組換型スクロースシンターゼを作製する方法、スクロース測定キットの作製におけるその使用、ADPグルコースを作製する方法、並びに、高濃度のADPグルコース及びデンプンを蓄積する葉及び貯蔵器官を有するトランスジェニック植物を得る方法
本発明は、大腸菌(Escherichia coli)の株においてスクロースシンターゼをコードする遺伝子を発現させることにより、大量の活性型の可溶性組換型スクロースシンターゼ(SS)を効率的に作製するための方法に関する。発現ベクターの使用により、このようにして作製された組換型SSがその迅速な精製を容易にするヒスチジン末端を有することが可能となる。さらに、本発明は、ADPGの作製に適したSSのアイソフォームをコードする、SS遺伝子の変異型の配列にも関する。本発明は、組換型SSの野生型及び変異型を用いた、ADPG及びUDPGを作製するための効率的な方法にも関する。本発明はさらに、スクロース測定試験装置を作製するためのSSの使用にも関する。最後に、本発明は、構成的に又はその貯蔵器官若しくは葉中でSS遺伝子を過剰発現し、SSの高いADPG合成活性の寄与により、(葉と貯蔵組織の双方において)高濃度のスクロース、ADPG、G6P、及びデンプンを有するトランスジェニック植物を得る方法に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大腸菌(Escherichia coli)の適切な株を使用することによる、可溶性且つ活性型の組換型スクロースシンターゼ(SS)作製の最適化、スクロース測定用のキットを作製するためのSSの使用、ADPグルコース(ADPG)合成用のSSの最適化された型の設計、並びに、SSを過剰発現する植物における細胞質ゾルADPGの過剰産生の結果として高レベルのADPG及びアミロース含量が増加したデンプンを蓄積する葉及び貯蔵組織を有するトランスジェニック植物の作製に関する。
【背景技術】
【0002】
デンプンは、植物における炭水化物の主要な貯蔵形態である。デンプンは、種子(コムギ、オオムギ、トウモロコシ、エンドウマメなど)や塊茎(特にジャガイモ及びヤムイモ)などの器官に大量に蓄積し、また、ヒトの食物の基本的な構成成分である。さらに、デンプンは、製紙工業、化粧品工業、製薬工業、及び食品工業において幅広く使用されており、また、生分解性プラスチック及び環境に優しい塗料の製造に不可欠な成分としても使用されている。デンプンは、共有結合したグルコース分子から構成されているため、この多糖類の合成に関与するプロセスを調査することが、工業生産の様々な領域における最優先事項である。
【0003】
ADPGは、従属栄養的な器官(図1A)及び葉(図2A)の双方において、植物におけるデンプン生合成の共通の前駆体であり、ADPGの産生は、酵素ADPGピロホスホリラーゼ(AGPアーゼ)又はADPGシンターゼ(EC2.7.7.27)によって専ら制御されていると一般に考えられている(Okita,T.W.(1992年)、「デンプン合成の代替経路はあるか。(Is there an alternative pathway for starch synthesis?)」Plant Physiol.100、560〜56頁;Muller−Rober,B.、Sonnewald,U.、Willmitzer,L.(1992年)、「トランスジェニックジャガイモにおけるADPグルコースピロホスホリラーゼの阻害は、糖を貯蔵した塊茎を生じ、塊茎の形成及び塊茎の貯蔵タンパク質遺伝子の発現に影響を及ぼす(Inhibition of the ADPglucose pyrophosphorylase in transgenic potatoes leads to sugar−storing tubers and influences tuber formation and expression of tuber storage protein genes)」EMBO J.11、1229〜1238頁;Stark,D.M.、Timmerman,K.P.、Barry,G.F.、Preiss,J.、Kishore,G.M.(1992年)、「ADPグルコースピロホスホリラーゼによる、植物組織中のデンプン量の調節(Regulation of the amount of starch in plant tissues by ADPglucose pyrophosphorylase)」Science258、287〜282頁;Neuhaus,E.H.、Hausler,R.E.、Sonnewald,U.(2005年)、「代謝経路に関するパラダイムを葉の中の一時的なデンプンに変える時間はない(No time to shift the paradigm on the metabolic pathway to transitory starch in leaves)」Trends Plant Sci.印刷中)。植物で産生されるデンプンの様々な用途は、デンプン粒の構造、並びに水性懸濁液中でのその粘度を決定する、アミロースとアミロペクチンの比率に主に基づいている。アミロースとアミロペクチンの比率は、特に、植物細胞中のADPGの濃度に依存している(Clarke,B.R.、Denyer,K.、Jenner,C.F.、Smith,A.M.(1999年)、「デンプン合成速度、アデノシン5’−ジホスホグルコース濃度、及び発育中のエンドウマメ胚におけるデンプンのアミロース含有量の関係(The relationship between the rate of starch synthesis,the adenosine 5’−diphosphoglucose concentration and the amylose content of starch in developing pea embryos)」Planta 209、324〜329頁)。
【0004】
SS(EC2.4.1.13、SS)(UDP−グルコース:D−フルクトース−2−グルコシルトランスフェラーゼ)は、スクロース及びUDPからのUDPG及びフルクトースの生成を触媒する可逆的酵素である。図1Aで示すように、SSは、その代謝プロセスが内胚乳や塊茎などの従属栄養組織中でのデンプンの産生を最終的にもたらす、UDPGを生成する役割を有すると従来考えられていたが(Zrenner,R.、Salanoubat,M.、Willmitzer,L.、Sonnewald,U.(1995年)、「トランスジェニックジャガイモ植物による、シンク強度に対するスクロースシンターゼの非常に重要な役割の証拠(Evidence for the crucial role of sucrose synthase for sink strength using transgenic potato plants)」 Plant J.7 97〜107頁;Baroja−Fernandez,E.、Munoz,F.J.、Saikusa,T.、Rodriguez−Lopez,M.、Akazawa,T.、Pozueta−Romero,J.(2003年)、「スクロースシンターゼは、植物の従属栄養組織におけるデンプン生合成に関係しているADPグルコースの新規な生成を触媒する(Sucrose synthase catalyzes the de novo production of ADPglucose linked to starch biosynthesis in heterotrophic tissues of plants)」Plant Cell Physiol.44、500〜509頁;Pozueta−Romero,J.、Munoz,F.J.、Rodriguez−Lopez,M.、Baroja−Fernandez,E.、Akazawa,T.(2003年8月)、「デンプン分野における新しい波(New waves in the starch field)」Lett.Plant Cell Physiol.24〜32頁))、この酵素が、対応する糖ヌクレオチドを生成するためにin vitroで他のヌクレオチド2リン酸を使用する潜在的な能力に関する参考文献がある(Murata,T.、Sugiyama,T.、Minamikawa,T.、Akazawa,T.(1966年)、「成熟中の米粒におけるデンプン合成の酵素機序。スクロースからデンプンへの変換の機序(Enzymic mechanism of starch synthesis in ripening rice grains.Mechanism of the sucrose−starch conversion)」Arch.Biochem.Biophys.113、34〜44頁;Delmer,D.P.(1972年)「暗所で黄化させたリョクトウ(Phaseolus aureus)芽生えに由来するスクロースシンターゼの精製及び諸特性(The purification and properties of sucrose synthase from etiolated Phaseolus aureus seedlings)」J.Biol.Chem.247、3822〜3828頁)。生理的な関連性には疑問があるが、(Okita,T.W.(1992年)、「デンプン合成の代替経路はあるか。(Is there an alternative pathway for starch synthesis?)」Plant Physiol.100、560〜56頁;Muller−Rober,B.、Sonnewald,U.、Willmitzer,L.(1992年)、「トランスジェニックジャガイモにおけるADPグルコースピロホスホリラーゼの阻害は、糖を貯蔵した塊茎を生じ、塊茎の形成及び塊茎の貯蔵タンパク質遺伝子の発現に影響を及ぼす(Inhibition of the ADPglucose pyrophosphorylase in transgenic potatoes leads to sugar−storing tubers and influences tuber formation and expression of tuber storage protein genes)EMBO J.11、1229〜1238頁)、SSが、従属栄養組織においても光合成組織においてもデンプン産生用に使用され得るADPGを直接生成できることが示唆されている(図1B及び2B)(Pozueta−Romero,J.、Perata,P.、Akazawa,T.(1999年)、「植物の従属栄養組織におけるスクロースからデンプンへの変換(Sucrose−starch conversion in heterotrophic tissues of plants)」Crit.Rev Plant Sci.18、489〜525頁;Baroja−Fernandez,E.、Munoz,F.J.、Akazawa,T.、Pozueta−Romero,J.(2001年)、「光合成組織におけるデンプン生合成の現在有力なモデルの再評価:スクロースシンターゼによる細胞質ゾルでのADPグルコース生成及び葉緑体におけるデンプンのサイクル状の代謝回転の出現に関する提案(Reappraisal of the currently prevailing model of starch biosynthesis in photosynthetic tissues:a proposal involving the cytosolic production of ADPglucose by sucrose synthase and occurrence of cyclic turnover of starch in the chloroplast)」Plant Cell Physiol.42、1311〜1320頁;Baroja−Fernandez,E.、Munoz,F.J.、Saikusa,T.、Rodriguez−Lopez,M.、Akazawa,T.、Pozueta−Romero,J.(2003年)、「スクロースシンターゼは、植物の従属栄養組織におけるデンプン生合成に関係しているADPグルコースの新規な生成を触媒する(Sucrose synthase catalyzes the de novo production of ADPglucose linked to starch biosynthesis in heterotrophic tissues of plants)」Plant Cell Physiol.44、500〜509頁;Baroja−Fernandez,E.、Munoz,F.J.、Zandueta−Criado,A.、Moran−Zorzano,M.T.、Viale,A.M.、Alonso−Casajus,N.、Pozueta−Romero,J.(2004年)、「デンプン生合成に関係しているADPグルコースの大半は、ソース葉の葉緑体の外部に存在している(Most of ADPglucose linked to starch biosynthesis occurs outside the chloroplast in source leaves)」Proc.Natl.Acad.Sci.USA101、13080〜13085頁)。(専ら、また状況に応じて生化学的な証拠に基づく)この仮説によれば、SSは、デンプンの生合成に必要なADPG分子の重要なプールの合成を司っている。しかし、この仮説は遺伝子工学又は従来の作物改良技術により実験的に実証されておらず、また、AGPアーゼが植物における唯一のADPG供給源であることを示す、遺伝子及び分子的な数え切れないほどの試験結果と一致していない(Okita,T.W.(1992年)、「デンプン合成の代替経路はあるか。(Is there an alternative pathway for starch synthesis?)」Plant Physiol.100、560〜56頁;Muller−Rober,B.、Sonnewald,U.、Willmitzer,L.(1992年)、「トランスジェニックジャガイモにおけるADPグルコースピロホスホリラーゼの阻害は、糖を貯蔵した塊茎を生じ、塊茎の形成及び塊茎の貯蔵タンパク質遺伝子の発現に影響を及ぼす(Inhibition of the ADPglucose pyrophosphorylase in transgenic potatoes leads to sugar−storing tubers and influences tuber formation and expression of tuber storage protein genes)EMBO J.11、1229〜1238頁;Neuhaus,E.H.、Hausler,R.E.、Sonnewald,U.(2005年)、「代謝経路に関するパラダイムを葉の中の一時的なデンプンに変える時間はない(No time to shift the paradigm on the metabolic pathway to transitory starch in leaves)Trends Plant Sci.印刷中)。
【0005】
UDPGやADPGなどの糖ヌクレオチドは、グルコース−1−リン酸(G1P)と呼ばれる高価な物質の使用に基づき、それぞれUDPGピロホスホリラーゼ(UGPアーゼ)やAGPアーゼなどの酵素によって触媒されるピロホスホリラーゼ反応により商業的に製造されている。糖ヌクレオチドを作製するためのこの手法の代替手法はSSの使用に基づいているが、代替手法の発展は、多数の真核生物タンパク質を発現し効率的にプロセッシングするための大腸菌の制約により大きく妨げられている。この制約に触発されて、一部の研究者は、酵母など真核生物タイプの生物工場を使用することにより組換型SSを作製した(Zervosen,A.、Romer,U.、Elling,L.(1998年)、「組換型スクロースシンターゼの応用−ADP−グルコースの大量合成(Application of recombinant sucrose synthase−large scale synthesis of ADP−glucose)」J.Mol.Catalysis B:Enzymatic5、25〜28頁;Romer,U.、Schrader,H.、Gunther,N.、Nettelstroth,N.、Frommer,W.B.、Elling,L.(2004年)、「糖質工学のための、ジャガイモ(Solanum tuberosum L.)から得た組換型スクロースシンターゼIの発現、精製、及び性質決定(Expression,purification and characterization of recombinant sucrose synthase I from Solanum tuberosum L.for carbohydrate engineering)」J.Biotechnology 107、135〜149頁)。或いは、糖ヌクレオチドを作製するためのSSは、植物抽出物からタンパク質を精製する高価なプロセスによって精製しなければならなかった(特許DE4221595(1993年)、「ヌクレオチドにより活性化された糖又はオリゴ糖の作製に有用な精製されたスクロースシンターゼ酵素(Purified sucrose synthase enzyme useful for production of nucleotide−activated sugars or oligosaccharides)」。植物抽出物から得られるこのSSには、UDPを好み、ADPに対する親和性が非常に低いという不都合がある(Pressey R(1969年)、「ジャガイモのスクロースシンターゼ:精製、諸特性、及び成熟に伴う活性の変化(Potato sucrose synthase:purification,properties,and changes in activity associated with maturation)」Plant Physiol.44、759〜764頁;Nguyen−Quock,B.、Krivitzky,M.、Huber,S.C.、Lecharny,A.(1990年)、「発育中のトウモロコシの葉のスクロースシンターゼ(Sucrose synthase in developing maize leaves)」Plant Physiol.94、516〜523頁;Morell,M.、Copeland,L.(1985年)、「ダイズ根粒のスクロースシンターゼ(Sucrose synthase of soybean nodules)」Plant Physiol.78、149〜154頁))。大腸菌(E.coli)培養物からの組換型SSの作製が最近実現された(Nakai,T.、Tonouchi,N.、Tsuchida,T.、Mori,H.、Sakai,F.、Hayashi,T.(1997年)、「大腸菌における、リョクトウ芽生え由来のスクロースシンターゼの発現及び性質決定(Expression and characterization of sucrose synthase from mung bean seedlings in Escherichia coli)」Biosci.Biotech.Biochem.61、1500〜1503頁;Nakai,T.、Konishi,T.、Zhang,Z−Q.、Chollet,R.、Tonouchi,N.、Tsuchida,T.、Yoshinaga,F.、Mori,H.、Sakai,F.、Hayashi,T.(1997年)、「リョクトウスクロースシンターゼのスクロースに対する見かけの親和性の増大は、in vitroのリン酸化又はSer11の特異的変異誘発によって引き起こされる(An increase in apparent affinity for sucrose of mung bean sucrose synthase is caused by in vitro phosphorylation or directed mutagenesis of Ser11)」Plant Cell Physiol.39,1337〜1341頁;Barratt,D.H.P.、Barber,L.、Kruger,N.J.、Smith,A.M.、Wang,T.L.、Martin,C.(2001年)、「エンドウマメスクロースシンターゼの多数の異なるアイソフォーム(Multiple,distinct isoforms of sucrose synthase in pea)」Plant Physiol.127、655〜664頁;Christopher,B.、William,B.、Robert,H.「細菌のスクロースシンターゼ組成物及び使用方法(Bacterial sucrose synthase compositions and methods of use)」特許WO9803637)。しかし、この原核生物系におけるSSの作製には、以下のような問題が伴っていた。即ち、(1)作製されるSSの量が非常に少ない(細菌1グラム当たり30マイクログラム(Nakai,T.、Tonouchi,N.、Tsuchida,T.、Mori,H.、Sakai,F.、Hayashi,T.(1997年)、「大腸菌における、リョクトウ芽生え由来のスクロースシンターゼの発現及び性質決定(Expression and characterization of sucrose synthase from mung bean seedlings in Escherichia coli)」Biosci.Biotech.Biochem.61、1500〜1503頁;Li,C.R.、Zhang,X.B.、Hew,C.S.(2003年)、「熱帯の着生ラン、オンシジウムゴルディアナ(Oncidium goldiana)から得たスクロースシンターゼ遺伝子のクローニング、性質決定、及び発現解析(Cloning,characterization and expression analysis of a sucrose synthase gene from tropical epiphytic orchid Oncidium goldiana)」Physiol.Plantarum 118、352〜360頁)、(2)得られた活性SSの量が非常に少なく、又はゼロであった(0.05〜1.5ユニット/mg(Nakai,T.、Tonouchi,N.、Tsuchida,T.、Mori,H.、Sakai,F.、Hayashi,T.(1997年)、「大腸菌における、リョクトウ芽生え由来のスクロースシンターゼの発現及び性質決定(Expression and characterization of sucrose synthase from mung bean seedlings in Escherichia coli)」Biosci.Biotech.Biochem.61、1500〜1503頁;Li,C.R.、Zhang,X.B.、Hew,C.S.(2003年)、「熱帯の着生ラン、オンシジウムゴルディアナから得たスクロースシンターゼ遺伝子のクローニング、性質決定、及び発現解析(Cloning,characterization and expression analysis of a sucrose synthase gene from tropical epiphytic orchid Oncidium goldiana)」Physiol.Plantarum 118、352〜360頁);5.6 U/mg(Romer,U.、Schrader,H.、Gunther,N.、Nettelstroth,N.、Frommer,W.B.、Elling,L.(2004年)、「糖質工学のための、ジャガイモから得た組換型スクロースシンターゼIの発現、精製、及び性質決定(Expression,purification and characterization of recombinant sucrose synthase I from Solanum tuberosum L.for carbohydrate engineering)」J.Biotechnology 107、135〜149頁))、(3)組換型SSは、クロマトグラフィー、電気泳動、等電点電気泳動などタンパク質を精製する従来の方法によって精製されなければならなかった。これらの方法は併用すると費用がかかり、また、均一な状態のタンパク質精製を保証するものではない、(4)細菌を用いた仕組みではタンパク質を正しく折り畳むことができないため、SSの大半は封入体に送られ、又は不活性な凝集体の形で蓄積される(Miroux,B.、Walker,J.E.(1996年)「大腸菌におけるタンパク質の過剰産生:いくつかの膜タンパク質及び球状タンパク質の高レベルの合成を可能にする変異宿主(Over−production of proteins in Escherichia coli:mutant hosts that allow synthesis of some membrane proteins and globular proteins at high levels)」J.Mol.Biol.260、289〜298頁)、という諸問題があった。
【0006】
本発明は、大腸菌の適切な株の使用、並びに、活性型の組換型SSの様々な変異体の大量作製及び迅速且つ容易な精製を可能にする適切なベクターの使用に基づく系の開発を説明する。これらの変異体のうちのいくつかは、植物抽出物から得られる酵素よりADPに対する親和性がより大きく、スクロース、UDP、及びADPなど安価な物質からUDPG及びADPGの双方を作製するのに使用することができる。
【0007】
クロマトグラフィー技術は、植物抽出物、血清、尿、果汁、ブドウ酒、果実、食料品など複雑なサンプルのスクロース含有量を測定するための強力な手法となる(D’Aoust,M−A.、Yelle,S,Nguyen−Quock,B.(1999年)、「トマトフルーツのスクロースシンターゼのアンチセンス阻害により、結実及び幼果のスクロースアンローディング能力が低減される(Antisense inhibition of tomato fruit sucrose synthase decreases fruit setting and the sucrose unloading capacity of young fruit)」Plant Cell 11、2407〜2418頁;Tang,G−Q.、Sturm,A.(1999年)、「ニンジンのスクロースシンターゼのアンチセンス抑制は、スクロース分配ではなく成長に影響を及ぼす(Antisense repression of sucrose synthase in carrot affects growth rather than sucrose partitioning)」Plant Mol.Biol.41、465〜479頁;Frias,J.、Price,K.R.、Fenwich,G.R.、Hedley,C.L.、Sorensen,H.、Vidal−Valverde,C.(1996年)J.Chromatogr.A719,213〜219頁)。このような技術は、高度に専門的な技術者を必要とし、また、設備に多額の投資を要する。あいにく、酵素インベルターゼの作用によるスクロース分子の加水分解、並びにそれに続くグルコース及び/又はフルクトース分子の分光光度的若しくは蛍光定量的測定に基づく代替方法(Sweetlove,L.J.、Burrell,M.M.、ap Rees,T.(1996年)、「ADPグルコースピロホスホリラーゼを増大させたトランスジェニックジャガイモの塊茎におけるデンプン代謝(Starch metabolism in tubers of transgenic potato with increased ADPglucose pyrophosphorylase)」Biochem.J.320、493〜498頁;Stitt,M.、Lilley,R.M.、Gerhardt,R.、Heldt,H.W.(1989年)、「植物の葉の特定の細胞及び細胞内コンパートメントにおける代謝レベル(Metabolite levels in specific cells and subcellular compartments of plant leaves)」Methods Enzymol.174、518〜552頁;Holmes,E.W.(1997年)、「スクロースを測定するために共役させた酵素アッセイ(Coupled enzymatic assay for the determination of sucrose)」Anal.Biochem.244、103〜109頁;分析方法(1996年)、「果実及び野菜果汁評価の実施要綱(Code of Practice for Evaluation of Fruit and Vegetable Juices)」欧州経済共同体の欧州果汁協会(Association of the Industry of Juices and Nectars from Fruits and Vegetables))は、サンプル中に存在する内因性グルコース及び/又はフルクトースに対応する測定値の控除など技術的性質の限界の影響を受ける。サンプル中に多量のグルコース及び/又はフルクトースが存在すると、信頼がおけ、且つ正確なスクロースの測定を妨げるバックグラウンドノイズが加えられることがある。大多数の場合では、サンプルの真のスクロース含有量に関する信頼のおける申告を発表する前に、徹底的な管理を実施する必要がある(Worrell,A.C.、Bruneau,J−M.、Summerfelt,K.、Boersig,M.、Voelker,T.A.(1991年)、「トウモロコシのスクロースリン酸シンターゼをトマトにおいて発現させると葉の糖分配が変化する(Expression of a maize sucrose phosphate synthase in tomato alters leaf carbohydrate partitioning)」Plant Cell 3、1121〜1130頁)。インベルターゼの使用に基づくスクロース測定キットは、Sigma社、Biopharm GmbH社、及びMegazyme社などの会社から入手可能である。或いは、細菌由来のスクロースホスホリラーゼの作用によって遊離されるグルコース−1−リン酸の測定に基づく、スクロースの自動測定法も開発されている(Vinet,B.、Panzini,B.、Boucher,M.、Massicotte,J.(1998年)、「血清及び尿中のスクロースを測定するための自動酵素アッセイ、並びに胃損傷のマーカーとしてのその使用(Automated enzymatic assay for the determination of sucrose in serum and urine and its use as a marker of gastric damage)」Clin.Chem.44、2369〜2371頁)。本発明は、SS、及びADPG又はUDPGを加水分解する共役酵素の使用に基づく、サンプル中のスクロース測定用の単純且つ信頼がおけ、安価な代替方法の開発を説明する。
【0008】
ADPGの細胞内レベルを決定する因子に関する考察は、主に、合成酵素AGPアーゼの調節を中心としてきた(Preiss(1988年)、「デンプンの生合成及びその調節(Biosynthesis of starch and its regulation)」The Biochemistry of Plants.Vol.14、Academic Press、ニューヨーク、182〜249頁;Pozueta−Romero,J.、Perata,P.、Akazawa,T.(1999年)、「従属栄養組織におけるスクロースからデンプンへの変換(Sucrose−starch conversion in heterotrophic tissues)」Crit.Rev Plant Sci.18、489〜525頁)。実際に、ADPGの作製、及び工業的利益を有するデンプンを産生する植物の作製に関する特許及び科学論文の多くは、AGPアーゼの使用を中心としている(Stark,D.M.、Timmerman,K.P.,Barry,G.F.、Preiss,J.、Kishore,G.M.(1992年)、「ADPグルコースピロホスホリラーゼによる、植物組織中のデンプン量の調節(Regulation of the amount of starch in plant tissues by ADPglucose pyrophosphorylase)」Science258、287〜282頁;Slattery,C.J.、Kavakli,H.、Okita,T.W.(2000年)「量を増やし質を高めるためのデンプン改変(Engineering starch for increased quantity and quality)」Trends Plant Sci.5、291〜298頁)。しかし、生化学的な最近の科学調査は、まだ遺伝子/分子的な証拠によって確認されていないものの、図1B及び2Bで示すように、SSが、デンプンの生合成に必要なADPGの直接合成に関与している可能性があることを示唆している(Baroja−Fernandez,E.、Munoz,F.J.、Saikusa,T.、Rodriguez−Lopez,M.、Akazawa,T.、Pozueta−Romero,J.(2003年)、「スクロースシンターゼは、植物の従属栄養組織におけるデンプン生合成に関係しているADPグルコースの新規な生成を触媒する(Sucrose synthase catalyzes the de novo production of ADPglucose linked to starch biosynthesis in heterotrophic tissues of plants)」Plant Cell Physiol.44、500〜509頁)。この仮説は、(a)SSは、葉におけるデンプン産生に関係があるとされたことがこれまでなかったこと、(b)SSによって生成されたADPGの細胞質ゾル中のプールをプラスチド内に存在するデンプン合成酵素に連結するADPG輸送体の存在が、プラスチドの膜において必要とされること、(c)SSがADPGを生成する供給源として関与することは、AGPアーゼが唯一のADPG供給源であることを示すと考えられる、生化学/遺伝子/分子的な多くの試験結果と直接的に矛盾していること(Okita,T.W.(1992年)、「デンプン合成の代替経路はあるか。(Is there an alternative pathway for starch synthesis?)」Plant Physiol.100、560〜56頁;Muller−Rober,B.、Sonnewald,U.、Willmitzer,L.(1992年)、「トランスジェニックジャガイモにおけるADPグルコースピロホスホリラーゼの阻害は、糖を貯蔵した塊茎を生じ、塊茎の形成及び塊茎の貯蔵タンパク質遺伝子の発現に影響を及ぼす(Inhibition of the ADPglucose pyrophosphorylase in transgenic potatoes leads to sugar−storing tubers and influences tuber formation and expression of tuber storage protein genes)」EMBO J.11、1229〜1238頁;Stark,D.M.、Timmerman,K.P.、Barry,G.F.、Preiss,J.、Kishore,G.M.(1992年)、「ADPグルコースピロホスホリラーゼによる、植物組織中のデンプン量の調節(Regulation of the amount of starch in plant tissues by ADPglucose pyrophosphorylase)」Science258、287〜282頁;Neuhaus,E.H.、Hausler,R.E.、Sonnewald,U.(2005年)、「代謝経路に関するパラダイムを葉の中の一時的なデンプンに変える時間はない(No time to shift the paradigm on the metabolic pathway to transitory starch in leaves)」Trends Plant Sci.印刷中)を踏まえて、特に物議をかもしている。おそらくはこれらすべての理由から、今日まで、高レベルのデンプンを製造するために、SSを過剰発現する植物が設計されたことはなかった。しかし、本発明は、ADPG及びデンプンの生成を増大させるためにSSを過剰発現するトランスジェニック植物の作製を初めて説明する。逆に言えば、本発明者らは、AGPアーゼが無いためにデンプンを欠く植物が正常なADPGレベルを有していることを示す。これはすべて、図1B及び2Bで示すように、SSが、デンプンの生合成に必要とされるADPGの直接的な合成に関与しており、また、植物細胞中で蓄積されるADPGの大半の合成を司っていることを示す。
【0009】
様々な研究は、SSは貯蔵組織におけるUDGPの合成に関与している(しかし、ADPGの合成には関与していない)とする図1Aに示す手法に基づいているが、SSの活性が低減された結果としてデンプン含有量が低減した植物の作製を説明している(Chourey,P.S.、Nelson,O.E.(1976年)、「トウモロコシのしわ型(shrunken)−1変異によって条件づけられる酵素欠陥(The enzymatic deficiency conditioned by the shrunken−1 mutations in maize)」Biochem.Genet.14、1041〜1055頁;Zrenner,R.、Salanoubat,M.、Willmitzer,L.、Sonnewald,U.(1995年)、「トランスジェニックジャガイモ植物による、シンク強度に対するスクロースシンターゼの非常に重要な役割の証拠(Evidence for the crucial role of sucrose synthase for sink strength using transgenic potato plants)」 Plant J.7、97〜107頁;Tang,G−Q.、Sturm,A.(1999年)、「ニンジン(Dancus carota L.)のスクロースシンターゼのアンチセンス抑制は、スクロース分配ではなく成長に影響を及ぼす(Antisense repression of sucrose synthase in carrot(Dancus carota L.)affects growth rather than sucrose partitioning)」Plant Mol.Biol.41、465〜479頁)。この点で、図1B及び2Bに示す代謝スキームに従ってADPGのレベルが増大した結果としてデンプン含有量の多い植物を作製するためにSSの過剰発現を使用し得るという実験的証拠はない。しかし、細胞壁の多糖類を生合成するための前駆体分子(UDPG)を生成するSSの能力に基づいて、SSの過剰発現の結果として繊維含有量の多いワタ植物又はセルロース含有量の多い穀粒の作製を説明した研究が公表され、また、特許権を与えられている(Timothy,H.J.、Xiamomu,N.、Kanwarpal,S.「茎及び穀粒の質を改善するためのスクロースシンターゼ遺伝子の操作(Manipulation of sucrose synthase genes to improve stalk and grain quality)」特許WO02067662;Robert,F.、Danny,L.、Yong−Ling,R.「植物組織におけるスクロースシンターゼ遺伝子発現の改変及びその用途(Modification of sucrose synthase gene expression in plant tissue and uses therefor)」特許WO0245485;Christopher,B.、William,B.、Robert,H.「細菌のスクロースシンターゼ組成物及び使用方法(Bacterial sucrose synthase compositions and methods of use)」特許WO9803637)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、第1に、大腸菌の適切な株の使用並びにヒスチジン末端を有する組換型SSの獲得を可能にする発現ベクターの使用に基づき、可溶性であり、容易に精製可能であり、且つ、高い比活性を有する組換型SSを大量に作製する方法の開発及び最適化に関する。本発明はさらに、ADPG又はUDPGを代謝する酵素と共役させたSS活性を有する酵素製品の使用に基づくスクロース測定用キットを作製するために従う手順にも関する。本発明はさらに、この目的のために特別に設計したSSの変異体から始める、ADPGやUDPGなどの糖ヌクレオチド作製の最適化にも関する。最後に、SSの過剰発現後の、スクロース、ADPG、及びデンプンの含有量が多く、アミロース/アミロペクチン比が高いトランスジェニック植物の設計についての詳細を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
SSをコードするcDNAの増幅
野生型スクロースシンターゼSS4のヌクレオチド配列が分かっているので(Fu,H.、Park,W.D.(1995年)「シンク及び維管束に関連したスクロースシンターゼ機能は、ジャガイモにおいて様々な遺伝子クラスにコードされている(Sink− and vascular−associated sucrose synthase functions are encoded by different gene classes in potato)」Plant Cell 7、1369〜1385頁)、遺伝子の5’末端及び3’末端に対応する2種の特異的プライマーを作製した。これらのプライマーを用いて、ジャガイモの葉のcDNAライブラリーから、SSXと呼ばれる2418塩基対のDNA断片を従来のPCR技術によって増幅した。このPCR断片をpSKブルースクリプトプラスミド(Stratagene社)に挿入して、pSS構築物(図3A)を作製し、宿主細菌XL1 Blue中で増幅させた。
【0012】
大腸菌の特殊株からの活性な組換型SSの作製
pSSを制限酵素NcoI及びNotIで消化した。(SS、SSXをコードするcDNAを含む)遊離された断片を、組換えタンパク質と融合されるヒスチジンに富む配列をコードしているヌクレオチド配列をポリリンカー領域に有するpET−28a(+)発現プラスミド(Novagen社)(図3B)の同じ制限酵素部位にクローニングした。得られたプラスミド(pET−SSと呼ぶ、図3C)をエレクトロポレーションによって大腸菌の様々な株に挿入した。pET−SSで形質転換した大腸菌株BLR(DE3)(Novagen社)を、2003年10月29日に、ブルハソート(Burjassot)46100(バレンシア、スペイン)、ブルハソートキャンパスのバレンシア大学研究所に所在するスペイン微生物株保存機関(Spanish Type Culture Collection)に寄託番号CECT:5850で寄託した。これらの細菌をLB培地中、20℃でインキュベートした。20℃で増殖させた細胞培養物100mLに1mMのイソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド(IPTG)を添加することによって、SSXの過剰発現を誘導した。培養物を誘導した6時間後に、細菌を回収し、4mlの結合緩衝液(Novagen社、His結合精製キット)中に再懸濁し、次いで、超音波処理し、40,000gで20分間遠心分離した。N末端にヒスチジン残基に富んだアミノ酸配列を有する組換型SSを含む上清を、Novagen社製のHis結合タンパク質精製キットのアフィニティーカラムに通した。キットに付属している取扱い説明書に従って、1モルの代わりに200mMのイミダゾールを含有する、推奨される溶出緩衝液6mlでSSを溶出させた。溶出後、そのタンパク質を直ちに透析にかけて、SSを不可逆的に不活性化する微量のイミダゾールを除去した。
【0013】
ADPG作製のために最適化したSSのアイソフォームの作製
適切なプライマーを用い、pSSを鋳型として、突然変異させた変異体SS5を設計して構築物pSS5を作製した。これは、QuikChange Site−Directed Mutagenesisキット(Stratagene社)を用いて行った。NcoI及びNotIを用いてpSS5を消化した。(SS5を含む)遊離された断片を、pET−28a(+)発現プラスミドの同じ制限酵素部位にクローニングしてpET−SS5を作製し、エレクトロポレーションによってそれを大腸菌BLR(DE3)中に挿入した。pSS5で形質転換した大腸菌株XL1 Blueを、2003年10月29日に、ブルハソート46100(バレンシア、スペイン)、ブルハソートキャンパスのバレンシア大学研究所に所在するスペイン微生物株保存機関に寄託番号CECT:5849で寄託した。
【0014】
SS4を過剰発現するトランスジェニック植物の作製
本発明では、(a)構成的に、(b)葉で特異的に、(c)塊茎などの貯蔵器官で特異的に、SSを過剰発現させた。
【0015】
SSを構成的に過剰発現する植物を作製するために、タバコモザイクウイルスの35S構成的プロモーターの作用によって制御される構築物を作製した。SSXの5’及び3’領域の35Sプロモーター及びNOSターミネーターをpSSに連続的に挿入することにより、プラスミドp35S−SS−NOSを作製した。このプラスミドの制限地図を図4Bに示す。
【0016】
アグロバクテリウムチュメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)を介してこの構築物を植物のゲノムに移行できるようにするには、最初に、この構築物をバイナリープラスミド中にクローニングしなければならない。このために、酵素NotI、T4 DNAポリメラーゼ、及びHindIIIでp35S−SS−NOSを連続的に消化し、予め酵素EcoRI、T4 DNAポリメラーゼ、及びHindIIIで連続的に消化しておいたバイナリープラスミドpBIN20(図4A)(Hennegan,K.P.、Danna,K.J.(1998年)「pBIN20:アグロバクテリウムを介した形質転換のために改良したバイナリーベクター(An improved binary vector for Agrobacterium−mediated transformation)」Plant Mol.Biol.Rep.16、129〜131頁)内にクローニングした。このようにして得られたプラスミドをpBIN35S−SS−NOSと呼んだ(図4C)。
【0017】
光を照射された葉において特異的にSSを過剰発現するために、PCRを使用して、タバコのRUBISCO(リブロース−1,5−ビスリン酸カルボキシラーゼ/オキシゲナーゼ)の小サブユニットをコードしている遺伝子の(RBCSと呼ばれる)プロモーター領域を増幅した(Barnes,S.A.、Knight,J.S.、Gray,J.C.(1994年)「トランスジェニックタバコ中の葉緑体のリン酸輸送体量の変化は、デンプンと糖との同化産物の分配に影響を及ぼす(Alteration of the amount of the chloroplast phosphate translocator in transgenic tobacco affects the distribution of assimilate between starch and sugar)」Plant Physiol.106、1123〜1129頁)。(光合成的に活性な細胞での特異的な発現を与える)このヌクレオチド配列を、pGEMT−easyベクター(Promega社)中に挿入して、pGEMT−RBCSpromを作製した(図5A)。この構築物をHindIII及びNcoIで消化し、遊離された断片をp35S−SS−NOSの対応する制限酵素部位中にクローニングして、pRBCS−SS−NOSを作製した(図5B)。HindIII、T4 DNAポリメラーゼ、及びNotIで連続的にこの構築物を消化した。遊離された断片を、HindIII、T4 DNAポリメラーゼ、及びEcoRIで連続的に消化したpBIN20中にクローニングした。得られた構築物をpBINRBCS−SS−NOSと呼んだ(図5C)。
【0018】
大腸菌(XL1 Blue)中で増幅させた後、pBIN35S−SS−NOS及びpBINRBCS−SS−NOSの双方をA.チュメファシエンス(A.tumefaciens)C58:GV2260中に挿入した(Debleare,R.、Rytebier,B.、deGreve,H.、Debroeck,F.、Schell,J.、van Montagu,M.、Leemans,J.(1985年)「植物へのアグロバクテリウムを介した遺伝子導入の効率的なオクトピンTiプラスミド由来ベクター(Efficient octopine Ti plasmidderived vectors of Agrobacterium mediated gene transfer to plants)」Nucl.Acids Res.13、4777〜4788頁)。A.チュメファシエンスは、トマト(Lycopersicon sculentum)、タバコ(Nicotiana tabacum)、ジャガイモ(Solanum tuberosum)、イネなどの種を従来技術によって形質転換するのに使用されている(Horsch,R.B.、Fry,J.E.、Hoffmann,N.L.、Eichholtz,D.、Rogers,S.G.、Fraley,R.T.(1985年)「植物中に遺伝子を導入するための簡易で一般的な方法(A simple and general method for transferring genes into plants)」Science 277、1229〜1231頁;Pozueta−Romero,J.、Houlne,G.、Schantz,R.、Chamarro,J.(2001年)「アグロバクテリウムを介した形質転換のための、トマト及びコショウ芽生えの外植片の再生促進(Enhanced regeneration of tomato and pepper seedling explants for Agrobacterium−mediated transformation)」Plant Cell Tiss.Org.Cult.67、173〜180頁;Hiei,Y.、Ohta,S.、Komari,T.、Kumashiro.T.(1994年)「アグロバクテリウムによって媒介されるイネ(Oryza sativa L.)の効率的な形質転換、及びT−DNAの境界の配列解析(Efficient transformation of rice(Oryza sativa L.)mediated by Agrobacterium and sequence analysis of the boundaries of the T−DNA)」Plant J.6、271〜282頁)。pBIN35S−SS−NOSで形質転換させたA.チュメファシエンスC58:GV2260の株を、2003年10月29日に、ブルハソート46100(バレンシア、スペイン)、ブルハソートキャンパスのバレンシア大学研究所に所在するスペイン微生物株保存機関に寄託番号CECT:5851で寄託した。
【0019】
スクロース測定用のアッセイキットの作製
スクロース測定用に設計されたキットのうちの1つを、スクロースから糖ヌクレオチドへの変換、また、それに続く糖ヌクレオチドからグルコース−1−リン酸、グルコース−6−リン酸、NAD(P)Hへの変換に基づいてスクロースを分光光度的/蛍光定量的に測定するためのキットに含まれる酵素反応に関する以下のスキームIに示す。
【化1】
【0020】
このキットは、当モル量のフルクトース及び対応する糖ヌクレオチドを遊離する、ヌクレオチド2リン酸(例えば、UDP又はADP)の存在下でのスクロース分子に対するSSの作用に基づいている。この反応の結果として生じる糖ヌクレオチドがUDPGである場合、NudixタイプのUDPGピロホスファターゼ(EC3.6.1.45)(Yagi,T.、Baroja−Fernandez,E.、Yamamoto,R.、Munoz,F.J.、Akazawa,T.、Pozueta−Romero,J.(2003年)「UDP−グルコースのピロリン酸結合を切断する哺乳動物のNudix加水分解酵素様の酵素のクローニング、発現、及び性質決定(Cloning,expression and characterization of a mammalian Nudix hydrolase−like enzyme that cleaves the pyrophosphate bond of UDP−glucose)」Biochem.J.370、409〜415頁)やUDPG加水分解酵素(Burns,D.M.、Beacham,I.R.(1986年)「ペリプラズムのUDP−糖加水分解酵素(5’−ヌクレオチダーゼ)をコードしている大腸菌ushA遺伝子のヌクレオチド配列及び転写解析:ushA遺伝子の制御、並びにコードされているタンパク質産物のシグナル配列(Nucleotide sequence and transcriptional analysis of the E.coli ushA gene,encoding periplasmic UDP−sugar hydrolase(5’−nucleotidase):regulation of the ushA gene,and the signal sequence of its encoded protein product)」Nucl.Acids Res.14、4325〜4342頁)などUDPGの加水分解酵素の作用をこのUDPGに受けさせる。これらの加水分解酵素の作用によって遊離されたG1Pをホスホグルコムターゼ(PGM)の作用によって変換して、グルコース−6−リン酸(G6P)を生じさせる。次に、酵素G6Pデヒドロゲナーゼ(G6PDH)の作用によって、このG6PをNAD(P)+とカップリング反応させて、蛍光測定法及び340nmでの分光測定によって容易に測定可能な6−ホスホグルコン酸及びNAD(P)Hを生成させることができる。次に、遊離されたNAD(P)HをFMN−オキシドレダクターゼ/ルシフェラーゼの作用と共役させて、分光測定で定量化される光を生じさせることができる。
【0021】
別法として、スキームIIに示すように、生成されるUDPGを、蛍光測定法又は340nmでの分光測定によって測定可能な当モル量のUDP−グルコン酸及びNADHをNADの存在下で生成させるUDPGデヒドロゲナーゼ(EC1.1.1.22)と共役させることもできる。次に、遊離されたNADHをFMN−オキシドレダクターゼ/ルシフェラーゼの作用と共役させて、分光測定で定量化される光を生じさせることができる。
【化2】
【0022】
SSによって触媒される反応の生成物がADPGである場合、細菌のADPGピロホスファターゼ(EC3.6.1.21)(Moreno−Bruna,B.、Baroja−Fernandez,E.、Munoz,F.J.、Bastarrica−Berasategui,A.、Zandueta−Criado,A.、Rodriguez−Lopez,M.、Lasa,I.、Akazawa,T.、Pozueta−Romero,J.(2001年)「アデノシン2リン酸糖ピロホスファターゼは、大腸菌におけるグリコーゲン生合成を妨げる(Adenosine diphosphate sugar pyrophosphatase prevents glycogen biosynthesis in Escherichia coli)」Proc.Natl.Acad.Sci.USA98,8128〜8132頁)などのADPG加水分解酵素の作用をこのADPGに受けさせる。遊離されたG1Pをホスホグルコムターゼの作用によって変換して、グルコース−6−リン酸(G6P)を生じさせる。次に、酵素G6Pデヒドロゲナーゼの作用によって、このG6PをNAD(P)+とカップリング反応させて、蛍光測定法及び340nmでの分光測定によって容易に測定可能な6−ホスホグルコン酸及びNAD(P)Hを生成させることができる。
【0023】
いずれの場合も、SSによって媒介される糖ヌクレオチド生成と共役させた酵素反応のスキームは、アンペロメトリック検出に応用するのに極めて適している。
【実施例】
【0024】
ジャガイモのSSのアイソフォームをコードしているcDNAを適切な発現ベクター及び活性型の酵素の作製及び蓄積用に最適化させた大腸菌株においてクローニングするための手順を詳細に示す実施例を以下に説明する。他の実施例では、植物サンプル、血清、尿、果汁、加糖した果実飲料、清涼飲料水などのスクロース測定用アッセイキットを作製するための組換型SSの使用について説明する。別の実施例では、UDPGやADPGなどの糖ヌクレオチドの大量作製用に最適化したSSの変異体の使用について説明する。最後に、別の実施例では、SSを過剰発現する植物における高いADPG生成活性の結果として、スクロース、ADPG、及びデンプンの含有量が多く、アミロース/アミロペクチン比が高い植物の作製について説明する。
【0025】
(実施例1)
容易に精製可能であり、且つ、高い比活性を有する、ヒスチジン末端を有する組換型SSの大腸菌BLR(DE3)における発現
ジャガイモのSSのアイソフォームをコードするSS4遺伝子のヌクレオチド配列が分かっているので、5’から3’の方向に、配列番号1及び配列番号2の配列を有する2種の特異的プライマーを作製することができた。これらのプライマーを用いて、ジャガイモの塊茎のcDNAライブラリーから、SSXと呼ばれるDNA断片を従来のPCR法によって増幅し、これをpSKブルースクリプトプラスミド(Stratagene社)に挿入して、宿主細菌XL1 Blue中で増幅させた。SSXのヌクレオチド配列は、配列番号3であり、SS4(ジェンバンクアクセッション番号U24087)と少し異なっている。配列番号3から演繹されるアミノ酸配列はSS4と少し異なっており、したがって、SSXと呼ぶ。pET−28a(+)プラスミドにおいて配列番号3を発現させた後に演繹されるアミノ酸配列は、配列番号4であり、この配列は、配列番号3から演繹されるアミノ酸配列のアミノ末端に融合された38アミノ酸からなるヒスチジンに富む配列を含んでいる。
【0026】
1mM IPTGを添加して、pET−SSで形質転換させた細菌BL21(DE3)におけるSSX生成を誘導した。37℃でさらに6時間培養した後、pET−SSで形質転換させた細菌が凝集型のタンパク質を蓄積し、そのサイズがSSに対応することが観察された。しかし、これらの細菌はSS活性を示さなかった。活性型SSの発現の失敗の原因は、大腸菌が一部の高分子量の真核生物タンパク質を正しくフォールディングする際に抱える問題に帰することができる(Miroux,B.、Walker,J.E.(1996年)「大腸菌におけるタンパク質の過剰産生:いくつかの膜タンパク質及び球状タンパク質の高レベルの合成を可能にする変異宿主(Over−production of proteins in Escherichia coli:mutant hosts that allow synthesis of some membrane proteins and globular proteins at high levels)」J.Mol.Biol.260、289〜298頁)。この問題を克服することを目指して、他の細菌株において、20℃の温度で活性SSを作製できるか可能性を調査した。これらすべてにおいて、1mMのIPTGを添加してSSXの生成を誘導した。さらに6時間インキュベートした後、細胞を超音波処理し、遠心分離した。得られた上清のSS活性を分析した。図6で示すように、これらの条件では、可溶性の活性SSの生成という観点からすると、BLR(DE3)株が最も効率的であることが判明した。pET−SSで形質転換させた大腸菌株BLR(DE3)(Novagen社)を、2003年10月29日に、寄託番号CECT:5850でスペイン微生物株保存機関に寄託した。文献(Nakai,T.、Tonouchi,N.、Tsuchida,T.、Mori,H.、Sakai,F.、Hayashi,T.(1997年)、「大腸菌における、リョクトウ芽生え由来のスクロースシンターゼの発現及び性質決定(Expression and characterization of sucrose synthase from mung bean seedlings in Escherichia coli)」Biosci.Biotech.Biochem.61、1500〜1503頁;Li,C.R.、Zhang,X.B.、Hew,C.S.(2003年)、「熱帯の着生ラン、オンシジウムゴルディアナから得たスクロースシンターゼ遺伝子のクローニング、性質決定、及び発現解析(Cloning,characterization and expression analysis of a sucrose synthase gene from tropical epiphytic orchid Oncidium goldiana)」Physiol.Plantarum 118、352〜360頁)で記載されている組換型SSの非常に低い生産性と比べて、CECT:5850のタンパク質プール全体における組換型SSXの寄与率は、約20%である。ヒスチジン末端を有する組換えタンパク質が特異的に保持されるHis−Bindアフィニティーカラム(Novagen社)に上清を通した。精製されたSSを溶出させ透析した後、50mM HEPES、pH7.0/1mM EDTA/20%ポリエチレングリコール/1mM MgCl2/15mM KCl/2mM UDPともにインキュベートした。UDPGの生成に基づいて決定した比活性は、タンパク質1mg当たり80ユニットであり、文献(Nakai,T.、Tonouchi,N.、Tsuchida,T.、Mori,H.、Sakai,F.、Hayashi,T.(1997年)、「大腸菌における、リョクトウ芽生え由来のスクロースシンターゼの発現及び性質決定(Expression and characterization of sucrose synthase from mung bean seedlings in Escherichia coli)」Biosci.Biotech.Biochem.61、1500〜1503頁;Li,C.R.、Zhang,X.B.、Hew,C.S.(2003年)、「熱帯の着生ラン、オンシジウムゴルディアナから得たスクロースシンターゼ遺伝子のクローニング、性質決定、及び発現解析(Cloning,characterization and expression analysis of a sucrose synthase gene from tropical epiphytic orchid Oncidium goldiana)」Physiol.Plantarum 118、352〜360頁;Romer,U.、Schrader,H.、Gunther,N.、Nettelstroth,N.、Frommer,W.B.、Elling,L.(2004年)、「糖質工学のための、ジャガイモから得た組換型スクロースシンターゼIの発現、精製、及び性質決定(Expression,purification and characterization of recombinant sucrose synthase I from Solanum tuberosum L.for carbohydrate engineering)」J.Biotechnology 107、135〜149頁)で記載されている組換型SSの1mg当たり0.05〜5ユニットという活性よりはるかに高く、植物抽出物から精製したSSに対応する3ユニット/mgよりも大きかった(Pressey R(1969年)、「ジャガイモのスクロースシンターゼ:精製、諸特性、及び成熟に伴う活性の変化(Potato sucrose synthase:purification,properties,and changes in activity associated with maturation)」Plant Physiol.44、759〜764頁)。ユニットは、1分当たり1マイクロモルのUDPG生成を触媒する酵素の量として定義される。500mMのスクロースが存在する場合のUDPに対する親和力は、Km(UDP)=0.25mMであったのに対し、1mMのUDPが存在する場合、スクロースに対するKmは、30mMであった。UDPの存在下でのスクロースに対するこの親和性は、酵母で得られた組換型SSによって示される親和性(Km=95mM、Romer,U.、Schrader,H.、Gunther,N.、Nettelstroth,N.、Frommer,W.B.、Elling,L.(2004年)、「糖質工学のための、ジャガイモから得た組換型スクロースシンターゼIの発現、精製、及び性質決定(Expression,purification and characterization of recombinant sucrose synthase I from Solanum tuberosum L.for carbohydrate engineering)」J.Biotechnology 107、135〜149頁)より有意に高い。
【0027】
(実施例2)
大腸菌から得た組換型SSの使用に基づくUDPG及びADPGの大量作製
1M スクロース、50mM HEPES、pH7.0/1mM EDTA/20%ポリエチレングリコール/1mM MgCl2/15mM KCl/100mM UDP、並びにBLR(DE3)におけるpET−SSの発現及びそれに続く精製後に得たジャガイモの組換型SSの30ユニットを含有する溶液100ミリリットルを37℃で12時間インキュベートして、高純度のUDPG3グラムを効率的且つ経済的に作製した。この溶液を100℃で90秒間加熱して反応を終了させ、次いで10,000gで10分間遠心分離した。上清を分取スケールHPLCクロマトグラフ(Waters Associates社)に添加し、文献で記載されているようにしてUDPGを精製した(Rodriguez−Lopez,M.、Baroja−Fernandez,E.、Zandueta−Criado,A.、Pozueta−Romero,J.(2000年)「アデノシン2リン酸グルコースピロホスファターゼ:グリコーゲン生合成を妨げる色素体ホスホジエステラーゼ(Adenosine diphosphate glucose pyrophosphatase:a plastidial phosphodiesterase that prevents starch biosynthesis)」Proc.Natl.Acad.Sci.USA97、8705〜8710頁)。
【0028】
ADPGの作製には、植物組織から抽出されたSSについて記述されているよりずっと高い親和性をADPに対して有するSSの変異型の作製を必要とした(Pressey R(1969年)、「ジャガイモのスクロースシンターゼ:精製、諸特性、及び成熟に伴う活性の変化(Potato sucrose synthase:purification,properties,and changes in activity associated with maturation)Plant Physiol.44、759〜764頁;Nguyen−Quock,B.、Krivitzky,M.、Huber,S.C.、Lecharny,A.(1990年)、「発育中のトウモロコシの葉のスクロースシンターゼ(Sucrose synthase in developing maize leaves)」Plant Physiol.94、516〜523頁;Morell,M.、Copeland,L.(1985年)、「ダイズ根粒のスクロースシンターゼ(Sucrose synthase of soybean nodules)」Plant Physiol.78、149〜154頁)
【0029】
QuikChange Site−Directed Mutagenesisキット(Stratagene社)を用いてSSXを点突然変異誘発し、下記の[配列番号5、配列番号6]、[配列番号7、配列番号8]、及び[配列番号9、配列番号10]の配列を有するプライマー対を連続して使用することによって、SS5と呼ばれるアイソフォームを得た。SS5と呼ばれる得られたヌクレオチド配列は、配列番号11である。(データベース中にある)SS4(Susy4)と比べたSS5(Susy5)のアミノ酸配列の変化を表Iで網がけにして示す。pET−28a(+)プラスミドで配列番号11を発現させた後に演繹されるアミノ酸配列は配列番号12であり、この配列は、配列番号11から演繹されるアミノ酸配列のアミノ末端と融合した38アミノ酸からなるヒスチジンに富む配列を含んでいる。
【0030】
表Iは、SS5のアミノ末端部分に融合した38アミノ酸からなるヒスチジンに富む前記配列を含んでいる。
【表1】
【0031】
pET−SS5の発現後に得られた組換型SS5は、UDP及びADPの存在下で、それぞれタンパク質1mg当たり80ユニット及び65ユニットのVmax値を示した。500mMスクロースの存在下でのUDP及びADPに対する親和性は非常に類似していたが(ADP及びUDPのいずれに対してもKm=0.2mM)、飽和濃度のUDP及びADPの存在下でのスクロースに対するKmは、それぞれ30mM及び100mMであった。これらの動態パラメータは、ジャガイモ塊茎及び他の植物種の他の器官から抽出されたSSについて記載されている値と大きく異なっており、それらの文献によると、酵素のVmaxは、ADPが存在する場合よりUDPが存在する場合に10倍高い値となる(Pressey R(1969年)、「ジャガイモのスクロースシンターゼ:精製、諸特性、及び成熟に伴う活性の変化(Potato sucrose synthase:purification,properties,and changes in activity associated with maturation)」Plant Physiol.44、759〜764頁;Morell,M.、Copeland,L.(1985年)、「ダイズ根粒のスクロースシンターゼ(Sucrose synthase of soybean nodules)」Plant Physiol.78、149〜154頁;Nguyen−Quock,B.、Krivitzky,M.、Huber,S.C.、Lecharny,A.(1990年)、「発育中のトウモロコシの葉のスクロースシンターゼ(Sucrose synthase in developing maize leaves)」Plant Physiol.94、516〜523頁)。pSS5で形質転換させた大腸菌株XL1 Blueを、スペイン微生物株保存機関に寄託番号CECT:5849で寄託した。
【0032】
1M スクロース、50mM HEPES、pH7.0/1mM EDTA/20%ポリエチレングリコール/1mM MgCl2/15mM KCl/100mM ADP、並びにBLR(DE3)におけるpET−SS5の発現及びそれに続くHis結合カラムでの精製後に得たジャガイモの組換型SSの30ユニットを含有する溶液100ミリリットルを37℃で12時間インキュベートして、高純度のADPG3グラムを効率的且つ経済的に作製した。この溶液を100℃で90秒間加熱して反応を終了させ、次いで10,000gで10分間遠心分離した。ADPGを精製するために、上清を分取スケールHPLCクロマトグラフ(Waters Associates社)に添加した。
【0033】
(実施例3)
スクロース測定用酵素キットの作製
スクロースを測定するために、以下の成分及び最終量/濃度を用いて次の反応混液を調製した。
1.糖ヌクレオチドの加水分解酵素の使用に基づくキット
a.2ユニットのSS(組換型又は非組換型)
b.2mMのADP又はUDP(それぞれ、ADPG又はUDPGを作製するかどうかに応じて)
c.2ユニットのADPGピロホスファターゼ又は2ユニットのUDPGピロホスファターゼ(それぞれ、ADP又はUDPの反応混液に含めるかどうかに応じて)
d.2ユニットのPGM
e.2ユニットのG6PDH
f.0.5mMのNAD(P)
g.反応緩衝液:50mM HEPES,pH7.0/1mM EDTA/20%ポリエチレングリコール/1mM MgCl2/15mM KCl
h.予めろ過した試験サンプル
2.UDPGデヒドロゲナーゼの使用に基づくキット
a.2ユニットのSS(組換型又は非組換型)
b.2mMのUDP
c.2ユニットのUDPGデヒドロゲナーゼ
d.0.5mMのNAD
e.反応緩衝液:50mM HEPES,pH7.0/1mM EDTA/20%ポリエチレングリコール/1mM MgCl2/15mM KCl
f.予めろ過した試験サンプル
【0034】
試験サンプル中に存在するスクロース量の測定は、スキームI及びIIで示される共役反応によって生成されるNAD(P)Hの蛍光定量的測定又は分光光度的測定(340nm)に基づいている。
【0035】
発育の程度が様々なオオムギ種子のスクロース含有量を測定するために(図7)、37℃で3分間、ELISAプレートの300マイクロリットルウェル中で反応を行った。試験サンプルの体積は20マイクロリットルであり、試薬a〜g(キット#1)及びa〜e(キット#2)を組み合わせて得られる反応混液の体積は280マイクロリットルであった。ブランクは、SS以外の反応混液のすべての成分を含んだ。MultiSkan分光光度計を用いて測定を実施した。タイプ「1」のキットとタイプ「2」のキットのいずれで得られた値も、序論で記述したクロマトグラフィー技術を用いて測定した値と同程度であることが判明した(Baroja−Fernandez,E.、Munoz,F.J.、Saikusa,T.、Rodriguez−Lopez,M.、Akazawa,T.、Pozueta−Romero,J.(2003年)、「スクロースシンターゼは、植物の従属栄養組織におけるデンプン生合成に関係しているADPグルコースの新規な生成を触媒する(Sucrose synthase catalyzes the de novo production of ADPglucose linked to starch biosynthesis in heterotrophic tissues of plants)」Plant Cell Physiol.44、500〜509頁)。
【0036】
(実施例4)
SSを過剰発現するトランスジェニック植物の作製
図8〜10は、構成的(35S−SS−NOS)及び特異的(RBCS−SS−NOS)にSSを過剰発現するジャガイモ植物の葉で得られた双方の結果を示す。
【0037】
図8で示すように、これらの植物のいずれかの葉におけるSS活性は、野生型植物(WT)の同一器官での活性より2〜10倍高い。これらの葉は、以下の特徴を有した。
1.ADPGを生成するSSの活性(図8)とデンプン(図9)及びADPG(図10)レベルとの明確な相関。この特徴は、葉だけでなく、塊茎や種子などの貯蔵組織でも観察された(以下参照)。
2.野生型植物の葉と比べてデンプン含有量が多い(図9)。例えば、20℃、明期8時間/暗期16時間の光周期の条件で発育させた「野生型」ジャガイモ植物の葉のデンプン含有量は新鮮重1グラム当たり5マイクロモルであるのに対し、SSを過剰発現するトランスジェニック植物の葉では、新鮮重1グラム当たり8マイクロモルである。野生型植物とトランスジェニック植物の差は、明期が長いときに拡大され、その結果、SSを過剰発現する植物の葉は野生型植物の葉の4倍のデンプンを含有する。
3.非形質転換植物の同一の組織又は器官に比べてADPG含有量が多い(図10)。20℃、明期8時間/暗期16時間の光周期の条件で発育させた野生型ジャガイモ植物の葉の平均含有量は新鮮重1グラム当たり0.35ナノモルであるのに対し、SSを過剰発現する植物の葉は、新鮮重1グラム当たり2.5ナノモルの含有量を有し得る。
4.ADPGもデンプンも、明期中に一時的蓄積を示す(図11)。どちらの物質の蓄積速度もSS活性との間に正の相関があり、このことは、デンプン生合成の「従来の」モデル(図2A)によって示されている内容とは異なり、また、図2Bに示す「代替の」モデルの仮説を確認するものであり、SSがADPGの生成、及びスクロース代謝とデンプン代謝の連結において基本的な役割を果たしていることを示唆している。
5.グルコースやフルクトースなどの可溶性糖は通常レベルである。しかし、トランスジェニックの葉におけるグルコース−6−P及びスクロースのレベルは、野生型ジャガイモの葉で観察されるそれらのレベルより高い(表2)。
【0038】
表2:対照植物(WT)及び35S−SuSy−NOS由来の葉における代謝産物のレベル(新鮮重1g当たりのnモルで示す)。WTで観察される値と有意に異なる値を太字で示す。
【表2】
6.SSを過剰発現する植物の外部形態は、非形質転換植物と比較した場合、異常ではない。
【0039】
図12〜14は、SSを構成的に過剰発現するジャガイモ塊茎で得られた結果を示す(35S−SS−NOS)。これらの結果は、特異的な塊茎プロモーター(パタティナ(patatina)遺伝子のプロモーター)の制御下でSSを過剰発現する塊茎で観察される結果とほぼ同一である。
【0040】
図12で示すように、これらの植物のいずれかの塊茎におけるSS活性は、野生型植物の同一器官での活性より?倍高い。これらの塊茎は、以下の特徴を有した。
1.ADPGを生成するSSの活性(図12)とデンプン(図13)及びADPG(図14)レベルとの明確な相関。
2.非形質転換植物の塊茎と比べてデンプン含有量が多い(図13)。例えば、「野生型」植物の塊茎のデンプン含有量は新鮮重1グラム当たり約300マイクロモル(新鮮重1グラム当たり54mgのデンプンに相当)であるのに対し、SSを過剰発現する塊茎では、新鮮重1グラム当たり450〜600マイクロモルである。
3.野生型植物の塊茎と比べてADPG含有量が多い(図14)。野生型塊茎の平均含有量は新鮮重1グラム当たり5ナノモルであるのに対し、SSを過剰発現する塊茎は、新鮮重1グラム当たり7〜9ナノモルの含有量を有し得る。
【0041】
イネの種子、トマト、及びタバコの葉、並びにトマトで得られた結果は、図8〜14で示す結果と質的に同様である。すべての事例で、デンプン含有量の増加及びアミロース/アミロペクチン比の上昇がみとめられた。
【0042】
SSの過剰発現によりADPG及びデンプンの含有量が多い植物が得られることは、(図1A及び2Aに例示した)デンプン生合成の現在の概念によっては全く予想されず、おそらくは、SSを過剰発現する植物の設計が、デンプン産生を増大させる戦略としてなぜこれまで採用されなかったかを説明する結果である。この研究に基づいて得られた結果は、AGPアーゼではなくSSが、植物中で蓄積するADPGの基本的供給源であることを示唆している。いまだ通用しているモデルによれば、AGPアーゼはADPGの唯一の供給源である。しかし、意外にも、AGPアーゼ欠損植物のADPGレベルはこれまで調査されていなかった。本発明者らの発明の有意性を調査するために、本発明者らは、AGPアーゼ活性を低減させたシロイヌナズナ及びジャガイモ植物におけるADPG及びデンプンのレベルを初めて分析した。図15Aで示すように、AGPアーゼ欠損TL25シロイヌナズナ植物のデンプンレベル(Lin,T.P.、Caspar,T.、Somerville,C.R.、Preiss,J.(1988年)「ADPグルコースピロホスホリラーゼ活性を欠くシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)のデンプンを含まない変異体の単離及び性質決定(Isolation and characterization of a starchless mutant of Arabidopsis thaliana lacking ADPglucose pyrophosphorylase activity)」Plant Physiol.88、1131〜1135頁)は、WT植物で観察されるレベルより低い。しかし、ADPGのレベルは正常である(図15B)。一方、AGP62及びAGP85ジャガイモ植物のデンプンレベル(Muller−Rober,B.、Sonnewald,U.、Willmitzer,L.(1992年)、「トランスジェニックジャガイモにおけるADPグルコースピロホスホリラーゼの阻害は、糖を貯蔵した塊茎を生じ、塊茎の形成及び塊茎の貯蔵タンパク質遺伝子の発現に影響を及ぼす(Inhibition of the ADPglucose pyrophosphorylase in transgenic potatoes leads to sugar−storing tubers and influences tuber formation and expression of tuber storage protein genes)」EMBO J.11、1229〜1238頁)は、野生型植物の葉で観察されるデンプンレベルに比べて低減されている(図16A)。しかし、ADPGのレベルは全く正常である(図16B)。総合すると、これらの観察結果は、(a)AGPアーゼではなくSSが、植物におけるADPGの主要供給源であることを示し、(b)SSの過剰発現によりデンプン含有量の多い植物が得られることを実証し、本発明者らの発明の有意性を強調している。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】従属栄養的な器官におけるデンプン生合成の機序を表す図である。(A)SSはUDPGの生成に関与し、そのUDPGが、UDPGピロホスホリラーゼ(UGPアーゼ)、細胞質ゾルホスホグルコムターゼ(PGM)、色素体ホスホグルコムターゼ、ADPGピロホスホリラーゼ(AGPアーゼ)、及びデンプン合成酵素の一連の作用後に、最終的にデンプンに変換されるとする「従来の」機序を表す図である。(B)SSは、細胞質ゾルにおけるADPGの直接的な生成に関与しているとする「代替の」機序を表す図である。その後、ADPGは、輸送体の作用によりアミロプラストへと輸送される。アミロプラストの内部に入った後、デンプン合成酵素はデンプンを生成するためにそのADPGを利用する。
【図2】葉におけるデンプン生合成の機序を表す図である。(A)デンプン生合成のプロセス全体が葉緑体の内部で起こるとする「従来の」機序を表す図である。この見解によれば、デンプン代謝とスクロースは連結していない。さらに、SSは、糖新生のプロセスに関与していない。(B)SSは、細胞質ゾルにおけるADPGの直接的な合成に関与しているとする、デンプン生合成の「代替の」機序を表す図である。その後、ADPGは、色素体の内部へと輸送され、そこで、デンプン合成酵素はデンプン合成反応用の基質としてそのADPGを利用する。
【図3A】pET−28a(+)及びpSSからpET−SS発現プラスミドを構築する際のステップを表す図である。
【図3B】pET−28a(+)及びpSSからpET−SS発現プラスミドを構築する際のステップを表す図である。
【図4A】pBIN20及びp35S−SS−NOSからpBIN35S−SS−NOS発現プラスミドを構築する際のステップを表す図である。
【図4B】pBIN20及びp35S−SS−NOSからpBIN35S−SS−NOS発現プラスミドを構築する際のステップを表す図である。
【図4C】pBIN20及びp35S−SS−NOSからpBIN35S−SS−NOS発現プラスミドを構築する際のステップを表す図である。
【図5A】pGEMT−RBCSprom、p35S−SS−NOS、及びpBIN20からpRBCS−SS−NOS発現プラスミドを構築する際のステップを表す図である。
【図5B】pGEMT−RBCSprom、p35S−SS−NOS、及びpBIN20からpRBCS−SS−NOS発現プラスミドを構築する際のステップを表す図である。
【図5C】pGEMT−RBCSprom、p35S−SS−NOS、及びpBIN20からpRBCS−SS−NOS発現プラスミドを構築する際のステップを表す図である。
【図6】大腸菌の様々な株におけるpET−SSの発現を表す。(A)pET又はpET−SSで形質転換させた細菌抽出物のSS活性(細菌タンパク質1ミリグラム当たりのミリユニット(mU))を表す。この反応は、スクロースを分解し、ADPGを生成する方向に起こった。反応混液は、50mM HEPES(pH7.0)、1mM EDTA、20%ポリエチレングリコール、1mM MgCl2、15mM KC1、及び2mM ADPを含有した。反応は37℃で10分間行った。(B)pET及びpET−SSで形質転換させた様々な大腸菌株から得たタンパク質抽出物のSDS−PAGEを表す。組換型SSXの位置をアスターリスクで示している。
【図7】SS、ADPG(UDPG)ピロホスファターゼ、PGM、及びG6PDHの共役反応に基づくキットによる、オオムギ内胚乳の様々な発育段階におけるスクロースの測定を表すグラフである。これらの結果は、SS及びUDPGデヒドロゲナーゼの共役反応に基づくキットの使用、並びにCarbo−PacPA1カラムに連結したDX−500 Dionexシステムでのアンペロメトリック検出を伴う高速クロマトグラフィー(HPLC)の使用によって並行して得られた結果と同一であった。横軸:開花後の日数縦軸:スクロース含有量/内容(μmol/gFW)
【図8】野生型(WT)ジャガイモ植物、並びに35S−SS−NOS(アグロバクテリウムチュメファシエンス株CECT:5851の作用による)又はRBCS−SS−NOS構築物のゲノム中への組み込み後にSSXを過剰発現するジャガイモ植物の葉のSS活性を表すグラフである。新鮮重1グラム当たりのミリユニット(mU)で活性を表す。このユニットは、1分当たり1マイクロモルのADPGを生成するのに必要とされるSSの量として定義される
【図9】野生型(WT)ジャガイモ植物、並びに35S−SS−NOS(アグロバクテリウムチュメファシエンス株CECT:5851の作用による)又はRBCS−SS−NOS構築物のゲノム中への組み込み後にSSXを過剰発現するジャガイモ植物の葉のデンプン含有量を表すグラフである。
【図10】野生型(WT)ジャガイモ植物、並びに35S−SS−NOS(アグロバクテリウムチュメファシエンス株CECT:5851の作用による)又はRBCS−SS−NOS構築物のゲノム中への組み込み後にSSXを過剰発現するジャガイモ植物の葉のADPG含有量を表すグラフである。
【図11】WT植物(●)、35S−SSNOS(■)、及びRBCS−SS−NOS(▲)の葉における、明期8時間、暗期16時間の光周期での(A)デンプン及び(B)ADPGの一時的蓄積を表すグラフである。
【図12】野生型ジャガイモ植物(WT)、再生させた対照(RG)、及び(アグロバクテリウムチュメファシエンス株CECT:5851の作用による)35S−SS−NOS構築物のゲノム中への組み込み後にSSXを過剰発現するジャガイモ植物(4、5、6、12系統)の塊茎の(新鮮重FWに対する)SS活性を表すグラフである。新鮮重1グラム当たりのミリユニット(mU)で活性を表す。このユニットは、1分当たり1マイクロモルのADPGを生成するのに必要とされるSSの量として定義される。
【図13】野生型ジャガイモ植物(WT)、再生させた対照(RG)、及び(アグロバクテリウムチュメファシエンス株CECT:5851の作用による)35S−SS−NOS構築物のゲノム中への組み込み後にSSXを過剰発現するジャガイモ植物(4、5、6、12系統)の塊茎の(新鮮重FWに対する)デンプン含有量を表すグラフである。
【図14】野生型ジャガイモ植物(WT)、及び(アグロバクテリウムチュメファシエンス株CECT:5851の作用による)35S−SS−NOS構築物のゲノム中への組み込み後にSSXを過剰発現するジャガイモ植物の塊茎の(新鮮重FWに対する)ADPG含有量を表すグラフである。
【図15】AGPアーゼ欠損シロイヌナズナTL25の葉のデンプン含有量(A)及びADPG含有量(B)を表す。
【図16】AGPアーゼ欠損ジャガイモAGP62及びAGP85の葉のデンプン含有量(A)及び(B)ADPG含有量を表す。
【技術分野】
【0001】
本発明は、大腸菌(Escherichia coli)の適切な株を使用することによる、可溶性且つ活性型の組換型スクロースシンターゼ(SS)作製の最適化、スクロース測定用のキットを作製するためのSSの使用、ADPグルコース(ADPG)合成用のSSの最適化された型の設計、並びに、SSを過剰発現する植物における細胞質ゾルADPGの過剰産生の結果として高レベルのADPG及びアミロース含量が増加したデンプンを蓄積する葉及び貯蔵組織を有するトランスジェニック植物の作製に関する。
【背景技術】
【0002】
デンプンは、植物における炭水化物の主要な貯蔵形態である。デンプンは、種子(コムギ、オオムギ、トウモロコシ、エンドウマメなど)や塊茎(特にジャガイモ及びヤムイモ)などの器官に大量に蓄積し、また、ヒトの食物の基本的な構成成分である。さらに、デンプンは、製紙工業、化粧品工業、製薬工業、及び食品工業において幅広く使用されており、また、生分解性プラスチック及び環境に優しい塗料の製造に不可欠な成分としても使用されている。デンプンは、共有結合したグルコース分子から構成されているため、この多糖類の合成に関与するプロセスを調査することが、工業生産の様々な領域における最優先事項である。
【0003】
ADPGは、従属栄養的な器官(図1A)及び葉(図2A)の双方において、植物におけるデンプン生合成の共通の前駆体であり、ADPGの産生は、酵素ADPGピロホスホリラーゼ(AGPアーゼ)又はADPGシンターゼ(EC2.7.7.27)によって専ら制御されていると一般に考えられている(Okita,T.W.(1992年)、「デンプン合成の代替経路はあるか。(Is there an alternative pathway for starch synthesis?)」Plant Physiol.100、560〜56頁;Muller−Rober,B.、Sonnewald,U.、Willmitzer,L.(1992年)、「トランスジェニックジャガイモにおけるADPグルコースピロホスホリラーゼの阻害は、糖を貯蔵した塊茎を生じ、塊茎の形成及び塊茎の貯蔵タンパク質遺伝子の発現に影響を及ぼす(Inhibition of the ADPglucose pyrophosphorylase in transgenic potatoes leads to sugar−storing tubers and influences tuber formation and expression of tuber storage protein genes)」EMBO J.11、1229〜1238頁;Stark,D.M.、Timmerman,K.P.、Barry,G.F.、Preiss,J.、Kishore,G.M.(1992年)、「ADPグルコースピロホスホリラーゼによる、植物組織中のデンプン量の調節(Regulation of the amount of starch in plant tissues by ADPglucose pyrophosphorylase)」Science258、287〜282頁;Neuhaus,E.H.、Hausler,R.E.、Sonnewald,U.(2005年)、「代謝経路に関するパラダイムを葉の中の一時的なデンプンに変える時間はない(No time to shift the paradigm on the metabolic pathway to transitory starch in leaves)」Trends Plant Sci.印刷中)。植物で産生されるデンプンの様々な用途は、デンプン粒の構造、並びに水性懸濁液中でのその粘度を決定する、アミロースとアミロペクチンの比率に主に基づいている。アミロースとアミロペクチンの比率は、特に、植物細胞中のADPGの濃度に依存している(Clarke,B.R.、Denyer,K.、Jenner,C.F.、Smith,A.M.(1999年)、「デンプン合成速度、アデノシン5’−ジホスホグルコース濃度、及び発育中のエンドウマメ胚におけるデンプンのアミロース含有量の関係(The relationship between the rate of starch synthesis,the adenosine 5’−diphosphoglucose concentration and the amylose content of starch in developing pea embryos)」Planta 209、324〜329頁)。
【0004】
SS(EC2.4.1.13、SS)(UDP−グルコース:D−フルクトース−2−グルコシルトランスフェラーゼ)は、スクロース及びUDPからのUDPG及びフルクトースの生成を触媒する可逆的酵素である。図1Aで示すように、SSは、その代謝プロセスが内胚乳や塊茎などの従属栄養組織中でのデンプンの産生を最終的にもたらす、UDPGを生成する役割を有すると従来考えられていたが(Zrenner,R.、Salanoubat,M.、Willmitzer,L.、Sonnewald,U.(1995年)、「トランスジェニックジャガイモ植物による、シンク強度に対するスクロースシンターゼの非常に重要な役割の証拠(Evidence for the crucial role of sucrose synthase for sink strength using transgenic potato plants)」 Plant J.7 97〜107頁;Baroja−Fernandez,E.、Munoz,F.J.、Saikusa,T.、Rodriguez−Lopez,M.、Akazawa,T.、Pozueta−Romero,J.(2003年)、「スクロースシンターゼは、植物の従属栄養組織におけるデンプン生合成に関係しているADPグルコースの新規な生成を触媒する(Sucrose synthase catalyzes the de novo production of ADPglucose linked to starch biosynthesis in heterotrophic tissues of plants)」Plant Cell Physiol.44、500〜509頁;Pozueta−Romero,J.、Munoz,F.J.、Rodriguez−Lopez,M.、Baroja−Fernandez,E.、Akazawa,T.(2003年8月)、「デンプン分野における新しい波(New waves in the starch field)」Lett.Plant Cell Physiol.24〜32頁))、この酵素が、対応する糖ヌクレオチドを生成するためにin vitroで他のヌクレオチド2リン酸を使用する潜在的な能力に関する参考文献がある(Murata,T.、Sugiyama,T.、Minamikawa,T.、Akazawa,T.(1966年)、「成熟中の米粒におけるデンプン合成の酵素機序。スクロースからデンプンへの変換の機序(Enzymic mechanism of starch synthesis in ripening rice grains.Mechanism of the sucrose−starch conversion)」Arch.Biochem.Biophys.113、34〜44頁;Delmer,D.P.(1972年)「暗所で黄化させたリョクトウ(Phaseolus aureus)芽生えに由来するスクロースシンターゼの精製及び諸特性(The purification and properties of sucrose synthase from etiolated Phaseolus aureus seedlings)」J.Biol.Chem.247、3822〜3828頁)。生理的な関連性には疑問があるが、(Okita,T.W.(1992年)、「デンプン合成の代替経路はあるか。(Is there an alternative pathway for starch synthesis?)」Plant Physiol.100、560〜56頁;Muller−Rober,B.、Sonnewald,U.、Willmitzer,L.(1992年)、「トランスジェニックジャガイモにおけるADPグルコースピロホスホリラーゼの阻害は、糖を貯蔵した塊茎を生じ、塊茎の形成及び塊茎の貯蔵タンパク質遺伝子の発現に影響を及ぼす(Inhibition of the ADPglucose pyrophosphorylase in transgenic potatoes leads to sugar−storing tubers and influences tuber formation and expression of tuber storage protein genes)EMBO J.11、1229〜1238頁)、SSが、従属栄養組織においても光合成組織においてもデンプン産生用に使用され得るADPGを直接生成できることが示唆されている(図1B及び2B)(Pozueta−Romero,J.、Perata,P.、Akazawa,T.(1999年)、「植物の従属栄養組織におけるスクロースからデンプンへの変換(Sucrose−starch conversion in heterotrophic tissues of plants)」Crit.Rev Plant Sci.18、489〜525頁;Baroja−Fernandez,E.、Munoz,F.J.、Akazawa,T.、Pozueta−Romero,J.(2001年)、「光合成組織におけるデンプン生合成の現在有力なモデルの再評価:スクロースシンターゼによる細胞質ゾルでのADPグルコース生成及び葉緑体におけるデンプンのサイクル状の代謝回転の出現に関する提案(Reappraisal of the currently prevailing model of starch biosynthesis in photosynthetic tissues:a proposal involving the cytosolic production of ADPglucose by sucrose synthase and occurrence of cyclic turnover of starch in the chloroplast)」Plant Cell Physiol.42、1311〜1320頁;Baroja−Fernandez,E.、Munoz,F.J.、Saikusa,T.、Rodriguez−Lopez,M.、Akazawa,T.、Pozueta−Romero,J.(2003年)、「スクロースシンターゼは、植物の従属栄養組織におけるデンプン生合成に関係しているADPグルコースの新規な生成を触媒する(Sucrose synthase catalyzes the de novo production of ADPglucose linked to starch biosynthesis in heterotrophic tissues of plants)」Plant Cell Physiol.44、500〜509頁;Baroja−Fernandez,E.、Munoz,F.J.、Zandueta−Criado,A.、Moran−Zorzano,M.T.、Viale,A.M.、Alonso−Casajus,N.、Pozueta−Romero,J.(2004年)、「デンプン生合成に関係しているADPグルコースの大半は、ソース葉の葉緑体の外部に存在している(Most of ADPglucose linked to starch biosynthesis occurs outside the chloroplast in source leaves)」Proc.Natl.Acad.Sci.USA101、13080〜13085頁)。(専ら、また状況に応じて生化学的な証拠に基づく)この仮説によれば、SSは、デンプンの生合成に必要なADPG分子の重要なプールの合成を司っている。しかし、この仮説は遺伝子工学又は従来の作物改良技術により実験的に実証されておらず、また、AGPアーゼが植物における唯一のADPG供給源であることを示す、遺伝子及び分子的な数え切れないほどの試験結果と一致していない(Okita,T.W.(1992年)、「デンプン合成の代替経路はあるか。(Is there an alternative pathway for starch synthesis?)」Plant Physiol.100、560〜56頁;Muller−Rober,B.、Sonnewald,U.、Willmitzer,L.(1992年)、「トランスジェニックジャガイモにおけるADPグルコースピロホスホリラーゼの阻害は、糖を貯蔵した塊茎を生じ、塊茎の形成及び塊茎の貯蔵タンパク質遺伝子の発現に影響を及ぼす(Inhibition of the ADPglucose pyrophosphorylase in transgenic potatoes leads to sugar−storing tubers and influences tuber formation and expression of tuber storage protein genes)EMBO J.11、1229〜1238頁;Neuhaus,E.H.、Hausler,R.E.、Sonnewald,U.(2005年)、「代謝経路に関するパラダイムを葉の中の一時的なデンプンに変える時間はない(No time to shift the paradigm on the metabolic pathway to transitory starch in leaves)Trends Plant Sci.印刷中)。
【0005】
UDPGやADPGなどの糖ヌクレオチドは、グルコース−1−リン酸(G1P)と呼ばれる高価な物質の使用に基づき、それぞれUDPGピロホスホリラーゼ(UGPアーゼ)やAGPアーゼなどの酵素によって触媒されるピロホスホリラーゼ反応により商業的に製造されている。糖ヌクレオチドを作製するためのこの手法の代替手法はSSの使用に基づいているが、代替手法の発展は、多数の真核生物タンパク質を発現し効率的にプロセッシングするための大腸菌の制約により大きく妨げられている。この制約に触発されて、一部の研究者は、酵母など真核生物タイプの生物工場を使用することにより組換型SSを作製した(Zervosen,A.、Romer,U.、Elling,L.(1998年)、「組換型スクロースシンターゼの応用−ADP−グルコースの大量合成(Application of recombinant sucrose synthase−large scale synthesis of ADP−glucose)」J.Mol.Catalysis B:Enzymatic5、25〜28頁;Romer,U.、Schrader,H.、Gunther,N.、Nettelstroth,N.、Frommer,W.B.、Elling,L.(2004年)、「糖質工学のための、ジャガイモ(Solanum tuberosum L.)から得た組換型スクロースシンターゼIの発現、精製、及び性質決定(Expression,purification and characterization of recombinant sucrose synthase I from Solanum tuberosum L.for carbohydrate engineering)」J.Biotechnology 107、135〜149頁)。或いは、糖ヌクレオチドを作製するためのSSは、植物抽出物からタンパク質を精製する高価なプロセスによって精製しなければならなかった(特許DE4221595(1993年)、「ヌクレオチドにより活性化された糖又はオリゴ糖の作製に有用な精製されたスクロースシンターゼ酵素(Purified sucrose synthase enzyme useful for production of nucleotide−activated sugars or oligosaccharides)」。植物抽出物から得られるこのSSには、UDPを好み、ADPに対する親和性が非常に低いという不都合がある(Pressey R(1969年)、「ジャガイモのスクロースシンターゼ:精製、諸特性、及び成熟に伴う活性の変化(Potato sucrose synthase:purification,properties,and changes in activity associated with maturation)」Plant Physiol.44、759〜764頁;Nguyen−Quock,B.、Krivitzky,M.、Huber,S.C.、Lecharny,A.(1990年)、「発育中のトウモロコシの葉のスクロースシンターゼ(Sucrose synthase in developing maize leaves)」Plant Physiol.94、516〜523頁;Morell,M.、Copeland,L.(1985年)、「ダイズ根粒のスクロースシンターゼ(Sucrose synthase of soybean nodules)」Plant Physiol.78、149〜154頁))。大腸菌(E.coli)培養物からの組換型SSの作製が最近実現された(Nakai,T.、Tonouchi,N.、Tsuchida,T.、Mori,H.、Sakai,F.、Hayashi,T.(1997年)、「大腸菌における、リョクトウ芽生え由来のスクロースシンターゼの発現及び性質決定(Expression and characterization of sucrose synthase from mung bean seedlings in Escherichia coli)」Biosci.Biotech.Biochem.61、1500〜1503頁;Nakai,T.、Konishi,T.、Zhang,Z−Q.、Chollet,R.、Tonouchi,N.、Tsuchida,T.、Yoshinaga,F.、Mori,H.、Sakai,F.、Hayashi,T.(1997年)、「リョクトウスクロースシンターゼのスクロースに対する見かけの親和性の増大は、in vitroのリン酸化又はSer11の特異的変異誘発によって引き起こされる(An increase in apparent affinity for sucrose of mung bean sucrose synthase is caused by in vitro phosphorylation or directed mutagenesis of Ser11)」Plant Cell Physiol.39,1337〜1341頁;Barratt,D.H.P.、Barber,L.、Kruger,N.J.、Smith,A.M.、Wang,T.L.、Martin,C.(2001年)、「エンドウマメスクロースシンターゼの多数の異なるアイソフォーム(Multiple,distinct isoforms of sucrose synthase in pea)」Plant Physiol.127、655〜664頁;Christopher,B.、William,B.、Robert,H.「細菌のスクロースシンターゼ組成物及び使用方法(Bacterial sucrose synthase compositions and methods of use)」特許WO9803637)。しかし、この原核生物系におけるSSの作製には、以下のような問題が伴っていた。即ち、(1)作製されるSSの量が非常に少ない(細菌1グラム当たり30マイクログラム(Nakai,T.、Tonouchi,N.、Tsuchida,T.、Mori,H.、Sakai,F.、Hayashi,T.(1997年)、「大腸菌における、リョクトウ芽生え由来のスクロースシンターゼの発現及び性質決定(Expression and characterization of sucrose synthase from mung bean seedlings in Escherichia coli)」Biosci.Biotech.Biochem.61、1500〜1503頁;Li,C.R.、Zhang,X.B.、Hew,C.S.(2003年)、「熱帯の着生ラン、オンシジウムゴルディアナ(Oncidium goldiana)から得たスクロースシンターゼ遺伝子のクローニング、性質決定、及び発現解析(Cloning,characterization and expression analysis of a sucrose synthase gene from tropical epiphytic orchid Oncidium goldiana)」Physiol.Plantarum 118、352〜360頁)、(2)得られた活性SSの量が非常に少なく、又はゼロであった(0.05〜1.5ユニット/mg(Nakai,T.、Tonouchi,N.、Tsuchida,T.、Mori,H.、Sakai,F.、Hayashi,T.(1997年)、「大腸菌における、リョクトウ芽生え由来のスクロースシンターゼの発現及び性質決定(Expression and characterization of sucrose synthase from mung bean seedlings in Escherichia coli)」Biosci.Biotech.Biochem.61、1500〜1503頁;Li,C.R.、Zhang,X.B.、Hew,C.S.(2003年)、「熱帯の着生ラン、オンシジウムゴルディアナから得たスクロースシンターゼ遺伝子のクローニング、性質決定、及び発現解析(Cloning,characterization and expression analysis of a sucrose synthase gene from tropical epiphytic orchid Oncidium goldiana)」Physiol.Plantarum 118、352〜360頁);5.6 U/mg(Romer,U.、Schrader,H.、Gunther,N.、Nettelstroth,N.、Frommer,W.B.、Elling,L.(2004年)、「糖質工学のための、ジャガイモから得た組換型スクロースシンターゼIの発現、精製、及び性質決定(Expression,purification and characterization of recombinant sucrose synthase I from Solanum tuberosum L.for carbohydrate engineering)」J.Biotechnology 107、135〜149頁))、(3)組換型SSは、クロマトグラフィー、電気泳動、等電点電気泳動などタンパク質を精製する従来の方法によって精製されなければならなかった。これらの方法は併用すると費用がかかり、また、均一な状態のタンパク質精製を保証するものではない、(4)細菌を用いた仕組みではタンパク質を正しく折り畳むことができないため、SSの大半は封入体に送られ、又は不活性な凝集体の形で蓄積される(Miroux,B.、Walker,J.E.(1996年)「大腸菌におけるタンパク質の過剰産生:いくつかの膜タンパク質及び球状タンパク質の高レベルの合成を可能にする変異宿主(Over−production of proteins in Escherichia coli:mutant hosts that allow synthesis of some membrane proteins and globular proteins at high levels)」J.Mol.Biol.260、289〜298頁)、という諸問題があった。
【0006】
本発明は、大腸菌の適切な株の使用、並びに、活性型の組換型SSの様々な変異体の大量作製及び迅速且つ容易な精製を可能にする適切なベクターの使用に基づく系の開発を説明する。これらの変異体のうちのいくつかは、植物抽出物から得られる酵素よりADPに対する親和性がより大きく、スクロース、UDP、及びADPなど安価な物質からUDPG及びADPGの双方を作製するのに使用することができる。
【0007】
クロマトグラフィー技術は、植物抽出物、血清、尿、果汁、ブドウ酒、果実、食料品など複雑なサンプルのスクロース含有量を測定するための強力な手法となる(D’Aoust,M−A.、Yelle,S,Nguyen−Quock,B.(1999年)、「トマトフルーツのスクロースシンターゼのアンチセンス阻害により、結実及び幼果のスクロースアンローディング能力が低減される(Antisense inhibition of tomato fruit sucrose synthase decreases fruit setting and the sucrose unloading capacity of young fruit)」Plant Cell 11、2407〜2418頁;Tang,G−Q.、Sturm,A.(1999年)、「ニンジンのスクロースシンターゼのアンチセンス抑制は、スクロース分配ではなく成長に影響を及ぼす(Antisense repression of sucrose synthase in carrot affects growth rather than sucrose partitioning)」Plant Mol.Biol.41、465〜479頁;Frias,J.、Price,K.R.、Fenwich,G.R.、Hedley,C.L.、Sorensen,H.、Vidal−Valverde,C.(1996年)J.Chromatogr.A719,213〜219頁)。このような技術は、高度に専門的な技術者を必要とし、また、設備に多額の投資を要する。あいにく、酵素インベルターゼの作用によるスクロース分子の加水分解、並びにそれに続くグルコース及び/又はフルクトース分子の分光光度的若しくは蛍光定量的測定に基づく代替方法(Sweetlove,L.J.、Burrell,M.M.、ap Rees,T.(1996年)、「ADPグルコースピロホスホリラーゼを増大させたトランスジェニックジャガイモの塊茎におけるデンプン代謝(Starch metabolism in tubers of transgenic potato with increased ADPglucose pyrophosphorylase)」Biochem.J.320、493〜498頁;Stitt,M.、Lilley,R.M.、Gerhardt,R.、Heldt,H.W.(1989年)、「植物の葉の特定の細胞及び細胞内コンパートメントにおける代謝レベル(Metabolite levels in specific cells and subcellular compartments of plant leaves)」Methods Enzymol.174、518〜552頁;Holmes,E.W.(1997年)、「スクロースを測定するために共役させた酵素アッセイ(Coupled enzymatic assay for the determination of sucrose)」Anal.Biochem.244、103〜109頁;分析方法(1996年)、「果実及び野菜果汁評価の実施要綱(Code of Practice for Evaluation of Fruit and Vegetable Juices)」欧州経済共同体の欧州果汁協会(Association of the Industry of Juices and Nectars from Fruits and Vegetables))は、サンプル中に存在する内因性グルコース及び/又はフルクトースに対応する測定値の控除など技術的性質の限界の影響を受ける。サンプル中に多量のグルコース及び/又はフルクトースが存在すると、信頼がおけ、且つ正確なスクロースの測定を妨げるバックグラウンドノイズが加えられることがある。大多数の場合では、サンプルの真のスクロース含有量に関する信頼のおける申告を発表する前に、徹底的な管理を実施する必要がある(Worrell,A.C.、Bruneau,J−M.、Summerfelt,K.、Boersig,M.、Voelker,T.A.(1991年)、「トウモロコシのスクロースリン酸シンターゼをトマトにおいて発現させると葉の糖分配が変化する(Expression of a maize sucrose phosphate synthase in tomato alters leaf carbohydrate partitioning)」Plant Cell 3、1121〜1130頁)。インベルターゼの使用に基づくスクロース測定キットは、Sigma社、Biopharm GmbH社、及びMegazyme社などの会社から入手可能である。或いは、細菌由来のスクロースホスホリラーゼの作用によって遊離されるグルコース−1−リン酸の測定に基づく、スクロースの自動測定法も開発されている(Vinet,B.、Panzini,B.、Boucher,M.、Massicotte,J.(1998年)、「血清及び尿中のスクロースを測定するための自動酵素アッセイ、並びに胃損傷のマーカーとしてのその使用(Automated enzymatic assay for the determination of sucrose in serum and urine and its use as a marker of gastric damage)」Clin.Chem.44、2369〜2371頁)。本発明は、SS、及びADPG又はUDPGを加水分解する共役酵素の使用に基づく、サンプル中のスクロース測定用の単純且つ信頼がおけ、安価な代替方法の開発を説明する。
【0008】
ADPGの細胞内レベルを決定する因子に関する考察は、主に、合成酵素AGPアーゼの調節を中心としてきた(Preiss(1988年)、「デンプンの生合成及びその調節(Biosynthesis of starch and its regulation)」The Biochemistry of Plants.Vol.14、Academic Press、ニューヨーク、182〜249頁;Pozueta−Romero,J.、Perata,P.、Akazawa,T.(1999年)、「従属栄養組織におけるスクロースからデンプンへの変換(Sucrose−starch conversion in heterotrophic tissues)」Crit.Rev Plant Sci.18、489〜525頁)。実際に、ADPGの作製、及び工業的利益を有するデンプンを産生する植物の作製に関する特許及び科学論文の多くは、AGPアーゼの使用を中心としている(Stark,D.M.、Timmerman,K.P.,Barry,G.F.、Preiss,J.、Kishore,G.M.(1992年)、「ADPグルコースピロホスホリラーゼによる、植物組織中のデンプン量の調節(Regulation of the amount of starch in plant tissues by ADPglucose pyrophosphorylase)」Science258、287〜282頁;Slattery,C.J.、Kavakli,H.、Okita,T.W.(2000年)「量を増やし質を高めるためのデンプン改変(Engineering starch for increased quantity and quality)」Trends Plant Sci.5、291〜298頁)。しかし、生化学的な最近の科学調査は、まだ遺伝子/分子的な証拠によって確認されていないものの、図1B及び2Bで示すように、SSが、デンプンの生合成に必要なADPGの直接合成に関与している可能性があることを示唆している(Baroja−Fernandez,E.、Munoz,F.J.、Saikusa,T.、Rodriguez−Lopez,M.、Akazawa,T.、Pozueta−Romero,J.(2003年)、「スクロースシンターゼは、植物の従属栄養組織におけるデンプン生合成に関係しているADPグルコースの新規な生成を触媒する(Sucrose synthase catalyzes the de novo production of ADPglucose linked to starch biosynthesis in heterotrophic tissues of plants)」Plant Cell Physiol.44、500〜509頁)。この仮説は、(a)SSは、葉におけるデンプン産生に関係があるとされたことがこれまでなかったこと、(b)SSによって生成されたADPGの細胞質ゾル中のプールをプラスチド内に存在するデンプン合成酵素に連結するADPG輸送体の存在が、プラスチドの膜において必要とされること、(c)SSがADPGを生成する供給源として関与することは、AGPアーゼが唯一のADPG供給源であることを示すと考えられる、生化学/遺伝子/分子的な多くの試験結果と直接的に矛盾していること(Okita,T.W.(1992年)、「デンプン合成の代替経路はあるか。(Is there an alternative pathway for starch synthesis?)」Plant Physiol.100、560〜56頁;Muller−Rober,B.、Sonnewald,U.、Willmitzer,L.(1992年)、「トランスジェニックジャガイモにおけるADPグルコースピロホスホリラーゼの阻害は、糖を貯蔵した塊茎を生じ、塊茎の形成及び塊茎の貯蔵タンパク質遺伝子の発現に影響を及ぼす(Inhibition of the ADPglucose pyrophosphorylase in transgenic potatoes leads to sugar−storing tubers and influences tuber formation and expression of tuber storage protein genes)」EMBO J.11、1229〜1238頁;Stark,D.M.、Timmerman,K.P.、Barry,G.F.、Preiss,J.、Kishore,G.M.(1992年)、「ADPグルコースピロホスホリラーゼによる、植物組織中のデンプン量の調節(Regulation of the amount of starch in plant tissues by ADPglucose pyrophosphorylase)」Science258、287〜282頁;Neuhaus,E.H.、Hausler,R.E.、Sonnewald,U.(2005年)、「代謝経路に関するパラダイムを葉の中の一時的なデンプンに変える時間はない(No time to shift the paradigm on the metabolic pathway to transitory starch in leaves)」Trends Plant Sci.印刷中)を踏まえて、特に物議をかもしている。おそらくはこれらすべての理由から、今日まで、高レベルのデンプンを製造するために、SSを過剰発現する植物が設計されたことはなかった。しかし、本発明は、ADPG及びデンプンの生成を増大させるためにSSを過剰発現するトランスジェニック植物の作製を初めて説明する。逆に言えば、本発明者らは、AGPアーゼが無いためにデンプンを欠く植物が正常なADPGレベルを有していることを示す。これはすべて、図1B及び2Bで示すように、SSが、デンプンの生合成に必要とされるADPGの直接的な合成に関与しており、また、植物細胞中で蓄積されるADPGの大半の合成を司っていることを示す。
【0009】
様々な研究は、SSは貯蔵組織におけるUDGPの合成に関与している(しかし、ADPGの合成には関与していない)とする図1Aに示す手法に基づいているが、SSの活性が低減された結果としてデンプン含有量が低減した植物の作製を説明している(Chourey,P.S.、Nelson,O.E.(1976年)、「トウモロコシのしわ型(shrunken)−1変異によって条件づけられる酵素欠陥(The enzymatic deficiency conditioned by the shrunken−1 mutations in maize)」Biochem.Genet.14、1041〜1055頁;Zrenner,R.、Salanoubat,M.、Willmitzer,L.、Sonnewald,U.(1995年)、「トランスジェニックジャガイモ植物による、シンク強度に対するスクロースシンターゼの非常に重要な役割の証拠(Evidence for the crucial role of sucrose synthase for sink strength using transgenic potato plants)」 Plant J.7、97〜107頁;Tang,G−Q.、Sturm,A.(1999年)、「ニンジン(Dancus carota L.)のスクロースシンターゼのアンチセンス抑制は、スクロース分配ではなく成長に影響を及ぼす(Antisense repression of sucrose synthase in carrot(Dancus carota L.)affects growth rather than sucrose partitioning)」Plant Mol.Biol.41、465〜479頁)。この点で、図1B及び2Bに示す代謝スキームに従ってADPGのレベルが増大した結果としてデンプン含有量の多い植物を作製するためにSSの過剰発現を使用し得るという実験的証拠はない。しかし、細胞壁の多糖類を生合成するための前駆体分子(UDPG)を生成するSSの能力に基づいて、SSの過剰発現の結果として繊維含有量の多いワタ植物又はセルロース含有量の多い穀粒の作製を説明した研究が公表され、また、特許権を与えられている(Timothy,H.J.、Xiamomu,N.、Kanwarpal,S.「茎及び穀粒の質を改善するためのスクロースシンターゼ遺伝子の操作(Manipulation of sucrose synthase genes to improve stalk and grain quality)」特許WO02067662;Robert,F.、Danny,L.、Yong−Ling,R.「植物組織におけるスクロースシンターゼ遺伝子発現の改変及びその用途(Modification of sucrose synthase gene expression in plant tissue and uses therefor)」特許WO0245485;Christopher,B.、William,B.、Robert,H.「細菌のスクロースシンターゼ組成物及び使用方法(Bacterial sucrose synthase compositions and methods of use)」特許WO9803637)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、第1に、大腸菌の適切な株の使用並びにヒスチジン末端を有する組換型SSの獲得を可能にする発現ベクターの使用に基づき、可溶性であり、容易に精製可能であり、且つ、高い比活性を有する組換型SSを大量に作製する方法の開発及び最適化に関する。本発明はさらに、ADPG又はUDPGを代謝する酵素と共役させたSS活性を有する酵素製品の使用に基づくスクロース測定用キットを作製するために従う手順にも関する。本発明はさらに、この目的のために特別に設計したSSの変異体から始める、ADPGやUDPGなどの糖ヌクレオチド作製の最適化にも関する。最後に、SSの過剰発現後の、スクロース、ADPG、及びデンプンの含有量が多く、アミロース/アミロペクチン比が高いトランスジェニック植物の設計についての詳細を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
SSをコードするcDNAの増幅
野生型スクロースシンターゼSS4のヌクレオチド配列が分かっているので(Fu,H.、Park,W.D.(1995年)「シンク及び維管束に関連したスクロースシンターゼ機能は、ジャガイモにおいて様々な遺伝子クラスにコードされている(Sink− and vascular−associated sucrose synthase functions are encoded by different gene classes in potato)」Plant Cell 7、1369〜1385頁)、遺伝子の5’末端及び3’末端に対応する2種の特異的プライマーを作製した。これらのプライマーを用いて、ジャガイモの葉のcDNAライブラリーから、SSXと呼ばれる2418塩基対のDNA断片を従来のPCR技術によって増幅した。このPCR断片をpSKブルースクリプトプラスミド(Stratagene社)に挿入して、pSS構築物(図3A)を作製し、宿主細菌XL1 Blue中で増幅させた。
【0012】
大腸菌の特殊株からの活性な組換型SSの作製
pSSを制限酵素NcoI及びNotIで消化した。(SS、SSXをコードするcDNAを含む)遊離された断片を、組換えタンパク質と融合されるヒスチジンに富む配列をコードしているヌクレオチド配列をポリリンカー領域に有するpET−28a(+)発現プラスミド(Novagen社)(図3B)の同じ制限酵素部位にクローニングした。得られたプラスミド(pET−SSと呼ぶ、図3C)をエレクトロポレーションによって大腸菌の様々な株に挿入した。pET−SSで形質転換した大腸菌株BLR(DE3)(Novagen社)を、2003年10月29日に、ブルハソート(Burjassot)46100(バレンシア、スペイン)、ブルハソートキャンパスのバレンシア大学研究所に所在するスペイン微生物株保存機関(Spanish Type Culture Collection)に寄託番号CECT:5850で寄託した。これらの細菌をLB培地中、20℃でインキュベートした。20℃で増殖させた細胞培養物100mLに1mMのイソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド(IPTG)を添加することによって、SSXの過剰発現を誘導した。培養物を誘導した6時間後に、細菌を回収し、4mlの結合緩衝液(Novagen社、His結合精製キット)中に再懸濁し、次いで、超音波処理し、40,000gで20分間遠心分離した。N末端にヒスチジン残基に富んだアミノ酸配列を有する組換型SSを含む上清を、Novagen社製のHis結合タンパク質精製キットのアフィニティーカラムに通した。キットに付属している取扱い説明書に従って、1モルの代わりに200mMのイミダゾールを含有する、推奨される溶出緩衝液6mlでSSを溶出させた。溶出後、そのタンパク質を直ちに透析にかけて、SSを不可逆的に不活性化する微量のイミダゾールを除去した。
【0013】
ADPG作製のために最適化したSSのアイソフォームの作製
適切なプライマーを用い、pSSを鋳型として、突然変異させた変異体SS5を設計して構築物pSS5を作製した。これは、QuikChange Site−Directed Mutagenesisキット(Stratagene社)を用いて行った。NcoI及びNotIを用いてpSS5を消化した。(SS5を含む)遊離された断片を、pET−28a(+)発現プラスミドの同じ制限酵素部位にクローニングしてpET−SS5を作製し、エレクトロポレーションによってそれを大腸菌BLR(DE3)中に挿入した。pSS5で形質転換した大腸菌株XL1 Blueを、2003年10月29日に、ブルハソート46100(バレンシア、スペイン)、ブルハソートキャンパスのバレンシア大学研究所に所在するスペイン微生物株保存機関に寄託番号CECT:5849で寄託した。
【0014】
SS4を過剰発現するトランスジェニック植物の作製
本発明では、(a)構成的に、(b)葉で特異的に、(c)塊茎などの貯蔵器官で特異的に、SSを過剰発現させた。
【0015】
SSを構成的に過剰発現する植物を作製するために、タバコモザイクウイルスの35S構成的プロモーターの作用によって制御される構築物を作製した。SSXの5’及び3’領域の35Sプロモーター及びNOSターミネーターをpSSに連続的に挿入することにより、プラスミドp35S−SS−NOSを作製した。このプラスミドの制限地図を図4Bに示す。
【0016】
アグロバクテリウムチュメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)を介してこの構築物を植物のゲノムに移行できるようにするには、最初に、この構築物をバイナリープラスミド中にクローニングしなければならない。このために、酵素NotI、T4 DNAポリメラーゼ、及びHindIIIでp35S−SS−NOSを連続的に消化し、予め酵素EcoRI、T4 DNAポリメラーゼ、及びHindIIIで連続的に消化しておいたバイナリープラスミドpBIN20(図4A)(Hennegan,K.P.、Danna,K.J.(1998年)「pBIN20:アグロバクテリウムを介した形質転換のために改良したバイナリーベクター(An improved binary vector for Agrobacterium−mediated transformation)」Plant Mol.Biol.Rep.16、129〜131頁)内にクローニングした。このようにして得られたプラスミドをpBIN35S−SS−NOSと呼んだ(図4C)。
【0017】
光を照射された葉において特異的にSSを過剰発現するために、PCRを使用して、タバコのRUBISCO(リブロース−1,5−ビスリン酸カルボキシラーゼ/オキシゲナーゼ)の小サブユニットをコードしている遺伝子の(RBCSと呼ばれる)プロモーター領域を増幅した(Barnes,S.A.、Knight,J.S.、Gray,J.C.(1994年)「トランスジェニックタバコ中の葉緑体のリン酸輸送体量の変化は、デンプンと糖との同化産物の分配に影響を及ぼす(Alteration of the amount of the chloroplast phosphate translocator in transgenic tobacco affects the distribution of assimilate between starch and sugar)」Plant Physiol.106、1123〜1129頁)。(光合成的に活性な細胞での特異的な発現を与える)このヌクレオチド配列を、pGEMT−easyベクター(Promega社)中に挿入して、pGEMT−RBCSpromを作製した(図5A)。この構築物をHindIII及びNcoIで消化し、遊離された断片をp35S−SS−NOSの対応する制限酵素部位中にクローニングして、pRBCS−SS−NOSを作製した(図5B)。HindIII、T4 DNAポリメラーゼ、及びNotIで連続的にこの構築物を消化した。遊離された断片を、HindIII、T4 DNAポリメラーゼ、及びEcoRIで連続的に消化したpBIN20中にクローニングした。得られた構築物をpBINRBCS−SS−NOSと呼んだ(図5C)。
【0018】
大腸菌(XL1 Blue)中で増幅させた後、pBIN35S−SS−NOS及びpBINRBCS−SS−NOSの双方をA.チュメファシエンス(A.tumefaciens)C58:GV2260中に挿入した(Debleare,R.、Rytebier,B.、deGreve,H.、Debroeck,F.、Schell,J.、van Montagu,M.、Leemans,J.(1985年)「植物へのアグロバクテリウムを介した遺伝子導入の効率的なオクトピンTiプラスミド由来ベクター(Efficient octopine Ti plasmidderived vectors of Agrobacterium mediated gene transfer to plants)」Nucl.Acids Res.13、4777〜4788頁)。A.チュメファシエンスは、トマト(Lycopersicon sculentum)、タバコ(Nicotiana tabacum)、ジャガイモ(Solanum tuberosum)、イネなどの種を従来技術によって形質転換するのに使用されている(Horsch,R.B.、Fry,J.E.、Hoffmann,N.L.、Eichholtz,D.、Rogers,S.G.、Fraley,R.T.(1985年)「植物中に遺伝子を導入するための簡易で一般的な方法(A simple and general method for transferring genes into plants)」Science 277、1229〜1231頁;Pozueta−Romero,J.、Houlne,G.、Schantz,R.、Chamarro,J.(2001年)「アグロバクテリウムを介した形質転換のための、トマト及びコショウ芽生えの外植片の再生促進(Enhanced regeneration of tomato and pepper seedling explants for Agrobacterium−mediated transformation)」Plant Cell Tiss.Org.Cult.67、173〜180頁;Hiei,Y.、Ohta,S.、Komari,T.、Kumashiro.T.(1994年)「アグロバクテリウムによって媒介されるイネ(Oryza sativa L.)の効率的な形質転換、及びT−DNAの境界の配列解析(Efficient transformation of rice(Oryza sativa L.)mediated by Agrobacterium and sequence analysis of the boundaries of the T−DNA)」Plant J.6、271〜282頁)。pBIN35S−SS−NOSで形質転換させたA.チュメファシエンスC58:GV2260の株を、2003年10月29日に、ブルハソート46100(バレンシア、スペイン)、ブルハソートキャンパスのバレンシア大学研究所に所在するスペイン微生物株保存機関に寄託番号CECT:5851で寄託した。
【0019】
スクロース測定用のアッセイキットの作製
スクロース測定用に設計されたキットのうちの1つを、スクロースから糖ヌクレオチドへの変換、また、それに続く糖ヌクレオチドからグルコース−1−リン酸、グルコース−6−リン酸、NAD(P)Hへの変換に基づいてスクロースを分光光度的/蛍光定量的に測定するためのキットに含まれる酵素反応に関する以下のスキームIに示す。
【化1】
【0020】
このキットは、当モル量のフルクトース及び対応する糖ヌクレオチドを遊離する、ヌクレオチド2リン酸(例えば、UDP又はADP)の存在下でのスクロース分子に対するSSの作用に基づいている。この反応の結果として生じる糖ヌクレオチドがUDPGである場合、NudixタイプのUDPGピロホスファターゼ(EC3.6.1.45)(Yagi,T.、Baroja−Fernandez,E.、Yamamoto,R.、Munoz,F.J.、Akazawa,T.、Pozueta−Romero,J.(2003年)「UDP−グルコースのピロリン酸結合を切断する哺乳動物のNudix加水分解酵素様の酵素のクローニング、発現、及び性質決定(Cloning,expression and characterization of a mammalian Nudix hydrolase−like enzyme that cleaves the pyrophosphate bond of UDP−glucose)」Biochem.J.370、409〜415頁)やUDPG加水分解酵素(Burns,D.M.、Beacham,I.R.(1986年)「ペリプラズムのUDP−糖加水分解酵素(5’−ヌクレオチダーゼ)をコードしている大腸菌ushA遺伝子のヌクレオチド配列及び転写解析:ushA遺伝子の制御、並びにコードされているタンパク質産物のシグナル配列(Nucleotide sequence and transcriptional analysis of the E.coli ushA gene,encoding periplasmic UDP−sugar hydrolase(5’−nucleotidase):regulation of the ushA gene,and the signal sequence of its encoded protein product)」Nucl.Acids Res.14、4325〜4342頁)などUDPGの加水分解酵素の作用をこのUDPGに受けさせる。これらの加水分解酵素の作用によって遊離されたG1Pをホスホグルコムターゼ(PGM)の作用によって変換して、グルコース−6−リン酸(G6P)を生じさせる。次に、酵素G6Pデヒドロゲナーゼ(G6PDH)の作用によって、このG6PをNAD(P)+とカップリング反応させて、蛍光測定法及び340nmでの分光測定によって容易に測定可能な6−ホスホグルコン酸及びNAD(P)Hを生成させることができる。次に、遊離されたNAD(P)HをFMN−オキシドレダクターゼ/ルシフェラーゼの作用と共役させて、分光測定で定量化される光を生じさせることができる。
【0021】
別法として、スキームIIに示すように、生成されるUDPGを、蛍光測定法又は340nmでの分光測定によって測定可能な当モル量のUDP−グルコン酸及びNADHをNADの存在下で生成させるUDPGデヒドロゲナーゼ(EC1.1.1.22)と共役させることもできる。次に、遊離されたNADHをFMN−オキシドレダクターゼ/ルシフェラーゼの作用と共役させて、分光測定で定量化される光を生じさせることができる。
【化2】
【0022】
SSによって触媒される反応の生成物がADPGである場合、細菌のADPGピロホスファターゼ(EC3.6.1.21)(Moreno−Bruna,B.、Baroja−Fernandez,E.、Munoz,F.J.、Bastarrica−Berasategui,A.、Zandueta−Criado,A.、Rodriguez−Lopez,M.、Lasa,I.、Akazawa,T.、Pozueta−Romero,J.(2001年)「アデノシン2リン酸糖ピロホスファターゼは、大腸菌におけるグリコーゲン生合成を妨げる(Adenosine diphosphate sugar pyrophosphatase prevents glycogen biosynthesis in Escherichia coli)」Proc.Natl.Acad.Sci.USA98,8128〜8132頁)などのADPG加水分解酵素の作用をこのADPGに受けさせる。遊離されたG1Pをホスホグルコムターゼの作用によって変換して、グルコース−6−リン酸(G6P)を生じさせる。次に、酵素G6Pデヒドロゲナーゼの作用によって、このG6PをNAD(P)+とカップリング反応させて、蛍光測定法及び340nmでの分光測定によって容易に測定可能な6−ホスホグルコン酸及びNAD(P)Hを生成させることができる。
【0023】
いずれの場合も、SSによって媒介される糖ヌクレオチド生成と共役させた酵素反応のスキームは、アンペロメトリック検出に応用するのに極めて適している。
【実施例】
【0024】
ジャガイモのSSのアイソフォームをコードしているcDNAを適切な発現ベクター及び活性型の酵素の作製及び蓄積用に最適化させた大腸菌株においてクローニングするための手順を詳細に示す実施例を以下に説明する。他の実施例では、植物サンプル、血清、尿、果汁、加糖した果実飲料、清涼飲料水などのスクロース測定用アッセイキットを作製するための組換型SSの使用について説明する。別の実施例では、UDPGやADPGなどの糖ヌクレオチドの大量作製用に最適化したSSの変異体の使用について説明する。最後に、別の実施例では、SSを過剰発現する植物における高いADPG生成活性の結果として、スクロース、ADPG、及びデンプンの含有量が多く、アミロース/アミロペクチン比が高い植物の作製について説明する。
【0025】
(実施例1)
容易に精製可能であり、且つ、高い比活性を有する、ヒスチジン末端を有する組換型SSの大腸菌BLR(DE3)における発現
ジャガイモのSSのアイソフォームをコードするSS4遺伝子のヌクレオチド配列が分かっているので、5’から3’の方向に、配列番号1及び配列番号2の配列を有する2種の特異的プライマーを作製することができた。これらのプライマーを用いて、ジャガイモの塊茎のcDNAライブラリーから、SSXと呼ばれるDNA断片を従来のPCR法によって増幅し、これをpSKブルースクリプトプラスミド(Stratagene社)に挿入して、宿主細菌XL1 Blue中で増幅させた。SSXのヌクレオチド配列は、配列番号3であり、SS4(ジェンバンクアクセッション番号U24087)と少し異なっている。配列番号3から演繹されるアミノ酸配列はSS4と少し異なっており、したがって、SSXと呼ぶ。pET−28a(+)プラスミドにおいて配列番号3を発現させた後に演繹されるアミノ酸配列は、配列番号4であり、この配列は、配列番号3から演繹されるアミノ酸配列のアミノ末端に融合された38アミノ酸からなるヒスチジンに富む配列を含んでいる。
【0026】
1mM IPTGを添加して、pET−SSで形質転換させた細菌BL21(DE3)におけるSSX生成を誘導した。37℃でさらに6時間培養した後、pET−SSで形質転換させた細菌が凝集型のタンパク質を蓄積し、そのサイズがSSに対応することが観察された。しかし、これらの細菌はSS活性を示さなかった。活性型SSの発現の失敗の原因は、大腸菌が一部の高分子量の真核生物タンパク質を正しくフォールディングする際に抱える問題に帰することができる(Miroux,B.、Walker,J.E.(1996年)「大腸菌におけるタンパク質の過剰産生:いくつかの膜タンパク質及び球状タンパク質の高レベルの合成を可能にする変異宿主(Over−production of proteins in Escherichia coli:mutant hosts that allow synthesis of some membrane proteins and globular proteins at high levels)」J.Mol.Biol.260、289〜298頁)。この問題を克服することを目指して、他の細菌株において、20℃の温度で活性SSを作製できるか可能性を調査した。これらすべてにおいて、1mMのIPTGを添加してSSXの生成を誘導した。さらに6時間インキュベートした後、細胞を超音波処理し、遠心分離した。得られた上清のSS活性を分析した。図6で示すように、これらの条件では、可溶性の活性SSの生成という観点からすると、BLR(DE3)株が最も効率的であることが判明した。pET−SSで形質転換させた大腸菌株BLR(DE3)(Novagen社)を、2003年10月29日に、寄託番号CECT:5850でスペイン微生物株保存機関に寄託した。文献(Nakai,T.、Tonouchi,N.、Tsuchida,T.、Mori,H.、Sakai,F.、Hayashi,T.(1997年)、「大腸菌における、リョクトウ芽生え由来のスクロースシンターゼの発現及び性質決定(Expression and characterization of sucrose synthase from mung bean seedlings in Escherichia coli)」Biosci.Biotech.Biochem.61、1500〜1503頁;Li,C.R.、Zhang,X.B.、Hew,C.S.(2003年)、「熱帯の着生ラン、オンシジウムゴルディアナから得たスクロースシンターゼ遺伝子のクローニング、性質決定、及び発現解析(Cloning,characterization and expression analysis of a sucrose synthase gene from tropical epiphytic orchid Oncidium goldiana)」Physiol.Plantarum 118、352〜360頁)で記載されている組換型SSの非常に低い生産性と比べて、CECT:5850のタンパク質プール全体における組換型SSXの寄与率は、約20%である。ヒスチジン末端を有する組換えタンパク質が特異的に保持されるHis−Bindアフィニティーカラム(Novagen社)に上清を通した。精製されたSSを溶出させ透析した後、50mM HEPES、pH7.0/1mM EDTA/20%ポリエチレングリコール/1mM MgCl2/15mM KCl/2mM UDPともにインキュベートした。UDPGの生成に基づいて決定した比活性は、タンパク質1mg当たり80ユニットであり、文献(Nakai,T.、Tonouchi,N.、Tsuchida,T.、Mori,H.、Sakai,F.、Hayashi,T.(1997年)、「大腸菌における、リョクトウ芽生え由来のスクロースシンターゼの発現及び性質決定(Expression and characterization of sucrose synthase from mung bean seedlings in Escherichia coli)」Biosci.Biotech.Biochem.61、1500〜1503頁;Li,C.R.、Zhang,X.B.、Hew,C.S.(2003年)、「熱帯の着生ラン、オンシジウムゴルディアナから得たスクロースシンターゼ遺伝子のクローニング、性質決定、及び発現解析(Cloning,characterization and expression analysis of a sucrose synthase gene from tropical epiphytic orchid Oncidium goldiana)」Physiol.Plantarum 118、352〜360頁;Romer,U.、Schrader,H.、Gunther,N.、Nettelstroth,N.、Frommer,W.B.、Elling,L.(2004年)、「糖質工学のための、ジャガイモから得た組換型スクロースシンターゼIの発現、精製、及び性質決定(Expression,purification and characterization of recombinant sucrose synthase I from Solanum tuberosum L.for carbohydrate engineering)」J.Biotechnology 107、135〜149頁)で記載されている組換型SSの1mg当たり0.05〜5ユニットという活性よりはるかに高く、植物抽出物から精製したSSに対応する3ユニット/mgよりも大きかった(Pressey R(1969年)、「ジャガイモのスクロースシンターゼ:精製、諸特性、及び成熟に伴う活性の変化(Potato sucrose synthase:purification,properties,and changes in activity associated with maturation)」Plant Physiol.44、759〜764頁)。ユニットは、1分当たり1マイクロモルのUDPG生成を触媒する酵素の量として定義される。500mMのスクロースが存在する場合のUDPに対する親和力は、Km(UDP)=0.25mMであったのに対し、1mMのUDPが存在する場合、スクロースに対するKmは、30mMであった。UDPの存在下でのスクロースに対するこの親和性は、酵母で得られた組換型SSによって示される親和性(Km=95mM、Romer,U.、Schrader,H.、Gunther,N.、Nettelstroth,N.、Frommer,W.B.、Elling,L.(2004年)、「糖質工学のための、ジャガイモから得た組換型スクロースシンターゼIの発現、精製、及び性質決定(Expression,purification and characterization of recombinant sucrose synthase I from Solanum tuberosum L.for carbohydrate engineering)」J.Biotechnology 107、135〜149頁)より有意に高い。
【0027】
(実施例2)
大腸菌から得た組換型SSの使用に基づくUDPG及びADPGの大量作製
1M スクロース、50mM HEPES、pH7.0/1mM EDTA/20%ポリエチレングリコール/1mM MgCl2/15mM KCl/100mM UDP、並びにBLR(DE3)におけるpET−SSの発現及びそれに続く精製後に得たジャガイモの組換型SSの30ユニットを含有する溶液100ミリリットルを37℃で12時間インキュベートして、高純度のUDPG3グラムを効率的且つ経済的に作製した。この溶液を100℃で90秒間加熱して反応を終了させ、次いで10,000gで10分間遠心分離した。上清を分取スケールHPLCクロマトグラフ(Waters Associates社)に添加し、文献で記載されているようにしてUDPGを精製した(Rodriguez−Lopez,M.、Baroja−Fernandez,E.、Zandueta−Criado,A.、Pozueta−Romero,J.(2000年)「アデノシン2リン酸グルコースピロホスファターゼ:グリコーゲン生合成を妨げる色素体ホスホジエステラーゼ(Adenosine diphosphate glucose pyrophosphatase:a plastidial phosphodiesterase that prevents starch biosynthesis)」Proc.Natl.Acad.Sci.USA97、8705〜8710頁)。
【0028】
ADPGの作製には、植物組織から抽出されたSSについて記述されているよりずっと高い親和性をADPに対して有するSSの変異型の作製を必要とした(Pressey R(1969年)、「ジャガイモのスクロースシンターゼ:精製、諸特性、及び成熟に伴う活性の変化(Potato sucrose synthase:purification,properties,and changes in activity associated with maturation)Plant Physiol.44、759〜764頁;Nguyen−Quock,B.、Krivitzky,M.、Huber,S.C.、Lecharny,A.(1990年)、「発育中のトウモロコシの葉のスクロースシンターゼ(Sucrose synthase in developing maize leaves)」Plant Physiol.94、516〜523頁;Morell,M.、Copeland,L.(1985年)、「ダイズ根粒のスクロースシンターゼ(Sucrose synthase of soybean nodules)」Plant Physiol.78、149〜154頁)
【0029】
QuikChange Site−Directed Mutagenesisキット(Stratagene社)を用いてSSXを点突然変異誘発し、下記の[配列番号5、配列番号6]、[配列番号7、配列番号8]、及び[配列番号9、配列番号10]の配列を有するプライマー対を連続して使用することによって、SS5と呼ばれるアイソフォームを得た。SS5と呼ばれる得られたヌクレオチド配列は、配列番号11である。(データベース中にある)SS4(Susy4)と比べたSS5(Susy5)のアミノ酸配列の変化を表Iで網がけにして示す。pET−28a(+)プラスミドで配列番号11を発現させた後に演繹されるアミノ酸配列は配列番号12であり、この配列は、配列番号11から演繹されるアミノ酸配列のアミノ末端と融合した38アミノ酸からなるヒスチジンに富む配列を含んでいる。
【0030】
表Iは、SS5のアミノ末端部分に融合した38アミノ酸からなるヒスチジンに富む前記配列を含んでいる。
【表1】
【0031】
pET−SS5の発現後に得られた組換型SS5は、UDP及びADPの存在下で、それぞれタンパク質1mg当たり80ユニット及び65ユニットのVmax値を示した。500mMスクロースの存在下でのUDP及びADPに対する親和性は非常に類似していたが(ADP及びUDPのいずれに対してもKm=0.2mM)、飽和濃度のUDP及びADPの存在下でのスクロースに対するKmは、それぞれ30mM及び100mMであった。これらの動態パラメータは、ジャガイモ塊茎及び他の植物種の他の器官から抽出されたSSについて記載されている値と大きく異なっており、それらの文献によると、酵素のVmaxは、ADPが存在する場合よりUDPが存在する場合に10倍高い値となる(Pressey R(1969年)、「ジャガイモのスクロースシンターゼ:精製、諸特性、及び成熟に伴う活性の変化(Potato sucrose synthase:purification,properties,and changes in activity associated with maturation)」Plant Physiol.44、759〜764頁;Morell,M.、Copeland,L.(1985年)、「ダイズ根粒のスクロースシンターゼ(Sucrose synthase of soybean nodules)」Plant Physiol.78、149〜154頁;Nguyen−Quock,B.、Krivitzky,M.、Huber,S.C.、Lecharny,A.(1990年)、「発育中のトウモロコシの葉のスクロースシンターゼ(Sucrose synthase in developing maize leaves)」Plant Physiol.94、516〜523頁)。pSS5で形質転換させた大腸菌株XL1 Blueを、スペイン微生物株保存機関に寄託番号CECT:5849で寄託した。
【0032】
1M スクロース、50mM HEPES、pH7.0/1mM EDTA/20%ポリエチレングリコール/1mM MgCl2/15mM KCl/100mM ADP、並びにBLR(DE3)におけるpET−SS5の発現及びそれに続くHis結合カラムでの精製後に得たジャガイモの組換型SSの30ユニットを含有する溶液100ミリリットルを37℃で12時間インキュベートして、高純度のADPG3グラムを効率的且つ経済的に作製した。この溶液を100℃で90秒間加熱して反応を終了させ、次いで10,000gで10分間遠心分離した。ADPGを精製するために、上清を分取スケールHPLCクロマトグラフ(Waters Associates社)に添加した。
【0033】
(実施例3)
スクロース測定用酵素キットの作製
スクロースを測定するために、以下の成分及び最終量/濃度を用いて次の反応混液を調製した。
1.糖ヌクレオチドの加水分解酵素の使用に基づくキット
a.2ユニットのSS(組換型又は非組換型)
b.2mMのADP又はUDP(それぞれ、ADPG又はUDPGを作製するかどうかに応じて)
c.2ユニットのADPGピロホスファターゼ又は2ユニットのUDPGピロホスファターゼ(それぞれ、ADP又はUDPの反応混液に含めるかどうかに応じて)
d.2ユニットのPGM
e.2ユニットのG6PDH
f.0.5mMのNAD(P)
g.反応緩衝液:50mM HEPES,pH7.0/1mM EDTA/20%ポリエチレングリコール/1mM MgCl2/15mM KCl
h.予めろ過した試験サンプル
2.UDPGデヒドロゲナーゼの使用に基づくキット
a.2ユニットのSS(組換型又は非組換型)
b.2mMのUDP
c.2ユニットのUDPGデヒドロゲナーゼ
d.0.5mMのNAD
e.反応緩衝液:50mM HEPES,pH7.0/1mM EDTA/20%ポリエチレングリコール/1mM MgCl2/15mM KCl
f.予めろ過した試験サンプル
【0034】
試験サンプル中に存在するスクロース量の測定は、スキームI及びIIで示される共役反応によって生成されるNAD(P)Hの蛍光定量的測定又は分光光度的測定(340nm)に基づいている。
【0035】
発育の程度が様々なオオムギ種子のスクロース含有量を測定するために(図7)、37℃で3分間、ELISAプレートの300マイクロリットルウェル中で反応を行った。試験サンプルの体積は20マイクロリットルであり、試薬a〜g(キット#1)及びa〜e(キット#2)を組み合わせて得られる反応混液の体積は280マイクロリットルであった。ブランクは、SS以外の反応混液のすべての成分を含んだ。MultiSkan分光光度計を用いて測定を実施した。タイプ「1」のキットとタイプ「2」のキットのいずれで得られた値も、序論で記述したクロマトグラフィー技術を用いて測定した値と同程度であることが判明した(Baroja−Fernandez,E.、Munoz,F.J.、Saikusa,T.、Rodriguez−Lopez,M.、Akazawa,T.、Pozueta−Romero,J.(2003年)、「スクロースシンターゼは、植物の従属栄養組織におけるデンプン生合成に関係しているADPグルコースの新規な生成を触媒する(Sucrose synthase catalyzes the de novo production of ADPglucose linked to starch biosynthesis in heterotrophic tissues of plants)」Plant Cell Physiol.44、500〜509頁)。
【0036】
(実施例4)
SSを過剰発現するトランスジェニック植物の作製
図8〜10は、構成的(35S−SS−NOS)及び特異的(RBCS−SS−NOS)にSSを過剰発現するジャガイモ植物の葉で得られた双方の結果を示す。
【0037】
図8で示すように、これらの植物のいずれかの葉におけるSS活性は、野生型植物(WT)の同一器官での活性より2〜10倍高い。これらの葉は、以下の特徴を有した。
1.ADPGを生成するSSの活性(図8)とデンプン(図9)及びADPG(図10)レベルとの明確な相関。この特徴は、葉だけでなく、塊茎や種子などの貯蔵組織でも観察された(以下参照)。
2.野生型植物の葉と比べてデンプン含有量が多い(図9)。例えば、20℃、明期8時間/暗期16時間の光周期の条件で発育させた「野生型」ジャガイモ植物の葉のデンプン含有量は新鮮重1グラム当たり5マイクロモルであるのに対し、SSを過剰発現するトランスジェニック植物の葉では、新鮮重1グラム当たり8マイクロモルである。野生型植物とトランスジェニック植物の差は、明期が長いときに拡大され、その結果、SSを過剰発現する植物の葉は野生型植物の葉の4倍のデンプンを含有する。
3.非形質転換植物の同一の組織又は器官に比べてADPG含有量が多い(図10)。20℃、明期8時間/暗期16時間の光周期の条件で発育させた野生型ジャガイモ植物の葉の平均含有量は新鮮重1グラム当たり0.35ナノモルであるのに対し、SSを過剰発現する植物の葉は、新鮮重1グラム当たり2.5ナノモルの含有量を有し得る。
4.ADPGもデンプンも、明期中に一時的蓄積を示す(図11)。どちらの物質の蓄積速度もSS活性との間に正の相関があり、このことは、デンプン生合成の「従来の」モデル(図2A)によって示されている内容とは異なり、また、図2Bに示す「代替の」モデルの仮説を確認するものであり、SSがADPGの生成、及びスクロース代謝とデンプン代謝の連結において基本的な役割を果たしていることを示唆している。
5.グルコースやフルクトースなどの可溶性糖は通常レベルである。しかし、トランスジェニックの葉におけるグルコース−6−P及びスクロースのレベルは、野生型ジャガイモの葉で観察されるそれらのレベルより高い(表2)。
【0038】
表2:対照植物(WT)及び35S−SuSy−NOS由来の葉における代謝産物のレベル(新鮮重1g当たりのnモルで示す)。WTで観察される値と有意に異なる値を太字で示す。
【表2】
6.SSを過剰発現する植物の外部形態は、非形質転換植物と比較した場合、異常ではない。
【0039】
図12〜14は、SSを構成的に過剰発現するジャガイモ塊茎で得られた結果を示す(35S−SS−NOS)。これらの結果は、特異的な塊茎プロモーター(パタティナ(patatina)遺伝子のプロモーター)の制御下でSSを過剰発現する塊茎で観察される結果とほぼ同一である。
【0040】
図12で示すように、これらの植物のいずれかの塊茎におけるSS活性は、野生型植物の同一器官での活性より?倍高い。これらの塊茎は、以下の特徴を有した。
1.ADPGを生成するSSの活性(図12)とデンプン(図13)及びADPG(図14)レベルとの明確な相関。
2.非形質転換植物の塊茎と比べてデンプン含有量が多い(図13)。例えば、「野生型」植物の塊茎のデンプン含有量は新鮮重1グラム当たり約300マイクロモル(新鮮重1グラム当たり54mgのデンプンに相当)であるのに対し、SSを過剰発現する塊茎では、新鮮重1グラム当たり450〜600マイクロモルである。
3.野生型植物の塊茎と比べてADPG含有量が多い(図14)。野生型塊茎の平均含有量は新鮮重1グラム当たり5ナノモルであるのに対し、SSを過剰発現する塊茎は、新鮮重1グラム当たり7〜9ナノモルの含有量を有し得る。
【0041】
イネの種子、トマト、及びタバコの葉、並びにトマトで得られた結果は、図8〜14で示す結果と質的に同様である。すべての事例で、デンプン含有量の増加及びアミロース/アミロペクチン比の上昇がみとめられた。
【0042】
SSの過剰発現によりADPG及びデンプンの含有量が多い植物が得られることは、(図1A及び2Aに例示した)デンプン生合成の現在の概念によっては全く予想されず、おそらくは、SSを過剰発現する植物の設計が、デンプン産生を増大させる戦略としてなぜこれまで採用されなかったかを説明する結果である。この研究に基づいて得られた結果は、AGPアーゼではなくSSが、植物中で蓄積するADPGの基本的供給源であることを示唆している。いまだ通用しているモデルによれば、AGPアーゼはADPGの唯一の供給源である。しかし、意外にも、AGPアーゼ欠損植物のADPGレベルはこれまで調査されていなかった。本発明者らの発明の有意性を調査するために、本発明者らは、AGPアーゼ活性を低減させたシロイヌナズナ及びジャガイモ植物におけるADPG及びデンプンのレベルを初めて分析した。図15Aで示すように、AGPアーゼ欠損TL25シロイヌナズナ植物のデンプンレベル(Lin,T.P.、Caspar,T.、Somerville,C.R.、Preiss,J.(1988年)「ADPグルコースピロホスホリラーゼ活性を欠くシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)のデンプンを含まない変異体の単離及び性質決定(Isolation and characterization of a starchless mutant of Arabidopsis thaliana lacking ADPglucose pyrophosphorylase activity)」Plant Physiol.88、1131〜1135頁)は、WT植物で観察されるレベルより低い。しかし、ADPGのレベルは正常である(図15B)。一方、AGP62及びAGP85ジャガイモ植物のデンプンレベル(Muller−Rober,B.、Sonnewald,U.、Willmitzer,L.(1992年)、「トランスジェニックジャガイモにおけるADPグルコースピロホスホリラーゼの阻害は、糖を貯蔵した塊茎を生じ、塊茎の形成及び塊茎の貯蔵タンパク質遺伝子の発現に影響を及ぼす(Inhibition of the ADPglucose pyrophosphorylase in transgenic potatoes leads to sugar−storing tubers and influences tuber formation and expression of tuber storage protein genes)」EMBO J.11、1229〜1238頁)は、野生型植物の葉で観察されるデンプンレベルに比べて低減されている(図16A)。しかし、ADPGのレベルは全く正常である(図16B)。総合すると、これらの観察結果は、(a)AGPアーゼではなくSSが、植物におけるADPGの主要供給源であることを示し、(b)SSの過剰発現によりデンプン含有量の多い植物が得られることを実証し、本発明者らの発明の有意性を強調している。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】従属栄養的な器官におけるデンプン生合成の機序を表す図である。(A)SSはUDPGの生成に関与し、そのUDPGが、UDPGピロホスホリラーゼ(UGPアーゼ)、細胞質ゾルホスホグルコムターゼ(PGM)、色素体ホスホグルコムターゼ、ADPGピロホスホリラーゼ(AGPアーゼ)、及びデンプン合成酵素の一連の作用後に、最終的にデンプンに変換されるとする「従来の」機序を表す図である。(B)SSは、細胞質ゾルにおけるADPGの直接的な生成に関与しているとする「代替の」機序を表す図である。その後、ADPGは、輸送体の作用によりアミロプラストへと輸送される。アミロプラストの内部に入った後、デンプン合成酵素はデンプンを生成するためにそのADPGを利用する。
【図2】葉におけるデンプン生合成の機序を表す図である。(A)デンプン生合成のプロセス全体が葉緑体の内部で起こるとする「従来の」機序を表す図である。この見解によれば、デンプン代謝とスクロースは連結していない。さらに、SSは、糖新生のプロセスに関与していない。(B)SSは、細胞質ゾルにおけるADPGの直接的な合成に関与しているとする、デンプン生合成の「代替の」機序を表す図である。その後、ADPGは、色素体の内部へと輸送され、そこで、デンプン合成酵素はデンプン合成反応用の基質としてそのADPGを利用する。
【図3A】pET−28a(+)及びpSSからpET−SS発現プラスミドを構築する際のステップを表す図である。
【図3B】pET−28a(+)及びpSSからpET−SS発現プラスミドを構築する際のステップを表す図である。
【図4A】pBIN20及びp35S−SS−NOSからpBIN35S−SS−NOS発現プラスミドを構築する際のステップを表す図である。
【図4B】pBIN20及びp35S−SS−NOSからpBIN35S−SS−NOS発現プラスミドを構築する際のステップを表す図である。
【図4C】pBIN20及びp35S−SS−NOSからpBIN35S−SS−NOS発現プラスミドを構築する際のステップを表す図である。
【図5A】pGEMT−RBCSprom、p35S−SS−NOS、及びpBIN20からpRBCS−SS−NOS発現プラスミドを構築する際のステップを表す図である。
【図5B】pGEMT−RBCSprom、p35S−SS−NOS、及びpBIN20からpRBCS−SS−NOS発現プラスミドを構築する際のステップを表す図である。
【図5C】pGEMT−RBCSprom、p35S−SS−NOS、及びpBIN20からpRBCS−SS−NOS発現プラスミドを構築する際のステップを表す図である。
【図6】大腸菌の様々な株におけるpET−SSの発現を表す。(A)pET又はpET−SSで形質転換させた細菌抽出物のSS活性(細菌タンパク質1ミリグラム当たりのミリユニット(mU))を表す。この反応は、スクロースを分解し、ADPGを生成する方向に起こった。反応混液は、50mM HEPES(pH7.0)、1mM EDTA、20%ポリエチレングリコール、1mM MgCl2、15mM KC1、及び2mM ADPを含有した。反応は37℃で10分間行った。(B)pET及びpET−SSで形質転換させた様々な大腸菌株から得たタンパク質抽出物のSDS−PAGEを表す。組換型SSXの位置をアスターリスクで示している。
【図7】SS、ADPG(UDPG)ピロホスファターゼ、PGM、及びG6PDHの共役反応に基づくキットによる、オオムギ内胚乳の様々な発育段階におけるスクロースの測定を表すグラフである。これらの結果は、SS及びUDPGデヒドロゲナーゼの共役反応に基づくキットの使用、並びにCarbo−PacPA1カラムに連結したDX−500 Dionexシステムでのアンペロメトリック検出を伴う高速クロマトグラフィー(HPLC)の使用によって並行して得られた結果と同一であった。横軸:開花後の日数縦軸:スクロース含有量/内容(μmol/gFW)
【図8】野生型(WT)ジャガイモ植物、並びに35S−SS−NOS(アグロバクテリウムチュメファシエンス株CECT:5851の作用による)又はRBCS−SS−NOS構築物のゲノム中への組み込み後にSSXを過剰発現するジャガイモ植物の葉のSS活性を表すグラフである。新鮮重1グラム当たりのミリユニット(mU)で活性を表す。このユニットは、1分当たり1マイクロモルのADPGを生成するのに必要とされるSSの量として定義される
【図9】野生型(WT)ジャガイモ植物、並びに35S−SS−NOS(アグロバクテリウムチュメファシエンス株CECT:5851の作用による)又はRBCS−SS−NOS構築物のゲノム中への組み込み後にSSXを過剰発現するジャガイモ植物の葉のデンプン含有量を表すグラフである。
【図10】野生型(WT)ジャガイモ植物、並びに35S−SS−NOS(アグロバクテリウムチュメファシエンス株CECT:5851の作用による)又はRBCS−SS−NOS構築物のゲノム中への組み込み後にSSXを過剰発現するジャガイモ植物の葉のADPG含有量を表すグラフである。
【図11】WT植物(●)、35S−SSNOS(■)、及びRBCS−SS−NOS(▲)の葉における、明期8時間、暗期16時間の光周期での(A)デンプン及び(B)ADPGの一時的蓄積を表すグラフである。
【図12】野生型ジャガイモ植物(WT)、再生させた対照(RG)、及び(アグロバクテリウムチュメファシエンス株CECT:5851の作用による)35S−SS−NOS構築物のゲノム中への組み込み後にSSXを過剰発現するジャガイモ植物(4、5、6、12系統)の塊茎の(新鮮重FWに対する)SS活性を表すグラフである。新鮮重1グラム当たりのミリユニット(mU)で活性を表す。このユニットは、1分当たり1マイクロモルのADPGを生成するのに必要とされるSSの量として定義される。
【図13】野生型ジャガイモ植物(WT)、再生させた対照(RG)、及び(アグロバクテリウムチュメファシエンス株CECT:5851の作用による)35S−SS−NOS構築物のゲノム中への組み込み後にSSXを過剰発現するジャガイモ植物(4、5、6、12系統)の塊茎の(新鮮重FWに対する)デンプン含有量を表すグラフである。
【図14】野生型ジャガイモ植物(WT)、及び(アグロバクテリウムチュメファシエンス株CECT:5851の作用による)35S−SS−NOS構築物のゲノム中への組み込み後にSSXを過剰発現するジャガイモ植物の塊茎の(新鮮重FWに対する)ADPG含有量を表すグラフである。
【図15】AGPアーゼ欠損シロイヌナズナTL25の葉のデンプン含有量(A)及びADPG含有量(B)を表す。
【図16】AGPアーゼ欠損ジャガイモAGP62及びAGP85の葉のデンプン含有量(A)及び(B)ADPG含有量を表す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高レベルの可溶性且つ活性型の組換型スクロースシンターゼ(SS)酵素を効率的に作製する方法であって、
a)ジャガイモSS4のSSのアイソフォームをコードする遺伝子のヌクレオチド配列から配列番号1及び配列番号2によって示される2種のプライマーを得、それらのプライマーを用いて、ジャガイモの葉のcDNAライブラリーに基づき、配列番号3によって示される2418塩基対のcDNA断片をPCRによって増幅するステップと、
b)第1のベクター中に前記cDNA断片を挿入するステップと、
c)前記第1のベクターを、増幅場所とする第1の宿主微生物中に挿入するステップと、
d)増幅された構築物を少なくとも2種の制限酵素で消化するステップと、
e)先に消化した後に、演繹されるアミノ酸配列が配列番号4によって示されるSSXをコードするcDNAを含有するDNA断片を得るステップと、
f)ヒスチジンに富む配列をコードするヌクレオチド配列を含むベクターと同じ制限部位に前記断片をクローニングし、前記ヒスチジンに富む末端をSSに融合し、第2の発現ベクターを作製するステップと、
g)この第2のベクターを、発現場所とする第2の宿主微生物中に挿入するステップと、
h)前記形質転換された微生物を、可溶性且つ活性型のSSXを合成するのに適した培養条件でインキュベートするステップと、
i)活性型のSSXを単離及び精製するステップと
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
ステップb)で使用される第1の発現ベクターが、配列番号3に挿入されると図3Aの構築物pSSを生じるプラスミドpSKであることを特徴とする、前記請求項に記載の組換型SSの作製方法。
【請求項3】
pSKプラスミドを増幅させるためにステップc)で使用される第1の宿主微生物が大腸菌(E.coli)XL1 Blueであることを特徴とする、前記請求項に記載の組換型SSの作製方法。
【請求項4】
ステップd)で使用される制限酵素がNcoI及びNotIであることを特徴とする、前記請求項のいずれか一項に記載の組換型SSの作製方法。
【請求項5】
ステップf)において、ステップd)後に遊離されるDNA断片がクローニングされる制限部位が、図3Bで示されるプラスミドpET−28a(+)と同じであり、図3Cで示されるpET−SSプラスミドを生じることを特徴とする、前記請求項のいずれか一項に記載の組換型SSの作製方法。
【請求項6】
ステップg)で使用される第2の宿主微生物が大腸菌(Escherichia coli)のBLR(DE3)株であることを特徴とする、前記請求項のいずれか一項に記載の組換型SSの作製方法。
【請求項7】
可溶性且つ活性型のSSXを合成するのに適した培養条件においてステップh)でインキュベートされる、ステップg)で形質転換された株がCECT5850であることを特徴とする、前記請求項のいずれか一項に記載の組換型SSの作製方法。
【請求項8】
SSXを合成するのに適した培養条件が、細菌培養物を20℃の温度下に置くステップを含むことを特徴とする、前記請求項のいずれか一項に記載の組換型SSの作製方法。
【請求項9】
SSXの精製が、好ましくは、イミダゾールを好ましくは200mMの濃度で含む溶出緩衝液を用いた、ヒスチジン残基に富むアミノ酸配列に対するアフィニティクロマトグラフィーによって実施されることを特徴とする、前記請求項のいずれか一項に記載の組換型SSの作製方法。
【請求項10】
活性型の精製されたSSX酵素を維持するために、アフィニティクロマトグラフィーから溶出された前記精製酵素を直ちに透析にかけて、微量のイミダゾールを除去することを特徴とする、前記請求項のいずれか一項に記載の組換型SSの作製方法。
【請求項11】
組換型のジャガイモSS5アイソフォームの作製方法であって、
a)構築物pSSを鋳型として使用し、[配列番号5、配列番号6]、[配列番号7、配列番号8]、及び[配列番号9、配列番号10]の配列を有するプライマー対を連続して使用した後に特異的突然変異誘発を起こすことによって、配列番号11によって示される2418塩基対のDNA断片を得るステップと、
b)第1のベクター中に前記DNA断片を挿入するステップと、
c)前記第1のベクターを、増幅場所とする第1の宿主微生物中に挿入するステップと、
d)増幅された構築物を少なくとも2種の制限酵素で消化するステップと、
e)先に消化した後に、アミノ酸配列が配列番号12によって示されるSS5をコードするDNA断片を得るステップと、
f)ヒスチジンに富む配列をコードするヌクレオチド配列を含むベクターと同じ制限部位に前記断片をクローニングし、前記ヒスチジンに富む末端をSS5に融合し、第2の発現ベクターを作製するステップと、
g)この第2のベクターを、発現場所とする第2の宿主微生物中に挿入するステップと、
h)前記形質転換された微生物を、可溶性且つ活性型のSS5を合成するのに適した培養条件でインキュベートするステップと、
i)活性型のSS5を単離及び精製するステップと
を含むことを特徴とする方法。
【請求項12】
ステップb)が構築物pSS5を生じることを特徴とする、請求項11に記載の組換型SS5の作製方法。
【請求項13】
pSS5を増幅させるためにステップc)で使用される第1の宿主微生物が大腸菌XL1 Blueであることを特徴とする、請求項11又は12のいずれか一項に記載の組換型SS5の作製方法。
【請求項14】
ステップd)で使用される制限酵素がNcoI及びNotIであることを特徴とする、請求項11から13までのいずれか一項に記載の組換型SS5の作製方法。
【請求項15】
ステップf)において、ステップd)後に遊離されるDNA断片がクローニングされる制限部位が、プラスミドpET−28a(+)と同じであり、プラスミドpET−SS5を生じることを特徴とする、請求項11から14までのいずれか一項に記載の組換型SS5の作製方法。
【請求項16】
ステップg)で使用される第2の宿主微生物が大腸菌のBLR(DE3)株であることを特徴とする、請求項11から15までのいずれか一項に記載の組換型SS5の作製方法。
【請求項17】
可溶性且つ活性型のSS5を合成するのに適した培養条件においてステップh)でインキュベートされる、ステップg)で形質転換された株がCECT5849であることを特徴とする、請求項11から16までのいずれか一項に記載の組換型SS5の作製方法。
【請求項18】
SS5を合成するのに適した培養条件が、細菌培養物を20℃の温度下に置くステップを含むことを特徴とする、請求項11から17までのいずれか一項に記載の組換型SS5の作製方法。
【請求項19】
SS5の精製が、好ましくは、イミダゾールを好ましくは200mMの濃度で含む溶出緩衝液を用いたアフィニティクロマトグラフィーによって実施されることを特徴とする、請求項11から18までのいずれか一項に記載の組換型SS5の作製方法。
【請求項20】
活性型の精製されたSS5酵素を維持するために、アフィニティクロマトグラフィーから溶出された前記精製酵素を直ちに透析にかけて、任意の微量のイミダゾールを除去することを特徴とする、請求項11から19までのいずれか一項に記載の組換型SS5の作製方法。
【請求項21】
配列番号4によって示される演繹された配列を有し、スクロースシンターゼ(SS)活性を示すことを特徴とする、請求項1から10までに記載の方法で請求されるようにして得ることができる、可溶性且つ活性な組換型SSX酵素製品。
【請求項22】
スクロース及びUDPが存在する場合の比活性がタンパク質1mg当たり80ユニットであり、Km(UDP)=0.25mM及びKm(スクロース)=30mMの動態パラメータを有することを特徴とする、請求項21に記載の可溶性且つ活性な組換型SSX酵素製品。
【請求項23】
配列番号12によって示される演繹されたアミノ酸配列を有し、スクロースシンターゼ(SS)活性を示すことを特徴とする、請求項11から20までに記載の方法で請求されるようにして得ることができる、請求項21及び22に記載の可溶性且つ活性な組換型酵素製品のSS5アイソフォーム。
【請求項24】
UDP及びADPが存在する場合の比活性がそれぞれタンパク質1mg当たり80ユニット及び60ユニットであり、UDP及びADPに対する動態パラメータがKm(UDP)=Km(ADP)=0.3mMであることを特徴とする、請求項23に記載の組換型SS5アイソフォーム。
【請求項25】
適切な条件下でUDP及びSSXをインキュベートし、次いで、生成されたUDPGを単離及び精製することを特徴とする、UDPG作製における請求項21及び22に記載の酵素製品の使用。
【請求項26】
請求項25に記載の使用であって、
a)以下の溶液、即ち、
スクロース 1M
HEPES、pH7.0 50mM
EDTA 1mM
ポリエチレングリコール 20%
MgCl2 1mM
KCl 15mM
UDP 100mM
SSX 30U
の100mlを37℃で12時間インキュベートするステップと、
b)好ましくは100℃で90秒間加熱することによって反応を停止するステップと、
c)10000gで10分間遠心分離するステップと、
d)上清をHPLCによるクロマトグラフィーにかけ、従来の方法によってUDPGを溶離及び精製するステップと
を含むことを特徴とする使用。
【請求項27】
適切な条件下でADP及びSS5をインキュベートし、次いで、生成されたADPGを単離及び精製することを特徴とする、ADPG作製における請求項23及び24に記載の酵素製品の使用。
【請求項28】
請求項27に記載の使用であって、
e)以下の溶液、即ち、
スクロース 1M
HEPES、pH7.0 50mM
EDTA 1mM
ポリエチレングリコール 20%
MgCl2 1mM
KCl 15mM
ADP 100mM
の100mlを37℃で12時間インキュベートするステップと、
f)好ましくは100℃で90秒間加熱することによって反応を停止するステップと、
g)10000gで10分間遠心分離するステップと、
h)上清をHPLCによるクロマトグラフィーにかけ、従来の方法によってADPGを溶離及び精製するステップと
を含むことを特徴とする使用。
【請求項29】
スクロースの分光光度的/蛍光定量的/アンペロメトリックな測定用のアッセイキットを製造する際の、スクロースシンターゼ(SS)活性を有する酵素製品の使用。
【請求項30】
請求項29に記載の使用であって、以下のインキュベーション媒体、即ち、
a.2ユニットのSS
b.2mMのADP
c.2ユニットの植物、動物、又は微生物由来ADPGピロホスファターゼ
d.2ユニットのPGM
e.2ユニットのG6PDH
f.0.5mMのNAD(P)
g.反応緩衝液100ml:50mM HEPES、pH7.0/1mM EDTA/20%ポリエチレングリコール/1mM MgCl2/15mM KC1
h.予めろ過した試験サンプル
を含むことを特徴とする使用。
【請求項31】
請求項29に記載の使用であって、以下のインキュベーション媒体、即ち、
a.2ユニットのSS
b.2mMのUDP
c.2ユニットの植物、動物、又は微生物由来UDPGピロホスファターゼ
d.2ユニットのPGM
e.2ユニットのG6PDH
f.0.5mMのNAD(P)
g.反応緩衝液100ml:50mM HEPES、pH7.0/1mM EDTA/20%ポリエチレングリコール/1mM MgCl2/15mM KC1
h.予めろ過した試験サンプル
を含むことを特徴とする使用。
【請求項32】
請求項29に記載の使用であって、以下のインキュベーション媒体、即ち、
a.2ユニットのSS
b.2mMのUDP
c.2ユニットのUDPGデヒドロゲナーゼ
d.0.5mMのNAD
e.反応緩衝液100ml:50mM HEPES、pH7.0/1mM EDTA/20%ポリエチレングリコール/1mM MgCl2/15mM KC1
f.予めろ過した試験サンプル
を含むことを特徴とする使用。
【請求項33】
アッセイキットに含まれるSSが、任意選択で、SS4、SS5、若しくはSSX、又はそれらの組合せであることを特徴とする、請求項29から32までのいずれか一項に記載の使用。
【請求項34】
SSを発現するトランスジェニック植物の作製における、SSをコードするDNAの使用であって、前記DNAを含み発現する遺伝子構築物を適切なベクター中に挿入し、前記遺伝子構築物を植物のゲノムに導入することを特徴とする使用。
【請求項35】
使用されるcDNAがSSXをコードしていることを特徴とする、請求項34に記載の使用。
【請求項36】
請求項35に記載の使用であって、以下のステップ、即ち、
a)SSX遺伝子又はSSをコードする他の任意の変種のそれぞれ5’及び3’領域の35Sプロモーター及びNOSターミネーターをpSSプラスミドに連続的に挿入することにより、図4Bに示す制限地図を有するプラスミドp35S−SS−NOSを作製するステップと、
b)酵素NotI、T4 DNAポリメラーゼ、及びHindIIIでp35S−SS−NOSを連続的に消化するステップと、
c)予めEcoRI、T4 DNAポリメラーゼ、及びHindIIIで連続的に消化しておいたバイナリープラスミドpBIN20内に、作製した断片をクローニングして、図4Cに示すプラスミドpBIN35S−SS−NOSを得るステップと、
d)大腸菌(XL1 Blue)中でpBIN35A−SS−NOSを増幅させるステップと、
e)上記のステップで増幅された遺伝子構築物をアグロバクテリウムチュメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)C58:GV2260に挿入して、形質転換株CECT 5851を得るステップと、
f)形質転換株CECT 5851で植物をトランスフェクションするステップと
を含むことを特徴とする使用。
【請求項37】
請求項35に記載の使用であって、以下のステップ、即ち、
a)図5Aで示す制限地図を有するプラスミドpGEMT−RBCSpromを作製するために、RUBISCOの小サブユニットをコードしている遺伝子のプロモーターをpGEMTプラスミドに連続的に挿入するステップと、
b)遊離された断片をp35S−SS−NOSの対応する制限部位に挿入するために酵素HindIII及びNcoIでpGEMP−RBCSを消化して、図5Bで示す制限地図を有するpRBCS−SS−NOSを作製するステップと、
c)HindIII、T4 DNAポリメラーゼ、及びNotIで連続的にpRBCS−SS−NOSを消化し、遊離された断片を、HindIII、T4 DNAポリメラーゼ、及びEcoRIで連続的に消化したpBIN20中にクローニングして、図5Cで示す制限地図を有するpBINRBCS−SS−NOSを作製するステップと、
d)大腸菌(XL1 Blue)中でpBINRBCS−SS−NOSを増幅させるステップと、
e)上記のステップで増幅された遺伝子構築物をアグロバクテリウムチュメファシエンスC58:GV2260に挿入し、その形質転換株で植物をトランスフェクションするステップと
を含むことを特徴とする使用。
【請求項38】
SS酵素活性の過剰発現を特徴とする、請求項33から37までに記載の使用の方法によって得ることができるトランスジェニック植物。
【請求項39】
前記過剰発現が、非トランスジェニック野生型植物の同じ組織中で認められる酵素活性の2〜10倍程度高いSS酵素活性レベルを呈することを特徴とする、請求項37に記載のトランスジェニック植物。
【請求項40】
好ましくは、タバコ、ジャガイモ、トマト、又はイネ植物から選択されることを特徴とする、請求項38又は39に記載のトランスジェニック植物。
【請求項41】
さらに、同一の条件下で栽培された対応する野生型植物の同じ組織又は器官で観察される含有量より、スクロース、G6P、ADPG、及びデンプンの含有量がより多いことを特徴とする、請求項38から40までのいずれか一項に記載のトランスジェニック植物。
【請求項42】
対応する野生型植物の葉で観察されるより、スクロース、G6P、ADPG、及びデンプンの含有量が多く、アミロース/アミロペクチン比が高い葉を有する、請求項40に記載のトランスジェニック植物。
【請求項43】
対応する野生型植物の同じ組織又は器官で観察されるより、スクロース、G6P、ADPG、及びデンプンの含有量が多く、アミロース/アミロペクチン比が高い根、塊茎、及び/又は種子を有する、請求項40に記載のトランスジェニック植物。
【請求項1】
高レベルの可溶性且つ活性型の組換型スクロースシンターゼ(SS)酵素を効率的に作製する方法であって、
a)ジャガイモSS4のSSのアイソフォームをコードする遺伝子のヌクレオチド配列から配列番号1及び配列番号2によって示される2種のプライマーを得、それらのプライマーを用いて、ジャガイモの葉のcDNAライブラリーに基づき、配列番号3によって示される2418塩基対のcDNA断片をPCRによって増幅するステップと、
b)第1のベクター中に前記cDNA断片を挿入するステップと、
c)前記第1のベクターを、増幅場所とする第1の宿主微生物中に挿入するステップと、
d)増幅された構築物を少なくとも2種の制限酵素で消化するステップと、
e)先に消化した後に、演繹されるアミノ酸配列が配列番号4によって示されるSSXをコードするcDNAを含有するDNA断片を得るステップと、
f)ヒスチジンに富む配列をコードするヌクレオチド配列を含むベクターと同じ制限部位に前記断片をクローニングし、前記ヒスチジンに富む末端をSSに融合し、第2の発現ベクターを作製するステップと、
g)この第2のベクターを、発現場所とする第2の宿主微生物中に挿入するステップと、
h)前記形質転換された微生物を、可溶性且つ活性型のSSXを合成するのに適した培養条件でインキュベートするステップと、
i)活性型のSSXを単離及び精製するステップと
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
ステップb)で使用される第1の発現ベクターが、配列番号3に挿入されると図3Aの構築物pSSを生じるプラスミドpSKであることを特徴とする、前記請求項に記載の組換型SSの作製方法。
【請求項3】
pSKプラスミドを増幅させるためにステップc)で使用される第1の宿主微生物が大腸菌(E.coli)XL1 Blueであることを特徴とする、前記請求項に記載の組換型SSの作製方法。
【請求項4】
ステップd)で使用される制限酵素がNcoI及びNotIであることを特徴とする、前記請求項のいずれか一項に記載の組換型SSの作製方法。
【請求項5】
ステップf)において、ステップd)後に遊離されるDNA断片がクローニングされる制限部位が、図3Bで示されるプラスミドpET−28a(+)と同じであり、図3Cで示されるpET−SSプラスミドを生じることを特徴とする、前記請求項のいずれか一項に記載の組換型SSの作製方法。
【請求項6】
ステップg)で使用される第2の宿主微生物が大腸菌(Escherichia coli)のBLR(DE3)株であることを特徴とする、前記請求項のいずれか一項に記載の組換型SSの作製方法。
【請求項7】
可溶性且つ活性型のSSXを合成するのに適した培養条件においてステップh)でインキュベートされる、ステップg)で形質転換された株がCECT5850であることを特徴とする、前記請求項のいずれか一項に記載の組換型SSの作製方法。
【請求項8】
SSXを合成するのに適した培養条件が、細菌培養物を20℃の温度下に置くステップを含むことを特徴とする、前記請求項のいずれか一項に記載の組換型SSの作製方法。
【請求項9】
SSXの精製が、好ましくは、イミダゾールを好ましくは200mMの濃度で含む溶出緩衝液を用いた、ヒスチジン残基に富むアミノ酸配列に対するアフィニティクロマトグラフィーによって実施されることを特徴とする、前記請求項のいずれか一項に記載の組換型SSの作製方法。
【請求項10】
活性型の精製されたSSX酵素を維持するために、アフィニティクロマトグラフィーから溶出された前記精製酵素を直ちに透析にかけて、微量のイミダゾールを除去することを特徴とする、前記請求項のいずれか一項に記載の組換型SSの作製方法。
【請求項11】
組換型のジャガイモSS5アイソフォームの作製方法であって、
a)構築物pSSを鋳型として使用し、[配列番号5、配列番号6]、[配列番号7、配列番号8]、及び[配列番号9、配列番号10]の配列を有するプライマー対を連続して使用した後に特異的突然変異誘発を起こすことによって、配列番号11によって示される2418塩基対のDNA断片を得るステップと、
b)第1のベクター中に前記DNA断片を挿入するステップと、
c)前記第1のベクターを、増幅場所とする第1の宿主微生物中に挿入するステップと、
d)増幅された構築物を少なくとも2種の制限酵素で消化するステップと、
e)先に消化した後に、アミノ酸配列が配列番号12によって示されるSS5をコードするDNA断片を得るステップと、
f)ヒスチジンに富む配列をコードするヌクレオチド配列を含むベクターと同じ制限部位に前記断片をクローニングし、前記ヒスチジンに富む末端をSS5に融合し、第2の発現ベクターを作製するステップと、
g)この第2のベクターを、発現場所とする第2の宿主微生物中に挿入するステップと、
h)前記形質転換された微生物を、可溶性且つ活性型のSS5を合成するのに適した培養条件でインキュベートするステップと、
i)活性型のSS5を単離及び精製するステップと
を含むことを特徴とする方法。
【請求項12】
ステップb)が構築物pSS5を生じることを特徴とする、請求項11に記載の組換型SS5の作製方法。
【請求項13】
pSS5を増幅させるためにステップc)で使用される第1の宿主微生物が大腸菌XL1 Blueであることを特徴とする、請求項11又は12のいずれか一項に記載の組換型SS5の作製方法。
【請求項14】
ステップd)で使用される制限酵素がNcoI及びNotIであることを特徴とする、請求項11から13までのいずれか一項に記載の組換型SS5の作製方法。
【請求項15】
ステップf)において、ステップd)後に遊離されるDNA断片がクローニングされる制限部位が、プラスミドpET−28a(+)と同じであり、プラスミドpET−SS5を生じることを特徴とする、請求項11から14までのいずれか一項に記載の組換型SS5の作製方法。
【請求項16】
ステップg)で使用される第2の宿主微生物が大腸菌のBLR(DE3)株であることを特徴とする、請求項11から15までのいずれか一項に記載の組換型SS5の作製方法。
【請求項17】
可溶性且つ活性型のSS5を合成するのに適した培養条件においてステップh)でインキュベートされる、ステップg)で形質転換された株がCECT5849であることを特徴とする、請求項11から16までのいずれか一項に記載の組換型SS5の作製方法。
【請求項18】
SS5を合成するのに適した培養条件が、細菌培養物を20℃の温度下に置くステップを含むことを特徴とする、請求項11から17までのいずれか一項に記載の組換型SS5の作製方法。
【請求項19】
SS5の精製が、好ましくは、イミダゾールを好ましくは200mMの濃度で含む溶出緩衝液を用いたアフィニティクロマトグラフィーによって実施されることを特徴とする、請求項11から18までのいずれか一項に記載の組換型SS5の作製方法。
【請求項20】
活性型の精製されたSS5酵素を維持するために、アフィニティクロマトグラフィーから溶出された前記精製酵素を直ちに透析にかけて、任意の微量のイミダゾールを除去することを特徴とする、請求項11から19までのいずれか一項に記載の組換型SS5の作製方法。
【請求項21】
配列番号4によって示される演繹された配列を有し、スクロースシンターゼ(SS)活性を示すことを特徴とする、請求項1から10までに記載の方法で請求されるようにして得ることができる、可溶性且つ活性な組換型SSX酵素製品。
【請求項22】
スクロース及びUDPが存在する場合の比活性がタンパク質1mg当たり80ユニットであり、Km(UDP)=0.25mM及びKm(スクロース)=30mMの動態パラメータを有することを特徴とする、請求項21に記載の可溶性且つ活性な組換型SSX酵素製品。
【請求項23】
配列番号12によって示される演繹されたアミノ酸配列を有し、スクロースシンターゼ(SS)活性を示すことを特徴とする、請求項11から20までに記載の方法で請求されるようにして得ることができる、請求項21及び22に記載の可溶性且つ活性な組換型酵素製品のSS5アイソフォーム。
【請求項24】
UDP及びADPが存在する場合の比活性がそれぞれタンパク質1mg当たり80ユニット及び60ユニットであり、UDP及びADPに対する動態パラメータがKm(UDP)=Km(ADP)=0.3mMであることを特徴とする、請求項23に記載の組換型SS5アイソフォーム。
【請求項25】
適切な条件下でUDP及びSSXをインキュベートし、次いで、生成されたUDPGを単離及び精製することを特徴とする、UDPG作製における請求項21及び22に記載の酵素製品の使用。
【請求項26】
請求項25に記載の使用であって、
a)以下の溶液、即ち、
スクロース 1M
HEPES、pH7.0 50mM
EDTA 1mM
ポリエチレングリコール 20%
MgCl2 1mM
KCl 15mM
UDP 100mM
SSX 30U
の100mlを37℃で12時間インキュベートするステップと、
b)好ましくは100℃で90秒間加熱することによって反応を停止するステップと、
c)10000gで10分間遠心分離するステップと、
d)上清をHPLCによるクロマトグラフィーにかけ、従来の方法によってUDPGを溶離及び精製するステップと
を含むことを特徴とする使用。
【請求項27】
適切な条件下でADP及びSS5をインキュベートし、次いで、生成されたADPGを単離及び精製することを特徴とする、ADPG作製における請求項23及び24に記載の酵素製品の使用。
【請求項28】
請求項27に記載の使用であって、
e)以下の溶液、即ち、
スクロース 1M
HEPES、pH7.0 50mM
EDTA 1mM
ポリエチレングリコール 20%
MgCl2 1mM
KCl 15mM
ADP 100mM
の100mlを37℃で12時間インキュベートするステップと、
f)好ましくは100℃で90秒間加熱することによって反応を停止するステップと、
g)10000gで10分間遠心分離するステップと、
h)上清をHPLCによるクロマトグラフィーにかけ、従来の方法によってADPGを溶離及び精製するステップと
を含むことを特徴とする使用。
【請求項29】
スクロースの分光光度的/蛍光定量的/アンペロメトリックな測定用のアッセイキットを製造する際の、スクロースシンターゼ(SS)活性を有する酵素製品の使用。
【請求項30】
請求項29に記載の使用であって、以下のインキュベーション媒体、即ち、
a.2ユニットのSS
b.2mMのADP
c.2ユニットの植物、動物、又は微生物由来ADPGピロホスファターゼ
d.2ユニットのPGM
e.2ユニットのG6PDH
f.0.5mMのNAD(P)
g.反応緩衝液100ml:50mM HEPES、pH7.0/1mM EDTA/20%ポリエチレングリコール/1mM MgCl2/15mM KC1
h.予めろ過した試験サンプル
を含むことを特徴とする使用。
【請求項31】
請求項29に記載の使用であって、以下のインキュベーション媒体、即ち、
a.2ユニットのSS
b.2mMのUDP
c.2ユニットの植物、動物、又は微生物由来UDPGピロホスファターゼ
d.2ユニットのPGM
e.2ユニットのG6PDH
f.0.5mMのNAD(P)
g.反応緩衝液100ml:50mM HEPES、pH7.0/1mM EDTA/20%ポリエチレングリコール/1mM MgCl2/15mM KC1
h.予めろ過した試験サンプル
を含むことを特徴とする使用。
【請求項32】
請求項29に記載の使用であって、以下のインキュベーション媒体、即ち、
a.2ユニットのSS
b.2mMのUDP
c.2ユニットのUDPGデヒドロゲナーゼ
d.0.5mMのNAD
e.反応緩衝液100ml:50mM HEPES、pH7.0/1mM EDTA/20%ポリエチレングリコール/1mM MgCl2/15mM KC1
f.予めろ過した試験サンプル
を含むことを特徴とする使用。
【請求項33】
アッセイキットに含まれるSSが、任意選択で、SS4、SS5、若しくはSSX、又はそれらの組合せであることを特徴とする、請求項29から32までのいずれか一項に記載の使用。
【請求項34】
SSを発現するトランスジェニック植物の作製における、SSをコードするDNAの使用であって、前記DNAを含み発現する遺伝子構築物を適切なベクター中に挿入し、前記遺伝子構築物を植物のゲノムに導入することを特徴とする使用。
【請求項35】
使用されるcDNAがSSXをコードしていることを特徴とする、請求項34に記載の使用。
【請求項36】
請求項35に記載の使用であって、以下のステップ、即ち、
a)SSX遺伝子又はSSをコードする他の任意の変種のそれぞれ5’及び3’領域の35Sプロモーター及びNOSターミネーターをpSSプラスミドに連続的に挿入することにより、図4Bに示す制限地図を有するプラスミドp35S−SS−NOSを作製するステップと、
b)酵素NotI、T4 DNAポリメラーゼ、及びHindIIIでp35S−SS−NOSを連続的に消化するステップと、
c)予めEcoRI、T4 DNAポリメラーゼ、及びHindIIIで連続的に消化しておいたバイナリープラスミドpBIN20内に、作製した断片をクローニングして、図4Cに示すプラスミドpBIN35S−SS−NOSを得るステップと、
d)大腸菌(XL1 Blue)中でpBIN35A−SS−NOSを増幅させるステップと、
e)上記のステップで増幅された遺伝子構築物をアグロバクテリウムチュメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)C58:GV2260に挿入して、形質転換株CECT 5851を得るステップと、
f)形質転換株CECT 5851で植物をトランスフェクションするステップと
を含むことを特徴とする使用。
【請求項37】
請求項35に記載の使用であって、以下のステップ、即ち、
a)図5Aで示す制限地図を有するプラスミドpGEMT−RBCSpromを作製するために、RUBISCOの小サブユニットをコードしている遺伝子のプロモーターをpGEMTプラスミドに連続的に挿入するステップと、
b)遊離された断片をp35S−SS−NOSの対応する制限部位に挿入するために酵素HindIII及びNcoIでpGEMP−RBCSを消化して、図5Bで示す制限地図を有するpRBCS−SS−NOSを作製するステップと、
c)HindIII、T4 DNAポリメラーゼ、及びNotIで連続的にpRBCS−SS−NOSを消化し、遊離された断片を、HindIII、T4 DNAポリメラーゼ、及びEcoRIで連続的に消化したpBIN20中にクローニングして、図5Cで示す制限地図を有するpBINRBCS−SS−NOSを作製するステップと、
d)大腸菌(XL1 Blue)中でpBINRBCS−SS−NOSを増幅させるステップと、
e)上記のステップで増幅された遺伝子構築物をアグロバクテリウムチュメファシエンスC58:GV2260に挿入し、その形質転換株で植物をトランスフェクションするステップと
を含むことを特徴とする使用。
【請求項38】
SS酵素活性の過剰発現を特徴とする、請求項33から37までに記載の使用の方法によって得ることができるトランスジェニック植物。
【請求項39】
前記過剰発現が、非トランスジェニック野生型植物の同じ組織中で認められる酵素活性の2〜10倍程度高いSS酵素活性レベルを呈することを特徴とする、請求項37に記載のトランスジェニック植物。
【請求項40】
好ましくは、タバコ、ジャガイモ、トマト、又はイネ植物から選択されることを特徴とする、請求項38又は39に記載のトランスジェニック植物。
【請求項41】
さらに、同一の条件下で栽培された対応する野生型植物の同じ組織又は器官で観察される含有量より、スクロース、G6P、ADPG、及びデンプンの含有量がより多いことを特徴とする、請求項38から40までのいずれか一項に記載のトランスジェニック植物。
【請求項42】
対応する野生型植物の葉で観察されるより、スクロース、G6P、ADPG、及びデンプンの含有量が多く、アミロース/アミロペクチン比が高い葉を有する、請求項40に記載のトランスジェニック植物。
【請求項43】
対応する野生型植物の同じ組織又は器官で観察されるより、スクロース、G6P、ADPG、及びデンプンの含有量が多く、アミロース/アミロペクチン比が高い根、塊茎、及び/又は種子を有する、請求項40に記載のトランスジェニック植物。
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図1】
【図6】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図1】
【図6】
【公表番号】特表2007−520228(P2007−520228A)
【公表日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−551865(P2006−551865)
【出願日】平成17年1月27日(2005.1.27)
【国際出願番号】PCT/ES2005/070010
【国際公開番号】WO2005/075649
【国際公開日】平成17年8月18日(2005.8.18)
【出願人】(506267466)ユニベルシダド パブリカ デ ナバラ (1)
【出願人】(505337777)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年1月27日(2005.1.27)
【国際出願番号】PCT/ES2005/070010
【国際公開番号】WO2005/075649
【国際公開日】平成17年8月18日(2005.8.18)
【出願人】(506267466)ユニベルシダド パブリカ デ ナバラ (1)
【出願人】(505337777)
【Fターム(参考)】
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