説明

細胞治療剤製剤および送達のための方法、システムおよび器具

生物学的安全キャビネットタイプの環境のような区分けされた環境の外部で生物学的医薬組成物を製造する方法および装置を説明する。本発明の技術の一形態において、好ましくは患者の枕元に近い領域で、または、施設の薬局で、生物学的医薬組成物を製造する方法が提供される。本方法は、移動装置(620)を用いて、希釈剤コンポーネントから混合容器(605)に適切な量の希釈剤を移動させること(645)、生物学的医薬コンポーネント(640)と混合容器との間に貯留用ハーネス(630)を連結すること、貯留用ハーネスを介して生物学的医薬組成物を混合容器に移動させること、希釈剤および生物学的医薬組成物を混合して、生物学的医薬組成物の混合物を形成すること、および、必要に応じて均一な投与または体重に基づく投与のいずれかで、生物学的医薬組成物の混合物を患者に投与することを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
[該当なし]
連邦政府によって支援された研究または開発
[該当なし]
マイクロフィッシュ/著作権の参照
[該当なし]
本発明で説明した技術は、概して、患者(人間または動物)に投与するための細胞治療剤の製造および/または送達に関する。より具体的には、本発明の技術は、生物学的安全キャビネット(「BSC」)の外部のような区分けされていない環境における1種またはそれ以上の治療剤(例えば間葉幹細胞)を製造および送達するシステムのための器具に関する。
【背景技術】
【0002】
幹細胞は、自己複製して複数の組織型に分化することができる唯一の細胞種である。このような細胞は、一般的に、それらの分化可能性、または、別個の細胞型になる能力に従って分類される。
【0003】
例えば、成人の人間の場合、骨髄に、2種の主要な幹細胞クラス、すなわち一般的には造血幹細胞および間葉幹細胞が存在する。生涯を通じて、ほとんどの種類の血液細胞は、骨髄内に存在する造血幹細胞またはHSCによって生産される。HSC移植は、多種多様の癌に関する多くの積極的治療の基盤としての役割を果たしてきた。しかしながら、HSCは血液細胞にしか分化できないため、大概の場合、HSCに基づく治療は血液学的疾患に限定される。
【0004】
HSCに対して、間葉幹細胞またはMSCは多分化能または多能性細胞であり、それらが適切な生化学的および生物力学的なシグナルを受けると、例えば骨、筋肉、脂肪、腱、靭帯、軟骨および骨髄間質のような様々な種類の組織に分化することができる。加えて、その他の生化学的な刺激により、MSCが傷害または炎症領域に動員される場合もある。その領域に動員されたら、MSCは免疫調節活性を発揮し、組織の増殖因子を生産しその場の細胞と相互作用することによって、局所レベルで炎症を減少させ、組織の再生を調節し、炎症性の転帰および瘢痕化を減少させることができる。
【0005】
間充織幹細胞組成物を送達するための従来の投与様式としては、全身静脈注射、および、目的の活動部位への直接の注射が挙げられる。このような特定のMSC組成物は、例えば点滴またはボーラス注射などのあらゆる便利な経路で投与が可能であり、その他の生物活性物質と共に投与してもよい。
【0006】
さらに、間葉幹細胞は単独で投与することができるが、間葉幹細胞は医薬組成物の形態で利用されることが好ましい。このような組成物は、治療上有効な量の間葉幹細胞、および、医薬的に許容されるキャリアーまたは賦形剤を含む。このようなキャリアーは医療用希釈剤であってもよく、例えば、電解質溶液、塩類溶液、緩衝食塩水、デキストロース、水、または、それらの組み合わせである。
【0007】
さらにこれらの製造は、国際標準化機構(「ISO」)のクラス5またはそれに等しい基準を満たす区分けされた環境で、生物学的安全キャビネット内で医薬製剤としての間充織幹細胞組成物を配合し、製剤化することが一般的である。一般的に、この種のMSCベースの医薬製剤は、活性物質の量を表示した密封容器中で凍結保存された濃縮物として供給される。このような配合物を点滴で投与しようとする場合、例えば、それらは医薬品グレードの滅菌水、および、医療用希釈剤または塩類溶液を含む輸液バッグを介して投薬することができる。このような特定の組成物の製造は、汚染を防ぐために区分けされた環境で行われることが一般的であり、例えばこの場合でも生物学的安全キャビネット内で行われる。さらにこのような製造は、例えば病院の薬局のような典型的な製造領域から離れた幹細胞用実験室で行われるか、または、患者の枕元もしくは送達領域の近くで行われることが一般的である。
【0008】
投与様式が点滴の場合、これまで用いられてきたMSCベースの医薬組成物の典型的な製造方法は複雑なため、製造工程はBSCで行う必要があった。点滴の場合におけるMSCベースの医薬組成物の従来の製造方法は、生物学的医薬組成物を融解させる工程、希釈剤バッグ、輸液バッグおよび生物学的医薬バッグに連結装置(例えばコーブ(Cobe)連結装置)を取り付ける工程を含むものであった。希釈剤を生物学的医薬バッグに輸送して混合するには、注射器が使用されている。これらバッグへの注射器の取り付けは、連結装置の使用によってなされている。生物学的医薬バッグ中で希釈剤と生物学的医薬とを混合した後に、この混合物を輸液バッグにされる。その後、生物学的医薬製剤の次の単位が要求されるたびに、この複雑な多工程のプロセスが繰り返される。続いて区分けされた環境から輸液バッグを取り出し、患者に投与するために点滴の専門家(infusionist)のもとに輸送される。再度、これらの工程を滅菌環境下で行い確実に汚染を防ぐために、BSCのような区分けされた環境でこの全ての手順(ただし融解を除く)を行わなければならない。
【0009】
さらに、従来のMSCベースの医薬組成物の製造方法は時間がかかるため、専門の技術者や施設の非効率的な使用の原因となり、コスト増加をもたらす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、MSCベースの医薬組成物が汚染される機会を減少させるか、または、汚染を予防し;区分けされたBSCタイプの環境の外部で行うことができ;単純化した手順を利用し;および、従来の方法で要した配合時間を短縮させる、生物学的医薬(例えばMSCベースの医薬組成物)の製造方法が必要である。
【0011】
さらに、体重に関係なく各患者に同量の細胞を投与する均一な投与方法、加えて、同じ製造技術を用いて患者の体重に基づき所定量の細胞を患者に投与する体重に基づく投与方法の両方を可能にするような、細胞の生物学的産物の希釈を提供する生物学的医薬の製造方法も必要である。
【0012】
また、1回の製造で1またはそれ以上の薬物送達用容器/貯蔵装置の混合物を提供することによって、製造工程の効率を改善する生物学的医薬の製造方法を提供することも望ましい可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本明細書で説明する技術の少なくとも一形態は、概して、BSCタイプの製造環境の外部で、生物学的医薬組成物、具体的にはMSCベースの医薬組成物(例えば、ヒトMSCまたは分化細胞のような多分化能または多能性細胞)を製造するための1種またはそれ以上の方法を提供する。
【0014】
本明細書で説明する技術のその他の形態は、患者(人間または動物)に投与するための生物学的医薬組成物(例えば、本発明の技術に係る多分化能または多能性細胞の医薬組成物)を製造するのに必要な時間を短縮させる1種またはそれ以上の方法および/またはシステムである。
【0015】
本明細書で説明する技術のさらなる形態は、患者(人間または動物)に投与するための生物学的医薬製剤を製造するのに必要な手順を単純化する1種またはそれ以上の方法および/または装置を提供することである。
【0016】
本明細書で説明する技術のさらなる追加の形態は、制御されたBSCタイプの環境の外部で患者(人間または動物)に投与されるが、起こり得る汚染は予防または回避される生物学的医薬組成物(例えば、本発明の技術に係るMSCベースの医薬組成物)の1種またはそれ以上の医薬組成物製造方法を含む。この形態の一実施態様において、本方法は、希釈剤コンポーネントから混合容器に適切な量の希釈剤を移動させる工程、容器コンポーネントに含まれる凍結させた生物学的医薬組成物を融解させる工程、希釈剤を生物学的医薬コンポーネントを含む容器に注入する工程、混合容器に生物学的医薬組成物と希釈剤とを移動させて、生物学的医薬組成物の混合物を形成する工程、および、患者(人間または動物)に適切な量の生物学的医薬組成物の混合物を投与する工程を含む。
【0017】
本発明の技術のその他の形態は、制御されたBSCタイプの環境の外部で患者(人間または動物)に投与するための、生物学的医薬組成物(例えば、本発明の技術に係るMSCベースの医薬組成物)を製造するための1種またはそれ以上のキットを含む。この製造キットの形態の少なくとも1種の実施態様は、生物学的医薬組成物用容器コンポーネント;混合容器コンポーネント;適切な量の希釈剤が充填された希釈剤コンポーネント;希釈剤を移動させる装置;生物学的医薬組成物を運搬するシステム、および、人間または動物へ投与するためのコンポーネントを含む。
【0018】
本発明の技術のその他の形態は、生物学的医薬組成物(例えば、本発明の技術に係るMSCベースの医薬組成物)の製造方法を含み、ここで生物学的医薬組成物は、区分けされた環境の外部で希釈剤と混合され、生物学的医薬組成物の混合物を形成することができる。
【0019】
本発明の技術の前述の形態およびその他の形態ならびに利点は、添付の図面、説明および添付の請求項で説明されている1またはそれ以上の実施態様を考察することによってより明白になると予想される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、本発明の技術に係る生物学的医薬組成物の製造手順の少なくとも1種の実施態様の流れ図である。
【図2】図2は、制御された環境の外部で、生物学的医薬組成物を容器コンポーネントに移動させることができる、生物学的組成物を製造手する順の少なくとも1種の実施態様の図解である。
【図3】図3は、少なくとも1種の本発明の技術に係る生物学的医薬を製造する実施態様の流れ図である。
【図4】図4は、少なくとも1種の本発明の技術に係る生物学的医薬組成物を製造する実施態様の流れ図である。
【図5】図5は、少なくとも1種の本発明の技術に係る希釈方法の実施態様の図解である。
【図6】図6は、少なくとも1種の本発明の技術に係る希釈方法の実施態様の図解である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
前述の要約、加えて以下の本発明の技術の具体的な実施態様の詳細な説明は、添付の図面、説明および添付の請求項と共に読めばよりよく理解されると予想される。本発明の技術を説明する目的で、図面に具体的な実施態様を示す。当然ながら本明細書で説明する技術は、どのような様式または位置においても添付の図面に示された配置および手段に限定されることはない。
【0022】
本発明の技術の詳細な説明
慣習的に、細胞療法のための生物学的医薬組成物の製造は、生物学的医薬組成物の製造が国際標準化機構(「ISO」)クラス5またはそれに等しい基準を満たす制御された環境で行われることを必要とし、例えば生物学的安全キャビネット(「BSC」)内での製造を必要とする。本明細書で説明され特許請求された本発明の技術に係るその他の好ましい実施態様において、生物学的医薬組成物の製造は、BSCタイプの環境の外部で行ってもよい。
【0023】
図1および2は、本発明の技術に係る生物学的医薬組成物、好ましくは患者(人間または動物)に細胞療法として点滴するためのMSCベースの医薬組成物(例えば、ヒトMSCまたは分化細胞のような多分化能または多能性細胞)の製造方法の少なくとも1種の実施態様の流れ図および略図を説明する。方法300、400は、本発明の技術に係る製造を、制御された環境の外部で行う場合、例えばBSCの外部で行う場合を説明する。このような医薬の製造方法は、患者(人間または動物)に近い領域で行うことができる。生物学的医薬組成物を含む生物学的医薬コンポーネント430は、投与する施設で、または、生物学的医薬の製造施設で、凍結保存された濃縮物として受け取ってもよい。好ましくは、この実施態様における生物学的医薬の製造は、施設の薬局で、または、患者に近い領域(例えば、患者の部屋または枕元)で行うことができる。工程310において、生物学的医薬を含む凍結保存された生物学的医薬コンポーネント430は、好ましくは37℃±15℃の水浴中で融解させる。凍結させた生物学的医薬組成物を融解させるのにその他の媒体を用いることも考えられ、このような媒体としては、例えば空気、液体、半流動体、例えばゲル、または、固体、例えばホットプレートが挙げられる。
【0024】
工程315において、融解させた生物学的医薬コンポーネント430、希釈剤コンポーネント420および混合容器440は、混合するための領域に移動させてもよく、例えば患者に近い領域に移動させてもよいし、または、施設の薬局に移動させてもよい(図1および2を参照)。BSCの外部で、例えば人間の患者の場合は患者の枕元で生物学的医薬組成物を製造するために、その他の製造領域を用いることも考えられる。一例として、融解させた生物学的医薬コンポーネント430中の適切な生物学的医薬組成物は、MSC、好ましくはヒトMSCであり得る。当業者であれば当然のことながら、本発明の技術は、多分化能または多能性細胞および分化細胞の使用を想定している。例えば、MSCは、適切な生化学的および/または化学的な刺激、シグナル、作動因子またはそれらの組み合わせに晒された場合、例えば、なかでも骨、筋肉、心臓、脂肪、腱、靭帯、軟骨、骨髄間質のような様々な種類の組織/細胞に分化することができる多分化能または多能性細胞である。加えて、その他の生化学的な刺激によって、MSCが例えば炎症性疾患/障害によって生じる領域のような傷害領域または炎症領域に動員される場合もある。
【0025】
希釈剤コンポーネント420中の希釈剤は、医療用希釈剤であってもよく、このような希釈剤としては、例えば、電解質溶液、塩類溶液、緩衝食塩水、デキストロース、水、または、それらの組み合わせが挙げられる。混合容器440の例は、貯留用ハーネス(pooling harness)に取り付けられた注射器または輸液バッグであり得る。
【0026】
生物学的医薬の製造領域において、例えば工程320で、生物学的医薬コンポーネント430、希釈剤コンポーネント420および混合容器440それぞれに、複数のコネクター要素415、425、435が取り付けられていてもよい。図1および2において、コネクター要素415、425、435は、血管穿刺針(blood spike)として示される。コネクター要素として、汚染を予防または回避し、さらにコンポーネントまたは貯蔵装置の内容物の無菌状態を損なうことなく繰り返し使用できる何らかの装置が置き換られることも考えられる。コネクターの例としては、例えば、相互連結した血液バッグの穿刺針、または、コーブ連結装置が挙げられる。工程325において、固定装置410は、移動装置405に取り付けられていてもよい。図1および2において、固定装置410は、ねじ固定式のカニューレとして示される。当然ながら、移動装置405に取り付けることができ、移動装置405を生物学的医薬コンポーネント430、希釈剤コンポーネント420または混合容器440に固定することができるあらゆる固定装置が使用可能であり、このような装置としては、例えばコーブ連結装置が挙げられる。工程330および335において、移動装置405は、好ましくは希釈剤コンポーネント420に取り付けられ、適切な量の希釈剤を移動装置405に移動させることができる。適切な量の希釈剤は、0ml〜約1000mlの範囲であり得る。
【0027】
図1および2において、移動装置405は、注射器として示される。移動装置405はどのような装置でも想定することができ、このような装置としては、例えば、BSCタイプの環境の外部で希釈剤コンポーネント420から希釈剤を移動させるのに使用可能なフレキシブルチューブ製の移動エレメントが挙げられる。移動装置405のその他の例としては、フレキシブルチューブ要素、例えば貯留用ハーネス、または、硬質の装置が挙げられる。工程340〜350において、移動装置405の希釈剤コンポーネント420からの連結を遮断し、生物学的医薬コンポーネント430に連結させ、希釈剤を生物学的医薬コンポーネント430に移動させることも想定される。
【0028】
続いて、工程355〜370において、好ましくは生物学的医薬コンポーネント430における生物学的医薬組成物の混合物の一部を移動装置405に戻し、続いて生物学的医薬コンポーネント430に戻す。移動させられる可能性がある生物学的医薬組成物の混合物の一部の範囲は、生物学的医薬組成物混合物のどの部分も移動させない状態から、生物学的医薬組成物の混合物の全ての部分を移動させる状態までを含む。これらの工程は省略してもよいし、または、現行の混合および送達のガイドラインに沿って混合し注入しようとする医薬コンポーネントに基づき、利用される望ましい点滴プロトコールに応じて複数回で行うことも考えられる。
【0029】
工程380〜395において、生物学的医薬コンポーネント430の生物学的医薬組成物の混合物の内容物は、移動装置405に戻されることが考えられる。続いて移動装置405を生物学的医薬コンポーネント430から取り外すことができる。続いて移動装置405を混合容器440に取り付けてもよいし、さらに移動装置405中の生物学的医薬組成物の混合物の内容物を混合容器440に移動させることもできる。工程397において、移動装置405は、好ましくは、混合容器440から取り外される。工程398において、生物学的医薬組成物の混合物を含む混合容器440を、生物学的医薬の投与領域に移動させることもできる。当然ながら、上述の工程は、上述した以外の順番で行ってもよい。さらに、これらの工程を組み合わせてもよいし、または、同時に行ってもよい。当然ながら、希釈剤が用いられない場合、工程330〜350は行わなくてもよい。従って、様々な手順が想定され、当業者であれば明白であると思われる。
【0030】
適切な量の生物学的医薬組成物の混合物は、例えば患者の体重のような様々な因子に応じて患者ごとに様々であると予想される。また適切な量も、全ての患者に体重に関係なく所定量の細胞を投与するような均一な投与に基づく量でもよい。均一な投与の一例として、1回の点滴で1、2、3または4種の生物学的医薬コンポーネントを用いてもよいし、希釈剤の範囲は、用いられる生物学的医薬コンポーネント1種あたり約15ml〜約1000mlであり得る。
【0031】
図3および5は、本明細書で説明する技術の患者(人間または動物)に細胞療法として点滴するための、生物学的医薬組成物、好ましくはMSCベースの医薬組成物の製造方法の少なくとも1種の実施態様を示す流れ図および略図を説明する。方法700、600は、本発明の技術に係る製造が、制御された環境の外部で、例えばBSCの外部で行われることを説明する。このような医薬の製造方法は、患者(人間または動物)に近い領域で行うことができる。生物学的医薬コンポーネント640は、凍結保存された濃縮物として、投与する施設で、または、生物学的医薬の製造施設で受け取られてもよい。この実施態様において、1種または1種より多くの生物学的医薬組成物を含む生物学的医薬コンポーネント640を、開示された方法および器具を用いて同時に投与するために製造することも考えられる。
【0032】
工程705において、希釈剤コンポーネント645、混合容器605、運搬システム630、複数の血管穿刺針605、615、固定装置615および移動装置620を、混合領域に移動させることができ、例えば患者に近い領域に移動させることもできる。希釈剤コンポーネント645における希釈剤は、医療用希釈剤であってもよく、例えば、電解質溶液、塩類溶液、緩衝食塩水、デキストロース、水、または、それらの組み合わせが挙げられる。希釈剤の量は、0ml〜約1000mlの範囲であり得る。
【0033】
工程710において、運搬システム630の末端は、混合容器のコネクター要素625を介して混合容器605に連結される。
図5において、運搬システム630は、複数のリードを有する複合チューブシステムとして示されており、このようなシステムとしては、例えば、滅菌下で連結する技術に適合するチューブを通じて複数の生物学的医薬組成物を貯留するための一連の貯留用ハーネスが挙げられる。しかしながら、本明細書で説明する技術を実施する際に使用するための代替物も考えられる。例えば、なかでも4個の穿刺針が1つになったアダプター(4 to 1 spike adaptor)、または、5個の穿刺針が1つになったアダプター(5 to 1 spike adaptor)が考えられる。これらは、フレキシブルチューブ要素であってもよいし、または、リジッドチューブ要素であってもよい。運搬システム630は、1個の移動コンベヤーからなるものでもよいし、または、1個より多くの移動コンベヤーからなるものでもよく、それにより生物学的医薬組成物を含む複数の生物学的医薬コンポーネント640を混合容器605に移動させるために連結することが可能になり、加えて、滅菌下での連結と生物学的医薬組成物の混合容器605への移動とが可能になる。
【0034】
工程715において、運搬システム630は、移動ハーネス630上で少なくとも1つのクランプ635を用いて遮断される。工程720〜730において、第二のコネクター要素610は、混合容器605に連結され、さらに第一のコネクター要素650は、希釈剤コンポーネント645に連結されることが想定される。さらに、固定装置615は、移動装置620に連結されていてもよい。固定装置615を有する移動装置620は、希釈剤コンポーネント645に取り付けられた第一のコネクター要素650に取り付けられていてもよい。図5において、第一のコネクター要素650、および、第二のコネクター要素610は、血管穿刺針として示される。第一のコネクター要素650、および、第二のコネクター要素610として、汚染を予防または回避し、希釈剤コンポーネント645または混合容器605の内容物の無菌状態を損ねることなく繰り返し使用できるあらゆる装置が使用されることが考えられ、例えば相互連結した血液バッグの穿刺針、または、コーブ連結装置が使用できる。また図5においても、固定装置615は、ねじ固定式のカニューレとして示される。当然ながら、移動装置620に取り付けて、コネクター要素650を介して移動装置620を希釈剤コンポーネント645に固定することができるあらゆる固定装置を使用することができ、例えば相互連結したねじ固定式のカニューレを使用することができる。
【0035】
移動装置620を希釈剤コンポーネント645に連結した後に、希釈剤コンポーネント645中の適切な量の希釈剤(これは、0ml〜約1000mlの範囲であり得る)を、希釈剤コンポーネント645から引き出して移動装置620に送ってもよい。希釈剤の適切な量は、各患者に応じて様々であってよい。図5で説明された実施態様において、移動装置620は、注射器として示される。滅菌下での希釈剤の移動を可能にするあらゆる移動装置の使用が考えられ、例えば、注射器、フレキシブルチューブ要素、貯留用ハーネス、および、リジッドチューブ要素が使用できる。
【0036】
工程735〜745において、続いて移動装置620を希釈剤コンポーネント645から取り外して、固定装置615および第二のコネクター要素610を介して混合容器605に連結してもよい。図5において、第二のコネクター要素610は、血管穿刺針として示される。第二のコネクター要素610として、汚染を予防または回避し、混合容器605の内容物の無菌状態を損ねることなく繰り返し使用できるあらゆる装置が使用されることが考えられ、例えば相互連結した血液バッグの穿刺針、または、コーブ連結装置が使用できる。移動装置620中の希釈剤を、混合容器605に移動させることもできる。移動装置620を、混合容器605から取り除いてもよい。第二のコネクター要素として、汚染を予防し、混合容器605の内容物の無菌状態を損ねることなく繰り返し使用できるあらゆる装置が使用されることが考えられ、例えば相互連結した血液バッグの穿刺針、または、コーブ連結装置が使用できる。
【0037】
工程750において、凍結保存された生物学的医薬組成物を含む生物学的医薬コンポーネント640は、好ましくは37℃±15℃の水浴中で融解させてもよい。凍結させた生物学的医薬組成物を融解させるのにその他の媒体を用いることも考えられ、このような媒体としては、例えば、空気、液体、半流動体、例えばゲル、または、固体、例えばホットプレートが挙げられる。工程755において、融解させた生物学的医薬組成物を含む生物学的医薬コンポーネント640は、薬剤製造領域に移動させることができる。工程760において、運搬システム630の一方の端末は、融解させた生物学的医薬コンポーネント640に連結され、運搬システム630のもう一方の端末は、工程710で説明した混合容器のコネクター要素625を介して混合容器605に予め連結される。一例として、融解させた生物学的医薬コンポーネント640中の適切な生物学的医薬組成物は、MSCであり得る。
【0038】
工程765において、運搬システム630を生物学的医薬コンポーネント640と混合容器605とに連結させた後、運搬システム630上のクランプ635を開いて、混合容器605中の希釈剤を生物学的医薬コンポーネント640に移動させることができる。工程770において、生物学的医薬コンポーネント640中の生物学的医薬組成物と希釈剤とを、混合容器605に戻してもよい。工程775において、生物学的医薬コンポーネント640中の内容物を混合容器605に移した後、混合容器605上の混合容器のコネクター要素625をクランプで固定して遮断してもよいし、または、加熱密封してもよく、さらに移動コンベヤー630を取り除いてもよい。
【0039】
続いて、工程780において、混合容器605の希釈剤と生物学的医薬組成物の内容物とを混合することができる。工程785において、混合容器605中の希釈剤と生物学的医薬組成物とを混合して、生物学的医薬組成物の混合物を形成した後、適切な量の生物学的医薬組成物の混合物を患者に投与することができる。投与装置または技術の例は、少なくとも、点滴ポンプ、注射器を介した技術、または、重力流による技術であり得る。
【0040】
この実施態様において、適切な量の生物学的医薬組成物の混合物は、例えば患者の体重のような様々な要因に応じて、それぞれの患者ごとに様々であってよい。体重に基づく投与のための生物学的医薬組成物の混合物を取り出すために、患者への投与前に正確な体積を即座に得るために、操作員は、移動装置620を使用して、コネクター要素610を介して混合容器605から適切な体積を引き出してもよい。適切な量はまた、体重に関係なく患者に同量の細胞を投与する均一な投与に基づく量であってもよい。
【0041】
さらに当然ながら、上述の工程は、上述した順番以外の順番で行ってもよい。さらに、これらの工程を組み合わせてもよいし、または、同時に行ってもよい。
図4および5は、本明細書で説明する技術に従って患者(人間または動物)に細胞療法として点滴をための生物学的医薬組成物、好ましくはMSCベースの医薬組成物の製造方法の少なくとも1種の代替の実施態様を示す流れ図および略図を説明する。方法500、600は、本発明の技術に係る製造が、制御された環境の外部で、例えばBSCの外部で行われることを説明する。このような医薬の製造方法は、患者(人間または動物)に近い領域で行うことができる。生物学的医薬コンポーネント640は、凍結保存された濃縮物として、投与する施設で、または、生物学的医薬の製造施設で受け取られてもよい。この実施態様において、1個または1個より多くの生物学的医薬組成物を含む生物学的医薬コンポーネント640は、開示された方法および器具を用いて同時に投与するために製造することも考えられる。
【0042】
工程505において、凍結保存された生物学的医薬組成物を含む生物学的医薬コンポーネント640は、好ましくは37℃±15℃の水浴中で融解させてもよい。凍結させた生物学的医薬組成物を融解させるのにその他の媒体を用いることも考えられ、このような媒体としては、例えば、空気、液体、半流動体、例えばゲル、または、固体、例えばホットプレートが挙げられる。工程510において、融解させた生物学的医薬コンポーネント640、希釈剤コンポーネント645、および、混合容器605は、混合領域に移動させることができ、例えば患者に近い領域に移動させることもできる。希釈剤コンポーネント645における希釈剤は、医療用希釈剤であってもよく、例えば、電解質溶液、塩類溶液、緩衝食塩水、デキストロース、水、または、それらの組み合わせが挙げられる。希釈剤の量は、0ml〜約1000mlの範囲であり得る。工程515〜540において、第一のコネクター要素650は、希釈剤コンポーネント645に取り付けられることが考えられる。さらに固定装置615は、移動装置620に連結される。続いて固定装置615は、希釈剤コンポーネント645に取り付けられた第一のコネクター要素650に取り付けてもよい。図4および5において、第一のコネクター要素650は、血管穿刺針として示される。第一のコネクター要素として、汚染を予防または回避し、希釈剤コンポーネント645の内容物の無菌状態を損ねることなく繰り返し使用できるあらゆる装置が使用されることが考えられ、例えば相互連結した血液バッグの穿刺針、または、コーブ連結装置が使用できる。さらに図4および5において、固定装置615は、ねじ固定式のカニューレとしても示される。当然ながら、移動装置620に取り付け、コネクター要素650を介して移動装置620を希釈剤コンポーネント645に固定することができるあらゆる固定装置を使用することができ、例えば相互連結したねじ固定式のカニューレを使用することができる。
【0043】
続いて、移動装置620を希釈剤コンポーネント645に連結した後に、希釈剤コンポーネント645中の適切な量の希釈剤(これは、0ml〜約1000mlの範囲であり得る)は、希釈剤コンポーネント645から引き出して移動装置620に送ってもよい。適切な量の希釈剤は、各患者に応じて様々であってよい。図4で説明された実施態様においておよび5、移動装置620は、注射器として示される。滅菌下での希釈剤の移動を可能にするあらゆる移動装置の使用が考えられ、例えば、注射器、フレキシブルチューブ要素、貯留用ハーネス、および、リジッドチューブ要素が使用できる。移動装置620は、希釈剤コンポーネント645から取り外して、固定装置615および第二のコネクター要素610を介して混合容器605に連結してもよい。上述したように、第二のコネクター要素610は、血管穿刺針として示される。第二のコネクター要素として、汚染を予防または回避し、混合容器605の内容物の無菌状態を損ねることなく繰り返し使用できるあらゆる装置が使用されることが考えられ、例えば相互連結した血液バッグの穿刺針、または、コーブ連結装置が使用できる。移動装置620中の希釈剤を、混合容器605に移動させることもできる。工程545〜560において、運搬システム630は、少なくともクランプ635を用いて閉められる。運搬システム630の末端が生物学的医薬コンポーネント640に連結されたら、運搬システム630のもう一方の末端は、混合容器のコネクター要素625を介して混合容器605に連結される。一例として、融解させた生物学的医薬コンポーネント640中の適切な生物学的医薬組成物は、MSCであり得る。移動装置620中の希釈剤を、混合容器605に移動させることもできる。生物学的医薬コンポーネント640から混合容器605への、滅菌下での生物学的医薬の移動を可能にするあらゆる運搬システムが使用できる。
【0044】
図4および5において、運搬システム630は、クランプ635を有する複数のリードを有する複合チューブシステムとして示され、このようなシステムとしては、例えば、滅菌下での連結技術に適したチューブを通じて複数の生物学的医薬組成物を貯留するための一連の貯留用ハーネスが挙げられる。しかしながら、本明細書で説明する技術を実施する際に使用するための代替物も考えられる。例えば、4個の穿刺針が1つになったアダプター、または、5個の穿刺針が1つになったアダプターが考慮される。これらは、フレキシブルチューブであってもよいし、または、リジッドチューブ要素であってもよい。運搬システム630は、1個の移動コンベヤーからなるものでもよいし、または、1個より多くの移動コンベヤーからなるものでもよく、それにより複数の生物学的医薬組成物を混合容器605に移動させるために連結させることが可能になり、加えて、滅菌下での連結と生物学的医薬の混合容器605への移動とが可能になる。
【0045】
運搬システム630を生物学的医薬コンポーネント640と混合容器605とに連結させた後、運搬システム630上のクランプ635を開いて、生物学的医薬コンポーネント640中の生物学的医薬組成物を混合容器605に移動させることもできる。工程565において、混合容器605の内容物を続いて混合してもよい。工程565において、生物学的医薬コンポーネント640中の内容物を混合容器605に移した後、混合容器605上の混合容器のコネクター要素625を続いてクランプで固定して遮断してもよいし、または、加熱密封してもよく、さらに移動ハーネス630を取り除いてもよい。工程570において、混合容器605中で希釈剤および生物学的医薬組成物を混合し、生物学的医薬組成物の混合物を形成した後、適切な量の生物学的医薬組成物の混合物を患者に投与することができる。投与装置および/または手順の例としては、少なくとも点滴ポンプ、注射器、または、重力流を介した方法が挙げられる。
【0046】
適切な量の生物学的医薬組成物の混合物は、例えば患者の体重のような様々な要因に応じて、それぞれの患者ごとに様々であってよい。体重に基づく投与のための生物学的医薬組成物の混合物を取り出すために、患者への投与前に正確な体積を即座に得るために、操作員は、移動装置620を使用して、コネクター要素610を介して混合容器605から適切な体積を引き出すと予想される。適切な量はまた、体重に関係なく各患者に同量の細胞を投与する均一な投与に基づく量であってもよい。
【0047】
さらに当然ながら、上述の工程 は、上述した順番以外の順番で行ってもよい。さらに、これらの工程を組み合わせてもよいし、または、同時に行ってもよい。
その代わりの実施態様において、図6で示されるように、希釈剤コンポーネント645を混合容器605の代わりに用いる場合が考えられる。この実施態様において、生物学的医薬コンポーネント640中の内容物を、運搬システム630を介して希釈剤コンポーネント645に移す。運搬システム630は、連結部660を介して希釈剤コンポーネント645に連結することができる。当業者であれば当然のことながら、連結部660は、滅菌下での連結を可能にするものであればどのようなコネクターでもよく、例えば血管穿刺針、または、連結装置である。希釈剤コンポーネント645中で希釈剤と生物学的医薬組成物とを混合して、生物学的医薬組成物の混合物を形成したら、希釈剤コンポーネント645中の生物学的医薬組成物の混合物のその時点での適切な量を、患者に投与することができる。投与装置および/または手順の例としては、少なくとも点滴ポンプ、注射器、または、重力流を介した方法が挙げられる。
【0048】
本発明の技術のその他の形態は、制御されたBSCタイプの環境の外部で患者(人間または動物)に投与するための、生物学的医薬組成物を製造する1種またはそれ以上のキットを含む。図5は、本製造キットの一形態を説明する。図5に示されるキットのコンポーネントは、生物学的医薬組成物用容器コンポーネント640、混合容器コンポーネント605、適切な量の希釈剤が充填された希釈剤コンポーネント645を含む。希釈剤コンポーネント645における希釈剤は、医療用希釈剤であってもよく、例えば、電解質溶液、塩類溶液、緩衝食塩水、デキストロース、水、または、それらの組み合わせが挙げられる。希釈剤の量は、0ml〜薬1000mlの範囲であり得る。生物学的医薬の製造キットは、希釈剤を移動させる装置620(図5では注射器620として示されている)をさらに含んでいてもよいが、滅菌下での希釈剤の移動を可能にするあらゆる移動装置が使用でき、例えば、注射器、フレキシブルチューブ要素、貯留用ハーネス、および、リジッドチューブ要素が使用できる。
【0049】
また生物学的医薬の製造キットは、生物学的医薬組成物を運搬するシステム630を含んでいてもよい。図5において、運搬システム630は、複数のリードを有する複合チューブシステムとして示されており、このようなシステムとしては、例えば、滅菌下で連結する技術に適合するチューブを通じて複数の生物学的医薬組成物を貯留するための一連の貯留用ハーネス、例えば、なかでも複数のリードを有する複合チューブシステム、一連の貯留用ハーネス、複数のリードを有するリジッドチューブ要素、4個の穿刺針が1つになったアダプター、および、5個の穿刺針が1つになったアダプターが挙げられる。また本キットは、移動装置620に取り付けられた固定装置615を含んでいてもよい。一例として、固定装置615は、ねじ固定式のカニューレとして示される。さらに、コネクター要素610および615は、混合容器コンポーネント605と希釈剤コンポーネント645との両方への移動装置620の連結に関して示される。このような生物学的医薬の製造キットは、人間または動物へ投与するためのコンポーネント(示さず)をさらに含み、このようなコンポーネントとしては、例えば、点滴ポンプ、注射器、または、重力流による投与を可能にするフレキシブルチューブが挙げられる。
【0050】
図2で、生物学的医薬の製造キットの代替の実施態様を説明する。生物学的医薬を製造するキットのコンポーネントは、例えば、生物学的医薬コンポーネント430、混合容器コンポーネント440、適切な量の希釈剤が充填された希釈剤コンポーネント420を含んでもよい。また生物学的医薬の製造キットは、複数のコネクター要素415、425、435を含み、これらはそれぞれ、希釈剤コンポーネント420、生物学的医薬コンポーネント430、および、混合容器440に取り付けられていてもよい。図2で説明したように、コネクター要素415、425、435は、血管穿刺針として示される。当然ながら、コネクター要素として、汚染を予防し、コンポーネントまたは貯蔵装置の内容物の無菌状態を損なうことなく繰り返し使用できるあらゆる装置が置き換えられる。また生物学的医薬の製造キットは、固定装置410、および、移動装置405を含む。
【0051】
図2において、例えば固定装置410は、ねじ固定式のカニューレとして示される。当然ながら、移動装置405に取り付けて、移動装置405を生物学的医薬コンポーネント430、希釈剤コンポーネント420および混合容器440に固定することができるあらゆる固定装置が使用可能である。ここで再度図2を参照すると、例えば移動装置405は、注射器として示される。移動装置405は、BSCタイプの環境の外部で生物学的医薬コンポーネント430、希釈剤コンポーネント420および混合容器440の内容物を移動させることができるあらゆる装置であってもよく、例えばフレキシブルチューブ製のダクトが挙げられる。このような生物学的医薬の製造キットは、人間または動物へ投与するためのコンポーネント(示さず)をさらに含む。
【0052】
本発明の技術のその他の形態は、生物学的医薬組成物(例えば、本発明の技術に係るMSCベースの医薬組成物)の製造方法を含み、ここで生物学的医薬組成物は、区分けされた環境の外部で希釈剤と混合され、生物学的医薬組成物の混合物を形成することができる。
【0053】
本発明の技術の具体的な実施態様は、これらの工程の1またはそれ以上を省略してもよいし、および/または、これらの工程を列挙した順番とは異なる順番で行ってもよい。例えば、いくつかの工程は、本発明の技術の具体的な実施態様において行われたように行わない場合もある。さらなる例を挙げれば、所定の工程を、一時的に異なる順番で行ってもよく、例えば上記で列挙した順番ではなく同時に行ってもよい。また、様々な生物学的なコンポーネントを適切に送達するのに追加の工程が必要となる場合、そのような追加の工程も想定される。
【0054】
前述した本明細書で説明する技術の実施態様の説明は、図解および説明を目的として示したものである。それらが全てとしたり、または、本明細書で説明する技術を開示された正確な形態に限定したりすることは目的とせず、上記の教示の観点から改変および多様な形態が可能であり、または、それらを本発明の技術を実施することによって得てもよい。本発明の技術の原理およびその実際の適用を説明するために実施態様を選択して説明したが、それにより、当業者であれば、様々な実施態様で、さらに、考えられる具体的な用途に適するように様々な改変を施して本発明の技術を利用できるものと思われる。
【0055】
当業者であれば明白であると予想されるが、本明細書において開示された実施態様は、あらゆる生物学的医薬組成物の製造に適用される可能性がある。特許請求された主題の実施態様の所定の特徴を本明細書において記載されている通りに説明したが、当業者であれば多くの改変、置換、変化および等価体を思いつくものと思われる。
【0056】
加えて、数種の機能的なブロックとそれらの関係を詳細に説明したが(例えば図2〜6)、当業者であれば、その他のものを使用することなく数種の操作を行ってもよいし、または、追加の機能または機能間の関係が確立してもよく、それでもなお特許請求された主題に従っているものも考慮される。従って当然ながら、添付の請求項は、このような全ての改変および変化が特許請求された主題の実施態様の本質の範囲内であるとして、それらを包含することを目的とする。
【0057】
数々の実施態様は図面を参照しながら上述した通りである。これらの図面は、本発明の技術のシステムおよび方法を実施する具体的な実施態様のある一定の詳細を説明している。しかしながら、本発明の技術を図面を用いて説明することは、本発明の技術に、図面に示された特徴に関連する何らかの限定を与えるものとして解釈されるべきではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物学的医薬組成物の混合物を製造する方法であって:
適切な量の希釈剤を、希釈剤コンポーネントから混合容器に移動させること;
生物学的医薬コンポーネント中に含まれる凍結させた生物学的医薬組成物を融解させる工程;
希釈剤を、混合容器から生物学的医薬コンポーネントに含まれる生物学的医薬組成物に移動させる工程;
生物学的医薬組成物と希釈剤とを、生物学的医薬コンポーネントから混合容器に移動させる工程;
生物学的医薬組成物と希釈剤とを混合して、生物学的医薬組成物の混合物を形成する工程;および、
区分けされた環境の外部で、適切な量の生物学的医薬組成物の混合物を患者に投与する工程、
を含む、上記方法。
【請求項2】
前記生物学的医薬を生物学的医薬コンポーネントから混合容器に移動させる工程が:
生物学的医薬コンポーネントに、運搬システムの遠位端を取り付ける工程;および、
混合容器に、運搬システムの近位端を取り付ける工程、
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記運搬システムが、複数のリードを有する複合チューブシステム、貯留用ハーネス、4個の穿刺針が1つになったアダプター、5個の穿刺針が1つになったアダプター、および、リジッドチューブシステムからなる群より選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記適切な量の希釈剤を希釈剤コンポーネントから混合容器に移動させる工程が:
第一のコネクター要素を希釈剤コンポーネントに取り付ける工程;
第二のコネクターを混合容器に取り付ける工程;
移動装置を希釈剤コンポーネントにおける第一のコネクターに連結する工程;
希釈剤コンポーネントから適切な量の希釈剤を引き出して移動装置に送る工程;および、
移動装置を希釈剤コンポーネントから取り外し、移動装置を混合容器の第二のコネクターに取り付ける工程、
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記移動装置が、注射器、フレキシブルチューブ要素、貯留用ハーネス、および、リジッドチューブ要素からなる群より選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記生物学的医薬組成物の混合物の適切な量が、患者の体重によって決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記患者が、人間または動物である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記生物学的医薬組成物の混合物の適切な量が、均一な用量に基づく、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記均一な用量が、人間のための生物学的医薬コンポーネントに含まれる少なくとも1種の生物学的医薬組成物で構成される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記均一な用量が、動物のための生物学的医薬コンポーネントに含まれる少なくとも1種の生物学的医薬組成物で構成される、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記第一および第二のコネクター要素が、血管穿刺針、および、連結装置からなる群より選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項12】
前記生物学的医薬組成物が、多分化能または多能性細胞で構成される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記生物学的医薬組成物が、分化細胞で構成される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記多分化能または多能性細胞が、間葉幹細胞で構成される、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記間葉幹細胞が、ヒト間葉幹細胞で構成される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
生物学的医薬組成物の混合物を製造する方法であって:
生物学的医薬コンポーネント中に含まれる凍結させた生物学的医薬組成物を融解させる工程;
適切な量の希釈剤を希釈剤コンポーネントから引き出して移動装置に送る工程;
移動装置中の希釈剤を生物学的医薬組成物を含む生物学的医薬コンポーネントに移動させ、生物学的医薬組成物の混合物を形成する工程;
生物学的医薬組成物の混合物を生物学的医薬コンポーネントから引き出して移動装置に送る工程;
移動装置中の生物学的医薬組成物の混合物を混合容器に移動させる工程;および、
区分けされた環境の外部で、適切な量の生物学的医薬組成物の混合物を患者に投与する工程、
を含む、上記方法。
【請求項17】
前記生物学的医薬組成物の混合物を移動装置に引き出す工程が:
生物学的医薬組成物の混合物の一部を生物学的医薬コンポーネントから引き出して移動装置に送る工程;および、
移動装置中の生物学的医薬組成物の混合物の一部を生物学的医薬コンポーネントに戻す工程、
をさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記生物学的医薬コンポーネントから引き出された生物学的医薬組成物の混合物の一部が、生物学的医薬コンポーネント中の内容物の体積に基づき0%〜100%の範囲である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記投与が、静脈内点滴による投与である、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記投与が、静脈注射による投与である、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
前記移動装置が、注射器、フレキシブルチューブ要素、貯留用ハーネス、および、リジッドチューブ要素からなる群より選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項22】
区分けされた環境の外部で生物学的医薬組成物の混合物を製造するための生物学的医薬の製造キットであって:
生物学的医薬組成物を含む生物学的医薬コンポーネント;混合容器;適切な希釈剤が充填された希釈剤コンポーネント;移動装置;運搬システム;および、人間または動物へ投与するためのコンポーネント、
を含む、上記キット。
【請求項23】
前記移動装置が、注射器、フレキシブルチューブ要素、貯留用ハーネス、および、リジッドチューブ要素からなる群より選択される、請求項22に記載の生物学的医薬の製造キット。
【請求項24】
前記運搬システムが、複数のリードを有する複合チューブシステム、一連の貯留用ハーネス、複数のリードを有するリジッドチューブ要素、4個の穿刺針が1つになったアダプター、および、5個の穿刺針が1つになったアダプターからなる群より選択される、請求項22に記載の生物学的医薬の製造キット。
【請求項25】
前記生物学的医薬組成物が、多分化能または多能性細胞で構成される、請求項22に記載の生物学的医薬の製造キット。
【請求項26】
前記生物学的医薬組成物が、分化細胞で構成される、請求項22に記載の生物学的医薬の製造キット。
【請求項27】
区分けされた環境の外部で生物学的医薬組成物を希釈剤と混合して、生物学的医薬組成物の混合物を形成することを含む、生物学的医薬組成物の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2011−518601(P2011−518601A)
【公表日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−506246(P2011−506246)
【出願日】平成20年4月23日(2008.4.23)
【国際出願番号】PCT/US2008/061220
【国際公開番号】WO2009/131575
【国際公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【出願人】(500430486)オシリス セラピューティクス,インコーポレイテッド (10)
【Fターム(参考)】