組織再生および創傷治癒のための脂肪由来幹細胞
脂肪由来幹細胞を用いて、組織再生、特に皮膚の再生を促進するための組成物および方法を提供する。加えて脂肪由来幹細胞サイド・ポピュレーション細胞を用いて、組織再生を促進するための方法および組成物を提供する。脂肪由来細胞は、組織再生有効量で、所望により生理活性物質と共に投与する。加えて脂肪由来細胞は、自家性または同系であることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に対する相互参照
[0001]本出願は、米国特許法律(37 CFR §119(e))の下に、2004年12月30日に提出された米国仮特許出願第60/641,034号に対する優先権を主張する。
【0002】
発明の技術分野
[0002]本発明は、組織再生、特に皮膚の再生を促進するための、脂肪由来幹細胞(adipose-derived stem cells)および脂肪由来幹細胞サイド・ポピュレーション(side population)細胞を含む組成物を提供する。加えて本発明は、組織再生および創傷治癒を誘導するための方法を提供する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
[0003]幹細胞は組織、臓器、および/または臓器システムを再生息および修復することが示された。再生医療にとって特に興味深いのは、細胞に基づく治療のための成体または出生後の幹細胞の使用である。出生後の幹細胞の1つの特定のタイプは、脂肪組織内の結合組織中に見出される脂肪由来幹細胞である。脂肪由来幹細胞は、適当な分化環境に暴露された後、心形成、神経形成、骨形成、脂肪形成、および軟骨形成の細胞タイプに分化することができることにより、in vitro における多能性が示された。in vivoにおいて脂肪由来幹細胞は、頭蓋骨外傷領域周囲に新しい骨そしてほぼ完全な頭頂部の連続性を成功裏に形成することが実証された。
【0004】
[0004]間葉由来の脂肪組織は、容易に単離される支持的な間質を含有する。結果として脂肪組織は、幹細胞の貴重な原料を意味すると思われる。脂肪組織は中胚葉に由来し、2つの異なる細胞集団である成熟した脂肪細胞および間質の血管画分から成る。この画分は、その中に前駆脂肪細胞がある数種の細胞タイプを含有する。間質の血管画分細胞は、in vitro において複数の中胚葉系列への能力を有しているようであり、脂肪形成に加えて骨形成、軟骨形成、および筋形成の系列へと分化する。
【0005】
[0005]増加する数の研究が、脂肪組織から幹細胞を単離し、それらを他の細胞タイプに分化させることに成功している。まとめるとこれらの研究は、容易に単離することのできる成体幹細胞の豊富な、到達可能な、そして補充可能な原料を、脂肪組織が含有するというエビデンスを提供している。
【0006】
[0006]米国において年間800万人が、物理的外傷、血管の機能不全、または糖尿病によって起こる創傷を被っていると推定され、もしこれらの創傷が未治療のまま残されれば感染による死をきたし得る。時としてこれらの創傷は決して完全には治癒せず、傷害または外傷部位は月から年という範囲の期間、開いたままであると思われる。これらの創傷は長期の医学的治療を必要とし、そのことは健康を損なっているという含意に加えて、患者および/または健康保険システムへの多大な費用を負荷し得る。
【0007】
[0007]外科医により加えられる切開、鈍的外力の結果としての外傷、または多様な疾患によって起こる組織の死は、全て類似の創傷治癒の過程を経る。創傷治癒は3つの別個の段階で起こる。炎症期は外傷部位の炎症を特徴とする。この段階は治癒にとって重大な意味を持ち、広範な細胞の遊走を伴う。創傷治癒の第2期は増殖期であり、上皮化、血管新生、肉芽組織の形成、およびコラーゲン沈着により特徴付けられる。新たな毛細血管形成を伴う血管新生は、栄養を送達し肉芽形成を維持するために使用される。創傷内への新たな毛細血管の形成なしには、必要な栄養が届けられず、創傷は慢性的に治癒されない創傷となってしまう。創傷治癒の第3期および最終ステージは、線維芽細胞がコラーゲンに分化する成熟期である。結合組織マトリクスおよびコラーゲンの沈着は収縮を経て、瘢痕組織に至る。瘢痕形成は創傷治癒に重大な意味を持つが、過剰な瘢痕形成は、さらなる美容上および/または病理学的な結果、例えばケロイドおよび/または低形成性瘢痕を有する可能性がある。
【0008】
[0008]瘢痕形成はすべての組織で起こり、瘢痕形成の有害作用として、皮膚におけるケロイド、低形成性瘢痕、火傷による拘縮、および強皮症;胃腸管における狭窄、癒着および慢性膵炎;肝臓における肝硬変および胆道閉鎖;肺における間質性線維症および気管支肺異形成症;心臓におけるリウマチ性疾患および心室瘤;目における水晶体後線維増殖症および糖尿病性網膜症;神経における伝達の損失;骨における強直症および変形性関節症、ならびに腎臓における糸球体腎炎を含む。最小の瘢痕形成で治癒する創傷の能力は、患者において、そして医学的または外科的実践において著明な効果を有し得る。
【発明の開示】
【0009】
[0009]それ故、細胞再生治療により創傷治癒を促進する方法および組成物の医学的必要性が存在する。
発明の概要
[0010]本発明は、組織再生、特に創傷治癒、瘢痕形成の低減、および皮膚の再生のための、脂肪由来幹細胞(ADSC)およびADSCサイド・ポピュレーション(ADSC−SP)細胞の方法および組成物を提供する。
【0010】
[0011]本発明の1つの態様において、単離された脂肪由来幹細胞(ADSC)を包含する、哺乳動物における組織再生を促進するための治療組成物を提供する。もう1つの態様においてADSCは、ADSCサイド・ポピュレーション(ADSC−SP)細胞を包含し、ここでADSC−SP細胞は、Lin−、Scar−1+、CD90+、CD34+/low、CD13+/low、CD117−およびCD18+/lowを含むがこれに限定されない細胞表面マーカーを包含する。
【0011】
[0012]本発明の態様において、治療組成物はさらに医薬的に受容可能な担体を包含する。
[0013]もう1つの態様において、治療組成物は組織再生有効量のADSCを包含し、ここで組織再生有効量のADSCは、1日当たり1治療部位当たりおよそ0.5からおよそ5.0×106細胞数である。
【0012】
[0014]本発明の治療組成物のなおもう1つの態様において、哺乳動物はヒトである。
[0015]本発明の1つの態様において、組織再生有効量のADSCを治療部位に投与することを包含する、それを必要とする患者における組織再生を促進するための方法を提供する。
【0013】
[0016]本発明の方法のもう1つの態様において、ADSCは、ADSCサイド・ポピュレーション(ADSC−SP)細胞を包含し、ここでADSC−SP細胞は、Lin−、Scar−1+、CD90+、CD34+/low、CD13+/low、CD117−およびCD18+/lowを含むがこれに限定されない細胞表面マーカーを包含する。
【0014】
[0017]本発明の方法のなおもう1つの態様において、本方法は、所望の医薬的に受容可能な担体と共にADSCを投与することを包含する。
[0018]本発明の方法のもう1つの態様において、本方法は組織再生有効量のADSCを投与することを包含し、ここで組織再生有効量のADSCは、1日当たり1治療部位当たりおよそ0.5からおよそ5.0×106細胞数である。
【0015】
[0019]本発明の方法のなおもう1つの態様において、ADSCは自家性または同系である。
[0020]本発明の方法のもう1つの態様において、組織再生は創傷部位での皮膚の再生であり、ここで創傷は、疾患、外傷、外科手術、火傷、および咬創から成る群より選択されるイベントにより起こる。
【0016】
[0021]本発明の方法の態様において、組織再生は、心筋の再生、神経組織の再生、または血管の再生を含むがこれに限定されない。
[0022]本発明の方法のなおもう1つの態様において、組織再生は創傷部位での瘢痕化を最小とする。
【0017】
[0023]本発明の方法の1つの態様において、投与ステップは、局所への適用、皮内注射、静脈内注射、および皮下注射を含むがこれに限定されない。
[0024]本発明の方法のもう1つの態様において、本方法はさらに、再生を必要とする組織と同じ組織タイプの細胞に、ADSCを分化させることを包含する。
【0018】
[0025]本発明の方法のなおもう1つの態様において、さらなるものとして生物学的に活性な物質を投与することを包含し、ここで生理活性物質は、増殖因子または免疫抑制薬である。もう1つの態様において生理活性物質は、全身投与または組織再生部位での局所投与を包含する経路により投与する。
【0019】
[0026]本発明の方法の態様において、本方法はさらに高圧酸素療法の施与を包含する。もう1つの態様において、本方法はさらに皮膚移植を包含する。
[0027]本発明の1つの態様において、Lin−、Scar−1+、CD90+、CD34+/low、CD13+/low、CD117−およびCD18+/lowを含むがこれに限定されない細胞表面マーカーを包含する、単離された哺乳類のADSC−SP細胞を包含する、脂肪由来幹細胞サイド・ポピュレーション(ADSC−SP)を提供する。もう1つの態様において、哺乳動物はヒトである。
【0020】
[0028]図面についての簡単な説明 本特許または出願ファイルは、カラーで作成した少なくとも1つの図面を含有する。カラーの図面(1枚または複数)を含むこの特許または特許出願のコピーは、要望および必要な料金の支払いの下にオフィスより提供する。
【0021】
発明の詳細な説明
[0041]本発明は、哺乳動物における組織再生、特に創傷治癒、瘢痕形成の低減、および皮膚の再生のための、個体からの脂肪由来幹細胞(ADSC)およびADSCサイド・ポピュレーション(ADSC−SP)細胞を提供する。
【0022】
[0042]本明細書において使用する場合“哺乳動物”という用語は、あらゆる哺乳動物を包括的に含む。好ましくは哺乳動物は、そのような治療または予防を必要とするものである。哺乳動物の例として、ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ、ネコ、イヌ、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、サル、等、より好ましくはヒトを含むがこれに限定されない。
【0023】
[0043]ヒト胚細胞からの細胞株を発生させることの道徳的および倫理的考慮に伴い、幹細胞の代替原料の探求が進められている。成体幹細胞の代替原料は、臍帯血;間葉系組織;皮膚;脳;骨髄;脂肪組織および羊水組織を含む、多くの組織タイプにおいて見出されてきた。
【0024】
[0044]組織全体からのほとんどの幹細胞調製物は、幹細胞および非幹細胞から成る細胞の混合物である。むしろ非幹細胞集団のほうがずっと多量である。幹細胞を単離する方法は、ますます広く普及してきており、幹細胞の精製された分画を提供している。ほとんどの単離法は、抗体、核の色素、または磁気ビーズを含む。
【0025】
[0045]成体幹細胞の莫大な供給のための可能な候補物質は、脂肪組織である。最近の研究は、脂肪組織から単離された幹細胞は分化して、多くの細胞タイプを生じさせることができることを示している。このことは、成体の多能性幹細胞が脂肪組織内に存在し、高度の可塑性を有することを指摘する。
【0026】
[0046]DNA結合色素であるヘキスト(Hoechst)33342を用いての機能性(functional)染色法は、幹細胞の豊富なマウス骨髄から“サイド・ポピュレーション”細胞と呼ばれる細胞の希少な集団を同定した。サイド・ポピュレーション(SP)細胞は、さらに他の組織タイプにおいても同定された。
【0027】
[0047]本発明者らは、6−8週齢マウスから新たに単離された総脂肪細胞の1.0−1.5%を占める、成体マウス脂肪組織中のSP細胞の存在を同定した。サイド・ポピュレーション細胞はex vivoにおいて未分化であり、静止状態であった。培養液中では、脂肪由来SP細胞は、白血病阻害因子(LIF)を提供するフィーダー細胞層上で緩やかな速度で増殖した。培養系において脂肪由来SP細胞はフィーダーに付着し、コロニーに成長し、そして未分化の状態のままであった。胚性幹細胞の未分化の状態での維持に重要な白血病阻害因子は、脂肪由来SP細胞に対してもまた同様に作用すると思われる。
【0028】
[0048]脂肪由来幹細胞サイド・ポピュレーション(ADSC−SP)は、脂肪組織内に見出される細胞集団であり、これらは多能性でありそして組織再生への適用における使用に適する。
【0029】
[0049]“脂肪由来幹細胞(adipose-derived stem cell)”という用語は出生後の哺乳動物中に見出される脂肪細胞の一集団をいい、これらは多能性であり、そして多様な細胞タイプに分化する潜在能力を有する。脂肪SP細胞、脂肪由来SP細胞、およびADSC−SP細胞はすべて、ADSCの同一の亜集団をいい、ヒトにおいて表現型Lin−、Scar−1+、CD90+、CD34+/low、CD13+/low、CD117−およびCD18+/lowを有する。ADSCの使用を開示するあらゆる態様は、ADSC−SPを用いて実施することができ、ADSC−SPを使用することを開示するあらゆる態様は、ADSCを用いて実施することができる。
【0030】
[0050]ADSC−SPのSP表現型はベラパミルにより阻害され、ヘキスト色素排除現象がATP結合カセット(ABC)トランスポーターによるものであることを示唆した。最近の研究は、1つのABCトランスポーターである乳癌耐性タンパク質1(Bcrp1)の遺伝子の発現が、骨髄、骨格筋、性腺組織、乳腺組織、肝臓、前立腺、および網膜に属する幹細胞に共通することを示した。まとめるとこれらの研究は、組織は、組織の修復および維持に寄与する組織自身の成体幹細胞の亜集団を含有することを実証している。またこのことは、成体幹細胞はおそらく発生の間、多能性の特徴を保持する一方で、すべての組織のタイプに遊走される共通の前駆細胞を共有すると思われることを示唆すると思われる。
【0031】
[0051]加えて本発明者らは、脂肪SP細胞が、骨形成、軟骨形成、神経形成、および脂肪形成の細胞に分化する能力を有することを実証した。脂肪由来幹細胞のバルクの単離は、複数の間葉系系列に分化することができる。脂肪由来SP細胞は、高度の可塑性を有する脂肪前駆体細胞であり、アポトーシス、細胞の損傷に応答して、または組織のホメオスタシスのために特定の系列にコミットするよう何らかのシグナルがそれらを刺激するまで、静止状態にあると思われる。
【0032】
[0052]これまでADSC−SP細胞の特徴付けおよび単離は困難であった。それ故本発明者らは、ADSC−SPを単離する方法を開発した。骨髄SP細胞について定義されたマーカーを使用して、骨髄由来および脂肪由来のSP細胞が共通の特徴を共有するかどうか決定した。脂肪SP細胞は系列陰性(Lin−)であることが発見された。系列の抗体カクテルは、様々な造血系列にコミットした前駆体細胞を同定する。系列は、ネズミ細胞に関してはCD3e、CD11c、CD45R/B220、Ly−76、Ly−6GおよびLy−6Cのマーカーの発現として、そしてヒト細胞に関してはCD2、CD3、CD14、CD16、CD19、CD24、CD56、CD66bおよびグリコフォリンAのマーカーの発現として定義される。脂肪幹細胞はマウスにおいて末梢血を再構構築することができ、脂肪幹細胞の高い可塑性を実証する。脂肪由来SP細胞はいかなる系列マーカーについても染色されなかったため、脂肪由来SP細胞は未分化の状態で存在する。
【0033】
[0053]加えて造血幹細胞(HSC)に共通の他の細胞表面マーカーについても検討した。脂肪SP細胞はCD34陽性であったが、発現は低かった。脂肪SP細胞の80%以上が、造血前駆体に関連する表現型Sca−1/Lin−を発現した。脂肪SP細胞は、CD90+、CD13+/low、およびCD117−であることが発見された。興味深いことにCD117は脂肪由来SP細胞上では発現されなかった。このマーカーはHSCに共通であり、脂肪由来SP細胞での不在は、臓器形成の間の何らかのタイプの発生の相違を示唆すると思われる。ネズミ脂肪由来SP細胞に関する全表現型は、Lin−、Sca−1+、CD90+、CD34+/low、CD13+/low、およびCD117−である。ヒト脂肪由来SP細胞に関する全表現型は、Lin−、Sca−1+、CD90+、CD34+/low、CD13+/low、CD117−およびCD18+/lowである。
【0034】
[0054]マウス脂肪組織から単離され、培養液中に選別された脂肪由来SP細胞は、未分化のままであり、静止状態にあり、in vitroにおいて高度の可塑性を保持し、そしてin vitroにおいて異なる細胞タイプに分化する能力を有する。脂肪由来SP細胞の表現型はHSCに類似しており、それ故脂肪由来SP細胞は、他の幹細胞 例えばHSCが関連すると思われる共通の前駆細胞に由来すると思われる。
【0035】
[0055]本発明の1つの態様において、ADSC−SP細胞は、哺乳動物から脂肪組織を得、脂肪組織から脂肪細胞の細胞懸濁液を作成し、ヘキスト33342色素で脂肪細胞を染色し、ヘキスト染色された脂肪細胞から、Lin−、Sca−1+、CD90+、CD34+/low、CD13+/low、CD117−およびCD18+/lowである細胞のサイド・ポピュレーションを単離することを包含する方法により、脂肪組織から単離する。
【0036】
[0056]脂肪由来幹細胞サイド・ポピュレーション細胞は、組織再生における使用に特に適する。脂肪由来幹細胞サイド・ポピュレーション細胞は、実施例3ならびに図6および7で実証されたように、脂肪形成、軟骨形成、骨形成、神経形成および心形成の系列を含むがこれに限定されない多様な系列の細胞に分化する能力を有する。
【0037】
[0057]特に本発明のADSC−SP細胞は、瘢痕組織を形成することなく組織再生および治癒を誘導するため、創傷の治療に適する。これらのADSC−SP細胞は、治療を受ける哺乳動物からそれらを採取することができ、そして多様な組織の傷害または欠損の組織再生のために使用することができるという点で、現行の治療を上回る改善を提示する。
【0038】
[0058]本発明の態様は、創傷部位での皮膚の組織再生のための組成物および方法を提供する。創傷は、組織の構造および/または完全性が損なわれる時、例えば皮膚が破断する、筋肉が断裂もしくは壊死する、骨が破砕する、または組織が火傷する時に発生する。創傷は、事故、外傷または医学的処置により、感染性疾患または根底にある疾患の状態により発生してもよい。創傷の位置、範囲および重症度に依存して、創傷を閉鎖創または開放創と分類することができる。
【0039】
[0059]本発明は、組織再生のためのADSCおよびADSC−SPを提供する。本発明の態様において、脂肪由来幹細胞は自家性である。非限定的例において、およそ0.5からおよそ5.0×106個の脂肪由来幹細胞/10mmの1日当たり1治療部位当たりの治療部位を、治療部位に近接して皮内注射する。脂肪由来幹細胞は、血管形成を増大させ、傷害部位への細胞の遊走を増大させ、瘢痕化の量を低下させ、そして組織再生を増大させることにより、創傷治癒を手助けする。脂肪由来幹細胞はまた、創傷の治癒時間を短縮させ、それにより感染の可能性を低下させる。美容的上ならびに医学的利点、例えば開放創または閉鎖創の治療に起因する瘢痕化の低減が挙げられる。加えて本発明の態様は、慢性疾患、例えば糖尿病の患者の創傷治癒を手助けする。
【0040】
[0060]本発明の脂肪由来幹細胞は、急性創傷および慢性創傷双方の治療のための組織再生を提供する。急性創傷は迅速に、すなわち30日(または糖尿病では60日)以内に治癒する創傷である。本発明を用いて治療することのできる急性創傷の非限定的例として、擦過傷、裂傷、挫傷、挫滅、切創、裂創、噴出性創傷、穿刺創を含む。慢性創傷は、糖尿病性の皮膚のびらん、褥瘡、外科的創傷、脊髄傷害による創傷、火傷、化学物質誘発性創傷、および血管障害による創傷を含む。
【0041】
[0061]本発明の利点は、脂肪由来幹細胞を用いての創傷治癒が、瘢痕形成よりむしろ組織様の再生による創傷治癒に至ることである。
[0062]本発明の態様において脂肪由来幹細胞は、組織再生に使用する前に分化させる。非限定的例において、心筋梗塞後の心組織の組織再生のため、治療部位への細胞の移植前に脂肪由来幹細胞を心形成の前駆細胞または心筋細胞に分化させることは可能である。
【0042】
[0063]本発明の方法はまた、ADSC細胞と共に生理活性物質の併用を伴うことができる。“併用”により、上に記載したような治療組成物の投与前に、同時に、例えば同一の製剤中にまたは別個の製剤中に生理活性物質を組み合わせて、または投与後に投与することを意味する。
【0043】
[0064]本明細書において使用する場合、“生理活性物質”は、生物学的に活性なまたは関連するあらゆる有機、無機、または生きている物質をいう。例えば生理活性物質は、タンパク質、ポリペプチド、多糖(例えばへパリン)、オリゴ糖、単糖、もしくは二糖、有機化合物、有機金属化合物、または無機化合物であることができる。生理活性物質は、生きている細胞もしくは老化細胞、細菌、ウイルス、またはそれらの一部を含むことができる。生理活性物質は、生物学的に活性な分子、例えばホルモン、増殖因子、増殖因子産生ウイルス、増殖因子阻害薬、増殖因子受容体、抗炎症薬、代謝拮抗薬、インテグリン遮断薬、または完全なもしくは部分的な機能的センス(insense)もしくはアンチセンスの遺伝子を含むことができる。生理活性物質はまた、生物学的に関連するまたは活性な材料を運ぶ、人造の粒子または材料を含むことができる。一例は、薬剤を含むコア部分とコア部分のコーティング剤を包含するナノ粒子である。
【0044】
[0065]生理活性物質はまた、薬剤、例えば生物学的有機体において治療効果を有し得る化学的または生物学的化合物を含むことができる。非限定的例として、増殖因子、拒絶応答抑制薬、抗炎症薬、抗感染薬(例えば抗生物質および抗ウイルス薬)、鎮痛薬および鎮痛薬の組み合わせ、抗喘息薬、抗痙攣薬、抗うつ薬、抗糖尿病薬、抗悪性腫瘍薬、抗癌薬、統合失調治療薬、抗酸化薬、免疫抑制薬、ビタミンおよびミネラル、ならびに心血管疾患のために使用される薬剤 例えば抗再狭窄化合物および抗血液凝固化合物、を含むがこれに限定されない。
【0045】
[0066]生理活性物質はまた、代謝され、破壊され(例えば分子成分の開裂)、またはそれ以外に体内で処理および修飾された後に、関連する生物学的活性を呈する前駆体材料を含むことができる。生理活性物質は、さもなければ相対的に生物学的に不活性である、またはさもなければ治療する医学的状態に関する特定の結果に有効ではないとそのような修飾の前には考えられるかもしれない、そのような前駆体材料を含むことができる。
【0046】
[0067]前述の例のいずれかの組み合わせ、ブレンド、またはその他の調製物を作製することができ、そしてまだなお本明細書において意図した意味の範囲内の生理活性物質と考えることができる。生理活性物質へと方向付けた本発明の側面は、前述の例のいずれかまたはすべてを含むことができる。
【0047】
[0068]本発明の1つの態様において、生理活性物質は増殖因子である。増殖因子は、移植されたADSCの増殖、分化および機能性を促進するあらゆる物質である。適切な増殖因子の非限定的例として、白血病阻害因子(LIF)、上皮増殖因子(EGF)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、トランスフォーミング増殖因子−ベータ(TGF−β)、インスリン様増殖因子(IGF)、および血管内皮細胞増殖因子(VEGF)、ヒト成長ホルモン、血小板誘発増殖因子(PDGF)、インターロイキン、サイトカイン、またはそれらの組み合わせを含む。フランシスコ、これらは私が即興で提供した因子である。ADSCと共に使用してよいあらゆるその他の増殖因子を加えていただきたい。
【0048】
[0069]本発明の1つの態様において、生理活性物質は免疫抑制薬である。免疫抑制薬は、所望の免疫応答、例えば移植された細胞、組織、または臓器の拒絶の惹起を予防、遅延する、またはその強度を低下させるあらゆる物質である。
【0049】
[0070]本明細書において使用する場合、“免疫抑制”は、本明細書において定義する場合 “免疫応答”が検出できないような、(例えば本明細書において定義する場合 “免疫抑制薬”の投与による)免疫応答の予防をいう。本明細書において使用する場合、免疫応答の“予防”は、免疫応答が検出できないことを意味する。免疫応答(例えば移植片拒絶または抗体産生)は、当該技術分野における周知の方法、および本明細書において定義する方法に従って検出する。
【0050】
[0071]本発明に従っての“免疫抑制”はまた本明細書において定義する場合、免疫抑制薬を投与されなかった移植レシピエント、または“免疫的に隠されている(immunologically blinded)”、もしくは“免疫的に特権を有する(immunoprivileged)”のではない材料を用いて移植された移植レシピエントのいずれか一人と比較した場合の、免疫応答の惹起の遅延を意味する。免疫応答の惹起の遅延は、短期的遅延、例えば1時間−10日、すなわち1時間、2、5または10日であることができる。免疫応答の惹起の遅延はまた、長期的遅延、例えば10日−10年(すなわち30日、60日、90日、180日、1、2、5または10年)であることもできる。
【0051】
[0072]本発明に従っての“免疫抑制”はまた、免疫応答の強度の低下を意味する。本発明に従って、免疫応答の強度を、免疫抑制薬を投与されなかった移植レシピエント、または自家性でない材料を用いて移植された移植レシピエントのいずれか一人の免疫応答の強度に比して、5−100%、好ましくは25−100%、そして最も好ましくは75−100%低いように低下させることができる。免疫応答の強度は、移植された材料が拒絶されるタイムポイントを決定することにより測定することができる。例えば移植後第1日での移植された材料の拒絶を包含する免疫応答は、移植後第30日での移植された材料の拒絶を包含する免疫応答に比して、より強い強度である。免疫応答の強度はまた、移植された材料に結合することのできる特定の抗体の量を定量することにより測定することができ、その場合抗体産生レベルは、免疫応答の強度に直接相関する。あるいは免疫応答の強度は、移植された材料に結合することのできる特定の抗体が検出されるタイムポイントを決定することにより、測定することができる。
【0052】
[0073]様々な方法および物質を、免疫抑制のために利用することができる。例えばリンパ球の増殖および活性は一般に、例えばFK−506、またはシクロスポリン、またはその他の免疫抑制薬のような物質を用いて阻害することができる。もう1つの可能な方法は、抗体、例えば抗GAD65モノクローナル抗体、または移植された細胞上の表面抗原を覆い、そのために細胞をホストの免疫系に対して事実上不可視とする別の化合物を投与することである。
【0053】
[0074]“免疫抑制薬”は、ホストにおける外来細胞、特に移植された細胞に対する免疫応答の発生を予防、遅延する、またはその強度を低減するあらゆる物質である。特に好ましいのは、免疫系により非自己と同定された細胞に対する細胞性免疫応答を抑制する免疫抑制薬である。免疫抑制薬の例は、シクロスポリン、シクロホスファミド、プレドニゾン、デキサメタゾン、メトキサレート、アザチオプリン、マイコフェノレート、タリドミド、FK−506、全身性ステロイド、ならびに広範囲の抗体、受容体アゴニスト、受容体アンタゴニスト、および当業者に公知であるようなその他の物質を含むが、これに限定されない。
【0054】
[0075]本発明のなおもう1つの態様において、脂肪由来幹細胞は、慢性創傷のための高圧酸素療法と共に施与する。
[0076]本発明の態様において、脂肪由来幹細胞は、移植片の処置においておよび組織再生による手助けとなるよう、皮膚移植片と共に投与する。
【0055】
[0077]脂肪由来幹細胞または分化した細胞をレシピエントに移植してよく、その場合細胞は増殖および分化して新しい細胞および組織を形成し、それによりその組織によって正常に提供される生理学的プロセスを提供する。本明細書において使用する場合“移植された”という用語は、細胞を単独で、または支持マトリックス中に包埋された細胞を移植することをいう。本明細書において使用する場合、“組織”という用語は、特定の機能の遂行においてユニットとなる類似の特定化された細胞の集合をいう。組織は、硬組織および軟組織の双方を含むすべてのタイプの生物学的組織を包括的に含むことを意図する。軟組織は、体の他の構造および臓器を結合、支持、または包囲する組織をいう。軟組織は、筋肉、腱(筋肉を骨に結合する線維の帯)、線維組織、脂肪、血管、神経、および滑膜組織(間接周囲の組織)を含む。硬組織は、結合組織(例えば骨様組織または骨のような固い形)、ならびに他の筋肉または骨格の組織を含む。
【0056】
[0078]本発明のもう1つの態様において、ADSCは医薬的に受容可能な担体または賦形剤と共に投与する。本明細書に記載する医薬的に受容可能な賦形剤、例えばビヒクル、アジュバント、担体または希釈剤は、当業者に周知であり、誰もが容易に入手できる。医薬的に受容可能な担体または賦形剤は、治療組成物に対して化学的に不活性であるもの、そして使用条件下で有害な副作用または毒性を有していないものであることが好ましい。
【0057】
[0079]賦形剤または担体の選択は、一部は特定の治療組成物により、ならびに組成物を投与するために使用する特定の方法により決定されることになる。したがって本発明の医薬組成物の広範囲の多様な適切な製剤が存在する。本明細書に記載する製剤は単なる例示に過ぎず、決して限定するものではない。
【0058】
[0080]しばしば生理学的に受容可能な担体は、pH緩衝化水溶液である。生理学的に受容可能な担体の例として、生理食塩水、溶媒、分散培地、細胞培養液、水溶性バッファー 例えばリン酸、クエン酸、およびその他の有機酸のバッファー;アスコルビン酸を含む抗酸化剤;低分子量(約10残基より少ない)ポリペプチド;タンパク質、例えば血清アルブミン、ゼラチン、もしくは免疫グロブリン;親水性ポリマー 例えばポリビニルピロリドン;アミノ酸 例えばグリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニンもしくはリジン;単糖、二糖、およびその他の炭水化物(グルコース、マンノース、もしくはデキストリンを含む);キレート剤 例えばEDTA;糖アルコール 例えばマンニトールもしくはソルビトール;塩を形成する対イオン 例えばナトリウム;ならびに/または非イオン性界面活性剤 例えばTWEEN(登録商標)、ポリエチレングリコール(PEG)、およびPLURONICS(登録商標)を含むが、これに限定されない。
【0059】
[0081]本発明はさらに、本発明の治療法を実施する上で有用な治療組成物を提供する。主題の治療組成物は、混合物において、医薬的に受容可能な賦形剤(担体)または培地、ならびに本発明のADSC(ADSCの由来する細胞および組織を含む)を、単独でまたは1つまたはそれより多くの生理活性物質と組み合わせて、そして細胞または組織の喪失または欠損を経験している患者への多様な手段による投与に有効な強度で含む。
【0060】
[0082]本発明のADSC(ADSCの由来する細胞の系列にコミットしていない集団、細胞の系列にコミットした集団、または組織を含む)を、医薬的に受容可能な担体または培地と共に包含する、またはそれに基づく方法において使用するための治療組成物を提供することは、本発明のまださらなる態様である。また特に考慮するのは、本発明のADSCおよび/またはADSCの由来する細胞もしくは組織に作用するまたは修飾する生理活性物質を、医薬的に受容可能な担体または培地と共に包含する治療組成物である。
【0061】
[0083]細胞の、または組織に基づいた 治療組成物の調製は、当該技術分野において十分に理解されている。そのような組成物は医薬的に受容可能な培地中に製剤化してよい。細胞は溶液中に存在しても、マトリックス中に包埋してもよい。活性成分としての生理活性物質(例えば増殖因子)を含む治療組成物の調製は、当該技術分野において十分に理解されている。活性な治療成分はしばしば、医薬的に受容可能で活性成分に適合する賦形剤または培地と共に混合する。加えて所望の場合には組成物は、少量の助剤、例えば活性成分の有効性を高める湿潤剤または乳化剤、pH緩衝剤を含有することができる。
【0062】
[0084]生理活性物質は、中性化した医薬的に受容可能な塩の形として、治療組成物中に製剤化することができる。医薬的に受容可能な塩は、酸付加塩(ポリペプチドまたは抗体分子のフリーのアミノ基を用いて形成される)を含み、この酸付加塩は、例えば塩酸もしくはリン酸のような無機酸、または酢酸、シュウ酸、酒石酸、マンデル酸、などのような有機酸を用いて形成される。フリーのカルボキシル基から形成される塩はまた、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウム、または水酸化第二鉄のような無機塩基から、そしてイソプロピルアミン、トリメチルアミン、2−エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカイン、などのような有機塩基から誘導することができる。
【0063】
[0085]本発明の治療組成物は、製剤の投与量に適合する様式で、そして治療有効量で投与する。投与する量は、例えば治療する被験者および衰弱度、治療組成物を適応する被験者の臓器、細胞系および免疫系の潜在能力、ならびに細胞療法または組織療法の性質などに依存する。投与するために必要な治療組成物の正確な量は、医師の判断に依存し、各個体に特有である。しかしながら本発明の治療組成物の適切な投与量は、1日当たり1治療部位当たり1日の細胞当たり1治療部位当たり約0.05−100.0×106個の脂肪由来幹細胞/10mmの治療部位、好ましくは1日当たり1治療部位当たり1日の細胞当たり1治療部位当たり約0.10−50.0×106個の脂肪由来幹細胞/10mmの治療部位、そしてより好ましくは1日当たり1治療部位当たり約0.5−5.0×106個の脂肪由来幹細胞/10mmの治療部位の範囲としてよく、そして投与経路および治療部位のサイズに依存する。初回投与およびそれに続く投与の適切な投与計画もまた一定ではないが、初回投与およびそれに続いて1またはそれより多くの時間または日の間隔を置いて、引き続きの注射またはその他の投与により繰り返し投与する用量を含むことができる。
【0064】
[0086]当業者は、特定の目的のための細胞の適当な濃度を容易に決定してよい。一例としての容量は、1日当たり1治療部位当たり約0.05−100.0×106個の細胞の範囲である。非限定的例において、1日当たり1治療部位当たりおよそ0.5×106個の脂肪由来幹細胞/10mmの治療部位を、治療部位に近接してまたは治療部位内に皮内注射する。
【0065】
[0087]本発明のもう1つの態様においてADSCは、組織再生が必要である時、創傷または傷害の発生後のあらゆる時間に、哺乳動物の治療部位に投与する。治療組成物に関する詳細な投与計画は、医師の判断、および創傷または傷害のタイプおよび範囲に依存し、各個体に特有である。
【0066】
[0088]本発明のADSCまたは分化した細胞は、注射により被験者の標的部位内に、好ましくは送達器具、例えばチューブ、例えばカテーテルを経由して投与することができる。1つの態様において、チューブは付加的に針、例えばシリンジを含有し、それを通して細胞を所望の位置で被験者の体内に導入することができる。被験者に細胞を投与する特定の非限定的例はまた、皮下注射、筋肉内注射、または静脈内注射を含んでよい。投与が静脈内である場合、細胞の注射可能な液体懸濁液は、持続点滴により、またはボーラスとして調製し投与することができる。
【0067】
[0089]細胞はまた、種々の形で送達器具、例えばシリンジ中に挿入してよい。例えば細胞は、そのような送達器具中に含有される溶液中に懸濁させることができる。本明細書において使用する場合、“溶液”という用語は、本発明の細胞が生存可能なまま保持される医薬的に受容可能な担体または希釈剤を含む。そのような担体および希釈剤の使用は当該技術分野において周知である。溶液は好ましくは無菌であり、そして容易にシリンジへ注入できる程度に流動的である。好ましくは溶液は製造および保存の条件下で安定であり、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなどの使用により、微生物、例えば細菌および真菌の混入作用に対して保護されている。本発明の溶液は、本明細書に記載するようなADSCまたは分化した細胞を、医薬的に受容可能な担体または希釈剤、そして必要な場合には上に列挙したその他の成分中に組み込み、続いてフィルター滅菌することにより調製することができる。
【0068】
[0090]細胞は全身に(例えば静脈内により)または局所的に(例えば心エコーのガイドの下に心筋欠損部内に直接、もしくは外科手術中の可視化された下で直接適用することにより)投与してよい。そのような注射に関して、細胞は注射可能な液体懸濁液調製物中に、または液体の形で注射可能であり、そして損傷組織部位では半固体になる生体適合性の培地中に、存在してよい。従来の心臓内へのシリンジまたはコントロール可能な内視鏡下の送達器具は、針の内腔または口径が、ずり応力が送達されている細胞に損傷を与えることのない十分な直径(例えば30ゲージまたはそれより大きい)のものである限り、使用することができる。
【0069】
[0091]細胞は、意図した組織部位にそれらを移植し、機能的欠損領域を再構築または再生することを可能にするあらゆる様式で投与してよい。
[0092]その中にADSCを組み込むまたは包埋することのできる支持マトリクスは、生体適合性、すなわちレシピエント適合性のあるマトリクス、そしてレシピエントに有害でない生成物に分解するマトリクスを含む。これらのマトリクスは、in vivoにおいてADSCおよび分化した細胞のための支持および保護を提供する。
【0070】
[0093]天然および/または合成の生分解性マトリクスは、そのようなマトリクスの例である。天然の生分解性マトリクスは、例えば哺乳動物由来の血漿のクロット、コラーゲン、フィブロネクチン、およびラミニンのマトリクスを含む。細胞移植マトリクスのための適切な合成材料は、遊走および免疫合併症を防止するために生体適合性でなければならず、そして広範な細胞の成長および分化した細胞の機能を支持することが可能であるべきだろう。合成材料はまた、完全に天然の組織に置き換わることを考慮して、納得できるものでなければならない。このマトリクスは、多様な形に成形可能であるべきであり、そして移植での崩壊を防ぐための十分な強度を有しているべきであろう。最近の研究は、Vacanti, et al. J. Ped. Surg. 23:3-9 (1988); Cima, et al. Biotechnol. Bioeng. 38:145 (1991); Vacanti, et al. Plast. Reconstr. Surg. 88:753-9 (1991)により記載されているように、ポリグリコール酸で作成された生分解性ポリエステルポリマーがこれらの基準をすべて満たすことを示している。その他の合成の生分解性支持マトリクスとして、合成ポリマー、例えばポリ無水物、ポリオルトエステル、およびポリ乳酸を含む。合成ポリマーのさらなる例、およびこれらのマトリクス中に細胞を組み込むまたは包埋する方法もまた、当該技術領域において公知である。例えば米国特許第4,298,002号および 5,308,701号を参照のこと。
【0071】
[0094]細胞のポリマーへの付着は、化合物、例えば基底膜成分、寒天、アガロース、ゼラチン、アラビアゴム、コラーゲンI、II、III、IVおよびV型、フィブロネクチン、ラミニン、グルコサミノグリカン、それらの混合物、および細胞培養の業者に公知のその他の材料を用いて、ポリマーをコーティングすることにより強化してよい。マトリクスに使用するためのすべてのポリマーは、細胞のその後の成長および増殖の適度の支持を提供するために必要な物理的および生化学的パラメータを満たさなければならない。
【0072】
[0095]生分解性ポリマーマトリクスの利点の1つは、血管形成化合物およびその他の生理活性化合物を、支持マトリクス中に直接組み込むことができ、その結果支持マトリクスがin vivoで分解する時、それらが緩やかに放出されることである。細胞−ポリマー構造が血管新生化されて構造が分解する時、胎盤幹細胞はそれらの固有の特徴にしたがって分化すると思われる。栄養分、増殖因子、分化または脱分化(すなわち分化した細胞に、分化という特徴を失わせ、増殖、およびより一般的な機能というような特徴を獲得させること)の誘導因子、分泌産生物、免疫調節物質、炎症の阻害薬、退行因子(regression factor)、リンパ管のネットワークまたは神経線維の成長を高めまたは可能にする生理活性物質、ヒアルロン酸、および当業者に公知であって、有効量を構成するものに関する添付文書と共に、供給元、例えばCollaborative Research, Sigma Chemical Co.より、市場にて入手可能である薬剤、血管増殖因子 例えば血管内皮細胞増殖因子(VEGF)、上皮増殖因子(EGF)、およびへパリン結合性上皮増殖因子様増殖因子(HB−EGF)を含む因子を、マトリクス内に組み込み、またはマトリクスと結合して提供することができる。同様に、ペプチド、例えば接着性ペプチドRGD(Arg−Gly−Asp)を含有するポリマーを、マトリクスの形成に使用するために合成することができる(例えば米国特許第4,988,621号、4,792,525号、5,965,997号、4,879,237号および4,789,734号を参照のこと)。
【0073】
[0096]もう1つの例において、胎盤幹細胞または分化した細胞を成長させることができる基質を形成するように重合したゲルマトリクス(例えばUpjohn CompanyからのGelfoam)中にて、細胞を移植してもよい。多様なカプセル封入技術が開発されてきた(例えばLacy et al., Science 254:1782-84 (1991); Sullivan et al., Science 252:718-712 (1991); WO 91/10470; WO 91/10425;米国特許第5,837,234号;米国特許第5,011,472号;米国特許第 4,892,538号)。損傷した組織および/または臓器に直接物理的にアクセスすることを伴う開放的な外科的処置の間、未分化の胎盤幹細胞または分化した胎盤幹細胞の送達調製物の所望の形はすべて、利用可能な選択肢である。これらの細胞は、所望の治療効果が達成されるまで、間隔をおいて繰り返し移植することができる。
【0074】
[0097]例示としての態様において、有効量のADSCを包含する治療組成物を使用して、血管疾患の被験者を治療してよい。本明細書において使用する場合、“血管疾患”は、ヒトの血管系の疾患をいう。例として、末梢動脈疾患、腹部大動脈瘤、頸動脈疾患、静脈疾患を含む。ADSCを使用して、被験者における組織の再建または瘢痕組織の交換のための方法において使用してよい血管内皮細胞を生成することができる。血管内皮細胞はまた、血管の損傷を修復するために使用してもよい。
【実施例】
【0075】
実施例1
脂肪由来幹細胞の産生および培養
[0098]この実施例は、脂肪由来幹細胞の単離を示す。以下の実施例はマウス組織からの脂肪由来幹細胞の単離について記載したが、同時に当業者がこれらの技術を使用して他の哺乳類の組織から脂肪由来幹細胞を単離することは可能だろう。
【0076】
[0099]手短には、胃および腸を覆う内臓脂肪を取り出し、無菌のハサミで細かく刻んだ。次に細かく切り分けた脂肪を、1mM EDTAを含有するカルシウム/マグネシウム不含ダルベッコリン酸緩衝化生理食塩水(DPBS(−)/EDTA)で10回洗浄し、各洗浄ステップ後に500×gで5分間遠心し、浮遊している脂肪細胞を除去した。次に脂肪組織をDPBS(−)/EDTA中で10分間室温でインキュベートし、その後脂肪組織を外科用ハサミまたはBD Medimachin (BD Biosciences, San Jose, CA)を用いて機械的にばらばらにした。その後ばらばらにした脂肪組織をI型コラゲナーゼ(0.075%, Sigma)を用いて15分間37℃で酵素的に消化した。その後脂肪組織をトリプシン/EDTAを用いて15分間37℃でさらに消化した。消化は、10%FBSを含有するDMEM培養液を等量加えることにより停止させた。次に消化した脂肪組織を、各洗浄毎に350×gで5分間遠心することによりDMEM/10%FBSで洗浄した。その後ペレットをDMEM/10%FBS中に再度懸濁し、70μmナイロンメッシュを通して濾過した。その後脂肪由来幹細胞を、DMEM/10%FBS/1×非必須アミノ酸/1×抗生物質/抗真菌薬(基本培地)中に再度懸濁した。
【0077】
[0100]その後上で単離した脂肪由来幹細胞は基本培地中に保持し、隔日に養分を与え、細胞がおよそ80%培養密度に達した時に継代した。各継代では、細胞が2日毎に培養密度に達するように細胞を1:2に分割した。細胞を培養して4回継代した後、分化用に使用し、患者に移植するかまたは後日の移植用に冷凍保存した。
【0078】
実施例2
脂肪由来幹細胞サイド・ポピュレーション細胞の同定
[0101]脂肪由来幹細胞サイド・ポピュレーション細胞(ADSC−SP)の分析のため、脂肪細胞は10%FBSを含むDMEM中に1×106細胞数/mLの濃度で懸濁させた。細胞は、最終濃度2.5μg/mLとしたヘキスト33342(Sigma)と共にインキュベートした。細胞は、計90分間37℃の水浴中で20分毎に緩やかに撹拌した。インキュベーション後、細胞を遠心によりペレット化し、フローソーティグまで氷上に保持した。ヘキスト排出の阻害を実証するため、細胞は同じインキュベーション時間の間、ヘキスト染色に加えて最終濃度25μg/mLとしたベラパミル(Sigma)と共にインキュベーションした。
【0079】
[0102]ソーティングは、Cytopeia InFlux Cell Sorter (Seattle, WA)にて行った。ヘキスト染色した細胞を、355nm 20mW UVレーザー(Lightwave Electronics, Mountain View, CA)で励起し、ヘキストブルーおよびレッドの発光を560nmダイクロイックミラーで分離し、各々460/50および670/40のバンドパスフィルターを用いて集めた。フルオレセイニソチオシアネート(FITC)およびフィコエリトリン(PE)は、488nm 200mWレーザー(Coherent, Santa Clara, CA)で励起し、各々発光を530/40および580/30のバンドパスフィルターで集めた。アロフィコシアニン(APC)は、638nm 25mW レーザー(Coherent)で励起し、発光を670/40バンドパスフィルターで集めた。
【0080】
[0103]抗体の染色のため、細胞を遠心して集め、500mLのヘキスト染色バッファー中に濃縮し、氷上に保持した。細胞は抗マウスのSca−1−PE、CD90−APC、CD117−APC、CD34−FITC、および系列決定用の抗体(BD Biosciences Pharmingen, San Diego, CA)で染色した。系列のキットは、すべてAPCに複合した抗マウスのCD3e、CD11c、CD45R/B220、Ly−76、Ly−6GおよびLy−6Cを含有する。細胞は30分間染色し、冷却ヘキスト染色バッファー中で一度洗浄し、フロー分析まで氷上に保持した。
【0081】
[0104]他の組織におけるサイド・ポピュレーション細胞を同定するために使用される染色条件を、酵素的に消化した脂肪組織の単細胞懸濁液に適用した。ヘキスト33342排出の保存された現象なまた、脂肪組織においても観察された。脂肪のサイド・ポピュレーション細胞の頻度は、1.5%±0.5%(平均±標準偏差、n=4)であった。サイド・ポピュレーション細胞を同定するため、すべてのスキャッターイベントをスキャッタープロットの最初のゲート(gate)に含めた。ヘキスト染色により同定した脂肪由来幹細胞SP細胞を、スキャッタープロット上にバックゲート(backgate)した。消化した脂肪組織は、スキャッタープロット上で3つの主要な細胞集団を示す。脂肪由来幹細胞SP細胞は、側方散乱(SSC)の低値および前方散乱(FSC)の低値から中程度の値に関する領域に属するように見える(図1)。脂肪由来幹細胞SP細胞は下部のSSCを有しており、それらが主要な細胞集団より小さいことを示す。
【0082】
[0105]多くの組織におけるSP表現型は、ABCトランスポータースーパーファミリーの膜結合タンパク質トランスポーターによって起こる。ABCトランスポーターの活性が、ADSC−SP細胞におけるSP表現型を作るのかどうかを決定するため、ベラパミルを、最終濃度 25μg/mLとして細胞懸濁液に加えた(図2)。ベラパミルの添加は、ヘキスト色素排出を減少させ、SP表現型がABCトランスポーターによるものであることを示唆した。
【0083】
[0106]脂肪由来幹細胞SP細胞を、多くのタイプのサイド・ポピュレーション細胞に共通する表面マーカーについて染色した。すべてのマーカーは抗体に直接複合し、フローサイトメトリーで試験した。ネガティブコントロールは、未染色の脂肪細胞とした。ポジティブ染色は、ネガティブコントロールの95%以上の蛍光強度と定義した。30%−80%の範囲の強度にあたる強度の強くない染色を、低レベルから中レベルの染色と考えた。
【0084】
[0107] 成体幹細胞は厳しい制御コントロール下で、細胞のライフサイクル中の主に静止状態にある。新たに選別された脂肪サイド・ポピュレーション細胞を、ヨウ化プロピジウムで染色して、それらの細胞周期の状態を評価した。データは、サイド・ポピュレーションの細胞および主要な集団の細胞の双方が、主として静止状態にあり、0.5%未満の細胞が増殖期にあることを示した。このことはまた、ヘキスト33342でより強い強度で染色された他の細胞についても言えた(図3)。
【0085】
[0108]脂肪由来幹細胞SP細胞は、ヘキスト33342色素を排出し、そして幹細胞が濃縮されている細胞である。しかしながらすべてのADSC−SP細胞が、幹細胞マーカーを発現してはいない。ADSC−SP細胞集団は、いかなる系列にコミットしていない細胞を含有する。このことは、系列特異的な抗体のいかなる染色も不在であることにより証明される。幹細胞抗原1(Sca−1)はADSC−SP細胞の81+/−5%で発現される。同様にCD90は、ADSC−SP細胞の80%で発現された。多変量のプロットは、ADSC−SP細胞の75+/−7%がSca−1およびCD90の双方を有することを示す(図4)。脂肪由来幹細胞SP細胞は、CD34に関しては低レベルで染色され、そして多くの幹細胞の発生に関して重要であるCD13、CD117は、ADSC−SP細胞上では発現されていなかった(図4)。
【0086】
実施例3
ADSC−SP細胞の分化
[0109]ソーティング後、細胞は10%FBSを補充したDMEMで一度洗浄し、マウス胚性線維芽STO細胞のフィーダー層上で培養した。STOフィーダー細胞は、0.1%(重量/体積)ゼラチンでコーティングし、10μg/mlの濃度のマイトマイシンC(Sigma)で2.5時間37℃で処理し、PBSで3回洗浄したディッシュ上にプレーティングした。選別したADSC−SP細胞をマイトマイシンC処理したSTOフィーダー細胞上にプレーティングし、培養液を毎日交換した(図5)。
【0087】
[0110]ADSC−SP細胞の機能性の能力を検討するため、これらの細胞を異なる細胞タイプに分化させた。骨形成、脂肪形成、および神経形成に関しては、4回継代の50,000個の培養ADSC−SP細胞をプレーティングした。軟骨形成に関しては、4回継代の80,000個の培養ADSC−SP細胞をプレーティングした。
【0088】
[0111]脂肪形成
[0112]5万個の細胞を、脂肪形成の誘導培地および維持培地(Cambrex, Walkersville, MD)中で製造元の規格に従って成長させた。手短には細胞は、6cmディッシュ内で10%FBSを含むDMEM中にプレーティグし、放置して付着させた。細胞は脂肪形成誘導培地中に3日間移し、そして脂肪形成維持培地に3日間変えた。ADSC−SP細胞は、脂肪滴が発生するまで、まる3日間脂肪形成培地中で培養した。脂肪滴が明らかになった最も早い時間は、7−10日であった。ADSC−SP細胞のおよそ50−60%が脂肪滴を発生した。細胞がより大きくなる時に、最も明確な形態学的変化は脂肪滴の出現であった。
【0089】
[0113]次に脂肪形成培地中で培養した細胞を、脂肪形成の変化に関して染色した。細胞は、PBSで2回洗浄し、4%パラホルムアルデヒド中で一晩4℃で固定した。プレートを70%エタノールで3回洗浄し、オイルレッドO染色色素と共に5分間室温でインキュベートした。プレートを70%エタノールで3回、およびdH2Oで2回洗浄して、余分の色素を除去した。細胞核を視覚化するため、5分間ヘマトキシリンを加えた。プレートをdH2Oで2回洗浄した。オイルレッドOによる染色は、オイル液滴を含む細胞を濃赤色で示した(図6A)。コントロールのディッシュは、オイルレッドの染色は認められなかった。
【0090】
[0114]軟骨形成
[0115]8万個の細胞を、軟骨形成誘導培地(Cambrex)中で製造元の規格に従って成長させた。手短には細胞は、マイクロマス(micromass)内に100μLの10%FBSを含むDMEM中にペレット化し、放置して、6cmディッシュの中央にプレーティングしたマイクロマス内にしっかり付着させた。細胞は、2日おきに交換した軟骨形成誘導培地で培養した。軟骨形成培地中にある間に、形態学的変化が5日という早期に始まった。細胞は拡大し、マイクロマスはずっとより高密度になった。7−8日でマイクロマスは目で見えるペレットに凝縮し、培養ディッシュから引き上げた。
【0091】
[0116]この時点で細胞をアルシアンブルー試薬で染色して、プロテオグリコシル化を検出した。細胞は、PBSで2回洗浄し、4%パラホルムアルデヒド中で一晩4℃で固定した。細胞は0.1N HCl中の1%(w/v)アルシアンブルーと共にインキュベートした。プレートを室温で1時間インキュベートした。プレートを0.1N HClで3回洗浄し、余分の色素を除去した。マイクロマス全体が濃青色に染色され、周辺の細胞もまた、それらの細胞質が青色に染色された(図6B)。コントロールのディッシュは、ほとんどかた全く染色されなかった。
【0092】
[0117]骨形成
[0118]5万個の細胞を、骨形成の誘導培地 (Cambrex)中で製造元の規格に従って成長させた。手短には細胞を、6cmディッシュ内で10%FBSを含むDMEM中にプレーティグし、放置して付着させた。細胞は、2日おきに交換した骨形成誘導培地で培養した。骨形成の形態学的変化を、培養の10−14日後に示し始めた。骨形形成の進行と同時に、脂肪SP細胞は大きくそして立方状になった。
【0093】
[0119]培養の21日後、骨形成細胞をフォンコッサ試薬で染色し、早期骨形成を示す石灰化沈着を同定した。細胞は、PBSで2回洗浄し、4%パラホルムアルデヒド中に一晩4℃で固定した。プレートはdH2Oで2回洗浄した。5%硝酸銀(w/v)を加え、プレートをUV光に45−60分間暴露させた。プレートをdH2Oで、すべての硝酸銀が除去されるまで洗浄した。プレートを2%チオ硫酸ナトリウムで5分間対比染色した。細胞の90%近くがフォンコッサで染色された(図6C)。
【0094】
[0120]神経形成
[0121]5万個の細胞を、1mM βメルカプトエタノールを補充した20%FBSを含むDMEM中で、計3日間成長させた。培地は毎日交換した。神経形成の形態学的兆候は、培養後2日という早期に認められた。ニューロン様の樹状突起が発生し始め、細胞の神経細胞体が、ニューロン特異的な形であるpyrimadalの形態を取り始めた。培養の3日後、細胞をネスチンで染色した。細胞はPBSで2回洗浄し、4%パラホルムアルデヒド中で一晩4℃で固定した。プレートをPBSブロッキングバッファー(1×PBS+10%FBS)中に希釈したFcブロック(BD Pharmingen)で30分間ブロックした。細胞は、PBS−T洗浄バッファー(1×PBS+0.1%トリトンX−100)中で3回洗浄し、さらにPBS−T中で30分間インキュベートした。マウス抗ネスチン(IgG1)(Chemicon, Temecula, CA)を、1×PBS−T+2%FBS中に最終希釈1:200として希釈し、一定回転速度で1時間インキュベートした。プレートをPBS−T中で2回洗浄した。PBS−T+2%FBS中に1:200希釈した抗マウス免疫グロブリンPE(BD Pharmingen)を、視覚化のため30分間インキュベートした。分化したADSC−SP細胞のおよそ70%がネスチンを発現した(図7)。
【0095】
[0122]心形成
[0123]5万個の細胞を、最終濃度9mMの5−アゼシチジン(Sigma)を補充した10%FBSを含むDMEM中で成長させた。細胞は、心形成誘導培地中で3日間培養した後、10%FBSを含むDMEMにスイッチし、心マーカーのトロポニンについて染色した。細胞はPBSで2回洗浄し、4%パラホルムアルデヒド中で一晩4℃で固定した。プレートを、10%FBSを含む1×PBS中に希釈したFcブロック(BD Pharmingen)で15分間ブロックした。細胞はPBS−T洗浄バッファー(1×PBS+0.1%トリトンX−100)中で2回洗浄し、さらにPBS−T中で30分間インキュベートした。マウス抗トロポニン1(IgG2a)(Chemicon)を、1×PBS−T+2%FBS中に最終希釈1:200として希釈し、一定回転速度で1時間インキュベートした。プレートをPBS−Tで2回洗浄した。PBS−T+2%FBS中に1:200希釈した抗マウスIgPE(BD Pharmingen)を、視覚化のため30分間インキュベートした。
【0096】
実施例4
ヒトADSC−SP細胞の単離
[0124]ヒト男性性腺からの脂肪のパッチを、1×PBS+0.01M EDTAを含有する6cm培養ディッシュに置き、一度洗浄し、1×PBS+0.01M EDTAを含む10cmディッシュに移した。この組織を微細な小片に刻み、等量の2mg/mLコラゲナーゼIを用いて1時間37℃で消化した。消化後、脂肪の懸濁液をDMEM−10(DMEM+10%FBS+1%ペニシリン/アンピリシン)中で洗浄した。消化されなかった脂肪組織を除去し、細胞ペレットを5mLのDMEM−10中に懸濁させた。次に脂肪細胞懸濁液を、100μmフィルターメッシュ、続いて70μmメッシュに通し、大きな粒子および凝集塊を除去した。細胞をカウントし、1mL当たり1×106細胞数の濃度に調整した。
【0097】
[0125]SPの分析のため、ヒト脂肪細胞を10%FBSを含むDEME中に1×106細胞数/mLの濃度で懸濁した。細胞は、最終濃度5μg/mLとしたヘキスト33342(Sigma)と共にインキュベートした。細胞は37℃の水浴中で計90分間、20分毎に緩やかに撹拌した。インキュベーション後、細胞を遠心してペレット化し、フローソーティングまで氷上に保持した。ヘキスト排除の阻害を実証するため、細胞を、同じインキュベーション時間の間、ヘキスト染色に加えて最終濃度25μg/mLとしたベラパミル(Sigma)と共にインキュベートした。
【0098】
[0126]ソーティングはCytopeia InFlux Cell Sorter (Seattle, WA)にて行った。ヘキスト染色した細胞は、355nm 20mW UVレーザー(Lightwave Electronics, Mountain View, CA)で励起させ、ヘキストブルーおよびレッドの発光を560nmダイクロイックミラーで分離し、各々460/50および670/40のバンドパスフィルターを用いて集めた。
【0099】
[0127]ヘキスト33342排除の保存された現象が、ヒト脂肪組織において観察された。ヒトADSC−SP細胞の頻度は2.5%±0.5%(平均±標準偏差、n=3)であった。ヒト脂肪細胞懸濁液は均質であった;スキャッタープロットのほとんどのイベントは同じ領域に認められ、この細胞をゲートしてヘキスト染色レベルを検討した(R1)。ヘキスト染色の低下したレベルにより同定されるADSC−SP細胞は、ヘキストブルー対ヘキストレッドのプロットにおいて同定された(図8)。脂肪細胞は、R1中にゲートされた細胞のわずか2.72%に過ぎない少数の集団、すなわちSP集団としてのSP細胞を伴う、1つの主要なタイプから成る相対的に均質な集団である。ベラパミル(最終濃度25μg/mL)を加えてヘキスト排除を阻害し、SPの現象を確認した。マウスにおける以前の結果と一致して、SPはベラパミルの添加により阻害された(図9)。ベラパミルを添加しなかった細胞の染色は、SP細胞を元に戻させている。
【0100】
[0128]ヒト脂肪由来幹細胞SP細胞を、共通の幹細胞抗原であるCD9、CD18、CD49d、CD56およびCD90について染色した。高いパーセンテージの細胞(61.1%±5%)がCD90を発現した。より少ないADSC−SP細胞(23.20%±7%)がCD18に関して染色された。他のマーカー、すなわちCD9、CD49dおよびCD56は、ADSC−SP細胞上には存在していなかった(図10)。
【0101】
実施例5
マウスにおけるADSC−SP細胞を用いての創傷治癒の誘導
[0129]NOD/Scidマウス(1群当たり3頭)の背中におよそ10cmの切開を加え、創傷は開放したまま残した。傷害後およそ1分で、実施例4に開示したように単離した50,000個のヒトADSC−SP細胞を、1群のマウスの傷害部位に注射した。第2群のマウスには細胞移植を行わなかった(コントロール群)。傷害後2週間で、傷害部位の組織切片を採取して、創傷治癒および組織再生の程度を評価した。図11は、コントロールマウス(AおよびD)、ならびにADSC−SP細胞を移植したマウス(B、C、EおよびF)における、第1日(A−C)および第14日(D−E)の傷害部位の肉眼での評価を示す。第14日(D)のコントロール動物に見られる瘢痕は、ADSC−SP細胞を移植したマウス(EおよびF)においては、より不明瞭だった。
【0102】
[0130]図12は、コントロールマウスおよびADSC−SP細胞で処置したマウス双方からの傷害部位の組織切片を示す。図12Aは、傷害のないNOD/Scidマウスからの正常な真皮を示す。傷害後14日のコントロールマウスからの組織切片(図12B)は、傷害に誘発された皮膚構造の破損および瘢痕組織の形成を実証した。ADSC−SP細胞を移植したマウスからの組織切片(図12C)は、瘢痕組織のエビデンスのない正常な皮膚構造の修復による創傷治癒を実証した。
【0103】
[0131]別に指摘していなければ、当該明細書および請求項において使用した成分、特性の量を表すすべての数、例えば分子量、反応条件、などは、すべての場合において“約”という用語により修飾されていると理解されるものとする。したがって反論を示していなければ、下記の明細書および添付の請求項に説明した数値パラメータは、本発明により得られる、求められた所望の特性に依存して変化してよい近似値である。少なくとも、当該請求項の範囲に均等の学説の適用を限定する試みとしてではなく、各数値パラメータは、報告された特定の数字の数を考慮に入れて、そして通常の概数化技術に当てはめることにより、少なくとも解釈されるべきである。本発明の広範な範囲を説明した数値の範囲およびパラメータは近似値であるにもかかわらず、特定の例において説明した数値の値は、可能な限り正確に報告している。しかしながらいかなる数値の値も、それらの個々の検査測定に見出される標準偏差に必然的に起因するある種のエラーを本質的に含有する。
【0104】
[0132]本発明を記載する文脈において(特に下記の請求項に文脈において)使用する”a”および”an”および”the”および類似の指示対象は、本明細書において別に指摘していなければ、または文脈により明確に反論していなければ、単数および複数の双方をカバーすると解釈されるものとする。本明細書における値の範囲の詳細な表示は、その範囲内に該当する別々の各値を個々に言及することを省略して示す方法として提供することを単に意図するものである。本明細書において別に指摘していなければ、個々の各値は、それが個々に本明細書に列挙されたかのように、当該明細書内に組み込まれる。本明細書に記載したすべての方法は、本明細書において別に指摘していなければ、または文脈により別に明確に反論していなければ、あらゆる適切な順序で行うことができる。本明細書において提供した例、または例示的言語(例えば“例えば”)のいずれかおよびすべての使用は、本発明をより良く説明することを単に意図しており、別に主張していなければ、本発明の範囲に限定を設けるものではない。当該明細書における言語は、何も主張していないのではなく、本発明の実践に必須の要素を示していると解釈すべきである。
【0105】
[0133]本明細書において開示した本発明の代替えの要素または態様の分類は、限定として解釈されないものとする。各群のメンバーは、個々に、またはその群の他のメンバーもしくは本明細書に見出される他の要素とのあらゆる組み合わせで、言及および主張してよい。ある群の1つまたはそれより多くのメンバーは、好都合および/または特許資格という理由から、ある群に含まれてもよいし、または削除されてもよいことは予想される。何らかのそのような包含または削除が起こる場合、当該明細書は、添付の請求項に使用したすべてのマカーシュ群の書き記された記載を満たすように修飾されたものとしてその群を含有する、と本明細書においてみなされる。
【0106】
[0134]この発明の好ましい態様は、本発明を遂行するために本発明者の知る最善の方式を含んで、本明細書に記載している。もちろんそれらの好ましい態様のバリエーションは、前述の記載を読むことで当業者には明らかになるだろう。本発明者は、当業者がそのようなバリエーションを適当なものとして使用することを期待し、また本発明者らは本発明に対して、本明細書に特定して記載した以外にも実践されることを意図する。したがってこの発明は、本明細書に添付した当該請求項において列挙した主題事項のすべての修飾内容および均等物を、適用可能な法律により認可されたものとして含む。さらに、本明細書において別に指摘していなければ、または文脈により別に明確に反論していなければ、上に記載した要素のすべての可能なバリエーションにおける同要素のあらゆる組み合わせを、本発明により包括的に含む。
【0107】
[0135]さらにまた、この明細書を通して特許および印刷された公開文献を多数参照した。上に引用した参考文献および印刷された公開文献の各々を、本明細書において個別にそれらの全内容において参照として援用する。
【0108】
[0136]まとめとして、本明細書に開示した本発明の態様は、本発明の原理を説明するものであると理解されるものとする。使用してよいその他の修飾は、本発明の範囲内である。このように限定ではなく例というやり方で、本発明の代替えの形を本明細書における教示に従って利用してよい。したがって本発明は、示しそして記載した通りに正確であることに限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】[0029] 図1は、本発明の教示に従って新たに単離した脂肪組織からのネズミ脂肪由来幹細胞(ADSC)サイド・ポピュレーション(SP)細胞のフローサイトメトリーによる同定を示す。(A)組織の消化後の総脂肪細胞の前方散乱光および側方散乱光のプロフィール;(B)R1からゲートした脂肪細胞(ヘキストを排出する細胞はより薄くなり、サイド・ポピュレーションを形成する)のヘキストブルー対ヘキストレッドの発光;(C)ヘキストブルー対ヘキストレッドからのR3でゲートした細胞の、オリジナルのスキャッタープロットへのバックゲート。
【図2】[0030] 図2は、本発明の教示に従っての、阻害されたヘキスト33342排出を伴う、ベラパミル処置したネズミADSC−SP細胞のフローサイトメトリー分析を示す。
【図3】[0031] 図3は、本発明の教示に従っての、ネズミADSC−SP細胞の細胞周期の分析を示す。
【図4】[0032] 図4は、本発明の教示に従っての、ネズミADSC−SP細胞の細胞表面マーカーの特徴付けを示す。
【図5】[0033] 図5は、本発明の教示に従っての、培養の3日後(A)、1.5週後(B)および3週後(C)のネズミADSC−SP細胞の特徴を示す。
【図6】[0034] 図6は、本発明の教示に従っての、脂肪形成細胞、軟骨形成細胞、および骨形成細胞へのネズミADSC−SP細胞の形態学的分化を示す。
【図7】[0035] 図7は、本発明の教示に従っての、培養の2日後のネズミADSC−SP細胞の、神経形成の形態学的兆候を示す。
【図8】[0036] 図8は、本発明の教示に従っての、ヘキスト33342で染色した、新たに単離したヒト脂肪細胞のフローサイトメトリー分析を示す。
【図9】[0037] 図9は、本発明の教示に従っての、ヘキスト33342およびベラパミルで染色した、新たに単離したヒト脂肪細胞のフローサイトメトリー分析を示す。
【図10】[0038] 図10は、本発明の教示に従っての、ヒト脂肪SP細胞の細胞表面マーカーの特徴付けを示す。
【図11】[0039] 図11A−Fは、本発明の教示に従っての、傷害後1日(A−C)および14日(D−F)の、コントロールマウス(AおよびD)、およびヒトADSC−SP細胞を移植した2頭のマウス(B、C、E、およびF)における、ADSC−SPに誘発された皮膚の再生を示す。
【図12】[0040] 図12A−Cは、本発明の教示に従っての、傷害後2週間のADSC−SPに誘発された皮膚の再生を示す。正常な真皮(A)、幹細胞を注射していないコントロールマウス(B)、およびヒトADSC−SP細胞を傷害部位に移植したマウス(C)。
【技術分野】
【0001】
関連出願に対する相互参照
[0001]本出願は、米国特許法律(37 CFR §119(e))の下に、2004年12月30日に提出された米国仮特許出願第60/641,034号に対する優先権を主張する。
【0002】
発明の技術分野
[0002]本発明は、組織再生、特に皮膚の再生を促進するための、脂肪由来幹細胞(adipose-derived stem cells)および脂肪由来幹細胞サイド・ポピュレーション(side population)細胞を含む組成物を提供する。加えて本発明は、組織再生および創傷治癒を誘導するための方法を提供する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
[0003]幹細胞は組織、臓器、および/または臓器システムを再生息および修復することが示された。再生医療にとって特に興味深いのは、細胞に基づく治療のための成体または出生後の幹細胞の使用である。出生後の幹細胞の1つの特定のタイプは、脂肪組織内の結合組織中に見出される脂肪由来幹細胞である。脂肪由来幹細胞は、適当な分化環境に暴露された後、心形成、神経形成、骨形成、脂肪形成、および軟骨形成の細胞タイプに分化することができることにより、in vitro における多能性が示された。in vivoにおいて脂肪由来幹細胞は、頭蓋骨外傷領域周囲に新しい骨そしてほぼ完全な頭頂部の連続性を成功裏に形成することが実証された。
【0004】
[0004]間葉由来の脂肪組織は、容易に単離される支持的な間質を含有する。結果として脂肪組織は、幹細胞の貴重な原料を意味すると思われる。脂肪組織は中胚葉に由来し、2つの異なる細胞集団である成熟した脂肪細胞および間質の血管画分から成る。この画分は、その中に前駆脂肪細胞がある数種の細胞タイプを含有する。間質の血管画分細胞は、in vitro において複数の中胚葉系列への能力を有しているようであり、脂肪形成に加えて骨形成、軟骨形成、および筋形成の系列へと分化する。
【0005】
[0005]増加する数の研究が、脂肪組織から幹細胞を単離し、それらを他の細胞タイプに分化させることに成功している。まとめるとこれらの研究は、容易に単離することのできる成体幹細胞の豊富な、到達可能な、そして補充可能な原料を、脂肪組織が含有するというエビデンスを提供している。
【0006】
[0006]米国において年間800万人が、物理的外傷、血管の機能不全、または糖尿病によって起こる創傷を被っていると推定され、もしこれらの創傷が未治療のまま残されれば感染による死をきたし得る。時としてこれらの創傷は決して完全には治癒せず、傷害または外傷部位は月から年という範囲の期間、開いたままであると思われる。これらの創傷は長期の医学的治療を必要とし、そのことは健康を損なっているという含意に加えて、患者および/または健康保険システムへの多大な費用を負荷し得る。
【0007】
[0007]外科医により加えられる切開、鈍的外力の結果としての外傷、または多様な疾患によって起こる組織の死は、全て類似の創傷治癒の過程を経る。創傷治癒は3つの別個の段階で起こる。炎症期は外傷部位の炎症を特徴とする。この段階は治癒にとって重大な意味を持ち、広範な細胞の遊走を伴う。創傷治癒の第2期は増殖期であり、上皮化、血管新生、肉芽組織の形成、およびコラーゲン沈着により特徴付けられる。新たな毛細血管形成を伴う血管新生は、栄養を送達し肉芽形成を維持するために使用される。創傷内への新たな毛細血管の形成なしには、必要な栄養が届けられず、創傷は慢性的に治癒されない創傷となってしまう。創傷治癒の第3期および最終ステージは、線維芽細胞がコラーゲンに分化する成熟期である。結合組織マトリクスおよびコラーゲンの沈着は収縮を経て、瘢痕組織に至る。瘢痕形成は創傷治癒に重大な意味を持つが、過剰な瘢痕形成は、さらなる美容上および/または病理学的な結果、例えばケロイドおよび/または低形成性瘢痕を有する可能性がある。
【0008】
[0008]瘢痕形成はすべての組織で起こり、瘢痕形成の有害作用として、皮膚におけるケロイド、低形成性瘢痕、火傷による拘縮、および強皮症;胃腸管における狭窄、癒着および慢性膵炎;肝臓における肝硬変および胆道閉鎖;肺における間質性線維症および気管支肺異形成症;心臓におけるリウマチ性疾患および心室瘤;目における水晶体後線維増殖症および糖尿病性網膜症;神経における伝達の損失;骨における強直症および変形性関節症、ならびに腎臓における糸球体腎炎を含む。最小の瘢痕形成で治癒する創傷の能力は、患者において、そして医学的または外科的実践において著明な効果を有し得る。
【発明の開示】
【0009】
[0009]それ故、細胞再生治療により創傷治癒を促進する方法および組成物の医学的必要性が存在する。
発明の概要
[0010]本発明は、組織再生、特に創傷治癒、瘢痕形成の低減、および皮膚の再生のための、脂肪由来幹細胞(ADSC)およびADSCサイド・ポピュレーション(ADSC−SP)細胞の方法および組成物を提供する。
【0010】
[0011]本発明の1つの態様において、単離された脂肪由来幹細胞(ADSC)を包含する、哺乳動物における組織再生を促進するための治療組成物を提供する。もう1つの態様においてADSCは、ADSCサイド・ポピュレーション(ADSC−SP)細胞を包含し、ここでADSC−SP細胞は、Lin−、Scar−1+、CD90+、CD34+/low、CD13+/low、CD117−およびCD18+/lowを含むがこれに限定されない細胞表面マーカーを包含する。
【0011】
[0012]本発明の態様において、治療組成物はさらに医薬的に受容可能な担体を包含する。
[0013]もう1つの態様において、治療組成物は組織再生有効量のADSCを包含し、ここで組織再生有効量のADSCは、1日当たり1治療部位当たりおよそ0.5からおよそ5.0×106細胞数である。
【0012】
[0014]本発明の治療組成物のなおもう1つの態様において、哺乳動物はヒトである。
[0015]本発明の1つの態様において、組織再生有効量のADSCを治療部位に投与することを包含する、それを必要とする患者における組織再生を促進するための方法を提供する。
【0013】
[0016]本発明の方法のもう1つの態様において、ADSCは、ADSCサイド・ポピュレーション(ADSC−SP)細胞を包含し、ここでADSC−SP細胞は、Lin−、Scar−1+、CD90+、CD34+/low、CD13+/low、CD117−およびCD18+/lowを含むがこれに限定されない細胞表面マーカーを包含する。
【0014】
[0017]本発明の方法のなおもう1つの態様において、本方法は、所望の医薬的に受容可能な担体と共にADSCを投与することを包含する。
[0018]本発明の方法のもう1つの態様において、本方法は組織再生有効量のADSCを投与することを包含し、ここで組織再生有効量のADSCは、1日当たり1治療部位当たりおよそ0.5からおよそ5.0×106細胞数である。
【0015】
[0019]本発明の方法のなおもう1つの態様において、ADSCは自家性または同系である。
[0020]本発明の方法のもう1つの態様において、組織再生は創傷部位での皮膚の再生であり、ここで創傷は、疾患、外傷、外科手術、火傷、および咬創から成る群より選択されるイベントにより起こる。
【0016】
[0021]本発明の方法の態様において、組織再生は、心筋の再生、神経組織の再生、または血管の再生を含むがこれに限定されない。
[0022]本発明の方法のなおもう1つの態様において、組織再生は創傷部位での瘢痕化を最小とする。
【0017】
[0023]本発明の方法の1つの態様において、投与ステップは、局所への適用、皮内注射、静脈内注射、および皮下注射を含むがこれに限定されない。
[0024]本発明の方法のもう1つの態様において、本方法はさらに、再生を必要とする組織と同じ組織タイプの細胞に、ADSCを分化させることを包含する。
【0018】
[0025]本発明の方法のなおもう1つの態様において、さらなるものとして生物学的に活性な物質を投与することを包含し、ここで生理活性物質は、増殖因子または免疫抑制薬である。もう1つの態様において生理活性物質は、全身投与または組織再生部位での局所投与を包含する経路により投与する。
【0019】
[0026]本発明の方法の態様において、本方法はさらに高圧酸素療法の施与を包含する。もう1つの態様において、本方法はさらに皮膚移植を包含する。
[0027]本発明の1つの態様において、Lin−、Scar−1+、CD90+、CD34+/low、CD13+/low、CD117−およびCD18+/lowを含むがこれに限定されない細胞表面マーカーを包含する、単離された哺乳類のADSC−SP細胞を包含する、脂肪由来幹細胞サイド・ポピュレーション(ADSC−SP)を提供する。もう1つの態様において、哺乳動物はヒトである。
【0020】
[0028]図面についての簡単な説明 本特許または出願ファイルは、カラーで作成した少なくとも1つの図面を含有する。カラーの図面(1枚または複数)を含むこの特許または特許出願のコピーは、要望および必要な料金の支払いの下にオフィスより提供する。
【0021】
発明の詳細な説明
[0041]本発明は、哺乳動物における組織再生、特に創傷治癒、瘢痕形成の低減、および皮膚の再生のための、個体からの脂肪由来幹細胞(ADSC)およびADSCサイド・ポピュレーション(ADSC−SP)細胞を提供する。
【0022】
[0042]本明細書において使用する場合“哺乳動物”という用語は、あらゆる哺乳動物を包括的に含む。好ましくは哺乳動物は、そのような治療または予防を必要とするものである。哺乳動物の例として、ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ、ネコ、イヌ、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、サル、等、より好ましくはヒトを含むがこれに限定されない。
【0023】
[0043]ヒト胚細胞からの細胞株を発生させることの道徳的および倫理的考慮に伴い、幹細胞の代替原料の探求が進められている。成体幹細胞の代替原料は、臍帯血;間葉系組織;皮膚;脳;骨髄;脂肪組織および羊水組織を含む、多くの組織タイプにおいて見出されてきた。
【0024】
[0044]組織全体からのほとんどの幹細胞調製物は、幹細胞および非幹細胞から成る細胞の混合物である。むしろ非幹細胞集団のほうがずっと多量である。幹細胞を単離する方法は、ますます広く普及してきており、幹細胞の精製された分画を提供している。ほとんどの単離法は、抗体、核の色素、または磁気ビーズを含む。
【0025】
[0045]成体幹細胞の莫大な供給のための可能な候補物質は、脂肪組織である。最近の研究は、脂肪組織から単離された幹細胞は分化して、多くの細胞タイプを生じさせることができることを示している。このことは、成体の多能性幹細胞が脂肪組織内に存在し、高度の可塑性を有することを指摘する。
【0026】
[0046]DNA結合色素であるヘキスト(Hoechst)33342を用いての機能性(functional)染色法は、幹細胞の豊富なマウス骨髄から“サイド・ポピュレーション”細胞と呼ばれる細胞の希少な集団を同定した。サイド・ポピュレーション(SP)細胞は、さらに他の組織タイプにおいても同定された。
【0027】
[0047]本発明者らは、6−8週齢マウスから新たに単離された総脂肪細胞の1.0−1.5%を占める、成体マウス脂肪組織中のSP細胞の存在を同定した。サイド・ポピュレーション細胞はex vivoにおいて未分化であり、静止状態であった。培養液中では、脂肪由来SP細胞は、白血病阻害因子(LIF)を提供するフィーダー細胞層上で緩やかな速度で増殖した。培養系において脂肪由来SP細胞はフィーダーに付着し、コロニーに成長し、そして未分化の状態のままであった。胚性幹細胞の未分化の状態での維持に重要な白血病阻害因子は、脂肪由来SP細胞に対してもまた同様に作用すると思われる。
【0028】
[0048]脂肪由来幹細胞サイド・ポピュレーション(ADSC−SP)は、脂肪組織内に見出される細胞集団であり、これらは多能性でありそして組織再生への適用における使用に適する。
【0029】
[0049]“脂肪由来幹細胞(adipose-derived stem cell)”という用語は出生後の哺乳動物中に見出される脂肪細胞の一集団をいい、これらは多能性であり、そして多様な細胞タイプに分化する潜在能力を有する。脂肪SP細胞、脂肪由来SP細胞、およびADSC−SP細胞はすべて、ADSCの同一の亜集団をいい、ヒトにおいて表現型Lin−、Scar−1+、CD90+、CD34+/low、CD13+/low、CD117−およびCD18+/lowを有する。ADSCの使用を開示するあらゆる態様は、ADSC−SPを用いて実施することができ、ADSC−SPを使用することを開示するあらゆる態様は、ADSCを用いて実施することができる。
【0030】
[0050]ADSC−SPのSP表現型はベラパミルにより阻害され、ヘキスト色素排除現象がATP結合カセット(ABC)トランスポーターによるものであることを示唆した。最近の研究は、1つのABCトランスポーターである乳癌耐性タンパク質1(Bcrp1)の遺伝子の発現が、骨髄、骨格筋、性腺組織、乳腺組織、肝臓、前立腺、および網膜に属する幹細胞に共通することを示した。まとめるとこれらの研究は、組織は、組織の修復および維持に寄与する組織自身の成体幹細胞の亜集団を含有することを実証している。またこのことは、成体幹細胞はおそらく発生の間、多能性の特徴を保持する一方で、すべての組織のタイプに遊走される共通の前駆細胞を共有すると思われることを示唆すると思われる。
【0031】
[0051]加えて本発明者らは、脂肪SP細胞が、骨形成、軟骨形成、神経形成、および脂肪形成の細胞に分化する能力を有することを実証した。脂肪由来幹細胞のバルクの単離は、複数の間葉系系列に分化することができる。脂肪由来SP細胞は、高度の可塑性を有する脂肪前駆体細胞であり、アポトーシス、細胞の損傷に応答して、または組織のホメオスタシスのために特定の系列にコミットするよう何らかのシグナルがそれらを刺激するまで、静止状態にあると思われる。
【0032】
[0052]これまでADSC−SP細胞の特徴付けおよび単離は困難であった。それ故本発明者らは、ADSC−SPを単離する方法を開発した。骨髄SP細胞について定義されたマーカーを使用して、骨髄由来および脂肪由来のSP細胞が共通の特徴を共有するかどうか決定した。脂肪SP細胞は系列陰性(Lin−)であることが発見された。系列の抗体カクテルは、様々な造血系列にコミットした前駆体細胞を同定する。系列は、ネズミ細胞に関してはCD3e、CD11c、CD45R/B220、Ly−76、Ly−6GおよびLy−6Cのマーカーの発現として、そしてヒト細胞に関してはCD2、CD3、CD14、CD16、CD19、CD24、CD56、CD66bおよびグリコフォリンAのマーカーの発現として定義される。脂肪幹細胞はマウスにおいて末梢血を再構構築することができ、脂肪幹細胞の高い可塑性を実証する。脂肪由来SP細胞はいかなる系列マーカーについても染色されなかったため、脂肪由来SP細胞は未分化の状態で存在する。
【0033】
[0053]加えて造血幹細胞(HSC)に共通の他の細胞表面マーカーについても検討した。脂肪SP細胞はCD34陽性であったが、発現は低かった。脂肪SP細胞の80%以上が、造血前駆体に関連する表現型Sca−1/Lin−を発現した。脂肪SP細胞は、CD90+、CD13+/low、およびCD117−であることが発見された。興味深いことにCD117は脂肪由来SP細胞上では発現されなかった。このマーカーはHSCに共通であり、脂肪由来SP細胞での不在は、臓器形成の間の何らかのタイプの発生の相違を示唆すると思われる。ネズミ脂肪由来SP細胞に関する全表現型は、Lin−、Sca−1+、CD90+、CD34+/low、CD13+/low、およびCD117−である。ヒト脂肪由来SP細胞に関する全表現型は、Lin−、Sca−1+、CD90+、CD34+/low、CD13+/low、CD117−およびCD18+/lowである。
【0034】
[0054]マウス脂肪組織から単離され、培養液中に選別された脂肪由来SP細胞は、未分化のままであり、静止状態にあり、in vitroにおいて高度の可塑性を保持し、そしてin vitroにおいて異なる細胞タイプに分化する能力を有する。脂肪由来SP細胞の表現型はHSCに類似しており、それ故脂肪由来SP細胞は、他の幹細胞 例えばHSCが関連すると思われる共通の前駆細胞に由来すると思われる。
【0035】
[0055]本発明の1つの態様において、ADSC−SP細胞は、哺乳動物から脂肪組織を得、脂肪組織から脂肪細胞の細胞懸濁液を作成し、ヘキスト33342色素で脂肪細胞を染色し、ヘキスト染色された脂肪細胞から、Lin−、Sca−1+、CD90+、CD34+/low、CD13+/low、CD117−およびCD18+/lowである細胞のサイド・ポピュレーションを単離することを包含する方法により、脂肪組織から単離する。
【0036】
[0056]脂肪由来幹細胞サイド・ポピュレーション細胞は、組織再生における使用に特に適する。脂肪由来幹細胞サイド・ポピュレーション細胞は、実施例3ならびに図6および7で実証されたように、脂肪形成、軟骨形成、骨形成、神経形成および心形成の系列を含むがこれに限定されない多様な系列の細胞に分化する能力を有する。
【0037】
[0057]特に本発明のADSC−SP細胞は、瘢痕組織を形成することなく組織再生および治癒を誘導するため、創傷の治療に適する。これらのADSC−SP細胞は、治療を受ける哺乳動物からそれらを採取することができ、そして多様な組織の傷害または欠損の組織再生のために使用することができるという点で、現行の治療を上回る改善を提示する。
【0038】
[0058]本発明の態様は、創傷部位での皮膚の組織再生のための組成物および方法を提供する。創傷は、組織の構造および/または完全性が損なわれる時、例えば皮膚が破断する、筋肉が断裂もしくは壊死する、骨が破砕する、または組織が火傷する時に発生する。創傷は、事故、外傷または医学的処置により、感染性疾患または根底にある疾患の状態により発生してもよい。創傷の位置、範囲および重症度に依存して、創傷を閉鎖創または開放創と分類することができる。
【0039】
[0059]本発明は、組織再生のためのADSCおよびADSC−SPを提供する。本発明の態様において、脂肪由来幹細胞は自家性である。非限定的例において、およそ0.5からおよそ5.0×106個の脂肪由来幹細胞/10mmの1日当たり1治療部位当たりの治療部位を、治療部位に近接して皮内注射する。脂肪由来幹細胞は、血管形成を増大させ、傷害部位への細胞の遊走を増大させ、瘢痕化の量を低下させ、そして組織再生を増大させることにより、創傷治癒を手助けする。脂肪由来幹細胞はまた、創傷の治癒時間を短縮させ、それにより感染の可能性を低下させる。美容的上ならびに医学的利点、例えば開放創または閉鎖創の治療に起因する瘢痕化の低減が挙げられる。加えて本発明の態様は、慢性疾患、例えば糖尿病の患者の創傷治癒を手助けする。
【0040】
[0060]本発明の脂肪由来幹細胞は、急性創傷および慢性創傷双方の治療のための組織再生を提供する。急性創傷は迅速に、すなわち30日(または糖尿病では60日)以内に治癒する創傷である。本発明を用いて治療することのできる急性創傷の非限定的例として、擦過傷、裂傷、挫傷、挫滅、切創、裂創、噴出性創傷、穿刺創を含む。慢性創傷は、糖尿病性の皮膚のびらん、褥瘡、外科的創傷、脊髄傷害による創傷、火傷、化学物質誘発性創傷、および血管障害による創傷を含む。
【0041】
[0061]本発明の利点は、脂肪由来幹細胞を用いての創傷治癒が、瘢痕形成よりむしろ組織様の再生による創傷治癒に至ることである。
[0062]本発明の態様において脂肪由来幹細胞は、組織再生に使用する前に分化させる。非限定的例において、心筋梗塞後の心組織の組織再生のため、治療部位への細胞の移植前に脂肪由来幹細胞を心形成の前駆細胞または心筋細胞に分化させることは可能である。
【0042】
[0063]本発明の方法はまた、ADSC細胞と共に生理活性物質の併用を伴うことができる。“併用”により、上に記載したような治療組成物の投与前に、同時に、例えば同一の製剤中にまたは別個の製剤中に生理活性物質を組み合わせて、または投与後に投与することを意味する。
【0043】
[0064]本明細書において使用する場合、“生理活性物質”は、生物学的に活性なまたは関連するあらゆる有機、無機、または生きている物質をいう。例えば生理活性物質は、タンパク質、ポリペプチド、多糖(例えばへパリン)、オリゴ糖、単糖、もしくは二糖、有機化合物、有機金属化合物、または無機化合物であることができる。生理活性物質は、生きている細胞もしくは老化細胞、細菌、ウイルス、またはそれらの一部を含むことができる。生理活性物質は、生物学的に活性な分子、例えばホルモン、増殖因子、増殖因子産生ウイルス、増殖因子阻害薬、増殖因子受容体、抗炎症薬、代謝拮抗薬、インテグリン遮断薬、または完全なもしくは部分的な機能的センス(insense)もしくはアンチセンスの遺伝子を含むことができる。生理活性物質はまた、生物学的に関連するまたは活性な材料を運ぶ、人造の粒子または材料を含むことができる。一例は、薬剤を含むコア部分とコア部分のコーティング剤を包含するナノ粒子である。
【0044】
[0065]生理活性物質はまた、薬剤、例えば生物学的有機体において治療効果を有し得る化学的または生物学的化合物を含むことができる。非限定的例として、増殖因子、拒絶応答抑制薬、抗炎症薬、抗感染薬(例えば抗生物質および抗ウイルス薬)、鎮痛薬および鎮痛薬の組み合わせ、抗喘息薬、抗痙攣薬、抗うつ薬、抗糖尿病薬、抗悪性腫瘍薬、抗癌薬、統合失調治療薬、抗酸化薬、免疫抑制薬、ビタミンおよびミネラル、ならびに心血管疾患のために使用される薬剤 例えば抗再狭窄化合物および抗血液凝固化合物、を含むがこれに限定されない。
【0045】
[0066]生理活性物質はまた、代謝され、破壊され(例えば分子成分の開裂)、またはそれ以外に体内で処理および修飾された後に、関連する生物学的活性を呈する前駆体材料を含むことができる。生理活性物質は、さもなければ相対的に生物学的に不活性である、またはさもなければ治療する医学的状態に関する特定の結果に有効ではないとそのような修飾の前には考えられるかもしれない、そのような前駆体材料を含むことができる。
【0046】
[0067]前述の例のいずれかの組み合わせ、ブレンド、またはその他の調製物を作製することができ、そしてまだなお本明細書において意図した意味の範囲内の生理活性物質と考えることができる。生理活性物質へと方向付けた本発明の側面は、前述の例のいずれかまたはすべてを含むことができる。
【0047】
[0068]本発明の1つの態様において、生理活性物質は増殖因子である。増殖因子は、移植されたADSCの増殖、分化および機能性を促進するあらゆる物質である。適切な増殖因子の非限定的例として、白血病阻害因子(LIF)、上皮増殖因子(EGF)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、トランスフォーミング増殖因子−ベータ(TGF−β)、インスリン様増殖因子(IGF)、および血管内皮細胞増殖因子(VEGF)、ヒト成長ホルモン、血小板誘発増殖因子(PDGF)、インターロイキン、サイトカイン、またはそれらの組み合わせを含む。フランシスコ、これらは私が即興で提供した因子である。ADSCと共に使用してよいあらゆるその他の増殖因子を加えていただきたい。
【0048】
[0069]本発明の1つの態様において、生理活性物質は免疫抑制薬である。免疫抑制薬は、所望の免疫応答、例えば移植された細胞、組織、または臓器の拒絶の惹起を予防、遅延する、またはその強度を低下させるあらゆる物質である。
【0049】
[0070]本明細書において使用する場合、“免疫抑制”は、本明細書において定義する場合 “免疫応答”が検出できないような、(例えば本明細書において定義する場合 “免疫抑制薬”の投与による)免疫応答の予防をいう。本明細書において使用する場合、免疫応答の“予防”は、免疫応答が検出できないことを意味する。免疫応答(例えば移植片拒絶または抗体産生)は、当該技術分野における周知の方法、および本明細書において定義する方法に従って検出する。
【0050】
[0071]本発明に従っての“免疫抑制”はまた本明細書において定義する場合、免疫抑制薬を投与されなかった移植レシピエント、または“免疫的に隠されている(immunologically blinded)”、もしくは“免疫的に特権を有する(immunoprivileged)”のではない材料を用いて移植された移植レシピエントのいずれか一人と比較した場合の、免疫応答の惹起の遅延を意味する。免疫応答の惹起の遅延は、短期的遅延、例えば1時間−10日、すなわち1時間、2、5または10日であることができる。免疫応答の惹起の遅延はまた、長期的遅延、例えば10日−10年(すなわち30日、60日、90日、180日、1、2、5または10年)であることもできる。
【0051】
[0072]本発明に従っての“免疫抑制”はまた、免疫応答の強度の低下を意味する。本発明に従って、免疫応答の強度を、免疫抑制薬を投与されなかった移植レシピエント、または自家性でない材料を用いて移植された移植レシピエントのいずれか一人の免疫応答の強度に比して、5−100%、好ましくは25−100%、そして最も好ましくは75−100%低いように低下させることができる。免疫応答の強度は、移植された材料が拒絶されるタイムポイントを決定することにより測定することができる。例えば移植後第1日での移植された材料の拒絶を包含する免疫応答は、移植後第30日での移植された材料の拒絶を包含する免疫応答に比して、より強い強度である。免疫応答の強度はまた、移植された材料に結合することのできる特定の抗体の量を定量することにより測定することができ、その場合抗体産生レベルは、免疫応答の強度に直接相関する。あるいは免疫応答の強度は、移植された材料に結合することのできる特定の抗体が検出されるタイムポイントを決定することにより、測定することができる。
【0052】
[0073]様々な方法および物質を、免疫抑制のために利用することができる。例えばリンパ球の増殖および活性は一般に、例えばFK−506、またはシクロスポリン、またはその他の免疫抑制薬のような物質を用いて阻害することができる。もう1つの可能な方法は、抗体、例えば抗GAD65モノクローナル抗体、または移植された細胞上の表面抗原を覆い、そのために細胞をホストの免疫系に対して事実上不可視とする別の化合物を投与することである。
【0053】
[0074]“免疫抑制薬”は、ホストにおける外来細胞、特に移植された細胞に対する免疫応答の発生を予防、遅延する、またはその強度を低減するあらゆる物質である。特に好ましいのは、免疫系により非自己と同定された細胞に対する細胞性免疫応答を抑制する免疫抑制薬である。免疫抑制薬の例は、シクロスポリン、シクロホスファミド、プレドニゾン、デキサメタゾン、メトキサレート、アザチオプリン、マイコフェノレート、タリドミド、FK−506、全身性ステロイド、ならびに広範囲の抗体、受容体アゴニスト、受容体アンタゴニスト、および当業者に公知であるようなその他の物質を含むが、これに限定されない。
【0054】
[0075]本発明のなおもう1つの態様において、脂肪由来幹細胞は、慢性創傷のための高圧酸素療法と共に施与する。
[0076]本発明の態様において、脂肪由来幹細胞は、移植片の処置においておよび組織再生による手助けとなるよう、皮膚移植片と共に投与する。
【0055】
[0077]脂肪由来幹細胞または分化した細胞をレシピエントに移植してよく、その場合細胞は増殖および分化して新しい細胞および組織を形成し、それによりその組織によって正常に提供される生理学的プロセスを提供する。本明細書において使用する場合“移植された”という用語は、細胞を単独で、または支持マトリックス中に包埋された細胞を移植することをいう。本明細書において使用する場合、“組織”という用語は、特定の機能の遂行においてユニットとなる類似の特定化された細胞の集合をいう。組織は、硬組織および軟組織の双方を含むすべてのタイプの生物学的組織を包括的に含むことを意図する。軟組織は、体の他の構造および臓器を結合、支持、または包囲する組織をいう。軟組織は、筋肉、腱(筋肉を骨に結合する線維の帯)、線維組織、脂肪、血管、神経、および滑膜組織(間接周囲の組織)を含む。硬組織は、結合組織(例えば骨様組織または骨のような固い形)、ならびに他の筋肉または骨格の組織を含む。
【0056】
[0078]本発明のもう1つの態様において、ADSCは医薬的に受容可能な担体または賦形剤と共に投与する。本明細書に記載する医薬的に受容可能な賦形剤、例えばビヒクル、アジュバント、担体または希釈剤は、当業者に周知であり、誰もが容易に入手できる。医薬的に受容可能な担体または賦形剤は、治療組成物に対して化学的に不活性であるもの、そして使用条件下で有害な副作用または毒性を有していないものであることが好ましい。
【0057】
[0079]賦形剤または担体の選択は、一部は特定の治療組成物により、ならびに組成物を投与するために使用する特定の方法により決定されることになる。したがって本発明の医薬組成物の広範囲の多様な適切な製剤が存在する。本明細書に記載する製剤は単なる例示に過ぎず、決して限定するものではない。
【0058】
[0080]しばしば生理学的に受容可能な担体は、pH緩衝化水溶液である。生理学的に受容可能な担体の例として、生理食塩水、溶媒、分散培地、細胞培養液、水溶性バッファー 例えばリン酸、クエン酸、およびその他の有機酸のバッファー;アスコルビン酸を含む抗酸化剤;低分子量(約10残基より少ない)ポリペプチド;タンパク質、例えば血清アルブミン、ゼラチン、もしくは免疫グロブリン;親水性ポリマー 例えばポリビニルピロリドン;アミノ酸 例えばグリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニンもしくはリジン;単糖、二糖、およびその他の炭水化物(グルコース、マンノース、もしくはデキストリンを含む);キレート剤 例えばEDTA;糖アルコール 例えばマンニトールもしくはソルビトール;塩を形成する対イオン 例えばナトリウム;ならびに/または非イオン性界面活性剤 例えばTWEEN(登録商標)、ポリエチレングリコール(PEG)、およびPLURONICS(登録商標)を含むが、これに限定されない。
【0059】
[0081]本発明はさらに、本発明の治療法を実施する上で有用な治療組成物を提供する。主題の治療組成物は、混合物において、医薬的に受容可能な賦形剤(担体)または培地、ならびに本発明のADSC(ADSCの由来する細胞および組織を含む)を、単独でまたは1つまたはそれより多くの生理活性物質と組み合わせて、そして細胞または組織の喪失または欠損を経験している患者への多様な手段による投与に有効な強度で含む。
【0060】
[0082]本発明のADSC(ADSCの由来する細胞の系列にコミットしていない集団、細胞の系列にコミットした集団、または組織を含む)を、医薬的に受容可能な担体または培地と共に包含する、またはそれに基づく方法において使用するための治療組成物を提供することは、本発明のまださらなる態様である。また特に考慮するのは、本発明のADSCおよび/またはADSCの由来する細胞もしくは組織に作用するまたは修飾する生理活性物質を、医薬的に受容可能な担体または培地と共に包含する治療組成物である。
【0061】
[0083]細胞の、または組織に基づいた 治療組成物の調製は、当該技術分野において十分に理解されている。そのような組成物は医薬的に受容可能な培地中に製剤化してよい。細胞は溶液中に存在しても、マトリックス中に包埋してもよい。活性成分としての生理活性物質(例えば増殖因子)を含む治療組成物の調製は、当該技術分野において十分に理解されている。活性な治療成分はしばしば、医薬的に受容可能で活性成分に適合する賦形剤または培地と共に混合する。加えて所望の場合には組成物は、少量の助剤、例えば活性成分の有効性を高める湿潤剤または乳化剤、pH緩衝剤を含有することができる。
【0062】
[0084]生理活性物質は、中性化した医薬的に受容可能な塩の形として、治療組成物中に製剤化することができる。医薬的に受容可能な塩は、酸付加塩(ポリペプチドまたは抗体分子のフリーのアミノ基を用いて形成される)を含み、この酸付加塩は、例えば塩酸もしくはリン酸のような無機酸、または酢酸、シュウ酸、酒石酸、マンデル酸、などのような有機酸を用いて形成される。フリーのカルボキシル基から形成される塩はまた、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウム、または水酸化第二鉄のような無機塩基から、そしてイソプロピルアミン、トリメチルアミン、2−エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカイン、などのような有機塩基から誘導することができる。
【0063】
[0085]本発明の治療組成物は、製剤の投与量に適合する様式で、そして治療有効量で投与する。投与する量は、例えば治療する被験者および衰弱度、治療組成物を適応する被験者の臓器、細胞系および免疫系の潜在能力、ならびに細胞療法または組織療法の性質などに依存する。投与するために必要な治療組成物の正確な量は、医師の判断に依存し、各個体に特有である。しかしながら本発明の治療組成物の適切な投与量は、1日当たり1治療部位当たり1日の細胞当たり1治療部位当たり約0.05−100.0×106個の脂肪由来幹細胞/10mmの治療部位、好ましくは1日当たり1治療部位当たり1日の細胞当たり1治療部位当たり約0.10−50.0×106個の脂肪由来幹細胞/10mmの治療部位、そしてより好ましくは1日当たり1治療部位当たり約0.5−5.0×106個の脂肪由来幹細胞/10mmの治療部位の範囲としてよく、そして投与経路および治療部位のサイズに依存する。初回投与およびそれに続く投与の適切な投与計画もまた一定ではないが、初回投与およびそれに続いて1またはそれより多くの時間または日の間隔を置いて、引き続きの注射またはその他の投与により繰り返し投与する用量を含むことができる。
【0064】
[0086]当業者は、特定の目的のための細胞の適当な濃度を容易に決定してよい。一例としての容量は、1日当たり1治療部位当たり約0.05−100.0×106個の細胞の範囲である。非限定的例において、1日当たり1治療部位当たりおよそ0.5×106個の脂肪由来幹細胞/10mmの治療部位を、治療部位に近接してまたは治療部位内に皮内注射する。
【0065】
[0087]本発明のもう1つの態様においてADSCは、組織再生が必要である時、創傷または傷害の発生後のあらゆる時間に、哺乳動物の治療部位に投与する。治療組成物に関する詳細な投与計画は、医師の判断、および創傷または傷害のタイプおよび範囲に依存し、各個体に特有である。
【0066】
[0088]本発明のADSCまたは分化した細胞は、注射により被験者の標的部位内に、好ましくは送達器具、例えばチューブ、例えばカテーテルを経由して投与することができる。1つの態様において、チューブは付加的に針、例えばシリンジを含有し、それを通して細胞を所望の位置で被験者の体内に導入することができる。被験者に細胞を投与する特定の非限定的例はまた、皮下注射、筋肉内注射、または静脈内注射を含んでよい。投与が静脈内である場合、細胞の注射可能な液体懸濁液は、持続点滴により、またはボーラスとして調製し投与することができる。
【0067】
[0089]細胞はまた、種々の形で送達器具、例えばシリンジ中に挿入してよい。例えば細胞は、そのような送達器具中に含有される溶液中に懸濁させることができる。本明細書において使用する場合、“溶液”という用語は、本発明の細胞が生存可能なまま保持される医薬的に受容可能な担体または希釈剤を含む。そのような担体および希釈剤の使用は当該技術分野において周知である。溶液は好ましくは無菌であり、そして容易にシリンジへ注入できる程度に流動的である。好ましくは溶液は製造および保存の条件下で安定であり、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなどの使用により、微生物、例えば細菌および真菌の混入作用に対して保護されている。本発明の溶液は、本明細書に記載するようなADSCまたは分化した細胞を、医薬的に受容可能な担体または希釈剤、そして必要な場合には上に列挙したその他の成分中に組み込み、続いてフィルター滅菌することにより調製することができる。
【0068】
[0090]細胞は全身に(例えば静脈内により)または局所的に(例えば心エコーのガイドの下に心筋欠損部内に直接、もしくは外科手術中の可視化された下で直接適用することにより)投与してよい。そのような注射に関して、細胞は注射可能な液体懸濁液調製物中に、または液体の形で注射可能であり、そして損傷組織部位では半固体になる生体適合性の培地中に、存在してよい。従来の心臓内へのシリンジまたはコントロール可能な内視鏡下の送達器具は、針の内腔または口径が、ずり応力が送達されている細胞に損傷を与えることのない十分な直径(例えば30ゲージまたはそれより大きい)のものである限り、使用することができる。
【0069】
[0091]細胞は、意図した組織部位にそれらを移植し、機能的欠損領域を再構築または再生することを可能にするあらゆる様式で投与してよい。
[0092]その中にADSCを組み込むまたは包埋することのできる支持マトリクスは、生体適合性、すなわちレシピエント適合性のあるマトリクス、そしてレシピエントに有害でない生成物に分解するマトリクスを含む。これらのマトリクスは、in vivoにおいてADSCおよび分化した細胞のための支持および保護を提供する。
【0070】
[0093]天然および/または合成の生分解性マトリクスは、そのようなマトリクスの例である。天然の生分解性マトリクスは、例えば哺乳動物由来の血漿のクロット、コラーゲン、フィブロネクチン、およびラミニンのマトリクスを含む。細胞移植マトリクスのための適切な合成材料は、遊走および免疫合併症を防止するために生体適合性でなければならず、そして広範な細胞の成長および分化した細胞の機能を支持することが可能であるべきだろう。合成材料はまた、完全に天然の組織に置き換わることを考慮して、納得できるものでなければならない。このマトリクスは、多様な形に成形可能であるべきであり、そして移植での崩壊を防ぐための十分な強度を有しているべきであろう。最近の研究は、Vacanti, et al. J. Ped. Surg. 23:3-9 (1988); Cima, et al. Biotechnol. Bioeng. 38:145 (1991); Vacanti, et al. Plast. Reconstr. Surg. 88:753-9 (1991)により記載されているように、ポリグリコール酸で作成された生分解性ポリエステルポリマーがこれらの基準をすべて満たすことを示している。その他の合成の生分解性支持マトリクスとして、合成ポリマー、例えばポリ無水物、ポリオルトエステル、およびポリ乳酸を含む。合成ポリマーのさらなる例、およびこれらのマトリクス中に細胞を組み込むまたは包埋する方法もまた、当該技術領域において公知である。例えば米国特許第4,298,002号および 5,308,701号を参照のこと。
【0071】
[0094]細胞のポリマーへの付着は、化合物、例えば基底膜成分、寒天、アガロース、ゼラチン、アラビアゴム、コラーゲンI、II、III、IVおよびV型、フィブロネクチン、ラミニン、グルコサミノグリカン、それらの混合物、および細胞培養の業者に公知のその他の材料を用いて、ポリマーをコーティングすることにより強化してよい。マトリクスに使用するためのすべてのポリマーは、細胞のその後の成長および増殖の適度の支持を提供するために必要な物理的および生化学的パラメータを満たさなければならない。
【0072】
[0095]生分解性ポリマーマトリクスの利点の1つは、血管形成化合物およびその他の生理活性化合物を、支持マトリクス中に直接組み込むことができ、その結果支持マトリクスがin vivoで分解する時、それらが緩やかに放出されることである。細胞−ポリマー構造が血管新生化されて構造が分解する時、胎盤幹細胞はそれらの固有の特徴にしたがって分化すると思われる。栄養分、増殖因子、分化または脱分化(すなわち分化した細胞に、分化という特徴を失わせ、増殖、およびより一般的な機能というような特徴を獲得させること)の誘導因子、分泌産生物、免疫調節物質、炎症の阻害薬、退行因子(regression factor)、リンパ管のネットワークまたは神経線維の成長を高めまたは可能にする生理活性物質、ヒアルロン酸、および当業者に公知であって、有効量を構成するものに関する添付文書と共に、供給元、例えばCollaborative Research, Sigma Chemical Co.より、市場にて入手可能である薬剤、血管増殖因子 例えば血管内皮細胞増殖因子(VEGF)、上皮増殖因子(EGF)、およびへパリン結合性上皮増殖因子様増殖因子(HB−EGF)を含む因子を、マトリクス内に組み込み、またはマトリクスと結合して提供することができる。同様に、ペプチド、例えば接着性ペプチドRGD(Arg−Gly−Asp)を含有するポリマーを、マトリクスの形成に使用するために合成することができる(例えば米国特許第4,988,621号、4,792,525号、5,965,997号、4,879,237号および4,789,734号を参照のこと)。
【0073】
[0096]もう1つの例において、胎盤幹細胞または分化した細胞を成長させることができる基質を形成するように重合したゲルマトリクス(例えばUpjohn CompanyからのGelfoam)中にて、細胞を移植してもよい。多様なカプセル封入技術が開発されてきた(例えばLacy et al., Science 254:1782-84 (1991); Sullivan et al., Science 252:718-712 (1991); WO 91/10470; WO 91/10425;米国特許第5,837,234号;米国特許第5,011,472号;米国特許第 4,892,538号)。損傷した組織および/または臓器に直接物理的にアクセスすることを伴う開放的な外科的処置の間、未分化の胎盤幹細胞または分化した胎盤幹細胞の送達調製物の所望の形はすべて、利用可能な選択肢である。これらの細胞は、所望の治療効果が達成されるまで、間隔をおいて繰り返し移植することができる。
【0074】
[0097]例示としての態様において、有効量のADSCを包含する治療組成物を使用して、血管疾患の被験者を治療してよい。本明細書において使用する場合、“血管疾患”は、ヒトの血管系の疾患をいう。例として、末梢動脈疾患、腹部大動脈瘤、頸動脈疾患、静脈疾患を含む。ADSCを使用して、被験者における組織の再建または瘢痕組織の交換のための方法において使用してよい血管内皮細胞を生成することができる。血管内皮細胞はまた、血管の損傷を修復するために使用してもよい。
【実施例】
【0075】
実施例1
脂肪由来幹細胞の産生および培養
[0098]この実施例は、脂肪由来幹細胞の単離を示す。以下の実施例はマウス組織からの脂肪由来幹細胞の単離について記載したが、同時に当業者がこれらの技術を使用して他の哺乳類の組織から脂肪由来幹細胞を単離することは可能だろう。
【0076】
[0099]手短には、胃および腸を覆う内臓脂肪を取り出し、無菌のハサミで細かく刻んだ。次に細かく切り分けた脂肪を、1mM EDTAを含有するカルシウム/マグネシウム不含ダルベッコリン酸緩衝化生理食塩水(DPBS(−)/EDTA)で10回洗浄し、各洗浄ステップ後に500×gで5分間遠心し、浮遊している脂肪細胞を除去した。次に脂肪組織をDPBS(−)/EDTA中で10分間室温でインキュベートし、その後脂肪組織を外科用ハサミまたはBD Medimachin (BD Biosciences, San Jose, CA)を用いて機械的にばらばらにした。その後ばらばらにした脂肪組織をI型コラゲナーゼ(0.075%, Sigma)を用いて15分間37℃で酵素的に消化した。その後脂肪組織をトリプシン/EDTAを用いて15分間37℃でさらに消化した。消化は、10%FBSを含有するDMEM培養液を等量加えることにより停止させた。次に消化した脂肪組織を、各洗浄毎に350×gで5分間遠心することによりDMEM/10%FBSで洗浄した。その後ペレットをDMEM/10%FBS中に再度懸濁し、70μmナイロンメッシュを通して濾過した。その後脂肪由来幹細胞を、DMEM/10%FBS/1×非必須アミノ酸/1×抗生物質/抗真菌薬(基本培地)中に再度懸濁した。
【0077】
[0100]その後上で単離した脂肪由来幹細胞は基本培地中に保持し、隔日に養分を与え、細胞がおよそ80%培養密度に達した時に継代した。各継代では、細胞が2日毎に培養密度に達するように細胞を1:2に分割した。細胞を培養して4回継代した後、分化用に使用し、患者に移植するかまたは後日の移植用に冷凍保存した。
【0078】
実施例2
脂肪由来幹細胞サイド・ポピュレーション細胞の同定
[0101]脂肪由来幹細胞サイド・ポピュレーション細胞(ADSC−SP)の分析のため、脂肪細胞は10%FBSを含むDMEM中に1×106細胞数/mLの濃度で懸濁させた。細胞は、最終濃度2.5μg/mLとしたヘキスト33342(Sigma)と共にインキュベートした。細胞は、計90分間37℃の水浴中で20分毎に緩やかに撹拌した。インキュベーション後、細胞を遠心によりペレット化し、フローソーティグまで氷上に保持した。ヘキスト排出の阻害を実証するため、細胞は同じインキュベーション時間の間、ヘキスト染色に加えて最終濃度25μg/mLとしたベラパミル(Sigma)と共にインキュベーションした。
【0079】
[0102]ソーティングは、Cytopeia InFlux Cell Sorter (Seattle, WA)にて行った。ヘキスト染色した細胞を、355nm 20mW UVレーザー(Lightwave Electronics, Mountain View, CA)で励起し、ヘキストブルーおよびレッドの発光を560nmダイクロイックミラーで分離し、各々460/50および670/40のバンドパスフィルターを用いて集めた。フルオレセイニソチオシアネート(FITC)およびフィコエリトリン(PE)は、488nm 200mWレーザー(Coherent, Santa Clara, CA)で励起し、各々発光を530/40および580/30のバンドパスフィルターで集めた。アロフィコシアニン(APC)は、638nm 25mW レーザー(Coherent)で励起し、発光を670/40バンドパスフィルターで集めた。
【0080】
[0103]抗体の染色のため、細胞を遠心して集め、500mLのヘキスト染色バッファー中に濃縮し、氷上に保持した。細胞は抗マウスのSca−1−PE、CD90−APC、CD117−APC、CD34−FITC、および系列決定用の抗体(BD Biosciences Pharmingen, San Diego, CA)で染色した。系列のキットは、すべてAPCに複合した抗マウスのCD3e、CD11c、CD45R/B220、Ly−76、Ly−6GおよびLy−6Cを含有する。細胞は30分間染色し、冷却ヘキスト染色バッファー中で一度洗浄し、フロー分析まで氷上に保持した。
【0081】
[0104]他の組織におけるサイド・ポピュレーション細胞を同定するために使用される染色条件を、酵素的に消化した脂肪組織の単細胞懸濁液に適用した。ヘキスト33342排出の保存された現象なまた、脂肪組織においても観察された。脂肪のサイド・ポピュレーション細胞の頻度は、1.5%±0.5%(平均±標準偏差、n=4)であった。サイド・ポピュレーション細胞を同定するため、すべてのスキャッターイベントをスキャッタープロットの最初のゲート(gate)に含めた。ヘキスト染色により同定した脂肪由来幹細胞SP細胞を、スキャッタープロット上にバックゲート(backgate)した。消化した脂肪組織は、スキャッタープロット上で3つの主要な細胞集団を示す。脂肪由来幹細胞SP細胞は、側方散乱(SSC)の低値および前方散乱(FSC)の低値から中程度の値に関する領域に属するように見える(図1)。脂肪由来幹細胞SP細胞は下部のSSCを有しており、それらが主要な細胞集団より小さいことを示す。
【0082】
[0105]多くの組織におけるSP表現型は、ABCトランスポータースーパーファミリーの膜結合タンパク質トランスポーターによって起こる。ABCトランスポーターの活性が、ADSC−SP細胞におけるSP表現型を作るのかどうかを決定するため、ベラパミルを、最終濃度 25μg/mLとして細胞懸濁液に加えた(図2)。ベラパミルの添加は、ヘキスト色素排出を減少させ、SP表現型がABCトランスポーターによるものであることを示唆した。
【0083】
[0106]脂肪由来幹細胞SP細胞を、多くのタイプのサイド・ポピュレーション細胞に共通する表面マーカーについて染色した。すべてのマーカーは抗体に直接複合し、フローサイトメトリーで試験した。ネガティブコントロールは、未染色の脂肪細胞とした。ポジティブ染色は、ネガティブコントロールの95%以上の蛍光強度と定義した。30%−80%の範囲の強度にあたる強度の強くない染色を、低レベルから中レベルの染色と考えた。
【0084】
[0107] 成体幹細胞は厳しい制御コントロール下で、細胞のライフサイクル中の主に静止状態にある。新たに選別された脂肪サイド・ポピュレーション細胞を、ヨウ化プロピジウムで染色して、それらの細胞周期の状態を評価した。データは、サイド・ポピュレーションの細胞および主要な集団の細胞の双方が、主として静止状態にあり、0.5%未満の細胞が増殖期にあることを示した。このことはまた、ヘキスト33342でより強い強度で染色された他の細胞についても言えた(図3)。
【0085】
[0108]脂肪由来幹細胞SP細胞は、ヘキスト33342色素を排出し、そして幹細胞が濃縮されている細胞である。しかしながらすべてのADSC−SP細胞が、幹細胞マーカーを発現してはいない。ADSC−SP細胞集団は、いかなる系列にコミットしていない細胞を含有する。このことは、系列特異的な抗体のいかなる染色も不在であることにより証明される。幹細胞抗原1(Sca−1)はADSC−SP細胞の81+/−5%で発現される。同様にCD90は、ADSC−SP細胞の80%で発現された。多変量のプロットは、ADSC−SP細胞の75+/−7%がSca−1およびCD90の双方を有することを示す(図4)。脂肪由来幹細胞SP細胞は、CD34に関しては低レベルで染色され、そして多くの幹細胞の発生に関して重要であるCD13、CD117は、ADSC−SP細胞上では発現されていなかった(図4)。
【0086】
実施例3
ADSC−SP細胞の分化
[0109]ソーティング後、細胞は10%FBSを補充したDMEMで一度洗浄し、マウス胚性線維芽STO細胞のフィーダー層上で培養した。STOフィーダー細胞は、0.1%(重量/体積)ゼラチンでコーティングし、10μg/mlの濃度のマイトマイシンC(Sigma)で2.5時間37℃で処理し、PBSで3回洗浄したディッシュ上にプレーティングした。選別したADSC−SP細胞をマイトマイシンC処理したSTOフィーダー細胞上にプレーティングし、培養液を毎日交換した(図5)。
【0087】
[0110]ADSC−SP細胞の機能性の能力を検討するため、これらの細胞を異なる細胞タイプに分化させた。骨形成、脂肪形成、および神経形成に関しては、4回継代の50,000個の培養ADSC−SP細胞をプレーティングした。軟骨形成に関しては、4回継代の80,000個の培養ADSC−SP細胞をプレーティングした。
【0088】
[0111]脂肪形成
[0112]5万個の細胞を、脂肪形成の誘導培地および維持培地(Cambrex, Walkersville, MD)中で製造元の規格に従って成長させた。手短には細胞は、6cmディッシュ内で10%FBSを含むDMEM中にプレーティグし、放置して付着させた。細胞は脂肪形成誘導培地中に3日間移し、そして脂肪形成維持培地に3日間変えた。ADSC−SP細胞は、脂肪滴が発生するまで、まる3日間脂肪形成培地中で培養した。脂肪滴が明らかになった最も早い時間は、7−10日であった。ADSC−SP細胞のおよそ50−60%が脂肪滴を発生した。細胞がより大きくなる時に、最も明確な形態学的変化は脂肪滴の出現であった。
【0089】
[0113]次に脂肪形成培地中で培養した細胞を、脂肪形成の変化に関して染色した。細胞は、PBSで2回洗浄し、4%パラホルムアルデヒド中で一晩4℃で固定した。プレートを70%エタノールで3回洗浄し、オイルレッドO染色色素と共に5分間室温でインキュベートした。プレートを70%エタノールで3回、およびdH2Oで2回洗浄して、余分の色素を除去した。細胞核を視覚化するため、5分間ヘマトキシリンを加えた。プレートをdH2Oで2回洗浄した。オイルレッドOによる染色は、オイル液滴を含む細胞を濃赤色で示した(図6A)。コントロールのディッシュは、オイルレッドの染色は認められなかった。
【0090】
[0114]軟骨形成
[0115]8万個の細胞を、軟骨形成誘導培地(Cambrex)中で製造元の規格に従って成長させた。手短には細胞は、マイクロマス(micromass)内に100μLの10%FBSを含むDMEM中にペレット化し、放置して、6cmディッシュの中央にプレーティングしたマイクロマス内にしっかり付着させた。細胞は、2日おきに交換した軟骨形成誘導培地で培養した。軟骨形成培地中にある間に、形態学的変化が5日という早期に始まった。細胞は拡大し、マイクロマスはずっとより高密度になった。7−8日でマイクロマスは目で見えるペレットに凝縮し、培養ディッシュから引き上げた。
【0091】
[0116]この時点で細胞をアルシアンブルー試薬で染色して、プロテオグリコシル化を検出した。細胞は、PBSで2回洗浄し、4%パラホルムアルデヒド中で一晩4℃で固定した。細胞は0.1N HCl中の1%(w/v)アルシアンブルーと共にインキュベートした。プレートを室温で1時間インキュベートした。プレートを0.1N HClで3回洗浄し、余分の色素を除去した。マイクロマス全体が濃青色に染色され、周辺の細胞もまた、それらの細胞質が青色に染色された(図6B)。コントロールのディッシュは、ほとんどかた全く染色されなかった。
【0092】
[0117]骨形成
[0118]5万個の細胞を、骨形成の誘導培地 (Cambrex)中で製造元の規格に従って成長させた。手短には細胞を、6cmディッシュ内で10%FBSを含むDMEM中にプレーティグし、放置して付着させた。細胞は、2日おきに交換した骨形成誘導培地で培養した。骨形成の形態学的変化を、培養の10−14日後に示し始めた。骨形形成の進行と同時に、脂肪SP細胞は大きくそして立方状になった。
【0093】
[0119]培養の21日後、骨形成細胞をフォンコッサ試薬で染色し、早期骨形成を示す石灰化沈着を同定した。細胞は、PBSで2回洗浄し、4%パラホルムアルデヒド中に一晩4℃で固定した。プレートはdH2Oで2回洗浄した。5%硝酸銀(w/v)を加え、プレートをUV光に45−60分間暴露させた。プレートをdH2Oで、すべての硝酸銀が除去されるまで洗浄した。プレートを2%チオ硫酸ナトリウムで5分間対比染色した。細胞の90%近くがフォンコッサで染色された(図6C)。
【0094】
[0120]神経形成
[0121]5万個の細胞を、1mM βメルカプトエタノールを補充した20%FBSを含むDMEM中で、計3日間成長させた。培地は毎日交換した。神経形成の形態学的兆候は、培養後2日という早期に認められた。ニューロン様の樹状突起が発生し始め、細胞の神経細胞体が、ニューロン特異的な形であるpyrimadalの形態を取り始めた。培養の3日後、細胞をネスチンで染色した。細胞はPBSで2回洗浄し、4%パラホルムアルデヒド中で一晩4℃で固定した。プレートをPBSブロッキングバッファー(1×PBS+10%FBS)中に希釈したFcブロック(BD Pharmingen)で30分間ブロックした。細胞は、PBS−T洗浄バッファー(1×PBS+0.1%トリトンX−100)中で3回洗浄し、さらにPBS−T中で30分間インキュベートした。マウス抗ネスチン(IgG1)(Chemicon, Temecula, CA)を、1×PBS−T+2%FBS中に最終希釈1:200として希釈し、一定回転速度で1時間インキュベートした。プレートをPBS−T中で2回洗浄した。PBS−T+2%FBS中に1:200希釈した抗マウス免疫グロブリンPE(BD Pharmingen)を、視覚化のため30分間インキュベートした。分化したADSC−SP細胞のおよそ70%がネスチンを発現した(図7)。
【0095】
[0122]心形成
[0123]5万個の細胞を、最終濃度9mMの5−アゼシチジン(Sigma)を補充した10%FBSを含むDMEM中で成長させた。細胞は、心形成誘導培地中で3日間培養した後、10%FBSを含むDMEMにスイッチし、心マーカーのトロポニンについて染色した。細胞はPBSで2回洗浄し、4%パラホルムアルデヒド中で一晩4℃で固定した。プレートを、10%FBSを含む1×PBS中に希釈したFcブロック(BD Pharmingen)で15分間ブロックした。細胞はPBS−T洗浄バッファー(1×PBS+0.1%トリトンX−100)中で2回洗浄し、さらにPBS−T中で30分間インキュベートした。マウス抗トロポニン1(IgG2a)(Chemicon)を、1×PBS−T+2%FBS中に最終希釈1:200として希釈し、一定回転速度で1時間インキュベートした。プレートをPBS−Tで2回洗浄した。PBS−T+2%FBS中に1:200希釈した抗マウスIgPE(BD Pharmingen)を、視覚化のため30分間インキュベートした。
【0096】
実施例4
ヒトADSC−SP細胞の単離
[0124]ヒト男性性腺からの脂肪のパッチを、1×PBS+0.01M EDTAを含有する6cm培養ディッシュに置き、一度洗浄し、1×PBS+0.01M EDTAを含む10cmディッシュに移した。この組織を微細な小片に刻み、等量の2mg/mLコラゲナーゼIを用いて1時間37℃で消化した。消化後、脂肪の懸濁液をDMEM−10(DMEM+10%FBS+1%ペニシリン/アンピリシン)中で洗浄した。消化されなかった脂肪組織を除去し、細胞ペレットを5mLのDMEM−10中に懸濁させた。次に脂肪細胞懸濁液を、100μmフィルターメッシュ、続いて70μmメッシュに通し、大きな粒子および凝集塊を除去した。細胞をカウントし、1mL当たり1×106細胞数の濃度に調整した。
【0097】
[0125]SPの分析のため、ヒト脂肪細胞を10%FBSを含むDEME中に1×106細胞数/mLの濃度で懸濁した。細胞は、最終濃度5μg/mLとしたヘキスト33342(Sigma)と共にインキュベートした。細胞は37℃の水浴中で計90分間、20分毎に緩やかに撹拌した。インキュベーション後、細胞を遠心してペレット化し、フローソーティングまで氷上に保持した。ヘキスト排除の阻害を実証するため、細胞を、同じインキュベーション時間の間、ヘキスト染色に加えて最終濃度25μg/mLとしたベラパミル(Sigma)と共にインキュベートした。
【0098】
[0126]ソーティングはCytopeia InFlux Cell Sorter (Seattle, WA)にて行った。ヘキスト染色した細胞は、355nm 20mW UVレーザー(Lightwave Electronics, Mountain View, CA)で励起させ、ヘキストブルーおよびレッドの発光を560nmダイクロイックミラーで分離し、各々460/50および670/40のバンドパスフィルターを用いて集めた。
【0099】
[0127]ヘキスト33342排除の保存された現象が、ヒト脂肪組織において観察された。ヒトADSC−SP細胞の頻度は2.5%±0.5%(平均±標準偏差、n=3)であった。ヒト脂肪細胞懸濁液は均質であった;スキャッタープロットのほとんどのイベントは同じ領域に認められ、この細胞をゲートしてヘキスト染色レベルを検討した(R1)。ヘキスト染色の低下したレベルにより同定されるADSC−SP細胞は、ヘキストブルー対ヘキストレッドのプロットにおいて同定された(図8)。脂肪細胞は、R1中にゲートされた細胞のわずか2.72%に過ぎない少数の集団、すなわちSP集団としてのSP細胞を伴う、1つの主要なタイプから成る相対的に均質な集団である。ベラパミル(最終濃度25μg/mL)を加えてヘキスト排除を阻害し、SPの現象を確認した。マウスにおける以前の結果と一致して、SPはベラパミルの添加により阻害された(図9)。ベラパミルを添加しなかった細胞の染色は、SP細胞を元に戻させている。
【0100】
[0128]ヒト脂肪由来幹細胞SP細胞を、共通の幹細胞抗原であるCD9、CD18、CD49d、CD56およびCD90について染色した。高いパーセンテージの細胞(61.1%±5%)がCD90を発現した。より少ないADSC−SP細胞(23.20%±7%)がCD18に関して染色された。他のマーカー、すなわちCD9、CD49dおよびCD56は、ADSC−SP細胞上には存在していなかった(図10)。
【0101】
実施例5
マウスにおけるADSC−SP細胞を用いての創傷治癒の誘導
[0129]NOD/Scidマウス(1群当たり3頭)の背中におよそ10cmの切開を加え、創傷は開放したまま残した。傷害後およそ1分で、実施例4に開示したように単離した50,000個のヒトADSC−SP細胞を、1群のマウスの傷害部位に注射した。第2群のマウスには細胞移植を行わなかった(コントロール群)。傷害後2週間で、傷害部位の組織切片を採取して、創傷治癒および組織再生の程度を評価した。図11は、コントロールマウス(AおよびD)、ならびにADSC−SP細胞を移植したマウス(B、C、EおよびF)における、第1日(A−C)および第14日(D−E)の傷害部位の肉眼での評価を示す。第14日(D)のコントロール動物に見られる瘢痕は、ADSC−SP細胞を移植したマウス(EおよびF)においては、より不明瞭だった。
【0102】
[0130]図12は、コントロールマウスおよびADSC−SP細胞で処置したマウス双方からの傷害部位の組織切片を示す。図12Aは、傷害のないNOD/Scidマウスからの正常な真皮を示す。傷害後14日のコントロールマウスからの組織切片(図12B)は、傷害に誘発された皮膚構造の破損および瘢痕組織の形成を実証した。ADSC−SP細胞を移植したマウスからの組織切片(図12C)は、瘢痕組織のエビデンスのない正常な皮膚構造の修復による創傷治癒を実証した。
【0103】
[0131]別に指摘していなければ、当該明細書および請求項において使用した成分、特性の量を表すすべての数、例えば分子量、反応条件、などは、すべての場合において“約”という用語により修飾されていると理解されるものとする。したがって反論を示していなければ、下記の明細書および添付の請求項に説明した数値パラメータは、本発明により得られる、求められた所望の特性に依存して変化してよい近似値である。少なくとも、当該請求項の範囲に均等の学説の適用を限定する試みとしてではなく、各数値パラメータは、報告された特定の数字の数を考慮に入れて、そして通常の概数化技術に当てはめることにより、少なくとも解釈されるべきである。本発明の広範な範囲を説明した数値の範囲およびパラメータは近似値であるにもかかわらず、特定の例において説明した数値の値は、可能な限り正確に報告している。しかしながらいかなる数値の値も、それらの個々の検査測定に見出される標準偏差に必然的に起因するある種のエラーを本質的に含有する。
【0104】
[0132]本発明を記載する文脈において(特に下記の請求項に文脈において)使用する”a”および”an”および”the”および類似の指示対象は、本明細書において別に指摘していなければ、または文脈により明確に反論していなければ、単数および複数の双方をカバーすると解釈されるものとする。本明細書における値の範囲の詳細な表示は、その範囲内に該当する別々の各値を個々に言及することを省略して示す方法として提供することを単に意図するものである。本明細書において別に指摘していなければ、個々の各値は、それが個々に本明細書に列挙されたかのように、当該明細書内に組み込まれる。本明細書に記載したすべての方法は、本明細書において別に指摘していなければ、または文脈により別に明確に反論していなければ、あらゆる適切な順序で行うことができる。本明細書において提供した例、または例示的言語(例えば“例えば”)のいずれかおよびすべての使用は、本発明をより良く説明することを単に意図しており、別に主張していなければ、本発明の範囲に限定を設けるものではない。当該明細書における言語は、何も主張していないのではなく、本発明の実践に必須の要素を示していると解釈すべきである。
【0105】
[0133]本明細書において開示した本発明の代替えの要素または態様の分類は、限定として解釈されないものとする。各群のメンバーは、個々に、またはその群の他のメンバーもしくは本明細書に見出される他の要素とのあらゆる組み合わせで、言及および主張してよい。ある群の1つまたはそれより多くのメンバーは、好都合および/または特許資格という理由から、ある群に含まれてもよいし、または削除されてもよいことは予想される。何らかのそのような包含または削除が起こる場合、当該明細書は、添付の請求項に使用したすべてのマカーシュ群の書き記された記載を満たすように修飾されたものとしてその群を含有する、と本明細書においてみなされる。
【0106】
[0134]この発明の好ましい態様は、本発明を遂行するために本発明者の知る最善の方式を含んで、本明細書に記載している。もちろんそれらの好ましい態様のバリエーションは、前述の記載を読むことで当業者には明らかになるだろう。本発明者は、当業者がそのようなバリエーションを適当なものとして使用することを期待し、また本発明者らは本発明に対して、本明細書に特定して記載した以外にも実践されることを意図する。したがってこの発明は、本明細書に添付した当該請求項において列挙した主題事項のすべての修飾内容および均等物を、適用可能な法律により認可されたものとして含む。さらに、本明細書において別に指摘していなければ、または文脈により別に明確に反論していなければ、上に記載した要素のすべての可能なバリエーションにおける同要素のあらゆる組み合わせを、本発明により包括的に含む。
【0107】
[0135]さらにまた、この明細書を通して特許および印刷された公開文献を多数参照した。上に引用した参考文献および印刷された公開文献の各々を、本明細書において個別にそれらの全内容において参照として援用する。
【0108】
[0136]まとめとして、本明細書に開示した本発明の態様は、本発明の原理を説明するものであると理解されるものとする。使用してよいその他の修飾は、本発明の範囲内である。このように限定ではなく例というやり方で、本発明の代替えの形を本明細書における教示に従って利用してよい。したがって本発明は、示しそして記載した通りに正確であることに限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】[0029] 図1は、本発明の教示に従って新たに単離した脂肪組織からのネズミ脂肪由来幹細胞(ADSC)サイド・ポピュレーション(SP)細胞のフローサイトメトリーによる同定を示す。(A)組織の消化後の総脂肪細胞の前方散乱光および側方散乱光のプロフィール;(B)R1からゲートした脂肪細胞(ヘキストを排出する細胞はより薄くなり、サイド・ポピュレーションを形成する)のヘキストブルー対ヘキストレッドの発光;(C)ヘキストブルー対ヘキストレッドからのR3でゲートした細胞の、オリジナルのスキャッタープロットへのバックゲート。
【図2】[0030] 図2は、本発明の教示に従っての、阻害されたヘキスト33342排出を伴う、ベラパミル処置したネズミADSC−SP細胞のフローサイトメトリー分析を示す。
【図3】[0031] 図3は、本発明の教示に従っての、ネズミADSC−SP細胞の細胞周期の分析を示す。
【図4】[0032] 図4は、本発明の教示に従っての、ネズミADSC−SP細胞の細胞表面マーカーの特徴付けを示す。
【図5】[0033] 図5は、本発明の教示に従っての、培養の3日後(A)、1.5週後(B)および3週後(C)のネズミADSC−SP細胞の特徴を示す。
【図6】[0034] 図6は、本発明の教示に従っての、脂肪形成細胞、軟骨形成細胞、および骨形成細胞へのネズミADSC−SP細胞の形態学的分化を示す。
【図7】[0035] 図7は、本発明の教示に従っての、培養の2日後のネズミADSC−SP細胞の、神経形成の形態学的兆候を示す。
【図8】[0036] 図8は、本発明の教示に従っての、ヘキスト33342で染色した、新たに単離したヒト脂肪細胞のフローサイトメトリー分析を示す。
【図9】[0037] 図9は、本発明の教示に従っての、ヘキスト33342およびベラパミルで染色した、新たに単離したヒト脂肪細胞のフローサイトメトリー分析を示す。
【図10】[0038] 図10は、本発明の教示に従っての、ヒト脂肪SP細胞の細胞表面マーカーの特徴付けを示す。
【図11】[0039] 図11A−Fは、本発明の教示に従っての、傷害後1日(A−C)および14日(D−F)の、コントロールマウス(AおよびD)、およびヒトADSC−SP細胞を移植した2頭のマウス(B、C、E、およびF)における、ADSC−SPに誘発された皮膚の再生を示す。
【図12】[0040] 図12A−Cは、本発明の教示に従っての、傷害後2週間のADSC−SPに誘発された皮膚の再生を示す。正常な真皮(A)、幹細胞を注射していないコントロールマウス(B)、およびヒトADSC−SP細胞を傷害部位に移植したマウス(C)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単離された脂肪由来幹細胞(ADSC)を包含する、哺乳動物における組織再生を促進するための治療組成物。
【請求項2】
前記ADSCが、ADSCサイド・ポピュレーション(ADSC−SP)細胞を包含し、ここで前記ADSC−SP細胞が、細胞表面マーカーであるLin−、Scar−1+、CD90+、CD34+/low、CD13+/low、CD117−およびCD18+/lowを包含する、請求項1に記載の治療組成物。
【請求項3】
医薬的に受容可能な担体をさらに包含する、請求項1に記載の治療組成物。
【請求項4】
前記治療組成物が、組織再生有効量の前記ADSCを包含し、そしてここで前記組織再生有効量の前記ADSCが、1日当たり1治療部位当たりおよそ0.5−5.0×106細胞数/治療部位10mmである、請求項1に記載の治療組成物。
【請求項5】
前記哺乳動物がヒトである、請求項1に記載の治療組成物。
【請求項6】
組織再生有効量のADSCを治療部位に投与することを包含する、組織再生を促進することを必要とする患者において、組織再生を促進する方法。
【請求項7】
前記ADSCが、ADSCサイド・ポピュレーション(ADSC−SP)細胞を包含し、ここで前記ADSC−SP細胞が、細胞表面マーカーであるLin−、Scar−1+、CD90+、CD34+/low、CD13+/low、CD117−およびCD18+/lowを包含する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記ADSC組成物が、ADSCおよび所望により医薬的に受容可能な担体を包含する、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記組織再生有効量の前記ADSCが、1日当たり1治療部位当たりおよそ0.5×106細胞数/治療部位10mmである、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記ADSCが自家性である、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
前記ADSCが同系である、請求項6に記載の方法。
【請求項12】
前記組織再生が創傷部位の皮膚の再生である、請求項6に記載の方法。
【請求項13】
前記組織再生が心筋の再生である、請求項6に記載の方法。
【請求項14】
前記組織再生が神経組織の再生である、請求項6に記載の方法。
【請求項15】
前記組織再生が血管の再生である、請求項6に記載の方法。
【請求項16】
前記組織再生が創傷部位での瘢痕化を最小とする、請求項6に記載の方法。
【請求項17】
前記投与ステップが、局所への適用、皮内注射、静脈内注射、および皮下注射から成る群より選択される少なくとも1つの方法を包含する、請求項6に記載の方法。
【請求項18】
前記ADSCを、再生を必要とする組織と同じ組織タイプの細胞に分化させることをさらに包含する、請求項6に記載の方法。
【請求項19】
生物学的に活性な物質を投与することをさらに包含する、請求項6に記載の方法。
【請求項20】
前記生理活性物質が増殖因子を包含する、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記生理活性物質が、移植片拒絶を予防する免疫抑制薬を包含する、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記生理活性物質を、全身投与または組織再生部位での局所投与を包含する経路により投与する、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
高圧酸素療法の施与をさらに包含する、請求項6に記載の方法。
【請求項24】
皮膚移植をさらに包含する、請求項6に記載の方法。
【請求項25】
単離された哺乳類の脂肪由来幹細胞サイド・ポピュレーション(ADSC−SP)を包含するADSC−SPであって、細胞表面マーカーであるLin−、Scar−1+、CD90+、CD34+/low、CD13+/low、CD117−およびCD18+/lowを包含する、ADSC−SP。
【請求項26】
前記哺乳動物がヒトである、請求項25に記載のADSC−SP。
【請求項27】
組織再生の促進のための医薬剤の製造における組織再生有効量のADSCの使用。
【請求項28】
前記ADSCが、ADSCサイド・ポピュレーション(ADSC−SP)細胞を包含し、ここでADSC−SP細胞が、細胞表面マーカーであるLin−、Scar−1+、CD90+、CD34+/low、CD13+/low、CD117−およびCD18+/lowを包含する、請求項28に記載の使用。
【請求項29】
前記ADSC組成物が、ADSCおよび所望により医薬的に受容可能な担体を包含する、請求項28に記載の使用。
【請求項30】
前記組織再生有効量の前記ADSCが、1日当たり1治療部位当たりおよそ0.5×106細胞数/治療部位10mmである、請求項28に記載の使用。
【請求項31】
前記ADSCが自家性である、請求項28に記載の使用。
【請求項32】
前記ADSCが同系である、請求項28に記載の使用。
【請求項33】
前記組織再生が創傷部位での皮膚の再生である、請求項28に記載の使用。
【請求項34】
前記組織再生が心筋の再生である、請求項28に記載の使用。
【請求項35】
前記組織再生が神経組織の再生である、請求項28に記載の使用。
【請求項36】
前記組織再生が血管の再生である、請求項28に記載の使用。
【請求項37】
前記組織再生が創傷部位での瘢痕化を最小とする、請求項28に記載の使用。
【請求項38】
前記医薬剤を、局所への適用、皮内注射、静脈内注射、および皮下注射から成る群より選択される少なくとも1つの方法により投与する、請求項28に記載の使用。
【請求項39】
前記ADSCを、再生を必要とする組織と同じ組織タイプの細胞に分化させることをさらに包含する、請求項28に記載の使用。
【請求項40】
生物学的に活性な物質を投与することをさらに包含する、請求項28に記載の使用。
【請求項41】
前記生理活性物質が増殖因子を包含する、請求項41に記載の使用。
【請求項42】
前記生理活性物質が、移植片拒絶を予防する免疫抑制薬を包含する、請求項41に記載の使用。
【請求項43】
前記生理活性物質を、全身投与または組織再生部位での局所投与を包含する経路により投与する、請求項41に記載の使用。
【請求項44】
高圧酸素療法の施与をさらに包含する、請求項28に記載の使用。
【請求項45】
皮膚移植をさらに包含する、請求項28に記載の使用。
【請求項1】
単離された脂肪由来幹細胞(ADSC)を包含する、哺乳動物における組織再生を促進するための治療組成物。
【請求項2】
前記ADSCが、ADSCサイド・ポピュレーション(ADSC−SP)細胞を包含し、ここで前記ADSC−SP細胞が、細胞表面マーカーであるLin−、Scar−1+、CD90+、CD34+/low、CD13+/low、CD117−およびCD18+/lowを包含する、請求項1に記載の治療組成物。
【請求項3】
医薬的に受容可能な担体をさらに包含する、請求項1に記載の治療組成物。
【請求項4】
前記治療組成物が、組織再生有効量の前記ADSCを包含し、そしてここで前記組織再生有効量の前記ADSCが、1日当たり1治療部位当たりおよそ0.5−5.0×106細胞数/治療部位10mmである、請求項1に記載の治療組成物。
【請求項5】
前記哺乳動物がヒトである、請求項1に記載の治療組成物。
【請求項6】
組織再生有効量のADSCを治療部位に投与することを包含する、組織再生を促進することを必要とする患者において、組織再生を促進する方法。
【請求項7】
前記ADSCが、ADSCサイド・ポピュレーション(ADSC−SP)細胞を包含し、ここで前記ADSC−SP細胞が、細胞表面マーカーであるLin−、Scar−1+、CD90+、CD34+/low、CD13+/low、CD117−およびCD18+/lowを包含する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記ADSC組成物が、ADSCおよび所望により医薬的に受容可能な担体を包含する、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記組織再生有効量の前記ADSCが、1日当たり1治療部位当たりおよそ0.5×106細胞数/治療部位10mmである、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記ADSCが自家性である、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
前記ADSCが同系である、請求項6に記載の方法。
【請求項12】
前記組織再生が創傷部位の皮膚の再生である、請求項6に記載の方法。
【請求項13】
前記組織再生が心筋の再生である、請求項6に記載の方法。
【請求項14】
前記組織再生が神経組織の再生である、請求項6に記載の方法。
【請求項15】
前記組織再生が血管の再生である、請求項6に記載の方法。
【請求項16】
前記組織再生が創傷部位での瘢痕化を最小とする、請求項6に記載の方法。
【請求項17】
前記投与ステップが、局所への適用、皮内注射、静脈内注射、および皮下注射から成る群より選択される少なくとも1つの方法を包含する、請求項6に記載の方法。
【請求項18】
前記ADSCを、再生を必要とする組織と同じ組織タイプの細胞に分化させることをさらに包含する、請求項6に記載の方法。
【請求項19】
生物学的に活性な物質を投与することをさらに包含する、請求項6に記載の方法。
【請求項20】
前記生理活性物質が増殖因子を包含する、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記生理活性物質が、移植片拒絶を予防する免疫抑制薬を包含する、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記生理活性物質を、全身投与または組織再生部位での局所投与を包含する経路により投与する、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
高圧酸素療法の施与をさらに包含する、請求項6に記載の方法。
【請求項24】
皮膚移植をさらに包含する、請求項6に記載の方法。
【請求項25】
単離された哺乳類の脂肪由来幹細胞サイド・ポピュレーション(ADSC−SP)を包含するADSC−SPであって、細胞表面マーカーであるLin−、Scar−1+、CD90+、CD34+/low、CD13+/low、CD117−およびCD18+/lowを包含する、ADSC−SP。
【請求項26】
前記哺乳動物がヒトである、請求項25に記載のADSC−SP。
【請求項27】
組織再生の促進のための医薬剤の製造における組織再生有効量のADSCの使用。
【請求項28】
前記ADSCが、ADSCサイド・ポピュレーション(ADSC−SP)細胞を包含し、ここでADSC−SP細胞が、細胞表面マーカーであるLin−、Scar−1+、CD90+、CD34+/low、CD13+/low、CD117−およびCD18+/lowを包含する、請求項28に記載の使用。
【請求項29】
前記ADSC組成物が、ADSCおよび所望により医薬的に受容可能な担体を包含する、請求項28に記載の使用。
【請求項30】
前記組織再生有効量の前記ADSCが、1日当たり1治療部位当たりおよそ0.5×106細胞数/治療部位10mmである、請求項28に記載の使用。
【請求項31】
前記ADSCが自家性である、請求項28に記載の使用。
【請求項32】
前記ADSCが同系である、請求項28に記載の使用。
【請求項33】
前記組織再生が創傷部位での皮膚の再生である、請求項28に記載の使用。
【請求項34】
前記組織再生が心筋の再生である、請求項28に記載の使用。
【請求項35】
前記組織再生が神経組織の再生である、請求項28に記載の使用。
【請求項36】
前記組織再生が血管の再生である、請求項28に記載の使用。
【請求項37】
前記組織再生が創傷部位での瘢痕化を最小とする、請求項28に記載の使用。
【請求項38】
前記医薬剤を、局所への適用、皮内注射、静脈内注射、および皮下注射から成る群より選択される少なくとも1つの方法により投与する、請求項28に記載の使用。
【請求項39】
前記ADSCを、再生を必要とする組織と同じ組織タイプの細胞に分化させることをさらに包含する、請求項28に記載の使用。
【請求項40】
生物学的に活性な物質を投与することをさらに包含する、請求項28に記載の使用。
【請求項41】
前記生理活性物質が増殖因子を包含する、請求項41に記載の使用。
【請求項42】
前記生理活性物質が、移植片拒絶を予防する免疫抑制薬を包含する、請求項41に記載の使用。
【請求項43】
前記生理活性物質を、全身投与または組織再生部位での局所投与を包含する経路により投与する、請求項41に記載の使用。
【請求項44】
高圧酸素療法の施与をさらに包含する、請求項28に記載の使用。
【請求項45】
皮膚移植をさらに包含する、請求項28に記載の使用。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公表番号】特表2008−526762(P2008−526762A)
【公表日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−549643(P2007−549643)
【出願日】平成17年12月30日(2005.12.30)
【国際出願番号】PCT/US2005/047437
【国際公開番号】WO2006/074075
【国際公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【出願人】(506396261)プライムジェン バイオテック エルエルシー (5)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年12月30日(2005.12.30)
【国際出願番号】PCT/US2005/047437
【国際公開番号】WO2006/074075
【国際公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【出願人】(506396261)プライムジェン バイオテック エルエルシー (5)
【Fターム(参考)】
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