説明

組電池電圧制御システム

【課題】電池監視ユニットが複数組み合わされて1つのシステムが構成されたとしても、全ての電池セルのセル電圧を均等化することができる組電池電圧制御システムを提供する。
【解決手段】上位ECU60は、各電池監視ユニット50からセル電圧の監視結果を受け取ると共にこの監視結果に基づいてどの電池監視ユニット50に監視動作を行わせるかを決定し、監視動作を行わせる電池監視ユニット50に応じた回転パターンで冷却ファン20を動作させる。そして、各電池監視ユニット50は冷却ファン20から回転数信号を入力することにより冷却ファン20の回転数を取得し、取得した回転数に基づく回転パターンが監視動作を行わせるための回転パターンと一致した場合に監視動作を行う。これにより、複数のユニット13を構成する全ての電池セル11のセル電圧が均等化される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組電池電圧制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、直列に接続された複数の電池セルを複数個の電池セルからなるセルブロックに分け、セルブロック毎に各セルブロックを監視する監視装置を複数備えた電池管理システムが、例えば特許文献1で提案されている。各監視装置は、各々に対応するセルブロック内で電池セルのセル電圧の均等化を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−161918号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えばハイブリッド車等の電気自動車では、多数の電池セルが取り扱われるため、複数の監視装置が組み合わされて一つの監視ユニットが構成され、さらにこの監視ユニットが複数組み合わされてシステムが構成される。ここで、各監視ユニットは独立して動作するので、監視ユニット内で各セルブロックの情報のやり取りを行うことにより当該監視ユニットに対応する電池セルのセル電圧を均等化することができる。しかしながら、複数の監視ユニット間においてはセルブロック単位の情報をやり取りするための通信手段がないため、直列に接続された全ての電池セルのセル電圧を均等化することができなかった。
【0005】
なお、多数の電池セルが取り扱われる例として電気自動車を例に説明したが、これは電池セルが取り扱われる分野の一例であり、電気自動車に限らず複数の監視ユニットから1つのシステムを構成する場合に上記の問題が発生する。
【0006】
本発明は上記点に鑑み、電池監視ユニットが複数組み合わされて1つのシステムが構成されたとしても、全ての電池セルのセル電圧を均等化することができる組電池電圧制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、複数のユニットを冷却する冷却ファンを所定の回転パターンで回転させる上位ECUと、ユニット毎に対応して設けられると共に対応するユニットを構成する電池セルの状態を監視する監視動作を行い、この監視動作を行うことによって電池セルに電流を流すことにより当該電池監視ユニットに対応するユニット内でセル電圧の均等化を行う複数の電池監視ユニットと、を備えている。
【0008】
そして、複数の電池監視ユニットは、上位ECUに対して監視結果の送信のみを行う送信専用として構成され、ユニット側の回転パターンを有し、冷却ファンから回転数信号を入力することにより冷却ファンの回転数を取得し、取得した回転数に基づく回転パターンがユニット側の回転パターンと一致した場合に監視動作を行うようになっている。
【0009】
また、上位ECUは、複数の電池監視ユニットからセル電圧の監視結果を受け取ると共にこの監視結果に基づいて複数の電池監視ユニットのいずれかに監視動作を行わせるための回転パターンを決定し、決定した回転パターンに基づいて冷却ファンを動作させることにより、複数のユニットを構成する全ての電池セルのセル電圧を均等化することを特徴とする。
【0010】
このように、各電池監視ユニットが冷却ファンの回転数信号をそれぞれ入力しているので、冷却ファンの回転パターンを利用していずれかの電池監視ユニットに電流を消費させる監視動作を行わせることができる。このため、各電池監視ユニット間で通信するための手段が各電池監視ユニットに備えられていなくても、また、上位ECUから監視動作の実行指令を受けるための受信手段が各電池監視ユニットに備えられていなくても、全ての電池セルのセル電圧を均等化することができる。
【0011】
請求項2に記載の発明では、ユニット毎に対応して設けられると共に対応するユニットを構成する電池セルの状態を監視する監視動作を行い、この監視動作を行うことによって電池セルに電流を流すことにより当該電池監視ユニットに対応するユニット内でセル電圧の均等化を行う複数の電池監視ユニットと、複数の電池監視ユニットにそれぞれ対応して設けられ、複数のユニットとは異なる電源と電池監視ユニットとを電気的に接続または切断する複数のリレーと、複数のリレーのオン/オフをそれぞれ制御する上位ECUと、を備えている。
【0012】
そして、複数の電池監視ユニットは、上位ECUに対して監視結果の送信のみを行う送信専用としてそれぞれ構成され、当該電池監視ユニットに対応するリレーがオンされているときには監視動作を行うことによって当該電池監視ユニットに対応するユニット内でセル電圧の均等化を行う一方、当該電池監視ユニットに対応するリレーがオフされているときには監視動作を行わないようになっている。
【0013】
また、上位ECUは、複数の電池監視ユニットからセル電圧の監視結果を受け取ると共にこの監視結果に基づいて複数の電池監視ユニットのうちのいずれの電池監視ユニットに監視動作を行わせるかを決定し、決定した電池監視ユニットに対応するリレーをオンして当該電池監視ユニットに監視動作を行わせることにより、複数のユニットを構成する全ての電池セルのセル電圧を均等化することを特徴とする。
【0014】
このように、電池監視ユニットと電源とを接続するリレーの制御を利用することにより、いずれかの電池監視ユニットに電流を消費させる監視動作を行わせることができる。このため、各電池監視ユニット間で通信するための手段が各電池監視ユニットに備えられていなくても、また、上位ECUから監視動作の実行指令を受けるための受信手段が各電池監視ユニットに備えられていなくても、全ての電池セルのセル電圧を均等化することができる。
【0015】
請求項3に記載の発明では、ユニット毎に対応して設けられると共に対応するユニットを構成する電池セルの状態を監視する監視動作を行い、この監視動作を行うことによって電池セルに電流を流すことにより当該電池監視ユニットに対応するユニット内でセル電圧の均等化を行う複数の電池監視ユニットと、複数の電池監視ユニットからセル電圧の監視結果を受け取る上位ECUと、複数の電池監視ユニットと上位ECUとをそれぞれ接続する複数の信号線と、を備えている。
【0016】
そして、複数の電池監視ユニットは、上位ECUに対して監視結果の送信のみを行う送信専用としてそれぞれ構成され、上位ECUは、複数の電池監視ユニットから受け取った各監視結果に基づいて複数の電池監視ユニットのいずれかに監視動作を行わせるかを決定し、決定した電池監視ユニットに対応する信号線を介して当該電池監視ユニットに監視動作を行わせることにより、複数のユニットを構成する全ての電池セルのセル電圧を均等化することを特徴とする。
【0017】
このように、電池監視ユニットと上位ECUとを接続する専用の信号線を用いることにより、いずれかの電池監視ユニットに電流を消費させる監視動作を行わせることができる。このため、各電池監視ユニット間で通信するための手段が各電池監視ユニットに備えられていなくても、全ての電池セルのセル電圧を均等化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1実施形態に係る組電池電圧制御システムを含んだ電池システムの全体構成図である。
【図2】2つの電池監視ユニット間で全ての電池セルのセル電圧を均等化することを説明するための図である。
【図3】本発明の第2実施形態に係る組電池電圧制御システムを含んだ電池システムの全体構成図である。
【図4】本発明の第3実施形態に係る組電池電圧制御システムを含んだ電池システムの全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
【0020】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態について図を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る組電池電圧制御システムを含んだ電池システムの全体構成図である。この図に示されるように、電池システムは、組電池10と、冷却ファン20と、バッテリ30と、リレー40と、複数の電池監視ユニット50と、上位ECU60と、を備えて構成されている。このうち、リレー40と、複数の電池監視ユニット50と、上位ECU60と、が組電池電圧制御システムを構成している。
【0021】
組電池10は、最小単位である電池セル11が直列に複数接続されて構成された電池群である。電池セル11として充電可能なリチウムイオン二次電池が用いられる。そして、組電池10はハイブリッド車等の電気自動車に搭載され、インバータやモータ等の負荷を駆動するための電源や電子機器の電源等に用いられる。
【0022】
そして、各電池セル11が所定数毎にグループ化されてブロック12が構成されている。さらに、複数のブロック12が所定数毎にグループ化されて複数のユニット13が構成されている。
【0023】
冷却ファン20は、組電池10に空気を送風して各電池セル11を冷却するための送風ファンである。この冷却ファン20は、上位ECU60から入力される指令値に従って回転するように構成されている。指令値とは、例えば毎分300回転等である。
【0024】
バッテリ30は、各電池監視ユニット50や上位ECU60に対して電源を供給するものであり、複数のユニット13とは異なる電源である。このようなバッテリ30は、例えば14Vの車載バッテリである。
【0025】
リレー40は、各電池監視ユニット50とバッテリ30とを電気的に接続または切断するスイッチ手段である。リレー40は上位ECU60によって制御される。リレー40がオンするとバッテリ30から各電池監視ユニット50に電源が供給され、各電池監視ユニット50がフル駆動する。リレー40として例えばIGCTリレーが採用されている。
【0026】
複数の電池監視ユニット50は、ユニット13毎に対応して設けられると共に対応するユニット13を構成する電池セル11の電池状態を監視する監視動作を行う装置である。各電池監視ユニット50は、複数の監視IC51とマイクロコンピュータ52(以下、マイコン52という)とを備えている。
【0027】
監視IC51は、ブロック12毎に設けられ、対応するブロック12を構成する各々の電池セル11の電池状態を検出し、検出した電池状態の情報を出力するICである。ここで、「電池状態」とは、電池セル11のセル電圧や内部抵抗等である。すなわち、監視IC51が上記の監視動作を行う。各監視IC51は対応するブロック12から電源供給を受けて動作するようになっている。
【0028】
この監視動作は、電池セル11に電流を流すことによりセル電圧や内部抵抗等を検出する動作であり、監視IC51は電池セル11毎の電池電圧検出機能や、電池電圧ばらつき抑制機能(つまり均等化処理)である。電池電圧検出機能は主に車両の走行時に実行する機能であり、均等化は主に停車時に実施する機能である。この監視動作を行うと電池セル11に電流を消費させることになるため、監視動作を行うということは当該電池監視ユニット50に対応するユニット13内でセル電圧の均等化を行うことにもなる。なお、監視IC51の電池電圧検出機能時の消費電流は、均等化時よりも多い。
【0029】
マイコン52は、図示しないCPU、ROM、EEPROM、RAM等を備えたマイクロコンピュータがROM等に記憶されたプログラムに従って所定の機能を実行する制御回路である。マイコン52は、リレー40を介してバッテリ30から供給される電源に基づいて動作する。上位ECU60によってリレー40がオフされてバッテリ30からマイコン52にバッテリ電源が供給されなくなると、電池監視ユニット50は低消費モードに移行する。これにより、電池監視ユニット50は電池セル11の電流を消費する監視動作を行わない。
【0030】
マイコン52は、各監視IC51から監視結果を受け取り、ブロック12間で電池セル11が等しくなるように均等化処理を行う。これにより、ユニット13内で各電池セル11のセル電圧が均等化される。
【0031】
そして、マイコン52は、監視動作によって取得した電池制御に必要なセル電圧・電流・電池温度等の電池状態のデータを監視結果としてシリアル通信により上位ECU60に出力する。ここで、監視結果のデータの送受信に関しては、電池監視ユニット50は上位ECU60に対してデータの送信のみを行う送信専用の監視ユニットとして構成されている。すなわち、電池監視ユニット50は送信専用の監視装置であり、そのための送信手段を備えている。言い換えると、電池監視ユニット50は上位ECU60からデータを受信する受信手段を備えておらず、上位ECU60からデータを受信することはできない。
【0032】
また、マイコン52は、冷却ファン20から回転数信号(パルス信号)を入力し、この回転数信号に基づいて冷却ファン20の実際の回転数を検出する。マイコン52は取得した実際の回転数のデータを上位ECU60にシリアル通信によりフィードバックする。
【0033】
そして、マイコン52は、取得した回転数に基づく回転パターンが監視動作を行わせるための回転パターンと一致した場合に監視動作を行う。このため、マイコン52は監視動作を行ためのユニット側の回転パターンを予め記憶している。ここで、「回転パターン」とは、例えば1秒毎の回転数が高→低→中→・・・というように変化することである。そして、回転パターンは予め上位ECU60に複数設定されており、どの回転パターンがどの電池監視ユニット50に監視動作を行わせるかが予め決められている。この回転パターンは実車上起こりえないパターンでも構わない。
【0034】
なお、上述のように、各監視IC51は対応するブロック12から電源供給を受け、マイコン52はバッテリ30から電源供給を受けており、監視IC51側が高電圧系とされ、マイコン52側が低電圧系とされている。このように、監視IC51とマイコン52とはそれぞれ取り扱う電圧レベルが異なるため、監視IC51とマイコン52とはフォトカプラ等の図示しない絶縁素子を介して信号のやり取りを行うように構成されている。また、図1では2つの電池監視ユニット50を示しているが、実際には電池監視ユニット50が複数存在している。
【0035】
上位ECU60は、複数の電池監視ユニット50を管理する制御装置である。この上位ECU60は、各電池監視ユニット50から受け取った監視結果に基づき、許容充放電量を図示しない車両制御ECUへ通信する。
【0036】
また、上位ECU60は、リレー40のオン/オフを制御して各電池監視ユニット50に監視動作を行わせたり、冷却ファン20を所定の回転パターンで回転させると共に、各電池監視ユニット50から受け取った実際の回転数に基づいて冷却ファン20をフィードバック制御したりする。
【0037】
さらに、上位ECU60は、各電池監視ユニット50からセル電圧等の監視結果をそれぞれ受け取り、この監視結果に基づいてどの電池監視ユニット50に監視動作を行わせるかを決定する。すなわち、各電池監視ユニット50間のばらつき有無を判定し、組電池10を構成する全ての電池セル11のセル電圧を均等化するために、上位ECU60はどのユニット13の電池セル11に電流を消費させるかを演算し、当該ユニット13に監視動作を行わせるための回転パターンを決定する。そして、上位ECU60は、決定した回転パターンに基づいて冷却ファン20を動作させる。これにより、各電池監視ユニット50は冷却ファン20から入力した回転数信号が示す回転パターンがユニット側の回転パターンと一致する場合に監視動作を行う。このようにして、上位ECU60は全ての電池セル11のセル電圧を均等化する。
【0038】
上述のように、複数の電池監視ユニット50間で全ての電池セル11のセル電圧を均等化するが、例えば2つの電池監視ユニット50間でセル電圧を均等化する場合について、図2を参照して説明する。図2に示すグラフの横軸は時間を示し、縦軸はユニット13の電圧を示している。2つのユニット13の電圧をV1、V2とし、V1>V2とする。
【0039】
このような場合、上位ECU60は各電池監視ユニット50から監視結果をそれぞれ受け取り、この監視結果から監視動作を行わせる電池監視ユニット50と監視動作の動作時間を決定する。図2の例ではユニット13の電圧が高い電池監視ユニット50に監視動作を行わせると決定する。そして、上位ECU60は当該電池監視ユニット50に監視動作を行わせるための回転パターンで冷却ファン20を回転させる。
【0040】
そして、2つの電池監視ユニット50(マイコン52)は冷却ファン20から回転数信号を受け取ると共に回転パターンを取得する。ユニット13の電圧が高い電池監視ユニット50は当該回転パターンが監視動作を行う指令となるので、監視動作を行う。他方の電池監視ユニット50は当該回転パターンが監視動作を行う指令とはならないので、監視動作は行わない。
【0041】
なお、「監視動作を行う」というのは電流を消費する動作を行うことである。例えば、該当する電池監視ユニット50の監視IC51を均等化モードにし、非該当の電池監視ユニット50の監視IC51を電圧検出モードのままとする取り決めでも良い。したがって、「監視動作を行わない」というのは、電池監視ユニット50が全く動作しないのではなく、電圧検出モードのような電流を消費しにくい動作を行うことである。
【0042】
これにより、図2に示されるように、V1が監視動作に伴って減少していく。V2は、監視動作を行わなくても監視IC51が電流を消費するため、少しずつ減少している。各ユニット13内ではセル電圧が均等化されていても、ユニット13間の電圧にはばらつきがあるため、V1やV2の傾きには幅がある。
【0043】
動作時間が経過すると、上位ECU60は監視動作を行わせるための回転パターンで冷却ファン20を回転させることを終了し、全く異なる回転パターンで冷却ファン20を回転させる。これにより、V1に対応する電池監視ユニット50の監視動作は終了する。そして、動作時間の経過後はV1とV2とが同じ電圧になる。
【0044】
上述のように、各電池監視ユニット50のユニット13内ではセル電圧が均等化されているが、さらにユニット13間でセル電圧が均等化される。
【0045】
図2では2つの電池監視ユニット50の場合について説明したが、電池監視ユニット50が3つ以上あったとしても、ユニット13の電圧が高い電池監視ユニット50に監視動作を行わせて電流を消費させることで、最も小さいユニット13の電圧に各電圧を合わせることについては同じである。
【0046】
以上説明したように、本実施形態では、冷却ファン20の回転パターンを利用していずれかの電池監視ユニット50に電流を消費させる監視動作を行わせることが特徴となっている。これにより、各電池監視ユニット50間で通信するための通信手段が各電池監視ユニット50に備えられていなくても、全ての電池セルのセル電圧を均等化することができる。また、上位ECU60から監視動作の実行指令を受けるための受信手段が各電池監視ユニット50に備えられていなくても、全ての電池セルのセル電圧を均等化することができる。
【0047】
なお、本実施形態の記載と特許請求の範囲の記載との対応関係については、バッテリ30が特許請求の範囲の「電源」に対応する。
【0048】
(第2実施形態)
本実施形態では、第1実施形態と異なる部分について説明する。上記第1実施形態では、冷却ファンの回転パターンに応じて所望の電池監視ユニット50に監視動作を行わせることにより全ての電池セルのセル電圧を均等化していた。本実施形態では、電池監視ユニット50とバッテリ30とを接続するリレー40の制御によって全ての電池セルのセル電圧を均等化することが特徴となっている。
【0049】
図3は、本実施形態に係る組電池電圧制御システムを含んだ電池システムの全体構成図である。この図に示されるように、本実施形態ではリレー40が各電池監視ユニット50にそれぞれ対応して設けられている。上位ECU60は各リレー40のオン/オフをそれぞれ制御する。なお、リレー40以外の構成は第1実施形態と同じである。
【0050】
そして、上述のように、各電池監視ユニット50は、当該電池監視ユニット50に対応するリレー40がオンされているときには監視動作を行うことによって当該電池監視ユニット50に対応するユニット13内でセル電圧の均等化を行う。また、各電池監視ユニット50は、当該電池監視ユニット50に対応するリレー40が上位ECU60によってオフされているときには低消費モードに移行し、監視動作を行わないようになっている。
【0051】
本実施形態では、リレー40がオフされて電池監視ユニット50が低消費モードに移行することを利用して、ユニット13間でセル電圧を均等化する。
【0052】
すなわち、上位ECU60は、各電池監視ユニット50からセル電圧の監視結果を受け取ると共にこの監視結果に基づいてどの電池監視ユニット50に監視動作を行わせるかとその動作時間を決定する。これは第1実施形態と同じである。そして、本実施形態では、上位ECU60は決定した電池監視ユニット50に対応するリレー40をオンして当該電池監視ユニット50に監視動作を動作時間が経過するまで行わせ、監視動作が必要ない電池監視ユニット50に対応するリレー40をオフする。
【0053】
これにより、監視動作が行われるユニット13の電圧は図2に示されるように動作時間を掛けて減少するので、全てのユニット13間でセル電圧が均等化される。すなわち、複数のユニット13を構成する全ての電池セル11のセル電圧が均等化される。
【0054】
以上説明したように、本実施形態では電池監視ユニット50とバッテリ30とを接続するリレー40を上位ECU60で制御しているので、オンされたリレー40に対応する電池監視ユニット50のみに電流を消費させる監視動作を行わせることができる。これにより、各電池監視ユニット50間で通信するための通信手段が各電池監視ユニット50に備えられていなくても、また、上位ECU60から監視動作の実行指令を受けるための受信手段が各電池監視ユニット50に備えられていなくても、全ての電池セルのセル電圧を均等化することができる。
【0055】
(第3実施形態)
本実施形態では、第1、第2実施形態と異なる部分について説明する。本実施形態では、上位ECU60と各電池監視ユニット50とを専用の信号線で接続し、この信号線を介して上位ECU60から各電池監視ユニット50に対してセル電圧の均等化を目的とした監視動作の指令を行うことが特徴となっている。
【0056】
図4は、本実施形態に係る組電池電圧制御システムを含んだ電池システムの全体構成図である。この図に示されるように、本実施形態では、図1に示される構成に対して、各電池監視ユニット50と上位ECU60とをそれぞれ接続する複数の信号線70が備えられている。なお、信号線70以外の構成は第1実施形態と同じである。
【0057】
そして、上位ECU60は、複数の電池監視ユニット50から受け取った各監視結果に基づいてどの電池監視ユニット50に監視動作を行わせるかとその動作時間を決定する。これは第1実施形態と同じである。そして、本実施形態では、上位ECU60は決定した電池監視ユニット50に対応する信号線70を介して監視動作を行わせる指令を出す。「監視動作を行わせる指令」とは、ハイレベルやローレベル等の信号である。これにより、当該電池監視ユニット50に監視動作を行わせ、ユニット13の電圧の低下が必要ない電池監視ユニット50には監視動作を行わせない。
【0058】
これにより、図2に示されるように、監視動作が行われるユニット13の電圧は動作時間を掛けて減少する。したがって、複数のユニット13を構成する全ての電池セル11のセル電圧が均等化される。
【0059】
なお、上位ECU60は、監視動作後に各電池監視ユニット50から再び監視結果を受け取り、この監視結果に基づいてセル電圧の均等化が正常に行われたか否かを検証しても良い。
【0060】
以上説明したように、本実施形態では各電池監視ユニット50と上位ECU60とをそれぞれ接続する専用の信号線70を用いることが特徴となっている。これにより、いずれかの電池監視ユニット50に電流を消費させる監視動作を行わせることができる。また、各電池監視ユニット50間で通信するための手段が各電池監視ユニット50に備えられていなくても、全ての電池セルのセル電圧を均等化することができる。
【0061】
(他の実施形態)
上記各実施形態で示された構成は一例であり、上記で示した構成に限定されることなく、本発明を実現できる他の構成とすることもできる。例えば、上記各実施形態で示された構成を組み合わせることができる。具体的には、回転パターンの構成と複数のリレー40の構成との組み合わせ、回転パターンと専用の信号線70との組み合わせ、複数のリレー40と専用の信号線70との組み合わせを実現できる。このように、各実施形態の構成を組み合わせることにより、セル電圧の均等化の信頼性を向上させることができる。また、いずれか一方が機能しなくなっても他方が機能するため、冗長性を確保することができる。
【0062】
また、第1実施形態では単一の冷却ファン20を用いることについて説明したが、複数の冷却ファン20を用いる形態でも良い。また、冷却ファン20に限らず、上位ECU60が出した指令値に従って動作する負荷の信号を利用しても良い。
【符号の説明】
【0063】
10 組電池
11 電池セル
12 ブロック
13 ユニット
20 冷却ファン
30 バッテリ(電源)
40 リレー
50 電池監視ユニット
60 上位ECU
70 信号線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直列接続された複数の電池セルが所定数毎にグループ化されてブロックが構成され、複数のブロックが所定数毎にグループ化されて複数のユニットが構成されており、前記複数のユニットを構成する電池セルのセル電圧を均等化する組電池電圧制御システムであって、
前記複数のユニットを冷却する冷却ファンを所定の回転パターンで回転させる上位ECUと、
前記ユニット毎に対応して設けられると共に対応するユニットを構成する電池セルの状態を監視する監視動作を行い、この監視動作を行う際に電池セルに電流を流すことにより当該電池監視ユニットに対応するユニット内でセル電圧の均等化を行う複数の電池監視ユニットと、を備え、
前記複数の電池監視ユニットは、前記上位ECUに対して監視結果の送信のみを行う送信専用として構成され、ユニット側の回転パターンを有し、前記冷却ファンから回転数信号を入力することにより前記冷却ファンの回転数を取得し、取得した回転数に基づく回転パターンが前記ユニット側の回転パターンと一致した場合に前記監視動作を行うようになっており、
前記上位ECUは、前記複数の電池監視ユニットからセル電圧の監視結果を受け取ると共にこの監視結果に基づいて前記複数の電池監視ユニットのいずれかに前記監視動作を行わせるための回転パターンを決定し、決定した回転パターンに基づいて前記冷却ファンを動作させることにより、前記複数のユニットを構成する全ての電池セルのセル電圧を均等化することを特徴とする組電池電圧制御システム。
【請求項2】
直列接続された複数の電池セルが所定数毎にグループ化されてブロックが構成され、複数のブロックが所定数毎にグループ化されて複数のユニットが構成されており、前記複数のユニットを構成する電池セルのセル電圧を均等化する組電池電圧制御システムであって、
前記ユニット毎に対応して設けられると共に対応するユニットを構成する電池セルの状態を監視する監視動作を行い、この監視動作を行うことによって電池セルに電流を流すことにより当該電池監視ユニットに対応するユニット内でセル電圧の均等化を行う複数の電池監視ユニットと、
前記複数の電池監視ユニットにそれぞれ対応して設けられ、前記複数のユニットとは異なる電源と前記電池監視ユニットとを電気的に接続または切断する複数のリレーと、
前記複数のリレーのオン/オフをそれぞれ制御する上位ECUと、を備え、
前記複数の電池監視ユニットは、前記上位ECUに対して監視結果の送信のみを行う送信専用としてそれぞれ構成され、当該電池監視ユニットに対応するリレーがオンされているときには前記監視動作を行うことによって当該電池監視ユニットに対応するユニット内でセル電圧の均等化を行う一方、当該電池監視ユニットに対応するリレーがオフされているときには前記監視動作を行わないようになっており、
前記上位ECUは、前記複数の電池監視ユニットからセル電圧の監視結果を受け取ると共にこの監視結果に基づいて前記複数の電池監視ユニットのうちのいずれの電池監視ユニットに前記監視動作を行わせるかを決定し、決定した電池監視ユニットに対応するリレーをオンして当該電池監視ユニットに前記監視動作を行わせることにより、前記複数のユニットを構成する全ての電池セルのセル電圧を均等化することを特徴とする組電池電圧制御システム。
【請求項3】
直列接続された複数の電池セルが所定数毎にグループ化されてブロックが構成され、複数のブロックが所定数毎にグループ化されて複数のユニットが構成されており、前記複数のユニットを構成する電池セルのセル電圧を均等化する組電池電圧制御システムであって、
前記ユニット毎に対応して設けられると共に対応するユニットを構成する電池セルの状態を監視する監視動作を行い、この監視動作を行うことによって電池セルに電流を流すことにより当該電池監視ユニットに対応するユニット内でセル電圧の均等化を行う複数の電池監視ユニットと、
前記複数の電池監視ユニットからセル電圧の監視結果を受け取る上位ECUと、
前記複数の電池監視ユニットと前記上位ECUとをそれぞれ接続する複数の信号線と、を備え、
前記複数の電池監視ユニットは、前記上位ECUに対して監視結果の送信のみを行う送信専用としてそれぞれ構成され、
前記上位ECUは、前記複数の電池監視ユニットから受け取った各監視結果に基づいて前記複数の電池監視ユニットのいずれかに前記監視動作を行わせるかを決定し、決定した電池監視ユニットに対応する信号線を介して当該電池監視ユニットに前記監視動作を行わせることにより、前記複数のユニットを構成する全ての電池セルのセル電圧を均等化することを特徴とする組電池電圧制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−5480(P2013−5480A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−130954(P2011−130954)
【出願日】平成23年6月13日(2011.6.13)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】