説明

経皮吸収テープ製剤及びその製造方法

【課題】本発明は、皮膚に対して刺激性が少なく、適度な粘着性を有し、且つ、グラニセトロンを結晶化することなく溶解した状態で含有することができ、グラニセトロンを皮膚に長時間に亘って少しずつ放出しうる経皮吸収テープ製剤及びその製造方法を提供する。
【解決手段】薬剤不透過性支持シートの一面に、アクリル酸−2−エチルヘキシル60〜70重量%とビニルピロリドン40〜30重量%との共重合体よりなる粘着剤100重量部、ミリスチン酸イソプロピル5〜20重量部、ラウリル酸ジエタノールアミド1〜10重量部及びグラニセトロン5〜10重量部からなる経皮吸収製剤層が積層されていることを特徴とする経皮吸収テープ製剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤としてグラニセトロンを含有する経皮吸収テープ製剤及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
グラニセトロン〔化学名:1−methyl−N−(endo−9−methyl−9−azabicyclo[3.3.1]non−3−yl)−1H−indazole−3−carboxamide〕は5−HT受容体の選択的拮抗剤である。これは求心性の腹部迷走神経末端に存在する5−HT受容体を遮断することによって、特に抗悪性腫瘍剤投与により誘発される悪心・嘔吐を抑制する優れた効果を発揮する有用な医薬化合物である(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特表平5−502872号公報
【0003】
グラニセトロンは癌患者に抗悪性腫瘍剤を投与した時にしばしばみられる悪心・嘔吐の抑制を目的として適用されているので、体の不自由な患者を対象として適用されることが多く、従って患者自身による経口投与が困難であり、注射による投与が広く行われているが、注射は患者に苦痛を与え、クオリテオイー・オブ・ライフ(QOL)の妨げになる。又、その目的上、長期間連続して投与することが必要であるが、経口投与や注射剤では充分対応できないので、最近、経皮吸収型製剤が提案されている。
【0004】
例えば、有効成分としてグラニセトロン又はその薬学的に妥当な塩と、炭素原子数1〜20の一価又は多価のアルコール、炭素原子数2〜20の脂肪酸、炭素原子数2〜20の脂肪酸と炭素原子数1〜20の一価又は多価のアルコールとのエステル、尿素類、ピロリドン誘導体、環状モノテルペン、1−ドデシルアザシクロヘプタン−2−オン、シクロデキストリン、チオグリコール酸カルシウムからなる群から選択される1種又は2種以上の経皮吸収促進剤からなる経皮吸収型製剤が提案されており(例えば、特許文献2参照。)、経皮吸収型製剤としてテープ剤として使用できることが開示されている。
【特許文献2】特表平8−34731号公報。
【0005】
しかしながら、経皮吸収テープ製剤として使用する際には、グラニセトロンを溶解して含有する粘着剤が必要であるが、粘着剤について充分な研究はなされておらず、皮膚に対して刺激性が少なく、適度な粘着性を有し、且つ、グラニセトロンを溶解して含有することができ、グラニセトロンを皮膚に長時間に亘って少しずつ放出しうる粘着剤を含む経皮吸収テープ製剤はなかった。
【0006】
又、グラニセトロンは単体では販売されておらず、その塩(例えば、グラニセトロン塩酸塩)として販売されている。グラニセトロン塩は水溶性であって溶剤溶液タイプの粘着剤に溶解することは困難であり、例え、グラニセトロン塩を粘着剤に溶解することができたとしても、経時によりグラニセトロン塩が結晶化して析出するという欠点があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、上記欠点に鑑み、皮膚に対して刺激性が少なく、適度な粘着性を有し、且つ、グラニセトロンを結晶化することなく溶解した状態で含有することができ、グラニセトロンを皮膚に長時間に亘って少しずつ放出しうる経皮吸収テープ製剤及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の経皮吸収テープ製剤は、薬剤不透過性支持シートの一面に、アクリル酸−2−エチルヘキシル60〜70重量%とビニルピロリドン40〜30重量%との共重合体よりなる粘着剤100重量部、ミリスチン酸イソプロピル5〜20重量部、ラウリル酸ジエタノールアミド1〜10重量部及びグラニセトロン5〜10重量部からなる経皮吸収製剤層が積層されていることを特徴とする。
【0009】
本発明で使用される薬剤不透過性支持シートは、グラニセトロンが不透過性の支持シートであれば、特に限定されず、従来からテープ製剤、バッチ製剤、パップ製剤等の支持シートとして一般に使用されているシートが好適に使用でき、例えば、酢酸セルロース、エチルセルロース、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル系樹脂、塩化ビニリデン樹脂、酢酸ビニル−塩化ビニル共重合体、ポリアミド系樹脂、ポリエステル樹脂、ABS樹脂、SIS樹脂、SEBS樹脂、ウレタン樹脂、シリコン樹脂、アルミニウム等のシートが挙げられる。又、これらのシートは、上記樹脂の繊維の織布又は不織布であってもよいし、これらのシート、織布及び不織布の積層シートであってもよい。薬剤不透過性支持シートの厚さは特に限定されず、皮膚に貼付するのであるから一般に10〜1000μmであり、好ましくは20〜100μmである。
【0010】
本発明で使用される経皮吸収製剤は、アクリル酸−2−エチルヘキシル60〜70重量%とビニルピロリドン40〜30重量%との共重合体よりなる粘着剤100重量部、ミリスチン酸イソプロピル5〜20重量部、ラウリル酸ジエタノールアミド1〜10重量部及びグラニセトロン5〜10重量部からなる。
【0011】
上記粘着剤は、アクリル酸−2−エチルヘキシル60〜70重量%とビニルピロリドン40〜30重量%との共重合体よりなる粘着剤である。アクリル酸−2−エチルヘキシルとビニルピロリドンの共重合体中のアクリル酸−2−エチルヘキシルの含有量が多くなると粘着剤の凝集力が低下し、べたついて皮膚に貼付すると再剥離性が低下し、逆に少なくなると粘着性が低下するので、共重合体中のアクリル酸−2−エチルヘキシルとビニルピロリドンの比率はアクリル酸−2−エチルヘキシル60〜70重量%とビニルピロリドン40〜30重量%であり、好ましくはアクリル酸−2−エチルヘキシル63〜68重量%とビニルピロリドン37〜32重量%である。
【0012】
上記共重合体には、アクリル酸−2−エチルヘキシルと共重合可能な重合性ビニルモノマーが共重合されてもよいが、アクリル酸、メタクリル酸等のカルボキシル基含有ビニルモノマーは共重合すると皮膚刺激性が高くなるので共重合してはならない。該重合性ビニルモノマーとしては、例えば、酢酸ビニル、スチレン、α−メチルスチレン、塩化ビニル、アクリロニトリル、エチレン、プロピレン、ブタジエン等があげられる。
【0013】
上記共重合体の重合方法は従来公知の任意の重合方法が採用されてよく、例えば、溶液重合法、エマルション重合法、懸濁重合法、バルク重合法等が挙げられ、後述の通りグラニセトロンを結晶化することなく溶解した状態で含有するには酢酸エチルを溶媒として溶液重合した粘着剤が好ましい。
【0014】
上記ミリスチン酸イソプロピルは経皮吸収促進剤であり、その添加量が少なくなるとグラニセトロンの経皮吸収促進効果が低下し、多くなると粘着剤の性能を低下させたり、にじみ出たりするので、粘着剤100重量部に対し5〜20重量部添加される。
【0015】
上記ラウリル酸ジエタノールアミドも経皮吸収促進剤であり、その添加量が少なくなるとグラニセトロンの経皮吸収促進効果が低下し、多くなると刺激性が高くなり、にじみ出やすくなるので、粘着剤100重量部に対し1〜10重量部添加される。
【0016】
上記グラニセトロンは薬効成分であり、遊離型であっても、その薬学的に妥当な塩、例えば、塩酸塩、硫酸塩、臭化水素塩、硝酸塩、リン酸塩等の無機酸付加塩;ナトリウム塩、カリウム塩等の無機塩基付加塩、酢酸塩、コハク酸塩、フマル酸塩、リンゴ酸塩、シュウ酸塩等の有機酸付加塩であってもよいが、粘着剤中に結晶化することなく溶解した状態で含有されるには遊離型のグラニセトロンとして存在するのが好ましい。
【0017】
上記グラニセトロンの添加量が少なくなると経皮吸収される量が少なくなり薬効の持続性が低下し、多くなると結晶化して添加効果が向上しなかったり、粘着剤の溶解性が高い場合は多量に経皮吸収され呼吸抑制をもたらすことがあるので、粘着剤100重量部に対し5〜10重量部添加される。
【0018】
経皮吸収製剤層の厚さは特に限定されないが、経皮吸収製剤層は経皮吸収テープ製剤を皮膚に貼付するための粘着剤層である共にグラニセトロンを貯蔵するための薬効成分含有層であるから一般に20〜1000μmであり、好ましくは30〜300μmである。
【0019】
本発明の経皮吸収テープ製剤の製造方法は特に限定されるものではなく、例えば、上記薬剤不透過性支持シートの一面に、アクリル酸−2−エチルヘキシル60〜70重量%とビニルピロリドン40〜30重量%との共重合体よりなる粘着剤100重量部、ミリスチン酸イソプロピル5〜20重量部、ラウリル酸ジエタノールアミド1〜10重量部及びグラニセトロン5〜10重量部からなる経皮吸収製剤を塗布乾燥することにより経皮吸収製剤層を積層すればよい。
【0020】
しかしながら、グラニセトロンはその塩酸塩しか上市されておらず、グラニセトロン塩酸塩は水溶性であって溶剤溶液タイプの粘着剤に溶解することは困難であり、例え、グラニセトロン塩酸塩を溶剤溶液タイプの粘着剤に溶解することができたとしても、経時によりグラニセトロン塩酸塩が結晶化して析出してしまうので、グラニセトロン塩酸塩を少量の水酸化ナトリウム水溶液に溶解して中和し、過剰のメタノール及びアセトンに分散した後、溶剤溶液タイプの粘着剤に混合するのが好ましく、こうすることにより粘着剤層にグラニセトロンが結晶化することなく溶解した状態で存在する経皮吸収テープ製剤が得られる。
【0021】
即ち、本発明の経皮吸収テープ製剤の製造方法は、請求項1記載の経皮吸収テープ製剤の製造方法であって、(1)水酸化ナトリウム水溶液を過剰のメタノールに分散したメタノール溶液にグラニセトロン塩酸塩を溶解した後、アセトン又はテトラヒドロフランを混合して薬剤溶媒溶液を得る第1の工程、(2)アクリル酸−2−エチルヘキシル60〜70重量%とビニルピロリドン40〜30重量%との共重合体よりなる粘着剤の溶媒溶液に、ミリスチン酸イソプロピル、ラウリル酸ジエタノールアミド及び第1の工程で得られた薬剤溶媒溶液を添加混合して経皮吸収製剤溶液を得る第2の工程、及び、(3)得られた経皮吸収製剤溶液を薬剤不透過性支持シートの一面に塗布乾燥する第3の工程よりなることを特徴とする。
【0022】
上記第1の工程は、水酸化ナトリウム水溶液を過剰のメタノールに分散したメタノール溶液にグラニセトロン塩酸塩を溶解した後、アセトン又はテトラヒドロフランを混合して薬剤溶媒溶液を得る工程である。
【0023】
水酸化ナトリウム水溶液はグラニセトロン塩酸塩を溶解すると共にグラニセトロン塩酸塩を中和するためのものであるから、その添加量はグラニセトロン塩酸塩に対し0.9〜1.2当量が好ましい。又、水酸化ナトリウム水溶液の水の量が多くなると粘着剤の溶媒溶液に均一に分散されにくくなり、ひいてはグラニセトロンが粘着剤の溶媒溶液に均一に溶解分散されにくくなるので、可及的に少量であるのが好ましい。従って、水酸化ナトリウム水溶液の水酸化ナトリウムは高濃度であるのが好ましく、30〜60重量%の水酸化ナトリウム水溶液が好ましい。
【0024】
メタノール及びアセトン又はテトラヒドロフランは水酸化ナトリウム水溶液に溶解されたグラニセトロン塩酸塩が析出することなく希釈するための溶媒であり、且つ、後工程で粘着剤の溶媒溶液に添加混合した際、得られた経皮吸収製剤溶液を薬剤不透過性支持シートの一面に塗布乾燥した際及び得られた経皮吸収テープ製剤を長時間保存した際にグラニセトロンの析出を抑制するために必要な溶媒である。
【0025】
水酸化ナトリウム水溶液は過剰のメタノールに分散すればよいが、一般に、メタノール100重量部に対し水酸化ナトリウム水溶液(濃度30〜60重量%)を1〜3重量部分散するのが好ましい。
【0026】
上記水酸化ナトリウム水溶液を過剰のメタノールに分散したメタノール溶液にグラニセトロン塩酸塩を溶解した後、アセトン又はテトラヒドロフランを混合して薬剤溶媒溶液を得るのであるが、アセトン又はテトラヒドロフランの添加量はメタノールの添加量と同量若しくは若干少な目が好ましく、メタノール100重量部に対し30〜80重量部が好ましい。尚、アセトンとテトラヒドロフランは併用してもよい。
【0027】
上記第2の工程は、アクリル酸−2−エチルヘキシル60〜70重量%とビニルピロリドン40〜30重量%との共重合体よりなる粘着剤の溶媒溶液に、ミリスチン酸イソプロピル、ラウリル酸ジエタノールアミド及び第1の工程で得られた薬剤溶媒溶液を添加混合して経皮吸収製剤溶液を得る工程である。
【0028】
上記粘着剤の製造方法は特に限定されず、従来公知の任意の重合方法が採用されてよく、例えば、溶液重合法、エマルション重合法、懸濁重合法、バルク重合法等が挙げられるが、粘着剤は酢酸エチル、トルエン、シクロヘキサン等の有機溶媒に溶解された溶液であることが必要である。従って、粘着剤は溶液重合法によって重合された溶媒溶液が好ましい。又、グラニセトロンを結晶化することなく溶解した状態で含有するには酢酸エチルを溶媒として溶液重合した粘着剤が好ましい。
【0029】
粘着剤の溶媒溶液に、ミリスチン酸イソプロピル、ラウリル酸ジエタノールアミド及び第1の工程で得られた薬剤溶媒溶液を添加混合する順序は、特に限定されるものではないが、薬剤溶媒溶液は液状であり混合しやすいので、粘着剤の溶媒溶液に、ミリスチン酸イソプロピルとラウリル酸ジエタノールアミドを添加し、1時間程度攪拌してミリスチン酸イソプロピルとラウリル酸ジエタノールアミドを混合溶解した後、薬剤溶媒溶液を添加し、更に1時間程度攪拌して均一に混合溶解するのが好ましい。
【0030】
上記第3の工程は、得られた経皮吸収製剤溶液を薬剤不透過性支持シートの一面に塗布乾燥する工程である。経皮吸収製剤溶液を薬剤不透過性支持シートの一面に塗布乾燥する方法は、特に限定されず、従来から粘着テープを製造する際に一般に使用されている方法が採用されればよく、例えば、2ロールコーター、3ロールコーター、リバースロールコーター、ナイフロールコーター、コンマコーター、グラビアコーター等により経皮吸収製剤溶液を薬剤不透過性支持シートの一面に塗布し、熱風、ヒータ等の加熱手段で加熱して溶媒は揮散させればよい。
【発明の効果】
【0031】
本発明の経皮吸収テープ製剤の構成は上述の通りであるから、皮膚に対して刺激性が少なく、適度な粘着性を有し、且つ、グラニセトロンを結晶化することなく溶解した状態で含有することができ、グラニセトロンを皮膚に長時間に亘って少しずつ放出しうる。従って、体の不自由な患者であっても苦痛を与えることなく容易に貼付することができ、悪心・嘔吐を長時間抑制することができる。
【0032】
又、本発明の経皮吸収テープ製剤の製造方法の構成は上述の通りであるから、グラニセトロンを結晶化することなく溶解した状態で含有し、グラニセトロンを皮膚に長時間に亘って少しずつ放出しうる経皮吸収テープ製剤を容易に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
次に実施例を説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
粘着剤溶液Aの合成
攪拌機付きの500ml反応容器に、酢酸エチル200g、アクリル酸−2−エチルヘキシル75g、ビニルピロリドン25g及びアゾビスイソブチロニトリル0.005gを仕込み、反応容器内を窒素置換した後、75℃で15時間重合を行って粘着剤溶液A(固形分34重量%)を得た。
【0034】
粘着剤溶液Bの合成
攪拌機付きの500ml反応容器に、酢酸エチル200g、アクリル酸−2−エチルヘキシル95g、アクリル酸5g及びアゾビスイソブチロニトリル0.005gを仕込み、反応容器内を窒素置換した後、75℃で15時間重合を行って粘着剤溶液B(固形分34重量%)を得た。
【0035】
(実施例1、比較例1〜6)
表1に示した所定量の粘着剤溶液A、粘着剤溶液B、ミリスチン酸イソプロピル及びラウリン酸ジエタノールアミドを混合して粘着剤溶媒溶液を得た。又、表1に示した所定の水酸化ナトリウムを水に溶解し、溶解液をメタノールに分散した後グラニセトロン塩酸塩を溶解し、次いでアセトンを混合して薬剤溶媒溶液を得た。得られた粘着剤溶媒溶液と薬剤溶媒溶液を混合して経皮吸収製剤溶液を得た。得られた経皮吸収製剤溶液を厚さ40μmのポリエチレンテレフタレートフィルム上に、乾燥後の厚さが100μmになるよう設定したナイフコーターを使用して塗膜をつくり、温度50℃で24時間溶媒を乾燥させ、経皮吸収テープ製剤を得た。
【0036】
(比較例7)
粘着剤溶液A300g、ミリスチン酸イソプロピル14g及びラウリン酸ジエタノールアミド6.4gを混合して粘着剤溶媒溶液を得た。又、水酸化ナトリウム1.032gを水2gに溶解し、溶解液をメタノール165gに分散した後グラニセトロン塩酸塩7.6gを溶解して薬剤溶媒溶液を得た。得られた粘着剤溶媒溶液と薬剤溶媒溶液を混合したが均一に混合することができず、均一に溶解した経皮吸収製剤溶液は得られなかった。従って、経皮吸収テープ製剤を得ることができなかった。尚、各溶液の組成を表1に示した。
【0037】
(比較例8)
粘着剤溶液A300g、ミリスチン酸イソプロピル14g及びラウリン酸ジエタノールアミド6.4gを混合して粘着剤溶媒溶液を得た。又、水酸化ナトリウム1.032gを水67gに溶解した後グラニセトロン塩酸塩7.6gを溶解し、次いでアセトン67gを混合して薬剤溶媒溶液を得た。得られた粘着剤溶媒溶液と薬剤溶媒溶液を混合したが均一に混合することができず、均一に溶解した経皮吸収製剤溶液は得られなかった。従って、経皮吸収テープ製剤を得ることができなかった。
【0038】
【表1】

【0039】
実施例1及び比較例1〜6で得られた経皮吸収テープ製剤のグラニセトロン結晶析出の有無、皮膚刺激性並びに皮膚粘着性及び糊残り性を測定し結果を表2に示した。
グラニセトロン結晶析出
得られた経皮吸収テープ製剤を室温で72時間保存した後、グラニセトロンの結晶の析出の有無を目視により観察した。
【0040】
皮膚刺激性試験
得られた経皮吸収テープ製剤を直径2.0cmの円形に打ち抜いたサンプルをボランティア4名の上腕内部は貼付し、24時間経過後に剥離して、剥離直後の皮膚刺激性強度を下記評価採点基準により測定し、その平均値を算出した。
評価採点基準
0:皮膚刺激なし。 1:わずかに皮膚刺激有り。 2:若干の皮膚刺激有り。
3:皮膚刺激有り。 4:強い皮膚刺激有り。
【0041】
皮膚粘着性及び糊残り性
皮膚刺激性試験において、サンプルを剥離した際に皮膚への粘着性及び皮膚への糊残りがないか目視で観察した。
【0042】
【表2】

比較例2においては、粘着剤が皮膚にべっとりと付着しており、再剥離することができなかった。又、粘着剤は石鹸を使用してこすり落とさないと落とすことができないので皮膚刺激性を測定できなかった。
【0041】
又、経皮吸収テープ製剤の薬物経皮吸収性試験を測定し、結果を表3に示した。
薬物経皮吸収性試験
人の皮膚を37℃の水を循環させたフランツ型拡散セルに挟み、レシーバー(真皮)側に水とポリエチレングリコール400の混合液(70:30)を供給し、マグネティックスターラーにより攪拌した。ドナー(角質)側には得られた経皮吸収テープ製剤を適用し、72時間薬物の透過試験を行った。12時間後、24時間後、48時間後及び72時間後にレシーバー中の混合液を採取して、その中の薬物濃度を高速液体クロマトグラフ(HPLC)により測定し、皮膚を透過したグラニセトロンの量(累積透過量)を求めた。
【0042】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤不透過性支持シートの一面に、アクリル酸−2−エチルヘキシル60〜70重量%とビニルピロリドン40〜30重量%との共重合体よりなる粘着剤100重量部、ミリスチン酸イソプロピル5〜20重量部、ラウリル酸ジエタノールアミド1〜10重量部及びグラニセトロン(塩酸塩)5〜10重量部からなる経皮吸収製剤層が積層されていることを特徴とする経皮吸収テープ製剤。
【請求項2】
請求項1記載の経皮吸収テープ製剤の製造方法であって、
(1)水酸化ナトリウム水溶液を過剰のメタノールに分散したメタノール溶液にグラニセトロン塩酸塩を溶解した後、アセトン又はテトラヒドロフランを混合して薬剤溶媒溶液を得る第1の工程、
(2)アクリル酸−2−エチルヘキシル60〜70重量%とビニルピロリドン40〜30重量%との共重合体よりなる粘着剤の溶媒溶液に、ミリスチン酸イソプロピル、ラウリル酸ジエタノールアミド及び第1の工程で得られた薬剤溶媒溶液を添加混合して経皮吸収製剤溶液を得る第2の工程、及び、
(3)得られた経皮吸収製剤溶液を薬剤不透過性支持シートの一面に塗布乾燥する第3の工程よりなることを特徴とする経皮吸収テープ製剤の製造方法。
【請求項3】
水酸化ナトリウムの添加量が、グラニセトロン塩酸塩に対し0.9〜1.2当量であることを特徴とする請求項2記載の経皮吸収テープ製剤の製造方法。
【請求項4】
メタノール100重量部に対し水酸化ナトリウム水溶液(濃度30〜60重量%)1〜3重量部を分散することを特徴とする請求項2又は3記載の経皮吸収テープ製剤の製造方法。
【請求項5】
アセトン又はテトラヒドロフランの添加量が、メタノール100重量部に対し30〜80重量部であることを特徴とする請求項2、3又は4記載の経皮吸収テープ製剤の製造方法。
【請求項6】
粘着剤の溶媒が、酢酸エチルであることを特徴とする請求項2、3、4又は5記載の経皮吸収テープ製剤の製造方法。

【公開番号】特開2009−137925(P2009−137925A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−341641(P2007−341641)
【出願日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【出願人】(501296380)コスメディ製薬株式会社 (42)
【Fターム(参考)】