説明

経口投与を目的としたトルペリゾンの徐放性医薬組成物

本発明は、活性物質トルペリゾンおよび/または薬剤的なそれらの塩が薬剤的に適合する物質中に包埋されているという点において特徴付けられる、経口投与を目的とした制御可能な活性物質の放出を伴うトルペリゾン含有医薬製剤に関する。製剤中において、および適宜、錠剤または顆粒のコーティングにおいて、薬剤的に適合する物質を選択することによって、活性物質の特異的な放出がトルペリゾンの代謝における特別な遺伝子型に対応するように調節され得る。同時に、トルペリゾンの非常に均一な、および持続性の放出の結果として、当該技術により知られる鏡像異性的に純粋なトルペリゾンのインビボ転位は、筋弛緩性の治療において顕著であるR(-)トルペリゾンに有利に調節することができる。

【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本発明は、経口投与を目的とした制御可能な作用物質の放出を伴う、トルペリゾン含有医薬製剤に関する。
【発明の背景】
【0002】
トルペリゾンは、筋弛緩剤(RS)-2,4’ジメチル-3-ピペリジノプロピオフェノンに対する国際的な一般名称である。ラセミ体として存在するトルペリゾンの鏡像異性体の分離はJP-A-53-40779において述べられている。この場合、鏡像異性的に純粋なトルペリゾンは、ラセミ体のトルペリゾンおよび鏡像異性的に純粋なアセチルフェニルグリシン塩からジアステレオマー形成により形成される。アセチルフェニルグリシン基の分離後、R(-)およびS(+)トルペリゾンの両方を鏡像異性的に純粋な形態で得るために、ジアステレオマーは選択的沈殿により分離された。
【0003】
Zsilaら(Chirality 12:720-726, 2000)は、トルペリゾンの立体化学についても扱っており、(-)トルペリゾンの絶対配置がR-立体配置に対応することを確立した。このことは、(+)トルペリゾンがS立体配置に対応することを示した単結晶分析によっても確認されている。
【0004】
2つの鏡像異性体の薬理学的効果は、JP-A-53-40779でも論じられている。薬理学的研究では、R-トルペリゾンの筋弛緩効果、およびS-トルペリゾンの血管または気管支拡張効果について述べている。
【0005】
鏡像異性的に純粋なトルペリゾンおよびその薬剤的に適合した塩の、証明された薬剤的有効性にもかかわらず、経口投与は、期待された効果が急速に減弱するという限りにおいて問題を含んでおり、それ故、トルペリゾン含有製剤を1日に数回服用しなければならず、それによって患者の消化管は、時に障害を受け得る。
【0006】
トルペリゾンは、体内で比較的速やかに代謝され、実質的には酵素CYP2D6が代謝の型および時間に影響を及ぼす。4つの異なる遺伝子型がこの酵素について決定され、すなわち、「低代謝群」(人口の約7%)、「超高速代謝群」(約3%)、「高代謝群」(約45%)、および「中間代謝群」(約45%)である。言及した最後2つの群は、遺伝子型的に識別可能であるのみであり、表現型的には識別可能でない。特に、「低代謝群」のグループにおいては、ただトルペリゾンが非常にゆっくりと変換されるという理由で、毒性の危険がある。
【0007】
それでも、所望された長時間の効果を達成するために、経皮製剤を開発することがJP-A-3277239において提案された。しかしながら、実施してみると、最大150mgしか経皮的に投与することができず、そのために有効な治療が確立されないので、医薬生成物の経皮輸送は投与量に関して特に制限されるということが分かる。。
【0008】
WO-A-00/59508では、トルペリゾン含有製剤であって、経口的に投与することができるが、経口的に投与することができる既知のトルペリゾン製剤の不都合を有していない製剤について述べられている。このケースでは、トルペリゾンの放出態様が、規定されたR(-)対S(+)の鏡像異性の割合の選択によっても影響されるはずであるという限りにおいて、トルペリゾンの遅延型効果を利用するための試みが行われた。化学反応による規定された鏡像異性の割合の調整は、時に費用がかかり、その上、必ずしも期待された薬剤的効果を生じない。例として、論文「血漿中におけるトルペリゾン鏡像異性体の決定およびラットにおけるそれらの傾向」(Chem.Pharm.Bull.4001,272-274,Vol.40(1992))において、Teruyoshi Yokoyamaらは、鏡像異性的に純粋なトルペリゾンを用いるとき、インビボ転位が認められ得るということを示している。これは、このインビボ転位を通して、鏡像異性的に純粋なS(+)トルペリゾンが20%の程度までR(-)トルペリゾンに変換されるか、または鏡像異性的に純粋なR(-)トルペリゾンが20%の割合までS(+)トルペリゾンに変換されることを意味する。このインビボ転位は、望ましい薬剤的効果を減弱させる可能性があり、また、鏡像異性的に純粋なトルペリゾンの使用に対して疑問を投げかける。
【0009】
本発明の目的は、ある特定の、経口的に投与可能な医薬製剤によりこのインビボ転位に影響を及ぼすことであり、それと同時に、長期治療の目的に伴って、活性物質放出の制御性も調節されるべきである。
【発明の説明】
【0010】
本発明によると、患者に対するトルペリゾンの経口投与を目的とした徐放性医薬組成物には、ある量のトルペリゾンの鏡像異性体混合物または薬剤的に許容可能なそれらの塩、及びトルペリゾンの鏡像異性体混合物の徐放性を提供するための徐放化剤が含まれるものであり、経口投与したときに、患者の血漿中におけるトルペリゾン鏡像異性体の立体選択的配置を生じ、S-トルペリゾンに対するR-トルペリゾンの血漿曲線下面積(AUC)濃度割合が、同量のトルペリゾンの鏡像異性体混合物を含む非徐放性組成物よりも高くなる。あるいは、この医薬組成物には(i)トルペリゾンの鏡像異性体混合物および(ii)徐放化剤を含むコア(a)、並びにコアに付随する徐放性コーティング(b)が含まれてもよい。定義によると、トルペリゾンの「鏡像異性体混合物」には、ごく微量より多い、すなわちそれぞれ少なくとも2重量%の鏡像異性体RおよびSの両方が含まれる。これは10%Sおよび90%Rトルペリゾン、98%Rおよび2%Sの混合物、またはラセミ混合物のように、比限定的に種々の混合物により例示される。また、定義によると、トルペリゾンの「ラセミ混合物」またはラセミ体のトルペリゾンは、等しいか、またはほとんど等しい量のRおよびS鏡像異性体を含み、両方の鏡像異性体がそれぞれ少なくとも45重量%存在することを意味する。これは、45%Rおよび55%Sトルペリゾンの混合物により例示される。好ましい実施形態において、コア中のトルペリゾンの鏡像異性体混合物はラセミ混合物であり、コア中のラセミ体のトルペリゾンの量は100〜500mgの範囲内である。代わりの実施形態として、トルペリゾンの鏡像異性体混合物は、少なくとも50重量%のR-トルペリゾン、および10重量%以上のS-トルペリゾンを含んでよい。
【0011】
徐放化剤は陰イオン性および陽イオン性ポリマーの混合物でよく、オイドラギット(Eudragit) RS、オイドラギットL、およびオイドラギットSの混合物により例示されてもよい。徐放性コーティングはpH非依存性であってよく、すなわち、消化管の酸性および塩基性pHが活性薬剤の溶解に大きな影響を与えないという意味である。あるいは、そのコーティングはpH依存性であり、特に酸性環境に対して耐性であって、胃の後での溶解を好んでもよい。
【0012】
経口投与を受ける対象は、哺乳類、優先的にヒトであってよい。
【0013】
定義によると、「徐放性」には、例1〜8のような溶解プロフィールは含まれるが、「非徐放性」として例示されている例9の溶解プロフィールは除外される。一般的に、「徐放性」とは、結果として2時間で80重量%以下の放出である(37℃、0.1N HCl 1,000mL中において、75rpmでUSPバスケット法を用いて測定した)。「非徐放性」とは、1時間に80重量%より多い範囲の放出を包含する。好ましい実施形態によると、トルペリゾン100〜249mgの徐放性に対するそのようなカットオフは、2時間で45重量%または55重量%以下の放出でよい。また、トルペリゾン250mg〜500mgの徐放性に対するそのようなカットオフは、2時間で20重量%または30重量%以下の放出でよい。
【0014】
また、本発明によると、患者に対するトルペリゾンの経口投与を目的とした徐放性医薬組成物には、ある量のラセミ体のトルペリゾンまたは薬剤的に許容可能なそれらの塩、および経口投与において徐放性のラセミ体のトルペリゾンを提供するための徐放化剤が含まれ、その結果として患者の血漿中でトルペリゾン鏡像異性体が立体選択的配置をとり、このときのR-トルペリゾン:S-トルペリゾンの血漿曲線下面積(AUC)濃度比は、3:1以上である。好ましい実施形態において、血漿曲線下面積(AUC)濃度比は4:1以上であり、コア中のラセミ体のトルペリゾンの量は、100〜500mgの範囲である。別の例として、この医薬組成物は(i)ラセミ体のトルペリゾンおよび(ii)徐放化剤を含むコア(a)、ならびにコアに付随する徐放性コーティング(b)がさらに含まれてもよい。
【0015】
さらに本発明によると、患者に対するトルペリゾンの経口投与の方法には、患者の血漿中においてトルペリゾン鏡像異性体の立体選択的配置を提供するための、100〜500mgの範囲内のある投与量のラセミ体のトルペリゾンの徐放による経口投与が含まれる。ラセミ体のトルペリゾンの好ましい250〜500mgの範囲において、ここでのR-トルペリゾンの血漿曲線下面積(AUC)濃度は100ng*h/ml以上であり、S-トルペリゾンのAUC濃度は25ng*h/ml以下である。好ましい実施形態において、ラセミ体のトルペリゾンの量は約300mgである。
【0016】
この明細書および添付した特許請求の範囲の全体に亘って、「約50」のように単一の数字を修飾するときの「約」は、50±10%のように、数字±10%を意味する。「約50〜100」のように、範囲を修飾するときは、45〜110のように低い方の数字−10%および高い方の数字+10%からなる範囲を意味する。
【0017】
好ましい実施形態のさらなる例として、徐放性医薬組成物は、100〜200mgの量のラセミ体のトルペリゾンまたは薬剤的に許容可能なそれらの塩を含んでよく、前記組成物は、2時間後、ラセミ体のトルペリゾンの45重量%以下が放出されるというインビトロ溶解プロフィールを示す(37℃、0.1N HCL 1,000ml中において75rpmでUSPバスケット法を用いて測定した)。
【0018】
あるいは、前記組成物は、2時間後、ラセミ体のトルペリゾンの55重量%以下が放出されるというインビトロ溶解プロフィールを示してもよい(37℃、0.1N HCL 1,000ml中において75rpmでUSPバスケット法を用いて測定した)。
【0019】
さらなる別の例として、徐放性医薬組成物は、201〜500mgの量のラセミ体のトルペリゾンまたは薬剤的に許容可能なそれらの塩を含んでよく、前記組成物は、2時間後、ラセミ混合物の20重量%以下が放出されるというインビトロ溶解プロフィールを示す(37℃、0.1N HCL 1,000ml中において75rpmでUSPバスケット法を用いて測定した)。この徐放性医薬組成物は、2時間後、ラセミ体のトルペリゾンの30重量%以下が放出されるというインビトロ溶解プロフィールを示してもよい(37℃、0.1N HCL 1,000ml中において75rpmでUSPバスケット法を用いて測定した)。この徐放性医薬組成物は、4時間後、ラセミ体のトルペリゾンの60重量%以下が放出されるというインビトロ溶解プロフィールを示してもよい(37℃、0.1N HCL 1,000ml中において75rpmでUSPバスケット法を用いて測定した)。
【0020】
本発明にはさらに、筋弛緩剤の投与が有益である慢性疾患の治療法であって、前述の徐放性医薬組成物のいずれの毎日の投与を含む方法が包含される。そのような慢性疾患の例には、多発性硬化症、繊維筋痛、パーキンソン病、更年期症状、発作によって起こる痙攣、神経性疾患によって起こる痙攣、頸部症候群、腰痛、頸腕症候群、骨粗しょう症、関節炎、軟部組織リウマチおよび慢性多発性関節炎のようなリウマチ性疾患が含まれる。
【0021】
本発明にはさらに、患者に対して経口投与することを目的としたトルペリゾンの徐放性医薬組成物であって、約125〜175mgのラセミ体のトルペリゾンまたは薬剤的に許容可能なそれらの塩、ならびに、約9〜12mgのオイドラギットS、約1.5〜2.25mgのオイドラギットRS、および約9〜12mgのオイドラギットLの均質な混合物からなる徐放化剤を含むコアと;該コアに付随した約1〜4mgのオイドラギットLを含む徐放性コーティングを有する組成物が含まれるが、これは経口投与においてラセミ体のトルペリゾンの徐放性を提供するためのものであり、その結果としてトルペリゾン鏡像異性体は、患者の血漿中で立体選択的配置をとる。好ましい実施形態には、徐放性の錠剤であって、前記徐放化剤が約10.5mgのオイドラギットS、約1.88gのオイドラギットRS、及び約105mgのオイドラギットLの均質な混合物を含み、並びに、前記徐放性コーティングが約2mgのオイドラギットLを含む錠剤が含まれる。
【0022】
あるいは、トルペリゾンの患者への経口投与のための徐放性医薬組成物は、約300mgのラセミ体のトルペリゾンまたは薬剤的に許容可能なそれらの塩、ならびに約2.5〜5mgのオイドラギットRS、約20〜22mgのオイドラギットL、および約20〜22mgのオイドラギットSの均質な混合物を含む徐放化剤を包含するコアと;コアに付随した約4〜10mgのオイドラギットRSを含む徐放化剤を有していてもよく、これは、経口投与においてラセミ体のトルペリゾンの徐放性を提供するためのものであり、結果として患者の血漿中で、トルペリゾン鏡像異性体が立体選択的配置をとる。好ましい実施形態には、徐放性医薬組成物であって、徐放化剤が約3.75mgのオイドラギットRS、約21mgのオイドラギットL、及び約21mgのオイドラギットSを含み、徐放性コーティングが約4.5mgのオイドラギットRSを含む組成物が含まれる。
【0023】
最後に、本願のこのような徐放性は、疎水性マトリックス中に分散した陰イオン性ポリマー、陽イオン性ポリマー、およびそれらの誘導体、ならびにそれらの組み合わせからなる群より選択される親水性ポリマーの混合物を含む薬剤的な担体中における、ラセミ体のトルペリゾンによって影響されてよい。この親水性ポリマーは、メタクリル酸およびメタクリル酸メチルエステルのオイドラギットS陰イオン性コポリマー、ジメチルアミノエチルメタクリレートおよび中性メタクリル酸エステルのオイドラギットE陽イオン性コポリマー、メタクリル酸のオイドラギットRLコポリマー、メタクリル酸のオイドラギットRSコポリマー、メタクリル酸ポリマー、ヒドロキシエチルメタクリル酸ポリマー、ならびにヒドロキシメチルメタクリル酸ポリマーであってよい。前記疎水性成分は、グリセリンジベヘネート、グリセリンモノステアレート、グリセリンモノステアレートおよびグリセリンモノパルレイテート(monopal reitate)の混合物、グリセリンモノオレエート、モノ、ジ、およびトリ-グリセリドの混合物、グリセリンモノラウレート、パラフィン、白ろう、長鎖カルボン酸、長鎖カルボン酸エステル、および長鎖カルボン酸アルコールであってよい。
【0024】
本願のこのような徐放性は、有効量のラセミ体のトルペリゾン、疎水性物質、および感水性物質により影響されてもよい。前記感水性物質は親水性ポリマーであって、メタクリル酸およびメタクリル酸メチルエステルのオイドラギットS陰イオン性コポリマー、ジメチルアミノエチルメタクリレートおよび中性のメタクリル酸エステルのオイドラギットE陽イオン性コポリマー、メタクリル酸のオイドラギットRLコポリマー、メタクリル酸のオイドラギットRSコポリマー、メタクリル酸ポリマー、ヒドロキシエチルメタクリル酸ポリマー、およびヒドロキシメチルメタクリル酸ポリマーであってよい。前記疎水性物質は、グリセリンジベヘネート、グリセリンモノステアレート、グリセリンモノステアレートおよびグリセリンモノパルレイテートの混合物、グリセリンモノオレエート、モノ、ジ、およびトリグリセリドの混合物、グリセリンモノラウレート、パラフィン、白ろう、長鎖カルボン酸、長鎖カルボン酸エステル、および長鎖カルボン酸アルコールであってよい。
【0025】
最後に、徐放性を得る他の手法は、当該分野において既知である。一例は、徐放性を得るための例に関して本明細書の一部として採用する、2003年10月28日に発行された米国特許第6,638,534号(イシバシら)の手法である。
【好ましい実施形態】
【0026】
次に本発明は、代表的な実施形態およびこれら例による製剤の放出プロフィールを示す図1,2,4および5を参照して、また、S(+)またはR(-)トルペリゾンのインビボ画分に関連する図3を参照して、本発明を詳細に説明する。
【0027】
例1
ラセミ体のトルペリゾン塩酸塩は、ミキサー中で、ブタノン中のオイドラギットRSからなる溶液を用いて造粒される。オイドラギットSおよびオイドラギットLを、その後、均質に混合し、その混合物を乾燥し、ふるいにかける。このふるいにかけた顆粒状の物質をその後、打錠賦形剤と共に混合し、打錠してコアを形成する。直径8mm、重さ190mgの錠剤がプレスされ、コアが形成される。
【0028】
その錠剤をその後、ブタノールに溶解したオイドラギットL、着色剤、および他の賦形剤からなるフィルム物質でコーティングする。
【0029】
成分 量(mg)
トルペリゾン塩酸塩 150.00
オイドラギットRS 1.88
オイドラギットL(コア) 10.50
オイドラギットL(コーティング) 3.74
オイドラギットS 10.50
アエロジル 1.80
ステアリン酸 1.80
グリセリンジベヘネート 7.50
酸化鉄着色剤 0.08
二酸化チタン 4.08
タルク 6.03
ポリエチレングリコール 1.02
ジメチルポリシロキサン 0.05
図1から、例1による薬剤は活性物質の相対的に速い放出、すなわち2時間で約60%、4時間で約85%を示すことが分かる。ここにおいて、以下の例、および図の中の全てのパーセンテージは、溶解した重量によるパーセントを指す。以下の例中の成分の量は、全てmg単位で示されている。40℃および湿度70%でのストレス性の保管の後、3ヶ月の期間にわたり、活性物質の分解は観察されない。検査された副産物は全て、<0.2%の限界値より少ない。
【0030】
例2
この例では、平均的放出速度を有するラセミ体のトルペリゾン塩酸塩製剤200mgの製造および組成について述べられている。製造のために、トルペリゾン塩酸塩をブタノン中のオイドラギットRSからなる溶液を用いて造粒する。オイドラギットSおよびオイドラギットLを、その後、均質に混合する。この混合物を乾燥し、ふるいにかける。必要な打錠賦形剤をその中に均質に混合した後、直径9mm、重さ250mgの錠剤がプレスされる。これらの錠剤を、その後、ブタノール中に溶解されたオイドラギットL、着色剤、および他の賦形剤からなる溶液を用いてフィルムコーティングする。
【0031】
成分 量(mg)
トルペリゾン塩酸塩 200.00
オイドラギットRS 2.50
オイドラギットL 16.60
オイドラギットS 12.85
アエロジル 2.40
ステアリン酸 2.40
グリセリンジベヘネート 2.40
酸化鉄着色剤 0.08
二酸化チタン 4.08
タルク 10.02
ポリエチレングリコール 1.02
ジメチルポリシロキサン 0.05
この例によるトルペリゾン-200mg製剤は、2時間で約50%、5時間で約80%の活性物質の放出を示す。図1から分かるように、これは比較的穏やかな放出速度である。
【0032】
例3
この例では、一定の長期遅延を有するラセミ体のトルペリゾン製剤300mgの製造について述べる。製造は、高速ミキサー中で行う。トルペリゾンはブタノン中に溶解したオイドラギットRSの造粒溶液を用いて造粒する。オイドラギットLおよびオイドラギットSをその後加え、均質な混合の後、乾燥する。得られた顆粒状物質を、その後、打錠賦形剤と共に均質に混合し、直径10mm、重さ380mgのコアを形成する錠剤にプレスする。この錠剤を、ブタノン中のオイドラギットRS、着色剤、および他の賦形剤の溶液を用いてフィルムコーティングする。
【0033】
成分 量(mg)
トルペリゾン塩酸塩 300.00
オイドラギットRS(コア) 3.75
オイドラギットRS(コーティング) 7.85
オイドラギットL 21.00
オイドラギットS 21.00
アエロジル 3.60
ステアリン酸 3.60
グリセリンジベヘネート 15.00
酸化鉄着色剤 1.26
二酸化チタン 6.28
タルク 14.14
ジメチルポリシロキサン 0.07
ステアリン酸マグネシウム 0.50
図2から分かるように、この例による製剤において、活性物質の放出は著しく遅延している。これは、約3時間後に活性物質の50%、約7.5時間後に80%が放出されることを示す。3ヶ月にわたる40℃、湿度75%での安定性ストレス試験では、トルペリゾンは安定形であり、分解生成物の画分は0.02%未満であることを示す。
【0034】
例4
この例では、活性物質300mgを有するラセミ体のトルペリゾン塩酸塩製剤、および非常に強く遅延された放出プロフィールについて述べる。製造は、アセトンおよびイソプロパノール中に溶解したオイドラギットRSからなる溶液を加えながら、医薬品ミキサー中でトルペリゾンのペーストを形成することにより行い、その後オイドラギットSおよびオイドラギットLと共に均質に混合する。得られた予め混合したかたまりを、その後乾燥し、ふるいにかける。打錠賦形剤を添加した後、錠剤をプレスする。これらの錠剤をオイドラギットRS、着色剤、およびさらに医薬賦形剤からなるフィルムでコーティングする。
【0035】
成分 量(mg)
トルペリゾン塩酸塩 300.00
オイドラギットRS 27.60
オイドラギットL 21.00
オイドラギットS 21.00
アエロジル 3.60
グリセリンジベヘネート 18.00
タルク 22.00
ステアリン酸マグネシウム 3.60
クエン酸トリエチル 7.50
図2から分かるように、この例による製剤は長時間にわたり非常に均一な活性物質の放出を示す。すなわち、約3時間で活性物質の50%が放出され、約8時間で活性物質の80%が放出される。活性物質の100%の放出は、約12時間であると予想される。
【0036】
例5
例5では活性物質300gを含有し、中等度の放出速度であるラセミ体のトルペリゾン製剤について示す。錠剤コアおよびフィルムは、例4と同様に製造される。しかしながら、用いる物質は有意に少ない。
【0037】
成分 量(mg)
トルペリゾン塩酸塩 300.00
オイドラギットRS 18.10
オイドラギットL 21.00
オイドラギットS 21.00
アエロジル 3.60
グリセリンジベヘネート 18.00
タルク 18.00
ステアリン酸マグネシウム 3.60
クエン酸トリエチル 4.50
図2は、約2時間で50%、および約5.5時間後には80%の活性物質の放出を示す。カーブの勾配は、放出の始めにおいてやや速いサージを示し、活性物質の放出の終わりの方では平らになっている。
【0038】
例6
例6では、わずかに遅延した放出を伴うラセミ体のトルペリゾン製剤300mgについて示す。錠剤コアは例4と同様に製造される。例4および5と比較して、使用されるフィルム物質は有意に少ない。
【0039】
成分 量(mg)
トルペリゾン塩酸塩 300.00
オイドラギットRS 8.25
オイドラギットL 21.00
オイドラギットS 21.00
アエロジル 3.70
グリセリンジベヘネート 18.00
タルク 14.00
ステアリン酸マグネシウム 3.60
クエン酸トリエチル 1.50
図2は、この例の製剤中の活性物質の非常に速い放出を示している。それ故、すでに1.3時間後に活性物質の50%、約3.5時間後に活性物質の80%が放出される。
【0040】
例7
例7では、遅延性の放出に加えて胃液に耐性のコーティングを有する、150mgのラセミ体のトルペリゾン含有製剤について述べる。その製造のために、トルペリゾン塩酸塩はオイドラギット溶液を用いて造粒し、その後乾燥する。ふるいにかけた粒状物質を打錠賦形剤と混合し、打錠する。直径8mmおよび重さ196mgの錠剤をプレスする。その錠剤を胃液に耐性のフィルムでコーティングする。
【0041】
成分 量(mg)
トルペリゾン塩酸塩 150.00
オイドラギットRS 1.88
オイドラギットS 10.20
クエン酸トリエチル 0.69
アエロジル 1.80
ステアリン酸 1.80
グリセリンジベヘネート 7.70
二酸化チタン 6.02
オイドラギットL 14.24
ポリエチレングリコール 1.52
ジメチルポリシロキサン 0.15
この例によりフィルムコーティングされた錠剤は、1〜2時間を越えても胃液中で全くないか極めて少ない活性物質の放出を示す。pH6.8に緩衝化すると、わずかに緩徐な活性物質の放出が起こる。
【0042】
例8
例8では、225mgのトルペリゾンを含むラセミ体のトルペリゾン含有製剤について述べる。製造は、トルペリゾンを、ブタノンおよびイソプロパノールに溶解したオイドラギットSおよびオイドラギットRSからなる溶液を用いて造粒することにより行う。付加的な造粒を、ブタノン中のポリビニルピロリドンおよびクエン酸の溶液を用いて行う。ふるいにかけた後、粒状物をドラムブレンダー中で、アエロジル、グリセリンジベヘネート、オイドラギットL、ステアリン酸、およびタルクと共に均質に混合する。回転テーブル圧縮機を用いて、コアを形成する直径9mmの錠剤に圧縮する。その錠剤を、ブタノールに溶解したオイドラギットL、着色剤、および他の賦形剤からなる溶液を用いてコーティングする。
【0043】
成分 量(mg)
トルペリゾン塩酸塩 225.00
オイドラギットRS 2.81
オイドラギットL 19.79
オイドラギットS 15.75
アエロジル 2.70
ステアリン酸 2.70
グリセリンジベヘネート 11.25
二酸化鉄着色剤 0.08
二酸化チタン 4.42
ポリエチレングリコール 1.10
ポリシロキサン 0.05
図4より、例8による製剤は、トルペリゾンの一定の遅延性放出、すなわち、5時間で約80%という中程度の放出速度を示すことがわかる。
【0044】
例9
例9では、Gedeon Richter 株式会社(ブダペスト(ハンガリー))からMydocalm(登録商標)として商業的に入手可能な製剤について述べる。この製剤は、図5における溶解プロフィールおよび図3における(AUC)データを作成するために用いられた。図3のために、2つの150mgフィルム錠が同時に投与された。この従来技術の製剤は、錠剤の総重量を460mgにするような以下の賦形剤とともに、150mgのラセミ体のトルペリゾンHClを含む:クエン酸一水和物;コロイド性無水シリカ;ステアリン酸;タルカム;微結晶性セルロース;コーンスターチ;ラクトース一水和物;黒色酸化鉄;黄色酸化鉄;赤色酸化鉄;二酸化チタン;マクロゴール6000;ヒドロキシプロピルメチルセルロース2910である。
【0045】
本発明によるトルペリゾン含有医薬製剤によって活性物質の放出を調節できることの結果として、当該分野において既知のインビボ転位は、筋弛緩性の治療において有用であり、望ましいR(-)トルペリゾンの方に調節することができ、それ故、鏡像異性体の立体選択的配置を達成する。この場合、通常のフィルムコーティング錠(例9により例証された従来技術の錠剤の態様)を投与された患者の血漿中濃度は、筋弛緩性の治療において望ましくないS(+)トルペリゾンに対して、より大きなAUC(曲線下面積)を示す。
【0046】
しかしながら、例1に従って製造された錠剤のようなフィルムコーティング錠が投与される場合、インビボ転位後のS(+)トルペリゾン画分は、既知のフィルムコーティング錠のインビボ転位に比べてさらに少なくなり、それによって、鏡像異性体の立体選択的配置を達成する。
【0047】
同様の効果は、例3の錠剤のように本発明による錠剤を用いて示され、ここにおいて、望ましいR(-)トルペリゾンの画分を、特に遅く、特異的な活性物質の放出の結果として付加的に増加させることができた。
【0048】
血漿タンパク質はS(+)トルペリゾンよりもR(-)トルペリゾンに優先的に結合することが可能であり、これはR(-)トルペリゾンを初回通過分解またはインビボ転位から保護する。非徐放であれば、この効果を消尽し、打ち消してしまうであろう。
【0049】
それ故、活性物質の放出プロフィールが、本発明によるトルペリゾン含有医薬製剤を用いて特異的に調節され得るだけでなく、同時に鏡像異性的に純粋なトルペリゾンのインビボ転位の至適な利用により、筋弛緩性の治療において必要とされるR(-)鏡像異性体の選択も達成され得る。従って、本発明によるトルペリゾン含有医薬製剤は、筋弛緩性の治療において、および頚部症候群、腰痛、頚腕症候群等のような脊椎に対する退行的変化によって誘発される、さまざまな原因の筋攣縮の治療において用いられる。しかしながら、適用の範囲は、骨粗しょう症、膝および/または股関節の関節炎、並びに軟組織リウマチまたは慢性多発性関節炎のようなリウマチ性疾患の治療においても見出される。他の適用の領域は、繊維筋痛の治療、並びに仕事および/またはスポーツによる傷害後の支持療法の領域である。本発明によるトルペリゾン含有医薬製剤は、さらに神経性疾患の結果としての痙攣の治療においても用いられる。トルペリゾン顆粒の懸濁液は、これを対応するフレーバー増強剤と共に子供に投与する場合、特に利点を有する。
【0050】
しかしながら、本発明によるトルペリゾン含有医薬製剤は、脳卒中のリハビリテーション治療において、および多発性硬化症、パーキンソン病、および更年期障害の治療においても用いられる。
【0051】
本発明によるトルペリゾン含有医薬製剤は、持続性の均一レベルの作用を生み出すことが可能である。トルペリゾンが、特に高用量において痛みの記憶に影響を与えることが可能であると、最近の臨床試験報告から推測され得る。このような状況下において、トルペリゾンは、糖尿病性神経障害、帯状疱疹後の神経痛、およびライム病(ボレリア症)における関節炎を治療するためにも首尾よく使用され得る。
【0052】
図1,2および4による放出プロフィールに関して、本発明によるトルペリゾン含有医薬製剤であって、代表的な実施形態1および6の製剤は、相対的に速い活性物質の放出を示し、例2および5による製剤は、活性物質の中程度の放出を示し、例3および4による製剤は、遅いが、非常に均一の活性物質の放出をもたらす。トルペリゾンはヒトの体内で異なる速さで代謝されるので(これは、この文中で検討した酵素CYP2D6に関する4つの異なる遺伝子型の分類の結果によるものであり、すなわち、「低代謝群」、「超高速代謝群」、「高代謝群」、および「中間代謝群」である)、活性物質の制御可能な放出の結果として、本発明によるトルペリゾン含有医薬製剤は、放出速度に従って特定の遺伝子型に適合し得る。それ故、例1および6に従って製造されたトルペリゾン含有医薬製剤は、それらの相対的に速い活性物質の放出の結果として、いわゆる「超高速代謝群」に対して投与することができ、例2および5による製剤は、活性物質の中程度の放出を伴うトルペリゾン含有医薬製剤に対して好反応を示す、「高」または「中間代謝群」に投与される。
【0053】
血中濃度において活性物質の十分な飽和を生じるために、比較的長期間にわたって活性物質トルペリゾンで治療する必要のある「低代謝群」の遺伝子型の場合は、しかしながら、例3および4による医薬製剤を投与することが可能である。
【0054】
本発明による医薬製剤を用いて達成されたトルペリゾンの遅延性の放出は、活性物質トルペリゾンがポリマーマトリックス中に主に包埋される限りにおいて説明することができ、これは、薬剤的に許容可能であり、トルペリゾンの代謝の間、マトリックス材中における包埋の結果として、遅延性であるが特異的なトルペリゾンの放出を可能とする。この放出は、錠剤の場合においては、錠剤コアが活性物質の放出を遅延させるコーティングによって付加的に囲まれるという事実により、付加的に支持され得る。このコーティングに好都合に用いられる物質は、同様に、ポリマーのマトリックス構造の結果として、遅いが、同時に制御可能な放出をもたらす薬剤的に適合したポリマーからなる。血漿中濃度におけるトルペリゾンの均一の飽和がそれによって達成されるため、望ましくない、いわゆる血漿中濃度における「オーバーシューティングピーク」を、それゆえ避けることができる。これにより、まれな「低代謝群」および「超高速代謝群」のCYP2D6遺伝子型群に対して本発明によるトルペリゾン含有医薬製剤を投与することにおいて、有利な効果を生じる。特異的な放出の結果として、毒性リスクの減少、およびそれ故の副作用の割合の減少が「低代謝群」に対して得られ、一方、「超高速代謝群」の場合は、さらに均一であり、それ故改善された作用量により、通常のフィルムコーティング錠と比較してより長時間にわたり達成され得る。制御可能であること、それ故活性物質の放出が均一であることの結果として、前記遺伝子型は、長時間にわたり活性物質トルペリゾンが供給されるため、血漿中濃度が十分にトルペリゾンで飽和される。
【0055】
要約すると、本発明によるトルペリゾン含有医薬製剤は、活性のある主要なトルペリゾンが適切な薬剤的担体、好ましくはポリマーマトリックス中に包埋される限りにおいて、遊離活性物質なしに、特異的および制御可能な投薬を可能にする。結果として、マトリックスのための、または錠剤もしくは顆粒のコーティングのための物質の選択により、特殊な遺伝子型に適合した活性物質の放出が達成され得る。同時に、非常に均一であり、持続性のトルペリゾンの放出の結果として、鏡像異性的に純粋なトルペリゾンの既知のインビボ転位は、筋弛緩治療において適切なR(-)トルペリゾンに有利に調節され得る。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】トルペリゾン-HClの150mgおよび200mg遅延型製剤のインビトロ溶解プロフィール
【図2】トルペリゾン-HClの300mgの異なる遅延型製剤のインビトロ溶解プロフィール
【図3】異なる製剤のAUC(曲線下面積)
【図4】トルペリゾン-HClの225mgの徐放性製剤のインビトロ溶解プロフィール
【図5】トルペリゾン-HClの150mgの従来技術の錠剤(MYDOCALM(登録商標)、Gedeon Richter製)の溶解プロフィール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者に対するトルペリゾンの経口投与を目的とした徐放性医薬組成物であって、ある量のトルペリゾンの鏡像異性体混合物または薬剤的に許容可能なそれらの塩、および経口投与においてトルペリゾンの鏡像異性体混合物の徐放性を提供するための徐放化剤を含み、その結果として患者の血漿中においてトルペリゾン鏡像異性体が立体選択的配置をとり、S-トルペリゾンに対するR-トルペリゾンの血漿曲線下面積(AUC)濃度割合が、同量のトルペリゾンの鏡像異性体混合物を含む非徐放性組成物よりも高くなる組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の徐放性医薬組成物であって、さらに、(i)トルペリゾンの鏡像異性体混合物、および(ii)徐放化剤を含むコア(a)、並びにコアに付随する徐放性コーティング(b)が含まれる医薬組成物。
【請求項3】
トルペリゾンの鏡像異性体混合物がラセミ混合物である、請求項1に記載の徐放性医薬組成物。
【請求項4】
コア中のラセミ混合物の量が100〜249mgの範囲内である、請求項3に記載の徐放性医薬組成物。
【請求項5】
請求項1に記載の徐放性医薬組成物であって、結果としてトルペリゾンのラセミ混合物の徐放性が、2時間で55重量%以下(37℃、0.1N HCl 1,000mL中において、75rpmでUSPバスケット法を用いて測定した)である組成物。
【請求項6】
請求項4に記載の徐放性医薬組成物であって、結果としてトルペリゾンのラセミ混合物の徐放性が、2時間で45重量%以下(37℃、0.1N HCl 1,000mL中において、75rpmでUSPバスケット法を用いて測定した)である組成物。
【請求項7】
コア中のラセミ混合物の量が250〜500mgの範囲内である、請求項3に記載の徐放性医薬組成物。
【請求項8】
請求項7に記載の徐放性医薬組成物であって、2時間後にラセミ混合物の20重量%以下が放出されるインビトロ溶解プロフィール(37℃、0.1N HCl 1,000mL中において、75rpmでUSPバスケット法を用いて測定した)を示す組成物。
【請求項9】
請求項7に記載の徐放性医薬組成物であって、2時間後にラセミ混合物の30重量%以下が放出されるインビトロ溶解プロフィール(37℃、0.1N HCl 1,000mL中において、75rpmでUSPバスケット法を用いて測定した)を示す組成物。
【請求項10】
請求項7に記載の徐放性医薬組成物であって、4時間後にラセミ混合物の60重量%以下が放出されるインビトロ溶解プロフィール(37℃、0.1N HCl 1,000mL中において、75rpmでUSPバスケット法を用いて測定した)をさらに示す組成物。
【請求項11】
徐放化剤が陰イオン性および陽イオン性アクリルポリマーである、請求項1に記載の徐放性医薬組成物。
【請求項12】
陰イオン性および陽イオン性アクリルポリマーがオイドラギットRS、オイドラギットL、およびオイドラギットSの混合物である、請求項11に記載の徐放性医薬組成物。
【請求項13】
徐放性コーティングがpH非依存性である、請求項1に記載の徐放性医薬組成物。
【請求項14】
徐放性コーティングがオイドラギットRSである、請求項13に記載の徐放性医薬組成物。
【請求項15】
徐放性コーティングがpH依存性である、請求項1に記載の徐放性医薬組成物。
【請求項16】
徐放性コーティングがオイドラギットLである、請求項15に記載の徐放性医薬組成物。
【請求項17】
患者に対するトルペリゾンの経口投与を目的とした徐放性医薬組成物であって、ある量のラセミ体のトルペリゾンまたは薬剤的に許容可能なそれらの塩、および経口投与においてラセミ体のトルペリゾンの徐放性を提供するための徐放化剤が含まれ、結果として患者の血漿中でトルペリゾン鏡像異性体が立体選択的配置をとり、このときのR-トルペリゾン:S-トルペリゾンの血漿曲線下面積(AUC)濃度比が3:1以上である組成物。
【請求項18】
請求項17に記載の徐放性医薬組成物であって、さらに、(i)トルペリゾンのラセミ混合物、および(ii)徐放化剤を含むコア(a)、並びにコアに付随する徐放性コーティング(b)が含まれる医薬組成物。
【請求項19】
血漿曲線下面積(AUC)濃度比が4:1以上である、請求項17に記載の徐放性医薬組成物。
【請求項20】
ラセミ体のトルペリゾンの量が100〜249mgの範囲内である、請求項17に記載の徐放性医薬組成物。
【請求項21】
請求項20に記載の徐放性医薬組成物であって、ラセミ体のトルペリゾンの徐放性が、結果として2時間で55重量%以下(37℃、0.1N HCl 1,000mL中において、75rpmでUSPバスケット法を用いて測定した)である組成物。
【請求項22】
請求項20に記載の徐放性医薬組成物であって、ラセミ体のトルペリゾンの徐放性が、結果として2時間で45重量%以下(37℃、0.1N HCl 1,000mL中において、75rpmでUSPバスケット法を用いて測定した)である組成物。
【請求項23】
ラセミ体のトルペリゾンの量が250〜500mgの範囲内である、請求項17に記載の徐放性医薬組成物。
【請求項24】
請求項23に記載の徐放性医薬組成物であって、2時間後にラセミ混合物の20重量%以下が放出されるインビトロ溶解プロフィール(37℃、0.1N HCl 1,000mL中において、75rpmでUSPバスケット法を用いて測定した)を示す組成物。
【請求項25】
請求項23に記載の徐放性医薬組成物であって、2時間後にラセミ体のトルペリゾンの30重量%以下が放出されるインビトロ溶解プロフィール(37℃、0.1N HCl 1,000mL中において、75rpmでUSPバスケット法を用いて測定した)を示す組成物。
【請求項26】
請求項23に記載の徐放性医薬組成物であって、4時間後にラセミ体のトルペリゾンの60重量%以下が放出されるインビトロ溶解プロフィール(37℃、0.1N HCl 1,000mL中において、75rpmでUSPバスケット法を用いて測定した)をさらに示す組成物。
【請求項27】
徐放化剤が陰イオン性および陽イオン性アクリルポリマーの混合物である、請求項17に記載の徐放性医薬組成物。
【請求項28】
陰イオン性および陽イオン性アクリルポリマーの混合物が、オイドラギットRS、オイドラギットL、およびオイドラギットSの混合物である、請求項27に記載の徐放性医薬組成物。
【請求項29】
徐放性コーティングがpH非依存性である、請求項17に記載の徐放性医薬組成物。
【請求項30】
徐放性コーティングがオイドラギットRSである、請求項29に記載の徐放性医薬組成物。
【請求項31】
徐放性コーティングがpH依存性である、請求項17に記載の徐放性医薬組成物。
【請求項32】
徐放性コーティングがオイドラギットLである、請求項31に記載の徐放性医薬組成物。
【請求項33】
患者に対するトルペリゾンの経口投与方法であって:
患者の血漿中でトルペリゾン鏡像異性体の立体選択的配置を提供するために、ラセミ体のトルペリゾンの100〜500mgの範囲内の投与量を徐放により経口投与することを含む方法。
【請求項34】
ラセミ体のトルペリゾンの量が約300mgである、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
ラセミ体のトルペリゾンの量が約150mgである、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
請求項33に記載の方法であって、ラセミ体のトルペリゾンの量が250〜350mgの範囲内であり、患者の血漿中におけるトルペリゾン鏡像異性体の立体選択的配置は、R-トルペリゾンの血漿曲線下面積(AUC)濃度が100ng*h/ml以上であり、S-トルペリゾンのAUC濃度が25ng*h/ml以下である方法。
【請求項37】
100〜200mgの量のラセミ体のトルペリゾンまたは薬剤的に許容可能なそれらの塩を含む徐放性医薬組成物であって、2時間後にラセミ体のトルペリゾンの45重量%以下が放出されるインビトロ溶解プロフィール(37℃、0.1N HCl 1,000mL中において、75rpmでUSPバスケット法を用いて測定した)を示す組成物。
【請求項38】
請求項37に記載の徐放性医薬組成物であって、2時間後にラセミ体のトルペリゾンの55重量%以下が放出されるインビトロ溶解プロフィール(37℃、0.1N HCl 1,000mL中において、75rpmでUSPバスケット法を用いて測定した)を示す組成物。
【請求項39】
請求項37に記載の徐放性医薬組成物であって、さらに:
ラセミ体のトルペリゾンまたは薬剤的に許容可能なそれらの塩、および徐放化剤を含むコア;ならびに
コアに付随した徐放性コーティング
を含む組成物。
【請求項40】
請求項39に記載の徐放性医薬組成物であって、患者に対する経口投与において、ラセミ体のトルペリゾンの徐放性を提供し、結果として患者の血漿中でトルペリゾン鏡像異性体が立体選択的な配置となる組成物。
【請求項41】
201〜500mgの量のラセミ体のトルペリゾンまたは薬剤的に許容可能なそれらの塩を含む徐放性医薬組成物であって、2時間後にラセミ混合物の20重量%以下が放出されるインビトロ溶解プロフィール(37℃、0.1N HCl 1,000mL中において、75rpmでUSPバスケット法を用いて測定した)を示す組成物。
【請求項42】
請求項41に記載の徐放性医薬組成物であって、2時間後にラセミ体のトルペリゾンの30重量%以下が放出されるインビトロ溶解プロフィール(37℃、0.1N HCl 1,000mL中において、75rpmでUSPバスケット法を用いて測定した)を示す組成物。
【請求項43】
請求項42に記載の徐放性医薬組成物であって、4時間後にラセミ体のトルペリゾンの60重量%以下が放出されるインビトロ溶解プロフィール(37℃、0.1N HCl 1,000mL中において、75rpmでUSPバスケット法を用いて測定した)をさらに示す組成物。
【請求項44】
請求項41に記載の徐放性医薬組成物であって、さらに、:
ラセミ体のトルペリゾンまたは薬剤的に許容可能なそれらの塩、および徐放化剤を含むコア;ならびに
コアに付随した徐放性コーティング
を含む組成物。
【請求項45】
請求項44に記載の徐放性医薬組成物であって、患者に対する経口投与において、ラセミ体のトルペリゾンの徐放性を提供し、結果として患者の血漿中でトルペリゾン鏡像異性体が立体選択的配置となる組成物。
【請求項46】
筋弛緩剤の投与による利益がある慢性疾患を治療するための方法であって、請求項1〜32、37〜45、および59〜62に記載の医薬組成物のいずれの投与が含まれる方法。
【請求項47】
請求項46に記載の方法であって、前記慢性疾患が多発性硬化症、繊維筋痛、パーキンソン病、更年期症状、発作によって起こる痙攣、神経性疾患によって起こる痙攣、頸部症候群、腰痛、頸腕症候群、骨粗しょう症、関節炎、軟部組織リウマチおよび慢性多発性関節炎のようなリウマチ性疾患からなる群より選択される方法。
【請求項48】
前記慢性疾患が多発性硬化症である、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記慢性疾患が発作の結果として起こる痙攣である、請求項47に記載の方法。
【請求項50】
前記慢性疾患が神経性疾患の結果として起こる痙攣である、請求項47に記載の方法。
【請求項51】
前記慢性疾患が筋繊維痛である、請求項47に記載の方法。
【請求項52】
前記慢性疾患がパーキンソン病である、請求項47に記載の方法。
【請求項53】
前記慢性疾患が更年期障害である、請求項47に記載の方法。
【請求項54】
前記慢性疾患が頚部症候群である、請求項47に記載の方法。
【請求項55】
前記慢性疾患が頚腕症候群である、請求項47に記載の方法。
【請求項56】
前記慢性疾患が骨粗しょう症である、請求項47に記載の方法。
【請求項57】
前記慢性疾患が関節炎である、請求項47に記載の方法。
【請求項58】
前記慢性疾患が、軟部組織リウマチおよび慢性多発性関節炎のようなリウマチ性疾患である、請求項47に記載の方法。
【請求項59】
患者に対する経口投与を目的としたトルペリゾンの徐放性医薬組成物であって、:
約125〜175mgのラセミ体のトルペリゾンまたは薬剤的に許容可能なそれらの塩、ならびに約9〜12mgのオイドラギットS、約1.5〜2.25mgのオイドラギットRS、および約9〜12mgのオイドラギットLの均質な混合物を含む徐放化剤を含んでなるコア;および
コアに付随した約1〜4mgのオイドラギットLを含む徐放性コーティングであって、経口投与においてラセミ体のトルペリゾンの徐放性を提供するためのものであり、その結果として患者の血漿中でトルペリゾンの鏡像異性体が立体選択的配置となるもの
を含む徐放性医薬組成物。
【請求項60】
請求項59に記載の徐放性の錠剤であって、徐放化剤に約10.5mgのオイドラギットS、約1.88mgのオイドラギットRS、および約105mgのオイドラギットLが含まれ、徐放性コーティングに約2mgのオイドラギットLが含まれる錠剤。
【請求項61】
患者に対するトルペリゾンの経口投与を目的とした徐放性医薬組成物であって、:
約300mgのラセミ体のトルペリゾンまたは薬剤的に許容可能なそれらの塩、ならびに約2.5〜5mgのオイドラギットRS、約20〜22mgのオイドラギットL、および約20〜22mgのオイドラギットSの均質な混合物を含む徐放化剤を含んでなるコア;および
約4〜10mgのオイドラギットRSを含む、コアに付随した徐放性コーティングであって、経口投与においてラセミ体のトルペリゾンの徐放性を提供するためのものであり、その結果として患者の血漿中でトルペリゾンの鏡像異性体が立体選択的配置となるもの
を含む徐放性医薬組成物。
【請求項62】
請求項51に記載の徐放性医薬組成物であって、徐放化剤に約3.75mgのオイドラギットRS、約21mgのオイドラギットL、および約21mgのオイドラギットSが含まれ、徐放性コーティングに約4.5mgのオイドラギットRSが含まれる組成物。
【請求項63】
それを必要とする患者に対するラセミ体のトルペリゾンの経口投与を目的とした徐放性医薬組成物であって、疎水性基質中に分散した陰イオン性ポリマー、陽イオン性ポリマー、およびそれらの誘導体、ならびにそれらの組み合わせからなる群より選択される親水性ポリマーの混合物を含有する薬剤的な担体中に、ラセミ体のトルペリゾンが含まれる組成物。
【請求項64】
請求項63に記載の組成物であって、親水性ポリマーが、メタクリル酸およびメタクリル酸メチルエステルのオイドラギットS陰イオン性コポリマー、ジメチルアミノエチルメタクリレートおよび中性メタクリル酸エステルのオイドラギットE陽イオン性コポリマー、メタクリル酸のオイドラギットRLコポリマー、メタクリル酸のオイドラギットRSコポリマー、メタクリル酸ポリマー、ヒドロキシエチルメタクリル酸ポリマー、およびヒドロキシメチルメタクリル酸ポリマーからなる群より選択される組成物。
【請求項65】
請求項63の組成物であって、疎水性成分が、グリセリンジベヘネート、グリセリンモノステアレート、グリセリンモノステアレートおよびモノパルレイテート(monopal reitate)の混合物、グリセリンモノオレエート、モノ、ジ、およびトリ-グリセリド、グリセリンモノラウレート、パラフィン、白ろう、長鎖カルボン酸、長鎖カルボン酸エステル、ならびに長鎖カルボン酸アルコールからなる群より選択される組成物。
【請求項66】
ラセミ体のトルペリゾンの有効量、疎水性物質、および感水性物質を含む、経口投与を目的としたラセミ体のトルペリゾンの徐放性製剤。
【請求項67】
請求項66に記載の組成物であって、感水性物質が、メタクリル酸およびメタクリル酸メチルエステルのオイドラギットS陰イオン性コポリマー、ジメチルアミノエチルメタクリレートおよび中性メタクリル酸エステルのオイドラギットE陽イオン性コポリマー、メタクリル酸のオイドラギットRLコポリマー、メタクリル酸のオイドラギットRSコポリマー、メタクリル酸ポリマー、ヒドロキシエチルメタクリル酸ポリマー、ならびにヒドロキシメチルメタクリル酸ポリマーからなる群より選択される組成物。
【請求項68】
請求項66に記載の組成物であって、疎水性物質が、グリセリンジベヘネート、グリセリンモノステアレート、グリセリンモノステアレートおよびグリセリンモノパルレイテートの混合物、グリセリンモノオレエート、モノ、ジ、およびトリ-グリセリドの混合物、グリセリンモノラウレート、パラフィン、白ろう、長鎖カルボン酸、長鎖カルボン酸エステル、ならびに長鎖カルボン酸アルコールからなる群より選択される組成物。
【請求項69】
請求項1に記載の徐放性医薬組成物であって、トルペリゾンの鏡像異性体混合物が、少なくとも50重量%のR-トルペリゾン、および10重量%以上のS-トルペリゾンを含有する組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2007−526277(P2007−526277A)
【公表日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−501240(P2007−501240)
【出願日】平成17年3月7日(2005.3.7)
【国際出願番号】PCT/EP2005/002379
【国際公開番号】WO2005/094825
【国際公開日】平成17年10月13日(2005.10.13)
【出願人】(599126822)ザノヒェミア・ファルマツォイティカ・アー・ゲー (1)
【氏名又は名称原語表記】Sanochemia Pharmazeutika AG
【住所又は居所原語表記】1090 Vienna, Boltzmanngasse 11, Austria
【Fターム(参考)】