説明

組成物の製造方法

【課題】成形用途(自動車部品、工業用途部品、電子部品、ギア等)や押出用途(チューブ、棒、フィラメント、フィルム、ブロー等)に好適に使用される靭性や表面外観に優れる微細な無機物を均一に分散させた熱可塑性樹脂組成物とその製造方法の提供。
【解決手段】無機物粉体及びスラリー媒液とのスラリーを得る工程(A)、スラリー状態で無機物を粉砕する工程(B)および粉砕後のスラリーと熱可塑性樹脂とを混合しかつスラリー媒液の除去を行う工程(C)からなる熱可塑性樹脂組成物の製造方法であって、工程(B)で得られる粉砕後のスラリー粘度が2〜2000cPであり、かつ該スラリー中の無機物の重量平均粒子径が0.01〜1μmである熱可塑性樹脂組成物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、様々な産業部品用の材料として好適な靱性や表面外観等に優れるスラリー状態で粉砕により微細化した無機物あるいは有機物が均一に分散した熱可塑性樹脂組成物及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、熱可塑性樹脂の特性を改良あるいは向上させることを目的として、熱可塑性樹脂に各種無機物や有機物を配合することは広く行われている。例えばガラス繊維や炭素繊維、ケイ酸カルシウム繊維、チタン酸カリウム繊維、ホウ酸アルミニウム繊維などの無機繊維状充填材、ガラスフレーク、タルク、カオリン、マイカ、炭酸カルシウム、リン酸アルミニウム、ウォラストナイト、アルミナ、ベーマイト、アパタイト、各種カーボンブラックなどの無機粒子、あるいは雲母、モンモリロナイト、膨潤性フッ素雲母などの層状化合物などの各種無機物を熱可塑性樹脂に配合する方法が提案されまた用いられている。
【0003】
しかしながら、これら中に分散している粉体は熱可塑性との親和性に乏しいため、表面外観や表面平滑性の低下や靭性の低下を引き起こす。こうした問題を改良する方法のひとつとして、微細化した粉体を用いる方法が提案されている。この方法は粉体の比表面積を飛躍的に増大させることにより樹脂との親和性を向上させ、上記問題を解決しようというものである。しかしながら、例えば数十から数百ナノメーターサイズの粉体を従来の方法で熱可塑性樹脂に配合したとしても、粉体の嵩比重が非常に高いために取り扱いに問題が生じたり、あるいは微細化粉体が凝集した組成物しか得られず目的の性能が達成できないというのが現状である。また、重合原料に微細化した粉体を添加し、上記の問題を改良する方法も提案されているが(例えば、特許文献1、2参照。)、それでもなお、目的を満足する性能を示すには至っていない。
【特許文献1】特開平10−158431号公報
【特許文献2】特開2003−192890号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、靭性や表面外観に優れるスラリー状態で粉砕により微細化した粉体を均一に分散させた熱可塑性樹脂組成物とその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、スラリー状態で粉体を粉砕し、かつ得られるスラリーの粘度を特定範囲になるようにする。それに引き続き、該粉砕した粉体を含有するスラリーと熱可塑性樹脂とを溶融混練及びスラリー媒液を除去する製造方法を用いることで微細な粉体を熱可塑性樹脂中に均一に分散させることができることを見出し本発明に到った。特に、1次粒子の重量平均粒子径が0.01〜1μmである粉体を水等の媒液によりスラリー状態とし、ミル径が0.01〜0.3mmの大きさのボールミルを用いてスラリー状態で粉砕し、かつ連続して溶融混練およびスラリー媒液の除去を行う製造方法を用いることで、より顕著に本発明の効果を発現できることを見出した。
【0006】
すなわち本発明は、
1.無機物粉体及びスラリー媒液とのスラリーを得る工程(A)、スラリー状態で無機物を粉砕する工程(B)、および粉砕後のスラリーと熱可塑性樹脂とを混合しかつスラリー媒液の除去を行う工程(C)からなる熱可塑性樹脂組成物の製造方法であって、工程(B)で得られる粉砕後のスラリー粘度が2〜2000cPであり、かつ該スラリー中の無機物の重量平均粒子径が0.01〜1μmであることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物の製造方法、
2.無機物粉体、スラリー媒液及び分散剤とのスラリーを得る工程(A)、工程(B)および工程(C)からなる熱可塑性樹脂組成物の製造方法であって、工程(B)で得られる粉砕後のスラリー粘度が2〜2000cPであり、かつ該スラリー中の無機物の重量平均粒子径が0.01〜1μmであることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物の製造方法、
3.熱可塑性樹脂100重量部に対して、無機物の含有量が0.1〜300重量部であることを特徴とする上記1あるいは2のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法、
4.工程(B)の装置が、ビーズ径が0.01〜0.3mmであるボールミルであることを特徴とする上記1から3のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法、
5.工程(C)が、粉砕後のスラリー媒液の少なくとも一部を除去した後に、熱可塑性樹脂を混合しかつスラリー媒液を更に除去することを特徴とする上記1あるいは2のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法、
6.工程(C)が、粉砕後のスラリーと熱可塑性樹脂とを混合し熱可塑性樹脂が溶融あるいは軟化しない温度条件でスラリー媒液を除去し、その後熱可塑性樹脂が溶融あるいは軟化する温度で溶融混練しかつスラリー媒液を更に除去することを特徴とする上記1あるいは2のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法、
7.工程(C)における混合及びスラリー媒液の除去を溶融混練機で実施することを特徴とする上記4あるいは5のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法、
8.工程(B)と工程(C)とを連続で実施することを特徴とする上記1から7のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法、
9.スラリー媒液が、水であることを特徴とする上記8に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法、
10.無機物がタルク、マイカ、ウォラストナイト、カオリン、炭酸カルシウム、フッ化カルシウム、アパタイト、酸化亜鉛、酸化錫、チタン酸カリウム、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、ファーネスブラック、カーボンナノチューブ、グラファイト、黄銅、銅、銀、アルミニウム、ニッケルおよび鉄のいずれか1種以上を用いることを特徴とする上記9に記載のポリアミド樹脂組成物の製造方法、
11.上記1から10のいずれかに記載の方法で製造される熱可塑性樹脂組成物、
である。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、強度、剛性、靭性、外観に優れる微細な無機物を含有する熱可塑性樹脂組成物およびその製造方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下本発明について詳細に説明する。
本発明の熱可塑性樹脂は、例えば、ポリアミド系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリオキシメチレン系樹脂、芳香族ポリエステル系樹脂、芳香族ポリカーボネート系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ゴム、液晶樹脂、あるいはアラミド、ポリイミド等の縮合系樹脂、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトンなどのポリエーテル系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデンなどの含ハロゲンビニル化合物系樹脂、ゴムなどを挙げることができる。
【0009】
これら樹脂は、1種で用いても良いし、2種以上組み合わせて用いても良い。本発明においては、これら樹脂の中でも、ポリアミド系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリオキシメチレン系樹脂、芳香族ポリエステル系樹脂、芳香族ポリカーボネート系樹脂、ポリアリーレンスルフィド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ゴム、液晶樹脂のいずれかから選ばれた少なくとも1種の熱可塑性樹脂が、特に好ましく用いられる。
【0010】
本発明の無機物粉体は、熱可塑性樹脂を強化する目的で用いられる周知の無機物であれば特に限定されない。例えば、ガラス繊維や炭素繊維、ケイ酸カルシウム繊維、チタン酸カリウム繊維、ホウ酸アルミニウム繊維、ガラスフレーク、タルク、カオリン、マイカ、ハイドロタルサイト、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、酸化亜鉛、リン酸一水素カルシウム、ウォラストナイト、シリカ、ゼオライト、アルミナ、ベーマイト、水酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、ケイ酸カルシウム、アルミノケイ酸ナトリウム、ケイ酸マグネシウム、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、ファーネスブラック、カーボンナノチューブ、グラファイト、黄銅、銅、銀、アルミニウム、ニッケル、鉄、フッ化カルシウム、雲母、モンモリロナイト、膨潤性フッ素雲母、アパタイト等である。
【0011】
本発明の目的をより効果的に発現する無機物は、マイカ、ウォラストナイト、カオリン、炭酸カルシウム、フッ化カルシウム、アパタイト、酸化亜鉛、酸化錫、チタン酸カリウム、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、ファーネスブラック、カーボンナノチューブ、グラファイト、黄銅、銅、銀、アルミニウム、ニッケル、鉄であり、これらが好ましく用いられる。これら無機物の形状は球状、針状、板状等特に制限はなく、本発明の目的に合わせ選択することができる。
本発明の製造方法は、無機物粉体及びスラリー媒液とのスラリーを得る工程(A)、スラリー状態で無機物を粉砕する工程(B)および粉砕後のスラリーと熱可塑性樹脂とを混合しかつスラリー媒液の除去を行う工程(C)からなる製造方法である。より好ましくは、無機物粉体、スラリー媒液及び分散剤とのスラリーを得る工程(A)スラリー状態で無機物を粉砕する工程(B)および粉砕後のスラリーと熱可塑性樹脂とを混合しかつスラリー媒液の除去を行う工程(C)からなる製造方法である。
【0012】
本発明の工程(A)の前記粉砕前の無機物粉体は、凝集のない1次粒子のみで構成されるものであっても、1次粒子が凝集し2次粒子を形成したものであってもかまわないが、1次粒子が凝集し2次粒子を形成したものの方が本発明の効果をより顕著に発現しやすい。
該1次粒子径は、重量平均粒子径にして、好ましくは0.01〜1μmであり、より好ましくは0.01〜0.5μm、より好ましくは0.01〜0.1μmである。1次粒子の粒径が1μmを超えた場合には、スラリー状態で粉砕しても粉砕が十分にできない等の問題が発生しやすい。また、0.01μmより小さい場合には、粉砕後のスラリー中の無機物が再凝集しやすい等の問題が発生しやすい。
【0013】
また2次粒子径は、重量平均粒子径にして、好ましくは0.5〜50μmであり、より好ましくは1〜25μmであり、最も好ましくは5〜25μmである。2次粒子の粒径が1μmを超えた場合には、スラリー状態で粉砕しても粉砕が十分にできない等の問題が発生しやすい。また、0.01μmより小さい場合には、粉砕後のスラリー中の無機物が再凝集しやすい等の問題が発生しやすい。
本発明の工程(A)のスラリー媒液は、親水性溶液、疎水性溶液の何れでもよいし、単独の溶液であっても良いし、複数の溶液の混合液で用いても良いが、溶融混練のし易さや取り扱い易さから、親水性の媒液を用いることが好ましく、水であることがより好ましい。
本発明の分散剤は、周知のものであれば特に限定されないが、好ましくはポリアクリル酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム等のポリリン酸塩、あるいはアニオン系、カチオン系、両性、非イオン系の界面活性剤等である。より好ましくはポリリン酸塩である。
【0014】
本発明の工程(B)のスラリー状態で粉体を粉砕する装置は、微細ビーズを用いたボールミル、サンドグライダー、高速強せん断分散機、コロイドミル、超音波分散機、ホモジナイザー等を例示することができる。本発明において好ましく用いられる装置としては、特開平6−79192号公報、特開平8−332402号公報に記載された装置である(株)奈良機械製作所のMICROSや、特許第第2788010号公報、特開平10−5561号公報、特許第2527297号公報に記載された装置である吉田機械興業(株)のNanomizerや、WO96/39251号公報、特開2002−143707号公報に記載された装置であるコトブキ技研工業(株)のAPEXMILL、SUPERAPEXMILL、ULTRAAPEXMILLを挙げることができる。これらの装置は、単独で用いても良いし複数の機器を使用してもかまわない。中でも本発明においては、ボールミル装置を用いることが好ましく、特に粉砕に用いるビーズの粒径が0.01〜0.3mmであることが好ましい。このビーズ粒径の範囲を外れた場合には、目的とする粒子径まで無機物を粉砕できない傾向にあり好ましくない。
【0015】
本発明の工程(B)により得られる無機物粉体を粉砕した後のスラリー粘度は、2〜2000cPであり、好ましくは3〜1500cPであり、より好ましくは5〜1000cPである。スラリー粘度の測定は、23℃の条件下、B型粘度計60rpmで測定した値である。スラリー粘度が2000cPを超えると流動性に乏しく取り扱い性が劣ったり、得られる熱可塑性樹脂組成物の機械物性が本発明の目的まで向上しない等の問題が発生しやすい。また、2cPより少ない場合には、工程(C)においてフィードする媒液の量が多量となる等の問題が発生し、スラリーのフィードや媒液回収のために複雑な機構や多大なエネルギーが必要となる等の問題が発生しやすい。
【0016】
本発明の工程(B)により得られるスラリー状態で粉砕した無機物粉体の平均粒子径は0.01〜1μmであり、好ましくは0.01〜0.5μm、より好ましくは0.01〜0.1μmである。粒子径が1μmを超えた場合には、本発明の効果を十分に発現しにくい。また、0.01μmより小さい場合には、粉砕後のスラリー中の無機物が再凝集しやすい等の問題が発生しやすい。
本発明の粉砕前及び後の無機物の重量平均粒子径の測定は、無機物を純水あるいはアルコール類中に分散させ、レーザ回折式粒度分布装置で測定することができる。また、1次粒子が凝集した無機物の1次粒子を測定する場合には、少なくとも50個の粒子に関して走査型電子顕微鏡(SEM)や透過型電子顕微鏡(TEM)により観察し半径を求め、その半径から重量換算して求めることができる。これらの測定方法は、用いる無機物の特性に応じ、最適な方法を選択する。
【0017】
本発明の工程(C)の混合を行う装置は溶融混練機が好ましい。製造方法は、粉砕工程を経たスラリーと熱可塑性樹脂とを溶融混練しかつスラリー媒液を除去する装置であれば特に限定されない。例えば一般に実用されているスラリーをフィードする設備と、スラリー媒液を除去する設備を具備した一軸、多軸混練押出機、ロール、バンバリーミキサーなどの溶融混練装置を組み合わせれば良い。中でも、遠心分離装置あるいは減圧装置を具備した溶融混練機で最適な温度条件で、粉砕後のスラリー媒液の少なくとも一部を除去した後に、熱可塑性樹脂を混合しかつスラリー媒液を更に除去する方法が好ましい。また、粉砕後のスラリーと熱可塑性樹脂とを混合し熱可塑性樹脂が溶融あるいは軟化しない温度条件でスラリー媒液を除去し、その後熱可塑性樹脂が溶融あるいは軟化する温度で溶融混練しかつスラリー媒液を更に除去する方法を用いることも好ましい。
【0018】
本発明の熱可塑性樹脂組成物には本発明の目的を損なわない範囲で周知の熱安定剤、滑剤、離型剤、可塑剤、衝撃性改良剤、結晶核剤、紫外線防止剤、着色剤、難燃剤などを添加することができる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は射出成形、押出し成形、フィルム成形、プレス成形、ガスアシスト射出成形、溶着成形、吹込成形、中空成形、多層成形、発泡成形などの通常のプラスチック成形方法では良好に成型加工ができる。また、本発明の樹脂組成物樹脂組成物はマスターバッチとして使用してもよい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は多くの成形用途(自動車部品、工業用途部品、電子電気部品、ギア等)や押出用途(チューブ、棒、フィラメント、フィルム、ブロー等)、住宅機材(部品)等において有用である。
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明する。
【実施例】
【0019】
本発明の骨子は以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例、比較例において記載した評価は、以下の方法により実施した。
1.粉砕した粉体の特性
(1−1)粉体の重量平均粒子径
レーザ回折式粒度分布測定装置で測定した。具体的には島津製作所(株)製SALD−7000で測定した。
(1−2)粉砕した粉体を含有するスラリーの粘度
23℃の条件下、(株)東京計器製B型粘度計60rpmで測定した。
2.熱可塑性樹脂組成物の特性
(2−1)粉体の含有量(質量部/100重量部ポリアミド樹脂組成物)
粉体含有樹脂を100±20℃で8時間乾燥し冷却した。白金皿に、乾燥したポリアミド樹脂組成物を1gとり、650±20℃の電気炉で灰化し、冷却後、その質量を秤り粉体含有量を定量した。
3.熱可塑性樹脂組成物の機械物性
射出成形機(日精樹脂(株)PS−40E)を用いて物性評価用の成形品を作成した。
(3−1)引張り強度(MPa)および引張り伸度(%)
ASTMD638に準じて行った。
(3−2)外観
成形品の外観を目視にて評価した。
〇:外観が優れる。
×:外観が劣る。
【0020】
[実施例1]
工程(A)をつぎのように行った。スラリー媒液は純水を用いた。重量平均粒子径3μmのリン酸一水素カルシウムを用いた。純水100重量部、無機物5重量部を混合し粉砕前スラリーとした。
工程(B)はつぎのようである。該スラリーをコトブキ技研工業(株)製の0.1mmビーズをセットしたSUPERAPEXMILLに投入し粉砕を行った。粉砕後の無機物の重量平均粒子径は100nmであった。23℃の条件下、(株)東京計器製B型粘度計60rpmで測定した溶液粘度は75cPであった。
【0021】
[実施例2]
工程(A)をつぎのように行った。スラリー媒液は純水を用いた。無機物は約40nmの1次粒子が凝集した重量平均粒子径20μmの酸化亜鉛を用いた。純水100重量部、無機物5重量部、分散剤としてヘキサメタリン酸ナトリウム0.5重量部を混合し粉砕前スラリーとした。
工程(B)はつぎのようである。該スラリーをコトブキ技研工業(株)製の0.1mmビーズをセットしたSUPERAPEXMILLに投入し粉砕を行った。粉砕後の無機物の重量平均粒子径は37nmであった。23℃の条件下、(株)東京計器製B型粘度計60rpmで測定した溶液粘度は5cPであった。
【0022】
[実施例3]
工程(A)をつぎのように行った。スラリー媒液は純水を用いた。無機物は約40nmの1次粒子が凝集した重量平均粒子径20μmの酸化亜鉛を用いた。純水100重量部、無機物5重量部、分散剤としてポリアクリル酸アンモニウム0.5重量部を混合し粉砕前スラリーとした。
工程(B)はつぎのようである。該スラリーをコトブキ技研工業(株)製の0.1mmビーズをセットしたSUPERAPEXMILLに投入し粉砕を行った。粉砕後の無機物の重量平均粒子径は550nmであった。23℃の条件下、(株)東京計器製B型粘度計60rpmで測定した溶液粘度は15cPであった。
【0023】
[実施例4]
工程(A)をつぎのように行った。スラリー媒液は純水を用いた。無機物は約40nmの1次粒子が凝集した重量平均粒子径20μmの酸化亜鉛を用いた。純水100重量部、無機物10重量部、分散剤としてリン酸三ナトリウム1.0重量部を混合し粉砕前スラリーとした。
工程(B)はつぎのようである。該スラリーをコトブキ技研工業(株)製の0.1mmビーズをセットしたSUPERAPEXMILLに投入し粉砕を行った。粉砕後の無機物の重量平均粒子径は450nmであった。23℃の条件下、(株)東京計器製B型粘度計60rpmで測定した溶液粘度は20cPであった。
【0024】
[実施例5]
工程(C)をつぎのように行った。ポリアミド樹脂100重量部と実施例2で得られた粉砕後のスラリー100重量部を減圧装置を具備した二軸溶融押出機に投入した。シリンダーの温度は投入口からノズルまで約150〜280℃に設定して実施した。溶融押出は問題なく安定的に実施できた。得られた組成物を射出成形した。引張強度は85MPa、伸度6.0%であり表面外観は○(優れる)であった。
【0025】
[実施例6]
工程(C)をつぎのように行った。ポリアミド樹脂100重量部と実施例2で得られた粉砕後のスラリー50重量部を減圧装置を具備した二軸溶融押出機に投入した。シリンダーの温度は投入口からノズルまで約150〜280℃に設定して実施した。溶融押出は問題なく安定的に実施できた。得られた組成物を射出成形した。引張強度は82MPa、伸度7.0%であり表面外観は○(優れる)であった。
【0026】
[実施例7]
工程(C)をつぎのように行った。ポリアミド樹脂100重量部と実施例2で得られた粉砕後のスラリー200重量部を減圧装置を具備した二軸溶融押出機に投入した。シリンダーの温度は投入口からノズルまで約150〜280℃に設定して実施した。溶融押出は問題なく安定的に実施できた。得られた組成物を射出成形した。引張強度は87MPa、伸度5.5%であり表面外観は○(優れる)であった。
【0027】
[実施例8]
工程(C)をつぎのように行った。実施例2で得られた粉砕後のスラリーを無機物にして約20重量%まで濃縮し、ポリアミド樹脂100重量部と該濃縮したスラリー25重量部を減圧装置を具備した二軸溶融押出機に投入した。シリンダーの温度は投入口からノズルまで約150〜280℃に設定して実施した。溶融押出は問題なく安定的に実施できた。得られた組成物を射出成形した。引張強度は87MPa、伸度6.5%であり表面外観は○(優れる)であった。
【0028】
[比較例1]
ポリアミド樹脂100重量部と実施例2の粉砕前スラリー100重量部を減圧装置を具備した二軸溶融押出機に投入した。シリンダーの温度は投入口からノズルまで約150〜280℃に設定して実施した。溶融押出はサージングが一部起きた。得られた組成物を射出成形した。引張強度は62MPa、伸度4.5%であり表面外観は×(劣る)であった。
【0029】
[比較例2]
ポリアミド樹脂100重量部と実施例2で用いた酸化亜鉛粉体5重量部を減圧装置を具備した二軸溶融押出機に投入した。シリンダーの温度は投入口からノズルまで約280℃に設定して実施した。溶融押出は問題なく安定的に実施できた。得られた組成物を射出成形した。引張強度は70MPa、伸度5.0%であり表面外観は×(劣る)であった。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は、靭性や表面外観に優れる微細な無機物粉体を均一に分散させた熱可塑性樹脂組成物とその製造方法であって、本組成物の組成物は成形用途(自動車部品、工業用途部品、電子部品、ギア等)や押出用途(チューブ、棒、フィラメント、フィルム、ブロー等)、住宅機材(部品)等などの各種産業用部品の材料としての応用が期待される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機物粉体及びスラリー媒液とのスラリーを得る工程(A)、スラリー状態で無機物を粉砕する工程(B)および粉砕後のスラリーと熱可塑性樹脂とを混合し、かつスラリー媒液の除去を行う工程(C)からなる熱可塑性樹脂組成物の製造方法であって、工程(B)で得られる粉砕後のスラリー粘度が2〜2000cPであり、かつ該スラリー中の無機物の重量平均粒子径が0.01〜1μmであることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
【請求項2】
無機物粉体、スラリー媒液および分散剤とのスラリーを得る工程(A)、工程(B)および工程(C)からなる熱可塑性樹脂組成物の製造方法であって、工程(B)で得られる粉砕後のスラリー粘度が2〜2000cPでありかつ該スラリー中の無機物の重量平均粒子径が0.01〜1μmであることを特徴とする請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
【請求項3】
熱可塑性樹脂100重量部に対して、無機物の含有量が0.1〜300重量部であることを特徴とする請求項1あるいは2のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
【請求項4】
工程(B)の装置が、ビーズ径が0.01〜0.3mmであるボールミルであることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
【請求項5】
工程(C)が、粉砕後のスラリー媒液の少なくとも一部を除去した後に、熱可塑性樹脂を混合しかつスラリー媒液を更に除去することを特徴とする請求項1あるいは2のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
【請求項6】
工程(C)が、粉砕後のスラリーと熱可塑性樹脂とを混合し熱可塑性樹脂が溶融あるいは軟化しない温度条件でスラリー媒液を除去し、その後熱可塑性樹脂が溶融あるいは軟化する温度で溶融混練しかつスラリー媒液を更に除去することを特徴とする請求項1あるいは2のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
【請求項7】
工程(C)における混合及びスラリー媒液の除去を溶融混練機で実施すること、を特徴とする請求項4あるいは5のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
【請求項8】
工程(B)と工程(C)とを連続で実施することを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
【請求項9】
スラリー媒液が、水であることを特徴とする請求項8に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
【請求項10】
無機物がタルク、マイカ、ウォラストナイト、カオリン、炭酸カルシウム、フッ化カルシウム、アパタイト、酸化亜鉛、酸化錫、チタン酸カリウム、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、ファーネスブラック、カーボンナノチューブ、グラファイト、黄銅、銅、銀、アルミニウム、ニッケルおよび鉄のいずれか1種以上を用いることを特徴とする請求項9に記載のポリアミド樹脂組成物の製造方法。
【請求項11】
請求項1から10のいずれかに記載の方法で製造される熱可塑性樹脂組成物。

【公開番号】特開2006−169353(P2006−169353A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−362738(P2004−362738)
【出願日】平成16年12月15日(2004.12.15)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】