組織工学による靱帯、腱、および他の組織を産生するためのマトリックス
【課題】靱帯または腱、特に前十字靱帯を、それを必要とするレシピエントに移植するためにエクスビボで産生するために用いられるマトリックスの提供。
【解決手段】ワイヤロープ形態を有する絹繊維骨格のマトリックス。マトリックス上で増殖および分化して、エクスビボで靱帯または腱を形成する多能性細胞を播種した絹繊維骨格のマトリックス。マトリックス上で増殖および分化して靱帯または腱を形成する多能性細胞を播種した絹繊維骨格のマトリックスを含む生物工学による靱帯。
【解決手段】ワイヤロープ形態を有する絹繊維骨格のマトリックス。マトリックス上で増殖および分化して、エクスビボで靱帯または腱を形成する多能性細胞を播種した絹繊維骨格のマトリックス。マトリックス上で増殖および分化して靱帯または腱を形成する多能性細胞を播種した絹繊維骨格のマトリックスを含む生物工学による靱帯。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、生物工学による組織、特に靱帯および腱を産生するために用いられるマトリックスまたは足場構造に向けられる。より詳しく述べると、本発明は、それを必要とするレシピエントに移植するために、多能性細胞をエクスビボでその上に播種してもよく、細胞が増殖して前十字靱帯に分化する新規絹骨格マトリックスに関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
毎年、何十万人のアメリカ人が、膝、肘、手、肩、手首、および顎の靱帯および腱を捻挫、断裂、または破断する(Langerら、Science 260:920〜926(1993))。特に重要なものは膝の前十字靱帯である。アメリカだけでも毎年200,000人を超える人々が、前十字靱帯(ACL)を断裂または破断すると予想される(Albrightら、1999、第42章、「Knee and Leg:Soft-Tissue Trauma」、「Orthopaedic Knowledge Update 6」、アメリカ整形外科学会)。ACLは、前脛骨並進の一次安定化剤として、および外反内反膝屈曲角形成の第二の安定化剤として作用し、スポーツの損傷および交通事故に関連した屈曲-回転-外反力に起因する破断または断裂を多くの場合受けやすい。破断または断裂は多くの場合、重度の運動制限、疼痛および不快感に至り、スポーツおよび運動に参加できなくなる。ACLの障害は、三つの範疇に分類される:(1)靱帯性(引っ張り応力による靱帯線維の断裂)、(2)骨折を伴わない骨-靱帯界面での障害、ならびに(3)骨および靱帯の結合部位での骨折を伴う骨-靱帯界面の障害。最も一般的なタイプのACL障害は、第一の範疇、すなわち靱帯性である。
【0003】
ACLの治癒能が低いことは医学界では広く知られている。ACLに対する損傷が有意な断裂または破断を伴う場合には、手術による総置換および再建が必要である。ACL損傷の修復または置換に関して四つの選択肢が利用されている:(1)自己移植片、(2)同種異系移植片、(3)異種移植片、および(4)人工器官(分解性および非分解性)。今日まで、膝の機能を完全に回復することが示された外科修復技法はなく、新規治療選択肢があればおそらく多くの患者の利益となると考えられる。
【0004】
合成ACL置換の使用に関連した問題は、ドナー組織の利用が限られていることと共に、天然の組織の機能的かつ生体適合性の同等物の開発に向けての研究の刺激となった。合成物から生体に基づくACL置換のこのようなシフトはまず、初期の研究において適用され、この場合、コラーゲン様ACL人工器官を、ポリメチルメタクリレート骨固定プラグと共にI型コラーゲンマトリックスにおける再構成I型コラーゲン線維からなる複合構造として調製して、これをウサギにおいて前十字靱帯置換組織として用いた(Dunnら、Am. J. Sports Medicine 20:507〜515(1992))。その後の研究は、架橋したコラーゲン繊維足場構造に播種した靱帯線維芽細胞のように、活性な生物学的成分をプロセスに組み入れて、これを靱帯類似体として用い(Dunnら、J. Biomedical Materials Res. 29:1363〜1371(1995);Dun, M.G.、Materials Res. Soc. Bulletin、11月:43〜46(1996))、天然の靱帯を模倣する構造が形成されうることを示唆した。
【0005】
間葉幹細胞を播種して予め応力を与えたコラーゲン縫合に基づく腱ギャップモデルは、大きい腱欠損の修復の改善を示した(Youngら、1998)。Gouletらは、非架橋コラーゲンにおいて靱帯線維芽細胞を用いることによって、コラーゲン-線維芽細胞系を改変し、組織に予め応力を加えて、外科的移植を容易にするために骨を結合させた(Gouletら、「Tendons and Ligaments」、「Principles of Tissue Engineering」、R. Lanza、R. Langer、W. Chick編、R.G. ランデス社、633〜643頁、R.G.ランズ社とアカデミック出版社、サンジエゴ、カリフォルニア州(1997))。新しい靱帯を垂直位置で成長させることによって産生された受動的な張力によって、線維芽細胞の伸長、ならびに細胞および周辺の細胞外マトリックスの整列が誘導された。
【0006】
絹は、幅広い機械的特性を有する生体材料および組織工学による足場構造を設計するための新しい選択肢となることが示されている(Sofia, S.ら、J. Biol. Mat. Res. 54:139〜148(2001))。例えば、球体を織るクモであるネフィリア・クラビペス(Nephilia clavipes)からの誘導索の絹は、天然の如何なる繊維の中でも最高の強度を有し、合成の高性能繊維の機械的特性に匹敵する。絹はまた、圧迫障害にも耐えて、高い生理的温度で安定であり、水性溶媒および有機溶媒に不溶性である。近年、絹は、繊維様タンパク質の構造-機能関係を研究するためのモデルとして研究されている。天然または人工の双方の絹の遺伝子の操作は、絹タンパク質の発現、集合、および特性に洞察を与えた。このように、特異的かつ印象的な機械的特性、および改変または装飾のための広範囲の表面化学を有する材料を作製できることは、絹が重要なクラスの生体材料を提供する可能性があることを示唆している。本発明の発明者らによる最近の研究は、カイコガ(Bombyx mori)のカイコの絹の絹被膜への線維芽細胞の結合および増殖に成功したことを証明した。
【0007】
組織工学はおそらく、損傷または疾患時に移植するために、生物学的に基づく機能的組織をインビトロで産生することによって、整形外科における臨床での選択肢を改善する。さらに、成人幹細胞は、様々な細胞タイプを産生できること、かつ、それによって組織修復においてインビトロまたはインビボで有効に機能することがますます認識されつつある(Sussman, M.、Nature 410:640(2001))。インビボで産生された組織工学によるACLが、インビボで膝を安定化させて、機能することに成功するならば、膝関節の形態および運動力学、ならびにACL構造に及ぼす得られた効果を構築物の設計に組み入れなければならない。ACL構造-機能関係にミスマッチがあれば、移植の障害が起こると考えられる。
【0008】
今日まで、組織培養の生物工学による前十字靱帯に関してヒト臨床試験は報告されていない。これは、それぞれのアプローチが以下の問題の一つまたはそれ以上に取り組むことができなかったという事実による:(1)容易に利用可能な細胞または組織源がないこと;(2)ACLの独自の構造(例えば、波状のパターン、末梢の螺旋状パターン、および等尺性の繊維の構築)、ならびに(3)前駆細胞が分化するまでおよび/または自己由来細胞が移植片に浸潤するまでに必要なインビボリモデリング時間、このため患者が不安定な膝およびリハビリテーションを受けなければならない時間が延長する。より十分に機能的な生物工学による前十字靱帯を作製するためのマトリックスを開発すれば、膝の再建手術の特異的分野に大きい利益を与え、同様に、インビトロ組織産生および置換手術の全体的な分野に対してもより広い利益となると考えられる。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、エクスビボで靱帯および腱を産生する新規の絹繊維骨格のマトリックスを提供する。より詳しく述べると、本発明は、骨髄間質細胞(BMSCs)のような多能性細胞を播種してもよい新規絹繊維骨格のマトリックスを用いて、機械的および生物学的に機能的な前十字靱帯を作製することに向けられる。新規マトリックスと多能性細胞とを含む機械的および生物学的に自己由来または同種異系の前十字靱帯は、バイオリアクター環境内で調製して、移植前にインビトロでデノボ靱帯組織形成を誘導してもよい。意外にも、新規絹繊維骨格のマトリックスは、今ではバイオリアクター内で培養の際に方向性の機械的刺激を必要とすることなく、靱帯系列へのBMSCの分化を支持することが判明している。本発明者らは、機械刺激は、分化および組織発達プロセスを増強する場合に限って役立つと考えている。
【0010】
本発明はまた、絹繊維骨格のマトリックスにおいて多能性幹細胞を播種する段階、少なくとも二つのアンカーへの結合によって播種したマトリックスを結合させる段階、ならびに細胞の増殖および再生にとって適当な条件下でマトリックス内の細胞を培養する段階を含む、新規絹繊維骨格のマトリックスを用いて組織工学によってACLをエクスビボで産生する方法を提供する。培養段階は、結合したアンカーの一つまたは双方の運動による一つまたは複数の機械的な力をマトリックスに与えるさらなる段階を含んでもよい。ACLを培養する好ましい態様において、多能性細胞およびより詳しくは骨髄間質細胞を用いる。適したアンカー材料は、それに対してマトリックスが結合することができ(一時的または永続的に)、アンカーにおいて靱帯および腱組織の増殖または骨組織増殖を支持する任意の材料を含む。好ましいアンカー材料には、ヒドロキシアパタイト、脱塩骨、および骨(同種異系または自己由来)が含まれる。アンカー材料にはまた、他の材料の中でもチタン、ステンレススチール、高密度ポリエチレン、ダクロンおよびテフロンが含まれてもよい。炭酸カルシウムを燐酸カルシウムに変換するために処置されているゴイノプラ(Goinopra)珊瑚も同様にアンカー材料として用いられている。好ましい態様において、マトリックスに加えてもよい機械的な力は、前十字靱帯がインビボで経験する機械的な刺激を模倣する。これは、張力、圧迫、ゆがみ、および剪断の適当な組み合わせをマトリックスに輸送することによって行われる。
【0011】
本発明に従って産生された生物工学による靱帯は、適用した機械的な力の方向への細胞の方向および/またはマトリックスの波状のパターン、ならびにそのような力が適用された場合に、同様に機械的な力または刺激によって生じる機械的な負荷の軸に沿って、I型コラーゲン、III型コラーゲン、およびフィブロネクチンタンパク質を含む靱帯および腱特異的マーカーが産生されることを都合よく特徴とする。好ましい態様において、靱帯または腱は、らせん的構築に整列される繊維の束が存在することを特徴とする。
【0012】
本発明のもう一つの局面は、新規絹繊維骨格のマトリックスを用いてエクスビボで幅広いタイプの靱帯および腱を産生する方法、ならびにマトリックス(例えば、形態、構築、組成物)(実施例1を参照されたい)およびアンカーの大きさを、産生される特定のタイプの靱帯または腱(例えば、後十字靱帯、回旋腱板腱、肘および膝の内側側副靱帯、手の屈筋腱、果該側靱帯、ならびに顎または顎関節の腱および靱帯)の大きさを反映するように適合させることによって、および同様に産生される特異的タイプの靱帯または腱がインビボで経験する機械的な刺激を模倣するように、適用される力の特定の組み合わせを適合させることによる、前十字靱帯を産生する方法の適合である。本発明の一部であると見なされるこの方法の同様に、さらなるマトリックス組成、形態、構築、および細胞培養の際に適用される機械力を、産生される特異的細胞タイプがインビボで経験する応力を模倣するように適合させることによって、多能性幹細胞からエクスビボで他の組織を産生するために適合させることができる。本発明の方法はさらに、特に発達中の組織がインビボで経験する他の刺激を組み入れるように改変することができる。他の刺激のいくつかの例には、化学刺激および電磁刺激が含まれる。
【0013】
本明細書において用いられるように、「組織」という用語は、当業者に対して一般的に認識される生物/医学的定義を有すると意図される。非制限的な例として、「組織」は、ステッドマンの医学辞書において以下のように定義される:
[A]類似の細胞およびそれを取り巻く細胞内物質の集合体。体内には基本的な四つの組織が存在する:1)上皮;2)血液、骨、および軟骨を含む結合組織;3)筋組織;ならびに4)神経組織。
【0014】
本発明のもう一つの局面は、本発明の方法によって産生される特定の靱帯または腱に関する。産生することができる靱帯または腱のいくつかの例には、前十字靱帯、後十字靱帯、回旋腱板腱、肘および膝の内側側副靱帯、手の屈筋腱、果外側靱帯、ならびに顎または顎関節の腱および靱帯が含まれる。本発明の方法によって産生される可能性がある他の組織には、軟骨(関節および半月板の双方)、骨、筋肉、皮膚および血管が含まれる。
【0015】
上記の説明は、以下の詳細な説明が理解されるように、および本発明の当技術分野への貢献がよりよく認識されるように、本発明のより重要な特徴をかなり広く説明している。本発明の他の目的および特徴は、添付の図面と共に検討される以下の詳細な説明から明らかである考えられる。しかし、図面は、説明する目的のために限って設計されており、本発明の限界の定義として設計されたのではないと理解すべきであり、本発明の限界は添付の請求の範囲を参照すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1Aは、セリシンコーティングを有する天然の絹繊維1本の走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。図1Bは、37℃で60分間抽出した図1Aの絹繊維のSEMを示す。図1Cは、90℃で60分間抽出した図1Aの絹繊維のSEMを示し、セリシンコーティングが完全に除去されたことを示す。図1Dは、抽出条件の関数としての極限の引っ張り強さ(UTS)を示すチャートである。
【図2】図2Aは、ねじれ階層2レベルからなるワイヤロープ形態を有するマトリックス1のコード1本を示す。コード6本(例えば、マトリックス1)を平行にして用いると、マトリックスは天然のACLと類似の機械的特性を有する。図2Bは、ねじれ階層3レベルからなるワイヤロープ形態を有するマトリックス2のコード1本を示す。コード6本(例えば、マトリックス2)を平行にして用いると、マトリックスは天然のACLと類似の機械的特性を有する。
【図3】図3Aは、図2Aに示す平行な絹フィブロインコード6本から形成されたマトリックス1の負荷伸長曲線(N=5)を示す。図3Bは、マトリックス1の疲労データを示すUTS、1680 N、および1200 Nの負荷(それぞれの負荷に関してn=5)での破損までのサイクルのチャートである。マトリックス1疲労データの回帰分析から、インビボでの破損までのサイクル数を予測するために生理的負荷レベル(400 N)まで外挿すると、マトリックスの寿命は330万サイクルであることが示される。図3Cは、図2Bに示すように、平行な絹フィブロインコード6本から形成されたマトリックス2(N=3)の負荷-伸長曲線を示す。図3Dは、マトリックス2の疲労データを示す、UTS、2280 N、2100 Nおよび1800 Nの負荷(それぞれの負荷に関してN=3)での破損までのサイクルのチャートである。マトリックス2疲労データの回帰分析から、インビボでの破断までのサイクル数を予測するために生理的負荷レベル(400 N)まで外挿すると、マトリックスの寿命は1000万サイクルを超えることが示される。
【図4】図4Aは、細胞を播種する前の抽出絹フィブロインのSEMを示す。図4Bは、絹フィブロイン上に播種されて接着した骨髄間質細胞の播種直後のSEMを示す。図4Cは、絹フィブロイン上に接着および伸展した骨髄細胞の播種1日後のSEMを示す。図4Dは、無傷の細胞-細胞外マトリックスシートを形成する絹フィブロイン上に播種した播種14日後の骨髄間質細胞のSEMを示す。
【図5】図5Aは、図2Aに示す長さ3 cmの絹フィブロインコードを示し、これに骨髄間質細胞を播種して、静的な環境で14日間培養し、MTTによって染色したところ、増殖期間後に細胞によってマトリックスが均一に被覆されたことを示している。図5Bは、MTTで染色した長さ3 cmの絹フィブロインコードの対照鎖を示す。
【図6】図6Aは、21日間の培養期間で、総細胞DNAによって決定した絹フィブロインマトリックス1上での骨髄間質細胞の増殖を示すチャートであり、培養21日後の細胞増殖の有意な増加を示している。図6Bは、培養14日後の細胞増殖の有意な増加を示す、14日間の培養期間における総細胞DNAによって決定した絹フィブロインマトリックス2上での骨髄間質細胞増殖を示す棒グラフである。
【図7】生理的増殖条件下で21日間の培養期間において骨髄間質細胞を播種したまたは播種しない30絹繊維抽出構築物の極限の引っ張り強さを示す。
【図8】選択マーカーのRT-PCR増幅のゲル電気泳動分析を経時的に示す。ゲルは、14日間の培養期間においてマトリックス2上で増殖した骨髄間質細胞によるI型コラーゲンおよびIII型コラーゲンの発現レベルが、ハウスキーピング遺伝子であるGAPDHに対して標準化したところ、上方制御されていること示す。II型コラーゲン(軟骨マーカーとして)および骨シアロタンパク質(骨組織形成のマーカーとして)は検出されず、このことは、マトリックス2と共に培養した場合のBMSCsによる分化反応が靱帯特異的であることを示している。
【図9】インビボでの移植6週間後のマトリックス1のコード1本を示し(移植時には播種していない)、これを用いてウサギモデルにおいて内側側副靱帯(MCL)を再建した。(A)は、ヘマトキシリン-エオジン染色によって可視化した場合の、前駆宿主細胞によって取り囲まれるマトリックス1フィブロイン繊維、ならびにマトリックス内へのおよび個々のフィブロイン繊維周囲の組織の内増殖を示す;(B)トリクロム染色によって可視化した場合の、マトリックスへのおよび個々のフィブロイン繊維周辺へのコラーゲン様組織の内増殖を示す。
【図10】(A)1日および(B)21日間コラーゲン繊維上で播種して増殖させた骨髄間質細胞を示し、(C)は、I型およびIII型コラーゲン発現対ハウスキーピング遺伝子GAPDHのRT-PCRおよびゲル電気泳動分析を示す:a=I型コラーゲン、14日目;b=I型コラーゲン、18日目;c=III型コラーゲン、14日目;d=III型コラーゲン、18日目;e=GAPDH、14日目;f=GAPDH、18日目。II型コラーゲン(軟骨のマーカーとして)および骨シアロタンパク質(骨組織形成のマーカーとして)は検出されず、靱帯特異的分化反応を示した。
【図11】14日目でのリアルタイム定量的RT-PCRを示し、GADPHに対して標準化したところ、I型コラーゲン対III型コラーゲンの転写物の比8.9:1を得た。
【発明を実施するための形態】
【0017】
発明の詳細な説明
本発明は、その上に多能性細胞を播種して、細胞が増殖して靱帯および腱線維芽細胞に分化し、それによって前十字靱帯(ACL)、または他の靱帯、腱、もしくは組織の形成が得られる、新規絹繊維骨格のマトリックスに向けられる。新規絹繊維骨格のマトリックスは、ワイヤロープ(ねじれたまたは編まれたような)形態の繊維を有するように設計され、これは天然の前十字靱帯(下記の表1を参照されたい)と同一の機械特性を示し、マトリックスの構造および形態に単純な変化を加えることによって如何なる所望の靱帯または腱組織(下記の表2を参照されたい)も形成することができる。
【0018】
本発明はまた、実施例1に記載のように単離および培養され、絹繊維骨格のマトリックス上で播種され、静的な条件下でバイオリアクターにおいて培養される多能性骨髄間質細胞(BMSCs)が、靱帯および腱特異的分化を受けて生きた組織を形成するという知見に基づいている。さらに、マトリックス内で多能性細胞から生成されたインビトロで産生された生物工学による組織の組織形態学的特性は、組織生成の際にマトリックスに機械的な力を直接適用することによって影響を受ける。この発見は、機械的応力、生化学的および細胞固定法、ならびに細胞分化のあいだの関係に対して重要な新しい洞察を提供し、多能性細胞からインビトロで広く多様な靱帯、腱、および組織を産生するために適用される。
【0019】
本発明の一つの局面は、図2Aおよび2Bに示されるように、ワイヤロープ(ねじれたまたは編まれた)形態を有する絹繊維を含むマトリックスに関する。
【0020】
下記の実施例に記述するように、絹フィブロインの機械的特性(図1A〜Cに示すように)の特徴を調べて、理論的なコンピューターモデルを用いて、ACLを作製するために適用可能なマトリックスを形成するための形態を誘導した(図1Dを参照されたい)。マトリックスの表面積を増加させるために、および組織の内増殖のための支持を増強するために、ACL置換体として用いるためにコード6本の構築物を選択した。以下を含むいくつかの最適な構築物の幾何学的階層の二つを決定した:マトリックス1:ACL人工器官1個=平行なコード6本;コード1本:ねじれた鎖3本(ねじれ3個/cm);鎖1本=ねじれた束6本(ねじれ3個/cm);1束=平行な洗浄繊維30本;およびマトリックス2:ACLマトリックス1個=平行なコード6本;コード1本=ねじれた鎖3本(ねじれ2個/cm);鎖1本=ねじれた束3本(ねじれ2.5個/cm);1束=3群(ねじれ3個/cm);1群=平行な抽出絹フィブロイン繊維15本。マトリックス1およびマトリックス2の繊維数および形態は、絹人工器官が、極限の引っ張り強さ、直線剛性、降伏点、および破断時の%伸長におけるACLの生化学特性と類似であるように選択すると、組織工学によるACLの開発のための強力な開始点として役立つ。いずれによってもACLの特性を模倣する機械特性が得られる異なる形態を有する二つのマトリックスを生成できることは、所望の機械特性を得るために無限数の幾何学的配置が存在することを示している。当業者は、任意の所望の靱帯または腱組織に関するもう一つの形態が、コード、鎖、束、群、および繊維の如何なる数、組み合わせ、または構築を含んでもよく(下記の表2を参照されたい)、それによって望ましい靱帯または腱のそれらを模倣する適用可能な機械的特性を有するマトリックス構築物が得られることを認識すると考えられる。例えば、一つの(1)ACL人工器官は、インビトロまたはインビボで最終的なマトリックスを結合させる手段が存在する限り、コード1本から無限数のコードの範囲の如何なる数の平行なコードを有してもよい。当業者は、マトリックスが所望の機械的特性を生じる限り、所定の形態に関してねじれレベルの数(レベル1は群、束、鎖、またはコードのいずれかとして定義される)に制限はないことも認識すると考えられる。さらに、当業者は、ACL人工器官を作製する場合のマトリックスの形態および構築の設計にあたっては自由度が大きいことを認識し、したがって、所望の靱帯または腱組織のマトリックス設計を予想するために開発された理論的コンピューターモデルの有用性を理解すると考えられる(実施例1を参照されたい)。したがって、当業者は、形態の変化(すなわち、人工器官を作製するために用いられるコードの数または群における繊維の数)を用いて、ほとんどの靱帯および腱に適用可能なマトリックスを作製することができると認識すると考えられる。例えば、より小さい手の靱帯または腱に関して、マトリックスの構築によって、特定の生理的環境にとって適した機械的特性が得られる限り、マトリックス1のコード1本(またはコード2本もしくは3本等)を作製するために用いられる形態および構築は適当であってもよい。
【0021】
しかし、本発明は、記述のワイヤ-ロープ形状に制限されず、ACLと類似の(すなわち、天然のACLまたは長さが26〜30 mmの膝蓋腱のような一般的に用いられる置換移植片に関して、極限の引っ張り強さ>2000 N、直線剛性100〜600 N/mm)または産生される所望の靱帯および腱と類似のマトリックス機械特性が得られる如何なる形態または形態の組み合わせ(例えば、平行、ねじれ、編み目、メッシュ状)も用いることができる。マトリックス1およびマトリックス2の双方の繊維数および形態は、機械的に適当なACLマトリックス、または他の所望の靱帯もしくは腱マトリックス(例えば、後十字靱帯(PCL))を産生するように選択した。例えば、マトリックス1の6コード構築物のコード1本を用いて、ウサギにおいて内側側副靱帯(MC)を構築した(図9を参照されたい)。マトリックス1およびマトリックス2の6-コード絹構築物の機械的特性を表1および図3に記述する。本発明に従うACL組織工学において適用可能なマトリックスが得られると考えられる大きい自由度の設計の例として、さらなる形態およびその関連する機械的特性を表2に記載する。
【0022】
【表1】
長さ3 cmのコードに基づく異なる二つのコードの機械特性
【0023】
【表2】
ACLの置換に関して適した機械的特性が得られると考えられるいくつかの幾何学階層の例。注意:マトリックス1と2は、実施例1に示すように作製し;マトリックス3は、束1本の人工器官を生じ、マトリックス4は、鎖2本の人工器官を生じ、マトリックス5はコード3本の人工器官を生じ、マトリックス6は、コード6本の人工器官のもう一つの変化形であり、かつマトリックス7はコード12本の人工器官を生じると考えられる。
【0024】
都合がよいことに、絹繊維骨格のマトリックスは絹のみを含む。絹のタイプおよび起源には以下が含まれる:カイコガ(Bombyx mori)および関連種のようなカイコガからの絹;ネフィラ・クラビペス(Nephila clavipes)のようなクモからの絹;遺伝子工学による細菌、酵母、哺乳類細胞、昆虫細胞、ならびにトランスジェニック植物およびトランスジェニック動物からの絹;カイコまたはクモの培養細胞から得た絹;天然の絹;天然の絹のクローニングされた完全または部分配列;ならびに絹または絹様配列をコードする合成遺伝子から得た絹。その未加工型では、カイコガのカイコから得た天然の絹フィブロインはセリシンと呼ばれる膠様タンパク質によってコーティングされており、これはマトリックスを構成する繊維に細胞を播種する前に繊維から抽出する。
【0025】
もう一つの態様において、マトリックスは、(1)絹とコラーゲン繊維との複合体、(2)絹とコラーゲン泡沫、メッシュ、もしくはスポンジの複合体との複合体、(3)絹フィブロイン繊維と絹泡沫、メッシュ、もしくはスポンジとの複合体、(4)絹と生体分解性のポリマー(例えば、セルロース、綿、ゼラチン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ(ラクチドコグリコリド)、ポリカプロラクトン、ポリアミド、ポリ無水物、ポリアミノ酸、ポリオルトエステル、ポリアセタール、タンパク質、分解性のポリウレタン、多糖類、ポリシアノアクリレート、グリコサミノグリカン−例えばコンドロイチン硫酸、ヘパリン等、多糖類−天然の再処理または遺伝子操作型−例えば、ヒアルロン酸、アルギネート、キサンタン、ペクチン、キトサン、キチン等、エラスチン−天然の再処理または遺伝子操作した化学型、コラーゲン−天然の再処理したまたは遺伝子操作型)との複合体、または(5)絹と非生体分解性のポリマー(例えば、ポリアミド、ポリエステル、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリアクリレート、ポリビニル、ポリカーボネート、ポリテトラフルオロエチレン、またはニトロセルロース材料)との複合体を含んでもよい。複合体は一般的に、多孔性、分解性のようなマトリックスの特性を増強して、同様に、細胞播種、増殖、分化、または組織発達を増強する。図10は、コラーゲン繊維がBMSC増殖および靱帯特異的分化を支持できることを示している。
【0026】
本発明のマトリックスはまた、その上での細胞増殖および/または組織分化を増強するように処理してもよい。細胞増殖および組織分化を増強するための例としてのマトリックス処理には、金属、放射線照射、架橋、化学表面改変(例えば、RGD(arg-gly-asp)ペプチドコーティング、フィブロネクチンコーティング、増殖因子のカップリング)、および物理的表面改変が含まれるがこれらに限定されない。
【0027】
本発明の第二の局面は、新規絹繊維骨格のマトリックスと、マトリックス上に播種した自己由来または同種異系(組織のレシピエントに依存する)骨髄間質細胞(BMSCs)とで形成された機械的および生物学的に機能的なACLに関する。絹繊維骨格のマトリックスは、バイオリアクター培養の際に如何なる機械刺激も必要とせずに靱帯系列への間質細胞分化を誘導する。絹繊維骨格のマトリックス上に播種して、ペトリ皿において増殖させたBMSCsは、接着して伸展し(図4を参照されたい)、マトリックスを覆うように増殖して(図5および6を参照されたい)、および靱帯特異的マーカーの発現によって示されるように分化する(図8を参照されたい)。軟骨(II型コラーゲン)および骨(骨シアロタンパク質)のマーカーは、発現されなかった(図8を参照されたい)。靱帯特異的マーカーの発現を示すデータを実施例2に述べる。
【0028】
もう一つの局面において、本発明は、エクスビボでACLを産生する方法に関する。靱帯細胞へと分化することができる細胞を、成熟靱帯機能への胚発達の過程においてインビボでACLが経験する運動および力を模倣する条件下で増殖させる。これは、以下の段階によって行われる。滅菌条件下で、多能性細胞を、それに対して細胞が接着する都合のよい円柱形状である三次元絹繊維骨格のマトリックス内に播種する。方法において用いられる三次元絹繊維骨格のマトリックスは、予備マトリックスとして役立ち、これは、分化しつつある細胞が産生する細胞外マトリックスによって補充され、置き換えられることもありうる。新規絹繊維骨格のマトリックスを用いると、ACLの発達を増強または加速する可能性がある。例えば、新規絹繊維骨格のマトリックスは、細胞の細胞外マトリックス成分によって強化される前でも強い力に耐えることができる特異的機械的特性(例えば、増加した引っ張り強さ)を有する。新規絹繊維骨格の予備マトリックスの他の都合のよい特性には、生物学的適合性および生体分解に対する感受性が含まれるがこれらに限定されない。
【0029】
多能性細胞は、用いられる特定のマトリックスおよびマトリックス形成法に応じて、マトリックス形成の前後いずれかに予備的なマトリックスの内部に播種してもよい。均一な播種が好ましい。理論的には、播種される細胞数は、産生される最終的な靱帯を限定しないが、最適な播種は産生率を増加させる可能性がある。最適な播種量は、特異的培養条件に依存すると考えられる。一つの態様において、マトリックスに、天然の靱帯の生理的細胞密度の約0.05〜5倍を播種する。
【0030】
一つまたは複数のタイプの多能性細胞が方法において用いられる。そのような細胞は、適当な分化シグナルに反応して、広く多様な細胞タイプへの分化能および靱帯特異的マーカーの発現能を有する。より詳しく述べると、方法は、靱帯および腱組織の細胞への分化能を有する細胞を用いる必要がある。好ましい態様において、骨髄間質細胞を用いる。得られた生物工学による靱帯が患者に移植される場合、細胞は、意図するレシピエントと適合性である起源に由来しなければならない。レシピエントは一般的にヒトであるが、獣医学での応用も存在する。一つの態様において、細胞はレシピエントから得るが(自己由来)、適合性のドナー細胞も同様に用いて同種異系靱帯を作製してもよい。例えば、同種異系靱帯(例えば、提供された骨髄から単離した骨髄間質細胞、提供されたACL組織から単離したACL線維芽細胞のような別のヒトからの細胞を用いて)を作製する場合、無傷のドナーACL組織から単離したヒト前十字靱帯線維芽細胞(例えば、死体または総膝移植手術から得たもの)、破断したACL組織(例えば、ACL再建手術を受ける患者から手術時に採取したもの)または骨髄間質細胞を用いてもよい。適合であるか否か決定は、熟練した医師の能力範囲に含まれる。
【0031】
本発明のもう一つの態様において、後十字靱帯、回旋腱板腱、肘および膝の内側側副靱帯、手の屈筋腱、果外側靱帯、ならびにACL以外の顎または顎関節の腱および靱帯を含むこれらに限定されない靱帯または腱、軟骨、骨、ならびに他の組織は、本発明の方法に従うマトリックスによって作製してもよい。このように、産生すべき組織に従ってマトリックスに播種すべき細胞を選択する(例えば、多能性または所望の組織タイプの)。本発明に従ってマトリックス上に播種された細胞は、自己由来または同種異系であってもよい。自己由来細胞を用いると、レシピエントに移植するための同種異系移植片または同系移植片が効果的に作製される。
【0032】
列挙したように、ACLを形成するために細胞をマトリックス上に播種するが、都合がよいのは骨髄間質細胞である。骨髄間質細胞は一つのタイプの多能性細胞であり、当技術分野において、単に間葉幹細胞として、または単に間質細胞として呼ばれる。列挙したように、これらの細胞源は自己由来または同種異系となりうる。本発明はまた、適当な環境(インビボまたはインビトロのいずれか)である限り、絹繊維骨格のマトリックス上に播種した成人または胚の幹細胞または多能性細胞を用いることを企図し、細胞外マトリックス組成物(例えば、タンパク質、糖タンパク質内容物)、構築、構造または機能においてACLまたは任意の他の所望の靱帯もしくは組織を再現することができる。
【0033】
線維芽細胞はまた、本発明のマトリックス上に播種するために本発明によって企図される。線維芽細胞は多くの場合多能性細胞とは呼ばれないため、線維芽細胞には、ACL組織から単離した成熟ヒトACL線維芽細胞(自己由来または同種異系)、他の靱帯組織からの線維芽細胞、腱組織、新生児包皮、臍帯血、または他の任意の細胞からの線維芽細胞が含まれると解釈され、それらは成熟または多能性、成熟脱分化、または遺伝子工学によるものであれ、適当な環境で培養して(インビボまたはインビトロのいずれか)絹繊維骨格のマトリックス上に播種すると、細胞外マトリックス組成物(例えば、タンパク質、糖タンパク質内容物)、構築、構造または機能においてACLまたは他の任意の所望の靱帯もしくは組織を再現することができる。
【0034】
マトリックス円柱面は、それを通して一定範囲の力がマトリックスに適用されるアンカーにそれぞれ結合する。マトリックスへの力の輸送を促進するために、マトリックスの各面の表面全体が各アンカーの面に接触することが好ましい。結合部位を反映する形状(例えば、円柱状)を有するアンカーが、本発明の方法において用いるために最も適している。構築した後、結合したマトリックスにおける細胞を、細胞の増殖および再生にとって適当な条件下で培養する。マトリックスは、培養の過程において結合したアンカーを通して適用される一つまたは複数の機械的な力を受ける(結合したアンカーの一つまたは双方の運動によって)。天然のACLまたは他の組織がインビボで経験する条件を模倣する機械的な力を、培養期間において提供する。
【0035】
アンカーは、マトリックス結合のために適した材料で構成すべきであり、得られた結合は、適用される機械的な力の応力に耐えるために十分に強くなければならない。さらに、アンカーは、分化しつつある細胞によって産生される細胞外マトリックスが結合するために適した材料で構成することが好ましい。アンカーは、発達しつつある靱帯を結合しながら骨組織の内増殖(インビトロまたはインビボのいずれか)を支持する。適したアンカー材料のいくつかの例には、ヒドロキシアパタイト、ゴイノプラ珊瑚、脱塩骨、骨(同種異系または自己由来)が含まれるがこれらに限定されない。アンカー材料にはまた、チタン、ステンレススチール、高密度ポリエチレン、ダクロンおよびテフロンが含まれてもよい。
【0036】
または、アンカー材料は、選択した材料を、靱帯マトリックス結合または骨マトリックス結合またはその双方を促進する因子と共に注入することによって作製またはさらに増強してもよい。注入するという用語は、アンカー上に因子を適当に分配する如何なる応用法(例えば、コーティング、浸透、または接触)も含まれると見なされる。そのような因子の例には、ラミニン、フィブロネクチン、接着を促進する任意の細胞外マトリックスタンパク質、絹、アルギニン-グリシン-アスパルテート(RGD)ペプチド結合領域またはRGDペプチドそのものを含む因子が含まれるがこれらに限定されない。増殖因子または骨形成タンパク質も同様に、アンカーの結合を増強するために用いることができる。さらに、アンカーに接着してマトリックスに結合し、インビトロおよびインビボの双方で増強されたマトリックス結合を生じる細胞(例えば、幹細胞、靱帯細胞、骨芽細胞、骨芽前駆細胞)を、アンカーに予め播種してもよい。
【0037】
例としてのアンカー系は、出願人の同時係属中の出願である米国特許出願第09/___号に開示される。マトリックスは、アンカー面との接触によって、またはアンカー材料の中にマトリックス材料が実際に浸透することによってアンカーに結合する。アンカーによってマトリックスに適用される力が、産生される最終的な靱帯を指示するため、産生される最終的な靱帯の大きさは、部分的にアンカーの結合部位の大きさによって指示される。当業者は、所望の最終的な靱帯に対して適当な大きさのアンカーを用いるべきであることを認識すると考えられる。ACLを形成するために好ましいアンカー形状は円柱状である。しかし、当業者は、他のアンカーの形状および大きさも同様に適当に機能することを認識すると考えられる。好ましい態様において、アンカーは生物工学による靱帯のレシピエントの大腿骨および脛骨における骨トンネルに直接挿入するために適当な大きさおよび組成物を有する。
【0038】
本発明のもう一つの態様において、アンカーは、インビトロ培養のあいだ一時的に限って用いてもよく、その後マトリックスのみをインビボで埋め込む際に除去してもよい。
【0039】
もう一つの態様において、新規絹繊維骨格のマトリックスにBMSCsを播種して、バイオリアクターにおいて培養する。現在のところ、本発明に従って用いてもよい二つのタイプの増殖環境が存在する:(1)インビボバイオリアクター装置システム、および(2)適当な生体適合性の機械的な特性を有するマトリックスがあれば、生存ACLの発達にとって必要な前駆細胞と刺激(化学および物理刺激の双方)とを含む生理的環境を提供することから、「バイオリアクター」として作用するインビボ膝関節。バイオリアクター装置は、分化および細胞外マトリックス(ECM)産生に関して靱帯を形成するために最適な培養条件を提供し、このように、レシピエントに移植する前に最適な機械および生物学的特性を有する靱帯を提供する。さらに、絹繊維骨格のマトリックスにインビトロで細胞を播種して培養する場合には、ペトリ皿を、細胞の増殖および再生にとって適当な条件、すなわち静的な環境が存在するバイオリアクターであると見なしてもよい。
【0040】
本発明の一つの態様に従って、細胞はまた、如何なる機械的な力も適用せずに、すなわち静的な環境でマトリックス上で培養してもよい。例えば、インビトロで機械的な力または刺激を適用しない絹繊維骨格のマトリックスは単独で、BMSCsを播種して培養すると、増殖して靱帯および腱特異的マーカーを発現するように細胞を誘導する(実施例2および図8を参照されたい)。膝関節は、ACLが技術的に発達するように、マトリックスに細胞および正しい環境シグナル(化学および物理)を提供することができる生理的増殖および発達環境として作用する可能性がある。したがって、膝関節(そのバイオリアクターの形としての)プラスマトリックス(接種していない、接種したがインビトロで分化していない、または接種して移植前にインビトロで分化した)があれば、マトリックスに播種した細胞タイプおよびマトリックスを埋め込む解剖学的位置に応じて、ACLsまたは他の所望の組織の発達が起こる。図9は、適当なMCL機械的特性を有する播種していない絹骨格のマトリックスのみをインビボで6週間埋め込んだ場合の、内側側副靱帯(MCL)の発達に及ぼす内側側副膝関節環境の影響を示す。細胞を、機械的刺激を適用しない静的な環境、またはバイオリアクター装置のような動的な環境で培養するにせよ、細胞の増殖および再生にとって適当な条件は、所望の靱帯または組織を作製するために都合よく存在する。
【0041】
下記の実施例に記載の実験において、適用した機械的刺激は、得られた組織内で前駆細胞の形態、細胞構築に影響を及ぼすことが示された。細胞によって分泌される細胞外マトリックスの成分および組織全体の細胞外マトリックスの構築も同様に、組織形成の際にマトリックスに適用される力によって有意に影響を受けた。インビトロ組織再生の際に、細胞および細胞外マトリックスは負荷の軸に沿って整列し、これは同様に天然の膝関節の運動および機能によって生じる様々な負荷軸に沿って整列している天然のACLのインビボ構築を反映する。これらの結果は、ACLのような発達しつつある組織の細胞が本来経験する物理的刺激が、前駆細胞の分化および組織形成において重要な役割を果たすことを示唆している。それらはさらに、この役割が類似の組織を産生するために機械的操作によってインビトロで有効に繰り返すことができることを示している。機械的操作によって産生される力が、インビボでACLが経験する力により密接に類似すれば、得られる組織はより密接に天然のACLに類似すると考えられる。
【0042】
バイオリアクターによってインビトロでマトリックスに機械的刺激を加えると、一つのアンカーに適用された周期的および回転的ひずみの双方に対する独立したしかし同時の制御が他のアンカーに関して存在する。もう一つの態様において、マトリックスを単独でインビボで埋め込んで、患者からのACl細胞を播種して、患者による機械的シグナルにインビボで曝露してもよい。
【0043】
埋め込み前にマトリックスに細胞を播種する場合、細胞は細胞増殖および分化にとって適当な条件下でマトリックス内で培養される。培養プロセスのあいだ、マトリックスに、結合したアンカーの一つまたは双方の運動によって一つまたは複数の機械的な力を与えてもよい。張力、圧迫、ゆがみおよび剪断の機械的な力、ならびにその組み合わせは、インビボでACLが経験する機械刺激を模倣するように適当な組み合わせ、程度、および回数で適用される。
【0044】
様々な要因が、マトリックスによって認容されうる力の量に影響を及ぼすと考えられる(例えば、マトリックスの組成、細胞密度)。マトリックスの強さは、組織発達の過程で変化すると予想される。したがって、適用される機械的な力またはひずみは、適用時のマトリックスの強さに適切に対応するために、靱帯の形成期間のあいだに、その程度、持続、回数および多様性が増加、減少、または一定のままとなると考えられる。
【0045】
ACLを作製する場合、組織発達の際にマトリックスに適用される刺激の強度および組み合わせがより正確であれば、得られた靱帯はより天然のACLに類似すると考えられる。インビボ環境を密接に模倣するインビトロの機械的な力のレジメを考案する場合には、ACLの天然の機能に関して二つの問題を検討すべきである:(1)ACLが経験する様々なタイプの動作および膝関節の運動に対するACLの反応、および(2)靱帯が経験する機械的応力の程度。特定の組み合わせの機械刺激は、膝構造の本来の動きから生成され、天然のACLに伝えられる。
【0046】
膝の動作を簡単に説明するために、脛骨と大腿骨とのACLによる結合は、互いに対する二つの骨の動作を考慮すると、自由度6を提供する:脛骨は、三方向に動くことができ、これらの三方向のそれぞれに関して軸に対して回転することができる。膝は、靱帯およびキャプラー(capular)繊維が存在するためならびに膝表面そのもののために、これらの自由度6の完全な範囲を得ることができない(Bidenら、「Experimental methods used to evaluate knee ligament function」、「Knee Ligaments:Structure, Function, Injury and Repair」D. Danielら編、レイブン出版社、135〜151頁(1990))。小さい並進運動も可能である。ACLの結合部位は、膝関節におけるその安定化役割に関与している。ACLは、前脛骨並進の一次安定化剤として、および外反-内反角形成および脛骨回転の二次安定化剤として機能する(Shoemakerら、「The limits of knee motion」、「Knee Ligaments:Structure, Function, Injury and Repair」D. Danielら編、レイブン出版社、1534〜161頁(1990))。したがって、ACLは、可能性がある自由度6のうち3において膝の安定化に関与している。その結果、ACLは、これらの安定化機能を行うために特異的な繊維の構築および全体構造を発達させた。本発明は、類似の構造および繊維の構築を有する組織を産生するためにインビトロでこれらの条件を模倣する。
【0047】
ACLが経験する機械的応力の程度も同様に概要することができる。ACLは、約400 Nの周期的負荷を年間100万〜200万サイクル受ける(Chenら、J. Biomed. Mat. Res.14:567〜586(1986))。同様に、ACL外科的置換体を開発する場合には、直線剛性(〜182 N/mm)、極限変形(ACLの100%)および破断時に吸収されるエネルギー(12.8 N-m)を考慮することも重要である(Wooら、「The tensile properties of human anterior cruciate ligament(ACL)and ACL graft tissues.」、「Knee Ligaments:Structure, Function, Injury and Repair」D. Danielら編、レイブン出版社、279〜289頁(1990))。
【0048】
下記の実施例の章は、エクスビボで原型となる生物工学による前十字靱帯(ACL)の産生に関して詳述する。インビボで天然のACLが経験する機械的刺激のサブセットを模倣する機械的な力(回転方向の変形および直線方向の変形)を組み合わせて適用して、形成された得られた靱帯を調べて、適用した力が組織発達に及ぼす影響を決定した。インビトロ形成の際に発達中の靱帯を生理的負荷に曝露すると、細胞が負荷の軸に沿って既定の方向をとるように、および軸に沿って細胞外マトリックスも同様に産生するように誘導する。これらの結果は、天然のACLの環境を模倣する負荷軸のより複雑なネットワークを産生するために、複雑な多次元の機械的な力をレジメに加えると、天然のACLにより密接に類似する生物工学による靱帯が産生されることを示している。
【0049】
適用してもよい異なる機械的な力には、張力、圧迫、ゆがみおよび剪断が含まれるがこれらに限定されない。これらの力は、天然の膝関節の運動および機能の過程においてACLが経験する力を模倣する組み合わせで適用される。これらの運動には、冠状および矢状平面において定義される膝関節の伸長および屈曲、ならびに膝関節の屈曲が含まれるがこれらに限定されない。最適には、適用した力の組み合わせは、実験的に可能な限り正確にインビボで前十字靱帯が経験する機械的刺激を模倣する。靱帯形成の過程で力を適用する特定のレジメを変更すると、組織発達の速度および転帰に影響を及ぼすと予想され、最適な条件は経験的に決定される。レジメにおける可能性がある変数には、(1)ひずみ率、(2)ひずみの割合、(3)ひずみのタイプ、例えば並進および回転、(4)頻度、(5)所定のレジメ内のサイクル数、(6)異なるレジメの数、(7)靱帯変形の極値点での持続時間、(8)力のレベル、および(9)異なる力の組み合わせが含まれるがこれらに限定されない。おそらく無限数の変化が存在することは当業者によって認識されると考えられる。好ましい態様において、適用される機械的な力のレジメによって、下記のように天然の靱帯のそれと類似の螺旋状に構築された繊維が生成される。
【0050】
天然の靱帯の繊維の束は、螺旋状の構築に配列される。結合様式および膝関節が屈曲の140°まで回転するための必要条件によって、90°のねじれを受け継いで、螺旋状の構築を発達させる末梢繊維の束を有する天然のACLが得られた。この独自の生物医学的特徴によって、ACLは、極めて高い負荷に耐えることができる。機能的ACLにおいて、この螺旋状の繊維構築によって、前方-後方および後方-前方繊維が全ての程度の屈曲に関して互いに比較的等尺性であるままとなり、このように負荷は如何なる程度の膝関節の屈曲においても全ての繊維の束に等しく分配されることができ、関節の動作の全ての範囲にわたって膝を安定化させる。本発明の好ましい態様において、この同じらせん状構築を有する生物工学によるACLを産生するために、膝関節の屈曲と膝関節の伸長との組み合わせをシミュレートする機械的な力を発達中の靱帯に適用する。下記の実施例において示した実験において用いた機械的装置は、ひずみおよびひずみ率(並進と回転の双方)に対する制御を提供する。機械的装置は、成長しつつある靱帯が経験する実際の負荷をモニターして、負荷レジメのモニタリングおよび増加を通して経時的に靱帯を「教育」する役割を果たすと考えられる。
【0051】
本発明のもう一つの局面は、上記の方法によって産生された生物工学による前十字靱帯に関する。これらの方法によって産生された生物工学による靱帯は、生成のあいだに適用された機械的な力の方向を細胞が向くことおよび/またはその方向へのマトリックスの波状パターンを特徴とする。靱帯はまた、培養の際に経験する機械的な負荷の軸に沿った細胞外マトリックス成分(例えば、I型およびIII型コラーゲン、フィブロネクチン、ならびにテナシン-Cタンパク質)の産生/存在を特徴とする。好ましい態様において、靱帯線維の束を上記のようにらせん状の構築に整列させる。
【0052】
新規絹繊維骨格のマトリックスを用いる上記の方法は、ACLの産生に限定されず、例えば、後十字靱帯、回旋腱板腱、肘および膝の内側側副靱帯、手の屈筋腱、果外側靱帯、ならびに顎または顎関節の腱および靱帯のような、しかしこれらに限定されない、膝において認められる他の靱帯(例えば、後十字靱帯)および腱、または体の他の部分(例えば、手、手首、足首、肘、顎、および肩)を産生するためにも用いることができる。ヒトの体において動かすことができる全ての関節は、関節において関節骨端に結合する特殊な靱帯を有する。体内のそれぞれの靱帯は、その機能および環境によって指示される特殊な構造および構築を有する。体の様々な靱帯、その位置および機能は、その関連する内容が参照として本明細書に組み入れられる、「Anatomy, Descriptive and Surgical」(Gray, H.、(Pick, T.P.、Howden, R.)編、バウンティブックス、ニューヨーク(1977)に記載されている。所定の靱帯または腱が経験する物理的刺激を決定して、これらの刺激を模倣する力を組み入れることによって、エクスビボでACLを産生する上記の方法は、体内の任意の靱帯または腱を模倣する生物工学による靱帯および腱をエクスビボで産生するために適合させることができる。
【0053】
産生される特定のタイプの靱帯または腱は、方法のいくつかの局面が、天然の靱帯または腱がインビボで経験する特定の条件によって変化することから、組織が生成される前に予め決定される。発達中の靱帯または腱が細胞培養のあいだに受ける機械的な力は、培養される特定の靱帯または腱のタイプに関して決定される。特定の条件は、天然の靱帯または腱およびその環境および機能を調べることによって当業者によって決定することができる。インビボで靱帯または腱が経験する一つまたは複数の機械的な力を、マトリックスにおける細胞の培養の際にマトリックスに適用する。当業者は、天然の靱帯または腱が経験する力のサブセットを適用することによって、現在利用可能なものより優れた靱帯または腱を産生できることを認識すると考えられる。しかし、最適には、天然の靱帯または腱に最も密接に類似する最終産物を生成するためには、完全な範囲のインビボの力が適当な程度および組み合わせでマトリックスに適用されると考えられる。これらの力には、ACLを産生するために先に記述した力が含まれるがこれらに限定されない。適用される機械的な力は靱帯または腱のタイプに応じて変化し、かつ靱帯または腱の最終的な大きさは用いたアンカーによって影響を受けることから、当業者は、最適なアンカーの組成、大きさおよびマトリックス結合部位をそれぞれのタイプの靱帯または腱について決定すべきである。マトリックスに播種される細胞のタイプは、産生される靱帯または腱のタイプに基づいて明らかに決定される。
【0054】
本発明のもう一つの局面は、エクスビボで靱帯または腱を産生するために上記のものと類似の方法を用いてエクスビボで他の組織を産生することに関する。上記の方法はまた、筋肉(例えば、平滑筋、骨格筋、心筋)、骨、軟骨、椎板、およびいくつかのタイプの血管のような、その機能の主要な部分として機械的な変形を含む、広範囲の生物工学による組織産物を産生するように適用することができる。骨髄間質細胞は、他の組織と同様にこれらの組織への分化能を有する。絹骨格のマトリックスまたは複合マトリックスの形態は、所望の組織タイプの正確な解剖学的幾何学形状に容易に適合させることができる。例えば、絹フィブロイン繊維は、動脈を再生するために円柱管に再形成することができる。
【0055】
下記の実施例に示す結果は、所定の組織タイプの特異的機械的環境を模倣する環境における増殖が、天然の組織に有意に類似する生物工学による組織を産生するために適当な細胞分化を誘導することを示している。マトリックスの機械的変形の範囲およびタイプは、広範囲の組織構造の構築を産生するために拡大することができる。好ましくは、細胞培養環境は、天然の組織内の細胞の機能を成熟させるために、胚発達の経過を通して、それが含む天然の組織および細胞が経験するインビボ環境を可能な限り正確に反映する。所定の組織を産生するための特異的培養条件を設計する場合に検討する要因には、マトリックスの組成、細胞固定法、マトリックスまたは組織の結合法、適用される特定の力、および細胞培養用培地が含まれるがこれらに限定されない。機械的刺激の特定のレジメは、産生される組織タイプに依存して、機械的な力の適用(例えば、剪断を伴うまたは伴わない張力のみ、歪みのみ、張力と歪みの組み合わせ等)、力の振幅(例えば、角度または伸長)、適用回数と持続期間、および刺激と休息期間の持続期間を変化させることによって確立される。
【0056】
エクスビボで特異的組織タイプを産生するための方法は、ACLを産生する上記の方法を適合させることである。関与する成分には、多能性細胞、それに対して細胞が接着することができる三次元マトリックス、およびマトリックス結合に適した面を有する多数のアンカーが含まれる。多能性細胞(好ましくは骨髄間質細胞)は、マトリックス内に細胞を均一に固定させる手段によって、三次元マトリックスに播種される。播種される細胞数は、無限であると思われるが、高密度の細胞をマトリックスに播種すると、組織の形成を加速する可能性がある。
【0057】
適用される特定の力は、天然の組織およびインビボで経験する機械的な刺激を調べることによって、産生されるそれぞれの組織タイプについて決定しなければならない。所定の組織タイプは、体内の組織の位置および機能によって指示される特徴的な力を経験する。例えば、軟骨は、剪断および圧迫/張力の組み合わせをインビボで経験することが知られており、骨は圧迫を経験する。インビボで所定の組織が経験する特定の機械的刺激の決定は、当業者の手段の範囲内である。
【0058】
さらなる刺激(例えば、化学刺激、電磁刺激)も同様に、生物工学による靱帯、腱および他の組織を産生するために上記の方法に組み入れることができる。細胞の分化は、例を挙げれば、分泌された増殖または分化因子のような周辺細胞からしばしば産生される環境からの化学刺激、細胞間接触、化学物質勾配、および特異的pHレベルによって影響を受けることが知られている。他のより独自の刺激は、より専門的なタイプの組織(例えば、心筋の電気刺激)が経験する。そのような組織特異的刺激(例えば、1〜10 ng/mlのトランスフォーミング増殖因子β-1(TGF-β1))を適当な機械的な力とは無関係にまたは同時に適用すると、特定の天然の組織をより密接に近似する組織への細胞の分化を促進すると予想される。
【0059】
上記の方法によって産生された組織は、適合するレシピエントに外科的埋め込みのために、特に損傷組織の置換または修復のために組織同等物の無限のプールを提供する。生物工学による組織はまた、正常または病的な組織機能をインビトロで研究するために、例えば分子、機械、または遺伝子操作に対する細胞および組織レベルの反応をインビトロで研究するために利用してもよい。例えば、正常またはトランスフェクトした細胞に基づく組織は、生化学もしくは機械刺激に対する組織の反応を評価するために、過剰発現もしくはノックアウトされうる特定の遺伝子もしくは遺伝子産物の機能を同定するために、または薬剤の影響を調べるために用いることができる。そのような研究は、おそらく、靱帯、腱および組織の発達、正常および病的な機能に対してより多くの洞察を与え、最終的に、既に確立された組織工学アプローチに一部基づいて、完全に機能的な組織工学による置換が得られ、細胞の分化および組織発達、ならびに構造および機能的組織特性を改善するために、細胞由来の外因性の生化学因子と共に機械調節シグナルを用いることに対して新しい洞察を与えると考えられる。
【0060】
靱帯および腱のような生物工学による組織の産生はまた、組織損傷(例えば、ACLの破断)のリスクが高い個体から損傷前に骨髄間質細胞を採取することのような適応についても可能性を有する。これらの細胞は、必要となるまで保存されるか、または、多様な生物工学による人工組織を産生するために適当なマトリックスに播種して、機械的刺激下でインビトロで培養および分化させてドナーが必要とするまで保存することができる。インビボの生物学的環境によりよくマッチする生物工学による生きた人工組織を利用すれば、例えば、正常な完全に機能的な靱帯の動的平衡を維持するために必要な生理的負荷を提供して、特に組織を予め増殖させて保存している場合には、人工器官のレシピエントのリハビリテーション期間が数ヶ月から数週間短縮するはずである。利益には、より迅速な機能的活性の回復、より短期間の入院日数、ならびに組織の拒絶および不全に関する問題がより少なくなることが含まれる。
【0061】
本発明は、ACLを産生するための絹繊維骨格のマトリックスに限定されないと意図され、他の靱帯および腱と共に、軟骨、骨、皮膚、および血管のような他の組織も、適当な細胞を播種して、必要であれば、所望の靱帯、腱、または組織に増殖および分化させるための適当な機械刺激に曝露した新規絹骨格マトリックスを利用することによって、本発明によって企図されると理解すべきである。
【0062】
さらに、本発明は、マトリックス上に播種した骨髄間質細胞を用いることに限定されず、例えば、骨、筋肉、および皮膚における細胞のような他の前駆細胞、多能性および幹細胞も同様に、靱帯および他の組織に分化させるために用いてもよい。
【0063】
本発明はさらに、以下の実施例を参照して定義される。材料および方法の双方に対して多くの改変を行ってもよく、それらも本発明の目的および対象に含まれることは当業者に明らかであると考えられる。
【実施例】
【0064】
実施例1
a.絹被膜の調製
図1Aに示す未加工のカイコガの繊維を抽出して、天然の絹フィブロインをコーディングする膠様タンパク質であるセリシンを除去した(図1A〜Cを参照されたい)。1群あたり適当数の繊維を平行に配置して、0.02 M Na2CO3水溶液および0.3%(w/v)アイボリー石けん溶液において90℃で60分間抽出した後、水で十分にすすいで膠様のセリシンタンパク質を抽出した。
【0065】
b.絹繊維骨格のマトリックス構築物の調製および特性
絹繊維骨格のマトリックスの機械的特性を予測するために、鎖3本のワイヤロープに関するコステロの等式を導出した。導出されたモデルは、マトリックスの全体的な強度および剛性を所定のレベルの幾何学的階層に関してピッチ角の関数として計算するために、抽出された絹繊維材料の特性および所望のマトリックス幾何学的階層を組み合わせて考慮に入れる一連の等式である。
【0066】
絹繊維1本の材料特性には、繊維の直径、弾性係数、ポアソン比、および極限の引っ張り強さ(UTS)が含まれる。幾何学的階層は、所定のマトリックスレベルでねじれレベルの数として定義してもよい。それぞれのレベル(例えば、群、束、鎖、コード、靱帯)はさらに、互いにねじられる繊維の群の数、第一レベルのねじれの各群における繊維の数によって定義され、第一のレベルは群として定義され、第二のレベルは束として、第三のレベルは鎖として、および第四のレベルはコードとして、第五のレベルは靱帯として定義される。
【0067】
モデルは、多数の繊維のそれぞれの群が、個々の繊維の数とその固有の半径によって決定される有効半径を有する単一の繊維として作用することを仮定し、すなわちモデルは、所定の比較的高いピッチ角におけるその役割が限定されるために個々の繊維のあいだの摩擦を割引して考える。
【0068】
天然のACLの特性を模倣する形態的特性を生じるように計算された多くのマトリックス幾何学形状(上記の表2を参照されたい)の二つの応用可能な形状(マトリックス1およびマトリックス2)を、より詳細な分析のために誘導した。6コード構築物をACL置換体として用いるために選択した。マトリックスの配置は以下の通りである:マトリックス1:ACL人工器官1個=平行なコード6本;コード1本:ねじれた鎖3本(ねじれ3個/cm);鎖1本=ねじれた束6本(ねじれ3個/cm);1束=平行な洗浄繊維30本;およびマトリックス2:1 ACLマトリックス=平行なコード6本;コード1本:ねじれた鎖3本(ねじれ2個/cm);鎖1本=ねじれた束3本(ねじれ2.5個/cm);1束=3群(ねじれ3個/cm);1群=平行な抽出絹フィブロイン繊維15本。繊維の数および形態は、絹人工器官が、UTS、直線剛性、降伏点、および破断時の%伸長においてACL生物機械的特性と類似となるように選択し(上記の表2を参照されたい)、このように、組織工学によるACLを開発するための強力な開始点として作用する。
【0069】
絹フィブロインの機械的特性は、ファスト-トラックソフトウェアと共に自動制御水圧インストロン8511張力/圧迫系を用いて特徴を調べた(図1Dを参照されたい)。1回引っ張り破損分析および疲労分析を単一の絹繊維について行って、フィブロインを抽出してコードを構築した。繊維およびフィブロインは、特徴を調べるために平行およびワイヤロープ形態の双方で構築した(マトリックス1(図2Aを参照されたい)およびマトリックス2(図2Bを参照されたい))。1回引っ張り破損試験をひずみ率100%/秒で実施した;力の伸長ヒストグラムを作製して、データをインストロンシリーズIXソフトウェアを用いて分析した。マトリックス1およびマトリックス2はいずれも、UTS、直線剛性、降伏点、および破断時の%伸長(上記の表2を参照されたい)においてACLと類似の機械的および疲労特性を生じた(表2および図3を参照されたい)。
【0070】
疲労分析は、マトリックス1とマトリックス2の双方のコード1本についてウェーブメーカーソフトウェアによって自動制御水圧インストロン8511張力/圧迫系を用いて行った。データを、コード6本のACL人工器官を表すように外挿し、これを図3Bおよび3Dに示す。コード端は、エポキシ鋳型に抱埋して、アンカーのあいだに長さ3 cmの構築物を生成した。マトリックス1に関してUTS、1,680 Nおよび1,200 N(それぞれの負荷に関してN=5)(図3Bを参照されたい)およびマトリックス2に関してUTS、2280 N、2100 Nおよび1800 Nの負荷(それぞれの負荷に関してn=3)(図3Dを参照されたい)での破断までのサイクルは、ウェーブメーカー32バージョン6.6(インストロン、カントン、マサチューセッツ州)によって産生された1 HzでのH-正弦波関数を用いて決定した。疲労試験は、室温で中性の燐酸緩衝生理食塩液(PBS)において行った。
【0071】
結果
SEMによって決定したように、90℃で60分後に完全なセリシンの除去を認めた(図1A〜Cを参照されたい)。絹繊維からのセリシンの除去は、繊維の超構造を変化させ、それによってよりなめらかな繊維表面が得られ、その下に存在する絹フィブロインが出現して(図1A〜Cに示す)、平均直径は20〜40 μmの範囲であった。フィブロインは、極限の引っ張り強さの有意な15.2%減少を示した(1.033±0.042 N/繊維〜0.876±0.1 N/繊維)(p<0.05、対応のあるスチューデントt-検定)(図1Dを参照されたい)。最適にした絹マトリックスの機械的特性(図2を参照されたい)を、上記の表1、図3A(マトリックス1)および図3C(マトリックス2に関して)に概要する。最適にした絹マトリックスは、天然のACLと同等の値を示したことは、これらの結果から明らかであり、これらの値は平均で極限の引っ張り強さ(UTS)〜2100 N、剛性〜250 N/mm、降伏点〜2100 Nおよび破断時の33%伸長を有することが報告されている(Wooら、「The Tensile Properties of Human Anterior Cruciate Ligament(ACL)and ACL graft tissue.」、「Knee Ligaments:Structure, Function, Injury and Repair」D. Danielら編、レイブン出版社、279〜289頁(1990))。
【0072】
マトリックス1に関して図3Bおよびマトリックス2に関して図3Dに示したマトリックス疲労データの回帰分析は、生理的負荷レベル(400 N)まで外挿すると、インビボでの破断までのサイクル数を予測して、マトリックスの寿命がマトリックス1に関して330万サイクルであること、マトリックス2に関して寿命が1000万サイクルより大きいことを示している。洗浄した絹繊維を利用するワイヤロープマトリックス設計によって、生理的に同等の構造特性を有するマトリックスが得られ、靱帯組織工学のための足場としてそれが適していることを確認した。
【0073】
実施例2
細胞の単離と培養
適当な条件を形成すれば、所望の靱帯線維芽細胞系列への分化を指示できることから、骨髄間質細胞(BMSC)、骨原性、軟骨原性、腱原性、脂肪細胞原性、および筋原性系列に分化することができる多能性細胞を選択した(Markolfら、J. Bone Joint Surg., 71A:887〜893(1989);Caplanら、「Mesenchymal stem cells and tissue repair」、「The Anterior Cruciate Ligament:Current and Future Concepts」、D.W. Jacksonら編、レイブン出版社、ニューヨーク(1993);Youngら、J. Orthopaedic Res. 16:406〜413(1998))。
【0074】
業者(キャンブレックス(Cambrex)、ウォーカースビル、メリーランド州)から得た年齢25歳以下の同意を得たドナーの腸骨稜の骨髄からヒトBMSCsを単離した。ヒト骨髄2200万個を、ヘパリン化(1000単位/ml)生理食塩液3 mlを含む25 mlシリンジに無菌的に吸引した。ヘパリン化骨髄溶液を、骨髄間質細胞を単離および培養するための研究所に氷中で一晩輸送した。業者からの到着時、吸引液25 mlを、10%ウシ胎児血清(FBS)、0.1 mM非必須アミノ酸、100 U/mlペニシリン、100 mg/Lストレプトマイシン(P/S)、および1 ng/ml塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)(ライフテクノロジーズ(Life Technologies)、ロックビル、メリーランド州)を添加したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)に再浮遊させて、組織培養フラスコにおいて吸引液8〜10 μl/cm2で播種した。新鮮な培地を骨髄吸引液に週2回、培養9日目まで加えた。BMSCsは、それらが組織培養プラスチックに接着できることに基づいて選択し、非接着造血細胞は、培養9〜12日後に培地交換の際に除去した。培地は、その後1週間に2回交換した。一次BMSCがほぼコンフルエントに達した後(12〜14日)、それらを0.25%トリプシン/1 mM EDTAを用いて剥離させて、5×103個/cm2で再度播種した。初回継代(P1)hBMSCsをトリプシン処理して、後に使用するため8%DMSO/10%FBS/DMEMにおいて凍結した。
【0075】
絹マトリックスへの細胞播種
凍結したP1 hBMSCsを解凍して、5×103個/cm2で再度播種して(P2)、ほぼコンフルエントに達してからトリプシン処理して、マトリックス播種のために用いた。滅菌した(エチレンオキサイド)絹マトリックス(特にマトリックス1および2のコード1本、平行な抽出絹繊維の束30本およびコラーゲン繊維のワイヤロープ)に、細胞容積を最少にして、細胞-マトリックス接触を増加するように、テフロンブロックに機械処理した特注の播種チャンバー(全量1 ml)に細胞を播種した。細胞のスラリー(3.3×106個BMSCs/ml)と共に4時間インキュベーション後の播種したマトリックスを、実験期間のあいだ適当量の細胞培養用培地を含むペトリ皿に移した。
【0076】
絹フィブロインの分解速度を決定するために、極限の引っ張り強さ(UTS)を、生理的増殖条件、すなわち細胞培養用培地における培養期間の関数として測定した。長さ3 cmの平行な絹繊維30本の群を抽出して、hBMSCsを播種し、フィブロイン上で37℃で5%CO2において21日間培養した。非播種対照群も同様に培養した。絹フィブロインUTSは、播種および非播種群に関して培養期間の関数として決定した。
【0077】
結果
絹マトリックスに対する骨髄間質細胞の反応も同様に調べた。BMSCsは、培養1日後、絹およびコラーゲンマトリックスに容易に接着してその上で増殖し(図4A〜Cおよび図10Aを参照されたい)、隣接する繊維を架橋するように細胞伸長部を形成した。図4Dおよび図10Bに示すように、構築物を覆う均一な細胞シートを培養14日目および21日目でそれぞれ認めた。MTT分析によって、播種したBMSCsによる完全なマトリックスの被覆が培養14日後に確認された(図5を参照されたい)。マトリックス1(図6Aを参照されたい)およびマトリックス2(図6Bを参照されたい)において増殖させた細胞の総DNA定量から、BMSCsが絹構築物上で増殖して成長し、培養21日後および14日後にそれぞれ測定したDNAが最高量であったことを確認した。
【0078】
BMSC播種または非播種抽出対照絹フィブロインの繊維30本の群はいずれも、21日間の培養期間の関数としてその力学的完全性を維持した(図7を参照されたい)。
【0079】
マトリックス2のコード上に播種したBMSCsのRT-PCR分析は、I型およびIII型コラーゲンがいずれも培養14日間のあいだに上方制御されたことを示した(図8)。II型コラーゲンおよび骨シアロタンパク質(それぞれ、軟骨および骨特異的分化の指標)は、培養期間のあいだ検出されないか、無視できるほど発現されたに過ぎなかった。14日目でのリアルタイム定量的RT-PCRによって、GAPDHに対して標準化したところ、III型コラーゲンに対するI型コラーゲンの転写物の比8.9:1が得られた(図11を参照されたい)。III型コラーゲンに対するI型コラーゲンの比が高いことは、反応が創傷治癒または瘢痕組織形成(III型コラーゲンが高レベルで認められる)ではなく、靱帯特異的であることを示している;天然のACLにおけるコラーゲンI対コラーゲンIIIの相対的な比は、〜6.6:1である(Amielら、「Knee Ligaments:Structure, Function, Injury, and Repair」、1990)。
【0080】
実施例3
バイオリアクター系における骨髄間質細胞からの靱帯形成に及ぼす定方向の多次元機械刺激の影響に洞察を与える研究を行う。バイオリアクターは、発達中の靱帯に対して独立したしかし同時の周期的な多次元のひずみ(例えば、並進、回転)を適用することができる。7〜14日間の静的な休息期間の後(播種後時間)、回転的および並進的ひずみ率ならびに直線および回転変形は、1〜4週間のあいだ一定である。並進的ひずみ(3.3%〜10%、1〜3 mm)および回転的ひずみ(25%、90°)を、周波数0.0167 HzでBMSCsを播種した絹骨格のマトリックスに同時に適用し(1分間当たりの応力および弛緩の完全な1サイクル);機械的負荷を行わない播種したマトリックスを有するそれ以外の同一のセットのバイオリアクターを対照とした。実験期間において靱帯を一定の周期的ひずみに曝露した。
【0081】
培養期間後、機械チャレンジした靱帯試料と共に対照(静的)の靱帯試料を以下に関して特徴を調べた:(1)全般的な組織形態学的外観(肉眼による);(2)細胞分布(組織切片およびMTT染色切片の画像処理);(3)細胞形態および方向(組織学的分析);ならびに(4)組織特異的マーカーの産生(RT-PCR、免疫染色)。
【0082】
機械刺激は明らかにBMSCsおよび新たに発達した細胞外マトリックスの形態および構築、マトリックスに沿った細胞の分布、ならびに靱帯特異的分化カスケードの上方制御に影響を及ぼした;BMSCsは、繊維の長軸に沿って整列して、靱帯/腱線維芽細胞と類似の球状の形態をとり、靱帯/腱特異的マーカーを上方制御する。新たに形成された細胞外マトリックスは、マトリックスの長軸と共に負荷の線に沿って整列すると予想される。方向的な機械刺激は、新規絹骨格のマトリックス上に播種したBMSCsに起因するバイオリアクターでの靱帯の発達とインビトロでの形成を増強すると予想される。細胞および新たに形成されたマトリックスの長軸方向は、インビボでのACL内で認められる靱帯線維芽細胞と類似である(Woodsら、Amer. J. Sports. Med.19:48〜55(1991))。さらに、機械刺激は、I型コラーゲンの転写物とIII型コラーゲンの転写物のあいだの正確な発現比(例えば、7:1より大きい)を維持し、瘢痕組織の形成ではなくて新たに形成された靱帯組織が存在することを示している。上記の結果は、機械装置およびバイオリアクター系が骨髄間質細胞と新規絹骨格のマトリックスから始まる組織工学による靱帯のインビトロ形成にとって適した環境(例えば、多次元のひずみ)を提供することを示すと考えられる。
【0083】
これらの予備実験において用いられた培養条件は、さらに、おそらく臨床で用いるために天然のACLの機能的同等物をインビトロで作製するために、靱帯の生理的環境(例えば、異なるタイプの機械的な力を増加させる)をより正確に反映するように拡大することができる。これらの方法は、生物工学によるACLの産生に限定されない。インビボで経験される適当な大きさの多様な力を適用することによって、体における如何なるタイプの靱帯も、本発明の方法によってエクスビボで産生することができる。
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、生物工学による組織、特に靱帯および腱を産生するために用いられるマトリックスまたは足場構造に向けられる。より詳しく述べると、本発明は、それを必要とするレシピエントに移植するために、多能性細胞をエクスビボでその上に播種してもよく、細胞が増殖して前十字靱帯に分化する新規絹骨格マトリックスに関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
毎年、何十万人のアメリカ人が、膝、肘、手、肩、手首、および顎の靱帯および腱を捻挫、断裂、または破断する(Langerら、Science 260:920〜926(1993))。特に重要なものは膝の前十字靱帯である。アメリカだけでも毎年200,000人を超える人々が、前十字靱帯(ACL)を断裂または破断すると予想される(Albrightら、1999、第42章、「Knee and Leg:Soft-Tissue Trauma」、「Orthopaedic Knowledge Update 6」、アメリカ整形外科学会)。ACLは、前脛骨並進の一次安定化剤として、および外反内反膝屈曲角形成の第二の安定化剤として作用し、スポーツの損傷および交通事故に関連した屈曲-回転-外反力に起因する破断または断裂を多くの場合受けやすい。破断または断裂は多くの場合、重度の運動制限、疼痛および不快感に至り、スポーツおよび運動に参加できなくなる。ACLの障害は、三つの範疇に分類される:(1)靱帯性(引っ張り応力による靱帯線維の断裂)、(2)骨折を伴わない骨-靱帯界面での障害、ならびに(3)骨および靱帯の結合部位での骨折を伴う骨-靱帯界面の障害。最も一般的なタイプのACL障害は、第一の範疇、すなわち靱帯性である。
【0003】
ACLの治癒能が低いことは医学界では広く知られている。ACLに対する損傷が有意な断裂または破断を伴う場合には、手術による総置換および再建が必要である。ACL損傷の修復または置換に関して四つの選択肢が利用されている:(1)自己移植片、(2)同種異系移植片、(3)異種移植片、および(4)人工器官(分解性および非分解性)。今日まで、膝の機能を完全に回復することが示された外科修復技法はなく、新規治療選択肢があればおそらく多くの患者の利益となると考えられる。
【0004】
合成ACL置換の使用に関連した問題は、ドナー組織の利用が限られていることと共に、天然の組織の機能的かつ生体適合性の同等物の開発に向けての研究の刺激となった。合成物から生体に基づくACL置換のこのようなシフトはまず、初期の研究において適用され、この場合、コラーゲン様ACL人工器官を、ポリメチルメタクリレート骨固定プラグと共にI型コラーゲンマトリックスにおける再構成I型コラーゲン線維からなる複合構造として調製して、これをウサギにおいて前十字靱帯置換組織として用いた(Dunnら、Am. J. Sports Medicine 20:507〜515(1992))。その後の研究は、架橋したコラーゲン繊維足場構造に播種した靱帯線維芽細胞のように、活性な生物学的成分をプロセスに組み入れて、これを靱帯類似体として用い(Dunnら、J. Biomedical Materials Res. 29:1363〜1371(1995);Dun, M.G.、Materials Res. Soc. Bulletin、11月:43〜46(1996))、天然の靱帯を模倣する構造が形成されうることを示唆した。
【0005】
間葉幹細胞を播種して予め応力を与えたコラーゲン縫合に基づく腱ギャップモデルは、大きい腱欠損の修復の改善を示した(Youngら、1998)。Gouletらは、非架橋コラーゲンにおいて靱帯線維芽細胞を用いることによって、コラーゲン-線維芽細胞系を改変し、組織に予め応力を加えて、外科的移植を容易にするために骨を結合させた(Gouletら、「Tendons and Ligaments」、「Principles of Tissue Engineering」、R. Lanza、R. Langer、W. Chick編、R.G. ランデス社、633〜643頁、R.G.ランズ社とアカデミック出版社、サンジエゴ、カリフォルニア州(1997))。新しい靱帯を垂直位置で成長させることによって産生された受動的な張力によって、線維芽細胞の伸長、ならびに細胞および周辺の細胞外マトリックスの整列が誘導された。
【0006】
絹は、幅広い機械的特性を有する生体材料および組織工学による足場構造を設計するための新しい選択肢となることが示されている(Sofia, S.ら、J. Biol. Mat. Res. 54:139〜148(2001))。例えば、球体を織るクモであるネフィリア・クラビペス(Nephilia clavipes)からの誘導索の絹は、天然の如何なる繊維の中でも最高の強度を有し、合成の高性能繊維の機械的特性に匹敵する。絹はまた、圧迫障害にも耐えて、高い生理的温度で安定であり、水性溶媒および有機溶媒に不溶性である。近年、絹は、繊維様タンパク質の構造-機能関係を研究するためのモデルとして研究されている。天然または人工の双方の絹の遺伝子の操作は、絹タンパク質の発現、集合、および特性に洞察を与えた。このように、特異的かつ印象的な機械的特性、および改変または装飾のための広範囲の表面化学を有する材料を作製できることは、絹が重要なクラスの生体材料を提供する可能性があることを示唆している。本発明の発明者らによる最近の研究は、カイコガ(Bombyx mori)のカイコの絹の絹被膜への線維芽細胞の結合および増殖に成功したことを証明した。
【0007】
組織工学はおそらく、損傷または疾患時に移植するために、生物学的に基づく機能的組織をインビトロで産生することによって、整形外科における臨床での選択肢を改善する。さらに、成人幹細胞は、様々な細胞タイプを産生できること、かつ、それによって組織修復においてインビトロまたはインビボで有効に機能することがますます認識されつつある(Sussman, M.、Nature 410:640(2001))。インビボで産生された組織工学によるACLが、インビボで膝を安定化させて、機能することに成功するならば、膝関節の形態および運動力学、ならびにACL構造に及ぼす得られた効果を構築物の設計に組み入れなければならない。ACL構造-機能関係にミスマッチがあれば、移植の障害が起こると考えられる。
【0008】
今日まで、組織培養の生物工学による前十字靱帯に関してヒト臨床試験は報告されていない。これは、それぞれのアプローチが以下の問題の一つまたはそれ以上に取り組むことができなかったという事実による:(1)容易に利用可能な細胞または組織源がないこと;(2)ACLの独自の構造(例えば、波状のパターン、末梢の螺旋状パターン、および等尺性の繊維の構築)、ならびに(3)前駆細胞が分化するまでおよび/または自己由来細胞が移植片に浸潤するまでに必要なインビボリモデリング時間、このため患者が不安定な膝およびリハビリテーションを受けなければならない時間が延長する。より十分に機能的な生物工学による前十字靱帯を作製するためのマトリックスを開発すれば、膝の再建手術の特異的分野に大きい利益を与え、同様に、インビトロ組織産生および置換手術の全体的な分野に対してもより広い利益となると考えられる。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、エクスビボで靱帯および腱を産生する新規の絹繊維骨格のマトリックスを提供する。より詳しく述べると、本発明は、骨髄間質細胞(BMSCs)のような多能性細胞を播種してもよい新規絹繊維骨格のマトリックスを用いて、機械的および生物学的に機能的な前十字靱帯を作製することに向けられる。新規マトリックスと多能性細胞とを含む機械的および生物学的に自己由来または同種異系の前十字靱帯は、バイオリアクター環境内で調製して、移植前にインビトロでデノボ靱帯組織形成を誘導してもよい。意外にも、新規絹繊維骨格のマトリックスは、今ではバイオリアクター内で培養の際に方向性の機械的刺激を必要とすることなく、靱帯系列へのBMSCの分化を支持することが判明している。本発明者らは、機械刺激は、分化および組織発達プロセスを増強する場合に限って役立つと考えている。
【0010】
本発明はまた、絹繊維骨格のマトリックスにおいて多能性幹細胞を播種する段階、少なくとも二つのアンカーへの結合によって播種したマトリックスを結合させる段階、ならびに細胞の増殖および再生にとって適当な条件下でマトリックス内の細胞を培養する段階を含む、新規絹繊維骨格のマトリックスを用いて組織工学によってACLをエクスビボで産生する方法を提供する。培養段階は、結合したアンカーの一つまたは双方の運動による一つまたは複数の機械的な力をマトリックスに与えるさらなる段階を含んでもよい。ACLを培養する好ましい態様において、多能性細胞およびより詳しくは骨髄間質細胞を用いる。適したアンカー材料は、それに対してマトリックスが結合することができ(一時的または永続的に)、アンカーにおいて靱帯および腱組織の増殖または骨組織増殖を支持する任意の材料を含む。好ましいアンカー材料には、ヒドロキシアパタイト、脱塩骨、および骨(同種異系または自己由来)が含まれる。アンカー材料にはまた、他の材料の中でもチタン、ステンレススチール、高密度ポリエチレン、ダクロンおよびテフロンが含まれてもよい。炭酸カルシウムを燐酸カルシウムに変換するために処置されているゴイノプラ(Goinopra)珊瑚も同様にアンカー材料として用いられている。好ましい態様において、マトリックスに加えてもよい機械的な力は、前十字靱帯がインビボで経験する機械的な刺激を模倣する。これは、張力、圧迫、ゆがみ、および剪断の適当な組み合わせをマトリックスに輸送することによって行われる。
【0011】
本発明に従って産生された生物工学による靱帯は、適用した機械的な力の方向への細胞の方向および/またはマトリックスの波状のパターン、ならびにそのような力が適用された場合に、同様に機械的な力または刺激によって生じる機械的な負荷の軸に沿って、I型コラーゲン、III型コラーゲン、およびフィブロネクチンタンパク質を含む靱帯および腱特異的マーカーが産生されることを都合よく特徴とする。好ましい態様において、靱帯または腱は、らせん的構築に整列される繊維の束が存在することを特徴とする。
【0012】
本発明のもう一つの局面は、新規絹繊維骨格のマトリックスを用いてエクスビボで幅広いタイプの靱帯および腱を産生する方法、ならびにマトリックス(例えば、形態、構築、組成物)(実施例1を参照されたい)およびアンカーの大きさを、産生される特定のタイプの靱帯または腱(例えば、後十字靱帯、回旋腱板腱、肘および膝の内側側副靱帯、手の屈筋腱、果該側靱帯、ならびに顎または顎関節の腱および靱帯)の大きさを反映するように適合させることによって、および同様に産生される特異的タイプの靱帯または腱がインビボで経験する機械的な刺激を模倣するように、適用される力の特定の組み合わせを適合させることによる、前十字靱帯を産生する方法の適合である。本発明の一部であると見なされるこの方法の同様に、さらなるマトリックス組成、形態、構築、および細胞培養の際に適用される機械力を、産生される特異的細胞タイプがインビボで経験する応力を模倣するように適合させることによって、多能性幹細胞からエクスビボで他の組織を産生するために適合させることができる。本発明の方法はさらに、特に発達中の組織がインビボで経験する他の刺激を組み入れるように改変することができる。他の刺激のいくつかの例には、化学刺激および電磁刺激が含まれる。
【0013】
本明細書において用いられるように、「組織」という用語は、当業者に対して一般的に認識される生物/医学的定義を有すると意図される。非制限的な例として、「組織」は、ステッドマンの医学辞書において以下のように定義される:
[A]類似の細胞およびそれを取り巻く細胞内物質の集合体。体内には基本的な四つの組織が存在する:1)上皮;2)血液、骨、および軟骨を含む結合組織;3)筋組織;ならびに4)神経組織。
【0014】
本発明のもう一つの局面は、本発明の方法によって産生される特定の靱帯または腱に関する。産生することができる靱帯または腱のいくつかの例には、前十字靱帯、後十字靱帯、回旋腱板腱、肘および膝の内側側副靱帯、手の屈筋腱、果外側靱帯、ならびに顎または顎関節の腱および靱帯が含まれる。本発明の方法によって産生される可能性がある他の組織には、軟骨(関節および半月板の双方)、骨、筋肉、皮膚および血管が含まれる。
【0015】
上記の説明は、以下の詳細な説明が理解されるように、および本発明の当技術分野への貢献がよりよく認識されるように、本発明のより重要な特徴をかなり広く説明している。本発明の他の目的および特徴は、添付の図面と共に検討される以下の詳細な説明から明らかである考えられる。しかし、図面は、説明する目的のために限って設計されており、本発明の限界の定義として設計されたのではないと理解すべきであり、本発明の限界は添付の請求の範囲を参照すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1Aは、セリシンコーティングを有する天然の絹繊維1本の走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。図1Bは、37℃で60分間抽出した図1Aの絹繊維のSEMを示す。図1Cは、90℃で60分間抽出した図1Aの絹繊維のSEMを示し、セリシンコーティングが完全に除去されたことを示す。図1Dは、抽出条件の関数としての極限の引っ張り強さ(UTS)を示すチャートである。
【図2】図2Aは、ねじれ階層2レベルからなるワイヤロープ形態を有するマトリックス1のコード1本を示す。コード6本(例えば、マトリックス1)を平行にして用いると、マトリックスは天然のACLと類似の機械的特性を有する。図2Bは、ねじれ階層3レベルからなるワイヤロープ形態を有するマトリックス2のコード1本を示す。コード6本(例えば、マトリックス2)を平行にして用いると、マトリックスは天然のACLと類似の機械的特性を有する。
【図3】図3Aは、図2Aに示す平行な絹フィブロインコード6本から形成されたマトリックス1の負荷伸長曲線(N=5)を示す。図3Bは、マトリックス1の疲労データを示すUTS、1680 N、および1200 Nの負荷(それぞれの負荷に関してn=5)での破損までのサイクルのチャートである。マトリックス1疲労データの回帰分析から、インビボでの破損までのサイクル数を予測するために生理的負荷レベル(400 N)まで外挿すると、マトリックスの寿命は330万サイクルであることが示される。図3Cは、図2Bに示すように、平行な絹フィブロインコード6本から形成されたマトリックス2(N=3)の負荷-伸長曲線を示す。図3Dは、マトリックス2の疲労データを示す、UTS、2280 N、2100 Nおよび1800 Nの負荷(それぞれの負荷に関してN=3)での破損までのサイクルのチャートである。マトリックス2疲労データの回帰分析から、インビボでの破断までのサイクル数を予測するために生理的負荷レベル(400 N)まで外挿すると、マトリックスの寿命は1000万サイクルを超えることが示される。
【図4】図4Aは、細胞を播種する前の抽出絹フィブロインのSEMを示す。図4Bは、絹フィブロイン上に播種されて接着した骨髄間質細胞の播種直後のSEMを示す。図4Cは、絹フィブロイン上に接着および伸展した骨髄細胞の播種1日後のSEMを示す。図4Dは、無傷の細胞-細胞外マトリックスシートを形成する絹フィブロイン上に播種した播種14日後の骨髄間質細胞のSEMを示す。
【図5】図5Aは、図2Aに示す長さ3 cmの絹フィブロインコードを示し、これに骨髄間質細胞を播種して、静的な環境で14日間培養し、MTTによって染色したところ、増殖期間後に細胞によってマトリックスが均一に被覆されたことを示している。図5Bは、MTTで染色した長さ3 cmの絹フィブロインコードの対照鎖を示す。
【図6】図6Aは、21日間の培養期間で、総細胞DNAによって決定した絹フィブロインマトリックス1上での骨髄間質細胞の増殖を示すチャートであり、培養21日後の細胞増殖の有意な増加を示している。図6Bは、培養14日後の細胞増殖の有意な増加を示す、14日間の培養期間における総細胞DNAによって決定した絹フィブロインマトリックス2上での骨髄間質細胞増殖を示す棒グラフである。
【図7】生理的増殖条件下で21日間の培養期間において骨髄間質細胞を播種したまたは播種しない30絹繊維抽出構築物の極限の引っ張り強さを示す。
【図8】選択マーカーのRT-PCR増幅のゲル電気泳動分析を経時的に示す。ゲルは、14日間の培養期間においてマトリックス2上で増殖した骨髄間質細胞によるI型コラーゲンおよびIII型コラーゲンの発現レベルが、ハウスキーピング遺伝子であるGAPDHに対して標準化したところ、上方制御されていること示す。II型コラーゲン(軟骨マーカーとして)および骨シアロタンパク質(骨組織形成のマーカーとして)は検出されず、このことは、マトリックス2と共に培養した場合のBMSCsによる分化反応が靱帯特異的であることを示している。
【図9】インビボでの移植6週間後のマトリックス1のコード1本を示し(移植時には播種していない)、これを用いてウサギモデルにおいて内側側副靱帯(MCL)を再建した。(A)は、ヘマトキシリン-エオジン染色によって可視化した場合の、前駆宿主細胞によって取り囲まれるマトリックス1フィブロイン繊維、ならびにマトリックス内へのおよび個々のフィブロイン繊維周囲の組織の内増殖を示す;(B)トリクロム染色によって可視化した場合の、マトリックスへのおよび個々のフィブロイン繊維周辺へのコラーゲン様組織の内増殖を示す。
【図10】(A)1日および(B)21日間コラーゲン繊維上で播種して増殖させた骨髄間質細胞を示し、(C)は、I型およびIII型コラーゲン発現対ハウスキーピング遺伝子GAPDHのRT-PCRおよびゲル電気泳動分析を示す:a=I型コラーゲン、14日目;b=I型コラーゲン、18日目;c=III型コラーゲン、14日目;d=III型コラーゲン、18日目;e=GAPDH、14日目;f=GAPDH、18日目。II型コラーゲン(軟骨のマーカーとして)および骨シアロタンパク質(骨組織形成のマーカーとして)は検出されず、靱帯特異的分化反応を示した。
【図11】14日目でのリアルタイム定量的RT-PCRを示し、GADPHに対して標準化したところ、I型コラーゲン対III型コラーゲンの転写物の比8.9:1を得た。
【発明を実施するための形態】
【0017】
発明の詳細な説明
本発明は、その上に多能性細胞を播種して、細胞が増殖して靱帯および腱線維芽細胞に分化し、それによって前十字靱帯(ACL)、または他の靱帯、腱、もしくは組織の形成が得られる、新規絹繊維骨格のマトリックスに向けられる。新規絹繊維骨格のマトリックスは、ワイヤロープ(ねじれたまたは編まれたような)形態の繊維を有するように設計され、これは天然の前十字靱帯(下記の表1を参照されたい)と同一の機械特性を示し、マトリックスの構造および形態に単純な変化を加えることによって如何なる所望の靱帯または腱組織(下記の表2を参照されたい)も形成することができる。
【0018】
本発明はまた、実施例1に記載のように単離および培養され、絹繊維骨格のマトリックス上で播種され、静的な条件下でバイオリアクターにおいて培養される多能性骨髄間質細胞(BMSCs)が、靱帯および腱特異的分化を受けて生きた組織を形成するという知見に基づいている。さらに、マトリックス内で多能性細胞から生成されたインビトロで産生された生物工学による組織の組織形態学的特性は、組織生成の際にマトリックスに機械的な力を直接適用することによって影響を受ける。この発見は、機械的応力、生化学的および細胞固定法、ならびに細胞分化のあいだの関係に対して重要な新しい洞察を提供し、多能性細胞からインビトロで広く多様な靱帯、腱、および組織を産生するために適用される。
【0019】
本発明の一つの局面は、図2Aおよび2Bに示されるように、ワイヤロープ(ねじれたまたは編まれた)形態を有する絹繊維を含むマトリックスに関する。
【0020】
下記の実施例に記述するように、絹フィブロインの機械的特性(図1A〜Cに示すように)の特徴を調べて、理論的なコンピューターモデルを用いて、ACLを作製するために適用可能なマトリックスを形成するための形態を誘導した(図1Dを参照されたい)。マトリックスの表面積を増加させるために、および組織の内増殖のための支持を増強するために、ACL置換体として用いるためにコード6本の構築物を選択した。以下を含むいくつかの最適な構築物の幾何学的階層の二つを決定した:マトリックス1:ACL人工器官1個=平行なコード6本;コード1本:ねじれた鎖3本(ねじれ3個/cm);鎖1本=ねじれた束6本(ねじれ3個/cm);1束=平行な洗浄繊維30本;およびマトリックス2:ACLマトリックス1個=平行なコード6本;コード1本=ねじれた鎖3本(ねじれ2個/cm);鎖1本=ねじれた束3本(ねじれ2.5個/cm);1束=3群(ねじれ3個/cm);1群=平行な抽出絹フィブロイン繊維15本。マトリックス1およびマトリックス2の繊維数および形態は、絹人工器官が、極限の引っ張り強さ、直線剛性、降伏点、および破断時の%伸長におけるACLの生化学特性と類似であるように選択すると、組織工学によるACLの開発のための強力な開始点として役立つ。いずれによってもACLの特性を模倣する機械特性が得られる異なる形態を有する二つのマトリックスを生成できることは、所望の機械特性を得るために無限数の幾何学的配置が存在することを示している。当業者は、任意の所望の靱帯または腱組織に関するもう一つの形態が、コード、鎖、束、群、および繊維の如何なる数、組み合わせ、または構築を含んでもよく(下記の表2を参照されたい)、それによって望ましい靱帯または腱のそれらを模倣する適用可能な機械的特性を有するマトリックス構築物が得られることを認識すると考えられる。例えば、一つの(1)ACL人工器官は、インビトロまたはインビボで最終的なマトリックスを結合させる手段が存在する限り、コード1本から無限数のコードの範囲の如何なる数の平行なコードを有してもよい。当業者は、マトリックスが所望の機械的特性を生じる限り、所定の形態に関してねじれレベルの数(レベル1は群、束、鎖、またはコードのいずれかとして定義される)に制限はないことも認識すると考えられる。さらに、当業者は、ACL人工器官を作製する場合のマトリックスの形態および構築の設計にあたっては自由度が大きいことを認識し、したがって、所望の靱帯または腱組織のマトリックス設計を予想するために開発された理論的コンピューターモデルの有用性を理解すると考えられる(実施例1を参照されたい)。したがって、当業者は、形態の変化(すなわち、人工器官を作製するために用いられるコードの数または群における繊維の数)を用いて、ほとんどの靱帯および腱に適用可能なマトリックスを作製することができると認識すると考えられる。例えば、より小さい手の靱帯または腱に関して、マトリックスの構築によって、特定の生理的環境にとって適した機械的特性が得られる限り、マトリックス1のコード1本(またはコード2本もしくは3本等)を作製するために用いられる形態および構築は適当であってもよい。
【0021】
しかし、本発明は、記述のワイヤ-ロープ形状に制限されず、ACLと類似の(すなわち、天然のACLまたは長さが26〜30 mmの膝蓋腱のような一般的に用いられる置換移植片に関して、極限の引っ張り強さ>2000 N、直線剛性100〜600 N/mm)または産生される所望の靱帯および腱と類似のマトリックス機械特性が得られる如何なる形態または形態の組み合わせ(例えば、平行、ねじれ、編み目、メッシュ状)も用いることができる。マトリックス1およびマトリックス2の双方の繊維数および形態は、機械的に適当なACLマトリックス、または他の所望の靱帯もしくは腱マトリックス(例えば、後十字靱帯(PCL))を産生するように選択した。例えば、マトリックス1の6コード構築物のコード1本を用いて、ウサギにおいて内側側副靱帯(MC)を構築した(図9を参照されたい)。マトリックス1およびマトリックス2の6-コード絹構築物の機械的特性を表1および図3に記述する。本発明に従うACL組織工学において適用可能なマトリックスが得られると考えられる大きい自由度の設計の例として、さらなる形態およびその関連する機械的特性を表2に記載する。
【0022】
【表1】
長さ3 cmのコードに基づく異なる二つのコードの機械特性
【0023】
【表2】
ACLの置換に関して適した機械的特性が得られると考えられるいくつかの幾何学階層の例。注意:マトリックス1と2は、実施例1に示すように作製し;マトリックス3は、束1本の人工器官を生じ、マトリックス4は、鎖2本の人工器官を生じ、マトリックス5はコード3本の人工器官を生じ、マトリックス6は、コード6本の人工器官のもう一つの変化形であり、かつマトリックス7はコード12本の人工器官を生じると考えられる。
【0024】
都合がよいことに、絹繊維骨格のマトリックスは絹のみを含む。絹のタイプおよび起源には以下が含まれる:カイコガ(Bombyx mori)および関連種のようなカイコガからの絹;ネフィラ・クラビペス(Nephila clavipes)のようなクモからの絹;遺伝子工学による細菌、酵母、哺乳類細胞、昆虫細胞、ならびにトランスジェニック植物およびトランスジェニック動物からの絹;カイコまたはクモの培養細胞から得た絹;天然の絹;天然の絹のクローニングされた完全または部分配列;ならびに絹または絹様配列をコードする合成遺伝子から得た絹。その未加工型では、カイコガのカイコから得た天然の絹フィブロインはセリシンと呼ばれる膠様タンパク質によってコーティングされており、これはマトリックスを構成する繊維に細胞を播種する前に繊維から抽出する。
【0025】
もう一つの態様において、マトリックスは、(1)絹とコラーゲン繊維との複合体、(2)絹とコラーゲン泡沫、メッシュ、もしくはスポンジの複合体との複合体、(3)絹フィブロイン繊維と絹泡沫、メッシュ、もしくはスポンジとの複合体、(4)絹と生体分解性のポリマー(例えば、セルロース、綿、ゼラチン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ(ラクチドコグリコリド)、ポリカプロラクトン、ポリアミド、ポリ無水物、ポリアミノ酸、ポリオルトエステル、ポリアセタール、タンパク質、分解性のポリウレタン、多糖類、ポリシアノアクリレート、グリコサミノグリカン−例えばコンドロイチン硫酸、ヘパリン等、多糖類−天然の再処理または遺伝子操作型−例えば、ヒアルロン酸、アルギネート、キサンタン、ペクチン、キトサン、キチン等、エラスチン−天然の再処理または遺伝子操作した化学型、コラーゲン−天然の再処理したまたは遺伝子操作型)との複合体、または(5)絹と非生体分解性のポリマー(例えば、ポリアミド、ポリエステル、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリアクリレート、ポリビニル、ポリカーボネート、ポリテトラフルオロエチレン、またはニトロセルロース材料)との複合体を含んでもよい。複合体は一般的に、多孔性、分解性のようなマトリックスの特性を増強して、同様に、細胞播種、増殖、分化、または組織発達を増強する。図10は、コラーゲン繊維がBMSC増殖および靱帯特異的分化を支持できることを示している。
【0026】
本発明のマトリックスはまた、その上での細胞増殖および/または組織分化を増強するように処理してもよい。細胞増殖および組織分化を増強するための例としてのマトリックス処理には、金属、放射線照射、架橋、化学表面改変(例えば、RGD(arg-gly-asp)ペプチドコーティング、フィブロネクチンコーティング、増殖因子のカップリング)、および物理的表面改変が含まれるがこれらに限定されない。
【0027】
本発明の第二の局面は、新規絹繊維骨格のマトリックスと、マトリックス上に播種した自己由来または同種異系(組織のレシピエントに依存する)骨髄間質細胞(BMSCs)とで形成された機械的および生物学的に機能的なACLに関する。絹繊維骨格のマトリックスは、バイオリアクター培養の際に如何なる機械刺激も必要とせずに靱帯系列への間質細胞分化を誘導する。絹繊維骨格のマトリックス上に播種して、ペトリ皿において増殖させたBMSCsは、接着して伸展し(図4を参照されたい)、マトリックスを覆うように増殖して(図5および6を参照されたい)、および靱帯特異的マーカーの発現によって示されるように分化する(図8を参照されたい)。軟骨(II型コラーゲン)および骨(骨シアロタンパク質)のマーカーは、発現されなかった(図8を参照されたい)。靱帯特異的マーカーの発現を示すデータを実施例2に述べる。
【0028】
もう一つの局面において、本発明は、エクスビボでACLを産生する方法に関する。靱帯細胞へと分化することができる細胞を、成熟靱帯機能への胚発達の過程においてインビボでACLが経験する運動および力を模倣する条件下で増殖させる。これは、以下の段階によって行われる。滅菌条件下で、多能性細胞を、それに対して細胞が接着する都合のよい円柱形状である三次元絹繊維骨格のマトリックス内に播種する。方法において用いられる三次元絹繊維骨格のマトリックスは、予備マトリックスとして役立ち、これは、分化しつつある細胞が産生する細胞外マトリックスによって補充され、置き換えられることもありうる。新規絹繊維骨格のマトリックスを用いると、ACLの発達を増強または加速する可能性がある。例えば、新規絹繊維骨格のマトリックスは、細胞の細胞外マトリックス成分によって強化される前でも強い力に耐えることができる特異的機械的特性(例えば、増加した引っ張り強さ)を有する。新規絹繊維骨格の予備マトリックスの他の都合のよい特性には、生物学的適合性および生体分解に対する感受性が含まれるがこれらに限定されない。
【0029】
多能性細胞は、用いられる特定のマトリックスおよびマトリックス形成法に応じて、マトリックス形成の前後いずれかに予備的なマトリックスの内部に播種してもよい。均一な播種が好ましい。理論的には、播種される細胞数は、産生される最終的な靱帯を限定しないが、最適な播種は産生率を増加させる可能性がある。最適な播種量は、特異的培養条件に依存すると考えられる。一つの態様において、マトリックスに、天然の靱帯の生理的細胞密度の約0.05〜5倍を播種する。
【0030】
一つまたは複数のタイプの多能性細胞が方法において用いられる。そのような細胞は、適当な分化シグナルに反応して、広く多様な細胞タイプへの分化能および靱帯特異的マーカーの発現能を有する。より詳しく述べると、方法は、靱帯および腱組織の細胞への分化能を有する細胞を用いる必要がある。好ましい態様において、骨髄間質細胞を用いる。得られた生物工学による靱帯が患者に移植される場合、細胞は、意図するレシピエントと適合性である起源に由来しなければならない。レシピエントは一般的にヒトであるが、獣医学での応用も存在する。一つの態様において、細胞はレシピエントから得るが(自己由来)、適合性のドナー細胞も同様に用いて同種異系靱帯を作製してもよい。例えば、同種異系靱帯(例えば、提供された骨髄から単離した骨髄間質細胞、提供されたACL組織から単離したACL線維芽細胞のような別のヒトからの細胞を用いて)を作製する場合、無傷のドナーACL組織から単離したヒト前十字靱帯線維芽細胞(例えば、死体または総膝移植手術から得たもの)、破断したACL組織(例えば、ACL再建手術を受ける患者から手術時に採取したもの)または骨髄間質細胞を用いてもよい。適合であるか否か決定は、熟練した医師の能力範囲に含まれる。
【0031】
本発明のもう一つの態様において、後十字靱帯、回旋腱板腱、肘および膝の内側側副靱帯、手の屈筋腱、果外側靱帯、ならびにACL以外の顎または顎関節の腱および靱帯を含むこれらに限定されない靱帯または腱、軟骨、骨、ならびに他の組織は、本発明の方法に従うマトリックスによって作製してもよい。このように、産生すべき組織に従ってマトリックスに播種すべき細胞を選択する(例えば、多能性または所望の組織タイプの)。本発明に従ってマトリックス上に播種された細胞は、自己由来または同種異系であってもよい。自己由来細胞を用いると、レシピエントに移植するための同種異系移植片または同系移植片が効果的に作製される。
【0032】
列挙したように、ACLを形成するために細胞をマトリックス上に播種するが、都合がよいのは骨髄間質細胞である。骨髄間質細胞は一つのタイプの多能性細胞であり、当技術分野において、単に間葉幹細胞として、または単に間質細胞として呼ばれる。列挙したように、これらの細胞源は自己由来または同種異系となりうる。本発明はまた、適当な環境(インビボまたはインビトロのいずれか)である限り、絹繊維骨格のマトリックス上に播種した成人または胚の幹細胞または多能性細胞を用いることを企図し、細胞外マトリックス組成物(例えば、タンパク質、糖タンパク質内容物)、構築、構造または機能においてACLまたは任意の他の所望の靱帯もしくは組織を再現することができる。
【0033】
線維芽細胞はまた、本発明のマトリックス上に播種するために本発明によって企図される。線維芽細胞は多くの場合多能性細胞とは呼ばれないため、線維芽細胞には、ACL組織から単離した成熟ヒトACL線維芽細胞(自己由来または同種異系)、他の靱帯組織からの線維芽細胞、腱組織、新生児包皮、臍帯血、または他の任意の細胞からの線維芽細胞が含まれると解釈され、それらは成熟または多能性、成熟脱分化、または遺伝子工学によるものであれ、適当な環境で培養して(インビボまたはインビトロのいずれか)絹繊維骨格のマトリックス上に播種すると、細胞外マトリックス組成物(例えば、タンパク質、糖タンパク質内容物)、構築、構造または機能においてACLまたは他の任意の所望の靱帯もしくは組織を再現することができる。
【0034】
マトリックス円柱面は、それを通して一定範囲の力がマトリックスに適用されるアンカーにそれぞれ結合する。マトリックスへの力の輸送を促進するために、マトリックスの各面の表面全体が各アンカーの面に接触することが好ましい。結合部位を反映する形状(例えば、円柱状)を有するアンカーが、本発明の方法において用いるために最も適している。構築した後、結合したマトリックスにおける細胞を、細胞の増殖および再生にとって適当な条件下で培養する。マトリックスは、培養の過程において結合したアンカーを通して適用される一つまたは複数の機械的な力を受ける(結合したアンカーの一つまたは双方の運動によって)。天然のACLまたは他の組織がインビボで経験する条件を模倣する機械的な力を、培養期間において提供する。
【0035】
アンカーは、マトリックス結合のために適した材料で構成すべきであり、得られた結合は、適用される機械的な力の応力に耐えるために十分に強くなければならない。さらに、アンカーは、分化しつつある細胞によって産生される細胞外マトリックスが結合するために適した材料で構成することが好ましい。アンカーは、発達しつつある靱帯を結合しながら骨組織の内増殖(インビトロまたはインビボのいずれか)を支持する。適したアンカー材料のいくつかの例には、ヒドロキシアパタイト、ゴイノプラ珊瑚、脱塩骨、骨(同種異系または自己由来)が含まれるがこれらに限定されない。アンカー材料にはまた、チタン、ステンレススチール、高密度ポリエチレン、ダクロンおよびテフロンが含まれてもよい。
【0036】
または、アンカー材料は、選択した材料を、靱帯マトリックス結合または骨マトリックス結合またはその双方を促進する因子と共に注入することによって作製またはさらに増強してもよい。注入するという用語は、アンカー上に因子を適当に分配する如何なる応用法(例えば、コーティング、浸透、または接触)も含まれると見なされる。そのような因子の例には、ラミニン、フィブロネクチン、接着を促進する任意の細胞外マトリックスタンパク質、絹、アルギニン-グリシン-アスパルテート(RGD)ペプチド結合領域またはRGDペプチドそのものを含む因子が含まれるがこれらに限定されない。増殖因子または骨形成タンパク質も同様に、アンカーの結合を増強するために用いることができる。さらに、アンカーに接着してマトリックスに結合し、インビトロおよびインビボの双方で増強されたマトリックス結合を生じる細胞(例えば、幹細胞、靱帯細胞、骨芽細胞、骨芽前駆細胞)を、アンカーに予め播種してもよい。
【0037】
例としてのアンカー系は、出願人の同時係属中の出願である米国特許出願第09/___号に開示される。マトリックスは、アンカー面との接触によって、またはアンカー材料の中にマトリックス材料が実際に浸透することによってアンカーに結合する。アンカーによってマトリックスに適用される力が、産生される最終的な靱帯を指示するため、産生される最終的な靱帯の大きさは、部分的にアンカーの結合部位の大きさによって指示される。当業者は、所望の最終的な靱帯に対して適当な大きさのアンカーを用いるべきであることを認識すると考えられる。ACLを形成するために好ましいアンカー形状は円柱状である。しかし、当業者は、他のアンカーの形状および大きさも同様に適当に機能することを認識すると考えられる。好ましい態様において、アンカーは生物工学による靱帯のレシピエントの大腿骨および脛骨における骨トンネルに直接挿入するために適当な大きさおよび組成物を有する。
【0038】
本発明のもう一つの態様において、アンカーは、インビトロ培養のあいだ一時的に限って用いてもよく、その後マトリックスのみをインビボで埋め込む際に除去してもよい。
【0039】
もう一つの態様において、新規絹繊維骨格のマトリックスにBMSCsを播種して、バイオリアクターにおいて培養する。現在のところ、本発明に従って用いてもよい二つのタイプの増殖環境が存在する:(1)インビボバイオリアクター装置システム、および(2)適当な生体適合性の機械的な特性を有するマトリックスがあれば、生存ACLの発達にとって必要な前駆細胞と刺激(化学および物理刺激の双方)とを含む生理的環境を提供することから、「バイオリアクター」として作用するインビボ膝関節。バイオリアクター装置は、分化および細胞外マトリックス(ECM)産生に関して靱帯を形成するために最適な培養条件を提供し、このように、レシピエントに移植する前に最適な機械および生物学的特性を有する靱帯を提供する。さらに、絹繊維骨格のマトリックスにインビトロで細胞を播種して培養する場合には、ペトリ皿を、細胞の増殖および再生にとって適当な条件、すなわち静的な環境が存在するバイオリアクターであると見なしてもよい。
【0040】
本発明の一つの態様に従って、細胞はまた、如何なる機械的な力も適用せずに、すなわち静的な環境でマトリックス上で培養してもよい。例えば、インビトロで機械的な力または刺激を適用しない絹繊維骨格のマトリックスは単独で、BMSCsを播種して培養すると、増殖して靱帯および腱特異的マーカーを発現するように細胞を誘導する(実施例2および図8を参照されたい)。膝関節は、ACLが技術的に発達するように、マトリックスに細胞および正しい環境シグナル(化学および物理)を提供することができる生理的増殖および発達環境として作用する可能性がある。したがって、膝関節(そのバイオリアクターの形としての)プラスマトリックス(接種していない、接種したがインビトロで分化していない、または接種して移植前にインビトロで分化した)があれば、マトリックスに播種した細胞タイプおよびマトリックスを埋め込む解剖学的位置に応じて、ACLsまたは他の所望の組織の発達が起こる。図9は、適当なMCL機械的特性を有する播種していない絹骨格のマトリックスのみをインビボで6週間埋め込んだ場合の、内側側副靱帯(MCL)の発達に及ぼす内側側副膝関節環境の影響を示す。細胞を、機械的刺激を適用しない静的な環境、またはバイオリアクター装置のような動的な環境で培養するにせよ、細胞の増殖および再生にとって適当な条件は、所望の靱帯または組織を作製するために都合よく存在する。
【0041】
下記の実施例に記載の実験において、適用した機械的刺激は、得られた組織内で前駆細胞の形態、細胞構築に影響を及ぼすことが示された。細胞によって分泌される細胞外マトリックスの成分および組織全体の細胞外マトリックスの構築も同様に、組織形成の際にマトリックスに適用される力によって有意に影響を受けた。インビトロ組織再生の際に、細胞および細胞外マトリックスは負荷の軸に沿って整列し、これは同様に天然の膝関節の運動および機能によって生じる様々な負荷軸に沿って整列している天然のACLのインビボ構築を反映する。これらの結果は、ACLのような発達しつつある組織の細胞が本来経験する物理的刺激が、前駆細胞の分化および組織形成において重要な役割を果たすことを示唆している。それらはさらに、この役割が類似の組織を産生するために機械的操作によってインビトロで有効に繰り返すことができることを示している。機械的操作によって産生される力が、インビボでACLが経験する力により密接に類似すれば、得られる組織はより密接に天然のACLに類似すると考えられる。
【0042】
バイオリアクターによってインビトロでマトリックスに機械的刺激を加えると、一つのアンカーに適用された周期的および回転的ひずみの双方に対する独立したしかし同時の制御が他のアンカーに関して存在する。もう一つの態様において、マトリックスを単独でインビボで埋め込んで、患者からのACl細胞を播種して、患者による機械的シグナルにインビボで曝露してもよい。
【0043】
埋め込み前にマトリックスに細胞を播種する場合、細胞は細胞増殖および分化にとって適当な条件下でマトリックス内で培養される。培養プロセスのあいだ、マトリックスに、結合したアンカーの一つまたは双方の運動によって一つまたは複数の機械的な力を与えてもよい。張力、圧迫、ゆがみおよび剪断の機械的な力、ならびにその組み合わせは、インビボでACLが経験する機械刺激を模倣するように適当な組み合わせ、程度、および回数で適用される。
【0044】
様々な要因が、マトリックスによって認容されうる力の量に影響を及ぼすと考えられる(例えば、マトリックスの組成、細胞密度)。マトリックスの強さは、組織発達の過程で変化すると予想される。したがって、適用される機械的な力またはひずみは、適用時のマトリックスの強さに適切に対応するために、靱帯の形成期間のあいだに、その程度、持続、回数および多様性が増加、減少、または一定のままとなると考えられる。
【0045】
ACLを作製する場合、組織発達の際にマトリックスに適用される刺激の強度および組み合わせがより正確であれば、得られた靱帯はより天然のACLに類似すると考えられる。インビボ環境を密接に模倣するインビトロの機械的な力のレジメを考案する場合には、ACLの天然の機能に関して二つの問題を検討すべきである:(1)ACLが経験する様々なタイプの動作および膝関節の運動に対するACLの反応、および(2)靱帯が経験する機械的応力の程度。特定の組み合わせの機械刺激は、膝構造の本来の動きから生成され、天然のACLに伝えられる。
【0046】
膝の動作を簡単に説明するために、脛骨と大腿骨とのACLによる結合は、互いに対する二つの骨の動作を考慮すると、自由度6を提供する:脛骨は、三方向に動くことができ、これらの三方向のそれぞれに関して軸に対して回転することができる。膝は、靱帯およびキャプラー(capular)繊維が存在するためならびに膝表面そのもののために、これらの自由度6の完全な範囲を得ることができない(Bidenら、「Experimental methods used to evaluate knee ligament function」、「Knee Ligaments:Structure, Function, Injury and Repair」D. Danielら編、レイブン出版社、135〜151頁(1990))。小さい並進運動も可能である。ACLの結合部位は、膝関節におけるその安定化役割に関与している。ACLは、前脛骨並進の一次安定化剤として、および外反-内反角形成および脛骨回転の二次安定化剤として機能する(Shoemakerら、「The limits of knee motion」、「Knee Ligaments:Structure, Function, Injury and Repair」D. Danielら編、レイブン出版社、1534〜161頁(1990))。したがって、ACLは、可能性がある自由度6のうち3において膝の安定化に関与している。その結果、ACLは、これらの安定化機能を行うために特異的な繊維の構築および全体構造を発達させた。本発明は、類似の構造および繊維の構築を有する組織を産生するためにインビトロでこれらの条件を模倣する。
【0047】
ACLが経験する機械的応力の程度も同様に概要することができる。ACLは、約400 Nの周期的負荷を年間100万〜200万サイクル受ける(Chenら、J. Biomed. Mat. Res.14:567〜586(1986))。同様に、ACL外科的置換体を開発する場合には、直線剛性(〜182 N/mm)、極限変形(ACLの100%)および破断時に吸収されるエネルギー(12.8 N-m)を考慮することも重要である(Wooら、「The tensile properties of human anterior cruciate ligament(ACL)and ACL graft tissues.」、「Knee Ligaments:Structure, Function, Injury and Repair」D. Danielら編、レイブン出版社、279〜289頁(1990))。
【0048】
下記の実施例の章は、エクスビボで原型となる生物工学による前十字靱帯(ACL)の産生に関して詳述する。インビボで天然のACLが経験する機械的刺激のサブセットを模倣する機械的な力(回転方向の変形および直線方向の変形)を組み合わせて適用して、形成された得られた靱帯を調べて、適用した力が組織発達に及ぼす影響を決定した。インビトロ形成の際に発達中の靱帯を生理的負荷に曝露すると、細胞が負荷の軸に沿って既定の方向をとるように、および軸に沿って細胞外マトリックスも同様に産生するように誘導する。これらの結果は、天然のACLの環境を模倣する負荷軸のより複雑なネットワークを産生するために、複雑な多次元の機械的な力をレジメに加えると、天然のACLにより密接に類似する生物工学による靱帯が産生されることを示している。
【0049】
適用してもよい異なる機械的な力には、張力、圧迫、ゆがみおよび剪断が含まれるがこれらに限定されない。これらの力は、天然の膝関節の運動および機能の過程においてACLが経験する力を模倣する組み合わせで適用される。これらの運動には、冠状および矢状平面において定義される膝関節の伸長および屈曲、ならびに膝関節の屈曲が含まれるがこれらに限定されない。最適には、適用した力の組み合わせは、実験的に可能な限り正確にインビボで前十字靱帯が経験する機械的刺激を模倣する。靱帯形成の過程で力を適用する特定のレジメを変更すると、組織発達の速度および転帰に影響を及ぼすと予想され、最適な条件は経験的に決定される。レジメにおける可能性がある変数には、(1)ひずみ率、(2)ひずみの割合、(3)ひずみのタイプ、例えば並進および回転、(4)頻度、(5)所定のレジメ内のサイクル数、(6)異なるレジメの数、(7)靱帯変形の極値点での持続時間、(8)力のレベル、および(9)異なる力の組み合わせが含まれるがこれらに限定されない。おそらく無限数の変化が存在することは当業者によって認識されると考えられる。好ましい態様において、適用される機械的な力のレジメによって、下記のように天然の靱帯のそれと類似の螺旋状に構築された繊維が生成される。
【0050】
天然の靱帯の繊維の束は、螺旋状の構築に配列される。結合様式および膝関節が屈曲の140°まで回転するための必要条件によって、90°のねじれを受け継いで、螺旋状の構築を発達させる末梢繊維の束を有する天然のACLが得られた。この独自の生物医学的特徴によって、ACLは、極めて高い負荷に耐えることができる。機能的ACLにおいて、この螺旋状の繊維構築によって、前方-後方および後方-前方繊維が全ての程度の屈曲に関して互いに比較的等尺性であるままとなり、このように負荷は如何なる程度の膝関節の屈曲においても全ての繊維の束に等しく分配されることができ、関節の動作の全ての範囲にわたって膝を安定化させる。本発明の好ましい態様において、この同じらせん状構築を有する生物工学によるACLを産生するために、膝関節の屈曲と膝関節の伸長との組み合わせをシミュレートする機械的な力を発達中の靱帯に適用する。下記の実施例において示した実験において用いた機械的装置は、ひずみおよびひずみ率(並進と回転の双方)に対する制御を提供する。機械的装置は、成長しつつある靱帯が経験する実際の負荷をモニターして、負荷レジメのモニタリングおよび増加を通して経時的に靱帯を「教育」する役割を果たすと考えられる。
【0051】
本発明のもう一つの局面は、上記の方法によって産生された生物工学による前十字靱帯に関する。これらの方法によって産生された生物工学による靱帯は、生成のあいだに適用された機械的な力の方向を細胞が向くことおよび/またはその方向へのマトリックスの波状パターンを特徴とする。靱帯はまた、培養の際に経験する機械的な負荷の軸に沿った細胞外マトリックス成分(例えば、I型およびIII型コラーゲン、フィブロネクチン、ならびにテナシン-Cタンパク質)の産生/存在を特徴とする。好ましい態様において、靱帯線維の束を上記のようにらせん状の構築に整列させる。
【0052】
新規絹繊維骨格のマトリックスを用いる上記の方法は、ACLの産生に限定されず、例えば、後十字靱帯、回旋腱板腱、肘および膝の内側側副靱帯、手の屈筋腱、果外側靱帯、ならびに顎または顎関節の腱および靱帯のような、しかしこれらに限定されない、膝において認められる他の靱帯(例えば、後十字靱帯)および腱、または体の他の部分(例えば、手、手首、足首、肘、顎、および肩)を産生するためにも用いることができる。ヒトの体において動かすことができる全ての関節は、関節において関節骨端に結合する特殊な靱帯を有する。体内のそれぞれの靱帯は、その機能および環境によって指示される特殊な構造および構築を有する。体の様々な靱帯、その位置および機能は、その関連する内容が参照として本明細書に組み入れられる、「Anatomy, Descriptive and Surgical」(Gray, H.、(Pick, T.P.、Howden, R.)編、バウンティブックス、ニューヨーク(1977)に記載されている。所定の靱帯または腱が経験する物理的刺激を決定して、これらの刺激を模倣する力を組み入れることによって、エクスビボでACLを産生する上記の方法は、体内の任意の靱帯または腱を模倣する生物工学による靱帯および腱をエクスビボで産生するために適合させることができる。
【0053】
産生される特定のタイプの靱帯または腱は、方法のいくつかの局面が、天然の靱帯または腱がインビボで経験する特定の条件によって変化することから、組織が生成される前に予め決定される。発達中の靱帯または腱が細胞培養のあいだに受ける機械的な力は、培養される特定の靱帯または腱のタイプに関して決定される。特定の条件は、天然の靱帯または腱およびその環境および機能を調べることによって当業者によって決定することができる。インビボで靱帯または腱が経験する一つまたは複数の機械的な力を、マトリックスにおける細胞の培養の際にマトリックスに適用する。当業者は、天然の靱帯または腱が経験する力のサブセットを適用することによって、現在利用可能なものより優れた靱帯または腱を産生できることを認識すると考えられる。しかし、最適には、天然の靱帯または腱に最も密接に類似する最終産物を生成するためには、完全な範囲のインビボの力が適当な程度および組み合わせでマトリックスに適用されると考えられる。これらの力には、ACLを産生するために先に記述した力が含まれるがこれらに限定されない。適用される機械的な力は靱帯または腱のタイプに応じて変化し、かつ靱帯または腱の最終的な大きさは用いたアンカーによって影響を受けることから、当業者は、最適なアンカーの組成、大きさおよびマトリックス結合部位をそれぞれのタイプの靱帯または腱について決定すべきである。マトリックスに播種される細胞のタイプは、産生される靱帯または腱のタイプに基づいて明らかに決定される。
【0054】
本発明のもう一つの局面は、エクスビボで靱帯または腱を産生するために上記のものと類似の方法を用いてエクスビボで他の組織を産生することに関する。上記の方法はまた、筋肉(例えば、平滑筋、骨格筋、心筋)、骨、軟骨、椎板、およびいくつかのタイプの血管のような、その機能の主要な部分として機械的な変形を含む、広範囲の生物工学による組織産物を産生するように適用することができる。骨髄間質細胞は、他の組織と同様にこれらの組織への分化能を有する。絹骨格のマトリックスまたは複合マトリックスの形態は、所望の組織タイプの正確な解剖学的幾何学形状に容易に適合させることができる。例えば、絹フィブロイン繊維は、動脈を再生するために円柱管に再形成することができる。
【0055】
下記の実施例に示す結果は、所定の組織タイプの特異的機械的環境を模倣する環境における増殖が、天然の組織に有意に類似する生物工学による組織を産生するために適当な細胞分化を誘導することを示している。マトリックスの機械的変形の範囲およびタイプは、広範囲の組織構造の構築を産生するために拡大することができる。好ましくは、細胞培養環境は、天然の組織内の細胞の機能を成熟させるために、胚発達の経過を通して、それが含む天然の組織および細胞が経験するインビボ環境を可能な限り正確に反映する。所定の組織を産生するための特異的培養条件を設計する場合に検討する要因には、マトリックスの組成、細胞固定法、マトリックスまたは組織の結合法、適用される特定の力、および細胞培養用培地が含まれるがこれらに限定されない。機械的刺激の特定のレジメは、産生される組織タイプに依存して、機械的な力の適用(例えば、剪断を伴うまたは伴わない張力のみ、歪みのみ、張力と歪みの組み合わせ等)、力の振幅(例えば、角度または伸長)、適用回数と持続期間、および刺激と休息期間の持続期間を変化させることによって確立される。
【0056】
エクスビボで特異的組織タイプを産生するための方法は、ACLを産生する上記の方法を適合させることである。関与する成分には、多能性細胞、それに対して細胞が接着することができる三次元マトリックス、およびマトリックス結合に適した面を有する多数のアンカーが含まれる。多能性細胞(好ましくは骨髄間質細胞)は、マトリックス内に細胞を均一に固定させる手段によって、三次元マトリックスに播種される。播種される細胞数は、無限であると思われるが、高密度の細胞をマトリックスに播種すると、組織の形成を加速する可能性がある。
【0057】
適用される特定の力は、天然の組織およびインビボで経験する機械的な刺激を調べることによって、産生されるそれぞれの組織タイプについて決定しなければならない。所定の組織タイプは、体内の組織の位置および機能によって指示される特徴的な力を経験する。例えば、軟骨は、剪断および圧迫/張力の組み合わせをインビボで経験することが知られており、骨は圧迫を経験する。インビボで所定の組織が経験する特定の機械的刺激の決定は、当業者の手段の範囲内である。
【0058】
さらなる刺激(例えば、化学刺激、電磁刺激)も同様に、生物工学による靱帯、腱および他の組織を産生するために上記の方法に組み入れることができる。細胞の分化は、例を挙げれば、分泌された増殖または分化因子のような周辺細胞からしばしば産生される環境からの化学刺激、細胞間接触、化学物質勾配、および特異的pHレベルによって影響を受けることが知られている。他のより独自の刺激は、より専門的なタイプの組織(例えば、心筋の電気刺激)が経験する。そのような組織特異的刺激(例えば、1〜10 ng/mlのトランスフォーミング増殖因子β-1(TGF-β1))を適当な機械的な力とは無関係にまたは同時に適用すると、特定の天然の組織をより密接に近似する組織への細胞の分化を促進すると予想される。
【0059】
上記の方法によって産生された組織は、適合するレシピエントに外科的埋め込みのために、特に損傷組織の置換または修復のために組織同等物の無限のプールを提供する。生物工学による組織はまた、正常または病的な組織機能をインビトロで研究するために、例えば分子、機械、または遺伝子操作に対する細胞および組織レベルの反応をインビトロで研究するために利用してもよい。例えば、正常またはトランスフェクトした細胞に基づく組織は、生化学もしくは機械刺激に対する組織の反応を評価するために、過剰発現もしくはノックアウトされうる特定の遺伝子もしくは遺伝子産物の機能を同定するために、または薬剤の影響を調べるために用いることができる。そのような研究は、おそらく、靱帯、腱および組織の発達、正常および病的な機能に対してより多くの洞察を与え、最終的に、既に確立された組織工学アプローチに一部基づいて、完全に機能的な組織工学による置換が得られ、細胞の分化および組織発達、ならびに構造および機能的組織特性を改善するために、細胞由来の外因性の生化学因子と共に機械調節シグナルを用いることに対して新しい洞察を与えると考えられる。
【0060】
靱帯および腱のような生物工学による組織の産生はまた、組織損傷(例えば、ACLの破断)のリスクが高い個体から損傷前に骨髄間質細胞を採取することのような適応についても可能性を有する。これらの細胞は、必要となるまで保存されるか、または、多様な生物工学による人工組織を産生するために適当なマトリックスに播種して、機械的刺激下でインビトロで培養および分化させてドナーが必要とするまで保存することができる。インビボの生物学的環境によりよくマッチする生物工学による生きた人工組織を利用すれば、例えば、正常な完全に機能的な靱帯の動的平衡を維持するために必要な生理的負荷を提供して、特に組織を予め増殖させて保存している場合には、人工器官のレシピエントのリハビリテーション期間が数ヶ月から数週間短縮するはずである。利益には、より迅速な機能的活性の回復、より短期間の入院日数、ならびに組織の拒絶および不全に関する問題がより少なくなることが含まれる。
【0061】
本発明は、ACLを産生するための絹繊維骨格のマトリックスに限定されないと意図され、他の靱帯および腱と共に、軟骨、骨、皮膚、および血管のような他の組織も、適当な細胞を播種して、必要であれば、所望の靱帯、腱、または組織に増殖および分化させるための適当な機械刺激に曝露した新規絹骨格マトリックスを利用することによって、本発明によって企図されると理解すべきである。
【0062】
さらに、本発明は、マトリックス上に播種した骨髄間質細胞を用いることに限定されず、例えば、骨、筋肉、および皮膚における細胞のような他の前駆細胞、多能性および幹細胞も同様に、靱帯および他の組織に分化させるために用いてもよい。
【0063】
本発明はさらに、以下の実施例を参照して定義される。材料および方法の双方に対して多くの改変を行ってもよく、それらも本発明の目的および対象に含まれることは当業者に明らかであると考えられる。
【実施例】
【0064】
実施例1
a.絹被膜の調製
図1Aに示す未加工のカイコガの繊維を抽出して、天然の絹フィブロインをコーディングする膠様タンパク質であるセリシンを除去した(図1A〜Cを参照されたい)。1群あたり適当数の繊維を平行に配置して、0.02 M Na2CO3水溶液および0.3%(w/v)アイボリー石けん溶液において90℃で60分間抽出した後、水で十分にすすいで膠様のセリシンタンパク質を抽出した。
【0065】
b.絹繊維骨格のマトリックス構築物の調製および特性
絹繊維骨格のマトリックスの機械的特性を予測するために、鎖3本のワイヤロープに関するコステロの等式を導出した。導出されたモデルは、マトリックスの全体的な強度および剛性を所定のレベルの幾何学的階層に関してピッチ角の関数として計算するために、抽出された絹繊維材料の特性および所望のマトリックス幾何学的階層を組み合わせて考慮に入れる一連の等式である。
【0066】
絹繊維1本の材料特性には、繊維の直径、弾性係数、ポアソン比、および極限の引っ張り強さ(UTS)が含まれる。幾何学的階層は、所定のマトリックスレベルでねじれレベルの数として定義してもよい。それぞれのレベル(例えば、群、束、鎖、コード、靱帯)はさらに、互いにねじられる繊維の群の数、第一レベルのねじれの各群における繊維の数によって定義され、第一のレベルは群として定義され、第二のレベルは束として、第三のレベルは鎖として、および第四のレベルはコードとして、第五のレベルは靱帯として定義される。
【0067】
モデルは、多数の繊維のそれぞれの群が、個々の繊維の数とその固有の半径によって決定される有効半径を有する単一の繊維として作用することを仮定し、すなわちモデルは、所定の比較的高いピッチ角におけるその役割が限定されるために個々の繊維のあいだの摩擦を割引して考える。
【0068】
天然のACLの特性を模倣する形態的特性を生じるように計算された多くのマトリックス幾何学形状(上記の表2を参照されたい)の二つの応用可能な形状(マトリックス1およびマトリックス2)を、より詳細な分析のために誘導した。6コード構築物をACL置換体として用いるために選択した。マトリックスの配置は以下の通りである:マトリックス1:ACL人工器官1個=平行なコード6本;コード1本:ねじれた鎖3本(ねじれ3個/cm);鎖1本=ねじれた束6本(ねじれ3個/cm);1束=平行な洗浄繊維30本;およびマトリックス2:1 ACLマトリックス=平行なコード6本;コード1本:ねじれた鎖3本(ねじれ2個/cm);鎖1本=ねじれた束3本(ねじれ2.5個/cm);1束=3群(ねじれ3個/cm);1群=平行な抽出絹フィブロイン繊維15本。繊維の数および形態は、絹人工器官が、UTS、直線剛性、降伏点、および破断時の%伸長においてACL生物機械的特性と類似となるように選択し(上記の表2を参照されたい)、このように、組織工学によるACLを開発するための強力な開始点として作用する。
【0069】
絹フィブロインの機械的特性は、ファスト-トラックソフトウェアと共に自動制御水圧インストロン8511張力/圧迫系を用いて特徴を調べた(図1Dを参照されたい)。1回引っ張り破損分析および疲労分析を単一の絹繊維について行って、フィブロインを抽出してコードを構築した。繊維およびフィブロインは、特徴を調べるために平行およびワイヤロープ形態の双方で構築した(マトリックス1(図2Aを参照されたい)およびマトリックス2(図2Bを参照されたい))。1回引っ張り破損試験をひずみ率100%/秒で実施した;力の伸長ヒストグラムを作製して、データをインストロンシリーズIXソフトウェアを用いて分析した。マトリックス1およびマトリックス2はいずれも、UTS、直線剛性、降伏点、および破断時の%伸長(上記の表2を参照されたい)においてACLと類似の機械的および疲労特性を生じた(表2および図3を参照されたい)。
【0070】
疲労分析は、マトリックス1とマトリックス2の双方のコード1本についてウェーブメーカーソフトウェアによって自動制御水圧インストロン8511張力/圧迫系を用いて行った。データを、コード6本のACL人工器官を表すように外挿し、これを図3Bおよび3Dに示す。コード端は、エポキシ鋳型に抱埋して、アンカーのあいだに長さ3 cmの構築物を生成した。マトリックス1に関してUTS、1,680 Nおよび1,200 N(それぞれの負荷に関してN=5)(図3Bを参照されたい)およびマトリックス2に関してUTS、2280 N、2100 Nおよび1800 Nの負荷(それぞれの負荷に関してn=3)(図3Dを参照されたい)での破断までのサイクルは、ウェーブメーカー32バージョン6.6(インストロン、カントン、マサチューセッツ州)によって産生された1 HzでのH-正弦波関数を用いて決定した。疲労試験は、室温で中性の燐酸緩衝生理食塩液(PBS)において行った。
【0071】
結果
SEMによって決定したように、90℃で60分後に完全なセリシンの除去を認めた(図1A〜Cを参照されたい)。絹繊維からのセリシンの除去は、繊維の超構造を変化させ、それによってよりなめらかな繊維表面が得られ、その下に存在する絹フィブロインが出現して(図1A〜Cに示す)、平均直径は20〜40 μmの範囲であった。フィブロインは、極限の引っ張り強さの有意な15.2%減少を示した(1.033±0.042 N/繊維〜0.876±0.1 N/繊維)(p<0.05、対応のあるスチューデントt-検定)(図1Dを参照されたい)。最適にした絹マトリックスの機械的特性(図2を参照されたい)を、上記の表1、図3A(マトリックス1)および図3C(マトリックス2に関して)に概要する。最適にした絹マトリックスは、天然のACLと同等の値を示したことは、これらの結果から明らかであり、これらの値は平均で極限の引っ張り強さ(UTS)〜2100 N、剛性〜250 N/mm、降伏点〜2100 Nおよび破断時の33%伸長を有することが報告されている(Wooら、「The Tensile Properties of Human Anterior Cruciate Ligament(ACL)and ACL graft tissue.」、「Knee Ligaments:Structure, Function, Injury and Repair」D. Danielら編、レイブン出版社、279〜289頁(1990))。
【0072】
マトリックス1に関して図3Bおよびマトリックス2に関して図3Dに示したマトリックス疲労データの回帰分析は、生理的負荷レベル(400 N)まで外挿すると、インビボでの破断までのサイクル数を予測して、マトリックスの寿命がマトリックス1に関して330万サイクルであること、マトリックス2に関して寿命が1000万サイクルより大きいことを示している。洗浄した絹繊維を利用するワイヤロープマトリックス設計によって、生理的に同等の構造特性を有するマトリックスが得られ、靱帯組織工学のための足場としてそれが適していることを確認した。
【0073】
実施例2
細胞の単離と培養
適当な条件を形成すれば、所望の靱帯線維芽細胞系列への分化を指示できることから、骨髄間質細胞(BMSC)、骨原性、軟骨原性、腱原性、脂肪細胞原性、および筋原性系列に分化することができる多能性細胞を選択した(Markolfら、J. Bone Joint Surg., 71A:887〜893(1989);Caplanら、「Mesenchymal stem cells and tissue repair」、「The Anterior Cruciate Ligament:Current and Future Concepts」、D.W. Jacksonら編、レイブン出版社、ニューヨーク(1993);Youngら、J. Orthopaedic Res. 16:406〜413(1998))。
【0074】
業者(キャンブレックス(Cambrex)、ウォーカースビル、メリーランド州)から得た年齢25歳以下の同意を得たドナーの腸骨稜の骨髄からヒトBMSCsを単離した。ヒト骨髄2200万個を、ヘパリン化(1000単位/ml)生理食塩液3 mlを含む25 mlシリンジに無菌的に吸引した。ヘパリン化骨髄溶液を、骨髄間質細胞を単離および培養するための研究所に氷中で一晩輸送した。業者からの到着時、吸引液25 mlを、10%ウシ胎児血清(FBS)、0.1 mM非必須アミノ酸、100 U/mlペニシリン、100 mg/Lストレプトマイシン(P/S)、および1 ng/ml塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)(ライフテクノロジーズ(Life Technologies)、ロックビル、メリーランド州)を添加したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)に再浮遊させて、組織培養フラスコにおいて吸引液8〜10 μl/cm2で播種した。新鮮な培地を骨髄吸引液に週2回、培養9日目まで加えた。BMSCsは、それらが組織培養プラスチックに接着できることに基づいて選択し、非接着造血細胞は、培養9〜12日後に培地交換の際に除去した。培地は、その後1週間に2回交換した。一次BMSCがほぼコンフルエントに達した後(12〜14日)、それらを0.25%トリプシン/1 mM EDTAを用いて剥離させて、5×103個/cm2で再度播種した。初回継代(P1)hBMSCsをトリプシン処理して、後に使用するため8%DMSO/10%FBS/DMEMにおいて凍結した。
【0075】
絹マトリックスへの細胞播種
凍結したP1 hBMSCsを解凍して、5×103個/cm2で再度播種して(P2)、ほぼコンフルエントに達してからトリプシン処理して、マトリックス播種のために用いた。滅菌した(エチレンオキサイド)絹マトリックス(特にマトリックス1および2のコード1本、平行な抽出絹繊維の束30本およびコラーゲン繊維のワイヤロープ)に、細胞容積を最少にして、細胞-マトリックス接触を増加するように、テフロンブロックに機械処理した特注の播種チャンバー(全量1 ml)に細胞を播種した。細胞のスラリー(3.3×106個BMSCs/ml)と共に4時間インキュベーション後の播種したマトリックスを、実験期間のあいだ適当量の細胞培養用培地を含むペトリ皿に移した。
【0076】
絹フィブロインの分解速度を決定するために、極限の引っ張り強さ(UTS)を、生理的増殖条件、すなわち細胞培養用培地における培養期間の関数として測定した。長さ3 cmの平行な絹繊維30本の群を抽出して、hBMSCsを播種し、フィブロイン上で37℃で5%CO2において21日間培養した。非播種対照群も同様に培養した。絹フィブロインUTSは、播種および非播種群に関して培養期間の関数として決定した。
【0077】
結果
絹マトリックスに対する骨髄間質細胞の反応も同様に調べた。BMSCsは、培養1日後、絹およびコラーゲンマトリックスに容易に接着してその上で増殖し(図4A〜Cおよび図10Aを参照されたい)、隣接する繊維を架橋するように細胞伸長部を形成した。図4Dおよび図10Bに示すように、構築物を覆う均一な細胞シートを培養14日目および21日目でそれぞれ認めた。MTT分析によって、播種したBMSCsによる完全なマトリックスの被覆が培養14日後に確認された(図5を参照されたい)。マトリックス1(図6Aを参照されたい)およびマトリックス2(図6Bを参照されたい)において増殖させた細胞の総DNA定量から、BMSCsが絹構築物上で増殖して成長し、培養21日後および14日後にそれぞれ測定したDNAが最高量であったことを確認した。
【0078】
BMSC播種または非播種抽出対照絹フィブロインの繊維30本の群はいずれも、21日間の培養期間の関数としてその力学的完全性を維持した(図7を参照されたい)。
【0079】
マトリックス2のコード上に播種したBMSCsのRT-PCR分析は、I型およびIII型コラーゲンがいずれも培養14日間のあいだに上方制御されたことを示した(図8)。II型コラーゲンおよび骨シアロタンパク質(それぞれ、軟骨および骨特異的分化の指標)は、培養期間のあいだ検出されないか、無視できるほど発現されたに過ぎなかった。14日目でのリアルタイム定量的RT-PCRによって、GAPDHに対して標準化したところ、III型コラーゲンに対するI型コラーゲンの転写物の比8.9:1が得られた(図11を参照されたい)。III型コラーゲンに対するI型コラーゲンの比が高いことは、反応が創傷治癒または瘢痕組織形成(III型コラーゲンが高レベルで認められる)ではなく、靱帯特異的であることを示している;天然のACLにおけるコラーゲンI対コラーゲンIIIの相対的な比は、〜6.6:1である(Amielら、「Knee Ligaments:Structure, Function, Injury, and Repair」、1990)。
【0080】
実施例3
バイオリアクター系における骨髄間質細胞からの靱帯形成に及ぼす定方向の多次元機械刺激の影響に洞察を与える研究を行う。バイオリアクターは、発達中の靱帯に対して独立したしかし同時の周期的な多次元のひずみ(例えば、並進、回転)を適用することができる。7〜14日間の静的な休息期間の後(播種後時間)、回転的および並進的ひずみ率ならびに直線および回転変形は、1〜4週間のあいだ一定である。並進的ひずみ(3.3%〜10%、1〜3 mm)および回転的ひずみ(25%、90°)を、周波数0.0167 HzでBMSCsを播種した絹骨格のマトリックスに同時に適用し(1分間当たりの応力および弛緩の完全な1サイクル);機械的負荷を行わない播種したマトリックスを有するそれ以外の同一のセットのバイオリアクターを対照とした。実験期間において靱帯を一定の周期的ひずみに曝露した。
【0081】
培養期間後、機械チャレンジした靱帯試料と共に対照(静的)の靱帯試料を以下に関して特徴を調べた:(1)全般的な組織形態学的外観(肉眼による);(2)細胞分布(組織切片およびMTT染色切片の画像処理);(3)細胞形態および方向(組織学的分析);ならびに(4)組織特異的マーカーの産生(RT-PCR、免疫染色)。
【0082】
機械刺激は明らかにBMSCsおよび新たに発達した細胞外マトリックスの形態および構築、マトリックスに沿った細胞の分布、ならびに靱帯特異的分化カスケードの上方制御に影響を及ぼした;BMSCsは、繊維の長軸に沿って整列して、靱帯/腱線維芽細胞と類似の球状の形態をとり、靱帯/腱特異的マーカーを上方制御する。新たに形成された細胞外マトリックスは、マトリックスの長軸と共に負荷の線に沿って整列すると予想される。方向的な機械刺激は、新規絹骨格のマトリックス上に播種したBMSCsに起因するバイオリアクターでの靱帯の発達とインビトロでの形成を増強すると予想される。細胞および新たに形成されたマトリックスの長軸方向は、インビボでのACL内で認められる靱帯線維芽細胞と類似である(Woodsら、Amer. J. Sports. Med.19:48〜55(1991))。さらに、機械刺激は、I型コラーゲンの転写物とIII型コラーゲンの転写物のあいだの正確な発現比(例えば、7:1より大きい)を維持し、瘢痕組織の形成ではなくて新たに形成された靱帯組織が存在することを示している。上記の結果は、機械装置およびバイオリアクター系が骨髄間質細胞と新規絹骨格のマトリックスから始まる組織工学による靱帯のインビトロ形成にとって適した環境(例えば、多次元のひずみ)を提供することを示すと考えられる。
【0083】
これらの予備実験において用いられた培養条件は、さらに、おそらく臨床で用いるために天然のACLの機能的同等物をインビトロで作製するために、靱帯の生理的環境(例えば、異なるタイプの機械的な力を増加させる)をより正確に反映するように拡大することができる。これらの方法は、生物工学によるACLの産生に限定されない。インビボで経験される適当な大きさの多様な力を適用することによって、体における如何なるタイプの靱帯も、本発明の方法によってエクスビボで産生することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エクスビボで既定のタイプの靱帯または腱を産生するために用いられるワイヤ-ロープ形状を有する絹繊維骨格のマトリックス。
【請求項2】
絹繊維骨格のマトリックスが、カイコの絹、クモの絹、遺伝子操作細胞、トランスジェニック植物およびトランスジェニック動物からの絹、培養細胞からの絹、天然の絹、天然の絹遺伝子のクローニングした全配列または部分配列からの絹、ならびに絹または絹様配列をコードする合成遺伝子からの絹からなる群より選択される絹フィブロインから構成される、請求項1記載のマトリックス。
【請求項3】
絹繊維骨格のマトリックスがカイコガの繊維から得られるフィブロインを含む、請求項2記載のマトリックス。
【請求項4】
マトリックスが絹とコラーゲン繊維とを含む、請求項1記載のマトリックス。
【請求項5】
マトリックスが、絹および絹フィブロイン繊維と、一つまたは複数の絹の泡沫、被膜、メッシュ、またはスポンジとの複合体を含む、請求項1記載のマトリックス。
【請求項6】
マトリックスが、絹と、コラーゲン、ポリ乳酸またはそのコポリマー、ポリグリコール酸またはそのコポリマー、ポリ無水物、エラスチン、グリコサミノグリカン、および多糖類からなる群より選択される一つまたは複数の分解性のポリマーとの複合体を含む、請求項1記載のマトリックス。
【請求項7】
マトリックスが、絹と、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンオキシド、およびポリウレタンからなる群より選択される一つまたは複数の非分解性ポリマーとの複合体を含む、請求項1記載のマトリックス。
【請求項8】
マトリックス上に播種される多能性細胞または線維芽細胞をさらに含む、請求項1記載のマトリックス。
【請求項9】
多能性細胞または線維芽細胞が自己由来である、請求項9記載のマトリックス。
【請求項10】
多能性細胞または線維芽細胞が同種異系である、請求項9記載のマトリックス。
【請求項11】
多能性細胞が、骨髄間質細胞および成人細胞または胚幹細胞からなる群より選択される、請求項9記載のマトリックス。
【請求項12】
線維芽細胞が成熟ヒトACL線維芽細胞である、請求項9記載のマトリックス。
【請求項13】
多能性細胞または線維芽細胞が、マトリックス上で増殖および分化して、既定の靱帯または腱を形成する、請求項9記載のマトリックス。
【請求項14】
マトリックス上での多能性細胞または線維芽細胞の増殖および分化を増強する表面改変物質をさらに含む、請求項9記載のマトリックス。
【請求項15】
産生される靱帯または腱が、前十字靱帯、後十字靱帯、回旋腱板腱、肘の内側側副靱帯、手の屈筋腱、顎関節の靱帯および腱、ならびに果外側靱帯からなる群より選択される、請求項1記載のマトリックス。
【請求項16】
産生される靱帯が前十字靱帯である、請求項15記載のマトリックス。
【請求項17】
マトリックス上に播種した多能性細胞または線維芽細胞を含む、エクスビボで既定の靱帯または腱を産生するために用いられるワイヤ-ロープ形状を有する絹繊維骨格のマトリックス。
【請求項18】
絹繊維骨格のマトリックスが、カイコの絹、クモの絹、遺伝子操作細胞、トランスジェニック植物およびトランスジェニック動物からの絹、培養細胞からの絹、天然の絹、天然の絹遺伝子のクローニングした全配列または部分配列からの絹、ならびに絹または絹様配列をコードする合成遺伝子からの絹からなる群より選択される絹フィブロインから構成される、請求項17記載のマトリックス。
【請求項19】
絹繊維骨格のマトリックスがカイコガのカイコ繊維から得られるフィブロインを含む、請求項18記載のマトリックス。
【請求項20】
マトリックスが絹とコラーゲン繊維との複合体を含む、請求項17記載のマトリックス。
【請求項21】
マトリックスが、絹および絹フィブロイン繊維と、一つまたは複数の絹の泡沫、被膜、メッシュ、またはスポンジとの複合体を含む、請求項17記載のマトリックス。
【請求項22】
マトリックスが、絹と、コラーゲン、ポリ乳酸またはそのコポリマー、ポリグリコール酸またはそのコポリマー、ポリ無水物、エラスチン、グリコサミノグリカン、および多糖類からなる群より選択される一つまたは複数の分解性のポリマーとの複合体を含む、請求項17記載のマトリックス。
【請求項23】
マトリックスが、絹と、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンオキシド、およびポリウレタンからなる群より選択される一つまたは複数の非分解性ポリマーとの複合体を含む、請求項17記載のマトリックス。
【請求項24】
多能性細胞または線維芽細胞が自己由来である、請求項17記載のマトリックス。
【請求項25】
多能性細胞または線維芽細胞が同種異系である、請求項17記載のマトリックス。
【請求項26】
多能性細胞が、骨髄間質細胞および成人細胞または胚幹細胞からなる群より選択される、請求項17記載のマトリックス。
【請求項27】
線維芽細胞が成熟ヒトACL線維芽細胞である、請求項17記載のマトリックス。
【請求項28】
多能性細胞または線維芽細胞が、マトリックス上で増殖および分化して、既定の靱帯または腱を形成する、請求項17記載のマトリックス。
【請求項29】
マトリックス上での多能性細胞または線維芽細胞の増殖および分化を増強する表面改変物質をさらに含む、請求項17記載のマトリックス。
【請求項30】
多能性細胞または線維芽細胞を播種したマトリックスがインビトロでバイオリアクターにおいて培養される、請求項17記載のマトリックス。
【請求項31】
産生される靱帯または腱が、前十字靱帯、後十字靱帯、回旋腱板腱、肘の内側側副靱帯、手の屈筋腱、顎関節の靱帯および腱、ならびに果外側靱帯からなる群より選択される、請求項15記載のマトリックス。
【請求項32】
産生される靱帯が前十字靱帯である、請求項31記載のマトリックス。
【請求項33】
マトリックス上に播種して、バイオリアクター内で静的な環境でインビトロで培養される多能性細胞または線維芽細胞を含む、エクスビボで既定のタイプの靱帯または腱を産生するために用いられるワイヤ-ロープ形状を有する絹繊維骨格のマトリックス。
【請求項34】
バイオリアクターが、細胞の増殖および再生にとって適当な条件を提供する、請求項33記載のマトリックス。
【請求項35】
絹繊維骨格のマトリックスが、カイコの絹、クモの絹、遺伝子操作細胞、トランスジェニック植物およびトランスジェニック動物からの絹、培養細胞からの絹、天然の絹、天然の絹遺伝子のクローニングした全配列または部分配列からの絹、ならびに絹または絹様配列をコードする合成遺伝子からの絹からなる群より選択される絹フィブロインから構成される、請求項33記載のマトリックス。
【請求項36】
絹繊維骨格のマトリックスがカイコガのカイコ繊維から得られるフィブロインを含む、請求項35記載のマトリックス。
【請求項37】
マトリックスが絹とコラーゲン繊維との複合体を含む、請求項33記載のマトリックス。
【請求項38】
マトリックスが、絹および絹フィブロイン繊維と、一つまたは複数の絹の泡沫、被膜、メッシュ、またはスポンジとの複合体を含む、請求項33記載のマトリックス。
【請求項39】
マトリックスが、絹と、コラーゲン、ポリ乳酸またはそのコポリマー、ポリグリコール酸またはそのコポリマー、ポリ無水物、エラスチン、グリコサミノグリカン、および多糖類からなる群より選択される一つまたは複数の分解性のポリマーとの複合体を含む、請求項33記載のマトリックス。
【請求項40】
マトリックスが、絹と、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンオキシド、およびポリウレタンからなる群より選択される一つまたは複数の非分解性ポリマーとの複合体を含む、請求項33記載のマトリックス。
【請求項41】
多能性細胞または線維芽細胞が自己由来である、請求項33記載のマトリックス。
【請求項42】
多能性細胞または線維芽細胞が同種異系である、請求項33記載のマトリックス。
【請求項43】
多能性細胞が、骨髄間質細胞および成人細胞または胚幹細胞からなる群より選択される、請求項33記載のマトリックス。
【請求項44】
多能性細胞が成熟ヒトACL線維芽細胞である、請求項33記載のマトリックス。
【請求項45】
多能性細胞または線維芽細胞が、マトリックス上で増殖および分化して、既定の靱帯または腱を形成する、請求項33記載のマトリックス。
【請求項46】
マトリックス上での多能性細胞または線維芽細胞の増殖および分化を増強する表面改変物質をさらに含む、請求項33記載のマトリックス。
【請求項47】
産生される靱帯または腱が、前十字靱帯、後十字靱帯、回旋腱板腱、肘の内側側副靱帯、手の屈筋腱、顎関節の靱帯および腱、ならびに果外側靱帯からなる群より選択される、請求項33記載のマトリックス。
【請求項48】
産生される靱帯が前十字靱帯である、請求項47記載のマトリックス。
【請求項49】
マトリックス上に播種され、バイオリアクター内でインビトロで培養される多能性細胞または線維芽細胞を含む、エクスビボで既定の靱帯または組織を産生するために用いられるワイヤ-ロープ形状を有する絹繊維骨格のマトリックス。
【請求項50】
バイオリアクターが、細胞の増殖および再生にとって適当な条件を提供する、請求項49記載のマトリックス。
【請求項51】
マトリックスが、バイオリアクターによって提供される一つまたは複数の機械的シグナルを受ける、請求項50記載のマトリックス。
【請求項52】
機械的シグナルに、周期的な並進的ひずみおよび回転的ひずみを適用することが含まれる、請求項51記載のマトリックス。
【請求項53】
機械的シグナルの大きさ、持続および組み合わせが、インビボで天然の靱帯または腱が経験するものに近づくように培養期間において変化する、請求項52記載のマトリックス。
【請求項54】
機械的シグナルが、インビボで天然の靱帯または腱が経験する機械的刺激を模倣する、請求項51記載のマトリックス。
【請求項55】
絹繊維骨格のマトリックスが、カイコの絹、クモの絹、遺伝子操作細胞、トランスジェニック植物およびトランスジェニック動物からの絹、培養細胞からの絹、天然の絹、天然の絹遺伝子のクローニングした全配列または部分配列からの絹、ならびに絹または絹様配列をコードする合成遺伝子からの絹からなる群より選択される絹フィブロインから構成される、請求項49記載のマトリックス。
【請求項56】
絹繊維骨格のマトリックスがカイコガのカイコ繊維から得られるフィブロインを含む、請求項55記載のマトリックス。
【請求項57】
マトリックスが絹とコラーゲン繊維との複合体を含む、請求項49記載のマトリックス。
【請求項58】
マトリックスが、絹および絹フィブロイン繊維と、一つまたは複数の絹の泡沫、被膜、メッシュ、またはスポンジとの複合体を含む、請求項49記載のマトリックス。
【請求項59】
マトリックスが、絹と、コラーゲン、ポリ乳酸またはそのコポリマー、ポリグリコール酸またはそのコポリマー、ポリ無水物、エラスチン、グリコサミノグリカン、および多糖類からなる群より選択される一つまたは複数の分解性のポリマーとの複合体を含む、請求項49記載のマトリックス。
【請求項60】
マトリックスが、絹と、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンオキシド、およびポリウレタンからなる群より選択される一つまたは複数の非分解性ポリマーとの複合体を含む、請求項49記載のマトリックス。
【請求項61】
多能性細胞または線維芽細胞が自己由来である、請求項49記載のマトリックス。
【請求項62】
多能性細胞または線維芽細胞が同種異系である、請求項49記載のマトリックス。
【請求項63】
多能性細胞が、骨髄間質細胞および成人細胞または胚幹細胞からなる群より選択される、請求項49記載のマトリックス。
【請求項64】
多能性細胞が成熟ヒトACL線維芽細胞である、請求項49記載のマトリックス。
【請求項65】
多能性細胞または線維芽細胞が、マトリックス上で増殖および分化して、既定の靱帯または腱を形成する、請求項49記載のマトリックス。
【請求項66】
マトリックス上での多能性細胞または線維芽細胞の増殖および分化を増強する表面改変物質をさらに含む、請求項49記載のマトリックス。
【請求項67】
産生される靱帯または腱が、前十字靱帯、後十字靱帯、回旋腱板腱、肘の内側側副靱帯、手の屈筋腱、顎関節の靱帯および腱、ならびに果外側靱帯からなる群より選択される、請求項49記載のマトリックス。
【請求項68】
産生される靱帯が前十字靱帯である、請求項67記載のマトリックス。
【請求項69】
マトリックスに被験者からの自己由来細胞を播種して、被験者からの動的な機械的シグナルを曝露する、特定の靱帯または腱を必要とする被験者にインビボで移植するための既定の靱帯または組織を産生するために用いられるワイヤ-ロープ形状を有する絹繊維骨格のマトリックス。
【請求項70】
絹繊維骨格のマトリックスが、カイコの絹、クモの絹、遺伝子操作細胞、トランスジェニック植物およびトランスジェニック動物からの絹、培養細胞からの絹、天然の絹、天然の絹遺伝子のクローニングした全配列または部分配列からの絹、ならびに絹または絹様配列をコードする合成遺伝子からの絹からなる群より選択される絹フィブロインから構成される、請求項69記載のマトリックス。
【請求項71】
絹繊維骨格のマトリックスがカイコガのカイコ繊維から得られるフィブロインを含む、請求項70記載のマトリックス。
【請求項72】
マトリックスが絹とコラーゲン繊維との複合体を含む、請求項69記載のマトリックス。
【請求項73】
マトリックスが、絹および絹フィブロイン繊維と、一つまたは複数の絹の泡沫、被膜、メッシュ、またはスポンジとの複合体を含む、請求項69記載のマトリックス。
【請求項74】
マトリックスが、絹と、コラーゲン、ポリ乳酸またはそのコポリマー、ポリグリコール酸またはそのコポリマー、ポリ無水物、エラスチン、グリコサミノグリカン、および多糖類からなる群より選択される一つまたは複数の分解性のポリマーとの複合体を含む、請求項69記載のマトリックス。
【請求項75】
マトリックスが、絹と、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンオキシド、およびポリウレタンからなる群より選択される一つまたは複数の非分解性ポリマーとの複合体を含む、請求項69記載のマトリックス。
【請求項76】
自己由来細胞が多能性細胞または線維芽細胞である、請求項69記載のマトリックス。
【請求項77】
線維芽細胞が成熟ヒト前十字靱帯線維芽細胞である、請求項76記載のマトリックス。
【請求項78】
多能性細胞または線維芽細胞が、マトリックス上で増殖および分化して、所望の靱帯または腱を形成する、請求項76記載のマトリックス。
【請求項79】
産生される靱帯または腱が、前十字靱帯、後十字靱帯、回旋腱板腱、肘の内側側副靱帯、手の屈筋腱、ならびに果外側靱帯からなる群より選択される、請求項78記載のマトリックス。
【請求項80】
産生される靱帯が前十字靱帯である、請求項79記載のマトリックス。
【請求項81】
以下の段階を含む、エクスビボで既定のタイプの靱帯または腱を産生する方法:
(a)マトリックス形成の前後いずれかに、マトリックス内に細胞を均一に固定するために、円柱形の絹繊維骨格マトリックスの内部またはその上に多能性細胞または線維芽細胞を播種する段階;
(b)播種したマトリックスの反対の端部に第一および第二のアンカーを結合させる段階;ならびに
(c)細胞の増殖および再生に適した条件下で段階(b)のアンカーを結合させたマトリックスにおいて細胞を培養する段階。
【請求項82】
マトリックスが、ワイヤ-ロープ形状を有する繊維を含む、請求項81記載の方法。
【請求項83】
絹繊維骨格のマトリックスが、カイコの絹、クモの絹、遺伝子操作細胞、トランスジェニック植物およびトランスジェニック動物からの絹、培養細胞からの絹、天然の絹、天然の絹遺伝子のクローニングした全配列または部分配列からの絹、ならびに絹または絹様配列をコードする合成遺伝子からの絹からなる群より選択される絹フィブロインから構成される、請求項81記載の方法。
【請求項84】
絹繊維骨格のマトリックスがカイコガのカイコ繊維から得られるフィブロインを含む、請求項83記載の方法。
【請求項85】
マトリックスが絹とコラーゲン繊維との複合体を含む、請求項81記載の方法。
【請求項86】
マトリックスが、絹および絹フィブロイン繊維と、一つまたは複数の絹の泡沫、被膜、メッシュ、またはスポンジとの複合体を含む、請求項81記載の方法。
【請求項87】
マトリックスが、絹と、コラーゲン、ポリ乳酸またはそのコポリマー、ポリグリコール酸またはそのコポリマー、ポリ無水物、エラスチン、グリコサミノグリカン、および多糖類からなる群より選択される一つまたは複数の分解性のポリマーとの複合体を含む、請求項81記載の方法。
【請求項88】
マトリックスが、絹と、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンオキシド、およびポリウレタンからなる群より選択される一つまたは複数の非分解性ポリマーとの複合体を含む、請求項81記載の方法。
【請求項89】
多能性細胞または線維芽細胞が自己由来である、請求項81記載の方法。
【請求項90】
多能性細胞または線維芽細胞が同種異系である、請求項81記載の方法。
【請求項91】
多能性細胞が、骨髄間質細胞および成人細胞または胚幹細胞からなる群より選択される、請求項81記載の方法。
【請求項92】
線維芽細胞が成熟ヒトACL線維芽細胞である、請求項81記載の方法。
【請求項93】
多能性細胞または線維芽細胞が、マトリックス上で増殖および分化して、前十字靱帯を形成する、請求項81記載の方法。
【請求項94】
マトリックス上での多能性細胞または線維芽細胞の増殖および分化を増強する表面改変物質をさらに含む、請求項81記載の方法。
【請求項95】
アンカーが、ヒドロキシアパタイト、脱塩骨、チタン、ステンレススチール、高密度ポリエチレン、ダクロンおよびテフロンからなる群より選択される材料を含む、請求項81記載の方法。
【請求項96】
段階(c)が、第一および第二のアンカーの一つまたは双方の運動による一つまたは複数の機械的な力をマトリックスが受ける段階をさらに含む、請求項81記載の方法。
【請求項97】
力が第二のアンカーに関して第一のアンカーに対して独立しているが、同時に適用される、機械的な力に、周期的な並進的ひずみおよび回転的ひずみを適用することが含まれる、請求項96記載の方法。
【請求項98】
機械的な力の大きさ、持続、および組み合わせが、インビボで天然の靱帯または腱が経験するものに近づくように培養期間において変化する、請求項96記載の方法。
【請求項99】
段階(b)において第一のアンカーと第二のアンカーとに結合した播種されたマトリックスが、インビボで既定の靱帯または腱が経験する化学刺激を模倣する条件下でさらに培養される、請求項96記載の方法。
【請求項100】
マトリックスが、バイオリアクターにおいて培養されて機械的な力を受ける、請求項96記載の方法。
【請求項101】
螺旋状に構築される線維を有する既定の靱帯または腱を産生するように経時的に適用される機械的な力の組み合わせであり、屈曲および伸長の組み合わせをシミュレートする機械的な力の組み合わせが適用される、請求項96記載の方法。
【請求項102】
産生される靱帯または腱が、前十字靱帯、後十字靱帯、回旋腱板腱、肘の内側側副靱帯、手の屈筋腱、顎関節の靱帯および腱、ならびに果外側靱帯からなる群より選択される、請求項81記載の方法。
【請求項103】
産生される靱帯または腱が前十字靱帯である、請求項102記載の方法。
【請求項104】
機械的な力が、インビボで前十字靱帯が経験する機械的な刺激を模倣する、請求項96記載の方法。
【請求項105】
以下の段階を含む、エクスビボで既定のタイプの靱帯または腱を産生する方法:
(a)マトリックス形成の前後いずれかに、マトリックス内に細胞を均一に固定するために、円柱形の絹繊維骨格マトリックスの内部またはその上に多能性細胞または線維芽細胞を播種する段階;
(b)播種したマトリックスの反対の端部に第一および第二のアンカーを結合させる段階;ならびに
(c)第一および第二のアンカーの一つまたは双方の運動による一つまたは複数の機械的な力をマトリックスに与えながら、細胞の増殖および再生に適した条件下で段階(b)のアンカーを結合させたマトリックスにおいて細胞を培養する段階。
【請求項106】
マトリックスが、ワイヤ-ロープ形状を有する繊維を含む、請求項105記載の方法。
【請求項107】
絹繊維骨格のマトリックスが、カイコの絹、クモの絹、遺伝子操作細胞、トランスジェニック植物およびトランスジェニック動物からの絹、培養細胞からの絹、天然の絹、天然の絹遺伝子のクローニングした全配列または部分配列からの絹、ならびに絹または絹様配列をコードする合成遺伝子からの絹からなる群より選択される絹フィブロインから構成される、請求項105記載の方法。
【請求項108】
絹繊維骨格のマトリックスがカイコガのカイコ繊維から得られるフィブロインを含む、請求項107記載の方法。
【請求項109】
マトリックスが絹とコラーゲン繊維との複合体を含む、請求項105記載の方法。
【請求項110】
マトリックスが、絹および絹フィブロイン繊維と、一つまたは複数の絹の泡沫、被膜、メッシュ、またはスポンジとの複合体を含む、請求項105記載の方法。
【請求項111】
マトリックスが、絹と、コラーゲン、ポリ乳酸またはそのコポリマー、ポリグリコール酸またはそのコポリマー、ポリ無水物、エラスチン、グリコサミノグリカン、および多糖類からなる群より選択される一つまたは複数の分解性のポリマーとの複合体を含む、請求項105記載の方法。
【請求項112】
マトリックスが、絹と、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンオキシド、およびポリウレタンからなる群より選択される一つまたは複数の非分解性ポリマーとの複合体を含む、請求項105記載の方法。
【請求項113】
多能性細胞または線維芽細胞が自己由来である、請求項105記載の方法。
【請求項114】
多能性細胞または線維芽細胞が同種異系である、請求項105記載の方法。
【請求項115】
多能性細胞が、骨髄間質細胞および成人細胞または胚幹細胞からなる群より選択される、請求項105記載の方法。
【請求項116】
多能性細胞が成熟ヒトACL線維芽細胞である、請求項105記載の方法。
【請求項117】
多能性細胞または線維芽細胞が、マトリックス上で増殖および分化して、既定の靱帯または腱を形成する、請求項105記載の方法。
【請求項118】
マトリックス上での多能性細胞または線維芽細胞の増殖および分化を増強する表面改変物質をさらに含む、請求項105記載の方法。
【請求項119】
アンカーが、ヒドロキシアパタイト、脱塩骨、チタン、ステンレススチール、高密度ポリエチレン、ダクロンおよびテフロンからなる群より選択される材料を含む、請求項105記載の方法。
【請求項120】
第二のアンカーに関して第一のアンカーに対して独立しているが、同時に適用される機械的な力に、周期的な並進的ひずみおよび回転的ひずみを適用することが含まれる、請求項105記載の方法。
【請求項121】
機械的な力の大きさ、持続、および組み合わせが、インビボで天然の靱帯または腱が経験するものに近づくように培養期間において変化する、請求項105記載の方法。
【請求項122】
段階(b)において第一のアンカーと第二のアンカーとに結合した播種されたマトリックスが、インビボで既定の靱帯または腱が経験する化学刺激を模倣する条件下でさらに培養される、請求項105記載の方法。
【請求項123】
マトリックスが、バイオリアクターにおいて培養されて機械的な力を受ける、請求項105記載の方法。
【請求項124】
螺旋状に構築される繊維を有する既定の靱帯または腱を産生するように経時的に適用される機械的な力の組み合わせであり、屈曲および伸長の組み合わせをシミュレートする機械的な力の組み合わせが適用される、請求項105記載の方法。
【請求項125】
産生される靱帯または腱が、前十字靱帯、後十字靱帯、回旋腱板腱、肘の内側側副靱帯、手の屈筋腱、顎関節の靱帯および腱、ならびに果外側靱帯からなる群より選択される、請求項105記載の方法。
【請求項126】
産生される靱帯が前十字靱帯である、請求項125記載の方法。
【請求項127】
機械的な力が、インビボで既定の靱帯または腱が経験する機械的な刺激を模倣する、請求項105記載の方法。
【請求項128】
ワイヤ-ロープ形状を有し、エクスビボで既定の靱帯または腱を産生するようにマトリックス上で増殖および分化する多能性細胞または線維芽細胞を播種した絹繊維骨格のマトリックスを含む生物工学による組織。
【請求項129】
絹繊維骨格のマトリックスが、カイコの絹、クモの絹、遺伝子操作細胞、トランスジェニック植物およびトランスジェニック動物からの絹、培養細胞からの絹、天然の絹、天然の絹遺伝子のクローニングした全配列または部分配列からの絹、ならびに絹または絹様配列をコードする合成遺伝子からの絹からなる群より選択される絹フィブロインから構成される、請求項128記載の生物工学による組織。
【請求項130】
マトリックスが絹とコラーゲン繊維との複合体を含む、請求項128記載の生物工学による組織。
【請求項131】
マトリックスが、絹と、コラーゲン、ポリ乳酸またはそのコポリマー、ポリグリコール酸またはそのコポリマー、ポリ無水物、エラスチン、グリコサミノグリカン、および多糖類からなる群より選択される一つまたは複数の分解性のポリマーとの複合体を含む、請求項128記載の生物工学による組織。
【請求項132】
マトリックスが、絹と、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンオキシド、およびポリウレタンからなる群より選択される一つまたは複数の非分解性ポリマーとの複合体を含む、請求項128記載の生物工学による組織。
【請求項133】
多能性細胞または線維芽細胞が自己由来または同種異系である、請求項128記載の生物工学による組織。
【請求項134】
マトリックス上で多能性細胞または線維芽細胞の増殖および分化を増強する表面改変物質をさらに含む、請求項128記載の生物工学による組織。
【請求項135】
自己由来または同種異系細胞が、それを必要とするレシピエントに移植するために分化して靱帯または腱を形成する同種異系移植片または自家移植片を形成する、請求項128記載の生物工学による組織。
【請求項136】
産生される靱帯または腱が、ACL、後十字靱帯、回旋腱板腱、肘の内側側副靱帯、手の屈筋腱、顎関節の靱帯および腱、ならびに果外側靱帯からなる群より選択される、請求項128記載の生物工学による組織。
【請求項137】
産生される靱帯または腱が前十字靱帯である、請求項136記載の生物工学による組織。
【請求項138】
以下の段階を含む方法によって産生される生物工学による組織:
(a)マトリックス形成の前後いずれかに、マトリックス内に細胞を均一に固定するために、円柱形の絹繊維骨格マトリックスの内部またはその上に多能性細胞または線維芽細胞を播種する段階;
(b)マトリックスの反対の端部に第一および第二のアンカーを結合させる段階;ならびに
(c)細胞の増殖および再生に適した条件下で段階(b)のアンカーを結合させたマトリックスにおいて細胞を培養する段階。
【請求項139】
マトリックスが、ワイヤ-ロープ形状を有する線維を含む、請求項138記載の生物工学による組織。
【請求項140】
絹繊維骨格のマトリックスが、カイコの絹、クモの絹、遺伝子操作細胞、トランスジェニック植物およびトランスジェニック動物からの絹、培養細胞からの絹、天然の絹、天然の絹遺伝子のクローニングした全配列または部分配列からの絹、ならびに絹または絹様配列をコードする合成遺伝子からの絹からなる群より選択される絹フィブロインから構成される、請求項138記載の生物工学による組織。
【請求項141】
マトリックスが絹とコラーゲン繊維との複合体を含む、請求項138記載の生物工学による組織。
【請求項142】
マトリックスが、絹と、コラーゲン、ポリ乳酸またはそのコポリマー、ポリグリコール酸またはそのコポリマー、ポリ無水物、エラスチン、グリコサミノグリカン、および多糖類からなる群より選択される一つまたは複数の分解性のポリマーとの複合体を含む、請求項138記載の生物工学による組織。
【請求項143】
マトリックスが、絹と、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンオキシド、およびポリウレタンからなる群より選択される一つまたは複数の非分解性ポリマーとの複合体を含む、請求項138記載の生物工学による組織。
【請求項144】
多能性細胞または線維芽細胞が自己由来または同種異系である、請求項138記載の生物工学による組織。
【請求項145】
多能性細胞または線維芽細胞がマトリックス上で増殖および分化して組織を形成する、請求項138記載の生物工学による組織。
【請求項146】
マトリックス上での多能性細胞または線維芽細胞の増殖および分化を増強する表面改変物質をさらに含む、請求項138記載の生物工学による組織。
【請求項147】
段階(c)が、第一および第二のアンカーの一つまたは双方の動作による一つまたは複数の機械的な力をマトリックスが受ける段階をさらに含む、請求項138記載の生物工学による組織。
【請求項148】
第二のアンカーに関して第一のアンカーに対して独立しているが、同時に適用される機械的な力に、周期的な並進的ひずみおよび回転的ひずみを適用することが含まれる、請求項147記載の生物工学による組織。
【請求項149】
機械的な力の大きさ、持続、および組み合わせが、インビボで天然の組織が経験するものに近づくように培養期間において変化する、請求項147記載の生物工学による組織。
【請求項150】
機械的な力が、インビボで天然の組織が経験する機械的刺激を模倣する、請求項147記載の生物工学による組織。
【請求項151】
段階(b)において第一のアンカーと第二のアンカーとに結合した播種されたマトリックスが、インビボで天然の組織が経験する化学刺激を模倣する条件下でさらに培養される、請求項147記載の生物工学による組織。
【請求項152】
マトリックスが、バイオリアクターにおいて培養されて機械的な力を受ける、請求項147記載の生物工学による組織。
【請求項153】
螺旋状に構築される繊維を有する組織を産生するように経時的に適用される機械的な力の組み合わせであり、屈曲および伸長の組み合わせをシミュレートする機械的な力の組み合わせが適用される、請求項147記載の生物工学による組織。
【請求項154】
多能性細胞または線維芽細胞がマトリックス上で増殖および分化して、所望の靱帯または腱を形成する、請求項138記載の生物工学による組織。
【請求項155】
靱帯または腱が、前十字靱帯、後十字靱帯、回旋腱板腱、肘の内側側副靱帯、手の屈筋腱、顎関節の靱帯および腱、ならびに果外側靱帯からなる群より選択される、請求項154記載の生物工学による組織。
【請求項156】
産生される靱帯が前十字靱帯である、請求項155記載の生物工学による組織。
【請求項157】
以下の段階を含む方法によって産生される生物工学による組織:
(a)マトリックス形成の前後いずれかに、マトリックス内に細胞を均一に固定するために、円柱形の絹繊維骨格マトリックスの内部またはその上に多能性細胞を播種する段階;
(b)マトリックスの反対の端部に第一および第二のアンカーを結合させる段階;ならびに
(c)第一および第二のアンカーの一つまたは双方の運動による一つまたは複数の機械的な力をマトリックスに与えながら、細胞の増殖および再生に適した条件下で段階(b)の結合したマトリックスにおいて細胞を培養する段階。
【請求項158】
マトリックスが、ワイヤ-ロープ形状を有する繊維を含む、請求項157記載の生物工学による組織。
【請求項159】
絹繊維骨格のマトリックスが、カイコの絹、クモの絹、遺伝子操作細胞、トランスジェニック植物およびトランスジェニック動物からの絹、培養細胞からの絹、天然の絹、天然の絹遺伝子のクローニングした全配列または部分配列からの絹、ならびに絹または絹様配列をコードする合成遺伝子からの絹からなる群より選択される絹フィブロインから構成される、請求項157記載の生物工学による組織。
【請求項160】
マトリックスが絹とコラーゲン繊維との複合体を含む、請求項157記載の生物工学による組織。
【請求項161】
マトリックスが、絹と、コラーゲン、ポリ乳酸またはそのコポリマー、ポリグリコール酸またはそのコポリマー、ポリ無水物、エラスチン、グリコサミノグリカン、および多糖類からなる群より選択される一つまたは複数の分解性のポリマーとの複合体を含む、請求項157記載の生物工学による組織。
【請求項162】
マトリックスが、絹と、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンオキシド、およびポリウレタンからなる群より選択される一つまたは複数の非分解性ポリマーとの複合体を含む、請求項157記載の生物工学による組織。
【請求項163】
多能性細胞または線維芽細胞が自己由来または同種異系である、請求項157記載の生物工学による組織。
【請求項164】
多能性細胞または線維芽細胞が、マトリックス上で増殖および分化して、所望の靱帯または腱を形成する、請求項157記載の生物工学による組織。
【請求項165】
マトリックス上での多能性細胞または線維芽細胞の増殖および分化を増強する表面改変物質をさらに含む、請求項157記載の生物工学による組織。
【請求項166】
第二のアンカーに関して第一のアンカーに対して独立しているが、同時に適用される機械的な力に、周期的な並進的ひずみおよび回転的ひずみを適用することが含まれる、請求項157記載の生物工学による組織。
【請求項167】
機械的な力の大きさ、持続、および組み合わせが、インビボで天然の組織が経験するものに近づくように培養期間において変化する、請求項157記載の生物工学による組織。
【請求項168】
機械的な力が、インビボで天然の組織が経験する機械刺激を模倣する、請求項157記載の生物工学による組織。
【請求項169】
段階(b)における第一のアンカーと第二のアンカーとに結合した播種されたマトリックスが、インビボで天然の組織が経験する化学刺激を模倣する条件下でさらに培養される、請求項157記載の生物工学による組織。
【請求項170】
マトリックスが、バイオリアクターにおいて培養されて機械的な力を受ける、請求項157記載の生物工学による組織。
【請求項171】
螺旋状に構築される繊維を有する組織を産生するように経時的に適用される機械的な力の組み合わせであり、屈曲および伸長の組み合わせをシミュレートする機械的な力の組み合わせが適用される、請求項157記載の生物工学による組織。
【請求項172】
靱帯または腱が、前十字靱帯、後十字靱帯、回旋腱板腱、肘の内側側副靱帯、手の屈筋腱、顎関節の靱帯および腱、ならびに果外側靱帯からなる群より選択される、請求項164記載の生物工学による靱帯。
【請求項173】
産生される靱帯が前十字靱帯である、請求項172記載の生物工学による靱帯。
【請求項174】
ワイヤ-ロープ形状を有し、マトリックス上で増殖および分化してエクスビボで前十字靱帯を産生する骨髄間質細胞を播種した絹繊維骨格のマトリックス。
【請求項1】
エクスビボで既定のタイプの靱帯または腱を産生するために用いられるワイヤ-ロープ形状を有する絹繊維骨格のマトリックス。
【請求項2】
絹繊維骨格のマトリックスが、カイコの絹、クモの絹、遺伝子操作細胞、トランスジェニック植物およびトランスジェニック動物からの絹、培養細胞からの絹、天然の絹、天然の絹遺伝子のクローニングした全配列または部分配列からの絹、ならびに絹または絹様配列をコードする合成遺伝子からの絹からなる群より選択される絹フィブロインから構成される、請求項1記載のマトリックス。
【請求項3】
絹繊維骨格のマトリックスがカイコガの繊維から得られるフィブロインを含む、請求項2記載のマトリックス。
【請求項4】
マトリックスが絹とコラーゲン繊維とを含む、請求項1記載のマトリックス。
【請求項5】
マトリックスが、絹および絹フィブロイン繊維と、一つまたは複数の絹の泡沫、被膜、メッシュ、またはスポンジとの複合体を含む、請求項1記載のマトリックス。
【請求項6】
マトリックスが、絹と、コラーゲン、ポリ乳酸またはそのコポリマー、ポリグリコール酸またはそのコポリマー、ポリ無水物、エラスチン、グリコサミノグリカン、および多糖類からなる群より選択される一つまたは複数の分解性のポリマーとの複合体を含む、請求項1記載のマトリックス。
【請求項7】
マトリックスが、絹と、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンオキシド、およびポリウレタンからなる群より選択される一つまたは複数の非分解性ポリマーとの複合体を含む、請求項1記載のマトリックス。
【請求項8】
マトリックス上に播種される多能性細胞または線維芽細胞をさらに含む、請求項1記載のマトリックス。
【請求項9】
多能性細胞または線維芽細胞が自己由来である、請求項9記載のマトリックス。
【請求項10】
多能性細胞または線維芽細胞が同種異系である、請求項9記載のマトリックス。
【請求項11】
多能性細胞が、骨髄間質細胞および成人細胞または胚幹細胞からなる群より選択される、請求項9記載のマトリックス。
【請求項12】
線維芽細胞が成熟ヒトACL線維芽細胞である、請求項9記載のマトリックス。
【請求項13】
多能性細胞または線維芽細胞が、マトリックス上で増殖および分化して、既定の靱帯または腱を形成する、請求項9記載のマトリックス。
【請求項14】
マトリックス上での多能性細胞または線維芽細胞の増殖および分化を増強する表面改変物質をさらに含む、請求項9記載のマトリックス。
【請求項15】
産生される靱帯または腱が、前十字靱帯、後十字靱帯、回旋腱板腱、肘の内側側副靱帯、手の屈筋腱、顎関節の靱帯および腱、ならびに果外側靱帯からなる群より選択される、請求項1記載のマトリックス。
【請求項16】
産生される靱帯が前十字靱帯である、請求項15記載のマトリックス。
【請求項17】
マトリックス上に播種した多能性細胞または線維芽細胞を含む、エクスビボで既定の靱帯または腱を産生するために用いられるワイヤ-ロープ形状を有する絹繊維骨格のマトリックス。
【請求項18】
絹繊維骨格のマトリックスが、カイコの絹、クモの絹、遺伝子操作細胞、トランスジェニック植物およびトランスジェニック動物からの絹、培養細胞からの絹、天然の絹、天然の絹遺伝子のクローニングした全配列または部分配列からの絹、ならびに絹または絹様配列をコードする合成遺伝子からの絹からなる群より選択される絹フィブロインから構成される、請求項17記載のマトリックス。
【請求項19】
絹繊維骨格のマトリックスがカイコガのカイコ繊維から得られるフィブロインを含む、請求項18記載のマトリックス。
【請求項20】
マトリックスが絹とコラーゲン繊維との複合体を含む、請求項17記載のマトリックス。
【請求項21】
マトリックスが、絹および絹フィブロイン繊維と、一つまたは複数の絹の泡沫、被膜、メッシュ、またはスポンジとの複合体を含む、請求項17記載のマトリックス。
【請求項22】
マトリックスが、絹と、コラーゲン、ポリ乳酸またはそのコポリマー、ポリグリコール酸またはそのコポリマー、ポリ無水物、エラスチン、グリコサミノグリカン、および多糖類からなる群より選択される一つまたは複数の分解性のポリマーとの複合体を含む、請求項17記載のマトリックス。
【請求項23】
マトリックスが、絹と、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンオキシド、およびポリウレタンからなる群より選択される一つまたは複数の非分解性ポリマーとの複合体を含む、請求項17記載のマトリックス。
【請求項24】
多能性細胞または線維芽細胞が自己由来である、請求項17記載のマトリックス。
【請求項25】
多能性細胞または線維芽細胞が同種異系である、請求項17記載のマトリックス。
【請求項26】
多能性細胞が、骨髄間質細胞および成人細胞または胚幹細胞からなる群より選択される、請求項17記載のマトリックス。
【請求項27】
線維芽細胞が成熟ヒトACL線維芽細胞である、請求項17記載のマトリックス。
【請求項28】
多能性細胞または線維芽細胞が、マトリックス上で増殖および分化して、既定の靱帯または腱を形成する、請求項17記載のマトリックス。
【請求項29】
マトリックス上での多能性細胞または線維芽細胞の増殖および分化を増強する表面改変物質をさらに含む、請求項17記載のマトリックス。
【請求項30】
多能性細胞または線維芽細胞を播種したマトリックスがインビトロでバイオリアクターにおいて培養される、請求項17記載のマトリックス。
【請求項31】
産生される靱帯または腱が、前十字靱帯、後十字靱帯、回旋腱板腱、肘の内側側副靱帯、手の屈筋腱、顎関節の靱帯および腱、ならびに果外側靱帯からなる群より選択される、請求項15記載のマトリックス。
【請求項32】
産生される靱帯が前十字靱帯である、請求項31記載のマトリックス。
【請求項33】
マトリックス上に播種して、バイオリアクター内で静的な環境でインビトロで培養される多能性細胞または線維芽細胞を含む、エクスビボで既定のタイプの靱帯または腱を産生するために用いられるワイヤ-ロープ形状を有する絹繊維骨格のマトリックス。
【請求項34】
バイオリアクターが、細胞の増殖および再生にとって適当な条件を提供する、請求項33記載のマトリックス。
【請求項35】
絹繊維骨格のマトリックスが、カイコの絹、クモの絹、遺伝子操作細胞、トランスジェニック植物およびトランスジェニック動物からの絹、培養細胞からの絹、天然の絹、天然の絹遺伝子のクローニングした全配列または部分配列からの絹、ならびに絹または絹様配列をコードする合成遺伝子からの絹からなる群より選択される絹フィブロインから構成される、請求項33記載のマトリックス。
【請求項36】
絹繊維骨格のマトリックスがカイコガのカイコ繊維から得られるフィブロインを含む、請求項35記載のマトリックス。
【請求項37】
マトリックスが絹とコラーゲン繊維との複合体を含む、請求項33記載のマトリックス。
【請求項38】
マトリックスが、絹および絹フィブロイン繊維と、一つまたは複数の絹の泡沫、被膜、メッシュ、またはスポンジとの複合体を含む、請求項33記載のマトリックス。
【請求項39】
マトリックスが、絹と、コラーゲン、ポリ乳酸またはそのコポリマー、ポリグリコール酸またはそのコポリマー、ポリ無水物、エラスチン、グリコサミノグリカン、および多糖類からなる群より選択される一つまたは複数の分解性のポリマーとの複合体を含む、請求項33記載のマトリックス。
【請求項40】
マトリックスが、絹と、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンオキシド、およびポリウレタンからなる群より選択される一つまたは複数の非分解性ポリマーとの複合体を含む、請求項33記載のマトリックス。
【請求項41】
多能性細胞または線維芽細胞が自己由来である、請求項33記載のマトリックス。
【請求項42】
多能性細胞または線維芽細胞が同種異系である、請求項33記載のマトリックス。
【請求項43】
多能性細胞が、骨髄間質細胞および成人細胞または胚幹細胞からなる群より選択される、請求項33記載のマトリックス。
【請求項44】
多能性細胞が成熟ヒトACL線維芽細胞である、請求項33記載のマトリックス。
【請求項45】
多能性細胞または線維芽細胞が、マトリックス上で増殖および分化して、既定の靱帯または腱を形成する、請求項33記載のマトリックス。
【請求項46】
マトリックス上での多能性細胞または線維芽細胞の増殖および分化を増強する表面改変物質をさらに含む、請求項33記載のマトリックス。
【請求項47】
産生される靱帯または腱が、前十字靱帯、後十字靱帯、回旋腱板腱、肘の内側側副靱帯、手の屈筋腱、顎関節の靱帯および腱、ならびに果外側靱帯からなる群より選択される、請求項33記載のマトリックス。
【請求項48】
産生される靱帯が前十字靱帯である、請求項47記載のマトリックス。
【請求項49】
マトリックス上に播種され、バイオリアクター内でインビトロで培養される多能性細胞または線維芽細胞を含む、エクスビボで既定の靱帯または組織を産生するために用いられるワイヤ-ロープ形状を有する絹繊維骨格のマトリックス。
【請求項50】
バイオリアクターが、細胞の増殖および再生にとって適当な条件を提供する、請求項49記載のマトリックス。
【請求項51】
マトリックスが、バイオリアクターによって提供される一つまたは複数の機械的シグナルを受ける、請求項50記載のマトリックス。
【請求項52】
機械的シグナルに、周期的な並進的ひずみおよび回転的ひずみを適用することが含まれる、請求項51記載のマトリックス。
【請求項53】
機械的シグナルの大きさ、持続および組み合わせが、インビボで天然の靱帯または腱が経験するものに近づくように培養期間において変化する、請求項52記載のマトリックス。
【請求項54】
機械的シグナルが、インビボで天然の靱帯または腱が経験する機械的刺激を模倣する、請求項51記載のマトリックス。
【請求項55】
絹繊維骨格のマトリックスが、カイコの絹、クモの絹、遺伝子操作細胞、トランスジェニック植物およびトランスジェニック動物からの絹、培養細胞からの絹、天然の絹、天然の絹遺伝子のクローニングした全配列または部分配列からの絹、ならびに絹または絹様配列をコードする合成遺伝子からの絹からなる群より選択される絹フィブロインから構成される、請求項49記載のマトリックス。
【請求項56】
絹繊維骨格のマトリックスがカイコガのカイコ繊維から得られるフィブロインを含む、請求項55記載のマトリックス。
【請求項57】
マトリックスが絹とコラーゲン繊維との複合体を含む、請求項49記載のマトリックス。
【請求項58】
マトリックスが、絹および絹フィブロイン繊維と、一つまたは複数の絹の泡沫、被膜、メッシュ、またはスポンジとの複合体を含む、請求項49記載のマトリックス。
【請求項59】
マトリックスが、絹と、コラーゲン、ポリ乳酸またはそのコポリマー、ポリグリコール酸またはそのコポリマー、ポリ無水物、エラスチン、グリコサミノグリカン、および多糖類からなる群より選択される一つまたは複数の分解性のポリマーとの複合体を含む、請求項49記載のマトリックス。
【請求項60】
マトリックスが、絹と、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンオキシド、およびポリウレタンからなる群より選択される一つまたは複数の非分解性ポリマーとの複合体を含む、請求項49記載のマトリックス。
【請求項61】
多能性細胞または線維芽細胞が自己由来である、請求項49記載のマトリックス。
【請求項62】
多能性細胞または線維芽細胞が同種異系である、請求項49記載のマトリックス。
【請求項63】
多能性細胞が、骨髄間質細胞および成人細胞または胚幹細胞からなる群より選択される、請求項49記載のマトリックス。
【請求項64】
多能性細胞が成熟ヒトACL線維芽細胞である、請求項49記載のマトリックス。
【請求項65】
多能性細胞または線維芽細胞が、マトリックス上で増殖および分化して、既定の靱帯または腱を形成する、請求項49記載のマトリックス。
【請求項66】
マトリックス上での多能性細胞または線維芽細胞の増殖および分化を増強する表面改変物質をさらに含む、請求項49記載のマトリックス。
【請求項67】
産生される靱帯または腱が、前十字靱帯、後十字靱帯、回旋腱板腱、肘の内側側副靱帯、手の屈筋腱、顎関節の靱帯および腱、ならびに果外側靱帯からなる群より選択される、請求項49記載のマトリックス。
【請求項68】
産生される靱帯が前十字靱帯である、請求項67記載のマトリックス。
【請求項69】
マトリックスに被験者からの自己由来細胞を播種して、被験者からの動的な機械的シグナルを曝露する、特定の靱帯または腱を必要とする被験者にインビボで移植するための既定の靱帯または組織を産生するために用いられるワイヤ-ロープ形状を有する絹繊維骨格のマトリックス。
【請求項70】
絹繊維骨格のマトリックスが、カイコの絹、クモの絹、遺伝子操作細胞、トランスジェニック植物およびトランスジェニック動物からの絹、培養細胞からの絹、天然の絹、天然の絹遺伝子のクローニングした全配列または部分配列からの絹、ならびに絹または絹様配列をコードする合成遺伝子からの絹からなる群より選択される絹フィブロインから構成される、請求項69記載のマトリックス。
【請求項71】
絹繊維骨格のマトリックスがカイコガのカイコ繊維から得られるフィブロインを含む、請求項70記載のマトリックス。
【請求項72】
マトリックスが絹とコラーゲン繊維との複合体を含む、請求項69記載のマトリックス。
【請求項73】
マトリックスが、絹および絹フィブロイン繊維と、一つまたは複数の絹の泡沫、被膜、メッシュ、またはスポンジとの複合体を含む、請求項69記載のマトリックス。
【請求項74】
マトリックスが、絹と、コラーゲン、ポリ乳酸またはそのコポリマー、ポリグリコール酸またはそのコポリマー、ポリ無水物、エラスチン、グリコサミノグリカン、および多糖類からなる群より選択される一つまたは複数の分解性のポリマーとの複合体を含む、請求項69記載のマトリックス。
【請求項75】
マトリックスが、絹と、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンオキシド、およびポリウレタンからなる群より選択される一つまたは複数の非分解性ポリマーとの複合体を含む、請求項69記載のマトリックス。
【請求項76】
自己由来細胞が多能性細胞または線維芽細胞である、請求項69記載のマトリックス。
【請求項77】
線維芽細胞が成熟ヒト前十字靱帯線維芽細胞である、請求項76記載のマトリックス。
【請求項78】
多能性細胞または線維芽細胞が、マトリックス上で増殖および分化して、所望の靱帯または腱を形成する、請求項76記載のマトリックス。
【請求項79】
産生される靱帯または腱が、前十字靱帯、後十字靱帯、回旋腱板腱、肘の内側側副靱帯、手の屈筋腱、ならびに果外側靱帯からなる群より選択される、請求項78記載のマトリックス。
【請求項80】
産生される靱帯が前十字靱帯である、請求項79記載のマトリックス。
【請求項81】
以下の段階を含む、エクスビボで既定のタイプの靱帯または腱を産生する方法:
(a)マトリックス形成の前後いずれかに、マトリックス内に細胞を均一に固定するために、円柱形の絹繊維骨格マトリックスの内部またはその上に多能性細胞または線維芽細胞を播種する段階;
(b)播種したマトリックスの反対の端部に第一および第二のアンカーを結合させる段階;ならびに
(c)細胞の増殖および再生に適した条件下で段階(b)のアンカーを結合させたマトリックスにおいて細胞を培養する段階。
【請求項82】
マトリックスが、ワイヤ-ロープ形状を有する繊維を含む、請求項81記載の方法。
【請求項83】
絹繊維骨格のマトリックスが、カイコの絹、クモの絹、遺伝子操作細胞、トランスジェニック植物およびトランスジェニック動物からの絹、培養細胞からの絹、天然の絹、天然の絹遺伝子のクローニングした全配列または部分配列からの絹、ならびに絹または絹様配列をコードする合成遺伝子からの絹からなる群より選択される絹フィブロインから構成される、請求項81記載の方法。
【請求項84】
絹繊維骨格のマトリックスがカイコガのカイコ繊維から得られるフィブロインを含む、請求項83記載の方法。
【請求項85】
マトリックスが絹とコラーゲン繊維との複合体を含む、請求項81記載の方法。
【請求項86】
マトリックスが、絹および絹フィブロイン繊維と、一つまたは複数の絹の泡沫、被膜、メッシュ、またはスポンジとの複合体を含む、請求項81記載の方法。
【請求項87】
マトリックスが、絹と、コラーゲン、ポリ乳酸またはそのコポリマー、ポリグリコール酸またはそのコポリマー、ポリ無水物、エラスチン、グリコサミノグリカン、および多糖類からなる群より選択される一つまたは複数の分解性のポリマーとの複合体を含む、請求項81記載の方法。
【請求項88】
マトリックスが、絹と、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンオキシド、およびポリウレタンからなる群より選択される一つまたは複数の非分解性ポリマーとの複合体を含む、請求項81記載の方法。
【請求項89】
多能性細胞または線維芽細胞が自己由来である、請求項81記載の方法。
【請求項90】
多能性細胞または線維芽細胞が同種異系である、請求項81記載の方法。
【請求項91】
多能性細胞が、骨髄間質細胞および成人細胞または胚幹細胞からなる群より選択される、請求項81記載の方法。
【請求項92】
線維芽細胞が成熟ヒトACL線維芽細胞である、請求項81記載の方法。
【請求項93】
多能性細胞または線維芽細胞が、マトリックス上で増殖および分化して、前十字靱帯を形成する、請求項81記載の方法。
【請求項94】
マトリックス上での多能性細胞または線維芽細胞の増殖および分化を増強する表面改変物質をさらに含む、請求項81記載の方法。
【請求項95】
アンカーが、ヒドロキシアパタイト、脱塩骨、チタン、ステンレススチール、高密度ポリエチレン、ダクロンおよびテフロンからなる群より選択される材料を含む、請求項81記載の方法。
【請求項96】
段階(c)が、第一および第二のアンカーの一つまたは双方の運動による一つまたは複数の機械的な力をマトリックスが受ける段階をさらに含む、請求項81記載の方法。
【請求項97】
力が第二のアンカーに関して第一のアンカーに対して独立しているが、同時に適用される、機械的な力に、周期的な並進的ひずみおよび回転的ひずみを適用することが含まれる、請求項96記載の方法。
【請求項98】
機械的な力の大きさ、持続、および組み合わせが、インビボで天然の靱帯または腱が経験するものに近づくように培養期間において変化する、請求項96記載の方法。
【請求項99】
段階(b)において第一のアンカーと第二のアンカーとに結合した播種されたマトリックスが、インビボで既定の靱帯または腱が経験する化学刺激を模倣する条件下でさらに培養される、請求項96記載の方法。
【請求項100】
マトリックスが、バイオリアクターにおいて培養されて機械的な力を受ける、請求項96記載の方法。
【請求項101】
螺旋状に構築される線維を有する既定の靱帯または腱を産生するように経時的に適用される機械的な力の組み合わせであり、屈曲および伸長の組み合わせをシミュレートする機械的な力の組み合わせが適用される、請求項96記載の方法。
【請求項102】
産生される靱帯または腱が、前十字靱帯、後十字靱帯、回旋腱板腱、肘の内側側副靱帯、手の屈筋腱、顎関節の靱帯および腱、ならびに果外側靱帯からなる群より選択される、請求項81記載の方法。
【請求項103】
産生される靱帯または腱が前十字靱帯である、請求項102記載の方法。
【請求項104】
機械的な力が、インビボで前十字靱帯が経験する機械的な刺激を模倣する、請求項96記載の方法。
【請求項105】
以下の段階を含む、エクスビボで既定のタイプの靱帯または腱を産生する方法:
(a)マトリックス形成の前後いずれかに、マトリックス内に細胞を均一に固定するために、円柱形の絹繊維骨格マトリックスの内部またはその上に多能性細胞または線維芽細胞を播種する段階;
(b)播種したマトリックスの反対の端部に第一および第二のアンカーを結合させる段階;ならびに
(c)第一および第二のアンカーの一つまたは双方の運動による一つまたは複数の機械的な力をマトリックスに与えながら、細胞の増殖および再生に適した条件下で段階(b)のアンカーを結合させたマトリックスにおいて細胞を培養する段階。
【請求項106】
マトリックスが、ワイヤ-ロープ形状を有する繊維を含む、請求項105記載の方法。
【請求項107】
絹繊維骨格のマトリックスが、カイコの絹、クモの絹、遺伝子操作細胞、トランスジェニック植物およびトランスジェニック動物からの絹、培養細胞からの絹、天然の絹、天然の絹遺伝子のクローニングした全配列または部分配列からの絹、ならびに絹または絹様配列をコードする合成遺伝子からの絹からなる群より選択される絹フィブロインから構成される、請求項105記載の方法。
【請求項108】
絹繊維骨格のマトリックスがカイコガのカイコ繊維から得られるフィブロインを含む、請求項107記載の方法。
【請求項109】
マトリックスが絹とコラーゲン繊維との複合体を含む、請求項105記載の方法。
【請求項110】
マトリックスが、絹および絹フィブロイン繊維と、一つまたは複数の絹の泡沫、被膜、メッシュ、またはスポンジとの複合体を含む、請求項105記載の方法。
【請求項111】
マトリックスが、絹と、コラーゲン、ポリ乳酸またはそのコポリマー、ポリグリコール酸またはそのコポリマー、ポリ無水物、エラスチン、グリコサミノグリカン、および多糖類からなる群より選択される一つまたは複数の分解性のポリマーとの複合体を含む、請求項105記載の方法。
【請求項112】
マトリックスが、絹と、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンオキシド、およびポリウレタンからなる群より選択される一つまたは複数の非分解性ポリマーとの複合体を含む、請求項105記載の方法。
【請求項113】
多能性細胞または線維芽細胞が自己由来である、請求項105記載の方法。
【請求項114】
多能性細胞または線維芽細胞が同種異系である、請求項105記載の方法。
【請求項115】
多能性細胞が、骨髄間質細胞および成人細胞または胚幹細胞からなる群より選択される、請求項105記載の方法。
【請求項116】
多能性細胞が成熟ヒトACL線維芽細胞である、請求項105記載の方法。
【請求項117】
多能性細胞または線維芽細胞が、マトリックス上で増殖および分化して、既定の靱帯または腱を形成する、請求項105記載の方法。
【請求項118】
マトリックス上での多能性細胞または線維芽細胞の増殖および分化を増強する表面改変物質をさらに含む、請求項105記載の方法。
【請求項119】
アンカーが、ヒドロキシアパタイト、脱塩骨、チタン、ステンレススチール、高密度ポリエチレン、ダクロンおよびテフロンからなる群より選択される材料を含む、請求項105記載の方法。
【請求項120】
第二のアンカーに関して第一のアンカーに対して独立しているが、同時に適用される機械的な力に、周期的な並進的ひずみおよび回転的ひずみを適用することが含まれる、請求項105記載の方法。
【請求項121】
機械的な力の大きさ、持続、および組み合わせが、インビボで天然の靱帯または腱が経験するものに近づくように培養期間において変化する、請求項105記載の方法。
【請求項122】
段階(b)において第一のアンカーと第二のアンカーとに結合した播種されたマトリックスが、インビボで既定の靱帯または腱が経験する化学刺激を模倣する条件下でさらに培養される、請求項105記載の方法。
【請求項123】
マトリックスが、バイオリアクターにおいて培養されて機械的な力を受ける、請求項105記載の方法。
【請求項124】
螺旋状に構築される繊維を有する既定の靱帯または腱を産生するように経時的に適用される機械的な力の組み合わせであり、屈曲および伸長の組み合わせをシミュレートする機械的な力の組み合わせが適用される、請求項105記載の方法。
【請求項125】
産生される靱帯または腱が、前十字靱帯、後十字靱帯、回旋腱板腱、肘の内側側副靱帯、手の屈筋腱、顎関節の靱帯および腱、ならびに果外側靱帯からなる群より選択される、請求項105記載の方法。
【請求項126】
産生される靱帯が前十字靱帯である、請求項125記載の方法。
【請求項127】
機械的な力が、インビボで既定の靱帯または腱が経験する機械的な刺激を模倣する、請求項105記載の方法。
【請求項128】
ワイヤ-ロープ形状を有し、エクスビボで既定の靱帯または腱を産生するようにマトリックス上で増殖および分化する多能性細胞または線維芽細胞を播種した絹繊維骨格のマトリックスを含む生物工学による組織。
【請求項129】
絹繊維骨格のマトリックスが、カイコの絹、クモの絹、遺伝子操作細胞、トランスジェニック植物およびトランスジェニック動物からの絹、培養細胞からの絹、天然の絹、天然の絹遺伝子のクローニングした全配列または部分配列からの絹、ならびに絹または絹様配列をコードする合成遺伝子からの絹からなる群より選択される絹フィブロインから構成される、請求項128記載の生物工学による組織。
【請求項130】
マトリックスが絹とコラーゲン繊維との複合体を含む、請求項128記載の生物工学による組織。
【請求項131】
マトリックスが、絹と、コラーゲン、ポリ乳酸またはそのコポリマー、ポリグリコール酸またはそのコポリマー、ポリ無水物、エラスチン、グリコサミノグリカン、および多糖類からなる群より選択される一つまたは複数の分解性のポリマーとの複合体を含む、請求項128記載の生物工学による組織。
【請求項132】
マトリックスが、絹と、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンオキシド、およびポリウレタンからなる群より選択される一つまたは複数の非分解性ポリマーとの複合体を含む、請求項128記載の生物工学による組織。
【請求項133】
多能性細胞または線維芽細胞が自己由来または同種異系である、請求項128記載の生物工学による組織。
【請求項134】
マトリックス上で多能性細胞または線維芽細胞の増殖および分化を増強する表面改変物質をさらに含む、請求項128記載の生物工学による組織。
【請求項135】
自己由来または同種異系細胞が、それを必要とするレシピエントに移植するために分化して靱帯または腱を形成する同種異系移植片または自家移植片を形成する、請求項128記載の生物工学による組織。
【請求項136】
産生される靱帯または腱が、ACL、後十字靱帯、回旋腱板腱、肘の内側側副靱帯、手の屈筋腱、顎関節の靱帯および腱、ならびに果外側靱帯からなる群より選択される、請求項128記載の生物工学による組織。
【請求項137】
産生される靱帯または腱が前十字靱帯である、請求項136記載の生物工学による組織。
【請求項138】
以下の段階を含む方法によって産生される生物工学による組織:
(a)マトリックス形成の前後いずれかに、マトリックス内に細胞を均一に固定するために、円柱形の絹繊維骨格マトリックスの内部またはその上に多能性細胞または線維芽細胞を播種する段階;
(b)マトリックスの反対の端部に第一および第二のアンカーを結合させる段階;ならびに
(c)細胞の増殖および再生に適した条件下で段階(b)のアンカーを結合させたマトリックスにおいて細胞を培養する段階。
【請求項139】
マトリックスが、ワイヤ-ロープ形状を有する線維を含む、請求項138記載の生物工学による組織。
【請求項140】
絹繊維骨格のマトリックスが、カイコの絹、クモの絹、遺伝子操作細胞、トランスジェニック植物およびトランスジェニック動物からの絹、培養細胞からの絹、天然の絹、天然の絹遺伝子のクローニングした全配列または部分配列からの絹、ならびに絹または絹様配列をコードする合成遺伝子からの絹からなる群より選択される絹フィブロインから構成される、請求項138記載の生物工学による組織。
【請求項141】
マトリックスが絹とコラーゲン繊維との複合体を含む、請求項138記載の生物工学による組織。
【請求項142】
マトリックスが、絹と、コラーゲン、ポリ乳酸またはそのコポリマー、ポリグリコール酸またはそのコポリマー、ポリ無水物、エラスチン、グリコサミノグリカン、および多糖類からなる群より選択される一つまたは複数の分解性のポリマーとの複合体を含む、請求項138記載の生物工学による組織。
【請求項143】
マトリックスが、絹と、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンオキシド、およびポリウレタンからなる群より選択される一つまたは複数の非分解性ポリマーとの複合体を含む、請求項138記載の生物工学による組織。
【請求項144】
多能性細胞または線維芽細胞が自己由来または同種異系である、請求項138記載の生物工学による組織。
【請求項145】
多能性細胞または線維芽細胞がマトリックス上で増殖および分化して組織を形成する、請求項138記載の生物工学による組織。
【請求項146】
マトリックス上での多能性細胞または線維芽細胞の増殖および分化を増強する表面改変物質をさらに含む、請求項138記載の生物工学による組織。
【請求項147】
段階(c)が、第一および第二のアンカーの一つまたは双方の動作による一つまたは複数の機械的な力をマトリックスが受ける段階をさらに含む、請求項138記載の生物工学による組織。
【請求項148】
第二のアンカーに関して第一のアンカーに対して独立しているが、同時に適用される機械的な力に、周期的な並進的ひずみおよび回転的ひずみを適用することが含まれる、請求項147記載の生物工学による組織。
【請求項149】
機械的な力の大きさ、持続、および組み合わせが、インビボで天然の組織が経験するものに近づくように培養期間において変化する、請求項147記載の生物工学による組織。
【請求項150】
機械的な力が、インビボで天然の組織が経験する機械的刺激を模倣する、請求項147記載の生物工学による組織。
【請求項151】
段階(b)において第一のアンカーと第二のアンカーとに結合した播種されたマトリックスが、インビボで天然の組織が経験する化学刺激を模倣する条件下でさらに培養される、請求項147記載の生物工学による組織。
【請求項152】
マトリックスが、バイオリアクターにおいて培養されて機械的な力を受ける、請求項147記載の生物工学による組織。
【請求項153】
螺旋状に構築される繊維を有する組織を産生するように経時的に適用される機械的な力の組み合わせであり、屈曲および伸長の組み合わせをシミュレートする機械的な力の組み合わせが適用される、請求項147記載の生物工学による組織。
【請求項154】
多能性細胞または線維芽細胞がマトリックス上で増殖および分化して、所望の靱帯または腱を形成する、請求項138記載の生物工学による組織。
【請求項155】
靱帯または腱が、前十字靱帯、後十字靱帯、回旋腱板腱、肘の内側側副靱帯、手の屈筋腱、顎関節の靱帯および腱、ならびに果外側靱帯からなる群より選択される、請求項154記載の生物工学による組織。
【請求項156】
産生される靱帯が前十字靱帯である、請求項155記載の生物工学による組織。
【請求項157】
以下の段階を含む方法によって産生される生物工学による組織:
(a)マトリックス形成の前後いずれかに、マトリックス内に細胞を均一に固定するために、円柱形の絹繊維骨格マトリックスの内部またはその上に多能性細胞を播種する段階;
(b)マトリックスの反対の端部に第一および第二のアンカーを結合させる段階;ならびに
(c)第一および第二のアンカーの一つまたは双方の運動による一つまたは複数の機械的な力をマトリックスに与えながら、細胞の増殖および再生に適した条件下で段階(b)の結合したマトリックスにおいて細胞を培養する段階。
【請求項158】
マトリックスが、ワイヤ-ロープ形状を有する繊維を含む、請求項157記載の生物工学による組織。
【請求項159】
絹繊維骨格のマトリックスが、カイコの絹、クモの絹、遺伝子操作細胞、トランスジェニック植物およびトランスジェニック動物からの絹、培養細胞からの絹、天然の絹、天然の絹遺伝子のクローニングした全配列または部分配列からの絹、ならびに絹または絹様配列をコードする合成遺伝子からの絹からなる群より選択される絹フィブロインから構成される、請求項157記載の生物工学による組織。
【請求項160】
マトリックスが絹とコラーゲン繊維との複合体を含む、請求項157記載の生物工学による組織。
【請求項161】
マトリックスが、絹と、コラーゲン、ポリ乳酸またはそのコポリマー、ポリグリコール酸またはそのコポリマー、ポリ無水物、エラスチン、グリコサミノグリカン、および多糖類からなる群より選択される一つまたは複数の分解性のポリマーとの複合体を含む、請求項157記載の生物工学による組織。
【請求項162】
マトリックスが、絹と、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンオキシド、およびポリウレタンからなる群より選択される一つまたは複数の非分解性ポリマーとの複合体を含む、請求項157記載の生物工学による組織。
【請求項163】
多能性細胞または線維芽細胞が自己由来または同種異系である、請求項157記載の生物工学による組織。
【請求項164】
多能性細胞または線維芽細胞が、マトリックス上で増殖および分化して、所望の靱帯または腱を形成する、請求項157記載の生物工学による組織。
【請求項165】
マトリックス上での多能性細胞または線維芽細胞の増殖および分化を増強する表面改変物質をさらに含む、請求項157記載の生物工学による組織。
【請求項166】
第二のアンカーに関して第一のアンカーに対して独立しているが、同時に適用される機械的な力に、周期的な並進的ひずみおよび回転的ひずみを適用することが含まれる、請求項157記載の生物工学による組織。
【請求項167】
機械的な力の大きさ、持続、および組み合わせが、インビボで天然の組織が経験するものに近づくように培養期間において変化する、請求項157記載の生物工学による組織。
【請求項168】
機械的な力が、インビボで天然の組織が経験する機械刺激を模倣する、請求項157記載の生物工学による組織。
【請求項169】
段階(b)における第一のアンカーと第二のアンカーとに結合した播種されたマトリックスが、インビボで天然の組織が経験する化学刺激を模倣する条件下でさらに培養される、請求項157記載の生物工学による組織。
【請求項170】
マトリックスが、バイオリアクターにおいて培養されて機械的な力を受ける、請求項157記載の生物工学による組織。
【請求項171】
螺旋状に構築される繊維を有する組織を産生するように経時的に適用される機械的な力の組み合わせであり、屈曲および伸長の組み合わせをシミュレートする機械的な力の組み合わせが適用される、請求項157記載の生物工学による組織。
【請求項172】
靱帯または腱が、前十字靱帯、後十字靱帯、回旋腱板腱、肘の内側側副靱帯、手の屈筋腱、顎関節の靱帯および腱、ならびに果外側靱帯からなる群より選択される、請求項164記載の生物工学による靱帯。
【請求項173】
産生される靱帯が前十字靱帯である、請求項172記載の生物工学による靱帯。
【請求項174】
ワイヤ-ロープ形状を有し、マトリックス上で増殖および分化してエクスビボで前十字靱帯を産生する骨髄間質細胞を播種した絹繊維骨格のマトリックス。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−152429(P2011−152429A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−47049(P2011−47049)
【出願日】平成23年3月4日(2011.3.4)
【分割の表示】特願2003−545173(P2003−545173)の分割
【原出願日】平成14年11月15日(2002.11.15)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(503216502)タフツ ユニバーシティー (7)
【出願人】(504430695)セリカ テクノロジーズ インコーポレイティッド (5)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月4日(2011.3.4)
【分割の表示】特願2003−545173(P2003−545173)の分割
【原出願日】平成14年11月15日(2002.11.15)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(503216502)タフツ ユニバーシティー (7)
【出願人】(504430695)セリカ テクノロジーズ インコーポレイティッド (5)
【Fターム(参考)】
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