説明

組成吸着材料、その製造及びその使用

A)開口を有する高密度不溶性材料のハウジング、並びに
B)前記ハウジング内に収容されたポーラスポリマーゲル
を含む組成吸着材料であって、前記ハウジングが、その中に前記ポーラスモノリスポリマーゲルと周囲の間の流体の連絡のための開口を有し、且つ、前記ポーラスモノリスポリマーゲルが前記ハウジングの内部空間を占有し、且つ、前記ハウジング内で機械的手段によりその場に保持される、組成吸着材料を開示する。本発明による組成吸着材料の使用、例えば気体若しくは液体からの汚染物質の除去や、分子の濃縮若しくは分離、及び細胞培養に加え、クライオ沈殿による組成吸着材料の製造のプロセスを開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は組成吸着材料、その製造のためのプロセス、及びそのような組成吸着材料の使用に関する。とりわけ本発明は、吸着活性原理としてポーラス(porous)ポリマーゲルに基づく組成吸着材料、そのような組成吸着材料の製造プロセス、並びに前記組成吸着材料の使用、例えば気体若しくは液体からの汚染物質の除去、分子の濃縮若しくは分離、及び細胞培養に関する。
【背景技術】
【0002】
環境の分野においては、(適した安価の吸着剤を使用した)吸着プロセスが、水からの種々の汚染物質の除去に、これまで最も幅広く使用されている技術である。それゆえ、吸着剤の使用を進化させる低価格技術を発展させることが、非常に重要である。
【0003】
有機物質で汚染された廃水の処理には、多数の従来処理技術が考慮されてきた。その中で、吸着が最も効果的な方法であることがわかっている。活性炭(AC)は、広範囲の種々のタイプの吸着物を効率よく吸着する能力があるため、有機物の吸着に広く使用されている。しかしながらコストが高いため、その利用は限られている。
【0004】
廃水中の重金属の除去は、イオン交換、化学酸化、化学沈殿、及び生物学的除去により達成される。ポリマー性キレートイオン交換体の合成及び応用の分野においては、これまで多数の仕事がなされてきた。しかしながら、開発されたキレート吸着剤が高価格であることが、環境応用において幅広く使用するにあたり主たる障害であった。水及び廃水処理プラントへ、イオン交換体及び無機吸着剤が広く応用されている。経済的な陰イオン交換体は、廃自然材(WNM)から生産された。WNM(ココナッツ穀皮、サトウキビバカス、茶葉、米殻などの例がある)は、塩化チオニル、ジメチルアミン、DMFを溶媒とし、ホルムアルデヒドを架橋剤とした化学反応を通じて、首尾よく陰イオン交換体へ転換された(Orlando et al., 2003)。
【0005】
固相抽出(SPE)は、最も使用されている技術の1つであり、水性サンプルからの微量金属の分離及び濃縮を可能にする(Fontanals et al . , 2005; Rossi and Zhang, 2000)。SPEにおいて使用される最も重要な吸着剤は、化学的に結合した種々の基を持つシリカ(Poole, 2003)、炭素(Masque et al . , 1998)、及びマクロポーラス・スチレン‐ジビニルベンゼン(St−DVB)吸着剤(Fontanals et al . , 2005)である。
【0006】
複数汚染物質の管理のための有望な概念の1つに、種々の吸着剤を注入することにより複数汚染物質の除去が可能な、循環流動層吸着装置(circulating fluidized bed absorber, CFBA)がある(Mao et al., 2004)。CFBAは、例えば、SOをか焼石灰(calcinated lime)上への吸着で擦り落とし、水銀蒸気を活性炭上への吸着で除去可能である。固体‐気体の接触を増やし、固体をリサイクルすることで、汚染物質の効率よい除去と、経済性の双方が見込まれる。また潜在的な側面利益は、吸着剤粒子上での塊形成を通して微小粒状物質を捕獲することである(Mao et al., 2004)。
【0007】
上記全ての吸着剤は、伝統的な球状ビーズ形が主であり、多数の会社より提供されている(SPE用の吸着剤については、総説(Fontanals et al . , 2005; Poole, 2003)を参照のこと)。しかしながら、漏れや、バックプレッシャ問題( back-pressure problems )を起こす吸着剤もあり;別の吸着剤は、粒子サイズにおいて、ロットごとの可変性を示す(Fontanals et al . , 2005)。
【0008】
更に、先行技術による吸着材料の欠点は、CFBA中で使用する場合、攪拌で生じるずり応力に対して感受性であることである。
【0009】
従って、適切なコストで製造可能で、且つ、攪拌で生じるずり応力で急速に分解されることなくCFBA中で使用できる吸着剤材料が、引き続き必要とされている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、研究室規模のみならず、環境分野及び他の大規模事業においても使用可能な吸着材料を設計するための、新規概念に基づく。
【0011】
本発明によれば、ポーラスポリマーゲル材料を吸着剤成分として使用する、組成吸着材料が提供される。好ましくは、該ポーラスポリマーゲル材料は、マクロポーラスクライオゲル材料である。
【0012】
マクロポーラスクライオゲル材料、及びそれらの製造は、例えば国際公開第03/031014A1号及び国際公開第03/041830A2号により開示されている。しかしながら、そのマクロ多孔性のため、これらの材料の粒子若しくは他形の本体は、懸濁液を攪拌した際に、磨耗に対して最も感受性である。
【0013】
本発明に従えば、このようなマクロポーラスクライオゲル材料の磨耗による分解は、組成吸着材料のもう1つの成分として、このような材料を密な不溶性材料で作られた保護ハウジング(housing)で囲むことにより、顕著に減少する。
【0014】
それゆえ本発明の一局面より、
A)密な不溶性材料のハウジング、並びに
B)前記ハウジング内に収容されたポーラスモノリスポリマーゲル
を含む組成吸着材料であって、前記ハウジングが、その中に前記ポーラスモノリスポリマーゲルと周囲の間での流体の連絡のための開口を有し、且つ、
前記ポーラスモノリスポリマーゲルが、前記ハウジングの内部空間を占有し、且つ前記ハウジング内で力学的手段によりその場に保持されている、
組成吸着材料を提供する。
【0015】
本発明の別の局面により、本発明の組成吸着材料の製造のための多数のプロセスであって、その中に開口を有し、且つ製造されたポーラスゲルを保持する力学的手段を有する密な不溶性材料のハウジングの内部にて、モノリス形のポーラスゲル材料を形成する、という共通の特徴を持つプロセスを提供する。例えば該ポーラスゲルは、密な不溶性材料のハウジング内の溶液における、モノマー溶液の重合化、又は、ポリマーの架橋化により製造してよい。
【0016】
本発明の更なる局面により、気体若しくは液体からの汚染物質の除去、又は、該ゲル中の構造物に結合する分子の濃縮若しくは分離のための、本発明の組成吸着材料の使用を提供する。本発明の該組成吸着材料の更なる使用方法は、以下の詳細な記述中にて明らかにする。
【0017】
本発明のなお更なる局面により、哺乳動物細胞が付着した支持材料を、継続的に前期哺乳動物細胞と接触させることによる哺乳動物の培養方法であって、本発明の組成吸着材料が前記支持材料として使用され、該哺乳動物細胞が、前記組成吸着材料の孔内に収容されている方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の上記の第一の局面により、
A)密な不溶性材料のハウジング、並びに
B)前記ハウジング内に収容されたポーラスモノリスポリマーゲル
を含む組成吸着材料であって、前記ハウジングが、その中に前記ポーラスモノリスポリマーゲルと周囲の間の流体の連絡のための開口を有し、且つ
前記ポーラスモノリスポリマーゲルが前記ハウジングの内部空間を占有し、前記ハウジング内で力学的手段によりその場に保持されている、
組成吸着材料を提供する。
【0019】
前記ハウジングのために使用する材料は、密であり且つ液体中で不溶性であれば広範囲で変化に富んでいてよく、例えば金属及びプラスチック材料から選択されてもよい。
【0020】
該ハウジングは、ポーラスモノリスポリマーゲルと周囲との間の流体の連絡を可能にする開口、及び、該ポーラスモノリスポリマーゲルを内部に保持するための力学的手段を備えている。
【0021】
本発明の該組成吸着材料の1つの態様によれば、前記の力学的手段は、該ハウジング内部表面上の隆起などの不規則性を含む。
【0022】
本発明の該組成吸着材料の別の態様によれば、前記ハウジングは、表面中に分布した複数の開口を有し、前記開口は、前記ポーラスモノリスポリマーゲルの一部が該部へ伸展することにより、前記力学的手段として機能する。
【0023】
該ハウジングは、種々の形をしていてよい。即ち本発明の組成材料の1つの態様によれば、該ハウジングは、実質的に、末端が開口のシリンダーの形であり、該力学的手段とは、前記ハウジング内の複数の開口末端ダクト形(duct-shaped)空間を規定し、該シリンダーの開口末端の一方からもう一方の方向へと伸展する棒格子を含む。
【0024】
Kaldnes担体(Odegaard et al, 2000)と呼ばれるこのタイプの製品は市販されている。それらはプラスチック材料でつくられており、内部にクロス、外部上にフィンを有し、実質的にシリンダーの様な形(長さ7mm、直径10mm)をしている。
【0025】
しかしながら、開口の形、数、及び配置は、ポーラスモノリスポリマーゲルとハウジング外周囲との間で、流体の効率よい連絡ができる限り、それほど重要でない。
【0026】
本発明の組成吸着材料の成分として使用される該ポーラスポリマーゲルは、好ましくはマクロポーラス構造の物であって、より好ましくはマクロポーラスクライオゲルである。
【0027】
本明細書及び特許請求の範囲にて使用される「クライオゲル」という用語は、製造に使用した溶媒の凍結点を下回る温度でゲル化させることにより製造されたポリマーゲルを言う。
【0028】
本発明の組成吸着材料の好ましい態様の1つによれば、該ハウジング内に収容された該ポーラスポリマーゲルは、
N−置換及び非置換(メタ)アクリルアミド;
N−アルキル置換N−ビニルアミド;
ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;
ビニルアセテート;
ビニルアルコールのアルキルエーテル;
環置換スチレン誘導体
ビニルモノマー;
(メタ)アクリル酸及びその塩;
ケイ酸;並びに
重合によりポリマーを形成できるモノマー;
からなる群より選択される少なくとも1つの水溶性モノマーの水溶液を、水性溶媒の結晶化点よりも低い温度であって、該系にて、溶媒が一部凍結し、溶媒の非凍結画分にて溶解物資が濃縮されクライオゲルを形成するような温度での、凍結下で重合化させることにより得られた生成物を含む、クライオゲルである。
【0029】
該型クライオゲルの製造については、例えば国際公開第03/041830A2号に詳細があり、その開示内容は、本明細書に参照として全て包含されるものである。
【0030】
本発明でのクライオゲルの製造に国際公開第03/041830A2号の一般的な教示を適用することにより、本発明は、第二の局面により、本発明の組成吸着材料を製造するためのプロセスであって、
N−置換及び非置換(メタ)アクリルアミド;
N−アルキル置換N−ビニルアミド;
ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;
ビニルアセテート;
ビニルアルコールのアルキルエーテル;
環置換スチレン誘導体
ビニルモノマー;
(メタ)アクリル酸及びその塩;
ケイ酸;並びに
重縮合によりポリマーを形成できるモノマー;
からなる群より選択される少なくとも1つの水溶性ポリマーの水溶液を、2つの向かい合った開口末端を有し、且つ、製造されたクライオゲルをその場に保持する力学的手段を有する、固体の、密な材料のハウジング中にて、水性溶媒の結晶化点よりも低い温度であって、該系中の溶媒が一部凍結し、溶媒の非凍結画分にて溶解物資が濃縮されクライオゲルを形成するような温度での凍結下で重合化させることを含むプロセス、を提供する。
【0031】
本発明で使用するクライオゲルの製造に使用されるモノマーは、好ましくは、N−置換及び非置換(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、及び(メタ)アクリル酸、並びにそれらの塩、からなる群より選択される。該モノマーは、最も好ましくは、少なくともそれらの二つ以上の組み合わせにて使用される。
【0032】
現時点にて意図した最善の態様によれば、本発明で使用するクライオゲルは、アクリルアミド、N,N−メチレン−ビス−アクリルアミド、及びN,N,N’,N’−テトラメチレンジアミンの組み合わせを、モノマーとして用いることにより、製造する。
製造溶液中にてモノマーの総濃度を増加させると、クライオゲルのずり応力に対する抵抗が増加する。一方で前記濃度を増加させることにより、クライオゲルの多孔度が減少する。多孔度とずり応力に対する抵抗との適度なバランスは、どの特定のケースにおいても、総モノマー濃度を変化させる一連の実験の方法により、簡単に確立され得る。該溶液中での該モノマーの全濃度の適当な範囲は、使用される特定の系により異なる。即ち、例えば、アクリルアミド、N,N−メチレン−ビス−アクリルアミド、及びN,N,N’,N’−テトラメチレンジアミンの系の該モノマーの全濃度は、一般に、クライオゲルが製造される反応溶液に基づき計算して2%から20%(w/v)の範囲内で、好ましくは4%から10%(w/v)の範囲内である。
【0033】
モノマー若しくは上記で特定した該群のモノマーの組み合わせの重合に関して従来用いられている開始剤系は、必要であれば若しくは所望であれば、用いられる。
【0034】
クライオゲル化に使用する溶媒若しくは溶媒系は、水、及び、水と水混和性有機溶媒の混合物、からなる群より選択される。
【0035】
該クライオゲル化に使用する好ましい溶媒は、水単体であるが、メタノール、エタノール、ジオキサン、アセトン、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、及びアセトニトリルなどの1以上の水混和性有機溶媒の少量と混合した水も意図してよい。
【0036】
凍結又は冷却が行われる温度は、各々の特定の場合に使用される溶媒又は溶媒系の結晶化点に依存する。該温度は、一般的に、結晶化時間を少なく保つために溶媒又は溶媒系の凍結点より少なくとも5℃低くあるべきである。例えば、溶媒として水の場合、凍結は一般的に、−5℃〜−40℃、好ましくは−10℃〜−30℃の範囲内の温度まで行われる。
【0037】
本発明の該プロセスを実践する1つの態様では、上で定義されたような種類の多数のハウジングを容器に入れ、次に前記ハウジングを覆う水準まで、重合させるモノマー若しくは架橋させるポリマーを含む反応溶液を該容器に満たし、前記容器を、重合若しくはポリマー架橋に使用する該溶媒若しくは溶媒系の結晶点を下回る温度であって、該系中の溶媒が一部凍結し、溶媒の非凍結画分にて溶解物資が濃縮されるような温度に晒す。クライオゲル形成後、クライオゲルを内部に含む該ハウジングを互いに分離するため容器の内容物を冷凍カットする。このようにして得られた本発明の組成吸着材料を、次に例えば室温等で解凍し、その後水で集中洗浄する。
【0038】
本発明の組成吸着材料の別の実施態様によれば、該ハウジング内に収容された該ポーラスポリマーゲルは、カオトロピック剤、及び、仮に必要であれば若しくは所望であれば架橋剤の存在下で、少なくとも1つの合成ポリマー若しくは天然ポリマーのクライオゲル化により製造された生成物を含む、クライオゲルである。
【0039】
ポリ(ビニルアルコール)は、本発明の組成吸着材料の該実施態様にて使用される前記の少なくとも1つの合成ポリマーの、好ましい代表例である。最も好ましくは、該ポリ(ビニルアルコール)は、架橋型で使用する。該関連にて使用が意図される架橋剤の例としては、エピクロロイドリン(epichloroydrin)、ジビニルスルホン、グルタルアルデヒド、及び、ジ及びトリグリシジル化合物であり、好ましくはグルタルアルデヒドである。
【0040】
本発明の組成吸着材料の該実施態様にて使用する前記の少なくとも1つの天然ポリマーは、多糖類及び蛋白質からなる群より選択される少なくとも1つのメンバーであってよい。
【0041】
該関連にて使用が意図される多糖類の例は、アガロース、寒天、カラギーナン、デンプン、セルロース、及びその各々の誘導体である。
【0042】
該関連にて使用が意図される蛋白質の一例は、キトサンである。
【0043】
本発明は、更に、前記材料のこの実施態様の組成吸着材料の製造のためのプロセスであって、合成ポリマー及び天然ポリマーからなる群より選択される少なくとも1つの物質が、その中に開口を有し、且つ製造されたモノリスクライオゲルを保持する力学的手段を有する密な不溶性材料のハウジングの内部で、カオトロピック剤及び仮に必要であれば架橋剤の存在下にて、クライオゲル化に付されるというプロセスを提供する。
【0044】
合成ポリマー及び天然ポリマーからクライオゲルをどのように製造するかの詳細は、例えば国際公開第03/031014A1号にあり、その開示内容は、参照することにより全て本明細書に包含されるものである。
【0045】
簡潔に述べると、前記の少なくとも1つの合成ポリマー若しくは天然ポリマーの、水溶液又は水と水混和性有機溶媒の混合物中の溶液を、カオトロピック剤の存在下にて、該系の溶媒が部分的に凍結し、溶媒の非凍結画分に溶解物質(単数又は複数)が濃縮される温度へ、冷却する。
【0046】
冷却の間、架橋剤が存在していてよく、又、架橋はクライオゲル形成の後で行ってもよい。
該プロセスにて使用されるカオトロピック剤は、尿素、アルキル尿素、塩化グアニジン、LiCl、KSCN、NaSCN、酸及び塩基、並びにそれらの混合物、からなる群より選択してよい。
例えば本発明の該プロセスのこの実施態様の一例として、アガロースをその吸着成分として持つ組成吸着材料は、アガロースのアルカリ水溶液を、前記で定義したハウジング内に充填し、アガロースのクライオゲルが形成され得るよう−10℃を下回る温度範囲内にて凍結することにより、製造してもよい。
【0047】
本発明の該プロセスのこの実施態様の別の一例として、架橋されたポリ(ビニルアルコール)を吸着成分として持つ組成吸着材料は、ポリ(ビニルアルコール)とグルタルアルデヒドの酸性水性反応混合物の酸性水溶液を、前定義のハウジング内に充填し、0℃を下回る温度範囲にてそれを凍結することで、架橋されたポリ(ビニルアルコール)のクライオゲルが形成されるようにすることにより、製造してもよい。
【0048】
本発明の該プロセスの実施態様の更なる一例として、架橋されたキトサンを吸着成分として持つ組成吸着材料は、pH4.5からpH5.6の範囲内に緩衝化されたキトサン水溶液を、前定義のハウジング内に充填し、0℃を下回る温度範囲内で前記溶液が凍結するまで冷却した後に、グルタルアルデヒドのエタノール溶液によりキトサンが架橋され、架橋されたキトサンのクライオゲルが形成されるようにすることにより、製造してもよい。
【0049】
本発明は、又、上で議論された該プロセス実施態様に関連して開示された該ステップに加えて、前記実施態様で製造された組成吸着材料へ、ゲル形成化合物の水溶液を、単独で又は賦形剤若しくは細胞と混ぜて、そして、得られた該混合物を、前記溶液が凍結するまで0℃を下回る温度範囲へ冷却し、その後このようにして形成された二重冷凍クリオゲルが解凍される追加的なステップを含む、プロセスをも含む。
【0050】
本発明の別の局面によれば、組成吸着材料の特性は、その吸着成分を改変することにより、改変してもよい。
【0051】
それゆえ本発明は、リガンド、荷電基、及び疎水基からなる群より選択されるメンバーをその中へ導入することにより、その吸着成分のポーラスポリマーゲルが改変された、本発明の組成吸着材料をも提供する。
【0052】
本発明の組成吸着材料の該実施態様にて使用するリガンドは、ペプチド、金属キレート、糖誘導体、ボロネート誘導体、酵素基質及びそれらのアナログ、酵素阻害剤及びそれらのアナログ、蛋白阻害剤、抗体及びそれらのフラグメント、並びに、チオール含有物質、からなる群より選択してよい。
【0053】
本発明は、又、金属、金属酸化物、イオン交換粒子、疎水性吸着剤、アフィニティー吸着剤、及び粒子形の分子インプリントポリマーからなる群より選択される、賦形剤を導入することにより、吸着成分のポーラスポリマーゲルが改変された、本発明の組成吸着材料を提供する。
【0054】
本発明の組成吸着材料の更なる改変として、その吸着成分は、鋳型分子の存在下での重合により製造され、それにより、分子インプリントポリマーゲルを形成するクライオゲルであってもよい。
【0055】
本発明の更なる局面によれば、その局面の1つの実施態様において、気体若しくは液体からの汚染物質の除去のための、本発明の組成吸着材料の使用を提供する。
【0056】
前記の更なる局面の別の実施態様により、ポーラスポリマーゲル中の構造物に結合する分子の濃縮又は分離のための、本発明の組成吸着材料の使用を提供する。
【0057】
前記の更なる局面の更なる実施態様により、培地中の物質の生物変換のための生物触媒が、組成吸着材料に接触するように負荷された、本発明の組成吸着材料の使用を提供する。
【0058】
該実施態様にて使用される生物触媒は、酵素(プロテアーゼ、アミラーゼ、リパーゼなど)、細胞[原核細胞(例えばラクトバチルスなど)並びに真核細胞(たとえばパン酵母細胞(サッカロミセス・セレビシエ)及び哺乳動物細胞(例えばCD34+KG−1ヒト癌細胞、マウス胎児線維芽細胞株3T3−L1、ハイブリドーマ細胞株MD2139などの種々の細胞株)]からなる群より選択してよい。
【0059】
本発明の前記の更なる局面の、なお更なる実施態様により、細胞の固定化(immobilization)のための、本発明の組成吸着材料の使用を提供する。
【0060】
本発明の前記の更なる局面の、更なる実施態様により、細胞培養における、本発明の組成吸着材料の使用を提供する。
【0061】
該実施態様を実施する好ましい方法によれば、細胞懸濁液を、本発明の組成吸着材料を充填したカラムに付し、次に、該カラムを、細胞が組成吸着材料に充分に結合するのに充分な期間インキュベートし、その後、培養培地を該カラムを通して循環させる。
【0062】
本発明のなお更なる実施態様により、哺乳動物細胞が付着した支持材料を含むバイオリアクター中にて、液体培養培地を前記哺乳動物細胞に継続的に接触させることにより哺乳動物細胞を培養する方法であって、本発明の組成吸着材料を前記の支持材料として使用し、前記哺乳動物細胞が前記組成吸着材料のポア(pores)に収容されている、哺乳動物細胞の培養方法を提供する。
【0063】
本発明のこの局面における好ましい実施態様によれば、培地リザーバーからの液体培養培地を、バイオリアクターを通じて、継続的に循環する。
【0064】
この好ましい実施態様において、バイオリアクターから遊離した標的生成物を、培養培地が培地リザーバーに戻る前に捕獲するために、バイオリアクターを離れる培養培地を、本発明の適切な組成吸着材料を含むアフィニティー吸収体を通過させるのが好ましい。
【0065】
本明細書及び特許請求の範囲にて使用される「組成吸着材料」という用語の使用に関して、該用語は、ハウジングとその内部のポーラスポリマーゲルの1つの単ユニットの使用、並びに複数の該ユニットの組み合わせでの使用を含むことを意図する。
【0066】
本発明は、更に、限定されない多数の例により例証される。
【0067】
実施例1.
プラスチックハウジング内での、低分子量前駆体からのマクロポーラスゲルの製造
a)全モノマー濃度5.0%(w/v)の反応混合物からのマクロポーラスゲルの製造
アクリルアミド(AAm)(3.19g)、N,N−メチレン−ビス−アクリルアミド(MBAAm)(1.17g)及びアリールグリシジルエーテル(AGE)(1.0ml)を脱イオン水に溶解した(反応混合物の全容量:103ml、最終モノマー濃度:5.0%)。該反応混合物はin vacuo(水ポンプアスピレーター)にて10分間脱気し、溶解酸素を除去した。該反応混合物を20分間冷却後、N,N,N’,N’−テトラメチレンエチレンジアミン(TEMED)(80μl)及び過硫酸アンモニウム(APS)(64mg)を加えて、フリーラジカル重合を開始した。内径13mmで取り外し可能な底部を有するガラスカラムに、Kaldness担体(K1)(Kaldness miljotechnologi AS,Tonsberg, Norway製で長さ7mm、直径10mm、シリンダー内部にクロス、外部上にフィンを有する開口末端シリンダー様プラスチック体)を充填し、続いて該反応溶液を充填した。該Kaldness担体(以下では、「プラスチック担体」若しくは単に「担体」と呼び替える)が該反応溶液(前記プラスチック担体の密度は0,92〜0,96g/cm)の上部に浮き上がるのを防ぐため、該担体の上部に蓋を置いた。該反応混合物/プラスチック担体を充填した該ガラスカラムは、−12℃で凍結させるため、低温サーモスタット(Lauda- RK20KP from LAUDA Dr. R. WOBSER GmbH & Co. KG, Lauda-Konigshofen, Germany)内部に固定した。冷凍状態で一晩維持した後、該プラスチック担体の内部に形成されたエポキシ基を含むポリアクリルアミドを有するプラスチック担体を、取り外し可能なカラム底部を取り外し、凍結塊を押し出し、鋭利なナイフ若しくはレーザー刃にて該組成吸着材料の各ユニットを緩く切断し多後、水での集中洗浄により室温で解凍することで、互いに分離した。
Kaldness担体内部にクロス棒が存在するため、シリンダー様Kaldness担体の開口末端の一方からもう一方へと伸張する開口末端ダクト形空間を複数形作る格子が形成され、このダクト形空間には、上記の重合反応の結果として、エポキシ基を示すアクリルアミドのマクロポーラスポリマーが充填された。上記のように、Kaldness担体と該ダクト形空間中のマクロポーラスクライオゲルを有するKaldness担体を含む、本発明の組成吸着材料を、以下では「ミニカラム」と呼ぶ。
【0068】
b)全モノマー濃度7.0%(w/v)の反応混合物からのマクロポーラスゲルの製造
AAm(4.53g)、MBAAm(1.64g)及びAGE(1.42ml)を脱イオン水に溶解した(反応混合物の全容量:107ml;最終モノマー濃度7.0%(w/v))。反応混合物を、上記a)項にて設定した通りに脱気、冷却し、TEMED(113μl)及びAPS(90mg)を加えてフリーラジカル重合を開始した。その後のプロセスは上記a)項にて設定した通りである。
【0069】
c)全モノマー濃度11.5%(w/v)の反応混合物からのマクロポーラスゲルの製造
AAm(7.35g)、MBAAm(2.69g)及びAGE(2.31ml)を脱イオン水に溶解した(反応混合物の全容量:107ml;最終モノマー濃度11.5%(w/v))。反応混合物を、上記a)項にて設定した通りに脱気、冷却し、TEMED(184μl)及びAPS(147mg)を加えてフリーラジカル重合を開始した。その後のプロセスは上記a)項にて設定した通りである。
【0070】
実施例2.
イミノ二酢酸により改変されたマクロポーラス・ポリアクリルアミドゲルを含むミニカラムの製造
該実施例にて使用される開始材料は、実施例1で製造したミニカラムで、前記実施例にて示したように、全モノマー濃度が、三つの異なる濃度、すなわち5.0%、7.0%、及び11.5%(w/v)の反応溶液を用いた。
【0071】
エポキシ改変ポリアクリルアミドを含む該ミニカラムは、0.5MのNaCO溶液にて洗浄し、ガラス瓶内に置いた。イミノ二酢酸(1M NaCO中の0,5M)は、該瓶中のミニカラムを覆う量を加えた。該反応は、ロッキングテーブル上にて、攪拌しながら、室温にて24時間行った。最後に、該ミニカラムを、中性pHになるまで水で洗浄した。
【0072】
イミド二酢酸改変マクロポーラス・ポリアクリルアミドゲルを含むミニカラムが得られた。
【0073】
実施例3.
イオン交換基を含有するマクロポーラス・ポリアクリルアミドゲルを含むミニカラムの製造
5.0%(w/v)の全モノマー濃度を利用して実施例1で製造したエポキシ基を含有するポリアクリルアミド(pAAm)ミニカラム二十(20)本を、0.1MのpH9.5炭酸ナトリウム緩衝液で洗浄した。次にN,N‐ジメチトリメチレンジアミン(N, N- dimethytrimethylenediamine)(0.1M 炭酸ナトリウム中、0.3M、pH9.5、50ml)を、ロッキングテーブル上にて攪拌しながら、24時間、ミニカラムに付した。このようにして得られた、陰イオン交換基を三級アミノ基(−N(CH)の形で示す該ミニカラムを、中性になるまで水で洗浄した。
【0074】
実施例4.
マクロポーラス・キトサンベースゲルを含むミニカラムの製造
キトサンの粘性水溶液(2%、w/v)を0.1M酢酸ナトリウム緩衝液、pH5.6で希釈し、最終濃度0.5%(w/v)とした。次に、該キトサン溶液を、6つのKaldness担体を充填したプラスチックシリンジ(内径12mm)に注ぎいれ、−20℃にて凍結した。凍結したまま1時間維持した後、凍結したミニカラムをシリンジから取り外して、(ミニカラムを互いに分離するため)冷凍カットし、−20℃に冷却した架橋剤溶液(エタノール中グルタルアルデヒド(GA)2.5%v/v、GA/EtOH 5/95、v/v)15ml中に移して、該架橋溶液中で、−12℃にて一晩維持した。形成された該凍結モノリスの色は黄色となり、GA/EtOH溶液中に凍結状態で保存されている間にシッフ塩基が形成されたことを示した。次に該GA溶液中の凍結したモノリスを室温で4時間かけて解凍すると、この間に、解凍されたクライオゲルマトリクスの追加的な架橋が進んだ。解凍された該クライオゲル・ミニカラムは、中性pHになるまでエタノールを徐々に水に置き換えることにより洗浄した。0.1Mの炭酸ナトリウム緩衝液中の水素化ホウ素ナトリウム溶液(0.1M)を3時間付すと、シッフ塩基の還元により、該キトサンクライオゲルの色は、茶色から明るい黄色へと変化した。最後に該キトサン・ミニカラムを水で洗浄した。得られたミニカラムを「0,5−Cts−PC」と命名した。
【0075】
1%キトサン溶液からのキトサン・ミニカラムの製造のため、キトサン水溶液(2%、w/v)を0.1M酢酸ナトリウム緩衝液、pH5.6で希釈し、最終濃度1.0%(w/v)とした。その後、該キトサン・ミニカラム(「1−Cts−PC」)の製造を上記の通りに行った。
【0076】
1−Cts−PCとの比較のため、通常のキトサンゲル(すなわち室温にて)のキトサン・ミニカラム(「1gel−Cts−PC」)を、以下の通り製造した:キトサン水溶液(2%、w/v)を0.1M酢酸ナトリウム緩衝液、pH5.6で希釈し、最終濃度1.0%(w/v)とした。架橋剤GAを、該キトサン溶液に最終濃度1.0%(v/v)となるまで加え、該反応混合物を、6つのKaldness担体が充填されたプラスチックシリンジ(内径12mm)にすばやく注ぎ、一晩室温に置いた。形成された強固なキトサンゲルの色は黄色になり、シッフ塩基が形成されたことが示された。次に、形成された該強固なキトサンゲルをシリンジから取り外し、(該ミニカラムを互いに分離するため)該ミニカラムを切断し、(該ミニカラムを該溶液で覆うため)0.1M炭酸ナトリウム緩衝液中に溶解した水素化ホウ素ナトリウム溶液(0.1M)を有するガラス瓶中に移した。該反応はロッキングテーブル上にて、攪拌しながら3時間行った。該キトサンゲルの色は、シッフ塩基の還元により、茶色から明るい黄色へと変化した。最後に、該キトサン・ミニカラムを水で洗浄した。製造された1gel−Cts−PC通常ゲルは、(弾性がありスポンジ様である1−Cts−PCクライオゲルと比較して)強固であるため、力学的安定性の研究では(下記の実施例14参照)、1gel−Cts−PCの重量減少は、1−Cts−PCの重量減少(26%)より、ずっと高かった(46%)。
【0077】
実施例5.
マクロポーラス・アガロースベースゲルを含むミニカラムの製造
アガロース水溶液(2.0%、w/v)は、温度を上げて(90℃)、攪拌することにより調製した。アガロース溶液を60〜65℃に冷却し、濃縮NaOH(5M)を使ってpHを調整し、アルカリ濃度0.1M(pH13.0)とした。次にこの暖かいアガロース・アルカリ溶液を、(内径12mmで6つのKaldness担体が充填されている)プラスチックシリンジに注入し、−35℃で凍結した。該サンプルは、−35℃で1時間、−12℃で一晩、凍結のまま維持した。該凍結サンプルを、0.06℃/分の解凍速度で解凍し、中性pHになるまで水で洗浄した。
【0078】
実施例6.
マクロポーラス・青色アガロースベースゲルを含むミニカラムの製造
濃縮NaOHによるpH調整の前に、高温アガロース溶液に、青色染料(Cibacron Blue、40mg)を加えたことを除き、実施例5を繰り返した。
【0079】
実施例7.
ポリ(ビニルアルコール)(PVA)ベースのマクロポーラスゲルを含むミニカラムの製造
PVA(モビオール(Mowiol)8−88、分子量67000g/molグレードのPVA;けん化度88%)を、温度を上げながら(90℃)攪拌することにより、水へ溶解した(5%、w/v)。該PVA溶液を室温に冷却後、該溶液のpHを、5M HClにて1.0〜1.2に調整し、該溶液を氷浴で30分冷却した。グルタルアルデヒド(架橋剤、最終濃度1.0%w/v)を加え、該反応溶液を1分間攪拌した。該溶液を(内径12mmで6つのKaldness担体が充填されている)プラスチックシリンジに注ぎ入れ、−18℃で凍結した。−18℃で一晩凍結のまま維持した後、該凍結ミニカラムを解凍し、中性pHになるまで水で洗浄した。
【0080】
実施例8.
カルボキシル改変PVAベースのマクロポーラスゲルを含むミニカラムの製造
実施例7で製造したPVAベースのマクロポーラスゲルを含むミニカラムを、0.1M炭酸ナトリウム緩衝液、pH8.0 に溶解した0.5Mクロロ酢酸と、室温にて、100rpmで16時間攪拌しながら反応させた。このようにして製造した、カルボキシル基を示すマクロポーラス架橋PVA−ゲルを含むミニカラムを、中性pHになるまで洗浄した。
【0081】
実施例9.
酵素(トリプシン)を固定化したマクロポーラス・アクリルアミドゲルを含むミニカラムの製造
トリプシン溶液(0.1Mリン酸ナトリウム緩衝液中の5mg/ml、pH8.0)を、7.0%(w/v)の全モノマー濃度を使用して実施例1で製造したエポキシ基含有ポリアクリルアミドのミニカラムに、100rpmで24時間攪拌しながら加えた。0.1Mエタノールアミンにて、未反応エポキシ基を3時間ブロックした後、酵素が固定化された該ミニカラムを、中性pHになるまで水で洗浄し、0.1Mリン酸ナトリウム緩衝液、pH7.4中にて、4℃で維持した。
【0082】
固定化された酵素の活性を調べるため、特異的基質N−ベンゾイル−DL−アルギニン−4−ニトロアニリド(BAPNA)の切断を含意する、405nmでの分光光度アッセイを用いた。この目的のため、約0.6mgの該蛋白質を含む酵素(生体触媒)が固定化されたミニカラムの決定量(12個)を、30mlの0.05Mトリス‐HCl緩衝液、pH8.0中に、37℃のターモスタッドで15分間懸濁した。該BAPNA基質を加え(MeCN中の1mM溶液、200μl)、該反応混合物を、37℃のターモスタット・リアクターにて、100rpmで攪拌した。該溶液の405nmでの吸光度を、時間経過とともにモニターした。同じ条件でのBAPNA基質のコントロール加水分解も、同様に検出した。遊離p−ニトロアニリルのモル吸光率を9620M−1cm−1と等しいとした。
【0083】
実施例10.
酵母細胞を固定化したアクリルアミドゲルを含むミニカラムの製造
種々の量の酵母細胞(サッカロミセス・セレビシエ、地元の提供者(supplier)から塊で購入)を、アクリルアミド(AAm)及びN,N−メチレン−ビス−アクリルアミド(MBAAm)のモノマー溶液(AAm+MBAAm 8%w/v)、AAm/MBAAm 10/1、モル/モル)と、濃度が各々0.1%、0.5%及び1.0%(w/v)となるように混ぜた。過硫酸アンモニウム(APS)及びN,N,N’,N’−テトラメチレンエチレンジアミン(TEMED)の開始剤系(全モノマー濃度が1.0%w/v(AAm+MBAAm))を加えた後、該反応混合物を、Kaldness担体が充填されたシリンジに注入し、−20℃で1時間凍結した。−12℃にて一晩、凍結したまま維持した後、製造された該酵母細胞固定化ミニカラムをシリンジから取り外し、ミニカラムを互いに分離するために冷凍カットし、室温で解凍した。該ミニカラムは、続いて勢いよく攪拌しながら水で洗浄し、次に20mMのトリス‐HCl緩衝液、pH7.2で洗浄した。洗浄したミニカラムは、オーブン中にて、30℃及び60℃で一晩乾燥させた。該乾燥ミニカラムをガラス瓶中に置き、水中で再膨潤させた。このようにして製造、乾燥、最膨潤させた後の固定化酵母細胞の生存率を、以下のように見積もった:該ミニカラムをガラス瓶中に置き、0.95mM CaCl、5.56mM KCl、137m NaCl、0.8mM KHPO、及び0.41mM NaHCOを有する20mMトリス‐HCl緩衝液、pH7.4より構成される緩衝液で、30分攪拌しながら平衡化した。その後、固定化された細胞ミニカラムを、0.02%ニュートラルレッドを含むグルコース溶液(50mM)を用い、各ミニカラムに1mlのグルコース溶液を通すことにより、平衡化した。最後に、該グルコース溶液(2ml)を、該ミニカラムが入ったガラス瓶に加え、該ガラス瓶をロッキングテーブル上で4時間攪拌した。上清をデカント後、該ミニカラムを更に緩衝液(2ml)にて30分洗浄した。貯えられた上清について、528nmでの吸光率及びpH値を調べた。
【0084】
528nmでの吸光率は、ミニカラム中の固定化酵母細胞の量増加に比例して増加した。0,5%細胞負荷のミニカラムに対し、30℃及び60℃での乾燥の前後に固定化細胞の生存率テストを行ったところ、該温度での固定化された細胞の残存活性は、それぞれ92%及び77%であった。
【0085】
1%細胞負荷ミニカラムのSEM画像により、該酵母細胞が重合体ネットワーク中に取り込まれていることが示された。
【0086】
実施例11.
E.Coli細胞固定化アクリルアミドゲルを含むミニカラムの製造
E.Coli細胞を、マクロポーラスゲル含有ミニカラムに固定化し、実施例1に類似して、モノマー濃度6%の溶液から製造した。連続的な凍結アプローチは以下のように使用した:該マクロポーラスゲル・マイクロカラムは、オーブンにて60℃で一晩乾燥させた。ポリ(ビニルアルコール)(PVA)溶液中のE.Coli細胞(1wt%)の懸濁液(6.5wt%、モビオールのグレード20−98のPVA、分子量12500g/モル)を、氷浴中にてゆるやかに攪拌して調製した。乾燥マイクロカラム(20ミクロカラム)をE.Coli細胞懸濁液(30ml)に注入し、氷浴にて30分間、攪拌しながら混ぜ合わせた。細胞懸濁液をデカント後、細胞懸濁液が充填されたマイクロカラムをプラスチックシリンジ(内径12mm)中へと置き、−20℃で1時間凍結させた。−12℃にて一晩、凍結したまま維持した後、該凍結ミニカラムをシリンジから取り外し、冷凍カットして(ミニカラムを互いに分離し)、再びプラスチックシリンジ内に戻し、低温サーモスタッドLAUDA−RK20KP中にて、解凍プログラムを選択し、0.04℃/分の解凍速度で解凍した。その後、該ミニカラムを、620nmでの吸光度がゼロになるまで(細胞浸出がなくなるまで)、水で洗浄した。洗浄した該ミニカラムを、オーブンにて、30℃で24時間乾燥し、まず水中で、次に緩衝液中で再膨潤させた。
形成された該マクロポーラスゲルは、二つの重合系、PVA及びpAAm(PVA/pAAm−IPMN−クライオゲル)から形成されていることから、内部浸透マクロポーラス・ネットワーク(IPMN)を有するモノリスクライオゲルと呼ぶことができる。本ケースでは特に、E.Coli−PVA/pAAm−IPMNゲルが、プラスチック担体の内側に形成された。
【0087】
生存率テストに先立ち、上記EcPVA−pAAm−ミニカラムを、LB培地中にて120rpmにて、攪拌下、37℃で16時間インキュベートすることにより、固定化されたE.Coli細胞を再活性化した。細胞生存率のコントロールは、以下のように行った:テトラゾリウム塩XTT(シグマ、製品番号X4251)(1mg/ml)及び電子メディエーター試薬メナジオン(1.72mg/mlジメチルスルホキシド)の新鮮調製溶液を、使用直前にLB培地と(0.2mlメナジオン/1mlXXT/1.2mlLB培地の割合で)混ぜた。該Ec/PVA−pAAm−粒子は、まず0.2M NaClを有する20mM HEPES、pH7.2緩衝液にて平衡化し、次に新鮮調製した混合物にて平衡化した(混合物2mlを各MG粒子に通過させた)。0.2M NaClを有する20mM HEPES、pH7.2で平衡化したEc/PVA−pAAm−粒子(3st)の決定量が入った瓶に、2mlの混合物を入れ、37℃で2時間インキュベートした。該上清をデカント後、該粒子をロッキングテーブル上にて攪拌しながら、0.2M NaClを有する2mlの20mM HEPES、pH7.2で40分間洗浄した。貯えられた上清画分中のフォルマザン生成物を、470nmで測定した。
【0088】
該生存率テストにより、Ec/PVA−pAAm−ミニカラムにおいて、E.Coli細胞の保持された活性が32%であることが示された。
【0089】
実施例12.
アクリルアミド及び賦形剤を含むミニカラムの製造
アガロースベースのミニカラムは、賦形剤としてセファロース−6B(架橋アガロースゲル、Amersham Pharmacia Biotech AB,ウプサーラ、スウェーデン(現在はGE Healthcare)を高温アガロース溶液に最終濃度20%(w/v)となるように加えたほかは、実施例5に記載の通りに製造した。IDA官能性は、以下の通り導入した:賦形剤を含有する20のミニカラムを、1.0M NaOH中のエピクロロヒドリン(10%、v/v)の懸濁液と、100rpmで攪拌しながら一晩混ぜあわせた。中性pHになるまで水で洗浄した後、該エポキシ活性化ミニカラムを、まず0.5M NaCOで20分処理し、次に、IDAリガンド(1M NaCO中の0.5M、pH10.0)を、100rpmで一晩攪拌しながら、ミニカラムに投与した。最後に該IDA−ミニカラムを、中性pHになるまで水で洗浄した。
【0090】
実施例13.
鋳型として使用するβ‐エストラジオールの分子インプリント(MIP)ビーズとPVAベースのマクロポーラスゲルを含むミニカラムの製造
まずMIPビーズは、以下の手順より製造した:乾燥ガラス瓶(30ml)中で、β−エストラジオール(272mg)を、8mlのアセトニトリルに溶解した。機能性モノマーとして、4−ビニルピリミジン4.27ml及びアゾビス−イソブチロニトリル50mgを加えた。全成分をゆるやかに混ぜ、超音波処理し、ことによると未溶解のβ−エストラジオールを溶解させた。反応混合物は、窒素で5分間パージした。テストチューブをきつく密封し、湯浴(65℃)にて少なくとも20時間暖めた。その後モノリスポリマーを湯浴から取り除き、モノリス粒子を集めるため、チューブを破壊した。粒子は、乳鉢にて手作業で粉砕し、(38−106μmの範囲内のサイズのMIP−粒子を得るため)3ミクロンのテストシーブを通過させ、メタノールで洗浄した。メタノール中に微細MIP−粒子を含んだフラスコは、メタノールが完全に蒸発するまで、ドラフト下に維持した。ソックスレー抽出器にて、乾燥MIP−粒子をメタノールで別々に20時間洗浄し、その後ドラフトにて24時間乾燥させた。
【0091】
製造した該MIP−ビーズ(ビーズサイズ38−106μm)300mgを、濃度5.4%、pH1.0のPVA溶液(モビオールのグレード8−88(Mowiol)、分子量67000g/molのPVA;けん化度88%)4.8mlと混ぜ合わせた。反応混合液は、氷浴で5分間冷却した。架橋剤GA(最終濃度1.25%w/v)を加え、反応溶液を1分間攪拌した。該溶液を(内径12mmで6つのKaldness担体が充填されている)プラスチックシリンジに注入し、−20℃にて凍結した。−12℃にて一晩、凍結のまま維持した後、凍結マクロポーラスゲル−粒子を解凍し、中性pHになるまで水で洗浄した。ロッキングテーブル上にて攪拌しながら、エタノールアミン(0.1Mリン酸Na緩衝液中の0.2M、pH8.2)による処理を、5時間行った。水で洗浄後、形成されたシッフ塩基を還元するため、該ミニカラムを水素化ホウ素ナトリウム溶液(0.1M炭酸Na緩衝液中の0.2M、pH9.5)にて3時間処理した。最後に、該組成MIP/PVA−ミニカラムを、中性pHになるまで水で洗浄した。コントロール実験では、PVA溶液にMIP粒子を加えないという点を除き、該PVA−粒子を上記の通りに形成した。
【0092】
MIP/PVAミニカラムの解析は、以下の通りに行った:該MIP/PVA粒子(6ミニカラム)及びコントロールのPVA−粒子(6粒子)、及び、空のKaldness担体(コントロール)をビーカーに移し、100mLのメタノール:酢酸(4:1v/v)で2時間洗浄し、β‐エストラジオールの痕跡をすべて取り除いた。その後洗浄した該粒子を、100mlのβ‐エストラジオール溶液(0.5mg/mL)を含むビーカーに移し、120rpmで24時間攪拌した。2時間後、18時間後、及び24時間後に、1mlアリコットをとり、HPLCで解析した。その後、該粒子を、100mlの溶出剤(メタノール:酢酸(4:1v/v))を含むビーカーに移し、120rpmで18時間攪拌した。2時間後、18時間後、及び24時間後に、1mlアリコットをとり、HPLCで解析した。
【0093】
結果を下記の表1に示す。
【0094】
【表1】

【0095】
表より、MIP/PVAミニカラムにより、全β−エストラジオールが水から捕獲されたのに対し、コントロールのPVAミニカラムでは、非特異的に72%が捕獲され、空のプラスチック担体では、非特異的なβ−エストラジオールの吸収はなかった、ということがわかった。
【0096】
MIP/PVA及びPVA(コントロール)のSEM画像にて、MIP/PVAミニカラム中の大型の共連続孔と、そこに取り込まれたMIPビーズの断片が示された。PVA(コントロール)のSEMでは、PVA中に、大型の共連続孔と著しい微孔質の孔壁が示された。PVA−ミニカラム(コントロール)により、β−エストラジオールが非特異的に捕獲された理由は、おそらくこれであったと思われる。
【0097】
実施例14.
pAAmミニカラムの力学的安定性の研究
実施例1aから1cで製造したpAAmミニカラムの力学的安定性を、400rpmで攪拌した際に、プラスチックハウジング内部にクライオゲルが保持される能力として評価した。400rpmでの長時間の攪拌では、密度がより高いゲルマトリクス(すなわち実施例1cのミニカラム)ほど、質量減少がより少ないことが示された。実施例1aのミニカラムの70%以上が、400rpmでの強力攪拌により破壊された。実施例1bのミニカラム及び実施例1cのミニカラムでは、400rpmでの攪拌により、最初の10日間で、それぞれ約12%及び19%の質量減少が観察された。その後は攪拌をしても有意なゲル質量減少は起こらず、プラスチックハウジングが、強力な攪拌によって起こるずり応力に対する保護の役目をすることが示された。種々のモノマー/ポリマー前駆体から製造された、本発明の他の幾つかのミニカラムの、400rpmでの強力攪拌に対する持ち応えについての比較を、下の表2に示す。
【0098】
【表2】

【0099】
実施例15.
Cu(II)のバッチ様式吸着
バッチ吸着実験は、5.5g(若しくは10本のミニカラム)の、実施例2のIDA−pAAmミニカラム(モノマー濃度7.0%及び11.5%)を、種々の開始濃度(100mg/L及び1000mg/L)Cu(II)水溶液10mlと、100rpmでの攪拌下で接触させることにより行った。種々の時間間隔で吸着後、各サンプル中の残留のCu(II)濃度を、原子吸光分析法により決定した。Cu(II)‐イオンの取り込みは、初期濃度(mg/L)及び平衡時の濃度(mg/L)をそれぞれC、Cとして、式:
取り込み、% =[(C−C)/C]x100
を用いて計算した。両型のミニカラムとも、ミニカラムによるCu(II)の吸着は、20分未満で平衡状態に達したが、11.5%型の方が、幾分遅かった。吸着した金属イオンは、EDTA若しくは酸処理により、迅速に取り除き、再生した。
【0100】
実施例16.
リゾチームのバッチ吸着
実施例15で製造したCu(II)が吸着したミニカラムへの、リゾチームの結合は、以下のように行った:20mM トリス‐HCl、pH7.0中のリゾチーム溶液(0.2mg/ml)10mlを、実施例15のミニカラム(モノマー濃度7.0%)5.5g(若しくは10本)に、100rpmで1時間攪拌しながら付した。各サンプル中の残留蛋白濃度は、280nmでの分光測定にて決定した。リゾチームの取り込みは、初期濃度(mg/ml)及び平衡時の濃度(mg/ml)をそれぞれC、Cとして、式:
リゾチームの取り込み、% =[(C−C)/C]x100
を用いて計算した。このようにして計算したリゾチームの取り込み率は13.4%であった。
【0101】
実施例17.
カルボキシ改変ラテックス粒子のバッチ吸着
直径3μmのカルボキシ改造ラテックス粒子(これらの粒子は、主にポリスチレン(95−99%)から構成され、副次的に酸性モノマー、典型的にはアクリル酸が表面にカルボキシル基を加えるのに使用される)(製造者:Seradyn,インディアナポリス、USAからのデータ)の、キトサンベースのミニカラムへの結合は、以下の通りに行った:20mM トリス‐HCl、pH7.0中に分散したラテックス粒子(620nmでの吸光度0.18)を、実施例4で製造したキトサンベースのミニカラム5.5g(又は10本)に、100rpmでの攪拌下で付した。種々の時間間隔で吸着後、各サンプル中の残留のラテックス濃度を、620nmでの分光測定にて決定した。ラテックス粒子の取り込みは、初期溶液(mg/ml)及び平衡時の溶液(mg/ml)の620nmでの吸光度をそれぞれA、Aとして、式:
ラテックスの取り込み、% =[(A−A)/A]x100
を用いて計算した。100rpmで1時間攪拌後、1‐Cts‐PC及び0.5‐Cts‐PCのそれぞれに、該ラテックス粒子の74%超及び56%超が吸着した。
【0102】
実施例18.
酵母細胞及びE.Coli細胞のバッチ吸着
酵母細胞及びE.Coli細胞のイオン交換ミニカラムへの結合は、以下のように行った:20mM トリス‐HCl、pH7.0中の酵母細胞及びE.Coli細胞の懸濁液(620nmでの吸光度は0.08及び0.1に相応)を、実施例3で製造したミニカラムに、100rpmでの攪拌下で付した。これらの条件下でゲル表面上に正電荷を帯びている該イオン交換ミニカラム(実施例3)に対し、酵母細胞及びE.Coli細胞のそれぞれ69%超及び87%超が結合した。
【0103】
実施例19.
充填層吸着実験
当初は流動層クロマトグラフィー用に設計されたガラスカラム(30x5.0cmスケール)に、実施例2で製造したミニカラム(モノマー濃度7.0%)を充填した(ベッド容積0.5L)。上部の可動アダプターを装着後、該カラムをポンプに繋いだ。可動相(脱イオン水)は、約60cm/時間の流速で上向きにカラムに通した。銅溶液は、所定濃度にて、二つの異なる流速(5ml/分及び20ml/分、15cm/時間及び60cm/時間に対応)で、カラムへ上向きにポンピングした。サンプル(容量250ml)を集め、原子吸光分析法によりCu(II)含有量を解析した。吸収されたCu(II)イオンは、0.1M EDTA溶液にて、カラムからアップダウンモードにて脱着した。溶出液中ではCuが高度に濃縮され、Cuを濃縮した元の溶液からは、銅含有量が枯渇した。
【0104】
実施例20.
細胞培養のためのゼラチン‐クライオゲル・ミニカラムの製造
実施例1のエポキシ含有超マクロポーラス・モノリスクライオゲル(モノマー濃度5.0%から製造)は、以下のように処理した。クライオゲル含有ミニカラムを詰めた100mlカラムを、まず水を300ml、次に0.5MのNaCO(300ml)を、流量2ml/分でカラムに通すことにより洗浄した。次に、エチレンジアミン(0.2MのNaCO中、0.5M;300ml)を流速1ml/分にて4時間、再循環モードでクライオゲルカラムに通した。pHが中性近くになるまで水で洗浄後、該カラムを、300mlの0.1Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.2)にて洗浄した。0.1Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.2)中のグルタルアルデヒド溶液(5%v/v;300ml)を、流速1ml/分にて、再循環モードで、該カラムに一晩通した。該カラムはその後、まず水にて、次に0.1Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.2)にて洗浄した。機能的アルデヒド基を持つ、誘導体化された該マトリクスを、ゼラチンの架橋に使用した。0.1Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.2)中の、冷水魚の皮膚のゼラチンの溶液(5mg/ml;300ml)を、4℃にて、24時間、該カラムの中を循環させた。最後に、該蛋白質と該アルデヒ含有マトリクスの間に形成されたシッフ塩基を還元するため、新鮮調製したNaBH溶液(炭酸カルシウム緩衝液(pH9.2)中、0.1M;300ml)を該カラムに付した。
【0105】
アクリルアミド・モノリスクライオゲルマトリクス上に固定化されたゼラチンの量は、ビシンコニン酸(BCA)方法(Smith, P. K.; Krohn, R. I.; Hermanson, G. T.; Mallia, A. K.; Gartner, F. H.; Provenzano, M. D.; Fuji- moto, E. K.; Goeke, N. M.; Olson, B. J.; Klenk, D. C. (1985) Measurement of protein using bicinchoninic acid. Anal. Bio- chem. 150: 76-85)により決定した。Cゼラチン・クライオゲル断片を担体から機械的に取り除き、凍結乾燥した;種々の重さの該ゲルを、ボルテックス振盪して、0.5mlの水に懸濁した。別々の重さの該ゼラチンゲル懸濁液に、1mlのBCA溶液を添加し、該混合物を、37℃で30分間インキュベートした。該サンプルを遠心後、562nmでの吸光度を測定した。未変性のアクリルアミドゲルを用い、適切なコントロールを取った。比較のため、乾燥ゼラチンゲル断片も直接BCA溶液処理し、上清に対して、吸光度を判断した。未変性のアクリルアミド・クライオゲルにゼラチンを定量的に負荷することにより、標準曲線を作成し、同様の条件にて、吸光度を測定した。
【0106】
実施例21.
細胞培養のためのゼラチン‐クライオゲル・ミニカラムの滅菌
実施例20によるクライオゲル含有ミニカラムが充填された該カラムは、30%エタノール(500ml)にて、無菌条件下で1時間洗浄した。該30%エタノール溶液を、続いて70%エタノール(500ml)に置き換え、ゲルを無菌条件下で2時間振盪した。その後、該ゲルを滅菌水でしっかりと洗浄し、痕跡エタノールを完全に取り除いた。ゼラチン‐クライオゲル・アフィニティカラムは、滅菌PBS中にて平衡化した。
【0107】
実施例22.
Cu(II)−IDAアクリルアミド・クライオゲル吸着剤の製造
実施例21のエポキシ含有超マクロポーラス・モノリスクライオゲルを、30mlの0.5M NaCOで30分洗浄した。次に該モノリスをIDA溶液(1M NaCO中の0.5M、pH10.0;30ml)にて平衡化した。さらに、該ゲルを、IDA溶液中にて室温で48時間継続的に振盪しながらインキュベートした。該IDAアクリルアミド・クライオゲルは、pH8.0になるまで蒸留水で徹底的に洗浄した。0.1M CuSO溶液30mlを該モノリスに加えることにより、該IDAクライオゲルへ銅を付した。2時間カップリングを進行させた。最後に、未結合の銅を除去するため、該ゲルを水で徹底的に洗浄し、続いて、ゆるく結合した銅を取り除くため、該ゲルをイミダゾール緩衝液(20mM HEPES及び0.2M NaCl中の15mM、pH7.0)にて洗浄した。
【0108】
ゼラチン‐クライオゲルマトリクス上でのヒト接着細胞株の増殖
実施例23.
ヒト線維芽肉腫細胞株HT1080の培養
ヒト線維芽肉腫細胞株HT1080は、10%ウシ胎仔血清、1.2mg/ml炭酸水素ナトリウム、10KIU/mlアプロチニン、及び0.2%(v/v)カナマイシンを含むDMEMにて、培養した。
【0109】
実施例21の該無菌ゼラチン−クライオゲル(ベッド容積100ml)を、500mlの無菌リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄した。次に該ゲルを300.0mlの培養培地で平衡化した。培養培地に懸濁したヒト腎臓細胞HT1080(5.0ml、1x10細胞)を、該ゼラチン‐クライオゲルマトリクスに付し、細胞が該モノリスカラムベッド中へと完全に移動する前に、100mlのフロースルーを集めた。カラムの出口を閉め、細胞が効率よくマトリックスへ結合できるように、該カラムを、37℃、5%二酸化炭素環境下にてインキュベートした。CODインキュベーターから細胞培養装置への二酸化炭素の交換のため、該カラム中の入口にフィルター(0.2μm)を設けた。6時間後、該細胞培養装置(細胞が接着したゼラチン‐クライオゲルカラム)を、1.2mg/ml炭酸水素ナトリウム、10KIU/mlアプロチニン、0.2%(v/v)カナマイシン、及び2%若しくは10%ウシ胎仔血清が補充されたDMEM培地を含む、500mlの培地リザーバーにつないだ。該リザーバーからの培地を、4ml/分の低流速で該カラム中を循環させた。該ゼラチン‐クライオゲル細胞培養装置からの、初期フロースルー(100ml)を集め、未接着細胞が存在するか解析した。生体分子(ウロキナーゼ)を継続的に生成させるため、該細胞培養バイオリアクター装置は、培地をリアクター中で循環させ、18日間継続して稼動させた。該生体分子を統合的(integrated)に捕獲するため、該生体分子の生成レベルが最大値に到達したときに、ウロキナーゼ捕獲のための無菌Cu(II)‐IDAポリアクリルアミド・クライオゲルカラム(ベッド容積5.0ml)をつないだ。該捕獲カラムは、該細胞培養装置と該培地リザーバーの間に置いた。統合的細胞培養バイオリアクター全体を、4週間継続して稼動させた。該細胞の増殖及び分泌蛋白質をモニターするため、該細胞培養装置から、一定の時間間隔(24時間)ごとに、2mlのサンプルを引き出した。
【0110】
実施例24.
HT1080細胞株の細胞成長及び生産物の分泌
実施例21で製造したクライオゲル含有ミニカラムの、クライオゲルマトリクス上に固定化されたゼラチンの量は、2.1mg ゼラチン/ml クライオゲルであった。該細胞培養装置にて、約4週間細胞増殖させた後、該細胞が付着した該クライオゲルマトリクスを、該担体から機械的に取り除き、1〜2mmサイズの断片に遊離させた。該細胞は、0.2%トリプシンEDTA溶液処理により、該クライオゲルから取り除いた。細胞数と生存率をTrypan Blue色素排除法により調べた。トリプシンEDTA処理後も、多数の細胞が該ゼラチン−クライオゲルに接着しているのが見られたため、該クライオゲル・モノリス上にて増殖している細胞の数についての、正確な細胞数のカウントは困難であった。しかしながら、回収されカウントされた該細胞の数は1.5x10細胞であった。該クライオゲルから溶出した該細胞を、続いてTフラスコに播種した。Tフラスコ表面への細胞の接着は、通常の細胞培養での接着(3〜5時間)と比較すると、いくらか長期間(20〜24時間)であるのが観察された。しかしながら、該細胞の接着プロファイルはよく維持された。7日間でコンフルーエントな単層が形成された。該ゼラチンークライオゲルモノリスから溶出され、通常の細胞培養フラスコにて再培養された該細胞には、形態学的変化が見られなかった。
【0111】
該マトリクスから剥離した細胞からの蛋白質生成物の正常な生成が観察された。該ゼラチン−クライオゲル骨格上に組織シートとして増殖した該細胞を、走査型電子顕微鏡研究にて解析を行った(図2)。
【0112】
図1は、該ゼラチン−クライオゲル細胞培養装置にて増殖した細胞による、ウロキナーゼの継続生成を示している。該細胞は、クライオゲル含有ミニカラムが入った100mlカラムパケット上にて、18日間継続的に増殖した。マトリクス上にて培養されている該細胞の間に該培地を流速4ml/分で循環させ、ウロキナーゼ活性及び該マトリクス骨格から遊離した細胞の検出のため、一定時間ごとに、サンプルを引き出した。生成レベルは、最初の96時間のインキュベーション内で鋭く増加し、細胞培養上清の全生成レベルは、細胞培養バイオリアクターを18日間継続で稼動させた後には約300PU/mlまで増加した。ウロキナーゼレベルについては、途中、減少が見られた。これはおそらく、該細胞株によるプラスミノーゲンアクチベーターインヒビター分泌レベルの増加によるものであるかもしれない(Wun T C; Palmier M 0; Siegel N R; Smith C E (1989) Affinity purification of active plasminogen activator inhibitor-1 (PAI-I) using immobilized anhydrourokinase . Demonstration of the binding, stabilization, and activation of PAI-I by vitronectin. (J. Biol. Chem. 264: 7862-8.))。該インヒビターは、ウロキナーゼと複合体を形成してしまうため、該酵素の実際のレベルを見積もるのは難しい。
【0113】
実施例25.
ヒト大腸癌細胞株HCT116の培養
ヒト大腸癌細胞株HCT116を、10%ウシ胎仔血清及び0.2%カナマイシン(v/v)を含むマッコイ培地にて培養した。
【0114】
実施例21の該無菌ゼラチン−クライオゲル(ベッド容積4〜5ml)を、全液体が該ゲルを通過するように、プラスチックコンテナーに置き、30.0mlの無菌リン酸緩衝生理食塩水(PBS)にて洗浄した。次に該ゲルを15.0mlの培養培地にて平衡化した。培養培地に懸濁したヒト大腸癌細胞株HCT116(5.0ml、1x10細胞)を該ゼラチン−クライオゲルマトリクスに播種し、5.0mlのフロースルーを集めた。カラム出口を閉鎖し、細胞が該マトリクスに結合するよう、37℃、5%二酸化炭素環境下にてカラムをインキュベートした。該CODインキュベーターから該細胞培養装置への二酸化炭素の交換のため、カラム中に、フィルター(0.2μm)付入口を設けた。6時間後、細胞が付着した該ゼラチンークライオゲルカラムを、10%ウシ胎仔血清及び0.2%カナマイシン(v/v)を添加したマッコイ培地が入った500mlの培地リザーバーに繋いだ。該リザーバーからの培地は、該カラム内を流速0.2ml/分で循環させた。該ゼラチン・クライオゲルカラムからの初期フロースルー(5.0ml)を採取し、非接着細胞の存在について解析した。生体分子(ウロキナーゼ)を継続的に生成させるため、該細胞培養バイオリアクター装置を、15日間連続で稼動させた。引き続いて、該細胞の増殖及び排泄蛋白質をモニターするため、該細胞培養装置から、一定の時間間隔(24時間)ごとに、2mlのサンプルを引き出した。
【0115】
コントロールとして、モノクローナル抗体を分泌する非付着性抗マウスC5マウス細胞株BB5.1を、マルチウェル細胞培養プレート中の該ゼラチンークライオゲルディスク(厚さ2mm、直径10mm)に付して、10%ウシ胎仔血清及び0.2%カナマイシン(v/v)含有のDMEMグルタマックス−I培地にて該細胞を増殖させた。該細胞は、該ゼラチンークライオゲル骨格に付着しなかった。しかしながら、該細胞は通常の組織培養フラスコにて観察される増殖と同様、通常の懸濁培養のように増殖した。
【0116】
実施例26.
HCT116細胞株の細胞増殖と生成物の分泌
培地循環なしでのインキュベーションの最初の6時間後では、実施例25の細胞培養装置からは、いかなる細胞の流出も観察されなかった。8日間増殖後、該細胞培養装置から断続的に生細胞が流出するのが観察され、該クライオゲル細胞支持体上でのフルコンフルエンスが示された。該細胞を該細胞培養装置にて約15日間増殖後、該細胞を有する該クライオゲルマトリクスを該シリンジから取り外し、ディスク(1〜2mm)を切断した。0.2%トリプシンEDTA溶液処理により、該細胞を該クライオゲルから取り除いた。細胞数と生存率はTrypan Blue色素排除法により調べた。HT1080細胞株に比べ、該ゲル5mlにつき5x10細胞のオーダーと、高い細胞数が観察された。またも大量の数の細胞が該ゲルから離脱せずに残留した。該細胞も、該ゼラチンークライオゲル骨格上に組織シートとして増殖しており、走査型電子顕微鏡研究にて解析を行った。
【0117】
多くのヒト癌細胞株は、ウロキナーゼプラスミノーゲンアクチベーターを、種々のレベルで排泄する。HCT116は、他の癌細胞株に比べ、プラスミノーゲンアクチベーターを高いレベルで生産すると報告されている(Boyd, D., Florent, G., Kim, P. and Brattain, M. (1988) . Determination of the levels of urokinase and its receptor in human colon carcinoma cell lines . Cancer Res. 48: 3112-3116)。従って本ケースにおいても、我々は、該細胞株の継続的な増殖及び蛋白質排泄プロファイルを評価するための排泄蛋白質として、ウロキナーゼをモニターした。
【0118】
図2は、該ゼラチン−クライオゲル細胞培養装置上で増殖した細胞による、ウロキナーゼの継続的な生成を示している。該細胞は、クライオゲル含有ミニカラムが充填された100mlのカラム上にて、18日間継続的に増殖した。該培地は、マトリクス上にて培養されている該細胞の間を、流速4ml/分で循環させ、ウロキナーゼ活性及び該マトリクス骨格上から脱離した細胞の検出のため、一定時間ごとに、サンプルを引き出した。生成レベルは最初の48時間の細胞増殖中に鋭く増加し、その後一定レベルのウロキナーゼ活性が観測された。またもやプラスミノーゲンアクチベーターインヒビターの分泌及び生産物のフィードバック阻害により、消費したブロス中のウロキナーゼの実際のレベルを観察することが難しかった。
【0119】
実施例27.
排泄蛋白質の統合的生産及び分離
実施例26のクライオゲル細胞培養バイオリアクター及び栄養物の継続的供給を伴う排泄蛋白質のアフィニティー捕獲に基づく統合セットアップ( set-up )をここに記載する。ヒト腎臓細胞株HT1080株を、細胞培養バイオリアクター上にて増殖させ、該バイオリアクターを、2%FCを補充した培地を循環させながら、32日間連続で稼動させた。培地循環なしでは、6時間のインキュベーション以内に、該細胞の該ゲルマトリクス上への完全な付着が観察された。該クライオゲルマトリクス上での最初の10日間の細胞培養において、ゲルからの細胞の流出は観察されなかった。その後、該細胞バイオリアクターからのフロースルー(flow throw)中に、細胞が断続的に観察され、該細胞が該ゲルマトリクス上でコンフルエンスであることが示された。しかしながら、15日後にセットアップから採取されたサンプルにて多数の生細胞が観察されはじめたことから、この点周辺において、該カラムが細胞で完全に飽和していることが示された。
【0120】
図3は、該細胞株からの継続的なウロキナーゼ分泌の、統合アフィニティー捕獲ステップを用いた蛋白生成物の同時回収を伴う、完全プロファイルを示す。該細胞は、該クライオゲルマトリクス上にて、32日間増殖した。生成されたウロキナーゼは、50mlのCu2+‐AAmクライオゲルマトリクス上で捕獲した。該図中の矢印は、蛋白質捕獲カラムの交換を表している。360及び408時間目の太い遮断矢は、50mlの捕獲カラム二つが同時に連続して統合したことを示している。流速0.2ml/分にて368時間連続稼動後、培地の色の変化の観察や、生成カラムからの該サンプルの顕微鏡検査により観察されたように、培地リザーバー及びウロキナーゼ生成カラム中の細胞デブリスの濃度が著しく増加した。そして432時間後に、該培地リザーバーを新しい物に交換した。ウロキナーゼ活性及び該マトリクス骨格(ミニカラム)から脱離した細胞の検出のために、生成カラム及び該捕獲カラムから、サンプルを引き出した。ウロキナーゼ生成プロファイル及び該酵素の同時捕獲から、蛋白生成物が、該細胞装置から継続的に分泌されていることが明らかである。循環培地からの排泄蛋白質を該蛋白捕獲吸着剤が除去したため、ウロキナーゼのレベルは、該培地ブロス中にて著しく低下した。該捕獲カラムをセットアップから取り除くと、このレベルは再び増加したことから、該蛋白生成物が定常的に放出されていること、そしてフィードバック阻害が低下したことを示している。第18日目に培地を交換すると、該細胞培養バイオリアクターは、また最初と同レベルのウロキナーゼを生成した。本ケースにおけるウロキナーゼの全レベル(約150PU/ml)は、実施例24のHCT1080バイオリアクターの全レベル(約300PU/ml)と比較すると、低い。これはおそらく、蛋白質分泌レベルが高かった通常の10%FCSに比べ、今回使用した培地が低血清レベル(2%FCS)であったからではないかと思われる。図4は、統合セットアップ中の捕獲蛋白生成物のSDS‐PAGEを示している。図中において、以下が示されている:
【0121】
レーン1 バイオラド、プレステインド・ブロードレンジ・プロテインマーカー
レーン2 ロード(HT1080細胞培養からの10%血清を含む培地)
レーン3 Cu(II)‐IDAセファロースカラムからの、ブレイクスルー画分
レーン4 Cu(II)‐IDAセファロースカラムからの、ピーク画分(200mM イミダゾール、pH7.4での溶出)
レーン5 Cu(II)‐IDAポリアクリルアミド・クライオゲルカラムからの、ブレイクスルー画分
レーン6 Cu(II)‐IDAポリアクリルアミド・クライオゲルカラムからの、ピーク画分(200mM イミダゾール、pH7.4での溶出)
【0122】
矢印は、ウロキナーゼの、低分子量形及び高分子量形を表している。
【0123】
該ゲルから回収された蛋白質は、低分子型及び高分子型のウロキナーゼを示した。培地中の主要蛋白質アルブミンは、該アフィニティー捕獲フィルターに結合することなく、従って該培地中で再循環された。
【0124】
参考文献
Mao D., Edwards J. R., Kuznetsov A. V. and Srivastava R. K. (2004) Three-dimentional numerical simulation of a circula- tion fluidized bed reactor for multi-pollutant control. Chemical Engineering Science 59, 4279-4289.
Masque N., Marce R. M. and Borrull F. (1998) New polymeric and other types of sorbents for solid-phase extraction of po- lar organic micropollutants from environmental water. Trends in Analytical Chemictry 17(8), 384-394.
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Poole C. F. (2003) New trends in solid-phase extraction. Trends in Analytical Chemistry 22(6), 362-373.
Rossi D. and Zhang N. (2000) Automating solid-phase extraction: current aspects and future prospects. J of Chromatography A 885, 97-113.
【図面の簡単な説明】
【0125】
【図1】本発明の組成吸着材料が充填された100mlカラムにて継続的に増殖した際の、ヒト腎臓細胞株HT1080による、ウロキナーゼの生成を示している。
【図2】本発明の組成吸着材料が充填された100mlカラムにて継続的に増殖した際の、ヒト大腸癌細胞株HCT116による、ウロキナーゼの生成を示している。
【図3】ヒト腎臓細胞株HT1080により分泌されたウロキナーゼの生成と捕捉を示している。該細胞は本発明の組成吸着材料上にて増殖し、生成されたウロキナーゼは、本発明の別の組成吸着材料にて捕捉された。
【図4】本発明の組成吸着材料が充填されたIMAC(固定金属アフィニティークロマトグラフィー)捕捉カラムを用いた、HT1080細胞培養からの、ウロキナーゼ分離についてのSDS−PAGEである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
A)密な不溶性材料のハウジング、並びに
B)前記ハウジング内に収容されたポーラスモノリスポリマーゲル
を含む組成吸着材料であって、
前記ハウジングが、その中に前記ポーラスモノリスポリマーゲルと周囲の間での流体の連絡のための開口を有し、且つ
前記ポーラスモノリスポリマーゲルが前記ハウジングの内部空間を占有し、且つ前記ハウジング内で力学的手段によりその場に保持される、
組成吸着材料。
【請求項2】
前記力学的手段が、該ハウジングの内部表面上の不規則性を含む、請求項1に記載の組成吸着材料。
【請求項3】
前記ハウジングが表面中に分布された複数の開口を有し、前記ポーラスモノリスポリマーゲルの一部がそこへ伸展することにより、前記開口が前記力学的手段として機能する、請求項1に記載の組成吸着材料。
【請求項4】
前記ハウジングが実質的に開口末端シリンダーの形であり、且つ前記力学的手段が、前記ハウジング内で複数の開口末端ダクト形空間を規定し、該シリンダーの開口末端の一方からもう一方の方向へと伸展する棒格子である、請求項1に記載の組成吸着材料。
【請求項5】
前記ポーラスポリマーゲルがマクロポーラス構造物である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成吸着材料。
【請求項6】
前記ポーラスポリマーゲルがクライオゲルである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成吸着材料。
【請求項7】
前記クライオゲルが、
N−置換及び非置換(メタ)アクリルアミド;
N−アルキル置換N−ビニルアミド;
ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;
ビニルアセテート;
ビニルアルコールのアルキルエーテル;
環置換スチレン誘導体
ビニルモノマー;
(メタ)アクリル酸及びその塩;
ケイ酸;並びに
重縮合によりポリマーを形成できるモノマー;
からなる群より選択される少なくとも一つの水溶性モノマーの水溶液を、水性溶媒の結晶化点よりも低い温度であって、該系にて、溶媒が一部凍結し、溶媒の非凍結画分にて溶解物資が濃縮されクライオゲルを形成するような温度での、凍結下で重合化させることにより得られる生成物を含む、請求項6に記載の組成吸着材料。
【請求項8】
前記クライオゲルが、カオトロピック剤、及び、仮に必要であれば若しくは所望であれば架橋剤の存在下にて、少なくとも一つの合成ポリマー若しくは天然ポリマーのクライオゲル化により製造された生成物を含む、請求項6に記載の組成吸着材料。
【請求項9】
前記の少なくとも一つの合成ポリマーが、架橋型ポリ(ビニルアルコール)である、請求項8に記載の組成吸着材料。
【請求項10】
前記の少なくとも一つの天然ポリマーが、多糖類及び蛋白質からなる群より選択される少なくとも一つのメンバーである、請求項8に記載の組成吸着材料。
【請求項11】
前記の少なくとも一つの天然ポリマーが、アガロース、寒天、カラギーナン、澱粉、セルロース及び各々の誘導体、並びにキトサンからなる群より選択される、請求項10に記載の組成吸着材料。
【請求項12】
前記ポーラスポリマーゲルが、リガンド、荷電基及び疎水基からなる群より選択されるメンバーをその中へ導入することにより改変された、請求項1〜11のいずれか1項に記載の組成吸着材料。
【請求項13】
該リガンドが、ペプチド、金属キレート、糖誘導体、ホウ酸塩誘導体、酵素基質及びそれらのアナログ、酵素阻害剤及びそれらのアナログ、蛋白質阻害剤、抗体及びそれらのフラグメント、並びにチオール含有物質からなる群より選択される、請求項12に記載の組成吸着材料。
【請求項14】
前記クライオゲルが、金属、金属酸化物、イオン交換粒子、疎水性吸着剤、及び粒子形の分子インプリントポリマーからなる群より選択される賦形剤を導入することにより改変された、請求項7〜11のいずれか1項に記載の組成吸着材料。
【請求項15】
重合が鋳型分子の存在下にて起こることで分子インプリントポリマーが形成される、請求項14に記載の組成吸着材料。
【請求項16】
請求項7で定義された組成吸着材料の製造のためのプロセスであって、該プロセスが、
N−置換及び非置換(メタ)アクリルアミド;
N−アルキル置換N−ビニルアミド;
ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;
ビニルアセテート;
ビニルアルコールのアルキルエーテル;
環置換スチレン誘導体
ビニルモノマー;
(メタ)アクリル酸及びその塩;
ケイ酸;並びに
重縮合によりポリマーを形成できるモノマー;
からなる群より選択される少なくとも一つの水溶性ポリマーの水溶液を、開口を有し、製造されたモノリスクライオゲルをその場に保持する力学的手段を有する密な不溶性材料のハウジング中にて、水性溶媒の結晶化点よりも低い温度であって、該系中の溶媒が一部凍結し、溶媒の非凍結画分にて溶解物資が濃縮されクライオゲルを形成するような温度での、凍結下で重合化させることを含む、
組成吸着材料の製造のプロセス。
【請求項17】
請求項8にて定義された組成吸着材料を製造するためのプロセスであって、開口をその中に有し、製造されたクライオゲルをその場に保持する力学的手段を有する密な不溶性材料のハウジング内にて、合成ポリマー及び天然ポリマーからなる群より選択される少なくとも一つの物質が、カオトロピック剤及び仮に必要であれば架橋剤の存在下にてクライオゲル化に付される、組成吸着材料の製造プロセス。
【請求項18】
アガロースのアルカリ水溶液を該ハウジングに注入し、−10℃を下回る温度範囲にて凍結させることにより、アガロースのクライオゲルの形成を可能にする、請求項17に記載のプロセス。
【請求項19】
ポリ(ビニルアルコール)及びグルタル酸ジアルデヒドの反応混合物の酸性水溶液を該ハウジングに注入し、0℃を下回る温度範囲にて凍結させることにより、ポリ(ビニルアルコール)の架橋型クライオゲルの形成を可能にする、請求項17に記載のプロセス。
【請求項20】
キトサン水溶液を該ハウジングに注入し、0℃を下回る温度範囲にて前記溶液が凍結するまで冷却し、その後、0℃を下回る温度範囲で、グルタル酸ジアルデヒドのエタノール溶液によりキトサンが架橋され、架橋型キトサンのクライオゲルの形成を可能にする、請求項17に記載のプロセス。
【請求項21】
請求項16〜20のいずれか1項で製造された組成吸着材料に、ゲル形成化合物の水溶液を、単体で又は賦形剤若しくは細胞と混合して加え、得られた該混合物を前記溶液が凍結するまで0℃を下回る温度範囲に冷却し、その後形成された二重凍結クライオゲルをその後に解凍する更なるステップを含む、請求項16〜20のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項22】
気体若しくは液体から汚染物質を取り除くための、請求項1〜15のいずれか1項に記載の組成吸着材料の使用。
【請求項23】
ポーラスポリマーゲル中の構造物に結合する分子の濃縮若しくは分離のための、請求項1〜15のいずれか1項に記載の組成吸着材料の使用。
【請求項24】
培地中での物質の生物変換のために、組成吸着材料と接触するように生体触媒と共に負荷された、請求項1〜15のいずれか1項に記載の組成吸着材料の使用。
【請求項25】
該生体触媒が、酵素及び細胞からなる群より選択されるメンバーである、請求項24に記載の使用。
【請求項26】
細胞の固定化のための、請求項1〜15のいずれか1項に記載の組成吸着材料の使用。
【請求項27】
細胞培養における、請求項1〜15のいずれか1項に記載の組成吸着材料の使用。
【請求項28】
細胞懸濁液を、請求項1〜16のいずれか1項に記載の組成吸着材料が満たされたカラムに付し、該細胞が該組成吸着材料に効果的に結合できるよう、該カラムを十分時間インキュベートし、その後培養培地を該カラムを通して循環させる、請求項27に記載の使用。
【請求項29】
哺乳動物細胞が付着した支持材料を含むバイオリアクター中にて、液体培養培地を前記哺乳動物細胞に継続的に接触させることにより、哺乳動物細胞を培養する方法であって、請求項1〜15のいずれか1項にて定義された組成吸着材料が前記支持材料として使用され、前記哺乳動物細胞が前記組成吸着材料の該孔内に収容されていることを特徴とする、哺乳動物細胞の培養方法。
【請求項30】
培地リザーバーからの液体培養培地をバイオリアクターを通して継続的に循環させる、請求項29に記載の哺乳動物細胞の培養方法。
【請求項31】
バイオリアクターから遊離した標的生成物を、培養培地が培地リザーバーに戻る前に捕獲するために、バイオリアクターを離れる培養培地を、請求項1〜15のいずれか1項に記載の組成吸着材料を含むアフィニティー吸収体を通過させる、請求項30に記載の哺乳動物細胞の培養方法。


【図2】
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【図3】
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【図1】
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【図4】
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【公表番号】特表2009−530102(P2009−530102A)
【公表日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−501387(P2009−501387)
【出願日】平成19年3月20日(2007.3.20)
【国際出願番号】PCT/SE2007/050175
【国際公開番号】WO2007/108770
【国際公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【出願人】(508283989)プロティスタ バイオテクノロジー アーベー (1)
【Fターム(参考)】