説明

組み合わせ化粧料およびその製法

【課題】液状化粧料と粒状の固形化粧料とが互いに混じり合うことなく一容器中に充填され、視覚的にも興趣に富む組み合わせ化粧料と、その製法を提供する。
【解決手段】透明のジャー容器10内に、液状化粧料として透明のリップグロス11が充填されており、そのリップグロス11中に、粒状固形化粧料であるリップカラー12が、その粒状を識別できる状態で分散されている組み合わせ化粧料であって、上記リップカラー12が、着色顔料およびパール顔料の少なくとも一方を10〜20重量%含有し、1粒の平均重さが0.01〜0.1g、1粒の平均硬度が0.3〜1.0Nに設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液状化粧料と粒状の固形化粧料とが、互いに混じり合うことなく一容器中に充填された組み合わせ化粧料およびその製法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、リップカラーやアイカラー、ファンデーション等のメイクアップ化粧料の一つの剤型として、粉状固形物である顔料等と、パラフィンやワックス等の基剤とを混練した油性固形化粧料が用いられており、このものは、コンパクト容器の化粧皿に充填された形態や、棒状に成形され繰り出し容器内に装着された形態等、さまざまな形態で市販されている。
【0003】
そして、上記メイクアップ化粧料には、豊富な色のバリエーションが用意されており、顧客が、その時々の化粧のイメージに合わせてメイクアップを行うことができるように、例えば一つの化粧皿の中に、何ら仕切りを介することなく直接、色の異なる複数の化粧料を充填した多色固形化粧料が数多く提案されている(特許文献1等を参照)。
【0004】
しかし、リップグロスや乳液、ジェルのように流動性を有する化粧料の場合は、色の異なるものを、単一容器内に互いに混じり合うことなく充填することは容易でないため、化粧料の物性や充填方法を工夫したものがいくつか提案されているにすぎない。
【0005】
例えば、特許文献2には、化粧料同士の混合を防止するために、一定のチキソトロピー性を有する化粧料を複数用い、その各化粧料に特定の色調を付与して充填するようにした多色状化粧料が提案されており、特許文献3には、透明ゲル化剤を容器内に充填する際に、同時に色材を充填して色材によって立体模様を形成する方法が提案されている。また、特許文献4には、水溶性高分子からなる透明ゲル化剤の内側に、圧縮成形されたらせん状の顆粒を配置した立体模様入り化粧料が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭62−201809号公報
【特許文献2】特開2002−255740公報
【特許文献3】特許第2836744号公報
【特許文献4】特開2006−206450公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献2の多色状化粧料は、異なる色調の化粧料を単一容器内に混在させるため、色の異なる化粧料ごとに、そのチキソトロピーを調整しなければならず、多大な手間を要するという問題や、それぞれが流動性ある液体であるため、容器内で撹拌すると混じり合ってすぐに見栄えが悪くなりやすいという問題がある。
【0008】
また、上記特許文献3の方法も、用いる透明ゲル化剤と色材がともに流動性を有しているため、液の移動によって模様が崩れて混じり合いやすいという問題がある。そして、上記特許文献4の立体模様入り化粧料は、立体模様を構成するらせん状の顆粒が、化粧料の液中で崩壊しにくいよう強固に圧縮成形されているため、通常のメイクアップ化粧料のように化粧筆で崩しながら使用する用途には向かないという問題がある。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、液状化粧料と粒状の固形化粧料とが互いに混じり合うことなく一容器中に充填され、視覚的にも興趣に富む組み合わせ化粧料とその製法の提供を、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するため、本発明は、透明もしくは半透明の容器内に、透明もしくは半透明の液状化粧料が充填されており、その液状化粧料中に、粒状の固形化粧料が、その粒状を識別できる状態で分散されている組み合わせ化粧料であって、上記粒状固形化粧料が、着色顔料およびパール顔料の少なくとも一方を10〜20重量%含有し、1粒の平均重さが0.01〜0.1g、1粒の平均硬度が0.3〜1.0Nに設定されている組み合わせ化粧料を第1の要旨とする。
【0011】
また、本発明は、そのなかでも、特に、上記液状化粧料がゲル状油性化粧料であり、上記固形化粧料が融点60〜90℃のメイクアップ化粧料である組み合わせ化粧料を第2の要旨とし、上記ゲル状油性化粧料がリップグロスであり、上記固形化粧料がリップカラーである組み合わせ化粧料を第3の要旨とする。
【0012】
さらに、本発明は、上記第1の要旨である組み合わせ化粧料の製法であって、着色顔料およびパール顔料の少なくとも一方を10〜20重量%含有し、粒状に成形したときの1粒の平均重さが0.01〜0.1g、1粒の平均硬度が0.3〜1.0Nとなるよう設定された固形化粧料を、加熱によって液状化し、この化粧料と相溶性がない液状オイル中に滴下して粒状に成形し、その温度を下げて固形化した後、上記液状オイルから分離することにより粒状固形化粧料を得る工程と、透明もしくは半透明の容器内に、透明もしくは半透明の液状化粧料を充填する工程と、上記容器内の液状化粧料を撹拌しながら、その中に、上記粒状固形化粧料を分散含有させる工程とを備えた組み合わせ化粧料の製法を第4の要旨とする。
【0013】
また、本発明は、同じく上記第1の要旨である組み合わせ化粧料の製法であって、着色顔料およびパール顔料の少なくとも一方を10〜20重量%含有し、粒状に成形したときの1粒の平均重さが0.01〜0.1g、1粒の平均硬度が0.3〜1.0Nとなるよう設定された固形化粧料を、加熱によって液状化し、この化粧料と相溶性がない液状オイル中に滴下して粒状に成形し、その温度を下げて固形化した後、上記液状オイルから分離することにより粒状固形化粧料を得る工程と、透明もしくは半透明の液状化粧料の中に、上記粒状固形化粧料を分散含有させる工程と、上記粒状固形化粧料が分散含有された液状化粧料を、透明もしくは半透明の容器内に充填する工程とを備えた組み合わせ化粧料の製法を第5の要旨とする。
【0014】
そして、本発明は、そのなかでも、特に、上記固形化粧料が、融点60〜90℃のメイクアップ化粧料であり、上記液状オイルが、シリコーンオイルおよびフッ素オイルの少なくとも一方、もしくはこれらのいずれかを他の油性原料と混合したものであり、上記液状化粧料がゲル状油性化粧料である組み合わせ化粧料の製法を第6の要旨とする。
【発明の効果】
【0015】
すなわち、本発明は、透明もしくは半透明の容器の外側から、その中身である透明もしくは半透明の液状化粧料と、その中に分散された粒状固形化粧料が見えるため、従来にない、幻想的な印象を与えることができ、興趣に富むものである。しかも、上記粒状固形化粧料が、化粧料そのものによって形成された、特殊な物性の粒状体であるため、これを化粧筆等で潰したり、分散する液状化粧料と混ぜたりして、一般的な固形化粧料と同じように化粧に用いることができ、使い勝手がよいという利点を有する。
【0016】
そして、上記組み合わせ化粧料のなかでも、特に、上記液状化粧料がゲル状油性化粧料であり、上記固形化粧料が融点60〜90℃のメイクアップ化粧料であるものは、後述するように、粒状の固形化粧料を効率よく製造することができるため、これを比較的安価に提供することができる。しかも、液状化粧料に分散された粒状固形化粧料の安定性に優れており、とりわけ美麗な外観と優れた使い勝手を有している。
【0017】
また、そのなかでも、特に、上記液状化粧料がリップグロスであり、上記固形化粧料がリップカラーであるものは、リップグロスの液中でリップカラーの粒子を潰しながら化粧筆にこれをつけて唇に塗布することにより、一回の塗布で艶やかな唇のメイクアップを施すことができ、さらに使い勝手がよい。そして、先にリップカラーを塗り、その上にリップグロスを塗り重ねてより艶やかに仕上げたり、リップカラーのみを塗って抑えた印象にしたり、リップグロスのみを塗って唇に艶を与えたりすることができ、唇に対し、印象の異なる様々なメイクアップを施すことができる。
【0018】
そして、本発明の製法によれば、液状化粧料中に分散させる粒状固形化粧料を得るための固形化粧料が、他の化粧料成分に比べて比較的比重の重い着色顔料およびパール顔料の少なくとも一方を特定の割合で含有し、かつ1粒の平均重さと平均硬度を特定の範囲内に設定した特殊なものを用いるため、液状オイル中に滴下して固化させるだけで、上記粒状固形化粧料を、効率よく得ることができる。そして、上記粒状固形化粧料を、透明もしくは半透明の液状化粧料が充填された所定の容器内に、上記液状化粧料を撹拌しながら分散含有させるか、あるいは、上記粒状固形化粧料を、透明もしくは半透明の液状化粧料に分散含有させた後に、所定の容器内に充填することにより、目的とする組み合わせ化粧料を容易に製造することができる。しかも、上記粒状固形化粧料が、液状オイル中で固形化した後分離されるものであるため、滑らかで、保形性に優れており、それ自身の硬度が特定の範囲内に設定されていることと相俟って、その形状を長期にわたって良好に維持することができる。
【0019】
また、上記固形化粧料として融点60〜90℃のメイクアップ化粧料を用い、これを粒状化するための液状オイルとしてシリコーンオイル、フッ素オイル等の特定のオイルを用い、上記液状化粧料としてゲル状油性化粧料を用いて製造すると、粒状固形化粧料をより効率よく製造することができ、しかも上記粒状固形化粧料を、より一層安定した形で液状化粧料中に分散させることができる。
【0020】
なお、本発明において、粒状固形化粧料の「分散」とは、粒状固形化粧料の粒の大きさにかかわらず、このものが、液状化粧料中に、ばらばらに散らばって存在する形態をいう。また、本発明において、固形化粧料の「融点」とは、固形化粧料を構成する各成分の少なくとも一つの成分が融解を開始して、固形化粧料の形状が保持できなくなって液状になり始める温度をいう。
【0021】
さらに、本発明において、「平均重さ」とは、粒状固形化粧料をランダムに10粒取り出し、各粒の重量(g)を測定後、その測定値から算出される平均値をいう。そして、本発明において、「平均硬度」とは、粒状固形化粧料をランダムに10粒取り出し、各粒に対し、レオメータ(COMPAC−100II、サン科学社製)を用いて、直径10mmの円柱状押圧治具で押圧して潰すのに要した力(N)を測定後、その測定値から算出される平均値をいう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施例を示す外観正面図である。
【図2】上記実施例における容器の変形例を示す説明図である。
【図3】上記実施例における粒状リップカラーの製法の説明図である。
【図4】上記実施例における粒状リップカラーの製法の説明図である。
【図5】(a)、(b)は、ともに上記実施例によって得られる粒状のリップカラーの形状説明図である。
【図6】(a)、(b)は、ともに上記実施例によって得られる粒状リップカラーの形状説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
つぎに、本発明を実施するための形態について説明する。
【0024】
図1は、本発明の一実施の形態である組み合わせ化粧料の外観正面図である。このものは、透明ガラス製のジャー容器10内に、液状化粧料として、無色透明なリップグロス11が充填されており、さらにその中に、粒状固形化粧料としてリップカラー12が、適度に分散した状態で含有されている。なお、上記リップカラー12には、赤色、ピンク色、オレンジ色の3色があり、各色の粒がカラフルに分散している。また、13は、上記ジャー容器10の上面開口部を蓋する着色プラスチック製の蓋で、ジャー容器10の開口部に、ねじ結合によって取り付けられている。
【0025】
上記粒状のリップカラー12は、例えばつぎのようにして得ることができる。すなわち、まず、リップカラー12の材料として、流動パラフィン、ワセリン等の基剤と、着色顔料、パール顔料等の着色成分とを充分に混練して固形化粧料を調製する。そして、これを、上記固形化粧料の融点(固形化粧料が溶け出してその形状を保てなくなる温度であって、顔料等が溶融する必要はない。例えば65℃)より高い温度に加熱して液状にした状態で、図3に示すように、供給タンク1に供給し、供給タンク1の底部に設けられた滴下ノズル2から、上記液状の化粧料(以下「化粧料液」という)3を所定間隔で一滴ずつ滴下する。
【0026】
一方、上記供給タンク1の下方に、上記化粧料液3と相溶性のない液状オイル4を貯留する液状オイル槽5を設けて、液状オイル4を適宜の温度に加温しておく。
【0027】
したがって、前記滴下ノズル2から滴下された化粧料液3は、空中ではそれ自身の表面張力によって球形の形となり、上記液状オイル槽5内の液状オイル4中に触れた後は、上記化粧料液3が、後述するように、粒状に成形後の重さが所定の範囲内となるよう調製されたものであるため、液状オイル4との界面張力によってその球形を維持したまま、液状オイル槽5内に溜まる。そして、液状オイル4を常温まで放冷すると、融点65℃の化粧料液3が固形化して球形の粒状化粧料6となる。なお、上記粒状化粧料6の固形化が不充分な場合や固形化を迅速に行う場合は、積極的に冷却して、その固形化を確実に行う。ただし、「固形化」の程度は、全体が完全な固体となる必要はなく、その粒状の形状が保たれる程度に流動性が低減されていればよい。
【0028】
このようにして、液状オイル槽5内に一定量の粒状化粧料6を溜めた後、液状オイル槽5の底部に設けられた排液配管7を開いて液状オイル4を槽外に排出する。これにより、図4に示すように、槽内は粒状化粧料6のみとなり、これを簡単に取り出すことができる。
【0029】
上記一連の操作を繰り返し、赤色、ピンク色、オレンジ色の3色の粒状化粧料6をそれぞれ得る。そして、これらをリップカラー12として用い、前記リップグロス11とともに、透明なジャー容器10内に充填することにより、図1に示すように、リップグロス11中に、3色のリップカラー12が分散された組み合わせ化粧料を得ることができる。
【0030】
なお、上記リップグロス11とリップカラー12は、ジャー容器10内に同時に充填することもできるが、例えば、まず、リップグロス11を充填し、ついでこれをゆっくり撹拌しながらリップカラー12をその中に分散含有させるようにすると、リップカラー12がリップグロス11中に点在した形で分散し、見栄えがよい。また、予めリップグロス11内にリップカラー12を分散含有させたものを、上記ジャー容器10内に充填するようにしてもよい。ただし、いずれの場合も、粒状のリップカラー12が互いに凝集することなく、個々の粒状を識別できる程度に分散するよう注意することがポイントである。
【0031】
このようにして得られた組み合わせ化粧料は、透明なリップグロス11中に、赤色、ピンク色、オレンジ色のカラフルな粒状のリップカラー12が分散しており、これを、透明なジャー容器10の外側から見ることができるため、非常に興趣に富む商品となる。
【0032】
そして、上記粒状のリップカラー12は、液状オイル4中で固形化したものを、加熱乾燥等によらず、物理的に液状オイル4と分離して取り出しただけのものであるため、表面が滑らかで見栄えがよいだけでなく、その表面に欠けや変形が生じにくい。また、このものは、それ自身の表面張力によって球状になったものであり、金型成形品や押出成形品のように表面が緻密になっておらず、外表面のどの部分に対しても、化粧筆等で容易に削り取って使用することができ、使い勝手がよい。
【0033】
しかも、上記の例では、赤色、ピンク色、オレンジ色というカラフルなリップカラー12が複数個ずつ、適当な配置で分散されているため、その時々で、異なる色のリップカラー12を潰しながらリップグロス11とともに使用することにより、印象の異なる化粧を施すことができ、変化に富んだ化粧を楽しむことができる。
【0034】
なお、上記の例は、粒状にする固形化粧料として、固形化粧料であるリップカラー12を用いたが、本発明の固形化粧料としては、アイカラー、フェイスカラー、ファンデーション等、各種のメイクアップ化粧料となる油性の固形化粧料を用いることができる。また、油性のものに限らず、親水性の乳化組成物等やゲル状組成物からなるものを用いることもできる。さらには、ネイルカラーやシャンプー、リンス、洗浄剤、入浴剤等、各種の化粧料、あるいはこれに類するものに適用することができる。したがって、本発明において「化粧料」とは、一般に「化粧料」といわれているものに限定するものではなく、これに類するものを広く含めることができる。
【0035】
そして、上記粒状にする固形化粧料には、化粧料を構成するために、どのような成分を用いてもよいが、着色成分として、着色顔料(白色顔料を含む)およびパール顔料の少なくとも一方を、10〜20重量%(以下「%」と略す)含有していなければならない。すなわち、一般に化粧料に用いられる各種着色成分のなかでも、特に、比較的比重の大きい着色顔料、パール顔料を、上記の範囲内で含有させることにより、得られる粒状化粧料6の1粒の平均重さが0.01g以上となるようコントールすることが、滴下した化粧料液3を液状オイル4中に沈ませて固形化させる上で重要だからである。そして、上記着色顔料、パール顔料の含有割合が10%未満では、粒状化粧料6に対して充分な重量を付与することができず、逆に、20%を超えると、化粧料としてのバランスを欠くことになり、実用的でない。
【0036】
また、上記着色顔料、パール顔料の含有割合が適正範囲内であっても、粒状化粧料6の1粒の平均重さが0.1gを超えると、製造時に急速に沈んで潰れてしまうため、粒状のものが得られず、実用的でない。
【0037】
上記着色顔料としては、天然色素の他、無機系顔料として、酸化鉄(ベンガラ)、黄酸化鉄、黒酸化鉄、カーボンブラック、二酸化チタン、群青、紺青等があげられ、無機粉末として、タルク、セリサイト、カオリン、マイカ、亜鉛華、ベントナイト、硫酸バリウム、窒化ホウ素等があげられ、有機顔料として、赤色201号、赤色202号、赤色226号等があげられる。さらに、レーキ顔料として、赤色104号、赤色230号、黄色4号、黄色5号、青色1号等があげられる。
【0038】
また、上記パール顔料としては、例えば、酸化チタン被覆雲母、酸化チタン被覆タルク、着色酸化チタン被覆雲母、酸化チタン・シリカ・酸化チタン被覆雲母、酸化チタン被覆ガラス末、酸化鉄・酸化チタン被覆ガラス末、酸化チタン被覆シリカ末、酸化鉄被覆シリカ末、酸化チタン被覆アルミナ、酸化鉄・シリカ被覆アルミ末、酸化鉄・シリカ被覆酸化鉄、酸化チタン被覆合成マイカ、酸化鉄・酸化チタン被覆マイカ等があげられる。
【0039】
なお、上記固形化粧料の着色成分としては、必須成分である着色顔料、パール顔料に限らず、これらとともに、染料、高分子粉体等を、適宜組み合わせて用いることができる。
【0040】
また、上記固形化粧料は、固形化して得られる粒状化粧料6の平均硬度が、0.3〜1.0Nとなるよう調製したものでなければならない。すなわち、平均硬度が0.3N未満では、粒状化粧料6を液状オイル4から取り出す際や、ジャー容器10に充填する際、あるいは使用時に粒状のまま取り出そうとする際等に、意図せず粒が崩れたり潰れたりして、「粒状である」という特性を活かせない。逆に、粒状化粧料6の平均硬度が1.0Nを超えると、化粧時に、粒を潰そうとしても容易に潰れず、使い勝手が悪いという問題がある。
【0041】
一方、上記固形化粧料を液状にして滴下させて、その形状を粒状に維持するために用いられる液状オイル4(図3参照)は、上記固形化粧料と相溶性がないことが必要である。このような液状オイル4は、固形化粧料に種類に応じて、適宜のものが選択されるが、例えば、リップカラー、アイカラー、フェイスカラー、ファンデーション等の固形化粧料に対しては、シリコーンオイル、フッ素オイル、これらの混合物等が好適である。また、上記シリコーンオイルやフッ素オイル、その混合物と、その他の油性原料(炭化水素、エステル油等)とを混合したものも用いることができる。
【0042】
そして、上記製法によって得られる粒状化粧料6の粒の大きさは、粒状であることを視認することができ、粒状で存在することが印象的に見えるようになっていれば、特定の大きさである必要はないが、なかでも、その平均粒径が1〜5mmの大きさであることが好適である。すなわち、粒の平均粒径が1mmより小さいと、液状化粧料であるリップグロス11中に分散する粒状化粧料6が一目で視認しにくく、印象が弱いものとなる。また、これを潰して使用する際の使い勝手も悪くなるおそれがある。
【0043】
逆に、粒状化粧料6の平均粒径が5mmより大きいと、化粧料液3の滴下とその固形化によって粒状化粧料6を得ることが容易でなく、効率よくこれを製造することができないおそれが生じる。しかも、ジャー容器10等の容器内に、複数の色の粒を分散させたものを得ようとすれば、大容積の容器が必要となり、保管や携帯に不便になるという問題が生じるおそれがある。
【0044】
なお、本発明において、上記粒状化粧料6の形状は、必ずしも上記の例のように球状である必要はなく、円板状、楕円球状、円柱状、多角柱状等、各種の形状があげられる。したがって、本発明の「粒状」とは、球状に限らず、各種の形状を含む趣旨である。
【0045】
そして、上記のように、粒状化粧料6が、球状とは異なる形状をしている場合の「粒径」とは、その粒状体の外形のうち、最も間隔の広い2点間の距離をいい、本発明において「平均粒径」とは、粒状固形化粧料をランダムに10粒取り出し、各粒の粒径(mm)を上記の方法にしたがって測定後、その測定値から算出される平均値をいう。
【0046】
上記粒状化粧料6の粒径の大小は、固形化粧料を液状化して滴下により粒状化する際の、その滴下ノズル2(図3参照)の口径を調整することによって、コントロールすることができる。また、液状オイル4中に滴下された粒状の化粧料液3に、振動や撹拌等の物理的な力をかけることによっても、その形状に変化を与えることができる。
【0047】
また、滴下された化粧料液3の形状は、これを受ける液状オイル4の温度によっても左右される。例えば、化粧料液3が球状に滴下される場合において、上記液状オイル4の液温が、化粧料液3の液温よりやや高い温度域に設定されている場合には、化粧料液3は液状オイル4内においても落下時の球形を保つ。したがって、これを取り出せば、図5(a)に示すように、球状の粒状化粧料6を得ることができる。
【0048】
ところが、液状オイル4の液温が、化粧料液3の液温に比べて低すぎる場合は、化粧料液3が液状オイル4の液面と衝突する際に冷やされて表面張力を失い、扁平な円板状となって液状オイル4中に入り込むため、図5(b)に示すように、円板状の粒状化粧料6aが得られる。
【0049】
なお、液状オイル4の液温が、低温から化粧料液3の液温に近づくにつれて、落下時の表面張力が、化粧料液3と液状オイル4の液面との衝突時にも維持されて、化粧料液3が球状を維持しようとするため、粒の形状が、扁平な円板状から楕円球状、さらには球状となる。したがって、過渡的な温度域では、図6(a)に示すように、楕円球状の粒状化粧料6bが得られる。
【0050】
また、液状オイル4の液温が、化粧料液3の融点の温度より高くなりすぎると、その温度にもよるが、球状で落下した化粧料液3が、液状オイル4中で互いに結合して、場合によっては大きな1つの球形になってしまう。したがって、互いに結合しかけた状態で、液温を下げて化粧料液3の固形化を行うと、図6(b)に示すように、複数の粒子が結合した複雑な形状の粒状化粧料6cが得られる。
【0051】
さらに、液状オイル4の粘性によっても、滴下された化粧料液3の形状が左右されやすい。すなわち、液状オイル4の粘度が高い場合には、化粧料液3がその液面に衝突するときの抵抗が大きいため、化粧料液が扁平になりやすい。
【0052】
なお、上記の例では、粒状化粧料6(6a等を含む)として、3色の粒状のリップカラー12を用いたが、液状化粧料に分散させる粒状化粧料6の色や形状、組成は、単一のものを用いても、2種以上の異なるものを組み合わせて用いてもよい。ただし、上記の例のように、色の異なるものを組み合わせて用いると、使用の都度、化粧筆等で潰して用いる粒状化粧料6の色を選択することにより、化粧の印象を変えることができ、好適である。視覚的にも、容器の外側から透かして見える中身がカラフルで、好ましい印象となる。
【0053】
また、上記の例において、これらの粒状化粧料6を、液状オイル4から取り出す方法は、上記の例に限らず、適宜の方法を選択することができる。例えば、上記の例では、液状オイル槽5に化粧料液3を滴下して粒状化粧料6を溜めた後、液状オイル槽5から液状オイル4を排出するようにしたが、予め液状オイル槽5内に多孔付の内槽が嵌入しておき、この内側に粒状化粧料6を溜めた後、上記内槽ごと粒状化粧料6を取り出すようにしてもよい。
【0054】
さらに、本発明において、粒状化粧料6は、必ずしも上記の例に示すような方法で得る必要はなく、押出球形造粒装置等を用いて機械的に造粒されたものを用いることもできる。ただし、造粒装置を用いた粒状化粧料6は、固形化粧料が加圧成形されているため、表面が緻密になって化粧筆等で削り取りにくくなるおそれがある。そこで、上記の例のように、固形化粧料を液状化後、液状オイル4中に滴下して粒状にした後、固形化して取り出す方法によって得ることが好適である。
【0055】
また、本発明において、上記粒状化粧料6を分散させるための液状化粧料(上記の例ではリップグロス11)は、粒状化粧料6を容易に溶かすことなく、液中に粒状のまま分散保持させることのできるものでなければならない。
【0056】
ちなみに、固形化粧料がリップカラー12等の油性の固形化粧料である場合、これと組み合わせる液状化粧料としては、リップグロス11等のゲル状油性化粧料が好適である。また、水性の固形化粧料である場合には、オイルベースの乳液やオイルエッセンス等を用いることができる。
【0057】
そして、上記液状化粧料は、全く粘性のない液体であっても、一定の粘度を有する液体であってもよいが、粒状化粧料6を安定的に分散させるには、その粘度(30℃、芝浦システム社製の粘度計:VISMETRON VDA−2によって測定)が5〜200Pa・sであることが好適である。すなわち、粘度が5Pa・sより低いと、粒状化粧料6が流動しすぎて、外から衝撃を受けた場合等に、分散された粒状化粧料6が互いに衝突して崩形するおそれがあり、逆に200Pa・sより高いと、充填時に、粒状化粧料6を適度に分散させることが容易でないからである。
【0058】
なお、上記液状化粧料は、透明もしくは半透明で、その中に分散される粒状化粧料6が、外側から透けて見えるようになっていなければならない。したがって、本発明において、「透明もしくは半透明」とは、その内側にある粒状化粧料6が見える程度に「透明もしくは半透明」であることをいう。
【0059】
そして、本発明に用いられる容器(上記の例ではジャー容器10)も、上記液状化粧料と同様、容器外側から中を透かして見たときに、中身である液状化粧料に分散された粒状化粧料6が見える程度に「透明もしくは半透明」でなければならない。ただし、容器全体が透明もしくは半透明である必要はなく、切欠き窓等によって、容器の中身が部分的に見えるようになっているものも、本発明の「透明もしくは半透明の容器」に含むものとする。
【0060】
また、本発明に用いられる容器の形状や大きさは、内容物の種類や用途に応じて適宜選択されるのであり、上記の例以外に、例えば、図2に示すように、縦に細長い透明ボトルを用いることができる。この容器のキャップ13′内側には、化粧筆の機能を果たすスポンジ棒(棒状の芯材を筒状スポンジで覆ったもの)14が一体的に取り付けられており、このスポンジ棒の先端でリップカラー12を潰してリップグロス11と混ぜながら、唇に化粧を施すことができるようになっている。
【実施例】
【0061】
つぎに、本発明の実施例について、比較例と併せて説明する。ただし、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0062】
〔実施例1〕
まず、下記の組成の固形化粧料(赤色のリップカラー)を調製した。
<赤色のリップカラーの組成>
合成ワックス 5.0重量部
パラフィン 6.0 〃
ワセリン 5.0 〃
水添ポリイソブテン 10.0 〃
リンゴ酸ジイソステアリル 15.0 〃
オクチルドデカノール 10.0 〃
スクワラン 5.0 〃
ミリスチン酸イソステアリル 30.0 〃
着色顔料 1.0 〃
パール顔料 13.0 〃
【0063】
そして、上記リップカラー(融点65℃)を90℃で溶融して液状にした後、75℃に加熱したシリコーンオイル(信越化学工業社製、ジメチルシリコーンオイル KF−96A−100cs)を溜めた槽内に、上記液状のリップカラーを、ノズル径2mmの滴下ノズルを用いて滴下し、シリコーンオイル中で球状に固形化して取り出した。このものは、平均粒径が2mmの、流動性のない球状体であった。
【0064】
また、下記の組成の液状化粧料(リップグロス)を調製した。
<リップグロスの組成>
パルミチン酸デキストリン 6.0重量部
水添ポリイソブテン 50.0 〃
リンゴ酸ジイソステアリル 20.0 〃
スクワラン 10.0 〃
ミリスチン酸イソステアリル 11.0 〃
雲母チタン 3.0 〃
【0065】
そして、透明なジャー容器(30グラム)内に上記リップグロスを充填し、その中に、前記球状のリップカラーを15粒充填して分散させた。
【0066】
このようにして得られた組み合わせ化粧料は、容器の外側から、透明なリップグロス中に点在する赤色のリップカラーの粒が見えて、かわいい印象であった。そして、化粧するときは、化粧筆で上記リップカラーの粒を潰してリップグロスと混ぜながら唇に塗布することにより、赤系の艶やかな色に唇をメイクアップすることができ、使い勝手のよいものであった。
【0067】
〔実施例2、3、比較例1、2〕
粒状のリップカラーを得るために、後記の表1に示す組成の固形化粧料を調製した。それ以外は、上記実施例1と同様にして、目的とする組み合わせ化粧料を得た。そして、上記実施例1品も含む各実施例品、比較例品について、下記の項目の測定および評価を行い、その結果を、後記の表1に併せて示した。
【0068】
〔リップカラー(粒状固形化粧料)の1粒の平均重量〕
得られたリップカラーの粒をランダムに10粒取り出して、各粒の重量(g)を測定し、その平均値を算出した。
【0069】
〔リップカラーの1粒の平均硬度〕
得られたリップカラーの粒をランダムに10粒取り出して、各粒の硬度(N)を、前述の方法にしたがって測定し、その平均値を算出した。
【0070】
〔リップカラーの平均粒径〕
得られたリップカラーの粒をランダムに10粒取り出して、各粒の粒径(mm、球状以外のものは、その外形のうち、最も間隔の広い2点間の距離をいう)を測定し、その平均値を算出した。
【0071】
〔シリコーンオイル中での粒状化の容易性・取り出し作業容易性〕
加熱シリコーンオイルを溜めた槽内に、溶融液化したリップカラーの固形化粧料を滴下して、きれいな粒状になるか否か、またシリコーンオイル中で固形化した後、効率よく取り出せるか否かを、作業者5名に下記の基準で評価させ、最も多い評価をその評価とした。
◎…非常に良好 ○…良好 △…やや不良 ×…不良
【0072】
〔メイクアップ性〕
専門モニター5名に、この組み合わせ化粧料を用いて唇のメイクアップを行わせた。このとき、化粧筆で上記リップカラーの粒を潰してリップグロスと混ぜながら唇に塗布する作業がしやすいか否かを、下記の基準で評価させ、最も多い評価をその評価とした。
◎…非常に良好 ○…良好 △…やや不良 ×…不良
【0073】
〔見栄え〕
専門モニター5名に、この組み合わせ化粧料の外観の見栄えについて、下記の基準で評価させ、最も多い評価をその評価とした。
◎…非常に見栄えがよい ○…見栄えがよい △…普通 ×…見栄えがよくない
【0074】
【表1】

【0075】
〔実施例4〜7、比較例3〜6〕
リップカラーの粒の平均重さと平均硬度が、下記の表2、表3に示すような値となるよう固形化粧料の組成を調製した。それ以外は、実施例1と同様にして、目的とする組み合わせ化粧料を得た。そして、各実施例品、比較例品について、上記と同様の項目の測定および評価を行い、その結果を、下記の表2、表3に併せて示した。
【0076】
【表2】

【0077】
【表3】

【0078】
上記表1〜表3の評価結果から、実施例品は、いずれも概ね優れた評価が得られていることがわかる。これに対し、比較例品は、製造時か使用時に問題があったり、見栄えが不良であったりして、実施例品よりも劣るものであることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明は、液状化粧料と粒状の固形化粧料とが、互いに混じり合うことなく一容器中に充填された、興趣に富む組み合わせ化粧料に利用することができる。
【符号の説明】
【0080】
10 ジャー容器
11 リップグロス
12 リップカラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明もしくは半透明の容器内に、透明もしくは半透明の液状化粧料が充填されており、その液状化粧料中に、粒状の固形化粧料が、その粒状を識別できる状態で分散されている組み合わせ化粧料であって、上記粒状固形化粧料が、着色顔料およびパール顔料の少なくとも一方を10〜20重量%含有し、1粒の平均重さが0.01〜0.1g、1粒の平均硬度が0.3〜1.0Nに設定されていることを特徴とする組み合わせ化粧料。
【請求項2】
上記液状化粧料がゲル状油性化粧料であり、上記固形化粧料が融点60〜90℃のメイクアップ化粧料である請求項1記載の組み合わせ化粧料。
【請求項3】
上記ゲル状油性化粧料がリップグロスであり、上記固形化粧料がリップカラーである請求項2記載の組み合わせ化粧料。
【請求項4】
請求項1記載の組み合わせ化粧料の製法であって、着色顔料およびパール顔料の少なくとも一方を10〜20重量%含有し、粒状に成形したときの1粒の平均重さが0.01〜0.1g、1粒の平均硬度が0.3〜1.0Nとなるよう設定された固形化粧料を、加熱によって液状化し、この化粧料と相溶性がない液状オイル中に滴下して粒状に成形し、その温度を下げて固形化した後、上記液状オイルから分離することにより粒状固形化粧料を得る工程と、透明もしくは半透明の容器内に、透明もしくは半透明の液状化粧料を充填する工程と、上記容器内の液状化粧料を撹拌しながら、その中に、上記粒状固形化粧料を分散含有させる工程とを備えたことを特徴とする組み合わせ化粧料の製法。
【請求項5】
請求項1記載の組み合わせ化粧料の製法であって、着色顔料およびパール顔料の少なくとも一方を10〜20重量%含有し、粒状に成形したときの1粒の平均重さが0.01〜0.1g、1粒の平均硬度が0.3〜1.0Nとなるよう設定された固形化粧料を、加熱によって液状化し、この化粧料と相溶性がない液状オイル中に滴下して粒状に成形し、その温度を下げて固形化した後、上記液状オイルから分離することにより粒状固形化粧料を得る工程と、透明もしくは半透明の液状化粧料の中に、上記粒状固形化粧料を分散含有させる工程と、上記粒状固形化粧料が分散含有された液状化粧料を、透明もしくは半透明の容器内に充填する工程とを備えたことを特徴とする組み合わせ化粧料の製法。
【請求項6】
上記固形化粧料が、融点60〜90℃のメイクアップ化粧料であり、上記液状オイルが、シリコーンオイルおよびフッ素オイルの少なくとも一方、もしくはこれらのいずれかを他の油性原料と混合したものであり、上記液状化粧料がゲル状油性化粧料である請求項4または5記載の組み合わせ化粧料の製法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2011−32181(P2011−32181A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−177914(P2009−177914)
【出願日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【出願人】(000158781)紀伊産業株式会社 (327)
【Fターム(参考)】