説明

組織修復を増加させるモノテルペンの使用

本発明は、生体組織修復、すなわち、組織再生または治癒を増加させるモノテルペンの使用;個体の皮膚または粘膜の生体組織修復を増加させるモノテルペンの化粧用使用;および個体の生体組織傷害を予防するまたは処置することを予定した医薬組成物の製造のためのモノテルペンの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体組織修復を増加させるモノテルペンの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
組織修復は、組織再生または治癒により、再発(relapse)を伴ってまたは伴うことなく、病変の回復に到達する過程を包含する。
内因性組織再生は、何百万という細胞が、組織リモデリングおよび組織機能復活を絶えず生じている生体の規則的維持である。それは、幹細胞で始まる。生化学的シグナルは、増殖因子およびサイトカインが、再生のための環境を生成した部位へと幹細胞を引き寄せる。
【0003】
瘢痕組織は、再生された組織とは異なる。傷害が起こった時、身体の最初の反応は、止血であり、その時に、フィブリンおよび炎症性サイトカインは、血餅または暫定的スカフォールドを形成する。より多くの炎症性細胞が現れ、その血餅をリモデリングして瘢痕組織にする。瘢痕組織中のコラーゲンは、異常に整列していて、しかもエラスチンをほとんど有していない。再生された組織とは異なり、瘢痕組織は、それが置き換わる周囲組織とは異なる、すなわち、周囲組織より不完全である。
【0004】
テルペンは、主として、広範囲の植物、具体的には、針葉樹によって生産されるが、アゲハチョウ(swallowtail butterflies)などの、臭角からテルペンを発するいくつかの昆虫によっても生産される、広範且つ多様なクラスの炭化水素である。それらは、樹脂のおよび樹脂から生産されるテルペンチンの主成分である。「テルペン」という名称は、「テルペンチン」という語に由来する。テルペンが、炭素骨格の酸化または転位などによって化学修飾された場合、得られた化合物は、概して、テルペノイドと称される。幾人かの著者は、テルペンという用語を用いて、全てのテルペノイドを包含するであろう。テルペンおよびテルペノイドは、多くのタイプの植物および花からの精油の主な構成成分である。精油は、食品用の天然フレーバー添加剤として、香水中の芳香剤として、アロマセラピーにおいて、および伝統医学および代替医療において広く用いられている。天然テルペンおよびテルペノイドの合成変種および誘導体も、香水に用いられる芳香および食品添加物に用いられるフレーバーの種類を大きく拡大している。
【0005】
テルペンは、分子式Cを有するイソプレンの単位から生合成誘導される。テルペンの基本的な分子式は、その倍数、すなわち、(Cであり、ここにおいて、nは、連結したイソプレン単位の数である。イソプレン自体は、増成過程を受けることがないが、むしろ、活性形、すなわち、イソペンテニルピロリン酸(IPPまたは更に、イソペンテニル二リン酸)およびジメチルアリルピロリン酸(DMAPPまたは更に、ジメチルアリル二リン酸)は、生合成経路中の成分である。イソプレン単位の連鎖が増成されると、得られたテルペンは、サイズによって順に、ヘミテルペン、モノテルペン、セスキテルペン、ジテルペン、セステルテルペン(sesterterpenes)、トリテルペンおよびテトラテルペンとして分類される。
【0006】
モノテルペンは、2個のイソプレン単位から成り、分子式C1016を有する。モノテルペンの例は、ゲラニオールおよびリモネンである。モノテルペンは、単環式、二環式および非環式の形で存在し、そして単純かまたは修飾された炭化水素である。それらは、植物のメバロン酸分枝生合成経路によるアセテートの同化作用から誘導されるイソプレノイド分子のクラスである。
【0007】
オレンジピール油の主成分および発癌研究中のモノテルペンの原型であるD−リモネン((4R)−1−メチル−4−イソプロペニルシクロヘキサ−1−エン)は、10−炭素イソプレン中間体ゲラニルピロリン酸の環化によって形成される。
【0008】
【化1】

【0009】
D−リモネンおよびその誘導代謝産物は、いろいろな前臨床モデルシステムにおいて癌化学療法的および化学的予防法的な効力を有することが分かった。
Crowell PL et al. は、カスタード中の100mg/kgのリモネンを摂取した7人の健康なヒト志願者の血液中にリモネンの血漿代謝産物を識別した。オンライン・キャピラリーガスクロマトグラフィー/マススペクトロメトリー分析は、少なくとも5種類の化合物が、摂取後4時間に存在したことを示した。二つのメジャーピークは、ラットのリモネン代謝産物であるジヒドロペリラ酸(dihydroperillic acid)およびペリラ酸(perillic acid)として識別され、そして二つのマイナーピークは、これら酸のそれぞれのメチルエステルであることが判明した(Crowell PL et al., 1994)。
【0010】
R−およびS−リモネンは、イソプレニル化酵素の弱い阻害剤にすぎないが、それらの主要代謝産物であるペリラ酸およびペリリルアルコールは、低mM範囲内のIC50値を有する一層強力な阻害剤である。それら代謝産物は、ゲラニルゲラニルトランスフェラーゼI型酵素に対して、ファルネシルトランスフェラーゼよりも大きい活性を有する(Hardcastle IR et al., 1999)。
【0011】
D−リモネンは、前臨床研究において顕著な化学療法活性および最小限の毒性を有する。進行癌の患者における毒性、最大許容投与量(MTD)および薬物動態を評価するI相臨床試験を行った後、乳癌における一定のII相評価を行った。D−リモネンは、癌患者において、臨床的活性を有することができる用量で十分に許容される(Vigushin DM et al., 1998)。
【0012】
伝統医学において疾患を治癒させるのに用いられる植物に由来する化合物は、新しい活性薬剤分子の開発に重要な源である。このような戦略を用いて、発明者らは、従来、反復炎症性エピソードによって誘発されるヒト血管内皮細胞の老化を特異的に予防するまたは処置することができる数種類のモノテルペンを識別してきた(WO2005/105074号)。
【0013】
炎症性応答は、傷害組織の組織修復について最初の生命に必要な機構である。それは、赤血球の損失を妨げる即時イベント;損傷組織を除去し、そして修復を支持するように血管供給を達成する急性応答;および組織修復期を特徴とする。
【0014】
市場にある抗炎症性分子であるイブプロフェンのような非ステロイド性抗炎症薬は、炎症を遅らせることによって、炎症過程の最終段階、すなわち、組織修復を妨げる。顆粒球の炎症性反応を減少させることが主な作用である抗炎症薬も、治癒抑制傾向を有する(Lee KH et al., 1968)。
【0015】
切開創傷における破壊強さを減少させる非ステロイド性抗炎症薬は、創傷収縮および上皮化への可変作用を有することが判明した(Rao CM. et al., 1988; Kumar A. et al., 1988)。
【0016】
イブプロフェンは、修復された伸筋腱の破壊強さ、創傷収縮および上皮化を減少させることが報告された(Dvivedi S. et al., 1997, Kulick MI. et al., 1986; Dong Y-L. et al., 1993)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】WO2005/105074号
【非特許文献】
【0018】
【非特許文献1】Crowell PL et al.,“Human metabolism of the experimental cancer therapeutic agent d-limonene”, Cancer Chemother Pharmacol. 1994; 35(1): 31-7
【非特許文献2】Hardcastle IR et al.,“Inhibition of protein prenylation by metabolites of limonene”, Biochem Pharmacol. 1999 Apr 1; 57(7): 801-9
【非特許文献3】Vigushin DM et al.,“Phase I and pharmacokinetic study of D-limonene in patients with advanced cancer. Cancer Research Campaign Phase I/II Clinical Trials Committee”, Cancer Chemother Pharmaol. 1998; 42(2): 111-7
【非特許文献4】Lee KH. Studies on the mechanism of action of salicylate. II. Retardation of wound healing by aspirin. Journal of Pharmaceutical Sciences. 1968; 57(6): 1042-1043
【非特許文献5】Rao CM, Kumar A, Kulkarni DR., Effects of enfenamic acid and its zinc salt on wound-heaking. Indian Journal of Physiology and Pharmacology. 1988; 32(1): 61-66
【非特許文献6】Kumar A, Rao M, Kulkarni DR. Zinc incorporation reverses suppressant effect of ibuprofen on wound healing. Indian Journal of Experimental Biology. 1988; 26(6): 483-485
【非特許文献7】Dvivedi S, Tiwari SM, Sharma A. Effect of ibuprofen and diclofenac sodium on experimental wound healing. Indian Journal of Experimental Biology. 1997; 35(11): 1243-1245
【非特許文献8】Kulick MI, Smith S, Hadler K. Oral ibuprofen: evaluation of its effect on peritendinous adhesions and the breaking strength of a tenorrhaphy. Jounal of Hand Surgery. 1986; 11(1): 110-120
【非特許文献9】Dong Y-L, Fleming RYD, Yan TZ, Herndon DN, Waymack JP. Effect of ibuprofen on the inflammatory response to surgical wounds. Journal of Trauma. 1993; 35(3): 340-343
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明者は、ここで、予想外にも、リモネンおよびペリリルアルコールが、以前に本発明者に認められたそれらの抗炎症作用にもかかわらず、生体組織修復を誘発するということを示した(WO2005/105074号)。
【課題を解決するための手段】
【0020】
第一に、本発明者は、ここで、予想外にも、ラット結腸炎症モデルにおいて、リモネンの抗炎症作用が、組織修復を妨げないということを認めた。
第二に、本発明者は、リモネンおよびペリリルアルコールが、アトピー性皮膚炎のような慢性皮膚炎症障害に対して有益であるということを示した。
【0021】
第三に、本発明者は、古典的な治癒モデルにおけるリモネンおよびペリリルアルコールの有益な作用を示した。
組織修復へのリモネンの作用を理解するために、30匹の Wistar HsdBrlHan 雌ラットを、結腸炎ラットモデルに用いた。結腸炎症は、2,5,6−トリニトロベンゼンスルホン酸溶液(TNBS,Fluka, France)の単回直腸投与によって誘発し、そして経口投与で与えられるリモネンの組織修復への抗炎症作用を研究した。結腸炎症の誘発後6日目に試料採取された結腸の平均の肉眼的スコアおよび顕微鏡的スコアを比較した。それら結果は、リモネンが、その抗炎症作用にもかかわらず、イブプロフェンと比較して、炎症後組織修復を誘発したということを示した。更に、それは、基準分子として用いられたイブプロフェンの濃度より5倍劣る濃度で循環TNF−αレベルを低下させた。
【0022】
慢性皮膚炎症モデルにおいて、本発明者は、更に、皮膚修復および炎症誘発性サイトカインレベルへのリモネンおよびペリリルアルコールの有意の作用を示した。慢性皮膚炎症は、24匹の雌マウス無毛Skh−1において、ホルボール12−ミリステート−13−アセテート(TPA)の7日間毎日の背部適用によって誘発した(Stanley P.L., et. al., 1991)。
【0023】
もう一つの皮膚モデルにおいて、治癒過程へのリモネンおよびペリリルアルコールの影響を、各々の側腹に皮膚の乱刺を施された無毛Skh−1マウスで研究した。トウモロコシ油単独、トウモロコシ油中溶液中のリモネン、またはトウモロコシ油中溶液中のペリリルアルコールを、各々の乱刺部位への局所適用により、10mg/kg/日の用量で8日間毎日投与した。創傷治癒過程は、ペリリルアルコールの毎日適用で、リモネンと比較してより良い結果、および対照と比較してはるかに良い結果を与えた。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は、ラット平均体重の進展を示す(平均±ESM)。
【図2】図2は、TNF−αの平均血清レベル(pg/ml)を示す(平均±ESM)。マン・ホイットニーU検定(U Test Mann-Whitney):P<0.05および**P<0.01(対「対照」);P<0.05(対「TNBS/対照」)。
【図3】図3は、5種類の処置群のラット結腸の平均肉眼的スコアを示す(平均±ESM)。マン・ホイットニーU検定:**P<0.01(対「対照」);P<0.05および##P<0.01(対「TNBS/対照」);°P<0.05(対「TNBS/リモネン100」)。
【図4】図4は、5種類の処置群のラットの平均結腸長さ(cm)を示す。(平均±ESM)マン・ホイットニーU検定:**P<0.01(対「対照」);P<0.05(対「TNBS/対照」)。
【図5】図5は、マウス平均体重進展を示す(平均±ESM)。
【図6】図6は、4種類の処置群のマウスの皮膚炎症の平均肉眼的スコアを示す。
【図7】図7は、4種類の処置群のマウスの皮膚炎症の平均顕微鏡的スコアを示す。
【図8】図8は、4種類の処置群のマウスの屠殺前のIL−1βの平均血清レベル(pg/ml)を示す。
【図9】図9は、4種類の処置群のマウスの屠殺前のIL−6の平均血清レベル(pg/ml)を示す。
【図10】図10は、4種類の処置群のマウスの屠殺前のIFN−γの平均血清レベル(pg/ml)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
組織修復を増加させるモノテルペンの使用
したがって、本発明は、生体組織修復を増加させるモノテルペンの使用に関する。
好ましくは、組織修復には、組織再生および治癒が含まれる。
【0026】
一つの態様において、モノテルペンは、本発明にしたがって用いられて、生体組織再生を増加させる。
好ましくは、モノテルペンは、本発明にしたがって用いられて、in vitro 生体組織再生を増加させる。
【0027】
本発明の文脈中において、「組織」は、相互連結した細胞の集合を意味する。
本発明の文脈中において、「生体組織」は、ヒトまたは動物起原の組織を意味し、そしてそれには、in vivo 組織および in vitro または ex vivo の培養組織が含まれる。
【0028】
in vitro または ex vivo の培養組織の例には、線維芽細胞のような培養細胞、および皮膚に見出されるいろいろな細胞タイプを含む in vitro 皮膚モデルが含まれる。
in vivo 生体組織の例には、皮膚および粘膜が含まれる。
【0029】
一つの態様において、皮膚は、頭皮を意味する。
本発明の文脈中において、「生体組織修復」は、傷害および/または欠陥および/または疾患症状を示している生体組織の組織再生および/または治癒を意味する。
【0030】
生体組織傷害には、熱傷、切り傷、灼熱再発、創傷、および過度の寒冷または熱を含めた極端な気象条件(weather condition)の再発が含まれる。
生体組織疾患には、アトピー性皮膚炎、脂漏性角膜炎(seborrhoic keratitis)、後天性表皮水疱症(epidermolysis bullosa acquisita)、乾癬、エリテマトーデスにおける皮膚変質、皮膚筋炎、強皮症、慢性座瘡、慢性セルライテス(cellulites)、そう痒、および糖尿病の場合のような異常または欠陥瘢痕形成のような皮膚組織疾患が含まれる。
【0031】
生体組織欠陥には、座瘡膿疱、セルライテス、瘢痕、日光およびUVで誘発される早期皮膚老化、瘢痕および着色を含めた老化過程による美的でない皮膚欠点、しわおよび落屑性容貌、伸展線、加齢マーク、日光およびUVで誘発される早期皮膚老化、酒さ、および外傷後再発の非審美的状態(unesthetisms)などの皮膚組織欠陥が含まれる。
【0032】
生体組織修復を増加させる本発明によるモノテルペンの使用は、化粧用であってよいしまたは治療的であってよい。
このような使用のために、そのモノテルペンは、全身経路によってまたは局所経路(topic route)によって投与することができる。好ましくは、全身経路は、経口、舌、舌下、筋肉および静脈内の経路から成る群より選択される。より好ましくは、全身経路は、経口経路である。
好ましくは、本発明によるモノテルペンの化粧用使用は、局所に用いられる化粧用製剤の形であってよいし、または経口で用いられる補助食品の形であってよい。
【0033】
化粧用使用
別の態様において、本発明は、個体の皮膚または粘膜の生体組織修復を増加させるためのモノテルペンの化粧用使用に関する。
【0034】
好ましくは、本発明は、個体の皮膚または粘膜の生体組織修復を増加させるためのモノテルペンの経口または局所使用に関する。
好ましくは、本発明は、個体の皮膚または粘膜の組織再生を増加させるためのモノテルペンの化粧用使用に関する。
【0035】
皮膚には、表皮および真皮が含まれる。表皮は、皮膚の最外層である。表皮を構成している細胞の主要タイプは、角化細胞、色素細胞、ランゲルハンス細胞およびメルケル細胞である。真皮は、表皮下の結合組織から成る皮膚層である。
【0036】
粘膜の例には、口周囲粘膜、頬粘膜、胃および結腸粘膜、生殖器粘膜が含まれる。
本明細書中で用いられる「個体」という用語は、ヒト、愛玩動物、実験動物または生産動物、より好ましくは、鳥または哺乳動物、例えば齧歯類動物、ネコ科、ウマ科、ウシ科、ヤギ、イヌ科、ブタおよび霊長類などの動物である。好ましくは、本発明による個体は、ヒト、ネコまたはイヌである。
【0037】
「局所に」は、皮膚または粘膜への適用状態を意味する。
もう一つの態様において、本発明は、皮膚または粘膜欠陥の非病理学的状態を予防するまたは処置する方法に関する。
【0038】
好ましくは、本発明による皮膚または粘膜欠陥の非病理学的状態を予防するまたは処置する方法は、その皮膚または粘膜欠陥上への、モノテルペンを含む化粧用製剤の1回用量または反復用量でのおよび規定の時間間隔での適用を含む。
【0039】
本発明による皮膚または粘膜欠陥の非病理学的状態を予防するまたは処置する方法の枠内において、投与方式は、例えば、4週間を超えるまたは8週間を超える期間であってよい。
【0040】
好ましくは、本発明による皮膚または粘膜欠陥の非病理学的状態を予防するまたは処置する方法の枠内において、モノテルペンの用量範囲は、0.1mg/kg/日〜100mg/kg/日であってよい。より好ましくは、その用量範囲は、1mg/kg/日〜100mg/kg/日である。最も好ましくは、用量範囲は、10mg/kg/日〜50mg/kg/日である。
【0041】
好ましくは、個体の皮膚または粘膜の生体組織修復を増加させるモノテルペンの化粧用使用は、パッチ、カプセル剤、丸剤、クリーム剤、ペースト剤(練り歯磨き)、シャンプーおよびダーモソープ(dermo-soap)などの洗剤、泡沫浴または浴用塩類、水性、アルコール性または油性のローション剤、ゲル剤、低オゾンスプレー剤から成る群より選択される形であってよい。
【0042】
好ましくは、モノテルペンは、リポソーム中に、または遅延作用を可能にするいずれか他の化学的または機械的捕捉システムまたは装置中に閉じ込められている。
本発明によるモノテルペンの化粧用使用は、好ましくは、皮膚または粘膜上への化粧用製剤の適用によって局所に行われる。
【0043】
化粧用製剤は、モノテルペンの他に、他の活性成分および一つまたはそれを超える化粧用に許容しうる担体を包含してよい。
本明細書中で用いられる「化粧用に許容しうる担体」は、毒性、刺激、過度のアレルギー性応答または他の不都合な反応を伴うことなく、ヒト身体のいろいろな表在部分、例えば、表皮に接触して用いられる担体を意味する。
【0044】
このような化粧用製剤は、概して、ローション剤、乳剤、クリーム剤、ゲル剤、シャンプーまたはパッチの形である。
当業者は、得られる化粧用製剤のタイプにしたがって、化粧用製剤中で行われる補足成分を特定することができるであろう。
【0045】
好ましくは、本発明は、皮膚または粘膜欠陥上の皮膚または粘膜組織修復を増加させるためのモノテルペンの使用であって、その欠陥が、好ましくは、座瘡膿疱、セルライテス、瘢痕、日光およびUVで誘発される早期皮膚老化、瘢痕および着色を含めた老化過程による美的でない皮膚欠点、しわおよび落屑性容貌、伸展線、加齢マーク、日光およびUVで誘発される早期皮膚老化、酒さ、および外傷後再発の非審美的状態などの美的でない皮膚欠点から成る群より選択される使用に関する。
【0046】
薬学的使用
本発明のもう一つの目的は、個体の生体組織傷害を予防するまたは処置することを予定した医薬組成物の製造のためのモノテルペンの使用に関する。
【0047】
本発明のもう一つの目的は、生体組織疾患を予防するまたは処置することを予定した医薬組成物の製造のためのモノテルペンの使用に関する。
好ましくは、この生体組織傷害または疾患は、皮膚傷害または疾患である。
【0048】
好ましい態様において、この予防または処置は、ヒト、愛玩動物、実験動物または生産動物に関する。より好ましくは、この予防、軽減または処置は、鳥または哺乳動物であって、齧歯類動物、ネコ科、ウマ科、ウシ科、ヤギ、イヌ科、ブタおよび霊長類などの動物から成る群において選択される個体に関する。最も好ましくは、この予防、軽減または処置は、ヒト、ネコまたはイヌに関する。
【0049】
好ましくは、この医薬組成物は、局所にまたは全身に、より好ましくは、経口で用いられる。
このような医薬組成物は、活性成分としてのモノテルペンと、薬学的に許容しうる担体を含む。
【0050】
「薬学的に許容しうる」は、動物またはヒトに適宜投与された場合に、有害な、アレルギー性のまたは他の不都合な反応を生じることがない分子物質および組成物を意味する。
本明細書中で用いられる「薬学的に許容しうる担体」には、いずれかおよび全ての溶媒、分散媒質、コーティング、抗細菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤等が含まれる。医薬活性物質のためのこのような媒質および物質の使用は、当該技術分野において周知である。いずれかの慣用的な媒質または物質が、本発明によって用いられるモノテルペンと不相溶性である場合を除いて、医薬組成物中、薬剤中、または本発明による個体の生体組織傷害を予防するまたは処置する方法を実行するためのその使用が考えられる。補助的活性成分も、医薬組成物中に包含されることができる。
【0051】
本発明の文脈中において、「予防するために」、「予防すること」または「予防」という用語は、組織傷害を免れさせることを意味する。
本発明の文脈中において、「処置するために」、「処置すること」または「処置」という用語は、組織傷害を逆転させること、軽減することまたは抑制することを意味する。
【0052】
本発明の文脈中において、組織疾患は、好ましくは、皮膚疾患であり、そしてそれには、アトピー性皮膚炎、脂漏性角膜炎、後天性表皮水疱症、乾癬、エリテマトーデスにおける皮膚変質、皮膚筋炎、強皮症、慢性座瘡、慢性セルライテス、そう痒、および糖尿病の場合のような異常または欠陥瘢痕形成などの皮膚組織疾患が含まれてよい。
【0053】
本発明の文脈中において、組織傷害は、好ましくは、皮膚傷害であり、そしてそれには、熱傷、切り傷、過度の寒冷または熱を含めた極端な気象条件の再発、灼熱再発および創傷が含まれてよい。
【0054】
もう一つの態様において、本発明は、個体の生体組織傷害または疾患を予防するまたは処置する方法に関する。
好ましくは、本発明による個体の生体組織傷害または疾患を予防するまたは処置する方法は、モノテルペンを含む医薬組成物の1回用量または反復用量でのおよび規定の時間間隔での投与を含む。
【0055】
本発明による個体の生体組織傷害または疾患を予防するまたは処置する方法の枠内において、投与方式は、全身方式または局所方式、好ましくは、局所方式であってよい。
本発明による個体の生体組織傷害または疾患を予防するまたは処置する方法の枠内において、投与方式は、例えば、6週間未満または8週間未満の期間であってよい。
【0056】
好ましくは、本発明による個体の生体組織傷害または疾患を予防するまたは処置する方法の枠内において、モノテルペンの用量範囲は、0.1mg/kg/日〜100mg/kg/日であってよい。より好ましくは、その用量範囲は、1mg/kg/日〜100mg/kg/日である。最も好ましくは、用量範囲は、10mg/kg/日〜50mg/kg/日である。より好ましくは、用量範囲は、10mg/kg/日〜50mg/kg/日でる。
【0057】
本発明によるモノテルペンの薬学的使用は、好ましくは、皮膚または粘膜上への医薬製剤の適用によって局所に行われる。
好ましくは、個体の生体組織傷害の予防または処置のためのモノテルペンを含む医薬組成物の使用は、パッチ、カプセル剤、丸剤、軟膏剤および創傷用包帯剤から成る群において選択される形であってよい。
【0058】
モノテルペン
本発明において用いられるモノテルペンには、リモネン、ゲラニオール、ゲラニルアセテート、イソメントーン(isomenthone)、ペリリルアルコール、ペリラ酸、ジヒドロペリラ酸、これら酸のそれぞれのメチルエステル、カルヴォン、シトラールおよびメントールが含まれる。
【0059】
本発明の文脈中において、リモネンは、(R)−(+)−リモネン、すなわち、D−リモネンを意味する。
より好ましくは、本発明において用いられるモノテルペンは、リモネン、その代謝産物の一つまたは混合物である。
【0060】
リモネン代謝産物には、ペリリルアルコール、ペリラ酸、ジヒドロペリラ酸およびそれらのそれぞれのメチルエステルが含まれる。
最も好ましくは、本発明において用いられるモノテルペンは、リモネン、ペリリルアルコールまたはペリラ酸またはその混合物である。
【0061】
本発明を、以下の図面および実施例によって更に詳しく説明する。
【実施例】
【0062】
実施例1:ラット結腸炎モデルにおけるリモネンの予防的抗炎症作用
材料および方法
1−被験動物
平均体重175〜200gの30匹の雌ラット Wistar HsdBrlHan EOPS(Ganat, France)を用いた。
【0063】
2−検定製品
SIGMA−ALDRICH(Saint-Quentin Fallavier, France)製のリモネン((R)−(+)−リモネン、MW=136.23、純度=97%)およびイブプロフェン((S)−(+)−イブプロフェン、MW=206.28、純度=100%)を用いた。リモネンおよびイブプロフェンは、トウモロコシ油中で処置日毎に即席調製した。
【0064】
3−結腸炎症へのリモネンの予防的抗炎症作用
30匹のラットを秤量し、印を付け、そして6匹ずつ5群に分けた(n=6)。
- 「対照」群=結腸炎症無し、トウモロコシ油で毎日経口処置;
- 「TNBS対照」群=結腸炎症誘発、トウモロコシ油で毎日経口処置;
- 「TNBS+リモネン10」群=結腸炎症誘発、リモネンを10mg/kgで毎日経口処置;
- 「TNBS+リモネン100」群=結腸炎症誘発、リモネンを100mg/kgで毎日経口処置;
- 「TNBS+イブプロフェン」群=結腸炎症誘発、イブプロフェンを50mg/kgで毎日経口処置。
【0065】
3.1−結腸炎症誘発
結腸炎症は、2,4,6−トリニトロベンゼンスルホン酸溶液(TNBS,Fluka, France)の1回の直腸投与によって誘発した。TNBSを、40°アルコール中に50mg/kgの濃度で溶解させた。被験動物の腹腔内に、2mg/kgの Calmivet(Vetoquinol, Lure, France)および50mg/kgのケタミン(Ketamine 1000,Virbac, Carros, France)で麻酔した。0.4mlのTNBS溶液を、直腸内投与し、そしてそれらラットを、TNBSの放出を免れるために少なくとも30分間維持した。
【0066】
3.2−製品投与(表1)
リモネンを、10mg/kgおよび100mg/kgで、結腸炎症誘発前3日間および誘発後5日間、毎日経口投与した。対照として用いられたイブプロフェンは、50mg/kgで、結腸炎症誘発前3日間および誘発後5日間、毎日経口投与した。
【0067】
【表1】

【0068】
4−統計
クラスカル・ウォリス(Kruskal-Wallis)検定後、可能ならば、マン・ホイットニー検定を用いて、被処置群のいろいろな研究変数を、「対照」群および「TNBS/対照」群との比較によって比較した。有意性閾値は、P<0.05で処理した。
【0069】
統計は、Statview 5ソフトウェア(SAS, Institute Inc., USA)で行った。
結果
1−被験動物体重推移
図1は、検定中の5種類の群の被験動物の平均体重推移を示す。
【0070】
クラスカル・ウォリス検定(H(ddl=4)=0.381;P=0.984)は、処置前のJ−2において、5種類の処置群のラットの平均体重の間で有意の不均一を示さなかった。
【0071】
J1では、直腸内TNBS投与直前および48時間絶食期間後に(J−1〜J1)、クラスカル・ウォリス検定(H(ddl=4)=0.308;P=0.989)は、5種類の処置群のラットの平均体重の間で有意の不均一を示さなかった。
【0072】
J6では、クラスカル・ウォリス検定(H(ddl=4)=14.415;P=0.0061)は、5種類の処置群のラットの平均体重の間で有意の不均一を示した。マン・ホイットニーU検定は、「TNBS/対照」群、「TNBS/リモネン10」群、「TNBS/リモネン100」群および「TNBS/イブプロフェン」群のラット平均体重が、「対照」群のラットの場合より有意に小であることを示した。「TNBS/リモネン10」群、「TNBS/リモネン100」群および「TNBS/イブプロフェン」群のラット平均体重は、「TNBS/対照」群のラットの場合と有意に異なることはなかった。「TNBS/リモネン10」群、「TNBS/リモネン100」群および「TNBS/イブプロフェン」群のラット平均体重は、有意に異なることはなかった。
【0073】
2−結腸肉眼的スコア
図2および表2は、結腸炎症誘発後6日に摘出された5種類の処置群の被験動物の結腸の平均肉眼的スコアを示す。
【0074】
クラスカル・ウォリス検定(H(ddl=4)=21.925;P=0.0002)は、5種類の処置群のラット結腸の平均肉眼的スコアの間で有意の不均一を示した。マン・ホイットニーU検定は、「TNBS/対照」群、「TNBS/リモネン10」群、「TNBS/リモネン100」群および「TNBS/イブプロフェン」群のラット結腸の平均肉眼的スコアが、「対照」群のラットの場合より有意に大であることを示した。「TNBS/リモネン10」群および「TNBS/イブプロフェン」群のラット結腸の平均肉眼的スコアは、「TNBS/対照」群および「TNBS/リモネン100」群のラット(それぞれ、z=2.03;P=0.0427およびz=2.41;P=0.0159)の場合より有意に小であった。「TNBS/リモネン10」群および「TNBS/イブプロフェン」群のラット結腸の平均肉眼的スコアは、有意に異なることはなかった。
【0075】
【表2】

【0076】
3−結腸長さ
図3は、結腸炎症誘発後6日に摘出された5種類の処置群の被験動物の結腸の平均長さを示す。
【0077】
クラスカル・ウォリス検定(H(ddl=4)=15.827;P=0.0033)は、5種類の処置群のラット結腸の平均長さの間で有意の不均一を示した。マン・ホイットニーU検定は、「TNBS/対照」群、「TNBS/リモネン10」群、「TNBS/リモネン100」群および「TNBS/イブプロフェン」群のラット結腸の平均長さが、「対照」群のラットの場合より有意に大であることを示した。「TNBS/リモネン10」群、「TNBS/リモネン100」群および「TNBS/イブプロフェン」群のラット結腸の平均長さは、「TNBS/対照」群のラットの場合より有意に小であった。「TNBS/リモネン10」群、「TNBS/リモネン100」群および「TNBS/イブプロフェン」群のラット結腸の平均長さは、有意に異なることはなかった。
【0078】
4−結腸の組織病理学的分析および顕微鏡的スコア
結腸炎症誘発後6日に摘出された5種類の処置群の被験動物の結腸の組織病理学的分析を、一つの結腸について9画割付で行った。
【0079】
「対照」群の結腸は、水腫、炎症性浸潤、壊死、上皮萎縮も異形成もない、0の顕微鏡的スコアに該当する正常結腸壁を示した。
「TNBS/対照」群の結腸は、概して、急性化膿壊死性および多病巣性炎症性病変で極端に再生された、4の顕微鏡的スコアに該当する結腸壁を示した。
【0080】
「TNBS/リモネン10」群の結腸は、概して、潰瘍性の非特異的結腸炎の軽症多病巣性病変で再生された、2の顕微鏡的スコアに該当する結腸壁を示した。
「TNBS/リモネン100」群の結腸は、概して、急性化膿壊死性および多病巣性炎症性病変で極端に再生された、4の顕微鏡的スコアに該当する結腸壁を示した。
【0081】
「TNBS/イブプロフェン」群の結腸は、半分は、潰瘍性の非特異的結腸炎の軽症二焦点病変を含む、1の顕微鏡的スコアに該当する結腸壁、そしてもう半分は、急性化膿壊死性および多病巣性炎症性病変で極端に再生された、4の顕微鏡的スコアに該当する結腸壁を示した。
【0082】
実施例2:マウス慢性皮膚炎症モデルにおけるリモネンおよびペリリルアルコールの予防的抗炎症作用
材料および方法
1−被験動物
平均体重20〜25gの24匹の雌マウス無毛Skh−1を用いた。その24匹のマウスに印を付け、そして6匹ずつ4群に分けた(n=6)。
【0083】
- 「対照」群=皮膚炎症誘発無し、担体で10日間毎日局所処置;
- 「TPA+対照」群=皮膚炎症誘発、担体で10日間毎日局所処置;
- 「TPA+リモネン」群=皮膚炎症誘発、リモネンを10mg/kg/日で10日間毎日局所処置;
- 「TPA+ペリリルアルコール」群=皮膚炎症誘発、ペリリルアルコールを10mg/kg/日で10日間毎日局所処置。
【0084】
2−皮膚炎症の誘発
ホルボール12−ミリステート−13−アセテート(TPA,MW=616.83、純度=少なくとも98%)は、使用前に、製造者の取扱説明書にしたがって貯蔵した(SIGMA-ALDRICH, Saint-Quentin Fallavier, France)。
【0085】
100μlのTPA溶液を、0.2mg/mlの濃度で、マウスの背部表面上に毎日7日間(J〜J10)適用した。
3−検定製品および処置条件
SIGMA−ALDRICH(Saint-Quentin Fallavier, France)製のリモネン((R)−(+)−リモネン、MW=136.23、純度=97%)を、SIGMA−FLUKA取扱説明書にしたがって用い且つ貯蔵した。
【0086】
SIGMA−ALDRICH(Saint-Quentin Fallavier, France)製のペリリルアルコール((S)−4−イソプロペニル−1−シクロヘキセニルメタノール;(S)−p−メンタ−1,8−ジエン−7−オール、MW=152.23、純度=98%)を、SIGMA−FLUKA取扱説明書にしたがって用い且つ貯蔵した。
【0087】
リモネンおよびペリリルアルコールは、トウモロコシ油中で処置日毎に即席調製した。
毎日局所処置は、皮膚炎症誘発前3日(=J)に開始し、そして皮膚炎症誘発後7日(=J10)続けた。J〜J10に、検定製品を、同じ皮膚部位に、TPAの適用前30分に適用した。
【0088】
4−血清試料採取
マウスを、ケタミン(Ketamine 1000,Virbac, Carros, France)およびキシラジン(Rompun 2%,Bayer Healthcare, Kiel, Allemagne)の混合物(2/3〜1/3vol/vol)の8ml/kgの用量での腹腔内注射によって麻酔した。最後の処置後、心臓内穿刺を行って血液(1ml)を得た。血液試料を、+4℃で20〜30分間貯蔵後、1500gで15分間遠心分離した。血清を取り出し、−20℃で凍結させ、そして−80℃で、炎症誘発性サイトカイン投与まで貯蔵した。
【0089】
5−皮膚試料採取
背部皮膚試料を取り出し、固定し、そしてホルムアルデヒド(Roti(登録商標)-Histofix 4%,Carl Roth, Karlsruhe, Allemagne)中で組織病理学的分析まで貯蔵した。
【0090】
被験動物は、血液および皮膚の試料採取後、過剰用量の麻酔薬で屠殺した。
6−炎症誘発性サイトカイン投与
炎症誘発性サイトカインIL−1β、IL−6およびTNF−αのレベルを、解凍後の血清試料中において、Mouse 3-plex A panel Bio-Rad キット(Ref. 171−F11080,Marnes-la-Coquette, France)によって三重反復試験で同時に測定した。
【0091】
7−統計
クラスカル・ウォリス検定後、可能ならば、マン・ホイットニー検定を用いて、被処置群のいろいろな研究変数を、「対照」群および「TPA+対照」群との比較によって比較した。有意性閾値は、P<0.05で処理した。
【0092】
統計は、Statview 5ソフトウェア(SAS, Institute Inc., USA)で行った。
結果
1−被験動物体重推移
図4は、検定中の4種類の群のマウスの平均体重推移を示す。
【0093】
−1〜J10に、マウスの平均体重は、異なった群間で有意差を示さなかったが、不均一への傾向を示した(H(ddl=3)=6.73;p=0.081)。
2−皮膚炎症の肉眼的スコア
図5は、皮膚炎症の平均肉眼的スコアを示す。
【0094】
皮膚炎症の平均肉眼的スコアは、異なった群間で有意に異なった(H(ddl=3)=19.83;p=0.0002)。
TPA+対照群、TPA+リモネン群、およびTPA+ペリリルアルコール群の皮膚炎症の平均肉眼的スコアは、対照群の場合より有意に大であった(それぞれ、z=3.00,p=0.0027;z=3.11,p=0.0019;z=3.14,p=0.0017)。
【0095】
TPA+リモネン群、およびTPA+ペリリルアルコール群の皮膚炎症の平均肉眼的スコアは、TPA+対照群の場合より有意に小であった(それぞれ、z=2.62,p=0.0089;z=2.82,p=0.0049)。TPA+ペリリルアルコール群の皮膚炎症の平均肉眼的スコアは、TPA+リモネン群の場合より有意に小であった(z=2.07,p=0.039)。
【0096】
3−皮膚試料の組織病理学的分析
異なった処置群のマウスから摘出した皮膚試料の組織病理学的分析は、次の結果を示した。
【0097】
- 対照群:皮膚は標準的であった;
- TPA+対照群:皮膚は、明らかに炎症性であった;表皮潰瘍化を伴い且つしばしば顕著な炎症性浸潤を伴う非特異的炎症性皮膚病変を示した;
- TPA+リモネン群:皮膚は炎症性であった;表皮潰瘍化を伴わないが、多かれ少なかれ顕著な炎症性浸潤を伴う非特異的炎症性皮膚病変を示した;
- TPA+ペリリルアルコール群:皮膚は、ほとんど炎症性ではなかった;表皮潰瘍化を伴わないが、希に顕著な炎症性を伴う非特異的炎症性皮膚病変を示した。
【0098】
4−皮膚炎症の顕微鏡的スコア
図6は、異なった処置群の皮膚炎症の平均顕微鏡的スコアを示す。
皮膚炎症の平均顕微鏡的スコアは、異なった群間で有意に異なった(H(ddl=3)=17.49;p=0.0006)。
【0099】
TPA+対照群、TPA+リモネン群、およびTPA+ペリリルアルコール群の皮膚炎症の平均顕微鏡的スコアは、対照群の場合より有意に大であった(いずれの場合もz=2.91,p=0.0036)。
【0100】
TPA+リモネン群、およびTPA+ペリリルアルコール群の皮膚炎症の平均顕微鏡的スコアは、TPA+対照群の場合より有意に小であった(それぞれ、z=2.10,p=0.036;z=2.49,p=0.013)。TPA+ペリリルアルコール群、およびTPA+リモネン群の皮膚炎症の平均顕微鏡的スコアは、有意に異なることはなかった(z=0.97,p=0.33)。
【0101】
5−炎症誘発性サイトカイン投与
5.1.IL−1β
図7は、異なった処置群のIL−1βの平均血清レベルを示す。
【0102】
異なった処置群のIL−1βの平均血清レベルは、有意に異なった(H(ddl=3)=15.62;p=0.0014)(表3)。
TPA+対照群、TPA+リモネン群、およびTPA+ペリリルアルコール群のIL−1βの平均血清レベルは、対照群の場合より有意に大であった(いずれの場合もz=3.08,p=0.0021)。
【0103】
TPA+ペリリルアルコール群のIL−1βの平均血清レベルは、TPA+対照群の場合より有意に小である傾向を示した(z=1.92,p=0.055)。
TPA+リモネン群、およびTPA+ペリリルアルコール群のIL−1βの平均血清レベルの間には、有意差が示されなかった。
【0104】
【表3】

【0105】
5.2.IL−6
図8は、異なった処置群のマウスのIL−6の平均血清レベルを示す。
異なった処置群のIL−6の平均血清レベルは、有意に異なった(H(ddl=3)=16.42;p=0.0009)(表4)。
【0106】
TPA+対照群、TPA+リモネン群、およびTPA+ペリリルアルコール群のIL−6の平均血清レベルは、対照群の場合より有意に大であった(いずれの場合もz=3.08,p=0.0021)。
【0107】
TPA+ペリリルアルコール群のIL−6の平均血清レベルは、TPA+対照群の場合より有意に小であった(z=2.08,p=0.037)。
TPA+リモネン群のIL−6の平均血清レベルは、TPA+対照群の場合より有意に小である傾向を示した(z=1.76,p=0.078)。
【0108】
TPA+リモネン群、およびTPA+ペリリルアルコール群のIL−6の平均血清レベルの間には、有意差が示されなかった。
【0109】
【表4】

【0110】
5.3.TNF−α
図9は、異なった処置群のTNF−αの平均血清レベルを示す。
異なった処置群のTNF−αの平均血清レベルは、有意に異なった(H(ddl=3)=17.08;p=0.0007)(表5)。
【0111】
TPA+対照群、TPA+リモネン群、およびTPA+ペリリルアルコール群のTNF−αの平均血清レベルは、対照群の場合より有意に大であった(いずれの場合もz=3.08,p=0.0021)。
【0112】
TPA+ペリリルアルコール群のTNF−αの平均血清レベルは、TPA+対照群の場合より有意に小であった(z=2.24,p=0.025)。
TPA+リモネン群のTNF−αの平均血清レベルは、TPA+対照群の場合より有意に小である傾向を示した(z=1.76,p=0.078)。
【0113】
TPA+リモネン群、およびTPA+ペリリルアルコール群のTNF−αの平均血清レベルの間には、有意差が示されなかった。
【0114】
【表5】

【0115】
6−結論
皮膚炎症の誘発前に10mg/kg/日で3日間の予防的処置で局所投与されたリモネンおよびペリリルアルコールは、炎症度(肉眼的および顕微鏡的スコア)を減少させることによって、および炎症誘発性サイトカイン分泌(IL−1β、IL−6およびTNF−α)を減少させることによって、皮膚炎症への有意の作用を示した。
【0116】
実施例3:リモネンおよびペリリルアルコールの治癒への作用
材料および方法
1−被験動物
平均体重20〜25gの6匹の雌マウス無毛Skh−1を用いた。その6匹のマウスに印を付け、そして2匹ずつ3群に分けた。
【0117】
- 「対照」群=各々の側腹部に乱刺、担体で8日間毎日局所処置;
- 「リモネン」群=各々の側腹部に乱刺、10mg/kg/日のリモネンを8日間毎日局所処置;
- 「ペリリルアルコール」群=各々の側腹部に乱刺、10mg/kg/日のペリリルアルコールを8日間毎日局所処置。
【0118】
2−乱刺
各々のマウスの各々の側腹部に、皮膚の乱刺を施した。
3−検定製品および処置条件
SIGMA−ALDRICH(Saint-Quentin Fallavier, France)製のリモネン((R)−(+)−リモネン、MW=136.23、純度=97%)を、SIGMA−FLUKA取扱説明書にしたがって用い且つ貯蔵した。
【0119】
SIGMA−ALDRICH(Saint-Quentin Fallavier, France)製のペリリルアルコール((S)−4−イソプロペニル−1−シクロヘキセニルメタノール;(S)−p−メンタ−1,8−ジエン−7−オール、MW=152.23、純度=98%)を、SIGMA−FLUKA取扱説明書にしたがって用い且つ貯蔵した。
【0120】
リモネンおよびペリリルアルコールは、トウモロコシ油中で処置日毎に即席調製した。
毎日局所処置は、乱刺前1時間に開始し、そして乱刺後8日続けた。
結果
治癒過程を追跡するために、毎日、観察および写真撮影を行った。
【0121】
創傷治癒過程は、ペリリルアルコールのトウモロコシ油溶液の毎日局所適用で、リモネンと比較してより良い結果を、そしてトウモロコシ油単独と比較してはるかに良い結果を与えた。
【0122】
乱刺部位、皮膚表面および皮膚表面下にも、治癒のマークはほとんど認められなかった。
【0123】
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
in vitro または ex vivo で培養された組織の生体組織修復を増加させるためのモノテルペンの使用。
【請求項2】
個体の皮膚または粘膜の組織修復を増加させるためのモノテルペンの化粧用使用。
【請求項3】
皮膚欠陥修復を増加させるための、請求項2に記載の使用。
【請求項4】
前記皮膚欠陥が、座瘡膿疱、蜂巣炎(cellulitis)、瘢痕、日光およびUVで誘発される早期皮膚老化、瘢痕および着色を含めた老化過程による美的でない皮膚欠点、しわおよび落屑性容貌、伸展裂創、加齢マーク(aging marks)、日光およびUVで誘発される早期皮膚老化、酒さ、および外傷後再発(relapse)の非審美的状態(unesthetisms)から成る群より選択される、請求項3に記載の使用。
【請求項5】
生体組織再生を増加させるための、請求項1〜4のいずれか1項に記載の使用。
【請求項6】
個体の生体組織傷害を予防するまたは処置することを予定した医薬組成物の製造のためのモノテルペンの使用。
【請求項7】
前記組織傷害が、熱傷、切り傷、過度の寒冷または熱を含めた極端な気象条件(weather condition)の再発、灼熱再発および創傷から成る群において選択される、請求項6に記載の使用。
【請求項8】
個体の皮膚疾患を予防するまたは処置することを予定した医薬組成物の製造のためのモノテルペンの使用。
【請求項9】
前記組織疾患が、アトピー性皮膚炎、脂漏性角膜炎(seborrhoic keratitis)、後天性表皮水疱症(epidermolysis bullosa acquisita)、乾癬、エリテマトーデスにおける皮膚変質、皮膚筋炎、強皮症、慢性座瘡、慢性セルライテス(cellulites)、そう痒、および糖尿病における異常または欠陥瘢痕形成から成る群より選択される皮膚疾患である、請求項8に記載の使用。
【請求項10】
前記医薬組成物が、局所適用用である、請求項6〜9のいずれか1項に記載の使用。
【請求項11】
前記個体が、ヒトである、請求項2〜10のいずれか1項に記載の使用。
【請求項12】
前記モノテルペンが、リモネン、ゲラニオール、ゲラニルアセテート、イソメントーン(isomenthone)、ペリリルアルコール、ペリラ酸(perillic acid)、ジヒドロペリラ酸(dihydroperillic acid)、これら酸のそれぞれのメチルエステル、カルヴォン、シトラールおよびメントールから成る群より選択される、請求項1〜11のいずれか1項に記載の使用。
【請求項13】
前記モノテルペンが、リモネンまたはペリラ酸またはペリリルアルコールまたはその混合物である、請求項12に記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2010−540497(P2010−540497A)
【公表日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−526309(P2010−526309)
【出願日】平成20年9月26日(2008.9.26)
【国際出願番号】PCT/EP2008/062938
【国際公開番号】WO2009/040420
【国際公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【出願人】(510083038)
【Fターム(参考)】