンパクに結合する小分子の全プロテオーム定量

本発明は、細胞又は組織のプロテオーム中に含まれる標的タンパク等の被検体中に含まれる標的成分に対する小分子又は他の化合物の結合親和性の評価及び/又は定量化のための方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞又は組織のプロテオームに含まれる標的タンパク等の被検体内に含まれる標的成分に対する小分子又は他の化合物の結合親和性の評価及び/又は定量のための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現代の医薬品工業は、新薬開発工程における2つの根本的課題(すなわち、疾病干渉の適切なタンパク標的の同定、及び、特にこれらの標的に作用する高品質薬剤候補の同定)に直面している。これら2つの課題は薬剤設計を成功させるために最も重要である。
【0003】
低分子量化合物を用いた介入は、ヒト疾患の治療のための代表的な基本治療概念である。プロテインキナーゼスーパーファミリー酵素の種々のメンバーは、ヒト癌等の重篤な疾病の発病及び進行に関係する情報伝達プロセスにおける重要な役割により、広く、触媒現象の機能を乱す小分子の標的とされてきた。これらの薬剤開発努力は、遺伝子化学的アプローチによる細胞信号の分析用の多くのツールを提供してきた。古典的な遺伝子不活性化とは対照的に、小分子阻害は、迅速に、調整可能に、ほとんどの場合可逆的な方法で選択的にプロテインキナーゼの触媒能力を調節することができる。さらに、プロテインキナーゼによって形成された多くのタンパク間相互作用は小分子拮抗薬の存在下で保持されており、したがって、それらの触媒現象の機能から分析することができる。
【0004】
これらの長所に疑う余地はないが、キナーゼ阻害用に開発された小分子拮抗薬は、様々なプロテインキナーゼ又は他の酵素ファミリーのメンバーの触媒ドメインにもみられる共通の構造的特徴により、無傷の細胞のいくつかの標的を不活性化する能力がある。キナーゼ阻害剤の選択性は、多数の組み換えタンパクキナーゼについてインビトロ活性分析又は結合分析を並行して行うことによって評価することができる(Fabian,M.A. et al.,Nat.Biotechnol.23,329−36 (2005);Davies,S.P.et al.,Biochem.J.351 ,95−105 (2000))。このアプローチは、疑う余地なく薬選択性に関する有用な量的データを提供するが、主として2つ限界がある。第1に、プロテインキナーゼ補体(=カイノーム(kinome))の大部分に加えて、他の酵素クラスからの潜在的な標的は、過小評価されるか、又は、これらのスクリーニングフォーマットとともに消失する。第2に、もしかするとさらに重要なことには、選択性パネルに含まれている組み換えキナーゼ回収物は、例えば、キナーゼ阻害剤の生物学的効果を調査する細胞系で発現される潜在的な標的の細胞プロフィールと一致しない。
【0005】
これらの欠点はプロテオミクス手法によりに対処することができ、該手法は、例えば質量分析法(MS)によるタンパク同定と共に、標的タンパクの選択作用浄化のために、固定化された化合物(例えばキナーゼ阻害剤)を用いる。この直接的な技術は、細胞抽出物中の様々なキナーゼ阻害剤の標的成分を同定するためにうまく用いられてきた。しかしながら、MSのデータから細胞内結合相手に対する阻害剤の親和性を推測することができなかったという意味において、標的成分の同定は限定的であった。さらに量的情報を得るために、観察される細胞内薬剤作用に関連する可能性のある強力に阻害される阻害剤標的を同定する第2のインビトロ活性分析を用いることが必要であった。しかしながら、必要とされる組み換えタンパクのすべてが入手可能ではないこと、又は、インビトロ活性分析を確立することが難しいという事実により、小分子薬剤の全対象標的スペクトルを評価することは実際上困難である。
【0006】
小分子干渉の標的とされる細胞内タンパクについての総合的な知識は、分子レベルの化学生物学的相互作用を説明するための必要条件である(Daub,H.et al.,Assay Drug Dev.Technol.2,215−24(2004);Fabian,M.A. et al.,Nat.Biotechnol.23,329−36 (2005))。質量分析法(MS)と共に親和性精製技術を用いることによって、固定化された小分子阻害剤が結合するタンパクを同定することに成功してきているが、これらの従来のプロテオミクス手法は、細胞内標的親和性の情報を提供するものではない(Godl,K.et al.,PNAS U.S.A.,100,15434−9(2003);Brehmer, D. et al., Cancer Res.65,379−82(2005); Daub,H.,Biochim.Biophys.Acta 1754,183−90(2005))。
【0007】
したがって、化合物の対象成分の相互作用(例えば、阻害対象タンパクの相互作用)の直接的質的及び/又は量的評価、又は、測定を可能にするプロテオミクス手法が必要である。高生産性の用途に応用できる前述の方法も必要性である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記課題は本発明に係る方法によって解決される。これらの方法により、第2のインビトロ結合又は活性分析を用いる必要なく、阻害剤等の対象化合物の細胞内結合相手に対する結合親和性を直ちに質的に又は定量的に決定することができる。本発明の方法は、固定化化合物の多数の細胞内対象をその親和性によって順位付けることができ、さらに、さらなる固定化をせずに個別の阻害剤について競合的結合特性を評価することができる。本明細書においてキナーゼ阻害剤の100個を超える細胞内標的を用いて例示的に証明する。新しい方法は広く適用可能であり、様々な生物系において、薬理的及び薬物動態学的相互作用、及び/又は、任意の種類の小分子又は他の対象化合物の機能を簡易に迅速に特性評価を行うことができる。
【0009】
したがって、1つの態様において、本発明は、化合物に対する被検体の標的成分の結合を評価する方法であって、(a)前記化合物が表面に固定化されている固体支持体に前記被検体の第1分割量を接触させるステップ;(b)ステップ(a)で用いる種類の固体支持体に前記被検体の第2分割量を接触させ、続いて、前記固体支持体から被検体の第2分割量を分離するステップ;(c)ステップ(a)で用いる種類の固体支持体にステップ(b)で分離した被検体を再接触させるステップ;(d)ステップ(a)及び(c)において前記固体支持体に結合した標的成分量を決定するステップと;(e)ステップ(a)において固体支持体に結合した標的成分量とステップ(c)において固体支持体に結合した標的成分量とを比較するステップを具える方法を提供する。本明細書においてこの態様の方法をIVA2(インビトロアソシエイション:設定2)の方法と称する。
【0010】
厳密に義務的ではないが、上記方法は、ステップ(a)で用いる種類の固体支持体に前記被検体の第3分割量を接触させるステップであって、該固体支持体は、前記化合物が表面に固定化されていないステップと、前記固体支持体に結合している標的成分量を決定するステップとをさらに具えていてもよい。このステップを、固定化された対象化合物に対する特異的結合に対比するものとして、固体支持体に対する被検体の標的成分のおそらく非特異的である結合が決定されることによるネガティブコントロールとして機能させてもよい。
【0011】
従って、上記方法のステップ(e)は、ステップ(a)及び(c)において固体支持体に結合した標的成分量と、前記化合物が表面に固定化されていない前記固体支持体に結合した標的成分量とを比較するステップをさらに具えていてもよい。あるいは、ステップ(e)は、ステップ(a)及び(c)において固体支持体に結合した標的成分量と、標的成分が固体支持体に非特異的に結合した量であって、該量は、事前に決定されるか若しくは独立試験において決定され、又は、既に存在するデータ(例えば、文献から入手可能なデータ又は未取得のデータ)からの計算又は外挿法等の他の手段によって決定される量と、を比較するステップを具えていてもよい。
【0012】
1つの好ましい実施形態において、接触ステップ(a)及び(b)、並びに、好ましくは上記方法の第3分割量に関する接触ステップを同時に行う。あるいは、接触ステップ(a)及び再接触ステップ(c)、並びに、好ましくは上記方法の第3分割量に関する接触ステップを同時に行なってもよい。
【0013】
さらなる関連態様において、本発明は、化合物に対する被検体の標的成分の結合を評価するための方法であって、(a)前記化合物が表面に固定化されている固体支持体に前記被検体の第1分割量を接触させるステップ;(b)ステップ(a)で用いる種類の固体支持体であって、表面にステップ(a)よりも高い濃度で前記化合物が固定化されている固体支持体に前記被検体の第2分割量を接触させるステップ;(c)ステップ(a)で用いる種類の固体支持体であって、表面にステップ(b)よりも高い濃度で前記化合物が固定化されている固体支持体に前記被検体の第3分割量を接触させるステップ;(d)ステップ(a)、(b)及び(c)において前記固体支持体に結合した標的成分量を決定するステップ;及び、(e)ステップ(a)、(b)及び(c)において固体支持体に結合した標的成分量を比較するステップを具える方法を提供する。本明細書においてこの態様による方法をIVA1(インビトロアソシエイション:設定1)による方法と称する。
【0014】
任意のステップ(c)が存在していなくても、上記方法により結合親和性についての有用な質的及び量的情報が提供されるので、上記方法のステップ(c)が厳密に義務的ではないことは理解されるであろう。しかしながら、本発明の好ましい実施形態において、IVA1による方法は上述のステップ(c)を含む。
【0015】
また、本発明のこの態様に関して、これもまた厳密に義務的ではないが、さらにネガティブコントロールを含んでいることが有用である場合がある。したがって、上記方法は、前記化合物が表面に固定化されていない、ステップ(a)の種類の固体支持体に前記被検体の第4分割量を接触させるステップと、前記固体支持体に結合した標的成分量を決定するステップとを具えていてもよい。これは、固定化された対象化合物に対する特異的結合に対比するものとして、固体支持体に対する被検体の標的成分のおそらく非特異的である結合を決定することができる。
【0016】
従って、IVA1による方法のステップ(e)は、ステップ(a)、(b)及び(c)において固体支持体に結合した標的化合物の量と、化合物が表面に固定化されていない固体支持体に結合した標的成分量とを比較するステップをさらに具えていてもよい。あるいは、ステップ(e)は、ステップ(a)、(b)及び(c)において固体支持体に結合した標的成分量と、標的成分が固体支持体に非特異的に結合した量であって、該量は、事前に決定されるか若しくは独立試験において決定され、又は、既に存在するデータ(例えば、文献から入手可能なデータ又は未取得のデータ)からの計算又は外挿法等の他の手段によって決定される量と、を比較するステップを具えていてもよい。
【0017】
この態様の好ましい実施形態において、接触ステップ(a)、(b)及び(c)、並びに、好ましくは上記方法の第4分割量に関する接触ステップを同時に行なう。あるいは、接触ステップ(a)、(b)及び(c)、並びに、好ましくはまた上記方法の第4分割量に関する接触ステップを連続的に行なってもよい。
【0018】
説明されているか又は特許請求の範囲に記載されているIVA1又はIVA2による本発明の方法を組み合わせてもよいことは理解されるであろう。具体的には、固定化された化合物に対する被検体の標的成分の結合をIVA1による方法でまず決定又は評価してもよく、続いて、IVA2による方法でさらに評価してもよい。
【0019】
またさらなる関連態様において、本発明は、競合化合物に対する被検体の標的成分の結合を評価する方法であって、(a)規定の結合親和性で標的成分に結合する化合物が固定化されている固体支持体に被検体の第1分割量を接触させるステップであって、前記接触が前記競合化合物の存在下で行われるステップ;(b)ステップ(a)で用いる種類の固体支持体に前記被検体の第2分割量を接触させるステップであって、前記競合化合物の濃度がステップ(a)よりも高いステップ;(c)ステップ(a)で用いる種類の固体支持体に前記被検体の第3分割量を接触させるステップであって、前記競合化合物の濃度がステップ(b)よりも高いステップ;(d)ステップ(a)、(b)及び(c)で前記固体支持体に結合した標的成分量を決定するステップ;及び、(e)ステップ(a)、(b)及び(c)において前記固体支持体に結合した標的成分量を比較するステップを具える方法を提供する。本明細書においてこの態様による方法をIVA(インビトロアソシエイション)競合方法と称する。
【0020】
任意のステップ(c)が存在しなくても、上記方法により結合親和性についての有用な質的又は量的情報が提供されるので、上記方法のステップ(c)が厳密に義務的ではないことは理解されるであろう。しかしながら、本発明の好ましい実施形態において、IVA競合方法は上述のステップ(c)を含む。
【0021】
また、本発明のこの態様によれば、予め決定した結合親和性で固定化された化合物が標的成分に結合してもよいことが理解されるであろう。好ましい実施形態において、IVA1及び/又はIVA2による本発明の方法のいずれかによって結合親和性(例えばK値)を決定するか又は決定しておく。
【0022】
あるいは、固定化された化合物が標的成分に結合するときの規定の結合親和性は、事前に決定されるか若しくは独立試験において決定され、又は、既に存在するデータ(例えば、文献から入手可能なデータ又は未取得のデータ)からの計算又は外挿法等の他の手段によって決定されてもよい。
【0023】
本発明のIVA競合方法は、ステップ(a)で用いる種類の固体支持体に前記被検体の第4分割量を接触させるステップであって、前記固体支持体の表面には規定の結合親和性を有する化合物が固定化されているが、競合化合物が存在しない状態で接触を行なうステップをさらに具えていてもよい。この場合、上記方法のステップ(e)は、好ましくは、ステップ(a)、(b)及び(c)において前記固体支持体に結合した標的成分量と、競合化合物の非存在下で前記固体支持体に結合した標的成分量と比較するステップをさらに具える。
【0024】
好ましくは、ここに記載されている本発明の方法のいずれによっても被検体中の標的成分が検出可能標識で標識される。検出可能標識は各分割量中において同一であってもよいが、各分割量において検出可能標識が異なること、すなわち、第1分割量の標的成分が第2分割量等の標的成分と異なる標識を有することが好ましい。これは、異なる種類の検出可能標識を用いて分割量を直接的に標識すること、又は、被検体が組織、組織インキュベーション、細胞、細胞インキュベーション又は体液に由来する場合には、異なる検出可能標識を用いたインビトロ又はインキュベーション中の代謝標識によって容易に達成されうる。
【0025】
異なる検出可能標識を用いて本発明の方法で用いられるそれぞれの分割量中の標的化合物を異なって標識する場合、好ましくは、1サンプル内に標的成分を結合させて、該サンプル中の異なって標識されている標的成分量を検出することにより、本発明の方法による任意のステップ(d)の決定を行う。この点において、前記サンプルにそれらを結合させる前に固体支持体から標的成分を溶出させることが有利である可能性がある。
【0026】
化合物に対する標的成分の結合親和性を質的又は量的に決定又は算出するために、本発明の方法の任意のステップ(e)による比較を用いてもよいことが理解されるであろう。
【0027】
また、本発明による方法によって、固定化された化合物及び/又は競合化合物に対する、被検体内にみられる多数の標的成分の結合を同時に評価及び決定してもよいことが理解されるであろう。
【0028】
本発明による方法が高生産性スクリーニング手法に適用するのに特に適していることが更に理解されるであろう。したがって、本発明の別の実施形態において、高生産性様式における全体又は少なくとも一部において、明細書及び/又は特許請求の範囲に記載されている方法を行う。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1a】図1は、本発明による好ましい方法の略図である。図1aは、IVA1(インビトロアソシエイション:設定1)−固定化された小分子阻害剤に対する細胞内標的タンパクの量依存的結合の定量を示す。
【図1b】図1は、本発明による好ましい方法の略図である。図1bは、IVA2(インビトロアソシエイション:設定2)−最高リガンド濃度における並列的な2段階の連続的親和性精製、及び、固定化された阻害剤を有しないコントロールビーズを用いたさらなるインキュベーションによって解決されるIVA1の欠点を示す。
【図1c】図1は、本発明による好ましい方法の略図である。図1cは、固定化されたリガンドが分析された生物抽出物中の標的タンパクに対してモル過剰で存在することを確認するコントロール試験を示す。
【図2a】図2は、定量化学的MS手法によって同定される阻害剤V16742の特異的細胞内標的を示す図である。図2aは、エポキシ活性化セファロースに1級アミノ基を経由して結合している化合物V16742の化学構造を表す。
【図2b】図2は、定量化学的MS手法によって同定される阻害剤V16742の特異的細胞内標的を示す図である。図2bは、量的MSによって同定されるV16742の細胞内標的をKd値基準で最高から最低までの親和性標的で整列した。各クラス(高い親和性、中程度の親和性、低い親和性)に由来する1つの標的のためのIVA1及びIVA2設定に対応する代表的なLTQ−Orbitrap FT−MSスキャンを示す。定量に用いたモノアイソトピックピークを図1に示されている構想に従って異なる矢印で示す。
【図2c】図2は、定量化学的MS手法によって同定される阻害剤V16742の特異的細胞内標的を示す図である。図2cは、質量分析法による結果の確認を表す。コントロールマトリックス又は図1に表されているIVA1(量依存的結合)若しくはIVA2設定(IVAの第2丸の中の濃縮)によるV16742マトリックスのいずれかを用いたHeLa細胞からの全溶解物のインビトロ会合。JNK2(高親和性標的)、RIPK2(中程度親和性標的)、ERK2(低親和性標的)、及び、ROCK2(IVA2において著しく濃縮されていない極低親和性標的)に対する特異抗体を用いてマトリックスから溶出した結合タンパク質を免疫ブロットした。
【図2d】図2は、定量化学的MS手法によって同定される阻害剤V16742の特異的細胞内標的を示す図である。図2dは、阻害剤V16742の特異性プロフィールを示す。キナーゼ系統樹はCell Signalling Technology社の著書である。TK、非レセプターチロシンキナーゼ;RTK、レセプターチロシンキナーゼ;TKL、チロシンキナーゼ様キナーゼ;CK、カゼインキナーゼファミリー;PKA、プロテインキナーゼAファミリー;CAMK、カルシウム/カルモジュリン依存性キナーゼ;CDK、サイクリン依存性キナーゼ;MAPK、マイトジェン活性化タンパキナーゼ;CLK、CDK様キナーゼ。図に示されている異なる大きさの円は、高い結合親和性、中程度の結合親和性、又は、低い結合親和性を有するV16742のキナーゼ標的を表す。
【図3a】図3は、固定化された阻害剤(V16742)に結合への競合に関しての対象阻害剤(SB203580)についてのIC50決定を表す図である。図3aは、選択性分析のための競合的結合手法の略図:SB203580標的の固定化された小分子阻害剤V16742への結合の量依存的阻害の定量的MSのための試験計画を示す。
【図3b】図3は、固定化された阻害剤(V16742)に結合への競合に関しての対象阻害剤(SB203580)についてのIC50決定を表す図である。図3bは、最上位のSB203580標的タンパク(RIPK2)に由来する代表的なペプチドのMSのスペクトルを示す。これは、V16742樹脂の中程度の親和性により保持されている。
【図3c】図3は、固定化された阻害剤(V16742)に結合への競合に関しての対象阻害剤(SB203580)についてのIC50決定を表す図である。図3cは、競合選択性プロフィールの免疫ブロット分析を示す。上昇させた濃度のSB203580の存在下で固定化されたV16742ビーズとともにHela細胞溶解物のIVA反応を行なった。マトリックスから溶出した結合タンパク質をSB203580標的に対する指標抗体(indicated antibody)を用いて免疫ブロットし、質量分析の結果を確認した。
【図4】図4は、量的化学プロテオミクスによる標的特有の解離定数の評価を示す図である。(a)は、通常の又は安定同位体で標識されたアルギニン及びリジンを用いてHeLa細胞をSILACエンコードしたものを表す。細胞溶解物を調製し、該細胞溶解物を、コントロール樹脂(C)を用いてインキュベートするか、又は、AX14596を含むビーズ(AX)を用いた1又は2のインビトロ会合に供した。3つの溶出画分を溜め、定量LC−MSによって分析することによって特定の結合剤を同定し、また、結合していない標的画分(=r)、及び、結合している標的画分(1−r)を決定した。モル過剰の捕獲分子の存在下で結合平衡に達したとき、AX14596の濃度とともに増加するそれらの比は、固定化されたAX14596についての標的に特有な解離定数(=Ki)に等しく、また、キレート剤の存在によりMg2+−ATP複合体が破壊された。(b)は、異なる濃度のゲフィチニブの存在下でAX14596ビーズを用いてSILACエンコードされた細胞内溶解物をインキュベートしたものを表す。結合タンパク質画分を示されているように組み合わせ、さらに、並列的LC−MS試験で定量的に評価した。AX14596樹脂からのゲフィチニブ依存性タンパク脱離についてのIC50値を決定し、続いて、ゲフィチニブについて標的に特有な解離定数を算出した。
【図5a】図5は、量的阻害剤プロファイリングのための細胞のキナーゼパネルを示す図である。(a)は、図4に略説されている方策によって、固定化されている非選択的キナーゼ阻害剤VI16742について、細胞内標的成分の結合親和性を決定したものを表す。HeLa細胞に由来するVI16742と相互作用するプロテインキナーゼをヒトカイノームの系統樹において示す。赤い円の大きさはそれぞれの結合親和性を示している。いくつかのVI16742キナーゼ標的成分について、代表的なペプチドのMSスペクトル及び決定したKi値を示す。Cell Signaling Technology社(www.cellsignal.com)から許可を得てキナーゼ系統樹を編集した。
【図5b】図5は、量的阻害剤プロファイリングのための細胞のキナーゼパネルを表す図である。(b)は、VI16742樹脂に結合するプロテインキナーゼのSB203580による濃度依存的阻害を表す。SB203580の細胞内標的について、競合試験で決定したIC50値、及び、得られたKi値を示す。
【図6−1】図6は、再現分析用の定量的目標結合データの相関を表す図である。(a)は、実験概要を示す。通常のアルギニン、リジン(Arg0/Lys0)又は安定同位体で置換された変異体(Arg6/Lys4、Arg10/Lys8)を用いて細胞溶解前にHeLa S3細胞をSILACエンコードした。通常の標識構想において、Arg0/Lys0でエンコードされたタンパク抽出物を阻害剤ビーズ(I)を用いて1つのインキュベーションステップに供し、その一方で、Arg10/Lys8で標識した溶解物について2回の連続的インビトロ会合を行った。Arg0/Lys0及びArg10/Lys8でエンコードされた溶解物を逆の標識構想を用いたクロスオーバー試験に切り替えた。クロスオーバー試験により、特定の標的結合の再現性が確認され、偽陽性の標的同定を排除する有効な手段が提供された。後者は、細胞に由来しない、したがって、Arg0及び/又はLys0で標識されたペプチド種を通じてしか同定されない少量の汚染タンパク種の存在のせいであり得る。非常に高い親和性の特異的な標的が「通常の」標識計画において同様のSILACパターンを生じさせる結果となるので、このことは重要である。非特異的なバックグラウンド結合を説明するためにコントロール樹脂(C)を用いてArg6/Lys4で標識した細胞溶解物をインキュベートした。インビトロ会合ステップ後に、樹脂結合タンパクを溶出させ、定量LC−MSによって分析した。
【図6−2】図6は、再現分析用の定量的目標結合データの相関を表す図である。(b)は、通常の標識構想において、ペプチドイオン強度が、どのように、キナーゼ阻害剤樹脂を用いた親和性精製によって保持される標的タンパクのパーセンテージを特定するかを示す図である。例えば、固定化された阻害剤によって90%が保持され、上澄み画分で10%が結合しないままであり、その後、第2インビトロ会合ステップにおいて上澄みが同量の阻害剤に供されたとき、第1目標集団の9%(90%の10%)が親和性樹脂に結合する。得られる標的比r=0.1は、SILACによって可能になる標的由来ペプチドの相対存在量の定量化により決定され、標的のいずれの画分が親和性樹脂により保持されていないかを示す。従って、1−r=0.9は、阻害剤ビーズに結合する標的画分のための単位を表わす。(c、d)は、逆標識構想(x軸)及び通常標識構想(y軸)に従って行ったSILAC試験について、固定化されたAX14596(a)又はVI16742(b)ビーズへの第1次の結合で保持される標的タンパク量と、第2次の結合で保持される標的タンパク量との比を比較した図である。点線は、反復試験間の最大の相関関係を示す。
【図7】図7は、時間経過に伴う標的タンパク結合の分析を示す図である。(a)は、この研究の全体を通じて行ったインキュベーションの2.5時間以内に標的結合反応が平衡に達していたことを確認するために、異なるようにSILACエンコードされた溶解物を固定化された阻害剤を含むビーズの存在下で5時間又は2.5時間のインビトロ会合に供したことを表す。溶離画分を組み合わせて定量LC−MSによって分析した。(b、c)は、樹脂結合標的の5時間後と2.5時間後との比を決定し、その比を、固定化されたAX14596(b)又はVI16742(c)についての標的解離定数のlog10変換値に対してプロットした図である。大部分のプロットされた値は、比が1となるようにx軸と交差する垂線に接近しており、AX14596(b)又はVI16742(c)樹脂についての平衡結合に近い条件を示している。
【図8】図8は、固定化された阻害剤の濃度が細胞内標的タンパクに対してモル過剰であるか否かを決定するコントロール試験を表す図である。(a)は、3mg又は1mgの細胞内タンパクを同じインキュベーション体積で阻害剤親和性樹脂に供するSILAC試験を行なったことを示す。2つの並行的インキュベーション反応に由来する溶出液を溜め、定量LC−MSによって分析した。(b、c)は、1mgの細胞抽出液から樹脂に結合した標的タンパクに対する3mgの細胞抽出液から樹脂に結合した標的タンパクの比を決定し、固定化されたAX14596(b)又はVI16742(c)について標的解離定数のlog10変換値に対照させてプロットした図である。タンパク比が3に近かったことは、固定化されたキナーゼ阻害剤の有効濃度が結合分析における限定要因でないことを示した。
【図9】図9は、競合試験の反復分析における標的結合データの相関を表す図である。(a)は、阻害剤ビーズ及び様々な濃度の「遊離」キナーゼ阻害剤を含む競合アッセイを反復分析で行ったものである。この分析においては、阻害剤親和性ビーズの添加の30分前(試験1)又は30分後(試験2)に遊離した阻害剤を添加した。標的タンパク溶出及び定量LC−MSの2.5時間前に第2インキュベーションステップを行った。(b、c)は、試験1及び試験2の競合データに別々に基づいて、遊離した阻害剤標的成分についてIC50値を決定したことを示す。これらのIC50値の比をlogで変換し、ゲフィチニブ(b,AX14596樹脂に対して試験した)又はSB203580(c,VI16742樹脂に対して試験した)について算出した標的親和性(K値)のlog10変換比に対してプロットした。log変換されたIC50比が0に近かったことから、試験1及び試験2の定常段階と可溶段階とにおいて標的成分分散が同様であることが明らかであった。従って、競合アッセイの再現性を証明することに加えて、標的成分の可逆性、すなわち、化合物(阻害剤)相互作用が確認され、競合アッセイにおいて結合平衡に達したことが示された。
【図10】図10は、VI16742の化学構造及び樹脂結合タンパクの遺伝子オントロジー(GO)分析を表す図である。(a)は、VI16742の共有結合的固定化のための官能基を円で示した図である。(b)は、VI16742親和性ビーズによって保持されたすべての定量されたタンパクについての著しく過剰出現したGO分子機能用語(P<0.001)、及び、特異的阻害剤標的成分で特徴付けられるタンパクの部分集合を示す図である。プロテインキナーゼ及び脂質キナーゼ活性等のGO用語の過剰出現は、すべての阻害剤樹脂結合タンパクと比較して特定の標的画分において顕著であった。
【図11】図11は、細胞内ゲフィチニブ及びSB203580標的について化学プロテオミクス(Ki,cp)により決定されたKi値をlog10変換し、組み換えタンパクキナーゼ(Ki,ka)(表6)を用いたインビトロ阻害分析からのゲフィチニブ(暗灰色の点)及びSB203580(明灰色の点)についてのlog10変換されたIC50値に対してプロットした図である。。マイクロモル以下のATP濃度を用いたことにより、酵素分析によるIC50値は、実際のKi値の近い値を示した。これらの結果は、以前に公表された化学プロテオミクス手法(データ示されず)(Bantscheff, M. et al. Quantitative chemical proteomics reveals mechanisms of action of clinical ABL kinase inhibitors. Nat Biotechnol 25, 1035−1044 (2007))について報告されたデータと比較して、化学プロテオミクス分析と酵素活性分析とのさらに良い相関関係を示している。
【図12】図12は、ダサチニブ及び対応する固定化ダサチニブ親和性樹脂の構造を示す図である。
【図13】図13は、溶液中の遊離ダサチニブについての標的親和性を示す図である。溶液中の遊離ダサチニブについての標的親和性を決定した。通常及び2つの異なる形態の安定同位体で標識されたアミノ酸(SILAC)の存在下でK562細胞をインキュベーションした。異なる標識をした細胞溶解物を、共有結合で固定化された様々な濃度のダサチニブを有するダサチニブ親和性ビーズを用いて(左側)、また、高濃度遊離ダサチニブの存在下で最高リガンド濃度のダサチニブ親和性ビーズを用いて(右側)インキュベーションした。固定化されたダサチニブに結合したタンパクを溶出させ、定量LC−MS/MSによって分析した。様々なサンプルについて決定した相対的なタンパク比からチェン−プルソフ方程式を用いて遊離ダサチニブ(Kd、free dasatinib)についてK値の計算を行うことができた。BC50は、標的タンパク結合の50%を許容する固定化されたダサチニブ濃度を示す。CC50は、固定化されたダサチニブに結合する標的タンパクの50%を阻害する遊離ダサチニブ濃度を示す。「Cimmob。 dasatinib」という言葉は、競合試験においてCC50を決定するために用いた固定化されたダサチニブ濃度を表す。
【図14】図14は、ダサチニブ標的タンパクの表はK562細胞抽出液及びそれらの対応するKd値から決定したことを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
「被検体」という用語は、ここで用いられているように、プロテオーム、異なるプロテオームの混合物、細胞溶出物若しくは細胞抽出物、組織溶出物若しくは組織抽出物、細胞インキュベーション上澄み、組織インキュベーション上澄み、又は、乳汁、分泌液又はリンパ液等の体液であってもよい。
【0031】
「プロテオーム」という用語は、ここで用いられているように、細胞、組織又は器官の特定のタンパク組成物を指す。含まれている個々の細胞に依存して、細胞又は組織のインキュベーション液は、理論上、そこに含まれている細胞があるのと同じくらい多数のプロテオームを含みうる。便宜上、1つの細胞インキュベーション又は1つの組織のプロテオームを1つのプロテオームを表すものとみなす。1種の器官のプロテオームは、細胞の状態及び遺伝的背景に依存して異なる場合がある。
【0032】
本発明の目的のために被検体として様々なプロテオームを用いることができる。そのようなプロテオームは、単一細胞に由来するか又は細胞の均質集団から若しくは細胞の混合物から作られる細胞インキュベーション液に由来してもよい。また、それらは、組織、器官又は生命体に由来してもよい。さらに、前記単一細胞、細胞のインキュベーション液若しくは混合物、組織、器官又は生命体を、熱、ストレス、飢餓、薬剤、放射能、化学薬品、毒素、ウイルス感染、抗生物質、及び、老化等の条件に供してもよい。これらの条件は、本発明の方法において被検体としても用いることができ、また、そこに含まれる標的成分の規定の対象化合物に対する結合に関して互いに比較することができるプロテオームの様々「セット」をもたらす。従って、これらのプロテオームは、インビボの状況に似ている状況を可能な限り近く反映する。
【0033】
本発明において被検体として用いるプロテオームは、細菌細胞、病原性微生物、真菌細胞、酵母菌、植物細胞、哺乳動物細胞、魚細胞、線虫細胞、昆虫細胞等の原核生物又は真核細胞、また、特に、胚幹細胞又は成体幹細胞(例えば、非ヒト胚幹細胞又は成体幹細胞)等の幹細胞に由来してもよい。さらに、本発明の方法を、結合組織、内皮組織、脳、硬骨、肝臓、心臓、骨格筋、前立腺、結腸、腎臓、分泌腺、リンパ節、膵臓、根、葉及び花等の組織又は器官に存在するか又は由来する様々なプロテオームに適用することができる。最後に、適切なプロテオームは、非ヒト生命体に存在するものであるか、又は、大腸菌、キイロショウジョウバエ、線虫、ゼブラフィッシュ、ラット、ハムスター、マウス、ヤギ、ヒツジ、サル、ヒト及びクラゲ等の生命体、若しくは、コウベイ、ポテト、シロイヌナズナ、コムギ、オートムギ及びタバコ等の植物生命体に由来するものであってもよい。
【0034】
ここで用いられているように、「標的成分」は、相互作用(例えば対象化合物への結合)の能力がある被検体内の任意の構成要素であってもよい。従って、標的成分は、例えば、オリゴ糖若しくは多糖、核酸、プロテオグリカン、ペプチド又はタンパク(糖タンパクを含む)であってもよい。好ましい実施形態において、本発明における被検体の標的成分はタンパクである。上記タンパクは、好ましくはキナーゼであり、さらに好ましくはプロテインキナーゼである。同程度に好ましい実施形態において、標的成分は脂質キナーゼである。
【0035】
本発明において、固体支持体の表面に固定化される化合物又は競合化合物は、酵素、ポリペプチド、ペプチド、抗体及び断片、オリゴ糖若しくは多糖、プロテオグリカン類、化学物質、小分子、薬剤、代謝産物又はプロドラッグから選択される任意の対象化合物であってもよい。前記化合物又は前記競合化合物は、被検体中の標的成分の阻害剤であることが好ましい。
【0036】
そのような化合物又は競合化合物の好適な例は、合成化合物及び/又は天然に存在する化合物、小分子、ペプチド、タンパク、抗体などである。
【0037】
本発明に従って化合物と競合化合物とが同一であってもよく、又は、互いに異なっていてもよいことが理解できるだろう。
【0038】
用語「小分子」との用語は、ここに用いられているように、5000Da未満の分子量(好ましくは2000Da未満、さらに好ましくは1000Da未満、最も好ましくは500Da未満)を示す分子を指す。そのような化合物はさらなる最適化に適する「リード」になりえる。
【0039】
例えば、薬剤、代謝産物、プロドラッグ、潜在的薬剤、潜在的代謝産物、潜在的プロドラッグ等の合成の及び/又は天然に存在する「小分子」化合物である化合物又は競合化合物は、本明細書及び特許請求の範囲に記載されている方法において好適に使用される。前記化合物又は前記競合化合物は、合成化合物又は天然に存在する化合物と有機合成薬剤とからなる群より選択されることが好ましく、小分子、有機薬剤、又は、天然小分子化合物であることがより好ましい。
【0040】
本発明の方法の好ましい実施形態において、標的成分はキナーゼ及び固定化された対象化合物であり、また、競合化合物はキナーゼ阻害剤である。
【0041】
しかしながら、DNA、RNA及び/又はPNA(タンパク核酸)等の核酸である化合物又は競合化合物の使用も本発明に包含されている。そのような核酸は、特定のヌクレオチド配列及び/又は繰り返し単位(motif)を含む核酸を含む、オリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドの形態で存在し得る。様々な形態の核酸の混合物を用いてもよい。
【0042】
「固体支持体」との用語は、ここに用いられているように、その表面で対象化合物の上記薬効範囲を固定化することができる任意の非溶解支持体に関する。固体支持体として用いることができる材料は、数多く、限定されないが、溶融石英、合成石英、シリコン、プラスチック、ガラス、金、金属、透明電極(例えば、インジウム錫オキサイド又は関連材料)、セラミック(例えば酸化金属)、紙、伝導性炭素、導電性高分子材料、フィルタ、ガラススライド、シリコン表面、ビーズ及びカスタマイズされた化学的マイクロアレイを含む。他の形態を使用してもよいが、そのような適切な材料は、小ビーズ、小球、ディスク、チップ、皿、マルチウェルプレート、ウエハース等の形態を有していてもよい。
【0043】
本発明の方法の任意の好ましい実施形態においては、セファロース(例えばNHS活性化セファロース)又はアガロースビーズ等のビーズに化合物を結合させる。特に好ましい実施形態において、前記ビーズは、任意にエポキシ活性化された若しくはNHS活性化されたセファロース、又は、アガロースビーズである。例えば、3つの異なる濃度でエポキシ活性化されたセファロースビーズに阻害剤化合物(V16742、図2a等)を結合させることができ、個別の樹脂に共有結合で固定化された阻害剤の相対的濃度(ここでは最低濃度の1倍、5倍及び25倍)を吸光度測定法により決定する。
【0044】
適切な固体支持体材料は、フェロ磁性又はフェリ磁性粒子の特性に関係している限り、例えば、参照によりここに組込まれているWO01/71732で知られているフェロ磁性又はフェリ磁性粒子を含むか又はそれからなっていてもよい。フェロ磁性又はフェリ磁性粒子は、ガラス又はプラスチックを含んでいてもよい。本発明において用いることができるフェロ磁性又はフェリ磁性粒子は、多孔性であってもよい。フェロ磁性又はフェリ磁性ガラス粒子は、約30〜50重量%のFe及び約50〜70重量%のSiOを含んでいてもよい。有用なフェロ磁性又はフェリ磁性粒子の平均直径は、約5〜25μmであることが好ましく、約6〜15μmであることがより好ましく、約7〜10μmであることが特に好ましい。フェロ磁性又はフェリ磁性粒子の総表面積は、190g/m以上、例えば、(Brunaur Emmet Teller(BET)法に従って決定されて)約190〜270g/mの範囲内であってもよい。
【0045】
これらの磁気微粒子により、精製、分離、及び/又は、プロテインキナーゼのような生体分子の分析が容易になる。対象分子に結合する磁気粒子(又はビーズ)は、該粒子含んでいる容器に外部磁界を適用することによって、集められるか又は回収されうる。
【0046】
固体支持体材料の表面への化合物の固定化は、吸着、吸収、イオン結合、共有結合、アミノ基やカルボキシル基や水酸基、(ストレプト)アビジン−ビオチン若しくはチオール−金相互作用、及び、制御可能な密度又は濃度で材料を付着させることができる他の方法によって達成することができる。
【0047】
固定化された化合物は、固体支持体の表面に定められた濃度で存在することが好ましい。この点についての好ましい濃度又は濃度範囲は、約30nMから約10mMの濃度であり、好ましくは、約100nMから約10mM、又は、約1μMから約5mMである。
【0048】
本発明の方法の任意の好ましい実施形態において、化合物は共有結合で固体支持体に結合している。結合させる前に、固体支持体材料又はマトリックスは、化合物との結合反応を可能にするために、NHS、カルボジイミド等の活性基を含んでいてもよい。例えば、アミノ基、スルフヒドリル基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アルデヒド基、及び、ケトン基等の官能基を用いる直接結合、及び、例えば、ビオチン、化合物に共有結合で付着しているビオチン、及び、固体支持体に直接結合しているストレプトアビジンに対するビオチンの非共有結合等の非直接結合によって固体支持体に化合物を結合させることができる。
【0049】
ビオチン−アビジンの親和性ペアは、生物学的用途に最も利用されている単一の親和性封鎖及び分離技術である。この系は、アビジン、ストレプトアビジン又はニュートラアビジンを固体支持体の表面に固定化することに基づいている。ビオチン化されたおとり分子を細胞溶解物に混合させる。その後、この混合物をアビジンベース親和性カラムに投入して洗浄して非特異的結合タンパクを溶出させる。その後、いくつかの入手可能な試薬で洗浄することによって所望のタンパクを放出することができる。多くの作業により、単量体ニュートラアビジンを用いて一般的タンパクとの非特異的相互作用を最小化することができることが示されている。更に、特異的官能基を有する小分子をビオチン化することができる多くの化学的な試薬が容易に入手可能である。
【0050】
本発明の方法の任意の好ましい実施形態において、アミノ基、水酸基又はカルボキシル基を通じて固体支持体材料(特にビーズ)の表面に化合物を固定化する。
【0051】
義務的でないが、リンカー又はスペーサーによって固体支持体材料の表面に化合物を固定化することは有用である可能性がある。いくつかの拘束系を用いて化合物を固体支持体に付着させることができる。例えば、化合物と固体支持体との間に共有結合性リンカーを使用することができる。タンパク結合のために最適なリンカーの種類、剛性及び長さ等の要因を最適化し、さらに、望まれない非特異的相互作用を最小化するために、組み合わせ技術を用いてもよい。それらを最適化するために適切なシステム及び技術は、当業者に知られている。
【0052】
本発明の文脈において、「接触」との用語は、被検体と固体支持体との間の相互作用を許容する手段又はステップをすべて含む。被検体内の標的成分が相互に作用することができるか又は固定化された化合物に結合することができる方法で接触を行う。標的成分と化合物との間の結合は、例えば、塩橋、水素結合、疎水性相互作用又はこれらの組み合わせ等を介した結合ような非共有性の可逆的結合であることが好ましい。
【0053】
本発明の方法は、細胞又は組織の溶解物又は抽出物等の被検体中の標的成分と対象化合物との相互作用を質的及び/又は定量的に評価し又は決定することを可能にする。
【0054】
本明細書でIVA1(インビトロアソシエイション、設定1)による方法とも称される本発明の第1態様において、対象化合物に対する標的成分の親和性を決定することができる上述の接触ステップ(a)、(b)及び(c)等の様々な並列的又は連続的親和性精製ステップを異なる濃度で組み合わせて固体支持体の表面に該化合物を固定化する。
【0055】
本発明のこの態様の条件において、固体支持体の表面に対象化合物を固定化する様々な濃度比が適切である。上述のステップ(a)、(b)及び(c)における好ましい濃度比は、約1:5:25又は約1:10:100から選択される。しかしながら、例えば、約1:3:9、約1:4:16、1:6:36、約1:7:49、約1:8:64、又は、約1:9:81等の他の比率は同様に適切である。
【0056】
ステップ(a)、(b)及び(c)において固体支持体に結合した標的成分量を決定し、これらのステップにおいて固体支持体に結合した標的成分量を比較することによって、上記方法は、質的に、また、ある程度まで定量的に、対象化合物に対する被検体内の標的成分の結合親和性を決定することができる。
【0057】
IVA1による方法において、固体支持体に対して標的成分量は、例えば、ステップ(d)において例えばMSによって測定されて決定された信号強度によって反映される。信号強度の増大を反映するように、ステップ(a)、(b)及び(c)において化合物に結合する標的成分量が増加することは、標的成分が、固体支持体に結合した化合物についての結合親和性が低いか又は中程度でしかないものであるかもしれないことを示している。ステップ(a)、(b)及び(c)において化合物に結合した標的成分量がわずかに増えることは、相当程度同じ信号強度で反映され、固体支持体に結合した化合物に対する標的成分の高い結合親和性を示す。ステップ(a)、(b)及び(c)において化合物に結合した標的成分の量が同じである場合、それは、等しい信号強度によって視覚化され、このことは、固体支持体に結合している化合物に対する非常に強い結合又は固形材料に対する非特異的結合のいずれかを示しているかもしれない。
【0058】
IVA1による方法で正確にKd値を決定するために、固定化された阻害剤の濃度が好ましくは被検体中の対応する標的成分の濃度のモル過剰で存在すべきであり、少なくとも2倍モル過剰で存在することが好ましい。しかしながら、固定化されたリガンドの濃度が制限している状態下でさえ、分析により、固定化されたリガンドに対する親和性に従って標的成分が異なって順位付けられるであろう。したがって、リガンドがモル過剰であることが好ましく、任意の要件であるが、必須ではない。
【0059】
図1a(IVA1、インビトロアソシエイション、設定1)における本発明の上記態様を例示的に説明する。同じ細胞の3つのインキュベーション液に由来するが、異なる同位体標識を用いて代謝的に標識された点で異なる細胞溶解物を用いてこの態様による方法を行なうことが好ましい。上記方法において同じ被検体の独立した分割量として、これらの異なって標識した溶解物を処理する。具体的には、それらを固体支持体の表面に固定化されている対象阻害剤化合物(図ではV16742を用いた)と、異なる濃度で(図では1:5:25の比で)接触させる。リガンドを用いたインビトロ会合の後に、固体支持体に結合した各分割量のタンパクを混合してLC−MS/MSで分析する。続いて、3つの並列的インキュベーション(図1a)に由来する安定同位体標識されたペプチドイオンの強度比を決定することによって相互作用するタンパクの相対存在量を定量してもよい。
【0060】
本発明の上記態様に従って対象化合物に対する標的成分の親和性について特定の質的決定だけでなく量的な決定を行ってもよいことが理解されるであろう。
【0061】
V16742に対する低いか又は中程度の親和性で保持される代表的な標的成分について図に概略的に示されているように、その強度は、固定化された阻害剤化合物の低濃度から高濃度まで標的成分の結合が増加するのを反映する(図1a−ii)。
【0062】
しかしながら、この試験から、固定化された阻害剤化合物の濃度が最も高いときに何パーセントの細胞内標的成分が保持されるかを確実に導き出すことができないので、阻害剤と標的成分との相互作用(図1a−ii)についてK値(解離定数)を決定するのは難しいかもしれない。
【0063】
阻害剤の濃度が中程度であり、被検体から高い親和性を有する標的成分がすでに消費された場合には、強度は、親和性ビーズの表面に存在するより多くの阻害剤に伴ってさらに増加しない(図1a−iii)。しかしながら、信号強度(標的成分の相対量を表す)が3つのインビトロ会合すべてで等しい場合、これは、非常に高い親和性で結合する標的成分によるものであるかもしれないし、又は、固体支持体材料との非特異的な弱い相互作用によって保持される標的成分の「バックグラウンド」結合を示しているかもしれない(図1a−iv)。
【0064】
ここにおいてIVA2(インビトロアソシエイション、設定2)による方法とも称される本発明の別の態様において、これらの起こりうる2つの状況を区別することができる方法を提供する。この方法は、高濃度(例えば、本発明の第1態様による方法において使用したか又は決定した最高濃度)で固体支持体の表面に固定化された化合物を用いて被検体内の標的成分の2回の連続的インビトロ会合ステップを行うステップ、及び、これらのステップの第2回において結合した標的成分量と、1回のみの会合ステップを有する並行的インビトロ会合(図1b−i)において結合した標的成分量とを比較するステップを具える。
【0065】
しかしながら、この方法によれば、また、同じ細胞の3つのインキュベーション液に由来するが、代謝的同位体標識の点で異なる細胞溶解物が用いられ、該細胞溶解物は、同じ被検体の独立した分割量として再び処理される。第1分割量を高濃度で固定化された対象化合物(ここではV16742)を有する固体支持体に接触させる。インビトロ会合をさせた後に、固体支持体から上澄みを分離し、高濃度で固定化された化合物を有する上述した種類の固体支持体材料と再接触させる。上記方法は、また、異なって標識された第2分割量を、高濃度で固定化された化合物を有する上述の種類の固体支持体材料に接触させるステップを具える。さらに異なるように標識して固体支持体に接触させた第3分割量を用いたネガティブコントロールであって、該固体支持体に上記化合物が固定化されていないネガティブコントロールを並行的に実施した。固体支持体に結合した第1及び第3分割量に由来するタンパクと、再接触ステップにおいて固体支持体に結合した第2分割量のタンパクとを混合してLC−MS/MSにより分析し、3つの並列インキュベーションに由来する同位体標識されたペプチドイオンの強度比を決定することによって相互に作用するタンパクの相対存在量を定量する(図1b)。
【0066】
被検体中の相互作用が弱い標的成分とは対照的に、固定化された化合物(例えば、阻害剤化合物)に対してより高い親和性を有する標的成分の大部分は、第2分割量を供する第1接触ステップにおいて消費される。
【0067】
表面に固定化された化合物を有する同じ固体支持体(例えば阻害剤ビーズ)を用いた親和性精製の2回目の上澄みから保持した異なるように標識された標的成分との量的比較によって、現在は、最高濃度の阻害剤化合物における標的成分結合のパーセンテージを算出することができる(それぞれ、図1b−ii及び図1b−iiiにおいて与えられる結合の10%及び75%の実施例)。V16742親和性樹脂に特異的に結合する各標的の濃縮係数は、式E=(1−r)×100によって算出することができる。ここで、rは、n番目の標的について、V16742親和性樹脂を用いたIVA2設定の第2回及び第1回において観察された結合の比を表し、また、Eは、n番目の標的についてのパーセント濃縮係数である。
【0068】
さらに、固定化された化合物と特異的に相互に作用しない被検体の標的成分を同定する手段は、結合した化合物を有しない固体支持体の使用、すなわち、コントロールによって提供される(図1b−iv)。
【0069】
IVA2による本発明の方法によって結合親和性を決定することができるように、固体支持体の表面に固定化された化合物は、接触ステップの時に標的成分と比較してモル過剰で存在するべきである。
【0070】
IVA2による方法において、固体支持体に結合した標的成分量は、ステップ(d)において例えばMSによって測定して決定された信号強度において反映される。ステップ(a)及び(c)において化合物結合した標的成分量の減少は、信号強度の減少において反映される。減少の程度は、固体支持体に結合した化合物に対する標的成分の結合親和性を表す。ステップ(a)と(c)とにおいて、結合した量がわずかだけ異なっていた(減少した)場合、このことは、低い親和性結合を示す。その一方で、大幅な差異(減少)は、固体支持体に結合した化合物に対して中程度又は高い親和性で標的成分が結合することを示す。ステップ(a)、(b)及び(c)において化合物に結合した標的成分量が等しい場合、このことは、バックグラウンド結合又は非特異的結合を示す。
【0071】
Kd値を相当正確に決定するために、固定化された阻害剤の濃度は、被検体中の標的成分濃度に対して少なくとも2倍モル過剰であることが好ましい。しかしながら、固定化されたリガンドの濃度が制限されている状態下でさえ、分析により、固定化されたリガンドに対する親和性に従って標的成分が異なって順位付けられるであろう。したがって、リガンドのモル過剰は好ましく、任意の要件であるが、必須ではない。
【0072】
それを確認するためにさらなる対照実験を行なうことができる、固定化された化合物は、本発明のIVA方法において限定されない。図1c−iに示されているように、異なるように標識され(例えばSILACエンコードされ)、好ましくは同じ容積を有し、異なる量の細胞タンパクを含む細胞溶解物(例えばHeLa細胞由来)をIVA1又はIVA2で用いられる種類のビーズ(例えば固定化されたリガンドの最低の濃度を含むビーズ)と共にインキュベーションすることができる。リガンドと相互に作用する標的タンパクに由来する信号強度比が当初のタンパク濃度比に対応している場合、結合分析において、固定化されたリガンド濃度がその標的タンパクに対してモル過剰で存在していたと結論付けることができる。
【0073】
本明細書においてIVA(インビトロアソシエイション)競合方法と称される本発明の第3態様において、固定化された化合物(例えば固定化された阻害剤)の結合親和性(例えばK値単位)を決定してもよく、前記被検体中の任意の標的成分について対象競合化合物の結合親和性は、濃度依存的競合によって決定されたか又は決定される。例えばIVA1及び/又はIVA2に従った本発明の任意の方法によって、固定化された化合物の結合親和性を決定してもよい。この方法の長所は、この方法において競合化合物を固定化する必要がないことである。
【0074】
本発明の任意の方法(すなわち、IVA1若しくはIVA2による方法又はIVA競合方法のいずれか)による接触ステップにおけるインキュベーション時間は、標的と阻害剤との相互作用について結合平衡に達するように充分に長いことが好ましい。本発明者らは、これが一般的にインキュベーション後2.5時間であることを実験的に確認した。しかしながら、より短いインキュベーション時間内に結合平衡に達する可能性もある。原則として、緩衝剤、塩、並びに、EDTA及びEGTA等のキレート剤又は追加的補助因子等の他の構成成分の濃度を広い濃度範囲で変化させてもよい。さらに、異なる温度で接触ステップを行ってもよい。好適な温度は、約4℃、約15℃、室温、約25℃、約37℃、及び、約42℃から選択される。約4℃、室温、及び、約37℃が特に好ましい。
【0075】
本発明の任意の方法による接触ステップは、生理的な条件下又は基本的に生理的な条件下で行われることが好ましい。これによってインビボ状況に可能な限り近い状況を再現することが可能になる。容易に偽陽性の結果となる最先端技術による他の方法とは対照的に、生理的な条件下又は基本的に生理的な条件下で機能する可能性が本発明の方法の長所の1つである。接触ステップは、好ましくは、適切な緩衝剤、及び、任意に、カルシウム、マグネシウム、カリウム、NAD+/NADH、cGMP、NADP+/NADPH、ATP、ADP、cAMP等の補助因子を用いて行われる。補助因子は、複合体及びプロテオームの形成、及び、プロテオーム及び/又は複合体と潜在的相互作化合物との相互作用を同時に著しく改善する場合がある。ここで用いられているように、「生理学的条件」との用語は、温度、pH、イオン強度、粘度、並びに、生存可能な生命体に適合し、及び/又は、酵母細胞等の生存可能なインキュベーション細胞又は哺乳動物細胞等の高等真核細胞において細胞内に一般的に存在する同様の生化学的パラメーターを指す。
【0076】
例えば、一般的実験インキュベーション条件下でインキュベーションされた酵母細胞における細胞内の条件は、生理的条件である。インビトロの転写混合物に適切なインビトロの反応条件は、一般的な生理的条件である。一般に、インビトロの生理的条件には、50〜200mMのNaCI又はKCI(pH6.5〜8.5、20〜45℃)、及び、0.001〜10mMの二価陽イオン(例えばMg++、Ca++)が含まれる。好ましくは約150mMのNaCI又はKCI(pH7.2〜7.6、5mMの二価陽イオンであり、また、多くの場合に0.01〜1.0%の非特異的タンパク(例えばBSA)が含まれる。多くの場合、非イオン性界面活性剤(Tween、NP−40、Triton X−100)が存在してもよく、通常約0.001〜2体積%で、一般的には0.05〜0.2体積%(v/v)で存在し得る。当業者は特に適切な条件を従来の方式に従って容易に選択することができる。一般的なガイダンス用として、以下の緩衝化された水溶液:10〜1200mMのNaCI、5〜50mMのトリス/HCI、pH5〜8を用いてもよく、二価陽イオン、及び/又は、金属キレート剤、及び/又は、非イオン性界面活性剤、及び/又は、膜画分、及び/又は、抗発泡剤、及び/又は、発光剤を任意に追加してもよい。
【0077】
「基本的に生理的な条件」は、例えば、pH6.5〜7.5(好ましくはpH7.0〜7.5)、及び/又は、10〜50mMの緩衝剤濃度(好ましくは25〜50mM)、及び/又は、単価の塩(例えばNa又はK)の濃度が120〜170mMであること(好ましくは150mM)を指すように意図する。二価の塩(例えば、Mg又はCa)は、1〜5mMの濃度で存在してもよく、好ましくは1〜2mMで存在してもよく、緩衝剤は、より好ましくはトリスHCI又はHEPESからなる群より選択される。
【0078】
しかしながら、本発明の任意の方法による接触ステップを好ましくはより高い濃度(例えば1.2Mまで)の塩の存在下で行なって、バックグラウンドタンパクの非特異的結合を減少させるか又はより低い温度(例えば4℃)においてタンパク安定性を確保してタンパク凝集を防止してもよい。
【0079】
上述したように、本発明の方法は、化合物が結合しているか又はしていない固体支持体から被検体を溶出させるステップを具えていてもよい。検出ステップを行うのに基づいてサンプル中に混合する前に固体支持体から本発明の標的成分を溶出させることが好ましい。
【0080】
適切な溶出方法は当業界で周知であり、相互作用の性質に依存する。イオン強度を変化、pH値、温度又は洗剤を用いたインキュベーションは、大抵、固定化された化合物又は固体支持体(非特異的相互作用の場合)から被検体を標的成分を溶出させるために好適である。溶出緩衝剤を用いて極端なpH値(高いか又は低いpH;例えば0.1Mのシトラート(pH2〜3)によってpHを低下させること)、イオン強度の変化(例えばNaI、KI、MgCI又はKCIを用いた高塩濃度)、疎水的相互作用を混す極性低下剤(例えばジオキサン又はエチレングリコール)、又は、変性剤(カオトロピック塩若しくはドデシル硫酸ナトリウム(SDS)等の洗剤)(Subramanian A.,2002,lmmunoaffinity chromatography.MoI.Biotechnol.20(1),41−47を検討用に参照されたい。)によって結合相手を分離することができる。
【0081】
これらのかなり非特異的な方法を用いて、被検体の結合している標的成分の大部分又はすべてを放出させて、次に、例えば、質量分析法(又は、代替的に他の任意の適切な検出方法(下記参照))によって分析してもよい。
【0082】
支持体材料がカラム内に含まれている場合には、カラム通流物として放出された材料を回収することができる。支持体を被検体(いわゆるバッチ処理)と混合する場合、穏やかな遠心分離等のさらなる分離ステップが有用又は必要である可能性があり、放出された材料を上澄みとして回収する。あるいは、磁気装置を用いてサンプルからビーズを除去することができるように固体支持体として磁性ビーズを用いることができる。
【0083】
当業者は、本発明の方法の各ステップ間に洗浄ステップが必要であるかもしれないことを理解できるであろう。そのような洗浄は、当業者の知識の一部である。その洗浄は、固体支持体から被検体の非結合成分を取り除くように機能する。低級洗剤を加えることにより、又は、洗浄緩衝剤中の塩濃度を穏やかに調整することにより、非特異的(例えば、単なるイオン性の)結合相互作用を最小化することができる。
【0084】
溶出させた標的成分の同定及び定量化は、空間的に決定された信号位置及び信号強度に基づく。信号強度又は信号出現の速度を空間的に決定することができる多くの様々な装置技術を結合標的成分の検出に用いることができる。
【0085】
これらの方法は、本発明の方法の任意において使用されてもよく、限定されないが、標識された標的成分からの螢光の検出、蛍光性の挿入剤、蛍光性の溝結合剤、分子信号、放射性同位元素、表面電位、有色生成物、酵素標識された標的、抗体標識された標的、及び、金粒子標識された標的を含む。
【0086】
放射能検査法、蛍光検出方法、ルミネセンス検査法、染料検査法、酵素検査法及び質量分析法を用いて溶出させた標的成分を検出することが好ましい。
【0087】
好ましい実施形態において、溶出させた標的成分を質量分析法によって検出する、すなわち、質量分析法によって特性を明らかにして定量する。
【0088】
質量分光分析(質量分析法)を用いたタンパクの同定は、当業界で知られており(Shevchenko et al.,1996,Analytical Chemistry 68: 850−858; Mann et al., 2001 , Analysis of proteins and proteomes by mass spectrometry, Annual Review of Biochemistry 70, 437−473)、これについては実施例の章でさらに説明する。
【0089】
検出可能な標識で被検体中の標的成分を標識することが好ましい。上述したように、本発明の方法の好ましい実施形態において、検出可能な標識は被検体の各分割量において異なる。
【0090】
この点に関して、質量分析法による定量タンパク分析用に確立された手順であるSILAC(細胞インキュベーション液中のアミノ酸を用いた安定同位体標識)を用いてもよい。例えば、細胞の3つの群は、同位体標識されたアルギニン及びリジン(Arg/Lys、Arg/Lys、Arg10/Lys)の3つの別個の組み合わせを用いてエンコードされたSILACであってもよい。しかし、本発明の方法又はステップを質量分析法によるタンパク定量化のための他の方法と組み合わせることもできる。
【0091】
しかし、本発明の方法において他の検出可能な標識を使用してもよい。適切な検出可能標識は、例えば、13C、32P、35S、H、129I、99mTc、111Inなど等の放射性標識、染料標識、抗体で検知可能な標識、酵素標識、及び、検出可能な質量を有する標識からなる群より選択される。プロテオーム分析において質量分光法を使用する実験例は、Ho Y, et al.(標識なし)(”Systematic identification of protein complexes in Saccharomyces cerevisiae by mass spectrometry” Nature 2002,Jan.10;415(6868):180−3.)、Gu S,et al.(”Precise peptide sequencing and protein quantification in the human proteome through in vivo lysine−specific mass tagging”.J.Am.Soc.Mass Spectrom.2003,Jan;14(1):1−7) and Williams C and Addona TA (”The integration of SPR biosensors with mass spectrometry: possible applications for proteome analysis.” Trends Biotechnol. 2000 Feb;18(2):45−8)に記載されている。
【0092】
標的成分の標識は、リン光性マーカー、蛍光性マーカー、化学発光性マーカー、ホスファターゼ、アビジン、ストレプトアビジン、ビオチン、タップ法マーカー及びペルオキシダーゼから選択されてもよい。TAGに加えて、他のマーカーは、Arg標識、カルモジュリン結合ペプチド、セルロース結合領域、DsbA、C−myc標識、グルタチオンS−トランスフェラーゼ、FLAG標識、HAT標識、His標識、マルトース結合タンパク、NusA、S標識、SBP標識、Strep標識、及び、チオレドキシンである。これらの標識の使用は、文献(例えば、Terpe K., Appl. Microbiol. Biotechnol. 2003 Jan;60(5):523−33)に広く記載されている。
【0093】
本明細書中において早期に示したように本発明の方法の全部又は少なくとも一部を高生産性方式で行なってもよい。
【0094】
本発明の方法は、固定化された化合物の様々な化合物濃度(密度)でカバーされる濃度範囲内のすべての同定された標的成分についてK値を決定することができる。非常に高い親和性を有する標的成分については、K値が、固定化された化合物の最低濃度に対応する値よりも低いと推測することができる。一方で、最も高い化合物濃度において結合が50%未満の標的であって、かなり弱く相互作用する標的については、K値が特定の閾値よりも高いと結論付けることができる。固定化された化合物に対する標的タンパク感受性についての量的情報を取り出すことに加えて、特異的に保持されているタンパク標的から容易にバックグラウンド結合剤を同定することができる。
【0095】
本発明は、固定化された阻害剤親和性精製に基づいて、従来の化学的プロテオーム処理の主な欠点を解消する。HeLa細胞抽出物を用いて、固定化されたV16742の記載されている定量化学分析により、質量分析法によって同定及び定量された96個のプロテインキナーゼを含む131個の細胞内標的についてKが決定された(図2b及び表1)。同定されたキナーゼ標的のカイノーム系図における分散は、V16742がかなり非選択的な阻害剤であることを示唆している(図2d)。非キナーゼ標的も本発明の方法によって同定され得る。本発明の方法は、固体支持体の表面に固定化され得る任意の種類の親和性リガンドに適用することができる。
【0096】
HeLa細胞に由来する溶解物すべてをコントロールビーズ又はV16742ビーズのいずれかを用いたIVA1及びIVA2に供して質量分析法の結果を確認した。高くから非常に低くまでに及ぶ親和性を有すると質量分析法によって同定/予想される標的であるJNK2、RIPK2、ERK2及びROCK2に対して特異的な抗体を用いてビーズ表面に保持されたタンパクを免疫ブロットした。キナーゼは、質量分析法(表1)によって得られる定量データと同様に、実験計画(図1)によって予想されたものと一致するパターンでV16742マトリックス(図2c)と特異的に相互作用した。
【0097】
固定化された阻害剤についての標的K値の情報は、さらに、固定化された阻害剤によって保持される標的に対する遊離試験化合物の選択性を迅速に分析するための定量化学的プロテオームの土台を構成することができる。このスクリーニング手法を確立するために、異なるようにSILACエンコードされた細胞溶解物及び最高密度(図3a)で固定化された相当程度に非選択的な阻害剤V16742を用いたインビトロ会合に、濃度を増やしたキナーゼ阻害剤SB203580を添加した。パネル全体のキナーゼ/非キナーゼ標的と固定化されたV16742との相互作用と競合する能力について、様々な濃度(100nm、1μM、10μM、100μM)のSB203580を試験した。
【0098】
固定化された阻害剤に対するSB203580標的タンパクの結合の量依存的な阻害は、定量的MSによって測定され、SB203580についての標的に特異的なIC50濃度を決定するために用いることができた。IC50濃度は、その遊離化合物が固定化されたV16742に対する結合を50%阻害する濃度である。固定化されたV16742との相互作用に対してSB203580によって最も強く競合した標的であるRIPK2についての代表的なスペクトルを図3bに示す。続いて、SB203580に対するIC50値及び固定化されたV16742について予め決定されたK値を用いて、V16742親和性樹脂(表2)で示されるSB203580標的についてのK値を古典的チェン−プルソフ方程式を用いて決定することができた。
【0099】
質量分析法の結果を免疫ブロット法によって再び確認した。質量分析法によって同定/予想されるSB203580標的であるRIPK2、GAK、CK1α、GSK3β及びJNK2のための特異的抗体を用いて上昇させた濃度のSB203580の存在下でIVA反応を調べた。キナーゼと固定化されたV16742との間の相互作用は、定量的質量分析法の結果(表2)を有効にし、それによってコンセプトの証明を加える量依存的様式(図3c)でSB203580によって特異的に競合された。
【0100】
したがって、非選択的キナーゼ阻害剤(又はその組み合わせ)に結合する標的タンパクについてのK値が、生物抽出物中のタンパクについて上述した化学的プロテオーム戦略によって決定されると、この情報は、対象化合物(これ自身は固定化される必要がない)に対する感受性について保持されたタンパクをすべて迅速に試験することができる選択性パネルを構成するために用いられ得る。
【0101】
医療用キナーゼ阻害剤ゲフィチニブ及び固定化されたその誘導体AX14596を用いて、プロテオーム全域に渡る偏りのない標的同定と、品質が制御された標的親和性測定とを統合する、本発明の化学的プロテオミクス概念をさらに考案した。固定化されたAX14596又はリガンドを有しないコントロール樹脂を示す阻害剤ビーズとともに、異なってSILACエンコードされた細胞溶解物をインキュベーションした。並行的に、第1の結合ステップからの上澄みをAX14596樹脂を用いた第2のインキュベーションに供した(図4)。得られた3つの溶出画分を混合し、ゲル電気泳動によって分離し、タンパク分解的に消化し、保持されたタンパクの相対存在量を定量した。コントロール樹脂に相当な結合を示すタンパクを非特定の相互作用とみなし、従って、さらに考慮しなかった。第2回で保持されたタンパクと、AX14596ビーズへの結合の第1回との相対量を表す比rは、固定化された阻害剤によって分離しなかった画分に相当する。一方で、1−rは、親和性樹脂に実際に結合した標的の割合を示している(図4a、図6a及び6b)。これらの標的に特異的な比率は、「標識スイッチ」試験(図6a及び6c)において類似していた。その細胞内標的に対して固定化された化合物が超過している(この超過はモル過剰であることが好ましい)だけでなく、並行的なコントロールSILAC試験においても結合平衡を確定した(図7及び図8)。
【0102】
分光測光法で決定した固定化された化合物(例えばAX14596)の濃度を用いると、解離定数(K値)を算出して固定化された化合物についてそれぞれの標的親和性の定量的測定を提供することができる(図4、表3〜5)。
【0103】
競合試験(例えば、好ましくはSILACに基づいた競合試験)において、修飾された及び/又は固定化された化合物への標的結合に対する化合物濃度上昇による影響(例えばAX14596ビーズに結合する標的に対するゲフィチニブ濃度上昇による影響;図4を参照されたい。)をモニターして、親化合物の修飾及び/又は固定化によって標的親和性が潜在的に変化しているかをチェックすることができる。図4に表されている試験の実施例において、競合剤の添加前に、「遊離」ゲフィチニブ又はAX14596ビーズのいずれかと共に溶解物を予備インキュベーションすることによって同様の結果が得られたことは、分析条件下での平衡結合を示している(図9)。固定化された誘導体についての標的K値、及び、予め決定された固定化された誘導体濃度と共に、AX14596ビーズに対する標的結合の半分を阻害するのに必要とされるゲフィチニブ濃度IC50(Gef.)を用いて、チェン−プルソフ方程式に従って、「遊離」ゲフィチニブについての標的に特異的な解離定数K(Gef.)を算出した(図4及び表4)。これらの解離定数は、組み換え酵素を用いたインビトロキナーゼ分析で決定されたK値との相関関係が良好であった(表3)。これらの結果から、本発明の定量化学的プロテオミクス戦略が様々な被検体(例えば生物抽出物)に対する化合物(例えば小分子キナーゼ阻害剤)の直接的定量プロファイリングを可能にする適切な方法であることが確認される。
【0104】
さらに、潜在的細胞内ゲフィチニブ標的としてのNADHジホスファターゼNUDT12及びブレオマイシンヒドロラーゼの同定は、定量化がプロテインキナーゼに限定されないことを示す(Abdelraheim,S.R.,Spiller,D.G.& McLennan,A.G.Mammalian NADH diphosphatases of the Nudix family:cloning and characterization of the human peroxisomal NUDT12 protein. Biochem J 374,329−335(2003);Ramotar, D. & Wang, H. Protective mechanisms against the antitumor agent bleomycin: lessons from Saccharomyces cerevisiae. Current Genetics 43,213−224(2003))。
【0105】
本発明の化学的プロテオミクス手法の代替的に実施においては、広く選択的なピリド[2,3−d]ピリミジンをベースとするキナーゼ阻害剤VI16742を親和性捕捉に用いてきた(図10a)。上記と同じ定量的戦略を用いて約130個のプロテインキナーゼ及び約25個の他のヌクレオチド結合酵素に対する固定化されたVI16742についてのK値を決定することができた(図5a及び表7〜8)。遺伝子オントロジー分析で示されるように、対応する分子機能は、阻害剤樹脂によって特異的に保持されるタンパクにおいて非常に過剰に示された(図10b)。
【0106】
VI16742と相互作用するタンパクは、それらの天然の細胞環境に由来する多くのヌクレオチド結合タンパクに対する定量的阻害剤特性のためのスクリーニングパネルを構成した。1つのみの固定化された捕獲分子を有するVl16742樹脂により、以前に記載された7つの個別のリガンドの樹脂混合物(Bantscheff,M.et al.Nat.Biotechnol.25,1035−1044(2007))とほぼ同数の細胞抽出物中プロテインキナーゼを定量的に評価することができる。
【0107】
被検体中の標的成分結合に対する対象化合物の(例えばキナーゼ阻害剤SB203580の)競合を例えば濃度依存的方法のSILAC試験で定量的に評価してもよい(図5b)。RIPK2、GAK、GSK3β及び他のキナーゼ標的について示されているように、固定化されたVI16742の定量的データと得られたIC50値とを併せることにより、SB203580についての解離定数を決定することができた(図5b、表8)。SB203580及びゲフィチニブについて本発明のプロテオミクス手法によって決定されたK値は、組み換えキナーゼ分析のデータとかなり一致しており、細胞内標的の親和性測定の正確さが顕著に向上したことを示している(表6及び図11)。
【0108】
本発明の方法はキナーゼ阻害剤分析に概念的に限定されないが、例えば他の種類の小分子に適用してもよい。
【0109】
本発明の方法従った化学的プロテオミクス技術を用いると、主要な分子、それらの分子の標的、作用機構、選択性及び効能を同時に評価することができ、従って、創薬プロセスを劇的に改善し、臨床開発情報ルートにおける化合物の減少率を低下させる。
【0110】
細胞溶解物又は組織サンプルから直接的にタンパクの結合を同定及び定量するために、親和性プローブとして固体支持体の表面に固定化された薬剤様化合物を使用することには、本質的に薬剤化可能なタンパクを同定するという長所がある。従って、標的群の新しい構成要素を探すためにこの技術を応用することにより、新しい標的構成要素を同定できるだけでなく、その標的に対して非常に選択的な高親和性の化合物を同定することもできる。
【0111】
本発明の別の態様は、一般的な創薬ツールとしてここに開示されている方法の使用を含む。この化学的プロテオミクス手法は、機能的タンパク標的の理解を容易にし、複雑な細胞内プロセスを分析するためのツールを提供する。
【0112】
本発明の別の態様は、既存の承認された医薬品についての新たな指標の同定のための本明細書に記載されている又は特許請求の範囲に記載されている方法の使用である。例示の目的のためにキナーゼ阻害剤である薬を考慮する。多くのキナーゼが存在すると予想されていることを考慮すると、この化合物がより広い影響力の病理学に包含される他の日和見的キナーゼ標的を阻害することは、大いにあり得る。したがって、この化合物の市場潜在力が非常に増大し得ると予想することは合理的である。
【0113】
本発明の別の態様は、初期の薬剤候補の作用機構を明らかにする、本明細書及び特許請求の範囲に記載されている方法の使用である。薬剤候補が興味深い生物学的作用を示すが、それについての一般的な分子メカニズムがわかっていない場合に、この技術を用いて活性の合理的な最適化を行うことができる。例えば、企業が既定の疾病モデルにおいて興味深い生物学的作用及び効能を示す小分子候補又は分子種を有してるが、正確な作用機構を理解していない場合、作用に関連した標的の同定は、それらを医薬品にするのを容易にするように機能するだろう。構造と活性との関係データが入手可能な場合、生物活性を損なわずに修飾することができる分子の部位を同定することができる。この薬剤候補を固定化することによって、プロテオミクス分析による化合物の標的の同定を可能にする。対象標的が構造に基づく薬剤設計に適している場合に特に、この種の情報は最適化プロセスにおいて非常に価値がある。
【0114】
本発明の別の態様は、ADME/Toxプロファイリングのための本明細書に記載されている方法及び特許請求の範囲に記載されている方法の使用である。病院に導入する前に、本明細書に開示されている技術を用いて、薬剤候補の毒性プロフィールを生成し、また、薬剤候補のADME特性を評価することができる。ADME/Tox関連プロテオーム(すなわち、例えば薬剤候補の生物学的利用可能性を評価するために用いられる漿液結合タンパク)のバッテリー/パネルに化合物又は化合物種を晒すことによって薬剤候補の薬物動態学的特性を評価することができ、それによって候補優先順位及び候補最適化段階において有用な重要情報が提供される。いくつかのあり得る候補類を候補最適化に供すると仮定すると、各類の特性の迅速な評価は、どの種に注目するかについての化学者による選択を助ける。優れたADME特性を有していると最も考えられる種は、薬剤開発のための望ましい特性を有する薬剤候補を生成する可能性が最も高いと考えられる。同様に、そのような化合物に対する第2及び第3の標的の知識は、潜在的に有毒な副作用の発生を減少させ、それによって臨床開発における成功率を上昇させるだろう。一般に、どの化合物をより正確でより高価な薬物動態的及び毒性研究に供するかについて優先順位を付けるフィルタとしてこの技術を用いることができる。
【0115】
従って、本明細書及び特許請求の範囲に記載されている細胞内標的タンパクに結合する小分子のプロテオーム全域に渡る定量化のための方法を、根本的問題を解決して医薬品工業にサービスを提供することに適用することができる。
【0116】
すべての参考文献はここで引用されているようにその全体を参照することによりここに組み込まれている。
【0117】
以下の図面及び実施例によって本発明をさらに説明する。これらの図面及び実施例は、本出願の特許請求の範囲によって与えられる保護範囲を限定するものではない。
【0118】
実施例1:化合物合成及び共有結合
記載されている合成ルート(Moloney, G.P. et al. A novel series of 2,5−substituted tryptamine derivatives as vascular 5HT1B/1D receptor antagonists. J Med Chem 40, 2347−62 (1997). Barvian, M. et al. Pyrido[2,3−d]pyrimidin−7−one inhibitors of cyclin−dependent kinases. J Med Chem 43, 4606−16 (2000))に基づいてキナーゼ阻害剤V16742を合成した。以前に記載されている(Brehmer,D. et al.Cellular targets of gefitinib. Cancer Res 65,379−382(2005))ようにAX14596及びゲフィチニブを合成した。3つの異なる濃度でエポキシ活性化したセファロースビーズにV16742を結合させ、さらに、別々の樹脂剤の表面に共有結合で固定化された阻害剤の相対濃度を吸光度測定によって決定した(ここにでは最低濃度の1倍、5及び25倍)。以前に記載されている(Wissing,J.et al.Proteomics analysis of protein kinases by target class−selective prefractionation and tandem mass spectrometry. MoI Cell Proteomics 6,537−547(2007))ように、2.5mMの濃度のAX14596の2容量をエポキシ活性化されたセファロースビーズ(GE Healthcare)の1容量に結合させた。共役反応時に可溶性相中の阻害剤濃度の還元を分光測光法を用いて測定することにより、共有結合で固定化された阻害剤の濃度を決定した。
【0119】
実施例2:細胞インキュベーション及びインビトロ会合試験
細胞インキュベーション液中のアミノ酸を用いた安定同位体標識(SILAC)のために、10%の透析ウシ胎児血清(Invitrogen)、並びに、42mgl−1の標識されていないLアルギニン(Arg)及び71mgl−1のLリジン(Lys)、又は、等モル量の同位体変種Lアルギニン−U−13(Arg)及びLリジン(Lys)、又は、Lアルギニン−U−1314(Arg10)及びLリジン1315(Lys)(Cambridge Isotope Laboratories)を含むダルベッコ修飾されたイーグル培地(DMEM)中でHeLa S3細胞をインキュベーションした。
【0120】
SILAC標識された細胞の3つの群及び3つの異なるの阻害剤樹脂剤を用いて、IVA1(インビトロアソシエイション:設定1)及びIVA2(インビトロアソシエイション:設定2)と称されている2つの並行的試験を行った。阻害剤親和性ビーズを用いたインビトロ会合のために、50mMのHEPES(pH7.5)、150mMのNaCl、0.5%のTriton X−100、1mMのEDTA、1mMのEGTA及び添加剤を含む緩衝液中において、異なって標識したHeLa細胞を溶解させた。遠心分離後に、3mgの高塩溶解物と排水したV16742マトリックス又はコントロールマトリックスのいずれか30μlとのインビトロ会合を図1に示されている構成のように4℃で2.5時間行う前に溶解物を1MのNaCIに調整した。IVA1において、異なって標識されたHeLa細胞の細胞溶解物と共に、3つ異なる濃度(反応において最終濃度が52μM、8.74μM及び1.87μMである)で固定化された阻害剤を有する樹脂をインキュベートした。IVA2において、SILACエンコードされたHeLa細胞溶解物を、最も高いリガンド密度の2回の並行する連続的親和性精製に供した。該精製においては、最初のIVAの後に残された上澄みを2回目のIVAに用いた。固定化された阻害剤を有しないコントロールビーズを用いてHela細胞溶解物をさらにインキュベートしてバックグラウンド結合剤を区別した。溶解緩衝剤を用いた3つの洗浄ステップ(1MのNaCIを含む溶解緩衝剤による2回、及び、溶解緩衝剤による1回)の後に、30μlの1.5×LDサンプル緩衝剤を用いて70℃で10分間ビーズを溶出させ、樹脂に結合した材料を放出させた。
【0121】
実施例3:競合SB203580の存在下におけるIVA試験
異なってSILAC標識した細胞に由来する溶解物を、4℃の暗室において、上昇させた濃度(0nM、100nM、1μM、10μM、100μM)のキナーゼ阻害剤SB203580と共に30分間予備インキュベートした。その後、これらの溶解物を高密度阻害剤(V16742)ビーズによるインビトロ会合に、4℃、2.5時間に渡って供した。その後、上記のようにサンプルを処理した。
【0122】
実施例3a:競合ゲフィチニブの存在下で固定化されたゲフィチニブ(=AX14596)又は競合SB203580の存在下で固定化されたVI16742を用いるIVA試験
競合試験のために、AX14596又はVI16742ビーズを添加する前に、異なる濃度のゲフィチニブ(0nM、10nM、100nM、1μM、10μM)又は異なる濃度のSB203580(0nM、100nM、1μM、10μM、100μM)を用いてSILAC標識した細胞溶解産物をそれぞれ30分間処理した。代替的に、遊離阻害剤の添加前に阻害剤ビーズを用いて溶解物を30分間インキュベートした。続いて、インビトロ会合を4℃で2.5時間行なった。すべてのインビトロ会合試験において、樹脂結合材料を30μlの1.5×LDサンプル緩衝剤を用いて70℃で10分間溶出させる前に、3つの洗浄ステップ(1MのNaCIを含む溶解緩衝剤による2回及び溶解緩衝剤による1回)を行なった。
【0123】
実施例3b:競合ダサチニブの存在下で固定化されたダサチニブを用いたIVA試験
エポキシ活性化されたセファロースにキナーゼ阻害剤ダサチニブを結合させ、また、実施例1及び2に記載されているように、K562細胞をSILAC標識した。実施例2及び3において記載されているように、異なる濃度(ここでは最低濃度の1倍、2倍、4倍、8倍及び16倍)で共有結合により固定化された阻害剤を有する5つのダサチニブ親和性樹脂剤を、上昇させた濃度の遊離ダサチニブ(0nM、3nM、10nM、30nM、100nM、1μM、10μM)の存在下でIVA試験に供した。実施例4、6、7及び8において記載されているように質量分光分析を行なった。実施例9に記載されているように、遊離ダサチニブ(CC50)についてのIC50値及び固定化されたダサチニブについてのK値を用いて、遊離ダサチニブについてのK値を決定した。
【0124】
実施例4:質量分析法のためのサンプル調製
親和性クロマトグラフィー溶出液を混合し、既製品のゲル(NuPage 4〜12% Bis−Tris, Invitrogen)において電気泳動によって分離し、コロイド状クマシー染色(Shevchenko,A., et al.,Nat. Protoc.1,2856−60(2006))によって視覚化した。ゲルを3つの薄片にカットし、その後に、トリプシンを用いたゲル内消化、及び、ステージチップス(StageTips、Rappsilber,J.et al.,Nat.Protoc.2,1896−906(2007);Olsen,J.V.et al.,Cell 127,635−48(2006))を用いたペプチド抽出を行った。
【0125】
実施例5:免疫ブロット分析
IVA1又はIVA2設定のいずれかに由来する親和性クロマトグラフィー溶出液の免疫ブロットを以下の抗体:ウサギ抗カゼインキナーゼIα、ウサギ抗JNK2、ウサギ抗ROCK−II(すべてCell Signaling Technology社製)、抗GSK3β、抗RIPK2、抗GAK、抗ERK2(Santa Cruz)を用いて行なった。
【0126】
上昇させた濃度(0nM、100nM、1μM、10μM、100μM)のSB203580の存在下でHela細胞溶解物と固定化されたV16742ビーズとのIVA反応を行なった。SB203580標的(すなわち、JNK2、RIPK2、ERK2、及び、ROCK2)に対する特異的抗体を用いてマトリックスから溶出した結合タンパク質を免疫ブロットし、質量分析法の結果を検証した。
【0127】
実施例6:質量分光分析
基本的に(Olsen,J.V. et al.,Cell 127,635−48(2006))に記載されているように、ナノエレクトロスプレーイオン源(Proxeon Biosystems、オーデンセ、デンマーク)を具えたハイブリッドLTQオービトラップ(Thermo Fisher Scientific、ブレーメン、ドイツ)質量分析計に接続されたナノフローHPLCシステム(Agilent Technologies 1100、ヴァルトブロン、ドイツ)を用いてすべての質量分光分析(MS)を行った。簡潔に、0.5%の酢酸中において5%から40%のアセトニトリルの2時間の濃度勾配を有し、3μmC18ビーズ(Reprosil−AQ Pur,Dr.Maisch)が詰められた15cmの分析用カラム(内径75μm)にトリプシンペプチド及びリンペプチド混合物を分注した。HPLCからの流出液を質量分析計に直接的に電気スプレーした。フルスキャンMSとMS/MSアクイジションとを自動的に切り替えるためにデータ依存モードでMS装置を操作した。解像度R=60,000を有するオービトラップを用いて、m/z400(直線イオントラップにおいて「目標値」が1,000,000まで蓄積された後)で概観フルMSスペクトル(m/z300〜2000)を得た。2以上の帯電状態を有する5つの最も強度が強いペプチドイオンを目標値が5,000の標的値になるまで連続的に分離し、複数段階活性化(MSA or pseudo MS)(Olsen, J.V. et al., Cell 127,635−48(2006); Schroeder,M.J. et al.,Anal.Chem.76,3590−8(2004))による直線イオントラップにおいて断片化した。装置のLTQ部にすべての断片イオンスペクトルを記録した。オービトラップ検出器を用いたすべての測定のために、(Olsen,J.V.et al.,MoI.Cell Proteomics 4,2010−21(2005))に記載されていように、周囲空気(m/z429.08875)からの基準物質イオンを内部校正に用いた。一般的な質量分光条件は、スプレー電圧2.4kV、シース及び補助ガスフローがないこと、熱された毛細管温度(150℃)、LTQにおけるMSA用標準化衝突エネルギー35%であった。イオン選択限界値は、MSについて500カウントであった。活性化q=0.25及び30ミリセカンドの活性化時間を用いた。
【0128】
実施例7:ペプチド同定及び計量
MS/MSピークリストを、未加工のMSファイルから抽出し、IPIヒトデータベースバージョン3.19の前方方向及び逆方向のバージョンとからなる、連結された標的/デコイデータベース(Elias et al.,Nat.Methods 2,667−75(2005))に対するマスコットによって検索した。MSモードにおける初期質量許容範囲を25ppmにセットし、また、MS/MS質量許容範囲は0.5Daであった。
【0129】
システインカルバミドメチル化を固定修飾として検索したが、N−アセチルタンパク、N−ピログルタミン、酸化メチオニン、セリン、トレオニン及びチロシンのリン酸化反応、アルギニン及びリジンへのSILAC標識を可変修飾として検索した。得られたマスコットhtml出力ファイルを未加工のMSのファイルにリンクし、MSQuantソフトウェア(http://msquant.sourceforge.net)に読み込ませた。偽発見率(FDR)を最小化するために、すべてのペプチド同定を質量誤差及びマスコットスコアの閾値によってフィルタリングした。推定1%未満(p<0.01)のFDRを与える(Elias et al.,Nat.Methods 2,667−75(2005))逆にしたデータベース一致(正しくないペプチド配列)の数より、前方向一致の数がデータベースにおいて少なくとも200倍多いペプチドを承認した。最終フィルタリング基準(p<0.01)は、質量誤差<5ppm(全試験)、マスコットスコア≧16(IVA1及びIVA2、試験1)、マスコットスコア≧18(IVA1、試験2)、マスコットスコア≧17(IVA1、試験2)、又は、マスコットスコア≧12(競合試験1及び2)であった。ペプチド溶出時間についての比率平均をMSQuantによって算出し、定量に用いた割当を視覚化して確認した。特に、許可基準は、正確なSILAC形態(重い、中程度、又は、軽い)でペプチドを同定するべきであること、及び、SILACパートナー間のフルスキャンにおいてみられる質量差によって特定されるリジン残基及びアルギニン残基の正確な数を含むべきであることを含む。
【0130】
実施例8:データ解析
第1試験におけるIVA2設定のためのマスコットhtml出力ファイルに基づいたペプチドに共通IPI同定テンプレートを割り当てた。質量誤差及びマスコットスコアについて、ユニークなペプチドに基づいて同定された適合タンパクをフィルターした。最後に、第1及び第2のIVA2試験の両方において同定された的中をMSQuantによって第1試験のIVA2設定について定量した。その後、高密度リガンドビーズにおいて観察された結合と比較して25%を超えるコントロールビーズへの結合を示したバックグラウンドバインダーを除去した。第1回IVAと比較して第2回IVAにおける濃縮が50%未満の的中タンパクを除去するために次の選抜を行った。これは、50%未満の濃縮では、対応する標的についてKd値を推定するときに著しい誤差が存在し得るからである。その後、試験1のIVA2において特に濃縮された標的についてリガンド(V16742)濃度(IVA1設定)を変化させたときの標的タンパクの結合を表す比をMSQuantによって得た。独立した第2試験のIVA2及びIVA1設定において標的の同一のセットを定量した。
【0131】
SB203580を用いた競合試験について、データ解析は基本的にIVA試験と同様であった。また、共通IPI同定テンプレートに従ってMSQuantによって得られた比は示した。その後、SB203580の非存在下において高密度リガンドビーズを用いたコントロールIVA反応と比較して、100μMの最高競合濃度において結合が少なくとも50%少ない標的タンパクを選択した。これらの選択された標的について、1μM及び0.1μMのSB203580における競合を示す比もMSQuantによって得た。
【0132】
ピークリスト生成、SILACに基づいた定量、偽発見率(FDR)決定、ペプチドからタンパクグループへの組立及びデータフィルタリングを行なうMaxQuantソフトウェア(バージョン1.0.12.0)を用いて、文献(Graumann,J.et al.SILAC−labeling and proteome quantitation of mouse embryonic stem cells to a depth of 5111 proteins. Mol Cell Proteomics (2007); Cox, J. & Mann, M. Is proteomics the new genomics? Cell 130,395−398(2007))に記載されているように、阻害剤樹脂(例えばAX14596)を用いたすべての試験で得られた生データファイルをまとめて分析した。マスコット(Matrix Science、 バージョン2.1.04)を用いて頻繁に検出された汚染物質が補われたヒトIPIデータベース(バージョン3.37)の前方方向及び逆方向のバージョンを結合したものを用いてデータ検索を行った。システインカルバミドメチル化を固定修飾として設定し、N−アセチルタンパク及び酸化メチオニンを可変修飾とした。MaxQuantによるSILACパートナーの予備検索検出において標識された重いペプチドから得られたことが判明したスペクトルを、固定修飾Lys、Lys、Arg及びArg10を用いて検索し、その一方で、データベース探索前にSILAC状態を割り当てることができなかったMS/MSスペクトルについては、可変修飾としてLys、Lys、Arg及びArg10を用いて検索した。モノアイソトピック前駆イオンに対して質量許容範囲を5ppmに設定し、また、MS/MSピークに対して0.5Daに設定した。最小のペプチド長を6つのアミノ酸に設定し、また、ペプチド当たり3個までの残存断片及び3個の同位体標識されたアミノ酸を許容した。タンパク及びペプチドについて1%の偽発見率(FDR)を容認した。ペプチドの後部エラー率(PEP、posterior error probability)についての切り捨てを10%に設定した。前方一致及び後方一致の両方についてマスコットスコア及びペプチド長依存ヒストグラムを生成し、次に、ベイズの定理を用いて規定のトップスコアペプチドについての偽同定の確率を得ることによって、ペプチドPEPを決定した。その後、同じタンパクに属するペプチドのPEPを増幅させた。同じ同位体パターンの複数回のシークエンシング、又は、異なるSILAC状況、帯電状況及び修飾状況を有するペプチド種のシークエンシングの場合に決定される最低PEPを用いて、各ペプチド配列を一度だけ考慮した。その後、タンパクをペプチドPEPの産物に従って分類し、タンパクリストに含まれる逆タンパクの画分に従ってFDRが1%に到達するまで組み込んだ。タンパク同定に適用したFDR閾値に加えて、タンパクを、少なくとも2つのペプチド(それらの1つタンパクがユニークであることが必要である)と同一であるときに組み込み、少なくとも1つの定量可能なSILACペアがそれらに関連づけられる場合に定量した。すべてのペプチド比率の平均値ではなく中央値としてタンパク比率を算出したので、異常値を除去しなかった。異なる同定タンパクにおいて共有されるペプチドについては、多くのユニークなペプチドと同一視されるタンパクの比率のみに関してSILAC比率を考慮した。異なるインビトロ会合試験についてのタンパク比率を、貯蔵したSILACエンコード細胞抽出物中のタンパク比率の中央値から決定した初期SILAC貯蔵比に対して補正した。
【0133】
まず、阻害剤ビーズに結合したタンパクに対する阻害剤を有しないコントロールビーズに結合したタンパクの平均比率に従って、定量されたタンパクを分類した。0.2未満のバックグラウンド比を有するタンパクのみを更に検討した。続いて、阻害剤ビーズとのインキュベーションの第1回における結合に対する第2回における結合の比率を重複して入手可能なタンパクをさらなるデータ評価(このケースにおいて、平均値は1未満であった。)に供した。反復試験において逆の比率を示した汚染物質と考えられるものをさらなる分析から除外した。インビトロ会合の第1回の標的タンパク結合に対する第2回の標的タンパク結合の比率rを用い、下記方程式に従って、固定化された阻害剤のそれぞれの解離定数K(Inhibitorimmo)を算出した。
(Inhibitorimmo)=[Inhibitorimmo]×r/(1−r)
[Inhibitorimmo]は、結合分析の最終体積中の固定化された阻害剤の濃度であった。さらに、樹脂に結合した標的の5時間後と2.5時間後との比率、及び、3mgの開始抽出物と比較した1mgの開始抽出物の結合を決定し、インビトロ会合試験において平衡結合をどの程度満たしたかを評価した。
【0134】
並行して、阻害剤樹脂(例えばAX14596)及び異なる遊離阻害剤濃度(例えばゲフィチニブ濃度)を用いて、競合試験で得た誤差訂正した貯留比から、固定化されたリガンドに対するK値が利用可能な標的への結合の最大阻害の半分を表すIC50値を決定した。重複試験からの対立比率を平均した。
【0135】
阻害剤の非存在下における最大結合を100%と設定された1つの部位の飽和に関する方程式を使用し、SigmaPlot(バージョン10.0、Systatソフトウェア社)のリガンド結合モジュールを用いて標的特異的IC50値を決定した。コントロールインキュベーションと比較した遊離阻害剤の最高濃度が0.6以下の比率の標的タンパクのみを検討した。続いて、遊離阻害剤に対する標的K値を下記チェン−プルソフ方程式従って算出した。
(Inhibitorfree)=K(Inhibitorimmo)/([Inhibitorimmo]+K(Inhibitorimmo))×IC50(Inhibitorfree
【0136】
実施例9:結合定数の決定
IVA1及びIVA2試験から得た比を異なるリガンド密度におけるパーセント結合に変換した。最大結合が100%に設定された1つの部位の飽和に関する方程式を用いるSIGMAプロットソフトウェアのリガンド結合モジュールを用いることによってK値を決定した。2つの独立した試験から算出したそれぞれの標的に対するK値は、一般に2倍以内であった。
【0137】
定量的MSによって測定される固定化された阻害剤に対するSB203580標的タンパクの結合の量依存的阻害を量反応曲線として表わすことができた。SIGMAプロットを用いてデータを一部位競合方程式に適合させ、SB203580についての標的特異的IC50を決定した。続いて、下記式に従って、SB203580に対するIC50値、及び、固定化されたV16743について予め決定したK値を用いて、V16742親和性樹脂において示されるSB203580標的に対するK値を決定することができた。
d(SB203580)=(Kd(V16742)/(Kd(V16742)+[V16742])×IC50(SB203580)
【0138】
実施例10:キナーゼ分析
60mMのHEPES−NaOH(pH7.5)、3mMのMgCl、3mMのMnCl、3μMのオルトバナジン酸ナトリウム及び1.2mMのジチオトレイトールを含むキナーゼ緩衝剤中において、レセプタ相互作用プロテインキナーゼ2(RIPK2)、c−junNH末端キナーゼ2α2(JNK2α2)、カゼインキナーゼ1δ(CK1δ)、エフリンレセプタB4(EphB4)(すべてUpstate製)、カゼインキナーゼ1ε(CK1ε)(Invitrogen)、グリコゲン合成酵素キナーゼ3β(GSK3β)、胸腫瘍キナーゼ(BRK)、SrcファミリーキナーゼLyn及びYes、肝細胞増殖因子レセプタ(Met)(すべてProQinase製)、及び、サイクリンG関連キナーゼ(GAK)(Godl,K. et al. An efficient proteomics method to identify the cellular targets of protein kinase inhibitors. Proc Natl Acad Sci USA 100,15434−15439(2003))の生体外のキナーゼ分析を行なった。RIPK2及びBRKについては0.33mg/mlのミエリン塩基性タンパク(Sigma Aldrich)、CK1δ及びCK1εについては200μmol/lのCK1tide(Upstate)、GAKについては0.2mg/mlのヒストン混合物(Roche)、EphB4、Lyn、Yes及びMetについては0.2mg/mlのポリGluTyr(Sigma)、JNK2α2については80μg/mlのGST−c−jun(Hibi, M., Lin, A., Smeal, T., Minden, A. & Karin, M. Identification of an oncoprotein− and UV− responsive protein kinase that binds and potentiates the c−Jun activation domain.Genes Dev 7,2135−2148(1993))、GSK3βについては50μMのGSK3β基質(Calbiochem)を基質として供給した。0.1μMのATP、0.5μCi[γ−33P]ATP、及び、異なる濃度のSB203580又はゲフィチニブの存在下で25μlの総体積内においてすべてのキナーゼを分析した。氷上の30分間の予備インキュベーションステップにおいてキナーゼ反応をATP添加によって開始させ、30℃で7分間行なった。キナーゼ反応はインキュベーション時間を通じて直線的である。GAK及びRIPK2の場合には、3×SDSサンプル緩衝剤の添加によって反応を終了させた。ゲル電気泳動後にホスホイメージングによってリン酸化基質タンパク量を定量した。他のすべてのキナーゼについては、6μlの3%リン酸を添加することによって反応を終了させ、また、P30ガラス繊維フィルタ(Wallac、ツルク、フィンランド)にリン酸化基質を結合させて33Pの取り込みを測定した。EGFRインビトロキナーゼ分析については、10%のウシ胎児血清(Invitrogen)を含むDMEM中においてHeLa S3細胞をインキュベートして15cmの皿の表面に密着させた。750μlの溶解緩衝剤を用いて溶解物を調製し、遠心分離によって予備除去した(Blencke, S., Ullrich, A. & Daub, H. Mutation of threonine 766 in the epidermal growth factor receptor reveals a hotspot for resistance formation against selective tyrosine kinase inhibitors.J Biol Chem 278,15435−15440(2003))。mAb108.1抗体及びプロテインGセファロースビーズを用いて溶解物の350μlの分割量を4℃で3時間に渡って免疫沈降させた(Blencke, S., Ullrich, A. & Daub, H. Mutation of threonine 766 in the epidermal growth factor receptor reveals a hotspot for resistance formation against selective tyrosine kinase inhibitors.J Biol Chem 278,15435−15440(2003))。ビーズを添加剤を含まない300mlの溶解緩衝剤を用いて2回洗浄し、さらに、200μlのキナーゼ緩衝剤を用いて2回洗浄した。その後、氷上において、0.2mg/mlのポリ(GluTyr)及び異なるの濃度のゲフィチニブを添加したキナーゼ緩衝剤中で、沈降EGFRを30分間予備インキュベートした。キナーゼ反応は、0.1μMのATP及び1μのCi[γ―33P]ATPを添加することによって開始され、12μlの3%リン酸添加及びフィルタに結合した基質への33Pの取り込みの測定の前に50μlの総体積中で30℃で10分間で行われた。その後、すべてのキナーゼについて、Sigmaプロット(バージョン10.0、Systatソフトウェア社)を用いてIC50値を決定した。すべての分析において用いたATP濃度(0.1μM)がATPについてのK値よりも相当低かった(Knight,Z.A.&Shokat,K.M.Features of selective kinase inhibitors.Chem Biol 12,621−637(2005))ように、キナーゼ分析ついてはIC50≒Kであった。
【0139】
当業者は、ここに広く記載されている本発明の実施において、不必要な実験をしなくても、ここに詳細に記載されている以外の方法、手順、装置、機械使用、材料及び試薬を容易に使用することができることを理解するだろう。本発明の実施に容易に応用できるすべての方法、手順、装置、機械使用、材料及び試薬、又は、ここに開示されている当業界において機能的に等価であると認められる特定の方法、手順、装置、機械使用、材料及び試薬が本発明に包含されるように意図されている。ここに引用されているすべての参考文献は、それらが本明細書と矛盾しない程度において引用により組み込まれている。
【0140】
【表1】

【0141】

【0142】

【0143】

【0144】
【表2】

【0145】
【表3】

【0146】
【表4】

【0147】
【表5】

【0148】

【0149】
【表6】

【0150】
【表7】

【0151】
【表8】

【0152】

【0153】

【0154】

【0155】

【0156】

【0157】

【0158】

【0159】

【0160】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
化合物に対する被検体の標的成分の結合を評価する方法であって、
(a)前記化合物が固定化されている固体支持体に前記被検体の第1分割量を接触させるステップ;
(b)ステップ(a)と同種の固体支持体に前記被検体の第2分割量を接触させ、続いて、該固体支持体から前記被検体の第2分割量を分離するステップ;
(c)ステップ(a)と同種の固体支持体にステップ(b)で分離した被検体を再び接触させるステップ;
(d)ステップ(a)及び(c)において前記固体支持体に結合した標的成分量を決定するステップ;及び、
(e)ステップ(a)において前記固体支持体に結合した標的成分量と、ステップ(c)において前記固体支持体に結合した標的成分量とを比較するステップを具える方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、表面に前記化合物が固定化されていないステップ(a)と同種の固体支持体に前記被検体の第3分割量を接触させるステップと、前記固体支持体に結合した標的成分量の決定するステップとをさらに具え、
前記ステップ(e)は、ステップ(a)及び(c)において前記固体支持体に結合した標的成分量と、表面に前記化合物が固定化されていない前記固体支持体に結合した標的成分量と比較するステップをさらに具える方法。
【請求項3】
化合物に対する被検体の標的成分の結合を評価する方法であって、
(a)前記化合物が固定化されている固体支持体に前記被検体の第1分割量を接触させるステップ;
(b)ステップ(a)と同種の固体支持体であるが、ステップ(a)より高い濃度で前記化合物が固定化されている固体支持体に前記被検体の第2分割量を接触させるステップ;
(c)ステップ(a)と同種の固体支持体であるが、ステップ(b)より高い濃度で前記化合物が固定化されている固体支持体に任意に前記被検体の第3分割量を接触させるステップ;
(d)ステップ(a)及び(b)において前記固体支持体に結合した標的成分量、及び、前記方法がステップ(c)を具える場合にはステップ(c)において前記固体支持体に結合した標的成分量を決定するステップ;
(e)ステップ(a)及び(b)において前記固体支持体に結合した標的成分量を、及び、前記方法がステップ(c)を具える場合にはステップ(c)において前記固体支持体に結合した標的成分量を比較するステップを具える方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法において、ステップ(a)及び(b)において前記化合物が前記固体支持体の表面に固定化される濃度の比率が、約1:2、約1:3、約1:4、約1:5、約1:6、約1:7、約1:8、約1:9、又は、約1:10から選択される方法。
【請求項5】
請求項3に記載の方法において、ステップ(a)、(b)及び(c)において前記化合物が前記固体支持体の表面に固定化される濃度の比率が、約1:2:4、約1:3:9、約1:4:16、約1:5:25、約1:6:36、約1:7:49、約1:8:64、約1:9:81、又は、約1:10:100から選択される方法。
【請求項6】
請求項3乃至5のいずれかに記載の方法において、ステップ(a)と同種であるが、前記化合物が固定化されていない固体支持体に前記被検体の第4分割量を接触させ、当該固体支持体に結合した標的成分量を決定するステップをさらに具え、
前記ステップ(e)は、ステップ(a)及び(b)において、前記固体支持体に結合した標的成分量を比較し、さらに、前記方法がステップ(c)を具える場合にはステップ(c)において前記固体支持体に結合した標的成分量と表面に化合物が固定化されていない固体支持体に結合した標的成分量と比較するステップをさらに具える方法。
【請求項7】
競合化合物に対する被検体の標的成分の結合を評価する方法であって、
(a)所定の結合親和性で標的成分に結合する化合物が固定化されている固体支持体に前記被検体の第1分割量を接触させるステップであって、前記競合化合物の存在下で該接触を行なうステップ;
(b)前記競合化合物の存在下でステップ(a)と同種の固体支持体に前記被検体の第2分割量を接触させるステップであって、該競合化合物の濃度がステップ(a)より高いステップ;
(c)前記競合化合物の存在下でステップ(a)と同種の固体支持体に前記被検体の第3分割量を任意に接触させるステップであって、該競合化合物の濃度がステップ(b)より高いステップ;
(d)ステップ(a)及び(b)において前記固体支持体に結合した標的成分量、及び、前記方法がステップ(c)を具える場合にはステップ(c)において前記固体支持体に結合した標的成分量を決定するステップ;及び、
(e)ステップ(a)及び(b)において前記固体支持体に結合した標的成分量、及び、前記方法がステップ(c)を具える場合にはステップ(c)において前記固体支持体に結合した標的成分量を比較するステップを具える方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法において、ステップ(a)乃至(c)において、前記接触させるステップより前に前記被検体に前記競合化合物を加える方法。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の方法において、前記競合化合物の非存在下でステップ(a)と同種の固体支持体に前記被検体の第4分割量を接触させるステップをさらに具え、
ステップ(e)が、ステップ(a)及び(b)において前記固体支持体に結合した標的成分量を比較し、前記方法がステップ(c)を具える場合にステップ(c)において前記固体支持体に結合した標的成分量と前記競合化合物の非存在下で前記固体支持体に結合した標的成分量とを比較するステップをさらに具える方法。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれかに記載の方法において、前記被検体の標的成分が検出可能な標識を用いて標識される方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法において、前記検出可能な標識が各分割量において異なる方法。
【請求項12】
請求項10又は11に記載の方法において、前記被検体の標的成分がペプチド又はタンパクであり、前記標識をSILAC(細胞インキュベーション液中のアミノ酸を用いた安定同位体標識)によって行い、ステップ(d)による前記決定を質量分析法を用いた定量的タンパク分析によって行う方法。
【請求項13】
請求項11又は12に記載の方法において、ステップ(d)による前記決定は、前記結合した標的成分をサンプル中に混合し、さらに、前記サンプル中の異なって標識された標的成分を検出することによって行われる方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法において、前記サンプルに混合する前に前記固体支持体から前記標的成分を溶出させる方法。
【請求項15】
請求項7乃至14のいずれかに記載の方法において、前記固体支持体の表面に固定化された前記競合化合物と前記化合物とが同一である方法。
【請求項16】
請求項7乃至14のいずれかに記載の方法において、前記固体支持体の表面に固定化された前記競合化合物と前記化合物とが異なる方法。
【請求項17】
請求項1乃至16のいずれかに記載の方法において、ステップ(e)の比較を用いて前記化合物に対する前記標的成分の結合親和性を決定する方法。
【請求項18】
請求項17に記載の方法において、ステップ(e)の比較を用いて前記競合化合物のIC50値を決定する方法。
【請求項19】
請求項17又は18の方法において、ステップ(e)の比較を用いて前記標的成分に対する前記固定化された化合物及び/又は前記競合化合物の結合のK値を決定する方法。
【請求項20】
請求項1乃至19のいずれかに記載の方法において、前記接触ステップ時に前記化合物が前記標的成分と比較してモル過剰で存在する方法。
【請求項21】
請求項1乃至20に記載の方法において、各接触ステップを同時に行なう方法。
【請求項22】
請求項1乃至21のいずれかに記載の方法において、前記被検体が、プロテオーム、異なる種類のプロテオームの混合物、細胞抽出物若しくは細胞溶解物、組織抽出物若しくは組織溶解物、細胞インキュベーション液上澄み、組織インキュベーション液上澄み、又は、体液からなる群より選択される方法。
【請求項23】
請求項22に記載の方法において、前記プロテオームが1つの細胞又は細胞インキュベーション液、細胞混合物、組織、器官又は生命体に存在するか又はこれらに由来するものである方法。
【請求項24】
請求項1乃至23のいずれかに記載の方法において、前記固体支持体に結合する化合物及び/又は前記競合化合物が、酵素、ポリペプチド、ペプチド、抗体及びその断片、オリゴ糖若しくは多糖、プロテオグリカン、化学成分、小分子薬剤、代謝産物、又は、プロドラッグから選択される方法。
【請求項25】
請求項1乃至24のいずれかに記載の方法において、前記固定化された化合物が前記固体支持体上に規定濃度で存在する方法。
【請求項26】
請求項1乃至25のいずれかに記載の方法において、前記固体支持体が、フィルタ、スライドガラス、シリコン表面、ビーズ及びカスタマイズされた化学的マイクロアレイからなる群より選択される方法。
【請求項27】
請求項26に記載の方法において、前記ビーズが、任意にエポキシ活性化又はNHS活性化されたセファロースビーズであるか、又は、アガロースビーズである方法。
【請求項28】
請求項1乃至27のいずれかに記載の方法において、前記固定化された化合物は、吸着、吸収、イオン性結合、共有結合、アミノ基若しくはカルボキシル基若しくは水酸基、(ストレプト)アビジンとビオチンとの相互作用若しくはチオールと金との相互作用によって、前記固体支持体の表面に固定化される方法。
【請求項29】
請求項1乃至28のいずれかに記載の方法において、前記標識が、放射性標識、染料標識、抗体で検知可能な標識、酵素標識、燐光性マーカー、蛍光性マーカー、化学発光マーカー、ホスファターゼ、アビジン、ストレプトアビジン、ビオチン、TAP、ペルオキシダーゼ、及び、検出可能な質量を有する標識からなる群より選択される方法。
【請求項30】
請求項1乃至29のいずれかに記載の方法において、前記接触ステップを基本的に生理的な条件下で行なう方法。
【請求項31】
請求項1乃至30のいずれかに記載の方法において、前記接触ステップが、適切な緩衝剤、及び、任意にNAD+/NADH、cGMP、NADP+/NADPH、ATP、ADP又はcAMP等の補助因子を用いて行われる方法。
【請求項32】
請求項10、11又は13乃至31のいずれかに記載の方法において、ステップ(d)による前記決定ステップは、放射能検出法、蛍光検出方法、発光検出法、染料検出法、酵素検出法、及び、質量分析法から選択される方法による標識を検出するステップを具える方法。
【請求項33】
請求項1乃至32のいずれかに記載の方法において、前記方法は、前記固定化された化合物及び/又は前記競合化合物に対する前記被検体の多くの標的成分の結合を同時に評価するステップを具える方法。
【請求項34】
請求項1乃至33のいずれかに記載の方法において、前記方法の全体又は少なくとも一部を高生産性様式で行う方法。

【図1a】
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【図1b】
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【図1c】
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【図2a】
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【図2b】
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【図2c】
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【図2d】
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【図3a】
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【図3b】
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【図3c】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【図6−1】
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【図6−2】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公表番号】特表2010−540947(P2010−540947A)
【公表日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−527423(P2010−527423)
【出願日】平成20年9月26日(2008.9.26)
【国際出願番号】PCT/EP2008/062979
【国際公開番号】WO2009/043829
【国際公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【出願人】(506011249)マックス‐プランク‐ゲゼルシャフト・ツア・フェルデルンク・デア・ヴィッセンシャフテン・アインゲトラーゲナー・フェライン (2)
【Fターム(参考)】