説明

組成物の製造方法

【課題】平均粒径が1μm以下、好ましくは、0.01〜0.5μmの均一微細な球状の粒子からなる結晶性が高く、A/B比が任意に制御されており、しかも、結晶粒子内のナノメーターサイズの空孔の数が少ないABO3 化合物を含有する組成物を得ることができる改良された水熱合成法による上記組成物の製造方法を提供する。
【解決手段】Ti、Zr、Hf及びSnから選ばれる少なくとも一種のB群元素の含水酸化物を100〜300℃の範囲の温度で水熱反応に付して、上記含水酸化物を脱水する第一工程と、上記第一工程で得られた反応生成物とBa、Sr、Ca、Mg及びPbから選ばれる少なくとも一種のA群元素の水酸化物とを水性媒体の存在下、100〜300℃の範囲の温度で水熱反応させる第二工程を含むことを特徴とするペロブスカイト型化合物を含有する組成物の製造方法が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平均粒径が1μm以下、好ましくは、0.01〜0.5μmの範囲にある均一な球状の粒子からなり、結晶性が高く、A/B比が任意に制御されており、しかも、そのような粒子内に内部空孔の少ないぺロブスカイト型化合物(以下、ABO3 化合物という。)を含有する組成物の製造方法に関する。本発明に従って得られるこのようなABO3 化合物は、従来にないすぐれたABO3 化合物の焼結体、例えば、チタン酸バリウムの層欠陥のない薄層の焼結体を与える。
【背景技術】
【0002】
ABO3 化合物とは、チタン酸カルシウム鉱(ぺロブスカイト)と同様の結晶構造を有する化合物の総称であり、このような化合物は、これを成形した後、焼結することによって、すぐれた誘電性、圧電性及び半導性を有するセラミックス(以下、誘電体セラミックスという。)を与える。このような焼結体は、コンデンサー、フィルター、着火素子、サーミスター等として、今日、通信機、コンピューター等の電子機器に広く用いられている。
【0003】
近年、電子デバイスは、益々、小型高性能化しており、それに伴って、電子機器部品も同様に小型高性能化を目的として、誘電体セラミックスの配合技術、成形技術、焼結技術等の製造工程の改良が種々なされてきている。しかし、そのような製造工程における改良も殆どその限界に達しており、現状より更にすぐれた誘電体セラミックスを得るためには、その素材を改善する必要がある。即ち、平均粒径が1μm以下、好ましくは、0.5μm以下の均一な球状で、分散性のよいABO3 化合物が要望されている。
【0004】
このような特性を有するABO3 化合物が要望される理由は、粒径が小さければ、表面エネルギーが高くなり、形状が球状で粒度分布が均一であれば、成形時のパッキング性がよくなるので、そのようなABO3 化合物は、焼結性が著しく改善され、より低い温度での焼結によって緻密強固な誘電体セラミックスを与えることができる。更に、積層セラミックコンデンサーの薄層化、多積層化を実現するために、厚み5μm以下のセラミックグリーンシートが要求されており、この場合も、平均粒径が1μm以下、好ましくは、0.01〜0.5μmの均一な球状で、分散性のよいABO3 化合物が要望されている。
【0005】
従来、ABO3 化合物、代表的には、チタン酸バリウムは、炭酸バリウムと酸化チタンとを混合し、これを1000℃以上の温度で仮焼した後、湿式粉砕し、濾過、乾燥し、分級する所謂固相法によって製造されている。このような固相法によれば、炭酸バリウムと酸化チタンとの固相反応を完結させるためには、その混合物を高温で十分な時間、仮焼することが必要である。しかし、このような高温での長時間にわたる仮焼を行えば、その間の粒子成長が避けられず、その結果、得られるチタン酸バリウム粒子の粒径を1μm以下に制御することが困難である。また、得られたチタン酸バリウムは、種々の用途に供する場合、焼結体とした後、これを粉砕するので、粒度分布が均一でなく、また、その形状も分散に適しているとはいい難い(非特許文献1参照)。
【0006】
このような問題を解消するために、湿式法によってチタン酸バリウムを製造することが提案されている。この湿式法としては、アルコキシド法、共沈法、シュウ酸法、水熱合成法等を挙げることができるが、しかし、いずれの方法も依然として重要な問題を有している。
【0007】
例えば、アルコキシド法は、バリウムアルコキシドとチタンアルコキシドを混合し、加水分解するか、又はチタンアルコキシドと水酸化バリウムを反応させて、チタン酸バリウムを得るものであるが、用いるアルコキシド原料が高価であるのみならず、副生するアルコールを回収する必要があるので、工業的な実施には問題がある(特許文献1参照)。
【0008】
共沈法によれば、原料も比較的安価であり、しかも、焼結性のよいチタン酸バリウムの粉体を得ることができる。この共沈法の一例によれば、例えば、水溶性バリウム塩とチタン化合物の加水分解生成物とを強アルカリ存在下に加熱して、反応させれば、チタン酸バリウムを得ることができる。しかし、このような方法による場合、得られた反応生成物を洗浄しても、上記反応に用いたアルカリを除去することが困難であって、得られたチタン酸バリウム粉体中にアルカリが不可避的に混入するという問題を有している(例えば、特許文献2参照)。
【0009】
シュウ酸法は、例えば、四塩化チタンと塩化バリウムとシュウ酸を水中で反応させて、シュウ酸バリウムチタニルとし、これを熱分解して、チタン酸バリウムを得る方法である。この方法によるときは、原料として用いる四塩化チタンや塩化バリウムの高純度品を比較的容易に得ることができるので、高純度のチタン酸バリウムを容易に得ることができるという利点がある。しかし、この方法によって沈殿として得られる上記シュウ酸バリウムチタニルがかなり大きい凝集体であり、仮焼時にこの凝集体の骨格が残って、粗大粒子を生成しやすい。また、得られたチタン酸バリウム粉末を焼結して、チタン酸バリウムセラミックスとするとき、誘電損失が高いという問題も有している(例えば、特許文献3参照)。
【0010】
更に、チタン酸バリウムの製造方法として、水酸化バリウムとチタンの水酸化物又は酸化物の混合物を水熱処理する方法が水熱合成法として知られている。この方法によれば、特に分散性のよい均一微細なチタン酸バリウムを得ることができ、かくして、水熱合成法によるチタン酸バリウムは、積層セラミックコンデンサの薄層化、多層化に好ましく用いることができるといわれている。
【0011】
しかし、水熱合成法においては、水酸化バリウムとチタンの水酸化物又は酸化物との反応が100%進行しないため、反応によって得られるチタン酸バリウム中に未反応のチタン成分が固体として混在しており、他方、未反応の水酸化バリウムは得られた反応混合物中に溶解している。従って、反応後、得られた反応混合物を濾過、水洗して、得られたチタン酸バリウムを固形分として反応混合物から分離すれば、上記水溶性のバリウム成分は得られたチタン酸バリウムから除去されるので、得られたチタン酸バリウムはチタン成分を過剰に含んでいる。従って、このようなチタン酸バリウム粉末を焼結しても、同様に、チタン成分の過剰な焼結体しか得られない。しかも、水熱合成によるチタン酸バリウムの製造においては、反応ごとに原料の反応率が微妙に変動するので、電子材料として用いるために予め定めたBa/Ti比に厳密に制御することができず、従って、誘電体セラミックスの原料としては適切なものではなかった(例えば、特許文献4及び非特許文献3参照)。
【0012】
そこで、従来、ABO3 化合物の水熱合成法による製造におけるこのような問題を解決するために、水熱反応後、水性媒体中に溶存するA群元素を不溶化させてA/B比を制御する方法が提案されており、誘電体セラミックスの原料の製造方法として実用化されている(特許文献5参照)。
【0013】
このようにして、水熱合成法によるABO3 化合物の製造において、A/B比の制御の問題は解決されたものの、更に、水熱合成法で製造されたチタン酸バリウムは、その粒子の酸素格子中に水酸基を含んでいるという新たな問題がある。即ち、そのようなチタン酸バリウムを100〜600℃の温度に加熱したとき、脱水反応が起こって、粒子内にナノメーター(nm)サイズの空孔が形成されることが知られている。このようにしてチタン酸バリウム粒子内に形成された空孔は、チタン酸バリウムを薄層の焼結体とする際に、クラックやデラミネーションを引き起こす原因となり、積層セラミックコンデンサーの更なる薄層化、多層化を阻害するので、その解決が求められている(例えば、非特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許第5087437号明細書
【特許文献2】特開昭59−39726号公報
【特許文献3】米国特許第2758911号明細書
【特許文献4】米国特許第2193563号明細書
【特許文献5】特開昭61−31345号公報
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】佐々木▲きょう▼一「チタン酸バリウムとその複合粒子の製造法とプロセス」、粉体工学会誌、粉体工学会、1997年、第34巻、第11号、第862〜874頁
【非特許文献2】諏訪佳子ほか、「アルコキシド共沈法によるBaO−TiO2 系化合物の生成」、粉体及び粉末冶金、1978年、第25巻、第5号、第164〜167頁
【非特許文献3】久保輝喜一郎、「チタン酸バリウム(BaTiO3)の湿式合成法、「工業化学雑誌」、1968年、第71巻、第1号、第114〜118頁
【非特許文献4】ディー・エフ・ケー・ヘニングス(D.F.K. Hennings) ら、「水熱合成によるチタン酸バリウムの欠陥化学と微細構造」、ジャーナル・オブ・アメリカン・セラミック・ソサイアティ(J. Am. Ceram. Soc.)、2001年、第84巻、第1号、第179〜182頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
上述したように、従来、チタン酸バリウムを代表とするABO3 化合物は、コンデンサ、フィルター、サーミスター等の電子部品の小型化や高性能化の要求に対して、十分に応えることができないという問題がある。また、分散性のよい均一微小な球形粒子が得られるという点ですぐれた製造方法といわれている水熱合成法においても、上述したように、加熱の際の脱水によって粒子内にナノメーターサイズの空孔が生成し、そのように、粒子内に空孔を有するチタン酸バリウムを積層セラミックコンデンサーの製造に用いるとき、クラックやデラミネーションを引き起こす問題がある。
【0017】
ここに、本発明は、チタン酸バリウムを代表とするABO3 化合物の製造における上述した問題を解決するためになされたものであって、平均粒径が1μm以下、好ましくは、0.01〜0.5μmの均一微細な球状の粒子からなる結晶性が高く、A/B比が任意に制御されており、しかも、結晶粒子内のナノメータサイズの空孔の数が少ないABO3 化合物を含有する組成物を製造することができる改良された水熱合成法による上記組成物の製造方法を提供することを目的とする。このように、結晶粒子内に空孔の少ないABO3 化合物は、積層セラミックコンデンサーの製造に有利に用いることができる。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明によれば、
Ti、Zr、Hf及びSnから選ばれる少なくとも一種のB群元素の含水酸化物を水性媒体の存在下、80〜300℃の範囲の温度で加熱し、上記含水酸化物を脱水させる第一工程と、
上記第一工程で得られた反応生成物とBa、Sr、Ca、Mg及びPbから選ばれる少なくとも一種のA群元素の水酸化物とを水性媒体の存在下、100〜300℃の範囲の温度で加熱する第二工程
とを含むことを特徴とするペロブスカイト型化合物を含有する組成物の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0019】
本発明に従って、B群元素の含水酸化物を水性媒体の存在下、80〜300℃の範囲の温度で加熱し、脱水して、反応生成物を得た後、この反応生成物とA群元素の水酸化物とを水性媒体の存在下、水熱処理することによって、得られるABO3 化合物を含有する組成物は、平均粒径が1μm以下、好ましくは、0.01〜0.5μmの範囲にある均一な球状の粒子であり、結晶性が高く、A/B比が任意に制御されており、しかも、この組成物に含まれるABO3 化合物は、その結晶粒子内にナノメータサイズの空孔が少なく、通常、粒子100個当り、10個以下である。従って、このような組成物は焼結性にすぐれており、焼結すれば、非常に緻密で誘電性、圧電性、半導性等にすぐれる誘電体セラミックを与える。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施例3において、第一工程で得られた酸化チタンのX線回折図である。
【図2】実施例3において、第一工程で得られた酸化チタンの透過型電子顕微鏡写真である。
【図3】実施例3において、第二工程で得られた組成物のX線回折図である。
【図4】実施例7において、第三工程で得られた組成物のX線回折図である。
【図5】実施例8において、第二工程で得られた組成物のX線回折図である。
【図6】実施例10において、第二工程で得られた組成物のX線回折図である。
【図7】実施例11において、第二工程で得られた組成物のX線回折図である。
【図8】実施例13において、第二工程で得られた組成物のX線回折図である。
【図9】実施例18において、第二工程で得られた組成物のX線回折図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明によるペロブスカイト型化合物を含有する組成物の製造方法において、第一工程は、Ti、Zr、Hf及びSnから選ばれる少なくとも一種のB群元素の含水酸化物を水性媒体、好ましくは、水の存在下、80〜300℃の範囲の温度で加熱し、上記含水酸化物を脱水して、より結晶性の高い反応生成物を微粒子として得るものである。上記反応生成物は、主として、対応するB群元素の酸化物からなる。
【0022】
一般に、B群元素の含水酸化物は、非晶性の固体であるが、これを加熱、脱水することによって、より結晶性の高い酸化物を微粒子として得ることができる。即ち、B群元素の含水酸化物を加熱、脱水することによって、通常、一次粒子径が0.005〜0.4μmの範囲にあり、好ましくは、0.01〜0.2μmの酸化物が主たる生成物である反応生成物を得ることができる。
【0023】
第一工程において、B群元素の含水酸化物を水性媒体の存在下に加熱する温度は80〜300℃の範囲にわたる。常圧下においては、80℃からその水性媒体の煮沸温度(約100℃)の範囲の温度に加熱することができ、水熱反応によれば、約100℃からその水性媒体の臨界温度に加熱することができる。
【0024】
本発明において、B群元素の含水酸化物の水性媒体の存在下の加熱温度は、80℃よりも低いときは、脱水反応が進み難く、他方、高いほど、脱水反応が進みやすく、好ましい。また、得られる反応生成物の粒子径も大きくなる傾向がある。しかし、加熱温度が300℃を越えるときは、反応器の材質として銀等を用いる必要がある等、装置の面から実用上、問題が生じる。特に、本発明によれば、B群元素の含水酸化物の水性媒体の存在下の加熱温度は、100〜300℃の範囲が好ましい。
【0025】
更に、本発明によれば、第一工程において、B群元素の含水酸化物を水性媒体の存在下に加熱する際に、B群元素の脱水反応とその反応生成物の微細化を促進するために、B群元素の含水酸化物を酸や塩基の存在下に加熱してもよい。ここに、上記酸としては、無機酸や有機酸を用いることができ、特に、無機酸としては、塩酸又は硝酸が好ましく用いられる。他方、有機酸としては、有機多価カルボン酸や有機オキシ多価カルボン酸が好ましく用いられ、なかでも、炭素原子数が2〜6の有機多価カルボン酸や有機オキシ多価カルボン酸が好ましく用いられる。具体例として、例えば、シュウ酸、酒石酸又はクエン酸を挙げることができる。また、これらの有機多価カルボン酸や有機オキシ多価カルボン酸のアルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩も好ましく用いられる。
【0026】
他方、塩基としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機塩基、特に、アルカリ金属水酸化物や、アミン類等の有機塩基を挙げることができる。
【0027】
第一工程において、原料として用いるB群元素の含水酸化物は、市販品をそのまま用いてもよいが、また、適宜に調製してもよい。例えば、B群元素の塩にアルカリ等の塩基を作用させる方法、B群元素の塩を水と加熱して加水分解する方法、B群元素の塩に尿素のようなアンモニア発生源を加え、加熱して、加水分解する方法、B群元素のアルコキシドに水を反応させる等の方法によることができるが、しかし、本発明においては、B群元素の含水酸化物は、その調製方法において、特に限定されるものではない。
【0028】
次いで、本発明によれば、第二工程として、上述したようにして得られたB群元素の反応生成物とA群元素の水酸化物とを水性媒体、好ましくは、水の存在下に加熱して、水熱反応させる。この水熱反応の反応温度は100℃からその水性媒体の臨界温度であるが、反応温度が100℃よりも低いときは、A群元素とB群元素の反応が不十分であり、他方、300℃を越える場合には、前述したように、特別な装置を用いる必要がある等の問題があるので、好ましくは、100〜300℃の範囲の温度である。
【0029】
第二工程において用いるA群元素の水酸化物も、市販品をそのまま用いてもよいが、また、適宜に調製してもよい。例えば、A群元素の塩にアルカリ等の塩基を作用させる方法、A群元素の酸化物を水と反応させて加水分解する方法、A群元素のアルコキシドに水を反応させる等の方法によることができるが、しかし、本発明においては、A群元素の水酸化物は、その調製方法において、何ら限定されるものではない。
【0030】
本発明によれば、第二工程において得られるABO3 化合物の微細化や結晶化を促進するために、第一工程におけると同様に、前述したような酸や塩基の存在下に水熱反応を行ってもよい。
【0031】
第二工程において、水熱反応後の反応混合物中には、生成したABO3 化合物と未反応のB群元素の化合物とが固体として存在し、他方、未反応のA群元素の水酸化物は一部又は全部が水性媒体中に溶解しており、かくして、得られたABO3 化合物は、仕込み組成のままのA/B比をもたない。従って、本発明においては、第二工程の水熱反応の終了後、必要に応じて、最終的に得られるABO3 化合物を含有する組成物が所望のA/B比を有するように、A/B比を制御することが好ましい。このようにして、所望のA/B比を有せしめたABO3 化合物を含有する組成物を焼結すれば、最終的に所望のA/B比を有するABO3 化合物の焼結体を得ることができる。
【0032】
このようなA/B比の制御は、従来より知られている方法によって行うことができる。例えば、水熱反応の後、得られた反応混合物を濾過、水洗して、反応混合物中、水性媒体に溶存しているA群元素の化合物を除去した後、得られた反応生成物(固体)のA/B比を分析する。次いで、所望のA/B比になるように、反応生成物にA/B比の制御のための添加剤としてA群元素の化合物を追加的に加えれば、所望のA/B比を有するABO3 化合物を含有する組成物を得ることができ、このような組成物を焼結すれば、所望のA/B比を有する焼結体を得ることができる。
【0033】
ここに、得られた反応生成物に添加剤として加えるA群元素の化合物としては、水性媒体への溶解度が低く、更に、このように添加剤を加えたABO3 化合物を含有する組成物を焼結した際に、その添加剤が熱分解しても、A群元素以外のものが焼結体中に残存しないもの、例えば、炭酸塩、有機酸塩、酸化物等や、また、そのように添加剤を加えたABO3 化合物を含有する組成物を焼結した際に、その添加剤が熱分解して、A群元素以外のものが焼結体中に残存しても、得られる焼結体の特性を損なわないもの、例えば、ケイ酸塩等を挙げることができる。
【0034】
しかし、水溶性のA群元素の化合物も、上述したA/B比の制御のための添加剤として用いることができる。このような水溶性のA群元素の化合物をA/B比の制御のための添加剤として用いるときは、水熱反応によって得られた反応混合物に所要量を加えた後、反応混合物を蒸発乾固すればよい。
【0035】
また、上記以外のA/B比の制御のための添加剤として、得られた反応混合物中に溶存する未反応のA群元素の化合物を水不溶化させる不溶化剤を用いることもできる。このような不溶化剤としては、例えば、炭酸ガス、炭酸ナトリウムや炭酸アンモニウム等の炭酸化合物、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等のようなカルボン酸のアルカリ金属塩、ケイ酸塩、シリカ・アルミ系の無機イオン交換樹脂等を挙げることができる。
【0036】
このような不溶化剤は、水熱反応の後、得られた反応混合物中に溶存しているA群元素を不溶化するに必要な量を反応混合物に加え、そのA群元素を不溶化した後、濾過、水洗すれば、所要のA/B比を有するABO3 化合物を含有する組成物を得ることができ、このような組成物を焼結すれば、所望のA/B比を有する焼結体を得ることができる。
【0037】
本発明によれば、このようにして、第二工程の水熱反応の終了後、必要に応じて、最終的に得られるABO3 化合物を含有する組成物のA/B比を正確に1.00とすることができるのみならず、任意の値のA/B比とすることもできる。
【0038】
前述したように、本発明によれば、水熱反応によって得られる反応混合物には、生成したABO3 化合物のほか、未反応のB群元素の化合物とが固体として存在し、他方、未反応のA群元素の水酸化物は一部又は全部が水性媒体中に溶存しており、更に、上述したように、A/B比を調整した場合には、そのための添加剤や不溶化剤に基づく種々の化合物が生成したABO3 化合物と共に共存している。従って、本発明の方法によって得られるものは、ABO3 化合物を含有する組成物である。
【0039】
本発明によれば、第二工程で得られたABO3 化合物を含有する組成物を、必要に応じて、更に、第三工程として、100〜1200℃の範囲の温度で熱処理してもよい。このように、上記組成物を熱処理することによって、得られた組成物中の未反応のA群元素とB群元素との反応を進めて、得られるABO3 化合物の結晶度を高めることができる。また、必要な場合には、得られるABO3 化合物の粒子径を一層、大きく成長させることができる。このように熱処理した組成物は、粉砕した後、焼結すれば、一層、緻密な焼結体を得ることができる。
【0040】
一般に、ABO3 化合物を含有する組成物の焼結体を製造する場合、通常、組成物の焼結性や得られる焼結体の電気特性を調節するために、例えば、B、Bi、アルカリ金属(例えば、Li、K、Na等)、希土類元素(例えば、Y、Dy、Er、Ho等)、遷移金属(例えば、Mn、Fe、Co、Nb等)、Si、Al等の化合物が添加剤として用いられている。本発明においても、そのような添加剤を組成物中に含有させて、得られた組成物を焼結してもよい。そのような添加剤は、第一工程、第二工程、又は第二工程の終了後のいずれかにおいて添加すればよい。
【実施例】
【0041】
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。以下において、得られた組成物の粒子のうち、空孔を有する粒子の数は、5〜10万倍で粒子の透過型電子顕微鏡写真を撮影し、粒子300個を目視にて観察し、空孔を有する粒子数を数えて、これを100個当りに換算した。
【0042】
実施例1
四塩化チタン94.9g(チタンとして0.5モル)を50℃に保ちながら、これをイオン交換水1300mLに攪拌下に加えて、四塩化チタン水溶液を調製した。この四塩化チタン水溶液に10.0重量%濃度の水酸化ナトリウム水溶液800gを30分間かけて加えて、水酸化チタンスラリーを得た。得られた水酸化チタンを水洗、濾取し、2.0モル/L濃度のスラリーに調整した後、攪拌下、80℃で10時間反応させた(第一工程)。
【0043】
このようにして得られた酸化チタンスラリーの一部をサンプリングして、X線回折にて調べたところ、アナターゼ及びブルッカイト結晶系の酸化チタンの混合物であった。また、電子顕微鏡にて測定したところ、得られた酸化チタンの平均粒径は0.02μmであった。
【0044】
得られた酸化チタンスラリーの全量を濾取して、ポリテトラフルオロエチレン製ビーカーに入れ、更に、窒素雰囲気下に水酸化バリウム八水塩(Ba(OH)2・8H2O)157.7g(Baとして0.5モル)を加え、加水して、スラリー濃度を1.0モル/L(BaTiO3 換算)に調整した。このスラリーをポリテトラフルオロエチレン製ビーカーごと、1L容量のオートクレーブに仕込み、550〜600rpmで攪拌しながら、90分で150℃まで昇温し、150℃にて5時間水熱反応を行った。
【0045】
反応後、得られたスラリーにpHが6.5になるまで炭酸ガスを吹き込んだ後、塩素が検出されなくなるまで水洗し、濾過して、110℃で乾燥して、ABO3 化合物を含有する組成物(以下、組成物という。)を得た(第二工程)。
【0046】
この組成物は、X線回折の結果、立方晶のペロブスカイト構造を有するチタン酸バリウムであることを確認した。また、電子顕微鏡による観察の結果、平均粒子径は0.05μmであり、ナノメーターサイズの空孔が存在する粒子の割合は、100個中、7個であった。蛍光X線にて分析した結果、Ba/Ti比は1.00であった。また、BET比表面積は21m2/gであった。
【0047】
実施例2
実施例1と同様にして、四塩化チタン水溶液を調製し、これより水酸化チタンスラリーを得た。得られた水酸化チタン濾取、水洗して、1.5モル/L濃度のスラリーに調整した後、全量をポリテトラフルオロエチレン製ビーカーに入れ、これを1L容量のオートクレーブに仕込んで、攪拌下、150℃で5時間水熱反応を行った(第一工程)。
【0048】
得られた酸化チタンスラリーの一部をサンプリングして、X線回折により調べたところ、アナターゼ及びブルッカイト結晶系の酸化チタンの混合物であった。また、電子顕微鏡にて測定したところ、得られた酸化チタンの平均一次粒子径は0.02μmであった。
【0049】
得られた酸化チタンスラリーに窒素雰囲気下、水酸化バリウム八水塩315.4gを加え、加水して、スラリー濃度を1.0モル/L(BaTiO3 換算)に調整した。これを再度、1L容量のオートクレーブに仕込み、550〜600rpmで攪拌しながら、90分で150℃まで昇温し、150℃にて5時間水熱反応を行った。
【0050】
反応後、得られた反応混合物に酢酸を加えて、反応混合物のpHを5とした後、スラリーを水洗、濾取した。得られた全濾液中のバリウムをICP(誘導結合高周波プラズマ)法で分析すると、その反応率は0.985であった。ここに、反応率=(仕込みのバリウムのモル数−濾液中のバリウムのモル数)/仕込みのバリウムのモル数)で定義される。
【0051】
このようにして濾取した反応生成物に純水を加え、再び、スラリー化して、塩素が検出されなくなるまで水洗した後、堺化学工業(株)製の微細炭酸バリウム1.48gを加え、ホモジナイザーで十分に分散させた。この後、固形分を濾取し、110℃で乾燥して、ABO3 化合物を含有する組成物(以下、組成物という。)を得た(第二工程)。
【0052】
この組成物は、X線回折の結果、実施例1による組成物と同様に、立方晶のペロブスカイト構造を有するチタン酸バリウムであることを確認した。また、電子顕微鏡による観察の結果、平均粒子径は0.06μmであり、ナノメーターサイズの空孔が存在する粒子の割合は、100個中、8個であった。蛍光X線にて分析した結果、Ba/Ti比は1.00であった。また、BET比表面積は19m2/gであった。
【0053】
実施例3
実施例1と同様にして、四塩化チタン水溶液を調製し、これより水酸化チタンスラリーを得た。得られた水酸化チタン水洗、濾取し、加水して、1.0モル/L濃度のスラリーに調整した後、全量をポリテトラフルオロエチレン製ビーカーに入れ、これに水酸化リチウム(LiOH)1.19gを加えた。これを1L容量のオートクレーブに仕込んで、攪拌下、150℃で5時間水熱反応を行った(第一工程)。
【0054】
得られた酸化チタンスラリーの一部をサンプリングして、X線回折にて調べたところ、図1に示すように、アナターゼ及びブルッカイト結晶系の酸化チタンの混合物であった。また、電子顕微鏡にて測定したところ、図2に示すように、得られた酸化チタンの平均粒径は0.03μmであった。
【0055】
得られた酸化チタンスラリーに窒素雰囲気下、水酸化バリウム八水塩315.4gを加え、加水して、スラリー濃度を1.0モル/L(BaTiO3 換算)に調整した。これを再度、1L容量のオートクレーブに仕込み、550〜600rpmで攪拌しながら、90分で150℃まで昇温し、150℃にて5時間水熱反応を行った。反応後、得られたスラリーを水洗、濾取した。得られた全濾液中のバリウムをICP法で分析すると、その反応率は0.980であった。
【0056】
そこで、上記濾取した反応生成物に純水を加え、再び、スラリー化して、塩素が検出されなくなるまで水洗した後、堺化学工業(株)製の微細炭酸バリウム1.97gを加え、ホモジナイザーで十分に分散させた。この後、固形分を濾取し、110℃で乾燥して、ABO3 化合物を含有する組成物(以下、組成物という。)を得た(第二工程)。
【0057】
この組成物は、X線回折の結果、実施例1による組成物と同様に、図3に示すように、立方晶のペロブスカイト構造を有するチタン酸バリウムであることを確認した。また、電子顕微鏡による観察の結果、平均粒子径は0.04μmであり、ナノメーターサイズの空孔が存在する粒子の割合は、100個中、5個であった。蛍光X線にて分析した結果、Ba/Ti比は1.00であった。また、BET比表面積は25m2/gであった。
【0058】
実施例4
実施例1と同様にして、四塩化チタン水溶液を調製し、これより水酸化チタンスラリーを得た。得られた水酸化チタン水洗、濾取し、加水して、1.0モル/L濃度のスラリーに調整した後、全量をポリテトラフルオロエチレン製ビーカーに入れ、これにクエン酸9.60gを加えた。これを1L容量のオートクレーブに仕込んで、攪拌下、150℃で5時間水熱反応を行った(第一工程)。
【0059】
得られた酸化チタンスラリーの一部をサンプリングして、X線回折により調べたところ、アナターゼ及びブルッカイト結晶系の酸化チタンの混合物であった。また、電子顕微鏡にて測定したところ、得られた酸化チタンの平均一次粒子径は0.02μmであった。
【0060】
得られた酸化チタンスラリーに窒素雰囲気下、水酸化バリウム八水塩315.5gを加え、加水して、スラリー濃度を1.0モル/L(BaTiO3 換算)に調整した。これを再度、1L容量のオートクレーブに仕込み、550〜600rpmで攪拌しながら、90分で150℃まで昇温し、150℃にて5時間水熱反応を行った。反応後、得られたスラリーを水洗、濾取した。得られた全濾液中のバリウムをICP法で分析すると、その反応率は0.997であった。
【0061】
そこで、上記濾取した反応生成物にイオン交換水を加え、再び、スラリー化して、塩素が検出されなくなるまで水洗した後、堺化学工業(株)製の微細炭酸バリウム2.27gを加え、ホモジナイザーで十分に分散させた。この後、固形分を濾取し、110℃で乾燥して、ABO3 化合物を含有する組成物(以下、組成物という。)を得た(第二工程)。
【0062】
この組成物は、X線回折の結果、実施例1による組成物と同様に、立方晶のペロブスカイト構造を有するチタン酸バリウムであることを確認した。また、電子顕微鏡による観察の結果、平均粒子径は0.06μmであり、ナノメーターサイズの空孔が存在する粒子の割合は、100個中、4個であった。蛍光X線にて分析した結果、Ba/Ti比は1.02であった。また、BET比表面積は21m2/gであった。
【0063】
実施例5
窒素雰囲気下にチタンイソプロポキシド142.17g(チタンとして0.5モル)をイソプロピルアルコール300mLに溶解させ、得られた溶液に攪拌下にイオン交換水70mLを60分間かけて加えて、水酸化チタンスラリーを得た。得られた水酸化チタン水洗、濾取し、加水して、2.0モル/L濃度のスラリーに調整した後、攪拌下、80℃で10時間加熱した(第一工程)。
【0064】
得られた酸化チタンスラリーの一部をサンプリングして、X線回折にて調べたところ、アナターゼ結晶系の酸化チタンであった。また、電子顕微鏡にて測定したところ、得られた酸化チタンの平均粒径は0.01μmであった。
【0065】
得られた酸化チタンスラリーを全量、濾取し、ポリテトラフルオロエチレン製ビーカーに入れ、更に、これに窒素雰囲気下にバリウムイソプロポキシド111.8gを加え、加水して、スラリー濃度を1.0モル/L(BaTiO3 換算)に調整した。これを1L容量のオートクレーブに仕込み、550〜600rpmで攪拌しながら、90分で150℃まで昇温し、150℃にて5時間水熱反応を行った。反応後、得られたスラリーにpH5.6になるまで、炭酸ガスを吹き込んだ後、塩素が検出されなくなるまで水洗した後、濾過し、110℃で乾燥した(第二工程)。
【0066】
このようにして、第二工程で得られた組成物を電気炉にて約1000℃で熱処理した後、ジルコニアボールを用いるナイロン製ポットミルにて湿式粉砕して、ABO3 化合物を含有する組成物(以下、組成物という。)を得た。この組成物は、X線回折の結果、正方晶のペロブスカイト構造を有するチタン酸バリウムであることを確認した。また、電子顕微鏡による観察の結果、平均粒子径は0.4μmであり、ナノメーターサイズの空孔が存在する粒子の割合は、100個中、6個であった。蛍光X線にて分析した結果、Ba/Ti比は1.00であった。また、BET比表面積は2.8m2/gであった。
【0067】
実施例6
四塩化チタン94.9g(チタンとして0.5モル)を50℃に保ちながら、攪拌下にイオン交換水1300mLに加えて、四塩化チタン水溶液を調製した。この四塩化チタン水溶液に硝酸マンガン(Mn(NO3)2・6H2O)0.061gを加え、更に、10.0重量%濃度の水酸化ナトリウム水溶液800gを30分間かけて加えて、マンガンを含有する水酸化チタンスラリーを得た。このマンガンを含有する水酸化チタンスラリーを水洗、濾取し、加水して、2.0モル/L濃度のスラリーとした後、攪拌下、80℃に加熱して、10時間反応させた(第一工程)。このようにして得られたマンガンを含有する酸化チタンは、電子顕微鏡にて測定したところ、その平均粒径は0.02μmであった。以下、実施例1と同様にして、ABO3 化合物を含有する組成物(以下、組成物という。)を得た。
【0068】
この組成物は、X線回折の結果、立方晶のペロブスカイト構造を有するチタン酸バリウムであることを確認した。また、電子顕微鏡による観察の結果、平均粒子径0.05μmの球状の粒子であり、ナノメーターサイズの空孔が存在する粒子の割合は、100個中、7個であった。ICP分析によるマンガンの含有量は0.01重量%であり、蛍光X線にて分析した結果、Ba/Ti比は1.00であった。また、BET比表面積は21m2/gであった。
【0069】
実施例7
実施例1で得られた組成物を電気炉中、900℃で仮焼した後、イオン交換水とジルコニアビーズを用いて遊星ボールミルで湿式粉砕して、ABO3 化合物を含有する組成物(以下、組成物という。)を得た。
【0070】
この組成物は、X線回折の結果、図4に示すように、正方晶のペロブスカイト構造を有するチタン酸バリウムであることを確認した。また、電子顕微鏡による観察の結果、平均粒子径は0.2μmであり、ナノメーターサイズの空孔が存在する粒子の割合は、100個中、7個であった。
【0071】
実施例8
実施例1と同様にして、四塩化チタン水溶液を調製し、この四塩化チタン水溶液に5.0重量%濃度のアンモニア水溶液503mLを30分間かけて加えて、水酸化チタンスラリーを得た。得られた水酸化チタン水洗、濾取し、加水して、1.5モル/L濃度のスラリーに調整した後、全量をポリテトラフルオロエチレン製ビーカーに入れ、これを1L容量のオートクレーブに仕込んで、攪拌下、150℃で5時間水熱反応を行った(第一工程)。
【0072】
得られた酸化チタンスラリーの一部をサンプリングして、X線回折にて調べたところ、アナターゼ結晶系の酸化チタンであった。また、電子顕微鏡にて測定したところ、得られた酸化チタンの平均粒径は0.02μmであった。
【0073】
得られた酸化チタンスラリーに窒素雰囲気下、水酸化ストロンチウム八水塩(Sr(OH)2・8H2O)265.8gを加え、加水して、スラリー濃度を1.0モル/L(SrTiO3 換算)に調整した。以下、実施例2と同様にして、ABO3 化合物を含有する組成物(以下、組成物という。)を得た。
【0074】
この組成物は、X線回折の結果、図5に示すように、立方晶のペロブスカイト構造を有するチタン酸ストロンチウムであることを確認した。また、電子顕微鏡による観察の結果、平均粒子径は0.05μmであり、ナノメーターサイズの空孔が存在する粒子の割合は、100個中、5個であった。蛍光X線にて分析した結果、Sr/Ti比は1.00であった。また、BET比表面積は22m2/gであった。
【0075】
実施例9
実施例1と同様にして、四塩化チタン水溶液を調製し、この四塩化チタン水溶液にイオン交換水197mLを加えた後、更に、この四塩化チタン水溶液に80℃に保った30重量%濃度の尿素水溶液283gを100分間かけて加えた。次いで、昇温し、沸騰させて、10時間還流させた後、5重量%濃度のアンモニア水溶液を加え、pHを10とした後、塩素が検出されなくなるまで水洗して、水酸化チタンスラリーを得た。以下、実施例8と同様にして、水酸化チタンスラリーから酸化チタンスラリーを得た(第一工程)。このようにして得られた酸化チタンは、電子顕微鏡にて測定したところ、その平均粒径は0.03μmであった。
【0076】
別途、30重量%濃度の硝酸鉛(Pb(NO3)2)水溶液1104g(鉛として0.5モル)に80℃に保った30重量%濃度の尿素水溶液240gを200分間かけて加えた。次いで、昇温し、沸騰させて、10時間還流させた後、5重量%濃度のアンモニア水溶液を加え、pHを10とした後、塩素と硝酸イオンが検出されなくなるまで水洗して、水酸化鉛スラリーを得た。
【0077】
この水酸化鉛スラリーを上記酸化チタンスラリーに加え、更に20重量%濃度の水酸化ナトリウム水溶液50gを加え、加水して、スラリー濃度を1.0モル/L(PbTiO3 換算)に調整した。以下、実施例2と同様にして、ABO3 化合物を含有する組成物(以下、組成物という。)を得た。
【0078】
この組成物は、X線回折の結果、ペロブスカイト構造を有するチタン酸鉛であることを確認した。また、電子顕微鏡による観察の結果、平均粒子径が0.05μmの球状粒子であり、ナノメーターサイズの空孔が存在する粒子の割合は、100個中、9個であった。蛍光X線にて分析した結果、Pb/Ti比は1.00であった。また、BET比表面積は17m2/gであった。
【0079】
実施例10
窒素雰囲気下にジルコニウムイソプロポキシド163.78g(ジルコニウムとして0.5モル)をイソプロピルアルコール300mLに溶解させ、得られた溶液に攪拌下にイオン交換水70mLを60分間かけて加えて、水酸化ジルコニウムスラリーを得た。得られた水酸化ジルコニウムを水洗、濾取し、加水して、1.5モル/L濃度のスラリーに調整した後、全量をポリテトラフルオロエチレン製ビーカーに入れ、これを1L容量のオートクレーブに仕込み、攪拌下、150℃で5時間水熱処理した(第一工程)。このようにして得られた酸化ジルコニウムは、電子顕微鏡にて測定したところ、その平均粒径は0.04μmであった。
【0080】
得られた酸化ジルコニウムスラリーに窒素雰囲気下に水酸化バリウム八水塩315.4gを加え、加水して、スラリー濃度を1.0モル/L(BaZrO3 換算)に調整した。以下、実施例2と同様にして、ABO3 化合物を含有する組成物(以下、組成物という。)を得た。
【0081】
この組成物は、X線回折の結果、図6に示すように、立方晶のペロブスカイト構造を有するジルコン酸バリウムであることを確認した。また、電子顕微鏡による観察の結果、平均粒子径が0.08μmの球状粒子であり、ナノメーターサイズの空孔が存在する粒子の割合は、100個中、6個であった。蛍光X線にて分析した結果、Ba/Zr比は1.00であった。また、BET比表面積は15m2/gであった。
【0082】
実施例11
実施例1と同様にして、水酸化チタンスラリーを得、得られた水酸化チタン水洗、濾取し、加水して、1.5モル/L濃度のスラリーに調整した後、全量をポリテトラフルオロエチレン製ビーカーに入れ、これを1L容量のオートクレーブに仕込んで、攪拌下、150℃で5時間水熱反応を行った(第一工程)。このようにして得られた酸化チタンは、電子顕微鏡にて測定したところ、その平均粒径は0.02μmであった。
【0083】
得られた酸化チタンスラリーに窒素雰囲気下、酸化カルシウム(CaO)56.1gを加え、加水して、スラリー濃度を1.0モル/L(CaTiO3 換算)に調整した。以下、実施例2と同様にして、ABO3 化合物を含有する組成物(以下、組成物という。)を得た。
【0084】
この組成物は、X線回折の結果、図7に示すように、斜方晶のペロブスカイト構造を有するチタン酸カルシウムであることを確認した。また、電子顕微鏡による観察の結果、平均粒子径は0.06μmであり、ナノメーターサイズの空孔が存在する粒子の割合は、100個中、8個であった。蛍光X線にて分析した結果、Ca/Ti比は1.00であった。また、BET比表面積は21m2/gであった。
【0085】
実施例12
実施例10と同様にして、ジルコニウムイソプロポキシドから酸化ジルコニウムスラリーを得た(第一工程)。得られた酸化ジルコニウムスラリーに窒素雰囲気下に水酸化ストロンチウム八水塩(Sr(OH)2・8H2O)265.8gを加え、加水して、スラリー濃度を1.0モル/L(SrZrO3 換算)に調整した。以下、実施例2と同様にして、ABO3 化合物を含有する組成物(以下、組成物という。)を得た。
【0086】
この組成物は、X線回折の結果、ペロブスカイト構造を有するジルコン酸ストロンチウムであることを確認した。また、電子顕微鏡による観察の結果、平均粒子径が0.07μmの球状粒子であり、ナノメーターサイズの空孔が存在する粒子の割合は、100個中、8個であった。蛍光X線にて分析した結果、Sr/Zr比は1.00であった。また、BET比表面積は16m2/gであった。
【0087】
実施例13
四塩化チタン75.9g(チタンとして0.4モル)を50℃に保ちながら、これをイオン交換水1300mLに攪拌下に加え、更に、178g/L濃度のオキシ塩化ジルコニウム水溶液100mL(ジルコニウムとして0.1モル)を混合して、四塩化チタン−オキシ塩化ジルコニウム混合水溶液を調製した。この四塩化チタン−オキシ塩化ジルコニウム混合水溶液に10.0重量%濃度の水酸化ナトリウム水溶液800gを30分間かけて加えて、水酸化チタンジルコニウム共沈物スラリーを得た。
【0088】
この水酸化チタンジルコニウム共沈物を水洗、濾取し、加水して、1.5モル/Lのスラリーに調整した後、その全量をポリテトラフルオロエチレン製ビーカーに入れ、これを1L容量のオートクレーブに仕込んで、攪拌下、150℃にて5時間水熱反応を行った(第一工程)。このようにして得られた酸化チタンジルコニウムは、電子顕微鏡にて測定したところ、その平均粒径は0.03μmであった。
【0089】
得られた酸化チタンジルコニウムスラリーに窒素雰囲気下に水酸化バリウム八水塩315.4gを加え、加水して、スラリー濃度を1.0モル/L(BaTi0.8Zr0.23 換算)に調整した。以下、実施例2と同様にして、ABO3 化合物を含有する組成物(以下、組成物という。)を得た。
【0090】
この組成物は、X線回折の結果、図8に示すように、立方晶のペロブスカイト構造を有するチタン酸ジルコン酸バリウムであることを確認した。また、電子顕微鏡による観察の結果、平均粒子径が0.06μmの球状粒子であり、ナノメーターサイズの空孔が存在する粒子の割合は、100個中、3個であった。蛍光X線にて分析した結果、Ba/(Ti+Zr)比は1.00であった。また、BET比表面積は18m2/gであった。
【0091】
実施例14
四塩化チタン94.5g(チタンとして0.5モル)にイオン交換水200mLを加えて、四塩化チタン水溶液を調製した。80℃に保った30重量%濃度の尿素水溶液283gに上記四塩化チタン水溶液を1時間かけて加えた。次いで、昇温し、沸騰させて、10時間還流させた後、5重量%濃度のアンモニア水溶液を加え、pHを10として、水酸化チタンスラリーを得た。この水酸化チタンを水洗、濾取し、加水して、2.0モル/Lのスラリーに調整した後、攪拌下に80℃で10時間加熱した(第一工程)。このようにして得られた酸化チタンは、電子顕微鏡にて測定したところ、その平均粒径は0.02μmであった。
【0092】
このようにして得られた酸化チタンスラリー全量を濾取し、ポリテトラフルオロエチレン製ビーカーに入れ、これに窒素雰囲気下に水酸化バリウム八水塩126.2gと水酸化ストロンチウム八水塩26.6gとを加え、加水して、スラリー濃度を1.0モル/L(Ba0.8Sr0.2TiO3 換算)に調整した。以下、実施例1と同様にして、ABO3 化合物を含有する組成物(以下、組成物という。)を得た。
【0093】
この組成物は、X線回折の結果、立方晶のペロブスカイト構造を有するチタン酸バリウムストロンチウムであることを確認した。また、電子顕微鏡による観察の結果、平均粒子径が0.04μmの球状粒子であり、ナノメーターサイズの空孔が存在する粒子の割合は、100個中、4個であった。蛍光X線にて分析した結果、(Ba+Sr)/Ti比は1.00であった。また、BET比表面積は22m2/gであった。
【0094】
実施例15
四塩化チタン85.4g(チタンとして0.45モル)を50℃に保ちながら、これをイオン交換水1300mLに攪拌下に加え、更に、これに40重量%濃度の四塩化スズ(SnCl4) 水溶液を加えて、四塩化チタン−四塩化スズ混合水溶液を調製した。この四塩化チタン−四塩化スズ混合水溶液に10.0重量%濃度の水酸化ナトリウム水溶液800gを30分間かけて加えて、水酸化チタンスズ共沈物スラリーを得た。
【0095】
この水酸化チタンスズ共沈物を水洗、濾取し、加水して、1.5モル/Lのスラリーに調整した後、その全量をポリテトラフルオロエチレン製ビーカーに入れ、これを1L容量のオートクレーブに仕込んで、攪拌下、150℃にて5時間水熱反応を行った(第一工程)。このようにして得られた酸化チタンスズは、電子顕微鏡にて測定したところ、その平均粒径は0.04μmであった。
【0096】
得られた酸化チタンスズスラリーに窒素雰囲気下に水酸化バリウム八水塩315.4gを加え、加水して、スラリー濃度を1.0モル/L(BaTi0.9Sn0.13 換算)に調整した。以下、実施例2と同様にして、ABO3 化合物を含有する組成物(以下、組成物という。)を得た。
【0097】
この組成物は、X線回折の結果、立方晶のペロブスカイト構造を有するチタン酸スズ酸バリウムであることを確認した。また、電子顕微鏡による観察の結果、平均粒子径が0.06μmの球状粒子であり、ナノメーターサイズの空孔が存在する粒子の割合は、100個中、7個であった。蛍光X線にて分析した結果、Ba/(Ti+Sn)比は1.00であった。また、BET比表面積は17m2/gであった。
【0098】
実施例16
実施例14と同様にして、四塩化チタンから酸化チタンスラリーを得た(第一工程)。得られた酸化チタンスラリー全量を濾取して、ポリテトラフルオロエチレン製ビーカーに入れ、更に、窒素雰囲気下に水酸化バリウム八水塩149.8gと水酸化マグネシウム(Mg(OH)2) 1.5gを加え、加水して、スラリー濃度を1.0モル/L(Ba0.95Mg0.05TiO3 換算)に調整した。以下、実施例1と同様にして、第二工程を行った。
【0099】
第二工程で得られた組成物を電気炉にて800℃で熱処理した後、ジルコニアボールを用いるナイロン製ポットミルにて湿式粉砕して、ABO3 化合物を含有する組成物(以下、組成物という。)を得た。
【0100】
この組成物は、X線回折の結果、ペロブスカイト構造を有するチタン酸バリウムマグネシウムであることを確認した。また、電子顕微鏡による観察の結果、平均粒子径は0.1μmであり、ナノメーターサイズの空孔が存在する粒子の割合は、100個中、8個であった。蛍光X線にて分析した結果、(Ba+Mg)/Ti比は1.00であった。また、BET比表面積は14m2/gであった。
【0101】
実施例17
窒素雰囲気下にチタンイソプロポキシド127.98g(チタンとして0.45モル)とハフニウムイソプロポキシド20.74g(ハフニウムとして0.05モル)をイソプロピルアルコール500mLに溶解させ、2時間加熱還流させた。得られた溶液に攪拌下にイオン交換水70mLを60分間かけて加えて、水酸化チタンハフニウム共沈物スラリーを得た。得られた水酸化チタンハフニウム共沈物を水洗、濾取し、加水して、1.5モル/L濃度のスラリーに調整した後、全量をポリテトラフルオロエチレン製ビーカーに入れ、これを1L容量のオートクレーブに仕込み、攪拌下、200℃で5時間水熱処理した(第一工程)。このようにして得られた酸化チタンハフニウムは、電子顕微鏡にて測定したところ、その平均粒径は0.03μmであった。
【0102】
このようにして得られた酸化チタンハフニウムスラリーに窒素雰囲気下に水酸化バリウム八水塩315.4gを加え、加水して、スラリー濃度を1.0モル/L(BaTi0.9Hf0.13 換算)に調整した。以下、実施例2と同様にして、ABO3 化合物を含有する組成物(以下、組成物という。)を得た。
【0103】
この組成物は、X線回折の結果、ペロブスカイト構造を有するチタン酸ハフニウム酸バリウムであることを確認した。また、電子顕微鏡による観察の結果、平均粒子径が0.05μmの球状粒子であり、ナノメーターサイズの空孔が存在する粒子の割合は、100個中、4個であった。蛍光X線にて分析した結果、Ba/(Ti+Hf)比は1.00であった。また、BET比表面積は19m2/gであった。
【0104】
実施例18
四塩化チタン75.9g(チタンとして0.4モル)を50℃に保ちながら、これをイオン交換水1300mLに攪拌下に加え、更に、178g/L濃度のオキシ塩化ジルコニウム水溶液100mLを加えて、四塩化チタン−オキシ塩化ジルコニウム混合水溶液を調製した。この四塩化チタン−オキシ塩化ジルコニウム混合水溶液に10.0重量%濃度の水酸化ナトリウム水溶液800gを30分間かけて加えて、水酸化チタンジルコニウム共沈物スラリーを得た。
【0105】
この水酸化チタンジルコニウム共沈物を水洗、濾取し、加水して、1.5モル/Lのスラリーに調整した後、その全量をポリテトラフルオロエチレン製ビーカーに入れ、これを1L容量のオートクレーブに仕込んで、攪拌下、150℃にて5時間水熱反応を行った(第一工程)。このようにして得られた酸化チタンジルコニウムは、電子顕微鏡にて測定したところ、その平均粒径は0.03μmであった。
【0106】
得られた酸化チタンジルコニウムスラリーに窒素雰囲気下に水酸化バリウム八水塩149.8gと水酸化カルシウム(Ca(OH) 2) 1.9gを加え、加水して、スラリー濃度を1.0モル/L(Ba0.95Ca0.05Ti0.8Zr0.23 換算)に調整した。以下、実施例1と同様にして、第二工程を行った。
【0107】
第二工程で表される得られた組成物を電気炉にて900℃で熱処理した後、ジルコニアボールを用いるナイロン製ポットミルにて湿式粉砕して、ABO3 化合物を含有する組成物(以下、組成物という。)を得た。
【0108】
この組成物は、X線回折の結果、図9に示すように、立方晶のペロブスカイト構造を有するチタン酸ジルコン酸バリウムカルシウムであることを確認した。また、電子顕微鏡による観察の結果、平均粒子径が0.2μmの球状粒子であり、ナノメーターサイズの空孔が存在する粒子の割合は、100個中、7個であった。蛍光X線にて分析した結果、(Ba+Ca)/(Ti+Zr)比は1.00であった。また、BET比表面積は7m2/gであった。
【0109】
比較例1
高純度炭酸バリウムと高純度酸化チタンを等モル比にて混合し、十分に乾燥させた後、1200℃で2時間仮焼した。得られた仮焼物をジルコニアボールを用いるポリエチレン製ポットミルにて湿式粉砕して、ABO3 化合物を含有する組成物(以下、組成物という。)を得た。
【0110】
この組成物は、X線回折の結果、正方晶のペロブスカイト構造を有するチタン酸バリウムであることを確認した。X線回折の(111)面の半値幅の値をシェーラー(Scherrer) の式に当てはめて算出した結晶子の値は1200Åであった。このチタン酸バリウム粒子は、電子顕微鏡による観察の結果、平均粒子径1.6μmの不揃いな破砕状物であった。蛍光X線にて分析した結果、Ba/Ti比は1.00であった。また、BET比表面積は1.2m2/gであった。
【0111】
比較例2
四塩化チタン94.9g(チタンとして0.5モル)を50℃に保ちながら、これをイオン交換水1300mLに攪拌下に加えて、四塩化チタン水溶液を調製した。この四塩化チタン水溶液に10.0重量%濃度の水酸化ナトリウム水溶液800gを30分間かけて加えて、水酸化チタンスラリーを得た。
【0112】
この水酸化チタンを水洗し、濾取した。これを加熱処理することなく(即ち、第一工程なしにて)、加水して、2.0モル/Lのスラリーに調整した後、その全量をポリテトラフルオロエチレン製ビーカーに入れ、更に、これに水酸化バリウム八水塩157.7gを加え、加水して、スラリー濃度を1.0モル/L(BaTiO3 換算)に調整した。
【0113】
これを1L容量のオートクレーブに仕込んで、550〜600rpmで攪拌しながら、90分で150℃まで昇温し、150℃にて5時間水熱反応を行った。この水熱反応の後、得られたスラリーにpHが6.5になるまで、炭酸ガスを吹き込んだ後、塩素が検出されなくなるまで水洗し、濾過し、110℃で乾燥して、ABO3 化合物を含有する組成物(以下、組成物という。)を得た。
【0114】
この組成物は、X線回折の結果、立方晶のペロブスカイト構造を有するチタン酸バリウムであることを確認した。蛍光X線にて分析した結果、Ba/Ti比は1.00であった。BET比表面積は13m2/gであった。しかし、電子顕微鏡による観察の結果、得られた組成物は平均粒子径0.1μmの球状粒子であったが、ナノメーターサイズの空孔が存在する粒子の割合は、100個中、32個であった。
【0115】
比較例3
比較例2で得られた組成物を実施例7と同様にして仮焼した後、湿式粉砕して、ABO3 化合物を含有する組成物(以下、組成物という。)を得た。この組成物は、X線回折の結果、正方晶のペロブスカイト構造を有するチタン酸バリウムであることを確認した。このチタン酸バリウム粒子は、電子顕微鏡による観察の結果、平均粒子径は0.2μmであった。ナノメーターサイズの空孔が存在する粒子の割合は、100個中、37個であった。




【特許請求の範囲】
【請求項1】
Ti、Zr、Hf及びSnから選ばれる少なくとも一種のB群元素の含水酸化物を100〜300℃の範囲の温度で水熱反応に付して、上記含水酸化物を脱水する第一工程と、
上記第一工程で得られた反応生成物とBa、Sr、Ca、Mg及びPbから選ばれる少なくとも一種のA群元素の水酸化物とを水性媒体の存在下、100〜300℃の範囲の温度で水熱反応させる第二工程
を含むことを特徴とするペロブスカイト型化合物を含有する組成物の製造方法。
【請求項2】
第一工程において、Ti、Zr、Hf及びSnから選ばれる少なくとも一種のB群元素の含水酸化物を150〜300℃の範囲の温度で水熱反応に付して、上記含水酸化物を脱水する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第二工程で得られた組成物を800〜1200℃で熱処理する第三工程を含む請求項1に記載の方法。
【請求項4】
第一工程において、B群元素の含水酸化物を無機酸の存在下に加熱する請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
無機酸が硝酸又は塩酸である請求項4に記載の方法。
【請求項6】
第一工程において、B群元素の含水酸化物を有機酸の存在下に加熱する請求項1又は2に記載の方法。
【請求項7】
有機酸が有機多価カルボン酸、有機オキシ多価カルボン酸、それらのアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩である請求項6に記載の方法。
【請求項8】
第一工程において、B群元素の含水酸化物を塩基の存在下に加熱する請求項1又は2に記載の方法。
【請求項9】
塩基がアルカリ金属水酸化物又はアミン類である請求項8に記載の方法。



【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−120850(P2010−120850A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−13115(P2010−13115)
【出願日】平成22年1月25日(2010.1.25)
【分割の表示】特願2003−310593(P2003−310593)の分割
【原出願日】平成15年9月2日(2003.9.2)
【出願人】(000174541)堺化学工業株式会社 (96)
【Fターム(参考)】