説明

経皮的電気接続用の皮下装置

本発明は、動物の体内の電気装置(2)とその体外の電気装置(3)との間を経皮的に電気接続するための電気接続システムに関する。このシステムは、内部の電気装置(2)に接続するように設計される皮下装置(10)を含み、この皮下装置(10)は、
−少なくとも1つの内部区画(12)を有する開放型ハウジング(11)であって、その区画(12)には、電気接続プラグを差し込むことが可能な伝導材料が充填され、その区画(12)の伝導材料は、さらに、内部の電気装置(2)に接続するように設計された接続手段(5)に接続される、開放型ハウジング(11)と、
−ハウジング(11)をシールするためのシール膜(13)であり、絶縁性および可撓性の材料から形成されるシール膜(13)であって、電気接続プラグを、ハウジング(11)の外側からそのシール膜(13)を貫通して区画(12)の伝導材料に差し込むように設計される、シール膜(13)と、
を含む。この電気接続システムは、ハウジング(11)が、位置決めを容易にしかつ対応する前記伝導材料の中への電気接続プラグの差し込みをガイドするアライメント手段(14)を含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療分野における電気接続に関するものであり、さらに具体的には、人間を含む動物の身体、特に人体に埋め込まれた医療装置と、身体外の電気装置との間の経皮的(皮膚を貫通しての)電気接続を可能にするシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
生来の器官の欠陥を補うために患者の体内に装着するように設計される電気機器の大きな発展は、この機器が必要とする電力を体外の電源から身体内部に伝達できること、あるいは、欠陥を有する生来の器官に由来するおよび/またはこれらの欠陥を補うように設計される電気機器から発せられる電気的情報を収集できることを必要としている。
【0003】
この埋め込み型の電気機器に対する電力供給は、現在、3つの主要な方法によって行われている。第1の方法は、埋め込み型電気的医療装置に直接給電する埋め込み型バッテリを用いる方式である。しかし、埋め込み型バッテリは、特に、かなりの電力を必要とする埋め込み型医療装置の場合、例えば、心臓胸部外科に関するただ2つの適用例を挙げてみても、埋め込み型補助人工心臓もしくは全人工心臓のような装置の場合には、長く持続する電力を供給するには不十分である。
【0004】
別の解決策は、電磁マイクロ波の誘導または伝達による非侵入型の経皮的電気伝導の原理に基づくものである。しかし、このタイプの接続も、高い電力エネルギーの伝送には、普通の生活とは適合し難いサイズのアンテナが必要であるので、使用についての可能性が限定され、従ってその使用は制限される。
【0005】
第3の方法は、埋め込み型電気的医療装置を患者の体外の電気装置に接続することを可能にする経皮的伝達である。これは、特にデータ伝送のためのより多彩な使用法を提供するという利点を有する。実際、ますます多くの埋め込み型装置が、その電力供給に加えて、その運転に必要または有用な特定個数の信号を伝達または受信している。
【0006】
このような経皮的伝達は、皮膚を貫通してケーブルを通すことによって直接的に、あるいは、患者の体内および体外間の電気接続用の経皮的埋め込み装置(例えばソケット)を用いる恒久的な経皮的電気接続によって行うことができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、動物の身体、特に人体に埋め込まれた内部の電気装置と、例えば電源のような外部の電気装置との間の経皮的な電気接続を可能にする新しいシステムを提供することにある。
【0008】
特に、本発明の目的は、外部の電気装置との恒久的な接続を必要とすることなく、必要に応じて使用することが可能な経皮的接続用の電気接続システムを提供することにある。
【0009】
本発明のさらに別の目的は、例えば、主たる電気接続に故障が生じた場合にそれに代替し得るような、非常時接続用として使用可能な経皮的接続用の電気接続システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的に対して、人体を含む動物の体内の電気装置とその体外の電気装置との間を経皮的に電気接続するための電気接続システムであって、内部の電気装置に接続するように設計される皮下装置を含むことを特徴とする電気接続システムが提案される。この皮下装置は、
−少なくとも1つの内部区画を有する開放型ハウジングであって、その区画には、電気接続プラグを差し込むことが可能な伝導材料が充填され、その区画の伝導材料は、さらに、前記内部の電気装置に接続するように設計された接続手段に接続される、開放型ハウジングと、
−前記ハウジングをシールするためのシール膜であり、絶縁性および可撓性の材料から形成されるシール膜であって、電気接続プラグを、ハウジングの外側からそのシール膜を貫通して前記区画の伝導材料に差し込むように設計される、シール膜と、
を含む。
【0011】
この電気接続システムの好ましいが非限定的な態様であって、単独または組合せて取り上げられるいくつかの態様は次のとおりである。すなわち、
−ハウジングは、相互に電気絶縁されるいくつかの内部区画を含み、各区画には、電気接続プラグを差し込むことが可能な伝導材料が充填され、各区画の伝導材料は、さらに、内部の電気装置に接続するように設計された接続手段に接続される。
−各区画は、シール膜の少なくとも一部分に隣接しており、ハウジングの全区画はシール膜に対して配置される。
−区画は、シール膜によって形成される平均平面に平行な連続する層を形成し、区画は、電気絶縁性の穿孔可能な膜によって相互に絶縁される。
−伝導材料は導電性の溶液である。
−伝導材料は荷電ポリマーである。
−伝導材料は伝導材料の粉体の混合物である。
−ハウジングは、円筒状の空洞部を形成する円形の開口を含み、その円筒状の空洞部の内部に区画が配置される。
−ハウジングは、動物の骨壁内に埋め込むことによって皮下装置を位置決めすることを可能にする埋め込み手段を含む。
−ハウジングは、位置決めを容易にしかつ対応する伝導材料の中への電気接続プラグの差し込みをガイドするアライメント手段を含む。
−アライメント手段は、動物の体外のマグネットと協働するようにハウジングの表面に配置されるマグネットを含む。
−システムは、さらに、外部の電気装置に接続されるように設計される外部装置を含み、その外部装置は、動物の体外から経皮的に皮下装置のハウジングの区画の内部に差し込むように設計される突き刺しピンの形態の電気接続プラグを有する。
−外部装置は、さらに、位置決めを容易にしかつ皮下装置のハウジングの対応する伝導材料の中への電気接続プラグの差し込みをガイドするアライメント手段を含む。
−電気接続プラグは外部装置内において平行に配置され、外部装置のアライメント手段は、前記電気接続プラグの並進をガイドするように設計されたガイド本体と、皮下装置に対するそのガイド本体用の位置決め手段とを含む。
−外部装置は、さらに、電気接続プラグがその中に配置される概略的に円筒状の本体を含み、前記ガイド本体は、外部装置の本体の直径にほぼ合致する開口直径を備えた中空の円筒形状を有する。
−外部装置のアライメント手段は、皮下装置のハウジングの表面に位置するマグネットと協働するように設計されるマグネットを含む。
【0012】
本発明の別の態様によれば、提案されるシステムに特に適した電気接続用の皮下装置であって、経皮的な電気接続を可能にする皮下装置が提案される。さらに正確には、提案される電気接続システムのための電気接続用皮下装置であって、
−少なくとも1つの内部区画を有する開放型ハウジングであり、その区画には、電気接続プラグを差し込むことが可能な伝導材料が充填され、その区画の伝導材料は、さらに、前記内部の電気装置に接続するように設計された接続手段に接続される、開放型ハウジングと、
−前記ハウジングをシールするためのシール膜であり、絶縁性および可撓性の材料から形成されるシール膜であって、電気接続プラグを、ハウジングの外側からそのシール膜を貫通して前記区画の伝導材料に差し込むように設計される、シール膜と、
から構成される皮下装置において、前記ハウジングが、位置決めを容易にしかつ対応する伝導材料の中への電気接続プラグの差し込みをガイドするアライメント手段を含むことを特徴とする、皮下装置が提案される。
【0013】
本発明のさらに別の態様によれば、提案されるシステムに特に適した電気接続用の外部装置であって、経皮的な電気接続を可能にする外部装置が提案される。さらに正確には、提案される電気接続システムのための電気接続用外部装置であって、動物の体外から経皮的に皮下装置のハウジングの区画の内部に差し込むように設計される突き刺しピンの形態の電気接続プラグを有する外部装置において、位置決めを容易にしかつ皮下装置のハウジングの対応する伝導材料の中への電気接続プラグの差し込みをガイドするアライメント手段をさらに含むことを特徴とする、外部装置が提案される。
【0014】
本発明のさらに別の態様によれば、提案される電気接続システムを、動物の体外の電源を動物の体内の埋め込み型電気的医療装置に接続するための非常用電気コネクタであって皮下装置に接続される非常用電気コネクタとして使用することが提案される。
【0015】
本発明の他の特徴および利点は以下の記述から明らかになるであろう。以下の記述は、純粋に例示的なものであり、非限定的であって、添付の図面に関連付けて読み取られるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1実施形態による電気接続システムの3次元の模式図である。
【図2】本発明の第2実施形態による電気接続システムの3次元の模式図である。
【図3】本発明の第3実施形態による電気接続システムの3次元の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本明細書において提示される経皮的電気接続システムの一般的原理は、電気接続用の皮下装置を用いることにある。皮下装置という用語は、患者に埋め込まれて皮下において位置決めされるように設計される装置、従って、特に、材料の生物適合性、皮下における位置決め用および対応する位置保持用の適切な形状などの点に関する皮下埋め込みのために必要なすべての手段を含む装置を意味する。
【0018】
従って、皮下の電気接続装置は、患者の皮下に位置決めされるように設計され、患者の体内に埋め込まれた内部電気装置に電気的に接続される。以下に詳細に述べるように、皮下装置は、さらに、外部から患者の皮膚を貫通して差し込むことが可能な突き刺しピンの形態の電気接続プラグを用いて、外部電気装置に接続するように設計される。この電気接続プラグは、皮下装置の内部に差し込むためのものであり、従って、患者の体外および体内間の電気接続を可能にする。
【0019】
このような経皮的電気接続システムは多様な用途を有することが可能であり、以下に述べるその例は非限定的な事例である。
【0020】
この皮下装置は、第一に、主たる電気接続系統として用いることができる。この場合、外部電気装置との電気接続は所要の時にのみ実行される。例えば、患者に埋め込まれかつその皮下装置に接続されるバッテリの再充電が必要な場合、あるいは、埋め込み型装置と外部電気装置との間のデータ交換を連続的に行う必要は必ずしもないとしても、その間の規則的なデータ交換が必要な場合が、その例である。
【0021】
別の可能な使用法は、皮下装置を、二次的な電気接続として、特に主たる電気接続系統の機能不全を補うためのバックアップまたは非常用電気接続として用いることから構成される。このような使用法は、電力供給系統が故障した場合の代替系統とするのが特に有利である。実際のところ、経皮的電気接続に関する既存の解決策においては、埋め込み型ケーブルによる伝達または恒久的な経皮的電気接続の使用による伝達のいずれの場合においても、使用機器(ケーブル、アンテナ、導体など)は、自然の損耗および損傷、あるいは事故によって破損する可能性がある。この破損は、これらの装置の外部部分および内部部分の両者に関して埋め込み型装置への電力供給を深刻な形で中断する可能性がある。これらの機能不全の中で、電力ケーブルの故障(infection)または破損は、重大な結果をもたらし、患者の生命を脅かすことがあり得る。このような場合に、非常事態において、故障した埋め込み型医療装置への給電を可能にする皮下装置(外部の電気ピンを皮下のハウジングに差し込むには僅かに数秒が必要なだけである)を有することは特に有利である。
【0022】
図1は、本発明が提案する経皮的電気接続システム1の機能および構造を例示する模式図である。
【0023】
電気接続システム1は、第一に、患者に埋め込まれる内部電気装置2に接続するように設計される皮下装置10を備えている。
【0024】
この皮下装置10は、患者に不快感を生じることなく皮膚4の下に埋め込むのに適した形状を備えたハウジング11を有する。このハウジング11は、例えば円筒形状、好ましくはアイスホッケーのパックのような平坦な円筒、または長円形、あるいは他の形状にすることができる。
【0025】
さらに、ハウジング11は、皮下装置10の患者の骨壁への位置決めを可能にする埋め込み手段を有することが望ましい。
【0026】
ハウジング11は開放型である。すなわち、それは、ハウジング11の内側および外側の間に開口を有する。その内側の空洞部に少なくとも1つの接続区画12が配置されるが、数個の接続区画12を設けることが望ましい。区画の個数は、内部の電気装置および外部の電気装置の間を接続するのに必要な電気導線の本数に等しくすることが望ましい。
【0027】
従って、ハウジングは、特に、電気接続システム1をデータ伝送に使用しなければならない場合であって単一の電気導線が必要な場合においても、少なくとも1つの区画を有する。この場合には、1本の電気導線を、さらに、アース用として患者の皮膚に接続することができる。ハウジング11は少なくとも2つの分離された区画を有することが望ましいが、内部の電気装置に電力供給するための電気接続の場合には、3つの分離された区画を有することが望ましい。当然のことながら、電気接続システム1が電力供給に加えてデータ伝送を可能にする場合、あるいは、それが専らデータ伝送用として用いられる場合は、さらに多いまたはより少ない個数の区画を設けることが可能である。
【0028】
ハウジング11内に設けられる異なる区画12は、分離され、かつ相互に電気絶縁される。各区画12は、内部電気装置2に接続するように設計される接続ライン5によって接続される。各区画は、内部電気装置2の対応する電気導線に接続するように設計される電気導線5に電気的に連結するのが望ましい。
【0029】
各区画には、さらに、対応する電気導線5と電気接続される伝導材料(図示されていない)が充填される。使用する伝導材料は、種々の形態を有することが可能であり、主として、その伝導容量、使用およびハウジング内での位置決めの簡単さ、その寿命、などから選択される。
【0030】
伝導材料は、例えば、突き刺しピンをその伝導材料の中に差し込むことができる組織を有する固体形態とすることが可能である。例えば、荷電ポリマー材料、荷電ゲル、あるいは場合によっては伝導材料粉体(例えば、銀粉、チタン粉末など)の混合物を用いることができる。
【0031】
伝導材料は液体とすることも可能であるが、この場合は、ハウジング内に良好に滞留するようにかなり高い粘度を有するものとする。例えば、NaCl溶液を用いることが可能である。
【0032】
皮下装置10は、さらに、ハウジング11の内側および外側の間の良好なシールを確保することによってハウジング11をシールし、皮下装置10の劣化を防止するシール膜13を含む。
【0033】
このシール膜13は絶縁性および可撓性の材料から形成することが望ましい。このシール膜は、電気接続プラグ21を、ハウジング11の外側からその可撓なシール膜13を貫通して区画12の伝導材料に差し込むように設計される。
【0034】
このシール膜13は、患者の皮膚表面4の直下に位置するように設計されるハウジング11の上面に配置することが望ましい。
【0035】
このような皮下装置10によって、電気接続プラグ21を有する外部電気接続装置20を用いて、内部の電気装置2を外部の電気装置3に電気接続することが可能になる。この電気接続プラグ21は、患者の皮膚表面4と交差して、ハウジング11の異なる区画12内に封入される伝導材料の中に差し込むように設計される。この区画12内への封入は、ハウジング11においてその区画12の反対側に位置する可撓性膜13によって行われる。
【0036】
電気接続プラグ21は、伝導材料から形成される突き刺しピンとして、患者の皮膚表面4と容易に交差するように設計することが望ましい。
【0037】
この接続プラグ21は、外部装置20の本体22の中に、互いに対して平行に装着することが望ましい。これは、さらに、(例えば電気導線の形の)電気接続手段6によって外部電気装置3に接続される。
【0038】
前記のように、外部電気装置3は、例えば、発電機または電気信号センサーのような任意のタイプのものとすることができる。この場合、本発明が提案する経皮的電気システム1は、突き刺しピン21を、皮膚表面4を貫通して差し込み、それを皮下装置10の内側に植え込むことからなる簡単な方法によって、埋め込み型電気装置2への必要な電力の供給、あるいは、この装置から発せられる電気信号の収集を可能にする。
【0039】
図1に模式的に例示される本発明の第1の実施形態によれば、区画12は、シール膜13の反対側に配置される。アイスホッケーのパックの形状を備えたハウジング11の場合は、区画12を、例えば、電力相または情報捕捉に必要な接続ラインと同じ個数の部分として配置することになるであろう。
【0040】
電気接続ピン21は、ハウジング11が規定する平均平面(一般的に膜13の平面に合致する)に垂直に差し込むことが望ましい。この特定の配置は、垂直線からごく僅かに変動する可能性があるピンの差し込み軸に対して、許容差を提供するという利点を有する。これによって、外部装置20の皮下装置10への接続が容易になる。
【0041】
図2に模式的に例示される本発明の別の実施形態によれば、区画12が、シール膜13によって形成される平均平面に平行な連続する層を形成し、区画は膜(図示されていない)によって相互に絶縁される。この膜は、電気絶縁性であり、電気接続ピンが穿孔できる膜(可撓性膜)である。この場合、特殊な電気プラグ21を有する外部の電気接続装置10が用いられる。実際には、例えば、当該プラグが接続されなければならない伝導材料の層12の位置に応じて、異なる長さの伝導ピン21を用いることができる。別の解決策は、同様に当該プラグが接続されなければならない伝導材料の層12の位置に応じて、部分的に絶縁された伝導ピン21を用いる。
【0042】
この場合は、システム1の機能は、外部装置20の位置とは無関係に独立している。この外部装置20の位置は、外部装置20の差し込み軸と皮下装置10の伝導領域の軸とが本質的に同心になっているという条件において、皮膚と皮下のハウジングの絶縁膜とを貫通するピン21の差し込み軸の回りの360°の任意の位置とすることができる。
【0043】
図3に模式的に例示される本発明のさらに別の実施形態によれば、経皮的電気接続1が、患者の中に位置決めされる皮下装置10に対する外部の電気接続装置20の正しい位置決めを可能にするアライメント手段(14、23、24)を有する。
【0044】
このようなアライメント手段は、誰でも、医療サービスの外部の者でさえ、電力ソケットがその機能を発揮するようにそれを位置決めして作動させることを可能にし、従って、その取り扱いをできるだけ簡単にするように設計される。
【0045】
この目的のため、例えば、ガイド本体23を含むアライメント手段を用いることが可能である。このガイド本体23は、皮下装置10に対して正しく位置決めされた後、本体22の並進をガイドすることができる。この本体22には、電気接続ピン21が、正しい方位において皮膚表面4を貫通して差し込まれるように装着されている。このようなガイド本体23は、接続ピン21の並進を一方向において可能にするように、外部装置20の本体22と協働するのに適した形状を有する。ガイド本体23および本体22は、取り外し可能または不可能とすることができる。外部装置20は、例えば、電気接続プラグ21が配置される本質的に円筒状の本体22を有することができる。この場合、外部装置20のアライメント手段の本体23は中空の円筒形状を有しており、その開口直径は、外部装置20の本体22の直径にほぼ等しい。
【0046】
このアライメント手段は、さらに、マグネット14および24を含むことが望ましい。このマグネット14および24は、それぞれ、皮下装置10のハウジング11と、外部装置20のガイド本体23とに装着される。従って、ソケットのガイド本体23が皮下装置10のほぼ上面上に位置決める場合、皮下装置10のハウジング11内および外部装置20のガイド本体23上にそれぞれ装着されるマグネット14および24が同心になることによって、正確な位置決めが自動的に行われる。ガイド本体23が安定すると、ガイド本体23内に配置される本体22に圧力を加えて、突き刺し伝導ピン21を、皮膚表面4と交差させた後、皮下のハウジング11の中に突き刺す。
【0047】
外部電気接続装置20の位置決めを容易にするため、皮下装置10の位置に関するより正確な概念を得るために、前以て、タトゥーによって皮膚に標識付けすることが可能である。
【0048】
電気接続プラグ21を位置決めして差し込むためのガイド本体を使用しないことも可能である。この場合は、皮下装置の位置および方位を、例えば触診によって手動で特定する。
【0049】
特定の一例によれば、本発明が提案する経皮的電気接続システム1が、埋め込み型の左心補助装置(left ventricular assist device:LVAD)のような、必然的に連続的な電力供給を必要とする心臓ポンプのためのバックアップ用電気接続として用いられる。
【0050】
この場合、埋め込み型電気的医療装置2、すなわち心臓補助ポンプは、例えば、主たる電力供給ケーブルに平行な第2電力供給ケーブルの接続を可能にする特定の電気接続装置を用いて、主たる電力供給ケーブルに接続される。この第2電力供給ケーブルの末端には皮下の電気接続装置10が接続される。従って、主たる電力供給ケーブルが破断すると、第2電力供給源を、第2電力供給ケーブルおよび前記特定の電気接続装置に接続される皮下装置10を用いて、埋め込み型電気的医療装置2に接続することが可能である。従って、このような構成によって、外部電気接続装置20を介して電源に連結される電気接続用の皮下装置10によって心臓補助ポンプへの電力供給を継続しながら、埋め込み型電気装置2の主たる電力供給を遮断することが可能になり、従って、心臓補助ポンプの連続運転が保証される。このため、このような構成によって、心臓補助装置に、丁度車両用のスペアタイヤのようなバックアップ用の電力ソケットを恒常的に提供できる。
【0051】
従って、皮下装置は、バックアップ用のソケットとして作用することが可能になり、「LS(生命安全:Life Safety)ソケット」または「AEEC(付加的非常用電気接続:Additional Emergency Electrical Connection)ソケット」と呼称される。これは、患者の生命を確保する任意のタイプの埋め込み型医療装置に用いることが可能である。
【0052】
本開示の読者は、本明細書に記述した新規の教示および利点の範囲を実質的に超えることなく、多くの変更を導入し得ることを理解するであろう。従って、この種のすべての変更は、本発明による電気接続システムの範囲内に組み込まれるように意図されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体を含む動物の体内の電気装置(2)とその体外の電気装置(3)との間を経皮的に電気接続するための電気接続システムであり、内部の電気装置(2)に接続するように設計される皮下装置(10)を含む電気接続システムであって、この皮下装置(10)は、
−少なくとも1つの内部区画(12)を有する開放型ハウジング(11)であり、その区画(12)には、電気接続プラグを差し込むことが可能な伝導材料が充填され、その区画(12)の前記伝導材料は、さらに、内部の電気装置(2)に接続するように設計された接続手段(5)に接続される、開放型ハウジング(11)と、
−ハウジング(11)をシールするためのシール膜(13)であり、絶縁性および可撓性の材料から形成されるシール膜(13)であって、電気接続プラグを、ハウジング(11)の外側からそのシール膜(13)を貫通して区画(12)の前記伝導材料に差し込むように設計される、シール膜(13)と、
を含む電気接続システムにおいて、ハウジング(11)が、位置決めを容易にしかつ対応する前記伝導材料の中への電気接続プラグの差し込みをガイドするアライメント手段(14)を含むことを特徴とする、電気接続システム。
【請求項2】
ハウジング(11)が、相互に電気絶縁されるいくつかの内部区画(12)を含み、各区画(12)には、電気接続プラグを差し込むことが可能な伝導材料が充填され、各区画(12)の前記伝導材料は、さらに、内部の電気装置(2)に接続するように設計された接続手段(5)に接続されることを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
各区画(12)が、シール膜(13)の少なくとも一部分に隣接しており、従って、ハウジング(11)の全区画(12)はシール膜(13)に面することを特徴とする、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
区画(12)が、シール膜(13)によって形成される平均平面に平行な連続する層を形成し、その区画(12)は、電気絶縁性の穿孔可能な膜によって相互に絶縁されることを特徴とする、請求項2に記載のシステム。
【請求項5】
前記伝導材料が導電性の溶液であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項6】
前記伝導材料が荷電ポリマーであることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
前記伝導材料が伝導材料の粉体の混合物であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項8】
ハウジング(11)が、円筒状の空洞部を形成する円形の開口を含み、その円筒状の空洞部の内部に区画または複数の区画(12)が配置されることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項9】
ハウジング(11)が、前記動物の骨壁内に埋め込むことによって前記皮下装置(10)の位置決めを可能にする埋め込み手段を含むことを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項10】
アライメント手段(14)が、前記動物の体外のマグネットと協働するようにハウジング(11)の表面に配置されるマグネットを含むことを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項11】
前記システムが、外部の電気装置(3)に接続されるように設計される外部装置(20)をさらに含み、その外部装置(20)は、前記動物の体外から経皮的に皮下装置(10)のハウジング(11)の区画(12)の内部に差し込むように設計される突き刺しピンの形態の電気接続プラグ(21)を有することを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項12】
外部装置(20)が、位置決めを容易にしかつ皮下装置(10)のハウジング(11)の対応する伝導材料の中への電気接続プラグ(21)の差し込みをガイドするアライメント手段(23、24)をさらに含むことを特徴とする、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
電気接続プラグ(21)が外部装置(20)内において平行に配置されること、および、前記外部装置のアライメント手段が、前記電気接続プラグ(21)の並進をガイドするように設計されたガイド本体(23)と、皮下装置(10)に対するガイド本体(23)用の位置決め手段とを含むこと、を特徴とする請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
外部装置(20)が、電気接続プラグ(21)が中に配置される概略的に円筒状の本体(22)をさらに含み、前記ガイド本体(23)は、外部装置(20)の本体(22)の直径にほぼ合致する開口直径を備えた中空の円筒形状を有することを特徴とする、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
外部装置(20)用の前記アライメント手段が、皮下装置(10)のハウジング(11)の表面に位置するマグネット(14)と協働するように設計されるマグネット(24)を含むことを特徴とする、請求項10と組み合わせた請求項12〜14のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれか一項に記載の電気接続システム(1)のための電気接続用の皮下装置(10)であって、
−少なくとも1つの内部区画(12)を有する開放型ハウジング(11)であり、その区画(12)には、電気接続プラグを差し込むことが可能な伝導材料が充填され、その区画(12)の前記伝導材料は、さらに、内部の電気装置(2)に接続するように設計された接続手段(5)に接続される、開放型ハウジング(11)と、
−ハウジング(11)をシールするためのシール膜(13)であり、絶縁性および可撓性の材料から形成されるシール膜(13)であって、電気接続プラグを、ハウジング(11)の外側からそのシール膜(13)を貫通して区画(12)の前記伝導材料に差し込むように設計される、シール膜(13)と、
を含む皮下装置(10)において、ハウジング(11)が、位置決めを容易にしかつ対応する前記伝導材料の中への電気接続プラグの差し込みをガイドするアライメント手段(14)を含むことを特徴とする、皮下装置(10)。
【請求項17】
請求項1〜15のいずれか一項に記載の電気接続システム(1)のための外部装置(20)であって、前記動物の体外から経皮的に皮下装置(10)のハウジング(11)の区画(12)の内部に差し込むように設計される突き刺しピンの形態の電気接続プラグ(21)を有する外部装置(20)において、位置決めを容易にしかつ皮下装置のハウジング(10)の対応する伝導材料(11)の中への電気接続プラグ(21)の差し込みをガイドするためのアライメント手段(23、24)をさらに含むことを特徴とする、外部装置(20)。
【請求項18】
前記動物の体外の電源を前記動物の体内の埋め込み型電気的医療装置に接続するための非常用電気コネクタであって、前記皮下装置に接続される非常用電気コネクタとしての、請求項1〜15のいずれか一項に記載の電気接続システム(1)の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−524576(P2012−524576A)
【公表日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−506516(P2012−506516)
【出願日】平成22年4月23日(2010.4.23)
【国際出願番号】PCT/EP2010/055430
【国際公開番号】WO2010/122142
【国際公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(511256912)セントレ オスピタリエ ユニヴェルシテール ド ルーアン (3)
【Fターム(参考)】