説明

経口投与用液体トルテロジン組成物

本発明は、溶液中にトルテロジン関連化合物の医薬的に許容される水溶性塩を治療的有効濃度で有する(水を包含する)経口的に送達される剤形の医薬組成物である。その組成物はpH約2〜6であり、さらに甘味剤ならびに組成物のpHにおいて抗微生物的に有効な濃度の抗微生物剤からなる。この組成物は、ムスカリン受容体が仲介する障害、さらに特定すれば過活動膀胱の処置に有用であり、組成物の治療有効量が被験者に経口投与される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は抗ムスカリン薬物の医薬製剤に関し、さらに特定すれば、ムスカリン受容体が仲介する障害の処置のための経口投与に適当なトルテロジンに関する。それはとくにこのような液体剤形に関する。
【背景技術】
【0002】
過活動膀胱は、小児ならびに成人を含め、世界で数百万人が罹患している障害であり、切迫性尿失禁、尿意切迫およびその頻度を特徴とするものである。この障害は、それに罹患した患者における不安および失意の重大な原因となる。過活動膀胱は排尿筋の異常な活動性に起因し、その起源は特発性または神経原性であり得る。
【0003】
特発性の場合は、膀胱に対する感覚インパルスが上昇したとき、不随的に膀胱収縮を生じる排尿筋の不安定性により特徴づけられる。下部尿管感染、萎縮性膣炎、宿便および前立腺肥大のような様々な状態が膀胱に対するようなインパルスを上昇させ、膀胱の収縮を招来する。神経学的機能不全の場合は、排尿筋の反射過敏を特徴とし、たとえば脳血管傷害、アルツハイマー病、中枢神経系の腫瘍、多発性硬化症、二分脊椎、パーキンソン病、脊髄損傷および脊髄縫合不全(spinal dysraphism)に随伴することがある。
【0004】
正常な排泄過程に伴う生理学的収縮のような排尿筋の不随意な収縮は、ムスカリン受容体のアセチルコリン誘導性刺激によって仲介される。ムスカリン受容体アンタゴニスト(抗ムスカリン性物質)は、したがって過活動膀胱の主要な処置方法となっている。過活動膀胱の処置に広く処方されている抗ムスカリン性物質はオキシブチニン、通常はその塩酸塩の形態(「オキシブチニンクロリド」)である。残念ながら、オキシブチニンの有害作用、たとえば口内乾燥、視力調節機能の喪失、動悸および便秘は患者コンプライアンスの低下および処置の中断を招きうる。唾液分泌の低下は口内乾燥の原因となるが、その唾液の分泌はムスカリン受容体によって仲介され、したがって、口内乾燥は抗ムスカリン性物質に共通した有害作用であることが認められている。
【0005】
さらに最近になって導入された薬物トルテロジン(I)は、過活動膀胱の処置のためにとくに開発された抗ムスカリン性物質であり、唾液腺のムスカリン受容体に対する親和性はオキシブチリンの場合の約1/8である。トルテロジンは酒石酸塩として、Pharmacia & Upjohnの商品名Detrol(登録商標)および他の商標名で市販されている。
【化1】

【0006】
トルテロジンの合成は以下の特許それぞれに開示されている。これらは引用により本明細書に導入される。
【特許文献1】米国特許5,382,600。
【特許文献2】米国特許5,559,269。
【特許文献3】米国特許5,686,464。
【特許文献4】米国特許5,922,914。
【0007】
トルテロジンは、1日2回投与が適当な即時放出製剤(Detrol−登録商標−錠)として、および1日1回投与が適当な長時間放出製剤(Detrol−登録商標−LAカプセル)として市販されている。たとえばPhysician's Desk Reference, 57版 (2003), 2735-2740頁参照。ある種の被験者とくに小児のみでなく多くの成人も、しばしば錠剤またはカプセルの嚥下困難を示すことがある。したがって、このような被験者には経口投与することができる液体のトルテロジン組成物が望ましい。
【0008】
錠剤およびカプセルは、通常、味覚および口内の他の感覚と有意な相互作用を示すことなく嚥下される。これに反して、液体製剤ではこのような感覚は回避されず、経口液体製剤の開発に際しては味覚および収斂性のような因子が考慮されなければならない。不快な味覚および/または収斂性がある組成物はとくに小児の場合、患者にノンコンプライアンスおよび中断を招来することがある。
【0009】
液体製剤に付随する他の問題は、それらの物理学的および化学的、両者における不安定性の可能性である。トルテロジンは中性ないしアルカリ性のpHレベルで化学的に不安定である。不安定性は微生物の活動からも生じ、したがって通常はこのような製剤には抗微生物剤の添加が必要である。多くの抗微生物剤はトルテロジンの化学的安定性が最大になる低いpHレベルで良好に機能しない。
【0010】
オキシブチニン塩酸塩は経口液体製剤としてたとえばAlza Corp.からDitropan(登録商標)シロップとして市販されている。この製剤はオキシブチニン塩酸塩、スクロース、ソルビトール、グリセリン、クエン酸、クエン酸ナトリウム、メチルパラベン、着色剤および矯味矯臭剤の水性溶液である。 HYPERLINK “http://www. orthomcneil.com/” http://www. orthomcneil.com/ products/pi/Lg%200Ditropan%20PI.pdf.参照。
【0011】
Distopan(登録商標)シロップおよびジェネリック医薬品のオキシブチニンクロリドの経口液体製剤は上述のオキシブチニンの有害作用を克服してはおらず、さらに、味覚試験において良好な触感を示さない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、本発明の目的は、ムスカリン受容体が仲介する障害とくに過活動膀胱の処置のために、液体オキシブチニンクロリド製剤より優れた副作用プロフィルを有する、経口で送達可能な液体組成物を提供することにある。
【0013】
本発明の更なる目的は市販されている液体オキシブチニンクロリド製剤より、たとえば味覚および/または収斂性の点で改良された触感を有するトルテロジンの、経口で送達可能な液体製剤を提供することにある。
【0014】
さらに、本発明の目的は、良好な安定性および微生物の活動に対する優れた抵抗性を示す、経口で送達可能な液体製剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、溶液中にトルテロジン関連化合物の医薬的に許容される水溶性塩を治療有効濃度で有する水を包含する組成物であって、経口的に送達可能な液体の形態の医薬組成物を提供する。この組成物は約2〜約6のpHを有し、さらに甘味剤およびその組成物のpHにおいて抗微生物的に有効な濃度の抗微生物剤からなる。
【0016】
このような組成物は、上掲の1または2以上の目的を満足させ、以下に開示されるような利益または利点を提供することが明らかになった。
【0017】
「トルテロジン関連化合物」の語は、本明細書においてはトルテロジン、 (R)− N,N−ジイソプロピル−3−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−3−フェニルプロパンアミン、その (S)−エナンチオマーもしくはそのラセミ混合物;抗ムスカリン活性を示すその代謝物、たとえば (R)−N,N−ジイソプロピル−3−(2−ヒドロキシ−5−ヒドロキシメチルフェニル)−3−フェニルプロパンアミン(以下、「ヒドロキシトルテロジン」と呼ぶ)、その(S)−エナンチオマーもしくはそのラセミ混合物;またはトルテロジン、ヒドロキシトルテロジン、それらの(S)−エナンチオーマーもしくはそれらのラセミ混合物のプロドラッグである。
【0018】
「水溶性塩」とは、本明細書においては組成物中に治療的に有効な濃度で溶液中に存在するために十分な水溶解度を有する塩を意味する。通常、塩は水に少なくとも約1mg/ mL、好ましくは少なくとも約10mg/mLの溶解度を有する。
【0019】
組成物中におけるトルテロジン関連化合物の「治療的に有効な濃度」とは、組成物の適当な投与容量、好ましくは約20 mL以下で治療的に有効量の化合物が存在するような濃度である。化合物は通常、約0.01〜約1mg/mLの濃度で存在する。
【0020】
トルテロジン関連化合物の「治療有効量」とは、確立された投与量レジメンの一部として経口投与された場合、被験者に治療的応答を誘発するのに十分な量を意味する。化合物の治療有効量は通常、1日1〜2回投与では、約0.2〜約5mg、好ましくは約1〜約2mgである。
【0021】
本発明はさらに、明細書に記載の組成物の治療有効量を被験者に経口投与することによる、被験者におけるムスカリン受容体が仲介する障害、さらに特定すれば過活動膀胱の処置方法を提供する。
【0022】
本発明はなおさらに、ムスカリン受容体が仲介する障害さらに特定的には過活動膀胱の処置のための医薬の製造において、明細書に記載の組成物を使用する方法を提供する。
【0023】
図1は実施例15に記載したように実施例5の組成物の口内における触感をコンパレーター組成物と比較したデータを示すグラフである。
【0024】
本発明の組成物は、溶液中に活性成分としてトルテロジン関連化合物の水溶性塩を含有する、経口的に送達可能な水性の液体である。化合物は通常、組成物全体として約0.01〜約1mg/mL、好ましくは約0.05〜約0.8mg/mL、最も好ましくは約0.1〜約0.4mg/mLの濃度で存在させる。とくに有用な例示的濃度は約0.2mg/mLであり、5mLの投与容量中約1mgの化合物または10 mLの投与容量中約2mgの化合物の単位用量を提供する。本明細書における濃度および投与量は、とくに他の指定がない限り、遊離塩基の同等物ではなく塩たとえばトルテロジンクエン酸塩の量を表す。
【0025】
一実施態様においては、化合物はヒドロキシトルテロジンである。
【0026】
現時点において好ましい実施態様では、化合物はトルテロジンである。
【0027】
トルテロジン関連化合物の適当な塩は、それらがここで挙げた溶解度の基準に合致する限り、とくに脂肪族C7-24モノおよびジカルボン酸たとえばヘプタン酸、カプロン酸およびラウリン酸;C2-4アルカンジスルホン酸たとえば1,2−エタンジスルホン酸(エジシル酸);C11-27ナフチル酸誘導体たとえば4,4'−メチレンビス(3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸)(パモ酸)、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸(キシナフォ酸)および2−ヒドロキシ−1−ナフトエ酸、マレイン酸、フマル酸、安息香酸、酒石酸、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、リン酸、硝酸、クエン酸、メタンスルホン酸(メシル酸)等より選択される酸から調製される塩が含まれる。
【0028】
とくに好ましい塩はトルテロジンの酒石酸塩である。通常、L−酒石酸塩が使用される。
【0029】
組成物は約2〜約6、好ましくは約3〜約5、さらに好ましくは約3.5〜約4.5、たとえば約4のpHを有する。このようなレベルにpHを調整できる任意の医薬的に許容される手段を使用することができる。たとえば、医薬的に許容される酸たとえば酢酸、クエン酸、フマル酸、塩酸、乳酸もしくは硝酸等、またはそれらの混合物のような組成物を添加することができる。本発明の一部の組成物ではとくにその目的でのpH調整物質を含ませることなく所望の範囲のpHを有しうることを理解すべきである。しかしながら、通常は所望のpHを達成するために、組成物中に酸性の緩衝系を存在させる。
【0030】
酸性の緩衝系は酸性物質および緩衝剤からなる。適当な酸性物質は本技術分野の熟練者に知られているように、たとえば酢酸、クエン酸、フマール酸、塩酸、乳酸および硝酸等ならびにそれらの混合物が包含される。適当な緩衝剤も本技術分野の熟練者に知られているように、たとえばメタリン酸カリウム、リン酸カリウム、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム等、およびそれらの混合物が包含される。
【0031】
好ましい実施態様においては、酸性の緩衝系は酸性の酸および同じ酸のアルカリ金属塩からなる。クエン酸およびクエン酸ナトリウムからなる酸性緩衝系がとくに好ましい。たとえば、クエン酸は約3〜約10mg/mL、好ましくは約4〜約7mg/mL、たとえば約5mg/mLの濃度で、クエン酸ナトリウムは約3〜約8mg/mL、好ましくは約4〜約7mg/mL、たとえば約6mg/mLの濃度で存在させることができる。
【0032】
抗微生物剤は組成物のpHにおいて有効な抗微生物剤が選択され、その薬物の抗微生物的に有効な量を存在させる。適当な薬物は、たとえばソルビン酸および安息香酸、ならびにそれらの塩、とくにナトリウムおよびカリウム塩、p−ヒドロキシ安息香酸エステルたとえばメチルパラベンおよびそれらの混合物から選択される。適当な濃度は、試験により本技術分野の熟練者が、たとえば安息香酸ナトリウムについて実施例16に例示するように確立させることが可能であり、一般的には、その薬物に依存して約0.1〜約5mg/mLであることが見出される。
【0033】
好ましい抗微生物剤の例は安息香酸ナトリウムであり、組成物中に少なくとも約0.6mg/mL、好ましくは少なくとも約1mg/mLの濃度で存在させる。例示的には、安息香酸ナトリウムの濃度は約0.6〜約2mg/mL、たとえば約0.7〜約1.5mg/mLである。
【0034】
組成物はまた、甘味剤(スィートナー)からなる。任意の医薬的に許容される甘味剤、たとえば天然および合成糖類ならびに他の合成甘味剤が使用できる。
【0035】
適当な糖類にはたとえば、グルコース、フルクトース、スクロース、キシリトール、タガトース、スクラロース、マルチトール、イソマルツロース、Isomalt(登録商標)、水素化イソマルツロース)、ラクチトール、ソルビトール、マンニトール、トレハロース、マルトデキストリン、ポリデキストロース等が包含される。他の甘味剤にはたとえばグリセリン、エリスリトール、マルトール、アセスルフェームおよびその塩たとえばアセスルフェームカリウム、アリテーム、アスパルテーム、ネオテーム、シクラメート、サッカリンおよびその塩たとえばサッカリンナトリウム、ネオヘスペリジンジヒドロカルコン、ステビオサイド、サウマチン等が包含される。甘味剤は、粗製または精製生成物の型で、たとえばデンプン加水分解物、マルチトールシロップ、高フルクトースコーンシロップ等、商標製品、たとえばFlavors of North AmericaのSweet Am(登録商標)液およびSweet Am(登録商標)末、Virginia DareのProSweet(登録商標)、SPI PolyolsのMalti−sweet(登録商標)およびSorbo(登録商標)ならびにCorn Products InternationalのInvertose(登録商標)を使用することができる。甘味剤はそれ単独でまたは2種もしくはそれ以上の組み合わせとして使用できる。
【0036】
様々な甘味剤の適当な濃度は、刊行された情報、製造業者のデータシート等に基づき本技術分野の熟練者によりおよびルーチンの試験法により選択される。たとえば、Sweet Am(登録商標)液もしくは粉末またはそれらと実質的に均等な製品は、約0.1〜約50mg/mL、好ましくは約0.1〜約5mg/mL、さらに好ましくは約0.1〜約1mg/mL、なおさらに好ましくは約0.2〜約0.8mg/mL、最も好ましくは約0.3〜約0.6mg/mLを存在させる。たとえばフルクトースは約200〜約300mg/mL、好ましくは約240〜約290mg/mL、最も好ましくは約250〜約280mg/mLを存在させることができる。たとえばグルコース(デキストロース)の場合は、約5〜約300mg/mL、好ましくは約5〜約50mg/mL、さらに好ましくは約10〜約30mg/mL、最も好ましくは約15〜約25mg/mLを存在させることができる。たとえばソルビトールの場合は、約20〜約300mg/mL、好ましくは約20〜約80mg/mL、さらに好ましくは約30〜約70mg/mL、最も好ましくは約40〜約60mg/mLを存在させることができる。本明細書に示した範囲外の濃度も使用できる。
【0037】
好ましい実施態様においては、組成物はまた矯味矯臭剤(フレバラント)からなる。「矯味矯臭剤」は、本明細書では組成物の味覚または芳香を向上させることができる物質である。適当な天然または合成の矯味矯臭剤は標準的な参考書たとえばFenaroli's Handbook of Flavor Ingredients, 3版(1995)から選択することができる。適当な天然の矯味矯臭剤の非限定的な例は、それらの一部は合成剤またはその組み合わせに容易にシミュレート可能であり、アーモンド、アニス、リンゴ、アプリコット、ベルガモット、ブラックベリー、クロフサスグリ、ブルーベリー、カカオ、カラメル、チェリー、シナモン、クローブ、コーヒー、コエンドロ、クランベリー、クミン、イノンド、ユーカリ、ウイキョウ、イチジク、ジンジャー、グレープ、グレープフルーツ、グアヴァ、ホップ、レモン、カンゾウ、ライム、モルト、マンデリン、モラッセ、ナツメグ、オレンジ、ピーチ、ペア、ペパーミント、パインアップル、ラスベリー、ローズ、スペアミント、ストローベリー、タンゲリン、ティー、バニラ、冬緑油等が包含される。また、組成物に主として、とくに小児の使用が意図される場合には、フルーツフレーバーベースの矯味矯臭剤に混合されたトゥッティ−フルーツまたはバブルガムフレーバーも有用である。現時点で好ましい矯味矯臭剤には、アニス、シナモン、カカオ、オレンジ、ペパーミント、チェリー(とくに野生チェリー)、グレープ、バブルガムおよびバニラが包含される。野生チェリーがとくに好ましい。矯味矯臭剤は単独でも、または2種もしくはそれ以上の混合物としても使用することができる。
【0038】
通常、矯味矯臭剤または矯味矯臭剤からなるオイルもしくはエッセンスが添加される場合には、組成物中に約0.1〜約5mg/mL、好ましくは約0.2〜約3mg/mL、最も好ましくは約0.5〜約2mg/mLの濃度で存在させる。
【0039】
組成物にはさらに場合によって、着色剤が添加される。適当な着色剤には、たとえばF D & C Red No.3, F D & C Red No.20, F D & C Red No.40, F D & C Yellow No. 6, F D & C Blue No.2, F D & C Green No.5, F D & C Orange No.5, カラメル、酸化鉄およびそれらの混合物が包含される。たとえば、F D & C Red # 40は組成物中0〜約3mg/mL、好ましくは0〜約2mg/mL、最も好ましくは0〜約1mg/mLの濃度で存在させる。
【0040】
本発明の組成物は、ムスカリン受容体が仲介する障害、たとえば過活動膀胱を含む泌尿器障害の処置に使用することができる。すなわち、その組成物の治療有効量を、それを必要とする被験者に経口投与することによって使用される。この組成物は他の障害たとえば喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、アレルギー性鼻炎および風邪による鼻漏の処置に使用することも意図される。
【0041】
実施例
実施例1
表1に掲げる組成物は以下に記載のようにして製造された。この実施例および以下の実施例においては、明確化および比較の目的で、実際には大容量を有していても総容量が1
mLを有するように記載し、他の容量は成分量に比例して変化させるようにしたことを理解すべきである。水からなる成分量は固体のみのベースではなく水を含めた全重量として表す。
【表1】

【0042】
組成物を、トルテロジン塩および水の一部を容量フラスコに加え、ついでトルテロジンの塩が完全に溶解するまで攪拌し、製造した。次に、フラスコにクエン酸、クエン酸ナトリウムおよび安息香酸ナトリウムを加えて、溶解させた。野生チェリーおよびSweet Am(登録商標)を続いてフラスコに加え、同様に混合した。次にスクロースおよびソルビトール溶液をフラスコに加えて完全に混合した。最後にフラスコに水を混合しながら加え、pH 4.0の最終組成物を得た。
【0043】
実施例2
表2に掲げた組成物を実施例1のようにして製造した。この組成物のpHは 4.0であった。
【表2】

【0044】
実施例3
表3に掲げた組成物を実施例1のようにして製造した。この組成物のpHは 4.0であった。
【表3】

【0045】
実施例4
表4に掲げた組成物を実施例1のようにして製造した。この組成物のpHは 4.0であった。
【表4】

【0046】
実施例5
表5に掲げた組成物を実施例1のようにして製造した。この組成物のpHは 4.0であった。
【表5】

【0047】
実施例6
表6に掲げた組成物を実施例1のようにして製造した。この組成物のpHは 4.0であった。
【表6】

【0048】
実施例7
表7に掲げた組成物を実施例1のようにして製造した。この組成物のpHは 4.0であった。
【表7】

【0049】
実施例8
表8に掲げた組成物を実施例1のようにして製造した。この組成物のpHは 4.0であった。
【表8】

【0050】
実施例9
表9に掲げた組成物を実施例1のようにして製造した。この組成物のpHは 4.0であった。
【表9】

【0051】
実施例10
表10に掲げた組成物を実施例1のようにして製造した。この組成物のpHは 4.0であった。
【表10】

【0052】
実施例11
表11に掲げた組成物を実施例1のようにして製造した。この組成物のpHは 4.0であった。
【表11】

【0053】
実施例12
表12に掲げた組成物を実施例1のようにして製造した。この組成物のpHは 4.0であった。
【表12】

【0054】
実施例13
表13に掲げた組成物を実施例1のようにして製造した。この組成物のpHは 4.0であった。
【表13】

【0055】
実施例14
表14に掲げた組成物を実施例1のようにして製造した。この組成物のpHは 4.0であった。
【表14】

【0056】
実施例15
本発明の実施例5の組成物について、口触りの良さを以下のコンパレーターとともに評価した。すなわち、Ditropan(登録商標)シロップ(Alza Corp)、ジェネリック医薬品のオキシブチニンクロライドシロップ(Morton Grove Pharmaceuticals, Inc.)、小児用Tylenol(登録商標)風邪および咳止めシロップ(McNeil)、ならびに小児用Benadry(登録商標)アレルギー液(Warner-Lambert)である。Ditropan(登録商標)および一般的オキシブチニンクロライドコンパレーターは、過活動膀胱の液体医薬による現在の技術水準として包含させた。Tylenol(登録商標)およびBenadry(登録商標)コンパレーターは、他の目的で使用されているが高度に許容される口触りの良さで知られている液体医薬の例として包含させた。
【0057】
各組成物のサンプルは訓練されたパネルによって、Profile Attribute Analysis(PAA)法を使用して評価された。PAAでは再現性の高いデータが得られる。
【0058】
訓練されたパネルは、プロフィル属性を通じて完全な感覚経験を数的に記載する。これらの属性は、限定された特徴のセットであり、それらが適切に選択され、定義された場合には、記述情報はほとんど失われることなくサンプルの感覚的特徴の完全な客観的記述を提供する。付加的な詳細はパネルのコメントによって提供され、これらは属性データとともに保存される。PAAデータは自動化データ処理システムに効率的に保存され、統計的分析およびデータの総合化が容易になる。
【0059】
食品または飲料の感覚または知覚的特性は多変性である。それは、サンプルを識別する方法は様々であることを意味する。これらの知覚は、総合的および分析的の2つのセットにグループ分けすることができる。
【0060】
総合的知覚は、食品または飲料の全体的なアロマおよびフレーバーの印象として測定さ
れる。総合的知覚属性、たとえば「バランス」および「充満感」は製品記述の必須部分である。これらの属性はサンプル間を識別するのみでなく、製品の消費者による記述と密接に相関する。その他の総合的測定値、たとえばフレーバーの強度、複雑さ、インパクトおよび後味はサンプル間の識別に必須である。
【0061】
分析的知覚には3つの化学的感覚、すなわち臭覚、味覚および口内感触がある。これらの3つの化学的感覚は、強度、質および時間の条件で識別することができる。視覚および触覚もサンプル間を識別するデータを提供し,化学的感覚と同様に1より大きい知覚ディメンションを有することができる。
【0062】
PAAでは、各感覚属性を7点のスケールで測定する(1〜7)。これらの測定値は、対照からの差および標準に対する比較を表す。隣接する点と比べたスケール上の各点はパネリストが反復分析での信頼をもって検出できる差を表す。スケール上での低いレイティングは0または弱い表現を示し、高いレイティングは属性の強力な表現を示す。
【0063】
特定の範囲の製品に重要な特定の属性を同定するためには、訓練されたパネルは最初にオリエンテーションのための期間を保有する。パネルには実際の試験に包含される感覚の差の範囲を網羅する広範囲の製品が提供される。パネリストは、これらの製品の感覚的性質を、記述的分析を用いて特徴づける。この特徴づけから、製品の範囲を完全に記述するために必要なプロフィル属性が選択される。
【0064】
以下の属性を包含させることが可能である。
「粘度」は、スプーンから舌の上に液体を落とすために必要な力を評価するための属性である。7点制のスケールで、1は水(「薄い」)から甘味をつけたコンデンスミルク(「濃い」)の7までを意味する。
「バランス」は複合フレーバーにおける特徴的注釈による配合度の評価を意味する。
「充満感」はフレーバーの本体または複合の程度を意味する。
「芳香性」とは臭覚領域で識別されるフレーバーの強度およびタイプを評価する属性を意味する。
「甘味」とは、甘さの基本的味覚の強度を評価する属性を意味する。参照標準はスクロース溶液である。
「酸っぱさ」とは、酸味の基本的味覚の強度を評価する属性を意味する。参照標準はクエン酸溶液である。
「苦味」とは、苦味の基本的味覚の強度を評価する属性である。参照標準は、カフェイン溶液である。
「口内刺激」とは、三叉神経作用たとえば麻痺、舌を刺すような痛みおよび喉の灼熱感、すなわち口内および喉の刺激作用を評価する属性を意味する。
「口内感」とはその他の三叉神経作用たとえば合成甘味料、粉っぽい口内感、収斂性、または清涼感を評価する属性を意味する。
「その他」とは、前述の属性のいずれによっても評価されない基本味覚または芳香(多くの場合、オフ−フレーバー)を含む属性を意味する。これらには、硫黄様、ワックス様、緑茎様、木質様またはパラベン様の芳香が包含される。
「後味」とは、嚥下後特定の時間間隔における選択された属性の測定値である。後味には基本的な味覚、たとえば甘味および苦味、オフ−フレーバーおよびアロマを包含することができる。
【0065】
各パネルセッションには4〜5名のパネリストが参加して、サンプルを以下のプロトコールにより評価した。各パネリストに各試験製品2mLが与えられた。2mL容量を約10秒間口に含み、ついで口から吐き出した。初期フレーバーの評価は口に含んだ間に実施した。後味の評価は間隔を置いて5回、吐き出した直後、1、3、5および10分後に行った。パネリストは、サンプルの間に口を漱ぐため、流水および無塩クラッカーを用いた。サンプル間には15分のウォッシュアウト期間を設けた。各セッションでは3種のサンプルを味わい、パネリストは1日に2つより多くのパネルセッションには参加しなかった。
【0066】
試験の結果は本発明の組成物(実施例5)ならびに二次元の連続感覚に対するコンパレーター、すなわち、初期のフレーバー係数を表す一つのディメンション(図1の水平軸を示す)および後味係数を表す他のディメンション(図1の垂直軸を示す)の間の差を可視化した図1にまとめた。これらの係数は、低い係数が良好なフレーバーの質を表す個々の属性評点に由来したものである。
【0067】
図1に示すように本発明の組成物は、Ditropan(登録商標)およびジェネリック医薬品のオキシブチニンクロライドシロップと比較し、初期のフレーバー指数および後味指数の両者で優れたフレーバーの質を示した。優れた初期のフレーバーは、これらのコンパレーターより「苦味」、「口内刺激」および「その他」の属性において低い評点を有し、「バランス」および「アロマ」の属性において高い評点を有する本発明の組成物から生じたものである。
優れた後味は、これらのコンパレーターよりも、「苦味」、「口内刺激」および「その他」の属性において低い評点を有する本発明の組成物から生じたものである。
【0068】
本発明の組成物はまた初期のフレーバーの質および優れた後味の点で、少なくともTylenol(登録商標)およびBenadry(登録商標)のコンパレーターに匹敵する。
【0069】
これらの結果は、本発明の組成物に驚くべき好ましい口触りの良さを表わし、これは本技術における顕著な進歩、とくに高い患者コンプライアンスの可能性を有する過活動膀胱の有効な処置を提供することを示している。
【0070】
実施例15に使用された溶液よりも濃い濃度のトルテロジンL−酒石酸塩は苦い味に加えて、口内粘膜に収斂作用を有する。収斂性は苦味よりも、甘味剤の添加によって遮蔽するのが困難である。トルテロジンL−酒石酸の水溶液における収斂性は濃度約1.0mg/mLで辛じて許容できることが分かり、したがって組成物中のその濃度は約1mg/mL、好ましくは約0.8mg/mL、最も好ましくは約0.4mg/mLを超えてはならないと考えられる。しかしながら、トルテロジンはきわめて強力な薬物であるから、このような低濃度でも、比較的小容量の液体中においてトルテロジンの治療的有効量を投与することが可能である。
【0071】
実施例16
トルテロジンは、アルカリ性のpHでトルテロジン塩の水溶液中で不安定であることが見出され、その至適安定性をpH約4に有する。大部分の医薬的に許容される抗菌物質は酸性条件では完全な有効性を示さないので、試験を各組成物について、実施例4、5および6の場合と同様に、ただし安息香酸量のレベルを変えながら、許容される抗菌作用を示すのに必要な抗菌化合物の量を決定するために実施した。
【0072】
抗微生物有効性試験(AET)の結果を表15〜26に示した。この試験は米国薬局方 (2000), 24版(USP 24)、試験51, 抗微生物試験:およびEP 5.1.3, 抗菌防腐試験の有効性に従って実施した。抗菌物質の量を変動させることにより抗菌物質、この場合は安息香酸ナトリウムで組成物の抗菌性が消失する最小濃度を決定した。表15〜17にはAETの結果(合格または不合格)を実施例4、5および6に修正を加えた組成物について示し、表18〜26には各組成物についての微生物カウント(対数で表す)の低下を示した。
【0073】
【表15】

【0074】
【表16】

【0075】
【表17】

【0076】
【表18】

【0077】
【表19】

【0078】
【表20】

【0079】
【表21】

【0080】
【表22】

【0081】
【表23】

【0082】
【表24】

【0083】
【表25】

【0084】
【表26】

【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】実施例15に記載したように実施例5の組成物の味の良さをコンパレーター組成物と比較したデータを示すグラフ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶液中にトルテロジン関連化合物の医薬的に許容できる水溶性塩を治療的有効濃度で有する水を含み、約2〜約6、好ましくは約3〜約5、さらに好ましくは約3.5〜約4.5のpHを有し、そして更に甘味剤および組成物のpHにおいて抗微生物的に有効な濃度で抗微生物剤を含む、経口的に送達可能な液体の剤形である医薬組成物。
【請求項2】
塩は、少なくとも約1mg/mL、好ましくは少なくとも約10mg/mLの水に対する溶解度を有する請求項1記載の組成物。
【請求項3】
トルテロジン関連化合物はヒドロキシトルテロジンである請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
トルテロジン関連化合物はトルテロジンである請求項1または2に記載の組成物。
【請求項5】
トルテロジンの塩はトルテロジン酒石酸塩である請求項4記載の組成物。
【請求項6】
トルテロジン酒石酸塩の濃度は約0.01〜約1mg/mL、好ましくは約0.05〜約0.8mg/mL、さらに好ましくは約0.1〜約0.4mg/mLである請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
約3〜約5、好ましくは約3.5〜約4.5のpHを達成するのに有効な酸性緩衝系を含む請求項1〜6のいずれかに記載の組成物。
【請求項8】
酸性緩衝系はクエン酸およびクエン酸ナトリウムからなる請求項7記載の組成物。
【請求項9】
抗微生物剤は、安息香酸ナトリウムである請求項1〜8のいずれかに記載の組成物。
【請求項10】
安息香酸ナトリウムは、組成物中約0.6〜約2mg/mL、好ましくは約0.7〜約1.5mg/mLの濃度で存在させる請求項9記載の組成物。
【請求項11】
甘味剤はグルコース、フルクトース、スクロース、キシリトール、タガトース、スクラロース、マルチトール、イソマルツロース、水素化イソマルツロース、ラクチトール、ソルビトール、マンニトール、トレハロース、ポリデキストロース、グリセリン、エリスリトール、アセスルフェームおよびその塩、アリテーム、アスパルテーム、ネオテーム、シクラメート、サッカリンおよびその塩、ネオヘスペリジンジヒドロカルコン、ステビオサイド、タウマチン、水素化デンプン加水分解物、高フルクトースコーンシロップならびにそれらの組み合わせからなる群より選択される請求項1〜10のいずれかに記載の組成物。
【請求項12】
甘味剤はSweet Am(登録商標)またはそれと実質的に同等な製品からなる請求項1〜11のいずれかに記載の組成物。
【請求項13】
さらに矯味矯臭剤を含む請求項1〜12のいずれかに記載の組成物。
【請求項14】
組成物の治療有効投与量を患者に経口投与することによる患者のムスカリン受容体が仲介する障害の処置のための医薬の製造における請求項1〜13のいずれかに記載する組成物の使用。
【請求項15】
障害は過活動膀胱である請求項14記載の使用。
【請求項16】
投与量は約20mLを超えない請求項14記載の使用。
【請求項17】
組成物はトルテロジン酒石酸塩を含み、トルテロジンクエン酸塩約0.2〜約5mg、好ましくは約1〜約2mgが送達される請求項14記載の使用。
【請求項18】
組成物は1日2回投与される請求項14記載の使用。

【図1】
image rotate


【公表番号】特表2006−500381(P2006−500381A)
【公表日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−531469(P2004−531469)
【出願日】平成15年8月25日(2003.8.25)
【国際出願番号】PCT/US2003/026675
【国際公開番号】WO2004/019925
【国際公開日】平成16年3月11日(2004.3.11)
【出願人】(502427323)ファルマシア・コーポレーション (67)
【Fターム(参考)】