説明

細胞透過性p18組換えタンパク質、これをコードするポリヌクレオチド及びこれを有効成分として含有する抗癌組成物

本発明は、腫瘍抑制因子p18に巨大分子伝達ドメイン(MTD)が融合され、細胞透過性を有するp18組換えタンパク質、前記細胞透過性p18組換えタンパク質をコードするポリヌクレオチド、前記細胞透過性p18組換えタンパク質の発現ベクター及び前記細胞透過性p18組換えタンパク質を有効成分として含有するp18欠損又は機能消失を治療するための抗癌剤用薬学的組成物に関する。本発明の細胞透過性p18組換えタンパク質は、ハプロ不全腫瘍抑制因子であるp18を細胞内に伝達し、DNA損傷又は腫瘍形成信号による細胞周期の阻害とアポトーシスを誘導するATMとp53の活性化に関連する信号伝達機構を効果的に再活性化するので、これを有効成分として含有する組成物は、抗癌剤として有用に用いられる。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腫瘍抑制因子p18に巨大分子伝達ドメイン(macromolecule transduction domain;MTD)が融合されて細胞透過性を有するp18組換えタンパク質、前記細胞透過性p18組換えタンパク質をコードするポリヌクレオチド、前記細胞透過性p18組換えタンパク質の発現ベクター及び前記細胞透過性p18組換えタンパク質を有効成分として含有するp18欠損又は機能消失を治療するための抗癌剤用薬学的組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
細胞は、細胞周期(cell cycle)と呼ばれる一定の規則的な過程を経て分裂、増殖する。細胞周期とは、細胞分裂が起こり、再度次の細胞分裂が起こるまでの一連の過程を意味するが、細胞分裂を準備する休止期であるG1期を始めとし、染色体DNAを複製するS期を経て、他の休止期で、かつ最後の有糸分裂に備えて活発なタンパク質の合成がなされるG2期、及びその後に倍加したそれぞれの染色体が均等に分配されるM期、即ち、分裂期につながる秩序ある過程を経るようになる。このような一連の過程を循環、反復して細胞が増殖し完成する。
【0003】
また、細胞には、細胞周期を促進させる機構と共に「細胞周期のチェックポイント(check point)」という細胞周期の進行を点検する段階があり、異常が感知されれば細胞周期を停止させ、これを矯正する機構を作動させる。例えば、DNAが損傷を受けたり、放射線が照射された細胞では、腫瘍形成反応を進行する間、G1期からS期への進行を阻止するG1期のチェックポイント、S期の進行を延ばすS期のチェックポイント、細胞周期をG2期で停止させ、M期への進行を阻止するG2期のチェックポイントを通じて細胞周期の進行が遮断される(Kastan、M.B.Nature 410:766−7(2001)(非特許文献1))。
【0004】
このような細胞周期の精巧な調節は、様々な調節因子により誘導されるが、その中で最も重要な役割を果たすのが、サイクリン依存性タンパク質キナーゼ(cyclin−dependent protein kinase;CDK)である。CDKは、細胞周期の各段階ごとに特異的に発現されるサイクリンという調節タンパク質と結合して機能的な単位を形成するようになるが、これにより細胞周期の各段階ごとに活性化される特異的で多様な組合わせのサイクリン−CDK複合体が製造される。もし、G1チェックポイントで細胞が成長過程に行けると判断されればS期に細胞周期が進行されるが、まずサイクリンDとサイクリン依存性タンパク質キナーゼ2(CDK2)又は6(CDK6)が活性化され、S期の進入時にサイクリンEとCDK2の複合体が活性化され、サイクリンAは、G1後期とS期の初期にCDK2と結合して細胞周期の進行を実行する。
【0005】
前述のように、細胞周期の進行は、多様なサイクリンとこれに結合するキナーゼにより調節され、CDKの活性化を抑制するCDK4インヒビター(INK4)とCDK相互作用タンパク質/キナーゼ抑制タンパク質(CDK interacting protein/kinase inhibitory protein)(CIP/KIP)ファミリーなどのCDK抑制因子の結合が重要に作用する(Balomenos、D.及びMartinez、A.C.Immunol.Today 21:551−5(2000)(非特許文献2))。また、ホスファチジルイノシトール3−キナーゼ関連キナーゼ(phosphatidylinositol 3−kinase related kinases;PIKK)ファミリーのセリン/トレオニンタンパク質キナーゼであるATM(ataxia telangiectasia mutated)は、DNA損傷や腫瘍形成信号を受けると、細胞周期のチェックポイントを調節することにより、ゲノムの完全性と安全性を維持することが知られているが、p53、MDM2(murine double minute 2)、BRCA1のような下流の基質タンパク質を活性化させて細胞のDNA損傷反応を抑制することとなる(Lu、S.ら、Carcinogenesis 27:848−55(2006)(非特許文献3))。例えば、二本鎖DNAの損傷のような著しい遺伝子の損傷信号が細胞内に伝達されれば、ATMが細胞周期の抑制、アポトーシス(apoptosis)誘導に関連する標的タンパク質を活性化させて遺伝子の転写を調節し、損傷した遺伝子を復旧することとなる(Abraham、R.T.Nat.Med.11:257−8(2005)(非特許文献4))。
【0006】
このようなATMに関連するp18は、ヒトとマウスを対象とした実験において、腫瘍抑制因子(tumor suppressor)として作用することが確認された。p18の欠損又は機能の消失は、DNA損傷や突然変異を引き起こした細胞のアポトーシスを抑制することにより、癌に対する感受性(susceptibility)を増加させるが、これは細胞を悪性形態(malignant transformation)に変化させる(Abraham、R.T.Nat.Med.11:257−8(2005)(非特許文献4))。p18の機能を調査するために、この遺伝子の機能が破壊されたノックアウトマウス(knockout mouse)を対象とした研究において、p18の機能を完全に消失した場合は、受精後に胚致死が示され、p18機能が正常より低くなった場合は、成長しながら肝癌、乳癌、肺癌など多種の癌が発病していることが報告されている(Park、B.J.ら、Cell 120:209−21(2005)(非特許文献5)) 。また、p18は、DNA損傷に反応して核中へ伝達され活性化されるが、p18の発現が増加すれば細胞増殖と死滅を調節する機構を有する他の腫瘍抑制遺伝子であるp53がリン酸化されて活性化され(French、J.E.ら、Carcinogenesis 22:99−106(2001)(非特許文献6)及びIde、F.ら、Am.J.Pathol.163:1729−33(2003)(非特許文献7))、反対にp18が欠乏すれば、p53の発現が抑制される(Park、B.J.ら、Cell 120:209−21(2005)(非特許文献5))。
【0007】
このようなp18遺伝子は、リンパ腫でヘテロ接合性の消失(LOH:loss−of heterozygosity)が発見された染色体の6P24−25部位に位置しており、この染色体部分における遺伝子の欠損がp18の低い発現の原因になり、癌が発生するという主張も提起されている(Baumgartner、A.K.ら、Lab.Invest.83:1509−16(2003)(非特許文献8))。更に、最近の研究によれば、多様なヒト癌細胞株でも一般的に、高頻度でp18の機能が低下していることが発見されており、これはp18がハプロ不全腫瘍抑制因子(haploinsufficient tumor suppressor)であり、ATMと相互作用を通じたp53の重要な調節子として機構内で進行速度を制限する速度制限因子(rate−limiting factor)であることを提示するものである(Park, B.J.ら、Cell 120:209−21(2005)(非特許文献5))。
【0008】
そこで、本発明者は、DNA損傷のような腫瘍形成信号に反応して細胞周期を制御しアポトーシスを誘導するp53の活性のためにp18が直接ATMに作用するということから(Savitsky、K.ら、Hum.Mol.Genet.4:2025−32(1995)(非特許文献9))、ATMとp53を含む細胞周期のチェックポイントの信号伝達の経路内でp18がハプロ不全腫瘍抑制因子として重要な標的タンパク質であることを確信し(Kastan、M.B.Nature 410:766−7(2001)(非特許文献1);Balomenos、D.及びMartinez、A.C.Immunol.Today 21:551−5(2000)(非特許文献2);Abraham、R.T.Nat.Med.11:257−8(2005)(非特許文献4);及びPark、B.J.ら、Cell 120:209−21(2005)(非特許文献5))、これを用いて新規抗癌剤の開発のために鋭意研究をした。
【0009】
一方、合成化合物または天然物の小分子(small molecules)は細胞内に伝達できるが、タンパク質、ペプチド、核酸のような巨大分子(macromolecules)は細胞内に伝達できない。これらは、分子量500以上の巨大分子で、生きている細胞の原形質膜(plasma membrane)、即ち、二重脂質膜構造(lipid bilayer structure)を通過することができないことが広く知られている。これを克服するための方法として、「巨大分子細胞内伝達技術(macromolecule intracellular transduction technology;MITT)」が開発されたが(Joら、Nat.biotech.19:929−33(2001)(非特許文献10))、これは疾病治療性巨大分子の生体内伝達を可能にすることによって、既存の医薬品開発技術では不可能であったペプチド、タンパク質、遺伝子自体を用いるバイオ新薬物の開発を可能にする。この技術によると、巨大分子は「疎水性巨大分子伝達ドメイン(hydrophobic macromolecule transduction domain;MTD)」と他の様々な細胞内運搬体と融合され、組換えタンパク質の形態で合成または発現、精製され、細胞内に伝達された後、特定位置に正確かつ迅速に運搬され、所要の様々な役割を効果的に発揮できる。このように巨大分子伝達ドメイン(MTD)は、ペプチド、タンパク質、DNA、RNA、合成化合物などと融合されて細胞内に入れない多くの不透過性物質の伝達を可能にする。
【0010】
そこで、本発明者は、腫瘍抑制因子p18に巨大分子の伝達ドメインを融合させて細胞透過性を付与したp18組換えタンパク質を製造し、この組換えタンパク質がインビトロ(in vitro)だけでなくインビボ(in vivo)環境下でも細胞外部から大量の腫瘍抑制因子p18を細胞内へ効果的に伝達し、ヒトの多様な癌で発生するp18欠損又は機能消失を治療できる抗癌剤として用いられることを確認し、本発明を完成した。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Kastan、M.B.Nature 410:766−7(2001)
【非特許文献2】Balomenos、D.及びMartinez、A.C.Immunol.Today 21:551−5(2000)
【非特許文献3】Lu、S.ら、Carcinogenesis 27:848−55(2006)
【非特許文献4】Abraham、R.T.Nat.Med.11:257−8(2005)
【非特許文献5】Park、B.J.ら、Cell120:209−21(2005)
【非特許文献6】French、J.E.ら、Carcinogenesis 22:99−106(2001)
【非特許文献7】Ide、F.ら、Am.J.Pathol.163:1729−33(2003)
【非特許文献8】Baumgartner、A.K.ら、Lab.Invest.83:1509−16(2003)
【非特許文献9】Savitsky、K.ら、Hum.Mol.Genet.4:2025−32(1995)
【非特許文献10】Joら、Nat.biotech.19:929−33(2001)
【発明の概要】
【0012】
発明が解決しようとする課題
従って、本発明の目的は、腫瘍抑制因子p18に細胞透過性を付与し、これを細胞内に高効率で導入することにより、ヒトの多様な癌で発生するp18欠損又は機能消失が治療できる抗癌剤として細胞透過性p18組換えタンパク質を提供することである。
【0013】
課題を解決するための手段
前記目的を達成するために、本発明は、腫瘍抑制因子p18と巨大分子伝達ドメイン(MTD)の融合で細胞透過性が付与され、p18を細胞内に高効率で導入する細胞透過性p18組換えタンパク質を提供する。
【0014】
また、前記細胞透過性p18組換えタンパク質をコードするポリヌクレオチドを提供する。
【0015】
更に、前記ポリヌクレオチドを含む発現ベクター及びこの発現ベクターで形質転換された形質転換細菌を提供する。
【0016】
また、前記形質転換細菌を培養することを含む細胞透過性p18組換えタンパク質の製造方法を提供する。
【0017】
最後に、前記p18組換えタンパク質を有効成分として含有する細胞透過性p18欠損又は機能消失を治療するための抗癌剤用薬学的組成物を提供する。
【0018】
発明の効果
本発明の細胞透過性を有するp18組換えタンパク質は、腫瘍抑制因子であるp18を細胞内に高効率で導入し、DNA損傷又は腫瘍形成信号による細胞周期の阻害とアポトーシスを誘導するATMとp53の活性化に関連する信号伝達機構を再活性化させることにより、ヒトの多様な癌に対する抗癌剤として有用に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1aは、本発明によって全長形及び切頭形として考案されたkFGF4由来MTDが融合されたp18組換えタンパク質の構造を示したものであり、図1bは、本発明によって全長形として考案されたJO−101及びJO−103MTDがそれぞれ融合されたp18組換えタンパク質の構造を示したものである。
【図2】図2aは、図1aで考案された全長形及び切頭形のkFGF4由来MTDが融合されたp18組換えタンパク質をコードするDNA断片をPCRで増幅した結果であり、図2bは、図1bで考案された全長形のJO−101及びJO−103MTDが融合されたp18組換えタンパク質をコードするDNA断片をPCRで増幅した結果である。
【図3】図3aは、pGEM−T EasyベクターにPCR増幅産物をサブクローニング(subcloning)する過程を示した模式図であり、図3b、図3cは、それぞれ図2a及び2bのPCR増幅産物がpGEM−T Easyベクターにサブクローニングされたことを示したものである。
【図4】図4aは、本発明の組換え断片をpET−28a(+)ベクターにクローニングして組換え発現ベクターを作製する過程を示した模式図であり、図4b、図4cは、本発明の組換え発現ベクターにそれぞれの組換え断片がクローニングされたことを示したものである。
【図5】図5aは、本発明のp18組換えタンパク質の発現を多様な宿主細胞を対象として調査した結果であり、図5bは、本発明のp18組換えタンパク質の発現をタンパク質発現誘導剤であるIPTGの存在(+)又は非存在(−)下で調査した結果である。
【図6】図6a〜図6cは、それぞれ本発明の組換え発現ベクターが形質転換された細菌から発現された全長形のkFGF4由来MTD、JO−101MTD、及びJO−103MTDが融合されたp18組換えタンパク質を精製した結果である。
【図7】図7a〜図7cは、それぞれ本発明による全長形のkFGF4由来MTD、JO−101MTD、及びJO−103MTDが融合されたp18組換えタンパク質の細胞透過性をフローサイトメトリーで分析した結果である。
【図8】図8a〜図8cは、それぞれ本発明による全長形のkFGF4由来MTD、JO−101MTD、及びJO−103MTDが融合されたp18組換えタンパク質の細胞透過性をマウス線維芽細胞で共焦点レーザー走査顕微鏡で観察した結果である。
【図9】図9は、本発明による全長形のkFGF4由来MTD、JO−101MTD、及びJO−103MTDが融合されたp18組換えタンパク質の細胞透過性を多様なマウス組織で共焦点レーザー走査顕微鏡で観察した結果である。
【図10】図10は、本発明の細胞透過性p18組換えタンパク質HMp18及びHp18Mの細胞内機能をウエスタンブロッティング(western blotting)で分析した結果である。
【図11】図11は、本発明の細胞透過性p18組換えタンパク質HMp18、Hp18M、HMp18M、HMp18、Hp18M及びHMp18Mの細胞内機能をウエスタンブロッティングで分析した結果である。
【図12】図12は、本発明の細胞透過性p18組換えタンパク質HMp18、Hp18M、HMp18M及びHMp18のアポトーシス誘導効果を細胞内DNA含量分析を通じて調査した結果である。
【図13】図13は、本発明の細胞透過性p18組換えタンパク質HMp18のアポトーシス誘導効果をインビボのアネキシン−V(annexin−V)染色を通じて調査した結果である。
【図14】図14a、図14bは、それぞれ本発明の細胞透過性p18組換えタンパク質HMp18及びHp18Mを腫瘍が形成されたマウスに腹腔注射で21日間処理した後、毎日腫瘍のサイズと体重の変化を測定した結果である。
【図15】図15は、本発明による細胞透過性p18組換えタンパク質HMp18及びHp18Mを腹腔注射で21日間投与したマウスにおける腫瘍サイズの変化を対照群と比較して示した写真である。
【図16】図16a、図16bは、それぞれ本発明の細胞透過性p18組換えタンパク質HMp18及びHp18Mを腫瘍が形成されたマウスに腹腔注射で21日間処理した後、7日間処理を中止し、毎日腫瘍のサイズと体重の変化を測定した結果である。
【図17】図17a、図17bは、腫瘍が形成されたマウスを、本発明の細胞透過性p18組換えタンパク質HMp18により静脈注射を介して14日間処理した後、14日間処理を中止し、毎日腫瘍のサイズと体重の変化を測定した結果である。
【図18】図18は、本発明の細胞透過性p18組換えタンパク質HMp18を腫瘍が形成されたマウスに静脈注射で14日間投与した後、腫瘍サイズの変化を対照群と比較して示した写真である。
【図19】図19は、腫瘍が形成されたマウスを、本発明の細胞透過性p18組換えタンパク質HMp18をにより静脈注射を介して14日間処理した後、14日間処理を中止し、腫瘍サイズの変化を対照群と比較して示した写真である。
【図20】図20a、図20bは、腫瘍が形成されたマウスを、それぞれ本発明の細胞透過性p18組換えタンパク質Hp18M、HMp18M及びHMp18により腫瘍直接注射(intratumoral injection)を介して14日間処理した後、14日間処理を中止し、毎日腫瘍のサイズと体重の変化を測定した結果である。
【図21】図21は、本発明の細胞透過性p18組換えタンパク質Hp18M、HMp18M及びHMp18を腫瘍が形成されたマウスに腫瘍直接注射で14日間投与した後、腫瘍サイズの変化を対照群と比較して示した写真である。
【図22】図22は、本発明の細胞透過性p18組換えタンパク質Hp18M、HMp18M及びHMp18を腫瘍が形成されたマウスに静脈注射で14日間投与した後、14日間投与を中止し、腫瘍サイズの変化を対照群と比較して示した写真である。
【図23】図23は、本発明の細胞透過性p18組換えタンパク質HMp18を静脈注射で投与したマウスの腫瘍組織における細胞の組織学的な変化をヘマトキシリンおよびエオシン(haematoxylin&eosin)染色で観察した結果である。
【図24】図24は、本発明の細胞透過性p18組換えタンパク質Hp18M、HMp18M及びHMp18を腫瘍直接注射で投与したマウスの腫瘍組織における細胞の組織学的な変化をヘマトキシリンおよびエオシン染色で観察した結果である。
【図25】図25は、本発明の細胞透過性p18組換えタンパク質HMp18を静脈注射で投与したマウスの腫瘍組織におけるアポトーシス誘導効果をTUNEL(terminal deoxynucleotidyl transferase−mediated dUTP nick−end labeling)分析で観察した結果である。
【図26】図26は、本発明の細胞透過性p18組換えタンパク質HMp18を静脈注射で投与したマウスの腫瘍組織におけるアポトーシス誘導効果をアポタグ(ApopTag)分析で観察した結果である。
【図27】図27は、本発明の細胞透過性p18組換えタンパク質Hp18M、HMp18M及びHMp18を腫瘍直接注射で投与したマウスの腫瘍組織におけるアポトーシス誘導効果をTUNEL分析で観察した結果である。
【図28】図28は、本発明の細胞透過性p18組換えタンパク質Hp18M、HMp18M及びHMp18を腫瘍直接注射で投与したマウスの腫瘍組織におけるアポトーシス誘導効果をアポタグ分析で観察した結果である。
【図29】図29は、本発明の細胞透過性p18組換えタンパク質HMp18Mを腫瘍直接注射で投与したマウスの腫瘍組織における遺伝子発現の変化をマイクロアレイ(Microarray)で分析した結果である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、腫瘍抑制因子p18と巨大分子伝達ドメイン(MTD)の融合により細胞透過性が付与され、p18を細胞内に高効率で導入する細胞透過性p18組換えタンパク質(CP−p18)及びこれをコードするポリヌクレオチドを提供する。
【0021】
本発明の特徴は、細胞内への導入が容易でない巨大分子である腫瘍抑制因子p18に特定の巨大分子伝達ドメイン(以下、「MTD」と略称する)を融合させて細胞透過性を付与することにより、p18を細胞内に高効率で伝達することにある。この時、巨大分子伝達ドメインは、癌転移の抑制因子であるNm23の片末端にのみ融合されるか、あるいはその両末端の両方に融合されてもよい。
【0022】
本発明では腫瘍抑制因子であるp18に融合されてもよい巨大分子伝達ドメイン(MTD)、すなわち、細胞内への巨大分子の伝達を可能にする3種のペプチドドメインそれぞれに前記p18を融合し、細胞透過性を有するp18組換えタンパク質を開発した。
【0023】
本発明において「細胞透過性p18組換えタンパク質」とは、巨大分子伝達ドメインと腫瘍抑制因子p18を含み、これらの遺伝的な融合や化学的な結合で形成された共有結合複合体を意味する。ここで「遺伝的な融合」とは、タンパク質をコードするDNA配列の遺伝的な発現を通じて形成された線状の共有結合からなる連結を意味する。
【0024】
DNA損傷のような腫瘍形成信号に反応して細胞周期を制御し、アポトーシスを誘導するp53の活性化のために直接ATMに作用するp18は、配列番号:1の塩基配列及び配列番号:2のアミノ酸配列を有する腫瘍抑制因子であって、ATMとp53を含む細胞周期のチェックポイントの信号伝達の経路内で重要な標的タンパク質として作用する。
【0025】
腫瘍抑制因子p18は、配列番号:2のアミノ酸配列における1位から60位までのアミノ酸を含むN末端ドメイン、61位から120位までのアミノ酸を含むS末端ドメイン、及び121位から168位までのアミノ酸を含むC末端ドメインで構成される(図1a参照)。
【0026】
前記腫瘍抑制因子p18に融合されてもよい巨大分子伝達ドメインとしては、配列番号:4、6、8及び53〜243で表されるアミノ酸配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む細胞透過性を有するポリペプチドを用いてもよい。前記配列番号:4、6、8及び53〜243で表されるアミノ酸配列のいずれか1つを有する巨大分子伝達ドメインは、細胞膜を貫通してポリペプチド、タンパク質ドメイン、又は全長タンパク質を含む生物学的な活性分子の細胞内への流入を媒介できる細胞透過性ポリペプチドである。本発明による巨大分子伝達ドメインは、N末端領域、疎水性領域及びC末端の分泌タンパク質切断部位(secreted protein cleavage site)の3部分からなるシグナルペプチド(signal peptides)においてヘリックス(helix)を形成し、細胞膜標的(targeting)活性を付与する疎水性領域を有するように考案されたものである。このような巨大分子伝達ドメインは、細胞に損傷を加えず、かつ直接細胞膜を透過することにより、標的タンパク質を細胞内に移動させて目的とする機能を発揮させることができる。
【0027】
本発明により腫瘍抑制因子p18に融合されてもよい配列番号:4、6、8及び53〜243で表されるアミノ酸配列を有する巨大分子伝達ドメインを下記表1a〜1lに示す。
【0028】
【表1a】

【0029】
【表1b】

【0030】
【表1c】

【0031】
【表1d】

【0032】
【表1e】

【0033】
【表1f】

【0034】
【表1g】

【0035】
【表1h】

【0036】
【表1i】

【0037】
【表1j】

【0038】
【表1k】

【0039】
【表1l】

【0040】
本発明の好ましい実施態様では、腫瘍抑制因子p18に融合されてもよい巨大分子伝達ドメインとしてカポジ線維芽細胞成長因子(kaposi fibroblast growth factor 4;kFGF4)に由来する配列番号:3の塩基配列及び配列番号:4のアミノ酸配列を有するkFGF4由来MTD(以下、「MTD1」と略称する)、タイレリア・アンヌラータ(Theileria annulata)に由来する機能未知タンパク質(hypothetical protein)である配列番号:5の塩基配列及び配列番号:6のアミノ酸配列を有するJO−101MTD(以下、「MTD」と略称する)、及びヒトのTMEM9ドメインファミリー、メンバーB(TMEM9 domain family、member B)由来の配列番号:7の塩基配列及び配列番号:8のアミノ酸配列を有するJO−103MTD(以下、「MTD3」と略称する)を用いる。
【0041】
本発明の細胞透過性を有するp18組換えタンパク質は、巨大分子伝達ドメインとして前記3種のMTD(kFGF4由来MTD:MTD1、JO−101:MTD、JO−103:MTD)のいずれか1つが癌転移の抑制因子p18の一方又は両末端に融合され、この融合コンストラクトの片末端に配列番号:9の塩基配列を有するSV40巨大T抗原(SV40 large T antigen)由来の核局在配列(nuclear localization sequence;NLS、配列番号:10のアミノ酸配列)と、容易な精製のために、ヒスチジンタグ(histidine−tag;His−Tag)親和性ドメインが融合されている構造を有してもよい。
【0042】
本発明の一実施形態では、kFGF4由来MTDを用いたp18組換えタンパク質として3つの全長形(full−length forms)と5つの切頭形(truncated forms)を考案する。
【0043】
本発明において、用語「全長形」は、腫瘍抑制因子p18のN、S及びC末端ドメインの全てを含む形態を意味し、用語「切頭形」はN、S及びC末端ドメインのいずれか1つ又は2つのドメインが欠失された形態を意味する。
【0044】
図1aを参考とすれば、本発明による全長形のp18組換えタンパク質は、
1)全長のp18のN末端にkFGF4由来MTDが融合されたHMp18、
2)そのC末端にkFGF4由来MTDが融合されたHp18M、及び
3)その両末端にkFGF4由来MTDが融合されたHMp18M
である。
【0045】
前記全長形のp18組換えタンパク質において、HMp18は、配列番号:26のアミノ酸配列を有し、これは配列番号:25の塩基配列を有するポリヌクレオチドによりコードされ;Hp18Mは、配列番号:28のアミノ酸配列を有し、これは配列番号:27の塩基配列を有するポリヌクレオチドによりコードされ;HMp18Mは、配列番号:30のアミノ酸配列を有し、これは配列番号:29の塩基配列を有するポリヌクレオチドによりコードされる。
【0046】
また、本発明による切頭形のp18組換えタンパク質は、
1)S及びC末端ドメインが欠失されたp18のN末端ドメインにkFGF4由来MTDが融合されたHp18NM
2)N及びC末端ドメインが欠失されたp18のS末端ドメインにkFGF4由来MTDが融合されたHp18SM
3)N及びS末端ドメインが欠失されたp18のC末端ドメインにkFGF4由来MTDが融合されたHp18CM
4)C末端ドメインが欠失されたp18のN及びS末端ドメインにkFGF4由来MTDが融合されたHp18NSM、及び
5)N末端ドメインが欠失されたp18のS及びC末端ドメインにkFGF4由来MTDが融合されたHp18SCM
である。
【0047】
前記切頭形のp18組換えタンパク質において、Hp18NMは、配列番号:32のアミノ酸配列を有し、これは配列番号:31の塩基配列を有するポリヌクレオチドによりコードされ;Hp18SMは、配列番号:34のアミノ酸配列を有し、これは配列番号:33の塩基配列を有するポリヌクレオチドによりコードされ;Hp18CMは、配列番号:36のアミノ酸配列を有し、これは配列番号:35の塩基配列を有するポリヌクレオチドによりコードされ;Hp18NSMは、配列番号:38のアミノ酸配列を有し、これは配列番号:37の塩基配列を有するポリヌクレオチドによりコードされ;Hp18SCMは、配列番号:40のアミノ酸配列を有し、これは配列番号:39の塩基配列を有するポリヌクレオチドによりコードされる。
【0048】
本発明の他の実施形態では、巨大分子伝達ドメインとしてJO−101MTDとJO−103MTDを用いたp18組換えタンパク質としてそれぞれ3つの全長形を考案する。
【0049】
図1bを参考とすれば、本発明による全長形のp18組換えタンパク質は、
1)全長のp18のN末端にJO−101MTDが融合されたHMp18、
2)そのC末端にJO−101MTDが融合されたHp18M
3)その両末端にJO−101MTDが融合されたHMp18M
4)全長のp18のN末端にJO−103MTDが融合されたHMp18、
5)そのC末端にJO−103MTDが融合されたHp18M、及び
6)その両末端にJO−103MTDが融合されたHMp18M
である。
【0050】
前記全長形のp18組換えタンパク質において、HMp18は、配列番号:42のアミノ酸配列を有し、これは配列番号:41の塩基配列を有するポリヌクレオチドによりコードされ;Hp18Mは、配列番号:44のアミノ酸配列を有し、これは配列番号:43の塩基配列を有するポリヌクレオチドによりコードされ;HMp18Mは、配列番号:46のアミノ酸配列を有し、これは配列番号:45の塩基配列を有するポリヌクレオチドによりコードされ;HMp18は、配列番号:48のアミノ酸配列を有し、これは配列番号:47の塩基配列を有するポリヌクレオチドによりコードされ;Hp18Mは、配列番号:50のアミノ酸配列を有し、これは配列番号:49の塩基配列を有するポリヌクレオチドによりコードされ;HMp18Mは、配列番号:52のアミノ酸配列を有し、これは配列番号:51の塩基配列を有するポリヌクレオチドによりコードされる。
【0051】
本発明においては、前記細胞透過性p18組換えタンパク質の対照群としてMTDが融合されず、ヒスチジンタグとNLSのみが融合されたp18組換えタンパク質Hp18を製造する。この対照群タンパク質は、配列番号:24のアミノ酸配列を有し、これは配列番号:23の塩基配列を有するポリヌクレオチドによりコードされる。
【0052】
また本発明は、前記細胞透過性p18組換えタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む組換え発現ベクター及びこの組換え発現ベクターで形質転換された形質転換細菌を提供する。
【0053】
本発明において、「組換え発現ベクター」とは、適当な宿主細胞において標的タンパク質または標的RNAを発現できるベクターであり、遺伝子挿入物が発現されるように作動可能に連結されている必須の調節要素を含む遺伝子作製物をいう。
【0054】
本発明において、用語「作動可能に連結された(operably linked)」とは、一般的機能を担うように核酸発現調節配列と目的とするタンパク質またはRNAをコードする核酸配列が機能的に連結(functional linkage)されていることをいう。例えば、プロモーターとタンパク質またはRNAをコードする核酸配列が作動可能に連結されてコードする核酸配列の発現に影響を及ぼし得る。組換え発現ベクターとの作動的連結は、当該技術分野によく知られた遺伝子組換え技術を用いて製造でき、部位特異的DNA切断及び連結には、当該技術分野に一般に知られた酵素などを用いる。
【0055】
本発明に使用可能な発現ベクターとしては、プラスミドベクター、コスミド(cosmid)ベクター、バクテリオファージベクター、ウイルスベクターなどを含むが、これに制限されない。好適な発現ベクターは、プロモーター(promoter)、オペレーター(operator)、開始コドン(initiation codon)、終結コドン(termination codon)、ポリアデニル化信号(polyadenylation signal)、エンハンサー(enhancer)のような発現調節配列以外にも、膜標的化または分泌のための信号配列(signal sequence)またはリーダー配列(leader sequence)を含み、目的に応じて多様に製造されてもよい。発現ベクターのプロモーターは、構成的(constitutive)または誘導性(inducible)であってもよい。また、発現ベクターは、ベクターを含有する宿主細胞を選択するための選択マーカーを含み、複製が可能な発現ベクターの場合、複製起点を含む。
【0056】
このように製造された本発明の組換え発現ベクターは、例えばpHp18Mであってもよい。前記組換え発現ベクターpHp18Mは、pET−28a(+)ベクター(Novagen、Germany)のマルチクローニング部位(multi cloning site;MCS)のNdeI制限酵素部位に、本発明による細胞透過性p18組換えタンパク質として全長のp18のC末端にkFGF4由来MTDが融合された組換えタンパク質Hp18Mをコードするヌクレオチドが挿入されたベクターを意味する。
【0057】
本発明の一実施例では、タンパク質の精製を容易にする目的で、細胞透過性p18組換えタンパク質のN末端部位に人為的に6つのヒスチジンタグを含めて発現させるために、His−Tag配列を有しているpET−28a(+)ベクター(Novagen、USA)に本発明のヌクレオチドをクローニングした。
【0058】
前記組換え発現ベクターから発現される細胞透過性p18組換えタンパク質は、全長又は切頭形のp18にkFGF4由来MTD、JO−101MTD及びJO−103MTDの1つが融合され、そのN末端部位にヒスチジンタグとNLSが連結されている。
【0059】
本発明はまた、前記組換え発現ベクターで形質転換された形質転換細菌を提供する。本発明の形質転換細菌は、好ましくは大腸菌であってもよく、大腸菌を本発明の組換え発現ベクター、例えば本発明による全長のp18のC末端にkFGF4由来MTDが融合された細胞透過性組換えタンパク質Hp18Mをコードするヌクレオチドを含む組換え発現ベクターpHp18Mを用いることにより、多量の細胞透過性p18組換えタンパク質を発現させることができる。形質転換には、核酸を宿主細胞に導入するいかなる方法も含まれ、当業者に公知となった形質転換技術により行ってもよい。好ましくは、微粒子銃法(microprojectile bombardment)、電気穿孔法(electroporation)、リン酸カルシウム(CaPO)沈殿、塩化カルシウム(CaCl)沈殿、PEG媒介性融合法(PEG−mediated fusion)、マイクロインジェクション法(microinjection)及びリポソーム媒介法(liposome−mediated method)などが含まれるが、これに制限されない。
【0060】
本発明の好ましい実施例では、前記方法で製造された全長のp18のC末端にkFGF4由来MTDが融合されたHp18M、その両末端にJO−101MTDが融合されたHMp18M、及びそのN末端にJO−103MTDが融合されたHMp18それぞれを含む組換え発現ベクターを大腸菌DH5αに形質転換させた形質転換細菌を2008年4月12日付で韓国生命工学研究院(KRIBB)内の遺伝子銀行(KCTC)に寄託番号KCTC−110310BP、KCTC−110311BP及びKCTC−110312BPとして寄託した。
【0061】
本発明はまた、前記形質転換細菌を培養することを含む細胞透過性p18組換えタンパク質の製造方法を提供する。
【0062】
前記製造方法は、本発明の形質転換細菌に導入された組換え発現ベクターにおいて本発明の細胞透過性p18組換えタンパク質をコードするポリヌクレオチドが発現されるように形質転換細菌を適切な培地及び条件下で培養することにより行われる。前記形質転換細菌を培養して組換えタンパク質を発現させる方法は、当該分野で公知となっており、例えば、形質転換細菌が成長できる適切な培地に接種して継代培養した後、これを本培養用培地に接種し、適切な条件、例えば、遺伝子発現誘導剤であるイソプロピル−β−D−チオガラクトシド(isopropyl−β−D−thiogalactoside;IPTG)の存在下で培養することによって、タンパク質の発現を誘導できる。培養が完了すると、前記培養物から実質的に純粋な組換えタンパク質を回収できる。本発明において用語「実質的に純粋な」とは、本発明の組換えタンパク質及びこれをコードするポリヌクレオチドの配列が宿主細胞由来の他のタンパク質を実質的に含まないことを意味する。
【0063】
前記形質転換細菌で発現された組換えタンパク質の回収は、当業界で公知の様々な分離及び精製方法を通じて行ってもよく、通常、細胞残屑(cell debris)、培養不純物などを除去するために、細胞溶解物を遠心分離した後、沈殿、例えば、塩析(硫酸アンモニウム沈殿及びリン酸ナトリウム沈殿)、溶媒沈殿(アセトン、エタノールなどを用いたタンパク質分画沈殿)などを行ってもよく、透析、電気泳動及び各種のカラムクロマトグラフィーなどを行ってもよい。前記クロマトグラフィーとしては、イオン交換クロマトグラフィー、ゲルろ過ぎクロマトグラフィー、HPLC、逆相HPLC、親和性カラムクロマトグラフィー及び限外ろ過などの技法を単独で用い、または併用してもよい(Maniatisら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor、N.Y.、1982;Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、2d Ed.、Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989);Deutscher、M.、Guide to Protein Purification Methods Enzymology vol.182.Academic Press.Inc.、San Diego、CA(1990))。
【0064】
一方、組換え発現ベクターで形質転換された細菌で発現された組換えタンパク質は、タンパク質分離の際、タンパク質の特性に応じて溶解性分画(soluble fraction)と不溶解性分画(insoluble fraction)に区分され得る。発現されたタンパク質のほとんどが溶解性分画である場合には、前述の方法に従って容易にタンパク質を分離及び精製することができる。しかし、発現されたタンパク質の大部分が不溶解性分画、即ち、封入体(inclusion body)の形態で存在する場合には、尿素(urea)、界面活性剤などのタンパク質変性剤が含まれた溶液で最大限タンパク質を溶解させた後、遠心分離して透析、電気泳動及び各種のカラムクロマトグラフィーなどを行うことによって精製することができる。この際、タンパク質変性剤が含まれた溶液によりタンパク質の構造が変形されてその活性を失うことがあるので、不溶解性分画からタンパク質を精製する過程中には脱塩及びリフォールディング(refolding)段階が必要である。即ち、前記脱塩及びリフォールディング段階は、タンパク質変性剤が含まれていない溶液を用いて透析及び希釈を行うか、またはフィルターを用いて遠心分離してもよい。また、前記溶解性分画からタンパク質を精製する過程中にも、精製時に用いる溶液中の塩濃度が高い場合は、このような脱塩及びリフォールディング段階を行ってもよい。
【0065】
本発明の一実施形態では、本発明による細胞透過性p18組換えタンパク質が封入体の形態で不溶解性分画に存在することを確認し、不溶解性分画からこれを精製するために、不溶解性分画をトリトンX−100のような非イオン性界面活性剤を含有する緩衝液に溶解させた後、超音波で処理し、遠心分離して沈殿物を得る。前記得られた沈殿物を変性剤である尿素が含まれている溶液に溶解させた後、遠心分離して上清を得る。尿素を用いて不溶解性分画から最大限溶解した本発明の組換えタンパク質は、ヒスチジン結合精製キットを用いて精製し、その後精製されたタンパク質は、アミコンフィルターなどを用いた遠心分離により塩分の除去及びタンパク質構造のリフォールディング過程を行うことによって、本発明の組換えタンパク質を得ることができる。
【0066】
さらに、本発明は、前記細胞透過性p18組換えタンパク質を有効成分として含有するp18欠損又は機能消失を治療するための抗癌剤用薬学的組成物を提供する。
【0067】
本発明の細胞透過性を有するp18組換えタンパク質は、腫瘍抑制因子であるp18が欠損するか、機能が消失した場合、p18を細胞内に高効率で導入し、DNA損傷又は腫瘍形成信号による細胞周期の阻害とアポトーシスを誘導するATMとp53の活性化に関連する信号伝達機構を再活性化させることにより、ヒトの多様な癌を予防及び/又は治療するための抗癌剤として有用に用いられる。
【0068】
本発明による組換えタンパク質を有効成分として含有する組成物は、薬学的に許容される担体、例えば、経口投与用担体または非経口投与用担体をさらに含んでもよい。経口投与用担体は、ラクトース、澱粉、セルロース誘導体、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸などを含む。経口投与用の場合、本発明による組換えタンパク質は、賦形剤と混合してチュアブル錠、バッカル剤、トローチ、カプセル、エリキシル、懸濁液、シロップ及びウエハーなどの形態で用いてもよい。また、非経口投与用担体は、水、適切なオイル、食塩水、水性グルコース及びグリコールなどを含み、安定化剤及び保存剤をさらに含んでもよい。適切な安定化剤としては、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウムまたはアスコルビン酸のような抗酸化剤がある。適切な保存剤としては、ベンザルコニウムクロリド、メチル−またはプロピル−パラベン及びクロロブタノールがある。その他の薬学的に許容される担体としては、次の文献に記載されているものを参考にして用いてもよい(Remington’s Pharmaceutical Sciences、19th ed.、Mack Publishing Company、Easton、PA(1995))。
【0069】
本発明による組成物は、種々の非経口または経口投与の形態に剤形化してもよい。非経口投与用剤形の代表的なものは注射用剤形であり、等張性水溶液または懸濁液が好ましい。注射用剤形は、適切な分散剤または湿潤剤及び懸濁化剤を用いて当業界に公知となった技術によって製造してもよい。例えば、各成分を食塩水または緩衝液に溶解させて注射用に剤形化してもよい。また、経口投与用剤形としては、例えば、錠剤、カプセル剤などがあるが、これらの剤形は、有効成分以外に希釈剤(例:ラクトース、デキストロース、スクロース、マンニトール、ソルビトール、セルロース及び/又はグリシン)と滑沢剤(例:シリカ、タルク、ステアリン酸及びステアリン酸マグネシウムまたはカルシウム塩及び/又はポリエチレングリコール)を含んでもよい。前記錠剤は、マグネシウムアルミニウムシリケート、澱粉ペースト、ゼラチン、トラガカント、メチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース及び/又はポリビニルピロリジンのような結合剤を含んでもよく、場合によって、澱粉、寒天、アルギン酸またはアルギン酸ナトリウム塩のような崩壊剤、吸収剤、着色剤、香味剤及び/又は甘味剤をさらに含んでもよい。前記剤形は、通常の混合、顆粒化またはコーティング方法により製造してもよい。
【0070】
本発明の組成物は、防腐剤、水和剤、乳化促進剤、浸透圧調節のための塩及び/又は緩衝剤のような補助剤とその他治療的に有用な物質をさらに含んでもよく、通常の方法に従って製剤化してもよい。
【0071】
また、本発明による組成物の投与経路としては、経口的、または静脈内、皮下、鼻腔内または腹腔内などのように非経口的にヒトと動物に投与してもよい。経口投与は、舌下適用も含む。非経口的投与は、皮下注射、筋肉内注射、静脈注射、腫瘍直接注射のような注射法及び点滴法を含む。
【0072】
本発明の組成物において、本発明の組換えタンパク質の合計有効量は、単一投与量(single dose)で患者に投与してもよく、多重投与量(multiple dose)で長期間投与される分割治療方法(fractionated treatment protocol)により投与してもよい。本発明の組成物は、疾患の程度に応じて有効成分の含量を異にしてもよいが、通常、成人を基準に1回投与時、5〜20mgの有効投与量で1日に数回繰り返し投与してもよい。しかし、前記組換えタンパク質の濃度は、薬物の投与経路及び治療回数だけでなく、患者の年齢、体重、健康状態、性別、疾患の重篤度、食餌及び排泄率等の様々な要因を考慮して患者に対する有効投与量を決定してもよい。従って、このような点を考慮すると、当該分野の通常の知識を有する者であれば、前記組換えタンパク質の抗癌剤としての特定の用途に応じる適切な有効投与量を決定できるであろう。本発明による組成物は、本発明の効果を奏する限り、その剤形、投与経路及び投与方法に特に制限されない。
【実施例】
【0073】
以下、実施例を通じて本発明をより詳細に説明する。これらの実施例は、単に本発明をより具体的に説明するためのものであり、本発明の要旨によって本発明の範囲がこれらの実施例により制限されないことは、当業界で通常の知識を有する者に自明であろう。
【0074】
実施例1:細胞透過性p18組換えタンパク質(CP−p18)の製造
<1−1>kFGF4由来MTDを用いたp18組換えタンパク質の製造
kFGF4由来MTD(MTD)を用いて細胞透過性p18組換えタンパク質を製造するために、下記の通り3つの全長形と5つの切頭形を考案した(図1a)。
【0075】
まず、全長形のp18組換えタンパク質として、1)全長のp18のN末端にkFGF4−由来MTDが融合されたMp18;2)そのC末端にkFGF4由来MTDが融合されたp18M;及び3)その両末端にkFGF4由来MTDが融合されたMp18Mを製造するために、それぞれについて特異的に考案されたプライマー対とヒトp18 cDNAを鋳型として用いるポリメラーゼ連鎖反応(polymerase chain reaction:PCR)を行った(図2a)。この時、Mp18の増幅のための正方向及び逆方向プライマーは、それぞれ配列番号:13及び12の塩基配列を有し;p18Mの増幅のための正方向及び逆方向プライマーは、それぞれ配列番号:11及び14の塩基配列を有し;Mp18Mの増幅のための正方向及び逆方向プライマーは、それぞれ配列番号:13及び14の塩基配列を有する。
【0076】
また、切頭形のp18組換えタンパク質として、1)S及びC末端ドメインが欠失されたp18のN末端ドメインにkFGF4由来MTDが融合されたp18NM;2)N及びC末端ドメインが欠失されたp18のS末端ドメインにkFGF4由来MTDが融合されたp18SM;3)N及びS末端ドメインが欠失されたp18のC末端ドメインにkFGF4由来MTDが融合されたp18CM;4)C末端ドメインが欠失されたp18のN及びS末端ドメインにkFGF4由来MTDが融合されたp18NSM;及び5)N末端ドメインが欠失されたp18のS及びC末端ドメインにkFGF4由来MTDが融合されたp18SCMを製造するために、前記のようにPCRを行った(図2a)。この時、p18NMの増幅のための正方向及び逆方向プライマーは、それぞれ配列番号:11及び15の塩基配列を有し;p18SMの増幅のための正方向及び逆方向プライマーは、それぞれ配列番号:16及び17の塩基配列を有し;p18CMの増幅のための正方向及び逆方向プライマーは、それぞれ配列番号:14及び18の塩基配列を有し;p18NSMの増幅のための正方向及び逆方向プライマーは、それぞれ配列番号:11及び17の塩基配列を有し;p18SCMの増幅のための正方向及び逆方向プライマーは、それぞれ配列番号:14及び16の塩基配列を有する。
【0077】
PCR反応は、鋳型としてヒトp18cDNA100ng、各0.2mMの最終濃度dNTP混合物、0.6μMの各プライマー、10×Taq緩衝液5μl、及びTaqポリメラーゼ(Takara、Japan)1μlを含む溶液を最終体積50μl反応液として行った。PCR反応条件は、まず94℃で3分間熱変性(denaturing)させた後、94℃で45秒、57℃で45秒及び72℃で45秒の反応を30回反復し、最終的に72℃で4分間増幅した。反応が終わった後、1.0%アガロースゲル電気泳動(electrophoresis)を行い、増幅された生成物を確認した。図2aに示すように、それぞれのMTDが融合された組換え断片が目的とするサイズに増幅されたことを確認した。
【0078】
アガロースゲルで増幅された組換え断片を回収した後、これらそれぞれを商用のキット(QIAquick Gel extraction kit;Qiagen、USA)を用いて抽出、精製した。抽出した断片をpGEM−T Easyベクター(Promega、USA)に挿入した後(図3a)、前記kFGF4由来MTDが融合されたp18組換えタンパク質遺伝子断片が挿入されたpGEM−T Easyベクターを大腸菌JM109感応細胞(supercompetent cell)に形質転換させた。これを100μg/mlアンピシリン(ampicillin)が含まれた平板LB培地上で培養し、形質転換された大腸菌を選別し、これを再度液体LB培地で培養した後、これからそれぞれのp18組換えタンパク質遺伝子が挿入されたpGEM−T Easyベクターを多量に得た。
【0079】
図3bは、pGEM−T Easyベクターに挿入された組換え断片をNdeI制限酵素(Enzynomics、Korea)で分離し、アガロースゲル電気泳動を行った結果を示し、これからそれぞれの組換え断片が前記ベクターに正しく挿入されたことを確認した。
【0080】
前記でそれぞれのp18組換えタンパク質遺伝子が挿入されたpGEM−T Easyベクターを、制限酵素NdeIを用いて37℃で1時間切断(digestion)し、それぞれの組換え断片を得た。一方、ヒスチジンタグとT7プロモーターを有する発現ベクターpET−28(+)aベクター(Novagen、USA)も制限酵素NdeIを用いて前記と同じ条件で切断した。前記組換え断片と、切断されたpET−28a(+)ベクターとを電気泳動で分離し、商用のキット(QIAquick Gel extraction kit;Qiagen、USA)を用いて精製した。これらの混合物にT4 DNAリガーゼ(ligase;Takara、日本)を添加し、16℃で12時間ライゲーション(ligation)した後、DH5αコンピテントセルに形質転換させて組換えタンパク質発現ベクターを得た(図4a)。
【0081】
図4bは、pET−28a(+)ベクターに挿入された組換え断片をNdeI制限酵素(Enzynomics、Korea)で分離し、アガロースゲル電気泳動を行った結果を示し、これからそれぞれの組換え断片が前記ベクターに正しく挿入されたことを確認した。
【0082】
このように得られた組換えタンパク質発現ベクターをそれぞれpHp18、pHMp18、pHp18M、pHMp18M、pHp18NM、pHp18SM、pHp18CM、pHp18NSM、及びpHp18SCMと命名し、これらの中で組換え発現ベクターpHp18Mで大腸菌DH5αを形質転換させて得られた形質転換細菌DH5α/Hp18Mを2008年4月12日付で韓国生命工学研究院内の遺伝子銀行に寄託番号KCTC−11310BPとして寄託した。
【0083】
<1−2>JO−101MTD及びJO−103MTDを用いたp18組換えタンパク質の製造
JO−101MTD(MTD)及びJO−103MTD(MTD)を用いて細胞透過性p18組換えタンパク質を製造するために、下記の通りそれぞれのMTDに対し3つの全長形を考案した。
【0084】
まず、JO−101MTDが融合されたp18組換えタンパク質として、1)全長のp18のN末端にJO−101MTDが融合されたMp18;2)そのC末端にJO−101MTDが融合されたp18M;及び3)その両末端にJO−101MTDが融合されたMp18Mを製造するために、前記実施例<1−1>の通りPCRを行った(図2b)。この時、Mp18の増幅のための正方向及び逆方向プライマーは、それぞれ配列番号:19及び12の塩基配列を有し;p18Mの増幅のための正方向及び逆方向プライマーは、それぞれ配列番号:11及び20の塩基配列を有し、Mp18Mの増幅のための正方向及び逆方向プライマーは、それぞれ配列番号:19及び20の塩基配列を有する。
【0085】
また、JO−103MTDが融合されたp18組換えタンパク質として、1)全長のp18のN末端にJO−103MTDが融合されたMp18;2)そのC末端にJO−103MTDが融合されたp18M;及び3)その両末端にJO−103MTDが融合されたMp18M3を製造するために、前記実施例<1−1>の通りPCRを行った。この時、Mp18の増幅のための正方向及び逆方向プライマーは、それぞれ配列番号:21及び12の塩基配列を有し;p18Mの増幅のための正方向及び逆方向プライマーは、それぞれ配列番号:11及び22の塩基配列を有し;Mp18Mの増幅のための正方向及び逆方向プライマーは、それぞれ配列番号:21及び22の塩基配列を有する。
【0086】
これから増幅されたそれぞれの組換え断片を前記実施例<1−1>と同様な方法でpGEM−T Easyベクターに挿入してサブクローン(subclone)を確保した後、これを再度pET−28(+)aベクターに挿入し、それぞれの組換えタンパク質発現ベクターを得た。pGEM−T Easyベクター及びpET−28(+)aベクターへのそれぞれの組換え断片の挿入は、図3c及び4cで確認した。
【0087】
このように得られた組換えタンパク質発現ベクターをそれぞれpHMp18、pHp18M、pHMp18M、pHMp18、pHp18M、及びpHMp18Mと命名し、これらの中で組換え発現ベクターpHMp18M及びpHMp18それぞれに大腸菌DH5αを形質転換させた形質転換細菌DH5α/HMp18M及びDH5α/HMp18を2008年4月12日付で韓国生命工学研究院内の遺伝子銀行に寄託番号KCTC−10311BP及びKCTC−10312BPとして寄託した。
【0088】
前記実施例<1−1>及び<1−2>でそれぞれの組換え断片の増幅のために用いられた正方向及び逆方向プライマー対を下記表2に示す。
【0089】
【表2】

【0090】
実施例2:組換えタンパク質の発現
<2−1>最適な宿主菌株の選抜
細胞透過性p18組換えタンパク質の発現誘導に最も適する宿主菌株を選抜するために、LacIプロモーターを有する大腸菌BL21(DE3)、BL21 Gold(DE3)、BL21 CodonPlus(DE3)及びBL21 Gold(DE3)pLysS(Stratagene、USA)を対象に下記実験を行った。
【0091】
まず、前記実施例<1−1>で製造された組換え発現ベクター pHMp18、pHp18M、及びpHp18(対照群)それぞれを前記大腸菌株BL21(DE3)、BL21 Gold(DE3)、BL21 CodonPlus(DE3)及びBL21 Gold(DE3)pLysSそれぞれに熱ショック(heat shock)方法で形質転換させた後、50μg/mlのカナマイシンが含まれたLB培地で培養した。その後、組換えタンパク質遺伝子が導入された大腸菌を1ml LB培地に接種し、37℃で一晩中培養した後、これを再度100ml LB培地に接種し、37℃でOD600が0.5に到達するまで培養した。この培養液にタンパク質発現の誘導剤として0.65mMのイソプロピル−β−D−チオガラクトシド(IPTG)を添加し、37℃で3時間さらに培養した。この培養液を4℃で7,000×g、20分間遠心分離して上清液を除去し、菌体を回収した。回収した菌体を溶解緩衝液(lysis buffer:100mM NaHPO、10mM Tris−HCl、8M尿素、pH8.0)に懸濁した後、超音波処理を行って細胞を破砕し、これを14,000×gで15分間遠心分離し、溶解性分画と不溶解性分画を得た。この溶解性分画と不溶解性分画をそれぞれSDS−PAGEにかけてタンパク質発現特性と発現量の程度を分析した。
【0092】
図5aに示すように、多様な宿主菌株を対象に本発明の組換えタンパク質の発現を調査した結果、BL21 CodonPlus(DE3)菌株で最も高い発現量が確認され、これを組換えタンパク質の発現のための最適な菌株として選択した。
【0093】
<2−2>組換えタンパク質の発現
前記実施例<2−1>で最適な菌株と確認された大腸菌BL21 CodonPlus(DE3)に組換え発現ベクターpHMp18、pHp18M、及びpHp18それぞれを熱ショック方法で形質転換させた後、50μg/mlのカナマイシンが含まれたLB培地で培養した。その後、前記組換えタンパク質遺伝子が導入された大腸菌を25ml LB培地に接種し、37℃で一晩中培養した後、これを再度1l LB培地に接種し、37℃でOD600が0.5に到達するまで培養した。この培養液にタンパク質発現の誘導剤として0.65mMのIPTGを添加し、37℃で3時間さらに培養した。この培養液を4℃で7,000×g、20分間遠心分離して上清液を除去し、菌体を回収した。回収した菌体を溶解緩衝液(100mM NaHPO、10mM Tris−HCl、8M尿素、pH8.0)に懸濁した後、超音波処理を行って細胞を破砕し、これを14,000×gで15分間遠心分離し、溶解性分画と不溶解性分画を得た。この溶解性分画と不溶解性分画をそれぞれSDS−PAGEにかけてタンパク質発現特性と発現量の程度を分析した。
【0094】
図5bに示すように、約21kDaのサイズを有する本発明の細胞透過性p18組換えタンパク質は、殆ど封入体の形態で不溶解性分画に含まれており、IPTG無処理培養液(−)に比べてIPTG処理培養液(+)において目的タンパク質の発現が顕著に増加していることを確認した。
【0095】
実施例3:組換えタンパク質の精製
本発明による細胞透過性p18組換えタンパク質は、封入体の形態で不溶解性分画に存在するので、これを精製するために、強力な変性剤として8M尿素を用いた。
【0096】
まず、本発明の組換え発現ベクターpHp18、pHMp18、pHp18M、pHMp18、pHp18M、pHMp18M、pHMp18、pHp18M、及びpHMp18Mそれぞれに形質転換されたBL21 CodonPlus(DE3)菌株を前記実施例2でのように1lのLB培地に培養した。それぞれの培養液を遠心分離して得た菌体を20mlの溶解緩衝液(100mM NaHPO、10mM Tris−HCl、8M尿素、pH8.0)に気泡が生じないように注意しながら懸濁し、これをマイクロチップ(microtip)付きのソニケーターを用いて低温で菌体を破砕した。この時、処理時間は、装置の出力を最大出力の25%に設定し、30秒処理後、10秒放置を5分間繰り返した。十分に溶菌された封入体を4℃で1分当り回転数3,000rpmで25分間遠心分離して沈殿物を除去し、上清を回収した。回収された上清をニトリルロ三酢酸アガロース(nitrilotriacetic acid agarose)にNiを付与したNi−NTAアガロースレジンにローディングした。この時、Ni−NTAアガロースは、予め溶解緩衝液で数回洗浄して平衡化させた後に用いた。上清を4℃で8時間以上振盪機でゆっくり攪拌しながら、レジンに吸着させた。組換えタンパク質が含まれた封入体が吸着したレジンを4℃で1分当り回転数1,000rpmで5分間遠心分離して反応液を除去し、非特異的な吸着物質を除去するためにレジンを洗浄緩衝液(washing buffer:100mM NaHPO、10mM Tris−HCl、8M尿素、pH6.3)を用いて5回洗浄した。洗浄されたレジンにpH4.0の酸性条件でレジン容積2倍の溶出緩衝液(elution buffer:100mM NaHPO、10mM Tris−HCl、8M尿素、pH4.5)をローディングし、振盪機で2時間、又は8時間以上攪拌してタンパク質を溶出した。溶出したタンパク質の純度を検定するために12%SDS−PAGEゲルで電気泳動を行った後、ゲルをクマシーブリリアントブルーR(coomassie brilliant blue R)で軽く振盪しながら染色し、目的タンパク質のバンドが明確になるまで脱色液を用いて脱色した。
【0097】
その結果、図6a〜6cに示すように、マーカータンパク質の泳動位置に比べ、kFGF4由来MTD、JO−101MTD及びJO−103MTDがそれぞれ融合された全ての細胞透過性p18組換えタンパク質が約21kDaの部位で単一バンドとして検出され、不溶解性分画から純粋に精製されたことを確認した。
【0098】
実施例4:タンパク質のリフォールディング及び蛍光染色
前記実施例3でのように不溶解性分画から精製された本発明の組換えタンパク質は、強力な変性剤である8M尿素により変性されたため、これを活性形態に転換させるために、下記の通りリフォールディング過程を行った。
【0099】
まず、精製された組換えタンパク質をリフォールディング緩衝液(refolding buffer:0.55Mグアニジン[Guanidine]HCl、0.44M L−アルギニン、50mMトリス−HCl、150mM NaCl、1mM EDTA、100mM NDSB、2mM酸化型グルタチオン[glutathione oxidized]及び0.2mM還元型グルタチオン[glutathione reduced])を用いて4℃で24時間透析して変性剤を除去することにより、組換えタンパク質を再活性、即ちリフォールディングさせた。その後、活性化された組換えタンパク質を細胞培養用培地であるDMEM(ダルベッコ改変イーグル培地)の中で、透析膜(Snakeskin pleated、PIERCE)を用いて4℃で8時間攪拌した。この時、3時間ごとに容器内のDMEMを交換した。
【0100】
これから得られた活性型の細胞透過性p18組換えタンパク質は、以後の細胞透過性の効果をより明確に確認するために、FITC(fluorescein−5−isothiocyanate、Molecular Probe)を用いて蛍光標識した。2〜20mgの組換えタンパク質について333mg/ml濃度のFITC 1μlを用いて、光を避けて常温で1時間振盪しながら結合させた。蛍光で標識された細胞透過性p18組換えタンパク質は、4℃で1日間DMEM培地に対し透析し、標識されていないFITCを除去し、これから回収された組換えタンパク質は、ブラッドフォード(Bradford)タンパク質定量法で、その濃度を分析した。その結果、それぞれの組換えタンパク質の濃度は、約1μg/μlと測定された。
【0101】
実施例5:細胞透過性の実験
<5−1>フローサイトメトリー(flow cytometry)
細胞透過性p18組換えタンパク質の細胞透過性を検証するため、10μM濃度の各タンパク質でマウスのマクロファージに由来するRAW 264.7細胞(韓国細胞株銀行、ソウル、大韓民国)を処理し、37℃で1時間培養した。この時、RAW 264.7細胞は、10%ウシ胎児血清(fetal bovine serum:FBS)及び5%ペニシリン/ストレプトマイシン(penicillin/streptomycin)500mg/mlを含有するDMEM培地で培養した。培養が終結した後、タンパク質で処理されたRAW 264.7細胞の細胞膜に露出されている遊離FITCを除去するためにトリプシン/EDTA(T/E)で処理し、低温のPBSで3回洗浄した後、FACS Calibur(Beckton−Dickinson)のセルクエストプロソフトウェア(Cell Quest Pro software)プログラムを用いてフローサイトメトリーを行った。
【0102】
その結果、図7a〜7cに示すように、kFGF4由来MTD(MTD)が融合された細胞透過性p18組換えタンパク質(CP−p18)の場合、C末端にMTDが融合されたHp18Mの細胞透過性が、N末端にMTDが融合されたHMp18より明確に示された。JO−101MTD(MTD)が融合されたCP−p18の場合には、MTDが融合されていない対照群に比べ、N末端にMTDが融合されたHMp18、C末端にMTDが融合されたHp18M、及び両末端にMTDが融合されたHMp18Mが互いに類似の水準で高い細胞透過性を示した。また、JO−103MTD(MTD)が融合されたCP−p18の場合には、N末端にMTDが融合されたHMp18及びC末端にMTDが融合されたHp18Mが、両末端にMTDが融合されたHMp18Mより一層高い水準で細胞透過性を示した。図7a〜7cにおいて、灰色の曲面は細胞単独の対照群、黒色の曲線はFITC単独対照群、青色の曲線はMTDが融合されていないHp18、緑色の曲線はMTD(MTD1、MTD又はMTD)がN末端に融合されたHMp18、赤色の曲線は前記MTDがC末端に融合されたHp18M、オレンジ色の曲線は前記MTDが両末端に融合されたHMp18Mを示す。
【0103】
<5−2>共焦点レーザー走査顕微鏡の観察I
前記実施例<5−1>でフローサイトメトリーにより一次的に細胞透過性が確認された本発明の細胞透過性p18組換えタンパク質、およびMTDが融合されていないp18対照群タンパク質により、マウスの線維芽細胞に由来するNIH3T3細胞(韓国細胞株銀行、ソウル、大韓民国)を10μMの濃度で処理し、37℃で1時間培養した後、共焦点レーザー走査顕微鏡(confocal laser scanning microscopy)で観察した。用いられたNIH3T3細胞は、培地総量の10%FBSと5%ペニシリン/ストレプトマイシン500mg/mlを含有するDMEM培地で培養し、組換えタンパク質の蛍光標識を保存するために10μlの封入剤(mounting medium)をスライド上に点滴した後、15分後に観察した。前記組換えタンパク質で処理された細胞は、MTDの細胞内伝達部位の区別が容易になるように核を染色するヨウ化プロピジウム(PI)染色を通じて核への伝達及び細胞透過性を確認し、共焦点レーザー走査顕微鏡は、ノマルスキーフィルタ(nomarski filter)を用いて細胞の原形、FITC蛍光及びPI蛍光を観察した。
【0104】
その結果、図8a〜8cに示すように、フローサイトメトリーの相対的な細胞透過性結果に比例し、明確なFITC蛍光(薄録色)及びPI(赤色)で染色された核内へのタンパク質伝達が観察され、このようにタンパク質の細胞内の透過の有無を直接確認することにより、本発明の細胞透過性p18組換えタンパク質の細胞透過性が再度立証された。
【0105】
<5−3>共焦点レーザー走査顕微鏡の観察II
前記実施例<5−2>で培養された細胞を対象として細胞透過性が確認された本発明の細胞透過性p18組換えタンパク質が組織状態でも細胞透過性を示すかどうかを確認するために、下記実験を行った。
【0106】
このために主要組織適合遺伝子複合体(major histocompatibility complex;MHC)に対する突然変異で免疫力が欠乏した7週齢のヌードマウス(Balb/C nu/nu mice、中央実験動物、ソウル)を実験動物として用いた。前記マウスの右足にヒト結腸癌細胞株(human colon cancer cell line)であるHCT−116細胞(韓国細胞株銀行)を1×10の細胞数で注射器(omnican、Germany、B.BRAUN)を用いて皮下注射(subcutaneous injection)して、腫瘍形成を誘導した。一方、kFGF4由来MTD(MTD)が融合されたHp18M、JO−101MTD(MTD)が両末端に融合されたHMp18M、JO−103MTD(MTD)がN末端に融合されたHMp18、及びMTDが融合されていないHp18を、FITCを用いて蛍光標識した。腫瘍が形成されたマウスに、FITCで標識された前記組換えタンパク質それぞれを300μgずつ腹腔注射(intraperitoneal injection)した。2時間後、各群のマウスを犠牲にし、これから肝、腎臓、脾臓、肺、心臓、脳及び腫瘍組織を摘出した。摘出された組織をOCT化合物で包埋して冷凍させた後、マイクロトーム(microtome)を用いて厚さ14μmに薄切した。組織切片をスライド上に置いて、共焦点レーザー走査顕微鏡で観察した。この時、組換えタンパク質の蛍光標識を保存するために、10μlの封入剤をスライド上に点滴した後、15分後に観察した。
【0107】
その結果、図9に示すように、前記実施例<5−1>で確認されたフローサイトメトリーによる相対的な細胞透過性の測定結果に比例し、全ての組織で明確なFITC蛍光(薄録色)で染色された核内へのタンパク質の伝達が観察された。前記結果から、本発明による細胞透過性p18組換えタンパク質は、細胞透過性に優れており、目的とするp18タンパク質を効果的に組織内へ伝達できることが分かる。
【0108】
実施例6:細胞透過性p18組換えタンパク質の細胞内機能
<6−1>ウエスタンブロッティング
細胞透過性が立証されたp18組換えタンパク質の細胞内機能を確認するために、下記の通りウエスタンブロッティング分析を行った。本実験に用いられた結腸癌細胞株HCT−116は、韓国細胞株銀行(ソウル、大韓民国)から購入した。HCT−116細胞は、RPMI 1640培地(L−グルタミン300mg/l、25mM HEPES及び25mM NaHCO 89.3%、熱不活性化ウシ胎児血清9.8%、ストレプトマイシン/ペニシリン0.9%)を用いて5%COが供給される37℃のインキュベーターで培養した。6ウェルプレートに1つのウェル当り2mlのRPMI 1640培地を添加し、これに前記で培養された細胞を接種して37℃で1日間成長させた後、細胞周期を同一にするため、再度1日間血清のない条件で培養した。培地を除去した後、HCT−116細胞を低温のリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄し、kFGF4由来MTDが融合されたHMp18及びHp18M組換えタンパク質とMTDが融合されていないHp18組換えタンパク質をそれぞれ10μM及び20μM濃度で処理した。これを、p21の誘導のために4時間、p53、ATM、MEK、ERK及びRbのリン酸化のために1時間、5% COが供給される37℃のインキュベーターで反応させた。組換えタンパク質で処理された細胞を200μlの溶解緩衝液(20mM HEPES、pH7.2、1%トリトン−X、10%グリセロール)を用いて氷で30分間粉砕して集め、得られた細胞溶解物(cell lysate)を4℃で1分当り回転数12,000rpmで20分間遠心分離した。これから上清を除去し、ブラッドフォードタンパク質定量法で溶解物溶液に入っているタンパク質を定量し、溶解物は使用するまで−80℃で保管した。
【0109】
ウエスタンブロッティング分析のために、p21Waf1/Cip1(21 kDa、Cell Signaling Technology)、phospho−p53(Ser15、53 kDa、Cell Signaling)、phospho−ATM(Ser1981、350 kDa、Santa Cruz Biotechnology)、phospho−MEK1/2(Ser217/221、45 kDa、Cell Signaling)、phospho−Erk(Thr202/Tyr204、42/44 kDa、Cell Signaling)、及びphospho−Rb(Ser807/811、110 kDa、Santa Cruz Biotechnology)を一次抗体として用い、ヤギ抗マウスIgG−HRP(goat anti−mouse IgG−HRP、Santa Cruz Biotechnology)とヤギ抗ウサギIgG−HRP(goat anti−rabbit IgG−HRP、Santa Cruz Biotechnology)を二次抗体として用いた。前記で定量された細胞溶解物をSDS−PAGEゲルを用い100Vで電気泳動を行った後、PVDF膜に70Vで2時間転写させた。転写させた膜は、抗体との非特異的な吸着を防止するため、TBS/T緩衝液(10mMトリス−Cl、pH8.0、150mM NaCl、0.05%ツイーン20)に溶解させた5%(w/v)粉乳(powdered milk)で1時間ブロッキング(blocking)処理をした後、前記一次抗体のそれぞれを添加し、4℃で1日間反応させた。この後に膜をTBS/T緩衝液で5回洗浄した後、二次抗体を添加して室温で1時間程度反応させ、TBS/T緩衝液で5回洗浄を反復し、化学発光検出用ECL(enhanced chemiluminescence、GE Healthcare Amersham UK)試薬を用いて抗原を検出し分析した。
【0110】
kFGF4由来MTDが融合されたp18組換えタンパク質を対象として実験した結果、図10に示すように、p18により細胞周期の停止(cell cycle arrest)を生じるp21の発現、ATMのリン酸化(P−ATM)とp53のリン酸化(P−p53)が増加した一方、腫瘍の細胞周期を活性化させるMEKのリン酸化(P−MEK)、ERKのリン酸化(P−ERK)及びRbのリン酸化(P−Rb)は減少した。特に、C末端にMTDが融合されたHp18M組換えタンパク質が、培養された癌細胞の細胞周期を阻害し、腫瘍形成を減少させる細胞周期の阻害剤として卓越した機能的な活性を示すことを確認した。
【0111】
一方、JO−101MTD(MTD)が融合されたHMp18、Hp18M、HMp18M組換えタンパク質及びJO−103MTD(MTD)が融合されたHMp18、Hp18M、HMp18M組換えタンパク質と、MTDが融合されていないHp18タンパク質を対象として、前記と同様にウエスタンブロッティング分析を行った。
【0112】
その結果、図11に示すように、全体的に本発明のp18組換えタンパク質で処理された細胞において、p18により細胞周期の停止を生じるp21の発現、ATMのリン酸化(P−ATM)とp53のリン酸化(P−53)が増加した一方、腫瘍の細胞周期を活性化させるMEKのリン酸化(P−MEK)、ERKのリン酸化(P−ERK)及びRbのリン酸化(P−Rb)は減少した。特にp18のN及びC末端の両方にMTDが融合されたHMp18M組換えタンパク質とそのN末端にのみMTD3が融合されたHMp18組換えタンパク質が、腫瘍形成を減少させる細胞周期の阻害剤として卓越した機能的な活性を示すことを確認した。
【0113】
<6−2>細胞性DNA含量の分析
細胞透過性が立証されたp18組換えタンパク質の細胞内機能を確認するため、下記の通り細胞性DNA含量分析(cellular DNA content analysis)を通じて前記組換えタンパク質のアポトーシス誘導効果を調査した。
【0114】
結腸癌細胞株HCT−116(韓国細胞株銀行)をRPMI 1640培地(L−グルタミン300mg/l、25mM HEPES、25mM NaHCO 89.3%、熱不活性化ウシ胎児血清9.8%、ストレプトマイシン/ペニシリン0.9%)を用いて5% COが供給される37℃のインキュベーターで培養した。6ウェルプレートにウェル当り2mlのRPMI 1640培地を添加し、これに前記で培養された細胞を接種した後、37℃で1日間培養した。各ウェルに組換えタンパク質としてkFGF4由来MTD(MTD)が融合されたHMp18とHp18M、JO−101MTD(MTD)が融合されたHMp18M及びJO−103MTD(MTD)が融合されたHMp18とMTDが融合されていないHp18をそれぞれ20μM濃度で処理した後、1時間無血清培地で培養した。前記ウェルプレートを低温のPBSで2回洗浄した後、ウェル当り2mlのRPMI 1640培地を添加し、それぞれ0、2、4及び8時間さらに培養した。それぞれの培養時間の経過後、細胞を低温のPBSで2回洗浄し、200μlのPBSに浮遊させた後、これを4mlの70%エタノールに慎重に浸けた。この細胞浮遊液を氷上で45分間放置した後、−20℃で1日間保管した。前記細胞培養液をPI(40μg/ml)とRNase A(100μg/ml)で処理した後、アポトーシスの程度をフローサイトメトリーを用いて定量的に決定した。
【0115】
その結果、図12に示すように、無処理群及びMTDが融合されていない対照群タンパク質(Hp18)処理群に比べ、MTDが融合された細胞透過性p18組換えタンパク質処理群(HMp18、Hp18M、HMp18M、HMp18)において高比率で癌細胞の細胞周期の進行が阻害され、アポトーシスが誘導されることを確認した。特に組換えタンパク質で処理し、8時間培養した場合において、アポトーシスが誘導された程度が最も高く、またJO−103MTDが融合された組換えタンパク質HMp18が最も優れたアポトーシス誘導効果を示した。
【0116】
<6−3>アネキシン−Vを用いたアポトーシス誘導効果
細胞透過性が立証されたp18組換えタンパク質の細胞内機能を確認するため、下記の通りアネキシン−Vを用いて組換えタンパク質のアポトーシス誘導効果を調査した。
【0117】
結腸癌細胞株HCT−116(韓国細胞株銀行)をRPMI 1640培地(L−グルタミン300mg/l、25mM HEPES、25mM NaHCO 89.3%、熱不活性化ウシ胎児血清9.8%、ストレプトマイシン/ペニシリン0.9%)を用いて5% COが供給される37℃のインキュベーターで培養した。6ウェルプレートにウェル当り2mlのRPMI 1640培地を添加し、これに前記で培養された細胞を接種した後、37℃で1日間培養した。各ウェルに組換えタンパク質としてJO−103MTD(MTD)が融合されたHMp18とMTDが融合されていないHp18をそれぞれ20μM濃度で処理した後、2時間無血清培地で培養した。培養時間の経過後に細胞を低温のPBSで2回洗浄した後、1×10の細胞を1mlの1×結合緩衝液(binding buffer)に浮遊させた。その後、100mlの細胞をEP−チューブに移し、このチューブに5mlのアネキシン−Vと5mlのPIを添加し、15分間常温で反応させた。次いで、400mlの1×結合緩衝液で前記培養液を処理した後、アポトーシス誘導の程度をフローサイトメトリーを用いて定量的に決定した。
【0118】
その結果、図13に示すように、無処理群及びMTDが融合されていない対照群タンパク質(Hp18)処理群に比べ、MTDが融合された細胞透過性p18組換えタンパク質処理群(HMp18)において高比率でアポトーシスが誘導されたことを確認した。
【0119】
実施例7:細胞透過性p18組換えタンパク質の生体内機能−腹腔注射
<7−1>投与期間中の抗癌効果
細胞透過性が立証されたp18組換えタンパク質の生体内機能を確認するため、下記の通り動物モデルを用いて抗癌効果を検証した。
【0120】
本実験では、動物モデルとしてMHCに対する突然変異で免疫力が欠乏した7週齢のヌードマウス(Balb/C nu/nu mice、中央実験動物、ソウル)を用いた。前記マウスの右足にHCT−116細胞(韓国細胞株銀行)を1×107の細胞数で注射器(omnican、Germany、B.BRAUN)を用いて皮下注射した。各群当り6匹ずつ計4群に分けて実験した。ノギス(vernier caliper)を用いて腫瘍サイズ(幅×長さ/2)が100mmと測定された日から1μg/μl濃度のkFGF4由来MTDが融合された細胞透過性p18組換えタンパク質HMp18(群3)及びHp18M(群4)をそれぞれ300μgずつ21日間腹腔注射した。対照群として担体(RPMI 1640培地、群1)とMTDが融合されていないHp18タンパク質(群2)をそれぞれ300μlずつ21日間同様に腹腔注射した。21日間タンパク質処理後、毎日各群のマウスの腫瘍のサイズと体重の変化を測定し、その結果を図14a及び14bで示した。
【0121】
図14a及び14bに示すように、本発明による細胞透過性p18組換えタンパク質であるHMp18及びHp18Mでそれぞれ処理されたマウス(群3及び4)の腫瘍サイズは、対照群(群1及び2)に比べてその成長が顕著に抑制された一方、実験期間中、マウスの体重は、対照群と細胞透過性p18組換えタンパク質処理群のいずれも有意味な変化を示さなかった。細胞透過性p18組換えタンパク質で処理したマウス群に生成された腫瘍サイズと体重に関する平均値のp値は0.05以下で、これは結果の有意性を示す。図15は、本発明による細胞透過性p18組換えタンパク質を21日間投与したマウスにおける腫瘍サイズの変化を示した写真で、肉眼でも対照群に比べて細胞透過性p18組換えタンパク質処理群のマウスにおいて腫瘍サイズが顕著に減少したことが分かる。
【0122】
<7−2>投与期間後の抗癌効果
本発明による細胞透過性p18組換えタンパク質(HMp18、Hp18M)の投与後、体内の抗癌効果の持続性を確認するために、前記実施例<7−1>でのように21日間のタンパク質投与後に4群からそれぞれ2匹のマウスを選定し、全ての処理を中止した後、7日間腫瘍サイズを観察した。
【0123】
その結果、図16a及び16bに示すように、全ての群において腫瘍サイズが増加する様相を呈したが、タンパク質処理期間に腫瘍サイズが相当抑制されたHMp18処理群(群3)は、対照群のように腫瘍サイズが急激に増加した一方、Hp18M処理群(群4)では、腫瘍サイズの増加率が他の群に比べて顕著に低いことを確認した。前記結果から、本発明の細胞透過性p18組換えタンパク質であるHp18Mが生体内で安定的にその有効性を維持し、癌の細胞周期阻害剤として持続的に作用していることが分かる。
【0124】
実施例8:細胞透過性p18組換えタンパク質の生体内機能−静脈注射
<8−1>投与期間中の抗癌効果
細胞透過性が立証されたp18組換えタンパク質の生体内機能を確認するために、前記実施例7と同様な方法で、MHCに対する突然変異で免疫力が欠乏した5週齢のヌードマウス(Balb/C nu/nu mice)の右足に、ヒト結腸癌細胞株であるHCT−116細胞を1×10の細胞数で注射器を用いて皮下注射した。5匹を一群化し、JO−103MTDが融合された細胞透過性p18組換えタンパク質(HMp18、300μg)及び対照群として担体(RPMI 1640培地、300μl)とMTDが融合されていないHp18タンパク質(300μg)を投与する計3群で実験した。ノギスを用いて腫瘍サイズ(幅×長さ/2)が70〜80mmを示すマウスを選択し、1μg/μlの濃度でHMp18を300μgずつ14日間静脈注射した。対照群としては、MTDが結合していないHp18タンパク質とRPMI 1640培地を同様な方法でマウスに静脈注射した。
【0125】
その結果、図17a及び17bに示すように、本発明による細胞透過性p18組換えタンパク質(HMp18)で処理したマウス群において、腫瘍サイズの成長が対照群に比べて顕著に抑制された。また、対照群として14日間処理したマウス群の体重は徐々に減少した一方、細胞透過性p18組換えタンパク質(HMp18)で14日間処理したマウス群の体重は、対照群に比べて減少しておらず、腫瘍サイズの成長が抑制されながら体重が増加した。図18は、本発明による細胞透過性p18組換えタンパク質を14日間静脈注射で投与したマウスにおける腫瘍サイズの変化を対照群と比較して示した写真である。
【0126】
<8−2>投与期間後の抗癌効果
細胞透過性p18組換えタンパク質(HMp18)の投与後に体内抗癌効果の持続性を確認するために、前記実施例<8−1>でのように14日間のタンパク質投与後、3群から2匹のマウスをそれぞれ選定し、担体と全てのタンパク質処理を中止し、2週間腫瘍サイズを観察した。
【0127】
その結果、図19に示すように、対照群の群(担体)では、腫瘍のサイズが急激に増加する様相を呈したが、細胞透過性p18組換えタンパク質の処理が中止されたマウス群(HMp18)では、腫瘍サイズの急激な増加なしに処理期間中と類似する水準で維持された。これは、本発明による細胞透過性p18組換えタンパク質が生体内に投与され、癌細胞の細胞周期を完全にリプログラミング(reprogramming)し、癌細胞がこれ以上細胞分裂できないように正常細胞化することにより、癌の細胞周期の阻害剤として持続的に作用していることを示すものである。
【0128】
実施例9:細胞透過性p18組換えタンパク質の生体内機能−腫瘍直接注射
<9−1>投与期間中の抗癌効果
細胞透過性が立証されたp18組換えタンパク質の生体内機能を確認するために、前記実施例7と同様な方法でMHCに対する突然変異で免疫力が欠乏した5週齢のヌードマウス(Balb/C nu/nu mice)の右足に、ヒト結腸癌細胞株であるHCT−116細胞を1×10の細胞数で注射器を用いて皮下注射した。5匹を一群化し、kFGF由来MTDが融合された細胞透過性p18組換えタンパク質(Hp18M、300μg)、JO−101MTDが融合された細胞透過性p18組換えタンパク質(HMp18M、300μg)、JO−103MTDが融合された細胞透過性p18組換えタンパク質(HMp18、300μg)、及び対照群として担体(RPMI 1640培地、300μl)とMTDが融合されていないHp18タンパク質(300μg)で処理する計5群で実験した。ノギスを用いて腫瘍サイズ(幅×長さ/2)が90〜100mmを示すマウスを選択し、1μg/μlの濃度において300μgずつ14日間マウスの腫瘍に直接注射した。この時、対照群としては、MTDが結合していないHp18タンパク質とRPMI 1640培地を同様な方法で腫瘍に直接注射した。
【0129】
その結果、図20a及び20bに示すように、本発明による細胞透過性p18組換えタンパク質(Hp18M、HMp18M、HMp18)で処理したマウス群の腫瘍サイズは、対照群に比べて成長が抑制された。また、対照群として14日間処理したマウス群の体重は徐々に減少した一方、細胞透過性p18組換えタンパク質(Hp18M、HMp18M、HMp18)で14日間処理したマウス群の体重は、対照群に比べて減少しておらず、腫瘍サイズの成長が抑制されながら体重は増加した。図21は、本発明による細胞透過性p18組換えタンパク質を14日間腫瘍直接注射で投与したマウスにおける腫瘍サイズの変化を対照群と比較して示した写真である。
【0130】
<9−2>投与期間後の抗癌効果
細胞透過性p18組換えタンパク質(Hp18M、HMp18M、HMp18)の投与後に体内抗癌効果の持続性を確認するために、前記実施例<9−1>でのように14日間のタンパク質投与後、各群から2匹のマウスを選定し、担体と全てのタンパク質処理を中止し、2週間腫瘍サイズを観察した。
【0131】
その結果、図22に示すように、対照群(担体)では、腫瘍サイズが増加する様相を呈したが、本発明による組換えタンパク質処理群では腫瘍の成長が明確に阻害されていることを確認した。
【0132】
実施例10:細胞透過性p18組換えタンパク質の投与後の組織学的な変化の分析I
細胞透過性p18組換えタンパク質の投与後、腫瘍組織内におけるアポトーシス誘導効果を確認するために、前記実施例8のマウス動物モデルを用いてヘマトキシリン−エオシン染色を行った。
【0133】
具体的には、前記実施例8でのように3群(各群当り5匹)のマウスに対し、それぞれ静脈注射で細胞透過性p18組換えタンパク質(HMp18)と、対照群として担体及びHp18タンパク質により14日間処理した後、各群当り3匹ずつ選別して犠牲にし、誘導された腫瘍組織を分離、摘出した。この時、各群の残り2匹のマウスは、14日間タンパク質処理後、再度14日間の無処理観察期間を経た後、誘導された腫瘍組織を分離、摘出した。それぞれの摘出された腫瘍組織をホルマリンで固定して洗浄した後、包埋センター(embedding center)で62℃に溶かしたパラフィンを用いてパラフィンブロックを作製した。作製されたパラフィンブロックをマイクロトームを用いて厚さ4μmに薄切し、スライドに付着させた後、キシレン(xylene)で5分ずつ3回処理してパラフィンを除去した。次いで、100%、100%、95%、90%、80%及び70%エタノールでそれぞれ2分ずつ処理して含水させ、流水で5分間洗浄した後、ヘマトキシリンおよびエオシンで染色した。最後に70%から100%エタノールで10秒ずつ処理して脱水させ、キシレンで3分ずつ2回の投影過程を経た後、封入剤であるカナダバルサム(canada balsam)を用いて封入し、光学顕微鏡で観察した。
【0134】
その結果、図23に示すように、担体と対照群タンパク質(Hp18)で処理したマウスの腫瘍組織では、特に組織学的な変化が観察されない一方、細胞透過性p18組換えタンパク質(HMp18)で処理したマウスの腫瘍組織では、アポトーシス様の細胞死に特徴的に示される核凝縮と核分節などの形態学的な変化が観察された。また本発明による細胞透過性p18組換えタンパク質で処理したマウス群では、タンパク質の投与を中止した2週後にも依然として癌細胞内でアポトーシスが誘導されていることを確認した。
【0135】
実施例11:細胞透過性p18組換えタンパク質の投与後の組織学的な変化の分析II
細胞透過性p18組換えタンパク質の投与後の腫瘍組織内におけるアポトーシス誘導効果を確認するために、前記実施例9のマウス動物モデルを用いてヘマトキシリンおよびエオシン染色を行った。
【0136】
具体的には、前記実施例9でのように5群(各群当り5匹)のマウスに対し、腫瘍直接注射で細胞透過性p18組換えタンパク質(Hp18M、HMp18M、HMp18)と、対照群として担体により14日間処理した後、各群のマウスから分離、摘出した腫瘍組織を対象とすることを除いては、前記実施例10と同様な方法でヘマトキシリンおよびエオシン染色を行った。
【0137】
その結果、図24に示すように、担体と対照群タンパク質(Hp18)で処理したマウスの腫瘍組織では、特に組織学的な変化が観察されない一方、細胞透過性p18組換えタンパク質(Hp18M、HMp18M、HMp18)で処理したマウスの腫瘍組織では、アポトーシス様の細胞死に特徴的に示される核凝縮と核分節などの形態学的な変化が観察された。
【0138】
実施例12:細胞透過性p18組換えタンパク質の投与後のアポトーシス誘導効果の分析I
細胞透過性p18組換えタンパク質の投与後の腫瘍組織内でアポトーシス誘導効果を確認するために、前記実施例8のマウス動物モデルを用いてTUNEL分析を行った。
【0139】
具体的には、前記実施例8でのように3群のマウスに対し、静脈注射でそれぞれ細胞透過性p18組換えタンパク質(HMp18)と、対照群として担体及びHp18タンパク質により14日間処理した後、各群当り3匹ずつを選別して犠牲にし、誘導された腫瘍組織を分離、摘出した。この時、各群の残り2匹のマウスは、14日間のタンパク質処理後、再度14日間の無処理観察期間を経た後、誘導された腫瘍組織を分離、摘出した。前記実施例10のように、摘出された腫瘍組織から組織切片を作製した後、これをスライドに付着させた。前記スライドをキシレンで5分間3回処理し、パラフィンを除去した。次いで、無水エタノールで5分間2回、90%、80%及び70%エタノールでそれぞれ3分間処理して含水させ、PBSで5分間保管した。この後、8分間0.1%クエン酸ナトリウム(sodium citrate)溶液に溶かした0.1%トリトン(Trition(登録商標))X−100溶液で細胞を透過させた後、PBSで2分間2回洗浄した。TUNEL反応緩衝液(50μl、Roche、USA)を前記組織スライド上で処理し、1時間37℃湿潤インキュベーターで培養した後、PBSで3回洗浄し、蛍光顕微鏡(fluorescence microscope)で観察した。
【0140】
その結果、図25に示すように、担体と対照群タンパク質(Hp18)で処理したマウスの腫瘍組織では、特に変化が観察されない一方、細胞透過性p18組換えタンパク質(HMp18)で処理したマウスの腫瘍組織では、アポトーシス時に赤く染色される変化が観察され、これから本発明による細胞透過性p18組換えタンパク質のアポトーシス誘導効果を肉眼で確認することができた。また、細胞透過性p18組換えタンパク質で処理したマウス群では、タンパク質の投与を中止した2週後にも依然として癌細胞内でアポトーシスが誘導されることが分かった。
【0141】
実施例13:細胞透過性p18組換えタンパク質の投与後のアポトーシス誘導効果の分析II
細胞透過性p18組換えタンパク質の投与後の腫瘍組織内でアポトーシス誘導効果が誘導されることを免疫組織化学的に確認するために、アポタグペルオキシダーゼインサイチュ・アポトーシス検出キット(ApopTag Peroxidase In Situ Apoptosis Detection Kit、Chemicon、S7100)を用いて下記実験を行った。
【0142】
具体的には、前記実施例8でのように、3群のマウスに対し、静脈注射で細胞透過性p18組換えタンパク質(HMp18)と、対照群として担体及びHp18タンパク質により14日間処理した後、各群当り3匹ずつを選別して犠牲にし、誘導された腫瘍組織を分離、摘出した。この時、各群の残り2匹のマウスは、14日間のタンパク質処理後、再度14日間の無処理の観察期間を経た後、誘導された腫瘍組織を分離、摘出した。前記実施例10のように、摘出された腫瘍組織から組織切片を作製した後、これをスライドに付着させた。前記スライドをキシレンで5分間3回処理し、パラフィンを除去した。次いで、100%、90%及び70%アルコールで順次3分間処理して含水させた後、前記スライドを5分間PBSで培養した。前記スライドを20μg/ml濃度のプロテイナーゼK(proteinase K、Sigma)で15分間処理し、蒸溜水で洗浄した後、3% H(vol/vol、in PBS)で5分間処理し、内因性ペルオキシダーゼ(endogenous peroxidase)の活性を抑制した。前記スライドを平衡(equilibration)緩衝液で10秒間処理した後、末端デオキシヌクレオチドトランスフェラーゼ(terminal dexoynucleotidyl transferase、TdT)により37℃で1時間処理した。反応が終結した後、前記スライドを停止(stop)緩衝液で処理し洗浄した。次いで、スライドをDAB発色試薬で5分間処理し、メチルグリーン(methyl green)で対比(counter)染色した。染色後に脱水過程を経た後、スライド上をカバースリップ(cover slip)でシールし、光学顕微鏡で観察した。
【0143】
その結果、図26に示すように、担体と対照群タンパク質(Hp18)で処理したマウスの腫瘍組織では、特に変化が観察されない一方、細胞透過性p18組換えタンパク質(HMp18)で処理したマウスの腫瘍組織では、アポトーシス時に褐色に染色される変化が観察され、本発明による細胞透過性p18組換えタンパク質のアポトーシス誘導効果を肉眼で確認することができた。また、細胞透過性p18組換えタンパク質で処理したマウス群では、タンパク質の投与を中止した2週後にも依然として癌細胞内でアポトーシスが誘導されていることが分かった。
【0144】
実施例14:細胞透過性p18組換えタンパク質の投与後のアポトーシス誘導効果の分析III
前記実施例9でのように、5群のマウスに対し、腫瘍直接注射で細胞透過性p18組換えタンパク質(Hp18M、HMp18M、HMp18)と、対照群として担体により14日間処理した後、各群のマウスから分離、摘出した腫瘍組織を対象とすることを除いては、前記実施例12と同様な方法でTUNEL分析を行った。
【0145】
その結果、図27に示すように、対照群として担体で処理したマウスの腫瘍組織では、特に変化が観察されない一方、細胞透過性p18組換えタンパク質(Hp18M、HMp18M、HMp18)で処理したマウスの腫瘍組織では、アポトーシス時に赤く染色される変化が観察され、これから本発明による細胞透過性p18組換えタンパク質のアポトーシス誘導効果を肉眼で確認することができた。
【0146】
実施例15:細胞透過性p18組換えタンパク質の投与後のアポトーシス誘導効果の分析IV
前記実施例9でのように、5群のマウスに対し、腫瘍直接注射で細胞透過性p18組換えタンパク質(Hp18M、HMp18M、HMp18)と、対照群として担体により14日間処理した後、各群のマウスから分離、摘出した腫瘍組織を対象とすることを除いては、前記実施例13と同様な方法でアポタグ分析を行った。
【0147】
その結果、図28に示すように、対照群として担体で処理したマウスの腫瘍組織では、特に変化が観察されない一方、細胞透過性p18組換えタンパク質(Hp18M、HMp18M、HMp18)で処理したマウスの腫瘍組織では、アポトーシス時に褐色に染色される変化が観察され、本発明による細胞透過性p18組換えタンパク質のアポトーシス誘導効果を肉眼で確認することができた。
【0148】
実施例16:細胞透過性p18組換えタンパク質の投与後のタンパク質発現様相の比較
細胞透過性p18組換えタンパク質が投与された組織におけるタンパク質発現様相の変化を確認するために、下記の通りマイクロアレイ(microarray)分析を行った。
【0149】
具体的には、前記実施例9と同様な方法で3群のマウスに対し、腫瘍直接注射で細胞透過性p18組換えタンパク質HMp18Mと、対照群としてHp18及び担体により14日間処理した後、この処理を中止して14日間放置した。計28日経過後、各群のマウスから腫瘍組織を分離した後、これを液体窒素で急速冷却させた。腫瘍組織から全RNAをトリゾール試薬(TRIZOL、Invitrogen)を用いてメーカーの指針に従って分離し、これを無RNase DNase(RNase−free DNase、Life Technologies、Inc.)で処理し、残存するゲノムDNAを除去した。
【0150】
前記で分離されたRNAに対し、標的cRNAプローブの合成及びハイブリダイゼーションをメーカーの指針に従ってローRNAインプット・リニア・アンプリフィケーションキット(Low RNA Input Linear Amplification kit、Agilent Technology)を用いて行った。簡略に説明すると、それぞれの全RNA 1μgとT7プロモータープライマーを混合し、65℃で10分間反応させた。5×一本鎖緩衝液、0.1M DTT、10mM dNTPミックス、RNase−Out及びMMLV−RT(逆転写酵素)を混合してcDNAマスタミックス(master mix)を製造した後、これを前記反応混合物に添加した。この混合物を40℃で2時間反応させた後、65℃で15分間反応させて逆転写反応及びdsDNA合成を終結させた。メーカーの指針に従って4×転写緩衝液(transcription buffer)、0.1M DTT、NTPミックス、50% PEG、RNase−Out、無機ピロホスファターゼ(inorganic pyrophosphatase)、T7−RNAポリメラーゼ、及びシアニン(cyanine、3/5−CTP)を用いて転写マスタミックスを製造した。この転写マスタミックスをdsDNA反応混合物に添加し、40℃で2時間反応させてdsDNAの転写を行った。増幅されて標識されたcRNAをメーカーの指針に従ってcRNAクリーンアップモジュール(cRNA Cleanup Module、Agilent Technology)上で精製した。標識されたcRNA標的をND−1000分光光度計(spectrophotometer)(NanoDrop Technologies,Inc.)を用いて定量した。標識効率を調査した後、cRNAに10×ブロッキング剤(blocking agent)及び25×フラグメンテーション緩衝液(fragmentation buffer)を添加し、60℃で30分間反応させてcRNAの断片化を行った。断片化されたcRNAを2×ハイブリダイゼーション緩衝液(hybridization buffer)に再懸濁した後、全ヒトゲノムオリゴマイクロアレイ(Whole Human Genome Oligo Microarray、44K)上にピペットを用いて直接滴加した。ハイブリダイゼーションオーブン(hybridization oven、Agilent Technology)を用いて前記マイクロアレイを65℃で17時間ハイブリダイズさせた。ハイブリダイズしたマイクロアレイをメーカー(Agilent Technology)の洗浄指針に従って洗浄した。
【0151】
ハイブリダイゼーションパターンをDNAマイクロアレイスキャナ(Agilent Technology)を用いて読み出し、特徴抽出ソフトウェア(Feature Extraction Software、Agilent Technology)で定量した。倍率変化した(fold−changed)遺伝子の全てのデータ標準化及び選別は、ジーンスプリングGX(Gene Spring GX 7.3、Agilent Technology)を用いて行った。標準化比率の平均は、標準化された信号チャンネル強度を標準化された対照群チャンネル強度で割って計算した。遺伝子の機能的アノテーションは、遺伝子オントロジーコンソーシアム(Gene Ontology(商標) Consortium、http://www.geneontology.org/index.shtml)に従ってジーンスプリングGXにより行われた。
【0152】
前記マイクロアレイの分析結果を図29及び下記表3〜7に示すが、表3は、アポトーシスに関連する遺伝子の発現様相を示したものであり、表4a及び4bは、細胞周期の調節に関連する遺伝子の発現様相を示したものであり、表5a〜5cは、細胞成長(cell growth)に関連する遺伝子の発現様相を示したものであり、表6は、細胞増殖(cell proliferation)に関連する遺伝子の発現様相を示したものであり、表7は、転移(metastasis)及び血管新生(angiogenesis)に関連する遺伝子の発現様相を示したものである。
【0153】
【表3】

【0154】
【表4a】

【0155】
【表4b】

【0156】
【表5a】

【0157】
【表5b】

【0158】
【表5c】

【0159】
【表6】

【0160】
【表7】

【0161】
前記表3に示すように、アポトーシスに関連する遺伝子の場合、対照群タンパク質に比べて本発明による細胞透過性p18組換えタンパク質投与群においてタンパク質キナーゼC(protein kinase C;PRKCE)と細胞死インデューサーオブリテレーター1(death inducer−obliterator 1;DIDO1)の発現が1.5倍以上、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリー、メンバー8(tumor necrosis factor receptor superfamily、member 8;TNFRSF18)の発現が2倍以上上方調節(up−regulation)された一方、ホスフィノシチド−3−キナーゼ(phosphoinositide−3−kinase;PIK3R2)の発現が3倍以上下方調節(down−regulation)されていることが分かる。
【0162】
前記表4a及び4bに示すように、細胞周期調節に関連する遺伝子の場合、対照群タンパク質に比べて本発明による細胞透過性p18組換えタンパク質投与群において網膜芽細胞腫結合タンパク質(retinoblastoma binding protein 6;RBBP6)の発現が1.8倍以上上方調節されていることが分かる。
【0163】
前記表5a〜5cに示すように、細胞成長に関連する遺伝子の場合、対照群タンパク質に比べて本発明による細胞透過性p18組換えタンパク質投与群において無翼型のMMTV統合部位ファミリー、メンバー10A(wingless−type MMTV integration site family、member 10A;WNT10A)の発現が2倍以上、同一ファミリー、メンバー16A(WNT16A)の発現が2.5倍以上下方調節されていることが分かる。
【0164】
前記表6に示すように、細胞増殖に関連する遺伝子の場合、対照群タンパク質に比べて本発明による細胞透過性p18組換えタンパク質投与群においてCD28の発現が4倍以上下方調節されていることが分かる。
【0165】
前記表7に示すように、癌転移及び血管新生に関連する遺伝子の場合、対照群タンパク質に比べて本発明による細胞透過性p18組換えタンパク質投与群において転移関連タンパク質1(metastasis associated protein 1;MTA1)の発現が2倍以上下方調節されていることが分かる。
【0166】
以上で本発明内容の特定部分を詳細に記述したが、当業界の通常の知識を有する者にとって、このような具体的な技術は、単に好ましい実施様態であるだけで、これにより本発明の範囲が制限されるわけではないことは言うまでもない。従って、本発明の実質的な範囲は、添付の特許請求の範囲とそれらの等価物により定義されると言える。
【0167】
受託証1

【0168】
受託証2

【0169】
受託証3


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト腫瘍抑制因子p18タンパク質の一方又は両末端に巨大分子伝達ドメイン(macromolecule transduction domain;MTD)が融合されている、細胞透過性p18組換えタンパク質。
【請求項2】
前記ヒト腫瘍抑制因子p18タンパク質が、N、S及びC末端ドメインからなる配列番号:2のアミノ酸配列を有する全長形(full−length form)であるか、前記配列で少なくとも1つのドメインが欠失された切頭形(truncated form)であることを特徴とする、請求項1に記載の細胞透過性p18組換えタンパク質。
【請求項3】
前記巨大分子伝達ドメインが、配列番号:4、6、8及び53〜243のアミノ酸配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有することを特徴とする、請求項1に記載の細胞透過性p18組換えタンパク質。
【請求項4】
前記巨大分子伝達ドメインが、配列番号:4のアミノ酸配列を有するkFGF4(kaposi fibroblast growth factor 4)由来MTD、配列番号:6のアミノ酸配列を有するJO−101MTD、及び配列番号:8のアミノ酸配列を有するJO−103MTDからなる群から選択されることを特徴とする、請求項3に記載の細胞透過性p18組換えタンパク質。
【請求項5】
前記組換えタンパク質の片末端に核局在配列(nuclear localization sequence;NLS)及びヒスチジンタグ(histidine−tag)親和性ドメインが融合されていることを特徴とする、請求項1に記載の細胞透過性p18組換えタンパク質。
【請求項6】
下記からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の組換えタンパク質:
配列番号:2のアミノ酸配列を有する全長のp18のN末端に配列番号:4のアミノ酸配列を有するkFGF4由来MTDが融合された組換えタンパク質;
配列番号:2のアミノ酸配列を有する全長のp18のC末端に配列番号:4のアミノ酸配列を有するkFGF4由来MTDが融合された組換えタンパク質;
配列番号:2のアミノ酸配列を有する全長のp18の両末端に配列番号:4のアミノ酸配列を有するkFGF4由来MTDが融合された組換えタンパク質;
配列番号:2のアミノ酸配列でS及びC末端ドメインが欠失されたp18のN末端ドメインに配列番号:4のアミノ酸配列を有するkFGF4由来MTDが融合された組換えタンパク質;
配列番号:2のアミノ酸配列でN及びC末端ドメインが欠失されたp18のS末端ドメインに配列番号:4のアミノ酸配列を有するkFGF4由来MTDが融合された組換えタンパク質;
配列番号:2のアミノ酸配列でN及びS末端ドメインが欠失されたp18のC末端ドメインに配列番号:4のアミノ酸配列を有するkFGF4由来MTDが融合された組換えタンパク質;
配列番号:2のアミノ酸配列でC末端ドメインが欠失されたp18のN及びS末端ドメインに配列番号:4のアミノ酸配列を有するkFGF4由来MTDが融合された組換えタンパク質;
配列番号:2のアミノ酸配列でN末端ドメインが欠失されたp18のS及びC末端ドメインに配列番号:4のアミノ酸配列を有するkFGF4由来MTDが融合された組換えタンパク質;
配列番号:2のアミノ酸配列を有する全長のp18のN末端に配列番号:6のアミノ酸配列を有するJO−101MTDが融合された組換えタンパク質;
配列番号:2のアミノ酸配列を有する全長のp18のC末端に配列番号:6のアミノ酸配列を有するJO−101MTDが融合された組換えタンパク質;
配列番号:2のアミノ酸配列を有する全長のp18の両末端に配列番号:6のアミノ酸配列を有するJO−101MTDが融合された組換えタンパク質;
配列番号:2のアミノ酸配列を有する全長のp18のN末端に配列番号:8のアミノ酸配列を有するJO−103MTDが融合された組換えタンパク質;
配列番号:2のアミノ酸配列を有する全長のp18のC末端に配列番号:8のアミノ酸配列を有するJO−103MTDが融合された組換えタンパク質;及び
配列番号:2のアミノ酸配列を有する全長のp18の両末端に配列番号:8のアミノ酸配列を有するJO−103MTDが融合された組換えタンパク質。
【請求項7】
配列番号:26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50及び52のアミノ酸配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有することを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の細胞透過性p18組換えタンパク質。
【請求項8】
請求項1に記載の細胞透過性p18組換えタンパク質をコードするポリヌクレオチド。
【請求項9】
配列番号:25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49及び51の塩基配列からなる群から選択される塩基配列を有することを特徴とする、請求項8に記載のポリヌクレオチド。
【請求項10】
請求項8に記載のポリヌクレオチドを含む組換え発現ベクター。
【請求項11】
pHMp18、pHp18M、pHMp18M、pHp18NM、pHp18SM、pHp18CM、pHp18NSM、pHp18SCM、pHMp18、pHp18M、pHMp18M、pHMp18、pHp18M、及びpHMp18Mからなる群から選択されることを特徴とする、請求項10記載の組換え発現ベクター。
【請求項12】
請求項10に記載の組換え発現ベクターで形質転換された形質転換細菌。
【請求項13】
形質転換細菌が大腸菌DH5α/Hp18M(KCTC−110310BP)であることを特徴とする、請求項12に記載の形質転換細菌。
【請求項14】
形質転換細菌が大腸菌DH5α/HMp18M(KCTC−110311BP)であることを特徴とする、請求項12に記載の形質転換細菌。
【請求項15】
形質転換細菌が大腸菌DH5α/HMp18(KCTC−110312BP)であることを特徴とする、請求項12に記載の形質転換細菌。
【請求項16】
請求項12に記載の形質転換細菌を培養する段階を含む、請求項1に記載の細胞透過性p18組換えタンパク質を生産する方法。
【請求項17】
請求項1に記載の細胞透過性p18組換えタンパク質を有効成分として含有し、薬学的に許容可能な担体を含む、p18欠損又は機能消失を治療するための抗癌剤用薬学的組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6a】
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【図6b】
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【図6c】
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【図7a】
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【図7b】
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【図7c】
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【図8a】
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【図8b】
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【図8c】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【公表番号】特表2010−537666(P2010−537666A)
【公表日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−523953(P2010−523953)
【出願日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際出願番号】PCT/KR2008/005222
【国際公開番号】WO2009/031836
【国際公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【出願人】(509212764)プロセル セラピューティックス インコーポレーティッド (3)
【Fターム(参考)】