説明

細長い補強部材の定着、添接、および張力付与

FRP、SRP、金属バー、またはケーブルなどの細長い補強部材とともに使用するための定着デバイスおよびシステム。かかるデバイスおよびシステムは、細長い補強部材がそこを通って、またはそれに沿って延びる静止構造内に圧縮応力を付与する。定着システムは、静止構造と接触するための前端面を含むアンカーブロックと、細長い補強部材を受け入れる軸線方向ボアと、ファスナと協働して締付け力をもたらす締付け部材とを含むことができる。ボアはテーパ状であってもよく、ファスナは任意に異なる締付けレベルを提供して、前端面付近の細長い補強部材に対する応力を低減させる。開示のシステムはまた、開示の定着システムとともに使用することができ、かつ細長い補強部材に対して引張り力を掛けて、やはり静止構造に対して圧縮力を付与することができるプレストレスデバイスを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、本明細書にその全体を明示的に組み込む米国仮特許出願第61/060,934号、2008年6月12日出願、発明の名称「Anchoring and Tensioning System for Fibre Reinforced Polymer Rods, Metallic Bars, and Cables」の利益および優先権を主張する。
【0002】
政府権益
本発明は、ユタ州運輸省によって裁定された規約#089113に基づいて国庫補助によって成された。政府は本発明に対して特定の権益を有する。
【0003】
本出願は、定着システム、添接システム、および張力付与システムに関する。より具体的には、本出願は、ロッド、バー、およびケーブルなどの細長い補強部材を定着し、添接し、かつ/またはそれらに張力付与するのに使用されるシステムならびに方法に関する。さらにより具体的には、本出願は、ロッド、バー、またはケーブルを、新しいもしくは既存の構造要素を補強するのに使用できるようにする、定着、添接、および張力付与システムに関する。
【背景技術】
【0004】
現在、米国だけでも数万基の橋が、50年以上も前の技術および材料を使用して建設済みである。そのような橋は、例えば、コンクリート、石造物、鋼、木材、および他の材料から作られていることがあり、かかる材料は建設時以降劣化してきており、不具合が生じる前に修理する必要がある。実際に、これらの橋の多くは剪断および/または破壊の臨界状態にあるので、修復を必要としている。建物、配管系統、および他のインフラストラクチャを含む橋以外の他の要素も、同様の状況に見舞われている。
【0005】
これまで様々な技術が修復に使用されてきた。例えば、機械的把持アンカーが開発されている。これらの把持アンカーは支持ロッドを把持し、また、橋の桁または他の構造要素に接続される。これは、ロッドによる付加的な支持を橋に提供し、ひいては剪断および撓みを改善するための橋の修理または修復に役立ち得る。
【0006】
なお、かかる把持アンカーは、例えば、繊維強化ポリマー(FRP)ロッドとともに使用されてもよい。把持アンカーはFRPロッドをしっかり掴むので、例えば、ロッドにおける応力集中を誘発する把持くさびを使用することによって、ロッドの局所的な損傷を誘発する可能性がある。ロッドにおける応力集中は、ロッドを構築する様々な繊維の不具合を引き起こし、ひいてはロッドの早期の不具合も始まる可能性がある。その結果、10年以上にわたって製造されてきたFRPロッドは、実用的かつ効果的なアンカーを持たないため、ポストテンショニングまたはプレストレス用途には広く使用されてこなかった。
【0007】
したがって、FRPロッドが使用されるとき、それらは一般に、表面近傍装着(near-surface mount)(NSM)技術に使用される。NSM技術を使用して橋または他の構造を修復することによって、コンクリートまたは石造物部材に、FRPロッドを用いて補強された撓み強度および/または剪断強度を持たせることが可能になり、また、かかる修復はコンクリートまたは石造物表面の所望の方向に溝を切り込むことを含むことができる。次に、溝はエポキシ系接着剤またはセメント系グラウトで充填されてもよく、FRPロッドが溝内に設置される。エポキシ樹脂またはグラウトはロッドの周りを流れて溝を充填し、それによってFRPロッドが中に埋め込まれる。
【0008】
なお、そのような用途は、構造要素に溝を切り込む必要があるため、結果として時間がかかる場合がある。それに加えて、溝を切り込むことによって構造要素には固有の初期の弱化がある。NSMもエポキシまたはグラウトを利用するが、この技術は試験条件または製造条件下ではなく現場条件で行われるため、エポキシまたはグラウトの厚さと一貫性を広く制御することが困難である。さらに、NSMは構造要素の表面に溝を切り込むため、鋼の構造要素などの他の要素を強化するための用途はさらに制限される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、構造要素の補強を容易にすることができ、現場条件下であっても既存のまたは新しい建造物に簡単に導入でき、様々な異なる用途に、かつ多くの異なる建設材料と併せて使用可能であるアンカーが求められている。好ましくは、かかるアンカーは、集中した応力による損傷を最小限に抑えるか、または排除するとともに、撓み耐力、強度容量、および剪断摩擦による剪断耐力も改善する。それに加えて、ポストテンショニングおよび/またはプレテンショニングを行ってもよいように、ロッド、バー、ケーブル、またはそのようなデバイスによって定着される他の支持要素に応力を付与するための機構を提供することが求められている。また、より長いスパンにわたって支持要素を添接するための機構を提供することが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の例示的実施形態は、種々のレベルの圧縮応力を構造に付与する定着システムに関する。例えば、付与される圧縮応力は、構造および/または構造の補強部材の全バックル強度(full-buckle strength)までの公称量であることができる。したがって、構造は、それを通ってまたはそれに沿って延びる細長い補強部材を有してもよい。システムの一部として、構造を係合するための、または構造に接続されたプレストレスデバイスを係合するための接触面を含むアンカーが記載される。アンカーは、細長い補強部材を受け入れるボアを含み、また、少なくとも2つの締付け部材を有する。システムはさらに、軸線方向ボア内に位置付けられた細長い補強部材を含むことができ、複数のファスナは、少なくとも2つの締付け部材と協働して、一対の締付け部材を挟み込み、軸線方向ボアを収縮させて、細長い補強部材に対する締付け力を作り出すように構成することができる。
【0011】
本明細書に開示される例示的実施形態では、定着システムが開示され、これは圧縮応力を静止構造に付与することができる。いくつかの例示的実施形態では、かかるシステムは、静止構造に面するように構成された、任意に静止構造に接して係合することができる前面を含む。前面にほぼ垂直であるようにして軸線方向に延在する、少なくとも1つのボアが含まれる。締付け側面も含まれ、これは複数の締付け穴を有する。かかる穴は、前端面に平行な方向に延在するように形成することができる。軸線方向スリットも、締付け側面からボアまで延在してもよく、2つ以上の締付け部材を形成することができる。ファスナは、任意に、締付け穴内に設置されるとともに、締付け部材が互いに近付き、かつボアが収縮するように締め付けられるように適合されてもよい。ロッド、バー、ケーブル、または緊張材などの細長い補強部材もボア内に設置されてもよい。いくつかの実施形態では、細長い補強部材は、ボアが締め付けられていない状態のときのボアの直径または幅よりも狭い直径または幅を有するが、ファスナが締められると、ボアは収縮して、圧縮力を細長い補強部材の周りに掛けてもよい。
【0012】
別の実施形態では、アンカーデバイスによって細長い補強部材を締め付ける方法が開示される。そのような実施形態では、アンカーが提供されてもよい。アンカーは、前側端面、円筒状の軸線方向ボア、穴を備えた締付け側面、およびアンカーの軸線方向長さに沿った軸線方向スリットを有してもよい。複数のファスナ(例えば、ボルト)が穴に挿入されてもよく、アンカーは、構造から延在する細長い補強部材の自由端の上を通して、前側端面が構造に接触するまで滑動させてもよい。締付けボルトは、円筒状のボアを狭窄させ、アンカーを補強部材の自由端に固定するように締められてもよい。様々なファスナは、互いに独立に、かつ細長い補強部材に対する引張り荷重とは独立に締めることができる。一実施形態では、ファスナは、前端に最も近いファスナが掛ける締付け力が、それよりも前端から離れた他のファスナの締付け力よりも小さいようにして締められる。
【0013】
別の実施形態では、細長い補強部材に張力を付与して圧縮力を付与する方法が開示される。そのような実施形態では、アンカーは、構造を通って、それに隣接して、かつ/またはそれに沿って延在する補強部材の端部の周りで締められる。その結果、補強部材がアンカーに取り付けられた状態で、また、アンカーを静止構造の表面に押し付け、静止構造に対して圧縮力をもたらすのに十分な力で、細長い部材に張力が付与される。張力付与はまた、アンカーと静止構造との間の距離を変えることを含む。
【0014】
本発明の実施形態のこれらおよび他の態様は、以下の説明および添付の特許請求の範囲から、さらに十分に明白になるであろう。
【0015】
本発明の特徴および利点は、以下の詳細な説明を、やはり本発明の特徴を例示する添付図面と併せ読むことによって明白になるであろう。これらの図面は単に本発明の例示的実施形態を示すものであり、したがって、本発明の範囲を限定するものと見なすべきではないことが理解される。図面は、例示的実施形態については概して原寸に比例するが、縮尺は変動することがあり、本明細書に包含されるすべての実施形態について、図示される実施形態は必ずしも原寸に比例して示されていないことを理解されたい。
【0016】
さらに、本明細書の図面に全体として記載され図示される本発明の構成要素は、多種多様な異なる構成でアレンジし設計することができることが容易に理解されるであろう。いずれにせよ、本発明は、添付図面を用いることによって、さらに具体的かつ詳細に記載され説明される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1A】本発明の例示的実施形態による細長い補強部材のアンカーを示す平面図である。
【図1B】図1Aに示されるアンカーの側面図である。
【図1C】図1Aに示されるアンカーの正面図である。
【図2】図2Aは、本発明の別の例示的実施形態による細長い補強部材のアンカーを示す正面図、図2Bは、図2Aに示されるアンカーの平面図である。
【図3A】本発明のさらに別の例示的実施形態による細長い補強部材のアンカーを示す平面図である。
【図3B】図3Aに示されるアンカーの正面図である。
【図3C】本発明の別の例示的実施形態による、2つの細長い補強部材に対して使用可能な延長された高さを有する、図3Aに類似したアンカーの正面図である。
【図3D】図3Cに示されるアンカーの平面図である。
【図4A】本発明の別の例示的実施形態によるアンカーの別の実施形態を示す正面図である。
【図4B】図4Aに示されるアンカーの平面図である。
【図4C】2つの細長い補強部材を合わせて添接するのを容易にするようにアンカーが軸線方向に延長されている、図4Aに類似したアンカーの平面図である。
【図5】定着システムを使用して1つまたは複数の細長い補強部材で補強されたビームを示す側面図である。
【図6】図6Aは、アンカーおよび2つの細長い補強部材を使用して補強されたビームを示す部分正面図、図6Bは、3つのアンカーおよび4つの細長い補強部材を使用して補強されたI形鋼を示す部分正面図である。
【図7】細長い補強部材を用いて静止構造を補強するポストテンショニングデバイスを示す図である。
【図8】静止構造を補強するための、複数の細長い補強部材を使用するポストテンショニングデバイスの別の例示的実施形態を示す図である。
【図9】図9Aは、静止構造を補強するプレストレスデバイスの別の実施例を示す図、図9Bは、図9Aのプレストレスデバイスの側面図である。
【図10】細長い補強部材が静止構造の周囲に延在し、ストレスボルトが張力を付与された状態で設置されている、静止構造を補強するプレストレスデバイスを示す図である。
【図11A】1つまたは複数の細長い補強部材で静止構造を補強するポストテンショニングデバイスを示す側面図である。
【図11B】図11Aに類似したポストテンショニングデバイスを示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面に示される例示的実施形態を参照する。図面中、同様の構造には同様の参照記号が与えられる。本明細書において、例示的実施形態について記載するために特定の文言が使用されるものの、それによって本発明の範囲が限定されることは意図しないことが理解されるであろう。図面は、本発明の様々な実施形態の図式的かつ概略的な表現であり、本発明を限定するものと解釈すべきでないことが理解されるであろう。本開示の所有権を有する関連分野の当業者が想到する、本明細書に示される発明の特徴の修正およびさらなる改良、ならびに本明細書に示される本発明の原理の付加的な応用は、本発明の範囲内にあるものと見なされる。さらに、少なくとも繊維強化ポリマーロッド、鉄筋強化ポリマーロッド、冶金、および機械的ファスナの様々な周知の態様は、例示的実施形態の態様が不明瞭になることを回避するため、本明細書には詳細に記載しない。
【0019】
本発明について記載し請求するにあたって、用語「細長い補強部材」は、延在するか延長可能であって、部材のスパンまたは長さにわたって材料を補強するために使用される、緊張材、ケーブル、ロッド、および他の同様の部材を指すことができる。そのような材料としては、繊維強化ポリマー(FRP)ロッド、鉄筋強化ポリマー(SRP)ロッド、金属、ポリマー、および複合材バー、緊張材、および/またはケーブルを挙げることができるが、それらに限定されない。
【0020】
本明細書で使用するとき、複数の物品、構造要素、複合要素、および/または材料が、便宜上共通のリスト中に提示されることがある。しかし、これらのリストは、リストの各部材が別個かつ独自の部材として個別に識別されるものと解釈すべきである。したがって、そのようなリストの個別の部材はいずれも、それらが共通の群の中に提示されていてそれに反する指示がないことのみに基づいて、同じリストの他のいずれかの部材と事実上等価であるものと解釈すべきでない。
【0021】
数値データも、範囲形式で本明細書に表現され提示されることがある。そのような範囲形式は、単に便宜上かつ簡潔にするために使用されるものであり、したがって、範囲の限界として明示的に列挙される数値だけではなく、その範囲内に包含される個別の数値または部分的範囲を、各数値および部分的範囲が明示的に列挙されているかのようにすべて含むものとして、柔軟に解釈すべきであることを理解されたい。さらに、そのような範囲は、例示的実施形態の非限定例であるものとし、特許請求の範囲に明示的に列挙されない限り、すべての実施形態に必須のものとして解釈すべきではない。
【0022】
図1A〜10に示され、それらに関連して記載されるのは、FRPロッド、SRPロッド、金属バー、またはケーブルなど、細長い補強部材のための定着システム、添接システム、および/または張力付与システムの様々な例示的実施形態である。図示されるシステムは、コンクリート、ならびに石造物、鋼、および木材などの他の剛性建設材料から作られる静止構造の鋼による補強を補うか、またはその代わりに使用される、FRPおよびSRPロッド、金属バー、またはケーブルを定着し、それらに張力を付与するのに使用することができる。本発明は、ビーム、柱、および壁などの、新しい構築物、ならびに既存の強化/プレストレスコンクリート、鋼、石造物、または木材要素の修理/修復に使用される細長い補強部材に適用することができる。本発明はまた、建物、橋、配管系統などの、新しい強化/プレストレス材料のための耐震接合部における用途を有する。語句「静止構造」は、細長い補強部材によって補強することができるあらゆる構造を表すのに広く使用され、建物、橋、配管系統などに限定されないことにも留意されたい。実際に、移動する構造も静止構造であり得る。例えば、移動する構造はそれに取り付けられた定着デバイスを有することがあるので、移動する構造とアンカーとの間に相対運動はなく、それによって、該構造はアンカーに対して静的となる。
【0023】
本発明の定着システム、添接システム、および張力付与システムは、静止構造を通して、それに沿って、またはその周りに延びている細長い補強部材を静止構造に固定し、細長い補強部材に張力を付与すると圧縮応力を該構造に伝達するのに使用することができる。静止構造は、任意の建物、壁、柱、ビーム、基礎、屋根、配管系統、インフラストラクチャ構成要素、または他の構造であることができ、コンクリート、鋼、石造物、木材、または他の類似の建築材料から作られてもよい。一般に、細長い補強部材は、細長い補強部材の少なくとも一端が静止構造の面、すなわち接触面から外向きに延在するようにして構造に導入される。細長い補強部材の反対側の端部は、同じもしくは類似の定着システムを用いて構造の反対側に取り付けることができ、または構造自体の内部もしくは内側に固定することができる。代替例では、細長い補強部材は、遠端を別の表面に取り付けるか、または、柱などの構造全体に巻き付けて第1の端部に固定した状態で、静止構造の外表面に巻き付けることができる。内側および外側両方の構成において、内部を貫通する、または外周に沿った細長い補強部材の中央部分は、必ずしも静止構造に直接取り付けられなくてもよく、静止構造とは独立に、その長さに沿って少なくとも部分的に自由に移動し伸展してもよい。
【0024】
細長い補強部材は、特定の構造設計に応じて、水平に、垂直に、または任意の角度で導入することができる。一般的なように、細長い補強部材を水平に延ばした場合、アンカーは、壁、ビーム、桁などの構造の要素の面または端部など、垂直な接触面を押圧することができる。細長い補強部材はまた、一端を基礎内に固定し、自由端を頂部の水平な接触面から垂直に延在させて、垂直構造の高さの全体または一部分に延びることができる。定着システムは、接触面を直接押圧するように設置することができ、あるいは、細長い補強部材のための穴もしくはスロットを有するプレートまたは張力付与デバイスを、アンカーと静止構造の接触面との間に位置付けることができる。
【0025】
緊張材の両端を静止構造に固定した後、様々な方法を用いて細長い補強部材に任意に張力を付与し、かつ/またはそれを伸展させることができ、その結果、細長い補強部材の2つの取付け点の間に位置決めされた静止構造の部分を圧縮するように作用する、均等な反対方向の反力が静止構造に加えられる。静止構造に沿って周期的に間隔が空けられた複数の細長い補強部材を使用することによって、またはさらには2つの方向に延びて面を形成する複数の緊張材を使用することによって、複数の場所および/または2つ以上の方向で構造を圧縮して、強度と剛性がより高く、一体化された静止構造を形成することができる。
【0026】
次に図1A〜4Bを参照して、様々なアンカーデバイスの特定の実施例について記載する。記載され図示される実施形態は例示に過ぎず、異なる実施形態において組み合わせることができる様々な特徴および/または構成要素を含むことが理解されるであろう。したがって、いずれの特徴または構成要素も、1つもしくは複数の他の構成要素または特徴のみと併せて使用することを必須としないものと解釈すべきである。
【0027】
図1A〜1Cに示されるように、本発明のいくつかの例示的実施形態によるアンカーデバイス100は、水平方向(x)、垂直方向(y)、および軸線方向(z)それぞれにほぼ長方形の構成を有するアンカーブロック110を含むことができる。この説明の目的のため、アンカーブロック110のx−y軸によって形成される面は、アンカーブロックが最終的に押圧する静止構造の接触面と同一面として規定することができ、z方向は、同一面または曲線であり得る接触面の面に垂直であるものとして規定することができる。
【0028】
代替実施形態では、細長い補強部材114が静止構造の周囲に巻き付けられ、接触面に平行であるときなど、前端面112は接触面を横断するように向き付けることができる。この向きでは、アンカー100を細長い補強部材114に取り付けるシステムおよび原理は、アンカーブロックの前端面112ではなく側面116が静止構造を押圧することを除いて同じである。
【0029】
いくつかの例示的実施形態では、アンカーブロック110は、静止構造の接触面に面するように構成された、ほぼ平面である前端部のx−y面112を有することができ、また、後端部の非接触面118を有することができる。1つまたは複数のボア径を有する円筒形の軸線方向ボア120をアンカーブロック110に形成することができ、該ボアは、前端面112の面にほぼ垂直に延在してもよい。ボア120は、アンカーブロック110の全体または一部分を通って延在してもよい。例えば、図1Aおよび1Bに示される実施形態では、ボア120はアンカーブロック110の全体を通って延在し、前端面112から後端面118まで延びている。ボア120は、所望のように、かつ特定の用途に対して適切に位置付けられてもよい。したがって、ボアはアンカーブロック110内で心出しされてもよく、または、図1A〜1Cに示されるようにアンカーブロック110の中心線からずれていてもよい。例えば、図示される実施形態では、アンカーブロック110はx軸に対しては心出しされているが、y軸に対してはずれている。
【0030】
図1Cに最も良く示されるように、1つまたは複数の穴124もアンカーブロック110に形成されてもよく、軸線方向に積み重ねられた締付け力をもたらすのに使用することができる。例えば、図示される実施形態では、4つの機械的ファスナ126と位置合わせされた4つの穴124がある。機械的ファスナ126は、穴124を通り、かつ前端接触面112の面に平行に延びることができる。
【0031】
機械的ファスナ126が穴124内でほぼ心出しされている図1Aおよび1Bに最も良く示されるように、様々な穴124は、アンカーブロック110の軸線方向長さに沿ってほぼ均等に分配されてもよい。これは、例えば、細長い補強部材114の長さに沿ってボア120内で締付け力を均等に分配するのに望ましい場合がある。しかし、他の実施形態では、細長い補強部材114およびアンカー本体110の長さに沿って締付け力を均等に分配するのが望ましくないことがある。例えば、後述するように、前面112またはその付近の締付け力を低くし、後端面118に向かって締付け力を増加させることが望ましいことがある。その結果、穴124は任意にアンカーブロック110の軸線方向長さに沿って不均等に分配されてもよく、機械的ファスナ126は異なる締付け力をもたらすように締められてもよく、または他の機構を使用して、異なる締付け力を確実にもたらしてもよい。
【0032】
任意の適切な機械的ファスナ126が、本明細書に記載される様々な実施形態と併せて利用されてもよい。例えば、図示される実施形態では、機械的ファスナ126は、ナット132を締結できるようにねじ山130を有するボルト128を含む。その結果、ナット132がボルト128に対して固定され締められるにつれて、ナット132およびボルト128は、アンカーブロック110の締付け側面134、136の間を圧縮する締付け力を掛ける。
【0033】
さらに図示されるように、機械的ファスナ126の例示的実施形態はまた、複数の座金137を含んでもよい。図示される実施形態では、1つの座金137はボルト128のヘッドと締付け面134との間に位置付けられる。第2の座金137は側面136とナット132との間に位置付けられる。かかる座金137は、機械的ファスナ126によってアンカー本体110に加えられる力を拡散させ、それによって、力および応力をほぼ均等に分配することにより応力集中を低減する能力を提供する。
【0034】
図1Bおよび1Cに最も良く示されるように、軸線方向スリット138も、アンカーブロック110の軸線方向長さの全体または一部分に沿って延在してもよい。例えば、図示される実施例では、軸線方向スリット128はアンカーブロック110の軸線方向長さ全体に沿って延在する。それに加えて、この図示される実施形態では、軸線方向スリット138はアンカーブロック110の高さの一部分に沿って延在する。例えば、軸線方向スリット138は、この実施形態では、前端面112の中心線にほぼ沿って、軸線方向ボア120から前端面112と側面140との交点まで延在する。図から分かるように、かかる軸線方向スリットは、このようにして、機械的ファスナ126が締められるにつれて互いに圧縮させることができる一対の締付け部材142を作り出す。
【0035】
例示的実施形態では、軸線方向スリット138はテーパ状なので、その幅はその高さに沿って変動する。具体的には、図1Bは、軸線方向スリット138がその長さにわたってほぼ一定の幅を有することを示し、図1Cは、軸線方向スリット138がその高さに沿って2つの異なる幅を有することを示す。特に、側面140付近の軸線方向スリット138は、部分的に軸線方向ボア120に向かって延在し、次いでサイズが減少する。なお、図示される実施形態は、したがって、軸線方向スリット138に対する階段状のテーパ設計を含むが、これは単なる例示である。他の実施形態では、軸線方向スリット138は直線のテーパを有してもよく、2つを超える幅を有してもよく、放物線状もしくは他の形でサイズが増加し、次に減少してもよく、またはほぼテーパを有さなくてもよい。さらに、軸線方向スリット138はボア120から側面140までの全体に延在するが、他の実施形態ではそれらの間に部分的にのみ延在してもよい。例えば、例示的な軸線方向スリットは、側面140からボア120に向かって延在し、ただしボア120には達しなくてもよい。
【0036】
図1A〜1Cに示されるのは、前端面112に近接した軸線方向ボア120の端部が拡大されたテーパ状の開口部を有して構成されている、本発明の例示的実施形態の別の態様である。そのような構成は任意であるが、細長い補強部材114を挿入するのが容易になり、かつ/または細長い補強部材114がボア114内で締め付けられたときの応力を低減できるようになり、かつ/または細長い補強部材114に対するアンカーブロック110の横方向の位置合わせにおける許容差が大きくなることがある。図示されるように、テーパは平滑なプロファイルを含むことができるが、他の実施形態では階段状のプロファイルを含んでもよい。さらに、図示される実施形態は、アンカーブロック110の軸線方向の長さの一部のみに延在するテーパを示すが、他の実施形態では、テーパがなくてもよく、テーパがアンカーブロック110の全長に延在してもよく、またはアンカーブロック110内のより長いもしくは短い長さに延在してもよい。
【0037】
本明細書に記載されるように、2つの締付け部材142は、4つの締付け穴124を通して挿入され、ナット132および座金137を用いて固定される機械的ファスナ126を使用して互いに引き寄せることができる。本発明の1つの態様では、締付けボルト128およびナット132と締付け部材142との間に位置付けられる座金137は、締付けボルト128と閉位置にある締付け部材142との間の分散された周面接触を維持するため、テーパを有して構成することができる。これは、締めている間の締付けボルトに対する曲げ応力を低減するのに役立つ。さらに、軸線方向ボア120を閉止し係止するのに使用される手段はボルトに限定されなくてもよく、2つの締付け部材を互いに信頼性高く一定して引っ張り、押しやり、または固定することができる、ねじ、レバーカム、係止ピン、リベットもしくは同等のファスナ、Uクランプ、または類似の外部締付けデバイス、あるいはさらには、2つの締付け部材142が別の締付けデバイスを用いて互いに引っ張られ/押しやられた後にそれらを恒久的に接合するための溶接または他の同様の手段など、任意の締付けデバイスを含むことができる。それに加えて、座金137はテーパ状であるものとして示されるが、他の実施形態では、直線の/平坦な座金、C型座金、斜め座金などであってもよい。さらに、図示される実施形態は各機械的ファスナ126に2つの座金127を含むが、他の実施形態では、より多数または少数の座金があってもよく、さらには座金が利用されない実施形態であってもよい。
【0038】
図1A〜1Cに示される例示的実施形態では、アンカーブロック110は、y方向に約5.08cm(2インチ)、x方向に2.54cm(1インチ)、およびz方向に15.24cm(6インチ)の寸法を有することができる。後述されるように、前端面112を形成する5.08×2.54cm(2×1インチ)の平面は静止構造の接触面に圧縮荷重を加えることができるが、図面および明細書から、これらの寸法または関係が固定であるものと解釈すべきではない。例えば、アンカーブロック110はほぼ半球または楕円面の構成を有することができ、その場合、x−y面に相当するアンカーブロックの平坦面は、固定体の接触面に接して圧縮力を加える円形または楕円形の接触面であることができる。他の実施形態では、側面116、118が固定体の接触面に接して圧縮力を加えてもよい。
【0039】
アンカーブロックは、細長い補強部材の上を滑動することができ、ボア120の締付け前の直径よりも小さな直径を有する。前端面120が静止構造の接触面に当接すると、またはより詳細に後述するように、アンカーブロック110と静止構造との間に配置された中間プレートもしくはプレストレスデバイスに当接すると、細長い補強部材は軸線方向ボア120に滑り込むことができる。締付けボルト、座金、およびナットを備えた4つの機械的ファスナ126を、締付け穴124に挿入することができ、一対の締付け部材142を挟み込んで閉じるように締めることができ、それによって軸線方向ボア120の直径が収縮し、細長い部材の周りを締付け、アンカーブロック110を細長い補強部材114に固定する締付け力が形成される。
【0040】
アンカーブロック110が細長い補強部材114に固定された後、様々なやり方で細長い補強部材114に軸線方向に張力が付与されて、細長い補強部材114内に引張り応力を作り出し、それに対応して静止構造に対する圧縮応力を作り出すことができる。いくつかの例示的実施形態の特徴として、アンカーブロック112と細長い補強部材114との間の締付け力の印加は、様々な機械的ファスナ126の間で変動することができ、したがって、細長い補強部材114に対する軸線方向の引張り荷重の印加とは独立である。楔状または切頭円錐状構造を通して引張り力と同時に締付け力が加えられる従来の定着方法とは異なり、本明細書に記載される例示的実施形態による、機械的ファスナ126同士で可変の締付け力の独立した印加によって、細長い補強部材114に与えられる締付け応力の量および分布をより良好に制御することが可能になる。例えば、遠位端または後端のファスナは、前面112により近い近位側のボルトよりもさらに締めることができ、それは、近位側のファスナに加えられた場合に損傷を与え得る顕著な機械的締めをもたらすのに十分である。従来技術に見られる楔状構造は、楔または切頭円錐の前方先端に締付け力が集中する傾向があるが、本発明によって、軸線方向ボア120の全長に沿って応力をほぼ均等に分布させることが可能になり、従来の細長い補強部材114による定着および張力付与システムよりも、性能の向上、長寿命、低コストにつながる。
【0041】
集中した締付け力は外側の繊維を破損させ、それによってFRPロッドの有効性および寿命が低減する可能性があるので、FRPロッドが使用されるとき、集中した締付け力を低減することが特に望ましい場合がある。本明細書の例示的実施形態の1つの態様は、細長い補強部材114に対する軸線方向力とは独立に様々な機械的ファスナを締めることができるので、不具合が最も起こりやすい前端部112の応力のみを低減するだけではなく、細長い補強部材114の表面の周りで力を均等に分配するように、力を選択的に加えることができる。応力集中のそのような低減は、前端面112のボア120をテーパ状に設計することによって、機械的ファスナ136における異なる締付け圧力を設定することによって、またはそれらの組合せによって生じさせることができる。
【0042】
上述したように、前端部112に最も近い機械的ファスナ126を、残りの機械的ファスナ126よりも低い圧力まで締めるのが望ましいことがある。一実施形態では、最前方の機械的ファスナ126の締付け圧力は、二番目の機械的ファスナ126の約3分の2の圧力に設定されてもよい。当然ながら、他の例示的実施形態では他の圧力が使用されてもよく、最前方の機械的ファスナ126の圧力は、二番目の機械的ファスナ126の4分の1〜4分の3である。残りの機械的ファスナも、二番目の機械的ファスナ126に類似した圧力を有してもよく、または異なる圧力を有してもよい(例えば、前端面112からの距離が増加するにつれて圧力が増加する)。
【0043】
アンカーブロック110と細長い補強部材114との間の締付け力は、異なるやり方で作り出し、または加えることができる。例えば、上述したように、印加力は、単に、アンカーブロック110を細長い補強部材114に固定するのに十分な締付け力が発生するまで、締付けボルト128を締めて軸線方向ボア120を閉じ、細長い補強部材114を挟み込むことによって直接加えることができる。本発明の代替実施形態では、変形可能なスリーブ(図示なし)を軸線方向ボア120の内表面と細長い補強部材114との間に差し込んで、機械的ファスナ126が異なる締付け応力で締められたときに2つの本体の間の境界面にわたって締付け応力をより良好に分配することができる。変形可能なスリーブは、展性金属、可撓性ポリマー、織物、またはそれらの複合材など、細長い補強部材114およびアンカーブロック110と適合性がある様々な材料から作ることができる。適切な変形可能な材料としては、銅などの軟金属またはエポキシなどの樹脂を挙げることができるが、それらに限定されない。変形可能なスリーブが使用されるとき、軸線方向ボアの直径は、細長い補強部材114と変形可能なスリーブの厚さとの両方に適応するように大きく作ることができる。
【0044】
本発明の別の態様では、変形可能なスリーブの代わりに、またはそれに加えて、軸線方向ボアの内表面と細長い補強部材114との間に接着材料を差し込み、アンカーブロックと細長い補強部材114との間で硬化させ、それらの間に化学結合を形成できるようにすることができる。硬化した接着材料は、細長い補強部材114の材料およびアンカーブロック110材料の両方と材料適合性があり得る、エポキシ、工業用接着剤、または類似の接着剤であることができる。「材料適合性がある」とは、劣化、酸化がほぼないこと、および/または細長い補強部材114もしくはアンカーブロック110どちらかの機械的完全性のいかなる低下もないことを意味するものと定義される。
【0045】
接着剤が使用されるとき、機械的ファスナ126の測定された締めによって膜厚を制御することができ、それによって、細長い補強部材114の外表面の周りにある接着剤の薄膜を均一にするのには十分に、ただし機械的締付け力を実際に与えるのには至らないように、軸線方向ボア120の直径を低減することができる。硬化した接着材料は、約0.25mmなど、約0.01mm〜約1.00mmの膜厚を有することができる。硬化に続いて、機械的ファスナ126を任意にさらに締めることができる。別の実施形態では、細長い補強部材114に対して機械的締めを付与するため、ボア120のテーパ状開口部から最も遠い機械的ファスナ126をさらに締めて、細長い補強部材114に付加的な締付け力を加えることができる。
【0046】
図1A〜1Cに示される例示的実施形態では、細長い補強部材114は0.95cm(0.375インチ)の外径を有することができ、軸線方向ボア120の内径は、前端面112にある1.27cm(0.5インチ)の開口部からテーパされた後に1.03cm(0.406インチ)であることができる。さらに、細長い補強部材114は、アンカーブロック110の15.24cm(6インチ)の長さを超えて、軸線方向ボア120の後端部から外にさらに0.64cm(0.25インチ)延在することができる。しかし、これは単なる例示であり、他の実施形態では、細長い補強部材114はアンカーブロック110の後端面118からさらに長いまたは短い長さだけ延在してもよい。他の実施形態では、細長い補強部材114は、ボア120がアンカーブロック110を通って部分的にのみ延在する場合など、後端面118から外に延在しなくてもよい。
【0047】
細長い補強部材114の端部には、接着剤または機械プレス嵌めによって細長い補強部材114に取り付けることができる、丸頭144または他の適切なデバイスを被せることができる。設置後、丸頭144は、細長い補強部材114がアンカーブロック110を通って後方に滑るのを防ぎ、細長い補強部材114に加えられる引張り荷重の一部分を吸収するとともに、細長い補強部材114の露出した端部を美観的にカバーするように働くことができる。それに加えて、丸頭144は、紫外線、露出による劣化、およびアンカーブロック110と細長い補強部材114との間の境界面への異物の侵入からの保護をもたらすことができる。
【0048】
細長い補強部材114は、図1A〜1Cに関して本明細書に記載した例示的な細長い補強部材114よりも大きいまたは小さい直径を有することができ、それによって、より大きなまたは小さな圧縮荷重を静止構造に加えることが可能になる。補償のため、アンカーブロック110の軸線方向ボア120の長さは細長い補強部材114のロッド径に比例することができ、それによって、より厚い細長い補強部材114が、より長い軸線方向ボア110を有するアンカーブロック110内に定着される。これは、細長い補強部材114の厚さまたは引張り荷重の量に関わらず、細長い補強部材114に対する締付け応力を一定に保つために行うことができる。軸線方向ボア120の直径と長さとの間の比例はほぼ放物線状であってもよい。
【0049】
本発明の例示的実施形態のアンカーブロック110および定着デバイス100は、ガラス繊維強化ポリマー(「GRPF」)、アラミド繊維強化ポリマー(「AFRP」)、炭素繊維強化ポリマー(「CFRP」)、およびそれらの複合材または組合せ、ならびに金属バーまたはケーブルを含む、工業用の細長い補強部材114の製造および生産に使用される様々な一般材料と材料適合性があり得る。上述の材料は直線状の緊張材または曲線のセグメントであることができる。上述したように、「材料適合性がある」とは、劣化、酸化が実質的にないこと、および/または細長い補強部材114もしくはアンカーブロック110どちらかの機械的完全性のいかなる低下もないことを意味するものと定義することができる。それに加えて、細長い補強部材114それぞれの材料または組合せは特定の材料特性を含み、それによって、軸線方向ボアの前端部テーパの長さおよび程度、軸線方向ボアのテーパのタイプ(例えば、直線または階段状)、軸線方向ボアの長さおよび直径、前端部接触面の表面積、直接圧縮、変形可能なスリーブを用いた圧縮、接着剤取付けなどを含む好ましい取付け方法、使用される機械的ファスナ(存在する場合)の数、使用される座金の数およびタイプ、軸線方向スリットの数、軸線方向スリットの長さ、軸線方向スリットのタイプ(例えば、階段状、直線状、直線のテーパ状など)などを含むがそれらに限定されない、定着システム100の設計パラメータを調整するのが望ましくなることがある。これらの設計パラメータはすべて必要に応じて改変することができ、それでもアンカーブロックは本発明の範囲内にあり得る。
【0050】
図2Aおよび2Bは、本発明の範囲内にあり、細長い補強部材214の自由端に接続することができる、アンカーデバイス200の別の例示的実施形態を示す。この実施形態では、アンカーブロック210は、図1A〜1Cのアンカーブロック110に類似した構造を有するが、様々な異なる設計パラメータを有する。例えば、アンカーブロック210の後端面218が図2Aに示される。この実施形態では、複数の軸線方向スリット238a、238bがアンカーブロック210に形成されていることが分かる。特に、この実施形態では、中央の軸線方向スリット238aが形成され、ボア220から側面240まで延在する。この場合、軸線方向スリット238aは、図1Cの軸線方向スリット138の階段状のテーパ構成ではなくほぼ直線の構成を有するが、階段状の構成ならびに別の適切な構成(例えば、直線のテーパ状、放物線状など)が利用されてもよく、軸線方向スリット238aのサイズがボア220から延在するにつれて増加または減少するようにサイズを変えることができる。
【0051】
軸線方向スリット238aはやはり、軸線方向スリット238aの両側に2つの締付け部材242aを形成する。しかし、この場合、各締付け部材242aはその中に付加的な軸線方向スリット238bも含む。したがって、軸線方向スリット238bは4つの副締付け部材(sub-clamping members)242bを作り出すので、締付け部材242aそれぞれの中に2つの副締付け部材242bがある。この実施形態の軸線方向スリット238bの長さは軸線方向スリット238aの約半分であることが分かるであろう。しかし、他の実施形態では、軸線方向スリット238bは、軸線方向スリット238aに等しい、もしくはそれよりも長い長さを有してもよく、軸線方向スリット238aの4分の1〜4分の3の長さを有してもよく、または別の適切な長さを有してもよい。さらに、両方の軸線方向スリット238bが必ずしも同じ構成またはサイズを有さなくてもよい。例えば、軸線方向スリット238bの一方は他方の軸線方向スリット238bよりも長いか、幅広いか、もしくは軸線方向スリット238aにより近くてもよく、かつ/または軸線方向スリット238は異なる形状(例えば、異なるテーパ構成)を有してもよい。
【0052】
次に図2Bを参照すると、アンカーブロック210は、3つの機械的ファスナ226a〜cを中に受け入れるように構成され、細長い補強部材214に対して締付け力をもたらすのに使用できることが分かる。さらに、この実施形態では、3つの機械的ファスナ226〜cはアンカーブロック210の軸線方向長さに沿って不均等に分配される。
【0053】
より具体的には、この例示的実施形態では、機械的ファスナ226aは前端面212に最も近く、機械的ファスナ226cは後端面218に最も近い。中間の機械的ファスナ226bは、機械的ファスナ226a、226bからほぼ等距離に位置付けることができるが、この実施形態ではそのように位置合わせされない。その代わりに、機械的ファスナ226bは、機械的ファスナ226aよりも機械的ファスナ226cに近いように位置付けられる。これによって、例えば、後端面218付近の細長い補強部材214の遠位端に対してより大きな締付け力を掛けることが可能になるとともに、不具合が最も起こりやすい前端面212付近の締付け力をより少なくすることが可能になってもよい。
【0054】
図3Aおよび3Bは、本発明の範囲内にあり、細長い補強部材314の自由端に接続することができる、アンカーデバイス300のさらに別の例示的実施形態を示す。この実施形態では、アンカーブロック310は、図1A〜2Bのアンカーブロック110および210に類似した構造を有するが、様々な付加的なまたは異なる設計パラメータを有する。
【0055】
例えば、図3Aは、アンカーブロック210および110と併せてそれぞれ使用される3つまたは4つの代わりに、2つの機械的ファスナ326が使用される例示的設計を示す。さらに、この実施形態では、軸線方向ボア320は階段状のテーパ設計を使用する異なる構成を有する。図示されるテーパは、アンカーブロック310のほとんどを通って延在する最終直径に達する前に2つの異なる直径を含む。さらに、2つの段はそれぞれほぼ同じ長さである。しかし、他の実施形態では、より多数もしくは少数の段があってもよく、かつ/または段は異なる長さを有してもよい。例えば、1つの例示的実施形態では、第2の段は第1の段の3倍の長さを有する。
【0056】
次に図3Bを参照すると、アンカーブロック310は、軸線方向ボア320から側面340まで延在する単一の軸線方向スリット338を有して構成されていることが分かる。この実施形態では、軸線方向スリット338は、軸線方向スリット338の幅がy方向およびz方向の長さに沿ってほぼ一定である、ほぼ直線状の構成を有する。当然ながら、本明細書の開示に鑑みて当業者には理解されるように、スリット338はまた、他の構成(例えば、図1A〜1Cおよび図2A、2B)を有してもよい。
【0057】
図3Cおよび3Dは、本発明の例示的実施形態であって、図3Aおよび3Bに示されるものに類似し、2つの細長い補強部材214とともに使用することができる別のアンカーシステム200aを示す。この実施形態では、二重アンカーブロックと称することができるアンカーブロック210aは、y方向の長さが、特定の細長い補強部材の外径に合わせて構成された、図3Aおよび3Bに示される等価の単一アンカーブロックの約2倍であることができる。
【0058】
単純にするため、図示されるアンカーブロック210aは4つの機械的ファスナ226(すなわち、各軸線方向ボア220aに対して2つ)を有するものとして示されるが、任意の数の機械的ファスナ226を使用してもよいことが理解されるであろう。例えば、アンカーブロック210aが図1Cのアンカーブロック110を二重にしたものと類似するように、合計8つの機械的ファスナがあってもよい。したがって、二重アンカーブロック210aは、2つの単一アンカーブロックを並べて接合した外観を有してもよく、ただし、軸線方向荷重を受けて2つの細長い補強部材214を併せて保持するのに必要な機械的強度と完全性をもたらすため、単一の材料ブロックから構築することができる。場合によっては、2つの細長い補強部材214は同じ補強部材の自由端であってもよい。例えば、アンカーブロック210aは、タンクなどの円筒状表面の周りに延在する同じ細長い補強部材214の2つの端部を固定するのに使用されてもよい。さらに、軸線方向ボア220aは、図3Dに示されるように両端にテーパ状開口部を有することができるが、そのような特徴は任意であり、開口部はテーパを有さなくてもよく、または一方の端部(同じ端部もしくは反対側の端部のどちらか)のみに開口部を有してもよい。
【0059】
図4Aおよび4Bは、1つまたは複数の細長い補強部材414と併せて使用されてもよい、アンカーシステム400のさらに別の例示的実施形態を示す。図4Aに最も良く示されるように、例示的デバイスの軸線方向スリットは複数の部分を含んでもよい。例えば、この実施形態では、軸線方向スリットは首部分438aおよびテーパ状のスライス438bを含む。特に、図示される実施形態では、首部分438aはテーパ状のスライス438bよりも狭い幅を有し、首部分438aはボア420をテーパ状のスライス438bに接続する。したがって、首部分438aの近位端はボア420と連通し、首部分438aの遠位端はテーパ状のスライス438bと連通している。
【0060】
この実施形態では、テーパ状のスライス438bは、首部分438aの遠位端からアンカーブロック410の底面まで延在する。このようにして、首部分438aおよびテーパ状のスライス438bは、締付け部材442aとして作用する2つの半片を集合的に規定する。特に、ファスナ426が締められるにつれて、締付け部材442aは互いに近付き、それによってテーパ状のスライス438bおよび首部分438aが少なくとも部分的に閉じられる。これによってさらに、ボア420が、ボア420内に配置された細長い補強部材414に接触し、それを圧迫する。
【0061】
1つの態様では、首部分438aの幅を低減させるのが望ましいことがある。例えば、細長い補強部材414はFRPロッドであってもよい。そのような場合、ボア420が収縮するにつれて、ロッドの外側の繊維が首部分438aに押し付けられてもよい。首部分438aのサイズを低減させると、首部分438a内で圧迫される繊維がより少なくなり、場合によってはまったくなくすことができる。これによって、破損する繊維をより少なくすることができる。
【0062】
本明細書の開示に鑑みて当業者には理解されるように、細長い補強部材414内の繊維のいずれかが破損するのがなぜ不利益になり得るかについては様々な理由がある。例えば、ボア420は、細長い補強部材414の特定の直径に対してサイズ決めされてもよい。ロッド上の繊維が破損するにつれて、または任意のタイプの細長い補強部材の表面が摩耗するにつれて、補強部材の直径は減少する。その結果、これによってアンカーブロック410内に余分な空間が生じ、補強部材414の締付けの緩みにつながる。
【0063】
それに加えて、FRPロッドでは、各繊維はロッドが伝達することができる最大荷重に寄与する。繊維が破損するにつれて、FRPロッド全体の荷重容量が低減される。その結果、これによって細長い補強部材420が、その繊維が保たれている類似のロッドよりも早期に不具合を起こす場合がある。
【0064】
本明細書に提示されるアンカー設計の1つの特徴は、締め付けられた補強部材の繊維または他の部分の不具合を起こし得る応力集中を低減しながら、細長い補強部材の表面の周りを締め付ける能力であることが分かるであろう。例えば、楔形のクランプおよびシェル形のクランプは、材料が全体を通してほぼ均一である鋼ロッドの応用例とともに一般的である。しかし、特に、それらのクランプが均一な材料ではなく複数の繊維を有するFRPロッドまたは他の繊維ロッドとともに使用されるとき、特定の場所での締付けによって局所的な応力が生じる。例えば、細長い補強部材は1Tの力で張力が付与された状態で設置されてもよい。ロッドが把持され、繊維が45度の例示的角度で変位された場合、変位の場所における張力は1Tではなくなり、約1.414Tである。その結果、変位された繊維は、そのような変位がないロッドの繊維よりも40%早期に不具合を起こす可能性がある。当然ながら、他の鋭い表面に接して挟み込まれた、または係合された繊維はさらに大きな応力集中を有することがあり、さらに早期に不具合を起こす可能性がある。
【0065】
本発明によるアンカーデバイス400は、そのような局所的な応力を最小限に抑える複数の特徴を利用することができる。例えば、アンカーデバイス400は、2つの締付け部材442を互いに締め付け、ボア420を細長い補強部材414の周りに引き付けるのに使用される複数のファスナ426を含む。より多数のファスナを用いて締付け圧力を掛けることによって、締付け圧力がより均等に分配されて、局所的な応力を低減することができる。それに加えて、図4Bに最も良く示されるように、アンカーブロック410の前端部も、局所的な応力が最も問題となる先行縁部の応力を低減するように構成されてもよい。
【0066】
特に、図示される実施形態は、アンカーブロック410の前端面と1番目のファスナ426との間の距離Aを示す。それに加えて、アンカーブロック410の後端面と最後のファスナ426との間の距離Bが示される。いくつかの実施形態では、距離AおよびBは所望の結果が得られるように変えることができる。例えば、図示される実施形態では、距離Aは距離Bよりも長い。その結果、ファスナ426がすべて同じ量だけ締められた場合、アンカーブロック410の後端部にある軸線方向スリットの開口部は、アンカーブロック410の前端部にある軸線方向スリットの開口部よりも低減されやすくなる。
【0067】
いくつかの実施形態では、距離Bはファスナ426間の約半分の距離であってもよい。これによって、結果として、ボア420および/または軸線方向スリットのサイズが前端部から後端部まで減少する、テーパ効果を生じさせることができることが理解されるであろう。したがって、必ずしもすべての実施形態が前端面にテーパを含まなくてもよい。その代わりに、単にファスナを、アンカーブロック410の後端部からの距離よりもアンカーブロック410の前端部からの距離を長くして、かつ/またはファスナ426の中心線間の距離の半分よりも長くして設置することによって、等価の効果が得られてもよい。さらに、本明細書で考察されるように、1番目のファスナ426の締めを残りのファスナ426よりも緩くすることによっても、類似の効果を得ることが可能であってもよい。しかし、これはまた、1番目のファスナ426の距離をアンカーブロック410の前端部から設定することによって回避されてもよい。
【0068】
アンカーブロック410の特定の寸法は、様々な因子および設計パラメータに従って変えることができる。したがって、単一のサイズもしくは寸法、またはさらには寸法同士の関係は本発明の限定事項ではない。しかし、一実施例では、アンカーブロック410は、約16.51cm(6.5インチ)の長さ、5.72cm(2.25インチ)の高さ、および3.81cm(1.5インチ)の幅を有してもよい。アンカーブロック410の軸線方向長さに沿って、4つのファスナ426があってもよい。一実施例では、1番目のファスナはアンカーブロック410の前端部から1.91cm(0.75インチ)のところに位置付けられ、4番目のファスナは後端部から3.18cm(1.25インチ)のところに位置付けられる。その結果、ファスナはそれぞれ隣接したファスナから3.81cm(1.5インチ)ずれていてもよい(中心間を測定)。したがって、そのような実施形態では、アンカーブロック410の前端部からそれに最も近いファスナ426の中心までの距離は、ブロック410の後端部に最も近いファスナ426からの距離よりも長いことが分かる。さらに、アンカーブロック410の前端部からそれに最も近いファスナ426の中心までの距離(例えば、3.18cm(1.25インチ))は、中心間を測定したときの隣接したファスナ間の距離の半分(例えば、1.91cm(0.75インチ))よりも長い場合がある。
【0069】
そのような構成では、軸線方向ボア420は特定のサイズの細長い補強部材に対して設定されてもよい。例えば、記載した実施例では、軸線方向ボア420の直径は0.95cm(0.375インチ)であってもよい。その結果、首部分438aは0.32cm(0.125インチ)の長さを有してもよく、テーパ部分438bは約2.54cm(1インチ)の距離を延在し、5度の角度でテーパ状であることができる。当然ながら、これらの寸法は単なる例示であり、非限定的であって、任意の所望の用途に合わせて大幅に変えることができる。
【0070】
次に図4Cを参照すると、図4Aおよび4Bのアンカーブロック410を改良したアンカー400aの例示的実施形態が示される。例えば、そのようなアンカーは添接デバイスとして有用なことがある。特に、図示される実施形態では、アンカーブロック410aは図4Bのアンカーブロック410の約2倍の軸線方向長さを有する。そのような場合、結果として、細長い補強部材414a、414bをアンカー400a内で固定して維持するのに適した接触圧力をもたらすように、添接アンカーのz方向距離が増加されている(例えば、約2倍にされている)。それに加えて、8つのファスナ426aがアンカーブロック410aに取り付けられているが、使用されるファスナ426aの数は変えることができる。
【0071】
そのような実施形態では、2つの細長い補強部材414a、414bそれぞれの自由端を、アンカーブロック410aの各端部にあるボアの開口部に挿入することができる。細長い補強部材414a、414bはそれぞれ、細長い補強部材414a、414bの当接端部が互いに接触して緊密な突き合わせ継手(butt tight joint)415を形成するまで、アンカーブロック410aのほぼ中間点まで挿入することができる。次に、機械的ファスナ426aを締めて、軸線方向ボア内のギャップを閉じ、細長い補強部材414a、414bに張力を付与する前に締付け力を作り出すことができる。軸線方向スリット内に作られているギャップを細長い補強部材414a、414bに対する圧縮力によって可能な限り閉じるとともに、軸線方向スリットによって形成される締付け部材を曲げ、降伏させることができるように、機械的ファスナ426aを使用して様々な圧力を印加することができる。
【0072】
図5〜6Bは、本明細書に記載されるようなアンカーを静止構造の補強に使用することを示す例示的実施形態を示す。例えば、図5では、ビーム505(例えば、I形鋼)は、定着システム500によってそれに取り付けられた1つまたは複数の細長い補強部材514を有する。特に、1つの定着システム500が、対向する各軸線方向端部付近のビーム505に取り付けられる。その結果、細長い補強部材514が各定着システム500のところで固定され、撓み応力および/または剪断応力による不具合を防ぐようにビーム500に対する補強がもたらされる。それに加えて、定着システム500は2つのみの機械的ファスナ516を含むものとして示されるが、これは単に単純にするためであり、特定の用途に適したより多数または少数の機械的ファスナが使用されてもよい。
【0073】
図6Aおよび6Bは、細長い補強部材(1つまたは複数)514をビーム500に取り付け、それに対する補強をもたらすことができる様々な特定の機構を示す。例えば、図6Aでは、2つの細長い補強部材514がビーム505を補強するのに使用される。この実施形態では、アンカーブロック510aの締付け側面534は、ビーム505のフランジ506の底面に接触するようにして設置される。アンカーブロック510aは、任意の適切な手段によってビームに固定されてもよい。例えば、一実施形態では、ビーム505は鋼桁であってもよいので、アンカーブロック510をビームに固定するのに溶接511(例えば、隅肉溶接)が使用されてもよい。ただし、鋼桁が使用される場合であっても溶接511は任意選択である。
【0074】
しかし、他の実施形態では、アンカーブロック510aをビーム505に溶接することは必須ではない。実際に、図示される実施形態では、機械的ファスナ526が溶接511の代わりに使用されてもよく、またはそれと併せて使用されてもよい。特に、機械的ファスナ526は、この実施形態では、フランジ506およびアンカーブロック510を通して延在させることによって、アンカーブロック510をフランジ506に固定するように構成される。この場合、ビーム505は、機械的ファスナ526に使用されるアンカーブロック510の穴とほぼ位置合わせされる穴(図示なし)を有してもよい。その結果、アンカーブロック510がビーム505に接して設置されると、それぞれの穴が位置合わせされてもよく、機械的ファスナはフランジ506およびアンカーブロック510の両方を貫通してもよい。
【0075】
例えば、機械的ファスナ526は、最初にフランジ506を通して挿入され、次にアンカーブロック510を貫通するボルトを含んでもよい。それに対応するナットは、締付けボルトに取り付けられ、次に締められて、アンカーブロック510をフランジ506に固定してもよい。機械的ファスナ526はまた、座金(例えば、テーパ座金)を機械的ファスナ526の一端または両端上に含んで、それに対して加えられる力を座金の周囲に分配してもよい。
【0076】
図6Aに示される実施形態では、アンカーブロック510aは、細長い補強部材514が両方ともアンカーブロック510の同じ前端面に入ることを除いて、図4Aおよび4Bに類似した二重アンカーブロック510であってもよい。そのような場合、二重アンカーブロック510は2つのフランジ506を接続する柱507を中心にしてほぼ心出しされてもよい。したがって、柱507の両面上に対応する穴があってもよく、2つの細長い補強部材514もフランジ506の底部上に、やはり柱507のそれぞれの側にあるようにして設置することができる。
【0077】
図6Bは、ビーム505を補強するのに4つの細長い補強部材514が使用される別の例示的実施形態を示す。この実施形態では、図6Aに類似した二重アンカーブロック510aはやはり、柱507に対してほぼ心出しされるようにしてビーム505に取り付けられる。アンカーブロック510aの外側は、フランジ506およびアンカーブロック510aを通して機械的ファスナ526を延在させることによって、同様のやり方でフランジ506に取り付けられる付加的な単一アンカーブロック510bが延在する。付加的な支持のため、アンカーブロック510bも溶接511によって取り付けられてもよい。
【0078】
図6Bに示される特定の実施例では、4つの細長い補強部材514はすべてフランジ606の底面上に配置される。しかし、本明細書の開示を考慮すると、これは必須ではないことが理解されるであろう。例えば、単一アンカーブロック510bをフランジ506の上面上に設置することもでき、それによってフランジ506の天面の補強が可能になる。このように、ビーム505は、天面、底面、またはそれら両方の面の組合せにおいて補強されてもよい。
【0079】
図7は、ポストテンショニングまたはセルフテンショニングデバイス700を、アンカーブロック710と、この実施例ではビーム705を覆うプレート750である静止構造702の接触面との間に差し込むことができる、本発明の別の例示的実施形態を示す。張力付与デバイス700は、この例示的実施形態では、少なくとも細長い補強部材714の直径と同程度の大きさの直径を有する、緊張材の穴またはスロット(tendon hole or slot)754を有する硬いプレート752を含むことができる。任意に、緊張材の穴またはスロット754は、アンカーブロック710の前端部にある開口部の直径よりも小さな直径を有する。張力付与デバイス700はまた、プレストレスデバイス700と静止構造702の接触面との間にギャップを作り出す手段を含むことができる。この例示的実施形態では、ギャップを作り出すためのかかる手段は複数のテンションボルト756を含み、そのうち2つが図面に示される。油圧ジャッキ、シム、スペーサーバーなどを含む、ギャップを作り出し支持するための他の手段が当業者には理解されるであろう。
【0080】
図7に示される実施形態では、張力付与デバイス700を最初に静止構造702から延在する細長い補強部材714の自由端の上に導入し、次にアンカーブロック710を導入することができる。任意に、機械的ファスナ726(例えば、締付けボルト)を締めて、かつ/または接着剤を塗布して、アンカーブロック710を細長い補強部材714の自由端に接合するか、もしくは締め付けることができる。細長い補強部材714はまた、所望であれば裁断することができ、丸頭も細長い補強部材714のスタブ末端に取り付けられてもよい。アンカーブロック710を細長い補強部材714に接合するのに接着剤が使用される場合、接着剤を硬化させるのに十分な時間を経過させてもよい。アンカーブロック710と細長い補強部材714の自由端との間の接合力または締付け力が十分に形成されると、プレストレスデバイス700のテンションボルト756を作動させて、プレストレスデバイス700と静止構造702の接触面(この場合、鋼プレート750の表面)との間にギャップを作り出すか、またはそれを拡大することができる。ギャップを形成または拡大することによって、細長い補強部材714が伸展して張力が付与された状態になり、その結果、アンカーブロック710からプレストレスデバイスのプレート752まで、テンションボルト756まで、鋼の接触面750まで、かつ最終的にビーム702内までの均等かつ反対向きの圧縮反力が得られる。別の取付け機構をもたらすため、同様のプレストレスデバイス700が静止構造702の反対側の端部に取り付けられてもよく、両端が、プレストレスデバイス700と静止構造702の接触面との間にギャップを作り出すためにテンションボルト756または別の手段を利用することができる。
【0081】
本明細書の開示に鑑みて当業者には理解されるように、アンカーブロック710は、プレート750およびボルト756がなくても静止構造702に固定することができる。例えば、一実施形態では、アンカーブロック710は、静止構造702上のプレート750の接触面を直接係合してもよく、またはビーム705を直接係合してもよい。次に、同様のアンカーブロック710が(単独で、またはプレテンショニングシステムを使用して)静止構造702の反対側の端部で固定されてもよい。その結果、細長い補強部材714内の引張り力がアンカーブロック710を静止構造702と係合させて保持してもよい。いくつかの実施形態では、アンカーブロック710はまた、他のやり方(例えば、溶接)でプレート750に直接固定されてもよい。それに加えて、図示される実施形態はビーム705を貫通する補強部材714を示すが、これは単なる例示である。いくつかの実施形態では、補強部材714は、ビーム705に隣接して、それに沿って、または別の形でその外部を通ってもよい。他のさらなる実施形態では、補強部材714はビーム705を貫通してもよいが、スリーブ内に完全にもしくは部分的に収容されるか、または剥離剤とともに使用されてもよい。
【0082】
図8は、プレストレスデバイス800の類似の構成を示す。しかし、図8では、複数の細長い補強部材814は静止構造802の外表面に沿って延び、複数のテンションボルト856があり、プレストレスデバイス800は2つの細長い補強部材814の間で支持される。
【0083】
本明細書の開示に鑑みて、様々な細長い補強部材は張力が付与された状態のときに高い強度を有することができるが、著しい横方向応力または剪断応力を受けた場合は、摩耗し疲労しやすい可能性があることが当業者には理解されるであろう。横断方向の剪断応力と関連する問題を緩和するため、図7のプレストレスデバイス700および図8のプレストレスデバイス800は、細長い補強部材に加わる力およびモーメントを平衡させるやり方で用いることができる。例えば、プレストレスデバイスの前面および後面は、互いに平行であるとともにテンションボルトに垂直であることができ、テンションボルトは、プレストレスデバイスを静止構造の接触面と平行に保つように均一に作動させて、捻れ力および曲げ力を確実に最小限に抑えることができる。さらに、プレストレスデバイスの緊張材の穴またはスロットは、アンカーブロックおよびプレストレスデバイスと静止構造との間の横方向のずれに適応するのに十分な大きさにすることができる。
【0084】
やはり本明細書の開示に鑑みて理解されるように、図8のポストテンショニングデバイスは他の用途を有してもよい。例えば、プレテンショニング用途のため、類似の構成を固定床に使用することができる。
【0085】
次に図9Aおよび9Bを参照すると、張力付与およびプレストレスデバイスの別の例示的実施形態が示される。特に、ビーム905または他の何らかの静止構造に接続することができるプレストレスデバイス900が示される。この実施形態では、底面接触面がビーム906上に設けられ、反力ブロック(reaction block)950がそれに固定される。反力ブロック950は適切なやり方で固定されてもよい。例えば、図示される実施形態では、反力ブロック950はビーム905に溶接されるものとして示されるが、他の締結機構が使用されてもよい。
【0086】
また、反力ブロック950と併せて、1つまたは複数のストレスボルト956および細長い補強部材914が貫通するストレスヘッドプレート952が使用される。反力プレート950と異なり、ストレスヘッドプレート952はビーム905に対して移動できるようにされる。しかし、そのような運動は、細長い補強部材914および/またはガイドプレート951によって1つまたは複数の方向に制約されてもよい。特に、ガイドプレート951は、反力ブロック950に溶接されるか、または別の方法でそれに固定され、ストレスヘッドプレート952がそれに沿って移動するガイドとなるように、ストレスヘッドプレート952に向かって延在してもよい。細長い補強部材914は、任意に、補強ヘッドプレート952および/または反力ブロック950を貫通することができ、それによってやはりストレスヘッドプレート952の移動のガイドとなる。
【0087】
ヘッドプレート952は、ストレスボルト956を締めたり緩めたりすることによって移動する。特に、ストレスボルト956が締められるにつれて、ストレスボルト956はストレスヘッドプレート952を反力ブロック952から離れる方向に押しやってもよい。アンカー(図示なし)が細長い補強部材914に取り付けられてもよく、ストレスヘッドプレート952が反力ブロック952から離れる方向に移動するにつれて、細長い補強部材914に対して引張り力を掛けてもよい。これによって、ひいては、アンカーがストレスヘッドプレートに対して圧縮力を掛け、最終的にビーム905に対して圧縮力が掛かる。所望の張力が得られると、反力ブロック950とストレスヘッドプレート952との間の間隙がシムまたは他の部材によって充填される。例えば、鋼のシムがヘッドプレート952と反力ブロック950との間に配置され、それらの間に残された空間に嵌まるようにサイズ決めされてもよい。
【0088】
図9Bに示されるように、ストレスヘッドプレート952は、複数のストレスボルト956および/または複数の細長い補強部材914を補強ビーム906と併せて使用できるようにしてもよい。特に、ヘッドプレート952は、ビーム905のフランジ906の裏面に沿って設置されてもよい。この実施形態では、細長い補強部材914を受け入れるように構成された4つの開口部915と、ストレスボルト596を受け入れるように構成された2つの開口部957とがある。したがって、アンカーは細長い補強部材914に取り付けられてもよく、次に該部材は開口部914の1つを通って延在することができる。ストレスボルト956を用いた張力付与を容易にするため、ストレスヘッドプレート952は、ストレスボルト956のねじ山と噛合するように穴957の周りに切り込まれるか別の方法で作られた雌ねじ山を有し、それによってストレスヘッドプレート952を反力ブロック950に対して移動させることを可能にしてもよい。
【0089】
次に図10を参照すると、別の例示的なプレストレスデバイス1000が示される。このデバイス1000は単に適切なプレストレスデバイスを表すものであり、したがって例示であって、範囲を限定しないことが理解されるであろう。プレストレスデバイス1000は、細長い補強部材1014a、1014bを静止対象物に沿って、またはその周りに延在させるとともに、その張力付与および補強をもたらすことができるように構成される。例えば、プレストレスデバイス1000は、1つの例示的応用例では、細長い補強部材1014a、1014bがタンクなどの静止構造の周囲に延びるようにするのに使用されてもよい。
【0090】
特に、図示される実施形態は、平行に配列された2つのアンカーブロック1010、1011を示す。第1のアンカーブロック1010はそれを貫通するストレスボルト1056を有する。一実施形態では、アンカーブロック1010は、ストレスボルト1056がそこを貫通する軸線方向開口部を含む。その結果、ストレスボルト1056は、任意にアンカーブロック1010を貫通し、次にアンカーブロック1011に入ってもよい。アンカーブロック1011も、ストレスボルト1056を受け入れる軸線方向開口部を有してもよい。任意に、アンカーブロック1011は、ストレスボルト1056を受け入れ、それとの係合を可能にする雌ねじ山プロファイルを有する。
【0091】
理解されるように、手作業でストレスボルト1056が締められるにつれて、アンカーブロック1010はアンカーブロック1011に向かって引き付けられてもよい。アンカーブロック1010および1011はまた、細長い補強部材1014a、1014bを受け入れるように適合されてもよい。例えば、アンカーブロック1010および1011は、図4Bのアンカーブロック410に類似して構成されてもよい。特に、開口部がアンカーブロック1010、1011に形成され、細長い補強部材1014a、1014bを受け入れるように適合されてもよい。締付け力を掛けて、細長い補強部材をアンカーブロック1010および1011内で固定するため、様々なファスナ1026が使用されてもよい。
【0092】
図示される実施形態で分かるように、アンカーブロック1010、1011の開口部は必ずしもその全体を貫通しなくてもよい。この実施形態では、開口部はアンカーブロック1010、1011を部分的にのみ貫通する。実施の際、ユーザは、細長い補強部材1014aをアンカーブロック1010に挿入することができる。かかる細長い補強部材1014aは、静止構造の周囲に延在させ、次にアンカーブロック1011に挿入してもよい。類似のプロセスを細長い補強部材1014bに対して繰り返すことができる。次に、ファスナ1026を締結して、同じまたは異なる締付け力がもたらされてもよい。次に、ストレスボルト1056を回転させると、アンカーブロック1010およびアンカーブロック1011がより接近し、それによって細長い補強部材1014a、1014bに対して引張り力を掛けることができる。
【0093】
図11Aおよび11Bは、本発明の他の例示的実施形態によるポストテンショニングデバイス1100を示す。例えば、図11Aを参照すると、ポストテンショニングデバイス1100が示され、これは、ビーム1105の側面に沿って延び、それを補強する補強部材1114に接続するアンカー1110を含む。この実施形態では、細長い補強部材に対して張力を付与することを可能にする張力付与システムもある。
【0094】
より具体的には、構造1102は、プレート1150が据え付けられるビーム1105を含む。プレート1150は任意の適切なやり方で据え付けることができ、ビーム1105に恒久的または一時的に付着されてもよい。この実施形態では、プレート1150はエルボ1151を使用してビーム1105に据え付けられる。より具体的には、エルボ1151はプレート1150に接続される。エルボ1151は、ビーム1105の天面上に設置し載置することができる平坦な底面を含む。これは、ビーム1105に対するプレート1150の一時的な接続の一例であり得る。ビーム1105が、溶接接続を可能にする鋼または別の材料で作られている場合、プレート1150をビーム1105に溶接することもできる。
【0095】
この実施形態では、プレート1150から延在する4つの支持体1157もある。特に、この実施例では、2つの上側支持体(図11Aの側面図に単一の支持体として示される)と2つの下側支持体(やはり、図11Aの側面図に単一の支持体として示される)とがある。支持体1157も任意の適切なやり方でプレート1150に接続することができる。例えば、プレート1150および支持体1157は鋼で作られてもよく、互いに溶接することができる。
【0096】
張力付与システム1100はまた、管材1152を含むことができる。いくつかの実施形態では、管材1152は図7の硬いプレート752に類似した機能をもたらすことができる。当然ながら、管材1152は中空であってもよいが、管材1152を中実の塊体と置き換えることもできる。この実施形態では、管材1152は支持体1157の下側の組の上に位置付けられる。この実施形態では、管材1152はまた、その上に据え付けられた4つのナット1155(2つは天面上、2つは底面上)を有する。ナット1155は、それに対応するストレスボルト1156と係合するように構成される。
【0097】
張力付与が生じる前に、管材1152はプレート1150と接触させて位置付けられてもよい。張力付与が生じると、ストレスボルト1156を締めることができる。ボルト1156が締められるにつれて、それらはプレート1150に接して係合することができる。その結果、ボルト1156を締めることによって管材1152をプレート1150から分離させることができる。図示される実施形態では、支持体1157は、管材1152がプレート1150に対して外向きまたは内向きに移動するときのガイドとなってもよい。それに加えて、管材1153に当接する前端面または他の表面を有するアンカーブロック1110も、管材1152がプレート1150およびビーム1105に対して移動するにつれて移動してもよい。特に、管材1152がプレート1150から離れる方向に移動するにつれて、アンカーブロック1110もプレート1150から離れる方向に移動する。細長い補強部材1114がアンカー内に位置付けられると、その結果、これによって軸線方向の張力を細長い補強部材1114に対して掛けることができる。
【0098】
いくつかの実施形態では、アンカーブロック1110は管材1152を直接係合しなくてもよく、その代わりに、1つまたは複数の中間構成要素を通して管材1152に間接的に接続してもよい。図11Aでは、例えば、分配プレート(distribution plate)1153がアンカーブロック1110と管材1152との間に位置付けられる。分配プレート1153は任意であるが、いくつかの用途では望ましいことがある。例えば、管材1152が中空のとき、ストレスボルト1156を締めることによって、圧縮荷重を管材1152に伝達するのに十分な軸線方向の張力が加えられることがあり、それによって管材1152が崩壊し始める。そのような効果は、細長い補強部材1114を貫通させることができるように、穴またはスロットが管材1152に形成されている場合に特にその傾向が高いことがある。そのような崩壊の可能性を低減するため、分配プレート1153を使用することができる。アンカー1152が分配プレート1153を押圧するにつれて、通常はアンカーブロック110の前端部上に局在するであろう力が分配プレート1153のより大きな表面積全体に伝達され、それによって管材1152の不具合の可能性を低減することができる。
【0099】
プレート1150は類似の機能をもたらすことができる。例えば、ビーム1105は、木材、コンクリート、石造物などで作られてもよい。ストレスボルト1156がビーム1105を直接係合するように、張力付与デバイス1000に類似したデバイスがプレート1150を伴わずに使用されてもよい。木材、コンクリート、および石造物などの材料を用いると、ボルト1156によって伝達された力はボルトの先行端部の表面積のみの周りに分配されることがある。これによって、ビーム1105が変形するか、破損するか、またはさらには破壊される場合がある。しかし、ボルト1156をプレート1150に接して係合することによって、ストレスボルト1156の力をより大きな表面積にわたって分配し、局所的な損傷を回避することができる。
【0100】
上述したように、管材1152は、ビーム1105の側面または他の表面に沿って設置されたときに細長い補強部材1114がそこを貫通することができる穴を有してもよい。したがって、細長い補強部材1114は、アンカーブロック1110を補強部材1114に取り付ける前に、ビームに沿って穴内に設置することができる。しかし、別の方法として、管材1152にはスロットが形成されてもよい。スロットは外表面まで延在することができる。例えば、これによって、細長い補強部材がビームに沿って設置され、かつ/または張力付与デバイス1110内に設置される前に、アンカー1110を細長い補強部材1114に取り付けることが可能になる。
【0101】
やはり上述したように、1つを超える支持体1157がプレート1150に取り付けられてもよい。この実施形態では、支持体1157の下側の組は管材1152を支持し、それが移動するにつれてガイドする。かかる支持体1157は個別であってもよく(図11Bに示されるように)、または支持体および/もしくはガイドとして作用する単一のプレートであってもよい。やはり図示される実施形態に示されるように、上側支持体1157も提供されてもよい。この実施形態では、上部支持体1157は使用されていない。しかし、そのような支持体1157は、別の張力付与システム1100を支持して、付加的な補強部材とするのに使用されてもよい。例えば、図示される張力付与システム1100は2つの補強部材1114を支持してもよいが、支持体1157の上側の組を備えた類似の張力付与システム1110も使用することによって、合計4つの補強部材を使用することができる。当然ながら、支持体の上側の組のみが任意の所与の時点で使用されるように、張力付与システム1100を支持体の上側の組まで移動させることもできる。
【0102】
図11Bは、図11Aとほぼ同一の、ただし俯瞰から見た張力付与システム1100を示す。特に、図11Bは、複数の細長い補強部材1114に張力を付与するための張力付与システム1100が取り付けられるビーム1105を含む構造1102を示す。図11Bの実施形態では、複数の支持体1157、ナット1155、ストレスボルト1156、およびアンカーブロック1110も使用されるが、本明細書の開示に鑑みて、所望に応じてより多数または少数のものが使用されてもよいことが理解されるであろう。例えば、単一のアンカーブロック1110のみがあってもよく、その単一のアンカーブロック1100が1つまたは複数の補強部材1114に接続してもよい。また、3つ以上のアンカーおよび/または細長い補強部材1114があってもよい。
【0103】
図11Aに関連した考察で言及したように、アンカーブロック1110は管材1152に直接接続してもよく、または、1つもしくは複数の中間部材を通して接続されてもよい。図11Aでは、中間プレート1153が使用される。しかし、そのような構成要素の任意の性質を強調するため、図11Bは、張力付与システム1100をかかる中間構成要素を伴わずに使用できることを示す。
【0104】
別の任意の特徴が図11Bに示される。この図に示されるように、任意のガイド1158がナット1155の間に位置付けられる。また、ナット間の類似のガイドが管材1152の底面上にあってもよい。ガイド1158は、例えばプレート1150に溶接することによってそれに固定することができる。その結果、ボルト1156が締められ、管材1152が移動するとき、ガイド1158は静止したままであってもよい。したがって、支持体1157と併せて、ガイド1158が管材1152の移動を方向付けてもよい。それに加えて、ボルト1156が締められるにつれてトルクが印加され、それに対応するトルクをナット1155に伝達することができる。ガイド1158はまた、ナット1155を支持して、ボルト1156を締める際にナット1155が押しのけられるリスクを最小限に抑えるため、2つのナット1155の間に延在してもよい。
【0105】
図11Bは、軸線方向の張力が細長い補強部材1114に対して掛けられるように、張力が付与された状態にある張力付与システム1100を示す。細長い補強部材1114に対して掛かる張力の量は、補強部材1114上の歪みの測定と同様に用途ごとに変動する場合がある。例えば、細長い補強部材1114の強度に応じて異なる量の張力が掛けられてもよい。それに加えて、線形可変差動変成器(LVDT)を使用することにより、またはより一層直接的には、歪みゲージを細長い補強部材1114上に設置することにより、単にプレート1150からの管材1152の変位を測定することによって張力を測定することができる。所望の張力が加えられると、張力付与システム1100は図11Bに示されるような状態に置かれてもよい。あるいは、シム(図示なし)も使用されてもよい。例えば、鋼または他の材料のブロックがプレート1150と管材1152との間に位置付けられてもよい。材料が変位距離と同じ幅を有する場合、ボルト1156が解放されてもよく、シムは、細長い補強部材1114に対する張力によって掛かる圧縮力を伝えてもよい。
【0106】
本明細書の開示に鑑みて当業者には理解されるように、提供した説明を精査することによって開示され教示される実施形態は、いくつかの特定の実施例を挙げると、橋、建物、壁、および/または配管系統などの補強構造における用途に有用な多数の特徴を得るために使用することができる。例えば、本明細書に開示される定着システムは、比較的安価で、かつ多種多様な異なる材料のいずれかで生産することができるアンカーを提供する。例えば、アンカーブロックは鋼から生産することができ、軟鋼も含んでもよい。さらに、鋼は耐腐食性を呈することがあるので、過酷な気候または海岸気候であっても使用することができる。それに加えて、本明細書のアンカーおよび/または張力付与システムのサイズは、制約された範囲で定着、添接、および/または補強をもたらすことができるように実現することができる。実際に、他の用途では、大型および/または高価な機器(例えば、所望の張力をもたらすように、細長い補強部材に取り付けられる油圧アクチュエータ)を必要とすることがあるが、本明細書に開示される例示的実施形態は、比較的簡単に(例えば、単にいくつかの締結デバイスを締めることによって)補強部材に張力と締付けを加えることができる。したがって、様々な開示された実施形態は、外部機器を使用することなく、かつそのような機器を収容する大きな空間を必要とすることなく、内部で張力を加えることができる。
【0107】
上述の詳細な説明は、特定の例示的実施形態を参照して本発明について記載している。しかし、添付の特許請求の範囲に記載されるような本発明の範囲から逸脱することなく、様々な改良および変更を行うことができることが理解されるであろう。詳細な説明および添付図面は、限定ではなく単なる例示として見なすべきであり、上記したような改良または変更がある場合、それらはすべて、本明細書に説明し記載したような本発明の範囲内にあるものとする。
【0108】
より具体的には、本発明の実例となる例示的実施形態を本明細書に記載してきたが、本発明はそれらの実施形態に限定されず、上述の詳細な説明に基づいて当業者には理解されるような、改良、省略、組合せ(例えば、様々な実施形態にわたる態様の組合せ)、適合、および/または修正を有するあらゆるすべての実施形態を含む。特許請求の範囲における限定は、特許請求の範囲に用いられる文言に基づいて広く解釈されるものであり、上述の詳細な説明に記載した実施例に限定されないものとし、かかる実施例は包括的なものと解釈されるものとする。さらに、いずれかの方法クレームまたはプロセスクレームに列挙されるあらゆるステップは任意の順序で実施されてもよく、特許請求の範囲において別段の記載がない限り、特許請求の範囲に提示される順序に限定されなくてもよい。したがって、本発明の範囲は、上述の説明および実施例によってではなく、添付の特許請求の範囲およびそれらの法律上の均等物によってのみ決定されるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮応力を静止構造内に付与する定着システムであって、
静止構造に面するように構成された前端面と、
軸線方向に、かつ前記前端面にほぼ垂直に延在する少なくとも1つのボアと、
前記前端面にほぼ平行であるように延在させて形成された複数の締付け穴が形成された締付け側面と、
前記締付け側面から前記少なくとも1つのボアまで延在する、少なくとも2つの締付け部材を形成する軸線方向スリットと、
前記締付け穴内に位置付けられ、前記少なくとも2つの締付け部材を互いに締め付けるように適合された複数のファスナであって、前記少なくとも2つの締付け部材を互いに締め付けることによって前記少なくとも1つのボアを収縮させるファスナとを備える定着システム。
【請求項2】
前記少なくとも1つのボア内に位置付けられ、締め付けられていない状態の前記少なくとも1つのボアの直径よりも小さい直径を有する細長い補強部材をさらに備え、前記少なくとも2つの締付け部材を互いに締め付けることによって前記少なくとも1つのボアをさらに収縮させて、前記細長い補強部材の周りに圧縮力を掛ける、請求項1に記載の定着システム。
【請求項3】
前記複数の締付け部材が、前記少なくとも1つのボア内に位置付けられた細長い補強部材に対して、軸線方向の引張り荷重とは独立した締付け力をもたらすように構成された、請求項1に記載の定着システム。
【請求項4】
前記複数のファスナが前記少なくとも2つの締付け部材を締め付けるにつれて、前記ボアおよび前記軸線方向スリットのサイズが前記前端面においては大きく後端面に向かって減少するテーパが形成されるように、前記複数のファスナが前記前端面からずれている、請求項1に記載の定着システム。
【請求項5】
前記複数のファスナが、ボルト、ねじ、レバーカム、および係止ピンから成る群から選択される、請求項1に記載の定着システム。
【請求項6】
前記複数のファスナがそれぞれ、
締付けボルトと、
前記締付けボルトに接続されるナットと、
前記締付けボルトと前記少なくとも2つの締付け部材のうち第1のものとの間に位置付けられる第1のテーパ座金と、
前記ナットと前記少なくとも2つの締付け部材のうち第2のものとの間に位置付けられる第2のテーパ座金とを備え、
前記第1および第2のテーパ座金が、前記少なくとも2つの締付け部材が閉位置にあるとき、前記締付けボルトと前記締付け部材との間の実質的に分配された周面接触を維持するように適合された、請求項1に記載の定着システム。
【請求項7】
前記少なくとも1つのボアの長さが前記少なくとも1つのボアの直径に比例する、請求項1に記載の定着システム。
【請求項8】
前記ボアが前記前端接触面に近接したテーパ状開口部を有し、前記テーパ状開口部のサイズが前記前端接触面から減少する、請求項1に記載の定着システム。
【請求項9】
前記軸線方向スリットが、少なくとも1つの中間スリットおよび2つの外側スリットを含む複数の軸線方向スリットを含む、請求項1に記載の定着システム。
【請求項10】
前記締付け側面が前記定着システムの軸線方向長さに沿って均等に間隔が空けられた少なくとも4つの開口部を含み、前記複数のファスナが少なくとも4つのほぼ同一のファスナを含み、前記定着システムが、前記少なくとも1つのボア内に配置された繊維強化ポリマー(FRP)ロッドを備える、請求項1に記載の定着システム。
【請求項11】
前記少なくとも1つのボアに挿入される、第1の端部を有する第1の細長い補強部材と、
前記少なくとも1つのボアに挿入される、前記第1の細長い補強部材に少なくとも平行な第2の細長い補強部材とをさらに備え、
前記第1および第2の細長い補強部材の両方を前記少なくとも1つのボア内で固定するため、前記複数のファスナが前記少なくとも2つの締付け部材に締付け力を掛ける、請求項1に記載の定着システム。
【請求項12】
細長い補強部材をアンカーデバイス内で締め付ける方法であって、
構造に接触するためのほぼ平坦な前端面と、アンカー内に形成された円筒状の軸線方向ボアと、複数の締付けボルト穴を有する締付け側面と、アンカーの軸線方向長さに沿って延在するとともに前記円筒状の軸線方向ボアと交差する軸線方向スリットとを有するアンカーを提供するステップと、
複数の締付けボルトを前記締付けボルト穴に挿入するステップと、
前記ほぼ平坦な前端面が前記構造に接触するまで、前記構造から延在する細長い補強部材の自由端の上で前記アンカーを滑動させるステップと、
前記円筒状の軸線方向ボアを狭窄させ、前記アンカーを前記細長い補強部材の前記自由端に固定するため、前記複数の締付けボルトを締めるステップとを含む方法。
【請求項13】
前記細長い補強部材に対する軸線方向の引張り荷重とは独立に前記複数の締付けボルトに張力を付与するステップをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記円筒状の軸線方向ボアを狭窄させるため、前記複数の締付けボルトを締めるステップが、
前記円筒状の軸線方向ボアの前記テーパ状開口部に近接した第1の締付けボルトを第1の張力まで締めるステップと、
第2の締付けボルトを第2の張力まで締めるステップとを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記第1の張力が前記第2の張力よりも小さい、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記第2の締付けボルトが前記第1の締付けボルトに隣接し、前記第1および第2の締付けボルトが中心間距離から第1の距離だけずれており、前記第1の締付けボルトが前記ほぼ平坦な前端面から第2の距離だけずれており、前記第2の距離が前記第1の距離の半分よりも大きい、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記アンカーを静止構造またはプレストレスシステムに押し付けて、圧縮力を前記構造内に付与するため、前記細長い補強部材に張力を付与するステップをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
細長い補強部材に張力を付与して圧縮力を静止構造内に付与する方法であって、
静止構造を通って、またはそれに隣接して延在する細長い補強部材の端部の周りでアンカーを締めるステップと、
前記補強部材が前記アンカーに取り付けられ、かつ前記静止構造を通って、またはそれに隣接して位置付けられた状態で、前記アンカーを前記静止構造の表面に押し付けるとともに前記静止構造に対して圧縮力をもたらすのに十分な張力を、前記細長い補強部材に対して付与するステップとを含む方法。
【請求項19】
前記細長い補強部材に張力を付与するステップが、前記アンカーと前記静止構造との間の距離を少なくとも変化させるステップを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記アンカーと前記静止構造との間の距離を変化させるステップが、少なくとも1つのストレスボルトを調整するステップを含み、前記少なくとも1つのストレスボルトの調整によって、前記ストレスボルトに近接した第1の表面が前記静止構造に接続された第2の表面から分離するとともに前記細長い補強部材に対して引張り力が掛けられ、前記第1の表面が、前記アンカーと前記静止構造との間に配置された張力付与デバイス上にある、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記細長い補強部材が前記静止構造の周囲に延在し、前記アンカーと前記静止構造との間の距離を変化させるステップが、少なくとも1つのストレスボルトを調整するステップを含み、前記少なくとも1つのストレスボルトの調整によって、前記ストレスボルトに接続された第1の表面が第2の表面に引き付けられて、前記細長い補強部材に対して引張り応力を付与する、請求項19に記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【公表番号】特表2011−524952(P2011−524952A)
【公表日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−513721(P2011−513721)
【出願日】平成21年6月12日(2009.6.12)
【国際出願番号】PCT/US2009/047176
【国際公開番号】WO2009/152412
【国際公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【出願人】(504260058)ユニバーシティ・オブ・ユタ・リサーチ・ファウンデイション (19)
【Fターム(参考)】