説明

経口鼻炎治療用錠剤

【課題】本発明は崩壊性及び溶出性が良好なケトチフェンフマル酸塩を含有する錠剤を提供することを課題とする。
【解決手段】ケトチフェンフマル酸塩、及び非イオン性崩壊剤を含有し、陰イオン性崩壊剤を含有しないことを特徴とする錠剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケトチフェンフマル酸塩を含有する錠剤に関し、より詳しくは該錠剤からのケトチフェンフマル酸塩の溶出改善に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品を錠剤として製造する場合、錠剤からの有効成分の速い溶出が求められる。一般的には錠剤の崩壊と有効成分の溶出は相関関係にあるため、崩壊剤を配合して錠剤の崩壊を速めることで有効成分の溶出を速めることが行われている。また日本薬局方によれば、例えば素錠の場合、その崩壊時間は30分以内であることが適合とされており、この値を達成するためにも崩壊剤の添加が必要となることが多い。
【0003】
一方、ケトチフェンは、抗ヒスタミン作用、及び抗炎症作用等を有する抗アレルギー薬であるが、ケトチフェンフマル酸塩が、代表的な崩壊剤であるクロスカルメロースナトリウムに吸着することが知られている(非特許文献1参照)。しかしながら、ケトチフェンフマル酸塩を含有する錠剤の提供が望まれている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】International J. of Pharmaceutics, 149(1997) 115-121
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ケトチフェンフマル酸塩を含有する錠剤において、前記のクロスカルメロースナトリウムを配合するとケトチフェンフマル酸塩の溶出性が著しく低下した。溶出性を改善する技術としては、微粉化による方法や界面活性剤を使用する方法、固体分散体にする方法などが知られているが、ケトチフェンフマル酸塩はクロスカルメロースナトリウムに吸着するため、このような手法では改善は期待できない。
【0006】
従って、本発明は崩壊性及び溶出性が良好なケトチフェンフマル酸塩を含有する錠剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討した結果、ケトチフェンフマル酸塩を含有する錠剤にクロスカルメロースナトリウム等の陰イオン性崩壊剤を配合せずに、非イオン性崩壊剤を配合することにより、錠剤の崩壊性を保持しつつ、ケトチフェンフマル酸塩が速やかに溶出することを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち本発明は、
(1)ケトチフェンフマル酸塩、及び非イオン性崩壊剤を含有し、陰イオン性崩壊剤を含有しないことを特徴とする錠剤。
(2)非イオン性崩壊剤が低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスポビドン、及びカルボキシメチルスターチナトリウムから選ばれる1種以上である(1)に記載の錠剤。
である。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、ケトチフェンフマル酸塩を含有する錠剤の崩壊性を保持しつつ、ケトチフェンフマル酸塩の充分な溶出性を確保することが可能になった。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施例1〜3及び比較例1の錠剤のケトチフェンフマル酸塩の溶出率を示したグラフであり、縦軸に平均溶出率(%)、横軸は溶出液採取時間(分)を示した。
【図2】実施例4,5及び比較例2の錠剤のケトチフェンフマル酸塩の溶出率を示したグラフであり、縦軸に平均溶出率(%)、横軸は溶出液採取時間(分)を示した。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明で用いるケトチフェンフマル酸塩は一般に市販されているものを用いることができる。ケトチフェンフマル酸塩の配合量は、その配合目的によって異なる。一般的にはケトチフェンとして1日2mg程度が必要なので、固形製剤の種類や投与回数等によって固形製剤中の配合割合を調整すれば良い。
【0012】
本発明において、非イオン性崩壊剤とは、例えば低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスポビドン、カルボキシメチルスターチナトリウムが挙げられる。本発明では、非イオン性崩壊剤を1%〜25%配合することが好ましく、5〜25%がより好ましいが、錠剤に必要とされる崩壊性や他の配合成分等を勘案して適宜決定することができる。
【0013】
陰イオン性崩壊剤とは、例えばクロスカルメロースナトリウム、カルメロースが挙げられる。本発明では、錠剤からのフマル酸ケトチフェンの溶出性が低下するため、陰イオン性崩壊剤を含有しないことを特徴としている。
【0014】
非イオン性崩壊剤は市販品を用いることができ、クロスポビドンとしては、例えばコリドンCL(商品名、BASFジャパン)、カルボキシメチルスターチナトリウムとしては、例えばプリモジェル(商品名、五協産業)、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースとしては、例えばL−HPC(商品名、信越化学工業)が挙げられる。
【0015】
本発明の錠剤は、ケトチフェンフマル酸塩,非イオン性崩壊剤を配合し、必要に応じて他の公知の添加剤、例えば、賦形剤、結合剤、滑沢剤、抗酸化剤、コーティング剤、着色剤、矯味矯臭剤、界面活性剤、可塑剤等を混合して常法により、錠剤として提供することができる。
【0016】
錠剤は公知の方法で製造することができるが、例えば配合する成分を混合してそのまま打錠する直打法、配合する成分の造粒物を製造してからその造粒物を打錠する方法が挙げられる。造粒物の製造法としては例えば、流動層造粒、練合造粒、撹拌造粒等の湿式造粒法や乾式造粒法が挙げられる。
【実施例】
【0017】
以下に実施例、比較例、及び試験例を挙げ、本発明を更に詳細に説明する。
【0018】
実施例1
ケトチフェンフマル酸塩0.69g、塩酸プソイドエフェドリン30g、無水カフェイン25g、乳糖86.8g、結晶セルロース61.8g、ヒドロキシプロピルセルロース17.5g、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L−HPC−LH21)60g、軽質無水ケイ酸2.1gを混合し、精製水を加えて撹拌造粒法により造粒した後、乾燥した。乾燥した粒子にステアリン酸マグネシウム1.2g及びクロスポビドン15gを添加、混合し、打錠用粉体を得た。
打錠は、ロータリー式打錠機(コレクト12HUK、菊水製作所)を用いて圧縮圧は7kNとし、1錠あたり300mgで行い、直径9.0mmの錠剤を得た。本錠剤の処方を表1に示す。
【0019】
実施例2
ケトチフェンフマル酸塩0.69g、塩酸プソイドエフェドリン30g、無水カフェイン25g、乳糖86.8g、結晶セルロース61.8g、ヒドロキシプロピルセルロース17.5g、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L−HPC−LH21)60g、軽質無水ケイ酸2.1gを混合し、精製水を加えて撹拌造粒法により造粒した後、乾燥した。乾燥した粒子にステアリン酸マグネシウム1.2g及び低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L−HPC−LH21)15gを添加、混合し、打錠用粉体を得た。
打錠は、ロータリー式打錠機(コレクト12HUK、菊水製作所)を用いて圧縮圧は7kNとし、1錠あたり300mgで行い、直径9.0mmの錠剤を得た。本錠剤の処方を表1に示す。
【0020】
実施例3
ケトチフェンフマル酸塩0.69g、塩酸プソイドエフェドリン30g、無水カフェイン25g、乳糖86.8g、結晶セルロース61.8g、ヒドロキシプロピルセルロース17.5g、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L−HPC−LH21)60g、軽質無水ケイ酸2.1gを混合し、精製水を加えて撹拌造粒法により造粒した後、乾燥した。乾燥した粒子にステアリン酸マグネシウム1.2g及び低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L−HPC−LH31)15gを添加、混合し、打錠用粉体を得た。
打錠は、ロータリー式打錠機(コレクト12HUK、菊水製作所)を用いて圧縮圧は7kNとし、1錠あたり300mgで行い、直径9.0mmの錠剤を得た。本錠剤の処方を表1に示す。
【0021】
実施例4
ケトチフェンフマル酸塩0.69g、塩酸プソイドエフェドリン30g、無水カフェイン25g、乳糖86.8g、結晶セルロース61.8g、ヒドロキシプロピルセルロース17.5g、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L−HPC−LH21)60g、軽質無水ケイ酸2.1gを混合し、精製水を加えて撹拌造粒法により造粒した後、乾燥した。乾燥した粒子にステアリン酸マグネシウム1.2g及びカルボキシメチルスターチナトリウム15gを添加、混合し、打錠用粉体を得た。
打錠は、ロータリー式打錠機(コレクト12HUK、菊水製作所)を用いて圧縮圧は7kNとし、1錠あたり300mgで行い、直径9.0mmの錠剤を得た。本錠剤の処方を表1に示す。
【0022】
実施例5
ケトチフェンフマル酸塩0.69g、塩酸プソイドエフェドリン30g、無水カフェイン25g、乳糖134.5g、結晶セルロース15g、ヒドロキシプロピルセルロース17.5g、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L−HPC−LH21)60g、軽質無水ケイ酸2.1gを混合し、精製水を加えて撹拌造粒法により造粒した後、乾燥した。乾燥した粒子にステアリン酸マグネシウム0.65gを添加、混合し、打錠用粉体を得た。
打錠は、ロータリー式打錠機(コレクト12HUK、菊水製作所)を用いて圧縮圧は14kNとし、1錠あたり285mgで行い、直径9.0mmの錠剤を得た。本錠剤の処方を表1に示す。
【0023】
実施例6
ケトチフェンフマル酸塩0.69g、乳糖131g、結晶セルロース73g、ヒドロキシプロピルセルロース20g、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L−HPC−LH21)57g、軽質無水ケイ酸2.1gを混合し、精製水を加えて撹拌造粒法により造粒した後、乾燥した。乾燥した粒子にステアリン酸マグネシウム1.4gを添加、混合し、打錠用粉体を得た。
打錠は、ロータリー式打錠機(コレクト12HUK、菊水製作所)を用いて圧縮圧は10kNとし、1錠あたり285mgで行い、直径9.0mmの錠剤を得た。本錠剤の処方を表2に示す。
【0024】
実施例7
ケトチフェンフマル酸塩1.38g、乳糖61.6g、結晶セルロース51.8g、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L−HPC−LH21)30g、軽質無水ケイ酸4.5gを及びステアリン酸マグネシウム1.5gを添加、混合し、打錠用粉体を得た。
打錠は、ロータリー式打錠機(コレクト12HUK、菊水製作所)を用いて圧縮圧は8kNとし、1錠あたり150mgで行い、直径7.0mmの錠剤を得た。本錠剤の処方を表2に示す。
【0025】
実施例8
ケトチフェンフマル酸塩1.38g、乳糖55g、結晶セルロース46.2g、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L−HPC−LH21)27g、軽質無水ケイ酸4.1gを及びステアリン酸マグネシウム1.4gを添加、混合し、打錠用粉体を得た。
打錠は、ロータリー式打錠機(コレクト12HUK、菊水製作所)を用いて圧縮圧は8kNとし、1錠あたり135mgで行い、直径7.0mmの錠剤を得た。本錠剤の処方を表2に示す。
【0026】
実施例9
ケトチフェンフマル酸塩1.38g、乳糖55.4g、結晶セルロース46.4g、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L−HPC−LH21)12g、軽質無水ケイ酸3.6gを及びステアリン酸マグネシウム1.2gを添加、混合し、打錠用粉体を得た。
打錠は、ロータリー式打錠機(コレクト12HUK、菊水製作所)を用いて圧縮圧は8kNとし、1錠あたり120mgで行い、直径7.0mmの錠剤を得た。本錠剤の処方を表2に示す。
【0027】
比較例1
ケトチフェンフマル酸塩0.69g、塩酸プソイドエフェドリン30g、無水カフェイン25g、乳糖86.8g、結晶セルロース61.8g、ヒドロキシプロピルセルロース17.5g、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L−HPC−LH21)60g、軽質無水ケイ酸2.1gを混合し、精製水を加えて撹拌造粒法により造粒した後、乾燥した。乾燥した粒子にステアリン酸マグネシウム1.2及びクロスカルメロースナトリウム15gを添加、混合し、打錠用粉体を得た。
打錠は、ロータリー式打錠機(コレクト12HUK、菊水製作所)を用いて圧縮圧は7kNとし、1錠あたり300mgで行い、直径9.0mmの錠剤を得た。本錠剤の処方を表1に示す。
【0028】
比較例2
ケトチフェンフマル酸塩2.76g、塩酸プソイドエフェドリン120g、無水カフェイン100g、乳糖347g、結晶セルロース247g、ヒドロキシプロピルセルロース70g、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L−HPC−LH21)240g、軽質無水ケイ酸8.4gを混合し、精製水を加えて撹拌造粒法により造粒した後、乾燥した。乾燥した粒子にステアリン酸マグネシウム4.8g及びカルメロース60gを添加、混合し、打錠用粉体を得た。
打錠は、ロータリー式打錠機(コレクト12HUK、菊水製作所)を用いて圧縮圧は7kNとし、1錠あたり300mgで行い、直径9.0mmの錠剤を得た。本錠剤の処方を表1に示す。
【0029】
試験例
実施例及び比較例で得られた錠剤について崩壊時間測定及びケトチフェンフマル酸塩の溶出試験を行った。崩壊時間は崩壊試験器にて日本薬局方第15局崩壊試験法に基づき、37℃/900mLの精製水を用いて測定した。その結果について表1及び表2に示す。溶出試験は日本薬局方第15局溶出試験法パドル法に基づき、37℃/900mLの精製水を用いて、回転数50rpmにて測定した。その結果について図1及び図2に示す。
【0030】
【表1】

【0031】
【表2】

【0032】
崩壊剤としてクロスカルメロースナトリウムを添加した比較例1並びに崩壊剤としてカルメロースを添加した比較例2では、崩壊時間は2分並びに3分と短いものの、溶出液採取時間15分におけるケトチフェンフマル酸塩の平均溶出率は約60%に留まる結果が得られた。
【0033】
一方、崩壊剤としてクロスポビドン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L−HPC−LH21、L−HPC−LH31)、カルボキシメチルスターチナトリウムを配合した本願発明の実施例1〜5では錠剤は速やかに崩壊し、溶出液採取時間15分におけるケトチフェンフマル酸塩の平均溶出率も75%以上となり、ケトチフェンフマル酸塩が速やかに溶出する錠剤を製造することが出来た。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明はケトチフェンフマル酸塩を配合した医薬品の製造に利用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケトチフェンフマル酸塩、及び非イオン性崩壊剤を含有し、陰イオン性崩壊剤を含有しないことを特徴とする錠剤。
【請求項2】
非イオン性崩壊剤が低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスポビドン、及びカルボキシメチルスターチナトリウムから選ばれる1種以上である請求項1に記載の錠剤。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−201812(P2011−201812A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−70929(P2010−70929)
【出願日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(000002819)大正製薬株式会社 (437)
【Fターム(参考)】