説明

組電池監視装置、及び、電池パック

【課題】スイッチ装置の開閉制御等を要することなく、セル間の電圧バラツキを抑制しつつ、隣り合うセルのそれぞれに並列接続されている抵抗の抵抗値が同じ構成に比べて、検出線の断線の有無判断を精度よく行うことが可能な技術を開示する。
【解決手段】組電池監視装置3は、隣り合うセルCのそれぞれに並列接続された第1グループ抵抗R1同士の抵抗値が互いに異なる。また、隣り合うセルのそれぞれに並列接続された第2グループ抵抗R2同士の抵抗値が互いに異なる。更に、複数のセルのいずれも、各セルに並列接続されている第1グループ抵抗と第2グループ抵抗との合成抵抗が互いに同じである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示される発明は、組電池を構成する各単電池の電圧を個別に検出するための検出線の断線の有無を判断する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、組電池を構成する各セルの電圧を個別に検出するための検出線の断線の有無を判断する組電池監視装置がある(特許文献1参照)。この組電池監視装置では、各セルの端子間に、スイッチ装置及び同じ抵抗値の抵抗が並列接続されるとともに、各スイッチ装置の開閉制御を行うマイクロプロセッサを備える。マイクロプロセッサは、隣り合う2つのセルのうち、一方のセルに並列接続されたスイッチ装置を閉じ状態にし、且つ、他方のセルに並列接続されたスイッチ装置を開き状態にするよう制御しつつ、一方のセルに並列接続されている抵抗の両端電圧に基づき、当該一方のセルの電圧を検出するための検出線の断線の有無を判断する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−288034号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記従来の組電池監視装置では、検出線の断線の有無を判断するためには、各スイッチ装置の開閉制御が必要である。このため、例えば、スイッチ装置の開閉制御の分だけ、断線の有無を判断するための処理負担が大きくなったり、スイッチ装置を有しない装置では検出線の断線の有無を判断できなかったりするという不都合が生じる。
【0005】
ここで、仮に、上記従来の組電池監視装置において、隣り合うセルに並列接続されている2つのスイッチ装置をいずれも閉状態にしたままで断線の有無判断を行おうとすると、断線の有無の判断精度が低下してしまう。即ち、上記従来の組電池管理装置では、隣り合うセルに並列接続されている2つの抵抗の抵抗値は互いに同じなので、検出線が断線していない場合と断線している場合とで各セルの両端電圧の相違が微少となり、その結果、例えば、断線しているにもかかわらず、断線していないと誤判断してしまうおそれがある。
【0006】
そこで、隣り合うセルのそれぞれに並列接続されている2つの抵抗の抵抗値が互いに異なる構成にすれば、上記誤判断を抑制することが可能である。しかし、この構成では、セルごとに並列接続されている抵抗の抵抗値が互いに異なるため、セル間で電圧のバラツキが生じてしまう。
【0007】
本明細書では、スイッチ装置の開閉制御、或いは、スイッチ装置自体を要することなく、セル間の電圧バラツキを抑制しつつ、隣り合うセルのそれぞれに並列接続されている抵抗の抵抗値が同じ構成に比べて、検出線の断線の有無判断を精度よく行うことが可能な技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書によって開示される組電池監視装置は、複数のセルが直列接続された組電池を監視する組電池監視装置であって、前記複数のセルのそれぞれに検出線を介して並列接続された複数の第1グループ抵抗であって、隣り合うセルのそれぞれに並列接続された第1グループ抵抗同士の抵抗値が互いに異なる複数の第1グループ抵抗と、前記複数のセルのそれぞれに検出線を介して並列接続された複数の第2グループ抵抗であって、隣り合うセルのそれぞれに並列接続された第2グループ抵抗同士の抵抗値が互いに異なる複数の第2グループ抵抗と、制御部と、を備え、前記複数のセルのいずれも、各セルに並列接続されている第1グループ抵抗と第2グループ抵抗との合成抵抗が互いに同じであり、前記制御部は、前記複数の第1グループ抵抗のそれぞれの両端電圧に基づき、前記セルごとの電圧を検出する第1電圧検出処理と、前記第1電圧検出処理における前記セルごとの電圧の検出値に基づき、前記検出線の断線の有無を判断する断線判断処理と、を実行する。
【0009】
この発明では、複数の第1グループ抵抗は、複数のセルのそれぞれに検出線を介して並列接続され、隣り合うセルのそれぞれに並列接続された第1グループ抵抗同士の抵抗値が互いに異なる。従って、当該第1グループ抵抗同士の抵抗値が同じ場合に比べて、検出線が断線していない場合と断線している場合とで抵抗値が大きく変化するため、断線の有無を精度よく判断することができる。
しかも、複数の第2グループ抵抗は、複数のセルのそれぞれに検出線を介して並列接続され、隣り合うセルのそれぞれに並列接続された第2グループ抵抗同士の抵抗値が互いに異なる。更に、複数のセルのいずれも、各セルに並列接続されている第1グループ抵抗と第2グループ抵抗との合成抵抗が互いに同じである。従って、第2グループ抵抗がない構成に比べて、並列接続された抵抗によるセル間の電圧バラツキを抑制することができる。
以上のように、この発明によれば、スイッチ装置の開閉制御、或いは、スイッチ装置自体を要することなく、セル間の電圧バラツキを抑制しつつ、隣り合うセルのそれぞれに並列接続されている抵抗の抵抗値が同じ構成に比べて、検出線の断線の有無判断を精度よく行うことが可能である。
【0010】
上記組電池監視装置では、前記制御部は、前記第1電圧検出処理に加えて、前記複数の第2グループ抵抗のそれぞれの両端電圧に基づき、前記セルごとの電圧を検出する第2電圧検出処理を実行し、前記断線判断処理では、前記第1電圧検出処理と前記第2電圧検出処理とで検出値の差が基準値以上である場合に、断線有りと判断してもよい。
【0011】
この発明によれば、1つのセルにつき2つの抵抗の両端電圧に基づき断線の有無判断を行う。このため、1つのセルにつき1つの抵抗の両端電圧のみに基づき断線の有無判断を行う構成に比べて、断線の有無判断の精度を高めることができる。
【0012】
上記組電池監視装置では、前記第1グループ抵抗及び前記第2グループ抵抗は、いずれも3つ以上であって、1つ飛びごとに抵抗値が同じである。
【0013】
この発明によれば、第1グループ抵抗及び第2グループ抵抗は、1つ飛びごとに抵抗値が同じである。従って、比較的簡単な回路構成により、隣り合うセル同士について、各セルに並列接続されている第1グループ抵抗と第2グループ抵抗との合成抵抗を互いに同じにすることができる。
【0014】
また、電池パックは、複数のセルが直列接続された組電池と、上記各組電池監視装置のいずれかと、を備える。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、スイッチ装置の開閉制御、或いは、スイッチ装置自体を要することなく、セル間の電圧バラツキを抑制しつつ、隣り合うセルのそれぞれに並列接続されている抵抗の抵抗値が同じ構成に比べて、検出線の断線の有無判断を精度よく行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】一実施形態に係る電池パックの電気的構成図
【図2】第1制御処理を示すフローチャート
【図3】第2制御処理を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0017】
一実施形態に係る電池パック1について、図1から図3を参照しつつ説明する。なお、電池パック1は、例えば、電気自動車など充電可能な装置に搭載される。
【0018】
(電池パックの構成)
図1に示すように、電池パック1は、組電池2、及び、組電池監視装置3を備える。
【0019】
1.組電池
組電池2は、複数のセルC、換言すれば複数の単電池が直列接続された構成になっている。本実施形態では、セルCは、リチウムイオン電池など、繰り返し充電可能な二次電池であるが、二次電池以外の電池でもよい。以下、組電池2は、4つのセルC1〜C4を有するものとして説明するが、2個以上のセルCを有する構成であればよい。
【0020】
2.組電池監視装置
組電池監視装置3は、組電池2に電気的に接続されて、各セルCの端子間電圧に基づく監視を行う。なお、組電池2と組電池監視装置3とは、図示しないコネクタを介して着脱可能に接続されている構成が好ましい。以下、各セルCの端子間電圧を、セル電圧ということがある。組電池監視装置3は、第1グループに属する4つの第1グループ抵抗R1と、第2グループに属する4つの第2グループ抵抗R2と、制御部4とを有する。
【0021】
4つの第1グループ抵抗R1は、それぞれ個別のセルCに検出線Lを介して並列接続されており、各第1グループ抵抗R1の両端電圧VR1は、当該第1グループ抵抗R1に並列接続されているセルCのセル電圧に比例した値を示す。具体的には、第1グループ抵抗R11は、セルC1に検出線L11、L12を介して並列接続されており、第1グループ抵抗R12は、セルC2に検出線L12、L13を介して並列接続されており、第1グループ抵抗R13は、セルC3に検出線L13、L14を介して並列接続されており、第1グループ抵抗R14は、セルC4に検出線L14、L15を介して並列接続されている。
【0022】
また、4つの第1グループ抵抗R1のうち、隣り合うセルCのそれぞれに接続されている第1グループ抵抗R1同士は、抵抗値が互いに異なる。更に本実施形態では、4つの第1グループ抵抗R1は、1つ飛びごとに抵抗値が略同一である。具体的には、2つの第1グループ抵抗R11、R13同士は抵抗値が略同一、例えば2kΩであり、2つの第1グループ抵抗R12、R14同士は抵抗値が略同一、例えば1kΩである。なお、両者の抵抗値の組合せの例としては、これに以外に、1MΩと700kΩ、1MΩと無限Ω等が挙げられる。
【0023】
4つの第2グループ抵抗R2は、それぞれ個別のセルCに検出線Lを介して並列接続されており、各第2グループ抵抗R2の両端電圧VR2は、当該第2グループ抵抗R2に並列接続されているセルCのセル電圧に比例した値を示す。具体的には、第2グループ抵抗R21は、セルC1に検出線L21、L22を介して並列接続されており、第2グループ抵抗R22は、セルC2に検出線L22、L23を介して並列接続されており、第2グループ抵抗R23は、セルC3に検出線L23、L24を介して並列接続されており、第2グループ抵抗R24は、セルC4に検出線L24、L25を介して並列接続されている。
【0024】
また、4つの第2グループ抵抗R2のうち、隣り合うセルCのそれぞれに接続されている第2グループ抵抗R2同士は、抵抗値が互いに異なる。更に本実施形態では、4つの第2グループ抵抗R2は、1つ飛びごとに抵抗値が略同一である。具体的には、2つの第2グループ抵抗R21、R23同士は抵抗値が略同一、例えば1kΩであり、2つの第2グループ抵抗R22、R24同士は抵抗値が略同一、例えば2kΩである。なお、両者の抵抗値の組合せの例としては、これに以外に、700kΩと1MΩ、無限Ωと1MΩ等が挙げられる。
【0025】
以上の構成により、全てのセルCについて、当該各セルCに並列接続されている第1グループ抵抗R1と第2グループ抵抗R2との合成抵抗値は互いに略同一である。
【0026】
制御部4は、第1電池監視ユニット5、及び、第2電池監視ユニット6を有し、第1電池監視ユニット5、及び、第2電池監視ユニット6が、組電池2を監視する。これにより、第1電池監視ユニット5、及び、第2電池監視ユニット6のいずれか一方が例えば故障しても、組電池2の監視を継続することができる。
【0027】
第1電池管理ユニット5は、図示しないA/D変換器を介して、第1グループ抵抗R1の両端電圧VR1を個別に読み取って、当該両端電圧VR1に基づき組電池2の監視処理を実行する。具体的には、第1電池監視ユニット5は、第1CPU5A、第1メモリ5B、及び、第1通信部5Cを有する。第1メモリ5Bには、監視処理や、後述する断線検出処理等を実行するためのプログラムが記憶されている。第1メモリ5Bは、例えばフラッシュメモリ等の不揮発性メモリである。第1通信部5Cは、無線方式または有線方式により第2電池監視ユニット6とデータ通信を行うインターフェースである。
【0028】
第2電池管理ユニット6は、図示しないA/D変換器を介して、第2グループ抵抗R2の両端電圧VR2を個別に読み取って、当該両端電圧VR2に基づき組電池2の監視処理を実行する。具体的には、第2電池監視ユニット6は、第2CPU6A、第2メモリ6B、及び、第2通信部6Cを有する。第2メモリ6Bには、監視処理等を実行するためのプログラムが記憶されている。第2メモリ6Bは、例えばフラッシュメモリ等の不揮発性メモリである。第2通信部6Cは、上記第1電池監視ユニット5の第1通信部5Cとデータ通信を行うインターフェースである。
【0029】
(制御部の制御内容)
例えば組電池監視装置3に電源が投入されると、制御部4は、所定の周期で定期的に、第1電圧検出処理、第2電圧検出処理、及び、断線判断処理等を実行する。
【0030】
1.第1電池管理ユニットの制御処理
第1電池監視ユニット5は、第1電圧検出処理、断線判断処理、監視処理等を実行する。具体的には、第1CPU5Aは、上記プログラムを第1メモリ5Bから読み出して、図2に示す第1制御処理を実行する。
【0031】
第1CPU5Aは、まず、第1電圧検出処理を実行する(S1)。第1電圧検出処理では、第1CPU5Aは、第1グループ抵抗R1の各両端電圧VR1を読み取って、当該両端電圧VR1に基づき、各セルCのセル電圧を検出し、各セルCの識別情報と、当該セルのセル電圧の検出値との対応関係を示す第1情報を、第1メモリ5Bに記憶する。
【0032】
第1CPU5Aは、第1電圧検出処理の実行後に、第2電池監視ユニット6から、後述する第2電圧検出処理で得られた第2情報を受信すると、当該第2情報を第1メモリ5Bに記憶し、検出値比較処理を行う(S3)。検出値比較処理では、第1CPU5Aは、第1情報及び第2情報を参照して、各セルごとに、第1電圧検出処理でのセル電圧の検出値と、第2電圧検出処理でのセル電圧の検出値とを比較し、検出値の差が基準値よりも大きいかどうかを判断する(S4)。第1CPU5Aは、全てのセルについて、当該検出値の差が基準値以下であると判断すれば(S4:NO)、いずれの検出線Lも断線していないとして、監視処理を実行する(S5)。
【0033】
この監視処理では、第1CPU5Aは、例えば第1情報を参照して、セル電圧に基づく公知の監視処理を実行する(S5)。例えば、第1CPU5Aは、セルごとに、セル電圧、及び、組電池2に流れる電流を検出する、図示しない電流センサの検出電流値に基づき、インピーダンスを測定したり、劣化診断を行ったりする。第1CPU5Aは、管理処理を実行後に、本制御処理を終了する。
【0034】
第1CPU5Aは、少なくとも1つのセルについて、当該検出値の差が基準値よりも大きいと判断すれば(S4:YES)、いずれかの検出線Lが断線しているとして、断線エラー処理を実行する(S6)。例えば、第1CPU5Aは、セルC2について検出値の差が基準値よりも大きいと判断した場合、検出線L12、L13、L22、L23の少なくともいずれかが断線していることを認識することができる。また、例えば、第1電圧検出処理の検出値と第2電圧検出処理の検出値との大小比較に基づき、第1グループ抵抗R1と第2グループ抵抗R2とのいずれに接続されていた検出線Lが断線しているかを把握することもできる。例えば、上記セルC2について、第1電圧検出処理の検出値が、第2電圧検出処理の検出値よりも小さい場合、第1グループ抵抗R12に接続されていた検出線L12、L13のいずれかが断線したことを把握することができる。
【0035】
断線エラー処理としては、第1CPU5Aは、例えば上記断線に関する情報を、第1通知部5Cを介して、表示装置、発音装置や上位制御装置などの外部機器に送信する。
【0036】
2.第2電池管理ユニットの制御処理
第2電池監視ユニット6は、第2電圧検出処理、監視処理等を実行する。より具体的には、第2CPU6Aは、上記プログラムを第2メモリ6Bから読み出して、図3に示す第2制御処理を実行する。第2CPU6Aは、まず、第2電圧検出処理を実行する(S11)。第2電圧検出処理では、第2CPU6Aは、第2グループ抵抗R2の各両端電圧VR2を読み取って、当該両端電圧VR2に基づき、各セルCのセル電圧を検出し、各セルCの識別情報と、当該セルのセル電圧の検出値との対応関係を示す第2情報を、第2メモリ6Bに記憶する。
【0037】
次に、第2CPU6Aは、上記第2情報を、第1電池監視ユニット5に送信し(S12)、第1電池監視ユニット5から、上記S4での判断結果が送信されるまで待機する。第2CPU6Aは、当該判断結果が、断線無しを示す場合には(S13:NO)、第1電池監視ユニット5とは独立に、上記S5と同様の監視処理を実行し(S14)、本第2制御処理を終了する。一方、第2CPU6Aは、当該判断結果が、断線有りを示す場合には(S13:YES)、監視処理を実行せずに、本第2制御処理を終了する。
【0038】
(本実施形態の効果)
例えば、仮に、図1の構成に対し、第1グループ抵抗R11と第1グループ抵抗R12とが同じ抵抗値である比較構成を考える。この比較構成では、検出線L12が断線した場合、両抵抗R11とR12との間の電位は、検出線L11と検出線L13との中間電位辺りをふらつくことなるため、断線の前後で、第1グループ抵抗R11と第1グループ抵抗R12との各両端電圧VR1はあまり変わらない。しかも、セルC1及び第1グループ抵抗R11を含む閉ループに流れる電流と、セルC2及び第1グループ抵抗R12を含む閉ループに流れる電流とが略同一となって、互いに打ち消し合うため、各第1グループ抵抗R1には微少電流しか流れず、第1グループ抵抗R1の両端電圧を検出するためには、金メッキ線など、低抵抗の回路線を使用する必要があり、コスト高になるおそれがある。
【0039】
これに対し、本実施形態では、隣り合うセルのそれぞれに並列接続された第1グループ抵抗R1同士の抵抗値が互いに異なる。従って、上記比較構成に比べて、検出線Lが断線していない場合と断線している場合とで抵抗値が大きく変化するため、断線の有無を精度よく判断することができる。また、各第1グループ抵抗R1には、上記比較構成よりも大きない電流が流れるため、第1グループ抵抗R1の両端電圧を検出するためには、金メッキ線など、低抵抗の回路線を使用する必要がなく、コスト高を抑制することができる。
【0040】
しかも、各セルCには、第1グループ抵抗R1に加えて、第2グループ抵抗R2が並列接続されており、いずれのセルCも、当該セルCに並列接続されている第1グループ抵抗R1と第2グループ抵抗R2との合成抵抗が互いに同じである。従って、第2グループ抵抗がない構成に比べて、並列接続された抵抗によるセルC間のインピーダンスのバラツキ、電圧バラツキを抑制することができる。また、組電池監視装置3は、従来の構成のようなスイッチ装置の開閉制御を要することなく、検出線Lの断線の有無判断を行うことができる。
【0041】
また、1つのセルCにつき2つの抵抗R1、R2の両端電圧VR1、VR2に基づき断線の有無判断を行う。このため、1つのセルCにつき1つの抵抗の両端電圧のみに基づき断線の有無判断を行う構成に比べて、断線の有無判断の精度を高めることができる。
【0042】
更に、第1グループ抵抗R1及び第2グループ抵抗R2は、1つ飛びごとに抵抗値が同じである。従って、比較的簡単な回路構成により、隣り合うセルC同士について、各セルCに並列接続されている第1グループ抵抗R1と第2グループ抵抗R2との合成抵抗を互いに同じにすることができる。
【0043】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような種々の態様も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0044】
(1)上記実施形態では、第1グループ抵抗R1と第2グループ抵抗R2とが、全長に亘って別体の検出線Lを介して共通のセルに並列接続されていた。しかし、これに限らず、第1グループ抵抗R1と第2グループ抵抗R2とが、例えば、セル寄りの一部分が共通化された検出線Lを介して共通のセルに並列接続されていた。但し、上記実施形態であれば、どの検出線が断線したかをより精度よく判断することができる。
【0045】
(2)上記実施形態では、各グループ抵抗R1、R2は、1つ飛びごとに抵抗値が略同一であった。しかし、1つ飛びごとの抵抗の抵抗値も異なる構成でもよい。要するに、少なくとも、隣り合うセルCにそれぞれ接続されている同一グループ抵抗同士の抵抗値が互いに異なれば、隣り合うセルのそれぞれに並列接続されている抵抗の抵抗値が同じ構成に比べて、検出線の断線の有無判断を精度よく行うことが可能である。
【0046】
(3)上記実施形態では、制御部の一例として、第1電池監視ユニット5、及び、第2電池監視ユニット6を有する制御部4を例に挙げた。しかし、制御部は、これに限らず、図1の回路構成のうち、第1電池監視ユニット5、及び、第2電池監視ユニット6のいずれか一方を備えない構成でもよい。例えば、図1の構成に対し、第2グループ抵抗R2を残しつつ、第2電池監視ユニット6を取り除いた構成でもよい。このような構成でも、各セルに並列接続されている抵抗の合成抵抗は略同一なので、セル間の電圧バラツキを抑制することができる。
【0047】
(4)上記実施形態では、制御部4は、全ての第1グループ抵抗R1の両端電圧VR1に基づきセル電圧を検出した後に、検出値比較処理を行う構成であった。しかし、制御部4は、所定数分、例えば1つ分の第1グループ抵抗R1の両端電圧VR1に基づきセル電圧を検出するごとに、当該第1グループ抵抗R1と、それと並列接続された第2グループ抵抗R2とについて検出値比較処理を行う構成でもよい。
【0048】
(5)上記実施形態では、制御部4は、検出値比較処理により、検出線Lの断線有無を判断した。しかし、例えば、第1電池監視ユニット5及び第2電池監視ユニット6の少なくとも一方で、各セル電圧の検出値が、所定範囲外である場合、より具体的には、所定の閾値以下である場合に、検出線Lの断線有りと判断する構成でもよい。
【0049】
(6)上記実施形態では、制御部4は、第1電池監視ユニット5において、検出値比較処理を実行した。しかし、第2電池監視ユニット6、或いは、制御部4内の図示しない他のユニットにて検出値比較処理を実行する構成でもよい。
【0050】
(7)上記実施形態では、組電池監視装置の例として、従来の構成のようなスイッチ装置を有しない組電池監視装置3を例に挙げた。しかし、組電池監視装置は、スイッチ装置を有する構成でもよい。この構成の一例としては、各セルのセル電圧の均等化を図るためのバランサ回路を備える構成が挙げられる。バランサ回路は、図1の構成に対して、各抵抗R1,R2のそれぞれにスイッチ素子を直列接続した構成である。制御部4は、充放電時に、セル電圧が他のセルCよりも高いセルCに対応するスイッチ素子をオンして、抵抗Rの電圧降下により、セル電圧が高いセルのセル電圧を低下させる構成である。なお、この構成の場合、バランサ回路の動作を停止させ、全てのスイッチ素子をオンした状態で、検出線Lの断線の有無判断を行うことになる。
【0051】
(8)上記実施形態では、制御部4の具体的構成として、第1CPU5A、第2CPU6A等を備える構成を例に挙げた。しかし、制御部は、1または3つ以上のCPUを備える構成や、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)や、FPGA(Field Programmable Gate Array)などのハード回路を備える構成や、ハード回路及びCPUの両方を備える構成でもよい。要するに、制御部は、少なくとも第1電圧検出処理及び断線判断処理を実行可能な構成であればよい。
【符号の説明】
【0052】
1:電池パック 2:組電池 3:組電池監視装置 4:制御部 C:セル L:検出線 R1:第1グループ抵抗 R2:第2グループ抵抗 VR1、VR2:両端電圧

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のセルが直列接続された組電池を監視する組電池監視装置であって、
前記複数のセルのそれぞれに検出線を介して並列接続された複数の第1グループ抵抗であって、隣り合うセルのそれぞれに並列接続された第1グループ抵抗同士の抵抗値が互いに異なる複数の第1グループ抵抗と、
前記複数のセルのそれぞれに検出線を介して並列接続された複数の第2グループ抵抗であって、隣り合うセルのそれぞれに並列接続された第2グループ抵抗同士の抵抗値が互いに異なる複数の第2グループ抵抗と、
制御部と、を備え、
前記複数のセルのいずれも、各セルに並列接続されている第1グループ抵抗と第2グループ抵抗との合成抵抗が互いに同じであり、
前記制御部は、
前記複数の第1グループ抵抗のそれぞれの両端電圧に基づき、前記セルごとの電圧を検出する第1電圧検出処理と、
前記第1電圧検出処理における前記セルごとの電圧の検出値に基づき、前記検出線の断線の有無を判断する断線判断処理と、を実行する、組電池監視装置。
【請求項2】
請求項1に記載の組電池監視装置であって、
前記制御部は、
前記第1電圧検出処理に加えて、前記複数の第2グループ抵抗のそれぞれの両端電圧に基づき、前記セルごとの電圧を検出する第2電圧検出処理を実行し、
前記断線判断処理では、前記第1電圧検出処理と前記第2電圧検出処理とで検出値の差が基準値以上である場合に、断線有りと判断する、組電池監視装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の組電池監視装置であって、
前記第1グループ抵抗及び前記第2グループ抵抗は、いずれも3つ以上であって、1つ飛びごとに抵抗値が同じである、組電池監視装置。
【請求項4】
複数のセルが直列接続された組電池と、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の組電池監視装置と、を備える電池パック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−50312(P2013−50312A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−186842(P2011−186842)
【出願日】平成23年8月30日(2011.8.30)
【出願人】(507151526)株式会社GSユアサ (375)
【Fターム(参考)】