説明

組換え微生物によるフラボノイドの生成

微生物宿主におけるフラボノイドの生成のための方法および組成物が提供される。組成物は、フェニルプロパノイドの種々のフラボノイドへの変換のための生合成経路中の1以上のステップに関与する酵素をコードする遺伝子のセットを含む。方法は、遺伝子のセットを異種宿主細胞に導入して、前記遺伝子の発現が酵素の生成を生じるよう、適当な培地中で細胞を増殖させるステップを含む。特的の基質(複数も可)を形質転換細胞に供給すると、酵素が基質に作用して所望のフラボノイドを生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2004年7月10日に出願された米国仮出願第60/586,903号に対する優先権を主張し、この仮出願の開示を本明細書中に引用により組み込む。
本発明は、国立科学基金(the National Science Foundation)からの登録番号BES-0331404下の政府基金により支援された。当該政府が本発明の所定の権利を有する。
【背景技術】
【0002】
フラボノイドは植物ポリフェノール物質の分岐ファミリーである。フラボノイド分子の基本構造は、A、BおよびC環と記載される3つのフェノール環から成る(図1)。これらは、フェニルアラニンと酢酸から合成される代謝物の1化合物から誘導される。これらの化合物には、カルコン、フラバノン、フラボン、フラボノール、フラバン-3-オール、フラバン-4-オール、ジヒドロフラボノール、アントシアニン、プロアントシアニジンおよび濃縮タンニン等の殆どの高等植物に見出されるいくつかの主要なサブグループが含まれる。フラボノイドは植物と微生物の間のシグナリング、いくつかの種の雄の生殖力、抗微生物剤等の防御およびUV保護において重要な役割を有する(Winkel-Shirley, 2001, Plant Physiol., 126(2): 485-493)。フラボノイドに関する一般的な生合成経路を図1に示す。
【0003】
フラバノンは、広範な種々のフラボノイドの共通のプレカーサーである。その立証されている抗酸化特性および広範な一連の人の病理学的疾患に対する健康上の利益により、この普遍的分野でかなりの研究的関心が生じている。
フラボンは、ヘテロ環ピロンにより連結される2つのベンゼン環から成る(Middleton等、Pharmacol. Rev. 52:673-751, 2000)。クリシン、アピゲニンおよびルテオリン等のフラボンは、抗不安効果(Viola等、1995, Planta Med., 61:213-216; Wolfman等、Pharmacol. Biochem.47:1-4,1994; Wolfman等、1995, J. Neurochem.65;S167)、虚血後の心機能の改善(Lebeau, 2001, Bioorg.Med.Chem.Lett. 11:23-27; Rump等、1994, Gen.Pharmacol.25: 1137-1142; Schussler等、1995, Gen.Pharmacol.26:1565-1570)および乳癌細胞培養物における抗エストロゲン効果(Miksicek, 1995. P.Soc.Exp.Biol.Med.208:44-50)を含む一連の薬理学的特性を示す。フラボンは、パセリ、タイム、セロリおよび赤ピーマンを含む比較的少数の食品群にのみ見出される(Ross等、2002, Annu.Rev.Nutr.22: 19-34)。
【0004】
フラボンおよびフラバノンの生合成は、ケイ皮酸のp-クマリン酸への、P450モノオキシゲナーゼ、シナメート4-ヒドロキシラーゼ(C4H)による変換で始まる。p-クマリン酸は次いで4-クマロイル-CoAに、4-クマロイル;CoAリガーゼ(4CL)により変換される。次に、カルコン・シンターゼ(CHS)が、4-クマロイル-CoAの3分子のマロニル-CoAとの、テトラヒドロキシカルコンを形成する縮合反応を触媒する。この反応後、カルコンイソメラーゼ(CHI)が、テトラヒドロキシカルコンの(2S)-フラバノン、これはフラボンを含む多くの重要な下流フラボノイドの分岐点プレカーサーである、への構造特異的異性化反応を遂行する。多くの場合に、膜結合シトクロムP450-モノオキシゲナーゼ、フラボン・シンターゼII(FSII)が、(2S)-フラバノンからのフラボンの生合成を触媒する。しかし、セリ科(Apiceae)の所定の種では、この反応は溶解性フラボン・シンターゼI(FSI)により行われる(図1)(Lukacin等、2001, Arch. Biochem. Biophys. 393: 177-83; Martens等、2001, Phytochemistry 58: 43-46)。
【0005】
多くのフラボノイド分子の中で、フラボノールが最も古くそして広く普及していると考えられる(Stafford, 1991)。近年、その抗酸化活性が、酸化ストレス関連性慢性疾患の予防におけるその可能性のために、多くの注意を惹きつけている。この点、アポトーシスの誘導、突然変異誘発、ヒスタミン放出阻害および血管形成阻害等のような分野で、フラボノールの多様な生物学的効果が多くの研究により明らかにされている(Formica等、1995; Lambert等、2005; Lamson等、2000)。
フラボノールの生合成では、(2S)-フラバノンは前記のように形成される。次いで天然(2R,3R)-トランス-ジヒドロフラボノールが、(2S)-フラバノンから、フラバノン3β-ヒドロキシラーゼ(FHT)の活性により形成される。最終的に、フラボノール・シンターゼ(FLS)、2-オキソグルタレート-依存性ジオキシゲナーゼがジヒドロフラボノールのフラボノールへの脱飽和を触媒する。
【0006】
植物中の天然色素の中で、アントシアニンは殆どの果物、花弁および葉に見出される最大の水溶性群である。その色は、サーモンピンク、深紅色およびマゼンタからスミレ色、紫および青に及ぶ。これらの偏在化合物は、それらが単純なものも複雑なものも含めて多くの構造形態、これらはその安定性および色彩に重大な影響を有する生理学的調節および化学的変更により制御される、で存在し得る点で魅力的である。アントシアニンは、ポリネータおよびシード・ディスパーサの招き入れおよびUV保護等の重要な役割を果たす。これらの明着色性のアントシアンの実際適用における最初の関心は、それらが人の健康に明らかな悪影響を全く有さないために、禁止色素の代替物としてのその可能性から生じた(Brouillard, 1982, 食品着色料としてのアントシアニン、Academic Press, Inc, New Yor, NY)。しかし近年、その普遍的な抗酸化特性(Kahkonen等、2003, J. Argic. Food Chem., 51: 628-633; Noda等、2000, トキシコロジー、148: 119-123; Satue-Gracia等、1997, J. Agric. Food Chem., 145: 3362-3367)、および、果物や野菜に富む食餌の消費と癌や心血管疾患を含む慢性疾患の低リスクの間の一貫した関連性(Hannum, 2004, Crit. Rev. Food Sci. Nutr. 44: 1-17; Middleton等、2000, Pharmacolo. Rev., 52:673-751)のために、(アントシアニンを含む)フラボノイド由来の植物生成物に対して多くの関心が向けられている。結果として、アントシアニンは、エスケリキア・コリ(Escherichia coli.)等の十分に特徴付けられた微生物宿主からのファーメンテーション(fermentation)生成のための魅力的な標的となりつつある。
【0007】
アントシアニジン(アントシアニンのアグリコン形態)の6つの主要なクラスが存在する:ペラルゴニジン、シアニジン、デルフィニジン、ペオニジン、マルビジンおよびペツニジン。アントシアニンの基本構造は、2-フェニルベンゾピリリウムまたはフラビリウム塩のポリヒドロキシおよびポリメトキシ誘導体のグリコシル化形態である。アントシアニンの生合成は、カルコン→フラバノン→ジヒドロフラボノール→アントシアニジン→アントシアニンの経路を経て進行する(図1)。フラバノンは前記のように合成される。ジヒドロフラボノールが次いで、フラバノンからフラバノン3-ヒドロキシラーゼ(FHT)の活性により形成される。次なるステップで、ジヒドロフラボノール4-レダクターゼ(DFR)により無色のジヒドロフラボノール、ジヒドロケンペロール(DHK)、ジヒドロクエルセチン(DHQ)またはジヒドロミリセチン(DHM)いずれかが、その対応する3,4-シス-ロイコアントシアニジンへNADPH依存的反応で還元される。DFRの3つの基質は非常に構造がよく似ており、この酵素反応を受けないβフェニル環上の付加的ヒドロキシル基の数のみ異なる。現在まで研究されている(全てではないが)多くの植物種由来のDFRは、全3つの基質を利用できる。無色の不安定なロイコアントシアニジンは、前記生合成経路における最初の着色代謝物、アントシアニジンの直接のプレカーサーである。この2-オキソグルタレート依存的反応は、アントシアニジン・シンターゼ(ANS)により触媒される。アントシアニジンはその不安定さのために植物組織では殆ど検出されない。代わりにアントシアニジン3-グルコシドが、植物で検出される、この経路からの最初の安定な着色代謝物であり、これは、酵素UDP-グルコース:フラボノイド3-O-グルコシルトランスフェラーゼ(3-GT)の活性によりアントシアニジンから誘導される。前記アントシアニン生合成経路に関与する多数の酵素のcDNA配列が、多様な植物種から現在入手できる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
非植物システムでフラボノイドを合成する試みがなされてきたが、満足のいくシステムは開発されていない。近年、Hwang等は植物特異的フラバノンの合成を、初めて、フェニルアラニンをテトラヒドロキシカルコンへ変換する異種源由来の3つの遺伝子をイー.コリで発現することにより確認した。しかし最終生成物(フラバノン)は、pHを9に上げて、テトラヒドロキシカルコンを天然フラバノン(2S)-ナリンゲニンおよびその非天然エピマー(2R)-ナリンゲニンへ自発的に変換することにより生成された(Hwang等、2003, Appl. Environ. Microbiol. 69: 2699-2706)。さらに現在まで、アントシアニンに関して微生物または酵母生成は示されていない。
つまり、異種システムでフラボノイドを生成するためのシステムの必要性の現実化および種々の植物由来のフラボノイドの生合成経路に関与する多数の酵素のcDNAの解明にも関わらず、微生物システムにおける種々のフラボノイドの合成のための適切なシステムおよび方法は開発されていない。それゆえ、これらの化合物に関して増加している必要性を満たし得る有用量のフラボノイドを生成可能な、化学変換を必要としない方法およびシステムの開発が今なお必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明では、微生物宿主中でのフラボノイドの生成のための方法および組成物が提供される。この方法は、遺伝子のセットを異種宿主細胞に導入し、この遺伝子の発現が酵素の生成を生じるように、この細胞を適当な培地中で増殖させるステップを含む。特定の基質(複数も可)を形質転換された細胞に与えると、酵素がこの基質(複数も可)に作用して、所望のフラボノイドが生成される。
【0010】
一態様では、フェニルプロパノイドの一般的カテゴリーに属する基質を変換してフラバノンの生成を生じ得る酵素をコードする遺伝子のセットが提供される。
他の態様では、フラバノンを種々の他のフラボノイドに変換し得る酵素をコードする遺伝子のセットが提供される。これらフラボノイドには、フラボン、フラバン-3-オール、フラバン-4-オール、フラボノールおよびアントシアニン、および前記化合物の合成における中間体が含まれる。そのような中間体には、ジヒドロフラボノール、ロイコアントシアニジンおよびアントシアニジンが含まれる。
他の態様では、フェニルプロパノイドを、フラバノン、フラボン、フラボノール、ジヒドロフラボノール、フラバン-3-オール、フラバン-4-オール、アントシアニンおよびアントシアニジンから成る群から選択されるフラボノイドに変換し得る酵素をコードする遺伝子のセットが提供される。
【0011】
他の態様では、種々のフラボノイドの生合成経路のための酵素をコードする遺伝子を含んでいる遺伝子のセットで形質転換された微生物宿主中でのフラボノイドの生成のための方法が提供される。この方法は、微生物宿主細胞を遺伝子のセットで形質転換し、当該宿主細胞を適当な増殖培地中で培養して遺伝子を発現させ、遺伝子の発現により生成される酵素が、所望のフラボノイドの生成をもたらす基質に作用し得るように、適当な基質を宿主細胞に供給するステップを含む。生成されたフラボノイドは次いで通常の方法により精製できる。
【0012】
他の態様では、本明細書に記載するような遺伝子のセットが導入された宿主細胞が提供される。かかる遺伝子のセットは、特定の基質からの種々のフラボノイドの合成のための酵素をコードする。これらの基質が、導入遺伝子を発現している宿主細胞に提供されると、所望のフラボノイドの合成が起こる。当該フラボノイドは次いで通常の方法により単離できる。
【0013】
本発明により、基質が宿主細胞に提供されると所望のフラボノイドの合成が当該宿主細胞中で行われるように、異種遺伝子のセットを宿主細胞に導入することによる、非植物宿主細胞中でのフラボノイドの生成のための組成物および方法が提供される。遺伝子のセットは、特定の基質の所望のフラボノイドへの変換のために必要とされる酵素をコードする遺伝子を含む。
図1は、種々のフラボノイドの生合成のための経路を示す。遺伝子のセットは、宿主細胞に提供される基質および所望される最終生成物フラボノイドに基づき選択できる。
フラボノイドの生成のために最も便利な宿主細胞には細菌および酵母が含まれる。この目的に適した細菌細胞の例はエスケリキア.コリである。本発明に適した酵母細胞の例は、サッカロマイセス・セレビジエ(Saccharomyces cerevisiae)である。
【0014】
細胞に遺伝子のセットを導入することは、1より多くの挿入遺伝子を含むベクターでの細胞の形質転換による、または各々1以上の挿入遺伝子を含む複数のベクターでの形質転換による等の、当該分野の専門家に公知の種々の方法を用いて達成できる。これに関し、微生物中で増幅でき、かつ1より多くの挿入遺伝子の発現のために適合されるベクターは、標準的な分子生物学的方法を用いて調製され得、または市場入手可能である。さらにそのようなベクターは、細菌または酵母等の種々の微生物に遺伝子の群を導入する際の使用のために調製され得る。かかるベクターはプラスミド、ファージミド、ファージまたはコスミドであってよい。
【0015】
一態様では、1より多くの挿入遺伝子を発現するのに適した市場入手可能なベクターを調製でき、細菌の形質転換のために使用できる。1より多くの遺伝子を発現するのに適したベクターの例はpRSFDuet(登録商標)ベクターであり、これは、遺伝子発現ベクターのDuetシリーズ〔Novagen(登録商標)より入手可能である〕の部分である。pRSFDuet(登録商標)ベクターは、各々T7プロモータにより駆動される2つのマルチプル・クローニングサイト(MCS)へのその個々のコーディング配列の挿入により、2つの標的タンパク質を同時発現するために設計される。pRSFDuet(登録商標)ベクターはカナマイシン耐性マーカーも運搬し、そして、各々カナマイシン耐性以外の抗生物質耐性マーカーを運搬するpETDuet(登録商標)-1、pACYCDuet(登録商標)-1、および/またはpCDFDuet(登録商標)-1と共に同じ細胞に形質転換されることができる。
【0016】
つまり、一態様では、植物特異的フラボノイドの生合成を指示するのに十分な遺伝子のセットをコードする1以上の核酸を含んでいる組成物を、遺伝子が挿入されたDuetシリーズのベクター等のベクターのいずれか1つまたは組合せを用いて、細胞に導入することができる。酵母細胞等の真核微生物における同様の適用に適したベクターの調製が、プロモーター、複製起点および選択可能なマーカー等の真核生物特異的ベクターコンポーネントを適当に適合させて、標準的な分子生物学的方法を用いてなされ得ることも、当業者により認識されるであろう。
【0017】
適当なベクター(複数も可)を用いる形質転換により細胞へ遺伝子の群を導入することは、周知の方法を用いて達成できる。例えば、酵母は、酢酸リチウム法を用いて、またはエレクトロポーレーションにより形質転換され得、他方、細菌の形質転換は、エレクトロポーレーション等の方法を用いて、または形質転換コンピテント細胞のベクター(複数も可)とのインキュベーションにより、または熱ショックにより達成され得る。
【0018】
宿主細胞への導入のための遺伝子のセットは、合成されるべきフラボノイドと、宿主に提供されるべき基質に依存して選択される。基質は、宿主細胞に輸送されるものである。例えば、フェニルプロパノイド・マロニルCoAからのアントシアニンの合成のためには、以下の酵素をコードしている遺伝子を宿主細胞へ導入する。:クマレート4-ヒドロキシラーゼ(C4H)、4-クマロイル-CoAリガーゼ(4CL)、カルコン・シンターゼ(CHS)、カルコン・イソメラーゼ(CHI)、フラボノイド3'5'ヒドロキシラーゼ(F3'5'H)、フラバノン3-ヒドロキシラーゼ(FHT)、ジヒドロフラボノール4-レダクターゼ(DFR)、アントシアニジン・シンターゼ(ANS)およびUDP-グルコース:フラボノイド3-O-グルコシルトランスフェラーゼ(3-GT)。アントシアニンの上流のフラボノイドの合成が所望される場合、所望のフラボノイドを基質として用いる酵素を前記カセットから排除できる。例えば、フラバノンのみの合成が所望される場合、C4H、4CL、CHSおよびCHIをコードしている遺伝子のみ前記カセットに含まれる必要がある。フラバン-3-オールが所望される場合、C4H、4CL、CHS、CHI、F3H、FHT、DFRおよびロイコアントシアニジン・レダクターゼ(LAR)をコードしている遺伝子のセットを使用できる。フラバノールが所望される場合、C4H、4CL、CHS、CHI、F3H、FHTおよびフラボノール・シンターゼ(FLS)をコードしている遺伝子のセットを使用できる。アントシアニジンが所望される場合、C4H、4CL、CHS、CHI、F3H、FHT、DFRおよびANSをコードしている遺伝子のセットを使用できる。図1に示す一般的な生合成経路から、所望のフラボノイドの合成のために必要とされる遺伝子のセットを同定でき、本明細書中に記載するように使用できる。宿主細胞に提供される基質が特別なフェニルプロパノイドである場合、当該基質の上流の酵素の遺伝子は使用される必要がない。フラボンが所望される場合、遺伝子のセットにはC4H、4CL、CHS、CHIおよびフラボン・シンターゼI(FSI)またはフラボン・シンターゼII(FSII)が含まれる。例えば、ナリンゲニン(フラナノン)を基質として使用する場合、および合成されるべき所望のフラボノイドがアントシアニンである場合、必要とされる遺伝子のセットはFHT、F3'5'H、DFR、ANSおよび3-GTである。
【0019】
提供される基質がケイ皮酸またはp-クマリン酸である場合、酵素の前記セットにはクマレート4-ヒドロキシラーゼ(C4H)および/または4クマロイル-CoAリガーゼ(4CL)も含まれ得る。
特定の酵素のための遺伝子は異なる植物源から得ることができる。そのような植物源には、限定するものではないが、ペトロセリナム・クリスパム(Petroselinum crispum)、アラビドプシス・サリアナ(Arabidopsis thaliana)、メディカゴ・サティバ(Medicago sativa)、ダイズ、ペチュニア、ペチュニア・ヒブリダ(Petunia hybrida)、カサランサス・ロゼウス(Catharanthus roseus)、キンギョソウ、マルス・ドメスティカ(Malus domestica)、リリウム・ヒブリダ(Lilium hybrida)、ニンジン、イポモエア・パープレア(Ipomoea purpurea)、イポモエア・ニル(Ipomoea nil)、アンスリアム・アンドレアナム(Anthurium andreanum)、ストロベリー、ローザ・ヒブリダ(Rosa hybrida)、ダイアンサス・グラチアノポリタナス(Dianthus gratianopolitanus)およびデスモジウム・アンシナタム(Desmodium uncianatum)が含まれる。
【0020】
一態様では、本発明により、微生物種中での、フラバノン基質からのジヒドロフラバノール、アントシアニジンおよびアントシアニンの生成であって、当該変換に関与する酵素をコードする遺伝子の異種発現によるもののための組成物および方法が提供される。この態様では、マルス・ドメスティカからのFHT(MdF3H)、ダイアンサス・グラチアノポリタナスまたはアンスリアム・アンドレアナムからのDFR(drf)、マルス・ドメスティカからのANS(MdANS)およびペチュニアxヒブリダからの3-GT(PGT8)をコードしている遺伝子の異種発現による、微生物種からのペラルゴニジン3-O-グルコシドの生成のための方法が提供される。我々は、これが微生物ファーメンテーションにより合成されるアントシアニン分子の最初の例であると信じる。酵素の同じセットを用いて他のアントシアニン、シアニジン3-O-グルコシドをプレカーサーフラバノン、エリオジクチオールから提供でき、また、他のアントシアニン、メリセチン-3-O-グルコシドをプレカーサーフラバノン、ペンタヒドロキシフラバノンから提供できる。これとは別に、先の遺伝子クラスター中の5番目の酵素、フラボノイド3'5'-ヒドロキシラーゼの挿入により、プレカーサーフラバノン、ナリンゲニンのシアニジン3-O-グルコシドおよびミリセチン3-O-グルコシド両者への変換が可能となる。
【0021】
他の態様では、前記方法は、フェニルプロパノイドのフラバノンへの変換のための遺伝子を導入することをさらに含む。前記経路のこの部分に必要とされる遺伝子は、酵素CH4、4CL、CHSおよびCHIをコードする。
他の態様では、前記遺伝子クラスターには、フェニルプロパノイドの、フラボン、フラバノン、フラバン-4-オール、ジヒドロフラボノール、フラボノール、ロイコアントシアニジン、フラバン-3-オール、アントシアニジンおよびアントシアニンを含む種々のフラボノイドまでの完全な経路のための酵素をコードする遺伝子が含まれる。
【0022】
本発明はまた、微生物種中でのジヒドロフラボノール、アントシアニジンおよびアントシアニンの生成のための組成物も提供する。例えば一態様では、フラバノン、ナリンゲニンを、最初の安定な着色されたアントシアニン、即ちペラルゴニジン3-O-グルコシドの一つに変換する下流のアントシアニン生合成経路の4つの遺伝子を発現する遺伝子のセットが提供される。一態様では、各遺伝子に関して異なるプロモーターおよびリボゾーム結合部位が用いられる。
【0023】
遺伝子の選択および組合せの一つの基準は、生成されるタンパク質の基質特異性である。例えば、ダイアンサス・グラチアノポリタナスからのDFRのための構造遺伝子は、基質ジヒドロケンペロールに関して高い効力のある酵素の発現を生じる。しかし、同様の基質特異性を有する酵素をコードする他のDFR遺伝子を、当該遺伝子が宿主中で発現される限り、同様に使用できる。例えば、ダイアンサス・カリョフィルス由来のDFR遺伝子も、ダイアンサス・グラチアノポリタナスからのDFRとの、基質特異性領域における高程度のアミノ酸相同性に基づき、使用してよい。同様に、他の源からの異なる遺伝子を、フラボノイドの生合成経路において使用できる。
【0024】
概して、各酵素クラス(フラバノン3-ヒドロキシラーゼ、フラボノイド3'5'-ヒドロキシラーゼ、ジヒドロフラバノール4-レダクターゼ、アントシアニジン・シンターゼおよび3-O-グルコシルトランスフェラーゼ)の1メンバーに関する遺伝子は、種々の植物源由来であってよい。しかし、当該遺伝子は宿主細胞で発現可能であるべきであり、その生成物は、フラバノンからアントシアニンの変換における1ステップ上流の生成物を含む基質特異性を有するべきである。
【0025】
本発明の利点には以下のものが含まれる。:イー.コリ/エス.セレビジエはその天然(野生型)形態ではフラボノイドを生成しない。結果として、所望のフラボノイドを、適当な遺伝子クラスター(代謝経路)をイー.コリ/エス.セレビジエ中で非常に純粋な形態で−これは、他のアントシアニン汚染がないことを意味する−発現させることにより生成できる。この利点により、植物からのフラボノイドの精製に伴うコストが劇的に減少する。他の利点は、イー.コリ/エス.セレビジエは迅速に複製し、植物よりもかなりよく増殖することである。この点で、特定のフラボノイド生合成経路を運搬している組換えイー.コリ/エス.セレビジエ株は植物よりも多くの生成物を生成し得る。さらなる他の利点は、微生物ファーメンテーションは、バイオテクノロジー工業において、確立された化学物質生成法であることである。これに関してはいくつかの理由があり、主要なものは、細菌および酵母が、非常によく確立された対照(ファーメンテーション)環境およびその遺伝子ツールボックスで、非常によく増殖できることである。それゆえ、組換え微生物からフラボノイドを生成するこの方法は、現在の技術よりもバイオテクノロジー工業にとってよりいっそう魅力的である。
本発明を以下の実施例によりさらに記載するが、これは説明のためのものであり、いかにしても限定を意図するものではない。
【0026】
[実施例1]
本実施例では、イー.コリ中での4つの植物由来遺伝子の発現によるアントシアニンの合成を記載する。これら遺伝子は下流アントシアニン生合成経路に関与する。下流アントシアニン生合成経路の4つの遺伝子であって、フラバノン、ナリンゲニンをこの経路の最初の着色されかつ安定なアントシアニンの一つ、即ちペラルゴニジン3-O-グルコシドに変換するものを含む人工遺伝子クラスターを構築した。マルス・ドメスティカからのFHT(MdF3H)、ダイアンサス・グラチアノポリタナスまたはアンスリアム・アンドレアナムからのDFR(dfr)、マルス・ドメスティカからのANS(MdANS)、およびペチュニアxヒブリダからの3-GT(PGT8)をコードしている遺伝子のセットを用いた。我々はまた、ペラルゴニジン3-O-グルコシドの生成のための出発基質として利用されたナリンゲニンが、細胞に対する有意な毒性効果を伴わずにイー.コリ中に効率的に輸送されたことをも示す。
【0027】
材料および方法
細菌株、プラスミドおよび培養条件。インビトロジェン(Invitrogen)から購入したイー.コリTOP10FをDNA操作のために用い、イー.コリJM109をシェーク-フラスコ試験のために用いた。プラスミドpTrcHis2-TOPO(インビトロジェン)およびpK184をクローニング目的のために用いた。カリステフィンクロライド(ペラルゴニジン3-O-グルコシドクロライド)標準は、エクストラシンターゼ(ExtraSynthase)(フランス)から購入した。
【0028】
DNA操作。全DNA操作は標準的な方法により行った。制限酵素、仔ウシ小腸由来アルカリホスファターゼおよびT4DNAリガーゼはニュー・イングランド・バイオラブズ(New England Biolabs)およびプロメガ(Promega)から購入した。全PCRおよびRT-PCR反応はロッシュの増幅高性能PCRシステムを用いて行った。マルス・ドメスティカからのMdF3HおよびMdANS cDNAはホンダチカコ博士〔日本の、果物および樹木科学に関する国立研究所(National Institute of Fruit and Tree Science)〕の好意で譲り受け、ダイアンサス・グラチアノポリタナスcDNAはキタノブヒロ博士〔日本の、農学科学に関する神奈川研究所(Kanagawa Institute of Agricultural Science)〕の好意で譲り受けた。ペチュニアxヒブリダからのPGT8 cDNAは、既に公開されたDNA配列(GenBank受託番号AB027454)に基づき我々の研究室で単離した。より詳しくは、キアゲン・RNイージー・ミニキット(Qiagen RNeasy MiniKit)をペチュニアxヒブリダ・カローラ(Petunia x hybrida corolla)からの全RNA単離のために用い、cDNA生成のための逆転写はスーパースクリプト(Super Script)II(インビトロジェン)を用いて行った。全ての場合に、PCRまたはRT-PCR増幅後、PCR中に導入された望ましくない変異の不在を直接ヌクレオチド配列決定により確認した。
【0029】
プラスミドpDGFA184の構築。プラスミドpDGFA184は、図2に示すごとく、クローン化される4つの遺伝子の各々につき2ラウンドのPCRにより構築した。PCRの第一ラウンドでは、前記4つの構造遺伝子の各々(開始コドンATGから終結コドンまで)を、提供されたプラスミドまたは完全RNAのいずれかから、既に記載されているように単離した。A-オーバーハングをTaqポリメラーゼ〔フィッシャー・サイエンティフィック(Fisher Scientific)〕を用いてPCR生成物に付加した後、各構造遺伝子を、強いtrcプロモーターの下、pTrcHis2-TOPOをクローニングベクターとして用いるT/Aクローニングにより、個々にクローン化した。trcプロモーターはハイブリッドのイー.コリプロモーターであり、これはイソプロピルβ-チオガラクトシダーゼ(IPTG)により誘導される。
【0030】
クローニングの第二ラウンドでは、まず、drf cDNAをtrcプロモータおよびリボゾーム結合部位(RBS)と共に、trcプロモータの上流に位置するベクターDNA領域にハイブリダイズしている開始プライマーと、終結コドンのすぐ後のベクターDNA領域にハイブリダイズしている終結プライマーを用いて、PCRにより単離した。2つの制限部位、Pst IおよびDra Iを開始プライマー中に導入し、Hind III制限部位を終結プライマー中に導入した。生じたPCRフラグメントをPst IおよびHind IIIで消化し、同じ酵素で消化された低コピー数のベクターpK184に挿入し、プラスミドpD184を得た。同様にPGT8 cDNAをtrcプロモーターおよびリボゾーム結合部位と共に、trcプロモーターの上流にハイブリダイズしており、かつ制限部位Pst Iを運搬している開始プライマーを、終結コドンのすぐ下流で消化され、制限部位Dra Iを含む終結プライマーと共に用いて、単離した。増幅されたPCRフラグメントをPst IおよびDra Iで消化し、同じ酵素で消化されたベクターpD184に挿入した。これにより、ベクターpDG184を構築した。次に、MdF3H cDNAをtrcプロモーターおよびリボゾーム結合部位と共に、制限部位Kpn IおよびEcoR Vを運搬している開始プライマーと制限部位Sal Iを運搬している終結プライマーを用いて単離した。生じたPCRフラグメントをKpn IおよびSal Iで消化し、同じ酵素で消化されたベクターpDG184に挿入し、ベクターpDGF184を得た。最後に、MdANS cDNAをtrcプロモーターおよびリボゾーム結合部位と共に、制限部位Kpn Iを運搬している開始プライマーと制限部位EcoR Vを運搬している終結プライマーを用いて単離した。生じたPCRフラグメントをKpn IおよびEcoR Vで消化し、同じ酵素で消化したベクターpDGF184に挿入した。これにより最終ベクターpDGFA184を得た。表1に、PCRの第一および第二ラウンドのために使用した全PCRプライマー配列を示す。
【0031】
【表1】

【0032】
ANS酵素活性のアッセイ。pTrcHis2-TOPOベクターにクローン化されたMdANS cDNAを運搬している組換えイー.コリTOP10Fを、アンピシリン(100μg/ml)を抗生物質選択のために使用したことを除いて先のセクションで記載したように増殖させ、誘導し、次いで溶解した。ANS反応のための標準混合物(200μl)を、10μlの15mMシス-またはトランス-ロイコアントシアニジン、4μlの500mMアスコルビン酸ナトリウム、2μlの500mM硫酸鉄および2μlの500mM2-オキソグルタル酸を100〜500μgの全タンパク質調製物と共に混合することにより調製した。反応混合物を30℃で30分間インキュベートし、次いで反応を400μlの酢酸エチルでの抽出により終結させた。抽出物を高速真空化により乾燥し、次いで3μlのジメチルスルホキシド-27μl水-1μl濃HCl中に溶解した。生成物をAgilent1100シリーズ装置と25℃に保った逆相ZORBAX SB C18カラム(4.6×150mm)を用いてHPLCにより分析した。生成された化合物を、アセトニトリル水勾配、これは共に0.1%蟻酸を含む、を1.0ml/分の流速で用いる溶離により分離した。HPLC条件は以下のごとくであった。:10〜40%アセトニトリル10分間および40〜10%アセトニトリルをさらに5分間。ペラルゴニジンおよびシアニジンのA515をモニターした。標準の基準サンプルに関するこれらHPLC条件下の保持時間は以下のごとくである。:ナリンゲニン:11.7;エリオジクチオール:10.7;シス-ジヒドロケンペロール:9.7;トランス-ジヒドロケンペロール:10.1;シス-ジヒドロケセルチン:8.3;トランス-ジヒドロケセルチン:8.4;ケンペロール:11.9;ケセルチン:10.8;シス-ロイコシアニジン:3.9;トランス-ロイコシアニジン:4.8;ペラルゴニジン:7.8;シアニジン:6.7;ペラルゴニジン3-O-グルコシド(カリステフィンクロライド):5.1;シアニジン-3-O-グルコシド(クロマニンクロライド):4.4。保持時間は、本実施例中に記載する逆相HPCL条件により算定した。
【0033】
組換えタンパク質の発現。プラスミドpDGFA184またはプラスミドpK184(対照)を保持しているイー.コリJM109を、50μg/mlのカナマイシンを含むルリア-ベルタニ(Luria-Bertani)(LB)液体培地(3ml)中で37℃で一晩振とうしつつ前-播種した。翌日、前播種物の1mlを200mlのLB液体培地(これも、カナマイシン50μg/mlを含む)に添加し、OD600が約0.6に達するまで振とうしつつ37℃で培養物を増殖させた。その時点でIPTGを当該培養物に1mMの終濃度まで添加し、培養物を室温で(振とうしつつ)5時間インキュベートした。細胞を遠心分離により回収し、洗浄バッファー(0.9%NaCl)で2回洗浄し、超音波バッファー(リン酸20mM、NaCl 50mM、ジチオトレイトール1mM、pH7.0)中に再懸濁した。細胞の破壊を超音波処理によりなし、可溶性タンパク質を遠心分離により得た。全タンパク質をBCAアッセイ〔ピアスケミカルズ(Pierce Chemicals)〕を用いて算定し、次いでドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)により標準的な方法に従い分析した。
【0034】
イー.コリシェーク-フラスコ試験。プラスミドpDGFA184を運搬している組換えイー.コリ株JM109から生成された化合物の同定を、文献(Hwang等、2003, Appl.Environ Microbiol., 69: 2699-2706)に既に記載されている方法と同様の方法で行った。より詳しくは、50μg/mlのカナマイシンを含む3mlのルリア-ブロスリッチ培地を組換え株と共にインキュベートし、強く振とうしつつ37℃でインキュベートした。翌日、50μg/mlのカナマイシンを含む200mlのLBに一晩培養物の1mlを播種し、次いで当該培養物を37℃で300rpmで強く振とうしつつ約0.6のOD600までインキュベートした。次いで、インデューサーIPTGを当該培養物に1mMの終濃度まで添加した。封入体の形成を避けるために、前記インデューサーの添加後、培養物を室温で強く振とうしつつ一晩インキュベートした。翌日、細胞を遠心分離により回収し、M9最少培地で2回洗浄した。ペレットを次いで、50μg/mlのカナマイシン、1mMのIPTGおよび種々の濃度のナリンゲニンを含む200mlのM9最少培地中に再懸濁した。増殖曲線を評価するために、後期定常期に達するまで培養物を室温で強く振とうしつつ増殖させた。フラボノイド抽出試験のために、培養物を室温で65時間再び水平に強く振とうしつつ増殖させた。
【0035】
フラボノイドの抽出。シェークフラスコ試験を終えた後、上清を細胞から遠心分離により分離した。等体積(約200ml)のイソアミルアルコールまたは酢酸エチルのいずれかを2時間室温で用いてフラボノイドを上清から抽出した。有機層を凍結乾燥により乾燥状態へ蒸発させ、生じた橙色粉末を2mlのメタノールに溶解した。生成された化合物を、逆相YMC-ODS-A312カラム(直径、6mm3×150mm)を用い、CH3OH-CH3COOH-H2O(20:15:65)を溶離剤として1.0ml/分の流速で40℃で用いるHPLCにより分離した。アントシアニンを520nmでのアブソーバンスをモニターすることにより検出および定量した。量的校正曲線を標準のアントシアニン(カリステフィンクロライド)を用いて得た。
【0036】
LC-MS。LC-MS分析を、テルモ・フィニガン・LCQ・アドバンテジ(Thermo Finnigan LCQ Advantage)と、HPLC分析のために先で用いたものと同じYMC-ODS-A312カラムを用いて行った。乾燥されたファーメンテーション抽出物または標準の粉末をまずメタノールに溶解し、次いで、LC/MSへの注入前に、0.1%の蟻酸および80%のアセトニトリルを含む水で希釈した。分離を、アセトニトリル-水勾配であって共に0.1%の蟻酸を含むものを0.2ml/分の流速で用いて行った。システムにおける勾配プログラムは以下のごとくである。:0-20分、11.75%-18.5%B;20-25分、18.5%-20.75%B;20-35分、20.75%-23%B;35-42分、23%B;42-43分、23%-50%B;43-48分、50%B;48-52分、50%-95%B;52-109分、95%B;109-110分、95%-11.75%B;110-120分、11.75%B。MS/MSは、m/z 433に関して35%の相対エネルギーで行った。サンプルはフラグメントをm/zで用いて定量した。
【0037】
結果
培地中のナリンゲニンの存在によりイー.コリの増殖低下が生じる
M9最少培地(50μg/mlのカナマイシン)中で、異なる濃度のナリンゲニン(0.1mM、0.3mM、0.5mMおよび1mM)の存在下、プラスミドpK184を運搬しているJM109の培養物をインキュベートすることにより、イー.コリの増殖におけるナリンゲニンの影響を試験した。図3に示すように、ナリンゲニンはイー.コリに特異的な増殖速度に阻害的効果を有する。:最大の特異的増殖速度は、ナリンゲニンを含まないM9最少培地中で増殖されたイー.コリJM109についての 0.20h-1から1mMのナリンゲニンの存在下に増殖されたJM109についての0.14h-1へ低下した。同様の低下が最終的な細胞数に関して観察された。:13時間の増殖後、OD600は対照試験(ナリンゲニンなし)につき1.2に達し、一方1mMのナリンゲニンの存在下で増殖されたイー.コリについては1.0に低下した。アブソーバンスのこの低下は最終乾燥細胞重量濃度の低下にも翻訳でき、これは対照(ナリンゲニンなし)での0.586mg/mlから最少培地中1mMのナリンゲニンの存在下での0.492mg/mlへと、共に13時間の細胞増殖後に低下した。この最終乾燥細胞重量における16%の低下(最終アブソーバンスにも認められる)は、ナリンゲニンがイー.コリにおそらくは拡散により入り得、これが細胞増殖に阻害的効果を持つと考えられることを示唆する。
【0038】
エム.ドメスティカANSの生化学的特定
ANSは、広い基質特異性を有する、非ヘム鉄および2-オキソグルタレート-依存性オキシゲナーゼファミリーのメンバーである。我々は、(2R,3S,4S)-シスロイコシアニジン、(2R,3S,4R)-トランス-ロイコシアニジン、(2R,3S,4S)-シスロイコペラルゴニジンおよび(2R,3S,4R)-トランス-ロイコペラルゴニジンを用いて、インビトロANSアッセイを行った。全化合物は基質として受容され、非天然のトランス-ロイコアントシアニジンは天然のシスエピマーよりも効率的に触媒された。インビトロのANS反応のHPLC分析により、ジヒドロクエルセチンおよびクエルセチン(基質としてロイコシアニジンの場合)またはジヒドロケンペロールおよびケンペロール(ロイコペラルゴニジンの場合)が主要生成物であり、最終ANS生成物のわずか1%のみがシアニジンまたはペラルゴニジンに対応することが示された。前記生成物の大部分、82%はジヒドロフラボノール(ジヒドロケンペロールまたはジヒドロクエルセチン)に対応し、残りはフラボノール(ケンペロールまたはクエルセチン)に対応した。この結果は、基質として用いたロイコペラルゴニジンエピマーに関わらず一貫した。エム.ドメスティカANSのインキュベーションから認められた生成物の分布を表2に示す。反応生成物は当該HPLC特性におけるピーク領域を調べ、それらを基準サンプルの標準曲線と比較することにより定量した。シアニジンは515nmで、クエルセチンは360nmで、ジヒドロクエルセチン(DHQ)は290nmでモニターした。結果は2つの独立試験の平均を示す。
【0039】
【表2】

【0040】
イー.コリ中でのアントシアニン生合成経路の発現
全4つの遺伝子を個々に、低コピー数のイー.コリベクターpK184中、強いtrcプロモーターの制御下に置いた。我々は、細胞に有害な影響を持つ虞のある、高コピー数のプラスミドから起こり得る高い転写および翻訳レベルを避けるために、低コピー数のベクターを選択した。ミニシストロン配列の後に位置づけられるリボゾーム結合部位、AGAGGおよび再開始リボゾーム結合部位AAGGAGであって共にクローニングベクターpTrcHis2-TOPO由来のものは、各遺伝子の開始コドンから各々46bpおよび16bpを示す。同じ非翻訳領域が4つの遺伝子の各々の前に存在したが、組換え現象は認められず、ベクターは、培地中の抗生物質の不在下および13時間の培養後でもイー.コリJM109中で安定であることが分かった。
【0041】
組換えタンパク質の発現レベルを評価するために、我々は、封入体の形成を避けるために、準-最適(室)温度で組換えイー.コリ培養物を増殖させた。全タンパク質をSDS-PAGEで分析した際、タンパク質生成の明らかに増加したレベルが40kDaの領域で明らかであり(40,470の分子量を有するANS、39,417の分子量を有するDFR、および41,137の分子量を有するFHTが移動する)、他方、タンパク質の発現は50kDaの領域ではさほど明らかではなかった(49,706の分子量を有する3-GTが移動する)。SDS-PAGE上で、同様のサイズのタンパク質は、空のベクターpK184を運搬している対照株については認められなかった。組換えタンパク質がまた、非溶解性フラクションにおいて検出され(データは示さず)、封入体の形成の証拠を提供する。この結果は、イー.コリにて異種発現されるフラバノン生合成経路について既に報告されているもの(Hwang等、2003, Appl. Environ. Microbiol. 69:2699-1706)と異なり、他方、組換えタンパク質の発現は全ての異種酵素について明白ではなかった。
【0042】
ファーメンテーション生成物の分析。シェークフラスコ培養物を回収後、培養ブロスと細胞を遠心分離により分離し、種々のポリフェノール化合物をファーメンテーションブロスから、イソアミルアルコールまたは酢酸エチルを用いて抽出した。
我々はまず、組換えおよび対照培養物の両方から得たファーメンテーションブロスのHPLC分析を行った。検出のために、我々は520nmでのアブソーバンスをモニターした(図4)。カリステフィンクロライドの標準のサンプルと同じ保持時間を有する1つの化合物のみが存在しているようであった。当該化合物をさらにLC-MSを用いて分析した。
【0043】
全イオンクロマトグラフを、メタノール中に溶解した標準のカリステフィンクロライドのサンプルに関して取得した(図5)。433、ペラルゴニジン3-O-グルコシドの分子量のm/z比を有する主要ピークを、26.97分の保持時間で得た。同じ保持時間およびm/z比を有するピークを、同じくメタノール中に溶解されたファーメンテーション抽出物の全イオンクロマトグラフで得た。ファーメンテーション抽出物中での種々の濃度のカリステフィン標準のスパイキングおよび433イオンの35%の相対エネルギーでのMS/MS分析により、9.8μg/lのペラルゴニジン3-O-グルコシド濃度(イソアミルアルコールを用いる抽出)および3.1μg/lの濃度(酢酸エチルを用いる抽出)が示された。
HPLCおよびLC-MSにより、ペラルゴニジン3-O-グルコシドが、イー.コリ中での植物酵素の異種発現により効果的に生成されたことが示される。
【0044】
[実施例2]
本実施例では、細菌種からの植物特異的フラボノールの生合成を初めて示す。これは、化学的変換を必要としないフラバノンプレカーサー代謝物の生合成を許容する、イー.コリ中での異種植物源由来の遺伝子クラスターの発現により達成された。これら遺伝子クラスターを用いて、イー.コリからのフラバノン、エリオジクチオールの生合成も達成された。
材料および方法
植物材料、細菌株、プラスミドおよび培養条件。パセリの種をストロークス・シーズ(Strokes Seeds)(バッファロー、NY)から購入し、ペチュニア植物は地元の苗床から購入した。イー.コリTOP10(インビトロジェン、カールスバッド、CA)をDNA操作のために用い、イー.コリBL21Star(プロメガ)をシェーク-フラスコ試験のために用いた。プラスミドpETDuet-1、pCDFDuet-1およびpRSFDuet-1(ノバゲン)をクローニングのために用いた。
化学物質。ケイ皮酸、p-クマリン酸およびカフェー酸は、MPバイオメディカルズInc.(Irvine, CA)から購入した。ナリンゲニンはシグマ-アルドリッヒ(セントルイス、MO) から購入した。エリオジクチオール、ジヒドロクエルセチン、ケンペロールおよびクエルセチンはインドフィン(Indofine)(ヒルスボロー、NJ) から購入した。
【0045】
DNA操作。全DNA操作は標準的な方法(Sambrook等、1989, モレキュラークローニング:ラボラトリーマニュアル、第2版、コールド・スプリンブ・ハーバー・ラボラトリー・プレス、ニューヨーク、NY)に従って行った。制限酵素、仔ウシ小腸由来アルカリホスファターゼおよびT4DNAリガーゼはニュー・イングランド・バイオラブズおよびプロメガから購入した。逆転写ポリメラーゼ鎖反応(RT-PCR)はインビトロジェン製のスーパースクリプト・ワン-ステップキットを用いて行った。PCR反応はロッシュの増幅高性能PCRシステムを用いて行った。マルス・ドメスティカからのMdF3H cDNAはホンダチカコ博士〔日本の、果物および樹木科学に関する国立研究所〕の好意で譲り受けた。アラビドプシス・サリアナからのFLS1 cDNAはゲノム研究のための研究所(The Institute for Genomic Research)のエイ.サリアナのデータベース(www.tigr.org/tdb/e2kl/ath1)で行ったホモロジー検索により同定し、かつ、RIKENバイオリゾース・センター(日本の筑波)から購入したESTクローンRAFL09-32-C09から高性能PCRにより単離した。ペチュニアxヒブリダからのCHI-Aおよびchs cDNAおよびペトロセリナム・クリスパムからのPc4cL-2はGenBankで入手可能なDNA配列(受諾番号は、chsにつきAF233638、CHI-AにつきX14589、およびPc4cL-2につき X13325である)に基づき増幅した。より詳しくは、キアゲン・RNイージー・ミニキットを、ピー.xヒブリダ・カローラまたはピー. クリスパムの若葉由来の全RNA単離のために用いた。用いた全プライマー配列を表3に示す。全ての場合に、PCR中に導入された望ましくない変異の不在を直接ヌクレオチド配列決定により同定した。
【0046】
【表3】

【0047】
プラスミドの構築。T7プロモーター下にPc4cL-2 cDNAを含んでいるプラスミドpCDF-PC4CL2を、ベクターpCDFDuet-1中のEcoR VおよびKpn I間にPc4cL2をサブクローニングすることにより構築した。CHI-Aおよびchsを各々T7プロモーター下に保持しているプラスミドpET-CHS-CHIを、ベクターpETDuet-1中に、chsをEcoR VとKpn Iの間に、CHI-AをBamH IとPst Iの間に連続的にサブクローニングすることにより構築した。FLS1とMdF3Hを各々T7プロモーター下に運搬しているプラスミドpRSF-FLS1-F3Hを、ベクターpRSFDuet-1に、FLS1をEcoR VとKpn Iの間に、MdF3HをBamH IとSal Iの間に連続的にサブクローニングすることにより構築した。全クローニング法を図6に概説する。
【0048】
増殖曲線。イー.コリの増殖におけるフェニルプロパノイド酸の影響を調べるために、イー.コリBL21Starを3mlのM9液体最少培地に播種し、37℃で一晩増殖させた(前播種)。翌日、前播種物からの1mlを50mlのM9最少またはルリア-ベルタニ(LB)リッチ液体培地のいずれかに移し、次いでp-クマリン酸、カフェー酸またはケイ皮酸を当該培地に異なる終濃度で(0mM、0.2mM、0.5mM、1mMおよび2mM)添加した。細胞増殖を、600nmでのアブソーバンス(A600)を測定することによりモニターした。
【0049】
シェークフラスコ培養。プラスミドpCDF-PC4CL2、pET-CHS-CHIおよびpRSF-FLS1-F3Hを保持している組換えイー.コリBL21Starまたは、空のベクターpCDFDuet-1、pETDuet-1およびpRSFDuet-1を運搬している対照株を、30μg/mlのカナマイシン、50μg/mlのアンピシリンおよび50μg/mlのストレプトマイシンを含むLB液体培地(3ml)に前-播種し、37℃で一晩振とうしつつ増殖させた。翌日、前播種物の1mlを50mlのLBまたはM9液体培地(これもまた、同じ濃度の前記3つの抗生物質を含んでいる)に添加し、当該培養物を37℃で振とうしつつ、A600が約0.6に到達するまで増殖させた。到達した時点でインデューサー、イソプロピルβ-チオガラクトシド(IPTG)を当該培養物に1mMの終濃度まで添加し、次いで当該培養物を30℃でさらに3時間インキュべートした。プレカーサー基質を次いで当該培養物に0.20mM(ケイ皮酸、p-クマリン酸、カフェー酸)または0.25mM(ピノセンブリン、ナリンゲニン、エリオジクチオール)の終濃度まで添加し、次いで培養物を30℃で65時間強く振とうしつつ増殖させた。
【0050】
フラボノイドの抽出。シェークフラスコ試験完了後、フラボノイドを培養ブロスから、等体積(約50ml)の酢酸エチルを30秒間室温で強く振とうしつつ用いて直接抽出した。1,800×gでの20分間の遠心分離後、有機層を回収し、ロータリーエバポレーションにより乾燥状態へと蒸発させ、生じた粉末を0.1mlのジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解した。最終的に水を1mlの終体積まで添加した。
【0051】
HPLC分析。フラボノイドとフェニルプロパノイド酸を、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により、Agilent1100シリーズ装置と、25℃に保った逆相ZORBAX SB-C18カラム(4.6×150mm)を用いて分析した。化合物をアセトニトリル/水勾配を1.0ml/分の流速で用いる溶離により分離した。HPLC条件は以下の通りである。:10〜40%10分間、40〜60%5分間および60〜10%2分間。標準の基準サンプルについてのかかる条件下の保持時間は以下の通りである。:ピノセンブリン-16.36;ナリンゲニン--12.819;エリオジクチオール-11.084;ジヒドロケンペロール-0.702;ジヒドロケセルチン-8.172;ケンペロール-13.061;およびケセルチン-11.278。フラバノンとジヒドロフラボノールは290nmのアブソーバンスをモニターすることにより検出および定量した。ケンペロールとクエルセチンは360nmで検出および定量した。校正曲線は、種々の濃度の基準フラバノン、ジヒドロフラボノールおよびフラボノール溶液を用いて得た。
【0052】
結果
フェニルプロパン酸はイー.コリの増殖を低下させる。我々は、p-クマリン酸とケイ皮酸のイー.コリの増殖における影響を、BL21StarをM9最少培地およびLBリッチ培地中で、異なる濃度のこれら化合物(0mM、0.05mM、0.1mM、0.15mM、0.2mM、1mMおよび2mM)の存在下にインキュべートすることにより試験した。図7に示すように、増加濃度のフェニルプロパノイド酸によりイー.コリの増殖阻害が生じた。例えば、M9リッチ培地中のp-クマリン酸の場合、増殖速度は0.28h-1(対照、0mM)から0.18h-1(2mM)まで低下した。同様に、ケイ皮酸に関しては、M9最少培地中で、当該増殖速度は0.27h-1(対照、0mM)から0.17h-1(2mM)まで低下した。これらの結果は、イー.コリの増殖がフラバノンの存在下に阻害されることを示す。
【0053】
イー.コリ中のフラボノール生合成の探究。我々は、イー.コリ中のフラボノールの生合成を、まず、モノヒドロキシル化ナリンゲニン、ジヒドロキシル化エリオジクチオールおよび非ヒドロキシル化ピノセンブリン等のフラバノンをその個々のフラボノール、ケンペロール、クエルセチンおよびガランジンへ変換させることができる遺伝子クラスターをベクターpRSFDuet-1中に設計することにより成し遂げた。pRSFDuet-1ベクターは、RSF1030レプリコンに基づく高コピー数のイー.コリベクター(100以上)であり、そして、2つの分離したマルチプル・クローニングサイト(MCS)であって、各々T7プロモータに先行するものをコードする。マルス・ドメスティカからのFHTをコードしているMdF3HのcDNA(Honda等、2002、Plant Physiol Biochem 40(11), 955-962)を第一のMCSに挿入し、アラビドプシス・サリアナからのFLSをコードしているFLS1のcDNA(Pelletier等、1997, Plant Physiol 113(4), 1437-1445)を第二のものに挿入した(図6)。
【0054】
シェークフラスコ培養を、まず、フラバノン、ピノセンブリン、ナリンゲニンまたはエリオジクチオールを0.25mMの終濃度で追加したM9最少培地中で行った。65時間の培養期間後に生じた種々のポリフェノール化合物を、酢酸エチルを用いてファーメンテーションブロスから抽出し、保持時間およびUV吸収スペクトルにより同定した。約90%のナリンゲニンが消費され、対応するフラボノール、ケンペロール(45mg/1t)およびジヒドロフラボノール、ジヒドロケンペロール(15mg/1t)に変換された(図8A、8B、8C、8D)。エリオジクチオールを基質として使用した場合、フラボノール、クエルセチンが20.1mg/1tの濃度で生成され、中間体ジヒドロフラボノール、ジヒドロクエルセチンが44mg/1tの濃度で蓄積された(図8E、8F、8G、8H)。最終的に非ヒドロキシル化フラバノン、ピノセンブリンはその対応するジヒドロヒドロキシフラボノール(ピノバンクシン)またはフラボノール(ガランジン)に変換されず、B芳香族環における少なくとも1つのヒドロキシル基の存在が、生物変換が生じるのに必要であるという直接的な証拠を提供する。
【0055】
我々は、LBリッチ培地中のフラボノールの生成も試験した。我々の期待と反対に、生成されたフラボノールとジヒドロフラボノールの量に有意な低下が認められた。ナリンゲニンの場合、培地中のケンペロールの濃度は4.83mg/1tに低下し、中間体ジヒドロケンペロールの濃度は10.85mg/1tに低下した。エリオジクチオールの場合、生成されたクエルセチンの濃度は2.31mg/1tに低下し、蓄積されたジヒドロクエルセチンの濃度は18.77mg/1tに低下した。それゆえ、LBは、FTH、FLSまたは両方を阻害する分子を含んでいることが大いに考えられる。
【0056】
シェークフラスコ試験のために、炭素源としてグルコースを含むM9最少培地またはLBリッチ培地のいずれかの中で培養物を増殖させ、フラバノンプレカーサー(ナリンゲニンまたはエリオジクチオール)を与えた。ジヒドロケンペロールおよびケンペロールは、ナリンゲニンを出発フラバノンとして使用した場合に形成されたジヒドロフラボノールおよびフラボノール化合物である。ジヒドロクエルセチンおよびクエルセチンは、エリオジクチオールを出発フラバノンとして用いた場合に形成されたジヒドロフラボノールおよびフラボノール化合物である。提示する値は、2つの独立した試験から得られた平均である。植物特異的ジヒドロフラボノールとフラボノールの、プラスミドpRSF-FLS1-F3Hを保持している組換えイー.コリBL21Starによる生成の結果を表4にまとめる。
【0057】
【表4】

【0058】
プレカーサー、フェニルプロパノイド酸からのフラボノール生合成の設計
プレカーサー、フェニルプロパノイド酸からの、化学変換のステップを要としない直接的なフラボノールの生合成を設計するために、我々は以下の方法を用いた。
異種植物起源の3つの遺伝子、即ちペトロセリナム・クリスパム(パセリ)からの4-クマレート:補酵素Aリガーゼ(4CL) をコードしているPc4cL-2(Lozoya等、1988、Eur J Biochem 176(3), 661-667)、ペチュニアからのCHIをコードしているCHI-A(Vantunen等、1989、Plant Mol Biol 12(5), 539-551; Vantunen等、1988、EMBO J., 7(5), 1257-1263)およびペチュニアからのCHSをコードしているchsを単離し、イー.コリベクターpCDFDuet-1(Pc4cL-2)およびpETDuet-1(CHI-Aおよびchs)にクローン化した(図6)。ベクターpCDFDuet-1はCloDF13イー.コリレプリコンに基づき20-40のコピー数を有し、選択マーカーとしてストレプトマイシン耐性をコードするaadA遺伝子を用いる。ベクターpETDuet-1はColE1レプリコンに基づく中コピー数ベクター(〜40)であり、これは選択マーカーとしてアンピシリン耐性をコードしているbla遺伝子を用いる。両ベクターは互いに、およびMdF3HおよびFLS1のクローニングのために先に用いたpRSFDuet-1ベクター(カナマイシン耐性)と共に同時複製できる。各遺伝子を個々に強いT7プロモーターおよびリボゾーム結合部位の下に配置して、ベクターpCDF-PC4CL2およびpET-CHS-CHIを得、これらをプラスミドpRSF-FLS1-F3Hと共にイー.コリ株BL21Starに同時形質転換した。異なる抗生物質耐性および互換性レプリコンのために、全3つの組換えプラスミドはイー.コリ細胞中で選択し得かつ共存し得た。
【0059】
フラボノールの生合成を、まず、組換えBL21Star株を、炭素源としてグルコースを含むM9最少培地中で培養することにより行った。フェニルプロパノイド酸を培養物に0.20mMの終濃度まで添加した。フラボノイド化合物を抽出し、前記のごとく同定した。p-クマリン酸をプレカーサー代謝物として用いた場合、生成された化合物はナリンゲニン(0.074mg/1t)、ジヒドロケンペロール(0.643mg/1t)、およびケンペロール(0.286mg/1t)であった(図9A、9B、9C、9D)。驚くべきことに、プレカーサー代謝物としてカフェー酸を用いた場合、同定された唯一のフラボノイド化合物は、22μg/1tの濃度の対応するフラバノン、エリオジクチオールであった(図9E、9F)。ジヒドロクエルセチンまたはクエルセチンは生成されなかった。しかし、P450モノオキシゲナーゼ、カサランサス・ロゼウスからのF3'5'H(フラボノイド3'5'-ヒドロキシラーゼ)をイー.コリ中で機能的に発現させることにより、クエルセチン生合成が達成された。機能的発現は、シー.ロゼウスからのP450モノオキシゲナーゼとP450レダクターゼCPRの間の融合タンパク質を作製することにより達成した。次いで融合タンパク質を、中または低コピー数のベクターにクローン化した。最後に、ケイ皮酸をプレカーサー代謝物として用いた場合、対応するフラバノン、ピノセンブリンのみが199μg/1tの濃度で培地中に検出された(図9G、9H)。ピノセンブリンはFHTおよびFLS1により基質として受容され得ないことを立証した我々の先の結果と一致して、ピノセンブリンまたはガランジンは蓄積されなかった。
【0060】
カフェー酸をプレカーサー代謝物として用いた場合に得られた興味深い結果のために、我々は、低濃度のフラバノンから出発し、プラスミドpRSF-FLS1-F3Hを運搬しているBL21Star株を用いてフラボノールの生合成を試験した。ジヒドロフラボノールもフラボノールも、プレカーサー、フラバノン(ナリンゲニンまたはエリオジクチオール)が25μg/1t〜100μg/1tの範囲の低濃度で存在する場合には、検出され得なかった。
【0061】
我々はさらに、LB培地で、M9培地に関して記載したものと同じ条件下にシェークフラスコ試験を行った。p-クマリン酸をプレカーサーとして使用した場合、ファーメンテーションブロス中にナリンゲニン(0.39mg/1t)およびジヒドロケンペロール(1.29mg/1t)が蓄積したが、ケンペロールは生成されなかった。カフェー酸をプレカーサーとして使用した場合、エリオジクチオールがM9培地と比較して低濃度で(7.5μg/1t)で蓄積したが、ジヒドロクエルセチンまたはクエルセチンは検出されなかった。最後に、ケイ皮酸を用いた場合、ピノセンブリンが0.245mg/1tの濃度で蓄積したが、ジヒドロフラボノールまたはフラボノールは検出されなかった。
我々のシェークフラスコ試験の結果を表5に示す。
【0062】
【表5】

【0063】
[実施例3]
本実施例は、エス.セレビジエ組換え株からのフラバノン物質のミリグラム量の生合成を初めて記載するものである。これは、反復DNA配列(GAL1プロモーター)の存在にもかかわらず、酵母中で安定であることが確かな植物由来の遺伝子クラスターを用いて達成された。
材料および方法
植物材料、細菌株、酵母株、プラスミドおよび化学物質。パセリの種はストロークス・シーズ (バッファロー、NY)から購入し、ペチュニア植物は地元の苗床から購入した。エス.セレビジエ株INVSC1(MATa his3D1 leu2 trp1-289 ura3-52)(インビトロジェン、カールスバッド、CA)を酵母形質転換およびシェークフラスコ試験のために用いた。イー.コリTOP10F'(インビトロジェン)を、プラスミドの構築および保持のために用いた。エス.セレビジエプラスミドpYES2.1/V5-His-TOPO(インビトロジェン)およびYEplac181(アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション、マナッサス、VA)をクローニングのために使用した。p-クマリン酸、ケイ皮酸、カフェー酸及びフェルラ酸は、MPバイオメディカルズInc.から購入した。ナリンゲニンはシグマ-アルドリッヒ(セントルイス、MO)から、及びエリオジクチオール、ホモエリオジクチオール及びピノセンブリンはインドフィン(ヒルスボロー、NJ)から購入した。
【0064】
DNA操作。全DNA操作は標準的な方法に従って行った。制限酵素、孔ウシ小腸由来アルカリホスファターゼおよびT4DNAリガーゼはニュー・イングランド・バイオラブズおよびプロメガから購入した。全逆転写ポリメラーゼ鎖反応(RT-PCR)はスーパースクリプト・ワン-ステップw/プラチナTaqキット(インビトロジェン)を用いて行った。全ポリメラーゼ鎖反応(PCR)はロッシェの増幅高性能PCRシステムを用いて行った。アラビドプシス・サリアナからのC4H cDNAはゲノム研究のための研究所のエイ.サリアナデータベース(www.tigr.org/tdb/e2kl/ath1)で行ったホモロジー検索により同定し、かつRIKENバイオリゾース・センター(日本の筑波)から購入したESTクローンRAFL06-11-J16から高性能PCRにより単離した。ペチュニアxヒブリダからのCHI-Aおよびchs cDNAおよびパセリ(ペトロセリナム・クリスパム)からのPc4cL-2は、GenBankにて入手可能なDNA配列(受諾番号は、chsにつきAF233638、CHI-AにつきX14589およびPc4cL-2につきX13225である)に基づき増幅した。より詳しくは、キアゲン・RNイージー・ミニキットをピー.xヒブリダ・カローラまたはピー. クリスパムの若葉からの全RNA単離のために用いた。全ての場合に、PCR中に導入された望ましくない変異の不在を直接ヌクレオチド配列決定により確認した。酵母の形質転換は酢酸リチウム法を用いて行った。
【0065】
プラスミドYcc4c181の構築。プラスミドYcc4c181を、図10に示すごとく、クローン化される4つの遺伝子の各々につき2ラウンドのPCRにより構築した。PCRの第一ラウンドでは、4つの構造遺伝子(開始コドンATGから終結コドンまで)の各々を、提供されたプラスミドまたは全RNAのいずれかから増幅した。PCR生成物にTaqポリメラーゼ(フィッシャー・サイエンス、USA)を用いてA-オーバーハングを付加後、各構造遺伝子を個々に、強いGAL1プロモーター下に、pYES2.1/V5-His-TOPOベクターを用いるT/Aクローニングによりクローン化した。GAL1ベクターはガラクトースにより誘導される強い酵母プロモーターである。
【0066】
クローニングの第二ラウンドでは、chs cDNAをGAL1プロモーターと共に高性能PCRにより、GAL1プロモーターの上流に横たわるベクターDNA領域にハイブリダイズしているフォーワーードプライマーと、クローン化されたcDNAの末端にハイブリダイズするリバースプライマーを用いて増幅した。Hind III制限部位をフォーワードプライマーに導入し、Pst I制限部位をリバースプライマーに導入した。生じたPCRフラグメントをHind IIIとPst Iで消化し、同じ酵素で消化された酵母ベクターYEpLac181に挿入し、プラスミドYc181を得た。同様に、C4H cDNAをGAL1プロモーターと共に、GAL1プロモーターの上流にハイブリダイズしており、かつPst I制限部位を運搬しているフォーワードプライマーと、制限部位Xba Iを含むリバースプライマーを用いて増幅した。PCRフラグメントをPst IとXba Iで消化し、同じ酵素で消化されたプラスミドYc181に挿入し、プラスミドYcc181を得た。次に、Pc4cL-2 cDNAをGAL1プロモーターと共に、制限部位Xba Iを運搬しているフォーワードプライマーと、制限部位Kpn Iを運搬しているリバースプライマーを用いるPCRにより増幅した。増幅されたPCRフラグメントをXba IおよびKpnIで消化し、プラスミドYcc181に挿入し、プラスミドYcc4-181を得た。最後に、CHI-A cDNAをGAL1と共に、制限部位Kpn Iを運搬しているフォーワードプライマーと、制限部位EcoR Iを運搬しているリバースプライマーを用いることにより単離し、生じたPCR生成物をKpn IとEcoR Iで消化し、同じ酵素で消化されたプラスミドYcc4-181に挿入し、最終構築物Ycc4c181を得た。PCRの第一および第二ラウンドのために用いた全前記プライマー配列を表6に示す。
【0067】
【表6】

【0068】
酵母シェークフラスコ試験。プラスミドYcc4c181を運搬している株INVSC1の単一コロニーを、2%グルコースを含んでいる15mlのSC-Leu最少培地に播種し、一晩30℃で振とうしつつ増殖させた(前播種)。翌日、50mlの誘導培地(2%のガラクトースを含んでいるSC-Leu培地)に、培地を含まない前播種物を600nm(A600)で0.4の最終アブソーバンスまで播いた。細胞を次いで30℃で強く振とうしながら4時間増殖させた。その時点で、50μlの0.25M基質(ケイ皮酸、p-クマリン酸、カフェー酸またはフェルラ酸)のストック溶液を培養物に0.25mMの終濃度まで添加した。培養物を30℃にて全65時間水平に振とうしつつ増殖させた。この間、培養物にさらなる50μlの基質ストックを12時間毎に4回補充した。
【0069】
フラボノイドの抽出。シェークフラスコ試験完了後、フラボノイド基質を培養物から、等体積(約50ml)の酢酸エチルを約30秒間室温で用いて強く振とうしつつ抽出した。4000×gで20分間のさらなる遠心分離後、有機層を回収し、ロータリーエバポレーションにより乾燥状態へと蒸発し、生じた粉末を0.2mlのDMSOおよび水に溶解し、1mlの終体積とした。
【0070】
HPLC分析。生成物を、Agilent1100シリーズ装置および25℃に保った逆相ZORBAX SB-C18カラム(4.6×150mm)を用いて、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により分析した。生じた化合物を、アセトニトリル/水勾配を1.0ml/分の流速で用いる溶離により分離した。HPLC条件は以下の通りである。:10〜40%10分間、40〜60%5分間および60〜10%2分間。標準の基準サンプルについてのこれらHPLC条件下での保持時間は以下のとおりである。:ピノセンブリン-16.3;ナリンゲニン-12.8;エリオジクチオール11.1;及びホモエリオジクチオール-12.9。フラバノンを、290nmでのアブソーバンスをモニターすることにより検出および定量した。量的校正曲線は、基準フラバノン化合物の標準溶液を用いて得た。保持時間は、本明細書中に記載する逆相HPLC条件に従い算定した。
【0071】
結果
我々は、ベクターYEplac181中に、エス.セレビジエ中でのフェニルプロパノイド酸のフラバノンへの変換を可能とする遺伝子クラスターを設計した。この目的のために、植物起源の4つの構造遺伝子、即ちアラビドプシス・サリアナからのC4H cDNA、ペトロセリナム・クリスパムからのPc4cL-2、ペチュニアxヒブリダからのCHI-A及びchs cDNAを酵母で異種発現させるために選択した。本試験で使用した全酵素は、C4Hを除き、先にイー.コリ中でうまく発現されている。
【0072】
酵母に4-遺伝子クラスターをクローニングするために、我々は、イー.コリにおけるものと同様のクローニング法を行った。第一ステップでは各遺伝子をまず種特異的プロモーター(本例では、強いエス.セレビジエGAL1プロモーター)下に個々にクローン化する。第二ステップでは、各遺伝子をプロモーターと共に増幅し、制限酵素消化を用いて、選択されたプラスミド(本例では、エス.セレビジエプラスミドYEplac181)にクローン化する(図10)。
【0073】
我々は、4遺伝子クラスターを運搬しているプラスミドYcc4c181の安定性を、当該組換え酵母株を最長65時間30℃で最少培地中で増殖させることにより試験した。培養サンプルを24時間毎に採取し、プラスミド単離後、4つの遺伝子の各々の存在をGAL1プロモーターと共に、制限消化およびPCR反応により試験した。遺伝子またはプロモーターの喪失を導く組換え現象は、65時間の時間枠中に認められなかった。
【0074】
エス.セレビジエにおけるフラバノンの生合成の探究。我々は、まず、組換え酵母株に、C4Hの天然基質であるケイ皮酸を与えること、これは我々が構築した4-遺伝子代謝経路における最初のステップである、により、組換え酵母株のフラバノン化合物を合成する能力を試験した。
ケイ皮酸を培養物にトータル5のインクリメントで与えた。培地中高濃度のケイ皮酸(0.5mM以上)により有意な細胞増殖阻止が生じたことが予備的データにより立証されたので、この後、フィーディング法を行った。全ての場合に、ファーメンテーションの65時間後、僅かな量のケイ皮酸のみが培養物中に検出された。
【0075】
ケイ皮酸をプレカーサー代謝物として、およびガラクトースを唯一の炭素源およびインデューサーとして使用して、大量の対応する非ヒドロキシル化フラバノン、ピノセンブリンが培地中に蓄積した(図11D、11E、11F)。しかし、比較的少量のナリンゲニンのみが検出された(図11A、11B、11C)。シェークフラスコの結果を表7にまとめる。この結果は、C4Hが酵母で機能的に発現されたが、これは未だ、4-酵素ハイブリッド経路での律速段階の酵素であることを示す。これは、パセリ4CLの多様な基質活性も示唆する。総じて、これらの結果は酵母中でのフラバノンの生合成の実行可能性を示す。
【0076】
【表7】

【0077】
他のフェニルプロパノイドプレカーサーの、操作された酵母株へのフィーディング。ナリンゲニンの生成を増すために、ならびに他の天然フラバノン化合物の生合成を探究するために、3つの他のフェニルプロパノイド酸、即ちp-クマリン酸、カフェー酸およびフェルラ酸をプレカーサー代謝物として試験した。
3つのプレカーサー、フェニルプロパノイド酸のいずれかでの培養物のフィーディングを、それら全てが増殖阻害を示したので、ケイ皮酸に関して先に記載したように行った。フラバノン化合物を、保持時間およびUV特性の、基準標準および文献データのものとの比較により同定した。
表7にまとめるように、p-クマリン酸の場合、大量のナリンゲニンが培養物に蓄積した(図12A、12B、12C)。同様に、カフェー酸をプレカーサーとして用いた場合、天然の(2S)-エリオジクチオールがかなりの量で生成された(図12D、12E、12F)。これは、エリオジクチオール生合成を微生物ファーメンテーションにより初めて達成したものである。最後に、フェルラ酸は、組換え酵母株により代謝されず、ホモエリオジクチオールの生合成は全く認められなかった。
【0078】
[実施例4]
本実施例では、p-クマリン酸または(2S)-ナリンゲニンからのアフゼレキンのイー.コリ中での合成を示す。植物酵素4CL、CHI、CHS、FHT、DFRおよびLARをコードしている遺伝子のセットを、p-クマリン酸のアフゼレキンへの変換のために用いた。植物酵素FHT、DFRおよびLARをコードしている遺伝子のセットを、(2S)-ナリンゲニンのアフゼレキンへの変換のために使用した。
材料および方法:
細菌株、プラスミドおよび培養条件。イー.コリTOP10F'(インビトロジェン、カールスバッド、USA)をDNA操作のために使用し、イー.コリBL21StarまたはRosettaをシェーク-フラスコ試験のために使用した。プラスミドpTrcHis2-TOPO(インビトロジェン)、pETDuet-1、pCDFDuet-1およびpCOLADuet-1(ノバゲン)をクローニングのために使用した。
【0079】
遺伝子
4-クマロイルCoA-リガーゼ(Pc4cL-2a.k.a. 4CL)はペトロセリナム・クリスパム(パセリ)からクローン化した。カルコン・シンターゼ(CHS)はペチュニア・ヒブリダ(ペチュニア)からクローン化した。カルコン・イソメラーゼ(CHI)はメディカゴ・サティバ(アルファルファ)からクローン化した。フラバノン3β-ヒドロキシラーゼ(FHT a.k.a. F3H)はマルス・ドメスティカ(リンゴ)からクローン化した。ジヒドロフラボノール4-レダクターゼ(DFR)はアンスリアム・アンドレアナム〔フラミンゴ・フラワー(flamingo flower)〕からクローン化した。ロイコアントシアニジン・レダクターゼ(LAR)はデスモジウム・アンシナタムからクローン化したものであり、アンソニーR.アシュトン氏から譲り受けた (国際特許公開第2002-AU179)。
【0080】
化学物質
p-クマリン酸およびLB培地はMPバイオメディカルズから得た。(2R/S)-ナリンゲニンはシグマ-アルドリッヒ(セントルイス、USA)から購入した。イソプロピル-[ベータ]-D-チオガラクトシド(IPTG)はフィッシャー・サイエンティフィックから得た。M9最少培地の塩は、べクトン、ディッキンソン・アンド・カンパニー(Becton, Dickinson and Company)から得た。FeSO4*7H2OはEMサイエンスから得た。
【0081】
イー.コリプラスミドの構築
chiおよびchsを保持しているプラスミドpET-CSCIを、chsをEcoR VとKpn Iの間に、CHI-AをBamH IとPst Iの間に、ベクターpETDuet-1中に連続的にサブクローニングすることにより構築した。mdf3h cDNAを含んでいるプラスミドpCDF-Fを、Mdf3hをEcoR IとSal Iの間に、ベクターpCDFDuet-1中に連続的にサブクローニングすることにより構築した。Pc4cL-2とMdf3h cDNAを含んでいるプラスミドpCDF-4Fを、Pc4cL2をベクターpCDF-Fに、EcoR VとKpn Iの間にサブクローニングすることにより構築した。dfrおよびlarを運搬しているプラスミドpCOLA-DLを、ベクターpCOLADuet-1に、dfrをEcoR VとKpn Iの間に、larをEcoR IとNot Iの間に連続的にサブクローニングすることにより構築した。各遺伝子を、各Duetベクター上に提供されるその各々のT7プロモーター下にクローン化した。遺伝子構築物を図13に示す。
【0082】
クマリン酸を基質として用いたバッチファーメンテーション
フラボノイド化合物の全般的な生成を決定するために、バッチファーメンテーションを、市場入手可能なp-クマリン酸を用いて調製した。ベクターpET-CSCI、pCDF-4FおよびpCOLA-DLを運搬している組換えイー.コリBL21Star(インビトロジェン)のLBまたはM9最少培地中での一晩前播種物。抗生物質を製造業者の指示に従い添加した(50μg/mLアンピシリン、50μg/mLストレプトマイシン及び30μg/mLカナマイシン)。翌日、前播種物の4mLを用いて、250mLフラスコ中76mLのLBまたはM9最少培地培養物に播いた。培養物をインキュベーター中で37℃にてOD600が約0.6に達するまで増殖させた。遺伝子発現を1mMのITPGにより誘導し、培養物を27℃で4時間水平に振とうさせながら増殖させた。DMSOに溶解したp-クマリン酸を0.5mMの終濃度まで添加した。FeSO4を0.1mMの終濃度まで添加した。培養物を27℃にて72時間インキュべートした。
【0083】
ナリンゲニンを基質として用いたバッチファーメンテーション
フラボノイド化合物の全般的な生成を測定するために、バッチファーメンテーションを、市場入手可能な(2R/S)-ナリンゲニンを用いて調製した。ベクターpCDF-FおよびpCOLA-DLを運搬している組換えイー.コリBL21Star(インビトロジェン)のLBまたはM9最少培地での一晩前播種物。抗生物質を製造業者の指示に従い添加した(50μg/mLストレプトマイシン及び30μg/mLカナマイシン)。翌日、前播種物の4mLを用いて76mLのLBまたはM9最少培地培養物に播種した。培養物をインキュべーターで37℃でOD600が約0.6に達するまで増殖させた。遺伝子発現を1mMのITPGにより誘導し、培養物を27℃で4時間水平に振とうさせつつ増殖させた。DMSOに溶解した(2R/S)-ナリンゲニンを0.2mMの終濃度まで添加した。FeSO4を0.1mMの終濃度まで添加した。培養物を27℃で72時間インキュべートした。
【0084】
フラボノイドの抽出および分析
各培養物の15mを25mLの酢酸エチルで抽出し、ロータリーエバポレーターを用いて乾燥し、残存物を200μLのアセトニトリルに再溶解した。25μLのサンプルを、Agilent HPLC1100シリーズ装置をダイオードアレイディテクターと共に用いるHPLCにより分析した。HPLCは逆相ZORBAX SB-C18カラム(4.6×150mm)とアセトニトリル(溶媒A)および水(溶媒B)勾配(各溶媒は0.1%の蟻酸を含む)を1ml/分の流速で用いて行った。用いたHPLCプログラム条件は以下の通りである。:10%〜40%A(0-10分)および40%〜60%A(10-15分)。アフゼレキンは6.15分で溶離した。同じHPLC勾配を用いて、アフゼレキンがZORBAX SC-C18カラム(9.4×250mm)上で5mL/分の流速で精製された。280nmでのアブソーバンスを全ての場合にモニターした。
【0085】
【表8】

【0086】
生成物の特定
植物酵素(4CL、CHI、CHS、FHT、DFRおよびLAR)をコードしているプラスミドを含むエスケリキア・コリは、p-クマリン酸をアフゼレキンに約0.042mg/Lの生成物濃度で変換した。生じた生成物中間体と副産物には(2S)-ナリンゲニン、ジヒドロケンペロール、シス-ロイコペラルゴニジン及びトランス-ロイコペラルゴニジンが含まれる。
植物酵素(FHT、DFR及びLAR)をコードしているプラスミドを含むエスケリキア・コリは (2S)-ナリンゲニンをアフゼレキンに約0.739mg/Lの生成物濃度で変換した(表8)。生じた生成物中間体および副産物にはジヒドロケンペロール、シス-ロイコペラルゴニジンおよびトランス-ロイコペラルゴニジンが含まれる。
【0087】
図14a〜dに示すように、合成されたアフゼレキンは約6.15分で溶離した。図14a〜dを参照されたい。メタノール中273nmでのUVマキシマム。マススペクトロスコピー(低分解ネガティブイオン化):273.1m/z(期待値273.3m/z)。
1HNMRデータを、アセトン-d6(リファレンスとしてTMS)中で400MHz Varian装置を用いて得た。
(+)-アフゼレキン1H NMR(400MHz、アセトン-d6):δ2.54(dd, J=8.8, 16.4Hz, H2-4-Ha), δ2.95(dd, J=5.6, 16.0Hz, H2-4-Hb), δ4.07(ddd, J=5.6, 7.8, 8.5Hz, H-3), δ4.60(d, J=8.0Hz, H-2), δ5.88(s, H-8), δ6.03(s, H-6), δ6.83(d, J=8.4Hz, H-3',5'), δ7.26(d, J=8.4Hz, H-2'6')。
【0088】
LARのために用いたプライマー:
フォーワードプライマー:CCCAAGAATTCCGATGGCCCTTATGACG-(配列番号43)
リバースプライマー:GGGAAGTCGACCGCTAGCCCATAGCTGAAATTGG-(配列番号44)
【0089】
[実施例5]
本実施例では、他のフラバン-3-オール、(+)-カテキンの、カフェー酸または(2S)-エリオジクチオールからのイー.コリ中での合成を示す。4CL、CHI、CHS、FHT、DFRおよびLARをコードしている遺伝子のセットを(+)-カテキンのカフェー酸からの合成のために用い、FHT、DFRおよびLARをコードしている遺伝子のセットを(+)-カテキンの(2S)-エリオジクチオールからの合成のために用いた。
材料および方法:
細菌株、プラスミドおよび培養条件。イー.コリTOP10F'(インビトロジェン、カールスバッド、USA)をDNA操作のために用い、イー.コリBL21StarまたはRosettaをシェーク-フラスコ試験のために用いた。プラスミドpTrcHis2-TOPO(インビトロジェン)、pETDuet-1、pCDFDuet-1及びpCOLADuet-1(ノバゲン)をクローニングのために用いた。
【0090】
遺伝子。4-クマロイルCoA-リガーゼ(Pc4cL-2a.k.a.4CL)はペトロセリナム・クリスパム(パセリ)からクローン化した。カルコン・シンターゼ(CHS)はペチュニア・ヒブリダ(ペチュニア)からクローン化した。カルコン・イソメラーゼ(CHI)はメディカゴ・サティバ(アルファルファ)からクローン化した。フラバノン3β-ヒドロキシラーゼ(FHTa.k.a.F3H)はマルス・ドメスティカ(リンゴ)からクローン化した。ジヒドロフラボノール4-レダクターゼ(DFR)はアンスリアム・アンドレアナム(フラミンゴ・フラワー)からクローン化した。ロイコアントシアニジン・レダクターゼ(LAR)はデスモジウム・アンシナタム(スパニッシュ・クローバー)からクローン化したものであり、アンソニーR.アシュトン氏から譲り受けた(国際特許公開2002-AU179)。
【0091】
化学物質。カフェー酸とLB培地はMPバイオメディカルズから得た。(2S)-エリオジクチオールはインドフィンから購入した。基準(+)-カテキンはTCIアメリカから得た。イソプロピル-[ベータ]-D-チオガラクトシド(IPTG)はフィッシャー・サイエンティフィックから得た。M9最少培地の塩は、べクトン、ディッキンソン・アンド・カンパニーから得た。
イー.コリプラスミドの構築。chiおよびchsを保持しているプラスミドpET-CSCIを、ベクターpETDuet-1に、chsをEcoR VとKpn Iの間に、CHI-AをBamH IとPst Iの間に連続的にサブクローニングすることにより構築した。mdf3h cDNAを含んでいるプラスミドpCDF-Fを、ベクターpCDFDuet-1中に、Mdf3hをEcoR IとSal Iの間に連続的にサブクローニングすることにより構築した。Pc4cL-2とmdf3h cDNAを含んでいるプラスミドpCDF-4Fを、ベクターpCDF-F中に、Pc4cL2をEcoR VとKpn Iの間にサブクローニングすることにより構築した。dfrとlarを運搬しているプラスミドpCOLA-DLを、ベクターpCOLADuet-1に、drfをEcoR VとKpn Iの間に、larをEcoR IとNotIの間に連続的にサブクローニングすることにより構築した。各遺伝子は、各Duetベクター上に提供されるその各々のT7プロモーター下にクローン化した。遺伝子構築物を図15に示す。
【0092】
カフェー酸を基質として用いたバッチファーメンテーション
フラボノイド化合物の全般的な生成を決定するために、市場入手可能なカフェー酸を用いてバッチファーメンテーションを調製した。pET-CSCI、pCDF-4FおよびpCOLA-DLを運搬している組換えイー.コリBL21Starの一晩前播種物をLBまたはM9最少培地中で調製した。抗生物質を製造業者の指示に従い添加した(50μg/mLアンピシリン、50μg/mLストレプトマイシン及び30μg/mLカナマイシン)。翌日、前播種物の4mLを用いて、250mLのフラスコ中76mLのLBまたはM9最少培地培養物に播種した。培養物をインキュベータ中で37℃でOD600が約0.6に達するまで増殖させた。遺伝子発現を1mMのITPGを用いて誘導し、培養物を27℃で4時間水平に振とうさせつつ増殖させた。DMSOに溶解したカフェー酸を0.5mMの終濃度まで添加した。培養物を27℃で72時間インキュベートした。
【0093】
エリオジクチオールを基質として用いたバッチファーメンテーション
フラボノイド化合物の全般的な生成を決定するために、市場入手可能な(2S)-エリオジクチオールを用いてバッチファーメンテーションを調製した。ベクターpCDF-FおよびpCOLA-DLを運搬している組換えイー.コリBL21Star(インビトロジェン)のLBまたはM9最少培地中の一晩前播種物を調製した。抗生物質を製造業者の指示に従い添加した(50μg/mLストレプトマイシン及び30μg/mLカナマイシン)。翌日、前播種物の4mLを用いて76mLのLBまたはM9最少培地培養物に播種した。培養物をインキュベーター中で37℃でOD600が約0.6に達するまで増殖させた。遺伝子発現を1mMのITPGにより誘導し、培養物を27℃で4時間水平に振とうしつつ増殖させた。DMSOに溶解した(2S)-エリオジクチオールを0.2mMの濃度まで添加した。培養物を27℃で72時間インキュベートした。
【0094】
フラボノイドの抽出および分析
各培養物の15mLを25mLの酢酸エチルで抽出し、ロータリーエバポレーターを用いて乾燥し、残存物を200μLのアセトニトリルに再溶解した。25μLのサンプルを、AglentHPLC1100シリーズ装置をダイオードアレイディテクターと共に用いるHPLCにより分析した。HPLCは、逆相ZORBAX SB-C18カラム(4.6×150mm)およびアセトニトリル(溶媒A)および水(溶媒B)勾配(共溶媒は0.1%の蟻酸を含む)を1mL/分の流速で用いて行った。用いたHPLCプログラム条件は以下の通りである。:10%〜40%A(0-10分)および40%〜60% A (10-15分)。(+)-カテキンが5.01分で溶離した。同じHPLC勾配を用いて、(+)-カテキンはZORBAX SC-C18カラム(9.4×250mm)を5mL/分の流速で用いて精製された。280nmでのアブソーバンスを全ての場合にモニターした。
【0095】
【表9】

【0096】
生成物の特定
植物酵素(4CL、CHI、CHS、FHT、DFRおよびLAR)をコードしているプラスミドを含んでいるエスケリキア.コリは、カフェー酸を(+)-カテキンに約0.088mg/Lの生成物濃度で変換した(表9)。生じた産物中間体および副産物には(2S)-エリオジクチオール、ジヒドロクエルセチン、シス-ロイコシアニジンおよびトランス-ロイコシアニジンが含まれる。
植物酵素(FHT、DFRおよびLAR)をコードしているプラスミドを含んでいるエスケリキア.コリは(2S)-エリオジクチオールを(+)-カテキンに約8.802mg/Lの生成物濃度で変換した。生じた生成物中間体および副産物にはジヒドロクエルセチン、シス-ロイコシアニジンおよびトランス-ロイコシアニジンが含まれる。
【0097】
図16a〜eに示すように、合成された(+)-カテキンが基準(+)-カテキンと同じ時間に溶離した。UVマキシマムはメタノール中で279nmであった。マススペクトロスコピー(低分解ネガティブイオン化):289.5m/z(期待値289.3m/z)。
LARをクローン化するために用いたプライマーは実施例4と同じであった。
【0098】
[実施例6]
本実施例ではイー.コリ中でのフラボンの生合成を記載する。
材料および方法
化学物質および培地。ルリアブロス(LB)、テリフィックブロス(TB)、YPD(10g/L酵母抽出物、20g/Lペプトン、20g/Lデキストロース)またはM9最少培地(1×M9塩、0.4%グルコース、6μMチアミン、0.1μMビオチン、1μM MgSO4、0.1μM CaCl2)を一貫して使用した。アンピシリン(100μg/mL)、カナマイシン(50μg/mL)およびストレプトマイシン(50μg/mL)またはこれらの抗生物質の組合せを必要に応じて用いた。ケイ皮酸、p-クマリン酸およびカフェー酸はMPバイオメディカルズInc.(Irbine, CA)から購入した。ナリンゲニンはシグマ-アルドリッヒ(セントルイス、MO)から購入した。フェルラ酸、エリオジクチオール、アピゲニン、ルテオリンおよびゲンクワニンはインドフィン(ヒルズボロー、NJ)から購入した。
【0099】
植物材料。植物は地元の苗床から購入し、種々の植物材料を回収する前に数時間日光に曝した。mRNAの抽出のために、扁平葉のパセリおよびペパーミントの若葉、およびペチュニアxヒブリダの花弁を用いた。植物材料は液体窒素で迅速に凍結し、使用まで-80℃で貯蔵した。
細菌プラスミドおよび株。イー.コリTOP10F'(インビトロジェン)をクローニング反応の形質転換およびプラスミド保持のために用い、イー.コリ株BL21Star(インビトロジェン)をファーメンテーションのために使用した。3つの同時複製可能なベクターをフラボンの生合成経路の構築のために用いた:高コピー数ベクターpRSFDuet-1(コピー数:〜100)、中コピー数ベクターpETDuet-1(〜40)、および低コピー数ベクターpCDFDuet-1(〜20)(ノバゲン)。さらに、ベクターpCRT7/CTをPCR増幅 DNAのT/Aクローニングのために使用した(インビトロジェン)。本実施例で用いた全株およびプラスミドを表10に示す。
【0100】
【表10】

【0101】
モレキュラークローニング。DNA操作を標準的な方法に従い行った(Sambrook等、1989)。制限酵素およびT4DNAリガーゼはニュー・イングランド・バイオラブズおよびプロメガから購入した。植物材料からの全RNAはRNイージー・プラント・ミニキット(キアゲン)を製造業者の指示に従って用いて単離した。cDNAは逆転写-PCR(RT-PCR)により、スーパースクリプト(登録商標)ワン-ステップRT-PCRをプラチナ(登録商標)Taq(インビトロジェン)と共に用いて、GenBankにて入手可能なDNA配列情報に基づいて得、そして増幅した。cDNA増幅のために使用した全プライマー配列を表11に列挙する。
【0102】
【表11】

【0103】
イー.コリ中でのFSIの機能的発現を評価するために、PcFSI cDNAをベクターpCRT7/CTにクローン化し、プラスミドpCRT7-FSIを得た。
フラボン生合成経路の構築のために(図17)、Pc4CL-2のPCR生成物をpRSFDuet-1に、EcoRIとSalI部位の間にクローン化し、プラスミドpRSF-4CLを得た。次いでPcFSIをpRSF-4CLに、Nde1とKpn1の間にクローン化し、プラスミドpRSF-4CL-FSIを得た。同様に、プラスミドpET-CHI-CHSを、ベクターpETDuet-1に、まずchiAをEcoR VとKpn Iの間に、次いでchsAをBamH IとPst Iの間にサブクローニングすることにより構築し、プラスミドpET-CHI-CHSを得た。OMT1AをpCDFDuet-1に、EcoR IとPst I部位の間にクローン化し、プラスミドpCDF-OMTを得た。全ての場合に、成功した遺伝子クローニングを制限マッピングにより確認し、PCR中に導入された望ましくない変異の不在を直接ヌクレオチド配列決定により確認した。
【0104】
タンパク質の発現およびファーメンテーション。パセリFSIのイー.コリ中での発現をインビボで調べた。この目的のために、プラスミドpCRT7-FSIプラスミドを運搬している組換えBL21Starを、アンピシリンを含む3mlの液体LB中で一晩37℃で振とうしつつ培養した(前-播種)。翌日、前-播種培養物を用いて、600nm(Ab(600))にて0.05の初期アブソーバンスまで、新鮮な50mlのLB培地に播き、これを次いでAb(600)が0.6に達するまで37℃で増殖させた。その時点で、インデューサーIPTGを培養物に1mMの終濃度まで添加し、起こり得る組換えタンパク質の封入体の形成を抑えるために、インキュベーションを30℃にて継続した。4時間後、0.05mMのナリンゲニンまたはエリオジクチオールを培養物に添加し、インキュべーションをさらに24時間行った。
【0105】
フェニルプロパノイド酸から異なるフラボン生成物を得るために、イー.コリ株BL21Starを、プラスミドの異なる組合せで形質転換した。pRSF-4CL-FSIのpET-CHI-CHSとの同時形質転換を非修飾フラボンの生成のために行った。メチル化フラボンのためには、BL21StarをpRSF-4CL-FSI、pET-CHI-CHSおよびpCDF-OMTで同時形質転換した。
【0106】
ファーメンテーション目的のために、3mLのLB一晩前-播種物を組換え株を用いて調製した。翌日、前播種物の1mL部分を用いて、適当な抗生物質を補充した50mLの新鮮なLB培養を開始した。培養物を、Ab(600)が0.6に達するまで37℃で振とうしつつ増殖させた。この時点で、組換え遺伝子の発現を2mMのIPTGを用いて誘導し、インキュべーションをさらに4時間30℃で継続した。インキュべーション期間の終わりに、誘導された培養物の1mLを、適当な抗生物質、1mMのIPTG、0.5mMの2-オキソグルタル酸、0.5mMのFeSO4、0.5mMのアスコルビン酸ナトリウム、及び0.05mMのプレカーサーフェニルプロパノイド酸をさらに含む新鮮な49mLのM9最少培地またはLBまたはTBまたはYPDに添加した。培養物を次いで30℃で振とうしつつ (300rpm)24時間インキュべートした。
【0107】
分析法。培養ブロスおよび細菌ペレットをフラボノイドの生成に関して別個に分析した。細胞を遠心分離により回収し、2回0.9%NaCl溶液中で洗浄し、1時間、超音波浴中MeOH-HCl(v/v、10:1)にて抽出した。等量の酢酸エチルを次いで培養ブロスまたは細胞溶解物に添加し、次いで強く混合した。有機相を遠心分離により分離し、デカントし、次いで真空下に乾燥状態へと蒸発させた。アセトニトリル/水混合物(v/v、1:3)を次いで添加して有機化合物を溶解した。
【0108】
フラボノイドとフェニルプロパノイド酸を、Agilent1100シリーズ装置および25℃に保った逆相ZORBAX SB-C18カラム(4.6×150mm)を用いる高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により分析した。化合物を、アセトニトリル/水勾配を1.0ml/分の流速で用いる溶離により分離した。HPLC条件は以下のとおりである。:20〜27%(アセトニトリルの体積パーセント)45分間、および27〜95%(アセトニトリルの体積パーセント)30秒間。標準の基準サンプルに関するかかる条件下での保持時間は以下の通りである。:カフェー酸、2.7分;p-クマリン酸、4.7分;エリオジクチオール、18.4分;ルテオリン、20.8分;ナリンゲニン、30.9分;アピゲニン、33.2分;ゲンクワニン、46.7分。フラバノンを290nmでのアブソーバンスをモニターすることにより検出および定量した。フラボンは340nmで検出および定量した。校正曲線は、種々の濃度の基準フラバノンおよびフラボン溶液を用いて得た。
【0109】
結果
イー.コリにおけるFSIの発現。イー.コリにてFSIを発現するために、FSI cDNAをPCR増幅し、強いT7プロモーター下にクローン化した(プラスミドpCRT7-FSI)。pCRT7-FSIを運搬している組換えイー.コリBL21Starを0.05mMのジヒドロキシル化フラバノン(2S)-エリオジクチオールの存在下に増殖させて、0.1mMのIPTGでの誘導時の対応するフラボン(ルテオリン)の生合成を試験した。図18aに示すように、組換えイー.コリのファーメンテーションにより、フラボン、ルテオリンが生成され、これは基準化合物の保持時間とUVアブソーバンススペクトルをマッチングさせることにより同定された(図18c;図18bに示す対照試験)。同様の結果を、組換え株をモノヒドロキシル化フラバノン、ナリンゲニンの存在下に増殖させ、対応するフラボン、アピゲニンを生じる場合に得た(結果は示さず)。総じて、これらの結果により、パセリFSIのイー.コリ中での機能的発現が示された。
【0110】
組換えイー.コリは、フェニルプロパノイド酸からフラボン誘導体を生成する。フラボンをそのプレカーサーフェニルプロパノイド化合物から生成するために、我々はイー.コリ中で、植物起源の5つの異種遺伝子を用いてフラボン生合成経路を構築した。これらの遺伝子にはパセリからのPc4CL-2(Lozoya等., 1988, Eur J Biochem 176(3), 661-667)及びPcFSI(Martens等、2001,Phytochemistry, 58, 43-46)、ペチュニアからのchsAおよびchiA(Vantunen等、1989, Plant Mol Biol 12(5), 539-551; Vantunen等、1988, EMBO J., 7(5), 1257-1263)及びペパーミントからのOMT1A (Willits等,2004, Phytochemistry, 65: 31-41)が含まれる。
【0111】
全遺伝子は、強いT7誘導性ファージプロモーター下にクローン化した。5つの遺伝子の2の異なる組合せを、非修飾またはメチル化フラボン分子を生成するために用い:非修飾フラボンを生成するためにはpRSF-4CL-FSIおよびpET-CHI-CHSプラスミドを用い;メチル化フラボン生合成のためには、2つのプラスミドに加えてpCDF-OMTプラスミドも形質転換した。
【0112】
組換え株でのバイオトランスフォーメーション試験を、プレカーサー代謝物として使用される種々のフェニルプロパノイド酸(ケイ皮酸、p-クマリン酸、カフェー酸、フェルラ酸)を含むM9最少培地中で行った。24時間後、ファーメンテーション生成物をHPLCを用いて分析し、基準化合物と比較した(図19a)。図19bおよび19cに示すように、p-クマリン酸またはカフェー酸を組換え培養物に供給した時、アピゲニンまたはルテオリンが24時間後に生成した。アピゲニンのフラバノンプレカーサー、(2S)-ナリンゲニンが微量のみ蓄積し、ルテオリンのフラバノンプレカーサー、(2S)-エリオジクチオールは培地中で検出されなかった。フェルラ酸およびケイ皮酸を組換え培養物に供給することによっては、フラボン生成は生じなかった(結果は示さず)。
【0113】
全3つのプラスミドを運搬している組換えイー.コリにクマリン酸を与えた場合、メチル化されたアピゲニン(ゲンクワニン)が24時間後に合成された(図19d)。しかし、同じ組換え培養物にカフェー酸を与えた時、メチル化されたルテオリンは検出されなかった。総じて、24時間のファーメンテーション後に、組換えイー.コリは415μg/Lのアピゲニン、10μg/Lのルテオリン及び208μg/Lのゲンクワニンを最少培地中に生成した。これは、p-クマリン酸のアピゲニンへの2.9%の変換、p-クマリン酸のゲンクワニンへの1.4%の変換、及びカフェー酸のルテオリンへの0.066%の変換に対応する。
M9最少培地に加えて、我々は、微生物培養のために一般に使用される他の培地、最少塩培地、LB、TBおよびYPD等も試験した。図20に示すように、アピゲニンは、リッチLB培地中で20時間以内に最高量/細胞数で生成され、これはM9最少培地と比較して1.6倍である。
【0114】
フラボンの細胞内蓄積。我々は、フラボン(特にアピゲニン)の細胞内および細胞外での蓄積を時間の関数として、M9最少培地を用いてモニターした。図21に示すように、フラボンの生合成ネットワークの発現はイー.コリの増殖に全く影響を持たず、生成されたアピゲニンの殆どがファーメンテーションの開始後18時間以内に蓄積した。驚くべきことに、かなりの量のアピゲニンが細胞抽出物中に存在し、これは全アピゲニン生成の約25%を占めた(図21)。
【0115】
[実施例7]
本実施例では、酵母中でのフラボンの合成を示す。
材料および方法
化学物質および培地。ケイ皮酸、p-クマリン酸およびカフェー酸はMPバイオメディカルInc.(Irvine, CA)から購入した。ナリンゲニンはシグマ-アルドリッヒ(セントルイス、MO)から購入した。フェルラ酸、エリオジクチオール、アピゲニン及びルテオリンはインドフィン(ヒルズボロー、NJ)から購入した。植物からのフラボノイドは標準的な方法に従って抽出した(Harbone, 1998, フィトケミカルメソッド、植物分析の現代技術へのガイド、第3版、スプリンガー)。ルリアブロス(LB)リッチ培地はシグマ-アルドリッヒから購入した。グルコースまたはラフィノース及びガラクトースを含むYPDエス.セレビジエリッチ培地およびSC最少選択培地を調製した(Guthrie等、1991, Method Enzymol, Academic Press, San Diego, CA)。アセテートを含む最少培地(MA)はVerduyn等(1992, 酵母、8: 501-517)に従い、消泡剤BDHを用いずに調製した。
【0116】
株、プラスミドおよび植物材料。用いた全株およびプラスミドを表12に示す。植物は地元の苗床から購入し、材料を採取する前に数時間日光に曝した。mRNA抽出のために、扁平葉のペトロセリナム・クリスパム(パセリ)の若葉およびアンチライナム・マジャス・シーヴィー(Antirrhinum majus cv.)モンテゴ・イエロー(キンギョソウ)及びカサランサス・ロゼウス(マダガスカル・ペリウィンクル)の花弁を用いた。植物材料を液体窒素を用いて迅速に凍結し、使用まで-80℃で保存した。
【0117】
【表12】

【0118】
DNA操作。全DNA操作は標準的な方法に従い行った。制限酵素およびT4DNAリガーゼはニュー・イングランド・バイオラブズおよびプロメガから購入した。逆転写ポリメラーゼ鎖反応(RT-PCR)はスーパースクリプト・ワン-ステップw/プラチナ・Taqキット(インビトロジェン、カールスバッド、CA)を用いて行った。ポリメラーゼ鎖反応(PCR)はロッシュの増幅高性能PCRシステムを用いて行った。パセリからのフラボン・シンターゼI PcFSI cDNA、キンギョソウからのフラボン・シンターゼII AFNS2 cDNA、シー.ロゼウスP450レダクターゼcpr cDNA及びエス.セレビジエP450レダクターゼCPR1 cDNAはGenBankにて入手可能なDNA配列(各々受諾番号AY230247、AB028151、X69791およびD13788)に基づき我々の研究室内で単離した。キアゼン・RNイージーミニキットを植物または酵母からの全RNA単離のために用いた。全ての増幅された遺伝子をまずエス.セレビジエベクターpYES2.1/V5-His-TOPOに、T/Aクローニングを製造業者の指示(インビトロジェン)に従い用いてクローン化し、プラスミドpYES-FSI、pYES-FSII、pYES-CPRおよびpYES-CPR1を得た。酵母の形質転換は酢酸リチウム法を用いて行った。全場合に、PCR中に導入された望ましくない変異の不在は直接ヌクレオチド配列決定により確認した。用いた全プライマー配列を表13に示す。
【0119】
【表13】

【0120】
プラスミドの構築。LEU2およびTRP1マーカーを各々運搬し、そしてロイシンおよびトリプトファンを欠く最少培地中での増殖による形質転換の選択を可能とする2つの同時複製可能なシャトルベクターYEplac181およびYCplac22を用いて、フラボン生合成遺伝子を酵母に導入した。
プラスミドYcc4c181はプラスミドYEplac181から誘導され、アラビドプシス・サリアナからのC4H、パセリからのPc4cL-2、ペチュニアxヒブリダからのCHI-AおよびchsのcDNAを運搬している。
プラスミドYC-FSIを、PcFSI cDNAを、プラスミドpYES-FSIからのGAL1プロモーターと共に、GAL1プロモーターの上流に横たわるベクターDNA領域にハイブリダイズしているフォーワードプリマー、およびクローン化されたcDNAの末端にハイブリダイズするリバースプライマーを用いて増幅することにより構築した。GAL1-PcFSI融合物を次いでベクターYCplac22に、Hind IIIとKpn Iの間に挿入し、プラスミドYC-FSIを得た。プラスミドYC-FSIIを、GAL1-AFNS2をベクターYCplac22に、制限部位BamH IとKpn Iの間に挿入することにより同様の方法で構築した。ベクターYCplac22の制限部位Pst IとSal I間のGAL1-CPR1の、およびSac IとXbaIの間のGAL1-AFNS2の挿入により、プラスミドYC-FSII+CPR1を得た。
【0121】
インビトロFSIIアッセイ。pYES-FSII、pYES-CPR1、pYES-CPRを保持している酵母組換え株を、グルコースを炭素源として含み、ウラシルを欠く液体SC最少培地(SC-Ura-)中で一晩30℃で培養した。タンパク質発現のために、一晩培養物を用いて、ラフィノースを含む250mLのSC-Ura最少培地に、0.2の600nmでの初期アブソーバンス(Ab600)まで播種した。培養物が0.8のAb600に達した時、無菌のガラクトースを培養物に2%の終濃度まで添加して、タンパク質の発現を誘導した。30℃で24時間のインキュベーション後、組換え酵母細胞を回収し、ミクロゾームタンパク質調製のために使用した。BCAタンパク質アッセイキット(ピアス・ケミカルズ、ロックフォード、IL)をタンパク質の定量のために使用した。インビトロのアピゲニン合成を、0.1∝molのナリンゲニン基質、1.5mMの終濃度のNADPH、AFNS2の20∝gミクロゾーム調製物、およびP450レダクターゼ(シー.ロゼウスCPRまたは酵母CPR1)の50∝gミクロゾーム調製物を含む100μlの反応混合物中で行った。反応は、新たに調製したNADPH溶液の添加で開始し、25℃で2時間進行させた。反応生成物を等量の酢酸エチルで2回抽出し、真空下で乾燥状態へと蒸発した。次いでアセトニトリル/水(v/v、1:3)を、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析のために有機化合物を溶解するために添加した。
【0122】
異種発現およびファーメンテーション。2つの異なるフラボン生合成経路を組み立てるために、プラスミドYcc4c181Gを運搬している組換えINVSc1を、YC-FSI、YC-FSIIまたはYC-FSII+CPR1に別個に形質転換し、組換え株INV-4G+FSI、INV-4G+FSIIおよびINV-4GFSII+CPR1を得た。両プラスミドを保持している酵母コロニーを、ロイシンおよびトリプトファンを欠くSCアガープレート(SC-Leu-Trp-)上での増殖にて選択した。フラボンファーメンテーション目的のために、個々の組換酵母コロニーを一晩、グルコースを含む10mLの液体SC-Leu-Trp-中30℃で振とうしつつ増殖させた。翌日、この培養物の一部を用いて、ガラクトースとラフィノースを含むSC-Leu-Trp-または、ガラクトースとアセテートを含むMA-Leu-Trp-の主培養物に0.4のAb600まで播種した。0.5mMのフェニルプロパノイド酸(ケイ皮酸、p-クマリン酸、カフェー酸、フェルラ酸)を次いで主培養物に添加し、インキュべーションを30℃で水平に振とうしながら最大92時間行った。
【0123】
INV-4G+FSIのファーメンテーションのために、FeSO4、2-オキソグルタル酸及びアスコルビン酸ナトリウムを0.5mMの終濃度まで添加した。プラスミドの安定性を、Zymoprep I(Zymo Research, Orange, CA)を24時間毎に用いる組換え株からの単離によりチェックし、次いで制限マッピングおよびPCR分析のために用いた。
【0124】
分析法。フラボノイドとフェニルプロパノイド酸をAgilent1100シリーズ装置および25℃に保った逆相ZORBAX SB-C18カラム(4.6×150mm)を用いるHPLCにより分析した。化合物をアセトニトリル/水勾配を1.0ml/分の流速で用いる溶離により分離した。HPLC条件は以下のとおりである(特性1):20〜27%45分間、および27〜95%30秒間(アセトニトリルの体積パーセント)。標準の基準化合物についてのかかる条件下での保持時間は次のようである:カフェー酸、2.7分;p-クマリン酸、4.7分;エリオジクチオール、18.4分;ルテオリン、20.8分;ナリンゲニン、30.9分;アピゲニン、33.2分。ケイ皮酸、ピノセンブリンおよびクリシンは、アセトニトリル/水勾配を1.0ml/分の流速でおよび以下の条件(特性2)下で用いる溶離により分離した:10〜40%10分間、40〜60%5分間、および60〜10%2分間。ケイ皮酸、クリシンおよびピノセンブリンの保持時間は各々12.1分、16.0分および16.3分である。フラバノンは290nmでのアブソーバンスをモニターすることにより検出および定量した。フラボンは340nmで検出および定量した。校正曲線は種々の濃度の基準フラバノンおよびフラボン溶液を用いて得た。
【0125】
結果
AFNS2の場合におけるこの可能性を調べるために、および最も効果的なP450レダクターゼを選択するために、我々は、シー.ロゼウスP450レダクターゼCPRおよびエス.セレビジエP450レダクターゼCPR1の、インビトロでAFNS2活性を最適化させることにおける役割を調べた。この目的のために、AFNS2、CPR1およびCPRを個々に発現している組換え酵母のミクロゾームタンパク質を調製した。AFNS2の活性を、NADPHと、CPR1またはCPR調製物のいずれかの存在下での、ナリンゲニンのアピゲニンへの変換を定量することにより調べた。いずれかのレダクターゼ酵素調製物を与えた場合に、対照(レダクターゼなし)と比較して、生成されたナリンゲニンの量の約2倍の増加が認められた(表14)。
しかし、ナリンゲニンのアピゲニンへのAFNS2による変換は、CPRを用いた場合よりもCPR1の存在下で30%高かった。この結果に基づき、我々は、酵母CPR1の過剰発現により、AFNS2のパーフォーマンスがより効果的に高まると結論付け、CPR1をさらなる研究のために選択した。
【0126】
【表14】

【0127】
Ycc4c181を運搬しているエス.セレビジエ株INVSc1を、YC-FSI、YC-FSIIまたはYC-FSII+CPR1で形質転換し、各々組換え株INV-4G+FSI、INV-4G+FSIIおよびINV-4G+FSII+CPR1を得た。我々は、フェニルプロパノイド酸プレカーサーをSC-Leu-Trp-培養培地に補充した際にこれら3つの組換え株がフラボンを生成する能力を調べた。組換えタンパク質の発現をガラクトースを用いて誘導し、ラフィノースはグルコースと異なりGAL1プロモーターを抑制しないので(9)、炭素源としてグルコースに代えてラフィノースを使用した。46時間後、ファーメンテーション生成物を培養培地から抽出し、HPLCを用いて分析した。フラボノイド生成物の同一性を、同時-クロマトグラフィー、基準標準化合物とのUV-アブソーバンススペクトル(図22D)および保持時間のマッチングにより(図22A、22E)決定した。概してフラボノイドの蓄積は、大抵、培養培地において、全フラボノイド生成の10%未満を占める細胞内フラボノイドの蓄積を伴って生じた。非ヒドロキシル化ケイ皮酸をプレカーサーフェニルプロパノイド酸として利用する場合、全組換え株はフラボンアピゲニンを生成した(図22B)。さらに、全組換え株は、カフェー酸をその対応するフラボン、ルテオリンおよび対応するフラバノン、エリオジクチオールに代謝することができた(図22C)。クリシンはしかし、INV-4G+FSI培養物中でのみ検出された(図22F)。フラバノン、ピノセンブリン(非-ヒドロキシル化)およびナリンゲニン(モノヒドロキシル化)は全株により生成された。CPR1のフラボン生合成経路への、AFNS2との組み込み(株INV-4G+FSII+CPR1)により、INV-4G-FSIIと比較して、アピゲニンおよびルテオリン生成の各々62%および11%の増加を生じた(表15)。フェルラ酸の補充的フィーディングでは、フラバノンまたはフラボンの生成は生じなかった(結果は示さず)。
【0128】
【表15】

【0129】
フラボノイドの生成における炭素源の影響。フラボノイド生合成をさらに最適化するための試みにおいて、我々は炭素源、より詳しくはアセテートのフラボンの生成における役割を調べた。
組換え酵母株を、唯一の炭素源としてアセテートを含むMA-Leu-Trp-最少培地中で増殖させた。ファーメンテーションにより、フラボノイド生成の全般的な増加を生じた(図23A、23B)。より詳しくは、INV-4G+FSIの場合、フラボンおよびフラバノンの細胞数当たりの濃度は、アセテートを炭素源として含むMA-Leu-Trp-最少培地を利用した場合、炭素源としてラフィノースを含むSC最少培地を利用した場合よりも各々3倍および1.5倍増加した。INV-4G+FSII+CPR1の場合、MA培地中のファーメンテーションにより、細胞数当たりのフラボンおよびフラバノン濃度は、ラフィノースを含むSC最少培地と比較して各々1.2倍および1.4倍増加した。炭素源としてアセテートを用いて得られた細胞数当たりのフラボンおよびフラバノン濃度を表16に示す。
【0130】
【表16】

【0131】
総じて、これらの結果により、フラボノイドの生合成のためにはアセテートがより優れた炭素源であり、組換え酵母からのフラボンの生成は、植物抽出物に関する現在の方法に匹敵する代替法たり得ることが立証される。これをさらに確認するために、我々はアピゲニンとルテオリンをパセリの葉から(この場合、フラボンはFSI経路で生成される)およびキンギョソウの花弁から(この場合、フラボンはFSII経路で生成される)抽出した。葉のmg当たりおよそ3mgのアピゲニンおよび0.01mgのルテオリンがパセリから抽出され、花弁のmg当たりおよそ0.2μgのアピゲニンと0.05μgのルテオリンがキンギョソウから抽出された。両場合に、クリシンは同定されなかった。
【0132】
フラボンによるフラバノンの生合成の調節。酵母組換え株は、フラボン生合成の2つの二者択一的経路をさらに調べる機会を提供した。C4H(当該経路における他の膜結合タンパク質)を迂回するために、ケイ皮酸の代わりにp-クマリン酸を、SC-Leu-Trp-最少培地中の酵母株INV-4G-FSIとINV-4G-FSII+CPR1に供給した。一つの興味深い所見は、2mg/Lのアピゲニンを生成したFSIIを発現している株(14mg/L)よりも、より多くのアピゲニン(3mg/L)を生成したFSIを発現している酵母株(2.4mg/L)で、ナリンゲニンが約6倍少なく蓄積したことであった(図4A、4B)。カフェー酸をフェニルプロパノイドプレカーサーとして用いたフィーディング試験により、INV-4G+FSI(1.8mg/Lルテオリン:12mg/Lエリオジクチオール)およびINV-4G+FSII+CPR1(1mg/Lルテオリン;13mg/Lエリオジクチオール)において同様の量のルテオリンおよびエリオジクチオール生合成を生じた(図24C、24D)。
【0133】
INV-4G+FSIがINV-4G+FSII+CPR1よりも多くのアピゲニンを生成することを考慮して、我々は、フラバノンの生合成がアピゲニンによりフィードバック阻害される可能性を試験した。この目的のために、4つのフラバノン生合成遺伝子(INV-4G)のみを運搬している組換え酵母株を、YP-4Gと空のYCplac22プラスミドを同時に挿入することにより作製した。INV-4Gを、次いで、アピゲニンの存在下、クマリン酸からナリンゲニンを生成する能力に関して試験した。図25Aに示すように、アピゲニンを培養培地に添加した時、INV-4Gは種々の効率でナリンゲニンを生成した。1mg/Lのアピゲニンの存在下、定常期でのナリンゲニンの生成は14%まで低下した。より顕著な効果が3mg/Lおよび10mg/Lのアピゲニンの存在下に観察され、これは約60%および85%の生成物の低下を示した。全培養物は同様の増殖特性を示した(結果は示さず)ので、全ての場合に、ナリンゲニン生成の低下がより少ないバイオマスの生成から生じたのではないことに注意することが重要である。
種々のルテオリン濃縮物の存在下での、INV-4Gによるカフェー酸からのエリオジクチオール生成の効率も試験した。アピゲニンと異なり、ルテオリンは酵母でのフラバノンの生合成を調節(フィードバック阻害)しなかった(図25B)。総じて、これらのデータにより、アピゲニンがその自身の生合成のフィードバックインヒビターとして、投与量依存的に作用することを示された。
【0134】
[実施例8]
本実施例ではフラバン-4-オールの生成を記載する。
材料および方法
植物材料およびcDNAクローン
RNA抽出のために用いた植物組織には、アンスリアム・アンドレアナムからの赤色の仏炎苞および赤色の肉穂花序、ローザ・ヒブリダ・シービー.「ミニローズ」からの花弁、リリアム・ヒブリド・シービー.「スターゲイザー(Star Gazer)」からの花弁、ストロベリー(フラガリア・アナナッサ)からの花および果実(種々の成長段階のもの)およびトマトの若葉が含まれる。植物材料は、採取後、液体窒素で迅速に凍結し、さらなる使用まで-70℃で保存した。一般的なアサガオ(イポモエア・パープレア)系統KK/FP-39およびイポモエア・ニルのDFR cDNAは日本の基礎生物学の国立研究所のシゲル・イリダ博士の好意で譲り受けた。
【0135】
化学物質
本試験で使用した[14C]-標識フラボノイドは、Fischer等.1988に記載されているように、酵母中のcDNAクローンの異種発現により得られた異なる組換えタンパク質を用いて合成した。生成物を薄層クロマトグラフィー(TLC)を用いて分析した。
DNA操作
植物材料からの全RNAはRNイージー・プラント・ミニキット(キアゲン、USA)を製造業者の指示に従い用いて単離した。DFR構造遺伝子の逆転写およびエンド-トゥ-エンドPCRはスーパースクリプト(登録商標)ワン-ステップRT-PCRをプラチナ(登録商標)Taq(インビトロジェン、USA)と共に用いて行った。エイ.サリアナ、アイ.ニルおよびアイ.パープレアからのDFR遺伝子は増幅高性能プラスPCRシステム(ロッシュ、ドイツ)を用いてcDNAクローンから増幅した。各植物DFRのために設定したプライマーを表17に示す。PCRプライマー設計のために用いた受諾番号は次の通りである。:エイ.アンドレアナムにつきAY232494、アール.ヒブリダにつきD85102、エル.ヒブリドにつきAB058641、エフ.アナナッサにつきAF029685、エイ.サリアナにつきAB033294、アイ.パープレアにつきAB018438、およびアイ.ニルにつきAB006792。全ての場合に、PCR生成物をTOPO T/AクローニングベクターpTrcHis2-TOPO(インビトロジェン)に、強いIPTG-誘導性trcプロモーター下にクローン化した。全てのクローン化されたdfr cDNAは直接配列決定した。
【0136】
【表17】

【0137】
組換えタンパク質の発現
空の(対照)または種々のcDNA配列を保持しているベクターpTrcHis2-TOPOをイー.コリ株TOP10F'(インビトロジェン)に形質転換した。個々のコロニーを一晩、100μg/mLのアンピシリンを含む3mLのルリア-ブロス(LB)培地で一晩増殖させた。シード培養物を翌日用いて、0.05の600nm(A600)での初期アブソーバンスで50mLの主培養を開始した。主培養物を37℃で、A600が0.5-0.8に達するまで増殖させた。この時点で、インデューサーIPTG(イソプロピルβ-チオガラクトシド)を2mMの終濃度で添加し、培養物を4時間30℃で増殖させた。細胞を遠心分離により回収し、5mLのバッファー(0.1MK2HPO4/KH2PO4、pH6.5)に再懸濁し、超音波またはガラスビーズのいずれかで溶解した。
【0138】
インビトロアッセイでのDRFの薄層クロマトグラフィー(TLC)分析
インビトロDFRおよびFNR酵素反応を、186Bpの放射能標識した基質を用いて行い、インキュべーションを30℃で、DRF試験のために30分-1時間、FNR試験のために30分-2.5時間行った。酢酸エチル抽出をインキュべーション期間の終わりに、100μLの酢酸エチルを用いて(2回)行った。有機相を、予めコートしたTLCセルロースプレート(メルク、ドイツ)にて分析した。生成物、ロイコアントシアニンとフラバン-4-オールを個々の基質、ジヒドロフラボノールおよびフラバノンから、クロロホルム:酢酸:水(10:9:1)システムのクロマトグラフィーにより分離した。放射能活性の検出および定量は、Fuji BAS1000バイオ-イメージング・アナライザーを用いて行った。タンパク質含量を、クリスタリンBSAを標準として用いるローリー法を用いて決定した。インビトロ反応生成物は、マルス・ドメスティカからの異種発現DFRタンパク質(Punyasiri等、2004, Arch.Biochem. Biophys., 431:22-30)を用いてインビトロ反応から既に公開されたRf値により同定した。クロロホルム:酢酸:水(10:9:1)でのTLCクロマトグラフィーを用いて、種々のフラボノイドのRf(×100)値は、DHK:68;DHQ:35;DHM:11;NAR:93;ERI:61;LPg:18;LCy:8;LDp:14;Apf:45;Ltf:18である。
【0139】
組換えイー.コリのファーメンテーション生成物の高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析
シェーク-フラスコ試験を行って、種々の市場入手可能なフラバノン、例えばフラバノン、7-ヒドロキシフラバノン、ヘスペレチン、5,7-ジメトキシフラバノン、NARおよびERI等に対するエイ.アンドレアナムDRFのフラバノン・レダクターゼ活性を試験した。アンスリアムDFRを保持している組換えイー.コリのシード培養物を100μg/mLのアンピシリンを含むLB中で増殖させた。24時間後、前播種物を用いて50mLの主培地に播種し、これを、A600が0.5に達するまで37℃でインキュベートした。IPTGおよびフラバノン基質を各々2mMおよび0.4mg/mLの終濃度で添加し、回収前の24時間、インキュベーションを30℃で行った。培養上清中のフラボノイド生成物を2回、等体積の酢酸エチルで抽出した。有機溶媒を、ロータリエバポレーターを用いて回収および蒸発し、残存物を水中に溶解した。
【0140】
生成物をAgilent HPLC1100シリーズ装置をダイオードアレイディテクターと共に用いてHPLCにより分析した。HPLCは、逆相ZORBAX SB-C18カラム(直径4.6mm×150mm)を用い、アセトニトリル(溶媒A)および水(溶媒B)勾配を1ml/分の流速で用いて行った。HPLCプログラム条件は以下のとおりである。:10%〜40%A(0-10分)、40%〜60%A(10-15分)、60%A(15-20分)。280nmでのアブソーバンスを全ての場合にモニターした。フラバン-4-オールの保持時間は、既に記載されるように(Pouget等、2000、テトラヘドロン、56: 6047-6052)調製した基準2,4-シス-フラバン-4-オールおよび2,4-シス-7-ヒドロキシフラバン-4-オール標準と比較した。合成された種々のフラバン-4-オールのUVマキシマムは次のとおりであった。:2,4-シス-フラバン-4-オールにつき276nm;2,4-トランス-フラバン-4-オールにつき275nm;2,4-シス-7-ヒドロキシフラバン-4-オールにつき281nm;および2,4-トランス-7-ヒドロキシフラバン-4-オールにつき279nm。
【0141】
結果
植物DRFのイー.コリ発現ベクターへのモレキュラークローニングおよびタンパク質の発現
我々は、種々の植物DFRオープンリーディングフレームの全長cDNAを、PCRおよびRT-PCRにより、Genbankにて入手可能な配列情報を用いて増幅した。エイ.アンドレアナムの場合、赤色の仏炎苞または赤色の肉穂花序のいずれかから抽出されたRNAをテンプレートとして用いるRT-PCRにより、dfrに対応するcDNAフラグメントを得た。ストロベリーの場合、(試験した全ての異なる発達段階の)果実から単離されたRNAからのみdrf cDNAが増幅されたが、花からは増幅されなかった。
【0142】
PCR生成物をpTrcHis2-TOPOイー.コリ発現ベクターにクローン化し、両方向で配列決定した。リリアム・ヒブリド・シーヴィー.「スター・ゲイザー」からのDFRのアミノ酸配列の場合、6および31アミノ酸が、シーヴィーエス.「アカプルコ」およびシーヴィー.「モントルー」の配列と比較して各々異なっていた。アイ.パープレアから単離されたDFRのアミノ酸配列の場合、234位での1アミノ酸の違いが、(系統KK/FP-39に関して)GenBankにて入手可能な配列と比較して同定された。
【0143】
DFR組換え酵素の生化学特性
組換えアンスリアムは、正常(6-7)に近接したpH値で、ジヒドロフラボノールとフラバノンに対して最大のインビトロ活性を示した(図26A)。これは、他のDFR酵素に関しても同様に最適のpH領域であった。全基質に関する最適の温度条件は25〜30℃の範囲内であった(図26B)。
【0144】
インビトロ反応は最適条件(pH6.5、30℃)を用いて行った。試験した各基質に関して、組換えDFRを用いた全反応は、セクション2.5で示される公知のRf値で同定される単一の生成物を示した。空のベクターを保持しているイー.コリからの粗抽出物を用いた場合、生成物は形成されなかった。DHQおよびDHMは全7つの組換え酵素により基質として受容されたが、エイ.アンドレアナム、エイ.サリアナ、アイ.ニル、アール.ヒブリダ、およびエフ.アナナッサから誘導された組換えDFR酵素のみ、LPgの形成を触媒することができた(表18)。エイ.アンドレアナムおよびストロベリーからの組換えDFRは、DHKを非常に効率的に利用したが、エイ.サリアナ、アイ.ニルおよびアール.ヒブリダからの組換えDFRは、DHKに関してかなり低い活性を示した。加えて、アイ.パープレアおよびエル.ヒブリドからのDFRを用いるアッセイでは、反応期間を延長した場合およびタンパク質の量を100μgまで増加したでも、Lpgは検出できなかった。全ての場合に、基質特異性は温度またはpH変化に依存すると考えられた。非常に興味深いことに、DHKに対する最高の特異的活性を有する2つのDFR組換え酵素、即ちエイ.アンドレアナムおよびエフ.アナナッサは、アミノ酸セリンおよびアラニン各々を、133位に有した(アミノ酸の番号付けは、アンスリウムDFR配列に基づく)(図4)。
DHKおよびDHQに対する組換え酵素の特異的活性を表18にまとめる。
【0145】
【表18】

【0146】
組換えDFR酵素のFNR活性
全ての機能的に発現された組換えDFR酵素はまた、FNR活性をも示した。ERIの還元生成物、LTFが全アッセイで検出されたので、ERIは、全てのDFR酵素のための普遍的な基質として作用した。しかし、NARを基質として用いた場合、APfは、DHKをも効率的に還元することができる組換えDFR酵素、即ち、エイ.アンドレアナム、アイ.ニル、アール.ヒブリダおよびエフ.アナナッサからの組換えDFR酵素との反応でのみ検出された(図27)。総じて、これらのアッセイは、フラバノンがDFR酵素により、ジヒドロフラボノールほど効率的には受容されなかったことを示す(酵素活性を表18に示す)。それらはまた、FNR活性が普遍的なDFR特性であることをも示す。
【0147】
NARおよびERIに加えて、組換えエイ.アンドレアナムDFR酵素を用いて、4つの他の市場入手可能なフラバノンを基質として試験した。これらフラバノンはラジオ-アイソトポマーとして合成され得ないので、バイオトランスフォーメーションアッセイをかかる目的のために選択した。組換えイー.コリ株はまた、非置換フラバノン並びに7-ヒドロキシフラバノンを対応するフラバン-4-オールへ還元したが、ヘスペレチンまたは5,7-ジメトキシフラバノンは還元しなかった。HPLC分析も、組換え培養物にフラバノンまたは7-ヒドロキシフラバノンいずれかを供給した場合に非常に接近して共に溶離する2つの生成物ピークを示した(図28)。溶離に対する第一のピークを、2,4-シス構造中心を有するフラバン-4-オール基準と比較し、次いで2,4-シス-フラバン-4-オールおよび2,4-シス-7-ヒドロキシフラバン-4-オール各々であると決定した。溶離に対する第二のピーク、主要酵素生成物は、2,4-シスフラバン-4-オールと殆ど同一のUV特性を共有したが、しかしそれらは2,4-トランスジアステレオマーであると予想された。
【0148】
本発明を本明細書中に示す実施例により説明したが、通常の変更が当該分野の専門家には明らかであろう。そのような変更は、本発明の範囲内にあることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0149】
【図1】植物におけるフラボノイド生合成経路。以下の省略を用いる。:C4H、クマレート4-ヒドロキシラーゼ;4CL、4-クマロイル-CoAリガーゼ、CHS、カルコン・シンターゼ;FSI、フラボン・シンターゼ;CHI、カルコン・イソメラーゼ;F3'HおよびFHT、フラバノン3-ヒドロキシラーゼ;F3'5'H、フラボノイド3'5'ヒドロキシラーゼ;DFR、ジヒドロフラボノール4-レダクターゼ;FNR、フラバノン・レダクターゼ;FLS、フラボノール・シンターゼ;LAR、ロイコアントシアニジン・レダクターゼ;ANS、アントシアニジン・シンターゼ;3-GT、UDP-グルコース:フラボノイド3-O-グルコシルトランスフェラーゼ。
【図2】ベクターpDGFA184を構築するために使用される方法の概要図。制限酵素に関して以下の省略を用いる。:P、Pst I;H、Hind III;D、Dra I;S、Sal I;K、Kpn I;E、EcoR V。trcプロモーターおよびリボゾーム結合部位(RBS)配列はベクターpTrcHis2-TOPOから誘導される。
【図3】異なる濃度のナリンゲニンの、空ベクターpK184を運搬しているイー.コリ株JM109の増殖特性における影響
【図4】「材料および方法」に記載したように行った、プラスミドpDGFA184を運搬している組換えJM109のシェークフラスコ上清のHPLC分析。A、ナリンゲニンを供給した場合に、組換え株から生成されたペラルゴニジン3-O-グルコシド(ピーク1);B、標準カリステフィンクロライド(ピーク1);C、ナリンゲニンを供給した、空のベクターpK184を運搬しているJM109のシェークフラスコ上清;D、ナリンゲニンを供給した場合に、組換え株から生成されたジヒドロケンペロール(ピーク2);E、標準ジヒドロケンペロール(ピーク2);F、ナリンゲニンを供給した組換え株から生成された副産物ケンペロール(ピーク3);残存出発物質ナリンゲニン(ピーク4)を示す;G、標準ケンペロール(ピーク3);H、エリオジクチオールを供給した組換え株から生成されたシアニジン3-O-グルコシド(ピーク5);I、標準クロマニンクロライド(ピーク5);J、エリオジクチオールを供給した、空のベクターpK184を運搬しているJM109のシェークフラスコ上清(対照);K、エリオジクチオールを供給した組換え株から生成されたジヒドロクエルセチン(ピーク6);L、標準ジヒドロクエルセチン(ピーク6);M、エリオジクチオールを供給した組換え株により生成された副産物クエルセチン(ピーク7);N、標準クエルセチン(ピーク7)。
【図5】pDGFA184を保持しているイー.コリJM109により生成された化合物(上)および標準カリステフィンクロライド(下)のイオンクロマトグラフ。
【図6】ベクターpCDF-PC4CL2、pET-CHS-CHIおよびpRSF-FLS1-F3Hを構築するのに使用される方法の概要図。制限酵素に関して以下の省略を用いる。:E、EcoR V;K、Kpn I;B、BamH I;P、Pst I;S、Sal I。用いるPCRおよびRT-PCRプライマー配列は表4に示す。
【図7】異なる濃度のケイ皮酸およびp-クマリン酸の、イー.コリの増殖特性における影響。(A)M9最少培地中で、および種々のケイ皮酸濃縮物の存在下で増殖したBL21*。(B)M9最少培地中で、および種々のp-クマリン酸濃縮物の存在下で増殖したBL21*。(C)LB最少培地中で、および種々のケイ皮酸濃縮物の存在下で増殖したBL21*。(D)LBリッチ培地中で、および種々のp-クマリン酸濃縮物の存在下で増殖したBL21*。
【図8】プラスミドpRSF-FLS1-F3Hを運搬している組換えBL21*のシェークフラスコ上清のHPLC分析。(A)ナリンゲニンを供給した場合に組換え株から生成されたケンペロール(1);(B)、標準ケンペロール(1);(C)、ナリンゲニン(3)を供給した場合に組換え株から生成されたジヒドロケンペロール(3);(D)、標準ジヒドロケンペロール(2);(E)、エリオジクチオールを供給した場合に組換え株から生成されたクエルセチン(4)およびジヒドロクエルセチン(5);(F)標準クエルセチン(4);(G)エリオジクチオール(6)を供給した場合に組換え株から生成されたジヒドロクエルセチン(5);(H)、標準ジヒドロクエルセチン(5)。
【図9】プラスミドpRSF-FLS1-F3H、pET-CHS-CHIおよびpCDF-PC4CL2を運搬している組換えBL21*のシェークフラスコ上清に関して行ったHPLC分析。(A)、p-クマリン酸を供給した場合に組換え株から生成されたケンペロール(1);(B)、p-クマリン酸を供給した場合に組換え株から生成されたナリンゲニン(2)およびジヒドロケンペロール(3);(C)、標準ジヒドロケンペロール(3);(D)、標準ナリンゲニン(2);(E)、カフェー酸を供給した場合に組換え株から生成されたエリオジクチオール(4);(F)、標準エリオジクチオール(4);(G)、ケイ皮酸を供給した場合に組換え株から生成されたピノセンブリン(5);(H)、標準ピノセンブリン(5)。
【図10】プラスミドYcc4c181を組み立てるために使用されるクローニング法の概要図。制限酵素に関して以下の省略を用いる。:H、Hind III;P、Pst I;X、Xba I;K、Kpn I;E、EcoR I。PCRまたはRT-PCRの第一ラウンドを行うことにより、4つの遺伝子C4H、Pc4CL-2chs、およびCHI-Aの各々を、クローニングベクターpYES2.1/V5-His-TOPOから誘導された酵母GAL1プロモーター下に置いた。PCRの第二ラウンドでは、各遺伝子をGAL1プロモーターと共に増幅し、酵母クローニングベクターYEplac181に連続的に配置した。使用されるPCRおよびRT-PCRプライマー配列は表6に示す。
【図11】「材料および方法」に記載したように行ったシェークフラスコ培養の逆相HPLC分析。AおよびD;ケイ皮酸を供給した、プラスミドYcc4c181を運搬している組換えサッカロマイセス・セレビジエのシェークフラスコ培養物;B、標準ナリンゲニン;E、標準ピノセンブリン;CおよびF、ケイ皮酸を供給した、空のベクターYEpLac181を運搬しているINVSC1のシェークフラスコ上清(対照);1、ナリンゲニン;2、ピノセンブリン。
【図12】「材料および方法」に記載したように行ったシェークフラスコ培養の逆相HPLC分析。A、p-クマリン酸を供給した、プラスミドYcc4c181を運搬している組換えサッカロマイセス・セレビジエのシェークフラスコ培養物;B、標準ナリンゲニン;C、p-クマリン酸を供給した、空のベクターYEpLac181を運搬しているINVSC1のシェークフラスコ上清(対照);D、カフェー酸を供給した、プラスミドYcc4cを運搬している組換えサッカロマイセス・セレビジエのシェークフラスコ培養物;E、標準エリオジクチオール;F、フェルラ酸を供給した、空のベクターYEpLac181を運搬しているINVSC1のシェークフラスコ上清(対照);1、ナリンゲニン;2、エリオジクチオール。
【図13】アフゼレキンのイー.コリ中での生成のために構築されるプラスミドのクローニング法。
【図14a】ベクターpET-CSCI、pCDF-4FおよびpCOLA-DLを含むBL21Starイー.コリを用いた、p-クマリン酸からのアフゼレキンの生成のためのファーメンテーション抽出物のHPLCグラフ。保持時間:アフゼレキン6.140分、p-クマリン酸7.428分、ジヒドロケンペロール9.635分、(2S)- ナリンゲニン12.736分。
【図14b】空のベクターpETDuet-1、pCDFDuet-1およびpCOLADuet-1を含むBL21Starイー.コリを用い、p-クマリン酸を用いた対照試験のファーメンテーション抽出物のHPLCグラフ。保持時間:p-クマリン酸7.458分。
【図14c】ベクターpCDF-FおよびpCOLA-DLを含むBL21Starイー.コリを用いた、(2S)-ナリンゲニンからのアフゼレキンの生成のためのファーメンテーション抽出物のHPLCグラフ。保持時間:シス-ロイコペラルゴニジン4.896分、トランス-ロイコペラルゴニジン5.772分、アフゼレキン6.174分、ジヒドロケンペロール9.674分、(2R/S)-ナリンゲニン12.786分。
【図14d】空のベクターpCDFDuet-1およびpCOLADuet-1を含むBL21Starイー.コリを用いた、(2R/S)-ナリンゲニンを用いた対照試験のファーメンテーション抽出物のHPLCグラフ。保持時間:(2R/S)-ナリンゲニン12.767分。
【図15】イー.コリ中での(+)-カテキンの生成のために構築されるプラスミドのクローニング法。
【図16a】ベクターpET-CSCI、pCDF-4FおよびpCOLA-DLを含むBL21Starイー.コリを用いた、カフェー酸からの(+)-カテキンの生成のためのファーメンテーション抽出物のHPLCグラフ。保持時間:(+)-カテキン4.966分、カフェー酸5.867分、ジヒドロクエルセチン8.185分、(2S)-エリオジクチオール11.068分。
【図16b】空のベクターpETDuet-1、pCDFDuet-1およびpCOLADuet-1を含むBL21Starイー.コリを用いた、カフェー酸を用いた対照試験のファーメンテーション抽出物のHPLCグラフ。保持時間:カフェー酸5.887分。
【図16c】ベクターpCDF-FおよびpCOLA-DLを含むBL21Starイー.コリを用いた、(2S)-エリオジクチオールからの(+)-カテキンの生成のためのファーメンテーション抽出物のHPLCグラフ。保持時間:シス-ロイコシアニジン3.786分、トランス-ロイコシアニジン4.655分、(+)-カテキン4.984分、ジヒドロクエルセチン8.196分、(2S)-エリオジクチオール11.059分。
【図16d】空のベクターpCDFDuet-1およびpCOLADuet-1を含むBL21Starイー.コリを用いた、(2S)-エリオジクチオールを用いた対照試験のファーメンテーション抽出物のHPLCグラフ。保持時間:(2S)-エリオジクチオール11.048分。
【図16e】(+)-カテキンの基準標準のHPLCグラフ。保持時間:(+)-カテキン4.965分。
【図17】フラボン生合成酵素を発現しているプラスミドを構築するのに用いられる方法の概要図。使用したPCRおよびRT-PCRプライマー配列を表11に示す。
【図18】プラスミドpCRT7-FSIを運搬している組換えBL21Starのシェークフラスコ上清からの抽出物に関して行ったHPLC分析−(a)エリオジクチオール(1)を供給した場合に、組換え株から生成されたルテオリン(2);(b)、空のベクターpCRT7/CTを運搬しているBL21Starを用い、エリオジクチオール(1)を供給した対照試験;(c)、標準ルテオリン(2)。
【図19】種々のプラスミドの組合せを運搬している組換えBL21Starのシェークフラスコ上清からの抽出物のHPLC分析。培養物はM9最少培地で増殖させた。(a)基準化合物カフェー酸(1)、p-クマリン酸(2)、エリオジクチオール(3)、ルテオリン(4)、ナリンゲニン(5)、アピゲニン(6)およびゲンクワニン(7);(b)プラスミドpRSF-4CL-FSIおよびpET-CHI-CHSを運搬している組換えBL21Starにp-クマリン酸を供給した場合に生成されたアピゲニン(6);(c)プラスミドpRSF-4CL-FSIおよびpET-CHI-CHSを運搬している組換えBL21Starにカフェー酸を供給した場合に生成されたルテオリン(4);(d)プラスミドpRSF-4CL-FSI、pET-CHI-CHSおよびpCDF-OMTを運搬している組換えBL21Starにp-クマリン酸を供給した場合に生成されたゲンクワニン(7)およびアピゲニン(6)。挿入図は、記載されるHPLCピークに対応する化合物のUV/Visスペクトルを示す。アピゲニン、ナリンゲニン、ゲンクワニン、ルテオリンおよびエリオジクチオールのアブソーバンスの最大は、各々266nmおよび36nm、288nm、268nmおよび330nm、266nmおよび348nm、286nmである。
【図20】プラスミドpRSF-4CL-FSIおよびpET-CHI-CHSを運搬しており、かつ種々のリッチおよび最少培地中で増殖させた組換えBL21Starの培養上清からの抽出物中のアピゲニン濃度/細胞数
【図21】空のベクターpRSFDuet-1およびpETDuet-1を運搬しているイー.コリBL21Star(対照)または、プラスミドpRSF-4CL-FSIおよびpET-CHI-CHSを運搬しており、かつM9最少培地中で、p-クマリン酸の存在下に増殖された組換えBL21Starの増殖特性およびアピゲニン生成。白丸および三角は、対照と組換えBL21Starの増殖に各々対応する。黒の菱形、黒四角および黒丸は、アピゲニンの細胞内量、細胞外量および全量に各々対応する。データ・ポイントは、3つの独立の培養物から取得した測定値から算定した平均値を示す。
【図22】組換え株INV-4G+FSIまたはINV-4G+FS2+CPR1ファーメンテーションのHPLC分析。A、HPLC特性1により分離される標準化合物。:ケイ皮酸(1)、p-クマリン酸(2)、カフェー酸(3)、ピノセンブリン(4)、ナリンゲニン(5)、エリオジクチオール(6)、クリシン(7)、アピゲニン(8)、ルテオリン(9);B、p-クマリン酸を供給した場合に組換え株から生成されたアピゲニンおよびナリンゲニン;C、カフェー酸を供給した場合に組換え株から生成されたルテオリンおよびエリオジクチオール;D、基準化合物のUV-アブソーバンススペクトル;E、HPLC特性2により分離される標準化合物;F、カフェー酸を供給した組換え株INV-4G+FSIから生成されたクリシン、アピゲニン、ピノセンブリンおよびナリンゲニン。挿入図は、組換え株から生成されたフラボノイド物質のUV-Visスペクトルを、基準化合物のものを上方に配置して示す。
【図23】組換え酵母株によるフラボノイドの生成。A、ラフィノースを炭素源として含むSC-Leu-Trp-最少培地中で増殖した組換え酵母株:B、アセテートを炭素源として含むMA-Leu-Trp-最少培地中で増殖した組換え酵母株。灰色のバー:INV-4G+FSI;白色のバー:INV-4G+FSII;黒色のバー:INV-4G+FSII+CPR1。生成物は30℃での46時間のファーメンテーション後に培養培地から抽出された。クリシン、アピゲニン、ピノセンブリン、およびナリンゲニンがケイ皮酸から同時に誘導された。カフェー酸の補充によりエリオジクチオールとルテオリンを生じた。
【図24】2つの酵母組換え株からのフラボンとフラバノンの生合成。A、p-クマリン酸からのアピゲニン;B、p-クマリン酸からのナリンゲニン;C、カフェー酸からのルテオリン;D、カフェー酸からのエリオジクチオール。白丸:INV-4G+FSI。黒丸:INV-4G+FSII+CPR1。全ファーメンテーションは、ラフィノースを炭素源として含むSC-Leu-Trp-最少培地中で行った。
【図25】酵母組換え株INV-4Gによるフラバノンの生成。(A)種々の濃度のアピゲニンの存在下でp-クマリン酸から生成されたナリンゲニン。(B)種々の濃度のルテオリンの存在下でカフェー酸から生成されたエリオジクチオール。四角:1mg/Lのフラボン:三角:3mg/Lのフラボン:菱形:10mg/Lのフラボン:丸:対照(フラボンなし)。
【図26】アンスリアムDFRのpHおよび温度への反応依存性。A)温度特性、B)pH特性。基質:DHK(白三角);NAR(黒三角);DHQ(白丸);ERI(黒丸)。
【図27】種々の組換えDFRのインビトロ反応のTLC分析:1.エイ.アンドレアナム、2.エイ.サリアナ、3.アイ.ニル、4.アイ.パープレア、5.エル.ヒブリド、6.アール.ヒブリダ、7.エフ.アナナッサ、8.対照:空のベクターpTrcHis2を保持しているイー.コリの粗抽出物。
【図28】アンスリアムDFRを発現している組換えイー.コリ培養物からのファーメンテーション抽出物の290nmでのHPLC分析。ファーメンテーションは種々のフラバノンを追加したLB培地を用いて行った。A)標準化合物2,4-シス-フラバン-4-オール(1a)。B)組換えイー.コリは、フラバノン(2)を基質として用いて2,4-シス-フラバン-4-オール(1a)および2,4-トランス-フラバン-4-オール(1b)を生成した。C)フラバノン(2)を与えた場合に、空のpTrcHis2ベクターを保持しているイー.コリを用いて、ファーメンテーション生成物を生成されなかった。D)標準化合物2,4-シス-7-ヒドロキシフラバン-4-オール(3a)。E)組換えイー.コリは、7-ヒドロキシフラバノン(4)を基質として用いて2,4-シス-7-ヒドロキシフラバン-4-オール(3a)および4-トランス-7-ヒドロキシフラバン-4-オール(3b)を生成した。F)7-ヒドロキシフラバノン(4)を与えた場合に、空のpTrcHis2ベクターを保持しているイー.コリを用いて、ファーメンテーション生成物は生成されなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
宿主細胞中でフラボノイドを生成する方法であって、
a)基質からの所望のフラボノイドの合成を指示するのに十分な1つ以上の酵素をコードする遺伝子のセットを含む外因性核酸を、前記宿主細胞に導入するステップ;
b)前記基質を前記細胞に供給するステップ;
c)前記細胞を、前記フラボノイドの前記細胞による合成を許容する条件下に培養するステップ;および、
d)前記フラボノイドを前記細胞から単離するステップ、
を含み、かつ、前記フラボノイドが、フラバノン、フラボン、フラボノール、ジヒドロフラボノール、フラバン-3-オール、フラバン-4-オール、フラバン-3,4-ジオール、アントシアニンおよびアントシアニジンから成る群から選択される方法。
【請求項2】
生成される前記フラボノイドがフラバノンである請求項1に記載の方法。
【請求項3】
生成される前記フラボノイドがフラボンである請求項1に記載の方法。
【請求項4】
生成される前記フラボノイドがフラボノールである請求項1に記載の方法。
【請求項5】
生成される前記フラボノイドがジヒドロフラボノールである請求項1に記載の方法。
【請求項6】
生成される前記フラボノイドがフラバン-3-オールである請求項1に記載の方法。
【請求項7】
生成される前記フラボノイドがフラバン-4-オールである請求項1に記載の方法。
【請求項8】
生成される前記フラボノイドがフラバン-3,4-ジオールである請求項1に記載の方法。
【請求項9】
生成される前記フラボノイドがアントシアニンである請求項1に記載の方法。
【請求項10】
生成される前記フラボノイドがアントシアニジンである請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記基質がフェニルプロパノイドである請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記基質がフラボノンであり、生成される前記フラボノイドが、フラボン、フラボノール、ジヒドロフラボノール、フラバン-3-オール、フラバン-4-オール、フラバン-3,4-ジオール、アントシアニンおよびアントシアニジンから成る群から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記フラボノイドが、アピゲニン、クリシン、ルテオリン、ピノセンブリン、ナリンゲニン、エリオジクチオール、アピフェロール、ルテオフェロール、ジヒドロクエルセチン、ジヒドロミレセチン、ジヒドロケンペロール、ケンペロール、クエルセチン、ミレセチン、ロイコペルゴニジン、ロイコシアニジン、ロイコデルフィニジン、アフゼレキン、カテキン、ガロカテキン、エピアフゼレキン、エピカテキン、エピガロカテキン、ペラルゴニジン、シアニジン、デフィニジン、ペラルゴニジン3-O-グルコシド、シアニジン3-O-グルコシド、デルフィニジン3-O-グルコシド、ペラルゴニジン3,5-O-グルコシド、シアニジン3,5-O-グルコシドおよびデルフィニジン3,5-O-グルコシドから成る群から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項14】
1つ以上のベクターを含む組成物であって、前記1つ以上のベクターが、フェニルプロパノイドまたは、フェニルプロパノイドからのフラボノイドの合成のための生合成経路におけるフェニルプロパノイドより下流の化合物から成る群から選択される基質からのフラボノイドの合成を指示するのに十分な酵素をコードする核酸配列を含み、前記フラボノイドが、フラバノン、フラボン、フラボノール、ジヒドロフラボノール、フラバン-3-オール、フラバン-3,4-ジオール、アントシアニンおよびアントシアニジンから成る群から選択される組成物。
【請求項15】
前記核酸分子がクマレート4-ヒドロキシラーゼ(C4H)、4-クマロイル-CoAリガーゼ(4CL)、カルコン・シンターゼ(CHS)、カルコン・イソメラーゼ(CHI)、フラボノイド3'5'-ヒドロキシラーゼ(F3'5'H)、フラバノン3-ヒドロキシラーゼ(FHT)、ジヒドロフラボノール4-レダクターゼ(DFR)、アントシアニジン・シンターゼ(ANS)および任意にUDP-グルコース:フラボノイド3-O-グルコシルトランスフェラーゼ(3-GT)をコードする請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
前記核酸分子がC4H、4CL、CHSおよびCHIをコードする請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
前記核酸分子がC4H、4CL、CHS、CHI、F3H、FHT、DFRおよびロイコアントシアニジン・レダクターゼ(LAR)をコードする請求項14に記載の組成物。
【請求項18】
前記核酸分子がC4H、4CL、CHS、CHI、F3H、FHTおよびフラボノール・シンターゼ(FLS)をコードする請求項14に記載の組成物。
【請求項19】
前記核酸分子がFHT、F3'5'H、DRF、ANSおよび3-GTをコードする請求項15に記載の組成物。
【請求項20】
請求項10に記載の組成物で形質転換された宿主細胞。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14a】
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【図14b】
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【図14c】
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【図14d】
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【図15】
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【図16a】
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【図16b】
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【図16c】
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【図16d】
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【図16e】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【公表番号】特表2008−505657(P2008−505657A)
【公表日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−521533(P2007−521533)
【出願日】平成17年7月11日(2005.7.11)
【国際出願番号】PCT/US2005/024525
【国際公開番号】WO2006/010117
【国際公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【出願人】(506194117)ザ リサーチ ファウンデイション オブ ステイト ユニバーシティー オブ ニューヨーク (11)
【Fターム(参考)】