説明

経皮吸収促進剤、ならびにそれを含有する医薬組成物および貼付剤

【課題】薬物の経皮吸収性を高めるための経皮吸収促進剤、ならびに薬物の経皮吸収性に優れた貼付剤を提供すること。
【解決手段】架橋したN−ビニルピロリドン重合体と、モノラウリン酸プロピレングリコールと、炭素数1〜6の脂肪族炭化水素基を有するカルボン酸およびその塩からなる群から選択される少なくとも1種のカルボン酸類とを含有することを特徴とする経皮吸収促進剤、ならびに、支持体と、前記経皮吸収促進剤と薬物とを含有する医薬組成物により形成され且つ前記支持体上に配置された粘着剤層とを備えることを特徴とする貼付剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経皮吸収促進剤、それを含有する医薬組成物、および前記医薬組成物を含有する粘着剤層を備える貼付剤に関する。
【背景技術】
【0002】
薬物の投与方法としては、経口投与、直腸投与、皮内投与、静脈内投与など、種々の方法が知られているが、中でも、経口投与が広く採用されている。しかしながら、経口投与には、薬物が吸収された後、肝臓で初回通過効果を受けたり、投与後一時的に必要以上の血中濃度が認められたりするといった欠点があった。また、経口投与においては、胃腸管障害、嘔吐感、食欲不振といった副作用も多く報告されている。さらに、近年の高齢化社会においては、嚥下力の低下した患者が増加しており、より服用しやすい製剤が臨床上望まれている。したがって、このような経口投与における欠点を解消し、より安全かつ持続的に患者が服用しやすい投与方法として、近年、貼付剤を用いた投与方法が検討されてきた。貼付剤を用いた投与方法は、経口投与における欠点の解消が可能であるとともに、投与回数の減少、コンプライアンスの向上、投与および中止の容易性といった利点を有するため、有用な投与方法として期待されており、貼付剤も上市されている。
【0003】
しかしながら、多くの薬物は経皮吸収性が低い上に、正常皮膚は本来、異物の体内への侵入を防ぐバリアー機能を有しているため、従来の貼付剤の粘着剤層に薬物を単に含有させるだけでは、十分な経皮吸収性を達成することは困難であった。
【0004】
そこで、貼付剤を用いた経皮投与法における薬物の経皮吸収性を高めるために、薬物を含有する粘着基剤に経皮吸収促進成分を配合することが検討されてきた。例えば、特開2009−114175号公報(特許文献1)には、難溶性薬物と多価アルコールと多価アルコールの脂肪酸エステルと1価のアルコールと架橋ポリビニルピロリドンとを含有する粘着剤層を備える貼付剤が開示されており、好ましい多価アルコールの脂肪酸エステルとしてプロピレングリコールモノラウレートが開示されている。そして、特許文献1には、前記多価アルコール、前記多価アルコールの脂肪酸エステル、前記1価のアルコールに対する難溶性薬物の溶解度の違いにより、皮膚への貼付の初期、中期、後期のいずれにおいても、難溶性薬物が、高レベルで、安定的かつ持続的に放出されることが開示されており、また、架橋ポリビニルピロリドンを配合することによって、前記多価アルコールが粘着剤層中に保持されることも開示されている。さらに、特許文献1には、粘着剤層を可塑化したり、皮膚刺激性を低減したりするために、ミリスチン酸イソプロピルなどの高級脂肪酸と低級1価アルコールとの脂肪酸アルキルエステルや炭素数8〜10の脂肪酸を配合してもよいことも開示されている。
【0005】
特表2010−521525号公報(特許文献2)には、活性物質と粘着強化剤と流束強化剤とを含有する接着剤マトリックス層を備える経皮送達デバイスが開示されており、粘着強化剤としてクロスポビドンなどが、流束強化剤としてプロピレングリコールモノラウレートなどが例示されている。また、前記流束強化剤の機能として、皮膚を通して血流への薬物の透過性を増加させることも開示されている。
【0006】
特開平8−40937号公報(特許文献3)には、薬剤と、経皮吸収促進剤としてアルカンジオールの脂肪酸エステルなどを含有する経皮的投与のための薬学的組成物が開示されており、好ましいアルカンジオールの脂肪酸エステルとしてプロピレングリコールモノラウレートなどが開示されている。
【0007】
特表平8−512054号公報(特許文献4)には、薬剤と浸透促進剤とポリ−N−ビニルアミドとを含有する貯留槽を備える経皮投与デバイスが開示されており、好ましいポリ−N−ビニルアミドとしてポリ−N−ビニル−2−ピロリドンが開示されている。また、モノグリセリドなどの浸透促進剤とポリ−N−ビニルアミドとを組み合わせることによって、経皮流動性、薬剤利用、貯蔵安定性、接着性が改善されることも開示されている。
【0008】
国際公開第01/007018号(特許文献5)には、塩基性薬物と有機酸と有機酸塩とを含有する貼付剤が開示されており、好ましい有機酸として酢酸、乳酸などが、好ましい有機酸塩として酢酸ナトリウムが開示されている。また、有機酸と有機酸塩とを組み合わせることによって、貼付剤中に薬物の皮膚透過性に優れた準安定状態が安定して保持され、薬物の経皮吸収性が高く、安定性に優れた貼付剤が得られることも開示されている。
【0009】
国際公開第96/16642号(特許文献6)には、生理活性物質、有機酸、吸収促進剤などを含有する粘着剤層を備える貼付剤が開示されており、有機酸として酢酸、乳酸などの脂肪族カルボン酸など、およびこれらの水溶性無機塩類などが例示されており、好ましい有機酸として酢酸ナトリウムなどが開示されている。また、吸収促進剤として炭素鎖数6〜20の脂肪酸、脂肪酸エステルなどが例示されており、好ましい吸収促進剤としてオレイン酸、ソルビタンモノラウレートなどが開示されている。そして、有機酸と吸収促進剤とを組み合わせることにより、薬物の皮膚透過性が向上することも開示されている。
【0010】
特開平6−72877号公報(特許文献7)および特開平6−100439号公報(特許文献8)には、経皮吸収促進剤およびクロスポビドンを含有する経皮吸収製剤が開示されており、経皮吸収促進剤として乳酸といった炭素数2〜10のヒドロキシカルボン酸などが開示されている。
【0011】
特開2006−169238号公報(特許文献9)には、薬物、融点降下剤、吸収促進剤などを含有する貼付剤が開示されており、好ましい融点降下剤として酢酸、乳酸およびこれらの塩(酢酸ナトリウムなど)が開示されており、好ましい吸収促進剤としてモノラウリン酸プロピレングリコールなどが開示されている。
【0012】
しかしながら、これらの貼付剤等においては、経皮吸収促進成分を添加することによって、経皮吸収促進成分を含まない貼付剤に比べて、薬物の皮膚透過性は向上するものの、未だ十分なものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2009−114175号公報
【特許文献2】特表2010−521525号公報
【特許文献3】特開平8−40937号公報
【特許文献4】特表平8−512054号公報
【特許文献5】国際公開第01/007018号
【特許文献6】国際公開第96/16642号
【特許文献7】特開平6−72877号公報
【特許文献8】特開平6−100439号公報
【特許文献9】特開2006−169238号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、薬物の経皮吸収性を高めるための経皮吸収促進剤、ならびに薬物の経皮吸収性に優れた医薬組成物および貼付剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、経皮投与に使用する貼付剤において、架橋したN−ビニルピロリドン重合体と、モノラウリン酸プロピレングリコールと、炭素数1〜6の脂肪族炭化水素基を有するカルボン酸および/またはその塩とを併用した経皮吸収促進剤を粘着剤層に配合することによって、これらのうちの1または2成分を配合した場合に比べて、薬物の経皮吸収性が飛躍的に向上することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0016】
すなわち、本発明の経皮吸収促進剤は、架橋したN−ビニルピロリドン重合体と、モノラウリン酸プロピレングリコールと、炭素数1〜6の脂肪族炭化水素基を有するカルボン酸およびその塩からなる群から選択される少なくとも1種のカルボン酸類とを含有することを特徴とするものである。また、本発明の医薬組成物は、このような経皮吸収促進剤と薬物とを含有することを特徴とするものであり、本発明の貼付剤は、支持体と、前記医薬組成物により形成され且つ前記支持体上に配置された粘着剤層とを備えることを特徴とするものである。
【0017】
本発明にかかるカルボン酸類は、ヒドロキシカルボン酸、モノカルボン酸およびこれらの塩からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、乳酸、酢酸およびこれらのナトリウム塩からなる群から選択される少なくとも1種であることがより好ましく、乳酸および乳酸ナトリウムからなる群から選択される少なくとも1種であることが特に好ましい。また、本発明にかかるN−ビニルピロリドン重合体としては、クロスポビドンが好ましい。
【0018】
本発明の医薬組成物に配合される薬物としては両イオン性薬物の遊離塩基および/または薬学的に許容される塩が好ましく、前記両イオン性薬物としてはセチリジンがより好ましく、レボセチリジンが特に好ましい。
【0019】
また、本発明の医薬組成物においては、前記薬物としてフェンタニルの遊離塩基および/または薬学的に許容される塩も好ましく、フェンタニルの遊離塩基がより好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、薬物の経皮吸収性を著しく高めることが可能な経皮吸収促進剤、ならびに薬物の経皮吸収性に優れた医薬組成物および貼付剤を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施例1および比較例1〜2で作製した貼付剤のレボセチリジン溶出率の経時変化を示すグラフである。
【図2】実施例3および比較例6〜15で作製した貼付剤のレボセチリジン皮膚透過速度の経時変化を示すグラフである。
【図3】実施例1、4〜5で作製した貼付剤のレボセチリジン皮膚透過速度の経時変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
【0023】
先ず、本発明の経皮吸収促進剤について説明する。本発明の経皮吸収促進剤は、架橋したN−ビニルピロリドン重合体と、モノラウリン酸プロピレングリコールと、炭素数1〜6の脂肪族炭化水素基を有するカルボン酸およびその塩からなる群から選択される少なくとも1種のカルボン酸類とを含有するものである。
【0024】
本発明にかかる架橋したN−ビニルピロリドン重合体は、N−ビニルピロリドンの単独重合体または共重合体の架橋物(以下、これらをまとめて「架橋N−ビニルピロリドン重合体」という)であり、中でも、1−ビニル−2−ピロリドンの架橋ホモポリマー(以下、「クロスポビドン」という)が好ましい。
【0025】
このような架橋N−ビニルピロリドン重合体は、例えば、N−ビニルピロリドンを単独重合したり、N−ビニルピロリドンと多官能モノマーとを共重合することによって得ることができるが、これらに限定されるものではない。また、クロスポビドンとして、コリドンCL、コリドンCL−M(以上、BASFジャパン(株)製)、ポリプラスドンXL、ポリプラスドンXL−10、ポリプラスドンINF−10(以上、ISPジャパン(株)製)などの商品名で市販されているものを使用することもできる。
【0026】
このような架橋N−ビニルピロリドン重合体を、モノラウリン酸プロピレングリコールおよび前記カルボン酸類と併用することによって、貼付剤から薬物が放出されやすく、薬物の経皮吸収性が著しく向上する。一方、架橋N−ビニルピロリドン重合体を含まない場合や、架橋N−ビニルピロリドン重合体の代わりに架橋していないポリN−ビニルピロリドンを含有する場合には、貼付剤から薬物が放出されにくく、薬物の経皮吸収性が向上しにくい。
【0027】
前記多官能モノマーとしては、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリル酸などが挙げられる。このような多官能モノマーの割合としては、モノマー全量に対して0.1〜10モル%が好ましい。多官能モノマーの割合が前記下限未満になると架橋物として機能しない傾向にあり、他方、前記上限を超えるとN−ビニルピロリドン重合体としての機能が十分に発揮されない傾向にある。
【0028】
本発明にかかる架橋N−ビニルピロリドン重合体の粒径としては特に制限はないが、1〜50μmが好ましい。また、分子量についても特に制限はない。本発明においては、粒径や分子量が1種類の架橋N−ビニルピロリドン重合体を単独で使用してもよいし、粒径が異なる2種以上の架橋N−ビニルピロリドン重合体を混合して使用してもよい。
【0029】
本発明にかかるカルボン酸類は、炭素数1〜6の脂肪族炭化水素基を有するカルボン酸およびその塩からなる群から選択される少なくとも1種である。このようなカルボン酸としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸といったモノカルボン酸、アジピン酸、マレイン酸、コハク酸といったジカルボン酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸といったヒドロキシカルボン酸などが挙げられる。また、カルボン酸の塩としては、薬学的に許容しうる塩であれば特に制限はないが、前記カルボン酸の金属塩が挙げられ、中でも、前記カルボン酸のナトリウム塩が好ましい。このようなカルボン酸類を、前記架橋N−ビニルピロリドン重合体およびモノラウリン酸プロピレングリコールと併用することによって、貼付剤から薬物が放出されやすく、薬物の経皮吸収性が著しく向上する。一方、カルボン酸類を含まない場合や、炭素数が7以上の脂肪族炭化水素基を有するカルボン酸および/またはその塩を含有する場合には、貼付剤から薬物が放出されにくく、薬物の経皮吸収性が向上しにくい。
【0030】
本発明にかかるカルボン酸類としては、薬物の経皮吸収性がより向上するという観点から、モノカルボン酸、ヒドロキシカルボン酸およびこれらの金属塩が好ましく、酢酸、乳酸およびこれらの金属塩がより好ましく、酢酸、乳酸、酢酸ナトリウムおよび乳酸ナトリウムがさらに好ましく、乳酸および乳酸ナトリウムが特に好ましい。
【0031】
本発明の経皮吸収促進剤において、このような炭素数1〜6の脂肪族炭化水素基を有するカルボン酸類の配合量としては、架橋N−ビニルピロリドン重合体1質量部に対して、0.05〜10質量部が好ましく、0.1〜8質量部がより好ましい。特に、前記カルボン酸類がカルボン酸である場合、その配合量としては、架橋N−ビニルピロリドン重合体1質量部に対して、0.05〜8質量部が好ましく、0.1〜7.2質量部がより好ましい。一方、前記カルボン酸類がカルボン酸の塩である場合、その配合量としては、架橋N−ビニルピロリドン重合体1質量部に対して、0.1〜10質量部が好ましく、0.15〜8質量部がより好ましい。前記カルボン酸類の配合量が前記下限未満になると、薬物の経皮吸収性が十分に向上しない傾向にあり、他方、前記上限を超えると、皮膚への刺激が強くなる傾向にある。
【0032】
また、本発明にかかるモノラウリン酸プロピレングリコールとしては、CH(CH10−COO−CHCH(CH)OH、CH(CH10−COO−CH(CH)CHOH、CH(CH10−COO−(CHOHなどの化学式で表される化合物が挙げられ、中でも、CH(CH10−COO−CHCH(CH)OHで表されるモノラウリン酸プロピレングリコールが好ましい。
【0033】
本発明の経皮吸収促進剤において、このようなモノラウリン酸プロピレングリコールの配合量としては、架橋N−ビニルピロリドン重合体1質量部に対して、0.25〜10質量部が好ましい。モノラウリン酸プロピレングリコールの配合量が前記下限未満になると、薬物の経皮吸収性が十分に向上しない傾向にあり、他方、前記上限を超えると、皮膚への刺激が強くなる恐れがある。
【0034】
次に、本発明の医薬組成物について説明する。本発明の医薬組成物は、上述した本発明の経皮吸収促進剤と薬物とを含有するものである。この医薬組成物は、本発明の経皮吸収促進剤の作用により、従来の経皮吸収促進剤と薬物とを含有する医薬組成物に比べて、優れた経皮吸収性を示す。
【0035】
本発明にかかる薬物としては、薬物そのものが経皮吸収性を示すものを使用してもよいが、薬物のみでは経皮吸収性が低いものであっても使用することができる。このような経皮吸収性が低い薬物を配合した場合であっても、本発明の医薬組成物においては、本発明の経皮吸収促進剤を配合することにより、高い経皮吸収性を発揮させることが可能となる。
【0036】
本発明の医薬組成物に配合可能な薬物としては常温において固体であるものであれば特に制限はない。例えば、非ステロイド性消炎鎮痛剤(ジクロフェナク、インドメタシン、ケトプロフェン、フェルビナク、ロキソプロフェン、イブプロフェン、フルルビプロフェン、チアプロフェン、アセメタシン、スリンダク、エトドラク、トルメチン、ピロキシカム、メロキシカム、アンピロキシカム、ナプロキセン、アザプロパゾン、サリチル酸メチル、サリチル酸グリコール、バルデコキシブ、セレコキシブ、ロフェコキシブ、アンフェナク)、抗ヒスタミン剤(ジフェンヒドラミン、クロルフェニラミン、メキタジン、ホモクロルシクロジン)、降圧剤(ジルチアゼム、ニカルジピン、ニルバジピン、メトプロロール、ビソプロロール、トランドラプリル)、抗パーキンソン剤(ペルゴリド、ブロモクリプチン、ロピニロール、セレギリン)、気管支拡張剤(ツロブテロール、イソプレテノロール、サルブタモール)、抗アレルギー剤(ケトチフェン、ロラタジン、アゼラスチン、テルフェナジン、セチリジン、アシタザノラスト)、局所麻酔剤(リドカイン、ジブカイン)、麻薬系鎮痛剤(フェンタニル、モルヒネ)、泌尿器官用剤(オキシブチニン、タムスロシン)、精神神経用剤(プロマジン、クロルプロマジン)、ステロイドホルモン剤(エストラジオール、プロゲステロン、ノルエチステロン、コルチゾン、ヒドロコルチゾン)、抗うつ剤(セルトラリン、フルオキセチン、パロキセチン、シタロプラム)、抗痴呆薬(ドネペジル、リスペリドン、リバスチグミン、ガランタミン、イデベノン)、去痰薬(アンブロキソール)、抗不安薬(タンドスピロン)、抗精神病薬(オランザピン)、中枢神経興奮剤(メチルフェニデート)、骨粗しょう症治療薬(ラロキシフェン、アレンドロネート)、乳がん予防薬(タモキシフェン)、抗肥満薬(マジンドール、シブトラミン)、不眠症改善薬(メラトニン)、抗リウマチ薬(アクタリット)などが挙げられる。このような薬物は、1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。また、遊離塩基および/または薬学的に許容される塩の形態で使用することもできる。なお、薬学的に許容される塩の形態は無機塩であっても有機塩であってもよい。このような無機塩および有機塩は特に制限されないが、例えば、無機塩としては、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硝酸、硫酸などの酸の付加塩、ナトリウム、カリウム、カルシウム、アンモニウムなどとの塩が挙げられる。また、有機塩としては、酢酸、クエン酸、酪酸、マレイン酸、リンゴ酸、フマル酸、コハク酸、シュウ酸、酒石酸などの酸の付加塩、トリエチルアミンなどとの塩が挙げられる。
【0037】
このような薬物(遊離塩基および薬学的に許容される塩の形態のものを含む)の中から本発明の医薬組成物に配合する薬物を選択する上で、薬物の経皮吸収性を飛躍的に向上させるという観点において、薬物の薬効よりもイオン性が重要な要素となる。すなわち、本発明の医薬組成物は、広範な経皮薬物治療に対して有効であり、医療産業上、新たな貢献をもたらすものである。
【0038】
上記例示した前記薬物(遊離塩基および薬学的に許容される塩の形態のものを含む)のうち、薬物の経皮吸収性がさらに高くなるという観点から、塩基性の官能基と酸性の官能基とを併せ持つ薬物(すなわち、両イオン性薬物)の遊離塩基および/または薬学的に許容される塩が好ましい。このような両イオン性薬物としては、アクタリット、アシタザノラスト、アンフェナク、セチリジンなどが挙げられ、中でも、セチリジンが好ましく、レボセチリジンがより好ましい。
【0039】
また、本発明の医薬組成物においては、前記薬物としてフェンタニルの遊離塩基および/または薬学的に許容される塩も好ましく、中でも、フェンタニルの遊離塩基がより好ましい。
【0040】
本発明の医薬組成物における前記薬物(遊離塩基および薬学的に許容される塩の形態のものを含む)の配合量としては、医薬組成物全体に対して、1〜30質量%が好ましく、2〜20質量%がより好ましい。前記薬物(遊離塩基および薬学的に許容される塩の形態のものを含む)の含有量が前記下限未満になると、薬効が十分に発現しない傾向にあり、他方、前記上限を超えると、本発明の医薬組成物を用いて貼付剤などの製剤を形成する場合に、粘着基剤などの製剤形成成分の配合量が少なくなり、製剤を形成しにくくなる傾向にある。
【0041】
また、経皮吸収促進剤の配合量としては、医薬組成物全体に対して、3.5〜45質量%が好ましく、6〜40質量%がより好ましい。したがって、本発明の医薬組成物全体に対して、前記架橋N−ビニルピロリドン重合体の配合量としては0.5〜10質量%が好ましく、モノラウリン酸プロピレングリコールの配合量としては2.5〜10質量%が好ましく、カルボン酸類の配合量としては0.5〜25質量%が好ましく、1〜20質量%がより好ましい。特に、前記カルボン酸類がカルボン酸である場合、その配合量としては0.5〜20質量%が好ましく、1〜18質量%がより好ましく、一方、前記カルボン酸類がカルボン酸の塩である場合、その配合量としては1〜25質量%が好ましく、1.5〜20質量%がより好ましい。経皮吸収促進剤やその各成分の配合量が前記下限未満になると、薬物の経皮吸収性が十分に向上しない傾向にあり、他方、前記上限を超えると、皮膚への刺激が強くなる恐れがある。
【0042】
また、本発明の医薬組成物には、必要に応じて粘着基剤を配合することができる。このような粘着基剤としては自己粘着力を有するものであれば特に制限はないが、疎水性高分子を含有する粘着基剤が好ましい。このような疎水性高分子としては、(メタ)アクリル系高分子、ゴム系高分子、シリコーン系高分子などが挙げられる。このような疎水性高分子は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0043】
前記(メタ)アクリル系高分子としては、2−エチルヘキシルアクリレート、メチルアクリレート、ブチルアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、2−エチルヘキシルメタアクリレート等に代表される(メタ)アクリル酸誘導体の少なくとも1種を用いて共重合せしめたものが挙げられ、例えば、アクリル酸・アクリル酸オクチルエステル共重合体、アクリル酸−2−エチルヘキシル・ビニルピロリドン共重合体、アクリル酸エステル・酢酸ビニル共重合体、アクリル酸−2−エチルヘキシル・メタクリル酸−2−エチルヘキシル・メタクリル酸ドデシル共重合体、アクリル酸メチル・アクリル酸−2−エチルヘキシル共重合体、アクリル樹脂アルカノールアミンが挙げられる。このような(メタ)アクリル系高分子を含有する粘着基剤は、DURO−TAKアクリル粘着剤シリーズ(ヘンケル社製)、オイドラギットシリーズ((株)樋口商会製)、GELVA(モンサント社製)、MAS(積水化学工業(株)製)などの市販品として入手することができる。
【0044】
前記ゴム系高分子としては、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、イソプレン、ポリイソブチレン(PIB)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−ブタジエン共重合体(SBR)、ポリシロキサンが挙げられる。これらのゴム系高分子の中でも、ポリイソブチレン及びスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体が好ましく、特にスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体が好ましい。
【0045】
前記シリコーン系高分子としては、ポリジメチルシロキサン類が挙げられ、BIO−PSAシリーズ(ダウコーニング社製)などの市販品として入手することができる。
【0046】
また、このような粘着基剤には粘着付与樹脂を配合してもよい。このような粘着付与樹脂としては、ロジン、ロジンのグリセリンエステル、水添ロジン、水添ロジンのグリセリンエステル、ロジンのペンタエリストールエステルといったロジン誘導体;脂環族飽和炭化水素樹脂(例えば「アルコンP100」、荒川化学工業製);脂肪族系炭化水素樹脂(例えば「クイントンB170」、日本ゼオン製);テルペン樹脂(例えば「クリアロンP−125」、ヤスハラケミカル製);マレイン酸レジンなどが挙げられる。このような粘着付与樹脂としては、特に水添ロジンのグリセリンエステル、脂環族飽和炭化水素樹脂、脂肪族系炭化水素樹脂、テルペン樹脂が好ましい。また、これらの粘着付与樹脂は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0047】
このような粘着付与樹脂を前記粘着基剤に配合する場合、その配合量としては、前記疎水性高分子100質量部に対して、100〜400質量部が好ましく、150〜300質量部がより好ましい。粘着付与樹脂の配合量が前記下限未満になると、十分な粘着力が得られない傾向にあり、他方、前記上限を超えると、皮膚への刺激が強くなる恐れがある。
【0048】
また、前記粘着基剤には可塑剤を配合してもよい。このような可塑剤としては、パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、芳香族系プロセスオイルといった石油系オイル;スクワラン;スクワレン;オリーブ油、ツバキ油、ひまし油、トール油、ラッカセイ油といった植物系オイル;シリコンオイル;ジブチルフタレート、ジオクチルフタレートといった二塩基酸エステル;液状ポリブテン、液状イソプレンゴムといった液状ゴム;ミリスチン酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジイソプロピルといった液状脂肪酸エステル類;ジエチレングリコール;ポリエチレングリコール;サリチル酸グリコール;プロピレングリコール;ジプロピレングリコール;トリアセチン;クエン酸トリエチル;クロタミトンなどが挙げられる。このような可塑剤の中でも、特に流動パラフィン、液状ポリブテン、ミリスチン酸イソプロピル、セバシン酸ジエチル、ラウリン酸ヘキシルが好ましい。また、これらの可塑剤は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0049】
このような可塑剤を前記粘着基剤に配合する場合、その配合量としては、前記疎水性高分子100質量部に対して、50〜200質量部が好ましく、75〜150質量部がより好ましい。可塑剤の配合量が前記下限未満になると、薬物の経皮吸収性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、本発明の医薬組成物を用いて貼付剤の粘着剤層を形成した場合に、貼付剤としての十分な凝集力を維持できない傾向にある。
【0050】
このような粘着基剤を本発明の医薬組成物に配合する場合、その配合量としては、医薬組成物全体に対して、25〜95.5質量%が好ましく、40〜92質量%がより好ましい。粘着基剤の配合量が前記下限未満になると、本発明の医薬組成物を用いて貼付剤を貼付剤の粘着剤層を形成した場合に、粘着剤層が形成されにくい傾向にあり、他方、前記上限を超えると、薬物の経皮吸収性が低下する傾向にある。
【0051】
また、本発明の医薬組成物には、安定化剤、抗酸化剤、充填剤、架橋剤、防腐剤、紫外線吸収剤などの添加剤を配合してもよい。抗酸化剤としては、トコフェロールおよびこれらのエステル誘導体、アスコルビン酸、アスコルビン酸ステアリン酸エステル、ノルジヒトログアヤレチン酸、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソールが好ましい。充填剤としては、炭酸カルシウム;炭酸マグネシウム;ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウムなどのケイ酸塩;ケイ酸;硫酸バリウム;硫酸カルシウム;亜鉛酸カルシウム;酸化亜鉛;酸化チタンが好ましい。架橋剤としては、アミノ樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、アルキド樹脂、不飽和ポリエステルなどの熱硬化性樹脂、イソシアネート化合物、ブロックイソシアネート化合物、有機系架橋剤、金属または金属化合物などの無機系架橋剤が好ましい。防腐剤としては、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチルが好ましい。紫外線吸収剤としては、p−アミノ安息香酸誘導体、アントラニル酸誘導体、サリチル酸誘導体、クマリン誘導体、アミノ酸系化合物、イミダゾリン誘導体、ピリミジン誘導体、ジオキサン誘導体が好ましい。
【0052】
このような各種添加剤を本発明の医薬組成物に配合する場合、その配合量としては、医薬組成物全体に対して、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましい。
【0053】
次に、本発明の貼付剤について説明する。本発明の貼付剤は、支持体と、この支持体上に配置され且つ本発明の医薬組成物により形成された粘着剤層とを備えるものである。前記粘着剤層の厚みとしては特に制限はないが、通常10〜300μmであることが好ましい。
【0054】
このような貼付剤は、公知の方法によって製造することができる。例えば、薬物と経皮吸収促進剤と粘着基剤とを含有する本発明の医薬組成物を支持体上に展延して粘着剤層を形成する。このとき、前記医薬組成物は、各成分を熱融解して液状にしてもよい(ホットメルト法)し、トルエン、ヘキサン、酢酸エチルなどの有機溶媒に各成分を溶解して(溶剤法)液状にしてもよい。溶剤法の場合、展延後に乾燥して有機溶媒を除去することによって粘着剤層を形成することができる。
【0055】
また、保護フィルム(剥離ライナー)を備える貼付剤を製造する場合には、上記のようにして形成した粘着剤層と保護フィルムを貼り合せてもよいし、保護フィルム上に薬物と経皮吸収促進剤と粘着基剤とを含有する本発明の医薬組成物を展延して粘着剤層を形成し、この粘着剤層と支持体とを貼り合わせてもよい。
【0056】
本発明にかかる支持体としては特に制限はなく、伸縮性のものであっても非伸縮性のものであってもよい。例えば、フィルム、シート、シート状多孔質体、シート状発泡体、織布、編布および不織布などの布帛ならびにこれらの積層体が挙げられる。このような支持体の材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、ポリ酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル−塩化ビニル共重合体、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ナイロンなどのポリアミド、ポリエチレンテレフタラートなどのポリエステル、ポリウレタン、セルロース誘導体といった合成樹脂が挙げられる。このような支持体の厚さとしては特に制限されないが、通常2〜3000μm程度であることが好ましい。また、これらの支持体には、コロナ処理、マット処理、アンカー処理などを施すことができる。マット処理方法としては、他の樹脂のブレンド、エンボス処理、サンドブラストなど、種々の方法が挙げられ、例えば、サンドブラスト処理を施した場合、支持体の表面に0.1〜5μmの凹凸粗面を形成することができる(以下、この処理加工を「サンドマット加工」という)。
【0057】
また、前記保護フィルムとしては特に制限はなく、伸縮性のものであっても非伸縮性のものであってもよい。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタラートなどのポリエステル、ポリ塩化ビニル、またはポリ塩化ビニリデンからなるシートおよびフィルム、紙、ならびにこれらの積層体が挙げられる。このような支持体の厚さとしては特に制限されないが、通常2〜3000μm程度であることが好ましい。また、このような保護フィルムの表面はシリコーンコーティングなどの離型処理が施されていることが好ましい。
【実施例】
【0058】
以下、実施例および比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、配合量は、特に断りのない限り、質量基準で示す。
【0059】
(実施例1)
架橋ポリN−ビニルピロリドン(BASFジャパン(株)製「コリドンCL」、以下、「クロスポビドン」という)、モノラウリン酸プロピレングリコール(以下、「PGML」と略す)、酢酸、酢酸ナトリウム(以下、「酢酸Na」と略す)、レボセチリジン・二塩酸塩((R)−[2−[4−[(4−クロロフェニル)フェニルメチル]−1−ピペラジニル]エトキシ]酢酸・二塩酸塩)、およびスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(以下、「SIS」と略す)100質量部と石油系粘着付与樹脂(以下、「Tf」と略す)200質量部と流動パラフィン(以下、「LP」と略す)100質量部とからなる粘着基剤(以下、「SIS/Tf/LP」と略す)を、表1に示す質量割合で混合し、この混合物にトルエンを添加して均一に溶解させ、固形分濃度40質量%の溶液を得た。この溶液を、保護フィルムであるポリエチレンテレフタラート製フィルム(剥離ライナー、厚み75μm)のシリコーン処理面上に乾燥後の厚みが100μmとなるように塗布し、70℃で10分間乾燥して溶媒を除去して粘着剤層を形成した。この粘着剤層上に、支持体であるポリエチレンテレフタラート製フィルム(マット加工、厚み25μm)を積層し、適当な大きさに裁断して貼付剤を得た。
【0060】
(比較例1)
クロスポビドンを混合せず、粘着基剤の質量割合を表1に示す質量割合に変更した以外は実施例1と同様にして貼付剤を作製した。
【0061】
(比較例2)
クロスポビドンの代わりに、ポリビニルピロリドン(以下、「PVP」と略す)を表1に示す質量割合で混合した以外は実施例1と同様にして貼付剤を作製した。
【0062】
【表1】

【0063】
<溶出試験>
保護フィルムを剥離した貼付剤を粘着剤層が外側となるように溶出試験機の回転シリンダーに装着した。その後、900mlの精製水を入れた丸底フラスコを溶出試験機に装着し、温度を32℃に設定した。次に、丸底フラスコの精製水中に回転シリンダーを浸漬し、速度50rpmで回転させた。その後、所定時間毎に溶出液10mlをサンプリングし、高速液体クロマトグラフ法によりレボセチリジン濃度を測定した。予め定量した貼付剤中のレボセチリジン含有量に基づいてサンプリング時間毎のレボセチリジン溶出率を算出した。その結果を図1に示す。
【0064】
図1に示した結果から明らかなように、クロスポビドンを含有する本発明の貼付剤(実施例1)は非常に高いレボセチリジン溶出率を示した。一方、クロスポビドンを含まない貼付剤(比較例1)およびクロスポビドンの代わりにPVPを含む貼付剤(比較例2)においては、レボセチリジン溶出率は非常に低いものであった。
【0065】
(実施例2)
クロスポビドン、PGML、乳酸ナトリウム(以下、「乳酸Na」と略す)、レボセチリジン・二塩酸塩、およびシリコーン系粘着基剤を、表2に示す質量割合で混合した以外は実施例1と同様にして貼付剤を作製した。
【0066】
(比較例3)
クロスポビドンを混合せず、粘着基剤の質量割合を表2に示す質量割合に変更した以外は実施例2と同様にして貼付剤を作製した。
【0067】
(比較例4)
PGMLを混合せず、粘着基剤の質量割合を表2に示す質量割合に変更した以外は実施例2と同様にして貼付剤を作製した。
【0068】
(比較例5)
クロスポビドンおよびPGMLを混合せず、粘着基剤の質量割合を表2に示す質量割合に変更した以外は実施例2と同様にして貼付剤を作製した。
【0069】
<in vitro皮膚透過試験>
ヘアレスマウスの背部の皮膚を摘出し、その角質層側に、保護フィルムを剥離した貼付剤を貼付し、真皮側をレセプター層側にして、37℃の温水を外周部に循環させたフロースルー型拡散セル(5cm)に装着した。レセプター層は生理食塩水を一定流量で置換させ、所定時間毎に溶液をサンプリングした。得られた溶液のレボセチリジン濃度を高速液体クロマトグラフ法により測定した。これらの測定結果から下記式に従って皮膚透過速度を求めた。
【0070】
皮膚透過速度(μg/cm/hr)={レボセチリジン濃度(μg/ml)
×流量(ml/hr)}/貼付剤の適用面積(cm
表2には、最大皮膚透過速度(Jmax)および24時間までの累積透過量を示す。
【0071】
【表2】

【0072】
表2に示した結果から明らかなように、クロスポビドンを含有する貼付剤(実施例1および比較例4)は、高いレボセチリジン皮膚透過性を示し、レボセチリジンの経皮吸収性に優れていることが確認された。一方、クロスポビドンを含まない貼付剤(比較例3、5)においては、レボセチリジンの皮膚透過性は低いものであった。
【0073】
(実施例3)
クロスポビドン、PGML、酢酸、酢酸Na、レボセチリジン・二塩酸塩、および粘着基剤(SIS/Tf/LP)を、表3に示す質量割合で混合した以外は実施例1と同様にして貼付剤を作製した。
【0074】
(比較例6〜14)
PGMLの代わりに表3に示すその他の成分を混合した以外は実施例3と同様にして貼付剤を作製した。
【0075】
(比較例15)
PGMLを混合せず、粘着基剤の質量割合を表3に示す質量割合に変更した以外は実施例3と同様にして貼付剤を作製した。
【0076】
実施例3および比較例6〜15で得られた貼付剤について、前記in vitro皮膚透過試験に記載の方法に従ってレボセチリジンの皮膚透過性を評価した。その結果を図2に示す。また、表3には最大皮膚透過速度(Jmax)を示す。
【0077】
【表3】

【0078】
図2および表3に示した結果から明らかなように、PGMLを含有する貼付剤(実施例3)は、高いレボセチリジン皮膚透過性を示し、レボセチリジンの経皮吸収性に優れていることが確認された。一方、PGMLの代わりに、他の脂肪族エステル、脂肪酸、または脂肪族アルコールを含有する貼付剤(比較例6〜14)、ならびにPGMLを含まない貼付剤(比較例15)においては、レボセチリジンの皮膚透過性は低いものであった。
【0079】
(実施例4〜8)
酢酸と酢酸Naの代わりに、表4に示すカルボン酸類を表4に示す質量割合で混合し、実施例5〜8においては粘着基剤の質量割合を表4に示す質量割合に変更した以外は実施例3と同様にして貼付剤を作製した。なお、表4には、実施例3の配合量も示した。
【0080】
(比較例16)
カルボン酸類を混合せず、粘着基剤の質量割合を表4に示す質量割合に変更した以外は実施例3と同様にして貼付剤を作製した。
【0081】
(比較例17〜18)
酢酸と酢酸Naの代わりに、ステアリン酸またはオレイン酸を表4に示す質量割合で混合し、粘着基剤の質量割合を表4に示す質量割合に変更した以外は実施例3と同様にして貼付剤を作製した。
【0082】
実施例4〜8および比較例16〜18で得られた貼付剤について、前記in vitro皮膚透過試験に記載の方法に従ってレボセチリジンの皮膚透過性を評価した。その結果を図3に示す。また、表4には最大皮膚透過速度(Jmax)を示す。なお、図3および表4には、実施例3の結果も示した。
【0083】
【表4】

【0084】
図3および表4に示した結果から明らかなように、本発明にかかる炭素数が1〜6の脂肪族炭化水素基を有するカルボン酸類を含有する貼付剤(実施例3〜8)は、カルボン酸を含有しない貼付剤(比較例16)および炭素数が7以上の脂肪族炭化水素基を有するカルボン酸を含有する貼付剤(比較例17〜18)に比べて、高いレボセチリジン皮膚透過性を示した。中でも、酢酸または乳酸を含有する貼付剤(実施例4〜5)は、より高いレボセチリジン皮膚透過性を示し、特に、乳酸を含有する貼付剤(実施例5)は、最も高いレボセチリジン皮膚透過性を示し、レボセチリジンの経皮吸収性が特に優れていることがわかった。
【0085】
(実施例9)
クロスポビドン、PGML、酢酸Na、フェンタニル・クエン酸塩、および粘着基剤(SIS/Tf/LP)を、表5に示す質量割合で混合した以外は実施例1と同様にして貼付剤を作製した。
【0086】
(比較例19)
クロスポビドンを混合せず、粘着基剤の質量割合を表5に示す質量割合に変更した以外は実施例9と同様にして貼付剤を作製した。
【0087】
(比較例20)
クロスポビドンの代わりに、ポリビニルピロリドン(PVP)を表5に示す質量割合で混合した以外は実施例9と同様にして貼付剤を作製した。
【0088】
実施例9および比較例19〜20で得られた貼付剤について、前記in vitro皮膚透過試験に記載の方法に従ってクエン酸フェンタニルの最大皮膚透過速度(Jmax)および24時間の累積透過量を求めた。これらの結果を表5に示す。
【0089】
【表5】

【0090】
表5に示した結果から明らかなように、クロスポビドンを含有する貼付剤(実施例9)は、高いフェンタニル皮膚透過性を示し、フェンタニルの経皮吸収性に優れていることが確認された。一方、クロスポビドンの代わりにPVPを含有する貼付剤(比較例19)においては、フェンタニル皮膚透過性が低下し、クロスポビドンもPVPも含有しない貼付剤(比較例20)においては、フェンタニル皮膚透過性はさらに低下した。
【産業上の利用可能性】
【0091】
以上説明したように、本発明によれば、薬物の経皮吸収性を飛躍的に向上させることが可能な経皮吸収促進剤、ならびに薬物の経皮吸収性に優れた医薬組成物および貼付剤をえることが可能となる。
【0092】
したがって、本発明の医薬組成物および貼付剤は、経皮吸収治療に使用することが可能であり、医薬・医療産業に新たな貢献をもたらすものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋したN−ビニルピロリドン重合体と、モノラウリン酸プロピレングリコールと、炭素数1〜6の脂肪族炭化水素基を有するカルボン酸およびその塩からなる群から選択される少なくとも1種のカルボン酸類とを含有することを特徴とする経皮吸収促進剤。
【請求項2】
前記カルボン酸類が、ヒドロキシカルボン酸、モノカルボン酸およびこれらの塩からなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載の経皮吸収促進剤。
【請求項3】
前記カルボン酸類が、乳酸、酢酸およびこれらのナトリウム塩からなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項2に記載の経皮吸収促進剤。
【請求項4】
前記カルボン酸類が、乳酸および乳酸ナトリウムからなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項3に記載の経皮吸収促進剤。
【請求項5】
前記架橋したN−ビニルピロリドン重合体がクロスポビドンであることを特徴とする請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載の経皮吸収促進剤。
【請求項6】
請求項1〜5のうちのいずれか一項に記載の経皮吸収促進剤と薬物とを含有することを特徴とする医薬組成物。
【請求項7】
前記薬物が両イオン性薬物の遊離塩基および/または薬学的に許容される塩であることを特徴とする請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記両イオン性薬物がセチリジンであることを特徴とする請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記セチリジンがレボセチリジンであることを特徴とする請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記薬物がフェンタニルの遊離塩基および/または薬学的に許容される塩であることを特徴とする請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記薬物がフェンタニルの遊離塩基であることを特徴とする請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項12】
支持体と、請求項6〜11のうちのいずれか一項に記載の医薬組成物により形成され且つ前記支持体上に配置された粘着剤層とを備えることを特徴とする貼付剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−140407(P2012−140407A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−268688(P2011−268688)
【出願日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【出願人】(000160522)久光製薬株式会社 (121)
【Fターム(参考)】