経皮的送達デバイスの最終滅菌法
最終滅菌された経皮的インフルエンザワクチン送達デバイスを与えるための方法及びシステム。複数の角質層貫通型マイクロプロジェクションを有するマイクロプロジェクション部材を、インフルエンザワクチンの充分な効力を保ちながら、インフルエンザワクチン配合物でコーティングし、充分な放射線に曝してマイクロプロジェクション部材を滅菌する。マイクロプロジェクション部材は、フォイルポーチなどのパッケージ内に密封することが好ましい。リテーナリング及び接着剤は、パッケージ内に含まれることがさらに好ましい。滅菌放射線はガンマ線又はe−ビーム線であってよく、約7〜21kGyの範囲の線量で送達することが好ましい。照射は−78.5〜25℃で実施することがさらに好ましい。好ましい実施形態では、約3.0kGy/hを超える割合で放射線を送達する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般的に、経皮的な物質送達システム及び方法に関する。より詳細には本発明は、インフルエンザワクチンを送達するように適合された経皮的デバイスの滅菌法に関する。
【背景技術】
【0002】
インフルエンザは、予想されるウイルスの各菌株用に設計された特異的ワクチンが一般に必要とされる、厄介な公の健康上の関心事である。インフルエンザウイルスは、表面糖タンパク質、ヘマグルチニン及びノイラミニダーゼの予想外の変化を示し、様々な抗原活性をもたらす。これらの変化は最終的に、新たなインフルエンザ菌株をもたらす。
【0003】
インフルエンザウイルスに対する免疫処置は、ウイルスのこの顕著な抗原的変化によって、及び呼吸粘膜に対する感染の制限によって限られる。現在市販及び認可されているインフルエンザワクチンは、全粒子不活化ウイルス、又はウイルス表面糖タンパク質のいずれかに基づく。
【0004】
インフルエンザウイルスは2つの表面抗原:ノイラミニダーゼとヘマグルチニンを含み、これらはインフルエンザの多大な抗原的変化をもたらす変化を経る。ヘマグルチニンは強力な免疫原であり、異なるウイルス菌株の血清学的特異性を定義する際に最も有意な抗原である。ヘマグルチニン分子(75〜80kD)は複数の抗原決定基を含み、その幾つかは異なる菌株において配列の変化を経る領域内に存在し(菌株特異的決定基)、他の抗原決定基は多くのHA分子に共通である領域内に存在する(共通決定基)。したがってヘマグルチニンは、有効なインフルエンザワクチンを形成するのに有用な基盤を与える。
【0005】
当技術分野でよく知られているように、皮膚は外部の危険から身体を保護する物理的障壁であるだけでなく、免疫系の必須部分でもある。皮膚の免疫機能は、先天的免疫と後天的免疫の両方を有する、生命力のある表皮及び真皮の存在する細胞と肩部構成要素の集合から生じ、集合的に皮膚免疫系として知られる。
【0006】
皮膚免疫系の最も重要な構成要素の1つは、生命力のある表皮中に見られる分化した抗原提示細胞であるランゲルハンス細胞(LC)である。LCは、周辺細胞間のそれらの樹状突起が広範囲に分岐することによって、生命力のある表皮中に半連続的なネットワークを形成する。LCの通常の機能は、抗原を検出、捕捉及び提示して、侵襲性病原体に対する免疫応答を誘発することである。上表皮の抗原に内在化し、広域の皮膚に広がるリンパ節に移動し、T細胞に対してプロセシング抗原を提示することによって、LCはその機能を果たす。
【0007】
皮膚免疫系の有効性は、皮膚を標的としている予防接種戦略の成功及び安全性の原因である。皮膚乱切りによる弱毒生天然痘ワクチンを用いた予防接種は、世界的な致死性天然痘疾患の根絶を首尾よくもたらしている。標準IM用量の様々なワクチンの1/5〜1/10を使用する皮膚内注射は、数種のワクチンを用いて免疫応答を誘導する際に有効となっている。
【0008】
したがって経皮的送達は、そうしなければ皮下注射又は静脈内注入によって送達することが必要となる、活性物質、特にヘマグルチニン抗原を投与するための実行可能な代替である。本明細書で使用する用語「経皮的」は、外科用ナイフによる切開又は皮下注射針による皮膚の貫通などの皮膚の実質的な切開又は浸透を伴わない、皮膚から局所組織又は全身循環系への、活性物質(例えば、タンパク質などの治療用物質、又はワクチンなどの免疫活性物質)の送達を指す一般用語である。したがって経皮的物質送達は、受動的拡散による皮内、皮膚内及び表皮内送達、並びに電気(例えばイオントフォレシス(iontophoresis))及び超音波(例えばフォノフォレシス(phonophoresis))などの外部エネルギー源に基づく送達を含む。
【0009】
より一般的である受動的経皮的物質送達システムは、高濃度の活性物質を含む薬剤リザーバを典型的には含む。リザーバは皮膚と接触するように適合されており、これによって患者の皮膚及び身体組織又は血流中に物質を拡散させることができる。
【0010】
当技術分野でよく知られているように、経皮的な薬剤の流動は、皮膚の状態、薬剤分子の大きさ及び物理的/化学的性質、並びに皮膚中の濃度勾配に依存する。多くの薬剤に対する皮膚の低い浸透性のために、経皮的送達は限られた用途を有している。この低い浸透性は、脂質二重層に囲まれるケラチン繊維が充満した平坦な死細胞(即ち、ケラチン生成細胞)からなる、角質層、最外殻皮膚層に主に原因がある。脂質二重層のこの高次構造は、角質層に比較的不浸透性である特徴を与える。
【0011】
受動的経皮的な拡散物質の流動を増大させる1つの一般的な方法は、最外殻皮膚層に機械的に浸透して皮膚中に微小経路を作製することを含む。最外殻皮膚層を機械的に浸透又は粉砕して皮膚中への経路を作製するために開発された、多くの技法及びデバイスが存在している。例示的なものとして、米国特許第3,964,482号中に開示された薬剤送達デバイスがある。
【0012】
経皮的な物質の送達を増大させるために小さな貫通型構成要素を使用する他のシステム及び装置は、いずれもその全容が参照として本明細書に組み込まれる、米国特許第5,879,326号、米国特許第3,814,097号、米国特許第5,250,023号、米国特許第3,964,482号、再発行番号25,637号、及びPCT公開番号WO96/37155、WO96/37256、WO96/17648、WO97/03718、WO98/11937、WO98/00193、WO97/48440、WO97/48441、WO97/48442、WO98/00193、WO99/64580、WO98/28037、WO98/29298、及びWO98/29365中に開示されている。
【0013】
開示されたシステム及び装置は、様々な形状及び大きさの貫通型構成要素を利用して皮膚の最外殻層(即ち、角質層)を貫通させる。これらの参照文献中に開示された貫通型構成要素は一般に、パッド又はシートなどの薄くて平らな部材から垂直に伸びている。これらのデバイスの幾つかの貫通型構成要素は非常に小さく、幾つかの貫通型構成要素はわずか約25〜400ミクロンのマイクロプロジェクション長、及びわずか約5〜50ミクロンのマイクロプロジェクション厚を有する。これらの小さな貫通型/切断構成要素は、そこを通じた経皮的な物質送達を増大させるための、小さなマイクロスリット/マイクロカットを角質層中に相応じて作製する。
【0014】
開示されたシステムはさらに、物質を保持するためのリザーバ、及びデバイス自体の中空タインなどによってリザーバから角質層へ物質を移動させるための送達システムも、典型的には含む。このようなデバイスの一例はWO93/17754中に開示されており、これは液体物質リザーバを有する。しかしながら、リザーバを加圧して、液体物質を小さな管状構成要素及び皮膚中に向けなければならない。このようなデバイスの欠点には、加圧式液体リザーバを加えることに関する追加的な複雑性及び出費、並びに圧力駆動型送達システムの存在による複雑性がある。
【0015】
参照として完全に本明細書に組み込まれる、米国特許出願第10/045,842号で開示されたように、送達する活性物質を物理的リザーバ中に含める代わりに、マイクロプロジェクションにコーティングすることも可能である。これによって別の物理的リザーバ、及びリザーバに特異的な物質の配合物又は組成物の開発の必要性を排除する。
【0016】
言及されているように、ヘマグルチニン抗原は現在、静脈内経路によってのみ送達されている。したがって、インフルエンザワクチンの経皮投与を容易にする物質送達システムを提供することが望ましいはずである。
【0017】
ヘマグルチニン抗原などの非経口医薬品は、滅菌性の厳しい標準を満たさなければならない。滅菌品を保証するための1つの従来法は、無菌製造法である。しかしながら、製造プロセスを通じて滅菌環境を維持する要求は、時間を浪費し、労力を要し、非常に高価である。
【0018】
無菌製造法に対して考えられる魅力的な代替法は、製造プロセスの最後に生成物を滅菌することである。最終滅菌は、安定した小分子に通常使用される。残念ながらこの方法は、より不安定な生物医薬品に関する重大な課題を呈する。特に、ヘマグルチニン抗原などの複雑な生物分子構造体は、治療活性を保つために分解から保護されなければならない。
【0019】
米国特許第6,346,216号及び米国特許第6,171,549号中でKentは、様々な生物分子を滅菌するための低い照射率の使用を開示している。しかしながらこれらの教示は、ワクチン又は経皮的送達デバイス用に調整した特異的条件を述べていない。Kentはさらに、生成物の安定性に対するパッケージの影響に関する如何なる議論も与えておらず、室温での照射に焦点を合わせている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
したがって本発明の目的は、インフルエンザワクチンを送達するように適合された経皮的デバイスを都合よく滅菌するための方法を提供することである。
【0021】
本発明のさらに他の目的は、無菌製造法よりコスト効率がよい、経皮的送達システムを滅菌するための方法を提供することである。
【0022】
本発明の他の目的は、経皮的送達に適合されたインフルエンザワクチンを最終滅菌するための方法を提供することである。
【0023】
本発明の他の目的は、滅菌中のインフルエンザワクチンの安定性を最適化するように適合された、経皮的送達デバイスに関するパッケージ条件を提供することである。
【0024】
本発明のさらに他の目的は、相当程度の活性を保持するインフルエンザワクチンを送達するための経皮的デバイスを、最終滅菌するための方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0025】
前述の目的、及び以下に言及し明らかになるはずである目的によれば、経皮的インフルエンザワクチン送達デバイスを最終滅菌するための方法及びシステムは、マイクロプロジェクション部材を提供するステップ、及びマイクロプロジェクション部材をガンマ線及びe−ビームからなる群から選択される放射線に曝すステップであって、放射線が所望の滅菌保証レベルに達するのに充分であるステップを含む。マイクロプロジェクション部材は、その上に配置された少なくとも1つのインフルエンザワクチンを有する生体適合性コーティングを有する、複数の角質層貫通型マイクロプロジェクションを含む。マイクロプロジェクション部材は、照射中にワクチンを保護するように適合されたパッケージ内に密封することが好ましい。一実施形態では、パッケージはフォイルポーチを含む。
【0026】
本発明の一態様では、マイクロプロジェクション部材を、パッケージ内にマイクロプロジェクション部材を密封する前にリテーナリング(retainer ring)上に取り付ける。好ましい実施形態では、リテーナリングと接着剤の両方を密封パッケージ内に含める。
【0027】
本発明は、照射を行う温度を調節することによって、滅菌中のインフルエンザワクチンの分解を抑制させることも含む。一実施形態では、約−78.5〜25℃の範囲の温度でマイクロプロジェクション部材を照射する。ドライアイス条件下において−78.5℃の温度で、マイクロプロジェクション部材を照射することができる。他の実施形態では、約0〜25℃の範囲の温度でマイクロプロジェクション部材を照射する。他の実施形態では、約20〜25℃の範囲の周囲温度で、マイクロプロジェクション部材を照射する。
【0028】
本発明によれば、マイクロプロジェクション部材は約7kGyである線量の放射線を受ける。他の実施形態では、線量は約14kGyである。さらに他の実施形態では、線量は約21kGyである。
【0029】
他の実施形態では本発明は、約3.0kGy/hを超える割合でマイクロプロジェクション部材を放射線に曝すことを含む。
【0030】
本発明の他の実施形態では、10−3の滅菌保証レベルを得るのに充分な放射線にマイクロプロジェクション部材を曝す。
【0031】
他の実施形態では本発明は、患者の角質層を貫通するように適合された複数のマイクロプロジェクションを含むマイクロプロジェクション部材であって、生体適合性コーティングを有するマイクロプロジェクションが、マイクロプロジェクション部材上に配置されており、コーティングが、少なくとも1つのインフルエンザワクチンを有するコーティング配合物から形成されているマイクロプロジェクション部材、及びマイクロプロジェクション部材周辺に密封されたワクチンを保護するように適合されたパッケージを含み、密封パッケージを放射線に曝してマイクロプロジェクション部材を滅菌している、経皮的インフルエンザワクチン送達システムである。一実施形態では、パッケージはフォイルポーチを含む。好ましくは、接着剤をマイクロプロジェクション部材と共にパッケージ内に密封する。さらに好ましくは、マイクロプロジェクション部材をリテーナリング上に取り付ける。
【0032】
他の実施形態では本発明は、インフルエンザワクチンを送達するように適合された経皮的システムであって、患者の角質層を貫通するように適合された複数のマイクロプロジェクションを含むマイクロプロジェクション部材、少なくとも1つのインフルエンザワクチンを有しマイクロプロジェクション部材と結合しているヒドロゲル配合物、及びマイクロプロジェクション部材周辺に密封されたワクチンを保護するように適合されたパッケージを含み、密封パッケージを放射線に曝してマイクロプロジェクション部材を滅菌している、経皮的システムである。
【0033】
他の実施形態では本発明は、インフルエンザワクチンを送達するように適合された経皮的システムであって、患者の角質層を貫通するように適合された複数のマイクロプロジェクションを含むマイクロプロジェクション部材、マイクロプロジェクション部材の近辺に配置され少なくとも1つのインフルエンザワクチンを有する固体フィルム、及びマイクロプロジェクション部材周辺に密封されたワクチンを保護するように適合されたパッケージを含み、密封パッケージを放射線に曝してマイクロプロジェクション部材を滅菌している、経皮的システムである。固体フィルムは、少なくとも1つのインフルエンザワクチン、ポリマー物質、可塑剤、界面活性剤及び揮発性溶媒を含む液体配合物をキャスティングすることによって作製することが好ましい。
【0034】
本発明の一実施形態では、マイクロプロジェクション部材は、少なくとも約10マイクロプロジェクション/cm2、より好ましくは少なくとも約200〜2000マイクロプロジェクション/cm2の範囲のマイクロプロジェクション密度を有する。
【0035】
一実施形態では、マイクロプロジェクション部材は、ステンレス鋼、チタン、ニッケルチタン合金、又は類似の生体適合性材料から構成されている。
【0036】
他の実施形態では、マイクロプロジェクション部材は、ポリマー材料などの非伝導性材料から構成されている。
【0037】
或いはマイクロプロジェクション部材は、Parylene(登録商標)などの非伝導性材料、又はTeflon(登録商標)、シリコンなどの疎水性材料、又は他の低エネルギー材料でコーティングすることができる。
【0038】
固形生体適合性コーティングを形成するためにマイクロプロジェクション部材に施すコーティング配合物は、水性及び非水性配合物を含むことができる。本発明の少なくとも1つの実施形態では、配合物は少なくとも1つのインフルエンザワクチンを含み、これは生体適合性担体に溶かすか或いは担体に懸濁することができる。
【0039】
インフルエンザワクチンは、三価インフルエンザワクチンであることが好ましい。例えば、三価ワクチン中の各菌株のHA含量は典型的には、1回のヒト用量に関して15μg、即ち合計45μgのHAに設定する。
【0040】
一実施形態では、APCが豊富な表皮層に45μgのヘマグルチニンを送達するようにシステムを適合されており、この場合少なくとも70%のインフルエンザワクチンが示した表皮層に送達される。
【0041】
他の特徴及び利点が、添付の図面で例示する通り、本発明の好ましい実施形態の以下のより詳細な記載から明らかになり、同じ参照符号は図中の同じ部分又は要素を一般に指す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
本発明を詳細に記載する前に、本発明は、詳細に例示した物質、方法又は構造に限られず、したがって当然ながら変わる可能性があることを理解されたい。したがって、本明細書に記載したものと類似する又は均等な幾つかの物質及び方法を、本発明を実施する際に使用することができるが、好ましい物質及び方法を本明細書に記載する。
【0043】
本明細書で使用する用語は、単に本発明の個々の実施形態を記載する目的のものにすぎず、制限するものではないことも理解されたい。
【0044】
他に定義しない限り、本明細書で使用する全ての技術及び科学用語は、本発明が属する分野の技術者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。
【0045】
さらに、本明細書に引用する全ての刊行物、特許及び特許出願は、上記又は下記のいずれも、その全容が参照として本明細書に組み込まれる。
【0046】
最後に、本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用するように、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その(the)」は、内容が他のことを明らかに示さない限り複数形を含む。したがって、例えば、「1つの抗原」への言及は2つ以上のこのような抗原を含み;「1つのマイクロプロジェクション」への言及は2つ以上のこのようなマイクロプロジェクションなどを含む。
【0047】
定義
本明細書で使用する用語「経皮的」は、局所又は全身療法用の皮膚中への且つ/又は皮膚を介した物質の送達を意味する。したがって用語「経皮的」は、受動的拡散による皮膚中且つ/或いは皮膚を介したワクチンなどの物質の皮内、皮膚内及び表皮内送達、並びにエネルギーに基づく拡散送達、イオントフォレシス及びフォノフォレシスなどを意味し、それらを含む。
【0048】
本明細書で使用する用語「経皮的流動」は、経皮的送達の割合を意味する。
【0049】
本明細書で使用する用語「インフルエンザワクチン」は、インフルエンザウイルスと関係がある1つ又は複数の抗原に対する免疫応答を助長する活性物質を指す。インフルエンザワクチンは、分離変異体ワクチンを含むことが好ましい。インフルエンザワクチンは、1つ又は複数の一価ヘマグルチニン抗原を含むことがより好ましい。ワクチンは、三価インフルエンザワクチンであることがさらにより好ましい。
【0050】
本明細書で使用する用語「同時送達」は、インフルエンザワクチンを送達する前、インフルエンザワクチンの経皮的流動の前及び最中、インフルエンザワクチンの経皮的流動の最中、インフルエンザワクチンの経皮的流動の最中及び後、且つ/或いはインフルエンザワクチンの経皮的流動の後のいずれかに、補助物質を経皮的に投与することを意味する。さらに、2つ以上のインフルエンザワクチンをコーティング及び/又はヒドロゲル配合物に配合し、インフルエンザワクチンの同時送達をもたらすことができる。
【0051】
2つ以上のインフルエンザワクチンを本発明の物質源、配合物、及び/又はコーティング及び/又は固体フィルム配合物中に取り込ませることができること、及び用語「インフルエンザワクチン」の使用は、決して2つ以上のこのような抗原の使用を排除するわけではないことは理解されよう。
【0052】
本明細書で使用する用語「マイクロプロジェクション」又は「マイクロプロトゥルージョン」は、生きている動物、詳細には哺乳動物、及びより詳細にはヒトの皮膚の角質層から根底表皮層、又は表皮及び真皮層に貫通又は横断するように適合された貫通型構成要素を指す。
【0053】
本発明の一実施形態では、貫通型構成要素は1000ミクロン未満のプロジェクション長を有する。他の実施形態では、貫通型構成要素は500ミクロン未満、より好ましくは250ミクロン未満のプロジェクション長を有する。マイクロプロジェクションはさらに、約25〜500ミクロンの範囲の幅(図1中に「W」で示す)及び約10〜100ミクロンの範囲の厚さを有する。マイクロプロジェクションは、ニードル、ブレード、ピン、パンチ、及びこれらの組合せなどの異なる形に形成することができる。
【0054】
本明細書で使用する用語「マイクロプロジェクション部材」は、角質層を貫通させるためのアレイ中に配置された複数のマイクロプロジェクションを含むマイクロプロジェクションアレイを一般に意味する。薄いシートから複数のマイクロプロジェクションをエッチング又はパンチングし、及びシートの平面からマイクロプロジェクションをホールディング又はベンディングして、図1中に示す形状などの形状を形成することによって、マイクロプロジェクション部材を形成することができる。その全容が参照として本明細書に組み込まれる米国特許第6,050,988号中に開示されたように、マイクロプロジェクション部材は、ストリップの各端に沿ってマイクロプロジェクションを有する1つ又は複数のストリップを形成することなどによって、他の知られている方法で形成することもできる。
【0055】
本明細書で使用する用語「コーティング配合物」は、マイクロプロジェクション及び/又はそのアレイをコーティングするために使用する、自由に流動する組成物又は混合物を意味し、それらを含むものとする。インフルエンザワクチンは、その中に配置される場合、配合物の溶液又は懸濁液であってよい。
【0056】
本明細書で使用する用語「生体適合性コーティング」及び「固体コーティング」は、実質的に固体形である「コーティング配合物」を意味し、それらを含むものとする。
【0057】
本明細書で使用する用語「生物学的に有効な量」又は「生物学的に有効な割合」は、望ましい免疫学的、しばしば有益な結果を刺激又は開始するために必要とされる、免疫活性物質の量又は割合を指す。本発明のコーティング中に利用する免疫活性物質の量は、望ましい免疫学的結果を得るのに必要な量の免疫活性物質を送達するのに必要な量であるはずである。実際これは、送達する個々の免疫活性物質、送達部位、並びに皮膚組織への免疫活性物質の送達に関する溶解及び放出動態に応じて、広く変わるはずである。
【0058】
本明細書で使用する用語「接着剤」は、マイクロプロジェクション部材を患者の適所に維持するのを助ける接着剤を意味し、それらを含むものとする。一般に、接着剤はパッチの形である。
【0059】
前に示したように、本発明は一般的に、製造プロセスの最後に経皮的送達システムを最終滅菌するための方法を含む。本発明は、滅菌済みの送達システムも含む。経皮的送達システムは、角質層から根底表皮層、又は表皮及び真皮層を貫通するように適合された複数のマイクロプロジェクション(又はそのアレイ)を有するマイクロプロジェクション部材(又はシステム)を含む。マイクロプロジェクション部材(又はシステム)は、インフルエンザワクチン(即ち、生体適合性コーティング、ヒドロゲル配合物及び固体フィルム配合物)の少なくとも1つの源又は送達媒体も含む。充分な放射線に曝して所望の滅菌保証レベルを得ることによって、経皮的送達システムを最終滅菌する。
【0060】
放射源としてコバルト−60を使用することなどによる従来の方法によって、ガンマ線を送達することができる。市販のコバルト−60滅菌装置は、約0.3Gy/h及び9.6kGy/hの範囲の照射率をもたらすことを、当業者は理解しているはずである。アメリシウム−241を使用することもでき、約0.3mGy/hを超える割合で一般に照射される。他の同位体を使用して、所望の割合でガンマ線を送達することもできる。e−ビーム線はガンマ線より実質的に高い割合、約100kGy/hなどで従来発生させている。好ましい実施形態では、所望の滅菌レベルに到達するのに充分な線量を得るのに必要とされる処理時間を最小にするために、線量の割合は3.0kGy/h以上である。
【0061】
最終滅菌に必要とされる放射線量は、滅菌するデバイスの微生物負荷と関係がある所望の滅菌保証レベル(SAL)に基づいて、従来の方法によって決定することができる。例えば、従来の非経口活性薬剤の送達システムは、10−6のSALを典型的には必要とする。本発明の他の実施形態では、比較的低い微生物負荷をインフルエンザワクチンに割り当てることができる、何故なら抗原物質は、より厳しいクロマトグラフィー法ではなくバイオアッセイによって典型的には評価されるからである。示した実施形態では、10−3のSALを使用して放射線量を調節することができる。以下で論じるように、低い滅菌性要件は最終滅菌プロセスの低い放射線量を可能にし、インフルエンザワクチンの抗原性の維持を助ける。
【0062】
したがって、インフルエンザワクチンを充填したマイクロプロジェクション部材の最終滅菌は、e−ビーム線又はガンマ線でシステムを照射することによって実施する。適切な線量は約10〜25kGyの範囲である。線量は少なくとも約7kGyであることが好ましい。線量は約14kGyであることがより好ましい。本発明により約21kGyの線量を使用することもできる。
【0063】
マイクロプロジェクション部材は、滅菌中にワクチンを保護するように適合されたパッケージ中に密封することが好ましい。一実施形態では、パッケージはフォイルポーチである。
【0064】
本発明の他の実施形態では、パッケージ内に密封する前に、アプリケータと共に使用するためにリテーナリング上にマイクロプロジェクション部材を取り付ける。
【0065】
本発明の他の実施形態では、接着剤をパッケージ内に含める。
【0066】
本発明の他の実施形態では、マイクロプロジェクション部材の照射は定義された温度で実施して、インフルエンザワクチンを安定状態にする。一実施形態では、約−78.5〜25℃の範囲の温度でマイクロプロジェクション部材を照射する。ドライアイス条件下において−78.5℃の温度で、マイクロプロジェクション部材を照射することができる。他の実施形態では、約0〜25℃の範囲の温度でマイクロプロジェクション部材を照射する。他の実施形態では、約20〜25℃の範囲の周囲温度で、マイクロプロジェクション部材を照射する。
【0067】
インフルエンザワクチンは、分離変異体ワクチンを含むことが好ましい。インフルエンザワクチンは、1つ又は複数の一価ヘマグルチニン抗原を含むことがより好ましい。ワクチンは、三価インフルエンザワクチンであることがさらにより好ましい。
【0068】
他の生物活性物質の最終滅菌に関する他の情報は、その全容が参照として本明細書に組み込まれる、2005年6月2日に出願された同時係属米国出願第60/687,636号、及び2005年6月2日に出願された第60/687,635号中で見ることができる。
【0069】
ここで図1及び2を参照すると、本発明と共に使用するためのマイクロプロジェクション部材30の一実施形態が示される。図1中に示すように、マイクロプロジェクション部材30は、複数のマイクロプロジェクション34を有するマイクロプロジェクションアレイ32を含む。マイクロプロジェクション34は、示した実施形態において開口部38を含むシートから、ほぼ90°の角度で伸びていることが好ましい。この実施形態では、マイクロプロジェクション34は、薄い金属シート36からの複数のマイクロプロジェクション34のエッチング又はパンチング、及びシート36の平面からのマイクロプロジェクション34のベンディングによって形成される。
【0070】
本発明の一実施形態では、マイクロプロジェクション部材30は少なくとも約10マイクロプロジェクション/cm2、より好ましくは少なくとも約200〜2000マイクロプロジェクション/cm2の範囲のマイクロプロジェクション密度を有する。好ましくは、ワクチンが通過する単位領域当たりの開口部の数は、少なくとも約10開口部/cm2且つ約2000開口部/cm2未満である。
【0071】
示すように、マイクロプロジェクション34は1000ミクロン未満のプロジェクション長を有することが好ましい。一実施形態では、マイクロプロジェクション34は500ミクロン未満、より好ましくは250ミクロン未満のプロジェクション長を有する。マイクロプロジェクション34はさらに、約25〜500ミクロンの範囲の幅及び約10〜100ミクロンの範囲の厚さを有することが好ましい。
【0072】
マイクロプロジェクション部材30の生体適合性を増大させるために(例えば、対象の皮膚への施用後の出血及び炎症を最小にするために)、他の実施形態では、マイクロプロジェクション34は好ましくは145μm未満、より好ましくは約50〜145μmの範囲、さらにより好ましくは約70〜140μmの範囲の長さを有する。さらに、マイクロプロジェクション部材30は、好ましくは100マイクロプロジェクション/cm2を超える、より好ましくは約200〜3000マイクロプロジェクション/cm2の範囲のマイクロプロジェクション密度を有するアレイを含む。
【0073】
マイクロプロジェクション部材30は、ステンレス鋼、チタン、ニッケルチタン合金などの様々な金属、又は類似の生体適合性材料から製造することができる。
【0074】
本発明によれば、マイクロプロジェクション部材30は、ポリマーなどの非伝導性材料から構成されていてもよい。
【0075】
或いはマイクロプロジェクション部材は、Parylene(登録商標)などの非伝導性材料、又はTeflon(登録商標)、シリコンなどの疎水性材料、又は他の低エネルギー材料でコーティングすることができる。記した疎水性材料及び関連ベース(例えばホトレジスト)層は、参照として本明細書に組み込まれる米国出願第60/484,142号中で述べられている。
【0076】
本発明と共に使用することができるマイクロプロジェクション部材には、その全容が参照として本明細書に組み込まれる米国特許第6,083,196号、第6,050,988号及び第6,091,975号中に開示された部材があるが、これらだけには限られない。
【0077】
本発明と共に使用することができる他のマイクロプロジェクション部材には、その全容が参照として本明細書に組み込まれる米国特許第5,879,326号中に開示された部材などの、シリコンチップエッチング技法を使用してシリコンをエッチングすることによって形成される部材、又はエッチングしたマイクロモールドを使用してプラスチックを成形することによって形成される部材がある。
【0078】
本発明によれば、宿主に投与するインフルエンザワクチンは、マイクロプロジェクション部材30上に配置された生体適合性コーティング中に含めることができ、或いはヒドロゲル配合物中に含めることができ、或いは生体適合性コーティングとヒドロゲル配合物の両方中に含めることができる。本発明のヒドロゲル配合物は、水系ヒドロゲルを含むことが好ましい。ヒドロゲルは、その高い水含量及び生体適合性のため好ましい配合物である。ヒドロゲルは、ゲルパックとして形成されることがさらに好ましい。
【0079】
マイクロプロジェクション部材がワクチン含有固体フィルム配合物を含む他の実施形態では、インフルエンザワクチンを生体適合性コーティング、ヒドロゲル配合物又は固体フィルム配合物、又は3つ全ての送達媒体中に含めることができる。
【0080】
一実施形態では、固体フィルムは少なくとも1つのインフルエンザワクチン、ヒドロキシエチルスターチ、デキストラン、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、メチルセルロース(MC)、ヒドロキシエチルメチルセルロース(HEMC)、エチルヒドロキシエチルセルロース(EHEC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ(n−ビニルピロリドン)及びプルロニックなどのポリマー物質、グリセロール、プロピレングリコール及びポリエチレングリコールなどの可塑剤、Tween20及びTween80などの界面活性剤、及び水、イソプロパノール、メタノール及びエタノールなどの揮発性溶媒を含む液体配合物をキャスティングすることによって作製する。
【0081】
一実施形態では、固体フィルムを生成するために使用する液体配合物は0.1〜20重量%のインフルエンザワクチン、5〜40重量%のポリマー、5〜40重量%の可塑剤、0〜2重量%の界面活性剤、及び残りは揮発性溶媒を含む。
【0082】
キャスティング及びその後の溶媒の蒸発の後、固体フィルムが生成する。
【0083】
インフルエンザワクチンは、固体フィルムを生成するために使用する液体配合物中に、約0.1〜2重量%の範囲の濃度で存在することが好ましい。
【0084】
本発明によれば、少なくとも1つのインフルエンザワクチンが、少なくとも1つの前述の送達媒体中に含まれる。送達媒体、したがってマイクロプロジェクションシステムにおいて使用するインフルエンザワクチンの量は、望ましい結果を得るための治療有効量のインフルエンザワクチンを送達するのに必要とされる量であるはずである。実際この量は、個々のインフルエンザワクチン、送達部位、状態の重度、及び望ましい治療効果に応じて大きく変わるはずである。
【0085】
一実施形態では、マイクロプロジェクション部材は少なくとも1つのインフルエンザワクチン、好ましくは三価ヘマグルチニンを含む生体適合性コーティングを含む。マイクロプロジェクション部材を、所望の滅菌保証レベルまで最終滅菌する。皮膚の角質層を貫通すると、ワクチン含有コーティングが体液(細胞内液及び腸液などの細胞外液)によって溶かされ、全身療法用に皮膚中に放出される(即ち、大量送達)。
【0086】
ここで図2を参照すると、インフルエンザワクチンの生体適合性コーティング35を含むマイクロプロジェクション34を有する、マイクロプロジェクション部材31が示される。本発明によれば、コーティング35はそれぞれのマイクロプロジェクション34を部分的或いは完全に覆うことができる。例えば、コーティング35はマイクロプロジェクション34上の乾燥パターンコーティングであってよい。マイクロプロジェクション34が形成される前又は後に、コーティング35を施すこともできる。
【0087】
本発明によれば、様々な既知の方法によって、コーティング35をマイクロプロジェクション34に施すことができる。コーティングは皮膚を貫通する部分、マイクロプロジェクション部材31又はマイクロプロジェクション34のみ(例えば先端39)に施すことが好ましい。
【0088】
1つのこのようなコーティング法は、ディップコーティングを含む。ディップコーティングは、コーティング溶液中にマイクロプロジェクション34を部分的或いは完全に浸すことによって、マイクロプロジェクションをコーティングするための手段として記載することができる。部分的含浸技法を使用することによって、マイクロプロジェクション34の先端39のみにコーティング35を制限することができる。
【0089】
他のコーティング法は、マイクロプロジェクション34の先端39へのコーティング35を同様に制限するローラーコーティング機構を利用するローラーコーティングを含む。ローラーコーティング法は、その全容が参照として本明細書に組み込まれる、米国出願第10/099,604号(公開番号2002/0132054)中に開示されている。記した出願中で詳細に論じられたように、この開示されたローラーコーティング法は、皮膚貫通中にマイクロプロジェクション34から容易に除去されない平滑なコーティングを提供する。
【0090】
本発明によれば、マイクロプロジェクション34は、孔(図示せず)、溝(図示せず)、表面不整(図示せず)又は同様の改変などの、コーティング35の体積を受け入れる且つ/或いは増大させるように適合された手段をさらに含むことができ、これらの手段は、その上に多量のコーティングを配置することができる増大した表面積を与える。
【0091】
本発明の範囲内で利用することができる他のコーティング法は、噴霧コーティングを含む。本発明によれば、噴霧コーティングはコーティング組成物のエアロゾル懸濁液の形成を含むことができる。一実施形態では、約10〜200ピコリットルの滴径を有するエアロゾル懸濁液を、マイクロプロジェクション34に噴霧し、次いで乾燥させる。
【0092】
パターンコーティングを利用して、マイクロプロジェクション34をコーティングすることもできる。分配する液体をマイクロプロジェクション表面上に配置するための分配システムを使用して、パターンコーティングを施すことができる。分配する液体の量は、0.1〜20ナノリットル/マイクロプロジェクションの範囲であることが好ましい。適切な正確な目盛り付きの液体ディスペンサーの例は、参照として本明細書に完全に組み込まれる米国特許第5,916,524号、5,743,960号、5,741,554号、及び5,738,728号中に開示されている。
【0093】
マイクロプロジェクションコーティング配合物又は溶液を、電場の使用によって一般に制御される、知られているソレノイドバルブ付きディスペンサー、任意選択の流体動力手段、及び配置手段を使用するインクジェット技術を使用して施すこともできる。印刷産業からの他の液体分配技術、又は当技術分野で知られている類似の液体分配技術を、本発明のパターンコーティングを施すために使用することができる。
【0094】
ここで、図3及び4を参照し、保存及び施用するために、その全容が参照として本明細書に組み込まれる米国出願第09/976,762号(公開第2002/0091357号)に詳細に記載されている通り、マイクロプロジェクション部材30は、接着タブ6によってリテーナリング40中で吊り下げられることが好ましい。
【0095】
マイクロプロジェクション部材をリテーナリング40中に置いた後に、マイクロプロジェクション部材を患者の皮膚に施す。その全容が参照として本明細書に組み込まれる同時係属米国出願第09/976,798号で開示されているインパクトアプリケータを使用して、マイクロプロジェクション部材を患者の皮膚に施すことが好ましい。前に論じたように、リテーナリング40はパッケージ前に予め乾燥させて、照射中のマイクロプロジェクション部材周辺の空気中の水分量を減らすことが好ましい。
【0096】
示したように、本発明の一実施形態によれば、固体生体適合性コーティングを形成するためにマイクロプロジェクション部材30に施すコーティング配合物は、少なくとも1つのインフルエンザワクチンを有する水性及び非水性配合物を含むことができる。本発明によれば、インフルエンザワクチンは生体適合性担体中に溶かすことができ、或いは担体中に懸濁させることができる。
【0097】
当技術分野でよく知られているように、インフルエンザウイルス粒子は多くのタンパク質成分、及びヒトにおいて防御抗HA抗体の誘導を担う主な表面抗原としてのヘマグルチニン(HA)からなる。免疫学的に、A型インフルエンザウイルスは2つの表面抗原:HA及びノイラミニダーゼ(NA)に基づいて亜型に分類される。これらの抗原、特にヘマグルチニンに対する免疫は感染の感染の可能性を低下させ、感染が生じた場合は疾患の重度を軽減する。
【0098】
循環型菌株の抗原特性は、毎年のワクチン中に含まれるウイルス菌株を選択するための基盤を与える。毎年インフルエンザワクチンは、来る冬に世界中を循環する可能性があるインフルエンザウイルスである、3つのウイルス菌株(通常は2つのA型及び1つのB型)を含む。A型及びB型インフルエンザは、その核タンパク質及びマトリクスタンパク質の違いによって区別することができる。A型は最も一般的な菌株であり、主なヒトの流行性疾患の原因である。したがって、インフルエンザワクチンは、三価インフルエンザワクチンを含むことが好ましい。例えば、三価ワクチン中の各菌株のHA含量は典型的には、1回のヒト用量に関して15μg、即ち合計45μgのHAに設定する。
【0099】
一実施形態では、インフルエンザワクチンの完全ヒト用量、即ち45μgのヘマグルチニンを、コーティングされたマイクロプロジェクションアレイによって、APCが豊富な表皮層、最も一般的な皮膚の免疫担当成分に経皮的に送達することができ、この場合少なくとも70%のインフルエンザワクチンが示した表皮層に送達される。さらに重要なことに、抗原は皮膚中で依然として免疫原性があり、強い抗体及び血清保護免疫応答を誘導する。適切なインフルエンザワクチン配合物に関する他の詳細は、その全容が参照として本明細書に組み込まれる、2005年3月18日に出願された同時係属米国出願第11/084,631号、及び2005年3月18日に出願された第11/084,635号中で見ることができる。
【0100】
ワクチン抗原と共にワクチンを含むことができる適切な免疫応答増強アジュバントには、非制限的に、リン酸アルミニウムゲル;水酸化アルミニウム;藻類グルカン:β−グルカン;コレラ毒素Bサブユニット;CRL1005:x=8及びy=205の平均値を有するABAブロックポリマー;γイヌリン:直鎖状(非分岐)β−D(2−>1)ポリフルクトフラノキシル−α−D−グルコース;Gerbuアジュバント:N−アセチルグルコースアミン−(β1−4)−N−アセチルムラミル−L−アラニル−D−グルタミン(GMDP)、ジメチルジオクタデシルアンモニウムクロリド(DDA)、亜鉛L−プロリン塩複合体(Zn−Pro−8);イミキモド(1−(2−メチルプロピル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミン;ImmTher(商標):N−アセチルグルコアミニル−N−アセチルムラミル−L−Ala−D−イソGlu−L−Ala−グリセロールジパルミテート;MTP−PEリポソーム:C59H108N6O19PNa−3H2O(MTP);ムラメチド:Nac−Mur−L−Ala−D−Gln−OCH3;プレウラン:β−グルカン;QS−21;S−28463:4−アミノ−a,a−ジメチル−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−1−エタノール;サルボペプチド:VQGEESNDK・HCl(IL−1β163−171ペプチド);及びスレオニル−MDP(Termurtide(商標)):N−アセチルムラミル−L−スレオニル−D−イソグルタミン、及びインターロイキン18、IL−2IL−12、IL−15がある。アジュバントには、DNAオリゴヌクレオチド、例えばCpG含有オリゴヌクレオチドなどもある。さらに、IL−18、IL−2IL−12、IL−15、IL−4、IL−10などの免疫調節リンホカイン、γインターフェロン、及びNFkappaB調節シグナルタンパク質をコードする核酸配列を使用することができる。
【0101】
本発明によれば、アジュバントの量及び型は、滅菌中のインフルエンザワクチンの安定性を最適化するように適合されることができる。
【0102】
コーティング配合物は、約500センチポイズ未満且つ3センチポイズを超える粘度を有することが好ましい。
【0103】
本発明の一実施形態では、マイクロプロジェクション表面から測定して、コーティング厚は25ミクロン未満、より好ましくは10ミクロン未満である。
【0104】
望ましいコーティング厚は、必要とされる用量、及びしたがって、用量を送達するのに必要なコーティング厚、シートの単位面積当たりのマイクロプロジェクション密度、コーティング組成物の粘度及び濃度並びに選択するコーティング法を含めた幾つかの要因に依存する。マイクロプロジェクション34に施すコーティング35の厚さは、インフルエンザワクチンの安定性を最適化するよう、適合させることができる。
【0105】
いずれの場合も、コーティングを施した後に、コーティング配合物を様々な手段によってマイクロプロジェクション34上に乾燥させる。本発明の好ましい実施形態では、コーティングされたマイクロプロジェクション部材30を周囲室温条件で乾燥させる。しかしながら、様々な温度及び湿度レベルを使用して、マイクロプロジェクション上にコーティング配合物を乾燥させることができる。さらに、コーティングされた部材を加熱、真空下又は乾燥剤で保存し、凍結乾燥させ、凍結乾燥又は同様の技法を使用してコーティングから残留水を除去することができる。
【0106】
皮膚障壁を介した薬剤輸送を容易にするために、広く様々なイオン導入法又は電子輸送システムに関して本発明を利用することもできることは、当業者によって理解されるはずである、何故なら本発明は、この点において決して制限されないからである。例示的な電子輸送薬剤送達システムは米国特許第5,147,296号、米国特許第5,080,646号、米国特許第5,169,382号及び米国特許第5,169,383号中に開示されており、これらの開示はその全容が参照として本明細書に組み込まれる。
【0107】
用語「電子輸送」は一般に、例えば皮膚、粘膜、爪などの身体の表面を介した有益な物質、例えばワクチン又は薬剤又は薬剤前駆体の移動を指す。物質の輸送は電位の印加によって誘導又は増大され、物質を送達するか或いは物質の送達を増大させる、或いは「逆」電子輸送に関しては、物質をサンプリングするか或いは物質のサンプリングを増大させる電流の印加をもたらす。ヒト身体中への、或いはヒト身体からの物質の電子輸送は、様々な方法で実施することができる。
【0108】
1つの広く使用されている電子輸送法であるイオントフォレシスは、帯電イオンの電気誘導型の輸送を含む。非帯電又は中性電荷分子の経皮的輸送(例えば、グルコースの経皮的サンプリング)に含まれる他の型の電子輸送法である電気浸透は、電場の影響下での膜を介した溶媒及び物質の移動を含む。さらに他の型の電子輸送法である電気穿孔法は、電気パルス、高電圧パルスを膜に施すことにより形成された孔を介した物質の移動を含む。
【0109】
多くの場合、2つ以上の示した方法を異なる程度で同時に実施することができる。したがって用語「電子輸送」は、その最も広い考えられる解釈で本明細書において与えて、物質が実際に輸送される特定の機構とは無関係に、少なくとも1つの帯電又は非帯電物質、或いはその混合物の電気誘導型又は増大型の輸送を含める。さらに、超音波導入又は圧電デバイスなどの他の輸送増大法を、本発明と共に使用することができる。
【実施例】
【0110】
以下の実施例を与えて、当業者に本発明をより明確に理解させ本発明を実施させることができる。以下の実施例は本発明の範囲を制限するものとして考えるべきではなく、単に本発明の例示として示すとして考えるべきである。
【0111】
(実施例1)
三価インフルエンザワクチンの配合物を調製し、マイクロプロジェクションアレイ上にコーティングした。コーティングしたアレイは、照射用にシンチレーションガラスバイアル内に置いた。サンプルは周囲温度でドライアイス下において7、14及び21kGyの線量のガンマ線及びe−ビーム線に曝した。照射後のコーティングしたアレイ中のヘマグルチニン含量は、一元放射免疫拡散アッセイ(SRID)及び2シンコニン酸タンパク質アッセイ(BCA)を使用して評価した。SRIDは、抗原と適切な抗血清が相互作用する沈殿の一部分の形成に関する。形成される部分は、試験調製物中に存在する抗原の量に正比例する。試験した抗原は、抗血清を含むアガロースゲル中のウエルに加えた。抗原と抗血清は相互作用し、拡散しウエル周辺の部分中に沈殿する。クーマシーブルー染色によって、その部分を目に見える状態にした。試験した抗原の直径を次いで参照標準と比較して、抗原の量を定量化した。SRIDは、インフルエンザワクチン用の唯一認められているin vitro効力のアッセイである。当業者は理解しているはずであるが、ヘマグルチニンの効力は免疫原性と非常に関係がある。
【0112】
図5〜7は、インフルエンザワクチンをコーティングしたマイクロプロジェクションアレイ先端の形態を示す、走査型電子顕微鏡写真の図である。図5は照射しなかった対照アレイの形態を示し、一方図6及び図7は、それぞれ21kGyのガンマ線及びe−ビーム線で照射したマイクロプロジェクションアレイの先端を示す。見ることができるように、照射したアレイの先端の形状及び表面の滑らかさは、対照アレイから実質的に変わらなかった。これは、コーティングの物理的特性は滅菌照射によって悪影響を受けないことを示す。
【0113】
照射したマイクロプロジェクションアレイに関するSRIDアッセイの結果は、それぞれガンマ線及びe−ビームに関する図8及び9中に示す。一般に、ガンマ線とe−ビーム線の両方がほぼ同じ程度でインフルエンザワクチンに影響を与え、特に高い放射線量でヘマグルチニンの効力を低下させた。さらに、B/Shangdong菌株は滅菌手順に対して高い感度を示した。これらの結果はさらに、照射線量の低下はヘマグルチニン効力の維持を助長したことを実証した。例えば、7kGyにおいて20%未満の効力の消失を観察した。さらにこの実験は、低い照射温度は効力の消失を減らし、ドライアイス下で最良の結果を得たことを実証した。
【0114】
図10は、照射したマイクロプロジェクションアレイの合計タンパク質含量を示す。BCA分析はさらに、コーティングの水溶性を実証する。理解され得るように、低下したタンパク質含量に関する弱い溶解性はワクチン配合物の有意な化学変化を示す。特にこの試験は、それぞれのサンプル中のタンパク質含量を完全に回収したことを示した。したがって、このことは、ワクチンコーティングの溶解性はこの照射手順によって不変であった良い指標である。
【0115】
(実施例2)
三価インフルエンザワクチンの配合物を調製し、マイクロプロジェクションアレイ上にコーティングした。サンプルは20〜25℃の周囲温度でドライアイス下において、7及び14kGyの線量のガンマ線及びe−ビーム線に曝した。数個のマイクロプロジェクションアレイを、ポリカーボネート製リテーナリング及び接着剤を用いて構築し、次いでフォイルポーチ中にパッケージした。照射後のコーティングしたアレイ中のヘマグルチニン含量を、SRID及びBCAを使用して評価した。
【0116】
図11〜13は、インフルエンザワクチンをコーティングしたマイクロプジェクションアレイ先端の形態を示す、走査型電子顕微鏡写真の図である。図11は照射しなかった対照アレイの形態を示し、一方図6及び図7は、それぞれガラスバイアル及びフォイルポーチ中において14kGyのガンマ線で照射した、マイクロプロジェクションアレイの先端を示す。見ることができるように、照射したアレイの先端の形状及び表面の滑らかさは、対照アレイから実質的に変わらなかった。これらの結果は実施例1中で報告した結果を確証し、コーティングの物理的特性は滅菌照射によって悪影響を受けないことを示す。
【0117】
さらに図14は、この試験におけるタンパク質回収は実施例1のそれに匹敵したことを示す。特にBCA分析は、ワクチンコーティングの溶解性はこの照射手順によって不変であったことを示した。
【0118】
照射したサンプルはSRIDによってもアッセイした、結果は図15中に示す。ガラスバイアル中に含まれていたサンプルに関しては、14kGy線量での劣化は相当であり、ドライアイス下で40%の効力が消失し周囲温度では50%を超える効力が消失した。線量の影響は顕著である、何故なら7kGyの線量を与えたサンプルは、相当の効力の消失を被らなかったからである。示された1つの重要な結果は、周囲温度で14kGyの高線量においてさえ、完全構築及びフォイルポーチ中にパッケージしたサンプルに関して効力が保たれたことである。したがってこの実施例は、インフルエンザワクチンでコーティングした構築及びパッケージアレイを、効率良く最終滅菌することができたことを実証した。
【0119】
(実施例3)
実施例1中と同様に、三価インフルエンザワクチンの配合物を調製し、マイクロプロジェクションアレイ上にコーティングした。サンプルには周囲温度でドライアイス下において、7及び14kGyの線量のガンマ線を施した。マイクロプロジェクションアレイをマイクロプロジェクションシステムの様々な構成要素でパッケージして、照射中のワクチンの安定性に対するこれらの構成要素の影響を評価した。1つのサンプルに、照射の代わりにエチレンオキシド滅菌を施した。滅菌後のコーティングしたアレイ中のヘマグルチニン含量を、SRID及びBCAを使用して評価した。この実施例に関するパッケージ及び滅菌プロトコルは表1中に与える。
【表1】
【0120】
図16及び17は、エチレンオキシド滅菌後のグループ10の、コーティングしたマイクロプジェクションアレイ先端の形態の異なる外観を示す、走査型電子顕微鏡写真の図である。示したように、ワクチンコーティングの物理的特性に関して、著しい有害な影響は観察されなかった。対照的に、hPTHなどのさらに吸湿性の薬理物質は、許容できない形態変化を経る。したがって、インフルエンザワクチンなどの比較的低い吸湿性を有する活性物質の配合物に、コーティングを著しく損傷させずにエチレンオキシド滅菌を施すことができる。
【0121】
この試験におけるサンプルのBCA分析は、前の実施例で得た結果をたどった、何故なら各システムにおいてタンパク質含量を完全に回収したからである。前に論じたように、このことは、ワクチンコーティングの溶解性はこの照射手順によって不変であったことを示す。これらの発見は同様に、照射はインフルエンザワクチンの配合物の化学組成に劇的に影響を与えないことを示す。
【0122】
照射したサンプルはSRIDによってもアッセイした、結果は図18中に示す。この試験は、完全にパッケージしたマイクロプロジェクションシステムは、21kGyの高線量においてさえ充分な効力の保持をもたらしたことを実証した。実際、ドライアイス下でのグループ3に関する効力の保持は最小の効力消失のみを示した。この試験はさらに、ガラスバイアルと反対のフォイルポーチパッケージアレイに関する改善された結果を示した。詳細にはグループ8及び9は、特にB/Shangdong及びA/Panama菌株に関して14kGyの線量で相当な効力の消失を経験した。
【0123】
この実施例はさらに、マイクロプロジェクションシステムの構成要素は、照射中にインフルエンザワクチンの安定性に影響を与えることを示す。グループ5〜7に関する結果によって示されたように、フォイルポーチ、次に接着剤及び次いでリテーナリングが最大の保護をもたらすようである。
【0124】
さらに、エチレンオキシド滅菌を施したサンプルは、ほぼ完全な効力を保持していた。したがってこれらの結果は、エチレンオキシドを使用して、物理的特性又はヘマグルチニンの効力に有害な影響を与えずに、経皮的インフルエンザワクチン送達システムを効率良く滅菌することができることを示す。
【0125】
前述の実施例及び考察によって示したように、本発明の方法を使用して効力をほとんど或いは全く低下させずに、ヘマグルチニン抗原などのインフルエンザワクチンを含むコーティング配合物を有するマイクロプロジェクション部材を、ガンマ線又はe−ビーム線処理によって最終滅菌することができる。マイクロプロジェクション部材のパッケージは、最終滅菌プロセス中にワクチンを保護するように適合されることが好ましい。例えば、密封フォイルポーチは相当な安定効果を有する。パッケージ前にマイクロプロジェクション部材をリテーナリング上に取り付け、接着剤を用いて構築することがさらに好ましい。
【0126】
さらに、温度を調節すること又は滅菌線量を低下させることによって、最終滅菌プロセス中の生成物の劣化を減らすこともできる。
【0127】
本発明の精神及び範囲から逸脱せずに、当業者は本発明に対するさまざまな変形及び変更形態を作製して、さまざまな使用及び条件にそれを適合されることができる。このように、これらの変形及び変更形態は、正確に、公平に、以下の特許請求の範囲の均等物の全範囲内に存在すると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0128】
【図1】マイクロプロジェクション部材の一例の一部分の斜視図である。
【図2】本発明による、マイクロプロジェクション上に配置されたコーティングを有する、図1中に示すマイクロプロジェクション部材の斜視図である。
【図3】本発明による、その上に配置されたマイクロプロジェクション部材を有するリテーナの側断面図である。
【図4】図3中に示すリテーナの斜視図である。
【図5】本発明による、照射後のコーティング形態を示す顕微鏡写真の図である。
【図6】本発明による、照射後のコーティング形態を示す顕微鏡写真の図である。
【図7】本発明による、照射後のコーティング形態を示す顕微鏡写真の図である。
【図8】本発明による、様々なガンマ線レベル及び温度後のヘマグルチニンの効力を示すグラフである。
【図9】本発明による、様々なe−ビーム線レベル及び温度後のヘマグルチニンの効力を示すグラフである。
【図10】本発明による、様々な温度で照射したヘマグルチニンの合計タンパク質含量を示すグラフである。
【図11】本発明による、ガンマ線照射後のコーティング形態を示す顕微鏡写真の図である。
【図12】本発明による、ガンマ線照射後のコーティング形態を示す顕微鏡写真の図である。
【図13】本発明による、ガンマ線照射後のコーティング形態を示す顕微鏡写真の図である。
【図14】本発明による、選択した環境条件下において様々な放射線量に曝した後の、タンパク質含量を示すグラフである。
【図15】本発明による、選択した環境条件下における照射後のヘマグルチニンの効力を示すグラフである。
【図16】本発明による、エチレンオキシド滅菌後のコーティング形態を示す顕微鏡写真の図である。
【図17】本発明による、エチレンオキシド滅菌後のコーティング形態を示す顕微鏡写真の図である。
【図18】本発明による、様々なシステム構成要素の照射後のタンパク質含量を示すグラフである。
【技術分野】
【0001】
本発明は一般的に、経皮的な物質送達システム及び方法に関する。より詳細には本発明は、インフルエンザワクチンを送達するように適合された経皮的デバイスの滅菌法に関する。
【背景技術】
【0002】
インフルエンザは、予想されるウイルスの各菌株用に設計された特異的ワクチンが一般に必要とされる、厄介な公の健康上の関心事である。インフルエンザウイルスは、表面糖タンパク質、ヘマグルチニン及びノイラミニダーゼの予想外の変化を示し、様々な抗原活性をもたらす。これらの変化は最終的に、新たなインフルエンザ菌株をもたらす。
【0003】
インフルエンザウイルスに対する免疫処置は、ウイルスのこの顕著な抗原的変化によって、及び呼吸粘膜に対する感染の制限によって限られる。現在市販及び認可されているインフルエンザワクチンは、全粒子不活化ウイルス、又はウイルス表面糖タンパク質のいずれかに基づく。
【0004】
インフルエンザウイルスは2つの表面抗原:ノイラミニダーゼとヘマグルチニンを含み、これらはインフルエンザの多大な抗原的変化をもたらす変化を経る。ヘマグルチニンは強力な免疫原であり、異なるウイルス菌株の血清学的特異性を定義する際に最も有意な抗原である。ヘマグルチニン分子(75〜80kD)は複数の抗原決定基を含み、その幾つかは異なる菌株において配列の変化を経る領域内に存在し(菌株特異的決定基)、他の抗原決定基は多くのHA分子に共通である領域内に存在する(共通決定基)。したがってヘマグルチニンは、有効なインフルエンザワクチンを形成するのに有用な基盤を与える。
【0005】
当技術分野でよく知られているように、皮膚は外部の危険から身体を保護する物理的障壁であるだけでなく、免疫系の必須部分でもある。皮膚の免疫機能は、先天的免疫と後天的免疫の両方を有する、生命力のある表皮及び真皮の存在する細胞と肩部構成要素の集合から生じ、集合的に皮膚免疫系として知られる。
【0006】
皮膚免疫系の最も重要な構成要素の1つは、生命力のある表皮中に見られる分化した抗原提示細胞であるランゲルハンス細胞(LC)である。LCは、周辺細胞間のそれらの樹状突起が広範囲に分岐することによって、生命力のある表皮中に半連続的なネットワークを形成する。LCの通常の機能は、抗原を検出、捕捉及び提示して、侵襲性病原体に対する免疫応答を誘発することである。上表皮の抗原に内在化し、広域の皮膚に広がるリンパ節に移動し、T細胞に対してプロセシング抗原を提示することによって、LCはその機能を果たす。
【0007】
皮膚免疫系の有効性は、皮膚を標的としている予防接種戦略の成功及び安全性の原因である。皮膚乱切りによる弱毒生天然痘ワクチンを用いた予防接種は、世界的な致死性天然痘疾患の根絶を首尾よくもたらしている。標準IM用量の様々なワクチンの1/5〜1/10を使用する皮膚内注射は、数種のワクチンを用いて免疫応答を誘導する際に有効となっている。
【0008】
したがって経皮的送達は、そうしなければ皮下注射又は静脈内注入によって送達することが必要となる、活性物質、特にヘマグルチニン抗原を投与するための実行可能な代替である。本明細書で使用する用語「経皮的」は、外科用ナイフによる切開又は皮下注射針による皮膚の貫通などの皮膚の実質的な切開又は浸透を伴わない、皮膚から局所組織又は全身循環系への、活性物質(例えば、タンパク質などの治療用物質、又はワクチンなどの免疫活性物質)の送達を指す一般用語である。したがって経皮的物質送達は、受動的拡散による皮内、皮膚内及び表皮内送達、並びに電気(例えばイオントフォレシス(iontophoresis))及び超音波(例えばフォノフォレシス(phonophoresis))などの外部エネルギー源に基づく送達を含む。
【0009】
より一般的である受動的経皮的物質送達システムは、高濃度の活性物質を含む薬剤リザーバを典型的には含む。リザーバは皮膚と接触するように適合されており、これによって患者の皮膚及び身体組織又は血流中に物質を拡散させることができる。
【0010】
当技術分野でよく知られているように、経皮的な薬剤の流動は、皮膚の状態、薬剤分子の大きさ及び物理的/化学的性質、並びに皮膚中の濃度勾配に依存する。多くの薬剤に対する皮膚の低い浸透性のために、経皮的送達は限られた用途を有している。この低い浸透性は、脂質二重層に囲まれるケラチン繊維が充満した平坦な死細胞(即ち、ケラチン生成細胞)からなる、角質層、最外殻皮膚層に主に原因がある。脂質二重層のこの高次構造は、角質層に比較的不浸透性である特徴を与える。
【0011】
受動的経皮的な拡散物質の流動を増大させる1つの一般的な方法は、最外殻皮膚層に機械的に浸透して皮膚中に微小経路を作製することを含む。最外殻皮膚層を機械的に浸透又は粉砕して皮膚中への経路を作製するために開発された、多くの技法及びデバイスが存在している。例示的なものとして、米国特許第3,964,482号中に開示された薬剤送達デバイスがある。
【0012】
経皮的な物質の送達を増大させるために小さな貫通型構成要素を使用する他のシステム及び装置は、いずれもその全容が参照として本明細書に組み込まれる、米国特許第5,879,326号、米国特許第3,814,097号、米国特許第5,250,023号、米国特許第3,964,482号、再発行番号25,637号、及びPCT公開番号WO96/37155、WO96/37256、WO96/17648、WO97/03718、WO98/11937、WO98/00193、WO97/48440、WO97/48441、WO97/48442、WO98/00193、WO99/64580、WO98/28037、WO98/29298、及びWO98/29365中に開示されている。
【0013】
開示されたシステム及び装置は、様々な形状及び大きさの貫通型構成要素を利用して皮膚の最外殻層(即ち、角質層)を貫通させる。これらの参照文献中に開示された貫通型構成要素は一般に、パッド又はシートなどの薄くて平らな部材から垂直に伸びている。これらのデバイスの幾つかの貫通型構成要素は非常に小さく、幾つかの貫通型構成要素はわずか約25〜400ミクロンのマイクロプロジェクション長、及びわずか約5〜50ミクロンのマイクロプロジェクション厚を有する。これらの小さな貫通型/切断構成要素は、そこを通じた経皮的な物質送達を増大させるための、小さなマイクロスリット/マイクロカットを角質層中に相応じて作製する。
【0014】
開示されたシステムはさらに、物質を保持するためのリザーバ、及びデバイス自体の中空タインなどによってリザーバから角質層へ物質を移動させるための送達システムも、典型的には含む。このようなデバイスの一例はWO93/17754中に開示されており、これは液体物質リザーバを有する。しかしながら、リザーバを加圧して、液体物質を小さな管状構成要素及び皮膚中に向けなければならない。このようなデバイスの欠点には、加圧式液体リザーバを加えることに関する追加的な複雑性及び出費、並びに圧力駆動型送達システムの存在による複雑性がある。
【0015】
参照として完全に本明細書に組み込まれる、米国特許出願第10/045,842号で開示されたように、送達する活性物質を物理的リザーバ中に含める代わりに、マイクロプロジェクションにコーティングすることも可能である。これによって別の物理的リザーバ、及びリザーバに特異的な物質の配合物又は組成物の開発の必要性を排除する。
【0016】
言及されているように、ヘマグルチニン抗原は現在、静脈内経路によってのみ送達されている。したがって、インフルエンザワクチンの経皮投与を容易にする物質送達システムを提供することが望ましいはずである。
【0017】
ヘマグルチニン抗原などの非経口医薬品は、滅菌性の厳しい標準を満たさなければならない。滅菌品を保証するための1つの従来法は、無菌製造法である。しかしながら、製造プロセスを通じて滅菌環境を維持する要求は、時間を浪費し、労力を要し、非常に高価である。
【0018】
無菌製造法に対して考えられる魅力的な代替法は、製造プロセスの最後に生成物を滅菌することである。最終滅菌は、安定した小分子に通常使用される。残念ながらこの方法は、より不安定な生物医薬品に関する重大な課題を呈する。特に、ヘマグルチニン抗原などの複雑な生物分子構造体は、治療活性を保つために分解から保護されなければならない。
【0019】
米国特許第6,346,216号及び米国特許第6,171,549号中でKentは、様々な生物分子を滅菌するための低い照射率の使用を開示している。しかしながらこれらの教示は、ワクチン又は経皮的送達デバイス用に調整した特異的条件を述べていない。Kentはさらに、生成物の安定性に対するパッケージの影響に関する如何なる議論も与えておらず、室温での照射に焦点を合わせている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
したがって本発明の目的は、インフルエンザワクチンを送達するように適合された経皮的デバイスを都合よく滅菌するための方法を提供することである。
【0021】
本発明のさらに他の目的は、無菌製造法よりコスト効率がよい、経皮的送達システムを滅菌するための方法を提供することである。
【0022】
本発明の他の目的は、経皮的送達に適合されたインフルエンザワクチンを最終滅菌するための方法を提供することである。
【0023】
本発明の他の目的は、滅菌中のインフルエンザワクチンの安定性を最適化するように適合された、経皮的送達デバイスに関するパッケージ条件を提供することである。
【0024】
本発明のさらに他の目的は、相当程度の活性を保持するインフルエンザワクチンを送達するための経皮的デバイスを、最終滅菌するための方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0025】
前述の目的、及び以下に言及し明らかになるはずである目的によれば、経皮的インフルエンザワクチン送達デバイスを最終滅菌するための方法及びシステムは、マイクロプロジェクション部材を提供するステップ、及びマイクロプロジェクション部材をガンマ線及びe−ビームからなる群から選択される放射線に曝すステップであって、放射線が所望の滅菌保証レベルに達するのに充分であるステップを含む。マイクロプロジェクション部材は、その上に配置された少なくとも1つのインフルエンザワクチンを有する生体適合性コーティングを有する、複数の角質層貫通型マイクロプロジェクションを含む。マイクロプロジェクション部材は、照射中にワクチンを保護するように適合されたパッケージ内に密封することが好ましい。一実施形態では、パッケージはフォイルポーチを含む。
【0026】
本発明の一態様では、マイクロプロジェクション部材を、パッケージ内にマイクロプロジェクション部材を密封する前にリテーナリング(retainer ring)上に取り付ける。好ましい実施形態では、リテーナリングと接着剤の両方を密封パッケージ内に含める。
【0027】
本発明は、照射を行う温度を調節することによって、滅菌中のインフルエンザワクチンの分解を抑制させることも含む。一実施形態では、約−78.5〜25℃の範囲の温度でマイクロプロジェクション部材を照射する。ドライアイス条件下において−78.5℃の温度で、マイクロプロジェクション部材を照射することができる。他の実施形態では、約0〜25℃の範囲の温度でマイクロプロジェクション部材を照射する。他の実施形態では、約20〜25℃の範囲の周囲温度で、マイクロプロジェクション部材を照射する。
【0028】
本発明によれば、マイクロプロジェクション部材は約7kGyである線量の放射線を受ける。他の実施形態では、線量は約14kGyである。さらに他の実施形態では、線量は約21kGyである。
【0029】
他の実施形態では本発明は、約3.0kGy/hを超える割合でマイクロプロジェクション部材を放射線に曝すことを含む。
【0030】
本発明の他の実施形態では、10−3の滅菌保証レベルを得るのに充分な放射線にマイクロプロジェクション部材を曝す。
【0031】
他の実施形態では本発明は、患者の角質層を貫通するように適合された複数のマイクロプロジェクションを含むマイクロプロジェクション部材であって、生体適合性コーティングを有するマイクロプロジェクションが、マイクロプロジェクション部材上に配置されており、コーティングが、少なくとも1つのインフルエンザワクチンを有するコーティング配合物から形成されているマイクロプロジェクション部材、及びマイクロプロジェクション部材周辺に密封されたワクチンを保護するように適合されたパッケージを含み、密封パッケージを放射線に曝してマイクロプロジェクション部材を滅菌している、経皮的インフルエンザワクチン送達システムである。一実施形態では、パッケージはフォイルポーチを含む。好ましくは、接着剤をマイクロプロジェクション部材と共にパッケージ内に密封する。さらに好ましくは、マイクロプロジェクション部材をリテーナリング上に取り付ける。
【0032】
他の実施形態では本発明は、インフルエンザワクチンを送達するように適合された経皮的システムであって、患者の角質層を貫通するように適合された複数のマイクロプロジェクションを含むマイクロプロジェクション部材、少なくとも1つのインフルエンザワクチンを有しマイクロプロジェクション部材と結合しているヒドロゲル配合物、及びマイクロプロジェクション部材周辺に密封されたワクチンを保護するように適合されたパッケージを含み、密封パッケージを放射線に曝してマイクロプロジェクション部材を滅菌している、経皮的システムである。
【0033】
他の実施形態では本発明は、インフルエンザワクチンを送達するように適合された経皮的システムであって、患者の角質層を貫通するように適合された複数のマイクロプロジェクションを含むマイクロプロジェクション部材、マイクロプロジェクション部材の近辺に配置され少なくとも1つのインフルエンザワクチンを有する固体フィルム、及びマイクロプロジェクション部材周辺に密封されたワクチンを保護するように適合されたパッケージを含み、密封パッケージを放射線に曝してマイクロプロジェクション部材を滅菌している、経皮的システムである。固体フィルムは、少なくとも1つのインフルエンザワクチン、ポリマー物質、可塑剤、界面活性剤及び揮発性溶媒を含む液体配合物をキャスティングすることによって作製することが好ましい。
【0034】
本発明の一実施形態では、マイクロプロジェクション部材は、少なくとも約10マイクロプロジェクション/cm2、より好ましくは少なくとも約200〜2000マイクロプロジェクション/cm2の範囲のマイクロプロジェクション密度を有する。
【0035】
一実施形態では、マイクロプロジェクション部材は、ステンレス鋼、チタン、ニッケルチタン合金、又は類似の生体適合性材料から構成されている。
【0036】
他の実施形態では、マイクロプロジェクション部材は、ポリマー材料などの非伝導性材料から構成されている。
【0037】
或いはマイクロプロジェクション部材は、Parylene(登録商標)などの非伝導性材料、又はTeflon(登録商標)、シリコンなどの疎水性材料、又は他の低エネルギー材料でコーティングすることができる。
【0038】
固形生体適合性コーティングを形成するためにマイクロプロジェクション部材に施すコーティング配合物は、水性及び非水性配合物を含むことができる。本発明の少なくとも1つの実施形態では、配合物は少なくとも1つのインフルエンザワクチンを含み、これは生体適合性担体に溶かすか或いは担体に懸濁することができる。
【0039】
インフルエンザワクチンは、三価インフルエンザワクチンであることが好ましい。例えば、三価ワクチン中の各菌株のHA含量は典型的には、1回のヒト用量に関して15μg、即ち合計45μgのHAに設定する。
【0040】
一実施形態では、APCが豊富な表皮層に45μgのヘマグルチニンを送達するようにシステムを適合されており、この場合少なくとも70%のインフルエンザワクチンが示した表皮層に送達される。
【0041】
他の特徴及び利点が、添付の図面で例示する通り、本発明の好ましい実施形態の以下のより詳細な記載から明らかになり、同じ参照符号は図中の同じ部分又は要素を一般に指す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
本発明を詳細に記載する前に、本発明は、詳細に例示した物質、方法又は構造に限られず、したがって当然ながら変わる可能性があることを理解されたい。したがって、本明細書に記載したものと類似する又は均等な幾つかの物質及び方法を、本発明を実施する際に使用することができるが、好ましい物質及び方法を本明細書に記載する。
【0043】
本明細書で使用する用語は、単に本発明の個々の実施形態を記載する目的のものにすぎず、制限するものではないことも理解されたい。
【0044】
他に定義しない限り、本明細書で使用する全ての技術及び科学用語は、本発明が属する分野の技術者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。
【0045】
さらに、本明細書に引用する全ての刊行物、特許及び特許出願は、上記又は下記のいずれも、その全容が参照として本明細書に組み込まれる。
【0046】
最後に、本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用するように、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その(the)」は、内容が他のことを明らかに示さない限り複数形を含む。したがって、例えば、「1つの抗原」への言及は2つ以上のこのような抗原を含み;「1つのマイクロプロジェクション」への言及は2つ以上のこのようなマイクロプロジェクションなどを含む。
【0047】
定義
本明細書で使用する用語「経皮的」は、局所又は全身療法用の皮膚中への且つ/又は皮膚を介した物質の送達を意味する。したがって用語「経皮的」は、受動的拡散による皮膚中且つ/或いは皮膚を介したワクチンなどの物質の皮内、皮膚内及び表皮内送達、並びにエネルギーに基づく拡散送達、イオントフォレシス及びフォノフォレシスなどを意味し、それらを含む。
【0048】
本明細書で使用する用語「経皮的流動」は、経皮的送達の割合を意味する。
【0049】
本明細書で使用する用語「インフルエンザワクチン」は、インフルエンザウイルスと関係がある1つ又は複数の抗原に対する免疫応答を助長する活性物質を指す。インフルエンザワクチンは、分離変異体ワクチンを含むことが好ましい。インフルエンザワクチンは、1つ又は複数の一価ヘマグルチニン抗原を含むことがより好ましい。ワクチンは、三価インフルエンザワクチンであることがさらにより好ましい。
【0050】
本明細書で使用する用語「同時送達」は、インフルエンザワクチンを送達する前、インフルエンザワクチンの経皮的流動の前及び最中、インフルエンザワクチンの経皮的流動の最中、インフルエンザワクチンの経皮的流動の最中及び後、且つ/或いはインフルエンザワクチンの経皮的流動の後のいずれかに、補助物質を経皮的に投与することを意味する。さらに、2つ以上のインフルエンザワクチンをコーティング及び/又はヒドロゲル配合物に配合し、インフルエンザワクチンの同時送達をもたらすことができる。
【0051】
2つ以上のインフルエンザワクチンを本発明の物質源、配合物、及び/又はコーティング及び/又は固体フィルム配合物中に取り込ませることができること、及び用語「インフルエンザワクチン」の使用は、決して2つ以上のこのような抗原の使用を排除するわけではないことは理解されよう。
【0052】
本明細書で使用する用語「マイクロプロジェクション」又は「マイクロプロトゥルージョン」は、生きている動物、詳細には哺乳動物、及びより詳細にはヒトの皮膚の角質層から根底表皮層、又は表皮及び真皮層に貫通又は横断するように適合された貫通型構成要素を指す。
【0053】
本発明の一実施形態では、貫通型構成要素は1000ミクロン未満のプロジェクション長を有する。他の実施形態では、貫通型構成要素は500ミクロン未満、より好ましくは250ミクロン未満のプロジェクション長を有する。マイクロプロジェクションはさらに、約25〜500ミクロンの範囲の幅(図1中に「W」で示す)及び約10〜100ミクロンの範囲の厚さを有する。マイクロプロジェクションは、ニードル、ブレード、ピン、パンチ、及びこれらの組合せなどの異なる形に形成することができる。
【0054】
本明細書で使用する用語「マイクロプロジェクション部材」は、角質層を貫通させるためのアレイ中に配置された複数のマイクロプロジェクションを含むマイクロプロジェクションアレイを一般に意味する。薄いシートから複数のマイクロプロジェクションをエッチング又はパンチングし、及びシートの平面からマイクロプロジェクションをホールディング又はベンディングして、図1中に示す形状などの形状を形成することによって、マイクロプロジェクション部材を形成することができる。その全容が参照として本明細書に組み込まれる米国特許第6,050,988号中に開示されたように、マイクロプロジェクション部材は、ストリップの各端に沿ってマイクロプロジェクションを有する1つ又は複数のストリップを形成することなどによって、他の知られている方法で形成することもできる。
【0055】
本明細書で使用する用語「コーティング配合物」は、マイクロプロジェクション及び/又はそのアレイをコーティングするために使用する、自由に流動する組成物又は混合物を意味し、それらを含むものとする。インフルエンザワクチンは、その中に配置される場合、配合物の溶液又は懸濁液であってよい。
【0056】
本明細書で使用する用語「生体適合性コーティング」及び「固体コーティング」は、実質的に固体形である「コーティング配合物」を意味し、それらを含むものとする。
【0057】
本明細書で使用する用語「生物学的に有効な量」又は「生物学的に有効な割合」は、望ましい免疫学的、しばしば有益な結果を刺激又は開始するために必要とされる、免疫活性物質の量又は割合を指す。本発明のコーティング中に利用する免疫活性物質の量は、望ましい免疫学的結果を得るのに必要な量の免疫活性物質を送達するのに必要な量であるはずである。実際これは、送達する個々の免疫活性物質、送達部位、並びに皮膚組織への免疫活性物質の送達に関する溶解及び放出動態に応じて、広く変わるはずである。
【0058】
本明細書で使用する用語「接着剤」は、マイクロプロジェクション部材を患者の適所に維持するのを助ける接着剤を意味し、それらを含むものとする。一般に、接着剤はパッチの形である。
【0059】
前に示したように、本発明は一般的に、製造プロセスの最後に経皮的送達システムを最終滅菌するための方法を含む。本発明は、滅菌済みの送達システムも含む。経皮的送達システムは、角質層から根底表皮層、又は表皮及び真皮層を貫通するように適合された複数のマイクロプロジェクション(又はそのアレイ)を有するマイクロプロジェクション部材(又はシステム)を含む。マイクロプロジェクション部材(又はシステム)は、インフルエンザワクチン(即ち、生体適合性コーティング、ヒドロゲル配合物及び固体フィルム配合物)の少なくとも1つの源又は送達媒体も含む。充分な放射線に曝して所望の滅菌保証レベルを得ることによって、経皮的送達システムを最終滅菌する。
【0060】
放射源としてコバルト−60を使用することなどによる従来の方法によって、ガンマ線を送達することができる。市販のコバルト−60滅菌装置は、約0.3Gy/h及び9.6kGy/hの範囲の照射率をもたらすことを、当業者は理解しているはずである。アメリシウム−241を使用することもでき、約0.3mGy/hを超える割合で一般に照射される。他の同位体を使用して、所望の割合でガンマ線を送達することもできる。e−ビーム線はガンマ線より実質的に高い割合、約100kGy/hなどで従来発生させている。好ましい実施形態では、所望の滅菌レベルに到達するのに充分な線量を得るのに必要とされる処理時間を最小にするために、線量の割合は3.0kGy/h以上である。
【0061】
最終滅菌に必要とされる放射線量は、滅菌するデバイスの微生物負荷と関係がある所望の滅菌保証レベル(SAL)に基づいて、従来の方法によって決定することができる。例えば、従来の非経口活性薬剤の送達システムは、10−6のSALを典型的には必要とする。本発明の他の実施形態では、比較的低い微生物負荷をインフルエンザワクチンに割り当てることができる、何故なら抗原物質は、より厳しいクロマトグラフィー法ではなくバイオアッセイによって典型的には評価されるからである。示した実施形態では、10−3のSALを使用して放射線量を調節することができる。以下で論じるように、低い滅菌性要件は最終滅菌プロセスの低い放射線量を可能にし、インフルエンザワクチンの抗原性の維持を助ける。
【0062】
したがって、インフルエンザワクチンを充填したマイクロプロジェクション部材の最終滅菌は、e−ビーム線又はガンマ線でシステムを照射することによって実施する。適切な線量は約10〜25kGyの範囲である。線量は少なくとも約7kGyであることが好ましい。線量は約14kGyであることがより好ましい。本発明により約21kGyの線量を使用することもできる。
【0063】
マイクロプロジェクション部材は、滅菌中にワクチンを保護するように適合されたパッケージ中に密封することが好ましい。一実施形態では、パッケージはフォイルポーチである。
【0064】
本発明の他の実施形態では、パッケージ内に密封する前に、アプリケータと共に使用するためにリテーナリング上にマイクロプロジェクション部材を取り付ける。
【0065】
本発明の他の実施形態では、接着剤をパッケージ内に含める。
【0066】
本発明の他の実施形態では、マイクロプロジェクション部材の照射は定義された温度で実施して、インフルエンザワクチンを安定状態にする。一実施形態では、約−78.5〜25℃の範囲の温度でマイクロプロジェクション部材を照射する。ドライアイス条件下において−78.5℃の温度で、マイクロプロジェクション部材を照射することができる。他の実施形態では、約0〜25℃の範囲の温度でマイクロプロジェクション部材を照射する。他の実施形態では、約20〜25℃の範囲の周囲温度で、マイクロプロジェクション部材を照射する。
【0067】
インフルエンザワクチンは、分離変異体ワクチンを含むことが好ましい。インフルエンザワクチンは、1つ又は複数の一価ヘマグルチニン抗原を含むことがより好ましい。ワクチンは、三価インフルエンザワクチンであることがさらにより好ましい。
【0068】
他の生物活性物質の最終滅菌に関する他の情報は、その全容が参照として本明細書に組み込まれる、2005年6月2日に出願された同時係属米国出願第60/687,636号、及び2005年6月2日に出願された第60/687,635号中で見ることができる。
【0069】
ここで図1及び2を参照すると、本発明と共に使用するためのマイクロプロジェクション部材30の一実施形態が示される。図1中に示すように、マイクロプロジェクション部材30は、複数のマイクロプロジェクション34を有するマイクロプロジェクションアレイ32を含む。マイクロプロジェクション34は、示した実施形態において開口部38を含むシートから、ほぼ90°の角度で伸びていることが好ましい。この実施形態では、マイクロプロジェクション34は、薄い金属シート36からの複数のマイクロプロジェクション34のエッチング又はパンチング、及びシート36の平面からのマイクロプロジェクション34のベンディングによって形成される。
【0070】
本発明の一実施形態では、マイクロプロジェクション部材30は少なくとも約10マイクロプロジェクション/cm2、より好ましくは少なくとも約200〜2000マイクロプロジェクション/cm2の範囲のマイクロプロジェクション密度を有する。好ましくは、ワクチンが通過する単位領域当たりの開口部の数は、少なくとも約10開口部/cm2且つ約2000開口部/cm2未満である。
【0071】
示すように、マイクロプロジェクション34は1000ミクロン未満のプロジェクション長を有することが好ましい。一実施形態では、マイクロプロジェクション34は500ミクロン未満、より好ましくは250ミクロン未満のプロジェクション長を有する。マイクロプロジェクション34はさらに、約25〜500ミクロンの範囲の幅及び約10〜100ミクロンの範囲の厚さを有することが好ましい。
【0072】
マイクロプロジェクション部材30の生体適合性を増大させるために(例えば、対象の皮膚への施用後の出血及び炎症を最小にするために)、他の実施形態では、マイクロプロジェクション34は好ましくは145μm未満、より好ましくは約50〜145μmの範囲、さらにより好ましくは約70〜140μmの範囲の長さを有する。さらに、マイクロプロジェクション部材30は、好ましくは100マイクロプロジェクション/cm2を超える、より好ましくは約200〜3000マイクロプロジェクション/cm2の範囲のマイクロプロジェクション密度を有するアレイを含む。
【0073】
マイクロプロジェクション部材30は、ステンレス鋼、チタン、ニッケルチタン合金などの様々な金属、又は類似の生体適合性材料から製造することができる。
【0074】
本発明によれば、マイクロプロジェクション部材30は、ポリマーなどの非伝導性材料から構成されていてもよい。
【0075】
或いはマイクロプロジェクション部材は、Parylene(登録商標)などの非伝導性材料、又はTeflon(登録商標)、シリコンなどの疎水性材料、又は他の低エネルギー材料でコーティングすることができる。記した疎水性材料及び関連ベース(例えばホトレジスト)層は、参照として本明細書に組み込まれる米国出願第60/484,142号中で述べられている。
【0076】
本発明と共に使用することができるマイクロプロジェクション部材には、その全容が参照として本明細書に組み込まれる米国特許第6,083,196号、第6,050,988号及び第6,091,975号中に開示された部材があるが、これらだけには限られない。
【0077】
本発明と共に使用することができる他のマイクロプロジェクション部材には、その全容が参照として本明細書に組み込まれる米国特許第5,879,326号中に開示された部材などの、シリコンチップエッチング技法を使用してシリコンをエッチングすることによって形成される部材、又はエッチングしたマイクロモールドを使用してプラスチックを成形することによって形成される部材がある。
【0078】
本発明によれば、宿主に投与するインフルエンザワクチンは、マイクロプロジェクション部材30上に配置された生体適合性コーティング中に含めることができ、或いはヒドロゲル配合物中に含めることができ、或いは生体適合性コーティングとヒドロゲル配合物の両方中に含めることができる。本発明のヒドロゲル配合物は、水系ヒドロゲルを含むことが好ましい。ヒドロゲルは、その高い水含量及び生体適合性のため好ましい配合物である。ヒドロゲルは、ゲルパックとして形成されることがさらに好ましい。
【0079】
マイクロプロジェクション部材がワクチン含有固体フィルム配合物を含む他の実施形態では、インフルエンザワクチンを生体適合性コーティング、ヒドロゲル配合物又は固体フィルム配合物、又は3つ全ての送達媒体中に含めることができる。
【0080】
一実施形態では、固体フィルムは少なくとも1つのインフルエンザワクチン、ヒドロキシエチルスターチ、デキストラン、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、メチルセルロース(MC)、ヒドロキシエチルメチルセルロース(HEMC)、エチルヒドロキシエチルセルロース(EHEC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ(n−ビニルピロリドン)及びプルロニックなどのポリマー物質、グリセロール、プロピレングリコール及びポリエチレングリコールなどの可塑剤、Tween20及びTween80などの界面活性剤、及び水、イソプロパノール、メタノール及びエタノールなどの揮発性溶媒を含む液体配合物をキャスティングすることによって作製する。
【0081】
一実施形態では、固体フィルムを生成するために使用する液体配合物は0.1〜20重量%のインフルエンザワクチン、5〜40重量%のポリマー、5〜40重量%の可塑剤、0〜2重量%の界面活性剤、及び残りは揮発性溶媒を含む。
【0082】
キャスティング及びその後の溶媒の蒸発の後、固体フィルムが生成する。
【0083】
インフルエンザワクチンは、固体フィルムを生成するために使用する液体配合物中に、約0.1〜2重量%の範囲の濃度で存在することが好ましい。
【0084】
本発明によれば、少なくとも1つのインフルエンザワクチンが、少なくとも1つの前述の送達媒体中に含まれる。送達媒体、したがってマイクロプロジェクションシステムにおいて使用するインフルエンザワクチンの量は、望ましい結果を得るための治療有効量のインフルエンザワクチンを送達するのに必要とされる量であるはずである。実際この量は、個々のインフルエンザワクチン、送達部位、状態の重度、及び望ましい治療効果に応じて大きく変わるはずである。
【0085】
一実施形態では、マイクロプロジェクション部材は少なくとも1つのインフルエンザワクチン、好ましくは三価ヘマグルチニンを含む生体適合性コーティングを含む。マイクロプロジェクション部材を、所望の滅菌保証レベルまで最終滅菌する。皮膚の角質層を貫通すると、ワクチン含有コーティングが体液(細胞内液及び腸液などの細胞外液)によって溶かされ、全身療法用に皮膚中に放出される(即ち、大量送達)。
【0086】
ここで図2を参照すると、インフルエンザワクチンの生体適合性コーティング35を含むマイクロプロジェクション34を有する、マイクロプロジェクション部材31が示される。本発明によれば、コーティング35はそれぞれのマイクロプロジェクション34を部分的或いは完全に覆うことができる。例えば、コーティング35はマイクロプロジェクション34上の乾燥パターンコーティングであってよい。マイクロプロジェクション34が形成される前又は後に、コーティング35を施すこともできる。
【0087】
本発明によれば、様々な既知の方法によって、コーティング35をマイクロプロジェクション34に施すことができる。コーティングは皮膚を貫通する部分、マイクロプロジェクション部材31又はマイクロプロジェクション34のみ(例えば先端39)に施すことが好ましい。
【0088】
1つのこのようなコーティング法は、ディップコーティングを含む。ディップコーティングは、コーティング溶液中にマイクロプロジェクション34を部分的或いは完全に浸すことによって、マイクロプロジェクションをコーティングするための手段として記載することができる。部分的含浸技法を使用することによって、マイクロプロジェクション34の先端39のみにコーティング35を制限することができる。
【0089】
他のコーティング法は、マイクロプロジェクション34の先端39へのコーティング35を同様に制限するローラーコーティング機構を利用するローラーコーティングを含む。ローラーコーティング法は、その全容が参照として本明細書に組み込まれる、米国出願第10/099,604号(公開番号2002/0132054)中に開示されている。記した出願中で詳細に論じられたように、この開示されたローラーコーティング法は、皮膚貫通中にマイクロプロジェクション34から容易に除去されない平滑なコーティングを提供する。
【0090】
本発明によれば、マイクロプロジェクション34は、孔(図示せず)、溝(図示せず)、表面不整(図示せず)又は同様の改変などの、コーティング35の体積を受け入れる且つ/或いは増大させるように適合された手段をさらに含むことができ、これらの手段は、その上に多量のコーティングを配置することができる増大した表面積を与える。
【0091】
本発明の範囲内で利用することができる他のコーティング法は、噴霧コーティングを含む。本発明によれば、噴霧コーティングはコーティング組成物のエアロゾル懸濁液の形成を含むことができる。一実施形態では、約10〜200ピコリットルの滴径を有するエアロゾル懸濁液を、マイクロプロジェクション34に噴霧し、次いで乾燥させる。
【0092】
パターンコーティングを利用して、マイクロプロジェクション34をコーティングすることもできる。分配する液体をマイクロプロジェクション表面上に配置するための分配システムを使用して、パターンコーティングを施すことができる。分配する液体の量は、0.1〜20ナノリットル/マイクロプロジェクションの範囲であることが好ましい。適切な正確な目盛り付きの液体ディスペンサーの例は、参照として本明細書に完全に組み込まれる米国特許第5,916,524号、5,743,960号、5,741,554号、及び5,738,728号中に開示されている。
【0093】
マイクロプロジェクションコーティング配合物又は溶液を、電場の使用によって一般に制御される、知られているソレノイドバルブ付きディスペンサー、任意選択の流体動力手段、及び配置手段を使用するインクジェット技術を使用して施すこともできる。印刷産業からの他の液体分配技術、又は当技術分野で知られている類似の液体分配技術を、本発明のパターンコーティングを施すために使用することができる。
【0094】
ここで、図3及び4を参照し、保存及び施用するために、その全容が参照として本明細書に組み込まれる米国出願第09/976,762号(公開第2002/0091357号)に詳細に記載されている通り、マイクロプロジェクション部材30は、接着タブ6によってリテーナリング40中で吊り下げられることが好ましい。
【0095】
マイクロプロジェクション部材をリテーナリング40中に置いた後に、マイクロプロジェクション部材を患者の皮膚に施す。その全容が参照として本明細書に組み込まれる同時係属米国出願第09/976,798号で開示されているインパクトアプリケータを使用して、マイクロプロジェクション部材を患者の皮膚に施すことが好ましい。前に論じたように、リテーナリング40はパッケージ前に予め乾燥させて、照射中のマイクロプロジェクション部材周辺の空気中の水分量を減らすことが好ましい。
【0096】
示したように、本発明の一実施形態によれば、固体生体適合性コーティングを形成するためにマイクロプロジェクション部材30に施すコーティング配合物は、少なくとも1つのインフルエンザワクチンを有する水性及び非水性配合物を含むことができる。本発明によれば、インフルエンザワクチンは生体適合性担体中に溶かすことができ、或いは担体中に懸濁させることができる。
【0097】
当技術分野でよく知られているように、インフルエンザウイルス粒子は多くのタンパク質成分、及びヒトにおいて防御抗HA抗体の誘導を担う主な表面抗原としてのヘマグルチニン(HA)からなる。免疫学的に、A型インフルエンザウイルスは2つの表面抗原:HA及びノイラミニダーゼ(NA)に基づいて亜型に分類される。これらの抗原、特にヘマグルチニンに対する免疫は感染の感染の可能性を低下させ、感染が生じた場合は疾患の重度を軽減する。
【0098】
循環型菌株の抗原特性は、毎年のワクチン中に含まれるウイルス菌株を選択するための基盤を与える。毎年インフルエンザワクチンは、来る冬に世界中を循環する可能性があるインフルエンザウイルスである、3つのウイルス菌株(通常は2つのA型及び1つのB型)を含む。A型及びB型インフルエンザは、その核タンパク質及びマトリクスタンパク質の違いによって区別することができる。A型は最も一般的な菌株であり、主なヒトの流行性疾患の原因である。したがって、インフルエンザワクチンは、三価インフルエンザワクチンを含むことが好ましい。例えば、三価ワクチン中の各菌株のHA含量は典型的には、1回のヒト用量に関して15μg、即ち合計45μgのHAに設定する。
【0099】
一実施形態では、インフルエンザワクチンの完全ヒト用量、即ち45μgのヘマグルチニンを、コーティングされたマイクロプロジェクションアレイによって、APCが豊富な表皮層、最も一般的な皮膚の免疫担当成分に経皮的に送達することができ、この場合少なくとも70%のインフルエンザワクチンが示した表皮層に送達される。さらに重要なことに、抗原は皮膚中で依然として免疫原性があり、強い抗体及び血清保護免疫応答を誘導する。適切なインフルエンザワクチン配合物に関する他の詳細は、その全容が参照として本明細書に組み込まれる、2005年3月18日に出願された同時係属米国出願第11/084,631号、及び2005年3月18日に出願された第11/084,635号中で見ることができる。
【0100】
ワクチン抗原と共にワクチンを含むことができる適切な免疫応答増強アジュバントには、非制限的に、リン酸アルミニウムゲル;水酸化アルミニウム;藻類グルカン:β−グルカン;コレラ毒素Bサブユニット;CRL1005:x=8及びy=205の平均値を有するABAブロックポリマー;γイヌリン:直鎖状(非分岐)β−D(2−>1)ポリフルクトフラノキシル−α−D−グルコース;Gerbuアジュバント:N−アセチルグルコースアミン−(β1−4)−N−アセチルムラミル−L−アラニル−D−グルタミン(GMDP)、ジメチルジオクタデシルアンモニウムクロリド(DDA)、亜鉛L−プロリン塩複合体(Zn−Pro−8);イミキモド(1−(2−メチルプロピル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミン;ImmTher(商標):N−アセチルグルコアミニル−N−アセチルムラミル−L−Ala−D−イソGlu−L−Ala−グリセロールジパルミテート;MTP−PEリポソーム:C59H108N6O19PNa−3H2O(MTP);ムラメチド:Nac−Mur−L−Ala−D−Gln−OCH3;プレウラン:β−グルカン;QS−21;S−28463:4−アミノ−a,a−ジメチル−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−1−エタノール;サルボペプチド:VQGEESNDK・HCl(IL−1β163−171ペプチド);及びスレオニル−MDP(Termurtide(商標)):N−アセチルムラミル−L−スレオニル−D−イソグルタミン、及びインターロイキン18、IL−2IL−12、IL−15がある。アジュバントには、DNAオリゴヌクレオチド、例えばCpG含有オリゴヌクレオチドなどもある。さらに、IL−18、IL−2IL−12、IL−15、IL−4、IL−10などの免疫調節リンホカイン、γインターフェロン、及びNFkappaB調節シグナルタンパク質をコードする核酸配列を使用することができる。
【0101】
本発明によれば、アジュバントの量及び型は、滅菌中のインフルエンザワクチンの安定性を最適化するように適合されることができる。
【0102】
コーティング配合物は、約500センチポイズ未満且つ3センチポイズを超える粘度を有することが好ましい。
【0103】
本発明の一実施形態では、マイクロプロジェクション表面から測定して、コーティング厚は25ミクロン未満、より好ましくは10ミクロン未満である。
【0104】
望ましいコーティング厚は、必要とされる用量、及びしたがって、用量を送達するのに必要なコーティング厚、シートの単位面積当たりのマイクロプロジェクション密度、コーティング組成物の粘度及び濃度並びに選択するコーティング法を含めた幾つかの要因に依存する。マイクロプロジェクション34に施すコーティング35の厚さは、インフルエンザワクチンの安定性を最適化するよう、適合させることができる。
【0105】
いずれの場合も、コーティングを施した後に、コーティング配合物を様々な手段によってマイクロプロジェクション34上に乾燥させる。本発明の好ましい実施形態では、コーティングされたマイクロプロジェクション部材30を周囲室温条件で乾燥させる。しかしながら、様々な温度及び湿度レベルを使用して、マイクロプロジェクション上にコーティング配合物を乾燥させることができる。さらに、コーティングされた部材を加熱、真空下又は乾燥剤で保存し、凍結乾燥させ、凍結乾燥又は同様の技法を使用してコーティングから残留水を除去することができる。
【0106】
皮膚障壁を介した薬剤輸送を容易にするために、広く様々なイオン導入法又は電子輸送システムに関して本発明を利用することもできることは、当業者によって理解されるはずである、何故なら本発明は、この点において決して制限されないからである。例示的な電子輸送薬剤送達システムは米国特許第5,147,296号、米国特許第5,080,646号、米国特許第5,169,382号及び米国特許第5,169,383号中に開示されており、これらの開示はその全容が参照として本明細書に組み込まれる。
【0107】
用語「電子輸送」は一般に、例えば皮膚、粘膜、爪などの身体の表面を介した有益な物質、例えばワクチン又は薬剤又は薬剤前駆体の移動を指す。物質の輸送は電位の印加によって誘導又は増大され、物質を送達するか或いは物質の送達を増大させる、或いは「逆」電子輸送に関しては、物質をサンプリングするか或いは物質のサンプリングを増大させる電流の印加をもたらす。ヒト身体中への、或いはヒト身体からの物質の電子輸送は、様々な方法で実施することができる。
【0108】
1つの広く使用されている電子輸送法であるイオントフォレシスは、帯電イオンの電気誘導型の輸送を含む。非帯電又は中性電荷分子の経皮的輸送(例えば、グルコースの経皮的サンプリング)に含まれる他の型の電子輸送法である電気浸透は、電場の影響下での膜を介した溶媒及び物質の移動を含む。さらに他の型の電子輸送法である電気穿孔法は、電気パルス、高電圧パルスを膜に施すことにより形成された孔を介した物質の移動を含む。
【0109】
多くの場合、2つ以上の示した方法を異なる程度で同時に実施することができる。したがって用語「電子輸送」は、その最も広い考えられる解釈で本明細書において与えて、物質が実際に輸送される特定の機構とは無関係に、少なくとも1つの帯電又は非帯電物質、或いはその混合物の電気誘導型又は増大型の輸送を含める。さらに、超音波導入又は圧電デバイスなどの他の輸送増大法を、本発明と共に使用することができる。
【実施例】
【0110】
以下の実施例を与えて、当業者に本発明をより明確に理解させ本発明を実施させることができる。以下の実施例は本発明の範囲を制限するものとして考えるべきではなく、単に本発明の例示として示すとして考えるべきである。
【0111】
(実施例1)
三価インフルエンザワクチンの配合物を調製し、マイクロプロジェクションアレイ上にコーティングした。コーティングしたアレイは、照射用にシンチレーションガラスバイアル内に置いた。サンプルは周囲温度でドライアイス下において7、14及び21kGyの線量のガンマ線及びe−ビーム線に曝した。照射後のコーティングしたアレイ中のヘマグルチニン含量は、一元放射免疫拡散アッセイ(SRID)及び2シンコニン酸タンパク質アッセイ(BCA)を使用して評価した。SRIDは、抗原と適切な抗血清が相互作用する沈殿の一部分の形成に関する。形成される部分は、試験調製物中に存在する抗原の量に正比例する。試験した抗原は、抗血清を含むアガロースゲル中のウエルに加えた。抗原と抗血清は相互作用し、拡散しウエル周辺の部分中に沈殿する。クーマシーブルー染色によって、その部分を目に見える状態にした。試験した抗原の直径を次いで参照標準と比較して、抗原の量を定量化した。SRIDは、インフルエンザワクチン用の唯一認められているin vitro効力のアッセイである。当業者は理解しているはずであるが、ヘマグルチニンの効力は免疫原性と非常に関係がある。
【0112】
図5〜7は、インフルエンザワクチンをコーティングしたマイクロプロジェクションアレイ先端の形態を示す、走査型電子顕微鏡写真の図である。図5は照射しなかった対照アレイの形態を示し、一方図6及び図7は、それぞれ21kGyのガンマ線及びe−ビーム線で照射したマイクロプロジェクションアレイの先端を示す。見ることができるように、照射したアレイの先端の形状及び表面の滑らかさは、対照アレイから実質的に変わらなかった。これは、コーティングの物理的特性は滅菌照射によって悪影響を受けないことを示す。
【0113】
照射したマイクロプロジェクションアレイに関するSRIDアッセイの結果は、それぞれガンマ線及びe−ビームに関する図8及び9中に示す。一般に、ガンマ線とe−ビーム線の両方がほぼ同じ程度でインフルエンザワクチンに影響を与え、特に高い放射線量でヘマグルチニンの効力を低下させた。さらに、B/Shangdong菌株は滅菌手順に対して高い感度を示した。これらの結果はさらに、照射線量の低下はヘマグルチニン効力の維持を助長したことを実証した。例えば、7kGyにおいて20%未満の効力の消失を観察した。さらにこの実験は、低い照射温度は効力の消失を減らし、ドライアイス下で最良の結果を得たことを実証した。
【0114】
図10は、照射したマイクロプロジェクションアレイの合計タンパク質含量を示す。BCA分析はさらに、コーティングの水溶性を実証する。理解され得るように、低下したタンパク質含量に関する弱い溶解性はワクチン配合物の有意な化学変化を示す。特にこの試験は、それぞれのサンプル中のタンパク質含量を完全に回収したことを示した。したがって、このことは、ワクチンコーティングの溶解性はこの照射手順によって不変であった良い指標である。
【0115】
(実施例2)
三価インフルエンザワクチンの配合物を調製し、マイクロプロジェクションアレイ上にコーティングした。サンプルは20〜25℃の周囲温度でドライアイス下において、7及び14kGyの線量のガンマ線及びe−ビーム線に曝した。数個のマイクロプロジェクションアレイを、ポリカーボネート製リテーナリング及び接着剤を用いて構築し、次いでフォイルポーチ中にパッケージした。照射後のコーティングしたアレイ中のヘマグルチニン含量を、SRID及びBCAを使用して評価した。
【0116】
図11〜13は、インフルエンザワクチンをコーティングしたマイクロプジェクションアレイ先端の形態を示す、走査型電子顕微鏡写真の図である。図11は照射しなかった対照アレイの形態を示し、一方図6及び図7は、それぞれガラスバイアル及びフォイルポーチ中において14kGyのガンマ線で照射した、マイクロプロジェクションアレイの先端を示す。見ることができるように、照射したアレイの先端の形状及び表面の滑らかさは、対照アレイから実質的に変わらなかった。これらの結果は実施例1中で報告した結果を確証し、コーティングの物理的特性は滅菌照射によって悪影響を受けないことを示す。
【0117】
さらに図14は、この試験におけるタンパク質回収は実施例1のそれに匹敵したことを示す。特にBCA分析は、ワクチンコーティングの溶解性はこの照射手順によって不変であったことを示した。
【0118】
照射したサンプルはSRIDによってもアッセイした、結果は図15中に示す。ガラスバイアル中に含まれていたサンプルに関しては、14kGy線量での劣化は相当であり、ドライアイス下で40%の効力が消失し周囲温度では50%を超える効力が消失した。線量の影響は顕著である、何故なら7kGyの線量を与えたサンプルは、相当の効力の消失を被らなかったからである。示された1つの重要な結果は、周囲温度で14kGyの高線量においてさえ、完全構築及びフォイルポーチ中にパッケージしたサンプルに関して効力が保たれたことである。したがってこの実施例は、インフルエンザワクチンでコーティングした構築及びパッケージアレイを、効率良く最終滅菌することができたことを実証した。
【0119】
(実施例3)
実施例1中と同様に、三価インフルエンザワクチンの配合物を調製し、マイクロプロジェクションアレイ上にコーティングした。サンプルには周囲温度でドライアイス下において、7及び14kGyの線量のガンマ線を施した。マイクロプロジェクションアレイをマイクロプロジェクションシステムの様々な構成要素でパッケージして、照射中のワクチンの安定性に対するこれらの構成要素の影響を評価した。1つのサンプルに、照射の代わりにエチレンオキシド滅菌を施した。滅菌後のコーティングしたアレイ中のヘマグルチニン含量を、SRID及びBCAを使用して評価した。この実施例に関するパッケージ及び滅菌プロトコルは表1中に与える。
【表1】
【0120】
図16及び17は、エチレンオキシド滅菌後のグループ10の、コーティングしたマイクロプジェクションアレイ先端の形態の異なる外観を示す、走査型電子顕微鏡写真の図である。示したように、ワクチンコーティングの物理的特性に関して、著しい有害な影響は観察されなかった。対照的に、hPTHなどのさらに吸湿性の薬理物質は、許容できない形態変化を経る。したがって、インフルエンザワクチンなどの比較的低い吸湿性を有する活性物質の配合物に、コーティングを著しく損傷させずにエチレンオキシド滅菌を施すことができる。
【0121】
この試験におけるサンプルのBCA分析は、前の実施例で得た結果をたどった、何故なら各システムにおいてタンパク質含量を完全に回収したからである。前に論じたように、このことは、ワクチンコーティングの溶解性はこの照射手順によって不変であったことを示す。これらの発見は同様に、照射はインフルエンザワクチンの配合物の化学組成に劇的に影響を与えないことを示す。
【0122】
照射したサンプルはSRIDによってもアッセイした、結果は図18中に示す。この試験は、完全にパッケージしたマイクロプロジェクションシステムは、21kGyの高線量においてさえ充分な効力の保持をもたらしたことを実証した。実際、ドライアイス下でのグループ3に関する効力の保持は最小の効力消失のみを示した。この試験はさらに、ガラスバイアルと反対のフォイルポーチパッケージアレイに関する改善された結果を示した。詳細にはグループ8及び9は、特にB/Shangdong及びA/Panama菌株に関して14kGyの線量で相当な効力の消失を経験した。
【0123】
この実施例はさらに、マイクロプロジェクションシステムの構成要素は、照射中にインフルエンザワクチンの安定性に影響を与えることを示す。グループ5〜7に関する結果によって示されたように、フォイルポーチ、次に接着剤及び次いでリテーナリングが最大の保護をもたらすようである。
【0124】
さらに、エチレンオキシド滅菌を施したサンプルは、ほぼ完全な効力を保持していた。したがってこれらの結果は、エチレンオキシドを使用して、物理的特性又はヘマグルチニンの効力に有害な影響を与えずに、経皮的インフルエンザワクチン送達システムを効率良く滅菌することができることを示す。
【0125】
前述の実施例及び考察によって示したように、本発明の方法を使用して効力をほとんど或いは全く低下させずに、ヘマグルチニン抗原などのインフルエンザワクチンを含むコーティング配合物を有するマイクロプロジェクション部材を、ガンマ線又はe−ビーム線処理によって最終滅菌することができる。マイクロプロジェクション部材のパッケージは、最終滅菌プロセス中にワクチンを保護するように適合されることが好ましい。例えば、密封フォイルポーチは相当な安定効果を有する。パッケージ前にマイクロプロジェクション部材をリテーナリング上に取り付け、接着剤を用いて構築することがさらに好ましい。
【0126】
さらに、温度を調節すること又は滅菌線量を低下させることによって、最終滅菌プロセス中の生成物の劣化を減らすこともできる。
【0127】
本発明の精神及び範囲から逸脱せずに、当業者は本発明に対するさまざまな変形及び変更形態を作製して、さまざまな使用及び条件にそれを適合されることができる。このように、これらの変形及び変更形態は、正確に、公平に、以下の特許請求の範囲の均等物の全範囲内に存在すると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0128】
【図1】マイクロプロジェクション部材の一例の一部分の斜視図である。
【図2】本発明による、マイクロプロジェクション上に配置されたコーティングを有する、図1中に示すマイクロプロジェクション部材の斜視図である。
【図3】本発明による、その上に配置されたマイクロプロジェクション部材を有するリテーナの側断面図である。
【図4】図3中に示すリテーナの斜視図である。
【図5】本発明による、照射後のコーティング形態を示す顕微鏡写真の図である。
【図6】本発明による、照射後のコーティング形態を示す顕微鏡写真の図である。
【図7】本発明による、照射後のコーティング形態を示す顕微鏡写真の図である。
【図8】本発明による、様々なガンマ線レベル及び温度後のヘマグルチニンの効力を示すグラフである。
【図9】本発明による、様々なe−ビーム線レベル及び温度後のヘマグルチニンの効力を示すグラフである。
【図10】本発明による、様々な温度で照射したヘマグルチニンの合計タンパク質含量を示すグラフである。
【図11】本発明による、ガンマ線照射後のコーティング形態を示す顕微鏡写真の図である。
【図12】本発明による、ガンマ線照射後のコーティング形態を示す顕微鏡写真の図である。
【図13】本発明による、ガンマ線照射後のコーティング形態を示す顕微鏡写真の図である。
【図14】本発明による、選択した環境条件下において様々な放射線量に曝した後の、タンパク質含量を示すグラフである。
【図15】本発明による、選択した環境条件下における照射後のヘマグルチニンの効力を示すグラフである。
【図16】本発明による、エチレンオキシド滅菌後のコーティング形態を示す顕微鏡写真の図である。
【図17】本発明による、エチレンオキシド滅菌後のコーティング形態を示す顕微鏡写真の図である。
【図18】本発明による、様々なシステム構成要素の照射後のタンパク質含量を示すグラフである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インフルエンザワクチンを送達するように適合された経皮的デバイスを最終滅菌するための方法であって、
患者の角質層を貫通するように適合された複数のマイクロプロジェクションを有するマイクロプロジェクション部材であって、生体適合性コーティングを有する該マイクロプロジェクションが該マイクロプロジェクション部材上に配置されており、該コーティングは、その上に配置された少なくとも1つのインフルエンザワクチンを有するコーティング配合物から形成されている上記マイクロプロジェクション部材を提供するステップ、及び
該マイクロプロジェクション部材をガンマ線及びe−ビームからなる群から選択される放射線に曝すステップであって、該放射線が所望の滅菌保証レベルに達するのに充分であるステップ、
を含む上記方法。
【請求項2】
前記マイクロプロジェクション部材周辺の環境条件を調節するように適合されたパッケージ内に、前記マイクロプロジェクション部材を密封するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記パッケージがフォイルポーチを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記パッケージ内に乾燥剤を密封するステップをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記パッケージ内に前記マイクロプロジェクション部材を密封する前に、予め乾燥状態にしたリテーナリング上に前記マイクロプロジェクション部材を取り付けるステップをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記パッケージ内に前記マイクロプロジェクション部材を密封する前に、予め乾燥状態にしたリテーナリング上に前記マイクロプロジェクション部材を取り付けるステップをさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記マイクロプロジェクション部材を密封する前に、不活性ガスで前記パッケージをパージするステップをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
前記不活性ガスが窒素を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記マイクロプロジェクション部材を放射線に曝す前記ステップを約−78.5〜25℃で行う、請求項2に記載の方法。
【請求項10】
前記マイクロプロジェクション部材を放射線に曝す前記ステップを周囲温度で行う、請求項2に記載の方法。
【請求項11】
前記マイクロプロジェクション部材を放射線に曝す前記ステップが約5〜50kGyの範囲の送達を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項12】
前記マイクロプロジェクション部材を放射線に曝す前記ステップが約7kGyの送達を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項13】
前記マイクロプロジェクション部材を放射線に曝す前記ステップが約21kGyの送達を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項14】
前記マイクロプロジェクション部材を放射線に曝す前記ステップが約3.0kGy/hを超える割合での放射線の送達を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項15】
前記滅菌保証レベルが10−6である、請求項2に記載の方法。
【請求項16】
前記コーティング配合物に抗酸化剤を加えるステップをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項17】
インフルエンザワクチンを送達するように適合された経皮的デバイスを最終滅菌するための方法であって、
患者の角質層を貫通するように適合された複数のマイクロプロジェクションを有するマイクロプロジェクション部材であって、生体適合性コーティングを有する該マイクロプロジェクションが該マイクロプロジェクション部材上に配置されており、該コーティングは、その上に配置された少なくとも1つのインフルエンザワクチンを有するコーティング配合物から形成されている上記マイクロプロジェクション部材を提供するステップ、
窒素でパージし該マイクロプロジェクション部材周辺の環境条件を調節するように適合されたパッケージ内に、該マイクロプロジェクション部材及び乾燥剤を密封するステップ、及び
該マイクロプロジェクション部材をガンマ線及びe−ビーム線からなる群から選択される放射線に曝すステップであって、該放射線が所望の滅菌保証レベルに達するのに充分であるステップ、
を含む上記方法。
【請求項18】
前記パッケージ内に前記マイクロプロジェクション部材を密封する前に、予め乾燥状態にしたリテーナリング上に前記マイクロプロジェクション部材を取り付けるステップをさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記マイクロプロジェクション部材を放射線に曝す前記ステップが約7〜21kGyの範囲の線量の放射線の送達を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記マイクロプロジェクション部材を放射線に曝す前記ステップを周囲温度で行う、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記インフルエンザワクチンが最初の純度の少なくとも約96%を保つ、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
前記インフルエンザワクチンが最初の純度の少なくとも約98%を保つ、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
インフルエンザワクチンを送達するように適合された経皮的デバイスを最終滅菌するための方法であって、
患者の角質層を貫通するように適合された複数のマイクロプロジェクションを有するマイクロプロジェクション部材であって、生体適合性コーティングを有する該マイクロプロジェクションが該マイクロプロジェクション部材上に配置されており、該コーティングは、その上に配置された少なくとも1つのインフルエンザワクチンを有するコーティング配合物から形成されている上記マイクロプロジェクション部材を提供するステップ、
不活性ガスでパージし該マイクロプロジェクション部材周辺の環境条件を調節するように適合されたパッケージ内に、該マイクロプロジェクション部材を密封するステップ、及び
該マイクロプロジェクション部材をe−ビーム線に曝すステップであって、該放射線が所望の滅菌保証レベルに達するのに充分であるステップ、
を含む上記方法。
【請求項24】
インフルエンザワクチンを送達するように適合された経皮的デバイスを最終滅菌するための方法であって、
患者の角質層を貫通するように適合された複数のマイクロプロジェクションを有するマイクロプロジェクション部材であって、生体適合性コーティングを有する該マイクロプロジェクションが該マイクロプロジェクション部材上に配置されており、該コーティングは、その上に配置された少なくとも1つのインフルエンザワクチンを有するコーティング配合物から形成されている上記マイクロプロジェクション部材を提供するステップ、
環境条件を調節するように適合されたパッケージ内に該マイクロプロジェクション部材を置くステップ、
該パッケージ内の含水率を低下させるステップ、
該パッケージで該マイクロプロジェクション部材を密封するステップ、及び
該マイクロプロジェクション部材をガンマ線及びe−ビームからなる群から選択される放射線に曝すステップであって、該放射線が所望の滅菌保証レベルに達するのに充分であるステップ、
を含む上記方法。
【請求項25】
インフルエンザワクチンを送達するように適合された経皮的システムであって、
患者の角質層を貫通するように適合された複数のマイクロプロジェクションを有するマイクロプロジェクション部材であって、生体適合性コーティングを有する該マイクロプロジェクションが該マイクロプロジェクション部材上に配置されており、該コーティングが、その上に配置された少なくとも1つのインフルエンザワクチンを有するコーティング配合物から形成されている上記マイクロプロジェクション部材、及び
不活性ガスでパージし該マイクロプロジェクション部材周辺の密封された環境条件を調節するように適合されたパッケージを含み、
該密封パッケージを放射線に曝してマイクロプロジェクション部材を滅菌している、上記経皮的システム。
【請求項26】
前記パッケージ及び前記マイクロプロジェクション部材内に密封された乾燥剤をさらに含む、請求項25に記載のシステム。
【請求項27】
前記マイクロプロジェクション部材を予め乾燥状態にしたリテーナリング上に取り付ける、請求項25に記載のシステム。
【請求項28】
前記パッケージを窒素でパージする、請求項25に記載のシステム。
【請求項29】
前記パッケージがフォイルポーチを含む、請求項25に記載のシステム。
【請求項30】
前記インフルエンザワクチンが三価インフルエンザワクチンを含む、請求項25に記載のシステム。
【請求項31】
インフルエンザワクチンを送達するように適合された経皮的システムであって、
患者の角質層を貫通するように適合された複数のマイクロプロジェクションを含むマイクロプロジェクション部材、
少なくとも1つのインフルエンザワクチンを有し、該マイクロプロジェクション部材と結合しているヒドロゲル配合物、及び
不活性ガスでパージし前記マイクロプロジェクション部材周辺の密封された環境条件を調節するように適合されたパッケージを含み、
前記密封パッケージを放射線に曝してマイクロプロジェクション部材を滅菌している、上記経皮的システム。
【請求項32】
インフルエンザワクチンを送達するように適合された経皮的システムであって、
患者の角質層を貫通するように適合された複数のマイクロプロジェクションを含むマイクロプロジェクション部材、
該マイクロプロジェクション部材の近辺に配置され、少なくとも1つのインフルエンザワクチン、ポリマー物質、可塑剤、界面活性剤及び揮発性溶媒を含む液体配合物をキャスティングすることによって作製される固体フィルム、及び
不活性ガスでパージし該マイクロプロジェクション部材周辺の密封された環境条件を調節するように適合されたパッケージを含み、
該密封パッケージを放射線に曝してマイクロプロジェクション部材を滅菌している、上記経皮的システム。
【請求項1】
インフルエンザワクチンを送達するように適合された経皮的デバイスを最終滅菌するための方法であって、
患者の角質層を貫通するように適合された複数のマイクロプロジェクションを有するマイクロプロジェクション部材であって、生体適合性コーティングを有する該マイクロプロジェクションが該マイクロプロジェクション部材上に配置されており、該コーティングは、その上に配置された少なくとも1つのインフルエンザワクチンを有するコーティング配合物から形成されている上記マイクロプロジェクション部材を提供するステップ、及び
該マイクロプロジェクション部材をガンマ線及びe−ビームからなる群から選択される放射線に曝すステップであって、該放射線が所望の滅菌保証レベルに達するのに充分であるステップ、
を含む上記方法。
【請求項2】
前記マイクロプロジェクション部材周辺の環境条件を調節するように適合されたパッケージ内に、前記マイクロプロジェクション部材を密封するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記パッケージがフォイルポーチを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記パッケージ内に乾燥剤を密封するステップをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記パッケージ内に前記マイクロプロジェクション部材を密封する前に、予め乾燥状態にしたリテーナリング上に前記マイクロプロジェクション部材を取り付けるステップをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記パッケージ内に前記マイクロプロジェクション部材を密封する前に、予め乾燥状態にしたリテーナリング上に前記マイクロプロジェクション部材を取り付けるステップをさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記マイクロプロジェクション部材を密封する前に、不活性ガスで前記パッケージをパージするステップをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
前記不活性ガスが窒素を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記マイクロプロジェクション部材を放射線に曝す前記ステップを約−78.5〜25℃で行う、請求項2に記載の方法。
【請求項10】
前記マイクロプロジェクション部材を放射線に曝す前記ステップを周囲温度で行う、請求項2に記載の方法。
【請求項11】
前記マイクロプロジェクション部材を放射線に曝す前記ステップが約5〜50kGyの範囲の送達を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項12】
前記マイクロプロジェクション部材を放射線に曝す前記ステップが約7kGyの送達を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項13】
前記マイクロプロジェクション部材を放射線に曝す前記ステップが約21kGyの送達を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項14】
前記マイクロプロジェクション部材を放射線に曝す前記ステップが約3.0kGy/hを超える割合での放射線の送達を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項15】
前記滅菌保証レベルが10−6である、請求項2に記載の方法。
【請求項16】
前記コーティング配合物に抗酸化剤を加えるステップをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項17】
インフルエンザワクチンを送達するように適合された経皮的デバイスを最終滅菌するための方法であって、
患者の角質層を貫通するように適合された複数のマイクロプロジェクションを有するマイクロプロジェクション部材であって、生体適合性コーティングを有する該マイクロプロジェクションが該マイクロプロジェクション部材上に配置されており、該コーティングは、その上に配置された少なくとも1つのインフルエンザワクチンを有するコーティング配合物から形成されている上記マイクロプロジェクション部材を提供するステップ、
窒素でパージし該マイクロプロジェクション部材周辺の環境条件を調節するように適合されたパッケージ内に、該マイクロプロジェクション部材及び乾燥剤を密封するステップ、及び
該マイクロプロジェクション部材をガンマ線及びe−ビーム線からなる群から選択される放射線に曝すステップであって、該放射線が所望の滅菌保証レベルに達するのに充分であるステップ、
を含む上記方法。
【請求項18】
前記パッケージ内に前記マイクロプロジェクション部材を密封する前に、予め乾燥状態にしたリテーナリング上に前記マイクロプロジェクション部材を取り付けるステップをさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記マイクロプロジェクション部材を放射線に曝す前記ステップが約7〜21kGyの範囲の線量の放射線の送達を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記マイクロプロジェクション部材を放射線に曝す前記ステップを周囲温度で行う、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記インフルエンザワクチンが最初の純度の少なくとも約96%を保つ、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
前記インフルエンザワクチンが最初の純度の少なくとも約98%を保つ、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
インフルエンザワクチンを送達するように適合された経皮的デバイスを最終滅菌するための方法であって、
患者の角質層を貫通するように適合された複数のマイクロプロジェクションを有するマイクロプロジェクション部材であって、生体適合性コーティングを有する該マイクロプロジェクションが該マイクロプロジェクション部材上に配置されており、該コーティングは、その上に配置された少なくとも1つのインフルエンザワクチンを有するコーティング配合物から形成されている上記マイクロプロジェクション部材を提供するステップ、
不活性ガスでパージし該マイクロプロジェクション部材周辺の環境条件を調節するように適合されたパッケージ内に、該マイクロプロジェクション部材を密封するステップ、及び
該マイクロプロジェクション部材をe−ビーム線に曝すステップであって、該放射線が所望の滅菌保証レベルに達するのに充分であるステップ、
を含む上記方法。
【請求項24】
インフルエンザワクチンを送達するように適合された経皮的デバイスを最終滅菌するための方法であって、
患者の角質層を貫通するように適合された複数のマイクロプロジェクションを有するマイクロプロジェクション部材であって、生体適合性コーティングを有する該マイクロプロジェクションが該マイクロプロジェクション部材上に配置されており、該コーティングは、その上に配置された少なくとも1つのインフルエンザワクチンを有するコーティング配合物から形成されている上記マイクロプロジェクション部材を提供するステップ、
環境条件を調節するように適合されたパッケージ内に該マイクロプロジェクション部材を置くステップ、
該パッケージ内の含水率を低下させるステップ、
該パッケージで該マイクロプロジェクション部材を密封するステップ、及び
該マイクロプロジェクション部材をガンマ線及びe−ビームからなる群から選択される放射線に曝すステップであって、該放射線が所望の滅菌保証レベルに達するのに充分であるステップ、
を含む上記方法。
【請求項25】
インフルエンザワクチンを送達するように適合された経皮的システムであって、
患者の角質層を貫通するように適合された複数のマイクロプロジェクションを有するマイクロプロジェクション部材であって、生体適合性コーティングを有する該マイクロプロジェクションが該マイクロプロジェクション部材上に配置されており、該コーティングが、その上に配置された少なくとも1つのインフルエンザワクチンを有するコーティング配合物から形成されている上記マイクロプロジェクション部材、及び
不活性ガスでパージし該マイクロプロジェクション部材周辺の密封された環境条件を調節するように適合されたパッケージを含み、
該密封パッケージを放射線に曝してマイクロプロジェクション部材を滅菌している、上記経皮的システム。
【請求項26】
前記パッケージ及び前記マイクロプロジェクション部材内に密封された乾燥剤をさらに含む、請求項25に記載のシステム。
【請求項27】
前記マイクロプロジェクション部材を予め乾燥状態にしたリテーナリング上に取り付ける、請求項25に記載のシステム。
【請求項28】
前記パッケージを窒素でパージする、請求項25に記載のシステム。
【請求項29】
前記パッケージがフォイルポーチを含む、請求項25に記載のシステム。
【請求項30】
前記インフルエンザワクチンが三価インフルエンザワクチンを含む、請求項25に記載のシステム。
【請求項31】
インフルエンザワクチンを送達するように適合された経皮的システムであって、
患者の角質層を貫通するように適合された複数のマイクロプロジェクションを含むマイクロプロジェクション部材、
少なくとも1つのインフルエンザワクチンを有し、該マイクロプロジェクション部材と結合しているヒドロゲル配合物、及び
不活性ガスでパージし前記マイクロプロジェクション部材周辺の密封された環境条件を調節するように適合されたパッケージを含み、
前記密封パッケージを放射線に曝してマイクロプロジェクション部材を滅菌している、上記経皮的システム。
【請求項32】
インフルエンザワクチンを送達するように適合された経皮的システムであって、
患者の角質層を貫通するように適合された複数のマイクロプロジェクションを含むマイクロプロジェクション部材、
該マイクロプロジェクション部材の近辺に配置され、少なくとも1つのインフルエンザワクチン、ポリマー物質、可塑剤、界面活性剤及び揮発性溶媒を含む液体配合物をキャスティングすることによって作製される固体フィルム、及び
不活性ガスでパージし該マイクロプロジェクション部材周辺の密封された環境条件を調節するように適合されたパッケージを含み、
該密封パッケージを放射線に曝してマイクロプロジェクション部材を滅菌している、上記経皮的システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公表番号】特表2008−541951(P2008−541951A)
【公表日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−514893(P2008−514893)
【出願日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際出願番号】PCT/US2006/021435
【国際公開番号】WO2006/130826
【国際公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【出願人】(506353677)アルザ コーポレイション (23)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際出願番号】PCT/US2006/021435
【国際公開番号】WO2006/130826
【国際公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【出願人】(506353677)アルザ コーポレイション (23)
【Fターム(参考)】
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