説明

組織特異的ペプチドコンジュゲートおよび方法

選択された哺乳動物組織へと治療用化合物をターゲティングさせるのに有用な細胞透過性ペプチド、その同定法、そのようなペプチドを含有するコンジュゲート化合物を形成する方法、およびそれによって形成されたコンジュゲートを開示する。細胞透過性ペプチドは、アミノ酸残基8〜30個の長さであり、RXR、RX、RB、およびRBRからなる群より選択される部分配列からなり、式中、Rはアルギニンであり、Bはβ-アラニンであり、かつ各Xは独立して-C(O)-(CHR1)n-NH-であり、ここでnは4〜6であり、各R1は、メチルであるR1が多くても2つとなるように、独立してHまたはメチルである。1つの態様において、Xは6-アミノヘキサン酸残基である。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、そのペプチドを含有するコンジュゲートの組織特異的生体分布にとって有用な細胞透過性ペプチド(cell-penetrating peptide)、および選択された組織において用いるためにそのようなペプチドを選択する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
参考文献
Abes, S., H.M. Moulton et al. (2006). "Vectorization of morpholino oligomers by the (R-Ahx-R)4 peptide allows efficient splicing correction in the absence of endosomolytic agents." J Control Release 116(3): 304-13.(非特許文献1)
Arap, W. et al. (2004). "Human and mouse targeting peptides identified by phage display." 米国特許出願公開第20040170955号(特許文献1)
Behlke, M. A. (2006). "Progress towards in vivo use of siRNAs." Mol Ther 13(4): 644-70.(非特許文献2)
Alter, J., F. Lou et al. (2006). "Systemic delivery of morpholino oligonucleotide restores dystrophin expression bodywide and improves dystrophic pathology." Nat Med 12(2): 175-7.(非特許文献3)
Chen, C.P., L.R. Zhang et al. (2003). "A concise method for the preparation of peptide and arginine-rich peptide-conjugated antisense oligonucleotide." Bioconjug Chem 14(3): 532-8.(非特許文献4)
Gebski, B.L., C.J. Mann et al. (2003). "Morpholino antisense oligonucleotide induced dystrophin exon 23 skipping in mdx mouse muscle." Hum Mol Genet 12(15): 1801-11.(非特許文献5)
Jearawiriyapaisarn, Moulton et al. (2008). "Sustained Dystrophin Expression Induced by Peptide-conjugated Morpholino Oligomers in the Muscles of mdx Mice." Mol Therapy, June 10, 2008 (advance online publication).(非特許文献6)
Kang, S.H., M.J. Cho et al. (1998). "Up-regulation of luciferase gene expression with antisense oligonucleotides: implications and applications in functional assay development." Biochemistry 37(18): 6235-9.(非特許文献7)
Kolonin, M.G., J. Sun et al. (2006). "Synchronous selection of homing peptides for multiple tissues by in vivo phage display." FASEB J 20(7): 979-81.(非特許文献8)
Meade, B.R. and S.F. Dowdy (2007). "Exogenous siRNA delivery using peptide transduction domains/cell penetrating peptides." Adv Drug Deliv Rev 59(2-3): 134-40.(非特許文献9)
Richard, J.P., K. Melikov et al. (2003). "Cell-penetrating peptides. A reevaluation of the mechanism of cellular uptake." J Biol Chem 278(1): 585-90.(非特許文献10)
Rothbard, J.B., E. Kreider et al. (2002). "Arginine-rich molecular transporters for drug delivery: role of backbone spacing in cellular uptake." J Med Chem 45(17): 3612-8.(非特許文献11)
Samoylova, T.I. and B.F. Smith (1999). "Elucidation of muscle-binding peptides by phage display screening." Muscle Nerve 22(4): 460-6.(非特許文献12)
Sazani, P., F. Gemignani et al. (2002). "Systemically delivered antisense oligomers upregulate gene expression in mouse tissues." Nat Biotechnol 20(12): 1228-33.(非特許文献13)
Sontheimer, E. J. (2005). "Assembly and function of RNA silencing complexes." Nat Rev Mol Cell Biol 6(2): 127-38.(非特許文献14)
Vodyanoy, V. et al. (2003). "Ligand sensor devices and uses thereof." 米国特許出願公開第20030640466号(特許文献2)
Wu, R.P., D.S. Youngblood et al. (2007). "Cell-penetrating peptides as transporters for morpholino oligomers: effects of amino acid composition on intracellular delivery and cytotoxicity." Nucleic Acids Res. 35(15):5182-91. (Epub 2007 Aug 1.)(非特許文献15)
Youngblood, D.S., S.A. Hatlevig et al. (2007). "Stability of cell-penetrating peptide-morpholino oligomer conjugates in human serum and in cells." Bioconjug Chem 18(1): 50-60.(非特許文献16)
【0003】
発明の背景
おそらく有用な生物活性を有する多くの薬物の実用的な有用性はしばしば、そのような薬物をその標的に送達する際に問題があるために妨害されている。薬物および他の化合物の細胞への送達は一般的に、水性の細胞環境から起こり、細胞内侵入を獲得するために親油性の細胞膜の透過を必要とする。
【0004】
オリゴヌクレオチドおよびその類似体は、その実用的な有用性が、不十分な細胞取り込みにより妨げられているおそらく有用な薬物の1つのクラスであり、ゆえに非αアミノ酸を含有するアルギニンに富むペプチドのコンジュゲーションを通してオリゴヌクレオチドの取り込みを増強することが提唱されている(たとえば、Chen, Zhang et al. 2003(非特許文献4);Abes, Moulton et al. 2006(非特許文献1);Youngblood, Hatlevig et al. 2007(非特許文献16);およびWu et al. 2007(非特許文献15)を参照されたい)。アルギニンに富むペプチドを用いることは、治療薬の輸送に関してより一般的に報告されている(たとえば、Rothbard, Kreider et al. 2002を参照されたい)。
【0005】
本発明者らおよび他の研究者による研究(Chen, Zhang et al. 2003(非特許文献4);Abes, Moulton et al. 2006(非特許文献1);Youngblood, Hatlevig et al. 2007(非特許文献16))から、非天然アミノ酸を組み入れることにより、ペプチド担体には増強された安定性を、およびコンジュゲートしたオリゴマーには増強されたアンチセンス活性を、付与することができ、よってCPP(cell penetrating peptide;細胞透過性ペプチド)の治療用高分子の送達能を改善することができることが確立された。これらの進歩にもかかわらず、特に、選択された標的組織における最適化された細胞取り込みといった、改善された特徴を有するCPPが必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】Arap, W. et al. (2004). "Human and mouse targeting peptides identified by phage display." 米国特許出願公開第20040170955号
【特許文献2】Vodyanoy, V. et al. (2003). "Ligand sensor devices and uses thereof." 米国特許出願公開第20030640466号
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Abes, S., H.M. Moulton et al. (2006). "Vectorization of morpholino oligomers by the (R-Ahx-R)4 peptide allows efficient splicing correction in the absence of endosomolytic agents." J Control Release 116(3): 304-13.
【非特許文献2】Behlke, M. A. (2006). "Progress towards in vivo use of siRNAs." Mol Ther 13(4): 644-70.
【非特許文献3】Alter, J., F. Lou et al. (2006). "Systemic delivery of morpholino oligonucleotide restores dystrophin expression bodywide and improves dystrophic pathology." Nat Med 12(2): 175-7.
【非特許文献4】Chen, C.P., L.R. Zhang et al. (2003). "A concise method for the preparation of peptide and arginine-rich peptide-conjugated antisense oligonucleotide." Bioconjug Chem 14(3): 532-8.
【非特許文献5】Gebski, B.L., C.J. Mann et al. (2003). "Morpholino antisense oligonucleotide induced dystrophin exon 23 skipping in mdx mouse muscle." Hum Mol Genet 12(15): 1801-11.
【非特許文献6】Jearawiriyapaisarn, Moulton et al. (2008). "Sustained Dystrophin Expression Induced by Peptide-conjugated Morpholino Oligomers in the Muscles of mdx Mice." Mol Therapy, June 10, 2008 (advance online publication).
【非特許文献7】Kang, S.H., M.J. Cho et al. (1998). "Up-regulation of luciferase gene expression with antisense oligonucleotides: implications and applications in functional assay development." Biochemistry 37(18): 6235-9.
【非特許文献8】Kolonin, M.G., J. Sun et al. (2006). "Synchronous selection of homing peptides for multiple tissues by in vivo phage display." FASEB J 20(7): 979-81.
【非特許文献9】Meade, B.R. and S.F. Dowdy (2007). "Exogenous siRNA delivery using peptide transduction domains/cell penetrating peptides." Adv Drug Deliv Rev 59(2-3): 134-40.
【非特許文献10】Richard, J.P., K. Melikov et al. (2003). "Cell-penetrating peptides. A reevaluation of the mechanism of cellular uptake." J Biol Chem 278(1): 585-90.
【非特許文献11】Rothbard, J.B., E. Kreider et al. (2002). "Arginine-rich molecular transporters for drug delivery: role of backbone spacing in cellular uptake." J Med Chem 45(17): 3612-8.
【非特許文献12】Samoylova, T.I. and B.F. Smith (1999). "Elucidation of muscle-binding peptides by phage display screening." Muscle Nerve 22(4): 460-6.
【非特許文献13】Sazani, P., F. Gemignani et al. (2002). "Systemically delivered antisense oligomers upregulate gene expression in mouse tissues." Nat Biotechnol 20(12): 1228-33.
【非特許文献14】Sontheimer, E. J. (2005). "Assembly and function of RNA silencing complexes." Nat Rev Mol Cell Biol 6(2): 127-38.
【非特許文献15】Wu, R.P., D.S. Youngblood et al. (2007). "Cell-penetrating peptides as transporters for morpholino oligomers: effects of amino acid composition on intracellular delivery and cytotoxicity." Nucleic Acids Res. 35(15):5182-91. (Epub 2007 Aug 1.)
【非特許文献16】Youngblood, D.S., S.A. Hatlevig et al. (2007). "Stability of cell-penetrating peptide-morpholino oligomer conjugates in human serum and in cells." Bioconjug Chem 18(1): 50-60.
【発明の概要】
【0008】
本発明には、1つの局面において、治療用化合物、典型的にはオリゴマーアンチセンス化合物を、選択された哺乳動物組織へとターゲティングさせるのに有用な細胞透過性ペプチドを同定するための方法が含まれる。方法には、以下の段階が含まれる:
(a)(i)Rがアルギニン(好ましくはL-アルギニン)であり、Bがβ-アラニンであり、かつ各Xが独立して-C(O)-(CHR1)n-NH-であり、ここでnは4〜6であり、かつ各R'は、メチルであるR1が多くても2つとなるように、独立してHまたはメチルである、RXR、RX、RB、およびRBRからなる群より選択される部分配列からなる、各々、アミノ酸残基8〜30個の長さ、好ましくはアミノ酸8〜20個の長さの、複数の異なるペプチドと、
(ii)X、B、またはXB連結によって各々のペプチドに共有結合的に連結しており、選択された組織の細胞においてその濃度がアッセイされうる、マーカー化合物と
からなるペプチドコンジュゲートのライブラリを形成する段階;
(b)各ペプチドコンジュゲートを哺乳動物被験体に投与する段階;
(c)投与されたペプチドコンジュゲートを哺乳動物被験体の選択された組織に局在化させるのに十分な期間の後、選択された組織の細胞におけるマーカー化合物のレベルをアッセイする段階;ならびに
(d)コンジュゲートライブラリにおける他のペプチドと比較して、選択された組織におけるマーカー化合物の最高レベルまたはほぼ最高(near-highest)レベルをもたらすその能力に基づいて、選択された哺乳動物組織へと治療用化合物をターゲティングさせるのに有用な細胞透過性ペプチドを選択する段階。
【0009】
ライブラリのペプチドには、SEQ ID NO:6〜27によって識別される配列を有する群から選択される少なくとも8個のペプチドが含まれてもよい。1つの態様において、ペプチドにおける各X残基は、6-アミノヘキサン酸であり、ペプチドは、少なくとも3個のX残基を含有し、かつペプチドは(RXR)部分配列と(RBR)部分配列の組み合わせを含む。別の態様において、各X残基は、6-アミノヘキサン酸であり、ペプチドは少なくとも3個のX残基を含有し、かつペプチドは(RX)部分配列と(RB)部分配列の組み合わせを含む。
【0010】
ペプチドは典型的には、6-アミノヘキサン酸、5-アミノペンタン酸、7-アミノヘプタン酸、およびβ-アラニンからなる群より選択される1つまたは2つのアミノ酸残基からなる連結(そのような連結は、先に記述したX、B、およびXBの態様である)によって、1つの末端、好ましくはN末端でマーカー化合物に連結される。
【0011】
ライブラリコンジュゲートにおけるマーカー化合物は、蛍光マーカーであってもよく、アッセイする段階には、選択された組織からの細胞を、インターナライズされた蛍光マーカーの存在に関して検査することが含まれる。好ましくは、コンジュゲートのライブラリにおけるマーカー化合物はアンチセンスオリゴマーであり、これも同様に蛍光標識されてもよい。1つの態様において、アンチセンスオリゴマーは、選択された細胞タンパク質またはレポーター遺伝子におけるエキソンスキッピングをもたらすために、または異常なスプライシングを修正するために有効であり、アッセイする段階には、選択された組織の細胞によって産生されたタンパク質産物を、エキソンスキッピングまたはスプライス修正を示している、選択された細胞タンパク質の切断型の存在に関して、検査することが含まれる。
【0012】
そのようなアンチセンスオリゴヌクレオチドマーカー化合物は、ホスホロジアミデートモルフォリノオリゴヌクレオチドであってもよく、さらに、約20〜50%の陽性に荷電した骨格連結を含有する、ホスホロジアミデートモルフォリノオリゴヌクレオチドであってもよい。
【0013】
本発明はまた、以下のSEQ ID NO:14〜27から選択される配列を有するペプチド、および特にSEQ ID NO:19〜27から選択される配列を有するペプチドなどの、上に引用した構造を有する特定組織選択的ペプチドを提供する。他のクラスの好ましいペプチドには、ペプチドにおける各X残基が6-アミノヘキサン酸であり、少なくとも3個のX残基を含有し、かつ(RXR)部分配列と(RBR)部分配列の組み合わせを含むペプチド;ならびに各X残基が6-アミノヘキサン酸であり、少なくとも3個のX残基を含有し、かつ(RX)部分配列と(RB)部分配列の組み合わせを含むペプチドが含まれる。1つの態様において、ペプチドはSEQ ID NO:19として識別される配列を有する。
【0014】
別の局面において、方法には、以下の段階を含む、哺乳動物被験体における選択された組織に関連する疾患状態の処置において用いるための治療用コンジュゲートを調製する方法が含まれる:(a)上に開示した方法によって選択される、選択された組織に関する細胞透過性ペプチドを同定する段階、(b)選択された組織の細胞に局在した場合に疾患状態に対して有効である治療用化合物を選択する段階、および(c)選択された細胞透過性ペプチドの1つの末端に治療用化合物をコンジュゲートさせる段階。好ましくは、治療用化合物はアンチセンスオリゴマーであり、より好ましくは本明細書において定義されるPMOである。
【0015】
コンジュゲートを調製する方法にはまた、選択された組織に対する選択性をもつホーミングペプチドを細胞透過性ペプチドの別の末端にコンジュゲートさせて、以下の型のコンジュゲートを形成する段階が含まれてもよい:細胞透過性ペプチド−ホーミングペプチド−治療用化合物の型、またはおよび好ましくは、ホーミングペプチド−細胞透過性ペプチド−治療用化合物の型。
【0016】
別の局面において、本発明は、特定の標的組織における所定の疾患状態と発現が関連している遺伝子に対して方向付けられている、ホスホロジアミデートモルフォリノアンチセンスオリゴマーと、連結X、B、またはXBによってそれに共有結合的に連結されており、8〜20個のアミノ酸残基を含み、かつ部分配列(RXR)と部分配列(RBR)の組み合わせかまたは部分配列(RX)と部分配列(RB)の組み合わせからなる、細胞透過性ペプチドとを含む、所定の疾患状態を処置するためのペプチド-アンチセンスコンジュゲートを提供し、式中RはD-アルギニンが含まれてもよいアルギニンであり、Bはβ-アラニンであり、かつ各Xは独立して中性の直鎖状アミノ酸-C(O)-(CH2)n-NH-であり、ここでnは4〜6であり、細胞透過性ペプチドは、アンチセンスオリゴマーを標的組織に選択的に局在化させる。好ましくは、各Xが6-アミノヘキサン酸残基であるようにnは5である。さらに好ましい態様において、ホスホロジアミデートモルフォリノオリゴマーは、以下に詳しく記述されるように、約20〜50%の、陽性に荷電した骨格連結を含有する。
【0017】
本明細書において記述されるペプチド-オリゴマーコンジュゲートにおいて、コンジュゲートされた末端は好ましくはペプチドのN末端である。
【0018】
所定の疾患状態を処置するためのアンチセンスオリゴマーを、典型的には遺伝子発現を阻害することによって、または遺伝子のスプライシングを調節することによって、当技術分野において公知の方法論に従って設計することができ、例示的な配列を本明細書において提供する。
【0019】
本発明のペプチド-オリゴマーコンジュゲートの選択された態様には、以下が含まれる:
哺乳動物被験体における前立腺癌の処置において用いるためのペプチドコンジュゲート化合物であって、ペプチドがSEQ ID NO:23として識別される配列を有し、かつアンチセンスオリゴマーがヒトアンドロゲン受容体タンパク質を標的とする、ペプチドコンジュゲート化合物;
哺乳動物被験体における多発性嚢胞腎疾患の処置において用いるためのペプチドコンジュゲート化合物であって、ペプチドがSEQ ID NO:13、14、21、および27からなる群より選択される配列を有し、かつアンチセンスオリゴマーがヒトc-mycタンパク質を標的とする、ペプチドコンジュゲート化合物;
末梢血における幹細胞の増殖および生存を増強するためのペプチドコンジュゲート化合物であって、ペプチドがSEQ ID NO:10、14、19、および27からなる群より選択される配列を有し、かつアンチセンスオリゴマーがヒトTGF-βを標的とする、ペプチドコンジュゲート化合物;
心臓の再狭窄(cardiac restenosis)の処置において用いるためのペプチドコンジュゲート化合物であって、ペプチドがSEQ ID NO:19および21からなる群より選択される配列を有し、かつアンチセンスオリゴマーがヒトc-mycを標的とする、ペプチドコンジュゲート化合物;
呼吸器のウイルス感染症の処置において用いるためのペプチドコンジュゲート化合物であって、ペプチドがSEQ ID NO:10によって識別される配列を有し、かつアンチセンスオリゴマーがA型インフルエンザウイルスまたは呼吸器合胞体ウイルスを標的とする、ペプチドコンジュゲート化合物;
呼吸器の細菌感染症の処置において用いるためのペプチドコンジュゲート化合物であって、ペプチドがSEQ ID NO:13、14、および19によって識別される群から選択される配列を有し、かつアンチセンスオリゴマーが細菌の16S rRNAを標的とする、ペプチドコンジュゲート化合物;
肝臓で正常に代謝される生体異物化合物の代謝の再方向付け(metabolic redirection)において用いるためのペプチドコンジュゲート化合物であって、ペプチドがSEQ ID NO:19、23、24、および25からなる群より選択される配列を有し、かつアンチセンスオリゴマーが肝臓のP450酵素を標的とする、ペプチドコンジュゲート化合物;
ウイルス肝炎の処置において用いるためのペプチドコンジュゲート化合物であって、ペプチドがSEQ ID NO:19、23、24、および25からなる群より選択される配列を有し、かつアンチセンスオリゴマーがC型肝炎ウイルスまたはB型肝炎ウイルスを標的とする、ペプチドコンジュゲート化合物;
哺乳動物被験体における炎症状態の処置において用いるためのペプチドコンジュゲート化合物であって、ペプチドがSEQ ID NO:19、23、24、および25からなる群より選択される配列を有し、かつアンチセンスオリゴマーが、可溶性TNF-α受容体の発現を誘導するのに有効である、ペプチドコンジュゲート化合物;
哺乳動物被験体における免疫状態(immune condition)の処置において用いるためのペプチドコンジュゲート化合物であって、ペプチドがSEQ ID NO:27によって表される配列を有し、かつアンチセンスオリゴマーが、白血球におけるIL-10、CTLA-4、またはcFLIPの発現を抑制するのに有効である、ペプチドコンジュゲート化合物;
ヒト被験体における骨格筋量の損失の処置において用いるためのペプチドコンジュゲート化合物であって、ペプチドがSEQ ID NO:6、13、19、および20からなる群より選択される配列を有し、かつアンチセンスオリゴマーがヒトミオスタチンを標的とする、ペプチドコンジュゲート化合物;ならびに
デュシェンヌ型筋ジストロフィーの処置において用いるためのペプチドコンジュゲート化合物であって、ペプチドがSEQ ID NO:6、13、19、および20からなる群より選択される配列を有し、かつアンチセンスオリゴマーが、ジストロフィンタンパク質の部分的活性を回復させるようにヒトジストロフィンタンパク質におけるエキソンスキッピングをもたらすのに有効である、ペプチドコンジュゲート化合物。このコンジュゲートの好ましい態様において、ペプチドは、SEQ ID NO:19として識別される配列を有し、かつアンチセンスオリゴマーはSEQ ID NO:34および49からなる群より選択される配列を有する。
【0020】
一般的に、ペプチド-オリゴマーコンジュゲートはさらに、選択された哺乳動物組織、すなわち細胞透過性ペプチドによって標的とされるのと同じ組織に対する選択性をもつホーミングペプチドを含んでもよい。コンジュゲートは、細胞透過性ペプチド−ホーミングペプチド−アンチセンスオリゴマーの型のコンジュゲートであってもよく、またはより好ましくはホーミングペプチド−細胞透過性ペプチド−アンチセンスオリゴマーの型のコンジュゲートであってもよい。たとえば、先に記述したデュシェンヌ型筋ジストロフィーの処置において用いるためのペプチドコンジュゲート化合物はさらに、細胞透過性ペプチドとコンジュゲートされた、SEQ ID NO:51として識別される配列を有するペプチドなどの、筋組織に対する選択性をもつホーミングペプチドを含みうる。このタイプの例示的なコンジュゲートには、本明細書においてCP06062-MSP-PMO(細胞透過性ペプチド−ホーミングペプチド−アンチセンスオリゴマー)およびMSP-CP06062-PMO(ホーミングペプチド−細胞透過性ペプチド−アンチセンスオリゴマー)として表されるコンジュゲートが含まれる(添付の配列の表を参照されたい)。
【0021】
関連する局面において、本発明は、哺乳動物被験体に投与された場合に、それぞれ、発現されたジストロフィンタンパク質におけるスプライスバリアント切断を抑制するのに有効な、または筋組織におけるミオスタチン発現を抑制するのに有効なアンチセンスオリゴマーを調製することによる、哺乳動物被験体におけるデュシェンヌ型筋ジストロフィーまたは筋消耗(muscle-wasting)疾患を処置するためのアンチセンス組成物を調製するための方法における改善を提供し、改善は、SEQ ID NO:19として識別される配列を有する細胞透過性ペプチドをオリゴマーとコンジュゲートさせることを含む。改善にはさらに、SEQ ID NO:51〜55などの筋ホーミングペプチドをオリゴマーおよび細胞透過性ペプチドとコンジュゲートさせて、ホーミングペプチド−細胞透過性ペプチド−アンチセンスオリゴマー組成物を形成することが含まれてもよい。
【0022】
同様に、哺乳動物被験体に投与された場合に、可溶性のTNF-α受容体の発現を誘導するのに有効なアンチセンスオリゴマー(たとえば、SEQ ID NO:33)を調製することによる、哺乳動物被験体における炎症状態を処置するためのアンチセンス組成物を調製するための方法における改善も提供され、改善は、SEQ ID NO:19、23、24、および25からなる群より選択される配列を有する細胞透過性ペプチドをオリゴマーとコンジュゲートさせることを含む。改善にはさらに、SEQ ID NO:76などの肝臓ホーミングペプチドをオリゴマーおよび細胞透過性ペプチドとコンジュゲートさせて、ホーミングペプチド−細胞透過性ペプチド−アンチセンスオリゴマー組成物を形成することが含まれてもよい。
【0023】
さらに、哺乳動物被験体に投与された場合に、白血球におけるIL-10、CTLA-4、またはcFLIPの発現を抑制するのに有効なアンチセンスオリゴマーを調製することによる、哺乳動物被験体における免疫状態を処置するためのアンチセンス組成物を調製するための方法における改善が提供され、改善は、SEQ ID NO:27として識別される配列を有する細胞透過性ペプチドをオリゴマーとコンジュゲートさせることを含む。改善にはさらに、オリゴマーおよび細胞透過性ペプチドに白血球ホーミングペプチドをコンジュゲートさせて、ホーミングペプチド−細胞透過性ペプチド−アンチセンスオリゴマー組成物を形成することが含まれてもよい。
【0024】
より一般的には、本発明は、その作用が特定の標的組織に対して方向付けられている治療用化合物または薬物と、連結X、B、またはXBによってそれに共有結合的に連結されており、8〜20個のアミノ酸残基を含み、かつ部分配列(RXR)と部分配列(RBR)の組み合わせかまたは部分配列(RX)と部分配列(RB)の組み合わせからなる細胞透過性ペプチドとを含む、所定の疾患状態を処置するための薬物-ペプチドコンジュゲートを提供し、式中Rはアルギニンであり、Bはβ-アラニンであり、かつ各Xは独立して中性の直線状のアミノ酸-C(O)-(CH2)n-NH-であり、ここでnは4〜6であり、好ましくは5であり、細胞透過性ペプチドは、薬物を標的組織に選択的に局在化させる。
【0025】
先に記述したように、薬物-ペプチドコンジュゲートはさらに、選択された哺乳動物組織、すなわち細胞透過性ペプチドによって標的とされるのと同じ組織に対する選択性をもつホーミングペプチドを含んでもよい。コンジュゲートは、細胞透過性ペプチド−ホーミングペプチド−薬物の型、またはより好ましくはホーミングペプチド−細胞透過性ペプチド−薬物の型のコンジュゲートであってもよい。
【0026】
本発明のペプチド-薬物コンジュゲートの選択された態様には、以下が含まれる:
哺乳動物被験体における乳癌の処置において用いるためのコンジュゲートであって、細胞透過性ペプチドがSEQ ID NO:6、14、22、および27からなる群より選択され、かつ治療用化合物が、メトトレキセート、シクロホスファミド、ドキソルビシン、5-フルオロウラシル、エピルビシン、およびHerceptin(登録商標)からなる群より選択される、コンジュゲート;
哺乳動物被験体における卵巣癌または前立腺癌の処置において用いるためのコンジュゲートであって、細胞透過性ペプチドが、SEQ ID NO:23として識別される配列を有し、かつ治療用化合物が、(i)前立腺癌を処置するための、前立腺幹細胞抗原に対して特異的な抗体、および(ii)卵巣癌を処置するためのタキソール、トポテカン、ドキソルビシン、Herceptin(登録商標)、およびペルツザマブ(pertuzamab)からなる群より選択される、コンジュゲート;
哺乳動物被験体における腎臓の癌の処置において用いるためのコンジュゲートであって、細胞透過性ペプチドがSEQ ID NO:13、14、21、および27からなる群より選択され、かつ治療用化合物がゲムシタビンおよびカペシタビンからなる群より選択される、コンジュゲート;
再狭窄の処置において用いるためのコンジュゲートであって、細胞透過性ペプチドがSEQ ID NO:19および27からなる群より選択され、かつ治療用化合物が、ラパマイシンおよび抗再狭窄(anti-restenosis)活性を有するラパマイシン類似体からなる群より選択される、コンジュゲート;
哺乳動物被験体における肺癌の処置において用いるためのコンジュゲートであって、細胞透過性ペプチドがSEQ ID NO:11、14および19からなる群より選択され、ならびに治療用化合物がシスプラチン、カルボプラチン、パクリタキセル、およびドセタキセルからなる群より選択される、コンジュゲート;
哺乳動物被験体における肝臓癌の処置において用いるためのコンジュゲートであって、細胞透過性ペプチドがSEQ ID NO:19、23、24、および25からなる群より選択され、かつ治療用化合物が、ドキソルビシン、5-フルオロウラシル、およびメトトレキセートからなる群より選択される、コンジュゲート。
【0027】
治療用化合物がsiRNAであるコンジュゲートも同様に含まれる。そのようなコンジュゲートはさらに、siRNAと非共有結合的に結合している二本鎖RNA結合化合物を含んでもよく、またはsiRNAと非共有結合的に結合している二本鎖RNA結合化合物と共に用いられてもよい。
【0028】
本発明のこれらおよび他の目標および特色は、添付の図面と共に本発明の以下の詳細な説明を読むことによってより完全に明らかとなると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】図1A〜Cはそれぞれ、ホスホロジアミデート連結モルフォリノオリゴマー(PMO)、ペプチドコンジュゲートPMO(PPMO)、およびサブユニット間の陽イオン性連結を有するペプチドコンジュゲートPMO(PPMO+)の例示的な構造を示す。(複数の陽イオン性連結タイプを図1Cにおいて図示するが、PMO+またはPPMO+オリゴマーには、典型的にはただ1つのタイプの陽イオン性連結が含まれると考えられる)。
【図2】図2A〜Bは、pLuc705細胞における、様々な細胞透過性ペプチド(CPP)とカルボキシフルオレセイン標識モルフォリノオリゴマー(PMOF)とのコンジュゲートの細胞取り込みを示す。
【図3】図3A〜Dは、10%血清の存在下もしくは非存在下(A〜C)での、または最大60%の血清の存在下(D)での担体ペプチド-PMOコンジュゲートの核アンチセンス活性を示す。
【図4】ペプチドにおける6-アミノヘキサン酸(Ahx)の数および位置の関数としての担体ペプチド-PMOコンジュゲートの核アンチセンス活性を示す。ペプチドにおけるX残基の数に対応するペプチド0、2、3a、3b、3c、3d、4a、4b、4c、5、および8はそれぞれ、表1においてSEQ ID NO:14、20、22、19、21、25、24、23、26、11、および3として示されている。
【図5】図5A〜Fは、MTTアッセイによって測定した場合の、担体ペプチド-PMOコンジュゲートの相対毒性を示す。
【図6】図6A〜Dは、PI排除アッセイ(A〜C)および溶血アッセイ(D)によって測定した場合の、担体ペプチド-PMOコンジュゲートの相対毒性を示す。
【図7】図7A〜Pは、横隔膜(図7A)、乳腺(図7B)、卵巣および前立腺(図7C)、脳(図7D)、腎臓(図7E)、骨髄(図7F)、結腸(図7G)、筋肉(図7H)、皮膚(図7I)、脾臓(図7J)、胃(図7K)、胸腺(図7L)、心臓(図7M)、肺(図7N)、小腸(図7O)、および肝臓(図7P)において測定された、EGFP-654を標的とする様々な細胞透過性ペプチド-PMOコンジュゲート(SEQ ID NO:2、6、11、13、14および19〜27)によって処置したEGFP-654トランスジェニックマウスに由来する様々な臓器におけるスプライス修正活性を示す。
【図8】MDXマウスモデルにおける完全長のジストロフィンの回復によって測定した、アンチセンスオリゴマーを筋特異的ホーミングペプチド(MSP)と共に筋特異的細胞透過性ペプチド(SEQ ID NO:19;本明細書においてペプチド「B」と呼ばれ、同様にCP06062と呼ばれる)とコンジュゲートさせることの効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
詳細な説明
I.定義
本明細書において用いられる以下の用語は、特に明記していなければ以下の意味を有する。
【0031】
「細胞透過性ペプチド」または「CPP」という用語は互換的に用いられ、陽イオン性細胞透過性ペプチドを指し、同様に輸送ペプチド、担体ペプチド、またはペプチドトランスダクションドメインとも呼ばれる。本明細書において示されるペプチドは、所定の細胞培養集団の細胞の100%において細胞透過の誘導能を有し、全身投与するとインビボで多数の組織内に高分子を移行させる。
【0032】
「アンチセンスオリゴマー」または「アンチセンス化合物」という用語は互換的に用いられ、それぞれが、ワトソン-クリック塩基対形成によって核酸(典型的にはRNA)における標的配列に塩基対形成部分をハイブリダイズさせて、標的配列内で核酸:オリゴマーヘテロ二重鎖を形成する、サブユニット間連結によって連結された塩基対形成部分を担持する、環状のサブユニットの配列を指す。環状のサブユニットは、リボースもしくは別の五炭糖を基部として、または好ましい態様においてはモルフォリノ基を基部とする(以下のモルフォリノオリゴマーに関する記述を参照されたい)。オリゴマーは、標的配列に対して的確なまたはそれに近い配列相補性を有してもよく、オリゴマーの末端付近での配列のバリエーションは一般的に、内部におけるバリエーションより好ましい。
【0033】
そのようなアンチセンスオリゴマーは、一般的にmRNAの翻訳をブロックもしくは阻害するように、または天然のプレmRNAスプライスプロセシングを阻害するように設計され、それがハイブリダイズする標的配列「に対して方向付けられている」または「を標的とする」と言われてもよい。標的配列は典型的には、mRNAのATG開始コドンが含まれる領域、またはプレプロセシングされたmRNAのスプライス部位である。スプライス部位のための標的配列には、プレプロセシングされたmRNAにおける正常なスプライスアクセプタージャンクションの下流でその5'末端の1〜約25塩基対を有するmRNA配列が含まれてもよい。ゲノムDNA、rRNA(たとえば、細菌における)、またはウイルスの複製にとって必要である配列などの他の核酸も同様に標的とされてもよい。オリゴマーはより一般的には、先に記述した様式で標的の核酸を標的とする場合に、タンパク質、ウイルス、または細菌などの生物学的に関連性のある標的「を標的とする」と言われる。
【0034】
「モルフォリノオリゴマー」または「PMO」(ホスホラミデートまたはホスホロジアミデートモルフォリノオリゴマー)という用語は、モルフォリノサブユニット構造からなるオリゴヌクレオチド類似体を指し、この場合(i)サブユニット構造は、長さが1〜3原子の、好ましくは長さが2原子の、および好ましくは非荷電または陽イオン性のリン含有連結によって共に連結されて、隣接するサブユニットの5'環外炭素と1つのサブユニットのモルフォリノ窒素とがつなぎ合わされ、ならびに(ii)それぞれのモルフォリノ環は、塩基特異的水素結合によってポリヌクレオチドの塩基に結合するのに有効な、プリンまたはピリミジン塩基対形成部分を担持する。たとえば、好ましいホスホロジアミデート連結タイプを示す図1Aの構造を参照されたい。そのバリエーションが結合または活性を妨害しない限り、この連結にバリエーションを作出することができる。たとえば、リンに付着した酸素を、イオウに置換してもよい(チオホスホロジアミデート)。5'酸素をアミノまたは低級アルキル置換アミノに置換してもよい。リンに付着したペンダント窒素は、非置換であってもよく、または低級アルキル(置換されていてもよい)によって一置換、または二置換されてもよい。同様に、以下の陽イオン性連結に関する考察を参照されたい。プリンまたはピリミジン塩基対形成部分は典型的には、アデニン、シトシン、グアニン、ウラシル、チミン、またはイノシンである。モルフォリノオリゴマーの合成、構造、および結合特徴は、米国特許第5,698,685号、第5,217,866号、第5,142,047号、第5,034,506号、第5,166,315号、第5,521,063号、および第5,506,337号、ならびにPCT公開公報番号WO2008036127(陽イオン性連結)において詳細に記述されている。
【0035】
「アミノ酸サブユニット」または「アミノ酸残基」は、α-アミノ酸残基(-CO-CHR-NH-)またはβアミノ酸残基もしくは他のアミノ酸残基(たとえば、-CO-(CH2)nCHR-NH-)を指すことができ、式中Rは側鎖(水素が含まれてもよい)であり、nは1〜6であり、好ましくは1〜4である。
【0036】
「天然に存在するアミノ酸」という用語は、天然において見出されるタンパク質に存在するアミノ酸を指す。「非天然アミノ酸」という用語は、天然において見出されるタンパク質には存在しないアミノ酸を指し、例にはβ-アラニン(β-Ala)、6-アミノヘキサン酸(Ahx)、および6-アミノペンタン酸が含まれる。
【0037】
「マーカー化合物」は、得られたコンジュゲートの細胞への輸送を評価するために輸送ペプチドに付着させる検出可能な化合物を指す。化合物は、肉眼または分光光度法によって検出されてもよく、たとえば、蛍光標識オリゴマーを含みうる蛍光化合物または蛍光標識化合物であってもよい。好ましくは、マーカー化合物は、標識または非標識アンチセンスオリゴマーである。この場合、輸送の検出は、アンチセンスオリゴマー化合物による核酸のスプライシングおよび/または転写の調節に起因する産物の検出を伴う。スプライス修正アッセイまたはエキソンスキッピングアッセイなどの例示的な方法は、以下の材料および方法において記述される。
【0038】
「有効量」または「治療的有効量」は、所望の治療効果をもたらすのに有効である1回用量または一連の用量の一部のいずれかとして、哺乳動物被験体に投与されるアンチセンスオリゴマーなどの治療用化合物の量を指す。アンチセンスオリゴマーに関しては、この効果は典型的には、選択された標的配列の翻訳または天然のスプライスプロセシングを阻害することによってもたらされる。
【0039】
個体(たとえば、ヒトなどの哺乳動物)または細胞の「処置」は、個体または細胞の天然の経過を変更しようとする試みにおいて用いられる任意のタイプの介入である。処置には、薬学的組成物の投与が含まれるがこれに限定されるわけではなく、処置は予防的に、または病的事象の開始後にもしくは病因物質との接触後に行われてもよい。
【0040】
II.輸送ペプチドの構造特色
一般的に、本明細書において記述される輸送ペプチドは、長さがアミノ酸残基8〜30個であり、RXR、RX、RB、およびRBRからなる群より選択される部分配列からなり、式中Rはアルギニン(これには、本明細書における配列においてrによって表されるD-アルギニンが含まれてもよい)であり、Bはβ-アラニンであり、かつ各Xは独立して -C(O)-(CHR1)n-NH-であり、ここでnは4〜6であり、各R1は、メチルであるR1が多くても2つとなるように、独立してHまたはメチルである。好ましくは、各R1は水素である。
【0041】
選択された態様において、ペプチドは、少なくとも3個のX残基を含有し、かつ(RXR)部分配列と(RBR)部分配列の組み合わせを含む。他の態様において、ペプチドは、少なくとも3個のX残基を含有し、(RX)部分配列と(RB)部分配列の組み合わせを含む。好ましくは、ペプチドは長さがアミノ酸残基8〜25個であり、より好ましくは8〜20個である。
【0042】
変数nは好ましくは4または5であり、より好ましくはたとえば6-アミノヘキサン酸のように5である。特に明記していなければ、本明細書において表されるペプチド配列におけるXは、6-アミノヘキサン酸残基である。
【0043】
以下の表1は、アンチセンスモルフォリノオリゴマーとのコンジュゲートにおいて評価された様々な輸送ペプチドの配列を示す。コンジュゲートを、フローサイトメトリーによって決定した細胞取り込みに関して、スプライス修正アッセイ(Kang, Cho et al. 1998)によって決定したアンチセンス活性に関して、およびMTT細胞生存率アッセイ、ヨウ化プロピジウム膜完全性アッセイ、および溶血アッセイ、ならびに顕微鏡イメージングによって決定した細胞毒性に関して評価した。
【0044】
表1における輸送ペプチドには、オリゴアルギニン配列R8およびR9;RXR、RXおよびRBリピートを有する配列(Xは6-アミノヘキサン酸残基であり、Bはβ-アラニン残基である);「r」として示されるD-アルギニンを含有する関連配列(r8、(rX)8、(rXR)4、(rXr)4および(rB)8);ならびに部分配列(RXR)と部分配列(RBR)の組み合わせかまたは部分配列(RX)と部分配列(RB)の組み合わせを含有する配列(「混合シリーズ」)が含まれる。先に記したように、追加のBまたはXB残基は典型的には、付着分子に対する連結として使用される。
【0045】
(表1)例示的な細胞透過性ペプチド

a SEQ ID NOを割り当てた配列には、連結部分(X、B、またはXB)は含まれない。
【0046】
III.ペプチド-オリゴマーコンジュゲートの細胞取り込み
PMOが3'-カルボキシフルオレセインタグPMO(PMOF)である場合のペプチド-PMOコンジュゲートの細胞取り込みをフローサイトメトリーを用いて調べた。処置濃度2μMは、MTTおよびPI取り込みアッセイ(下記)によって証明されたように、コンジュゲートがいずれもこの濃度でいかなる検出可能な細胞障害性も引き起こさなかったことから用いられた。コンジュゲートと共にインキュベートした後、細胞をトリプシンによって処置して(Richard, Melikov et al. 2003)、膜結合コンジュゲートを除去した。様々なコンジュゲートの細胞取り込みに及ぼす血清の効果を決定するために、様々な濃度の血清を含有する培地において取り込み評価アッセイを行った。
【0047】
図2A〜Bにおいて示されるように、コンジュゲートの細胞取り込みは、輸送ペプチド中のアルギニン残基の数と共に増加して、一般的にXおよび/またはB残基の挿入と共に減少した。たとえば、オリゴアルギニンR9-PMOFコンジュゲートは、平均蛍光(MF)値662を有し、これはR8-PMOFの値のほぼ3倍高かった。R8配列にXまたはB残基を挿入すると、R8(234)、(RX)8(42)、(RXR)4(70)、および(RB)8(60)のコンジュゲートに関するMF値によって示されるように、それぞれのコンジュゲートの取り込みが減少した(図2A)。RXまたはRBリピートの数も同様に、細胞取り込みに影響を及ぼし、より少ないRXまたはRBリピートを有するコンジュゲートはより低いMF値を生成する(図2B)。
【0048】
培地への10%血清の添加は、オリゴアルギニンR8-またはR9-PMOFコンジュゲートの取り込みの減少を引き起こしたが、一方で、RX、RB、またはRXRモチーフを含有するコンジュゲートの取り込みを増加させた(図2Aおよび2C)。たとえば、血清の存在によって、R9-およびR8-PMOFのMFはそれぞれ、662および234から354および158に低減したが、(RX)8-、(RXR)4-、および(RB)8-PMOFのMFはそれぞれ、41、70、および60から92、92、および111へと増加した。これらの差は、統計学的に有意であった(図2A)。しかし、より高い血清濃度(30%および60%)は、(RXR)4-PMOFおよびオリゴアルギニン-PMOFの双方の取り込みを減少させた。
【0049】
アルギニンの立体化学(D対L)は、ペプチド-PMOFコンジュゲートの取り込みにほとんど影響を及ぼさなかった。R8-、(RB)8-および(RX)8-PMOFコンジュゲートのMF値によって示される取り込みは、そのそれぞれのD-異性体コンジュゲート、r8-、(rB)8-、および(rX)8-PMOFとは有意差がなかった(データは示していない)。
【0050】
IV.インビトロ核アンチセンス活性
付着化合物が立体ブロッキング(steric-blocking)アンチセンスオリゴマー(AO)、この場合PMO、である場合の、付着分子の細胞核への輸送における本発明のペプチドの有効性を、スプライシング修正アッセイ(Kang, Cho et al. 1998)において決定した。このアッセイは、変異によって作製されたスプライス部位を、オリゴマーが正常なスプライシングを回復させる目的でブロックできることを利用する。具体的には、ルシフェラーゼコード配列が、ヌクレオチド705位に変異スプライス部位を持つヒトβ-グロビンサラセミアイントロン2によって中断される。HeLa細胞に、得られたプラスミドを安定的にトランスフェクトして、pLuc705細胞と称した。pLuc705システムにおいて、スプライシング修正が起こるためには、オリゴマーは細胞核に存在しなければならない。このシステムの長所には、陽性の読み取りと高いシグナル対ノイズ比とが含まれる。このシステムでは、スプライス修正に適切な配列を有するAOを細胞核に送達する様々な輸送ペプチドの相対効率を、容易に比較することができる。
【0051】
以下に記述されるように、本発明の担体ペプチド-PMOコンジュゲートは、オリゴアルギニン-PMOコンジュゲートよりも、細胞核において高い活性を示し、血清によって受ける影響が小さく、かつ血液中で安定である。
【0052】
オリゴアルギニンRX、RXR、およびRBパネル(表1参照)
このシリーズにおいて最大の核アンチセンス活性を有するペプチド-PMOコンジュゲートは、(RXR)4-および(RX)8-PMO(先に述べたように、Rはアルギニンであり、これらのペプチドにおけるXは6-アミノヘキサン酸である)であることが見出された。図3Aおよび3Bは、様々なコンジュゲートを1μMおよび5μMで24時間処置した細胞の、タンパク質に対して標準化したルシフェラーゼ活性を示す。両濃度において、(RX)8-および(RXR)4-PMOは、試験した他のコンジュゲートより有効であり、血清含有培地では5μMより1μMにおいて差はより顕著であった。どちらでもコンジュゲート1μMによって処置した細胞は、バックグラウンドに対して10〜15倍上のレベルのルシフェラーゼ活性を示したが、残りのコンジュゲートは、バックグラウンドに対して約2〜4倍の増加を生じた(図3A)。5μMでは、全てのコンジュゲートが、1μMの場合より高いルシフェラーゼ活性を生成し、(RX)8-PMOおよび(RXR)4-PMOがこの場合も最も有効であり、次いで(RB)8-PMOが有効であった(図3B)。
【0053】
図3Cは、10μMでは、輸送ペプチドにおけるRXまたはRBリピートの数(すなわち、長さ)が減少するにつれて、RXまたはRBコンジュゲートの活性が減少したことを示している。RXまたはRBリピート3個または5個を有するペプチドは、リピート7個または8個を有するペプチドよりかなり低いルシフェラーゼ活性を生成した。
【0054】
X残基の数および位置
コンジュゲートの活性に及ぼすX残基の数および位置の効果を調べるために、ペプチド成分が0、2、3、4、5個または8個のX(6-アミノヘキサン酸)残基を含有するペプチド-PMOコンジュゲート11個を比較した(表1において示されるようにSEQ ID NO:14、20、22、19、21、25、24、23、26、11および3)。データ(先に記述したアッセイにおいてルシフェラーゼ活性として示す)を図4に提示する。
【0055】
一般的に、より多数のX残基を含有するペプチドは、より高い輸送活性を有した。2μMにおいて、(RX)8-PMO(X残基8個)は、最大の活性を有し、次いで(RXR)4-PMO(X残基5個)であり、より少ないX残基を有するコンジュゲートはより低い活性を有した。
【0056】
5μMでは、6-アミノヘキサン酸残基3個(I;SEQ ID NO:25)、4個(C;SEQ ID NO:26)、および8個((RX)8)を含有するコンジュゲート3個が、最大の活性を有し、X残基の位置が活性に影響を及ぼすことを示唆した。
【0057】
活性に及ぼす血清の効果
コンジュゲートのアンチセンス活性に及ぼす血清の効果は、図3A〜3Dにおいて示されるようにペプチド配列に依存した。培地に10%血清を加えると、オリゴアルギニン-PMOコンジュゲート(R8-PMOおよびR9-PMO)の活性が減少したが、RXR、RX、およびRBリピートを含有するコンジュゲートの活性が増加した。10%血清を加えると、(RXR)4-、(RX)8-および(RB)8-PMOのルシフェラーゼ活性は5μMでほぼ倍加した(図3B)。この効果を最大60%の血清で(RXR)4-PMOに関してさらに調べた(図3Dを参照されたい)。血清濃度が0%から10%まで増加すると、活性はほぼ倍加したが、血清濃度を60%まで増加させると活性は徐々に減少し、60%では0%血清と類似であった(それでもなおバックグラウンドより有意に上であった)。この「上がったり下がったりの」プロファイルはまた、1μM (RXR)4-PMO処置についても観察された。(RXR)4-PMOとは異なり、R8-PMOまたはR9-PMOのルシフェラーゼ活性は、血清濃度が増加すると一貫して減少し、10%血清ではおよそ30%低減して、60%血清では活性は認められなかった(図3D)。R8-PMOまたはR9-PMOは、血清濃度にかかわらず1μMではいかなる検出可能な活性も示さなかった(図3A)。
【0058】
V.インビボヌクレアーゼアンチセンス活性
様々な輸送ペプチドをPMOとコンジュゲートさせて、得られたコンジュゲート(P-PMO)を、本発明に従って、以下の材料および方法においてさらに記述されるように、様々な組織へのPMOの輸送能に関して試験した。簡単に説明すると、コンジュゲートを4日連続して投与した。P-PMOのインビボ取り込みを、EGFP-654トランスジェニックマウスモデル(Sazani, Gemignani et al. 2002)において、EGFP-654遺伝子における異常スプライス変異イントロン(aberrantly spliced mutated intron)へのPMO(SEQ ID NO:1)のターゲティングによって決定した。このモデルにおいて、EGFP-654を標的とするP-PMOの細胞取り込みは、P-PMOのIP投与後に採取した組織における、回復したEGFP-654 mRNAスプライス産物のRT-PCR検出および機能的に回復したEGFPによって評価されうる。
【0059】
図7A〜Pにおいて示されるように、様々な輸送ペプチドを含有するP-PMOは、特定の組織による選択的取り込みを示した。たとえば、輸送ペプチド(RXRRBR)2-XB(SEQ ID NO:19)を含有するコンジュゲートは、心臓、筋肉、肺、小腸、結腸、胃、皮膚および骨髄への選択的取り込みを示したが、他の臓器への取り込みは比較すると大きく低減された。ペプチド(RBRBRBRX)2-X(SEQ ID NO:21)を含有するコンジュゲートは、心臓、筋肉、肝臓、小腸、胃、および乳腺への選択的取り込みを示したが、他の臓器への取り込みは比較すると大きく低減された。輸送ペプチド(RB)4(RX)4-B(SEQ ID NO:24)を有するさらなるP-PMOは、結腸、骨髄、および脳への選択的取り込みを示したが、他の臓器への取り込みは比較すると大きく低減された。様々な輸送ペプチドに関する最適な組織取り込み(*によって示される)を以下の表2にまとめる。
【0060】
本明細書において示されるように、本発明は、以下の局面においてオリゴアルギニン-PMOコンジュゲートよりも優れている担体ペプチド-PMOコンジュゲートを提供する:これらは細胞核においてより高い活性を示し、血清によって受ける影響がより小さく、かつ血中でより安定である。X/B含有担体ペプチドの毒性は、X残基の数を3〜4個に維持することによって低減させることができ、それでもなお適度な送達効率および安定性を維持することができる。X/B含有量のさらなる操作およびアルギニン残基に対する順序づけによって、組織特異的送達が提供されうる。
【0061】
(表2)組織における担体ペプチドの取り込み

【0062】
VI.担体ペプチド-PMOコンジュゲートの細胞毒性
様々なペプチド-PMOコンジュゲートの細胞毒性をMTT生存アッセイ、ヨウ化プロピジウム(PI)排除アッセイ、溶血アッセイ、および顕微鏡イメージングによって決定した。MTTおよびPI排除アッセイはそれぞれ、細胞の代謝活性および膜完全性を測定する。溶血アッセイは、血液との適合性を決定する。顕微鏡イメージングは、MTT結果を確かめるためにおよび細胞の全般的な健康を観察するために用いられた。以下に詳述するように、コンジュゲートは一般的に低い毒性を示したが、(RX)8および(RXR)4を含有するコンジュゲートは、最高レベルの毒性を有した。
【0063】
MTTアッセイ(図5A〜F)
pLuc705細胞を、2〜60μMの濃度範囲で24時間処置した。図4において示されるように、(RX)8および(RXR)4を含有するコンジュゲートを例外として、コンジュゲートは全て60μMまで毒性を有しなかった。(RX)8および(RXR)4コンジュゲートは、10μMまで毒性を示さなかったが、より高い濃度ではそれらは、濃度依存的に細胞生存率を低減させ、(RX)8は、(RXR)4よりも毒性が強かった(図5C〜D)。
【0064】
R8-、(RB)8-、および(RXR)4-PMOにおけるL-アルギニンをD-アルギニンに交換しても、これらのコンジュゲートの生存率プロファイルは変化しなかった(図5A〜C)。意外なことに、(RX)8-PMOにおけるL→D交換は、毒性を減少させた(図5D)。
【0065】
5個未満のX残基を有するペプチドを含有するコンジュゲート8個は、60μMまで細胞の増殖を阻害しなかった(図5E)。RまたはXの単量体は、個々にまたは組み合わせて、それぞれ500μMで細胞増殖の阻害を産生しなかった(図5F)。
【0066】
コンジュゲート(RXR)4-PMO、RX(RB)2RX(RB)3RX-PMO(ペプチドSEQ ID NO:25)および(RXR)3RBR-PMO(ペプチドSEQ ID NO:26)の毒性も同様に、ヒト肝臓HepG2細胞において評価した。これらの中で、(RXR)4-PMOのみが細胞増殖の用量依存的な阻害を引き起こしたが、他の2つのコンジュゲートは、この試験において試験した最高濃度である60μMまで毒性を有しなかった。
【0067】
顕微鏡画像
60μMコンジュゲートによって処置した細胞の画像は、MTT細胞生存率データと良好に相関した。(RX)8-PMOおよび(RXR)4-PMOによって処置した細胞は、丸くなって培養ウェルから剥がれるように見え、より少ない生存細胞を有するように思われた。興味深いことに、(rX)8-PMOによって処置した細胞は、正常な形態および細胞密度を有するように思われた。(RXR)4-PMOの1つのXを1つのBに交換すると、毒性が有意に低減した;すなわち (RXR)3RBR-PMO(ペプチドSEQ ID NO:26)によって処置した細胞は、媒体処置細胞と類似の密度および形態を有した。
【0068】
ヨウ化プロピジウム排除アッセイ
細胞膜の完全性に及ぼすコンジュゲートの効果をヨウ化プロピジウム(PI)排除アッセイによって調べた。PIは、不健康な/障害を受けた膜に限って浸透することができる;ゆえに陽性PI蛍光は、細胞膜が損なわれていることを示している。(RXR)4-PMOおよび(RX)8-PMOのみが、より高濃度(試験した60μMまで)で膜の完全性に有意に影響を及ぼすことが見出された。
【0069】
図6Aは、60μM (RXR)4-PMOによって0.5、5、および24時間処置したpLuc705細胞のヒストグラムを示す。PI陽性(PI+)領域は、ヒストグラムのゲートによって示されるように、エタノール(陽性対照)によって浸透性にされた細胞によって定義される。PIヒストグラムは、より長いあいだインキュベートすると、PI陰性領域からPI陽性領域へとシフトして、コンジュゲートが膜の漏出を時間依存的に引き起こしたことを示している。0.5時間および5時間の処置は、PI+領域に向けてわずかなシフトを引き起こしたが、24時間処置は、PI+領域内で細胞の57%に対応する明確なピークをもたらした。
【0070】
図6Bは、濃度2、10、20、40、および60μMの(RXR)4-PMOによって24時間処置した細胞のヒストグラムを示す。20μMまでの濃度で有意なPI取り込みを認めなかった。より高濃度では、PI+集団が出現し、PI+細胞のパーセンテージは、処置濃度が増加すると増加して、より高い処置濃度ではより多くの漏出する細胞が存在することを示している。類似の濃度および時間依存的PI取り込みプロファイルが(RX)8-PMOに関して観察されたが、(RB)8-PMOおよび残りのコンジュゲートに関しては観察されなかった。処置培地に10%血清を加えると、(RXR)4-(図6C)および(RX)8-PMOコンジュゲートに関する膜毒性が有意に低減した。
【0071】
溶血アッセイ
(RXR)4-および(RX)8-PMOコンジュゲートを溶血アッセイにおいて試験したところ、赤血球と適合性であることが見出された。新鮮なラット赤血球を60μMのコンジュゲート、PBS(バックグラウンド)、または0.005%TX-100(陽性対照)によって処置した。コンジュゲート処置試料およびPBS処置試料の上清では、放出された遊離のヘモグロビンの量が少量で類似であり、TX-100処置試料よりはるかに低かった(図6D)。
【0072】
VII.スクリーニング法
本明細書において示されるように、D-アルギニンを含むアルギニン、β-アラニン、ならびに6-アミノヘキサン酸および同族体を含有する様々な配列モチーフからなる輸送ペプチドはしばしば、異なる配列ペプチドが、異なる選択された組織に優れた輸送を提供するという点において組織選択的である。
【0073】
したがって、選択された哺乳動物組織へと治療用化合物をターゲティングさせるのに有用な細胞透過性ペプチドを同定するための方法において、異なる配列ペプチドのライブラリを用いることができる。方法は以下の段階を含む:
(a)(i)Rがアルギニンであり、Bがβ-アラニンであり、および各Xが独立して-C(O)-(CHR1)n-NH-であり、ここでnは4〜6であり、各R1は、メチルであるR1が多くても2つとなるように、独立してHまたはメチルである、RXR、RX、RB、およびRBRからなる群より選択される部分配列からなる、各々、アミノ酸残基8〜25個の長さの、複数の異なる配列のペプチドと、
(ii)X、B、またはXB連結によって各々のペプチドに共有結合的に連結しており、選択された組織の細胞においてその濃度がアッセイされうる、マーカー化合物と
からなるペプチドコンジュゲートのライブラリを形成する段階;
(b)各ペプチドコンジュゲートを哺乳動物被験体に投与する段階;
(c)投与されたペプチドコンジュゲートを哺乳動物被験体の選択された組織に局在化させるのに十分な期間の後、選択された組織の細胞におけるマーカー化合物のレベルをアッセイする段階;ならびに
(d)複数の他のペプチドと比較して、選択された組織におけるマーカー化合物の最高レベルまたはほぼ最高レベルをもたらすその能力に基づいて、選択された哺乳動物組織へと治療用化合物をターゲティングさせるのに有用な細胞透過性ペプチドを選択する段階。
【0074】
いくつかの場合において、広く多様な組織において高い輸送活性を有するペプチドが求められる。または、他の組織と比較して特定の組織において高い輸送活性を有するペプチドが求められてもよい。このように、上記の段階(c)のアッセイする段階は、複数の選択された組織の細胞におけるマーカー化合物のレベルをアッセイすることを含んでもよく、段階(d)の選択する段階は、複数のペプチドにおける他のペプチドと比較して、および/または複数の組織における他の組織と比較して、選択された組織におけるマーカー化合物の最高レベルまたはほぼ最高レベルをもたらすその能力に基づいて、複数の選択された組織へと治療用化合物をターゲティングさせるのに有用な細胞透過性ペプチドを選択することを含んでもよい。
【0075】
異なる配列ペプチドにおいて、各Xは、好ましくは5-アミノペンタン酸残基であるか、または好ましくは6-アミノヘキサン酸残基であり、それぞれのペプチドは好ましくはそのようなX残基を少なくとも3個含有する。好ましいクラスのペプチドには、その配列が、部分配列(RXR)と部分配列(RBR)の組み合わせまたは部分配列(RX)と部分配列(RB)の組み合わせで作製されるペプチドが含まれる。それぞれの場合において、ペプチドには好ましくは、少なくとも3個の、より好ましくは少なくとも4個のX残基が含まれる。
【0076】
ライブラリには、たとえばSEQ ID NO:6〜27、好ましくはSEQ ID NO:19〜27によって識別される配列を有する群から選択されるペプチドが含まれてもよい。
【0077】
典型的には、6-アミノヘキサン酸、5-アミノペンタン酸、およびβ-アラニンからなる群より選択される1つまたは2つのN末端アミノ酸残基が、ペプチドからマーカー化合物への連結として使用される。
【0078】
好ましくは、スクリーニングのために用いられるマーカー化合物は、細胞に輸送されることが望ましい治療用分子と構造的に類似である。好ましい態様において、輸送されるマーカー化合物および分子は、オリゴマーアンチセンス化合物、特にモルフォリノアンチセンス化合物である。ペプチドとコンジュゲートされる有用なオリゴマーマーカー化合物は、蛍光標識のまたは非標識のオリゴヌクレオチド類似体、たとえば本明細書において記述されるPMOである。選択された組織の細胞を、インターナライズされた蛍光マーカーの存在に関してアッセイするために、周知の方法によって検査することができ、それによってインターナリゼーションの程度を決定することができる。
【0079】
以下の材料および方法において記述されるアッセイなどの肉眼での読み取りを有するmRNAスプライス修正アッセイも同様に、核インターナリゼーションに関してアッセイするために用いることができる。または、オリゴマーマーカー化合物は、選択された細胞タンパク質においてエキソンスキッピングをもたらすのに有効なアンチセンスオリゴヌクレオチドであってもよく、アッセイする段階には、そのようなエキソンスキッピングを示す選択された細胞タンパク質の切断型の存在に関して、選択された組織の細胞によって産生されたタンパク質産物を検査する段階が含まれる。この方法を用いる例示的なスクリーニングも同様に、以下の材料および方法において記述される。
【0080】
VIII.例示的な治療応用
たとえば先に記述したスクリーニング法によって、望ましい組織送達特徴を有すると同定されたペプチドを、哺乳動物被験体における選択された組織に関連する疾患状態の処置において用いるための治療用コンジュゲートを調製するために用いることができる。したがって、先に記述されたスクリーニング法によって選択された、選択された組織に関する輸送ペプチドは、選択された組織の細胞に局在した場合に疾患状態に対して有効である治療用化合物と共に同定される。次に、治療用化合物を、末端、好ましくは選択された輸送ペプチドのN末端にコンジュゲートさせることができる。
【0081】
本明細書において記述される輸送ペプチドには、難溶性のまたはそうでなければ輸送が不良である治療物質を伴う応用における特定の使用が見出される。アンチセンスオリゴヌクレオチドおよびその類似体を送達するための担体タンパク質の使用に加えて、本発明の化合物は、たとえばパクリタキセル(Taxol(登録商標))およびドキソルビシンなどの、標的組織の細胞に侵入する能力がそうでなければ制限される、治療的に有用な分子を対象とするために使用することができる。
【0082】
ホスホロジアミデート連結モルフォリノオリゴマー(PMO)は、細胞に取り込まれ、他の広く用いられるオリゴヌクレオチド化学よりも非特異的効果が少なく、インビボでより一貫して有効であることが示されている(たとえば、P. Iversen, "Phosphoramidate Morpholino Oligomers", in Antisense Drug Technology, S. T. Crooke, ed., Marcel Dekker, Inc., New York, 2001を参照されたい)。しかし、取り込みおよび標的とされる生体分布をさらに増強することが望ましく、これは本明細書において証明されるように、本開示の細胞透過性ペプチドを用いることによって達成することができる。
【0083】
本発明の担体ペプチドおよびコンジュゲートは、上述の担体ペプチドに共有結合的に連結しているオリゴマーを含むコンジュゲートを細胞に曝露することによって、PMOなどのアンチセンスオリゴマーを、細胞膜および核膜の双方を越えて特定の細胞タイプの核へとターゲティングさせ、かつ送達するのに特に有用である。そのような送達によってスプライス部位のターゲティングが可能となり、これは変更された機能を有するタンパク質を生成するために実行されうる。翻訳開始部位(すなわちAUG開始コドン)は、ウイルス複製にとって必要な配列であると同様に、アンチセンス治療に関する別の有用な標的である。
【0084】
本発明によって提供されるペプチドアンチセンスコンジュゲートには、特定の細胞タイプへの送達が望ましい任意の適応における使用が見出される。例示的な適応には、以下を標的とするアンチセンスオリゴマーが含まれるが、これらに限定されるわけではない:肝臓における薬物代謝を変更するためのP450酵素;腎臓における多発性嚢胞腎疾患を処置するための、または血管内皮における冠動脈の再狭窄を防止するためのc-myc;心筋および骨格筋組織におけるデュシェンヌ型筋ジストロフィーを処置するためのジストロフィン;骨格筋における筋萎縮を処置するためのミオスタチン;C型肝炎ウイルスおよびB型肝炎ウイルスなどの肝臓の慢性感染症を引き起こすウイルス;インフルエンザおよび呼吸器合胞体ウイルス(RSV)などの肺組織に感染するウイルス;TNF-α誘導炎症性関節炎を阻害するために、肝臓におけるTNF受容体の可溶性のイソ型を生成するためのTNF受容体;高められた長期再増殖性(repopulating)造血幹細胞を生成するための骨髄におけるTGF-β遺伝子;ならびに肝臓の熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)感染症などの細胞内寄生体。上記のおよび他の適応を処置するための組織特異的担体ペプチドとアンチセンスオリゴマーとの特定の組み合わせを以下に記述する。
【0085】
1つの態様において、哺乳動物被験体における乳癌の処置において用いるための治療用コンジュゲートが提供される。図7Bにおけるデータによって示されるように、乳房組織への輸送を増強することが示された例示的なペプチドには、SEQ ID NO:6、14、21〜23、25、および27を有するペプチド、好ましくはSEQ ID NO:6、14、22、および27を有するペプチドが含まれ、かつ治療用化合物は、メトトレキセート、シクロホスファミド、ドキソルビシン、5-フルオロウラシル、エピルビシン、およびトラスツズマブ(Herceptin(登録商標))からなる群より選択されうる。
【0086】
別の態様において、哺乳動物被験体における卵巣癌の処置において用いるための治療用コンジュゲートが提供される。図7Cにおけるデータによって示されるように、卵巣組織への輸送を増強することが示された例示的なペプチドには、SEQ ID NO:6、14、19、21、23、24、および27を有するペプチド、好ましくはSEQ ID NO:23および27を有するペプチドが含まれ、かつ治療用化合物は、パクリタキセル(Taxol(登録商標))、トポテカン、ドキソルビシン、トラスツズマブ(Herceptin(登録商標))およびペルツザマブ(pertuzamab)からなる群より選択されうる。
【0087】
別の態様において、哺乳動物被験体における前立腺癌の処置において用いるための治療用コンジュゲートが提供される。前立腺組織への輸送を増強するための例示的なペプチドは、SEQ ID NO:23によって識別される配列を有し、かつ治療用化合物は、(i)前立腺幹細胞抗原に対して特異的な抗体、および(ii)SEQ ID NO:43を有するPMOなどの、ヒトアンドロゲン受容体タンパク質を標的とするアンチセンスオリゴマーから選択されうる(以下の配列の表を参照されたい)。
【0088】
1つの態様において、哺乳動物被験体におけるCNSに関連する疾患状態の処置において用いるための治療用コンジュゲートが提供される。図7Dにおけるデータによって示されるように、脳組織への輸送を増強することが示された例示的なペプチドには、SEQ ID NO:13および24を有するペプチドが含まれ、かつ治療用化合物は、アルツハイマー病を処置するためのOM99-1、OM99-2、OM00-3、KMI-429、CEP1347、ヒューマニン(Humanin)、ミノサイクリン、およびバルプロエート(valproate);パーキンソン病を処置するためのCEP-1347およびブロモクリプチン;CNSのウイルス感染症を処置するためのアジドチミジン、アシクロビル、および抗ウイルスアンチセンス化合物;ならびにCNSの細菌疾患を処置するためのペニシリン、バンコマイシン、ゲンタマイシン、ネチルマイシン、シプロフロキサシン、およびアンチセンス抗菌化合物からなる群より選択されうる。
【0089】
別の態様において、哺乳動物被験体における腎臓の疾患の処置において用いるための治療用コンジュゲートが提供される。図7Eにおけるデータによって示されるように、腎組織への輸送を増強することが示された例示的なペプチドには、SEQ ID NO:13、14、21、および27を有するペプチド、好ましくはSEQ ID NO:13を有するペプチドが含まれ、かつ治療用化合物は、以下からなる群より選択されうる:
(a)腎臓の癌を処置するためのゲムシタビンおよびカペシタビン、ならびに
(b)多発性嚢胞腎疾患を処置するための、ヒトc-mycを標的とするアンチセンスオリゴマー。例示的なオリゴマーは、SEQ ID NO:31〜33から選択される配列を有するPMOである。
【0090】
別の態様において、末梢血における幹細胞の増殖および生存の増強において用いるための治療用コンジュゲートが提供される。図7Fにおいて示されるように、骨髄への輸送を増強することが示された例示的なペプチドには、SEQ ID NO:14、19、および27から選択される配列を有するペプチド、好ましくはSEQ ID NO:27を有するペプチドが含まれる。図7Lにおいて示されるように、胸腺組織への輸送を増強することが示された例示的なペプチドには、SEQ ID NO:11、13、20、および24を有するペプチド、好ましくはSEQ ID NO:11を有するペプチドが含まれる。治療用化合物は、好ましくは、SEQ ID NO:44〜46から選択される配列を有するPMOなどの、ヒトTGF-βを標的とするアンチセンスオリゴマーである。
【0091】
別の態様において、哺乳動物被験体における筋組織に関連する疾患状態の処置において用いるための治療用コンジュゲートが提供される。図7Hにおけるデータによって示されるように、筋組織への輸送を増強することが示された例示的なペプチドには、SEQ ID NO:6、13、19、および20を有するペプチド、好ましくはSEQ ID NO:6、13、および19を有するペプチドが含まれ、かつ治療用化合物は、以下からなる群より選択されうる:
(a)以下に詳しく考察されるように、筋消耗状態を処置するための、SEQ ID NO:35〜39から選択される配列を有するPMOなどの、ヒトミオスタチンを標的とするアンチセンスオリゴマー;ならびに
(b)以下に詳しく考察される、デュシェンヌ型筋ジストロフィーを処置するための、SEQ ID NO:34および49から選択される配列を有するPMOなどの、タンパク質の部分的活性を回復させるようにDMDタンパク質におけるエキソンスキッピングをもたらすことができるアンチセンスオリゴマー。
【0092】
別の態様において、哺乳動物被験体における肺に関連した疾患状態の処置において用いるための治療用コンジュゲートが提供される。図7Nにおけるデータによって示されるように、肺組織への輸送を増強することが示された例示的なペプチドには、SEQ ID NO:11、14、および19を有するペプチド、好ましくはSEQ ID NO:11および19を有するペプチドが含まれ、かつ治療用化合物は、以下からなる群より選択されうる:
(a)肺癌を処置するためのシスプラチン、カルボプラチン、およびドセタキセル;
(b)呼吸器の細菌感染症を処置するための、SEQ ID NO:47を有するPMOなどの、細菌16S rRNAを標的とするアンチセンスオリゴマー;ならびに
(c)以下に詳しく考察されるように、呼吸器の細菌感染症を処置するための、SEQ ID NO:41および42から選択される配列を有するPMOなどの、A型インフルエンザウイルスを標的とするアンチセンスオリゴマー、またはSEQ ID NO:48を有するPMOなどの、呼吸器合胞体ウイルスを標的とするアンチセンスオリゴマー。
【0093】
別の態様において、哺乳動物被験体における肝組織に関連する疾患状態の処置において用いるための治療用コンジュゲートが提供される。図7Pにおけるデータによって示されるように、肝組織への輸送を増強することが示された例示的なペプチドには、SEQ ID NO:13、19、20、および23〜25を有するペプチド、好ましくはSEQ ID NO:19および23〜25を有するペプチドが含まれ、かつ治療用化合物は、以下からなる群より選択されうる:
(a)肝臓癌を処置するためのドキソルビシン、5-フルオロウラシル、およびメトトレキセート;
(b)以下に詳しく考察される、肝臓における薬物代謝を抑制するための、SEQ ID NO:28〜30から選択される配列を有するPMOなどの、P450酵素を標的とするアンチセンスオリゴマー;
(c)以下に詳しく考察される、ウイルス肝炎を処置するための、SEQ ID NO:40および50から選択される配列を有するPMOなどの、HCVを標的とするアンチセンスオリゴマー。
【0094】
別の態様において、哺乳動物被験体における結腸癌の処置において用いるための治療用コンジュゲートが提供される。図7Gにおけるデータによって示されるように、結腸組織への輸送を増強することが示された例示的なペプチドには、SEQ ID NO:19、20、24、および27を有するペプチド、好ましくはSEQ ID NO:20および24を有するペプチドが含まれ、かつ治療用化合物は、5-フルオロウラシル、イリノテカン、オキサリプラチン、ベバシズマブ(Avastin(登録商標))、およびセツキシマ(cetuxima)からなる群より選択されうる。1つの態様において、5-フルオロウラシルは、名前を挙げた他の薬物の1つと組み合わせて用いることができる。
【0095】
まとめると、本発明は、以下の理由からオリゴアルギニン-PMOコンジュゲートよりも優れている担体ペプチド-PMOコンジュゲートを提供する:これらは、細胞核においてより高い活性を示し、血清によって受ける影響がより小さく、かつ血液中でより安定である。X/B含有担体ペプチドの毒性は、X残基の数を3〜4個に維持することによって低減させることができ、それでもなお適度な送達効率および安定性を維持することができる。X/B含有量のさらなる操作およびアルギニン残基に対する順序づけは、増強された組織特異的送達を提供することができる。
【0096】
A.ペプチド-オリゴマーコンジュゲートの特定の応用
(A1)CYP3A4を標的とするアンチセンスオリゴマーによる処置後の様々な薬物の改善された薬物動態
1つの例示的な態様においては、本発明の担体ペプチドは、本明細書において記述される担体ペプチドの1つまたは複数に連結され、薬物の半減期を低下させる薬物代謝酵素をコードする遺伝子であるCYP3A4を標的とする、アンチセンスオリゴマーを投与することにより、患者における様々な薬物の薬物動態を改善するために用いることができる。アンチセンスオリゴマーは、被験体におけるCYP3A4酵素の産生を低減させるのに有効であり、薬物の半減期および有効性を拡大させて、薬物の毒性を減少させる(たとえば、PCT公開公報番号WO/2001/087286または米国特許出願公開第20040229829号を参照されたい)。例示的な組成物は、本発明において記述されるように、CYP3A4遺伝子のmRNAにおけるAUG開始コドン領域またはプレプロセシングされたRNAにおけるスプライス部位を標的とする、肝臓特異的送達特性を有する担体ペプチドに連結されたCYP3A4アンチセンスオリゴマーを含む。例示的な担体ペプチドは、B(CP06062)、G、H、およびIペプチド(SEQ ID NO:19および23〜25)であり、好ましいアンチセンスオリゴマーは、SEQ ID NO:28〜30からなる群として提示される配列を有する。
【0097】
(A2)再狭窄を処置するためのアンチセンス化合物
本発明の化合物および方法は、血管の外傷に起因する再狭窄などの血管増殖障害を処置するのに有用である。血管損傷領域には、たとえば、ステント挿入を伴うまたは伴わない冠動脈バルーン血管形成術などの、血管介入後の血管腔が含まれる。再狭窄は、血管形成術によって処置した病変の約30%〜60%に起こると考えられ、ステントによって処置した病変では技法後3〜6ヶ月以内に約20%に起こると考えられる。(たとえば、Devi, N. B. et al., Cathet Cardiovasc Diagn 45(3):337-45, 1998を参照されたい)。狭窄はまた、冠動脈バイパス手術後にも、典型的には移植された血管セグメントにおいて、特に交換された血管の接合部で起こりうる。狭窄はまた、透析のために作製した吻合接合部でも起こりうる。
【0098】
c-mycに対して方向付けられているアンチセンスオリゴマーとコンジュゲートされた組織特異的輸送ペプチドを用いて、経皮経管冠動脈形成術(PTCA)などの経腔的血管形成術における再狭窄のリスクを低減させることができる(たとえばPCT公開公報番号WO2000/044897を参照されたい)。輸送ペプチドとコンジュゲートしていないオリゴマーと比較すると、コンジュゲートオリゴマーは、血管内皮に対して改善された送達を示し、再狭窄の処置においてより低用量でより大きい効力を提供すると予想される。
【0099】
このように、方法には、血管組織への送達を増強する輸送ペプチドとコンジュゲートされた、ヒトc-myc mRNAのAUG開始部位領域内の少なくとも12個の連続した塩基の標的配列と相補的であるターゲティング塩基配列を含む本明細書に記載の抗c-mycオリゴマーを、損傷血管部位への直接局所投与によって、または血管内投与による全身送達によって、患者における再狭窄のリスクを低減するために有効な量で患者に投与することが含まれる。例示的な輸送ペプチドには、SEQ ID NO:21を有するペプチド、または好ましくはSEQ ID NO:19を有するペプチドが含まれる。
【0100】
コンジュゲートは、以下の1つによって投与される:
(a)アンチセンス化合物を含有するレザバーを血管領域に接触させ、かつレザバーから化合物をイオントフォレーシスまたはエレクトロポレーションによって血管に導入すること;
(b)カテーテルバルーンの表面に備えられた、血管の中膜を透過することができる注射器を通して、加圧下でカテーテルから血管領域へと化合物を直接注射すること;
(c)封入形態のアンチセンス化合物を含有する微粒子を、血管領域に注射するか、または接触させること;
(d)カテーテルバルーンの表面に備えられた、拡散形態のアンチセンス化合物を含有するハイドロゲルコーティングを、血管領域に接触させること;
(e)拡散形態のアンチセンス化合物を含む外表面層を有するステントを、血管領域に接触させること;
(f)血管内投与によって化合物を注射して、血管組織に対する全身送達をもたらすこと。
【0101】
アンチセンス化合物は、好ましくはSEQ ID NO:31〜32によって識別される群から選択される配列と少なくとも90%の相同性を有するターゲティング配列を有する。
【0102】
投与されるアンチセンス化合物の量は、約0.5 mg〜30 mgであってもよい。化合物は、水性媒体における化合物の溶解度を増強する部分によって誘導体化されてもよく、化合物は、少なくとも約30 mg/mlのアンチセンス化合物を含有する溶液から投与される。
【0103】
化合物は、実質的に37℃より高いTmで、少なくとも50℃、好ましくは60〜80℃で生理的条件下でc-myc mRNAにハイブリダイズするように設計される。化合物は好ましくは、AUG部位と相補的である内部3塩基トリプレットを含有し、開始部位の5'および3'側の1つまたは複数の塩基と相補的な塩基を含有する。1つの好ましい化合物配列は、SEQ ID NO:31として識別される20量体であり、ここで、配列におけるCATトリプレットはAUG開始部位に結合し、CAT配列の3'側の6塩基は、標的上での上流(5')方向に及び、CAT配列の5'側の11塩基は標的上での下流に及ぶ。
【0104】
オリゴマーは、たとえば、コーティングされたステントにおいて、またはエクスビボでのすすぎ溶液によって、伏在静脈の処置のために使用されるか、またはそうでなければ血管損傷部位に送達される。オリゴマーはまた、血管内注射によって血管損傷部位への全身送達によって投与することによって使用されうる。
【0105】
別の態様において、アンチセンス化合物は、再狭窄の処置において用いるための粒子組成物の一部を形成する。そのような1つの粒子は、生分解性の粒子、たとえば封入されたアンチセンス化合物を含有するポリ乳酸(polylactate)またはポリグリコール酸(polyglycolic)粒子である。粒子は、好ましくは1〜5ミクロンの範囲であり、以下に記述されるように、血管壁に対するバルーンからの圧によって血管壁に押しつけられることによって、またはステントなどの粒子担体から放出されることのいずれかによって、血管形成術の血管部位への直接粒子送達による送達にとって有用である。
【0106】
または、粒子は封入形態の化合物を含有するマイクロバブルでありうる。粒子は、血管部位に直接送達されてもよく、すなわち血管壁に粒子の浮遊液を直接接触させて、粒子から化合物を放出させることによって送達されてもよく、これは超音波エネルギーに血管領域を曝露することによって容易となる可能性がある。マイクロバブル組成物は、オリゴヌクレオチドなどの付着分子の、血栓または血管損傷領域、たとえば障害を受けた内皮への、ならびに肝臓および腎臓などの選択された臓器への送達において、特に有用であることが見出されている。たとえば、PCT公開公報番号WO2000/02588、米国特許第6,245,247号および第7,094,765号、ならびに米国特許出願公開第20030207907号を参照されたい。
【0107】
輸送ペプチドはまた、ラパマイシンなどの非アンチセンス抗再狭窄化合物とコンジュゲートさせてもよく、コンジュゲートを再狭窄の処置のために類似の方法で送達してもよい。
【0108】
(A3)デュシェンヌ型筋ジストロフィーの処置
別の態様において、本明細書において記述される筋特異的担体ペプチドとコンジュゲートされたアンチセンスオリゴマーは、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)を処置するための改善された方法において用いることができる。ヒトジストロフィン遺伝子の変異は、変異を含有するエキソンのエキソンスキッピングを引き起こすアンチセンスオリゴマーによって、プロセシングされたmRNAから除去することができる。得られたプロセシングされたジストロフィンmRNAは、機能的なジストロフィンタンパク質をコードしうる。ヒトジストロフィン遺伝子のエキソン51を標的とする例示的なアンチセンスオリゴマー(SEQ ID NO:34)は、エキソン51のスキッピングを誘導する。他の適したアンチセンスオリゴマーには、SEQ ID NO:49(ヒトエキソン50)および77(マウスエキソン23)を有するアンチセンスオリゴマーが含まれる。
【0109】
この治療戦略は、B(CP06062)、D-P007および(RX)8Bペプチド(それぞれ、SEQ ID NO:19、13、および6)によって例示されるように、筋特異的担体ペプチドを用いることによって大きく恩恵を受けうる。B章において以下に記述され、実施例2において例示されるように、筋特異的ホーミングペプチドを追加でコンジュゲートさせると、オリゴマーの有効性はなおさらに増強する。
【0110】
(A4)筋萎縮の処置
別の態様において、本明細書において記述されるアンチセンスオリゴマーを、ヒト被験体における骨格筋量の損失を処置するための方法において用いることができる。方法の段階は以下を伴う:
(a)被験体におけるミオスタチンの血中レベルまたは組織レベルを測定する段階;
(b)本明細書において記述される担体ペプチドとコンジュゲートされた、プロセシングされたまたはプレプロセシングされたヒトミオスタチンRNA転写物の発現感受性領域にハイブリダイズするのに有効な塩基配列を有する本明細書に記載のオリゴマーの、ミオスタチン発現阻害量を、被験体に投与する段階;
(c)このように投与することによって、
ヒトミオスタチンRNA転写物とアンチセンス化合物とで構成され、かつ少なくとも45℃の解離Tmを有する、塩基対形成ヘテロ二重鎖構造
を被験体の標的筋細胞内で形成し、それによって、細胞におけるミオスタチンの発現を阻害する段階;
(d)アンチセンス化合物を投与して、選択された時間後に、被験体におけるミオスタチンの血中レベルまたは組織レベルを測定する段階;ならびに
(e)測定されたミオスタチンレベルを、最初に測定されたレベルよりも低減させ、かつ段階(d)において測定されたそのようなミオスタチンレベルを、正常な健康な個体に関して決定された範囲内に維持するように、投与を繰り返し、必要であれば(d)において測定されたミオスタチンレベルを用いて、投与するアンチセンス化合物の量の用量または投与スケジュールを調節する段階。
【0111】
アンチセンスオリゴマーが、プレプロセシングされたヒトミオスタチン転写物のスプライス部位にハイブリダイズするのに有効である場合、これは、プレプロセシングされたヒトミオスタチン転写物におけるスプライス部位の少なくとも12個の連続した塩基と相補的である塩基配列を有し、段階(c)におけるヘテロ二重鎖の形成は、プレプロセシングされたミオスタチン転写物のプロセシングをブロックして、完全長の、プロセシングされたミオスタチン転写物を産生するために有効である。例示的なアンチセンス配列は、SEQ ID NO:35〜39によって識別される配列であり、筋特異的担体ペプチドは、B(CP06062)、D-P007、および(RX)8Bペプチド(それぞれ、SEQ ID NO:19、13、および6)によって例示される。
【0112】
(A5)肝臓の慢性ウイルス感染症の処置
本発明の例示的なアンチセンス抗ウイルス応用は、C型肝炎ウイルス(HCV)の生育を阻害するための方法において用いられるためのものである。阻害化合物は、本明細書において記述されるように、HCVウイルスゲノムの第一のオープンリーディングフレームのAUG開始部位にわたるウイルス標的配列と実質的に相補的であるターゲティング塩基配列を有する、肝臓特異的担体ペプチドとコンジュゲートされたアンチセンスオリゴマーからなる。ターゲティング配列は、HCV AUG開始部位およびIRES領域の少なくとも12個の連続する塩基の配列と相補的である。例示的なターゲティング配列には、SEQ ID NO:40および50に対してそれぞれ、少なくとも90%の相同性を有する配列が含まれる。方法の1つの態様において、オリゴマーは、HCVウイルスに慢性的に感染した哺乳動物被験体に投与される。たとえば、PCT公開公報番号WO/2005/007805および米国特許出願公開第2003224353号を参照されたい。これらのアンチセンスオリゴマーとコンジュゲートさせるための例示的な肝臓特異的担体ペプチドには、SEQ ID NO:19および23〜25によって表されるペプチドが含まれる。
【0113】
(A6)インフルエンザウイルス感染症の処置
別のクラスの例示的なアンチセンス抗ウイルス化合物は、オルトミクソウイルス科のウイルスの生育を阻害することにおいて、およびウイルス感染症の処置において用いられる。本明細書において記述される肺特異的担体ペプチドとコンジュゲートされ、かつ以下から選択される標的領域にハイブリダイズするのに有効な塩基配列を含有する、アンチセンスオリゴマーを、宿主細胞に接触させる:i)A型インフルエンザ、B型インフルエンザ、およびC型インフルエンザのマイナスセンスウイルスRNAセグメントの5'または3'末端の25塩基、ii)A型インフルエンザウイルス、B型インフルエンザウイルス、およびC型インフルエンザウイルスのプラスセンスcRNAの3'末端の末端30塩基、ならびにiii)インフルエンザウイルスmRNAのAUG開始コドン周囲の50塩基(たとえば、PCT公開公報番号WO/2006/047683、または米国特許出願公開第20070004661号を参照されたい)。
【0114】
化合物は、哺乳動物におけるインフルエンザウイルス感染症の処置において特に有用である。担体ペプチド-オリゴマーコンジュゲートは、インフルエンザウイルスに感染した哺乳動物被験体に、またはインフルエンザウイルスの感染症のリスクを有する哺乳動物被験体に投与されてもよい。
【0115】
A型インフルエンザウイルスを標的とする例示的なアンチセンスオリゴマーをSEQ ID NO:41および42として記載する。これらの配列は、それぞれの標的での株間の高い程度の相同性のために、全てではないとしてもほとんどのA型インフルエンザウイルス株を標的とすると考えられる。これらのアンチセンスオリゴマーをコンジュゲートさせるための例示的な肺特異的担体ペプチドは、B(CP06062)、P007、および(RB)8ペプチド(それぞれSEQ ID NO:19、11、および14)である。
【0116】
(A7)TNF-αによって誘導された炎症性関節炎の阻害
別の態様において、選択的スプライシングされた可溶性TNF-α受容体2イソ型(sTNFR2)の発現を誘導するように、TNF受容体(TNFR2)の発現を、本発明において記述される肝臓特異的担体ペプチドとコンジュゲートさせたアンチセンスオリゴマーによって変更することができる。この天然に存在する、選択的スプライシングされたTNFR2遺伝子のイソ型は、それがTNF-αの生物活性にアンタゴナイズすることから、抗炎症特性を提供する。肝臓特異的担体ペプチドとコンジュゲートされ、かつヒトTNFR2遺伝子のエキソン7スプライスアクセプター領域を標的とするアンチセンスオリゴマー(たとえば、SEQ ID NO:33)を用いたsTNFR2イソ型の過剰発現は、炎症性関節炎、具体的にはTNF-αによって誘導される関節炎を阻害するための免疫療法的アプローチを提供する。例示的な担体ペプチドは、B(CP06062)、G、H、およびIペプチド(SEQ ID NO:19および23〜25)である。
【0117】
(A8)免疫系の障害の処置を含む、免疫調節機能の調節
様々な免疫関連状態を処置するためにアンチセンスオリゴマーを用いることが記述されている。たとえば、プレプロセシングされたT細胞抗原-4(CLTA-4)mRNAのイントロン1とエキソン2とのあいだのスプライスジャンクションにわたるアンチセンスオリゴマーを投与することによって、完全長のCTLA-4をコードするプロセシングされたmRNAに対する、リガンド非依存的CTLA-4をコードするプロセシングされたmRNAの比率の増加が起こり、これは哺乳動物被験体における免疫応答の抑制にとって、たとえば自己免疫状態または移植拒絶反応の処置または予防にとって有用である。同一出願人による米国特許出願公開第20070111962号を参照されたい。
【0118】
他の応用において、cFLIPを標的とするアンチセンスオリゴマーは、同一出願人による米国特許出願公開第20050203041号において記述されるように、活性化リンパ球の活性化誘導細胞死(AICD)を引き起こす。IL-10を標的とするアンチセンスは、同一出願人による米国特許仮出願第60/009,464号において記述されるように、IL-10誘導免疫抑制の逆転にとって有効である。
【0119】
これらの任意のオリゴマーの有効性は、骨髄への送達に対する選択性をもつ、SEQ ID NO:27によって表される配列を有するペプチドとのコンジュゲーションによって増強されうる。
【0120】
B.ホーミングペプチドとの組み合わせ
本発明の細胞透過性ペプチド(CPP)は、組織特異的送達をさらに増強するために、標的組織に対する選択性をもつホーミングペプチドと共に用いることができる。臓器ホーミングペプチドの単離は、Kolonin et al.(Kolonin, Sun et al. 2006)によって記述されるように、コンビナトリアルファージディスプレイライブラリを含む、多様な技術を用いて達成されうる。臓器ホーミングペプチドを単離するための技術はまた、米国特許出願公開第20040170955号において同じ研究者らによって、およびVodyanoy et al.によって米国特許出願公開第20030640466号において記述されている。これらのホーミングペプチドは、選択されたペプチドの、天然の受容体リガンドとの類似性に基づいて、組織特異的受容体に結合する。
【0121】
このアプローチの有用性の例は、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)の治療的処置(Gebski, Mann et al. 2003;Alter, Lou et al. 2006)(PCT公開公報番号WO2006000057)であるように設計されたアンチセンスオリゴマーに連結された筋結合ペプチド(Samoylova and Smith, 1999;Vodyanoy et al., 米国特許出願公開第20030640466号)の応用において見出されうる。ヘプタペプチド配列ASSLNIAは、Samoylova and Smithによって記述されるように、インビボでの骨格筋および心筋結合特性を増強した。さらなる例として、膵臓ホーミングペプチドであるCRVASVLPCは、天然のプロラクチン受容体リガンドを模倣する(Kolonin, Sun et al. 2006)。
【0122】
組織特異的ホーミングペプチドを本発明の細胞透過性ペプチドと連結すると、アンチセンスPMOオリゴマーの組織特異的送達の増強を提供する。例示的な二重ペプチド分子は、1つの末端に、たとえば本明細書において記述されるようにアンチセンスオリゴマーの5'末端に細胞透過性ペプチドを有し、他の末端、すなわち3'末端に連結されたホーミングペプチドを有する。ホーミングペプチドは、ペプチドコンジュゲートPMOを標的組織に局在化させ、そこで細胞透過性ペプチド部分が、組織の細胞への輸送を行う。
【0123】
または、好ましい例示的な二重ペプチド分子は、1つの末端、たとえばアンチセンスオリゴマーの5'末端にコンジュゲートされたホーミングペプチド(HP)および細胞透過性ペプチド(CPP)の双方を、HP-CPP-PMO形態またはより好ましくはCPP-HP-PMO形態のいずれかで有すると考えられる。
【0124】
たとえば、Wilton et al.(PCT公開公報番号WO2006/000057)によって記述されるように、ジストロフィン遺伝子の治療的エキソンスキッピングを誘導するように設計され、3'末端で筋結合ペプチドASSLNIAとコンジュゲートされ、かつ5'末端で本発明の細胞透過性ペプチドとさらに連結された、好ましくは筋組織に対して増強された選択力(selectivity)を有するPMOは、DMDの処置において増強された治療可能性を提供すると考えられる。これは、以下の実施例2に例示する。
【0125】
同様に、先に記述した膵臓特異的ホーミングペプチドCRVASVLPCを本発明のPMOの3'末端に連結させてもよく、かつ好ましくは膵臓に対して増強された選択力を有する本発明のCPPを、5'末端に連結させてもよい。膵臓ホーミングペプチドは、コンジュゲートを膵臓に局在化させ、次にCPPは膵臓の細胞内部にコンジュゲートを送達すると考えられる。または、および好ましくは、膵臓特異的ホーミングペプチドおよびCPPはいずれも、HP-CPP-PMO形態またはCPP-HP-PMO形態のいずれかでアンチセンスオリゴマーの5'末端に連結されうる。
【0126】
当技術分野において公知であるホーミングペプチドの例を、以下の表2にその標的組織と共に記載する。これらのホーミングペプチドはいずれも、アンチセンスオリゴマーの組織特異的送達をさらに増強するために、本発明の適切な組織特異的CPPに連結させることができる。
【0127】
(表3)組織特異的ホーミングペプチド(HP)の例

【0128】
C.siRNAの送達
本発明のCPPはまた、siRNA分子を送達するためにも用いることができる。低分子干渉RNA二重鎖(siRNA)を哺乳動物細胞の細胞質に導入すると、siRNAオリゴヌクレオチド相補性およびmRNA切断を通して、mRNA標的の特異的ダウンレギュレーションを触媒する進化的に保存されたプロセスを誘発することは当技術分野において公知である(Sontheimer 2005)。多数の疾患状態の処置におけるsiRNAの可能性は、世界中の多数の学術的研究所および製薬企業の焦点となっている(Behlke 2006)。siRNAの送達に関する本発明のCPPの有意な可能性が存在し、それによって、核酸送達のために現在利用されている方法論に関して示される多数のインビボ合併症が迂回される。
【0129】
しかし、CPPの陽電荷(細胞のインターナリゼーションにおいて有意な役割を果たすと考えられている)の中和を回避するためには、dsRNA結合タンパク質(DRBP)を使用することが好ましい。DRBPは、siRNAに配列非依存的に結合して、siRNAオリゴヌクレオチド上の陰電荷を隠す手段を提供し、それによって効率的なCPP媒介siRNA送達を可能にする。
【0130】
IX.ペプチド-アンチセンスオリゴマーコンジュゲート組成物
A.特定の応用のためのコンジュゲート
選択された輸送ペプチド配列を含む治療用コンジュゲートも同様に、本発明によって提供される。これらには、本明細書において記述され、好ましくはSEQ ID NO:20、21、23、24、25、および27からなる群より選択される担体ペプチドであって、ペプチドの末端によって治療用化合物とコンジュゲートされた担体ペプチドを含む、コンジュゲートが含まれる。1つの態様において、化合物は、PMOなどの核酸類似体であり、他の態様において、化合物は、低分子有機化合物などの非核酸化合物である。
【0131】
コンジュゲートはさらに、治療用化合物に連結された、または好ましくは担体ペプチドのもう1つの末端に連結された、標的組織タイプの組織特異的受容体に結合するのに有効なターゲティング部分を含んでもよい。特に好ましい態様において、先に記述したようなホーミングペプチドは、治療用化合物または細胞透過性ペプチドとコンジュゲートされる。
【0132】
以下に記述される特定のコンジュゲートは特に興味深い。
【0133】
本発明は、SEQ ID NO:23として識別される配列を有する担体ペプチドと、そのペプチドの末端にコンジュゲートされた、SEQ ID NO:43を有するPMOなどの、ヒトアンドロゲン受容体タンパク質を標的とするアンチセンスオリゴマーとを含む、哺乳動物被験体における前立腺癌の処置において用いるためのコンジュゲートを提供する。
【0134】
同様に、SEQ ID NO:13、14、21、および27から選択される配列を有する担体ペプチド、特にSEQ ID NO:13を有するペプチドと、そのペプチドの末端にコンジュゲートされた、SEQ ID NO:31〜33から選択される配列を有するPMOなどの、ヒトc-mycタンパク質を標的とするアンチセンスオリゴマーとを含む、哺乳動物被験体における多発性嚢胞腎疾患、前立腺癌の処置において用いるためのペプチドコンジュゲート化合物が提供される。
【0135】
同様に、SEQ ID NO:11、14、19、および27からなる群より選択される配列を有する担体ペプチドと、そのペプチドの末端にコンジュゲートされた、SEQ ID NO:44〜46から選択される配列を有するPMOなどの、ヒトTGF-βを標的とするアンチセンスオリゴマーとを含む、末梢血における幹細胞の増殖および生存を増強するためのペプチドコンジュゲート化合物が提供される。
【0136】
同様に、SEQ ID NO:6、13、19、および20からなる群より選択される配列を有する担体ペプチドと、そのペプチドの末端にコンジュゲートされた、SEQ ID NO:44を有するPMOなどの、DMDタンパク質の部分的活性を回復させるようにDMDタンパク質におけるエキソンスキッピングをもたらすことができるアンチセンスオリゴヌクレオチドとを含む、デュシェンヌ型筋ジストロフィーの処置において用いるためのペプチドコンジュゲート化合物が提供される。
【0137】
同様に、SEQ ID NO:19および21からなる群より選択される担体ペプチドと、そのペプチドの末端にコンジュゲートされた、SEQ ID NO:31〜33から選択される配列を有するPMOなどの、ヒトc-mycを標的とするアンチセンスオリゴマーとを含む、血管における再狭窄の処置において、またはそのリスクの低減において用いるためのペプチドコンジュゲート化合物が提供される。
【0138】
同様に、SEQ ID NO:10によって識別される配列を有する担体ペプチドと、そのペプチドの末端にコンジュゲートされた、SEQ ID NO:41および42から選択される配列を有するPMOなどの、A型インフルエンザウイルスを標的とするアンチセンスオリゴマー、またはSEQ ID NO:48によって識別される配列を有するPMOなどの、呼吸器合胞体ウイルスを標的とするアンチセンスオリゴマーとを含む、呼吸器のウイルス感染症の処置において用いるためのペプチドコンジュゲート化合物が提供される。
【0139】
同様に、SEQ ID NO:10によって識別される配列を有する担体ペプチドと、そのペプチドの末端にコンジュゲートされた、SEQ ID NO:47を有するPMOなどの、細菌16S rRNAを標的とするアンチセンスオリゴマーとを含む、呼吸器の細菌感染症の処置において用いるためのペプチドコンジュゲート化合物が提供される。
【0140】
同様に、SEQ ID NO:19、23、24、および25からなる群より選択される配列を有する担体ペプチドと、そのペプチドの末端にコンジュゲートされた、SEQ ID NO:28〜30から選択される配列を有するPMOなどの、肝臓P450酵素を標的とするアンチセンスオリゴマーとを含む、肝臓で正常に代謝される生体異物化合物の代謝の再方向付けにおいて用いるためのペプチドコンジュゲート化合物が提供される。
【0141】
同様に、SEQ ID NO:19、23、24、および25からなる群より選択される配列を有する担体ペプチドと、そのペプチドの末端にコンジュゲートされた、SEQ ID NO:39または40を有するPMOなどの、HCV開始領域またはIRESを標的とするアンチセンスオリゴマーとを含む、ウイルス肝炎の処置において用いるためのペプチドコンジュゲート化合物が提供される。
【0142】
B.サブユニット間の陽イオン性連結を有するモルフォリノオリゴマー
先に記したように、好ましい態様において、アンチセンスオリゴマーは、ホスホロジアミデートモルフォリノオリゴヌクレオチド(PMO)である。PMOには、以下に記述されるように、およびさらにPCT公開公報番号WO2008036127において記述されるように、約20〜50%の、陽性に荷電した骨格連結が含まれてもよい。
【0143】
陽イオン性PMO(PMO+)は、2つの連続するモルフォリノ環構造のあいだの少なくとも1つのサブユニット間連結がペンダント陽イオン基を含有するモルフォリノオリゴマーである。ペンダント基は、中性またはほぼ中性(たとえば生理的)pHで陽電荷を担持することができる遠位の窒素原子を担持する。例を図1B〜Cにおいて示す。
【0144】
これらのオリゴマーにおけるサブユニット間連結は、好ましくは以下の構造を有するリン含有連結である:

式中
WはSまたはOであり、好ましくはOであり、
X=NR1R2またはOR6であり、
Y=OまたはNR7であり、
かつオリゴマーにおけるそれぞれの連結は以下から選択され;
(a)非荷電連結(a)、ここでR1、R2、R6、およびR7の各々は独立して、水素および低級アルキルから選択され;
(b1)陽イオン性連結(b1)、ここでX=NR1R2であり、かつY=Oであり、NR1R2は、R1R2が-CHRCHRN(R3)(R4)CHRCHR-となるように、置換されていてもよいピペラジノ基を表し、式中
各Rは独立してHまたはCH3であり、
R4はH、CH3、または電子対であり、かつ
R3は、H、低級アルキル、たとえばCH3、C(=NH)NH2、Z-L-NHC(=NH)NH2、および{C(O)CHR'NH}mHから選択され、式中ZはC(O)または直接結合であり、Lは、アルキル、アルコキシ、およびアルキルアミノから選択される結合を有する、長さが最大18原子、好ましくは最大12原子、およびより好ましくは長さが最大8原子の、任意のリンカーであり、R'は天然に存在するアミノ酸の側鎖またはその1炭素同族体(one-carbon homolog)もしくは2炭素同族体(two-carbon homolog)であり、かつmは1〜6、好ましくは1〜4であり;
(b2)陽イオン性連結(b2)、ここでX=NR1R2であり、Y=Oであり、R1=HまたはCH3であり、かつR2=LNR3R4R5であり、式中L、R3およびR4は、先に定義したとおりであり、かつR5はH、低級アルキル、または低級(アルコキシ)アルキルであり;および
(b3)陽イオン性連結(b3)、ここでY=NR7であり、X=OR6であり、かつR7=LNR3R4R5であり、式中L、R3、R4、およびR5は先に定義したとおりであり、かつR6はHまたは低級アルキルであり;
ならびに少なくとも1つの該連結は、陽イオン性連結(b1)、(b2)、および(b3)から選択される。
【0145】
好ましくは、オリゴマーには、タイプ(a)(すなわち、非荷電連結)の少なくとも2つの連続した連結が含まれる。さらなる態様において、オリゴマーにおける連結の少なくとも5%は、陽イオン性連結である(すなわち、タイプ(b1)、(b2)、または(b3);たとえば連結の10%〜80%、10%〜50%、または10%〜35%が陽イオン性連結であってもよい)。
【0146】
1つの態様において、少なくとも1つの連結はタイプ(b1)の連結であり、ここで、好ましくは各RはHであり、R4はH、CH3、または電子対であり、かつR3は、H、低級アルキル、たとえばCH3、C(=NH)NH2、およびC(O)-L-NHC(=NH)NH2から選択される。R3の後者の2つの態様はそれぞれ、ピペラジン環に直接付着した、またはリンカー基Lに垂下した、グアニジノ部分を提供する。合成を容易にするために、R3における変数Zは、好ましくは示されるようにC(O)(カルボニル)である。
【0147】
先に記したように、リンカー基Lは、Lにおける末端原子(たとえば、カルボニルまたは窒素に隣接する原子)が炭素原子である限り、アルキル(たとえば、-CH2-CH2-)、アルコキシ(-C-O-)、およびアルキルアミノ(たとえば、-CH2-NH-)から選択される骨格において結合を含有する。分岐した連結(たとえば、-CH2-CHCH3-)が可能であるが、リンカーは好ましくは非分岐である。1つの態様において、リンカーは炭化水素リンカーである。そのようなリンカーは構造-(CH2)n-を有してもよく、ここでnは1〜12、好ましくは2〜8、およびより好ましくは2〜6である。
【0148】
モルフォリノサブユニットを連結するために上記のタイプ(b1)、(b2)、および(b3)の連結の態様を用いることは、以下のように図示されうる。

【0149】
好ましくは、オリゴマーにおける全ての陽イオン性連結は、同じタイプの連結である;すなわち、全てタイプ(b1)、全てタイプ(b2)、または全てタイプ(b3)である。塩基対形成部分Piは、同じでもまたは異なってもよく、一般的に標的核酸に結合する配列を提供するように設計される。
【0150】
さらなる態様において、陽イオン性連結は、以下に示されるように連結(b1')および(b1'')から選択され、ここで(b1')は、本明細書において「Pip」連結と呼ばれ、(b1'')は、本明細書において「GuX」連結と呼ばれる。

【0151】
上記の構造において、WはSまたはOであり、好ましくはOであり;R1およびR2の各々は独立して、水素および低級アルキルから選択され、好ましくはメチルであり;かつAは(b1')および(b1'')における1つまたは複数の炭素原子上の水素または非妨害性の(non-interfering)置換基を表す。好ましくは、ピペラジン環における環炭素は非置換である;しかし、それらには、メチルまたはフッ素などの非妨害性の置換基が含まれてもよい。好ましくは最大1つまたは2つの炭素原子がそのように置換される。
【0152】
さらなる態様において、連結の少なくとも10%はタイプ(b1')または(b1'')の連結である;たとえば連結の20%〜80%、20%〜50%、または20%〜30%がタイプ(b1')または(b1'')の連結であってもよい。
【0153】
他の態様において、オリゴマーは、上記のタイプ(b1')の連結を含有しない。またはオリゴマーは、RがH、R3がHまたはCH3であり、およびR4がH、CH3、または電子対であるタイプ(b1)の連結を含有しない。
【0154】
全てが陽イオン性連結であるオリゴマーを含め、任意の数の陽イオン性連結を有するオリゴマーを用いることができる。好ましくは、オリゴマーは、部分的に荷電を有してもよく、たとえば5、10、20、30、40、50、60、70、80、または90%の陽イオン性連結を有する。選択された態様において、連結の約10〜80、20〜80、20〜60、20〜50、20〜40、または約20〜35%が陽イオン性である。
【0155】
1つの態様において、陽イオン性連結は、骨格に沿って散在する。部分的に荷電を有するオリゴマーは、好ましくは少なくとも2つの連続する非荷電連結を含有する;すなわちオリゴマーは、好ましくはその全長にわたって厳密に交互するパターン(strictly alternating pattern)を有しない。
【0156】
同様に、陽イオン性連結の区画と非荷電連結の区画とを有するオリゴマーが考慮される;たとえば非荷電連結の中心区画に陽イオン性連結の区画が隣接していてもよく、またはその逆であってもよい。1つの態様において、オリゴマーは、およそ等しい長さの5"、3"および中心領域を有し、中心領域における陽イオン性連結のパーセンテージは約50%より大きく、好ましくは約70%より大きい。
【0157】
アンチセンス応用において用いられるためのオリゴマーは、一般的に、長さが約10〜約40サブユニットの範囲であり、より好ましくは約15〜25サブユニットの範囲である。たとえば、アンチセンスオリゴマーにとって有用な長さである19〜20サブユニットを有する陽イオン性オリゴマーは、理想的には2個〜7個、たとえば4個〜6個、または3個〜5個の陽イオン性連結を有し、残りは非荷電連結である。14〜15サブユニットを有するオリゴマーは、理想的には2個〜5個、たとえば3個または4個の陽イオン性連結を有してもよく、残りは非荷電連結である。
【0158】
それぞれのモルフォリノ環構造は、塩基対形成部分を支持して、典型的には、細胞における、または処置される被験体における選択されたアンチセンス標的とハイブリダイズするように設計される塩基対形成部分の配列を形成する。塩基対形成部分は、本来のDNAもしくはRNA(A、G、C、T、またはU)、またはヒポキサンチン(ヌクレオシドイノシンの基本成分)もしくは5-メチルシトシンなどの類似体において見出されるプリンまたはピリミジンであってもよい。
【0159】
先に記したように、実質的に非荷電のオリゴヌクレオチドは、1つまたは複数の荷電連結を含めるように、たとえば非荷電連結2〜5個につき約1個、典型的には非荷電連結10個につき3〜5個を含めるように修飾してもよい。アンチセンス活性の最適な改善は、約半数までの骨格連結が陽イオン性である場合に認められる。最大の増強ではないが、何らかの増強が典型的には、少数、たとえば10〜20%の陽イオン性連結の場合に認められ;陽イオン性連結の数が50〜60%を超えると、その標的に対するアンチセンス結合の配列特異性は、損なわれるかまたは失われる可能性がある。
【0160】
陽イオン骨格電荷を加えることによって認められる増強は、いくつかの場合、アンチセンスオリゴヌクレオチドの「中心領域」の骨格連結において密集して大部分の電荷を分布させることによって、たとえば陽イオン性骨格連結8個を有する20量体オリゴヌクレオチドであって、これらの荷電連結の70%〜100%が最も中心の連結10個に局在するオリゴヌクレオチドにおいて、さらに増強される可能性がある。
【0161】
C.他のオリゴマータイプ
代替アンチセンス化学の送達も同様に、開示の担体ペプチドから恩恵を得ることができる。本発明において有用な他のアンチセンス化合物の特定の例には、ヌクレオチド間架橋ホスフェート残基の少なくとも1つまたは全てが、メチルホスホネート、ホスホロチオエート、またはホスホラミデートなどの修飾ホスフェートである例が含まれる。同様に、ヌクレオチドの少なくとも1つまたは全てが2'低級アルキル部分(たとえば、メチル、エチル、エテニル、プロピル、1-プロペニル、2-プロペニル、またはイソプロピルなどのC1〜C4、直鎖または分岐、飽和、または不飽和アルキル)を含有する分子も含まれる。
【0162】
他のオリゴヌクレオチド模倣体において、ヌクレオチド単位における糖とヌクレオシド間連結、すなわち骨格との双方が修飾される。適切な核酸標的化合物とのハイブリダイゼーションのために塩基単位は維持される。1つのそのようなオリゴマー化合物である、優れたハイブリダイゼーション特性を有することが示されているオリゴヌクレオチド模倣体は、ペプチド核酸(PNA)と呼ばれる。PNA化合物において、オリゴヌクレオチドの糖-ホスフェート骨格は、アミド含有骨格、特にアミノエチルグリシン骨格と交換される。
【0163】
修飾オリゴヌクレオチドは、「キメラ」として、たとえばヌクレアーゼ分解に対する抵抗性の増加または細胞取り込みの増加を付与するようにオリゴヌクレオチドが修飾されている少なくとも1つの領域と、標的核酸に対する結合親和性を増加させるための追加の領域とを含有すると分類されてもよい。
【0164】
実施例
以下の実施例は、本発明を説明するためであって制限すると意図されない。
【0165】
材料および方法
インビトロおよびインビボアッセイ
核活性アッセイ
それぞれのP-PMOコンジュゲートの有効性は、ヌクレオチド705位に変異スプライス部位を持つヒトβ-グロビンサラセミアイントロン2によってルシフェラーゼコード配列が中断されることにより作製されたプラスミド(pLuc705)において、P-PMO標的スプライス部位を利用する、核活性を査定するためのスプライス修正アッセイにおいて決定した。プラスミドはHeLa S3細胞に安定的にトランスフェクトして、細胞核におけるスプライス修正を回復させることができるPMO

を送達する様々な担体ペプチドについての相対効率を容易に比較可能にする。細胞を、2 mM L-グルタミン、100 U/mlペニシリン、および10%ウシ胎児血清(FBS)を補足したRPMI 1640培地において、5%CO2を含有する湿潤大気中で37℃で培養して、播種20時間後に2μM P-PMO処置を行った。P-PMOによる細胞処置は全て、FBSを有するまたはFBSを有しないOptiMEM培地において24時間行った。細胞の処置後、Flx 800マイクロプレート蛍光発光リーダーにおいて励起485 nmおよび放射524 nmで細胞溶解物におけるルシフェラーゼ発現の陽性の読み取りによって、正確なスプライス修正の回復を測定した。
【0166】
細胞取り込みアッセイ
HeLa pLuc705細胞におけるP-PMOの細胞取り込みを、3'-カルボキシフルオレセインタグP-PMO(P-PMOF)およびフローサイトメトリーを用いて決定した。細胞は播種20時間後に2μM P-PMOFを処置した。処置後、細胞をトリプシン処理して、いかなる細胞膜結合P-PMOFも除去して、洗浄して1%FBSおよび0.2%NaN3を含有するPBS(Hyclone, Ogden, UT)に浮遊させた。P-PMOFの細胞取り込みを、FC-500 Beckman Coulter(Fullerton, CA)サイトメーターにおけるフローサイトメトリーによって決定して、データをFCS Express 2ソフトウェア(De Novo Software, Thornhill, Ontario, Canada)を用いて処理した。
【0167】
RNA抽出
組織RNAをQiagen's RNeasy Mini Kit(Qiagen USA, Valencia, CA)を用いて製造元のプロトコールに従って抽出した。単離されたRNAは全て、-80℃で保存した。
【0168】
RT-PCR
スプライス修正の回復を、Invitrogen SuperScript(商標)III One-Step RT-PCRシステムを用いて、P-PMOを処置したEGFP-654トランスジェニックマウスから採取した組織から抽出したEGFP mRNAのRT-PCR増幅によって決定した。
【0169】
毒性アッセイ
P-PMOの細胞毒性をそれぞれ、細胞の代謝活性、膜の完全性、および赤血球との適合性に及ぼすP-PMOの効果を測定する、メチルチアゾールテトラゾリウム-生存(MTT)アッセイ、ヨウ化プロピジウム(PI)排除アッセイ、および溶血アッセイによって決定した。
【0170】
MTT分析
MTT分析に関して、細胞を96ウェルプレートにおいて9000個/ウェルの濃度で播種し20時間後、2〜60μMの濃度範囲のP-PMOによって処置した。MTT溶液を細胞に4時間加えて、処置培地の吸光度を読み取って、P-PMO処置試料の吸光度を未処置試料の吸光度の平均値に対して標準化することによって、細胞の代謝活性を測定した。P-PMO処置細胞の顕微鏡画像をNikon Diaphot倒立顕微鏡(Melville, NY)において可視化して、MTT結果と相関させるためにMagnafireソフトウェア(Optronics, Goleta, CA)によって処理した。アッセイは全てHeLa pLuc705細胞を用いて行った。P-PMO処置細胞の顕微鏡画像をNikon Diaphot倒立顕微鏡(Melville, NYにおいて可視化して、MTT結果と相関させるために、Magnafireソフトウェア(Optronics, Goleta, CA)によって処理した。アッセイは全て、HeLa pLuc705細胞を用いて行った。
【0171】
ヨウ化プロピジウム排除
PI排除分析に関して、細胞を12ウェルプレートにおいて100,000個/ウェルの濃度で播種し20時間後、2〜60μMの濃度範囲のP-PMOによって処置した。細胞をトリプシン処理してPBSによって洗浄し、PIを含有するPBSに15分間浮遊させた。フローサイトメトリーによってPI取り込みに関して細胞を分析することによって、不健康なまたは障害を受けた細胞膜の検出を行った。
【0172】
赤血球適合性
2〜60μMの濃度範囲のP-PMOに曝露した赤血球における溶血活性を、確立された方法(Fischer, Li et al. 2003)に従って新鮮なラット血液を用いて決定した。
【0173】
MDXマウス実験
MDXマウス系統を用いる実験は、本質的にJearawiriyapaisarn, Moulton et al., 2008によって記述されたとおりに行った。
【0174】
実施例1.EGFP-654トランスジェニックマウスモデルにおける細胞透過性ペプチドコンジュゲートPMOの評価
高感度緑色蛍光タンパク質(EGFP)遺伝子における正確なスプライシングを回復するように設計されたPMO(654と呼ばれる:

)を様々な細胞透過性ペプチドとコンジュゲートさせて(SEQ ID NO:2、3、6、11、13〜14、19、20〜27)、P-PMO(ペプチドコンジュゲートPMO)を産生し、これらをEGFP-654トランスジェニックマウスモデル(Sazani, Gemignani et al. 2002)においてそのスプライス修正活性および毒性に関してインビボで評価した。このモデルにおいて、機能的なEGFPをコードするEGFP-654遺伝子は、異常スプライス変異イントロンによって中断されており、EGFP-654を標的とするP-PMOの細胞取り込みを、組織における回復したEGFP-654スプライス産物のRT-PCR検出によって評価することができる。
【0175】
雌性EGFP-654トランスジェニックマウスに生理食塩水または12.5 mg/kg用量のP-PMOを4日間連続して1日1回IP注射した。4日目の処置後、心臓、筋肉、肝臓、腎臓、肺、小腸、結腸、胃、乳腺、胸腺、脾臓、卵巣、皮膚、骨髄、および脳を採取して、抽出したRNAをRT-PCRおよびPCR産物の濃度測定によって評価して、修正率(%)を決定した。P-PMOの毒性を、処置の過程におけるおよび剖検直前のマウスの体重測定によって評価した。
【0176】
組織のRT-PCR分析に基づく、様々なP-PMOによる処置後の機能的EGFPスプライス産物の回復を図7A〜Pに示す。P-PMO処置マウスの体重に基づく毒性の分析により、毒性が最小であることが示された(示していない)。これらの結果に基づく各組織に関する最適な担体ペプチドの取り込み(*によって示される)を表2にまとめる(上記を参照されたい)。
【0177】
実施例2.デュシェンヌ型筋ジストロフィーのMDXマウスモデルにおける細胞透過性ペプチド(CPP)および/または筋特異的ホーミングペプチド(HP)とコンジュゲートさせたPMOの評価
MDXマウスを、M23dアンチセンスPMOとコンジュゲートさせた筋特異的CPPおよびHPの様々な組み合わせを含有する一連のP-PMO(ペプチドコンジュゲートPMO)によって処置した。用いた筋特異的CPPは、CP06062とも呼ばれる「Bペプチド」(SEQ ID NO:19)であり、SMP1と呼ばれる筋特異的ホーミングペプチドはSEQ ID NO:51であった。CP06062-PMO、MSP-PMO、CP06062-MSP-PMO、およびMSP-CP06062-PMOが含まれる4つの組み合わせを試験し、その組成を添付の配列の表に示す。M23dアンチセンスPMO(SEQ ID NO:77)は、マウスジストロフィン遺伝子におけるエキソン23スキップを誘導するように標的化された配列を有し、機能的なジストロフィンを回復する。
【0178】
マウスに3 mg/kgの用量の週1回の静脈内注射を6回行った。処置したマウスを屠殺して、様々な筋組織を摘出し、ジストロフィン特異的蛍光抗体染色を用いて完全長のジストロフィンに関して染色した。
【0179】
異なる5つの筋組織におけるCP06062-PMO、MSP-CP06062-PMO、およびCP06062-MSP-PMOコンジュゲートに関する結果を図8に示す。認められうるように、ジストロフィン特異的染色は、MSP-CP06062-PMO化合物に関して他の2つのコンジュゲートよりかなり顕著であるが、心筋は例外であり、心筋ではCP06062-MSP-PMOコンジュゲートが最大の活性を有するように思われた。CP06062-MSP-PMO化合物がCP06062-PMOコンジュゲートより有効であるという所見は、イムノブロットおよびPCRアッセイによって確認された(データは示していない)。異なる実験において(データは示していない)、MSP-PMOコンジュゲートは、CP06062-PMOコンジュゲートよりも低いレベルで完全長のジストロフィンを誘導した。
【0180】
CP06062-M23dコンジュゲートのMDXマウスの組織への筋特異的送達のさらなる例は、先に引用したJearawiriyapaisarn, Moulton et al., 2008において見出されうる。
【0181】
まとめると、筋特異的ホーミングペプチドと筋特異的細胞透過性ペプチドの組み合わせは、このインビボシステムにおいて測定した場合にM23dアンチセンスペプチドの送達を有意に改善した。ペプチド部分のMSP-CP06062-PMOという順序は、完全長のジストロフィンの最高レベルを誘導することが観察され、好ましい態様である。
【0182】
配列の表



a SEQ ID NO:3〜27において、SEQ ID NOを割り当てた配列には、連結部分(X、B、またはXB)は含まれない。
【図1A】

【図1B】

【図1C】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定の標的組織における所定の疾患状態と発現が関連している遺伝子に対して方向付けられている、ホスホロジアミデートモルフォリノアンチセンスオリゴマーと、
連結X、B、またはXBによってそれに共有結合的に連結しており、8〜20個のアミノ酸残基を含み、かつ部分配列(RXR)と部分配列(RBR)の組み合わせかまたは部分配列(RX)と部分配列(RB)の組み合わせからなる、細胞透過性ペプチド(cell-penetrating peptide)と
を含む、所定の疾患状態を処置するためのペプチド-アンチセンスコンジュゲートであって、
式中、Rがアルギニンであり;Bがβ-アラニンであり;かつ各Xが独立して中性の直鎖状アミノ酸-C(O)-(CH2)n-NH-であり、ここでnは4〜6であり、
前記細胞透過性ペプチドが、アンチセンスオリゴマーを標的組織に選択的に局在化させる、
ペプチド-アンチセンスコンジュゲート。
【請求項2】
各Xが6-アミノヘキサン酸残基となるように、nが5である、請求項1記載のコンジュゲート。
【請求項3】
ホスホロジアミデートモルフォリノオリゴマーが、約20〜50%の、陽性に荷電した骨格連結を含有する、請求項1記載のコンジュゲート。
【請求項4】
細胞透過性ペプチドが、SEQ ID NO:23として識別される配列を有し、かつオリゴマーがヒトアンドロゲン受容体タンパク質を標的とする、
哺乳動物被験体における前立腺癌の処置において用いるための、請求項1記載のコンジュゲート。
【請求項5】
細胞透過性ペプチドがSEQ ID NO:13、14、21、および27からなる群より選択され、かつオリゴマーがヒトc-mycタンパク質を標的とする、
哺乳動物被験体における多発性嚢胞腎疾患の処置において用いるための、請求項1記載のコンジュゲート。
【請求項6】
細胞透過性ペプチドが、SEQ ID NO:10、14、19、および27からなる群より選択される配列を有し、かつオリゴマーがヒトTGF-βを標的とする、
末梢血における幹細胞の増殖および生存を増強するための、請求項1記載のコンジュゲート。
【請求項7】
細胞透過性ペプチドがSEQ ID NO:19および21からなる群より選択され、かつオリゴマーがヒトc-mycを標的とする、
心臓の再狭窄(cardiac restenosis)の処置において用いるための、請求項1記載のコンジュゲート。
【請求項8】
細胞透過性ペプチドが、SEQ ID NO:10によって識別される配列を有し、かつオリゴマーがA型インフルエンザウイルスまたは呼吸器合胞体ウイルスを標的とする、
呼吸器のウイルス感染症の処置において用いるための、請求項1記載のコンジュゲート。
【請求項9】
細胞透過性ペプチドが、SEQ ID NO:13、14、および19によって識別される群から選択される配列を有し、かつオリゴマーが細菌16S rRNAを標的とする、
呼吸器の細菌感染症の処置において用いるための、請求項1記載のコンジュゲート。
【請求項10】
細胞透過性ペプチドが、SEQ ID NO:19、23、24、および25からなる群より選択される配列を有し、かつオリゴマーが肝臓のP450酵素を標的とする、
肝臓で正常に代謝される生体異物化合物の代謝の再方向付け(metabolic redirection)において用いるための、請求項1記載のコンジュゲート。
【請求項11】
細胞透過性ペプチドが、SEQ ID NO:19、23、24、および25からなる群より選択される配列を有し、かつオリゴマーがC型肝炎ウイルスまたはB型肝炎ウイルスを標的とする、
ウイルス肝炎の処置において用いるための、請求項1記載のコンジュゲート。
【請求項12】
細胞透過性ペプチドが、SEQ ID NO:6、13、19、および20からなる群より選択される配列を有し、かつオリゴマーが、ジストロフィンタンパク質の部分的活性を回復させるようにヒトジストロフィンタンパク質におけるエキソンスキッピングをもたらすのに有効な配列を有する、
デュシェンヌ型筋ジストロフィーの処置において用いるための、請求項1記載のコンジュゲート。
【請求項13】
細胞透過性ペプチドが、SEQ ID NO:6、13、19、および20からなる群より選択される配列を有し、かつアンチセンスオリゴマーがヒトミオスタチンを標的とする、
ヒト被験体における骨格筋量の損失の処置において用いるための、請求項1記載のコンジュゲート。
【請求項14】
細胞透過性ペプチドが配列SEQ ID NO:19を有する、請求項12または13記載のコンジュゲート。
【請求項15】
アンチセンスオリゴマーが、SEQ ID NO:34、49、および81からなる群より選択される配列を有する、請求項12または13記載のコンジュゲート。
【請求項16】
選択された標的組織に対する選択性をもち、細胞透過性ペプチドとコンジュゲートされる、ホーミングペプチド
をさらに含み、それによって、細胞透過性ペプチド−ホーミングペプチド−アンチセンスオリゴマーの型のコンジュゲートを形成する、請求項1記載のコンジュゲート。
【請求項17】
選択された標的組織に対する選択性をもち、細胞透過性ペプチドとコンジュゲートされる、ホーミングペプチド
をさらに含み、それによって、ホーミングペプチド−細胞透過性ペプチド−アンチセンスオリゴマーの型のコンジュゲートを形成する、請求項1記載のコンジュゲート。
【請求項18】
筋組織に対する選択性をもち、細胞透過性ペプチドとコンジュゲートされる、ホーミングペプチド
をさらに含む、請求項12または13記載のコンジュゲート。
【請求項19】
ホーミングペプチドが、SEQ ID NO:51として識別される配列を有する、請求項18記載のコンジュゲート。
【請求項20】
細胞透過性ペプチド−ホーミングペプチド−アンチセンスオリゴマーの型のコンジュゲートであって、本明細書においてCP06062-MSP-PMOと呼ばれる組成を有する、請求項19記載のコンジュゲート。
【請求項21】
ホーミングペプチド−細胞透過性ペプチド−アンチセンスオリゴマーの型のコンジュゲートであって、本明細書においてMSP-CP06062-PMOと呼ばれる組成を有する、請求項19記載のコンジュゲート。
【請求項22】
その作用が特定の標的組織に対して方向付けられている薬物と、
連結X、B、またはXBによってそれに共有結合的に連結しており、8〜20個のアミノ酸残基を含み、かつ部分配列(RXR)と部分配列(RBR)の組み合わせかまたは部分配列(RX)と部分配列(RB)の組み合わせからなる、細胞透過性ペプチドと
を含む、所定の疾患状態を処置するための薬物-ペプチドコンジュゲートであって、
式中、Rがアルギニンであり;Bがβ-アラニンであり;かつ各Xが独立して中性の直鎖状アミノ酸-C(O)-(CH2)n-NH-であり、ここでnは4〜6であり、
前記細胞透過性ペプチドが、薬物を標的組織に選択的に局在化させる、
薬物-ペプチドコンジュゲート。
【請求項23】
細胞透過性ペプチドがSEQ ID NO:19および27からなる群より選択され、かつ治療用化合物が、ヒトc-mycを標的とするアンチセンスオリゴマー、ラパマイシン、および抗再狭窄(anti-restenosis)活性を有するラパマイシン類似体からなる群より選択される、
再狭窄の処置において用いるための、請求項22記載のコンジュゲート。
【請求項24】
治療用化合物がsiRNAである、請求項22記載のコンジュゲート。
【請求項25】
siRNAと非共有結合的に結合している二本鎖RNA結合化合物をさらに含む、請求項24記載のコンジュゲート。
【請求項26】
以下の段階を含む、選択された哺乳動物組織へと治療用化合物をターゲティングさせるのに有用な細胞透過性ペプチドを同定するための方法:
(a)(i)Rがアルギニンであり、Bがβ-アラニンであり、かつ各Xが独立して-C(O)-(CHR1)n-NH-であり、ここでnは4〜6であり、かつ各R'は、メチルであるR1が多くても2つとなるように、独立してHまたはメチルである、RXR、RX、RB、およびRBRからなる群より選択される部分配列からなる、各々、アミノ酸8〜20個の長さの、複数の異なるペプチドと、
(ii)X、B、またはXB連結によって各々のペプチドに共有結合的に連結しており、選択された組織の細胞においてその濃度がアッセイされうる、オリゴマーマーカー化合物と
からなるペプチドコンジュゲートのライブラリを形成する段階;
(b)各ペプチドコンジュゲートを哺乳動物被験体に投与する段階;
(c)投与されたペプチドコンジュゲートを哺乳動物被験体の選択された組織に局在化させるのに十分な期間の後、選択された組織の細胞におけるマーカー化合物のレベルをアッセイする段階;ならびに
(d)コンジュゲートライブラリにおける他のペプチドと比較して、選択された組織におけるマーカー化合物の最高レベルまたはほぼ最高(near-highest)レベルをもたらすその能力に基づいて、選択された哺乳動物組織へと治療用化合物をターゲティングさせるのに有用な細胞透過性ペプチドを選択する段階。
【請求項27】
ライブラリにおけるペプチドが、SEQ ID NO:6〜27によって識別される配列を有する群から選択される少なくとも8個のペプチドを含む、請求項26記載の方法。
【請求項28】
Xが6-アミノヘキサン酸残基であり、かつペプチドが、少なくとも3個のX残基を含有しかつ(RXR)部分配列と(RBR)部分配列の組み合わせからなる、請求項26記載の方法。
【請求項29】
Xが6-アミノヘキサン酸残基であり、かつペプチドが、少なくとも3個のX残基を含有しかつ(RX)部分配列と(RB)部分配列の組み合わせからなる、請求項26記載の方法。
【請求項30】
以下の段階をさらに含む、哺乳動物被験体における選択された組織に関連する疾患状態を処置するための治療用コンジュゲートの調製において用いるための、請求項26記載の方法:
選択された組織の細胞に局在した場合に疾患状態に対して有効である治療用化合物を選択する段階、および
選択された細胞透過性ペプチドの1つの末端に治療用化合物をコンジュゲートさせる段階。
【請求項31】
治療用化合物が、オリゴマーアンチセンス化合物である、請求項27記載の方法。
【請求項32】
SEQ ID NO:14〜27からなる群より選択される配列を有する、細胞透過性ペプチド。
【請求項33】
SEQ ID NO:19〜27からなる群より選択される配列を有する、請求項32記載のペプチド。
【請求項34】
SEQ ID NO:19、23、24、および25からなる群より選択される配列を有する、請求項33記載のペプチド。
【請求項35】
SEQ ID NO:19として識別される配列を有する、請求項34記載のペプチド。
PCTに関して
【請求項36】
哺乳動物被験体に投与された場合に、それぞれ、発現されたジストロフィンタンパク質におけるスプライスバリアント切断を抑制するのに有効な、または筋組織におけるミオスタチン発現を抑制するのに有効なアンチセンスオリゴマーを調製することによる、哺乳動物被験体におけるDMDまたは筋消耗(muscle-wasting)疾患を処置するのに有用なアンチセンス組成物を調製するための方法における、
SEQ ID NO:19として識別される配列を有する細胞透過性ペプチドを前記オリゴマーとコンジュゲートさせることを含む、改善。
【請求項37】
改善が、筋ホーミングペプチドをオリゴマーおよび細胞透過性ペプチドとコンジュゲートさせて、ホーミングペプチド−細胞透過性ペプチド−アンチセンスオリゴマー組成物を形成することをさらに含む、請求項36記載の方法。
【請求項38】
哺乳動物被験体に投与された場合に、可溶性TNF-α受容体の発現を誘導するのに有効なアンチセンスオリゴマーを調製することによる、炎症状態を処置するのに有用なアンチセンス組成物を調製するための方法における、
SEQ ID NO:19、23、24、および25からなる群より選択される配列を有する細胞透過性ペプチドを前記オリゴマーとコンジュゲートさせることを含む、改善。
【請求項39】
改善が、肝臓ホーミングペプチドをオリゴマーおよび細胞透過性ペプチドとコンジュゲートさせて、ホーミングペプチド−細胞透過性ペプチド−アンチセンスオリゴマー組成物を形成することをさらに含む、請求項38記載の方法。
【請求項40】
哺乳動物被験体に投与された場合に、白血球におけるIL-10、CTLA-4、またはcFLIPの発現を抑制するのに有効なアンチセンスオリゴマーを調製することによる、哺乳動物被験体における免疫状態(immune condition)を処置するのに有用なアンチセンス組成物を調製するための方法における、
SEQ ID NO:27として識別される配列を有する細胞透過性ペプチドをオリゴマーとコンジュゲートさせることを含む、改善。
【請求項41】
改善が、白血球ホーミングペプチドをオリゴマーおよび細胞透過性ペプチドとコンジュゲートさせて、ホーミングペプチド−細胞透過性ペプチド−アンチセンスオリゴマー組成物を形成することをさらに含む、請求項40記載の方法。

【図2】
image rotate

【図3A】
image rotate

【図3B】
image rotate

【図3C】
image rotate

【図3D】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6A】
image rotate

【図6B】
image rotate

【図6C】
image rotate

【図6D】
image rotate

【図7A】
image rotate

【図7B】
image rotate

【図7C】
image rotate

【図7D】
image rotate

【図7E】
image rotate

【図7F】
image rotate

【図7G】
image rotate

【図7H】
image rotate

【図7I】
image rotate

【図7J】
image rotate

【図7K】
image rotate

【図7L】
image rotate

【図7M】
image rotate

【図7N】
image rotate

【図7O】
image rotate

【図7P】
image rotate

【図8】
image rotate


【公表番号】特表2010−532168(P2010−532168A)
【公表日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−514854(P2010−514854)
【出願日】平成20年6月30日(2008.6.30)
【国際出願番号】PCT/US2008/008168
【国際公開番号】WO2009/005793
【国際公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【出願人】(510002567)エーブイアイ バイオファーマ インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】