組換えウイルスワクチン
本発明は、新規な組換えウイルスワクチンに関する。詳しくは、本発明は、組換えウイルスベクターと、その組換えウイルスベクターによりin vivoで惹起される免疫応答を向上させる特異的化合物とを含んでなる組合せ生成物を提供する。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、新規な組換えウイルスワクチンを提供する。詳しくは、本発明は、組換えウイルスベクターと、その組換えウイルスベクターによりin vivoで惹起される免疫応答を向上させ得る特異的化合物とを含んでなる組合せ生成物を提供する。
【0002】
免疫応答を誘発し得る抗原の動物系への導入とそれによる該動物の感染からの保護を含む従来のワクチン技術は長年知られてきた。これらの技術は生ワクチンおよび不活化ワクチンの双方の開発を含んでいた。生ワクチンは一般に、病原型の感染因子に対する免疫応答を誘導し得る、弱毒された非病原型の感染因子である。近年、目的とする外来抗原がコードされ、ベクターから発現される組換えワクチン、特に、組換え生ワクチンの開発が進んでいる。中でも、組換えウイルスに基づくベクターは極めて有望であることが示され、新たなワクチンの開発に重要な役割を果たす。多くのウイルスの、外来病原体からタンパク質または腫瘍組織からタンパク質を発現し、in vivoにおいてこれらの抗原に対する特異的免疫応答を誘発する能力に関して検討されてきた。一般に、これらの遺伝子に基づくワクチンは潜在的な体液性免疫応答および細胞性免疫応答を刺激することができ、ウイルスベクターは、抗原をコードする遺伝子の送達と抗原提示の促進および増強の双方に関して効果的な戦略となり得る。ワクチン担体として用いるために、理想的なウイルスベクターは安全であり、かつ、必要な病原体特異的抗原の免疫系への効率的な提示が可能でなければならない。また、それは、適切な特異的免疫応答を増強するために、その再投与を可能とするよう、低い固有免疫原性を示すべきである。さらに、ベクター系は、その大規模生産を可能とする基準を満たさなければならない。このように、これまでに数種のウイルスワクチンベクターが現れ、それらは全て、提案される適用に応じた相対的利点と制限を有し、これまでのところ理想的なワクチン担体であると分かったものは無い。
【0003】
組換えポックスウイルスベクターはウイルスワクチンベクターの例である。それらはCD4+およびCD8+T細胞を誘導する体液性免疫応答および細胞性免疫応答の双方の誘導物質として使用されており、従って、特に癌または抗ウイルス性の免疫療法における送達系の選択肢となる(Arlen et al., 2005, Semin Oncol., 32, 549-555またはEssajee and Kaufman, 2004, Expert Opin Biol Ther., 4, 575-588参照)。他のワクチン接種療法と比較した場合のポックスウイルスワクチン接種に関連する利点(例えば、Souza et al, 2005, Braz J Med Biol Res, 38, 509-522参照)にもかかわらず、やはり、該ワクチンによって誘発される免疫応答を増強する役割を果たす、このウイルスベクターに適合したアジュバント化合物を開発することが望ましい。
【0004】
近年、免疫系のある重要な側面を刺激することによって働く新たな薬剤化合物を発見するために多大な努力がなされてき、著しい成功を収めている。これらの化合物は免疫応答修飾剤(IRM)またはアジュバントと呼ばれ、Toll様受容体(TLR)を介した基礎的免疫系機構によって、種々の重要なサイトカイン生合成(例えば、インターフェロン、インターロイキン、腫瘍壊死因子など)を誘発する働きをすると思われる。このような化合物はある種の単球/マクロファージ由来サイトカインの迅速放出を刺激することが示されており、また、B細胞を刺激して、IRM化合物の抗ウイルス活性および抗腫瘍活性に重要な役割を果たす抗体を分泌させることができる。IRMにより誘発されたる主要な免疫刺激応答の1つがインターフェロンIFN−α産生の誘発であり、見られる急激な抗ウイルス活性および抗腫瘍活性に極めて重要であると考えられている。さらに、例えば、腫瘍壊死因子(TNF)、IL−IおよびIL−6などの他のサイトカインのアップレギュレーションも潜在的に有益な活性を有し、これらの化合物の抗ウイルス特性および抗腫瘍特性に寄与すると考えられている。免疫応答修飾剤(IRM)は、ウイルス疾患(例えば、ヒトパピローマウイルス、肝炎、ヘルペス)、新生物(例えば、基底細胞癌、扁平上皮癌、紫外線角化症、黒色腫)、およびTH2介在性疾患(例えば、喘息、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎)を含む多様な疾病および症状を処置するのに有用である開示されている。
【0005】
このような免疫応答修飾剤(IRM)の例としては、CpGオリゴヌクレオチド(例えば、米国特許第6,194,388号;US2006094683;WO2004039829参照)、リポ多糖、ポリイノシン酸:ポリシチジル酸複合体(Kadowaki, et al., 2001, J. Immunol. 166, 2291-2295)、ならびに樹状細胞および/または単球/マクロファージからのサイトカイン産生を誘発することが知られているポリペプチドおよびタンパク質が上げられる。このような免疫応答修飾剤(IRM)のその他の例としては、イミダゾキノリンアミン、イミダゾピリジンアミン、6,7−縮合シクロアルキルイミダゾピリジンアミン、イミダゾナフチリジンアミン、オキサゾロキノリンアミン、チアゾロキノリンアミンおよび1,2−架橋イミダゾキノリンアミンなどの小有機分子がある(例えば、米国特許第4,689,338号、同第5,389,640号、同第6,110,929号および同第6,331,539号参照)。
【0006】
特に、イミダゾキノリンアミンは、in vitroおよびin vivoにおいてインターフェロン−α(IFN)、腫瘍壊死因子−α(TNF)、インターロイキンIL−1β、IL−6、IL−1α、IL−1受容体アンタゴニスト、IL−10、顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、顆粒球CSF(G−CSF)およびマクロファージ炎症性タンパク質−1αの誘導物質としての強い効力が実証されており(Gibson et al., 1995, J Interferon Cytokine Res. ,15, 537-545; Tomai et al., 1995, Antiviral Res., 28, 253-264; Testerman et al., 1995, J Leukoc Biol., 58, 365-372)、抗ウイルス活性、抗増殖活性および抗腫瘍活性を含む多様な生物機能を生じることが示されている(総説としては、Syed, 2001, Expert Opin Pharmacother., 2, 877-882またはLi et al, 2005, J Drugs Dermatol., 4, 708-717参照)。より詳しくは、特許出願WO93/20847の発明者らは、イミダゾキノリンアミンは、生ウイルスおよび細菌免疫原、腫瘍由来、原虫、生物由来、真菌および細菌免疫原、トキソイド、毒素、多糖、タンパク質、糖タンパク質、ペプチドなどの特定の抗原がこのカテゴリーの化合物と同時投与された際に、これらの抗原に対する免疫応答を増強し得ることを示している。イミダゾキノリンアミン化合物の抗ウイルス活性はさらに、種々のウイルス、特に、ポックスウイルスに対しても実証されており(Bikowski, 2004, Cutis., 73, 202-206; US 20050048072)、これらの臨床的有効性が生器疣贅(Scheinfeld and Lehman, 2006, Dermatol Online J., 12, 5)、性器ヘルペス(Miller et al, 2002, Int Immunopharmacol., 2, 443-451)および伝染性軟属腫(Stulberg and Galbraith Hutchinson, 2003, Am. Fam. Physician, 67, 1233-1240)に対して実証されている。
【0007】
プラスミドDNAベクターがin vivoにおいて動物細胞を直接トランスフェクト可能であるという1990年代初期の知見に従い、抗原ペプチドをコードするDNAを動物へ直接導入することによって免疫応答を誘発するためのDNAプラスミドの使用に基づくワクチン接種技術の開発に多大な研究努力がなされてきた。このような技術は、広くDNAワクチン接種技術と呼ばれ、現在、多数の疾病モデルで防御免疫応答を惹起するために用いられている。さらに最近では、イミダゾキノリンアミンは、DNAワクチン接種(WO02/24225)、特に、癌免疫療法(WO2006/042254;Smorlesi et al, 2005, Gene Therapy, 12, 1324-1332)におけるアジュバントとして提案されている。DNAワクチンに関する総説としては、Reyes-Sandoval and Ertl, 2001 (Current Molecular Medicine, 1, 217-243)参照。
【0008】
本発明は、in vivoにおいて少なくとも1つの異種ヌクレオチド配列、特に、抗原をコードするヌクレオチド配列を発現する組換えウイルスワクチンに対する改良に関する。本発明は特に、少なくとも1つの抗原を発現する少なくとも1つの組換えウイルスベクターと、アジュバントを含まない同じ組換えウイルスワクチンよりも該抗原に対して付与される免疫を著しく増強することができ、かつ、好ましくはこの種のワクチンに好適である少なくとも1つのアジュバントとを含む組換えウイルスワクチンに関する。本発明はさらに、それに関するワクチン接種法に関する。
【0009】
本出願者は今般、驚くべきことに、ある種のイミダゾキノリンアミン化合物が、強力な抗ウイルス効力を示すと同時に、組換えウイルスベクターによりコードされる抗原に対する組換えウイルスワクチンにより惹起された免疫応答を、より具体的には、組換えポックスウイルスに基づくワクチンに関して、予期しない割合で向上させ得る。
【0010】
よって、本発明の主題は、(i)in vivoにおいて少なくとも1つの異種ヌクレオチド配列、特に、抗原をコードする異種ヌクレオチド配列を発現する少なくとも1つの組換えウイルスベクターと、(ii)少なくとも1つの1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミン誘導体とを含む、組換えウイルスワクチンである。
【0011】
本発明の一実施形態によれば、前記1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミン誘導体は、組換えウイルスワクチンが患者に投与された場合に該患者内で該抗原に対する免疫応答を増強する。
【0012】
本明細書において出願全体を通じて「a」および「an」は、特に断りのない限り、「少なくとも1つの」、「少なくとも第一の」、「1以上の」または「複数の」、言及されている化合物または工程を意味して用いられる。例えば、「a cell」とは、その混合物を含めて、複数の細胞を含む。より具体的には、「少なくとも1つの」および「1以上の」とは、1または1を超える数を意味し、1、2または3が特に好ましい。
【0013】
本明細書で使用する場合には「および/または」は、「および」、「または」およびこの用語によってつながっている要素の全ての、または他のいずれかの組合せ」を含む。
【0014】
本明細書において「約」または「およそ」とは、示されている値または範囲の20%以内、好ましくは10%以内、より好ましくは5%以内を意味する。
【0015】
本明細書において、生成物、組成物および方法を定義するために用いる場合の「含んでなる」、「含有する」は、それらの生成物、組成物および方法が言及されている化合物または工程を含むが、他を排除するものではないことを意味するものとする。
【0016】
「患者」とは、脊椎動物、特に哺乳類種に属するものを指し、限定されるものではないが、家庭内動物、競技動物、ヒトを含む霊長類を含む。「患者」とは、特定の病状に何ら限定されるものではなく、着目する疾病をすでに発症している患者と病状のない患者の双方を包含する。
【0017】
本明細書において、「処置」または「処置する」とは、予防および/または治療を包含する。よって、本発明の組換えウイルスワクチンは治療適用に限定されるものではなく、予防適用にも使用可能である。
【0018】
より好ましい実施形態によれば、本発明の組換えウイルスベクターはポックスウイルスベクターである(例えば、Cox et al., “Viruses in Human Gene Therapy” Ed J. M. Hos, Carolina Academic Press参照)。別の好ましい実施形態によれば、それはワクシニアウイルスからなる群から選択され、好適なワクシニアウイルスとしては、限定されるものではないが、コペンハーゲン株(Goebel et al., 1990, Virol. 179, 247-266および517-563; Johnson et al., 1993, Virol. 196, 381-401)、ワイス株、ならびにMVA(総説としては、Mayr, A., et al., 1975, Infection 3, 6-14参照)およびその誘導体(MVAワクシニア株575(ECACC V00120707−米国特許第6,913,752号)など)、NYVAC(WO92/15672− Tartaglia et al., 1992, Virology, 188, 217-232参照)を含む高度弱毒ウイルスが挙げられる。それはまた、ポックスウイルス科の他のメンバー、特に、鶏痘(例えば、TROVAC、Paoletti et al, 1995, Dev Biol Stand., 84, 159-163参照);カナリヤ痘(例えば、ALVAC、WO95/27780、Paoletti et al, 1995, Dev Biol Stand., 84, 159-163);鳩痘;豚痘などから得ることもできる。例としては、当業者ならば、このような異種ヌクレオチド配列、特に、抗原をコードするヌクレオチド配列を発現し得るポックスウイルスに基づく発現ベクターの作製を記載しているWO9215672(引用することにより一部とされる)を参照することができる。
【0019】
本明細書において「抗原」とは、免疫応答の標的となり得るいずれの物質も指す。抗原は、患者によって惹起される、例えば、細胞媒介性免疫応答および/または体液性免疫応答の標的となり得る。「抗原」とは、例えば、ウイルス抗原、腫瘍特異的または腫瘍関連抗原、細菌抗原、寄生虫抗原、アレルゲンなどを包含する。
【0020】
ウイルス抗原としては、例えば、A型、B型、C型、D型およびE型肝炎ウイルス、HIV、ヘルペスウイルス、サイトメガロウイルス、水痘−帯状疱疹、パピローマウイルス、エプスタインバーウイルス、インフルエンザウイルス、パラインフルエンザウイルス、アデノウイルス、コクサッキーウイルス、ピコルナウイルス、ロタウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、ポックスウイルス、ライノウイルス、風疹ウイルス、パポウイルス、流行性耳下腺炎ウイルス、麻疹ウイルス由来の抗原が挙げられ、既知のウイルス抗原のいくつかの非限定例としては、以下のものが挙げられる:tat、nef、gp120もしくはgp160、gp40、p24、gag、env、vif、vpr、vpu、revまたはその一部および/または組合せなどのHIV−1由来抗原;gH、gL、gM、gB、gC、gK、gEもしくはgDまたはその一部および/または組合せなどのヒトヘルペスウイルス由来抗原、あるいはHSV1またはHSV2由来のICP27、ICP47、ICP4、ICP36などの前初期タンパク質;gBまたはその誘導体などのサイトメガロウイルス、特に、ヒトサイトメガロウイルス由来の抗原;gp350またはその誘導体などのエプスタインバーウイルス由来の抗原;asgpl、11、111およびIE63などの水痘−帯状疱疹ウイルス由来の抗原;B型肝炎、C型肝炎またはE型肝炎ウイルス抗原(例えば、HCVのenvタンパク質E1またはE2、コアタンパク質、NS2、NS3、NS4a、NS4b、NS5a、NS5b、p7、またはその一部および/または組合せ)などの肝炎ウイルス由来の抗原;ヒトパピローマウイルス由来の抗原(例えば、HPV6、11、16、18、例えば、L1、L2、E1、E2、E3、E4、E5、E6、E7、またはその一部および/または組合せ);呼吸器合胞体ウイルス(例えば、FおよびGタンパク質またはその誘導体)、パラインフルエンザウイルス、麻疹ウイルス、流行性耳下腺炎ウイルス、フラビウイルス(例えば、黄熱ウイルス、デング熱ウイルス、ダニ媒介脳炎ウイルス、日本脳炎ウイルス)またはインフルエンザウイルス細胞(例えば、HA、NP、NAもしくはMタンパク質、またはその一部および/または組合せ)などの他のウイルス病原体に由来する抗原。
【0021】
腫瘍特異的または腫瘍関連抗原としては、例えば、乳癌、結腸癌、直腸癌、頭頸部癌、腎臓癌、悪性黒色腫、喉頭癌、卵巣癌、子宮頸癌、前立腺癌由来の抗原が挙げられる。癌抗原は、腫瘍特異的免疫応答を明らかに強く刺激し得る抗原である。これらの抗原のいくつかは正常細胞によってもコードされているが、必ずしも発現されない。これらの抗原は正常細胞では通常サイレント(すなわち、発現されない)であるもの、ある分化段階でのみ発現されるもの、および胚抗原および胎児抗原などの一時的に発現されるものとして特徴付けることができる。他の癌抗原は、癌遺伝子(例えば、活性化ras癌遺伝子)、サプレッサー遺伝子(例えば、変異株p53)、内部欠失または染色体転座から生じた融合タンパク質などの突然変異細胞遺伝子によりコードされている。さらにその他の癌抗原は、RNAおよびDNA腫瘍ウイルスに担持されているものなどのウイルス遺伝子によりコードされているものであり得る。腫瘍特異的または腫瘍関連抗原のいくつかの非限定例としては、MART−1/Melan−A、gp100、ジペプチジルペプチダーゼIV(DPPIV)、アデノシンデアミナーゼ結合タンパク質(ADAbp)、シクロフィリンb、結腸直腸関連抗原(CRC)−C017−1A/GA733、癌胎児性抗原(CEA)およびその免疫原性エピトープCAP−1およびCAP−2、etv6、aml1、前立腺特異的抗原(PSA)およびその免疫原性エピトープPSA−I、PSA−2およびPSA−3、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、T細胞受容体/CD3−ゼータ鎖、MAGEファミリーの腫瘍抗原(例えば、MAGE−A1、MAGE−A2、MAGE−A3、MAGE−A4、MAGE−A5、MAGE−A6、MAGE−A7、MAGE−A8、MAGE−A9、MAGE−A10、MAGE−A11、MAGE−A12、MAGE−Xp2(MAGE−B2)、MAGE−Xp3(MAGE−B3)、MAGE−Xp4(MAGE−B4)、MAGE−C1、MAGE−C2、MAGE−C3、MAGE−C4、MAGE−C5)、GAGEファミリーの腫瘍抗原(例えば、GAGE−1、GAGE−2、GAGE−3、GAGE−4、GAGE−5、GAGE−6、GAGE−7、GAGE−8、GAGE−9)、BAGE、RAGE、LAGE−I、NAG、GnT−V、MUM−I、CDK4、チロシナーゼ、p53、MUCファミリー(例えば、MUC−1)、HER2/neu、p21ras、RCAS1、α−フェトタンパク質、E−カドヘリン、α−カテニン、β−カテニンおよびγ−カテニン、p120ctn、gp100.sup.Pmel117、PRAME、NY−ESO−1、cdc27、腺腫様多発結腸ポリープタンパク質(APC)、フォドリン、コネキシン37、Ig−イディオタイプ、p15、gp75、GM2およびGD2ガングリオシド、ヒトパピローマウイルスタンパク質などのウイルス産物、Smadファミリーの腫瘍抗原、lmp−1、P1A、EBVコード核抗原(EBNA)−1、脳グリコーゲンホスホリラーゼ、SSX−1、SSX−2(HOM−MEL−40)、SSX−1、SSX−4、SSX−5、SCP−1およびCT−7、ならびにc−erbB−2が挙げられる。
【0022】
細菌抗原としては、例えば、TBおよびらい病を引き起こすマイコバクテリア由来の抗原、肺炎球菌、好気性グラム陰性桿菌、マイコプラズマ、ブドウ球菌感染、連鎖球菌感染、サルモネラ菌属、クラミジア属、ナイセリア属由来の抗原が挙げられる。
【0023】
他の抗原としては、例えば、マラリア、リーシュマニア症、トリパノソーマ症、トキソプラスマ症、住血吸虫症、フィラリア症由来の抗原が挙げられる。
【0024】
アレルゲンとは、感受性のある対象においてアレルギー反応または喘息反応を誘発し得る物質を指す。アレルゲンのリストは膨大であり、花粉、昆虫毒、動物鱗屑、真菌類の胞子および薬物(例えば、ペニシリン)を含み得る。天然動物および植物アレルゲンの例としては、限定されるものではないが、下記の属:イヌ属(Canis familiaris);ダニ属(例えば、Dermatophagoides farinae);ネコ属(Felis domesticus);アンブロシア属(Ambrosia artemiisfolia);ドクムギ属(例えば、Lolium perenneまたはLolium multiflorum);スギ属(Cryptomeria japonica);アルテルナリア属(Alternaria alternata);アルダー属;アルヌス属(Alnus gultinoasa);マカンバ属(Betula verrucosa);コナラ属(Quercus alba);オリーブ属(Olea europa);ヨモギ属(Artemisia vulgaris);オオバコ属(例えば、Plantago lanceolata);ヒカゲミズ属(例えば、Parietaria officinalisまたはParietaria judaica);チャバネゴキブリ属(例えば、Blattella germanica);ミツバチ属(例えば、Apis multiflorum);イトスギ属(例えば、Cupressus sempervirens、Cupressus arizonicaおよびCupressus raacrocarpa);ビャクシン属(例えば、Juniperus sabinoides、Juniperus virginiana、Juniperus communisおよびJuniperus ashei);クロベ属(例えば、Thuya orientalis);ヒノキ属(例えば、Chamaecyparis obtusa);ワモンゴキブリ属(例えば、Periplaneta americana);カモジグサ属(例えば、Agropyron repens);ライムギ属(例えば、Secale cereale);コムギ属(例えば、Triticum aestivum);カモガヤ属(例えば、Dactylis glomerata);ウシノケグサ属(例えば、Festuca elatior);イチゴツナギ属(例えば、Poa pratensisまたはPoa compressa);カラスムギ属(例えば、Avena sativa);シラゲガヤ属(例えば、Holcus lanatus);ハルガヤ属(例えば、Anthoxanthum odoratum);オオカニツリ属(例えば、Arrhenatherum elatius);コヌカグサ属(例えば、Agrostis alba);アワガエリ属(例えば、Phleum pratense);クサヨシ属(例えば、Phalaris arundinacea);スズメノヒエ属(例えば、Paspalum notatum);ソルガム属(例えば、Sorghum halepensis);およびスズメノチャヒキ属(例えば、Bromus inermis)に特異的なタンパク質が挙げられる。
【0025】
特に好ましい実施形態では、本発明の異種ヌクレオチド配列は、下記抗原:HBV−PreS1 PreS2および表面envタンパク質、コアおよびpolHIV−gp120 gp40、gp160、p24、gag、pol、env、vif、vpr、vpu、tat、rev、nef;HPV−E1、E2、E3、E4、E5、E6、E7、E8、L1、L2(例えば、WO90/10459、WO98/04705、WO99/03885参照);HCV envタンパク質E1またはE2、コアタンパク質、NS2、NS3、NS4a、NS4b、NS5a、NS5b、p7;Muc−1(例えば、米国特許第5,861,381号;同第6,054,438号;WO98/04727;WO98/37095参照)の1以上を全部または一部コードする。
【0026】
抗原をコードする核酸は、真核細胞内で抗原核酸の発現を命令する遺伝子発現配列と作動可能なように連結される。この遺伝子発現配列は、プロモーター配列またはプロモーターエンハンサーの組合せなど、それが作動可能なように連結されている抗原核酸の効率的な転写および翻訳を容易にするいずれの調節ヌクレオチド配列であってもよい。遺伝子発現配列は、例えば、構成プロモーターまたは誘導プロモーターなどの哺乳類またはウイルスプロモーターであり得る。構成的哺乳類プロモーターとしては、限定されるものではないが、下記遺伝子:ヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HPRT)、アデノシンデアミナーゼ、ピルビン酸キナーゼのプロモーター、b−アクチンプロモーターおよびその他の構成プロモーターが挙げられる。真核細胞で構成的に機能するウイルスプロモーターの例としては、例えば、サイトメガロウイルス(CMV)、シミアンウイルス(例えば、SV40)、パピローマウイルス、アデノウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、ラウス肉腫ウイルス、サイトメガロウイルス、モロニー白血病ウイルスの長い末端反復配列(LTR)およびその他のレトロウイルス由来のプロモーター、ならびに単純ヘルペスウイルスのチミジンキナーゼプロモーターが挙げられる。その他の構成プロモーターも、当業者に知られている。本発明の遺伝子発現配列として有用なプロモーターとして誘導プロモーターもまた含まれる。誘導プロモーターは、誘導因子の存在下で発現される。例えば、メタロチオネインプロモーターはある種の金属イオンの存在下で転写および翻訳を促進するために誘導される。その他の誘導プロモーターも、当業者に知られている。一般に、遺伝子発現配列は、必要に応じて、TATAボックス、キャッピング配列、CAAT配列など、それぞれ転写および翻訳の開始に関与する5’非転写配列および5’非翻訳配列を含むべきである。特に、このような5’非転写配列は、作動可能に連結された抗原核酸の転写制御のためのプロモーター配列を含むプロモーター領域を含む。遺伝子発現配列は所望により、場合によっては、エンハンサー配列または上流アクチベーター配列を含む。ポックスウイルスベクター(下記参照)において使用するのに好ましいプロモーターとしては、限定されるものではないが、ワクシニアプロモーター7.5K、H5R、TK、p28、p11およびK1L、ポックスウイルス前期プロモーターと後期プロモーターの間のキメラプロモーター、ならびにChakrabarti et al . (1997, Biotechniques 23, 1094-1097), Hammond et al. (1997, J. Virological Methods 66, 135-138)およびKumar and Boyle (1990, Virology 179, 151-158)に記載されているものなどの合成プロモーターが挙げられる。
【0027】
別の特定の実施形態によれば、本発明の該異種ヌクレオチド配列は、HPVのE6初期コード領域、HPVのE7初期コード領域およびその誘導体または組合せからなる群から選択されるHPV抗原の全部または一部をコードしている。
【0028】
本発明の組換えウイルスベクターによってコードされるHPV抗原は、HPV E6ポリペプチド、HPV E7ポリペプチドまたはE6ポリペプチドとHPV E7ポリペプチドの双方からなる群から選択される。本発明は、p53との結合が変更される、または少なくとも有意に低下するHPV E6ポリペプチドの使用、および/またはRbとの結合が変更される、または少なくとも有意に低下するHPV E7ポリペプチドの使用を包含する(Munger et al., 1989, EMBO J. 8, 4099-4105; Crook et al., 1991, Cell 67, 547- 556; Heck et al., 1992, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89, 4442-4446; Phelps et al., 1992, J. Virol. 66, 2148-2427)。本発明の目的に好適な非発癌性HPV−16 E6変異体は、およそ118番〜およそ122番(+1は、天然HPV−16 E6ポリペプチドの最初メチオニン残基を表す)の位置にある1以上のアミノ酸残基が欠失しており、特に残基118〜122(CPEEK)が完全に欠失しているのが好ましい。本発明の目的に好適な非発癌性HPV−16 E7変異体は、およそ21番〜およそ26番(+1は、天然HPV−16 E7ポリペプチドの最初のアミノ酸を表す)の位置にある1以上のアミノ酸残基が欠失しており、特に残基21〜26(DLYCYE)が完全に欠失しているのが好ましい。好ましい実施形態によれば、本発明での使用において、1以上のHPV−16初期ポリペプチドを、MHCクラスIおよび/またはMHCクラスII提示を向上させるため、および/または抗HPV免疫を刺激するためにさらに修飾する。HPV E6およびE7ポリペプチドは核タンパク質であり、膜提示がそれらの治療効力を向上させ得ることがこれまでに示されている(例えば、WO99/03885参照)。従って、少なくとも1つのHPV初期ポリペプチドを細胞膜に固着されるように修飾することが望ましい。膜固着(membrane anchorage)は、HPV初期ポリペプチドに膜固着配列を、また、天然ポリペプチドがそれを欠いている場合には、分泌配列(すなわち、シグナルペプチド)を組み込むことによって容易に達成することができる。膜固着および分泌配列は当技術分野で公知である。要するに、分泌配列は、膜提示および分泌されるポリペプチドのN末端に存在し、それらの小胞体(ER)への移行を開始させる。それらは通常、15〜35の必須疎水性アミノ酸を含み、それはその後、ERに局在する特定のエンドペプチダーゼによって除去され、成熟ポリペプチドとなる。膜固着配列は通常、自然状態で疎水性が高く、細胞膜にポリペプチドを固着させるのに役立つ(例えば、Branden and Tooze, 1991, Introduction to Protein Structure p. 202-214, NY Garland参照)。
【0029】
本発明に関して使用可能な膜固着配列および分泌配列の選択肢は膨大である。それらは、狂犬病糖タンパク質、HIVウイルスエンベロープ糖タンパク質または麻疹ウイルスFタンパク質など、それを含む膜固着ポリペプチドおよび/または分泌ポリペプチド(例えば、細胞ポリペプチドまたはウイルスポリペプチド)から得ることができるか、あるいは合成することができる。本発明に従って使用される各初期HPV−16ポリペプチドに挿入された膜固着配列および/または分泌配列は起源が共通であっても異なっていてもよい。分泌配列の好ましい挿入部位は転写開始コドンの下流N末端であり、膜固着配列の好ましい挿入部位はC末端、例えば、停止コドンのすぐ上流である。
【0030】
本発明での使用におけるHPV E6ポリペプチドは好ましくは、麻疹Fタンパク質の分泌シグナルおよび膜固着シグナルの挿入により修飾される。所望により、または組合せにおいて、本発明での使用におけるHPV E7ポリペプチドは好ましくは、狂犬病糖タンパク質の分泌シグナルおよび膜固着シグナルの挿入により修飾される。
【0031】
この組換えウイルスベクターの治療効力はまた、免疫増強剤ポリペプチドをコードする1以上の核酸を用いることにより改良することができる。例えば、HPV初期ポリペプチドをカルレティキュリン(Cheng et al., 2001, J. Clin. Invest. 108, 669-678)、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)熱ショックタンパク質70(HSP70)(Chen et al., 2000, Cancer Res. 60, 1035-1042)、ユビキチン(Rodriguez et al., 1997, J. Virol. 71, 8497-8503)または緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)外毒素A(ETA(dΙII))などの細菌毒素のトランスロケーションドメイン(Hung et al., 2001 Cancer Res. 61, 3698-3703)などのポリペプチドと連結することが有利であり得る。
【0032】
別の好ましい実施形態によれば、本発明の組換えウイルスベクターは、上記で定義されたような1以上の初期ポリペプチド、より詳しくは、HPV−16および/またはHPV−18初期E6および/またはE7ポリペプチドをコードする核酸を含んでなる。
【0033】
別の特定の実施形態によれば、本発明の該異種ヌクレオチド配列はMUC1抗原またはその誘導体の全部または一部をコードする。
【0034】
必要であれば、本発明での使用における核酸分子は、特定の宿主細胞または生物体、例えば、ヒト宿主細胞または生物体において抗原(例えば、HPV初期ポリペプチド)の高レベル発現を提供するよう至適化することができる。一般に、コドンの至適化は、哺乳類宿主細胞で使用頻度の少ないコドンに相当する1以上の「天然」(例えば、HPV)コドンを使用頻度の多い同じアミノ酸をコードする1以上のコドンで置換することにより行う。これは従来の突然変異誘発または化学合成技術(例えば、合成核酸が得られる)によって行うことができる。発現の上昇は部分的に置換であっても果たすことができることから、使用頻度の少ないコドンに相当する全ての天然コドンを置換する必要は必ずしもない。さらに、制限部位の導入に便宜なように、至適化されたコドン利用の厳守からある程度の逸脱があってもよい。
【0035】
上述のように、ポックスウイルスベクター、より具体的には、高度に弱毒化されたワクシニアウイルス株が好ましい。MVAゲノムの完全配列の決定およびコペンハーゲンワクシニアウイルスゲノムとの比較により、MVAゲノムに見られる7つの欠失(I〜VII)の正確な同定が可能であり(Antoine et al., 1998, Virology 244, 365-396)、そのいずれもが抗原(例えば、HPV初期ポリペプチドまたはMUC1)をコードする核酸の挿入のために使用可能である。
【0036】
核酸およびポックスウイルスゲノムでの発現に必要な関連の調節エレメントを挿入するための基本技術は、当業者が利用可能な多くの文献に記載れている(Paul et al., 2002, Cancer gene Ther. 9, 470-477; Piccini et al., 1987, Methods of Enzymology 153, 545-563; 米国特許第4,769,330号、同第4,772,848号、同第4,603,112号、同第5,100,587号および同第5,179,993号)。通常、ウイルスゲノムおよび核酸を担持するプラスミドの双方に存在する重複配列(すなわち、所望の挿入部位)間の相同組換えを介して挿入を進める。
【0037】
本発明の抗原をコードする核酸は好ましくは、組換えポックスウイルスが生存力と感染力を保持するよう、ポックスウイルスゲノムの非必須遺伝子座に挿入される。非必須領域は、非コード遺伝子間領域またはその不活性化または欠失がウイルスの増殖、複製または感染を有意に損なわない遺伝子である。また、例えば、ポックスウイルスゲノムで欠失しているものに相当する相補的配列を担持するヘルパー細胞系統を使用することにより、ウイルス粒子の産生中に欠損している機能がトランスで供給される場合には、必須ウイルス遺伝子座における挿入も考えられる。
【0038】
コペンハーゲンワクシニアウイルスを使用する場合、抗原をコードする核酸を好ましくは、チミジンキナーゼ遺伝子(tk)に挿入する(Hruby et al., 1983, Proc. Natl. Acad. Sci USA 80, 3411-3415; Weir et al., 1983, J. Virol. 46, 530-537)。しかしながら、また、例えば、血球凝集素遺伝子におけるもの(Guo et al., 1989, J. Virol. 63, 4189-4198)、K1L遺伝子座におけるもの、u遺伝子におけるもの(Zhou et al., 1990, J. Gen. Virol. 71, 2185-2190)または種々の自然欠失または操作欠失が文献で報告されているワクシニアウイルスゲノムの左末端におけるもの(Altenburger et al., 1989, Archives Virol. 105, 15-27; Moss et al. 1981, J. Virol. 40, 387-395; Panicali et al., 1981, J. Virol. 37, 1000-1010; Perkus et al, 1989, J. Virol. 63, 3829-3836; Perkus et al, 1990, Virol. 179, 276-286; Perkus et al, 1991, Virol. 180, 406-410)など、他の挿入部位も適当である。
【0039】
MVAを用いた場合、抗原をコードする核酸は、同定されている欠失I〜VIIのいずれか、ならびにD4R遺伝子座に挿入することができるが、欠失IIまたはIIIにおける挿入が好ましい(Meyer et al., 1991, J. Gen. Virol. 72, 1031-1038; Sutter et al., 1994, Vaccine 12, 32-1040)。
【0040】
鶏痘ウイルスを用いた場合、チミジンキナーゼ遺伝子内への挿入が考えられるが、抗原をコードする核酸は好ましくは、ORF7と9の間に位置する遺伝子間領域に導入される(例えば、EP314569および米国特許第5,180、675号参照)。
【0041】
好ましくは、本発明での使用における抗原をコードする核酸は、宿主細胞または生物体でのその発現に好適な形態であり、これは抗原をコードする核酸配列(例えば、E6ポリペプチドおよび/またはE7ポリペプチドをコードする核酸配列)が宿主細胞または生物体での発現に必要な1以上の調節配列の制御下に置かれていることを意味する。本明細書において「調節配列」とは、複製、倍加、転写、スプライシング、翻訳、安定性および/または核酸またはその誘導体の1つ(すなわち、mRNA)の宿主細胞への輸送を含む、所与の宿主細胞において核酸の発現に寄与し得る、または調節し得る配列を指す。当業者ならば、調節配列の選択が宿主細胞、ベクターおよび所望の発現レベルなどの因子によって異なることが分かるであろう。
【0042】
プロモーターは特に重要であり、多くの種の宿主細胞で核酸の発現を命令するおよび特定の宿主細胞でのみ、または特定の事象もしくは外因性の因子に応答して(例えば、温度、栄養添加、ホルモンまたはその他のリガンドによって)発現を命令する構成プロモーターの使用を包含する。好適なプロモーターは広く文献に記載されており、より具体的には、RSV、SV40、CMVおよびMLPプロモーターなどのウイルスプロモーターが挙げられる。ポックスウイルスベクターにおいて用いるのに好ましいプロモーターとしては、限定されるものではないが、ワクシニアプロモーター7.5K、H5R、TK、p28、p11およびK1L、ポックスウイルス初期プロモーターと後期プロモーターの間のキメラプロモーター、ならびにChakrabarti et al. (1997, Biotechniques 23, 1094-1097)、Hammond et al. (1997, J. Virological Methods 66, 135-138)およびKumar and Boyle (1990, Virology 179, 151-158)に記載されているものなどの合成プロモーターが挙げられる。
【0043】
当業者ならば、本発明の核酸分子の発現を制御する調節エレメントはさらに、宿主細胞または生物体への、転写の適切な開始、調節および/または終結(例えば、ポリA転写終結配列)、mRNA輸送(例えば、核局在シグナル配列)、プロセシング(例えば、スプライシングシグナル)および安定性(例えば、イントロンおよび非コード5’および3’配列)、翻訳(例えば、ペプチドシグナル、プロペプチド、三分割リーダー配列、リボソーム結合部位、Shine−Dalgamo配列など)のための付加的エレメントを含み得る。
【0044】
あるいは、本発明での使用における組換えウイルスベクターはさらに、少なくとも1つのサイトカインをコードする少なくとも1つの核酸を含み得る。好適なサイトカインとしては、限定されるものではないが、IL−2、IL−7、IL−15、IL−18、IL−21およびIFNgを含むことができ、IL−2が特に好ましい。本発明の組換えウイルスワクチンがサイトカイン発現核酸を含む場合、該核酸は1以上のHPV初期ポリペプチドをコードする組換えウイルスベクターにより、または起源が同じであっても異なっていてもよい独立した組換えベクターにより運ばせることができる。
【0045】
本発明の好ましい実施形態は、7.5Kプロモーター下に置かれたHPV E6ポリペプチド、7.5Kプロモーター下に置かれたHPV E7ポリペプチドおよびH5Rプロモーターの制御下に置かれたヒトIL−2遺伝子をコードするMVAベクターを含んでなる組換えウイルスワクチンの使用に向けられる。好ましくは、HPV E6ポリペプチド、HPV E7ポリペプチドおよびヒトIL−2をコードする核酸はMVAゲノムの欠失IIIに挿入される。
【0046】
本発明の別の好ましい実施形態は、7.5Kプロモーター下に置かれたMUC1ポリペプチドおよびH5Rプロモーターの制御下に置かれたヒトIL−2遺伝子をコードするMVAベクターを含んでなる組換えウイルスワクチンに使用に向けられる。
【0047】
上記の組換えウイルスベクターを含んでなる感染性ウイルス粒子は、常法により生産することができる。例示的方法としては、
a.ウイルスベクターを好適な細胞系統に導入する工程;
b.該細胞系統を該感染性ウイルス粒子の生産を可能とするよう好適な条件下で培養する工程;
c.該細胞系統の培養から生産された感染性ウイルス粒子を回収する工程;および
d.所望により、回収された感染性ウイルス粒子を精製する工程
を含む。
【0048】
ポックスウイルスベクターを増殖させるのに適当な細胞は鳥類細胞、最も好ましくは、受精卵から得られたニワトリ胚から調製されたニワトリ一次胚繊維芽細胞(CEF)である。
【0049】
感染性ウイルス粒子は培養上清から、または溶解(例えば、化学的手段、凍結/解凍、浸透圧ショック、機械的ショック、音波処理などによる)後の細胞から回収することができる。ウイルス粒子は、連続して何回もプラーク精製して単離した後、当技術分野の技術(クロマトグラフィー法、塩化セシウムまたはスクロース勾配での超遠心分離)を用いて精製することができる。
【0050】
別の実施形態によれば、本発明の1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミン−誘導体は下記一般式I〜Vのいずれかで定義される化合物である:
I−
【化1】
[式中、
R11は、直鎖または分枝アルキル、ヒドロキシアルキル、アシルオキシアルキル、ベンジル、(フェニル)エチルおよびフェニルからなる群から選択され、該ベンジル、(フェニル)エチルまたはフェニル置換基は、場合により、そのベンゼン環上で、C1−4アルキル部分、C1−4アルコキシ部分およびハロゲンからなる群から互いに独立に選択される1または2個の部分で置換されていてもよく(ただし、該ベンゼン環が2個の該部分で置換されている場合には、該部分はともに6個以下の炭素原子を含む);
R21は、水素、C1−8アルキル部分、ベンジル、(フェニル)エチルおよびフェニルからなる群から選択され、該ベンジル、(フェニル)エチルまたはフェニル置換基は、場合により、そのベンゼン環上で、C1−4アルキル部分、C1−4アルコキシ部分およびハロゲンからなる群から互いに独立に選択される1または2個の部分で置換されていてもよく(ただし、該ベンゼン環が2個の該部分で置換されている場合には、該部分は合わせて6個以下の炭素原子を含む);かつ
各R1は、水素、C1−4アルコキシ部分、ハロゲンおよびC1ー4アルキル部分からなる群から互いに独立に選択され、nは0〜2の整数である(ただし、nが2である場合、該R1基は合わせて6個以下の炭素原子を含む)]
で定義される化合物、またはその類似体、溶媒和物もしくは塩;
II−
【化2】
[式中、
R12は、直鎖または分枝C2−10アルケニルおよび置換された直鎖または分枝C2−10アルケニル(ここで、該置換基は直鎖または分枝C1−4アルキル部分およびC3ー6シクロアルキル部分からなる群から選択される);および直鎖または分枝C1ー4アルキル部分により置換されたC3ー6シクロアルキル部分からなる群から選択され;
R22は、水素、直鎖または分枝C1−8アルキル部分、ベンジル、(フェニル)エチルおよびフェニルからなる群から選択され、該ベンジル、(フェニル)エチルまたはフェニル置換基は、場合により、そのベンゼン環上で、直鎖または分枝C1−4アルキル部分、直鎖または分枝C1−4アルコキシ部分およびハロゲンからなる群から互いに独立に選択される1または2個の部分で置換されていてもよく(ただし、該ベンゼン環が2個のこのような部分で置換されている場合には、該部分は合わせて6個以下の炭素原子を含む);かつ
各R2は、直鎖または分枝C1−4アルコキシ部分、ハロゲンおよび直鎖または分枝C1ー4アルキル部分からなる群から互いに独立に選択され、nは0〜2の整数である(ただし、nが2である場合、該R2基は合わせて6個以下の炭素原子を含む)]
で定義される化合物、またはその類似体、溶媒和物もしくは塩;
III−
【化3】
[式中、
R23は、水素、直鎖または分枝C1−8アルキル部分、ベンジル、(フェニル)エチルおよびフェニルからなる群から選択され、該ベンジル、(フェニル)エチルまたはフェニル置換基は、場合により、そのベンゼン環上で、直鎖または分枝C1−4アルキル部分、直鎖または分枝C1−4アルコキシ部分およびハロゲンからなる群から互いに独立に選択される1または2個の部分で置換されていてもよく(ただし、該ベンゼン環が2個のこのような部分で置換されている場合には、該部分は合わせて6個以下の炭素原子を含む);かつ
各R3は、直鎖または分枝C1−4アルコキシ部分、ハロゲンおよび直鎖または分枝C1ー4アルキル部分からなる群から互いに独立に選択され、nは0〜2の整数である(ただし、nが2である場合、該R3基は合わせて6個以下の炭素原子を含む)]
で定義される化合物、またはその類似体、溶媒和物もしくは塩;
IV−
【化4】
[式中、
R14は−CHR34R44であり、ここで、R44は水素または炭素−炭素結合であり、ただし、R44が水素である場合、R34はC1−4アルコキシ部分、C1ー4ヒドロキシアルコキシ部分、C2−101−アルキニル部分、テトラヒドロピラニル、アルコキシアルキル(ここで、該アルコキシ部分は1〜4個の炭素原子を含み、該アルキル部分は1〜4個の炭素原子を含む)、2−、3−、または4−ピリジルであり、さらにただし、R44が炭素−炭素結合である場合、R44およびR34は一緒になって、ヒドロキシおよびC1−4ヒドロキシアルキル部分からなる群から互いに独立に選択される1以上の置換基で場合により置換されていてもよいテトラヒドロフラニル基を形成し;
R24は水素、C1−4アルキル、フェニルからなる群から選択され、該フェニルは場合により、直鎖または分枝C1−4アルキル部分、直鎖または分枝C1−4アルコキシ部分およびハロゲンからなる群から互いに独立に選択される1または2個の部分で置換されていてもよく;かつ
R4は、水素、直鎖または分枝C1ー4アルコキシ部分、ハロゲンおよび直鎖または分枝C1ー4アルキル部分からなる群から選択される]
で定義される化合物、またはその類似体、溶媒和物もしくは塩;
V−
【化5】
[式中、
R15は、水素;直鎖または分枝C1ー10アルキル部分および置換された直鎖または分枝C1−10アルキル部分(ここで、該置換基はC3ー6シクロアルキルおよび直鎖または分枝C1ー4アルキル部分で置換されたC3ー6シクロアルキルからなる群から選択される);直鎖または分枝C2ー10アルケニルおよび置換された直鎖または分枝C2ー10アルケニル部分(ここで、該置換基はC3−6シクロアルキルおよび直鎖または分枝C1−4アルキル部分で置換されたC3ー6シクロアルキルからなる群から選択される);C1−6ヒドロキシアルキル;アルコキシアルキル(ここで、該アルコキシ部分は1〜約4個の炭素原子を含み、該アルキル部分は1〜約6個の炭素原子を含む);アシルオキシアルキル(ここで、該アシルオキシ部分は2〜約4個の炭素原子のアルカノイルオキシまたはベンゾイルオキシであり、該アルキル部分は1〜約6個の炭素原子を含む);ベンジル;(フェニル)エチル;およびフェニル;(該ベンジル、(フェニル)エチルまたはフェニル置換基は、場合により、そのベンゼン環上で、C1−4アルキル部分、C1−4アルコキシ部分およびハロゲンからなる群から互いに独立に選択される1または2個の部分で置換されていてもよく、ただし、該ベンゼン環が2個の該部分で置換されている場合には、該部分は合わせて6個以下の炭素原子を含む)からなる群から選択され;
R25は、
【化6】
{式中、
R35は、C1ー4アルコキシ部分、アルコキシアルキル(ここで、該アルコキシ部分は1〜約4個の炭素原子を含み、該アルキル部分は1〜約4個の炭素原子を含む);C1ー4ハロアルキル部分;アルキルアミド(ここで、該アルキル基は1〜約4個の炭素原子を含む);アミノ;C1−4アルキルまたはC1ー4ヒドロキシアルキルで置換されたアミノ;アジド;C11−4アルキルチオからなる群から選択され;
R55およびR45は、水素、C1−4アルキル部分、フェニル(ここで、該フェニルは、場合により、直鎖または分枝C1ー4アルキル部分、直鎖または分枝C1−4アルコキシ部分およびハロゲンからなる群から互いに独立に選択される1または2個の分で置換されていてもよい)からなる群から互いに独立に選択される}であり;かつ
R5は、水素、直鎖または分枝C1−4アルコキシ部分、ハロゲンおよび直鎖または分枝C1ー4アルキル含有部分からなる群から選択される]
で定義される化合物、またはその類似体、溶媒和物もしくは塩。
【0051】
特定の実施形態によれば、C1−4アルキル部分は例えば、メチル、エチル、プロピル、2−メチルプロピルおよびブチルである。好ましい実施形態によれば、C1−4アルキル部分はメチル、エチルおよび2メチル−プロピルからなる群から選択される。
【0052】
特定の実施形態によれば、アルコキシ部分はメトキシ、エトキシおよびエトキシメチルからなる群から選択される。
【0053】
好ましい実施形態によれば、nは0または1である。
【0054】
好ましい実施形態によれば、R1〜R5基は水素である。
【0055】
好ましい実施形態によれば、R11〜R15基は、2−メチルプロピルおよび2−ヒドロキシ−2−メチルプロピルからなる群から選択される。
【0056】
好ましい実施形態によれば、R21〜R25基は、水素、C1−6アルキル部分、アルコキシアルキル(ここで、該アルコキシ部分は1〜約4個の炭素原子を含み、該アルキル部分は1〜約4個の炭素原子を含む)からなる群から選択させる。最も好ましいR21〜R25基は、水素、メチルまたはエトキシメチルからなる群から選択される。
【0057】
好ましい一実施形態によれば、本発明の1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミン誘導体は下記一般式VI:
【化7】
[式中、
Rtは、水素、直鎖または分枝C1−4アルコキシ部分、ハロゲンおよび直鎖または分枝C1−4アルキルからなる群から選択され;
Ruは2−メチルプロピルまたは2−ヒドロキシ−2−メチルプロピルであり;かつ
Rvは水素、C1−6アルキルまたはアルコキシアルキル(ここで、該アルコキシ部分は1〜約4個の炭素原子を含み、該アルキル部分は1〜約4個の炭素原子を含む)である]
により定義される化合物、またはその類似体、溶媒和物もしくは塩である。
【0058】
好ましい実施形態によれば、式VIにおいて、Rtは、水素、Ruは、2−メチルプロピルまたは2−ヒドロキシ−2−メチルプロピル、Rvは、水素、メチル、またはエトキシメチルである。
【0059】
別の好ましい実施形態によれば、本発明の1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミン誘導体は下記の群から選択される化合物:
1−(2−メチルプロピル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミン(Rtが水素であり、Ruが2−メチルプロピルであり、Rvが水素である式VIの化合物);
1−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピル)−2−メチル−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミン(Rtが水素であり、Ruが2−ヒドロキシ−2−メチルプロピルであり、Rvがメチルである式VIの化合物);
1−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミン(Rtが水素であり、Ruが2−ヒドロキシ−2−メチルプロピルであり、Rvが水素である式VIの化合物);
1−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピル−2−エトキシメチル−1−H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミン(Rtが水素であり、Ruが2−ヒドロキシ−2−メチルプロピルであり、Rvがエトキシメチルである式VIの化合物);
またはその類似体、溶媒和物もしくは塩である。
【0060】
当業者ならば、上記に挙げた化合物およびそれらの製造方法を記載している、例えば、米国特許第4,689,338号、同第4,929,624号、EP0385630またはWO94/17043(引用することにより本明細書の一部とされる)を参照することができる。
【0061】
より具体的には、1−(2−メチルプロピル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミン(イミキモド(imiquimod)またはアルダラ(Aldara)としても知られている)は広く開示されており、Buck, 1998, Infect. Dis. Obstet. Gynecol., 6, 49-51; Dockrell and Kinghorn, 2001, J. Antimicrob. Chemother., 48, 751-755またはGarland, 2003, Curr. Opin. Infect. Dis., 16, 85-89を参照することができ、1−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピル)−2−メチル−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミンおよび1−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミンはUS2004/0076633に開示されており、1−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピル)−2−エトキシメチル−1−H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミン(レシキモド(resiquimod)としても知られている)はDockrell and Kinghorn, 2001, J. Antimicrob. Chemother. 48, 751-755またはJones, Curr. Opin. Investig. Drugs., 2003, 4,214-218に開示されている。
【0062】
特に断りのない限り、1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミン誘導体という場合には、異性体(例えば、ジアステレオマーまたは鏡像異性体)、塩、溶媒和物、多形体などを含む、薬学上許容される形態の化合物を含み得る。特に、化合物が光学的に活性である場合、化合物という場合には、その化合物の各鏡像異性体ならびにその鏡像異性体のラセミ混合物を含み得る。
【0063】
好ましい一実施形態によれば、組換えウイルスワクチンおよびより詳しくは組換えウイルスベクターは、それ自体、免疫応答を誘発する免疫刺激モチーフまたは主鎖、特に、CpG、ポリG、ポリT、TG、メチル化CpG、CpIおよびT豊富モチーフまたはホスホロチオエート主鎖などの免疫刺激モチーフまたは主鎖を有するヌクレオチド配列を含まない(その開示内容が引用することにより本明細書の一部とされるUS2003/0139364、米国特許第6,207,646号またはWO01/22972参照)。
【0064】
一実施形態によれば、最終的な組換えウイルスワクチンにおける1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミン誘導体濃度は、約0.0001%〜約10%(特に断りのない限り、本明細書に示される全てのパーセンテージは全処方物に対する重量/重量である)、約0.01%〜約2%、より詳しくは、約0.06〜約1%、好ましくは約0.1〜約0.6%である。
【0065】
別の実施形態によれば、適当な用量の組換えウイルスベクターは種々のパラメーター、特に投与様式;使用される組成物;宿主生物の齢、健康状態および体重;症状の性質および程度;併用処置の種類;処置の頻度;および/または予防または治療の必要、の関数として適合させることができる。処置に適当な用量を決定するために必要な計算のさらなる精密化は、関連の状況に照らして、当業者により慣例的に行われる。一般的な指針としては、MVAを含有する組成物の好適な用量は約104〜1010pfu(プラーク形成単位)、望ましくは約105〜108pfuまで可変であり、アデノウイルスを含む組成物では、約105〜1013iu(感染単位)、望ましくは約107〜1012iuまで可変である。ベクタープラスミドに基づく組成物は10μg〜20mgの間、有利には100μg〜2mgの間の用量で投与することができる。好ましくは、この組成物は、5×105pfu〜5×107pfuのMVAワクシニアベクターを含む用量で投与される。
【0066】
投与計画は、限定されるものではないが、少なくとも一部分は、用いるイミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミン誘導体と用いる組換えウイルスベクターの性質;担体の性質;投与されるイミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミン誘導体と投与される組換えウイルスベクターの量;対象の免疫系の状態(例えば、抑制、不全、刺激);およびイミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミン誘導体および/または組換えウイルスベクター化合物の投与方法を含む、当技術分野で公知の多くの因子によって異なる。よって、一般に、全ての可能性のある適用に関する組換えウイルスワクチンの有効性を高めるのに有効な投与計画を示すということは実際的でない。しかしながら、当業者ならば、このような因子を考慮して適当な投与計画を容易に決定することができる。本発明のいくつかの実施形態では、イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミン誘導体および/または組換えウイルスベクター化合物は、例えば、毎日1回〜約1回投与することができるが、いくつかの実施形態では、イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミン誘導体および/または組換えウイルスベクター化合物は、この範囲外の頻度で投与することができる。ある特定の実施形態では、イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミン誘導体および/または組換えウイルスベクター化合物は、1週間に約1回〜1日に約1回投与することができる。ある特定の実施形態では、イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミン誘導体および/または組換えウイルスベクター化合物は、毎週1回投与される。望ましくは、イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミン誘導体および組換えウイルスベクターは1週間間隔で1〜10回投与される。好ましくは、イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミン誘導体および組換えウイルスベクターまたはそれを含有する組成物は、1週間間隔で3回、皮下経路で投与される。
【0067】
さらなる態様において、本発明は、患者において抗原に対する免疫応答を増強する方法を提供し、該方法は、(i)in vivoにおいて少なくとも1つの異種ヌクレオチド配列、特に、抗原をコードする異種ヌクレオチド配列を発現する組換えウイルスベクターと、(ii)イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミン誘導体の、逐次または同時いずれかの投与を含む。
【0068】
別の態様では、本発明は、患者において癌の発症を予防する、および/または癌を処置する方法を提供し、該方法は、(i)in vivoにおいて少なくとも1つの異種ヌクレオチド配列、特に、抗原をコードする異種ヌクレオチド配列を発現する組換えウイルスベクターと、(ii)イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミン誘導体の、逐次または同時いずれかの投与を含む。
【0069】
また別の態様では、本発明は、患者において感染性疾患の発症を予防する、および/または感染性疾患を処置する方法を提供し、該方法は、(i)in vivoにおいて少なくとも1つの異種ヌクレオチド配列、特に、抗原をコードする異種ヌクレオチド配列を発現する組換えウイルスベクターと、(ii)イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミン誘導体の、逐次または同時いずれかの投与を含む。好ましい実施形態によれば、該感染性疾患は、例えば、HIV、HCV、HBV、HPVなどによって誘発される疾患のようなウイルス誘発性疾患である。
【0070】
さらなる実施形態では、組換えウイルスベクターによりコードされる抗原に対する免疫応答を増強するための組換えウイルスワクチンの製造におけるイミダゾ[4,5−c]キノリン4−アミン誘導体の使用が提供される(該組換えウイルスベクターは該誘導体と逐次または同時に投与される)。
【0071】
「逐次投与される」とは、本組換えウイルスワクチンの組換えウイルスベクター[化合物(i)]とイミダゾ[4,5−c]キノリン4−アミン誘導体[化合物(ii)]が互いに独立に投与されることを意味し、例えば、まず、該化合物の1つを投与し、もう1つの化合物を投与することからなる第二の投与を別に行う。本発明によれば、第1の投与は、第二の投与の前、同時または後に行うことができる(またその逆)。治療組成物の投与および第二の投与は、異なるまたは同一の送達経路によって行うことができる(例えば、全身送達と標的化送達、または双方とも標的化送達)。好ましい実施形態では、各投与は同じ標的組織に対して、最も好ましくは非経口経路で行うべきである。
【0072】
好ましい実施形態では、組換えウイルスベクターおよびイミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミン誘導体の投与は実質的に同時である。より好ましくは、両化合物は一緒に投与される。
【0073】
別の実施形態では、イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミン誘導体は、組換えウイルスベクターの投与の前に投与される。この特定の実施形態では、「前」とは、約5分〜約2週間、より詳しくは約1時間〜約1週間、より詳しくは約6時間〜約48時間を意味する。
【0074】
本発明の組換えウイルスワクチンは、薬学上許容される溶液として患者に投与され、これは通常、薬学上許容される濃度の塩、緩衝剤、保存剤、適合担体、アジュバント(例えば、ミョウバン、BCG、免疫応答修飾剤)および所望により他の治療成分を含み得る。
【0075】
薬学上許容される担体とは、ヒトまたは他の脊椎動物に投与するのに好適な1以上の適合固体または液体増量剤、希釈剤またはカプセル化物質を意味する。担体とは、有効成分と組み合わせて適用を容易にする有機または無機成分、天然物または合成物を表す。これらの医薬組成物の成分はまた、本発明の化合物と互いに、所望の薬効を実質的に損なうような相互作用の無い様式で混合可能である。
【0076】
組換えウイルスワクチンは薬剤を投与するための通常の投与経路のいずれによって投与することもできる。様々な投与経路が利用可能である。選択される様式は、もちろん、特定の組換えウイルスワクチン含量、処置される特定の症状および治療効力に必要とされる用量によって異なる。本発明の方法は、概して、医学上許容される投与様式(臨床上許容されない有害作用を引き起こすことなく有効レベルの免疫応答をもたらす様式を意味する)を用いて実施することができる。好ましい投与様式は本明細書に述べられている。治療における使用のためには、有効量の1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミン誘導体を、例えば粘膜などの所望の表面、全身に、例えばクリーム、溶液などの形態で薬剤を送達するいずれかの様式によって対象に投与することができる。
【0077】
組換えウイルスワクチンまたはその別個の化合物(i)および(ii)は、本発明に従って、全身投与、局所投与および局部投与を含む種々の投与様式により使用することができる。注射は、例えば皮下注射、皮内注射、筋肉内注射、静脈内注射、腹腔内注射、腫瘍内注射、血管内注射、動脈内注射による、または動脈への直接注射(例えば、肝動脈注入による)もしくは肝臓供給静脈(例えば、門脈への注射)による手段によって行うことができる。注射は通常のシリンジおよびニードル、または当技術分野で利用可能な他のいずれかの適当なデバイスを用いて行うことができる。あるいは、有効化合物またはそれを含有する組成物は、経口/消化器、鼻腔、気管内、肺内、腟内または直腸内経路などの粘膜経路を介して投与することができる。また、経皮手段(例えば、パッチ剤、クリームなど)を用いて局所投与を行うこともできる。本発明においては、筋肉内投与および皮下投与が好ましい経路となる。
【0078】
経口投与に関しては、組換えウイルスワクチンは、有効化合物を当技術分野で周知の薬学上許容される担体と組み合わせることにより、容易に処方することができる。このような担体は、本発明の化合物を、処置される対象による経口摂取用に錠剤、丸剤、糖衣錠、カプセル剤、液体、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁液などとして処方可能とする。経口使用のための医薬製剤は固形賦形剤として得ることができ、所望により、得られた混合物をすりつぶし、必要であれば好適な補助剤を加えた後に顆粒混合物を加工して錠剤または糖衣錠核を得る。好適な賦形剤は、特に、ラクトース、スクロース、マンニトールまたはソルビトールを含む糖類;例えば、トウモロコシデンプン、小麦デンプン、米デンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカントガム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチル−セルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムなどのセルロース調製物および/またはポリビニルピロリドン(PVP)といった増量剤である。所望により、架橋ポリビニルピロリドン、寒天またはアルギン酸もしくはアルギン酸ナトリウムなどのその塩といった崩壊剤を加えてもよい。所望により、経口処方物はまた、生理食塩水または内部の酸性条件を中和するバッファー中に調剤してもよく、あるいは担体を用いずに投与してもよい。経口使用可能な組換えウイルスワクチンとしては、ゼラチンからなるプッシュフィットカプセル剤ならびにゼラチンとグリセロールまたはソルビトールなどの可塑剤からなるソフトシールドカプセル剤が含まれる。プッシュフィットカプセル剤は、ラクトースなどの増量剤、デンプンなどの結合剤および/またはタルクまたはステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤、および所望により安定剤と混合した有効成分を含み得る。ソフトカプセル剤では、有効化合物を脂肪油、液体パラフィンまたは液体ポリエチレングリコールなどの好適な液体に溶解または懸濁させることができる。さらに、安定剤を加えてもよい。また、経口投与用に調剤されたマイクロスフェアを使用することもできる。このようなマイクロスフェアは当技術分野で十分に定義されている。全ての経口投与用処方物はこのような投与に好適な用量であるべきである。
【0079】
組換えウイルスワクチンは、全身送達が望ましい場合、例えばボーラス注射または持続的注入など、注射による非経口投与用に調剤することができる。注射用処方物は、例えばアンプルまたは保存剤を添加した多用量容器など、単位投与形で提供することができる。組換えウイルスワクチンは、油性または水性ビヒクル中の懸濁液、溶液またはエマルションなどの形態を採ってもよく、沈殿防止剤、安定剤および/または分散剤などの処方剤を含み得る。非経口投与用組換えウイルスワクチンは、水溶性形態の有効化合物の水溶液を含む。さらに、有効化合物(i)および/または(ii)の懸濁液は、適当な油性注射懸濁液として調製することができる。好適な親油性溶媒またはビヒクルとしては、ゴマ油などの脂肪油、またはオレイン酸エチルもしくはトリグリセリドなどの合成脂肪酸エステル、またはリポソームが含まれる。水性注射懸濁液は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトールまたはデキストランなど、懸濁液の粘度を増す物質を含んでもよい。所望により、懸濁液はまた、好適な安定剤または高濃度溶液の調製を可能とするために化合物の溶解度を高める薬剤を含んでもよい。
【0080】
あるいは、有効化合物(i)および/または(ii)は、使用前に、例えば無菌パイロジェンフリー水などの好適なビヒクルで構成する粉末形態であってもよい。組換えウイルスワクチンはまた、例えばココアバターまたは他のグリセリドなどの従来の坐剤基剤を含有する坐剤または保留浣腸などの直腸または膣用組成物として調剤することもできる。また、組換えウイルスワクチンの他、デポー製剤として調剤することもできる。このような持続的作用処方物は、好適なポリマー材料または疎水性材料(例えば、許容される油中のエマルションとして)またはイオン交換樹脂を用いて、あるいは難溶性誘導体、例えば難溶性塩として調剤することもできる。組換えウイルスワクチンはまた、固相またはゲル相担体または賦形剤を含んでもよい。このような担体または賦形剤の例としては、限定されるものではないが、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、種々の糖類、デンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、および、ポリエチレングリコールなどのポリマーが挙げられる。
【0081】
好適な液体または固体組換えウイルスワクチン形は、例えば、マイクロカプセル化されるか、蝸牛状にされる(encochleated)か、微視的金粒子上にコーティングされるか、リポソーム、噴霧、エアゾール、皮膚への移植用のペレット中に含まれるか、または皮膚中へスクラッチする鋭利な物体上で乾燥された、吸入用の水性溶液もしくは生理食塩水溶液である。この医薬組成物はまた、顆粒、散剤、錠剤、コーティング錠、(マイクロ)カプセル剤、坐剤、シロップ剤、エマルション、懸濁剤、クリーム、滴剤または有効化合物を長期放出する製剤を含み、その製剤において、賦形剤および添加剤および/もしくは補助剤(例えば、崩壊剤、結合剤、コーティング剤、膨潤剤、滑沢剤、香味剤、甘味料または可溶化剤)は、上記のように慣例的に使用される。
【0082】
1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミン誘導体はそれ自体を投与してもよいし、あるいは薬学上許容される塩の形態で投与してもよい。薬剤中で用いる場合、これらの塩は薬学上許容されるものであるべきであるが、薬学上許容されない塩もその薬学上許容される塩を作製するために便宜に用いることができる。このような塩としては、限定されるものではないが、下記の酸:塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、マレイン酸、酢酸、サリチル酸、p−トルエンスルホン酸、酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、ギ酸、マロン酸、コハク酸、ナフタレン−2−スルホン酸およびベンゼンスルホン酸が挙げられる。また、このような塩は、カルボン酸基のナトリウム、カリウムまたはカルシウム塩など、アルカリ金属塩またはアルカリ土類塩として調整することができる。
【0083】
好適な緩衝剤としては、酢酸および塩(1〜2%w/v);クエン酸および塩(1〜3%w/v);ホウ酸および塩(0.5〜2.5%w/v);およびリン酸および塩(0.8〜2%w/v)が含まれる。好適な保存剤としては、塩化ベンザルコニウム(0.003〜0.03%w/v);クロロブタノール(0.3〜0.9%w/v);パラベン(0.01〜0.25%w/v)およびチメロサール(0.004〜0.02%w/v)が含まれる。
【0084】
組換えウイルスワクチンは便宜には単位投与形で提供することができ、薬学分野で周知の方法のいずれかにより調製することができる。全ての方法が、化合物(i)と(ii)を、1以上の補助成分からなる担体と会合させる工程を含む。一般に、これらの組成物はこれらの化合物を液体担体、微粉固体担体またはその双方と均質かつ緊密に会合させ、その後、必要に応じて、その生成物を成形することにより調製される。液体投与形はバイアルまたはアンプルである。固体投与形は錠剤、カプセル剤および坐剤である。患者の処置のためには、化合物の活性、投与様式、免疫目的(すなわち、予防であるか治療であるか)、障害の性質および重篤度、患者の齢および体重、異なる用量が必要な場合もある。所定の用量の投与は、個々の投与単位の形態での1回の投与または数回のより小さな投与単位の双方によって行うことができる。抗原特異的応答を追加刺激するには、何週間か何ヶ月かの特定の間隔で複数回の投与を行うのが通常である。
【0085】
他の送達系としては、時限放出、遅延放出または持続的放出送達系を含み得る。このような系は、組換えウイルスワクチンの化合物を繰り返し投与しなくてもよく、対象および医師に対する便宜性が増す。多種の放出送達系が利用でき、当業者に知られている。それらには、ポリ(ラクチド−グリコリド)、コポリオキサレート、ポリカプロラクトン、ポリエステルアミド、ポリオルトエステル、ポリヒドロキシ酪酸およびポリ無水物などのポリマーベース系が含まれる。薬剤を含有する上記ポリマーのマイクロカプセルは、例えば、米国特許第5,075,109号に記載されている。送達系はまた、コレステロール、コレステロールエステルなどのステロールおよび脂肪酸または中性脂肪(モノグリセリド、ジグリセリドおよびトリグリセリドなど)を含む脂質;ヒドロゲル放出系;シラスティック系;ペプチドに基づく系;ワックスコーティング;慣例の結合剤および賦形剤を用いる圧縮錠剤;部分縮合インプラントなどの非ポリマー系を含む。特定の例としては、限定されるものではないが、(a)米国特許第4,452,775号、同第4,675,189号および同第5,736,152号に記載されているものなど、本発明の薬剤がマトリックス内にある形態で含まれている腐食系、および(b)米国特許第3,854,480号、同第5,133,974号および同第5,407,686号に記載されているものなど、有効成分がポリマーから制御された速度で透過する拡散系が挙げられる。さらに、ポンプに基づくハードウェア送達系も使用でき、そのいくつかは移植に適している。
【0086】
本発明のある組換えウイルスワクチンに関して、組換えウイルスベクター[化合物(i)]および1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミン誘導体[化合物(ii)]の投与形態は同じであっても異なっていてもよい(例えば、化合物(i)は溶液として投与され、化合物(ii)はクリームとして投与される)。
【0087】
他の態様では、本発明はキットに関する。本発明のあるキットは、(i)少なくとも1つの本発明の組換えウイルスベクターを含有する容器と(ii)少なくとも1つの1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミン誘導を含有する容器、ならびにこれらの化合物の投与のタイミングに関する説明書を含む。この容器は、(i)少なくとも1つの組換えウイルスワクチンと(ii)少なくとも1つの1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミン誘導体の双方を一緒に収容する単一の容器であってもよいし、あるいはブリスターパックなど、個々の用量の化合物(i)と(ii)を収容する複数の容器またはチャンバーであってもよい。このキットはまた、組換えウイルスワクチンの投与のタイミングに関する説明書も含む。これらの説明書は、患者に適当な時点で組換えウイルスワクチンを服用するように指示したものである。例えば、組換えウイルスワクチンの送達のための適当な時点は症状が生じた時であり得る。あるいは、組換えウイルスワクチンの送達のための適当な時点は、月間または年間などの定期スケジュールであり得る。化合物(i)および(ii)は同時に投与してもよいし、あるいはそれらが相乗作用的免疫応答を生じるのに十分近い時間で投与される限り、別に投与してもよい。
【0088】
所望により、本発明の方法または使用は1以上の慣例の治療法(例えば、放射線、化学療法および/または外科術)と組み合わせて行うこともできる。複数の治療アプローチの使用は患者により広い基盤の介入を提供する。一実施形態では、本発明の方法は、外科的介入の前または後に行うことができる。別の実施形態では、本発明の方法は、放射線療法(例えば、γ線療法)の前または後に行うことができる。当業者ならば、適当な放射線療法プロトコールおよび使用可能なパラメーターを容易に調整することができる(例えば、Perez and Brady, 1992, Principles and practice of Radiation Oncology, 2nd Ed. JB Lippincott Co参照;当業者に明らかなように、適当な順応および改良を使用)。さらに別の実施形態では、本発明の方法または使用は、1以上の薬剤(例えば、HPV感染、HPV関連病状を処置または予防するために慣例的に用いられる薬剤)による化学療法と組み合わせる。
【0089】
本発明はさらに、化学療法薬による化学療法処置下にある癌患者の処置を改良するための方法に関し、該方法は、該患者を上記に開示したような組換えウイルスワクチンで同時処置することを含む。
【0090】
本発明はさらに、細胞傷害剤または放射線療法の細胞傷害有効性を向上させる方法に関し(http://www.micropat.com/perl/di/psrecord.pl?ticket=037405101546&listid=114 934200603310905&container id=763883&patnum=US6015827A)、該方法は、このような処置を必要とする患者を、上記に開示したような組換えウイルスワクチンで同時処置することを含む。
【0091】
別の実施形態では、本発明の方法または使用は、1以上のプライマー組成物と1以上のブースター組成物の逐次投与を含む、プライムブースト療法に従って行われる。一般に、プライミング組成物およびブースティング組成物は、少なくとも1つの抗原ドメインを共通に含むか、またはコードする、異なるビヒクルを用いる。まず、宿主生物にプライミング組成物を投与し、その後、1日〜12か月までの様々な期間の後に同じ宿主生物にブースティイング組成物を投与する。本発明の方法は、プライミング組成物を1〜10回逐次投与した後、ブースティイング組成物を1〜10回逐次投与することを含む。望ましくは、注射間隔は1週間〜6か月である。さらに、このプライミングおよびブースティイング組成物は、同じ投与経路または異なる投与経路で、同じ部位または交互の部位に投与することができる。例えば、HPV初期ポリペプチドに基づく組成物は粘膜経路によって投与することもできるが、組換えウイルスワクチンは、MVAベクターに関しては、例えば皮下注射などで注射することが好ましい。
【0092】
動物またはヒト生物において投与した際に抗HPV免疫応答を誘発または刺激する能力は、当技術分野で標準的な種々のアッセイを用い、in vitroまたはin vivoのいずれかで評価することができる。免疫応答の誘発および活性化を評価するために利用可能な技術の一般的記載については、例えば、Coligan et al. (1992 and 1994, Current Protocols in Immunology; ed J Wiley & Sons Inc, National Institute of Health)参照。細胞性免疫の測定は、CD4+およびCD8+T細胞に由来するものを含む活性化されたエフェクター細胞により分泌されるサイトカインの測定(例えば、ELIspotによるIL−10またはIFNγ産生細胞の定量)、免疫エフェクター細胞の活性化状態の判定(例えば、従来の[3H]チミジン取り込みによりT細胞増殖アッセイ)、感作対象における抗原特異的Tリンパ球に関するアッセイ(例えば、細胞傷害性アッセイにおけるペプチド特異的溶解)によって行うことができる。体液性応答を刺激する能力は、抗体結合および/または結合競合によって判定することができる(例えば、Harlow, 1989, Antibodies, Cold Spring Harbor Press参照)。本発明の方法はまた、さらに、抗HPV免疫応答の誘発または増強を反映する抗腫瘍活性を判定するため、適当な腫瘍誘発剤(例えば、HPV−E6およびE7発現TC1細胞)で刺激した動物モデルにおいて確認することができる。
【0093】
本発明に従って特に処置可能な病状としては、例えば、子宮頸癌、または頸部上皮内癌(CIN)もしくは扁平上皮内病変(SIL)と呼ばれるこの悪性新生物前駆病変がある。本発明の組換えウイルスワクチンはまた、DNA診断により確認された患者の頸部無症候性感染、または子宮頸癌、CINもしくはSILの外科的処置の後に残ったと思われる無症候性感染、または疫学的理由に従って存在すると推測される無症候性感染の処置にも有用であり得る。処置される病状にはまた、性器疣贅(いぼ)および尋常性疣贅および足底疣贅も含まれる。また、これらの症状は全て、多数の他のHPV種によっても引き起こされ、本発明の薬剤、化合物および方法はまたこれらのウイルスに対しても有効に向けられ得る。これらの病変は全て、おそらく、ほとんどの場合に診断されない無症候性感染に由来する。本発明はまた、これらの無症候性感染の全てに対しても有効に向けられ得る。
【0094】
本発明を例示的に記載してきたが、用いられている用語は、言葉の本質において限定ではなく説明であると理解されるべきである。上記の教示に照らして、本発明の多くの改変および変更が可能であるのは明らかである。従って、添付の特許請求の範囲内で、本発明は、本明細書に具体的に記載されているものとは違った方法で実施することもできると理解されるべきである。
【0095】
上記に引用されている特許、刊行物およびデータベース登録の開示は全て、そのような個々の特許、刊行物および登録が具体的かつ個々に引用することにより本明細書の一部とされることが示されている場合と同じ程度で、具体的に引用することにより本明細書の一部とされる。
【実施例】
【0096】
A−HPV抗原を発現する組換えウイルスベクター
1.材料および方法
1.1.試験品
各組換えベクター構築物(MVAに基づく)の名称および簡単な説明
【0097】
【表1】
【0098】
保存条件:
ウイルスを注射当日まで−80℃に維持した。このウイルス懸濁液を希釈および投与の直前に急速解凍した。
【0099】
ウイルスをバッファーTris/HCl 10mM、サッカロース5%(w/v)、10 mM NaGlu、50mM NaCl、pH8.0に、100μl容量中、必要な用量が得られるように希釈した。
【0100】
1.2.動物モデル
種/系統/供給者:
SPF健常雌C57Bl/6マウスはCharles River (Les Oncins, France)から得た。
【0101】
これらの動物は到着時6週齢であった。実験の開始時にはそれらは7週齢であった。
【0102】
これらの動物を、1時間に最低11回の換気を行うよう空調した単一の専用室で飼育した。温度および相対湿度の範囲は、それぞれ20℃〜24℃および40〜70%であった。光は12時間明期、12時間暗期となるように自動制御した。特定の病原体を持っていないことをセンチネル動物の定期的管理により確認した。
【0103】
研究を通じ、動物にはRM1型無菌餌(Dietex France, Saint Gratien)を自由に摂らせた。無菌水もボトルから自由に与えた。
【0104】
動物は全て、実験開始前1週間、馴化させた。
【0105】
1.3.細胞の説明
C57Bl6マウスの肺から得たTC1腫瘍細胞に、HPV16由来のE6およびE7を発現するLXSN16E6E7とras遺伝子を発現するpVEJBの2種のレトロウイルスで形質導入した。これらの細胞を、0.5mg/ml G418および0.2mg/mlハイグロマイシンを含有するDMEM中で培養した。接着細胞をトリプシン処置により取り出し、3回洗浄した後、2.105 TC1生存細胞を用いて皮下から腫瘍刺激を行った。
【0106】
1.4.アルダラ(商標)(3M Pharmaceuticals)
アルダラ(商標)はイミキモドの商標である。5%クリーム各1グラムは、イソステアリン酸、セチルアルコール、ステアリルアルコール、白色ワセリン、ポリソルベート60、モノステアリン酸ソルビタン、グリセリン、キサンタンガム、精製水、ベンジルアルコール、メチルパラベンおよびプロピルパラベンからなる灰白色水中油型バニシングクリーム基剤中に50mgのイミキモドを含有する。
【0107】
1.5.プロトコール
免疫計画:
免疫療法実験では、1日目に2.105 TC1細胞を用い、15匹のC57Bl6雌マウスの右の側腹部皮下に抗原投与を行った。8日目、15日目および22日目に、5.106 pfuまたは5.105 pfuのワクシニアウイルスを、マウスの3箇所の離れた部位に3回皮下処置した。各感作の直前に、剃毛したマウスの皮膚(およそ1cm2)の注射部位の上にイミキモド(アルダラ5%クリーム;3M Pharmaceuticals)を局所適用した。各マウスに1回当たり、およそ0.8mgまたは1.6mg/マウスの活性イミキモドを施した。腫瘍の増殖を80日間、週2回、カリパスでモニタリングした。腫瘍の大きさが直径25mmを超えた際、または腫瘍が小さかったとしてもマウスが痛みを示した際には、倫理的理由からマウスを安楽死させた。
【0108】
免疫原性研究では、1日目、8日目および15日目に5.107 pfuまたは5.106 pfuのワクシニアウイルスを、3匹の腫瘍不含C57B16雌マウスの3箇所の離れた部位に3回皮下接種した。この用量は、HPV特異的抗原に対する細胞性免疫の検出を至適化するために使用した。各感作の直前に、剃毛したマウスの皮膚(およそ1cm2)の注射部位の上にイミキモドを局所適用した。各マウスに1回当たり、およそ0.8mgまたは1.6mg/マウスの活性イミキモドを施した。22日目に免疫分析のために脾臓および血清を取り出した。
【0109】
モニタリングパラメーター:
*ElispotによるIFNγ(Th1)またはIL−4(Th2)分泌細胞の数/頻度の測定
新鮮な脾細胞を、Cell Strainer (BD Falcon)を用いて調製した。ペプチドは全て、Neosystemにより免疫級レベルで合成された(10mg)。各ペプチドをDMSOに10mg/mlで溶解させ、4℃で保存した。Elispotは、製造者の説明書に従い、Mabtech ABマウスIFNγ ELISPOTPLUSキットまたはマウスIL−4 ELISPOTPLUSキット(Mabtech, France)を用いて行った。96ウェルニトロセルロースプレートを炭酸ナトリウムバッファー中、3μg/mlのモノクローナルラット抗マウスIFNγ抗体(クローンR4−6A2;Pharmingen、カタログnr551216、ロットM072862;100μl/ウェル)でコーティングした。これらのプレートを4℃で一晩または37℃で1時間インキュベートした。プレートをDMEM10%FCSで3回洗浄し、37℃にて100μl DMEM10%FCS/ウェルで2時間飽和させた。脾細胞を106細胞/100μlの濃度でプレーティングした。全てのウェルにインターロイキン2を6U/50μl/ウェル(R&D Systems)10ng/ml)の濃度で加えた。コンカナバリンAを陽性対照(5μg/ml)として用いた。HPV特異的ペプチドは5μg/mlの濃度で用いた。これらのプレートを37℃、5%CO2下で48時間インキュベートした。このプレートをPBS1倍で1回、PBS−Tween 0.05%で5回洗浄した。ビオチン化抗マウスIFNγ(クローンXMG1.2、Pharmingen)を0.3μg/100μl/ウェルの濃度で加え、室温で2時間、ゆっくり振盪させながらインキュベートした。このプレートをPBS−Tween 0.05%で5回洗浄した。また、PBS−Tween0.05%−FCS1%中に1/5000希釈したエクストラビジンAKP(Sigma, St. Louis, MO)もウェルに加えた(100μl/ウェル)。このプレートを室温で45分間インキュベートした後、PBS−Tween 0.05%で5回洗浄した。IFNγ分泌はBioradキットで現像した。ウェル当たり100μlの基質(NBT+BCIP)を加え、プレートを半時間室温で放置した。このプレートを水で洗浄し、室温で一晩乾燥させた。解剖顕微鏡を用いてスポッ
トを計数した。スポットはElispotリーダーBioreader 4000 Pro−X(BIOSYS-Gmbh; Serlabo France)を用いて計数した。
【0110】
供試ペプチドのリスト:
SCVYCKKEL(E6;Db):S9Lペプチド
RCIICQRPL(E6;Db):R9Lペプチド
SEYRHYQYS(E6;Kb):S9Sペプチド
ECVYCKQQL(E6;Db):E9Lペプチド
TDLHCYEQL(E7;Kb):T9Lペプチド
RAHYNIVTF(E7;Db):R9Fペプチド
無関連ペプチド(MUC1特異的)
D38L(E7;Db)は38アミノ酸長のE7特異的ペプチドである。異なるELISPOTアッセイでは組換え精製E7タンパク質も用いた。
【0111】
*R9Fテトラマー特異的CD8+T細胞の頻度の測定
新鮮な脾細胞を採取し、BD専用篩(Cell Strainer)を用いて調製した。脾細胞を24ウェルプレートにて、R9Fペプチド(5μg/ml)で5日間刺激するか、またはそのまま特異的標識に用いた。1.106細胞を1μlのAPC結合マウスCD8特異的抗体(BD Pharmingen 553035;クローン53−6.7;ロット番号32567)および10μlのR9F特異的H−2Dbテトラマー(Beckman Coulter T20071;H-2Db/PE;ペプチドRAHYNIVTF;ロットC507117;C602110)で4℃にて30分間染色した。細胞を洗浄した後、PBS/0.5%PFAに希釈した。
【0112】
*E7抗原に対するTh1/Th2関連IgGイソ型スイッチの測定
*96ウェルプレートを4℃にて一晩、3μg/mlのE7精製タンパク質(P#2101 cahier PC00001;157頁;2002年10月)でコーティングした。タンパク質をコーティングバッファー(200mM NaHCO3、80mM Na2CO3、pH9.5)に希釈し、各ウェルに100μlを加えた。
*ウェルをプレート洗浄機(PBS、0.1%Tween 20、10mM EDTA)で5回洗浄し、室温にて1時間、300μl PBS+3%BSAで飽和させた。
*ウェルを5回洗浄し、室温で2時間、マウス血清の1/2連続希釈液(PBS+1%BSA中、1/25〜1/1600)とともにインキュベートした。
*このプレートを5回洗浄した。PBS+1%BSAで1/1000希釈したペルオキシダーゼコンジュゲートラット抗マウスIgG2a(BD Pharmingen 553391)またはラット抗マウスIgG1(BD Pharmingen 559626)を加え(100μl/ウェル)、室温で1時間インキュベートした。
*ウェルを5回洗浄し、100μlmの基質溶液(0.05Mクエン酸、0.05M酢酸ナトリウム、1%テトラメチルベンジジン、0.015%H2O2)/ウェルで現像した。
TMB溶液(10ml)=140μl TMB+2μl H2O2+5ml酢酸ナトリウム(0.1M)+5mlクエン酸塩(0.1M)
*反応は100μlの0.8M H2SO4/ウェルを加えることよって停止させた。450nmで吸光度を測定した(Genesys system)。
【0113】
*ワクチン接種により誘発されたMVA中和抗体の分析
細胞:BHK−21(ハムスター繊維芽細胞、Ref ATCC:CCL−10)
MVA−GFP(MVATGl5938):リポーター緑色蛍光タンパク質を、p11K7.5プロモーターの制御下、MVA欠失IIIに挿入した。
【0114】
工程1:中和血清:
全ての血清を、使用前に56℃で30分間加熱することにより、補体除去した。
陽性対照:ポックスウイルス(WR株)(Ref. Ac WR IMVQC34)で免疫したウサギの血清
【0115】
工程2:血清中和アッセイ(中和抗MVA抗体力価のSOP測定)
血漿を培養培地で連続希釈し(50倍〜3200倍希釈の範囲)、96ウェルマイクロプレート中、MVA−GFP(5×103 pfu/ウェル)とともに37℃で1時間インキュベートした(中和停止)。BHK−21細胞(105細胞/ウェル)を播種し、37℃、5%CO2下でさらに16〜18時間インキュベートした。
【0116】
翌日、96ウェルマイクロプレートを250μLのPBSで洗浄し、各ウェルに100μLのPBSを加えた後、蛍光マイクロプレートリーダー(VICTOR(商標)PerkinElmer(登録商標))で蛍光強度を読み取った。この中和抗体力価は、50%のウイルス活性が阻害される力価である。中和抗体力価(NAT50)は、Spearman−Karber法を用いて算出した。
【0117】
2−結果
材料および方法の節に記載されているモデルに従い、3つの独立した治療試験を行った。
【0118】
全ての試験で、本発明者らは、ワクチン接種部位におけるアルダラ(商標)クリーム(5%)の局所適用がMVATG8042の治療効力を有意に増強することを一貫して観察した(図1a、b、cおよびd参照)。この設定では、5.106 pfuのMVATG8042によるワクチン接種は各試験の終了時までに平均45%の腫瘍不含マウスを誘導したが、MVATG8042がそれぞれ0.8mgまたは1.6mgのイミキモドと組み合わせて用いられた場合には、75%および95%の腫瘍不含動物が見られた。
【0119】
1つの試験系では(図1c参照)、本発明者らはまた、アルダラ(商標)の添加により、1log低い用量のウイルス(5.105 pfu)で同じ治療効力を達成可能であることを見出した。
【0120】
異なる群間のin vivo生存試験における統計学的な差を、カプラン・マイヤー生存曲線のログランク適用(Statistica 5.1ソフトウエア、Statsoft Inc.)を用いて評価した。p≦0.05は統計学的に有意とみなされる。
【0121】
並行して、E6およびE7 HPV抗原に対する細胞性応答と体液性応答の双方誘発を評価するために、2つの独立した研究を行った。マウスにプロトコールの節に記載されたようにワクチン接種した。両試験において、E6またはE7特異的IFNγ分泌細胞の数を、ELISPOTアッセイを用いて数えた。これらの結果は、アルダラ(商標)の局所投与が、MVATG8042単独で見られるものよりも、MHCクラスIに限定されたCD8+ T細胞の数に有意な上昇をもたらすことを示す(図2aおよびb)。アルダラ(商標)+MVATG8042群(ペプチドS9SおよびT9L)では、より広いエピトープ範囲に対する低い応答が存在する。並行して、別の試験で、E7特異的IL−4分泌細胞の数は、MVA単独群よりもMVATG8042+アルダラ(商標)で低かった(図3)。考え合わせると、これらのデータは、MVATG8042+アルダラ(商標)の組合せがE6およびE7抗原に対する、Th1に基づく細胞性免疫応答を向上させることを示す。
【0122】
CD8+/R9Fテトラマー+脾細胞の頻度をさらに、E7特異的免疫優性エピトープR9Fによるin vitro刺激の前または後にフローサイトメトリーにより分析した(図4a)。これらの結果は、R9F免疫優性エピトープの認識がCD8+特異的T細胞によって明らかに媒介されることを示す。R9F−Dbに限定されるCD8+産生の頻度は脾臓では低く、この産生は、in vitroにおいてこのペプチドで刺激した後によりよく検出される。図4bで示される実験において、アルダラ(商標)で前処理したところ、R9F−Db特異的CD8+ T細胞の数は有意に向上した。
【0123】
最後に、E7抗原に対する体液性応答の測定もELISAによって行った。アルダラ(商標)+MVATG8042の組合せにより誘発された応答のタイプをより良く特性決定するために、IgGイソ型スイッチを分析した。E7特異的IgG1およびIgG2aが検出された。このデータ(図5)は、アルダラ(商標)の局所適用が、組合せ処置の効力に関与し得る典型的なTh1プロフィール(IgG1よりも高いIgG2a力価、図5a)を誘発することを示す。これらの結果は第二の試験で確認される(図5b)。
【0124】
最後に、アルダラとMVATG8042の組合せの影響を分析するために、MVA特異的中和抗体のレベルを測定した(図6)。これらの結果は、MVATG8042とアルダラ(商標)の組合せが、同様に注射したMVA単独に比べた場合、得られるMVA特異的中和抗体の力価を低下させることを示す。これは、特異的抗体による中和から保護し得る、アルダラ(商標)クリームの局所投与によって作り出された環境により説明することができた。
【0125】
B−腫瘍抗原MUC1を発現する組換えウイルスベクター
2.1.試験品
各組換えベクター構築物(MVAに基づく)の名称と簡単な説明
【0126】
【表2】
【0127】
保存条件:
ウイルスをMolecular Immunology Departmentから受け取った後、注射当日まで−80℃に維持した。このウイルス懸濁液を希釈および投与の直前に急速解凍した。
【0128】
使用前の希釈条件:
ウイルスをTG0008バッファー(Tris/HCl 10mM、サッカロース5%(w/v)、10mM NaGlu、50mM NaCl、pH8.0)に、100μl容量中、必要な用量が得られるように希釈した。
【0129】
2.2.動物モデル
種/系統/供給者:
SPF健常雌B6D2およびC57Bl/6マウスはCharles River (Les Oncins, France)から得た。
【0130】
これらの動物は到着時6週齢であった。実験の開始時にはそれらは7週齢であった。これらの動物を、1時間に最低11回の換気を行うよう空調した単一の専用室で飼育した。温度および相対湿度の範囲は、それぞれ20℃〜24℃および40〜70%であった。光は12時間明期、12時間暗期となるように自動制御した。研究を通じ、動物にはRM1型無菌餌(Dietex France, Saint Gratien)を自由に摂らせた。無菌水もボトルから自由に与えた。
【0131】
2.3.細胞の説明
RenCa−MUC1腫瘍細胞: RenCaは実験的ネズミ腎臓癌モデルである。RenCa細胞を、従来のリン酸Ca2+トランスフェクション法を用いて、pHMG−ETAtm(MUC−1)およびpY3(ハイグロマイシンB耐性)でトランスフェクトした。10%不活化ウシ胎児血清、L−グルタミン(2mM)、ゲンタマイシン(0.04g/l)およびハイグロマイシン(600μg/ml、Roche Diagnostic)を添加したDMEM(ダルベッコ改変)にクローン希釈した後に、クローンを選択した。MUC−1発現の分析は、H23モノクローナル抗体を用いた細胞蛍光分析(FACScan、Becton Dickinsonを使用)によって行った。接着細胞をPBS/EDTA処理により取り出し、3回洗浄した後、3.105 RenCa−MUC1(クローン4)生存細胞を用いて皮下から腫瘍刺激を行った。
【0132】
2.4.プロトコール
免疫計画:
免疫療法実験では、1日目に3.105 RenCa−MUC1細胞を用い、15匹のB6D2雌マウスの右の側腹部皮下に抗原投与を行った。4日目、11日目および18日目に、5.107 pfuのポックスウイルス(MVA株)を、マウスの3箇所の離れた部位に皮下処置した。各感作の直前に、剃毛したマウスの皮膚(およそ10cm2)の注射部位の上にイミキモドを局所適用した。各マウスに1回当たり、およそ1mg/マウスの活性イミキモドを施した。腫瘍の増殖を80日間、週2回、カリパスでモニタリングした。腫瘍の大きさが直径25mmを超えた際、または腫瘍が小さかったとしてもマウスが痛みを示した際には、倫理的理由からマウスを安楽死させた。
【0133】
免疫原性研究では、1日目、8日目および15日目に5.107 pfuのポックスウイルス(MVA株)を、3匹のC57Bl6雌マウスの3箇所の離れた部位に皮下接種した。この用量は、MUC1特異的抗原に対する細胞性免疫の検出を至適化するために使用した。各感作の直前に、剃毛したマウスの皮膚(およそ10cm2)の注射部位の上にイミキモドを局所適用した。各マウスに1回当たり、およそ1mg/マウスの活性イミキモドを施した。22日目に免疫分析のために脾臓および血清を取り出した。
【0134】
モニタリングパラメーター:
*ElispotによるIFNγ分泌細胞の数/頻度の測定
新鮮な脾細胞を、Lympholite精製バッファーを用いて調製した。ペプチドは全て、Neosystemにより免疫級レベルで合成された(10mg)。各ペプチドをDMSOに10mg/mlで溶解させ、4℃で保存した。96ウェルニトロセルロースプレートを炭酸ナトリウムバッファー中、3μg/mlのモノクローナルラット抗マウスIFNγ抗体(クローンR4−6A2;Pharmingen、カタログnr551216、ロットM072862;100μl/ウェル)でコーティングした。これらのプレートを4℃で一晩または37℃で1時間インキュベートした。プレートをDMEM10%FCSで3回洗浄し、37℃にて100μl DMEM10%FCS/ウェルで2時間飽和させた。脾細胞を106細胞/100μlの濃度でプレーティングした。全てのウェルにインターロイキン2を6U/50μl/ウェル(R&D Systems)10ng/ml)の濃度で加えた。コンカナバリンAを陽性対照(5μg/ml)として用いた。MUC1特異的ペプチドは5μg/mlの濃度で用いた。これらのプレートを37℃、5%CO2下で48時間インキュベートした。このプレートをPBS1倍で1回、PBS−Tween 0.05%で5回洗浄した。ビオチン化抗マウスIFNγ(クローンXMG1.2、Pharmingen)を0.3μg/100μl/ウェルの濃度で加え、室温で2時間、ゆっくり振盪させながらインキュベートした。このプレートをPBS−Tween 0.05%で5回洗浄した。また、PBS−Tween0.05%−FCS1%中に1/5000希釈したエクストラビジンAKP(Sigma, St. Louis, MO)もウェルに加えた(100μl/ウェル)。このプレートを室温で45分間インキュベートした後、PBS−Tween 0.05%で5回洗浄した。IFNγ分泌はBioradキットで現像した。ウェル当たり100μlの基質(NBT+BCIP)を加え、プレートを半時間室温で放置した。このプレートを水で洗浄し、室温で一晩乾燥させた。解剖顕微鏡を用いてスポットを計数した。
【0135】
*ElispotによるIL−4分泌細胞の数/頻度の測定
新鮮な脾細胞を、Lympholite精製バッファーを用いて調製した。ペプチドは全て、Neosystemにより免疫級レベルで合成された(10mg)。各ペプチドをDMSOに10mg/mlで溶解させ、4℃で保存した。96ウェルニトロセルロースプレートを炭酸ナトリウムバッファー中、3μg/mlのモノクローナル抗マウスIL−4抗体(Pharmingen、カタログnr551878、ロット27401;100μl/ウェル)でコーティングした。これらのプレートを4℃で一晩または37℃で1時間インキュベートした。プレートをDMEM10%FCSで3回洗浄し、37℃にて100μl DMEM10%FCS/ウェルで2時間飽和させた。脾細胞を106細胞/100μlの濃度でプレーティングした。全てのウェルにインターロイキン2を6U/50μl/ウェル(R&D Systems)10ng/ml)の濃度で加えた。コンカナバリンAを陽性対照(5μg/ml)として用いた。MUC1特異的ペプチドは5μg/mlの濃度で用いた。これらのプレートを37℃、5%CO2下で48時間インキュベートした。このプレートをPBS1倍で1回、PBS−Tween 0.05%で5回洗浄した。ビオチン化抗マウスIL−4(Pharmingen)を0.2μg/100μl/ウェルの濃度で加え、室温で2時間、ゆっくり振盪させながらインキュベートした。このプレートをPBS−Tween 0.05%で5回洗浄した。また、PBS−Tween0.05%−FCS1%中に1/5000希釈したエクストラビジンAKP(Sigma, St. Louis, MO)もウェルに加えた(100μl/ウェル)。このプレートを室温で45分間インキュベートした後、PBS−Tween 0.05%で5回洗浄した。IFNγ分泌はBioradキットで現像した。ウェル当たり100μlの基質(NBT+BCIP)を加え、プレートを半時間室温で放置した。このプレートを水で洗浄し、室温で一晩乾燥させた。解剖顕微鏡を用いてスポットを計数した。
【0136】
供試ペプチドのリスト:
F9L FLSFHISNL(H−2Kb;Heukamp, 2001)
A9A APGSTAPPA(H−2Db)
T24P TAPPAHGVTSAPDTRPAPGSTAPP
G23D GQDVTLAPATEPASGSAATWGQD
V23S VTGSGHASSTPGGEKETSATQRS
無関連ペプチド/R9F RAHYNIVTF(E7;Db)
【0137】
*MUC1抗原に対するTh1/Th2関連IgGイソ型スイッチの測定
*96ウェルプレートを4℃にて一晩、3μg/mlのT24P MUC1特異的ペプチドでコーティングした。このペプチドはコーティングバッファー(200mM NaHCO3、80mM Na2CO3、pH9.5)で希釈し、各ウェルに100μlを加えた。
*ウェルをプレート洗浄機(PBS、0.1%Tween 20、10mM EDTA)で5回洗浄し、室温にて1時間、300μl PBS+3%BSAで飽和させた。
*ウェルを5回洗浄し、室温で2時間、マウス血清の1/2連続希釈液(PBS+1%BSA中、1/25〜1/1600)とともにインキュベートした。
*このプレートを5回洗浄した。PBS+1%BSAで1/1000希釈したペルオキシダーゼコンジュゲートラット抗マウスIgG2a(BD Pharmingen 553391)またはラット抗マウスIgG1(BD Pharmingen 559626)を加え(100μl/ウェル)、室温で1時間インキュベートした。
*ウェルを5回洗浄し、100μlmの基質溶液(0.05Mクエン酸、0.05M酢酸ナトリウム、1%テトラメチルベンジジン、0.015%H2O2)/ウェルで現像した。
TMB溶液(10ml)=140μl TMB+2μl H2O2+5ml酢酸ナトリウム(0.1M)+5mlクエン酸塩(0.1M)
*反応は100μlの0.8M H2SO4/ウェルを加えることよって停止させた。450nmで吸光度を測定した(Genesys system)。
【0138】
3−結果
プロトコールの節に記載されているようなRenCa−MUC1皮下モデルで治療試験を行った。本発明者らは、アルダラ(商標)クリーム5%局所投与による前処理が、試験の終了時に腫瘍不含マウスの5%〜35%でMVATG9931の治療効力を有意に高めることを見出した。この試験では、アルダラ(商標)単独の局所適用で処理したマウスは無かった。しかしながら、違う癌モデル(OVA発現腫瘍)に関して発表されている情報によれば、腫瘍とは異なる部位にアルダラ(商標)を局所適用しても治療効果はないことを記載している(Craft et al., 2005)。異なる群間のin vivo生存試験における統計学的な差を、カプラン・マイヤー生存曲線のログランク適用(Statistica 5.1ソフトウエア、Statsoft Inc.)を用いて評価した。p≦0.05は統計学的に有意とみなされる。
【0139】
図7は、renCa−Muc1腫瘍モデルにおけるアルダラ+MVATG9931の組合せの治療効果を示す。
【0140】
また、MUC1抗原に対する細胞性応答および体液性応答の双方の誘発を見出すために免疫原性試験も行われた。マウスに、プロトコールの節に記載されているようにワクチン接種を行った。
【0141】
最初の試験セットでは、MUC1特異的IFNγ分泌細胞の数を、ELISPOTアッセイを用いて数えた。MUC1 H−2Db、H−2Kbおよび長鎖に限定されるペプチドを用い、免疫化の後のCD4およびCD8 T細胞応答の双方をモニタリングした。本発明者らはアルダラの局所投与による前処置が、MVATG9931単独で得られるMHCクラスIおよびクラスIIに限定されるCD4およびCD8 T細胞の数を有意には向上させないことを見出した(図8)。
【0142】
別の試験セットでは、MUC1特異的IL−4分泌細胞の数を、ELISPOTアッセイを用いて数えた。MUC1に限定されるペプチドを用い、免疫化の後のCD4およびCD8 T細胞応答の双方をモニタリングした。本発明者らはアルダラの局所投与による前処置が、MVATG9931単独で得られるTh2に基づくT細胞応答の数を有意に低下させることを見出した(図9)。
【0143】
最後に、ELISAにより、MUC1抗原に対する体液性応答の測定も行った。アルダラ(商標)+MVATG9931の組合せにより誘発された応答のタイプをより良く特性決定するために、IgGイソ型スイッチを分析した。MUC1特異的IgG1およびIgG2が検出された(図10)。本発明者らは、アルダラ(商標)の局所投与による前処理が、処置の効力に関与し得る典型的なTh1型応答(IgG1よりも高いIgG2a力価)を誘発することを見出した。
【0144】
C−結論および考察
これらの試験は、アルダラ(商標)の局所適用が、抗原に対するMVAに基づくワクチンの治療効力を向上させ得る(免疫応答を向上させ得る)ことを初めて実証する。
【図面の簡単な説明】
【0145】
【図1a】イミキモドの局所投与とMVATG8042の皮下注射の組合せの治療効果。図1b:実験1:2.105 TCI皮下、5.106 pfuの皮下注射3回、マウス15匹/群;図1c:実験2:2.105 TCI皮下、5.106または5.105 pfuの皮下注射3回、マウス15匹/群;図1d:実験3:2.105 TCI皮下、5.106の皮下注射3回、マウス15匹/群。
【図1b】イミキモドの局所投与とMVATG8042の皮下注射の組合せの治療効果。図1b:実験1:2.105 TCI皮下、5.106 pfuの皮下注射3回、マウス15匹/群;図1c:実験2:2.105 TCI皮下、5.106または5.105 pfuの皮下注射3回、マウス15匹/群;図1d:実験3:2.105 TCI皮下、5.106の皮下注射3回、マウス15匹/群。
【図1c】イミキモドの局所投与とMVATG8042の皮下注射の組合せの治療効果。図1b:実験1:2.105 TCI皮下、5.106 pfuの皮下注射3回、マウス15匹/群;図1c:実験2:2.105 TCI皮下、5.106または5.105 pfuの皮下注射3回、マウス15匹/群;図1d:実験3:2.105 TCI皮下、5.106の皮下注射3回、マウス15匹/群。
【図1d】イミキモドの局所投与とMVATG8042の皮下注射の組合せの治療効果。図1b:実験1:2.105 TCI皮下、5.106 pfuの皮下注射3回、マウス15匹/群;図1c:実験2:2.105 TCI皮下、5.106または5.105 pfuの皮下注射3回、マウス15匹/群;図1d:実験3:2.105 TCI皮下、5.106の皮下注射3回、マウス15匹/群。
【図2a】E7/E6特異的IFNγ分泌リンパ球の頻度の測定。図2b:E6/E7特異的INFγ/Elispot Th1応答。
【図2b】E7/E6特異的IFNγ分泌リンパ球の頻度の測定。図2b:E6/E7特異的INFγ/Elispot Th1応答。
【図3】IL−4 ELISPOTアッセイ。E7特異的IL−4/Elispot Th2応答。
【図4a】R9F特異的CD8+T細胞のフローサイトメトリー分析。Tet_R9F+E7特異的CD8+T細胞の頻度の測定。
【図4b】R9F特異的CD8+T細胞のフローサイトメトリー分析。Tet_R9F+E7特異的CD8+T細胞の頻度の測定。
【図5a】E7特異的体液性免疫応答。Th1/Th2イソ型IgGスイッチの測定。
【図5b】E7特異的体液性免疫応答。Th1/Th2イソ型IgGスイッチの測定。
【図6】MVA特異的融和抗体力価(NAT50)。
【図7】RenCa−Muc1腫瘍モデルにおけるアルダラ+MVATG9931の組合せの治療効果。
【図8】単鎖または長鎖エピトープに対するMUC1特異的Th1型T細胞応答に対するイミキモドの効果。
【図9】IL−4 elispotアッセイ:MUC−1特異的Th2型T細胞応答に対するイミキモドの効果。
【図10】MUC1特異的体液性免疫応答(イソ型スイッチ):MUC1特異的体液性応答に対するイミキモドの効果。
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、新規な組換えウイルスワクチンを提供する。詳しくは、本発明は、組換えウイルスベクターと、その組換えウイルスベクターによりin vivoで惹起される免疫応答を向上させ得る特異的化合物とを含んでなる組合せ生成物を提供する。
【0002】
免疫応答を誘発し得る抗原の動物系への導入とそれによる該動物の感染からの保護を含む従来のワクチン技術は長年知られてきた。これらの技術は生ワクチンおよび不活化ワクチンの双方の開発を含んでいた。生ワクチンは一般に、病原型の感染因子に対する免疫応答を誘導し得る、弱毒された非病原型の感染因子である。近年、目的とする外来抗原がコードされ、ベクターから発現される組換えワクチン、特に、組換え生ワクチンの開発が進んでいる。中でも、組換えウイルスに基づくベクターは極めて有望であることが示され、新たなワクチンの開発に重要な役割を果たす。多くのウイルスの、外来病原体からタンパク質または腫瘍組織からタンパク質を発現し、in vivoにおいてこれらの抗原に対する特異的免疫応答を誘発する能力に関して検討されてきた。一般に、これらの遺伝子に基づくワクチンは潜在的な体液性免疫応答および細胞性免疫応答を刺激することができ、ウイルスベクターは、抗原をコードする遺伝子の送達と抗原提示の促進および増強の双方に関して効果的な戦略となり得る。ワクチン担体として用いるために、理想的なウイルスベクターは安全であり、かつ、必要な病原体特異的抗原の免疫系への効率的な提示が可能でなければならない。また、それは、適切な特異的免疫応答を増強するために、その再投与を可能とするよう、低い固有免疫原性を示すべきである。さらに、ベクター系は、その大規模生産を可能とする基準を満たさなければならない。このように、これまでに数種のウイルスワクチンベクターが現れ、それらは全て、提案される適用に応じた相対的利点と制限を有し、これまでのところ理想的なワクチン担体であると分かったものは無い。
【0003】
組換えポックスウイルスベクターはウイルスワクチンベクターの例である。それらはCD4+およびCD8+T細胞を誘導する体液性免疫応答および細胞性免疫応答の双方の誘導物質として使用されており、従って、特に癌または抗ウイルス性の免疫療法における送達系の選択肢となる(Arlen et al., 2005, Semin Oncol., 32, 549-555またはEssajee and Kaufman, 2004, Expert Opin Biol Ther., 4, 575-588参照)。他のワクチン接種療法と比較した場合のポックスウイルスワクチン接種に関連する利点(例えば、Souza et al, 2005, Braz J Med Biol Res, 38, 509-522参照)にもかかわらず、やはり、該ワクチンによって誘発される免疫応答を増強する役割を果たす、このウイルスベクターに適合したアジュバント化合物を開発することが望ましい。
【0004】
近年、免疫系のある重要な側面を刺激することによって働く新たな薬剤化合物を発見するために多大な努力がなされてき、著しい成功を収めている。これらの化合物は免疫応答修飾剤(IRM)またはアジュバントと呼ばれ、Toll様受容体(TLR)を介した基礎的免疫系機構によって、種々の重要なサイトカイン生合成(例えば、インターフェロン、インターロイキン、腫瘍壊死因子など)を誘発する働きをすると思われる。このような化合物はある種の単球/マクロファージ由来サイトカインの迅速放出を刺激することが示されており、また、B細胞を刺激して、IRM化合物の抗ウイルス活性および抗腫瘍活性に重要な役割を果たす抗体を分泌させることができる。IRMにより誘発されたる主要な免疫刺激応答の1つがインターフェロンIFN−α産生の誘発であり、見られる急激な抗ウイルス活性および抗腫瘍活性に極めて重要であると考えられている。さらに、例えば、腫瘍壊死因子(TNF)、IL−IおよびIL−6などの他のサイトカインのアップレギュレーションも潜在的に有益な活性を有し、これらの化合物の抗ウイルス特性および抗腫瘍特性に寄与すると考えられている。免疫応答修飾剤(IRM)は、ウイルス疾患(例えば、ヒトパピローマウイルス、肝炎、ヘルペス)、新生物(例えば、基底細胞癌、扁平上皮癌、紫外線角化症、黒色腫)、およびTH2介在性疾患(例えば、喘息、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎)を含む多様な疾病および症状を処置するのに有用である開示されている。
【0005】
このような免疫応答修飾剤(IRM)の例としては、CpGオリゴヌクレオチド(例えば、米国特許第6,194,388号;US2006094683;WO2004039829参照)、リポ多糖、ポリイノシン酸:ポリシチジル酸複合体(Kadowaki, et al., 2001, J. Immunol. 166, 2291-2295)、ならびに樹状細胞および/または単球/マクロファージからのサイトカイン産生を誘発することが知られているポリペプチドおよびタンパク質が上げられる。このような免疫応答修飾剤(IRM)のその他の例としては、イミダゾキノリンアミン、イミダゾピリジンアミン、6,7−縮合シクロアルキルイミダゾピリジンアミン、イミダゾナフチリジンアミン、オキサゾロキノリンアミン、チアゾロキノリンアミンおよび1,2−架橋イミダゾキノリンアミンなどの小有機分子がある(例えば、米国特許第4,689,338号、同第5,389,640号、同第6,110,929号および同第6,331,539号参照)。
【0006】
特に、イミダゾキノリンアミンは、in vitroおよびin vivoにおいてインターフェロン−α(IFN)、腫瘍壊死因子−α(TNF)、インターロイキンIL−1β、IL−6、IL−1α、IL−1受容体アンタゴニスト、IL−10、顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、顆粒球CSF(G−CSF)およびマクロファージ炎症性タンパク質−1αの誘導物質としての強い効力が実証されており(Gibson et al., 1995, J Interferon Cytokine Res. ,15, 537-545; Tomai et al., 1995, Antiviral Res., 28, 253-264; Testerman et al., 1995, J Leukoc Biol., 58, 365-372)、抗ウイルス活性、抗増殖活性および抗腫瘍活性を含む多様な生物機能を生じることが示されている(総説としては、Syed, 2001, Expert Opin Pharmacother., 2, 877-882またはLi et al, 2005, J Drugs Dermatol., 4, 708-717参照)。より詳しくは、特許出願WO93/20847の発明者らは、イミダゾキノリンアミンは、生ウイルスおよび細菌免疫原、腫瘍由来、原虫、生物由来、真菌および細菌免疫原、トキソイド、毒素、多糖、タンパク質、糖タンパク質、ペプチドなどの特定の抗原がこのカテゴリーの化合物と同時投与された際に、これらの抗原に対する免疫応答を増強し得ることを示している。イミダゾキノリンアミン化合物の抗ウイルス活性はさらに、種々のウイルス、特に、ポックスウイルスに対しても実証されており(Bikowski, 2004, Cutis., 73, 202-206; US 20050048072)、これらの臨床的有効性が生器疣贅(Scheinfeld and Lehman, 2006, Dermatol Online J., 12, 5)、性器ヘルペス(Miller et al, 2002, Int Immunopharmacol., 2, 443-451)および伝染性軟属腫(Stulberg and Galbraith Hutchinson, 2003, Am. Fam. Physician, 67, 1233-1240)に対して実証されている。
【0007】
プラスミドDNAベクターがin vivoにおいて動物細胞を直接トランスフェクト可能であるという1990年代初期の知見に従い、抗原ペプチドをコードするDNAを動物へ直接導入することによって免疫応答を誘発するためのDNAプラスミドの使用に基づくワクチン接種技術の開発に多大な研究努力がなされてきた。このような技術は、広くDNAワクチン接種技術と呼ばれ、現在、多数の疾病モデルで防御免疫応答を惹起するために用いられている。さらに最近では、イミダゾキノリンアミンは、DNAワクチン接種(WO02/24225)、特に、癌免疫療法(WO2006/042254;Smorlesi et al, 2005, Gene Therapy, 12, 1324-1332)におけるアジュバントとして提案されている。DNAワクチンに関する総説としては、Reyes-Sandoval and Ertl, 2001 (Current Molecular Medicine, 1, 217-243)参照。
【0008】
本発明は、in vivoにおいて少なくとも1つの異種ヌクレオチド配列、特に、抗原をコードするヌクレオチド配列を発現する組換えウイルスワクチンに対する改良に関する。本発明は特に、少なくとも1つの抗原を発現する少なくとも1つの組換えウイルスベクターと、アジュバントを含まない同じ組換えウイルスワクチンよりも該抗原に対して付与される免疫を著しく増強することができ、かつ、好ましくはこの種のワクチンに好適である少なくとも1つのアジュバントとを含む組換えウイルスワクチンに関する。本発明はさらに、それに関するワクチン接種法に関する。
【0009】
本出願者は今般、驚くべきことに、ある種のイミダゾキノリンアミン化合物が、強力な抗ウイルス効力を示すと同時に、組換えウイルスベクターによりコードされる抗原に対する組換えウイルスワクチンにより惹起された免疫応答を、より具体的には、組換えポックスウイルスに基づくワクチンに関して、予期しない割合で向上させ得る。
【0010】
よって、本発明の主題は、(i)in vivoにおいて少なくとも1つの異種ヌクレオチド配列、特に、抗原をコードする異種ヌクレオチド配列を発現する少なくとも1つの組換えウイルスベクターと、(ii)少なくとも1つの1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミン誘導体とを含む、組換えウイルスワクチンである。
【0011】
本発明の一実施形態によれば、前記1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミン誘導体は、組換えウイルスワクチンが患者に投与された場合に該患者内で該抗原に対する免疫応答を増強する。
【0012】
本明細書において出願全体を通じて「a」および「an」は、特に断りのない限り、「少なくとも1つの」、「少なくとも第一の」、「1以上の」または「複数の」、言及されている化合物または工程を意味して用いられる。例えば、「a cell」とは、その混合物を含めて、複数の細胞を含む。より具体的には、「少なくとも1つの」および「1以上の」とは、1または1を超える数を意味し、1、2または3が特に好ましい。
【0013】
本明細書で使用する場合には「および/または」は、「および」、「または」およびこの用語によってつながっている要素の全ての、または他のいずれかの組合せ」を含む。
【0014】
本明細書において「約」または「およそ」とは、示されている値または範囲の20%以内、好ましくは10%以内、より好ましくは5%以内を意味する。
【0015】
本明細書において、生成物、組成物および方法を定義するために用いる場合の「含んでなる」、「含有する」は、それらの生成物、組成物および方法が言及されている化合物または工程を含むが、他を排除するものではないことを意味するものとする。
【0016】
「患者」とは、脊椎動物、特に哺乳類種に属するものを指し、限定されるものではないが、家庭内動物、競技動物、ヒトを含む霊長類を含む。「患者」とは、特定の病状に何ら限定されるものではなく、着目する疾病をすでに発症している患者と病状のない患者の双方を包含する。
【0017】
本明細書において、「処置」または「処置する」とは、予防および/または治療を包含する。よって、本発明の組換えウイルスワクチンは治療適用に限定されるものではなく、予防適用にも使用可能である。
【0018】
より好ましい実施形態によれば、本発明の組換えウイルスベクターはポックスウイルスベクターである(例えば、Cox et al., “Viruses in Human Gene Therapy” Ed J. M. Hos, Carolina Academic Press参照)。別の好ましい実施形態によれば、それはワクシニアウイルスからなる群から選択され、好適なワクシニアウイルスとしては、限定されるものではないが、コペンハーゲン株(Goebel et al., 1990, Virol. 179, 247-266および517-563; Johnson et al., 1993, Virol. 196, 381-401)、ワイス株、ならびにMVA(総説としては、Mayr, A., et al., 1975, Infection 3, 6-14参照)およびその誘導体(MVAワクシニア株575(ECACC V00120707−米国特許第6,913,752号)など)、NYVAC(WO92/15672− Tartaglia et al., 1992, Virology, 188, 217-232参照)を含む高度弱毒ウイルスが挙げられる。それはまた、ポックスウイルス科の他のメンバー、特に、鶏痘(例えば、TROVAC、Paoletti et al, 1995, Dev Biol Stand., 84, 159-163参照);カナリヤ痘(例えば、ALVAC、WO95/27780、Paoletti et al, 1995, Dev Biol Stand., 84, 159-163);鳩痘;豚痘などから得ることもできる。例としては、当業者ならば、このような異種ヌクレオチド配列、特に、抗原をコードするヌクレオチド配列を発現し得るポックスウイルスに基づく発現ベクターの作製を記載しているWO9215672(引用することにより一部とされる)を参照することができる。
【0019】
本明細書において「抗原」とは、免疫応答の標的となり得るいずれの物質も指す。抗原は、患者によって惹起される、例えば、細胞媒介性免疫応答および/または体液性免疫応答の標的となり得る。「抗原」とは、例えば、ウイルス抗原、腫瘍特異的または腫瘍関連抗原、細菌抗原、寄生虫抗原、アレルゲンなどを包含する。
【0020】
ウイルス抗原としては、例えば、A型、B型、C型、D型およびE型肝炎ウイルス、HIV、ヘルペスウイルス、サイトメガロウイルス、水痘−帯状疱疹、パピローマウイルス、エプスタインバーウイルス、インフルエンザウイルス、パラインフルエンザウイルス、アデノウイルス、コクサッキーウイルス、ピコルナウイルス、ロタウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、ポックスウイルス、ライノウイルス、風疹ウイルス、パポウイルス、流行性耳下腺炎ウイルス、麻疹ウイルス由来の抗原が挙げられ、既知のウイルス抗原のいくつかの非限定例としては、以下のものが挙げられる:tat、nef、gp120もしくはgp160、gp40、p24、gag、env、vif、vpr、vpu、revまたはその一部および/または組合せなどのHIV−1由来抗原;gH、gL、gM、gB、gC、gK、gEもしくはgDまたはその一部および/または組合せなどのヒトヘルペスウイルス由来抗原、あるいはHSV1またはHSV2由来のICP27、ICP47、ICP4、ICP36などの前初期タンパク質;gBまたはその誘導体などのサイトメガロウイルス、特に、ヒトサイトメガロウイルス由来の抗原;gp350またはその誘導体などのエプスタインバーウイルス由来の抗原;asgpl、11、111およびIE63などの水痘−帯状疱疹ウイルス由来の抗原;B型肝炎、C型肝炎またはE型肝炎ウイルス抗原(例えば、HCVのenvタンパク質E1またはE2、コアタンパク質、NS2、NS3、NS4a、NS4b、NS5a、NS5b、p7、またはその一部および/または組合せ)などの肝炎ウイルス由来の抗原;ヒトパピローマウイルス由来の抗原(例えば、HPV6、11、16、18、例えば、L1、L2、E1、E2、E3、E4、E5、E6、E7、またはその一部および/または組合せ);呼吸器合胞体ウイルス(例えば、FおよびGタンパク質またはその誘導体)、パラインフルエンザウイルス、麻疹ウイルス、流行性耳下腺炎ウイルス、フラビウイルス(例えば、黄熱ウイルス、デング熱ウイルス、ダニ媒介脳炎ウイルス、日本脳炎ウイルス)またはインフルエンザウイルス細胞(例えば、HA、NP、NAもしくはMタンパク質、またはその一部および/または組合せ)などの他のウイルス病原体に由来する抗原。
【0021】
腫瘍特異的または腫瘍関連抗原としては、例えば、乳癌、結腸癌、直腸癌、頭頸部癌、腎臓癌、悪性黒色腫、喉頭癌、卵巣癌、子宮頸癌、前立腺癌由来の抗原が挙げられる。癌抗原は、腫瘍特異的免疫応答を明らかに強く刺激し得る抗原である。これらの抗原のいくつかは正常細胞によってもコードされているが、必ずしも発現されない。これらの抗原は正常細胞では通常サイレント(すなわち、発現されない)であるもの、ある分化段階でのみ発現されるもの、および胚抗原および胎児抗原などの一時的に発現されるものとして特徴付けることができる。他の癌抗原は、癌遺伝子(例えば、活性化ras癌遺伝子)、サプレッサー遺伝子(例えば、変異株p53)、内部欠失または染色体転座から生じた融合タンパク質などの突然変異細胞遺伝子によりコードされている。さらにその他の癌抗原は、RNAおよびDNA腫瘍ウイルスに担持されているものなどのウイルス遺伝子によりコードされているものであり得る。腫瘍特異的または腫瘍関連抗原のいくつかの非限定例としては、MART−1/Melan−A、gp100、ジペプチジルペプチダーゼIV(DPPIV)、アデノシンデアミナーゼ結合タンパク質(ADAbp)、シクロフィリンb、結腸直腸関連抗原(CRC)−C017−1A/GA733、癌胎児性抗原(CEA)およびその免疫原性エピトープCAP−1およびCAP−2、etv6、aml1、前立腺特異的抗原(PSA)およびその免疫原性エピトープPSA−I、PSA−2およびPSA−3、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、T細胞受容体/CD3−ゼータ鎖、MAGEファミリーの腫瘍抗原(例えば、MAGE−A1、MAGE−A2、MAGE−A3、MAGE−A4、MAGE−A5、MAGE−A6、MAGE−A7、MAGE−A8、MAGE−A9、MAGE−A10、MAGE−A11、MAGE−A12、MAGE−Xp2(MAGE−B2)、MAGE−Xp3(MAGE−B3)、MAGE−Xp4(MAGE−B4)、MAGE−C1、MAGE−C2、MAGE−C3、MAGE−C4、MAGE−C5)、GAGEファミリーの腫瘍抗原(例えば、GAGE−1、GAGE−2、GAGE−3、GAGE−4、GAGE−5、GAGE−6、GAGE−7、GAGE−8、GAGE−9)、BAGE、RAGE、LAGE−I、NAG、GnT−V、MUM−I、CDK4、チロシナーゼ、p53、MUCファミリー(例えば、MUC−1)、HER2/neu、p21ras、RCAS1、α−フェトタンパク質、E−カドヘリン、α−カテニン、β−カテニンおよびγ−カテニン、p120ctn、gp100.sup.Pmel117、PRAME、NY−ESO−1、cdc27、腺腫様多発結腸ポリープタンパク質(APC)、フォドリン、コネキシン37、Ig−イディオタイプ、p15、gp75、GM2およびGD2ガングリオシド、ヒトパピローマウイルスタンパク質などのウイルス産物、Smadファミリーの腫瘍抗原、lmp−1、P1A、EBVコード核抗原(EBNA)−1、脳グリコーゲンホスホリラーゼ、SSX−1、SSX−2(HOM−MEL−40)、SSX−1、SSX−4、SSX−5、SCP−1およびCT−7、ならびにc−erbB−2が挙げられる。
【0022】
細菌抗原としては、例えば、TBおよびらい病を引き起こすマイコバクテリア由来の抗原、肺炎球菌、好気性グラム陰性桿菌、マイコプラズマ、ブドウ球菌感染、連鎖球菌感染、サルモネラ菌属、クラミジア属、ナイセリア属由来の抗原が挙げられる。
【0023】
他の抗原としては、例えば、マラリア、リーシュマニア症、トリパノソーマ症、トキソプラスマ症、住血吸虫症、フィラリア症由来の抗原が挙げられる。
【0024】
アレルゲンとは、感受性のある対象においてアレルギー反応または喘息反応を誘発し得る物質を指す。アレルゲンのリストは膨大であり、花粉、昆虫毒、動物鱗屑、真菌類の胞子および薬物(例えば、ペニシリン)を含み得る。天然動物および植物アレルゲンの例としては、限定されるものではないが、下記の属:イヌ属(Canis familiaris);ダニ属(例えば、Dermatophagoides farinae);ネコ属(Felis domesticus);アンブロシア属(Ambrosia artemiisfolia);ドクムギ属(例えば、Lolium perenneまたはLolium multiflorum);スギ属(Cryptomeria japonica);アルテルナリア属(Alternaria alternata);アルダー属;アルヌス属(Alnus gultinoasa);マカンバ属(Betula verrucosa);コナラ属(Quercus alba);オリーブ属(Olea europa);ヨモギ属(Artemisia vulgaris);オオバコ属(例えば、Plantago lanceolata);ヒカゲミズ属(例えば、Parietaria officinalisまたはParietaria judaica);チャバネゴキブリ属(例えば、Blattella germanica);ミツバチ属(例えば、Apis multiflorum);イトスギ属(例えば、Cupressus sempervirens、Cupressus arizonicaおよびCupressus raacrocarpa);ビャクシン属(例えば、Juniperus sabinoides、Juniperus virginiana、Juniperus communisおよびJuniperus ashei);クロベ属(例えば、Thuya orientalis);ヒノキ属(例えば、Chamaecyparis obtusa);ワモンゴキブリ属(例えば、Periplaneta americana);カモジグサ属(例えば、Agropyron repens);ライムギ属(例えば、Secale cereale);コムギ属(例えば、Triticum aestivum);カモガヤ属(例えば、Dactylis glomerata);ウシノケグサ属(例えば、Festuca elatior);イチゴツナギ属(例えば、Poa pratensisまたはPoa compressa);カラスムギ属(例えば、Avena sativa);シラゲガヤ属(例えば、Holcus lanatus);ハルガヤ属(例えば、Anthoxanthum odoratum);オオカニツリ属(例えば、Arrhenatherum elatius);コヌカグサ属(例えば、Agrostis alba);アワガエリ属(例えば、Phleum pratense);クサヨシ属(例えば、Phalaris arundinacea);スズメノヒエ属(例えば、Paspalum notatum);ソルガム属(例えば、Sorghum halepensis);およびスズメノチャヒキ属(例えば、Bromus inermis)に特異的なタンパク質が挙げられる。
【0025】
特に好ましい実施形態では、本発明の異種ヌクレオチド配列は、下記抗原:HBV−PreS1 PreS2および表面envタンパク質、コアおよびpolHIV−gp120 gp40、gp160、p24、gag、pol、env、vif、vpr、vpu、tat、rev、nef;HPV−E1、E2、E3、E4、E5、E6、E7、E8、L1、L2(例えば、WO90/10459、WO98/04705、WO99/03885参照);HCV envタンパク質E1またはE2、コアタンパク質、NS2、NS3、NS4a、NS4b、NS5a、NS5b、p7;Muc−1(例えば、米国特許第5,861,381号;同第6,054,438号;WO98/04727;WO98/37095参照)の1以上を全部または一部コードする。
【0026】
抗原をコードする核酸は、真核細胞内で抗原核酸の発現を命令する遺伝子発現配列と作動可能なように連結される。この遺伝子発現配列は、プロモーター配列またはプロモーターエンハンサーの組合せなど、それが作動可能なように連結されている抗原核酸の効率的な転写および翻訳を容易にするいずれの調節ヌクレオチド配列であってもよい。遺伝子発現配列は、例えば、構成プロモーターまたは誘導プロモーターなどの哺乳類またはウイルスプロモーターであり得る。構成的哺乳類プロモーターとしては、限定されるものではないが、下記遺伝子:ヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HPRT)、アデノシンデアミナーゼ、ピルビン酸キナーゼのプロモーター、b−アクチンプロモーターおよびその他の構成プロモーターが挙げられる。真核細胞で構成的に機能するウイルスプロモーターの例としては、例えば、サイトメガロウイルス(CMV)、シミアンウイルス(例えば、SV40)、パピローマウイルス、アデノウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、ラウス肉腫ウイルス、サイトメガロウイルス、モロニー白血病ウイルスの長い末端反復配列(LTR)およびその他のレトロウイルス由来のプロモーター、ならびに単純ヘルペスウイルスのチミジンキナーゼプロモーターが挙げられる。その他の構成プロモーターも、当業者に知られている。本発明の遺伝子発現配列として有用なプロモーターとして誘導プロモーターもまた含まれる。誘導プロモーターは、誘導因子の存在下で発現される。例えば、メタロチオネインプロモーターはある種の金属イオンの存在下で転写および翻訳を促進するために誘導される。その他の誘導プロモーターも、当業者に知られている。一般に、遺伝子発現配列は、必要に応じて、TATAボックス、キャッピング配列、CAAT配列など、それぞれ転写および翻訳の開始に関与する5’非転写配列および5’非翻訳配列を含むべきである。特に、このような5’非転写配列は、作動可能に連結された抗原核酸の転写制御のためのプロモーター配列を含むプロモーター領域を含む。遺伝子発現配列は所望により、場合によっては、エンハンサー配列または上流アクチベーター配列を含む。ポックスウイルスベクター(下記参照)において使用するのに好ましいプロモーターとしては、限定されるものではないが、ワクシニアプロモーター7.5K、H5R、TK、p28、p11およびK1L、ポックスウイルス前期プロモーターと後期プロモーターの間のキメラプロモーター、ならびにChakrabarti et al . (1997, Biotechniques 23, 1094-1097), Hammond et al. (1997, J. Virological Methods 66, 135-138)およびKumar and Boyle (1990, Virology 179, 151-158)に記載されているものなどの合成プロモーターが挙げられる。
【0027】
別の特定の実施形態によれば、本発明の該異種ヌクレオチド配列は、HPVのE6初期コード領域、HPVのE7初期コード領域およびその誘導体または組合せからなる群から選択されるHPV抗原の全部または一部をコードしている。
【0028】
本発明の組換えウイルスベクターによってコードされるHPV抗原は、HPV E6ポリペプチド、HPV E7ポリペプチドまたはE6ポリペプチドとHPV E7ポリペプチドの双方からなる群から選択される。本発明は、p53との結合が変更される、または少なくとも有意に低下するHPV E6ポリペプチドの使用、および/またはRbとの結合が変更される、または少なくとも有意に低下するHPV E7ポリペプチドの使用を包含する(Munger et al., 1989, EMBO J. 8, 4099-4105; Crook et al., 1991, Cell 67, 547- 556; Heck et al., 1992, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89, 4442-4446; Phelps et al., 1992, J. Virol. 66, 2148-2427)。本発明の目的に好適な非発癌性HPV−16 E6変異体は、およそ118番〜およそ122番(+1は、天然HPV−16 E6ポリペプチドの最初メチオニン残基を表す)の位置にある1以上のアミノ酸残基が欠失しており、特に残基118〜122(CPEEK)が完全に欠失しているのが好ましい。本発明の目的に好適な非発癌性HPV−16 E7変異体は、およそ21番〜およそ26番(+1は、天然HPV−16 E7ポリペプチドの最初のアミノ酸を表す)の位置にある1以上のアミノ酸残基が欠失しており、特に残基21〜26(DLYCYE)が完全に欠失しているのが好ましい。好ましい実施形態によれば、本発明での使用において、1以上のHPV−16初期ポリペプチドを、MHCクラスIおよび/またはMHCクラスII提示を向上させるため、および/または抗HPV免疫を刺激するためにさらに修飾する。HPV E6およびE7ポリペプチドは核タンパク質であり、膜提示がそれらの治療効力を向上させ得ることがこれまでに示されている(例えば、WO99/03885参照)。従って、少なくとも1つのHPV初期ポリペプチドを細胞膜に固着されるように修飾することが望ましい。膜固着(membrane anchorage)は、HPV初期ポリペプチドに膜固着配列を、また、天然ポリペプチドがそれを欠いている場合には、分泌配列(すなわち、シグナルペプチド)を組み込むことによって容易に達成することができる。膜固着および分泌配列は当技術分野で公知である。要するに、分泌配列は、膜提示および分泌されるポリペプチドのN末端に存在し、それらの小胞体(ER)への移行を開始させる。それらは通常、15〜35の必須疎水性アミノ酸を含み、それはその後、ERに局在する特定のエンドペプチダーゼによって除去され、成熟ポリペプチドとなる。膜固着配列は通常、自然状態で疎水性が高く、細胞膜にポリペプチドを固着させるのに役立つ(例えば、Branden and Tooze, 1991, Introduction to Protein Structure p. 202-214, NY Garland参照)。
【0029】
本発明に関して使用可能な膜固着配列および分泌配列の選択肢は膨大である。それらは、狂犬病糖タンパク質、HIVウイルスエンベロープ糖タンパク質または麻疹ウイルスFタンパク質など、それを含む膜固着ポリペプチドおよび/または分泌ポリペプチド(例えば、細胞ポリペプチドまたはウイルスポリペプチド)から得ることができるか、あるいは合成することができる。本発明に従って使用される各初期HPV−16ポリペプチドに挿入された膜固着配列および/または分泌配列は起源が共通であっても異なっていてもよい。分泌配列の好ましい挿入部位は転写開始コドンの下流N末端であり、膜固着配列の好ましい挿入部位はC末端、例えば、停止コドンのすぐ上流である。
【0030】
本発明での使用におけるHPV E6ポリペプチドは好ましくは、麻疹Fタンパク質の分泌シグナルおよび膜固着シグナルの挿入により修飾される。所望により、または組合せにおいて、本発明での使用におけるHPV E7ポリペプチドは好ましくは、狂犬病糖タンパク質の分泌シグナルおよび膜固着シグナルの挿入により修飾される。
【0031】
この組換えウイルスベクターの治療効力はまた、免疫増強剤ポリペプチドをコードする1以上の核酸を用いることにより改良することができる。例えば、HPV初期ポリペプチドをカルレティキュリン(Cheng et al., 2001, J. Clin. Invest. 108, 669-678)、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)熱ショックタンパク質70(HSP70)(Chen et al., 2000, Cancer Res. 60, 1035-1042)、ユビキチン(Rodriguez et al., 1997, J. Virol. 71, 8497-8503)または緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)外毒素A(ETA(dΙII))などの細菌毒素のトランスロケーションドメイン(Hung et al., 2001 Cancer Res. 61, 3698-3703)などのポリペプチドと連結することが有利であり得る。
【0032】
別の好ましい実施形態によれば、本発明の組換えウイルスベクターは、上記で定義されたような1以上の初期ポリペプチド、より詳しくは、HPV−16および/またはHPV−18初期E6および/またはE7ポリペプチドをコードする核酸を含んでなる。
【0033】
別の特定の実施形態によれば、本発明の該異種ヌクレオチド配列はMUC1抗原またはその誘導体の全部または一部をコードする。
【0034】
必要であれば、本発明での使用における核酸分子は、特定の宿主細胞または生物体、例えば、ヒト宿主細胞または生物体において抗原(例えば、HPV初期ポリペプチド)の高レベル発現を提供するよう至適化することができる。一般に、コドンの至適化は、哺乳類宿主細胞で使用頻度の少ないコドンに相当する1以上の「天然」(例えば、HPV)コドンを使用頻度の多い同じアミノ酸をコードする1以上のコドンで置換することにより行う。これは従来の突然変異誘発または化学合成技術(例えば、合成核酸が得られる)によって行うことができる。発現の上昇は部分的に置換であっても果たすことができることから、使用頻度の少ないコドンに相当する全ての天然コドンを置換する必要は必ずしもない。さらに、制限部位の導入に便宜なように、至適化されたコドン利用の厳守からある程度の逸脱があってもよい。
【0035】
上述のように、ポックスウイルスベクター、より具体的には、高度に弱毒化されたワクシニアウイルス株が好ましい。MVAゲノムの完全配列の決定およびコペンハーゲンワクシニアウイルスゲノムとの比較により、MVAゲノムに見られる7つの欠失(I〜VII)の正確な同定が可能であり(Antoine et al., 1998, Virology 244, 365-396)、そのいずれもが抗原(例えば、HPV初期ポリペプチドまたはMUC1)をコードする核酸の挿入のために使用可能である。
【0036】
核酸およびポックスウイルスゲノムでの発現に必要な関連の調節エレメントを挿入するための基本技術は、当業者が利用可能な多くの文献に記載れている(Paul et al., 2002, Cancer gene Ther. 9, 470-477; Piccini et al., 1987, Methods of Enzymology 153, 545-563; 米国特許第4,769,330号、同第4,772,848号、同第4,603,112号、同第5,100,587号および同第5,179,993号)。通常、ウイルスゲノムおよび核酸を担持するプラスミドの双方に存在する重複配列(すなわち、所望の挿入部位)間の相同組換えを介して挿入を進める。
【0037】
本発明の抗原をコードする核酸は好ましくは、組換えポックスウイルスが生存力と感染力を保持するよう、ポックスウイルスゲノムの非必須遺伝子座に挿入される。非必須領域は、非コード遺伝子間領域またはその不活性化または欠失がウイルスの増殖、複製または感染を有意に損なわない遺伝子である。また、例えば、ポックスウイルスゲノムで欠失しているものに相当する相補的配列を担持するヘルパー細胞系統を使用することにより、ウイルス粒子の産生中に欠損している機能がトランスで供給される場合には、必須ウイルス遺伝子座における挿入も考えられる。
【0038】
コペンハーゲンワクシニアウイルスを使用する場合、抗原をコードする核酸を好ましくは、チミジンキナーゼ遺伝子(tk)に挿入する(Hruby et al., 1983, Proc. Natl. Acad. Sci USA 80, 3411-3415; Weir et al., 1983, J. Virol. 46, 530-537)。しかしながら、また、例えば、血球凝集素遺伝子におけるもの(Guo et al., 1989, J. Virol. 63, 4189-4198)、K1L遺伝子座におけるもの、u遺伝子におけるもの(Zhou et al., 1990, J. Gen. Virol. 71, 2185-2190)または種々の自然欠失または操作欠失が文献で報告されているワクシニアウイルスゲノムの左末端におけるもの(Altenburger et al., 1989, Archives Virol. 105, 15-27; Moss et al. 1981, J. Virol. 40, 387-395; Panicali et al., 1981, J. Virol. 37, 1000-1010; Perkus et al, 1989, J. Virol. 63, 3829-3836; Perkus et al, 1990, Virol. 179, 276-286; Perkus et al, 1991, Virol. 180, 406-410)など、他の挿入部位も適当である。
【0039】
MVAを用いた場合、抗原をコードする核酸は、同定されている欠失I〜VIIのいずれか、ならびにD4R遺伝子座に挿入することができるが、欠失IIまたはIIIにおける挿入が好ましい(Meyer et al., 1991, J. Gen. Virol. 72, 1031-1038; Sutter et al., 1994, Vaccine 12, 32-1040)。
【0040】
鶏痘ウイルスを用いた場合、チミジンキナーゼ遺伝子内への挿入が考えられるが、抗原をコードする核酸は好ましくは、ORF7と9の間に位置する遺伝子間領域に導入される(例えば、EP314569および米国特許第5,180、675号参照)。
【0041】
好ましくは、本発明での使用における抗原をコードする核酸は、宿主細胞または生物体でのその発現に好適な形態であり、これは抗原をコードする核酸配列(例えば、E6ポリペプチドおよび/またはE7ポリペプチドをコードする核酸配列)が宿主細胞または生物体での発現に必要な1以上の調節配列の制御下に置かれていることを意味する。本明細書において「調節配列」とは、複製、倍加、転写、スプライシング、翻訳、安定性および/または核酸またはその誘導体の1つ(すなわち、mRNA)の宿主細胞への輸送を含む、所与の宿主細胞において核酸の発現に寄与し得る、または調節し得る配列を指す。当業者ならば、調節配列の選択が宿主細胞、ベクターおよび所望の発現レベルなどの因子によって異なることが分かるであろう。
【0042】
プロモーターは特に重要であり、多くの種の宿主細胞で核酸の発現を命令するおよび特定の宿主細胞でのみ、または特定の事象もしくは外因性の因子に応答して(例えば、温度、栄養添加、ホルモンまたはその他のリガンドによって)発現を命令する構成プロモーターの使用を包含する。好適なプロモーターは広く文献に記載されており、より具体的には、RSV、SV40、CMVおよびMLPプロモーターなどのウイルスプロモーターが挙げられる。ポックスウイルスベクターにおいて用いるのに好ましいプロモーターとしては、限定されるものではないが、ワクシニアプロモーター7.5K、H5R、TK、p28、p11およびK1L、ポックスウイルス初期プロモーターと後期プロモーターの間のキメラプロモーター、ならびにChakrabarti et al. (1997, Biotechniques 23, 1094-1097)、Hammond et al. (1997, J. Virological Methods 66, 135-138)およびKumar and Boyle (1990, Virology 179, 151-158)に記載されているものなどの合成プロモーターが挙げられる。
【0043】
当業者ならば、本発明の核酸分子の発現を制御する調節エレメントはさらに、宿主細胞または生物体への、転写の適切な開始、調節および/または終結(例えば、ポリA転写終結配列)、mRNA輸送(例えば、核局在シグナル配列)、プロセシング(例えば、スプライシングシグナル)および安定性(例えば、イントロンおよび非コード5’および3’配列)、翻訳(例えば、ペプチドシグナル、プロペプチド、三分割リーダー配列、リボソーム結合部位、Shine−Dalgamo配列など)のための付加的エレメントを含み得る。
【0044】
あるいは、本発明での使用における組換えウイルスベクターはさらに、少なくとも1つのサイトカインをコードする少なくとも1つの核酸を含み得る。好適なサイトカインとしては、限定されるものではないが、IL−2、IL−7、IL−15、IL−18、IL−21およびIFNgを含むことができ、IL−2が特に好ましい。本発明の組換えウイルスワクチンがサイトカイン発現核酸を含む場合、該核酸は1以上のHPV初期ポリペプチドをコードする組換えウイルスベクターにより、または起源が同じであっても異なっていてもよい独立した組換えベクターにより運ばせることができる。
【0045】
本発明の好ましい実施形態は、7.5Kプロモーター下に置かれたHPV E6ポリペプチド、7.5Kプロモーター下に置かれたHPV E7ポリペプチドおよびH5Rプロモーターの制御下に置かれたヒトIL−2遺伝子をコードするMVAベクターを含んでなる組換えウイルスワクチンの使用に向けられる。好ましくは、HPV E6ポリペプチド、HPV E7ポリペプチドおよびヒトIL−2をコードする核酸はMVAゲノムの欠失IIIに挿入される。
【0046】
本発明の別の好ましい実施形態は、7.5Kプロモーター下に置かれたMUC1ポリペプチドおよびH5Rプロモーターの制御下に置かれたヒトIL−2遺伝子をコードするMVAベクターを含んでなる組換えウイルスワクチンに使用に向けられる。
【0047】
上記の組換えウイルスベクターを含んでなる感染性ウイルス粒子は、常法により生産することができる。例示的方法としては、
a.ウイルスベクターを好適な細胞系統に導入する工程;
b.該細胞系統を該感染性ウイルス粒子の生産を可能とするよう好適な条件下で培養する工程;
c.該細胞系統の培養から生産された感染性ウイルス粒子を回収する工程;および
d.所望により、回収された感染性ウイルス粒子を精製する工程
を含む。
【0048】
ポックスウイルスベクターを増殖させるのに適当な細胞は鳥類細胞、最も好ましくは、受精卵から得られたニワトリ胚から調製されたニワトリ一次胚繊維芽細胞(CEF)である。
【0049】
感染性ウイルス粒子は培養上清から、または溶解(例えば、化学的手段、凍結/解凍、浸透圧ショック、機械的ショック、音波処理などによる)後の細胞から回収することができる。ウイルス粒子は、連続して何回もプラーク精製して単離した後、当技術分野の技術(クロマトグラフィー法、塩化セシウムまたはスクロース勾配での超遠心分離)を用いて精製することができる。
【0050】
別の実施形態によれば、本発明の1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミン−誘導体は下記一般式I〜Vのいずれかで定義される化合物である:
I−
【化1】
[式中、
R11は、直鎖または分枝アルキル、ヒドロキシアルキル、アシルオキシアルキル、ベンジル、(フェニル)エチルおよびフェニルからなる群から選択され、該ベンジル、(フェニル)エチルまたはフェニル置換基は、場合により、そのベンゼン環上で、C1−4アルキル部分、C1−4アルコキシ部分およびハロゲンからなる群から互いに独立に選択される1または2個の部分で置換されていてもよく(ただし、該ベンゼン環が2個の該部分で置換されている場合には、該部分はともに6個以下の炭素原子を含む);
R21は、水素、C1−8アルキル部分、ベンジル、(フェニル)エチルおよびフェニルからなる群から選択され、該ベンジル、(フェニル)エチルまたはフェニル置換基は、場合により、そのベンゼン環上で、C1−4アルキル部分、C1−4アルコキシ部分およびハロゲンからなる群から互いに独立に選択される1または2個の部分で置換されていてもよく(ただし、該ベンゼン環が2個の該部分で置換されている場合には、該部分は合わせて6個以下の炭素原子を含む);かつ
各R1は、水素、C1−4アルコキシ部分、ハロゲンおよびC1ー4アルキル部分からなる群から互いに独立に選択され、nは0〜2の整数である(ただし、nが2である場合、該R1基は合わせて6個以下の炭素原子を含む)]
で定義される化合物、またはその類似体、溶媒和物もしくは塩;
II−
【化2】
[式中、
R12は、直鎖または分枝C2−10アルケニルおよび置換された直鎖または分枝C2−10アルケニル(ここで、該置換基は直鎖または分枝C1−4アルキル部分およびC3ー6シクロアルキル部分からなる群から選択される);および直鎖または分枝C1ー4アルキル部分により置換されたC3ー6シクロアルキル部分からなる群から選択され;
R22は、水素、直鎖または分枝C1−8アルキル部分、ベンジル、(フェニル)エチルおよびフェニルからなる群から選択され、該ベンジル、(フェニル)エチルまたはフェニル置換基は、場合により、そのベンゼン環上で、直鎖または分枝C1−4アルキル部分、直鎖または分枝C1−4アルコキシ部分およびハロゲンからなる群から互いに独立に選択される1または2個の部分で置換されていてもよく(ただし、該ベンゼン環が2個のこのような部分で置換されている場合には、該部分は合わせて6個以下の炭素原子を含む);かつ
各R2は、直鎖または分枝C1−4アルコキシ部分、ハロゲンおよび直鎖または分枝C1ー4アルキル部分からなる群から互いに独立に選択され、nは0〜2の整数である(ただし、nが2である場合、該R2基は合わせて6個以下の炭素原子を含む)]
で定義される化合物、またはその類似体、溶媒和物もしくは塩;
III−
【化3】
[式中、
R23は、水素、直鎖または分枝C1−8アルキル部分、ベンジル、(フェニル)エチルおよびフェニルからなる群から選択され、該ベンジル、(フェニル)エチルまたはフェニル置換基は、場合により、そのベンゼン環上で、直鎖または分枝C1−4アルキル部分、直鎖または分枝C1−4アルコキシ部分およびハロゲンからなる群から互いに独立に選択される1または2個の部分で置換されていてもよく(ただし、該ベンゼン環が2個のこのような部分で置換されている場合には、該部分は合わせて6個以下の炭素原子を含む);かつ
各R3は、直鎖または分枝C1−4アルコキシ部分、ハロゲンおよび直鎖または分枝C1ー4アルキル部分からなる群から互いに独立に選択され、nは0〜2の整数である(ただし、nが2である場合、該R3基は合わせて6個以下の炭素原子を含む)]
で定義される化合物、またはその類似体、溶媒和物もしくは塩;
IV−
【化4】
[式中、
R14は−CHR34R44であり、ここで、R44は水素または炭素−炭素結合であり、ただし、R44が水素である場合、R34はC1−4アルコキシ部分、C1ー4ヒドロキシアルコキシ部分、C2−101−アルキニル部分、テトラヒドロピラニル、アルコキシアルキル(ここで、該アルコキシ部分は1〜4個の炭素原子を含み、該アルキル部分は1〜4個の炭素原子を含む)、2−、3−、または4−ピリジルであり、さらにただし、R44が炭素−炭素結合である場合、R44およびR34は一緒になって、ヒドロキシおよびC1−4ヒドロキシアルキル部分からなる群から互いに独立に選択される1以上の置換基で場合により置換されていてもよいテトラヒドロフラニル基を形成し;
R24は水素、C1−4アルキル、フェニルからなる群から選択され、該フェニルは場合により、直鎖または分枝C1−4アルキル部分、直鎖または分枝C1−4アルコキシ部分およびハロゲンからなる群から互いに独立に選択される1または2個の部分で置換されていてもよく;かつ
R4は、水素、直鎖または分枝C1ー4アルコキシ部分、ハロゲンおよび直鎖または分枝C1ー4アルキル部分からなる群から選択される]
で定義される化合物、またはその類似体、溶媒和物もしくは塩;
V−
【化5】
[式中、
R15は、水素;直鎖または分枝C1ー10アルキル部分および置換された直鎖または分枝C1−10アルキル部分(ここで、該置換基はC3ー6シクロアルキルおよび直鎖または分枝C1ー4アルキル部分で置換されたC3ー6シクロアルキルからなる群から選択される);直鎖または分枝C2ー10アルケニルおよび置換された直鎖または分枝C2ー10アルケニル部分(ここで、該置換基はC3−6シクロアルキルおよび直鎖または分枝C1−4アルキル部分で置換されたC3ー6シクロアルキルからなる群から選択される);C1−6ヒドロキシアルキル;アルコキシアルキル(ここで、該アルコキシ部分は1〜約4個の炭素原子を含み、該アルキル部分は1〜約6個の炭素原子を含む);アシルオキシアルキル(ここで、該アシルオキシ部分は2〜約4個の炭素原子のアルカノイルオキシまたはベンゾイルオキシであり、該アルキル部分は1〜約6個の炭素原子を含む);ベンジル;(フェニル)エチル;およびフェニル;(該ベンジル、(フェニル)エチルまたはフェニル置換基は、場合により、そのベンゼン環上で、C1−4アルキル部分、C1−4アルコキシ部分およびハロゲンからなる群から互いに独立に選択される1または2個の部分で置換されていてもよく、ただし、該ベンゼン環が2個の該部分で置換されている場合には、該部分は合わせて6個以下の炭素原子を含む)からなる群から選択され;
R25は、
【化6】
{式中、
R35は、C1ー4アルコキシ部分、アルコキシアルキル(ここで、該アルコキシ部分は1〜約4個の炭素原子を含み、該アルキル部分は1〜約4個の炭素原子を含む);C1ー4ハロアルキル部分;アルキルアミド(ここで、該アルキル基は1〜約4個の炭素原子を含む);アミノ;C1−4アルキルまたはC1ー4ヒドロキシアルキルで置換されたアミノ;アジド;C11−4アルキルチオからなる群から選択され;
R55およびR45は、水素、C1−4アルキル部分、フェニル(ここで、該フェニルは、場合により、直鎖または分枝C1ー4アルキル部分、直鎖または分枝C1−4アルコキシ部分およびハロゲンからなる群から互いに独立に選択される1または2個の分で置換されていてもよい)からなる群から互いに独立に選択される}であり;かつ
R5は、水素、直鎖または分枝C1−4アルコキシ部分、ハロゲンおよび直鎖または分枝C1ー4アルキル含有部分からなる群から選択される]
で定義される化合物、またはその類似体、溶媒和物もしくは塩。
【0051】
特定の実施形態によれば、C1−4アルキル部分は例えば、メチル、エチル、プロピル、2−メチルプロピルおよびブチルである。好ましい実施形態によれば、C1−4アルキル部分はメチル、エチルおよび2メチル−プロピルからなる群から選択される。
【0052】
特定の実施形態によれば、アルコキシ部分はメトキシ、エトキシおよびエトキシメチルからなる群から選択される。
【0053】
好ましい実施形態によれば、nは0または1である。
【0054】
好ましい実施形態によれば、R1〜R5基は水素である。
【0055】
好ましい実施形態によれば、R11〜R15基は、2−メチルプロピルおよび2−ヒドロキシ−2−メチルプロピルからなる群から選択される。
【0056】
好ましい実施形態によれば、R21〜R25基は、水素、C1−6アルキル部分、アルコキシアルキル(ここで、該アルコキシ部分は1〜約4個の炭素原子を含み、該アルキル部分は1〜約4個の炭素原子を含む)からなる群から選択させる。最も好ましいR21〜R25基は、水素、メチルまたはエトキシメチルからなる群から選択される。
【0057】
好ましい一実施形態によれば、本発明の1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミン誘導体は下記一般式VI:
【化7】
[式中、
Rtは、水素、直鎖または分枝C1−4アルコキシ部分、ハロゲンおよび直鎖または分枝C1−4アルキルからなる群から選択され;
Ruは2−メチルプロピルまたは2−ヒドロキシ−2−メチルプロピルであり;かつ
Rvは水素、C1−6アルキルまたはアルコキシアルキル(ここで、該アルコキシ部分は1〜約4個の炭素原子を含み、該アルキル部分は1〜約4個の炭素原子を含む)である]
により定義される化合物、またはその類似体、溶媒和物もしくは塩である。
【0058】
好ましい実施形態によれば、式VIにおいて、Rtは、水素、Ruは、2−メチルプロピルまたは2−ヒドロキシ−2−メチルプロピル、Rvは、水素、メチル、またはエトキシメチルである。
【0059】
別の好ましい実施形態によれば、本発明の1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミン誘導体は下記の群から選択される化合物:
1−(2−メチルプロピル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミン(Rtが水素であり、Ruが2−メチルプロピルであり、Rvが水素である式VIの化合物);
1−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピル)−2−メチル−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミン(Rtが水素であり、Ruが2−ヒドロキシ−2−メチルプロピルであり、Rvがメチルである式VIの化合物);
1−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミン(Rtが水素であり、Ruが2−ヒドロキシ−2−メチルプロピルであり、Rvが水素である式VIの化合物);
1−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピル−2−エトキシメチル−1−H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミン(Rtが水素であり、Ruが2−ヒドロキシ−2−メチルプロピルであり、Rvがエトキシメチルである式VIの化合物);
またはその類似体、溶媒和物もしくは塩である。
【0060】
当業者ならば、上記に挙げた化合物およびそれらの製造方法を記載している、例えば、米国特許第4,689,338号、同第4,929,624号、EP0385630またはWO94/17043(引用することにより本明細書の一部とされる)を参照することができる。
【0061】
より具体的には、1−(2−メチルプロピル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミン(イミキモド(imiquimod)またはアルダラ(Aldara)としても知られている)は広く開示されており、Buck, 1998, Infect. Dis. Obstet. Gynecol., 6, 49-51; Dockrell and Kinghorn, 2001, J. Antimicrob. Chemother., 48, 751-755またはGarland, 2003, Curr. Opin. Infect. Dis., 16, 85-89を参照することができ、1−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピル)−2−メチル−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミンおよび1−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミンはUS2004/0076633に開示されており、1−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピル)−2−エトキシメチル−1−H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミン(レシキモド(resiquimod)としても知られている)はDockrell and Kinghorn, 2001, J. Antimicrob. Chemother. 48, 751-755またはJones, Curr. Opin. Investig. Drugs., 2003, 4,214-218に開示されている。
【0062】
特に断りのない限り、1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミン誘導体という場合には、異性体(例えば、ジアステレオマーまたは鏡像異性体)、塩、溶媒和物、多形体などを含む、薬学上許容される形態の化合物を含み得る。特に、化合物が光学的に活性である場合、化合物という場合には、その化合物の各鏡像異性体ならびにその鏡像異性体のラセミ混合物を含み得る。
【0063】
好ましい一実施形態によれば、組換えウイルスワクチンおよびより詳しくは組換えウイルスベクターは、それ自体、免疫応答を誘発する免疫刺激モチーフまたは主鎖、特に、CpG、ポリG、ポリT、TG、メチル化CpG、CpIおよびT豊富モチーフまたはホスホロチオエート主鎖などの免疫刺激モチーフまたは主鎖を有するヌクレオチド配列を含まない(その開示内容が引用することにより本明細書の一部とされるUS2003/0139364、米国特許第6,207,646号またはWO01/22972参照)。
【0064】
一実施形態によれば、最終的な組換えウイルスワクチンにおける1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミン誘導体濃度は、約0.0001%〜約10%(特に断りのない限り、本明細書に示される全てのパーセンテージは全処方物に対する重量/重量である)、約0.01%〜約2%、より詳しくは、約0.06〜約1%、好ましくは約0.1〜約0.6%である。
【0065】
別の実施形態によれば、適当な用量の組換えウイルスベクターは種々のパラメーター、特に投与様式;使用される組成物;宿主生物の齢、健康状態および体重;症状の性質および程度;併用処置の種類;処置の頻度;および/または予防または治療の必要、の関数として適合させることができる。処置に適当な用量を決定するために必要な計算のさらなる精密化は、関連の状況に照らして、当業者により慣例的に行われる。一般的な指針としては、MVAを含有する組成物の好適な用量は約104〜1010pfu(プラーク形成単位)、望ましくは約105〜108pfuまで可変であり、アデノウイルスを含む組成物では、約105〜1013iu(感染単位)、望ましくは約107〜1012iuまで可変である。ベクタープラスミドに基づく組成物は10μg〜20mgの間、有利には100μg〜2mgの間の用量で投与することができる。好ましくは、この組成物は、5×105pfu〜5×107pfuのMVAワクシニアベクターを含む用量で投与される。
【0066】
投与計画は、限定されるものではないが、少なくとも一部分は、用いるイミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミン誘導体と用いる組換えウイルスベクターの性質;担体の性質;投与されるイミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミン誘導体と投与される組換えウイルスベクターの量;対象の免疫系の状態(例えば、抑制、不全、刺激);およびイミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミン誘導体および/または組換えウイルスベクター化合物の投与方法を含む、当技術分野で公知の多くの因子によって異なる。よって、一般に、全ての可能性のある適用に関する組換えウイルスワクチンの有効性を高めるのに有効な投与計画を示すということは実際的でない。しかしながら、当業者ならば、このような因子を考慮して適当な投与計画を容易に決定することができる。本発明のいくつかの実施形態では、イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミン誘導体および/または組換えウイルスベクター化合物は、例えば、毎日1回〜約1回投与することができるが、いくつかの実施形態では、イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミン誘導体および/または組換えウイルスベクター化合物は、この範囲外の頻度で投与することができる。ある特定の実施形態では、イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミン誘導体および/または組換えウイルスベクター化合物は、1週間に約1回〜1日に約1回投与することができる。ある特定の実施形態では、イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミン誘導体および/または組換えウイルスベクター化合物は、毎週1回投与される。望ましくは、イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミン誘導体および組換えウイルスベクターは1週間間隔で1〜10回投与される。好ましくは、イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミン誘導体および組換えウイルスベクターまたはそれを含有する組成物は、1週間間隔で3回、皮下経路で投与される。
【0067】
さらなる態様において、本発明は、患者において抗原に対する免疫応答を増強する方法を提供し、該方法は、(i)in vivoにおいて少なくとも1つの異種ヌクレオチド配列、特に、抗原をコードする異種ヌクレオチド配列を発現する組換えウイルスベクターと、(ii)イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミン誘導体の、逐次または同時いずれかの投与を含む。
【0068】
別の態様では、本発明は、患者において癌の発症を予防する、および/または癌を処置する方法を提供し、該方法は、(i)in vivoにおいて少なくとも1つの異種ヌクレオチド配列、特に、抗原をコードする異種ヌクレオチド配列を発現する組換えウイルスベクターと、(ii)イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミン誘導体の、逐次または同時いずれかの投与を含む。
【0069】
また別の態様では、本発明は、患者において感染性疾患の発症を予防する、および/または感染性疾患を処置する方法を提供し、該方法は、(i)in vivoにおいて少なくとも1つの異種ヌクレオチド配列、特に、抗原をコードする異種ヌクレオチド配列を発現する組換えウイルスベクターと、(ii)イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミン誘導体の、逐次または同時いずれかの投与を含む。好ましい実施形態によれば、該感染性疾患は、例えば、HIV、HCV、HBV、HPVなどによって誘発される疾患のようなウイルス誘発性疾患である。
【0070】
さらなる実施形態では、組換えウイルスベクターによりコードされる抗原に対する免疫応答を増強するための組換えウイルスワクチンの製造におけるイミダゾ[4,5−c]キノリン4−アミン誘導体の使用が提供される(該組換えウイルスベクターは該誘導体と逐次または同時に投与される)。
【0071】
「逐次投与される」とは、本組換えウイルスワクチンの組換えウイルスベクター[化合物(i)]とイミダゾ[4,5−c]キノリン4−アミン誘導体[化合物(ii)]が互いに独立に投与されることを意味し、例えば、まず、該化合物の1つを投与し、もう1つの化合物を投与することからなる第二の投与を別に行う。本発明によれば、第1の投与は、第二の投与の前、同時または後に行うことができる(またその逆)。治療組成物の投与および第二の投与は、異なるまたは同一の送達経路によって行うことができる(例えば、全身送達と標的化送達、または双方とも標的化送達)。好ましい実施形態では、各投与は同じ標的組織に対して、最も好ましくは非経口経路で行うべきである。
【0072】
好ましい実施形態では、組換えウイルスベクターおよびイミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミン誘導体の投与は実質的に同時である。より好ましくは、両化合物は一緒に投与される。
【0073】
別の実施形態では、イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミン誘導体は、組換えウイルスベクターの投与の前に投与される。この特定の実施形態では、「前」とは、約5分〜約2週間、より詳しくは約1時間〜約1週間、より詳しくは約6時間〜約48時間を意味する。
【0074】
本発明の組換えウイルスワクチンは、薬学上許容される溶液として患者に投与され、これは通常、薬学上許容される濃度の塩、緩衝剤、保存剤、適合担体、アジュバント(例えば、ミョウバン、BCG、免疫応答修飾剤)および所望により他の治療成分を含み得る。
【0075】
薬学上許容される担体とは、ヒトまたは他の脊椎動物に投与するのに好適な1以上の適合固体または液体増量剤、希釈剤またはカプセル化物質を意味する。担体とは、有効成分と組み合わせて適用を容易にする有機または無機成分、天然物または合成物を表す。これらの医薬組成物の成分はまた、本発明の化合物と互いに、所望の薬効を実質的に損なうような相互作用の無い様式で混合可能である。
【0076】
組換えウイルスワクチンは薬剤を投与するための通常の投与経路のいずれによって投与することもできる。様々な投与経路が利用可能である。選択される様式は、もちろん、特定の組換えウイルスワクチン含量、処置される特定の症状および治療効力に必要とされる用量によって異なる。本発明の方法は、概して、医学上許容される投与様式(臨床上許容されない有害作用を引き起こすことなく有効レベルの免疫応答をもたらす様式を意味する)を用いて実施することができる。好ましい投与様式は本明細書に述べられている。治療における使用のためには、有効量の1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミン誘導体を、例えば粘膜などの所望の表面、全身に、例えばクリーム、溶液などの形態で薬剤を送達するいずれかの様式によって対象に投与することができる。
【0077】
組換えウイルスワクチンまたはその別個の化合物(i)および(ii)は、本発明に従って、全身投与、局所投与および局部投与を含む種々の投与様式により使用することができる。注射は、例えば皮下注射、皮内注射、筋肉内注射、静脈内注射、腹腔内注射、腫瘍内注射、血管内注射、動脈内注射による、または動脈への直接注射(例えば、肝動脈注入による)もしくは肝臓供給静脈(例えば、門脈への注射)による手段によって行うことができる。注射は通常のシリンジおよびニードル、または当技術分野で利用可能な他のいずれかの適当なデバイスを用いて行うことができる。あるいは、有効化合物またはそれを含有する組成物は、経口/消化器、鼻腔、気管内、肺内、腟内または直腸内経路などの粘膜経路を介して投与することができる。また、経皮手段(例えば、パッチ剤、クリームなど)を用いて局所投与を行うこともできる。本発明においては、筋肉内投与および皮下投与が好ましい経路となる。
【0078】
経口投与に関しては、組換えウイルスワクチンは、有効化合物を当技術分野で周知の薬学上許容される担体と組み合わせることにより、容易に処方することができる。このような担体は、本発明の化合物を、処置される対象による経口摂取用に錠剤、丸剤、糖衣錠、カプセル剤、液体、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁液などとして処方可能とする。経口使用のための医薬製剤は固形賦形剤として得ることができ、所望により、得られた混合物をすりつぶし、必要であれば好適な補助剤を加えた後に顆粒混合物を加工して錠剤または糖衣錠核を得る。好適な賦形剤は、特に、ラクトース、スクロース、マンニトールまたはソルビトールを含む糖類;例えば、トウモロコシデンプン、小麦デンプン、米デンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカントガム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチル−セルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムなどのセルロース調製物および/またはポリビニルピロリドン(PVP)といった増量剤である。所望により、架橋ポリビニルピロリドン、寒天またはアルギン酸もしくはアルギン酸ナトリウムなどのその塩といった崩壊剤を加えてもよい。所望により、経口処方物はまた、生理食塩水または内部の酸性条件を中和するバッファー中に調剤してもよく、あるいは担体を用いずに投与してもよい。経口使用可能な組換えウイルスワクチンとしては、ゼラチンからなるプッシュフィットカプセル剤ならびにゼラチンとグリセロールまたはソルビトールなどの可塑剤からなるソフトシールドカプセル剤が含まれる。プッシュフィットカプセル剤は、ラクトースなどの増量剤、デンプンなどの結合剤および/またはタルクまたはステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤、および所望により安定剤と混合した有効成分を含み得る。ソフトカプセル剤では、有効化合物を脂肪油、液体パラフィンまたは液体ポリエチレングリコールなどの好適な液体に溶解または懸濁させることができる。さらに、安定剤を加えてもよい。また、経口投与用に調剤されたマイクロスフェアを使用することもできる。このようなマイクロスフェアは当技術分野で十分に定義されている。全ての経口投与用処方物はこのような投与に好適な用量であるべきである。
【0079】
組換えウイルスワクチンは、全身送達が望ましい場合、例えばボーラス注射または持続的注入など、注射による非経口投与用に調剤することができる。注射用処方物は、例えばアンプルまたは保存剤を添加した多用量容器など、単位投与形で提供することができる。組換えウイルスワクチンは、油性または水性ビヒクル中の懸濁液、溶液またはエマルションなどの形態を採ってもよく、沈殿防止剤、安定剤および/または分散剤などの処方剤を含み得る。非経口投与用組換えウイルスワクチンは、水溶性形態の有効化合物の水溶液を含む。さらに、有効化合物(i)および/または(ii)の懸濁液は、適当な油性注射懸濁液として調製することができる。好適な親油性溶媒またはビヒクルとしては、ゴマ油などの脂肪油、またはオレイン酸エチルもしくはトリグリセリドなどの合成脂肪酸エステル、またはリポソームが含まれる。水性注射懸濁液は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトールまたはデキストランなど、懸濁液の粘度を増す物質を含んでもよい。所望により、懸濁液はまた、好適な安定剤または高濃度溶液の調製を可能とするために化合物の溶解度を高める薬剤を含んでもよい。
【0080】
あるいは、有効化合物(i)および/または(ii)は、使用前に、例えば無菌パイロジェンフリー水などの好適なビヒクルで構成する粉末形態であってもよい。組換えウイルスワクチンはまた、例えばココアバターまたは他のグリセリドなどの従来の坐剤基剤を含有する坐剤または保留浣腸などの直腸または膣用組成物として調剤することもできる。また、組換えウイルスワクチンの他、デポー製剤として調剤することもできる。このような持続的作用処方物は、好適なポリマー材料または疎水性材料(例えば、許容される油中のエマルションとして)またはイオン交換樹脂を用いて、あるいは難溶性誘導体、例えば難溶性塩として調剤することもできる。組換えウイルスワクチンはまた、固相またはゲル相担体または賦形剤を含んでもよい。このような担体または賦形剤の例としては、限定されるものではないが、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、種々の糖類、デンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、および、ポリエチレングリコールなどのポリマーが挙げられる。
【0081】
好適な液体または固体組換えウイルスワクチン形は、例えば、マイクロカプセル化されるか、蝸牛状にされる(encochleated)か、微視的金粒子上にコーティングされるか、リポソーム、噴霧、エアゾール、皮膚への移植用のペレット中に含まれるか、または皮膚中へスクラッチする鋭利な物体上で乾燥された、吸入用の水性溶液もしくは生理食塩水溶液である。この医薬組成物はまた、顆粒、散剤、錠剤、コーティング錠、(マイクロ)カプセル剤、坐剤、シロップ剤、エマルション、懸濁剤、クリーム、滴剤または有効化合物を長期放出する製剤を含み、その製剤において、賦形剤および添加剤および/もしくは補助剤(例えば、崩壊剤、結合剤、コーティング剤、膨潤剤、滑沢剤、香味剤、甘味料または可溶化剤)は、上記のように慣例的に使用される。
【0082】
1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミン誘導体はそれ自体を投与してもよいし、あるいは薬学上許容される塩の形態で投与してもよい。薬剤中で用いる場合、これらの塩は薬学上許容されるものであるべきであるが、薬学上許容されない塩もその薬学上許容される塩を作製するために便宜に用いることができる。このような塩としては、限定されるものではないが、下記の酸:塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、マレイン酸、酢酸、サリチル酸、p−トルエンスルホン酸、酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、ギ酸、マロン酸、コハク酸、ナフタレン−2−スルホン酸およびベンゼンスルホン酸が挙げられる。また、このような塩は、カルボン酸基のナトリウム、カリウムまたはカルシウム塩など、アルカリ金属塩またはアルカリ土類塩として調整することができる。
【0083】
好適な緩衝剤としては、酢酸および塩(1〜2%w/v);クエン酸および塩(1〜3%w/v);ホウ酸および塩(0.5〜2.5%w/v);およびリン酸および塩(0.8〜2%w/v)が含まれる。好適な保存剤としては、塩化ベンザルコニウム(0.003〜0.03%w/v);クロロブタノール(0.3〜0.9%w/v);パラベン(0.01〜0.25%w/v)およびチメロサール(0.004〜0.02%w/v)が含まれる。
【0084】
組換えウイルスワクチンは便宜には単位投与形で提供することができ、薬学分野で周知の方法のいずれかにより調製することができる。全ての方法が、化合物(i)と(ii)を、1以上の補助成分からなる担体と会合させる工程を含む。一般に、これらの組成物はこれらの化合物を液体担体、微粉固体担体またはその双方と均質かつ緊密に会合させ、その後、必要に応じて、その生成物を成形することにより調製される。液体投与形はバイアルまたはアンプルである。固体投与形は錠剤、カプセル剤および坐剤である。患者の処置のためには、化合物の活性、投与様式、免疫目的(すなわち、予防であるか治療であるか)、障害の性質および重篤度、患者の齢および体重、異なる用量が必要な場合もある。所定の用量の投与は、個々の投与単位の形態での1回の投与または数回のより小さな投与単位の双方によって行うことができる。抗原特異的応答を追加刺激するには、何週間か何ヶ月かの特定の間隔で複数回の投与を行うのが通常である。
【0085】
他の送達系としては、時限放出、遅延放出または持続的放出送達系を含み得る。このような系は、組換えウイルスワクチンの化合物を繰り返し投与しなくてもよく、対象および医師に対する便宜性が増す。多種の放出送達系が利用でき、当業者に知られている。それらには、ポリ(ラクチド−グリコリド)、コポリオキサレート、ポリカプロラクトン、ポリエステルアミド、ポリオルトエステル、ポリヒドロキシ酪酸およびポリ無水物などのポリマーベース系が含まれる。薬剤を含有する上記ポリマーのマイクロカプセルは、例えば、米国特許第5,075,109号に記載されている。送達系はまた、コレステロール、コレステロールエステルなどのステロールおよび脂肪酸または中性脂肪(モノグリセリド、ジグリセリドおよびトリグリセリドなど)を含む脂質;ヒドロゲル放出系;シラスティック系;ペプチドに基づく系;ワックスコーティング;慣例の結合剤および賦形剤を用いる圧縮錠剤;部分縮合インプラントなどの非ポリマー系を含む。特定の例としては、限定されるものではないが、(a)米国特許第4,452,775号、同第4,675,189号および同第5,736,152号に記載されているものなど、本発明の薬剤がマトリックス内にある形態で含まれている腐食系、および(b)米国特許第3,854,480号、同第5,133,974号および同第5,407,686号に記載されているものなど、有効成分がポリマーから制御された速度で透過する拡散系が挙げられる。さらに、ポンプに基づくハードウェア送達系も使用でき、そのいくつかは移植に適している。
【0086】
本発明のある組換えウイルスワクチンに関して、組換えウイルスベクター[化合物(i)]および1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミン誘導体[化合物(ii)]の投与形態は同じであっても異なっていてもよい(例えば、化合物(i)は溶液として投与され、化合物(ii)はクリームとして投与される)。
【0087】
他の態様では、本発明はキットに関する。本発明のあるキットは、(i)少なくとも1つの本発明の組換えウイルスベクターを含有する容器と(ii)少なくとも1つの1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミン誘導を含有する容器、ならびにこれらの化合物の投与のタイミングに関する説明書を含む。この容器は、(i)少なくとも1つの組換えウイルスワクチンと(ii)少なくとも1つの1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミン誘導体の双方を一緒に収容する単一の容器であってもよいし、あるいはブリスターパックなど、個々の用量の化合物(i)と(ii)を収容する複数の容器またはチャンバーであってもよい。このキットはまた、組換えウイルスワクチンの投与のタイミングに関する説明書も含む。これらの説明書は、患者に適当な時点で組換えウイルスワクチンを服用するように指示したものである。例えば、組換えウイルスワクチンの送達のための適当な時点は症状が生じた時であり得る。あるいは、組換えウイルスワクチンの送達のための適当な時点は、月間または年間などの定期スケジュールであり得る。化合物(i)および(ii)は同時に投与してもよいし、あるいはそれらが相乗作用的免疫応答を生じるのに十分近い時間で投与される限り、別に投与してもよい。
【0088】
所望により、本発明の方法または使用は1以上の慣例の治療法(例えば、放射線、化学療法および/または外科術)と組み合わせて行うこともできる。複数の治療アプローチの使用は患者により広い基盤の介入を提供する。一実施形態では、本発明の方法は、外科的介入の前または後に行うことができる。別の実施形態では、本発明の方法は、放射線療法(例えば、γ線療法)の前または後に行うことができる。当業者ならば、適当な放射線療法プロトコールおよび使用可能なパラメーターを容易に調整することができる(例えば、Perez and Brady, 1992, Principles and practice of Radiation Oncology, 2nd Ed. JB Lippincott Co参照;当業者に明らかなように、適当な順応および改良を使用)。さらに別の実施形態では、本発明の方法または使用は、1以上の薬剤(例えば、HPV感染、HPV関連病状を処置または予防するために慣例的に用いられる薬剤)による化学療法と組み合わせる。
【0089】
本発明はさらに、化学療法薬による化学療法処置下にある癌患者の処置を改良するための方法に関し、該方法は、該患者を上記に開示したような組換えウイルスワクチンで同時処置することを含む。
【0090】
本発明はさらに、細胞傷害剤または放射線療法の細胞傷害有効性を向上させる方法に関し(http://www.micropat.com/perl/di/psrecord.pl?ticket=037405101546&listid=114 934200603310905&container id=763883&patnum=US6015827A)、該方法は、このような処置を必要とする患者を、上記に開示したような組換えウイルスワクチンで同時処置することを含む。
【0091】
別の実施形態では、本発明の方法または使用は、1以上のプライマー組成物と1以上のブースター組成物の逐次投与を含む、プライムブースト療法に従って行われる。一般に、プライミング組成物およびブースティング組成物は、少なくとも1つの抗原ドメインを共通に含むか、またはコードする、異なるビヒクルを用いる。まず、宿主生物にプライミング組成物を投与し、その後、1日〜12か月までの様々な期間の後に同じ宿主生物にブースティイング組成物を投与する。本発明の方法は、プライミング組成物を1〜10回逐次投与した後、ブースティイング組成物を1〜10回逐次投与することを含む。望ましくは、注射間隔は1週間〜6か月である。さらに、このプライミングおよびブースティイング組成物は、同じ投与経路または異なる投与経路で、同じ部位または交互の部位に投与することができる。例えば、HPV初期ポリペプチドに基づく組成物は粘膜経路によって投与することもできるが、組換えウイルスワクチンは、MVAベクターに関しては、例えば皮下注射などで注射することが好ましい。
【0092】
動物またはヒト生物において投与した際に抗HPV免疫応答を誘発または刺激する能力は、当技術分野で標準的な種々のアッセイを用い、in vitroまたはin vivoのいずれかで評価することができる。免疫応答の誘発および活性化を評価するために利用可能な技術の一般的記載については、例えば、Coligan et al. (1992 and 1994, Current Protocols in Immunology; ed J Wiley & Sons Inc, National Institute of Health)参照。細胞性免疫の測定は、CD4+およびCD8+T細胞に由来するものを含む活性化されたエフェクター細胞により分泌されるサイトカインの測定(例えば、ELIspotによるIL−10またはIFNγ産生細胞の定量)、免疫エフェクター細胞の活性化状態の判定(例えば、従来の[3H]チミジン取り込みによりT細胞増殖アッセイ)、感作対象における抗原特異的Tリンパ球に関するアッセイ(例えば、細胞傷害性アッセイにおけるペプチド特異的溶解)によって行うことができる。体液性応答を刺激する能力は、抗体結合および/または結合競合によって判定することができる(例えば、Harlow, 1989, Antibodies, Cold Spring Harbor Press参照)。本発明の方法はまた、さらに、抗HPV免疫応答の誘発または増強を反映する抗腫瘍活性を判定するため、適当な腫瘍誘発剤(例えば、HPV−E6およびE7発現TC1細胞)で刺激した動物モデルにおいて確認することができる。
【0093】
本発明に従って特に処置可能な病状としては、例えば、子宮頸癌、または頸部上皮内癌(CIN)もしくは扁平上皮内病変(SIL)と呼ばれるこの悪性新生物前駆病変がある。本発明の組換えウイルスワクチンはまた、DNA診断により確認された患者の頸部無症候性感染、または子宮頸癌、CINもしくはSILの外科的処置の後に残ったと思われる無症候性感染、または疫学的理由に従って存在すると推測される無症候性感染の処置にも有用であり得る。処置される病状にはまた、性器疣贅(いぼ)および尋常性疣贅および足底疣贅も含まれる。また、これらの症状は全て、多数の他のHPV種によっても引き起こされ、本発明の薬剤、化合物および方法はまたこれらのウイルスに対しても有効に向けられ得る。これらの病変は全て、おそらく、ほとんどの場合に診断されない無症候性感染に由来する。本発明はまた、これらの無症候性感染の全てに対しても有効に向けられ得る。
【0094】
本発明を例示的に記載してきたが、用いられている用語は、言葉の本質において限定ではなく説明であると理解されるべきである。上記の教示に照らして、本発明の多くの改変および変更が可能であるのは明らかである。従って、添付の特許請求の範囲内で、本発明は、本明細書に具体的に記載されているものとは違った方法で実施することもできると理解されるべきである。
【0095】
上記に引用されている特許、刊行物およびデータベース登録の開示は全て、そのような個々の特許、刊行物および登録が具体的かつ個々に引用することにより本明細書の一部とされることが示されている場合と同じ程度で、具体的に引用することにより本明細書の一部とされる。
【実施例】
【0096】
A−HPV抗原を発現する組換えウイルスベクター
1.材料および方法
1.1.試験品
各組換えベクター構築物(MVAに基づく)の名称および簡単な説明
【0097】
【表1】
【0098】
保存条件:
ウイルスを注射当日まで−80℃に維持した。このウイルス懸濁液を希釈および投与の直前に急速解凍した。
【0099】
ウイルスをバッファーTris/HCl 10mM、サッカロース5%(w/v)、10 mM NaGlu、50mM NaCl、pH8.0に、100μl容量中、必要な用量が得られるように希釈した。
【0100】
1.2.動物モデル
種/系統/供給者:
SPF健常雌C57Bl/6マウスはCharles River (Les Oncins, France)から得た。
【0101】
これらの動物は到着時6週齢であった。実験の開始時にはそれらは7週齢であった。
【0102】
これらの動物を、1時間に最低11回の換気を行うよう空調した単一の専用室で飼育した。温度および相対湿度の範囲は、それぞれ20℃〜24℃および40〜70%であった。光は12時間明期、12時間暗期となるように自動制御した。特定の病原体を持っていないことをセンチネル動物の定期的管理により確認した。
【0103】
研究を通じ、動物にはRM1型無菌餌(Dietex France, Saint Gratien)を自由に摂らせた。無菌水もボトルから自由に与えた。
【0104】
動物は全て、実験開始前1週間、馴化させた。
【0105】
1.3.細胞の説明
C57Bl6マウスの肺から得たTC1腫瘍細胞に、HPV16由来のE6およびE7を発現するLXSN16E6E7とras遺伝子を発現するpVEJBの2種のレトロウイルスで形質導入した。これらの細胞を、0.5mg/ml G418および0.2mg/mlハイグロマイシンを含有するDMEM中で培養した。接着細胞をトリプシン処置により取り出し、3回洗浄した後、2.105 TC1生存細胞を用いて皮下から腫瘍刺激を行った。
【0106】
1.4.アルダラ(商標)(3M Pharmaceuticals)
アルダラ(商標)はイミキモドの商標である。5%クリーム各1グラムは、イソステアリン酸、セチルアルコール、ステアリルアルコール、白色ワセリン、ポリソルベート60、モノステアリン酸ソルビタン、グリセリン、キサンタンガム、精製水、ベンジルアルコール、メチルパラベンおよびプロピルパラベンからなる灰白色水中油型バニシングクリーム基剤中に50mgのイミキモドを含有する。
【0107】
1.5.プロトコール
免疫計画:
免疫療法実験では、1日目に2.105 TC1細胞を用い、15匹のC57Bl6雌マウスの右の側腹部皮下に抗原投与を行った。8日目、15日目および22日目に、5.106 pfuまたは5.105 pfuのワクシニアウイルスを、マウスの3箇所の離れた部位に3回皮下処置した。各感作の直前に、剃毛したマウスの皮膚(およそ1cm2)の注射部位の上にイミキモド(アルダラ5%クリーム;3M Pharmaceuticals)を局所適用した。各マウスに1回当たり、およそ0.8mgまたは1.6mg/マウスの活性イミキモドを施した。腫瘍の増殖を80日間、週2回、カリパスでモニタリングした。腫瘍の大きさが直径25mmを超えた際、または腫瘍が小さかったとしてもマウスが痛みを示した際には、倫理的理由からマウスを安楽死させた。
【0108】
免疫原性研究では、1日目、8日目および15日目に5.107 pfuまたは5.106 pfuのワクシニアウイルスを、3匹の腫瘍不含C57B16雌マウスの3箇所の離れた部位に3回皮下接種した。この用量は、HPV特異的抗原に対する細胞性免疫の検出を至適化するために使用した。各感作の直前に、剃毛したマウスの皮膚(およそ1cm2)の注射部位の上にイミキモドを局所適用した。各マウスに1回当たり、およそ0.8mgまたは1.6mg/マウスの活性イミキモドを施した。22日目に免疫分析のために脾臓および血清を取り出した。
【0109】
モニタリングパラメーター:
*ElispotによるIFNγ(Th1)またはIL−4(Th2)分泌細胞の数/頻度の測定
新鮮な脾細胞を、Cell Strainer (BD Falcon)を用いて調製した。ペプチドは全て、Neosystemにより免疫級レベルで合成された(10mg)。各ペプチドをDMSOに10mg/mlで溶解させ、4℃で保存した。Elispotは、製造者の説明書に従い、Mabtech ABマウスIFNγ ELISPOTPLUSキットまたはマウスIL−4 ELISPOTPLUSキット(Mabtech, France)を用いて行った。96ウェルニトロセルロースプレートを炭酸ナトリウムバッファー中、3μg/mlのモノクローナルラット抗マウスIFNγ抗体(クローンR4−6A2;Pharmingen、カタログnr551216、ロットM072862;100μl/ウェル)でコーティングした。これらのプレートを4℃で一晩または37℃で1時間インキュベートした。プレートをDMEM10%FCSで3回洗浄し、37℃にて100μl DMEM10%FCS/ウェルで2時間飽和させた。脾細胞を106細胞/100μlの濃度でプレーティングした。全てのウェルにインターロイキン2を6U/50μl/ウェル(R&D Systems)10ng/ml)の濃度で加えた。コンカナバリンAを陽性対照(5μg/ml)として用いた。HPV特異的ペプチドは5μg/mlの濃度で用いた。これらのプレートを37℃、5%CO2下で48時間インキュベートした。このプレートをPBS1倍で1回、PBS−Tween 0.05%で5回洗浄した。ビオチン化抗マウスIFNγ(クローンXMG1.2、Pharmingen)を0.3μg/100μl/ウェルの濃度で加え、室温で2時間、ゆっくり振盪させながらインキュベートした。このプレートをPBS−Tween 0.05%で5回洗浄した。また、PBS−Tween0.05%−FCS1%中に1/5000希釈したエクストラビジンAKP(Sigma, St. Louis, MO)もウェルに加えた(100μl/ウェル)。このプレートを室温で45分間インキュベートした後、PBS−Tween 0.05%で5回洗浄した。IFNγ分泌はBioradキットで現像した。ウェル当たり100μlの基質(NBT+BCIP)を加え、プレートを半時間室温で放置した。このプレートを水で洗浄し、室温で一晩乾燥させた。解剖顕微鏡を用いてスポッ
トを計数した。スポットはElispotリーダーBioreader 4000 Pro−X(BIOSYS-Gmbh; Serlabo France)を用いて計数した。
【0110】
供試ペプチドのリスト:
SCVYCKKEL(E6;Db):S9Lペプチド
RCIICQRPL(E6;Db):R9Lペプチド
SEYRHYQYS(E6;Kb):S9Sペプチド
ECVYCKQQL(E6;Db):E9Lペプチド
TDLHCYEQL(E7;Kb):T9Lペプチド
RAHYNIVTF(E7;Db):R9Fペプチド
無関連ペプチド(MUC1特異的)
D38L(E7;Db)は38アミノ酸長のE7特異的ペプチドである。異なるELISPOTアッセイでは組換え精製E7タンパク質も用いた。
【0111】
*R9Fテトラマー特異的CD8+T細胞の頻度の測定
新鮮な脾細胞を採取し、BD専用篩(Cell Strainer)を用いて調製した。脾細胞を24ウェルプレートにて、R9Fペプチド(5μg/ml)で5日間刺激するか、またはそのまま特異的標識に用いた。1.106細胞を1μlのAPC結合マウスCD8特異的抗体(BD Pharmingen 553035;クローン53−6.7;ロット番号32567)および10μlのR9F特異的H−2Dbテトラマー(Beckman Coulter T20071;H-2Db/PE;ペプチドRAHYNIVTF;ロットC507117;C602110)で4℃にて30分間染色した。細胞を洗浄した後、PBS/0.5%PFAに希釈した。
【0112】
*E7抗原に対するTh1/Th2関連IgGイソ型スイッチの測定
*96ウェルプレートを4℃にて一晩、3μg/mlのE7精製タンパク質(P#2101 cahier PC00001;157頁;2002年10月)でコーティングした。タンパク質をコーティングバッファー(200mM NaHCO3、80mM Na2CO3、pH9.5)に希釈し、各ウェルに100μlを加えた。
*ウェルをプレート洗浄機(PBS、0.1%Tween 20、10mM EDTA)で5回洗浄し、室温にて1時間、300μl PBS+3%BSAで飽和させた。
*ウェルを5回洗浄し、室温で2時間、マウス血清の1/2連続希釈液(PBS+1%BSA中、1/25〜1/1600)とともにインキュベートした。
*このプレートを5回洗浄した。PBS+1%BSAで1/1000希釈したペルオキシダーゼコンジュゲートラット抗マウスIgG2a(BD Pharmingen 553391)またはラット抗マウスIgG1(BD Pharmingen 559626)を加え(100μl/ウェル)、室温で1時間インキュベートした。
*ウェルを5回洗浄し、100μlmの基質溶液(0.05Mクエン酸、0.05M酢酸ナトリウム、1%テトラメチルベンジジン、0.015%H2O2)/ウェルで現像した。
TMB溶液(10ml)=140μl TMB+2μl H2O2+5ml酢酸ナトリウム(0.1M)+5mlクエン酸塩(0.1M)
*反応は100μlの0.8M H2SO4/ウェルを加えることよって停止させた。450nmで吸光度を測定した(Genesys system)。
【0113】
*ワクチン接種により誘発されたMVA中和抗体の分析
細胞:BHK−21(ハムスター繊維芽細胞、Ref ATCC:CCL−10)
MVA−GFP(MVATGl5938):リポーター緑色蛍光タンパク質を、p11K7.5プロモーターの制御下、MVA欠失IIIに挿入した。
【0114】
工程1:中和血清:
全ての血清を、使用前に56℃で30分間加熱することにより、補体除去した。
陽性対照:ポックスウイルス(WR株)(Ref. Ac WR IMVQC34)で免疫したウサギの血清
【0115】
工程2:血清中和アッセイ(中和抗MVA抗体力価のSOP測定)
血漿を培養培地で連続希釈し(50倍〜3200倍希釈の範囲)、96ウェルマイクロプレート中、MVA−GFP(5×103 pfu/ウェル)とともに37℃で1時間インキュベートした(中和停止)。BHK−21細胞(105細胞/ウェル)を播種し、37℃、5%CO2下でさらに16〜18時間インキュベートした。
【0116】
翌日、96ウェルマイクロプレートを250μLのPBSで洗浄し、各ウェルに100μLのPBSを加えた後、蛍光マイクロプレートリーダー(VICTOR(商標)PerkinElmer(登録商標))で蛍光強度を読み取った。この中和抗体力価は、50%のウイルス活性が阻害される力価である。中和抗体力価(NAT50)は、Spearman−Karber法を用いて算出した。
【0117】
2−結果
材料および方法の節に記載されているモデルに従い、3つの独立した治療試験を行った。
【0118】
全ての試験で、本発明者らは、ワクチン接種部位におけるアルダラ(商標)クリーム(5%)の局所適用がMVATG8042の治療効力を有意に増強することを一貫して観察した(図1a、b、cおよびd参照)。この設定では、5.106 pfuのMVATG8042によるワクチン接種は各試験の終了時までに平均45%の腫瘍不含マウスを誘導したが、MVATG8042がそれぞれ0.8mgまたは1.6mgのイミキモドと組み合わせて用いられた場合には、75%および95%の腫瘍不含動物が見られた。
【0119】
1つの試験系では(図1c参照)、本発明者らはまた、アルダラ(商標)の添加により、1log低い用量のウイルス(5.105 pfu)で同じ治療効力を達成可能であることを見出した。
【0120】
異なる群間のin vivo生存試験における統計学的な差を、カプラン・マイヤー生存曲線のログランク適用(Statistica 5.1ソフトウエア、Statsoft Inc.)を用いて評価した。p≦0.05は統計学的に有意とみなされる。
【0121】
並行して、E6およびE7 HPV抗原に対する細胞性応答と体液性応答の双方誘発を評価するために、2つの独立した研究を行った。マウスにプロトコールの節に記載されたようにワクチン接種した。両試験において、E6またはE7特異的IFNγ分泌細胞の数を、ELISPOTアッセイを用いて数えた。これらの結果は、アルダラ(商標)の局所投与が、MVATG8042単独で見られるものよりも、MHCクラスIに限定されたCD8+ T細胞の数に有意な上昇をもたらすことを示す(図2aおよびb)。アルダラ(商標)+MVATG8042群(ペプチドS9SおよびT9L)では、より広いエピトープ範囲に対する低い応答が存在する。並行して、別の試験で、E7特異的IL−4分泌細胞の数は、MVA単独群よりもMVATG8042+アルダラ(商標)で低かった(図3)。考え合わせると、これらのデータは、MVATG8042+アルダラ(商標)の組合せがE6およびE7抗原に対する、Th1に基づく細胞性免疫応答を向上させることを示す。
【0122】
CD8+/R9Fテトラマー+脾細胞の頻度をさらに、E7特異的免疫優性エピトープR9Fによるin vitro刺激の前または後にフローサイトメトリーにより分析した(図4a)。これらの結果は、R9F免疫優性エピトープの認識がCD8+特異的T細胞によって明らかに媒介されることを示す。R9F−Dbに限定されるCD8+産生の頻度は脾臓では低く、この産生は、in vitroにおいてこのペプチドで刺激した後によりよく検出される。図4bで示される実験において、アルダラ(商標)で前処理したところ、R9F−Db特異的CD8+ T細胞の数は有意に向上した。
【0123】
最後に、E7抗原に対する体液性応答の測定もELISAによって行った。アルダラ(商標)+MVATG8042の組合せにより誘発された応答のタイプをより良く特性決定するために、IgGイソ型スイッチを分析した。E7特異的IgG1およびIgG2aが検出された。このデータ(図5)は、アルダラ(商標)の局所適用が、組合せ処置の効力に関与し得る典型的なTh1プロフィール(IgG1よりも高いIgG2a力価、図5a)を誘発することを示す。これらの結果は第二の試験で確認される(図5b)。
【0124】
最後に、アルダラとMVATG8042の組合せの影響を分析するために、MVA特異的中和抗体のレベルを測定した(図6)。これらの結果は、MVATG8042とアルダラ(商標)の組合せが、同様に注射したMVA単独に比べた場合、得られるMVA特異的中和抗体の力価を低下させることを示す。これは、特異的抗体による中和から保護し得る、アルダラ(商標)クリームの局所投与によって作り出された環境により説明することができた。
【0125】
B−腫瘍抗原MUC1を発現する組換えウイルスベクター
2.1.試験品
各組換えベクター構築物(MVAに基づく)の名称と簡単な説明
【0126】
【表2】
【0127】
保存条件:
ウイルスをMolecular Immunology Departmentから受け取った後、注射当日まで−80℃に維持した。このウイルス懸濁液を希釈および投与の直前に急速解凍した。
【0128】
使用前の希釈条件:
ウイルスをTG0008バッファー(Tris/HCl 10mM、サッカロース5%(w/v)、10mM NaGlu、50mM NaCl、pH8.0)に、100μl容量中、必要な用量が得られるように希釈した。
【0129】
2.2.動物モデル
種/系統/供給者:
SPF健常雌B6D2およびC57Bl/6マウスはCharles River (Les Oncins, France)から得た。
【0130】
これらの動物は到着時6週齢であった。実験の開始時にはそれらは7週齢であった。これらの動物を、1時間に最低11回の換気を行うよう空調した単一の専用室で飼育した。温度および相対湿度の範囲は、それぞれ20℃〜24℃および40〜70%であった。光は12時間明期、12時間暗期となるように自動制御した。研究を通じ、動物にはRM1型無菌餌(Dietex France, Saint Gratien)を自由に摂らせた。無菌水もボトルから自由に与えた。
【0131】
2.3.細胞の説明
RenCa−MUC1腫瘍細胞: RenCaは実験的ネズミ腎臓癌モデルである。RenCa細胞を、従来のリン酸Ca2+トランスフェクション法を用いて、pHMG−ETAtm(MUC−1)およびpY3(ハイグロマイシンB耐性)でトランスフェクトした。10%不活化ウシ胎児血清、L−グルタミン(2mM)、ゲンタマイシン(0.04g/l)およびハイグロマイシン(600μg/ml、Roche Diagnostic)を添加したDMEM(ダルベッコ改変)にクローン希釈した後に、クローンを選択した。MUC−1発現の分析は、H23モノクローナル抗体を用いた細胞蛍光分析(FACScan、Becton Dickinsonを使用)によって行った。接着細胞をPBS/EDTA処理により取り出し、3回洗浄した後、3.105 RenCa−MUC1(クローン4)生存細胞を用いて皮下から腫瘍刺激を行った。
【0132】
2.4.プロトコール
免疫計画:
免疫療法実験では、1日目に3.105 RenCa−MUC1細胞を用い、15匹のB6D2雌マウスの右の側腹部皮下に抗原投与を行った。4日目、11日目および18日目に、5.107 pfuのポックスウイルス(MVA株)を、マウスの3箇所の離れた部位に皮下処置した。各感作の直前に、剃毛したマウスの皮膚(およそ10cm2)の注射部位の上にイミキモドを局所適用した。各マウスに1回当たり、およそ1mg/マウスの活性イミキモドを施した。腫瘍の増殖を80日間、週2回、カリパスでモニタリングした。腫瘍の大きさが直径25mmを超えた際、または腫瘍が小さかったとしてもマウスが痛みを示した際には、倫理的理由からマウスを安楽死させた。
【0133】
免疫原性研究では、1日目、8日目および15日目に5.107 pfuのポックスウイルス(MVA株)を、3匹のC57Bl6雌マウスの3箇所の離れた部位に皮下接種した。この用量は、MUC1特異的抗原に対する細胞性免疫の検出を至適化するために使用した。各感作の直前に、剃毛したマウスの皮膚(およそ10cm2)の注射部位の上にイミキモドを局所適用した。各マウスに1回当たり、およそ1mg/マウスの活性イミキモドを施した。22日目に免疫分析のために脾臓および血清を取り出した。
【0134】
モニタリングパラメーター:
*ElispotによるIFNγ分泌細胞の数/頻度の測定
新鮮な脾細胞を、Lympholite精製バッファーを用いて調製した。ペプチドは全て、Neosystemにより免疫級レベルで合成された(10mg)。各ペプチドをDMSOに10mg/mlで溶解させ、4℃で保存した。96ウェルニトロセルロースプレートを炭酸ナトリウムバッファー中、3μg/mlのモノクローナルラット抗マウスIFNγ抗体(クローンR4−6A2;Pharmingen、カタログnr551216、ロットM072862;100μl/ウェル)でコーティングした。これらのプレートを4℃で一晩または37℃で1時間インキュベートした。プレートをDMEM10%FCSで3回洗浄し、37℃にて100μl DMEM10%FCS/ウェルで2時間飽和させた。脾細胞を106細胞/100μlの濃度でプレーティングした。全てのウェルにインターロイキン2を6U/50μl/ウェル(R&D Systems)10ng/ml)の濃度で加えた。コンカナバリンAを陽性対照(5μg/ml)として用いた。MUC1特異的ペプチドは5μg/mlの濃度で用いた。これらのプレートを37℃、5%CO2下で48時間インキュベートした。このプレートをPBS1倍で1回、PBS−Tween 0.05%で5回洗浄した。ビオチン化抗マウスIFNγ(クローンXMG1.2、Pharmingen)を0.3μg/100μl/ウェルの濃度で加え、室温で2時間、ゆっくり振盪させながらインキュベートした。このプレートをPBS−Tween 0.05%で5回洗浄した。また、PBS−Tween0.05%−FCS1%中に1/5000希釈したエクストラビジンAKP(Sigma, St. Louis, MO)もウェルに加えた(100μl/ウェル)。このプレートを室温で45分間インキュベートした後、PBS−Tween 0.05%で5回洗浄した。IFNγ分泌はBioradキットで現像した。ウェル当たり100μlの基質(NBT+BCIP)を加え、プレートを半時間室温で放置した。このプレートを水で洗浄し、室温で一晩乾燥させた。解剖顕微鏡を用いてスポットを計数した。
【0135】
*ElispotによるIL−4分泌細胞の数/頻度の測定
新鮮な脾細胞を、Lympholite精製バッファーを用いて調製した。ペプチドは全て、Neosystemにより免疫級レベルで合成された(10mg)。各ペプチドをDMSOに10mg/mlで溶解させ、4℃で保存した。96ウェルニトロセルロースプレートを炭酸ナトリウムバッファー中、3μg/mlのモノクローナル抗マウスIL−4抗体(Pharmingen、カタログnr551878、ロット27401;100μl/ウェル)でコーティングした。これらのプレートを4℃で一晩または37℃で1時間インキュベートした。プレートをDMEM10%FCSで3回洗浄し、37℃にて100μl DMEM10%FCS/ウェルで2時間飽和させた。脾細胞を106細胞/100μlの濃度でプレーティングした。全てのウェルにインターロイキン2を6U/50μl/ウェル(R&D Systems)10ng/ml)の濃度で加えた。コンカナバリンAを陽性対照(5μg/ml)として用いた。MUC1特異的ペプチドは5μg/mlの濃度で用いた。これらのプレートを37℃、5%CO2下で48時間インキュベートした。このプレートをPBS1倍で1回、PBS−Tween 0.05%で5回洗浄した。ビオチン化抗マウスIL−4(Pharmingen)を0.2μg/100μl/ウェルの濃度で加え、室温で2時間、ゆっくり振盪させながらインキュベートした。このプレートをPBS−Tween 0.05%で5回洗浄した。また、PBS−Tween0.05%−FCS1%中に1/5000希釈したエクストラビジンAKP(Sigma, St. Louis, MO)もウェルに加えた(100μl/ウェル)。このプレートを室温で45分間インキュベートした後、PBS−Tween 0.05%で5回洗浄した。IFNγ分泌はBioradキットで現像した。ウェル当たり100μlの基質(NBT+BCIP)を加え、プレートを半時間室温で放置した。このプレートを水で洗浄し、室温で一晩乾燥させた。解剖顕微鏡を用いてスポットを計数した。
【0136】
供試ペプチドのリスト:
F9L FLSFHISNL(H−2Kb;Heukamp, 2001)
A9A APGSTAPPA(H−2Db)
T24P TAPPAHGVTSAPDTRPAPGSTAPP
G23D GQDVTLAPATEPASGSAATWGQD
V23S VTGSGHASSTPGGEKETSATQRS
無関連ペプチド/R9F RAHYNIVTF(E7;Db)
【0137】
*MUC1抗原に対するTh1/Th2関連IgGイソ型スイッチの測定
*96ウェルプレートを4℃にて一晩、3μg/mlのT24P MUC1特異的ペプチドでコーティングした。このペプチドはコーティングバッファー(200mM NaHCO3、80mM Na2CO3、pH9.5)で希釈し、各ウェルに100μlを加えた。
*ウェルをプレート洗浄機(PBS、0.1%Tween 20、10mM EDTA)で5回洗浄し、室温にて1時間、300μl PBS+3%BSAで飽和させた。
*ウェルを5回洗浄し、室温で2時間、マウス血清の1/2連続希釈液(PBS+1%BSA中、1/25〜1/1600)とともにインキュベートした。
*このプレートを5回洗浄した。PBS+1%BSAで1/1000希釈したペルオキシダーゼコンジュゲートラット抗マウスIgG2a(BD Pharmingen 553391)またはラット抗マウスIgG1(BD Pharmingen 559626)を加え(100μl/ウェル)、室温で1時間インキュベートした。
*ウェルを5回洗浄し、100μlmの基質溶液(0.05Mクエン酸、0.05M酢酸ナトリウム、1%テトラメチルベンジジン、0.015%H2O2)/ウェルで現像した。
TMB溶液(10ml)=140μl TMB+2μl H2O2+5ml酢酸ナトリウム(0.1M)+5mlクエン酸塩(0.1M)
*反応は100μlの0.8M H2SO4/ウェルを加えることよって停止させた。450nmで吸光度を測定した(Genesys system)。
【0138】
3−結果
プロトコールの節に記載されているようなRenCa−MUC1皮下モデルで治療試験を行った。本発明者らは、アルダラ(商標)クリーム5%局所投与による前処理が、試験の終了時に腫瘍不含マウスの5%〜35%でMVATG9931の治療効力を有意に高めることを見出した。この試験では、アルダラ(商標)単独の局所適用で処理したマウスは無かった。しかしながら、違う癌モデル(OVA発現腫瘍)に関して発表されている情報によれば、腫瘍とは異なる部位にアルダラ(商標)を局所適用しても治療効果はないことを記載している(Craft et al., 2005)。異なる群間のin vivo生存試験における統計学的な差を、カプラン・マイヤー生存曲線のログランク適用(Statistica 5.1ソフトウエア、Statsoft Inc.)を用いて評価した。p≦0.05は統計学的に有意とみなされる。
【0139】
図7は、renCa−Muc1腫瘍モデルにおけるアルダラ+MVATG9931の組合せの治療効果を示す。
【0140】
また、MUC1抗原に対する細胞性応答および体液性応答の双方の誘発を見出すために免疫原性試験も行われた。マウスに、プロトコールの節に記載されているようにワクチン接種を行った。
【0141】
最初の試験セットでは、MUC1特異的IFNγ分泌細胞の数を、ELISPOTアッセイを用いて数えた。MUC1 H−2Db、H−2Kbおよび長鎖に限定されるペプチドを用い、免疫化の後のCD4およびCD8 T細胞応答の双方をモニタリングした。本発明者らはアルダラの局所投与による前処置が、MVATG9931単独で得られるMHCクラスIおよびクラスIIに限定されるCD4およびCD8 T細胞の数を有意には向上させないことを見出した(図8)。
【0142】
別の試験セットでは、MUC1特異的IL−4分泌細胞の数を、ELISPOTアッセイを用いて数えた。MUC1に限定されるペプチドを用い、免疫化の後のCD4およびCD8 T細胞応答の双方をモニタリングした。本発明者らはアルダラの局所投与による前処置が、MVATG9931単独で得られるTh2に基づくT細胞応答の数を有意に低下させることを見出した(図9)。
【0143】
最後に、ELISAにより、MUC1抗原に対する体液性応答の測定も行った。アルダラ(商標)+MVATG9931の組合せにより誘発された応答のタイプをより良く特性決定するために、IgGイソ型スイッチを分析した。MUC1特異的IgG1およびIgG2が検出された(図10)。本発明者らは、アルダラ(商標)の局所投与による前処理が、処置の効力に関与し得る典型的なTh1型応答(IgG1よりも高いIgG2a力価)を誘発することを見出した。
【0144】
C−結論および考察
これらの試験は、アルダラ(商標)の局所適用が、抗原に対するMVAに基づくワクチンの治療効力を向上させ得る(免疫応答を向上させ得る)ことを初めて実証する。
【図面の簡単な説明】
【0145】
【図1a】イミキモドの局所投与とMVATG8042の皮下注射の組合せの治療効果。図1b:実験1:2.105 TCI皮下、5.106 pfuの皮下注射3回、マウス15匹/群;図1c:実験2:2.105 TCI皮下、5.106または5.105 pfuの皮下注射3回、マウス15匹/群;図1d:実験3:2.105 TCI皮下、5.106の皮下注射3回、マウス15匹/群。
【図1b】イミキモドの局所投与とMVATG8042の皮下注射の組合せの治療効果。図1b:実験1:2.105 TCI皮下、5.106 pfuの皮下注射3回、マウス15匹/群;図1c:実験2:2.105 TCI皮下、5.106または5.105 pfuの皮下注射3回、マウス15匹/群;図1d:実験3:2.105 TCI皮下、5.106の皮下注射3回、マウス15匹/群。
【図1c】イミキモドの局所投与とMVATG8042の皮下注射の組合せの治療効果。図1b:実験1:2.105 TCI皮下、5.106 pfuの皮下注射3回、マウス15匹/群;図1c:実験2:2.105 TCI皮下、5.106または5.105 pfuの皮下注射3回、マウス15匹/群;図1d:実験3:2.105 TCI皮下、5.106の皮下注射3回、マウス15匹/群。
【図1d】イミキモドの局所投与とMVATG8042の皮下注射の組合せの治療効果。図1b:実験1:2.105 TCI皮下、5.106 pfuの皮下注射3回、マウス15匹/群;図1c:実験2:2.105 TCI皮下、5.106または5.105 pfuの皮下注射3回、マウス15匹/群;図1d:実験3:2.105 TCI皮下、5.106の皮下注射3回、マウス15匹/群。
【図2a】E7/E6特異的IFNγ分泌リンパ球の頻度の測定。図2b:E6/E7特異的INFγ/Elispot Th1応答。
【図2b】E7/E6特異的IFNγ分泌リンパ球の頻度の測定。図2b:E6/E7特異的INFγ/Elispot Th1応答。
【図3】IL−4 ELISPOTアッセイ。E7特異的IL−4/Elispot Th2応答。
【図4a】R9F特異的CD8+T細胞のフローサイトメトリー分析。Tet_R9F+E7特異的CD8+T細胞の頻度の測定。
【図4b】R9F特異的CD8+T細胞のフローサイトメトリー分析。Tet_R9F+E7特異的CD8+T細胞の頻度の測定。
【図5a】E7特異的体液性免疫応答。Th1/Th2イソ型IgGスイッチの測定。
【図5b】E7特異的体液性免疫応答。Th1/Th2イソ型IgGスイッチの測定。
【図6】MVA特異的融和抗体力価(NAT50)。
【図7】RenCa−Muc1腫瘍モデルにおけるアルダラ+MVATG9931の組合せの治療効果。
【図8】単鎖または長鎖エピトープに対するMUC1特異的Th1型T細胞応答に対するイミキモドの効果。
【図9】IL−4 elispotアッセイ:MUC−1特異的Th2型T細胞応答に対するイミキモドの効果。
【図10】MUC1特異的体液性免疫応答(イソ型スイッチ):MUC1特異的体液性応答に対するイミキモドの効果。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)in vivoにおいて少なくとも1つの異種ヌクレオチド配列、特に、抗原をコードする異種ヌクレオチド配列を発現する少なくとも1つの組換えウイルスベクターと、(ii)少なくとも1つの1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミン誘導体とを含有する、組換えウイルスワクチン。
【請求項2】
前記ウイルスベクターが、ポックスウイルスである、請求項1に記載の組換えウイルスワクチン。
【請求項3】
前記1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミン−誘導体が、下記一般式I〜V:
I−
【化1】
[式中、
R11は、直鎖または分枝アルキル、ヒドロキシアルキル、アシルオキシアルキル、ベンジル、(フェニル)エチルおよびフェニルからなる群から選択され、該ベンジル、(フェニル)エチルまたはフェニル置換基は、場合により、そのベンゼン環上で、C1−4アルキル部分、C1−4アルコキシ部分およびハロゲンからなる群から互いに独立に選択される1または2個の部分で置換されていてもよく(ただし、該ベンゼン環が2個の該部分で置換されている場合には、該部分はともに6個以下の炭素原子を含む);
R21は、水素、C1−8アルキル部分、ベンジル、(フェニル)エチルおよびフェニルからなる群から選択され、該ベンジル、(フェニル)エチルまたはフェニル置換基は、場合により、そのベンゼン環上で、C1−4アルキル部分、C1−4アルコキシ部分およびハロゲンからなる群から互いに独立に選択される1または2個の部分で置換されていてもよく(ただし、該ベンゼン環が2個の該部分で置換されている場合には、該部分は合わせて6個以下の炭素原子を含む);かつ
各R1は、水素、C1−4アルコキシ部分、ハロゲンおよびC1ー4アルキル部分からなる群から互いに独立に選択され、nは0〜2の整数である(ただし、nが2である場合、該R1基は合わせて6個以下の炭素原子を含む)]
で定義される化合物、またはその類似体、溶媒和物もしくは塩;
II−
【化2】
[式中、
R12は、直鎖または分枝C2−10アルケニルおよび置換された直鎖または分枝C2−10アルケニル(ここで、該置換基は直鎖または分枝C1−4アルキル部分およびC3ー6シクロアルキル部分からなる群から選択される);および直鎖または分枝C1ー4アルキル部分により置換されたC3ー6シクロアルキル部分からなる群から選択され;
R22は、水素、直鎖または分枝C1−8アルキル部分、ベンジル、(フェニル)エチルおよびフェニルからなる群から選択され、該ベンジル、(フェニル)エチルまたはフェニル置換基は、場合により、そのベンゼン環上で、直鎖または分枝C1−4アルキル部分、直鎖または分枝C1−4アルコキシ部分およびハロゲンからなる群から互いに独立に選択される1または2個の部分で置換されていてもよく(ただし、該ベンゼン環が2個のこのような部分で置換されている場合には、該部分は合わせて6個以下の炭素原子を含む);かつ
各R2は、直鎖または分枝C1−4アルコキシ部分、ハロゲンおよび直鎖または分枝C1ー4アルキル部分からなる群から互いに独立に選択され、nは0〜2の整数である(ただし、nが2である場合、該R2基は合わせて6個以下の炭素原子を含む)]
で定義される化合物、またはその類似体、溶媒和物もしくは塩;
III−
【化3】
[式中、
R23は、水素、直鎖または分枝C1−8アルキル部分、ベンジル、(フェニル)エチルおよびフェニルからなる群から選択され、該ベンジル、(フェニル)エチルまたはフェニル置換基は、場合により、そのベンゼン環上で、直鎖または分枝C1−4アルキル部分、直鎖または分枝C1−4アルコキシ部分およびハロゲンからなる群から互いに独立に選択される1または2個の部分で置換されていてもよく(ただし、該ベンゼン環が2個のこのような部分で置換されている場合には、該部分は合わせて6個以下の炭素原子を含む);かつ
各R3は、直鎖または分枝C1−4アルコキシ部分、ハロゲンおよび直鎖または分枝C1ー4アルキル部分からなる群から互いに独立に選択され、nは0〜2の整数である(ただし、nが2である場合、該R3基は合わせて6個以下の炭素原子を含む)]
で定義される化合物、またはその類似体、溶媒和物もしくは塩;
IV−
【化4】
[式中、
R14は−CHR34R44であり、ここで、R44は水素または炭素−炭素結合であり、ただし、R44が水素である場合、R34はC1−4アルコキシ部分、C1ー4ヒドロキシアルコキシ部分、C2−101−アルキニル部分、テトラヒドロピラニル、アルコキシアルキル(ここで、該アルコキシ部分は1〜4個の炭素原子を含み、該アルキル部分は1〜4個の炭素原子を含む)、2−、3−、または4−ピリジルであり、さらにただし、R44が炭素−炭素結合である場合、R44およびR34は一緒になって、ヒドロキシおよびC1−4ヒドロキシアルキル部分からなる群から互いに独立に選択される1以上の置換基で場合により置換されていてもよいテトラヒドロフラニル基を形成する);
R24は水素、C1−4アルキル、フェニルからなる群から選択され、該フェニルは場合により、直鎖または分枝C1−4アルキル部分、直鎖または分枝C1−4アルコキシ部分およびハロゲンからなる群から互いに独立に選択される1または2個の部分で置換されていてもよく;かつ
R4は、水素、直鎖または分枝C1ー4アルコキシ部分、ハロゲンおよび直鎖または分枝C1ー4アルキル部分からなる群から選択される]
で定義される化合物、またはその類似体、溶媒和物もしくは塩;
V−
【化5】
[式中、
R15は、水素;直鎖または分枝C1ー10アルキル部分および置換された直鎖または分枝C1−10アルキル部分(ここで、該置換基はC3ー6シクロアルキルおよび直鎖または分枝C1ー4アルキル部分で置換されたC3ー6シクロアルキルからなる群から選択される);直鎖または分枝C2ー10アルケニルおよび置換された直鎖または分枝C2ー10アルケニル部分(ここで、該置換基はC3−6シクロアルキルおよび直鎖または分枝C1−4アルキル部分で置換されたC3ー6シクロアルキルからなる群から選択される);C1−6ヒドロキシアルキル;アルコキシアルキル(ここで、該アルコキシ部分は1〜約4個の炭素原子を含み、該アルキル部分は1〜約6個の炭素原子を含む);アシルオキシアルキル(ここで、該アシルオキシ部分は2〜約4個の炭素原子のアルカノイルオキシまたはベンゾイルオキシであり、該アルキル部分は1〜約6個の炭素原子を含む);ベンジル;(フェニル)エチル;およびフェニル;(該ベンジル、(フェニル)エチルまたはフェニル置換基は、場合により、そのベンゼン環上で、C1−4アルキル部分、C1−4アルコキシ部分およびハロゲンからなる群から互いに独立に選択される1または2個の部分で置換されていてもよく、ただし、該ベンゼン環が2個の該部分で置換されている場合には、該部分は合わせて6個以下の炭素原子を含む)からなる群から選択され;
R25は、
【化6】
{式中、
R35は、C1ー4アルコキシ部分、アルコキシアルキル(ここで、該アルコキシ部分は1〜約4個の炭素原子を含み、該アルキル部分は1〜約4個の炭素原子を含む);C1ー4ハロアルキル部分;アルキルアミド(ここで、該アルキル基は1〜約4個の炭素原子を含む);アミノ;C1−4アルキルまたはC1ー4ヒドロキシアルキルで置換されたアミノ;アジド;C11−4アルキルチオからなる群から選択され;
R55およびR45は、水素、C1−4アルキル部分、フェニル(ここで、該フェニルは、場合により、直鎖または分枝C1ー4アルキル部分、直鎖または分枝C1−4アルコキシ部分からなる群から互いに独立に選択される1または2個の分で置換されていてもよい);およびハロゲンからなる群から互いに独立に選択される}であり;かつ
R5は、水素、直鎖または分枝C1−4アルコキシ部分、ハロゲンおよび直鎖または分枝C1ー4アルキル含有部分からなる群から選択される]
で定義される化合物、またはその類似体、溶媒和物もしくは塩
である、請求項1または2に記載の組換えウイルスワクチン。
【請求項4】
前記1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミン誘導体が下記一般式VI:
【化7】
[式中、
Rtは、水素、直鎖または分枝C1−4アルコキシ部分、ハロゲンおよび直鎖または分枝C1−4アルキルからなる群から選択され;
Ruは2−メチルプロピルまたは2−ヒドロキシ−2−メチルプロピルであり;かつ
Rvは水素、C1−6アルキルまたはアルコキシアルキル(ここで、該アルコキシ部分は1〜約4個の炭素原子を含み、該アルキル部分は1〜約4個の炭素原子を含む)である]
により定義される化合物、またはその類似体、溶媒和物もしくは塩である、請求項1または2に記載の組換えウイルスワクチン。
【請求項1】
(i)in vivoにおいて少なくとも1つの異種ヌクレオチド配列、特に、抗原をコードする異種ヌクレオチド配列を発現する少なくとも1つの組換えウイルスベクターと、(ii)少なくとも1つの1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミン誘導体とを含有する、組換えウイルスワクチン。
【請求項2】
前記ウイルスベクターが、ポックスウイルスである、請求項1に記載の組換えウイルスワクチン。
【請求項3】
前記1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミン−誘導体が、下記一般式I〜V:
I−
【化1】
[式中、
R11は、直鎖または分枝アルキル、ヒドロキシアルキル、アシルオキシアルキル、ベンジル、(フェニル)エチルおよびフェニルからなる群から選択され、該ベンジル、(フェニル)エチルまたはフェニル置換基は、場合により、そのベンゼン環上で、C1−4アルキル部分、C1−4アルコキシ部分およびハロゲンからなる群から互いに独立に選択される1または2個の部分で置換されていてもよく(ただし、該ベンゼン環が2個の該部分で置換されている場合には、該部分はともに6個以下の炭素原子を含む);
R21は、水素、C1−8アルキル部分、ベンジル、(フェニル)エチルおよびフェニルからなる群から選択され、該ベンジル、(フェニル)エチルまたはフェニル置換基は、場合により、そのベンゼン環上で、C1−4アルキル部分、C1−4アルコキシ部分およびハロゲンからなる群から互いに独立に選択される1または2個の部分で置換されていてもよく(ただし、該ベンゼン環が2個の該部分で置換されている場合には、該部分は合わせて6個以下の炭素原子を含む);かつ
各R1は、水素、C1−4アルコキシ部分、ハロゲンおよびC1ー4アルキル部分からなる群から互いに独立に選択され、nは0〜2の整数である(ただし、nが2である場合、該R1基は合わせて6個以下の炭素原子を含む)]
で定義される化合物、またはその類似体、溶媒和物もしくは塩;
II−
【化2】
[式中、
R12は、直鎖または分枝C2−10アルケニルおよび置換された直鎖または分枝C2−10アルケニル(ここで、該置換基は直鎖または分枝C1−4アルキル部分およびC3ー6シクロアルキル部分からなる群から選択される);および直鎖または分枝C1ー4アルキル部分により置換されたC3ー6シクロアルキル部分からなる群から選択され;
R22は、水素、直鎖または分枝C1−8アルキル部分、ベンジル、(フェニル)エチルおよびフェニルからなる群から選択され、該ベンジル、(フェニル)エチルまたはフェニル置換基は、場合により、そのベンゼン環上で、直鎖または分枝C1−4アルキル部分、直鎖または分枝C1−4アルコキシ部分およびハロゲンからなる群から互いに独立に選択される1または2個の部分で置換されていてもよく(ただし、該ベンゼン環が2個のこのような部分で置換されている場合には、該部分は合わせて6個以下の炭素原子を含む);かつ
各R2は、直鎖または分枝C1−4アルコキシ部分、ハロゲンおよび直鎖または分枝C1ー4アルキル部分からなる群から互いに独立に選択され、nは0〜2の整数である(ただし、nが2である場合、該R2基は合わせて6個以下の炭素原子を含む)]
で定義される化合物、またはその類似体、溶媒和物もしくは塩;
III−
【化3】
[式中、
R23は、水素、直鎖または分枝C1−8アルキル部分、ベンジル、(フェニル)エチルおよびフェニルからなる群から選択され、該ベンジル、(フェニル)エチルまたはフェニル置換基は、場合により、そのベンゼン環上で、直鎖または分枝C1−4アルキル部分、直鎖または分枝C1−4アルコキシ部分およびハロゲンからなる群から互いに独立に選択される1または2個の部分で置換されていてもよく(ただし、該ベンゼン環が2個のこのような部分で置換されている場合には、該部分は合わせて6個以下の炭素原子を含む);かつ
各R3は、直鎖または分枝C1−4アルコキシ部分、ハロゲンおよび直鎖または分枝C1ー4アルキル部分からなる群から互いに独立に選択され、nは0〜2の整数である(ただし、nが2である場合、該R3基は合わせて6個以下の炭素原子を含む)]
で定義される化合物、またはその類似体、溶媒和物もしくは塩;
IV−
【化4】
[式中、
R14は−CHR34R44であり、ここで、R44は水素または炭素−炭素結合であり、ただし、R44が水素である場合、R34はC1−4アルコキシ部分、C1ー4ヒドロキシアルコキシ部分、C2−101−アルキニル部分、テトラヒドロピラニル、アルコキシアルキル(ここで、該アルコキシ部分は1〜4個の炭素原子を含み、該アルキル部分は1〜4個の炭素原子を含む)、2−、3−、または4−ピリジルであり、さらにただし、R44が炭素−炭素結合である場合、R44およびR34は一緒になって、ヒドロキシおよびC1−4ヒドロキシアルキル部分からなる群から互いに独立に選択される1以上の置換基で場合により置換されていてもよいテトラヒドロフラニル基を形成する);
R24は水素、C1−4アルキル、フェニルからなる群から選択され、該フェニルは場合により、直鎖または分枝C1−4アルキル部分、直鎖または分枝C1−4アルコキシ部分およびハロゲンからなる群から互いに独立に選択される1または2個の部分で置換されていてもよく;かつ
R4は、水素、直鎖または分枝C1ー4アルコキシ部分、ハロゲンおよび直鎖または分枝C1ー4アルキル部分からなる群から選択される]
で定義される化合物、またはその類似体、溶媒和物もしくは塩;
V−
【化5】
[式中、
R15は、水素;直鎖または分枝C1ー10アルキル部分および置換された直鎖または分枝C1−10アルキル部分(ここで、該置換基はC3ー6シクロアルキルおよび直鎖または分枝C1ー4アルキル部分で置換されたC3ー6シクロアルキルからなる群から選択される);直鎖または分枝C2ー10アルケニルおよび置換された直鎖または分枝C2ー10アルケニル部分(ここで、該置換基はC3−6シクロアルキルおよび直鎖または分枝C1−4アルキル部分で置換されたC3ー6シクロアルキルからなる群から選択される);C1−6ヒドロキシアルキル;アルコキシアルキル(ここで、該アルコキシ部分は1〜約4個の炭素原子を含み、該アルキル部分は1〜約6個の炭素原子を含む);アシルオキシアルキル(ここで、該アシルオキシ部分は2〜約4個の炭素原子のアルカノイルオキシまたはベンゾイルオキシであり、該アルキル部分は1〜約6個の炭素原子を含む);ベンジル;(フェニル)エチル;およびフェニル;(該ベンジル、(フェニル)エチルまたはフェニル置換基は、場合により、そのベンゼン環上で、C1−4アルキル部分、C1−4アルコキシ部分およびハロゲンからなる群から互いに独立に選択される1または2個の部分で置換されていてもよく、ただし、該ベンゼン環が2個の該部分で置換されている場合には、該部分は合わせて6個以下の炭素原子を含む)からなる群から選択され;
R25は、
【化6】
{式中、
R35は、C1ー4アルコキシ部分、アルコキシアルキル(ここで、該アルコキシ部分は1〜約4個の炭素原子を含み、該アルキル部分は1〜約4個の炭素原子を含む);C1ー4ハロアルキル部分;アルキルアミド(ここで、該アルキル基は1〜約4個の炭素原子を含む);アミノ;C1−4アルキルまたはC1ー4ヒドロキシアルキルで置換されたアミノ;アジド;C11−4アルキルチオからなる群から選択され;
R55およびR45は、水素、C1−4アルキル部分、フェニル(ここで、該フェニルは、場合により、直鎖または分枝C1ー4アルキル部分、直鎖または分枝C1−4アルコキシ部分からなる群から互いに独立に選択される1または2個の分で置換されていてもよい);およびハロゲンからなる群から互いに独立に選択される}であり;かつ
R5は、水素、直鎖または分枝C1−4アルコキシ部分、ハロゲンおよび直鎖または分枝C1ー4アルキル含有部分からなる群から選択される]
で定義される化合物、またはその類似体、溶媒和物もしくは塩
である、請求項1または2に記載の組換えウイルスワクチン。
【請求項4】
前記1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミン誘導体が下記一般式VI:
【化7】
[式中、
Rtは、水素、直鎖または分枝C1−4アルコキシ部分、ハロゲンおよび直鎖または分枝C1−4アルキルからなる群から選択され;
Ruは2−メチルプロピルまたは2−ヒドロキシ−2−メチルプロピルであり;かつ
Rvは水素、C1−6アルキルまたはアルコキシアルキル(ここで、該アルコキシ部分は1〜約4個の炭素原子を含み、該アルキル部分は1〜約4個の炭素原子を含む)である]
により定義される化合物、またはその類似体、溶媒和物もしくは塩である、請求項1または2に記載の組換えウイルスワクチン。
【図1a】
【図1b】
【図1c】
【図1d】
【図2a】
【図2b】
【図3】
【図4a】
【図4b】
【図5a】
【図5b】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図1b】
【図1c】
【図1d】
【図2a】
【図2b】
【図3】
【図4a】
【図4b】
【図5a】
【図5b】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公表番号】特表2009−541236(P2009−541236A)
【公表日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−515748(P2009−515748)
【出願日】平成19年6月15日(2007.6.15)
【国際出願番号】PCT/EP2007/005303
【国際公開番号】WO2007/147529
【国際公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(599082883)トランジェーヌ、ソシエテ、アノニム (32)
【氏名又は名称原語表記】TRANSGENE S.A.
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年6月15日(2007.6.15)
【国際出願番号】PCT/EP2007/005303
【国際公開番号】WO2007/147529
【国際公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(599082883)トランジェーヌ、ソシエテ、アノニム (32)
【氏名又は名称原語表記】TRANSGENE S.A.
【Fターム(参考)】
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