説明

組電池

【課題】 小型かつ軽量で信頼性の高い端子引き出し構造を持ち、複数個のラミネート電池を接続した組電池を提供すること。
【解決手段】 電池外装材としての金属箔と樹脂膜のラミネートフィルムの周辺部を融着接合すると共に電池素子からの電極端子リードを引き出してなるラミネート電池1を複数個接続した組電池であり、電極端子リード2を外部機器との接続用のリード線6に中継接続するための矩形状のタブ端子5が配設され、タブ端子5には、両側端の縁を折り返し密着するように重ね合わせた折り返し縁部51と、電極端子リード2との折り返し縁部51の内側に位置するスポット溶接部3と、リード線6との半田付け部とが形成された組電池。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に電動アシスト自転車や電動工具の駆動源として用いられ、複数個のラミネート電池を接続してなる組電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話やデジタルカメラなどの携帯機器用の電源として、高容量化、小型化の要求によりリチウムイオン電池がよく用いられている。また、電動アシスト自転車や電動工具の電源としても、高エネルギー密度でメモリー効果の無いリチウムイオン電池が用いられている。これらの携帯機器においては、小型化が要求されるのに伴いリチウムイオン電池も小型化、薄型化の設計が要求されてきている。
【0003】
近年さらに、ラミネート外装材(金属箔と樹脂膜のラミネート材)を用いたリチウムイオン電池が使用され、これらラミネート電池を2以上直列または並列に接続する組電池が使用されるようになっている。こうした組電池の端子引き出し構造には特許文献1などの例があるが、小型化・薄型化を図った組電池からの端子引き出し構造としては、ニッケル材を切断加工したタブ端子に外部機器との接続用のリード線を半田付けしたものをラミネート電池の電極端子リードにスポット溶接したものが用いられている。
【0004】
この従来例について、図面に基づいて詳しく説明する。図4は、その従来例の組電池の端子引き出し構造を示す平面図である。矩形平板のタブ端子4にリード線6を半田付けした後、ラミネート電池1の電極端子リード2に×印で表示したスポット溶接部3で、溶接接続している。
【0005】
図5は、そのタブ端子4を端部側から見た正面図である。すなわち、従来のラミネート電池を接続した組電池のタブ端子には一定厚さの矩形平板が用いられていた。
【0006】
【特許文献1】特許第3591523号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図4および図5のような組電池の端子引き出し構造では、大電流化に対処するためにリード線径を太くしたとき、リード線の重量によるストレス(応力)で、ラミネート電池の電極端子リードを溶接した部分と、リード線を半田付けした部分との境界部などでタブ端子が折れるという問題がある。
【0008】
この問題に対処するために、タブ端子を厚くすることも考えられるが、高出力の場合には大電流による発熱があり、タブ端子を厚くすることにより熱が電極を介して電池本体に伝わりやすくなり好ましくない。またタブ端子が厚いと、折り曲げようとする負荷がかかった場合にラミネート電池の電極端子リードの付け根にストレスがかかり好ましくない。さらには重量増加の要因となり組電池全体の小型化、軽量化の要求に応えることが難しくなる。
【0009】
この状況において、本発明の課題は、小型かつ軽量で信頼性の高い端子引き出し構造を持ち、複数個のラミネート電池を接続した組電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の組電池は、電池外装材としての金属箔と樹脂膜のラミネートフィルムの周辺部を融着接合すると共に電池素子からの電極端子リードを引き出してなるラミネート電池を複数個接続した組電池において、前記電極端子リードを外部機器との接続用のリード線に中継接続するための矩形状のタブ端子が配設され、前記タブ端子には、両側端の縁を折り返し密着するように重ね合わせた折り曲げ縁部と、前記電極端子リードとの前記折り返し縁部の内側に位置するスポット溶接部と、前記リード線との半田付け部とが形成されたことを特徴とする。このように縁の部分に180°折り返しの曲げ加工を施したタブ端子を用いることで、上記課題を解決する。
【0011】
また本発明の組電池は、電池外装材としての金属箔と樹脂膜のラミネートフィルムの周辺部を融着接合すると共に電池素子からの電極端子リードを引き出してなるラミネート電池を複数個接続した組電池において、前記電極端子リードを外部機器との接続用のリード線に中継接続するための矩形状のタブ端子が配設され、前記タブ端子には、両側端の縁に丸みを持たせ湾曲させた折り曲げ縁部と、前記電極端子リードとの前記折り曲げ縁部の内側に位置するスポット溶接部と、前記リード線との半田付け部とが形成されたことを特徴とする。このようにRを持つ折り曲げ縁部を縁に形成したタブ端子を用いることによっても、上記課題を解決することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ラミネート電池の電極端子リードおよびリード線を中継接続するタブ端子の厚みを増加することなく強度を向上できる。また溶接条件を変更することなくラミネート電池の電極端子リードにタブ端子をスポット溶接することが可能となる。さらにタブ端子の厚みを変更することなく強度を向上できるため、組電池の重量は現状のまま据え置くことができる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下本発明の実施の形態を図面に基づいて記述する。
【0014】
(実施の形態1)図1は、本発明の実施の形態1での組電池の端子引き出し構造を示す平面図である。図2は本実施の形態でのタブ端子を端部側から見た正面図である。
【0015】
図2を参照して、本実施の形態のタブ端子5は矩形平板の両側端の縁を180度折り返し簡単な曲げ加工を追加した形状であり、折り返し縁部51が形成されている。ここで用いたタブ端子5は縦20mm×横5mm×厚さ0.15mmのニッケル製であり、折り返し縁部51の幅は1mmである。このタブ端子5には、図1のように、リード線6の心線が半田付けされ、その後、ラミネート電池1から引き出されている電極端子リード2に、×印で表示したスポット溶接部3で溶接する。このときの電極端子リード2の幅は13mm、厚さは0.15mmである。なお、図1では積層された複数個のラミネート電池の最上部のラミネート電池1の端子引き出し構造を示し、下側のラミネート電池の電極リード端子との接続部については省略したが、この接続には公知技術によるスポット溶接を用いる。また、ラミネート電池1の作製方法についても、公知技術により、平板状の電池素子から電極リード端子を引き出しつつ、その電池素子を内包するように、金属箔と樹脂膜のラミネートフィルムの周辺部を融着する方法による。
【0016】
こうして、タブ端子5の両側端の縁に曲げ加工が施されたことで、機械的強度が改善され、0.15mmといった薄いタブ端子を用いているにも関わらず、電極端子リード2の溶接部とリード線6の半田付け部分との境界部などで、タブ端子4が折れたり切れたりする問題が解消された。
【0017】
(実施の形態2)図3は、本発明の実施の形態2でのタブ端子を端部側から見た正面図である。このタブ端子は矩形平板の両側端の縁を折り曲げて作製したもので、その折り曲げ縁部52にはRを持たせ、すなわち、丸みを持たせて湾曲させ、その端をタブ端子の上面に密着固定している。
【0018】
このタブ端子を図1のタブ端子5として用い、実施の形態1と同様にして本実施の形態1の組電池を得る。その結果、タブ端子が切れたり折れたりする問題が解消された。
【0019】
なお、タブ端子の縁部を丸みを持たせて折り曲げるとき、端をタブ端子の上面に密着させて固定すると、機械的強度が大きく増加するが、その端を上面に密着させず、縁を湾曲するように曲げることだけでも、塑性変形による要因あるいは構造的な要因による機械的強度の増加がある。
【0020】
以上のように、本発明では、軽量性、電極端子リードとの応力的なバランスあるいは熱伝導性などを考慮して薄いタブ端子を使用するが、タブ端子を平板のまま使用するのではなく、矩形状の両側端の縁を折り曲げることで機械的な強度を確保している。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態1での組電池の端子引き出し構造を示す平面図。
【図2】本発明の実施の形態1でのタブ端子を端部側から見た正面図。
【図3】本発明の実施の形態2でのタブ端子を端部側から見た正面図。
【図4】従来例の組電池の端子引き出し構造を示す平面図。
【図5】従来のタブ端子を端部側から見た正面図。
【符号の説明】
【0022】
1 ラミネート電池
2 電極端子リード
3 スポット溶接部
4 タブ端子
5 タブ端子
6 リード線
51 折り返し縁部
52 折り曲げ縁部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池外装材としての金属箔と樹脂膜のラミネートフィルムの周辺部を融着接合すると共に電池素子からの電極端子リードを引き出してなるラミネート電池を複数個接続した組電池において、前記電極端子リードを外部機器との接続用のリード線に中継接続するための矩形状のタブ端子が配設され、前記タブ端子には、両側端の縁を折り返し密着するように重ね合わせた折り返し縁部と、前記電極端子リードとの前記折り返し縁部の内側に位置するスポット溶接部と、前記リード線との半田付け部とが形成されたことを特徴とする組電池。
【請求項2】
電池外装材としての金属箔と樹脂膜のラミネートフィルムの周辺部を融着接合すると共に電池素子からの電極端子リードを引き出してなるラミネート電池を複数個接続した組電池において、前記電極端子リードを外部機器との接続用のリード線に中継接続するための矩形状のタブ端子が配設され、前記タブ端子には、両側端の縁に丸みを持たせ湾曲させた折り曲げ縁部と、前記電極端子リードとの前記折り曲げ縁部の内側に位置するスポット溶接部と、前記リード線との半田付け部とが形成されたことを特徴とする組電池。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2008−91036(P2008−91036A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−266972(P2006−266972)
【出願日】平成18年9月29日(2006.9.29)
【出願人】(000134257)NECトーキン株式会社 (1,832)
【Fターム(参考)】