説明

組成物および被覆物

【課題】分散安定性に優れ、紫外線および電子線等の活性エネルギー線の照射により導電性と被膜耐性に優れた硬化被膜を提供することができ、さらに有機溶剤を含有しないため作業環境および地球環境保全上も優れるポリアニリン組成物の提供。
【解決手段】(a)窒素および不飽和二重結合を含有する化合物、(b)ポリアニリンのエメラルジンベース、(c)加熱又は光照射により酸を生成する化合物からなることを特徴とする活性エネルギー線硬化性ポリアニリン組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な導電性有機重合体およびその被覆物に関するものである。さらに詳しくは、本発明は(a)窒素および不飽和二重結合を含有する化合物、(b)ポリアニリンのエメラルジンベースおよび(c)加熱又は光照射により酸を生成する化合物からなることを特徴とする活性エネルギー線硬化性ポリアニリン組成物およびその被覆物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール等の導電性高分子は電解コンデンサ、リチウム電池電極等に応用されている。一般的に導電性高分子は不溶、不融であるため、溶媒やバインダー樹脂中に溶解あるいは分散させることが困難であり、加工性を向上させることが実用化への課題となっていた。
【0003】
ポリアニリンのとり得る形態の一部として、絶縁性である非ドープ状態のエメラルジンベースと導電性であるドープ状態のエメラルジンソルトがあり、ドーピング剤の添加、脱離によりその性状を可逆的に変化させることができる。
【0004】
ポリアニリンは他の導電性高分子とは異なり、ピリジン、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等の一部の非プロトン性極性溶媒に溶解することが知られており、特に絶縁性であるエメラルジンベース状態のポリアニリンはN−メチルピロリドンへの溶解性が高い。このことを利用してN−メチルピロリドン溶液から成形体に加工した後に、ドーピング剤を添加し導電性のポリアニリンを得る方法が特許文献1に開示されている。しかし、この方法によれば、N−メチルピロリドンという有機溶剤を含有するため、乾燥工程を伴うという煩雑さに加えて、作業環境上の問題が生じている。
【0005】
一方で、導電性のエメラルジンソルト状態のポリアニリン粉末を放射線硬化性樹脂に分散させた導電性組成物が特許文献2に開示されている。しかしながら、導電性のエメラルジンソルト状態のポリアニリンにおいては、ポリアニリンの環構造に由来する強い分子間相互作用により放射線硬化性樹脂への分散性が十分ではなく、アクリル系樹脂を分散剤として併用しなければならない。さらに記載されている実施例は何れも有機溶剤を使用しており、上記と同様の問題が生じている。
【0006】
また、特許文献3には重合性二重結合を有するスルホン酸系ドーピング剤を用いた紫外線硬化性のポリアニリン組成物について開示されているが、記載されている実施例は何れも有機溶剤を併用するものであり、上記と同様の問題が生じている。
【特許文献1】特開平3−28229号
【特許文献2】特開平7−278399号
【特許文献3】特開平11−172103号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記問題を解決するために、有機溶剤を使用することなく、簡便な加工が可能であり、その硬化被覆物が優れた導電性と被膜耐性を有し、更には分散安定性の良好な活性エネルギー線硬化性ポリアニリン組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(a)窒素および不飽和二重結合を含有する化合物、(b)ポリアニリンのエメラルジンベースおよび(c)加熱又は光照射により酸を生成する化合物を用いることで、有機溶剤を使用することなく、簡便な加工が可能であり、その硬化被覆物が優れた導電性と被膜耐性を有し、更には分散安定性の良好な活性エネルギー線硬化性ポリアニリン組成物を得ることを特徴とする。
【0009】
すなわち本発明は、(a)窒素および不飽和二重結合を含有する化合物、(b)ポリアニリンのエメラルジンベースおよび(c)加熱又は光照射により酸を生成する化合物からなることを特徴とする活性エネルギー線硬化性ポリアニリン組成物に関するものである。
【0010】
また本発明は、窒素および不飽和二重結合を含有する化合物がアクリロイルモルフォリンであることを特徴とする上記記載の活性エネルギー線硬化性ポリアニリン組成物に関するものである。
【0011】
また本発明は、上記記載の活性エネルギー線硬化性ポリアニリン組成物を被覆してなる被覆物に関するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係わるポリアニリン組成物は、分散安定性に優れ、紫外線および電子線等の活性エネルギー線の照射により導電性と被膜耐性に優れた硬化被膜を提供することができる。また、有機溶剤を含有しないため作業環境および地球環境保全上も優れるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明におけるポリアニリンとは一般的にアニリンの酸化重合体から得られるものであるが、4種の構造を取るとされている。完全還元状態のロイコエメラルジン、ハーフ酸化状態のエメラルジンベースとエメラルジンソルト、および完全酸化状態のペルニグラニリンの4種である。本発明においては、アクリルアミド誘導体に溶解した絶縁性のエメラルジンベースを加熱又は光照射により酸を生成する化合物でドーピングすることにより、容易に導電性のエメラルジンソルトを得るものである。
【0014】
光照射により酸を生成する化合物を添加した場合は、例えば紫外線或いは電子線などの活性エネルギー線を照射すると、生成した酸がエメラルジンベースをドーピングしてエメラルジンソルトに変化し導電性が発現する。また同時に、アクリルアミド誘導体が重合して容易に導電性のポリアニリン硬化皮膜を得ることができる。
【0015】
すなわち導電性のポリアニリン硬化皮膜は、(a)窒素および不飽和二重結合を含有する化合物、(b)ポリアニリンのエメラルジンベースおよび(c)光照射により酸を生成する化合物からなる溶液を基材へ塗工した後に、例えば紫外線或いは電子線などの活性エネルギー線を照射することで得ることができる。紫外線を照射する場合には、光重合開始剤を予め添加しておく必要がある。
【0016】
一方、加熱により酸を生成する化合物を添加した場合は、加熱により生成した酸がエメラルジンベースをドーピングしてエメラルジンソルトに変化し導電性が発現する。次いで、紫外線或いは電子線などの活性エネルギー線を照射することで、容易に導電性のポリアニリン硬化皮膜を得ることができる。
【0017】
すなわち導電性のポリアニリン硬化皮膜は、(a)窒素および不飽和二重結合を含有する化合物、(b)ポリアニリンのエメラルジンベースおよび(c)加熱により酸を生成する化合物からなる溶液を基材へ塗工した後に、加熱によるドーピング工程を経て、例えば紫外線或いは電子線などの活性エネルギー線を照射することで得ることができる。紫外線を照射する場合には、光重合開始剤を予め添加しておく必要がある。
【0018】
本発明において(a)窒素および不飽和二重結合を含有する化合物とは、分子内に窒素および不飽和二重結合を含有するものであれば特に限定されるものではない。例として、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルアセトアミド、N−ビニル−ε−カプロラクタム、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルピリジン、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、アクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−n−プロピルアクリルアミド、N−n−イソプロピルアクリルアミド、N−n−ブチルアクリルアミド、N−イソブチルアクリルアミド、N−sec−ブチルアクリルアミド、N−tert−ブチルアクリルアミド、N−n−ヘキシルアクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド、N−n−オクチルアクリルアミド、N−2−エチルヘキシルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メトキシメチルアクリルアミド、N−イソプロポキシメチルアクリルアミド、N−n−ブトキシメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジn−ブチルアクリルアミド、アクリロイルモルフォリン、アクリロイルピペリジン等が挙げられる。取り扱い上、室温で液状であることが好ましく、ポリアニリンへの溶解性の点で、特にN−ビニルピロリドン、アクリロイルモルフォリンが好ましい。
【0019】
本発明における(b)ポリアニリンのエメラルジンベースは、従来公知の一般的な合成方法で得ることができる。すなわち塩酸、硫酸または硝酸等の無機酸の存在下でアニリンモノマーを酸化剤により酸化重合すると、エメラルジンソルトが生成しこれはキノンジイミン構造単位とフェニレンジアミン構造単位が1:1のモル比で存在する基本骨格を繰り返し単位として含むものである。さらにアンモニア等の塩基で処理することによりドーピング剤の酸が脱離され、エメラルジンベースが得られる。酸化重合は必要に応じて、アニリン誘導体を共重合してもよい。
【0020】
本発明で使用されるエメラルジンベースの重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)のポリスチレン換算で、1,000〜500,000の範囲内にあることが好ましい。重量平均分子量が1,000未満では、ドーピング剤をドープした状態での導電性が低くなりやすく、結果として得られるポリアニリン組成物を被膜とした際の導電性も低くなりやすく好ましくない。一方、重量平均分子量が500,000を超えると、窒素および不飽和二重結合を含有する化合物へのエメラルジンベースの溶解が困難となりやすく好ましくない。重量平均分子量は2,000〜200,000の範囲内がさらに好ましく、最も好ましくは5,000〜100,000の範囲内である。
【0021】
エメラルジンベースおよびアクリルアミド誘導体組成物中、エメラルジンベース含有量は、0.01〜15重量%の範囲内が好ましい。該含有量が0.01重量%未満では、ドーピング剤を添加し導電性を発現させた際の導電性が低くなりやすく好ましくない。一方、15重量%を超えると窒素および不飽和二重結合を含有する化合物へのエメラルジンベースの溶解が困難となりやすく、また濃度が高いことによる溶液増粘が著しくなりやすく好ましくない。該含有量は0.1〜12重量%の範囲内がさらに好ましく、最も好ましくは0.5〜10重量%の範囲内である。
【0022】
本発明において、エメラルジンベースを窒素および不飽和二重結合を含有する化合物に溶解させる際には、ビーズミル、ボールミル、サンドミル 、アトライター、ロールミル、アジテーターミル、ホモジナイザー、高速ミキサー、超音波、振動ミル、ディゾルバー、高速衝撃ミル、ジェットミル、プラネタリーミキサー等を用いることができる。
【0023】
本発明に用いられる(c)加熱又は光照射により酸を生成する化合物は、特に限定されるものではなく、公知のあらゆる化合物が使用できる。これらは単独で使用してもよく、必要に応じて2種類以上を併用してもよい。
【0024】
本発明において加熱により酸を発生させる場合の加熱温度は40〜200℃が好ましく、加熱時間は、1秒〜24時間が好ましい。また、本発明における光とは、可視光、紫外線、赤外線、X線、電子線、α線、γ線等を例示することができ、特にこれらに限定されるものではないが、好ましくは紫外線、電子線である。
【0025】
本発明における酸とは、ブレンステッド酸、ルイス酸を指し、これらはいずれもエメラルジンベースをドーピングすることができる。
【0026】
本発明に用いられる(c)加熱又は光照射により酸を生成する化合物の例として、スルホニウム系酸発生剤、ヨードニウム系酸発生剤、アンモニウム塩系酸発生剤、ジアゾニウム系酸発生剤、スルホン酸エステル系酸発生剤、オキシムスルホネート系酸発生剤が挙げられる。
【0027】
本発明に用いられるスルホニウム系酸発生剤は、一般式(1)で表される。
【0028】
一般式(1)
【0029】
【化1】


一般式(1)で表されるR、R、Rは、それぞれ独立して、フェニル基、炭素数1〜8のアルキル基で置換されたフェニル基、炭素数1〜8のヒドロキシアルキル基で置換されたフェニル基、炭素数1〜8のアルコキシ基で置換されたフェニル基、フェノキシ基、フェナシル基、アルコキシカルボニル基、フッ素、塩素、臭素等のハロゲンで置換されたフェニル基、フェニルチオ基で置換されたフェニル基などのアリール基、このようなアリール基で置換されていてもよい炭素数1〜8のアルキル基、このようなアリール基で置換されていてもよい炭素数1〜8のアルケニル基がある。スルホニウムイオンとしては、上記一般式で2個のRがイオウ原子とともに環状構造を形成していてもよく、このようなものとして、2−ブテニルテトラメチレンスルホニウム、3−メチル−2−ブテニルテトラメチレンスルホニウム等があり、また、スルホニウムの2価のイオンとして、例えば、4,4′−ビス〔ジ−(β−ヒドロキシエトキシ)フェニルスホニオ〕フェニルスルフィド等が挙げられる。
【0030】
また、Z‐としては、クロリド、ブロミド、ヨージド、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、ヘキサフルオロアルセネート、ヘキサフルオロアンチモネート、パークロレート、トリフルオロメタンスルホネート、9,10−ジメトキシアントラセン−2−スルホネート、メタンスホネート、ベンゼンスルホネート、4−トリフルオロメチルベンゼンスルホネート、トシレート、p−ドデシルベンゼンスルホネート、1−ナフタレンスルホネート、1−ピレンスルホネート、テトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート等が挙げられる。
【0031】
スルホニウム塩系酸発生剤の具体例としては、トリフェニルスルホニウム、ジフェニルフェナシルスルホニウム、ジメチル(o−フルオロフェナシル)スルホニウム、ジメチル(m−クロロフェナシル)スルホニウム、ジメチル(p−ブロモフェナシル)スルホニウム、ジメチル(p−シアノフェナシル)スルホニウム、ジメチル(m−ニトロフェナシル)スルホニウム、ジメチル(2,4,6−トリブロモフェニルメチル)スルホニウム、ジメチル(p−(トリフルオロメチル)フェナシル)スルホニウム、ジメチル(p−ヒドロキシフェナシル)スルホニウム、ジメチル(p−メルカプトフェナシル)スルホニウム、ジメチル(p−メチルスルフィニルフェナシル)スルホニウム、ジメチル(p−メチルスルホニルフェナシル)スルホニウム、ジメチル(o−アセチルフェナシル)スルホニウム、ジメチル(o−ベンゾイルフェナシル)スルホニウム、ジメチル(p−メチルフェナシル)スルホニウム、ジメチル(p−イソプロピルフェナシル)スルホニウム、ジメチル(p−オクタデシルフェナシル)スルホニウム、ジメチル(p−シクロヘキシルフェナシル)スルホニウム、ジメチル(p−メトキシフェナシル)スルホニウム、ジメチル(o−メトキシカルボニルフェナシル)スルホニウム、ジメチル(p−イソプロポキシカルボニルフェナシル)スルホニウム、〔2−(4−メトキシ−ナフタレン−1−イル)−2−オキソ−エチル〕−ジメチルスルホニウム、ジメチル(1−ナフトイルメチル)スルホニウム、〔2−オキソ−2−(4−フェニルスルファニル−フェニル)−エチル〕−ジメチルスルホニウム、〔2−(6−ベンゾイル−9−エチル−9H−カルバゾール−3−イル)2−オキソ−エチル〕−ジメチルスルホニウム、〔2−(7−メトキシ−2−オキソ−2H−クロメン−3−イル)−2−オキソ−エチル〕−ジメチルスルホニウム、ジメチル(2−ナフトイルメチル)スルホニウム、ジメチル(9−アンスロイルメチル)スルホニウム、ジエチル(フェナシル)スルホニウム、メチルエチル(フェナシル)スルホニウム、メチルフェニル(フェナシル)スルホニウム、ジイソプロピル(フェナシル)スルホニウム、テトラメチレン(フェナシル)スルホニウム、ペンタメチレン(フェナシル)スルホニウム、ヘキサメチレン(フェナシル)スルホニウム、エチレンジオキシ(フェナシル)スルホニウム、ジエチレンジオキシ(フェナシル)スルホニウム、エチレンジチオ(フェナシル)スルホニウムジメチルフェナシルスルホニウム、ベンジル−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウム、4−tert−ブチルトリフェニルスルホニウム、トリス(4−メチルフェニル)スルホニウム、トリス(4−メトキシフェニル)スルホニウム、4−フェニルチオトリフェニルスルホニウム、ビス−1−(4−(ジフェニルスルホニウム)フェニル)スルフィド、ジフェニル−4−メチルフェニルスルホニウム、(4−メトキシフェニル)ジフェニルスルホニウム、(4−フェノキシフェニル)ジフェニルスルホニウム、(4−フルオロフェニル)ジフェニルスルホニウム、(4−tert−ブチルフェニル)ジフェニルスルホニウム、ジフェニル−2,4,6−トリメチルフェニルスルホニウムなどのスルホニウム塩のクロリド、ブロミド、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、ヘキサフルオロアルセネート、ヘキサフルオロアンチモネート、パークロレート、トリフルオロメタンスルホネート、9,10−ジメトキシアントラセン−2−スルホネート、メタンスルホネート、ベンゼンスルホネート、4−トリフルオロメチルベンゼンスルホネート、トシレート、テトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、パーフルオロブタンスルホネート、ペンタフルオロベンゼンスルホネート等が挙げられる。
【0032】
本発明に用いられるヨードニウム塩系酸発生剤は、一般式(2)で表される。
【0033】
一般式(2)
【0034】
【化2】


一般式(2)で表されるR、Rは、それぞれ独立して、フェニル基、炭素数1〜8のアルキル基で置換されたフェニル基、炭素数1〜8のヒドロキシアルキル基で置換されたフェニル基、炭素数1〜8のアルコキシ基で置換されたフェニル基、塩素、臭素等のハロゲンで置換されたフェニル基、シアノ基で置換されたフェニル基、ニトロ基で置換されたフェニル基、フェニルチオ基で置換されたフェニル基などのアリール基、このようなアリール基で置換されていてもよい炭素数1〜8のアルキル基、このようなアリール基で置換されていてもよい炭素数1〜8のアルケニル基であり、Z−は上記と同義である。
【0035】
ヨードニウム塩系酸発生剤の具体例としては、ジフェニルヨードニウム、4,4'−ジクロロジフェニルヨードニウム、4,4'−ジメトキシジフェニルヨードニウム、4,4'−ジメチルジフェニルヨードニウム、4,4'−t-ブチルジフェニルヨードニウム、(4メチルフェニル)[4−(2−メチルプロピル)フェニル]ニードニウム、3,3'−ジニトロジフェニルヨードニウム、フェニル(p−メトキシフェニル)ヨードニウム、フェニル(p−オクチルオキシフェニル)ヨードニウム、ビス(p−シアノフェニル)ヨードニウムなどのクロリド、ブロミド、ヨージド、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、ヘキサフルオロアルセネート、ヘキサフルオロアンチモネート、パークロレート、トリフルオロメタンスルホネート、9,10−ジメトキシアントラセン−2−スルホネート、メタンスルホネート、ベンゼンスルホネート、4−トリフルオロメチルベンゼンスルホネート、トシレート、テトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、パーフルオロブタンスルホネート、ペンタフルオロベンゼンスルホネート等が挙げられる。
【0036】
本発明に用いられるアンモニウム塩系酸発生剤は、一般式(3)で表される。
【0037】
一般式(3)
【0038】
【化3】


一般式(3)で表されるR、R、R、Rは、それぞれ独立して、水素、フェニル基、炭素数1〜8のアルキル基で置換されたフェニル基、炭素数1〜8のヒドロキシアルキル基で置換されたフェニル基、炭素数1〜8のアルコキシ基で置換されたフェニル基、塩素、臭素等のハロゲンで置換されたフェニル基、フェニルチオ基で置換されたフェニル基などのアリール基、このようなアリール基で置換されていてもよい炭素数1〜8のアルキル基、このようなアリール基で置換されていてもよい炭素数1〜8のアルケニル基、でありZ−は上記と同義である。
【0039】
アンモニウム塩系酸発生剤の具体例としては、ジエチルアンモニウム、ジイソプロピルアンモニウム、ベンジルアンモニウムなどのクロリド、ブロミド、ヨージド、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、ヘキサフルオロアルセネート、ヘキサフルオロアンチモネート、パークロレート、トリフルオロメタンスルホネート、9,10−ジメトキシアントラセン−2−スルホネート、メタンスルホネート、ベンゼンスルホネート、4−トリフルオロメチルベンゼンスルホネート、トシレート、テトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、パーフルオロブタンスルホネート、ペンタフルオロベンゼンスルホネート等が挙げられる。
【0040】
本発明に用いられるジアゾニウム塩系酸発生剤は、一般式(4)で表される。
【0041】
一般式(4)
【0042】
【化4】



一般式(4)で表されるR10、は置換基を表し、水素原子、ハロゲンで置換されたメチル基、またはその他の置換基を表す。置換基として好ましい例は例えば、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アルキニル基、ハロゲン原子、アミノ基、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシル基、メルカプト基、カルボキシル基、スルホ基、ホスホン酸基、アシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルファモイル基、カルバモイル基、アシルアミノ基、イミノ基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、またはカルバモイルアミノ基、であり、より好ましくは、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、ハロゲン原子、シアノ基、カルボキシル基、スルホ基、アルコキシ基、スルファモイル基、カルバモイル基、またはアルコキシカルボニル基である。aは0〜5の整数を表し、好ましくは0〜2の整数を表す。aが2以上の時、複数のR10は同じでも異なっても良く、互いに連結して環を形成しても良い。R11はアリール基またはヘテロ環基を表し、好ましくはアリール基であり、より好ましくはフェニル基である。Z−は上記と同義である。
【0043】
ジアゾニウム系酸発生剤の具体例としては例えば、ベンゼンジアゾニウム、4−メトキシジアゾニウム、4−メチルジアゾニウム塩のクロリド、ブロミド、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、ヘキサフルオロアルセネート、ヘキサフルオロアンチモネート、パークロレート、トリフルオロメタンスルホネート、9,10−ジメトキシアントラセン−2−スルホネート、メタンスルホネート、ベンゼンスルホネート、4−トリフルオロメチルベンゼンスルホネート、トシレート、テトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、パーフルオロブタンスルホネート、ペンタフルオロベンゼンスルホネート等が挙げられる。
【0044】
本発明に用いられるスルホン酸エステル系酸発生剤としては、スルホン酸エステル類、スルホン酸ニトロベンジルエステル類、イミドスルホネート類等が挙げられる。
【0045】
スルホン酸エステル類の具体例としては、ベンゾイントシレート、ピロガロールトリメシレート、スルホン酸ニトロベンジルエステル類の具体例としては、o−ニトロベンジルトシレート、2,6−ジニトロベンジルトシレート、2',6'−ジニトロベンジル−4−ニトロベンゼンスルホネート、p−ニトロベンジル−9,10−ジエトキシアントラセン−2−スルホネート、2−ニトロベンジルトリフルオロメチルスルホネート、イミドスルホネート類の具体例としてはN−トシルフタル酸イミド、9−フルオレニリデンアミノトシレート、α−シアノベンジリデントシルアミン等が挙げられる。
【0046】
本発明に用いられるオキシムスルホネート系酸発生剤の具体例としては、例えば、α−(p−トルエンスルホニルオキシイミノ)−フェニルアセトニトリル、α−(p−クロロベンゼンスルホニルオキシイミノ)−フェニルアセトニトリル、α−(4−ニトロベンゼンスルホニルオキシイミノ)−フェニルアセトニトリル、α−(4−ニトロ−2−トリフルオロメチルベンゼンスルホニルオキシイミノ)−フェニルアセトニトリル、α−(ベンゼンスルホニルオキシイミノ)−4−クロロフェニルアセトニトリル、α−(ベンゼンスルホニルオキシイミノ)−2,4−ジクロロフェニルアセトニトリル、α−(ベンゼンスルホニルオキシイミノ)−2,6−ジクロロフェニルアセトニトリル、α−(2−クロロベンゼンスルホニルオキシイミノ)−4−メトキシフェニルアセトニトリル、α−(ベンゼンスルホニルオキシイミノ)−2−チエニルアセトニトリル、α−(4−ドデシルベンゼンスルホニルオキシイミノ)−フェニルアセトニトリル、α−[(4−トルエンスルホニルオキシイミノ)−4−メトキシフェニル]アセトニトリル、α−[(ドデシルベンゼンスルホニルオキシイミノ)−4−メトキシフェニル]アセトニトリル、α−(トシルオキシイミノ)−3−チエニルアセトニトリル、α−(メチルスルホニルオキシイミノ)−1−シクロペンテニルアセトニトリル、α−(メチルスルホニルオキシイミノ)−1−シクロヘキセニルアセトニトリル、α−(エチルスルホニルオキシイミノ)−1−シクロペンテニルアセトニトリル、α−(イソプロピルスルホニルオキシイミノ)−1−シクロペンテニルアセトニトリル、α−(n−ブチルスルホニルオキシイミノ)−1−シクロペンテニルアセトニトリル、α−(エチルスルホニルオキシイミノ)−1−シクロヘキセニルアセトニトリル、α−(イソプロピルスルホニルオキシイミノ)−1−シクロヘキセニルアセトニトリル、α−(n−ブチルスルホニルオキシイミノ)−1−シクロヘキセニルアセトニトリルや、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製のIRGACUREPAG103、PAG108、PAG121、PAG203等が挙げられる。
【0047】
また、ダウ・ケミカル日本株式会社製のサイラキュアーUVI−6992、サイラキュアーUVI−6974、株式会社ADEKA製のアデカオプトマーSP150、アデカオプトマーSP152、アデカオプトマーSP170、アデカオプトマーSP172、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製のIRGACURE250、日本曹達社製のCI−5102、CI−2855、三新化学社製のサンエイドSI−60L、サンエイドSI−80L、サンエイドSI−100L、サンエイドSI−110L、サンエイドSI−180L、サンアプロ株式会社製のCPI−100P、CPI−100A、和光純薬社製のWPI−069、WPI−113、WPI−116、WPI−041、WPI−044、WPI−054、WPI−055、WPAG−281、WPAG−567、WPAG−596等も使用できる。
【0048】
また、(c)加熱又は光照射により酸を生成する化合物として、トリアジン化合物、オキサジアゾール化合物、チアゾール化合物、ピロン化合物、金属アレーン錯体も使用できる。
【0049】
また、本発明の酸発生剤として酸を発生する基を主鎖もしくは側鎖に導入したポリマーを用いることもできる。本発明の酸発生剤が酸を発生する基を主鎖もしくは側鎖に導入したポリマーである場合には、該ポリマーがバインダーの役割を兼ねてもよい。
【0050】
エメラルジンベースと加熱又は光照射により酸を生成する化合物との重量比は1:20〜10:1の範囲内が好ましく、より好ましくは1:10〜2:1である。ドーピング剤の量がエメラルジンベースに対して少なすぎると、ドープが不十分となり、導電性が得られ難く好ましくない。加熱又は光照射により酸を生成する化合物の量がエメラルジンベースに対して多すぎると、耐水性等の塗膜物性が低下しやすく好ましくない。
【0051】
本発明のポリアニリン組成物は、必要に応じて、窒素および不飽和二重結合を含有する化合物以外にもその他の重合性化合物および高分子化合物を併用することができる。その他の重合性化合物および高分子化合物は、得られる塗膜の要求物性により適宜選択することができ、上記記載ポリアニリン組成物にさらに添加して用いられる。
【0052】
本発明のポリアニリン組成物は、有機溶剤を使用していないものであり、本発明において有機溶剤とは、炭化水素系溶剤、アルコール系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤、ケトン系溶剤が挙げられる。
【0053】
なお、炭化水素系溶剤としては、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン等の脂肪族炭化水素系溶剤、クロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン等の脂環族炭化水素系溶剤、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤が挙げられる。また、アルコール系溶剤としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、ブタノール等が挙げられる。さらに、エーテル系溶剤としては、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセタート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセタート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセタート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセタート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセタート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセタート等が挙げられる。さらに、エステル系溶剤としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等が挙げられる。また、ケトン系溶剤としては、アセトン,メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、イソホロン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン等が挙げられる。
【0054】
本発明のポリアニリン組成物には、必要に応じて、光重合開始剤、紫外線安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、可塑剤、レベリング剤、ハジキ防止剤等の化合物を任意に混合することが出来る。
【実施例】
【0055】
以下に、実施例により、本発明をさらに詳細に説明するが、以下の実施例は本発明の権利範囲を何ら制限するものではない。なお、実施例における「部」は、「重量部」を表す。
【0056】
[ポリアニリン合成例1]
攪拌器、温度計及び滴下ロートを備えた4つ口フラスコに、1規定の塩酸250部、アニリン3.75部を加えて溶解させ、攪拌を行いながら0℃に保持しアニリン塩酸塩溶液を得た。また、1規定の塩酸50部に過硫酸アンモニウム11.5部を溶解させた重合開始剤溶液を滴下ロートから1時間かけて滴下した。さらに、0℃に保持し3時間攪拌を行った。得られたポリアニリンの沈殿物を濾別し、濾液が透明になるまで水、アセトンにて洗浄した後に室温で真空乾燥することにより濃緑色のエメラルジンソルト粉末を得た。
【0057】
[ポリアニリン合成例2]
ポリアニリン合成例1において、得られたポリアニリンの沈殿物を、0.1規定のアンモニア水にて洗浄し、脱ドープを行なった。濾液が透明になるまで水、アセトンにて洗浄した後に室温で真空乾燥することにより濃青色のエメラルジンベース粉末を得た。
【0058】
[実施例1]
ポリアニリン合成例2で得られたエメラルジンベース3部およびアクリロイルモルフォリン97部をホモジナイザで攪拌しながら溶解し、濃青色溶液を得た後に、この溶液の中に4−フェニルチオトリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート18部を混合し電子線硬化性ポリアニリン組成物を得た。得られたポリアニリン組成物を、ワイヤバーコータにより硬化被膜厚が約5μmとなるようにPETフィルム(東洋紡績社製コスモシャインA4100)上に塗工し、Min−EBlabo電子線照射装置(ウシオ電機社製)を用い、加速電圧50kV、照射線量100kGy、酸素濃度500ppmの窒素置換した雰囲気で電子線を照射し電子線硬化皮膜を作製した。硬化皮膜はドープ状態である濃緑色に変化した。
【0059】
[実施例2]
ポリアニリン合成例2で得られたエメラルジンベース3部およびアクリロイルモルフォリン97部をホモジナイザで攪拌しながら溶解し、濃青色溶液を得た後に、この溶液の中に(4−メチルフェニル)[4−(2−メチルプロピル)フェニル]ヨードニウムヘキサフルオロフォスフェート20部を混合し電子線硬化性ポリアニリン組成物を得た。得られたポリアニリン組成物を実施例1と同様にして電子線硬化皮膜を作製した。硬化皮膜はドープ状態である濃緑色に変化した。
【0060】
[実施例3]
ポリアニリン合成例2で得られたエメラルジンベース3部およびアクリロイルモルフォリン97部をホモジナイザで攪拌しながら溶解し、濃青色溶液を得た後に、この溶液の中にIRGACUREPAG103(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製オキシムスルホネート系熱酸発生剤)20部を混合し電子線硬化性ポリアニリン組成物を得た。得られたポリアニリン組成物を実施例1と同様にして電子線硬化皮膜を作製した。硬化皮膜はドープ状態である濃緑色に変化した。
【0061】
[実施例4]
ポリアニリン合成例2で得られたエメラルジンベース3部およびアクリロイルモルフォリン97部をホモジナイザで攪拌しながら溶解し、濃青色溶液を得た後に、この溶液の中に2−ブテニルテトラメチレンスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート18部を混合し電子線硬化性ポリアニリン組成物を得た。得られたポリアニリン組成物をワイヤバーコータにより硬化被膜厚が約5μmとなるようにPETフィルム(東洋紡績社製コスモシャインA4100)上に塗工し、オーブンで150℃5分加熱した後に、Min−EBlabo電子線照射装置(ウシオ電機社製)を用い、加速電圧50kV、照射線量100kGy、酸素濃度500ppmの窒素置換した雰囲気で電子線を照射し電子線硬化皮膜を作製した。硬化皮膜はドープ状態である濃緑色に変化した。
【0062】
[実施例5]
ポリアニリン合成例2で得られたエメラルジンベース4部およびアクリロイルモルフォリン96部をホモジナイザで攪拌しながら溶解し、濃青色溶液を得た後に、2−ブテニルテトラメチレンスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート24部、トリメチロールプロパントリアクリレート38部を添加し電子線硬化性ポリアニリン組成物を得た。得られたポリアニリン組成物を実施例4と同様にして電子線硬化皮膜を作製した。硬化皮膜はドープ状態である濃緑色に変化した。
【0063】
[実施例6]
ポリアニリン合成例2で得られたエメラルジンベース4部およびN−ビニルピロリドン96部をホモジナイザで攪拌しながら溶解し、濃青色溶液を得た後に、4−フェニルチオトリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート18部、トリメチロールプロパントリアクリレート50部を添加し電子線硬化性ポリアニリン組成物を得た。得られたポリアニリン組成物を実施例1と同様にして電子線硬化皮膜を作製した。硬化皮膜はドープ状態である濃緑色に変化した。
【0064】
[実施例7]
ポリアニリン合成例2で得られたエメラルジンベース3部およびアクリロイルモルフォリン97部をホモジナイザで攪拌しながら溶解し、濃青色溶液を得た後に、4−フェニルチオトリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート18部を混合しポリアニリン組成物を得た。次いで得られたポリアニリン組成物100部にイルガキュア184(チバ・スペシャリティーケミカルズ社製光重合開始剤)5部を添加し紫外線硬化性ポリアニリン組成物を得た。得られた紫外線硬化性ポリアニリン組成物をワイヤバーコータにより硬化被膜厚が約5μmとなるようにPETフィルム上に塗工し、紫外線硬化装置(アイグラフィックス社製)を用いて、メタルハライドランプ112W/cm、コンベアスピード30m/minで紫外線を照射し紫外線硬化皮膜を作製した。硬化皮膜はドープ状態である濃緑色に変化した。
【0065】
[実施例8]
ポリアニリン合成例2で得られたエメラルジンベース3部およびアクリロイルモルフォリン97部をホモジナイザで攪拌しながら溶解し、濃青色溶液を得た後に、2−ブテニルテトラメチレンスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート18部を混合しポリアニリン組成物を得た。次いで得られたポリアニリン組成物100部にイルガキュア184(チバ・スペシャリティーケミカルズ社製光重合開始剤)5部を添加し紫外線硬化性ポリアニリン組成物を得た。得られた紫外線硬化性ポリアニリン組成物をワイヤバーコータにより硬化被膜厚が約5μmとなるようにPETフィルム(東洋紡績社製コスモシャインA4100)上に塗工し、150℃で5分加熱した後に、紫外線硬化装置(アイグラフィックス社製)を用いて、メタルハライドランプ112W/cm、コンベアスピード30m/minで紫外線を照射し紫外線硬化皮膜を作製した。硬化皮膜はドープ状態である濃緑色に変化した。
【0066】
[実施例9]
ポリアニリン合成例2で得られたエメラルジンベース4部およびアクリロイルモルフォリン96部をホモジナイザで攪拌しながら溶解し、濃青色溶液を得た後に、2−ブテニルテトラメチレンスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート18部、トリメチロールプロパントリアクリレート38部を添加し、ポリアニリン組成物を得た。さらに、得られたポリアニリン組成物100部にイルガキュア1845部を添加し紫外線硬化性ポリアニリン組成物を得た。得られたポリアニリン組成物を実施例8と同様にして紫外線硬化皮膜を作製した。硬化皮膜はドープ状態である濃緑色に変化した。
【0067】
[実施例10]
ポリアニリン合成例2で得られたエメラルジンベース4部およびN−ビニルピロリドン96部をホモジナイザで攪拌しながら溶解し、濃青色溶液を得た後に、4−フェニルチオトリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート18部、トリメチロールプロパントリアクリレート50部を添加し、ポリアニリン組成物を得た。さらに、得られたポリアニリン組成物100部にイルガキュア184 5部を添加し紫外線硬化性ポリアニリン組成物を得た。得られたポリアニリン組成物を実施例8と同様にして紫外線硬化皮膜を作製した。硬化皮膜はドープ状態である濃緑色に変化した。
【0068】
[比較例1]
ポリアニリン合成例1で得られたエメラルジンソルト3部およびアクリロイルモルフォリン97部をホモジナイザで攪拌しながら分散した後に、この溶液の中に4−フェニルチオトリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート18部を混合し、電子線硬化性ポリアニリン組成物を得た。組成物は濃緑色であった。得られたポリアニリン組成物を実施例1と同様にして電子線硬化皮膜を作製した。また、ポリアニリン組成物を室温で24時間放置したところ、沈殿物が生じていた。
【0069】
[比較例2]
ポリアニリン合成例1で得られたエメラルジンソルト3部およびアクリロイルモルフォリン97部をホモジナイザで攪拌しながら分散した後に、この溶液の中に2−ブテニルテトラメチレンスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート18部を混合し、電子線硬化性ポリアニリン組成物を得た。組成物は濃緑色であった。得られたポリアニリン組成物を実施例4と同様にして電子線硬化皮膜を作製した。また、ポリアニリン組成物を室温で24時間放置したところ、沈殿物が生じていた。
【0070】
[比較例3]
ポリアニリン合成例1で得られたエメラルジンソルト3部およびアクリロイルモルフォリン97部をホモジナイザで攪拌しながら分散した後に、4−フェニルチオトリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート18部を混合しポリアニリン組成物を得た。次いで得られたポリアニリン組成物100部にイルガキュア184(チバ・スペシャリティーケミカルズ社製光重合開始剤)5部を添加し紫外線硬化性ポリアニリン組成物を得た。組成物は濃緑色であった。得られたポリアニリン組成物を実施例7と同様にして紫外線硬化皮膜を作製した。また、ポリアニリン組成物を室温で24時間放置したところ、沈殿物が生じていた。
【0071】
[比較例4]
ポリアニリン合成例1で得られたエメラルジンソルト3部およびアクリロイルモルフォリン97部をホモジナイザで攪拌しながら分散した後に、2−ブテニルテトラメチレンスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート18部を混合しポリアニリン組成物を得た。次いで得られたポリアニリン組成物100部にイルガキュア184(チバ・スペシャリティーケミカルズ社製光重合開始剤)5部を添加し紫外線硬化性ポリアニリン組成物を得た。組成物は濃緑色であった。得られたポリアニリン組成物を実施例8と同様にして紫外線硬化皮膜を作製した。また、ポリアニリン組成物を室温で24時間放置したところ、沈殿物が生じていた。
【0072】
[比較例5]
ポリアニリン合成例2で得られたエメラルジンベース3部およびドデシルベンゼンスルホン酸15部を三本ロールミルにて混練した。この溶液は脱ドープ状態の濃青色からドープ状態である濃緑色に変化した。次いで、この溶液の中にトルエン200部およびダイヤナールBR−80(三菱レイヨン社製ポリメチルメタクリレート(PMMA)樹脂)97部を混合し、加熱乾燥性ポリアニリン組成物を得た。得られたポリアニリン組成物を、ワイヤバーコータにより乾燥被膜厚が約5μmとなるようにPETフィルム上に塗工し、80℃で10分間加熱乾燥し乾燥皮膜を作製した。
【0073】
実施例1〜10、比較例1〜5で得られた塗膜について、下記の方法で表面抵抗値、耐溶剤性を評価した。
(表面抵抗値測定)
表面抵抗値計ハイレスタUP(三菱化学社製)を用いて塗膜の表面抵抗値を測定した。
(耐溶剤性評価)
メチルエチルケトンを湿らせた綿棒でラビング(50回)試験を行い、塗膜の状態を目視で評価した。
【0074】
評価結果を表1に示す。
【0075】
【表1】

【0076】
表1に示すように、実施例1〜10の窒素および不飽和二重結合を含有する化合物にポリアニリンのエメラルジンベースを溶解させた後に加熱又は光照射により酸を生成する化合物を添加してなる組成物は、電子線または紫外線の照射により容易に硬化し、表面抵抗値および耐溶剤性が良好であった。一方、比較例1〜4のエメラルジンソルトを窒素および不飽和二重結合を含有する化合物に直接溶解させてなる組成物は分散不良により表面抵抗値が大きかった。比較例5の従来の有機溶剤を含有する組成物は溶剤の加熱乾燥工程が必要であり、また耐溶剤性も劣っていた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)窒素および不飽和二重結合を含有する化合物、(b)ポリアニリンのエメラルジンベースおよび(c)加熱又は光照射により酸を生成する化合物からなることを特徴とする活性エネルギー線硬化性ポリアニリン組成物。
【請求項2】
(a)窒素および不飽和二重結合を含有する化合物がアクリロイルモルフォリンであることを特徴とする請求項1記載の活性エネルギー線硬化性ポリアニリン組成物。
【請求項3】
請求項1または2記載の活性エネルギー線硬化性ポリアニリン組成物を被覆してなる被覆物。


【公開番号】特開2009−96847(P2009−96847A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−267775(P2007−267775)
【出願日】平成19年10月15日(2007.10.15)
【出願人】(000222118)東洋インキ製造株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】