説明

経皮薬剤送達の温度調節

少なくとも1種の薬剤を個人に治療的に有効な速度で投与するための体表面貫通薬剤送達デバイス。本デバイスには、少なくとも1種の薬剤が入っている貯留層および前記薬剤が体表面を貫通する速度に影響を与えるように前記貯留層の加熱および冷却の中の少なくとも一方を行うように調節可能な1番目の表面を有するサーモエフェクターが備わっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は体表面貫通薬剤送達(trans−body−surface drug delivery)に関する。本発明は、特に、薬剤送達が向上するように温度変化を用いた経皮薬剤送達システムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
体表面、例えば皮膚などの天然のバリヤー機能は、治療薬を循環の中に送達する時の難題に相当する。薬剤を経皮送達する目的でデバイス(devices)が考案されてきた。経皮薬剤送達は一般に下記の2群の中の一方に属すると見なすことができる:「受動的」機構による輸送または「積極的」輸送機構による輸送。前者、例えばJanssen Pharmaceuticalsから入手可能なフェンタニル経皮システムおよび他の薬剤送達皮膚パッチなどでは、薬剤を固体状マトリクス(matrix)、速度制御膜を有する貯留層(reservoir)および/または接着剤システムの中に取り込ませる。
【0003】
受動的経皮薬剤送達は数多くの利点を与え、例えば使用が容易であること、使用時の痛みがほとんどか或は全くないこと、使い捨て可能であること、薬剤送達の制御が良好であること、および肝臓を初めて通った時(first−pass)に代謝を受けないことなどの利点を与える。最も受動的な経皮送達システムは、薬剤を特定のプロファイル、例えば「オン−オフ」様式、脈動様式などでは送達し得ない。その結果として、いろいろな形態のエネルギーを用いて薬剤1種または2種以上の流れを推進させる数多くの代替法が提案された。いくつかの例には、イオン導入、超音波、エレクトロポレーション、熱および極微針の使用が含まれる。それらは「積極的」送達システムであると見なされる。
【0004】
イオン導入は、例えば、溶解させた薬剤を電流で皮膚を貫通させて輸送する「積極的」送達技術である。そのような機構の実行性は、熱力学および電気化学の原理で制限される。積極的経皮技術の大きな利点は、投薬量を前以て決めておいたスケジュールを基に自動的に制御することができるか或は患者が必要を基に自分で送達することができるように薬剤送達のタイミングおよびプロファイルを制御することができる点にある。しかしながら、そのようなデバイスでも、送達を適切な期間に渡って充分に制御することはできない。いくつかの積極的経皮送達方策は、皮膚を加熱することで加熱を行わない時に比べて薬剤が皮膚をより有効かつ効率的に透過するように皮膚透過性を向上させることを伴う。熱エネルギーをかけることはいくつかの機構によって皮膚透過に役立つが、そのような機構には、皮膚の透過性が向上すること、血管の全身循環および拡張度合が高くなること、そして薬剤が局所的皮膚組織から放出されて全身循環の中に入る度合が向上することが含まれる。
【0005】
しかしながら、微小循環および薬剤の溶解性を向上させる目的で温度を高くすることを利用すると、また、特定の難題も生じる。熱を長期間かけると皮膚のバリヤー特性が若干低下する可能性があり、その結果として、刺激が高くなるばかりでなく皮膚内および全身循環内の薬剤濃度が制御不能になり得る。熱を酸化(パッチ表面が酸素に接触する度合を変えることで調節)で化学的に発生させる特定のパッチ様加熱デバイスが開示された。そのようなデバイスを受動的経皮パッチの上部に位置させると皮膚の温度が高くなり、その結果として、パッチによって投与される薬剤の吸収度が高くなると報告されている。加熱素子、例えば化学的、電気的および赤外機構などを含有する数種が提案された。熱エネルギーを急速に短期間発生させることで皮膚表面に穴を生じさせる他の数種も提案され、それは、パッチの中に埋め込まれている金属フィラメントに熱源を与える熱デバイスを装備することで実施可能である。薬剤送達を行う目的で熱エネルギーを用いることに関する典
型的な特許には特許文献1および2が含まれる。
【0006】
パッチからのフェンタニル経皮流量が体温に伴って多くなることを示す研究をALZA
Corporationが公開した(非特許文献1)。そのデータは、そのシステムからの薬剤の拡散速度が一定のままであると仮定した時にピーク送達中の温度が3℃高くなると循環中の最大フェンタニル濃度が25%高くなり得ることを示していた。その上、ブタ表皮を貫通させるFITC−Dextran(10kDa)輸送は温度が40℃を超えると温度が37℃未満の時に観察された速度に比べて顕著に向上することと温度を導入すると受動的輸送の度合が高まりかつ起電性輸送の時には加算的(additive)であると言った証拠も示された(非特許文献2)。
【0007】
このように、温度を高くすることは薬剤送達の向上に有効であると思われる。しかしながら、送達すべき薬剤の速度および量を制御し得る機構は欠如している。従って、そのような温度補助薬剤送達における制御をより良好にし得るシステムおよび技術が求められている。
【特許文献1】米国特許第5,226,902号
【特許文献2】米国特許第6,488,959号
【非特許文献1】J.Pain Symptom Manage 7:S17−S26、1992
【非特許文献2】Narasimha Murthy他、J.Pharm.Sci.93:908−915、2004
【発明の開示】
【0008】
要約
本発明は、薬剤の流量を制御する目的で温度を用いて、少なくとも1種の薬剤を個人に治療的に有効な速度で体表面貫通投与するためのデバイスおよび方法を提供するものである。本発明は、1つの面において、薬剤の通過率に影響を与える目的で薬剤貯留層の制御した加熱および冷却を用いる。薬剤送達速度を制御する有効な方法は、体表面に利用される薬剤組成物の量を制御する方法である。
【0009】
本発明の1つの面では、体表面に利用される薬剤組成物量の制御を皮膚に隣接して位置させる薬剤貯留層の温度変化を可逆的にもたらすことで行う。
【0010】
本発明の1つの面では、液体を体表面に投与する場合にマトリクス(または担体)の体積が変化するようにマトリクスの加熱および冷却の両方を制御することによって前記体表面に利用される液体の量を制御するデバイスおよび方法を提供する。
【0011】
本発明の1つの面では、薬剤を経皮送達するためのデバイスおよび方法を提供する。マトリクスを可逆的に加熱または冷却することで薬剤の経皮流量を調節することができる。1つの態様では、液体に入っている薬剤をマトリクスに入れておき、そして1番目の表面を有するペルチェデバイスを用いて前記マトリクスがいろいろな時点で膨張および収縮するように加熱および冷却の両方を可逆的に制御し、それによって、表面を貫通する薬剤の量を制御する。
【0012】
過去において、通常の経皮システムは、一般に、分子量が500ダルトン未満の非常に効力のある(低投薬量の)脂質可溶薬剤に限られていた。本発明は、薬剤の経皮流量効率を更に向上させかつより高い投薬レベルで送達可能な薬剤の範囲および種類を有意に広く
することを可能にする方法を提供するものである。この目的で、本発明では、薬剤組成物が体表面に利用される度合をより高くし、かつ温度が高くなると輸送速度が高くなるようにすることで薬剤1種または2種以上の体表面貫通輸送を向上させる。本発明は、薬剤の送達を従来技術に比べてより精密に制御することを可能にしかつ治療的に有効な薬剤送達を可能にするものである。本発明の1つの面では、感熱性ヒドロゲルが可逆的に膨張および収縮を起こすように可逆的に温度を制御することで埋め込まれている薬剤もしくは薬剤混合物の放出を制御することを可能にする。他の例として、経皮流れを補助しかつ逆転させることができるようにすることで、また、皮膚を貫通する流れが理由で制限されていた可能性のある化合物の投薬量の範囲を劇的により大きくすることも可能になる。
【0013】
感熱性ヒドロゲルは温度の変化に反応して膨張または収縮する。例えば、特定の態様では、そのようなヒドロゲルの中に取り込ませておいた有効薬剤は、温度変化、例えば加熱などに反応してヒドロゲルが収縮した時に放出される。逆に、その後にヒドロゲルが再膨張する適切な温度にまで冷えると、チャンバ内の残存薬剤がヒドロゲルの中に戻って再び取り込まれるであろう。このように、薬剤の利用度および/またはヒドロゲルマトリクスからの薬剤放出度を容易に制御することができる。
【0014】
本発明のデバイスは受動的または積極的体表面貫通薬剤送達の補助で使用可能である。本発明を電気輸送が基になった(積極的)体表面貫通送達技術または受動的体表面貫通送達技術と一緒に用いると下記の利点が得られる:
a. マトリクスを可逆的に熱で活性化させることによって脈動的薬剤送達を繰り返し起こさせることができること、
b. 薬剤放出を制御する「オンデマンド」機構を与えること、
c. 通常の体表面貫通送達による起電性体表面貫通薬剤流量の制御が向上すること、
d. 皮膚内に薬剤貯蔵部(depot)が生じる可能性が最小限になることで全身循環内の薬剤濃度が急速に高くなること、
e. 水分を捕捉しそしてそれの放出が必要な時のみに起こるようにすることで薬剤が送達デバイス内で示す安定性を向上させること、
f. 薬剤貯留層を孤立させかつ貯留層からの放出を「ジャストインタイム」で起こさせることで「遊離流体」の量を制御することによって電気輸送デバイスを向上させること、g. 最適以下の(sub−optimal)温度でヒドロゲルマトリクスの中に薬剤を安定に取り込ませることによって薬剤が乱用される度合を最小限にすることができること、
h. 水溶性低分子薬剤ばかりでなく巨大分子薬剤およびワクチンも伝統的な経皮送達を用いた時に達成されない投薬量で送達すること。
【0015】
詳細な説明
本発明の説明において、下記の用語は以下に示す如くであると定義することを意図する。本明細書および添付請求の範囲で用いる如き単数形「a」、「an」および「the」は、その内容が明確に異なると示さない限り、複数対象を包含する。
【0016】
本明細書で用いる如き用語「経皮」は、薬剤を全身循環の中に入り込ませる目的で薬剤を局所塗布で投与する場合の入り口として皮膚、粘膜および/または他の体表面を用いることを指す。
【0017】
「医薬品」は、これの最も幅広い意味において、ある種の生物学的、有益、治療、診断または他の意図した効果、例えば痛みの軽減および避妊などをもたらすことを意図した材料のいずれかを意味すると解釈されるべきである。本明細書で用いる如き「薬剤」および「医薬品」は、文脈で異なると明記しない限り、本明細書では互換的に用いる。
【0018】
本明細書で用いる如き用語「治療的に有効」は、所望の治療結果を生じさせるに必要な薬剤量または薬剤投与速度を指す。本明細書で用いる如き用語「透過促進」は、透過促進剤の存在下で皮膚を薬剤が透過する度合の方が透過促進剤が存在しない時に皮膚を薬剤が透過する度合に比べて高いことを意図する。
【0019】
用語「サーモエフェクター」は、それと熱伝導的に接触している材料に熱伝導で温度変化をもたらすように電気的に活性化され得る表面を有する電気デバイスを指す。
【0020】
用語「無傷の体表面」は、創傷も傷もなくかつ鋭利な物体で穴が開けられていない体表面、例えば無傷な皮膚表面などを指す。
【0021】
用語「積極的な可逆的加熱」は、単に熱を制御されない様式で環境に逸散させるのではなく、エネルギーが1つの場所から別の場所に移動するように加熱用表面を冷却用表面に変えることで加熱が冷却に逆転し得ることを指す。
【0022】
本発明は、薬剤1種または2種以上を患者に体表面貫通送達するための新規なデバイスおよび技術を提供するものである。患者の体表面を貫通する薬剤1種または2種以上の送達を制御する目的で加熱および冷却を用いる。体表面には無傷の皮膚および粘膜が含まれ得る。体表面は、例えば体の外部、例えば背中などに存在するか或は頬または直腸の場所に存在するか或は耳の通路内にか、眼球上にか或は目に面する瞼側にさえ存在する体表面などであってもよい。以下に行う具体的態様の説明では、本発明のより完全な説明を行う目的で数多くの詳細を示す。しかしながら、本発明はそのような具体的な詳細を用いなくても実施可能であることは本分野の技術者に明らかであろう。他のケースとして、本発明が不明瞭にならないように、良く知られている構造およびデバイスを詳細ではなくむしろブロック図形態で示す。
【0023】
本発明では、1つの面において、経皮薬剤送達を制御する目的で図1に図式的に示すデバイスを用いる。経皮薬剤送達デバイス100には、貯留層の壁110の中に限定されている薬剤貯留層108の中に位置していてマトリクス106と熱伝導的に接触しているペルチェデバイス104が含まれている。前記マトリクスは、薬剤送達の目的で組織(例えば無傷の皮膚)114の体表面112に固着させるに適する。そのペルチェデバイス104にはサーモエフェクター120が含まれており、そのサーモエフェクター120はプレート形状であり、熱伝導シール122を通してマトリクス106と熱伝導的に密に接触させるに適した表面(図1には示していない)を有する。前記熱伝導性シール122は、好適には、マトリクス106とサーモエフェクター120の間の効率良い伝熱をもたらすように熱伝導性を示す薄いシールである。直接的熱伝導の目的で薬剤貯留層108とサーモエフェクター120を直接接触させることも可能であると考えている。
【0024】
ペルチェデバイス104には、このペルチェデバイスの熱動作を制御するための電子回路124が含まれている。処置下の個々の体表面領域に取り付けるに充分なほど薬剤貯留層を覆うに適切な大きさのペルチェデバイスを用いることができる。そのペルチェデバイスの大きさを処置の必要に応じて変えることができる。それに持たせる表面積は薬剤貯留層と導電接触させるに適した面積であってもよく、例えば数mmから数百mmであってもよい。経皮薬剤送達の場合には表面積を好適には5から100mm、好ましくは10から50mmの範囲にする。そのプレート形状のサーモエフェクター120に持たせる厚みは数mmであってもよく、それを好適には皮膚で用いるのが容易なように4mm未満、より好適には1−4mmにする。体表面に取り付けるには一般に薄いデバイスが望ましいことから、一般的には、薄いサーモエフェクターが望ましい。しばしば、サーモエフェクター120の厚みを薬剤貯留層の厚みよりも薄くする。ちょうど良い大きさ(容量、サイズおよび熱出力)のペルチェデバイスを数多くの商業源から購入することができる。
別法として、注文仕様に適するようにそれらを製造することも可能である。
【0025】
ペルチェデバイスは固体状態の性質を有することから、それを用いて薬剤貯留層の温度を正確かつ迅速かつ均一に可逆的に制御することができる。例えば、15−37℃で高い粘度を示すヒドロゲルの中に取り込ませておいた薬剤の放出は、それの温度を前以て決めておいた温度にまで急速に上昇させることで助長可能である。その後、その貯留層を冷却することで、マトリクスからの薬剤放出を逆転させることができる。場合により、薬剤貯留層が冷えている時には熱を受け取りかつ薬剤貯留層が熱い時には熱を与える熱シンクを、薬剤貯留層から見て外方に向くペルチェデバイス面に位置させてもよい。
【0026】
本発明を科学的理論で限定するものでないが、ペルチェデバイスは熱電デバイスであり、可動部分も流体も気体も用いることなく働き得るヒートポンプとして作用する。それは冷(cold)および熱(hot)接合点を有する。温度が降下する冷接合点の所では、電子がp型半導体素子の中の低エネルギーレベルからn型半導体素子の中の高エネルギーレベルに移行するにつれてそれらがエネルギーを吸収する。温度が上昇する、即ち温度が冷接合点の方向とは逆の方向に変化する熱接合点の所では、電子が高エネルギーレベル素子(n型)から低エネルギーレベル素子(p型)に移行するにつれてエネルギーが環境(これは組織(tissue)またはヒートシンクであり得る)に伝達される。そのような熱電デバイスは過去において例えば米国特許第6,492,585号、6,613,602号、5,448,109号および6,345,507号(熱電デバイスおよびそれらの制御および使用に関する記述は引用することによって全体が組み入れられる)に開示されているように冷却の目的で用いられてきた。
【0027】
ペルチェデバイスの中の加熱用もしくは冷却用熱電カップルは、典型的に、半導体材料、典型的にはテルル化ビスマスを用いて作られているが、他の半導体材料を異なる配置で用いることも可能であり、例えばビスマス−テルル−アンチモンおよびコバルトアンチモン材料から作られたビスマスカルコゲニド材料を用いることも可能である。そのような半導体材料、例えばテルル化ビスマスなどにドーパントを添加することなどで電子の過剰(n型)または不足(p型)を生じさせる。そのようなp型およびn型材料を加工して熱電素子を典型的には立方体または長方形片(時には「カップル」と呼ばれる)として生じさせ、そしてそれらをn型素子とp型素子の対として熱電モジュールの中にずらりと並んだ状態で(in the array)配置する。前記カップルをずらりと並んだ状態、典型的には製造を効率良く行うことができるように直列で電気的につなげて、前記カップルの加熱および冷却を制御する電流を供給する回路と電気的につなげる。電力供給でエネルギーを供給することで電子がシステムの中を移動するようにする。前記カップルをつなげる導電体を一般に平らな様式で配置することで、加熱または冷却すべき材料の表面とかなり良好に適合する表面を生じさせる。電流をその隊列(array)の中に通すと、冷接合点の所で吸収された熱が熱接合点に前記回路および多数のカップルの中を流れる電流に比例した速度で輸送され、それによって、温度を調整すべき材料の表面が加熱または冷却される。
【0028】
電気的機能を維持する目的で、ペルチェデバイス内の前記導電体および回路を一般に絶縁する。産業用途では、典型的に、p型立方体とn型立方体をつなげている導電体および半導体カップルをセラミックプレートの間にサンドイッチ形態で密封する。本発明では、体組織表面に取り付ける目的で、半導体材料および導電体を交互に位置する絶縁材料、例えば薬剤送達デバイスの有効温度範囲内で熱および機械的一体性を与える重合体材料などの間に挟んでもよいと理解する。その上、水分が半導体材料および導電体に到達しないようにペルチェデバイスの縁も密封すべきである。半導体および導電体を挟み込む絶縁プレートを生じさせるに適した材料には、例えばセラミック材料、例えば酸化アルミニウム、窒化アルミニウムおよび酸化ベリリウムなどが含まれる。その上、生理学的体表面に熱電デバイスを取り付ける温度の範囲内であれば絶縁プレートを製造する目的で重合体材料を用いることも可能であると考える。使用可能な重合体材料には、ハロゲン化材料、例えばポリ(テトラフルオロエチレン)、ポリ(フッ化ビニリデン)、フルオロアルキルシロキサンエラストマーなど、ポリエステル、例えばポリ(エチレンテレフタレート)およびポリ(4,4’−イソプロピリデン−ジフェニルカーボネート)など、ポリエーテル、例えばポリホルムアルデヒドおよびポリ(2,6−キシレノール)など、ポリイミド、ポリシロキサン、ポリアルキレン、例えばポリエチレンおよびポリプロピレンなど、ポリスルホン、共重合体、例えばポリビニルとポリオレフィンの共重合体[ポリ(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)共重合体、ポリ(塩化ビニル−酢酸エステル)共重合体を包含]、ポリ(メタアクリル酸メチル)などが含まれる。
【0029】
図3に、本発明で使用可能なペルチェデバイスのサーモエフェクター104の部分130を示す。サーモエフェクター部分130には、薬剤貯留層を熱伝導性シール(図3には示していない)で熱伝導的に密封することができる接触プレート132が含まれている。その接触プレート132の上にn型とp型のカップル130を位置させて、それらを導電体136で直列につなげる。カップル134の末端部および導電体136は伝熱が有効に起こるようにプレート132と熱接触状態にある。プレート132の反対側に位置する面上で2番目のプレート(細部が不明瞭にならないように図3には示していない)と導電体136を接触させる。
【0030】
本発明におけるペルチェデバイスは、薬剤貯留層からの薬剤送達を制御するように、可逆的熱−冷温度調節に適する。加熱および冷却の調節はかける電圧の極性を切り替えることで実施可能である。例えば、標準的サブミニチュアリレー、例えば「ダブルポール、ダブルスロー(double−pole,double−throw)」(DPDT)リレーなどを用いることで電圧を逆にする。別の代替法は、前記カップルの中を流れる電流の方向を逆にする目的で金属酸化物半導体の電界効果トランジスタ(MOSFET)インバーターを用いる方法である。電流の流れを逆にする他の電子手段(プログラム可能な回路を包含)も考えられ得る。そのような加熱および冷却サイクルをフィードバック機構で管理することができるが、そのようなフィードバック機構は、前以て決めておいた温度または熱曲線の所で制御するように使用可能である。そのようなフィードバック調節装置には、制御すべき温度を感知する温度センサーが含まれ得る。例えば、ヒドロゲルをマトリクスの中で用いる場合には、フィードバック調節の制御点をこれが当該ヒドロゲルのゲル化状態が変わる温度付近になるように選択することができる。
【0031】
本送達システムに、好適には、送達すべき薬剤が入っている流体を保持する容量または体積が変化し得るマトリクスを含有させる。このマトリクスに入れる好適な材料は、刺激に敏感な重合体ヒドロゲルであり、これは環境状態の変化に反応して膨張または収縮(またはdeswell(脱膨張))し得る。マクロジオール(macrodiols)の形状記憶マルチブロック共重合体が文献(Langer,R.、Nature 392(suupl):5−10、1998;Peppas,N.A.Curr Opin Colloid Interface Sci 2:531−537、1997)に記述されている。温度の変化に伴って構造が変化するヒドロゲル、例えば(メタ)アクリル酸、アクリルアミドおよびN−イソプロピルアクリルアミドの共重合体、生物が源の分子、例えばオリゴペプチドおよびオリゴデオキシリボヌクレオチドなどでか或は以下の文献に開示されている如き未変性で無傷の蛋白質で架橋させた水溶性の合成重合体も本発明に従って薬剤を送達する目的でマトリクスの中に入れて使用可能である。以下の文献に示されている構造および形状の変化をもたらす重合体および技術の説明は引用することによって全体が組み入れられる:米国特許第5,226,902号[N−イソプロピルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、アクリロイロピペリジン、N−エチルメタアクリルアミド、N−n−プロピルアクリルアミドおよびN−(3’−メトキシプロピル)アクリル
アミドなどの如き単量体を用いて作られた重合体が用いられている温度感受性ヒドロゲルに関する];Yoshida他、Adv Drug Deliv Rev 11:85−108、1993[pH感受性ヒドロゲル、例えばアクリル酸またはメタアクリル酸アミノエチルから作られたヒドロゲルなど、電気感受性ヒドロゲル、例えばポリ(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸)を架橋させることで作られたヒドロゲルなど、および温度反応性ゲル、例えばポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)(即ちポリ(NIPAAm))から作られたヒドロゲルなどに関する];LiおよびE’Emanuelle、Int.J.Pharmaceutics 267:27−34、2003[熱反応性ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)(即ちポリ(NIPAAm))ヒドロゲルに関する];DinarvandおよびD’Emanuele、J.Control.Release 36,:221−227、1995[分子をオンオフ放出させる目的で熱反応性ヒドロゲル、例えばポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)から作られたヒドロゲルなどを用いることに関する]。薬剤送達の目的で構造および形状に関する温度反応を起こさせる目的でマトリクスの中に組み込むに適した重合体には、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)ホモ重合体、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)アクリルアミド共重合体、シラン単量体、例えば[3−(メタアクリロイルオキシ)プロピル]トリメトキシシラン、[2−(メタアクリロイルオキシ)エトキシ]トリメチルシランおよび/またはメタアクリロイルオキシ)トリメチルシランなどを含有するポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)共重合体、ポリ(ヒドロキシプロピルメタアクリルアミド)と蛋白質部分を有するジカルボキシメチルアミノプロピルメタアクリルアミドの共重合体、キシログルカン(xyloglucan)、エチル(ヒドロキシエチル)セルロース、ポリ(エチレンオキサイド−b−プロピレンオキサイド−b−エチレンオキサイド)およびこれの共重合体、ポリ(エチレンオキサイド)/(D,L−乳酸−コ−グリコール酸)共重合体、キトサンとポリオール塩の組み合わせ、ポリ(シラミン)およびポリ(オルガノホスファゼン)誘導体が含まれる。
【0032】
当該マトリクスが薬剤組成物を放出および吸収するように温度変化に反応して機能的に膨張および収縮し得る限り単一種の重合体または異なる重合体の混合物を用いることができることを特記する。好適には、NIPAAmから作られた重合体を用いる。当該マトリクスの重合体部分が含有する重合したNIPAAm(即ちNIPAAm単量体から生じさせた)が好ましくは約20から100重量%、好適には50から100重量%、より好適には重合したNIPAAmが約80重量%より上、より好適には約95重量%より上、更により好適には約100重量%であるようにする。その上、当該マトリクスの重合体部分が含有するポリ(NIPAAm)が約20から100重量%、好適にはポリ(NIPAAm)が50から100重量%、より好適にはポリ(NIPAAm)が約80重量%以上、より好適にはポリ(NIPAAm)が約95重量%以上であるようにする。更により好適には、当該マトリクスの重合体部分がポリ(NIPAAm)ホモ重合体から本質的に成るようにする。
【0033】
当該マトリクスに入れる重合体を選択することによって、感熱性ヒドロゲル送達システムが負の制御放出[この場合には体積相転移温度(VPTT)より高い温度で薬剤の送達が停止する]および正の薬剤送達[この場合にはVPTTより高い温度で薬剤の放出速度が高くなる]の両方を示すようにすることができる。いろいろな重合体溶液は下方臨界溶液温度(Lower Critical Solution Temperature)(LCST、即ち体積相転移温度)[この温度より低い時、それらは親水性の可溶状態で存在し、そしてこの温度より高い時、その重合体鎖が疎水性になることで溶液から沈澱する]を示す。重合体の濃度が充分に高い場合、それによって流体がゲルに変わる。感熱性(または熱反応性)重合体ゲルは温度の変化に伴って収縮または膨張する。例えば温度が臨界値(LCST)よりも高い温度にまで上昇すると、ゲルが崩壊し、液体(例えば薬剤溶液)が排出され、そのようにして体積が小さくなる。そのような膨張挙動は、温度がL
CST未満にまで低くなると逆転する。重合体ゲルは物理的または化学的のいずれかで結合している可能性があり、ゾル−ゲル転移の性質は競合する相互作用、例えばイオン相互作用、疎水相互作用、ファンデルワールス力および水素結合など(これらはゲル組成物ばかりでなくゲルの水環境の両方の関数である)の影響を受ける。以下の表1に、ある範囲の転移温度を示す、と言うのは、重合体ヒドロゲルが示す転移温度はいろいろな要因、例えば親水性、pH、供給比および/または組み込む共単量体の濃度などで制御可能であるからである。更に、元素粒子を含有させること、架橋剤の濃度を変えること、ジチオトレイトールなどを用いることでも、ある種のヒドロゲルが示す転移温度を変えることができる。大部分のヒドロゲルは負または「通常の」温度感受性を示す、即ちそれらは相転移温度より低い温度の時に水を吸収して膨張する傾向がある。しかしながら、ある種のヒドロゲルは「逆の」熱ゲル化を示す(即ち昇温度時にゲルを生じる)。従って、そのような感熱性または熱反応性は、原子振動エネルギーが温度変化の関数として変化することによって一般的に共通して起こる熱膨張および収縮とは異なる。
【0034】
表1に、温度感受性を示すように調製可能な典型的な重合体を示す。ポリ(ヒドロキシプロピルメタアクリルアミド)に部分エステル化、例えば桂皮酸などを用いた部分エステル化の如き技術を用いた修飾を受けさせることで、全水温度範囲に渡って調整可能なLCSTを示す共重合体を生じさせることができる(A.Laschewsky、E.D.Rekai、E.Wischerhoff、Polym.Prepr.Am.Chem.Soc.Div.Polym.Chem.40、189、1999)。薬剤溶液を送達する目的で可逆的膨張および収縮を起こすようなポリ(ヒドロキシプロピルメタアクリルアミド共重合体を選択することができる。
【0035】
【表1】

【0036】
本発明における可逆的送達制御では特にポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)(ポ
リ(NIPAAm))およびこれの共重合体が適切である。架橋させたポリ(NIPAAm)ヒドロゲルは、構成要素である重合体鎖が示す親水−疎水均衡によって約32℃の水性媒体中で体積相転移温度(VPTT)を示すが、これは直鎖ポリ(NIPAAm)が水溶液中で示す低臨界溶液温度現象に直接関係している。NIPAAm−コ−AAmヒドロゲルが示すLCSTは、この共重合体に含めるAAmの量に応じて、32−65℃の範囲であり得る。NIPAAmが95%でAAmが5%の共重合体ヒドロゲルが示すLCSTは約40℃である(J.H.Priest他、Reversible Polymer Gels and Related Systems 350:255−264(1987)およびL.C.Dong他、Reversible Polymer Gels and Related Systems 350:236−244(1987))。従って、ヒトの体の中心部の通常温度より僅かのみ高い温度でヒドロゲルが崩壊することを望む用途ではそのような共重合体ヒドロゲルが使用に適する。
【0037】
ヒドロゲルがLCST付近で起こす体積変化は、用いる特定のゲルに応じて劇的であり得、小さい温度範囲内で大きな体積変化が起こり得る。しかしながら、感熱性ヒドロゲルから放出される薬剤の反応時間は予測可能であり、「瞬時」の崩壊ではなくむしろいくらか徐々に起こる。体積変化の速度はいろいろな要因が基になっており、そのような要因には、導電性、膨張または脱膨張(deswelling)の状態などが含まれる。LCST(ある場合には例えば32℃)以上の時の温度変化に関する反応は徐々であり、薬剤の放出に関して予測可能であり、かつ実験的に測定可能である。LCSTを示すヒドロゲルが示す液体放出のいくつかの例がLeeおよびYuan、J.Appl.Polym.Sci.84:2523−2532、2002(これは引用することによって本明細書に組み入れられる)に公開されている。
【0038】
あるヒドロゲルが示す膨張の度合は特定のヒドロゲル組成、刺激の持続時間、膨張/収縮サイクルの数、開始剤の種類および架橋剤の種類などの如き要因に応じて変わり得るが、そのようなLCSTを示すヒドロゲルが有する容量は典型的に大きい。膨張(q)をサンプルが完全に水和した時の重量(Wh)と無水の時の重量(Wi)の質量比、即ちq=Wh/Wiとして計算するならば、膨張の度合を実験的に測定することができる。本発明の温度制御可能薬剤送達のデザインを提供することができる。
【0039】
本発明の感熱性重合体は温度に伴って膨張および収縮し、その結果として、薬剤溶液の放出および吸収を治療的に有意な量で起こさせることができる。そのような感熱性重合体は、一般に、約30℃の基礎温度付近で温度が15℃変化すると膨張して体積が結果として50%から2000%、好適には100%から1000%変化し得る。言い換えれば、膨張時に体積が100%変化するヒドロゲルは、重量で表して無水ヒドロゲルの重量に相当する量の水性材料を吸収する。従って、当該ヒドロゲルがそのような感熱性重合体が理由で起こす膨張および収縮による体積変化は通常の熱収縮もしくは膨張による変化よりも有意に大きい。
【0040】
使用中、前記貯留層に入っているマトリクスをサーモエフェクターで活性化させることで前記マトリクスが保持している液体(薬剤溶液)の2−80%を放出させることができる。しかしながら、温度変化が有効に起こるように前記マトリクスと皮膚およびサーモエフェクターとの接触をより良好に維持すると、患者が使用している間に前記マトリクスから液体の5−50%、好適には10−30%が放出され得る。
【0041】
ポリ(NIPAAm)の調製は、一般に、N−イソプロピルアクリルアミドを架橋剤、例えばN,N’−メチレン−ビス−アクリルアミド(MBAAm)などおよび促進剤、例えばN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンなどで架橋させることで実施可能である。開始剤、例えば過硫酸アンモニウムおよびTEMEDなどを用いて架橋反応を
開始させることができる。重合は、存在する酸素の量が最小限になるように窒素を吹き込むことで脱気を受けさせておいた蒸留水中で実施可能である。いろいろな架橋度のポリ(NIPAAm)を製造することができ、例えばNIPAAm:MBAAmの比率が80から20になるように製造することができるが、この範囲外の比率も可能である。例えば2.25gのNIPAAMを15mlの脱気を受けさせておいた蒸留水に0.2重量/体積%、0.4重量/体積%および0.6重量/体積%の量の架橋剤MBAAmと一緒に入れて重合させてもよい。重合後の合成ヒドロゲルを室温の蒸留水(水を数時間毎に新しくしてもよい)に48時間浸漬することで未反応の化学品を滲出させてもよい。本分野の技術者は薬剤組成物を吸収および放出する容量が所望の容量である重合体を生じさせる目的で架橋を調整することができるであろう。別の例として、キトサンとグリセロホスフェートを含有するヒドロゲルの調製は、最初にキトサンが脱イオン水に入っている溶液を調製しそしてそれに滅菌をオートクレーブ(121℃、10分間)内で受けさせることを通して実施可能である。次に、脱イオン水に入っているグリセロホスフェート溶液を調製して、それに濾過による滅菌を受けさせてもよい。その2つの溶液を氷浴で15分間冷却してもよい。前記キトサン溶液を絶えず撹拌しながらこれに前記グリセロホスフェート溶液を滴下した後、その結果として得た混合物を無菌条件下で更に10分間撹拌する。
【0042】
重合材料をシート、ディスクなどに成形してもよい。他の方法として、ヒドロゲルの調製をTEMED(単量体を基準にして8.17モル%)および過硫酸アンモニウム(1.91モル%)をそれぞれ開始剤および成長剤として用いて円柱形もしくは長方形のプラスチック製管内で20℃の蒸留水中で実施することも可能である。MBAAm(1.15モル%)を架橋剤として用いてもよい。TEMEDを添加する前の溶液に窒素を15分間引き込んでおいてもよい。その重合用混合物を室温に1時間放置することで全単量体が反応することを確保してもよい。その調製したヒドロゲルブロックを薄切りしてディスクまたは長方形の薄片にした後、水中で膨張させた後に約50℃に加熱することを繰り返すことで奇麗にする。次に、それらを濾過した後、50℃の真空オーブン内で48時間乾燥させてもよい。
【0043】
ヒドロゲルへの低分子薬剤の充填:乾燥させたヒドロゲルディスクに薬剤の水溶液もしくはエタノール溶液を染み込ませることで充填した後、薬剤分子を捕捉するに必要な温度の乾燥器に入れて溶媒を除去してもよい。その必要な温度の選択は感熱性ヒドロゲルの種類およびLCSTに依存するであろう。例えば、重合体が膨潤または膨張した形態で存在する場合、その重合体が示すLCSTより低い温度でヒドロゲルに薬剤溶液を充填してもよい。そのヒドロゲルが示すLCSTより高い温度に切り替えるとその系の収縮(contraction or deswelling)が起こるが、その結果として起こる収縮の大きさおよび速度は温度切り替え前の膨張度に比例する。このような負の熱反応性を示すヒドロゲルの例では、温度をLCSTより高くすると、結果として、急速な収縮(contraction or shirinkage)が起こり、それによって、薬剤溶液がヒドロゲルマトリクスから放出される。そのような充填含有量は、既知体積の薬剤溶液を適切なガラス瓶に入れて48時間(または必要な時間)に渡って完全に吸収させた後に完全に乾燥させることを通して調節可能である。
【0044】
別法として、ヒドロゲルを関係した濃度の薬剤を入れておいた30mlの緩衝溶液(25mMのHEPESおよび50mMのNaCl)に1週間に渡って接触させたままにしておくことでヒドロゲルに薬剤を充填することも可能である。
【0045】
薬剤を含有するキトサンとグリセロホスフェートのヒドロゲル配合物の調製は、キトサン溶液を無菌の薬剤粉末の上に直接注ぎ込んで撹拌を4時間実施した後にこの上に記述した如きグリセロホスフェート溶液と混合することで実施可能である。
【0046】
また、乾燥(dry)共重合体ヒドロゲルディスクを当該薬剤がアセトンに入っている25mlの溶液に浸漬することで充填を実施することも可能である。前記ディスクを前記薬剤溶液の中に3日間に渡って入れたままにすることで平衡状態にしてもよい。ある種のヒドロゲルはアセトン中でかなり膨張し、従って、高い薬剤充填を達成するに適した容量を持ち得る。その薬剤を取り込んだディスクを前記溶液から取り出した後、真空フラスコの中に入れてもよい。薬剤が前記ディスクの表面に移行する度合が最小限になるように制御した乾燥手順を用いてもよい。その薬剤を取り込んだディスクを低真空度下−20℃で3時間、−5℃で3時間、5℃で6時間そして25℃で12時間乾燥させてもよい。次に、その薬剤を取り込んだディスクをオーブン(55℃)に入れて12時間乾燥させてもよい。
【0047】
ヒドロゲルへの巨大分子蛋白質が基になった薬剤の充填:薬剤充填用溶液の調製は、最初に2gの薬剤を200mlの燐酸塩緩衝溶液(PBS、0.1M、pH7.4)に溶解させることを通して実施可能である。蛋白質をヒドロゲルに充填する前に、膨張していないヒドロゲルの各々を真空下で1日乾燥させておいてもよい。次に、この上に記述したようにして調製した薬剤溶液中で起こる平衡分配によって薬剤をその前以て加工して乾燥させておいた未膨張ヒドロゲルの中に取り込ませてもよい、即ち真空下で乾燥させておいたヒドロゲルをモデル蛋白質、例えばウシ血清アルブミン(BSA)溶液などの中に22℃で充分な時間入れたままにする。
【0048】
本発明で薬剤を患者に送達しようとする場合、薬剤貯留層が保持し得る適切な体表面貫通送達可能薬剤のいずれも使用可能である。本発明に従う送達で可逆的制御温度調節用のヒドロゲルを用いた場合に下記の典型的な薬剤がうまく機能することを見いだした。
a. リドカイン、テトラカイン(発現が速くて制御された濃度)
b. フェンタニル、ブプレノルフィン(発現が速くて制御された濃度)
c. ヒドロモルホン(手術後の急性および慢性痛)
d. 抗パーキンソン病薬、例えばアポモルフィンおよびロチゴチン[伝統的なドーパミン治療を用いた時のエンドオブドース(end−of−dose)不成功を補う目的、予測不能な運動合併症、例えばバーディーキネシア(bardykinesia)および無動症などを急速に改善]
e. 光線力学療法で用いられる光増感剤、例えばPhotofrin II
f. RNAiが基になった治療
g. メチルフェニデート
h. ジクロフェナック(透過促進)。
【0049】
迅速な作用発現ばかりでなくフィードバックに関する患者の管理も要求される医薬品である治療薬、例えば鎮痛薬などおよび治療幅が狭い医薬品などは一般に本発明によって利益を得るであろう、と言うのは、流量および管理が向上するからである。生物学的利用能を充分にする目的で経皮流れを更に向上させることが要求される他の薬剤もまた本発明によって利益を得るであろう。そのような薬剤には、主要分野全部の治療薬が含まれ、それらには、これらに限定するものでないが、ACE阻害薬、腺下垂体ホルモン、アドレナリン作動性ニューロン遮断薬、副腎皮質ステロイド、副腎皮質ステロイド生合成阻害薬、アルファ−アドレナリン作動薬、アルファ−アドレナリン拮抗薬、選択的アルファ−ツー−アドレナリン作動薬、鎮痛薬、解熱剤および抗炎症薬、アンドロゲン、局所および全身性麻酔薬、抗中毒薬、抗アンドロゲン薬、不整脈治療剤、抗喘息薬、抗コリン作動薬、抗凝血剤、抗糖尿病薬、抗下痢薬、抗利尿薬、制吐薬および運動促進薬、抗てんかん薬、抗エステロゲン薬、抗菌カビ剤、抗高血圧薬、抗菌剤、抗片頭痛薬、抗ムスカリン薬、抗腫瘍薬、駆虫剤、抗パーキンソン病薬、抗血小板薬、抗プロゲスチン薬、抗甲状腺薬、鎮咳薬、抗ウイルス薬、非定型抗うつ剤、アザスピロデカンジオン、バルビチュエート、ベンゾジアゼピン、ベンゾチアジアジド、ベータ−アドレナリン作動薬、ベータ−アドレナリン拮抗薬、選択的ベータ−ワン−アドレナリン拮抗薬、選択的ベータ−ツー−アドレナリン作動薬、胆汁塩、体液の体積および組成に影響を与える薬剤、ブチロフェノン、石灰化に影響を与える薬剤、カルシウムチャネル遮断薬、心臓血管薬、カテコールアミンおよび交感神経興奮剤、コリン作動薬、コリンエステラーゼ再活性化薬、皮膚病薬、ジフェニルブチルピペリジン、利尿薬、麦角アルカロイド、エストロゲン、神経節遮断薬、神経節刺激薬、ヒダントイン、胃酸性度制御薬および消化性潰瘍治療薬、造血薬、ヒスタミン、ヒスタミン拮抗薬、5−ヒドロキシトリプタミン拮抗薬、高リポ蛋白血症治療薬、睡眠薬および鎮静剤、免疫抑制剤、下剤、メチルキサンチン、モンカミンオキシダーゼ阻害剤、神経筋遮断薬、有機ナイトレート、オピオイド鎮静薬および拮抗薬、膵臓酵素、フェノチアジン、プロゲスチン、プロスタグランジン、精神疾患治療薬、レチノイド、ナトリウムチャネル遮断薬、痙直および急性筋肉けいれん用の薬剤、スクシニミド、チオキサンチン、血栓溶解剤、チロイド薬、三環式抗うつ薬、有機化合物尿細管輸送阻害薬、子宮の運動に影響を与える薬剤、血管拡張薬、ビタミンなどの単独または組み合わせが含まれる。その上、電解質または貯留層の中のマトリクスに組み込むことができる組成物の中に保持されるか或は溶解し得る他の材料も本発明の技術を用いて送達することができることも特記する。
【0050】
本発明は、また、ペプチド、ポリペプチド、蛋白質および他のそのような種を制御して送達しようとする時にも有用である。そのような物質が有する分子量は典型的に少なくとも約300ダルトン、より典型的には約300から40,000ダルトンの分子量である。そのような大きさの範囲のペプチドおよび蛋白質の具体例には、これらに限定するものでないが、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)、LHRH類似物、例えばゴセレリン、ブセレリン、ゴナドレリン、ナファレリンおよびロイプロリドなど、成長ホルモン放出ホルモン(GHRH)、成長ホルモン放出因子(GHRF)、GHRFフラグメント、インスリン、インスルトロピン、カルシトニン、オクトレオチド、エンドルフィン、チロトロピン放出ホルモン(TRH)、NT−36(化学名:[[(s)−4−オキソ−2−アゼチジニル]カルボニル]−L−ヒスチジル−L−プロリナミド)、リプレシン、下垂体ホルモン[例えばヒト成長ホルモン(HGH)、ヒト閉経期ゴナドトロピン(HMG)、酢酸デスモプレシンなど]、卵胞ルテオイド、アルファ心房性ナトリウム利尿因子(α−ANF)、成長因子、例えば成長因子放出因子(GFRF)、ベータ−メラノサイト刺激ホルモン(β−MSH)、ソマトスタチン、ブラジキニン、ソマトトロピン、血小板由来成長因子、アスパラギナーゼ、硫酸ブレオマイシン、キモパパイン、コレシストキニン、絨毛性ゴナドトロピン、コルチコトロピン(ACTH)、エリスロポイエチン、エポプロステノール(血小板凝固抑制薬)、グルカゴン、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(HCG)、ヒルログ、ヒアルロニダーゼ、インターフェロン、インターロイキン、メノトロピン[ウロホリトロピン(卵胞刺激ホルモン{FSH})および黄体形成ホルモン、LH]、オキシトシン、ストレプトキナーゼ、組織プラスミノーゲン活性化剤、ウロキナーゼ、バソプレシン、デスモプレシン、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)類似物、心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)、ANPクリアランス阻害薬、アンギオテンシンII拮抗薬、抗利尿ホルモン作動薬、ブラジキニン拮抗薬、クラスターデジグネーション4(cluster designation 4)(CD4)、セレダーゼ、エンケファリン、Fabフラグメント、免疫グロブリンE(IgE)ペプチド抑制薬、インスリン様成長因子−1(IGF−1)、神経栄養因子、コロニー刺激因子、副甲状腺ホルモンおよび作動薬、副甲状腺ホルモン拮抗薬、副甲状腺ホルモンのフラグメント、プロスタグランジン拮抗薬、ペンチゲチド、蛋白質C、蛋白質S、レニン阻害薬、サイモシンアルファ−1、血栓溶解薬、組織壊死因子−アルファ(TNF−α)、ワクチン、バソプレシン拮抗薬類似物、アルファ−1アンチトリプシン(組換え型)および組織成長因子−ベータ(TFF−β)が含まれる。
【0051】
使用時、本体表面貫通薬剤送達デバイスを体表面に取り付けて治療的に有効な度合で接
触させる。熱で制御する薬剤送達が必要な時には、回路124を活性化させて熱電カップル含有サーモエフェクター120に温度変化(例えば、通常の温度感受性を示すヒドロゲルの場合には上昇)を誘発することで、薬剤貯留層108の中に存在するマトリクスを収縮させることができる。その結果として、前記マトリクスが薬剤貯留層108の中に入っている薬剤溶液を保持する容量が低下しかつ前記薬剤溶液が体表面112に利用される量がより多くなる。薬剤が所望量で送達された後、前記マトリクスに面して位置するサーモエフェクター表面から前記薬剤貯留層への熱流れを停止させるか或は逆転させることができる。前記熱電デバイスの中のカップルに流す電流を逆にすることでその逆を達成することも可能である。電流の流れを逆にすると温度の変化が逆に起こり、前記マトリクスが膨張することで、それの容量が大きくなって流体をより多い量で吸収するようになる。このように、前記マトリクスの加熱および冷却を積極的に可逆的制御する。このようにして、体表面にいくらか残存する薬剤溶液を体表面が急速に吸収するようにすることができ、従って、それ以降に起こる体表面への薬剤の流れを劇的に低下させるか或は防止することができる。
【0052】
必要ならば、薬剤の流れを脈動様式で調節する目的でペルチェデバイスの温度が脈動様式で変わるようにそれを制御してもよい。必要ならば、ある期間の熱流後、前記カップルの中を流れる電流を逆にするのではなく単に切ることで薬剤の流量を低くすることも可能である。その上、必要ならば、温度を定期的に変える、例えば加熱と冷却を脈動的に行うか或は加熱と冷却を断続的に止めることなどで、温度をある期間に渡って一定レベルに維持することも可能である。加熱および冷却の微調整は、適切な場所、例えば薬剤貯留層の中などの温度を測定することを伴わせたフィードバック制御で実施可能である。また、タイミング、即ちある決めた時間が経過した後にペルチェデバイスを逆転または停止させることなどで、温度反応性薬剤送達を制御することも可能である。
【0053】
ペルチェデバイスに隣接して位置するマトリクスの所のマトリクスの熱反応を制御する目的で適用可能な温度変化は、加熱の場合には約25から60℃で冷却の場合には0から25℃、より好適には加熱の場合には約25から44℃で冷却の場合には4から25℃であり得る。体の組織および電気輸送送達用の電子部品は敏感なことから、ペルチェデバイスに隣接して位置するマトリクスの所の温度変化は更により好適には加熱の場合には約25から45℃で冷却の場合には10から25℃である。そのような温度は前記マトリクス全体の温度を基にしたデータを基にして望ましい制御を実施することができるように調整可能であると理解されるべきである。従って、前記マトリクスに隣接して位置するペルチェデバイスの所の温度は加熱の場合には約25から45℃で冷却の場合には4から25℃、より好適には加熱の場合には約25から45℃で冷却の場合には10から25℃であってもよい。
【0054】
また電気輸送も含めた本発明の体表面貫通薬剤送達デバイスの場合には、その電気輸送から独立させてか或はそれと同時に前記マトリクスの熱誘発収縮を起こさせてもよい。例えば、通常の温度感受性を示すマトリクスの場合には、イオン化し得る薬剤が体表面を貫通するようにする目的で、電極から電流が流れる時に薬剤貯留層が加熱されるように熱電デバイスを用いてもよい。その熱によって前記マトリクスが収縮することで薬剤組成物がより多い量で体表面に利用されるようになるばかりでなく薬剤組成物から体表面を貫通してイオン輸送される速度がより速くなる。
【0055】
この上で述べたように、本熱制御薬剤送達は、伝統的な受動的経皮薬剤送達用パッチおよび積極的電気輸送デバイス、例えばイオン導入デバイスなどに関係させて用いることができるように適合させることができる。図4に、電気輸送デバイス、例えばイオン導入デバイスなどに熱制御を持たせるにはそれをどのように適合させることができるかを一部図式的に示す。図4に示した電気輸送デバイスには、図1および2に示したサーモエフェク
ターと同様なサーモエフェクター120が含まれている。この図には、説明を明瞭にする目的で、サーモエフェクター120および熱伝導性シール(任意であり得る)への電気連結は示していない。電流が流れるように電極138と薬剤貯留層108(マトリクス106が入っている)を接触させることで、イオン化し得る薬剤1種または2種以上が組織114の体表面112を貫通するようにする(例えば皮膚を貫通する経皮送達)。薬剤1種または2種以上の送達を制御する目的で、前記電極を制御回路140につなげ、その制御回路140を患者の体上のアース端子142につなげる。サーモエフェクター120と同様に電極138と薬剤貯留層108の間にも有効な熱伝導接触を生じさせる目的で熱伝導性シールを用いてもよい。
【0056】
電気輸送用制御装置140の電子機器と熱調節制御用電子機器を分離させてもよいか、或は本分野の技術者は、それらを同じパッケージの中に一緒に一体化することができるであろう。その上、サーモエフェクター120を電極138の上部に位置させる必要もない。大型の薬剤貯留層の場合のように充分な余地がある場合には、その二者を電流が流れるばかりでなく薬剤送達の制御を行う加熱および冷却を行うことができるように片またはパットとして並べて配置することも可能である。
【0057】
電気輸送デバイス、例えばイオン導入デバイスなどは本技術分野、例えば米国特許第6,216,033号などで公知であり、この上に記述したように、本発明の熱制御と一緒に機能するようにそれを適合させることができる。そのように適合させることができる典型的なイオン導入経皮デバイスを以下に記述する。図5に、本発明に従って使用可能な典型的な電気輸送デバイスを示す。図5に、プッシュボタン12の形態の起動用スイッチおよび発光ダイオード(LED)14の形態のディスプレーが備わっている電気輸送デバイス10の分解透視図を示す。デバイス10には、上方のハウジング16、回路板アセンブリ18、下方のハウジング20、陽極22、陰極24、陽極貯留層26、陰極貯留層28および皮膚適合性接着片30が含まれている。上方のハウジング16には、デバイス10を患者の皮膚上に保持させるに役立つ横方向ウィング15が備わっている。上方のハウジング16は好適には射出成形可能弾性重合体(例えばエチレン酢酸ビニル)で構成されている。
【0058】
印刷回路板アセンブリ18には、個別の電気部品40およびバッテリー32と連結している一体型回路19が含まれている。印刷回路板アセンブリ18を開口部13aおよび13bを貫通する口(示していない)によってハウジング16と結合させるが、前記口の末端部は、前記回路板アセンブリ18とハウジング16を熱で溶着させるように加熱/溶融可能である。下方のハウジング20を上方のハウジング16に接着片30で結合させるが、接着片30の上表面34を下方のハウジング20および上方のハウジング16(ウィング15の下表面を包含)の両方に接着させる。
【0059】
印刷回路板アセンブリ18の下側にバッテリー32を示した(部分的に)が、それは好適にはボタン電池バッテリー、最も好適にはリチウム電池である。デバイス10に電力を送る目的でまた他の種類のバッテリーを使用することも可能である。
【0060】
回路板アセンブリ18の回路アウトプット(図5には示していない)は、導電性接着片42、42’によって、下方のハウジングの中に生じさせたくぼみ25、25’の中の開口部23、23’を通して電極24および22と電気接触している。逆に、電極22および24は貯留層26および28の上面44’、44と機械的および電気的に直接接触している。貯留層26、28の下面46’、46は接着片30の中の開口部29’、29を通して患者の皮膚と接触する。
【0061】
プッシュボタンスイッチ12を押すと、回路板アセンブリ18上の電子回路が前以て決
めておいたDC電流を電極/貯留層22、26および24、28に前以て決めておいた長さ、例えば約10−20分の送り間隔で送る。前記デバイスは、好適には、LED 14の発光および/または例えば「警報器」などからの可聴式音シグナルで、その使用者に薬剤送達の開始またはボーラス投与の間隔を可視および/または可聴式に確認の信号を送る。次に、薬剤、例えばフェンタニルまたはスフェンタニルなどが前以て決めておいた送達間隔で患者の皮膚、例えば腕の皮膚などを貫通して送達される。実際、使用者は可視(LED 14の発光)および/または可聴式シグナル(「警報器」からの警報)によって薬剤送達間隔の開始に関するフィードバックを受け取る。
【0062】
陽極22(好適には銀製)および陰極24(好適には炭素と塩化銀を含有)を重合体マトリクス材料の中に充填する。貯留層26、28の両方を好適には本明細書で記述する如き重合体ヒドロゲル材料で構成させる。電極22、24および貯留層26、28を下方のハウジング20で保持する。例えばカチオン性薬剤の場合の陽極貯留層26は薬剤が入っている「供与体」貯留層であり、そして陰極貯留層28には生体適合性電解質および場合により送達すべき2番目の薬剤(アニオン性)または抗菌剤が入っている。電極材料を望ましくなくイオンを吸収し得る材料で構成させる場合には、イオン交換膜を電極24と貯留層28の間に位置させてもよい。このように、例えば、アニオン交換膜(図5には示していない)を陰極24と陰極貯留層28の間に位置させてもよく、そのようにすると、カチオンは前記膜を通り抜けず、従って、陰極と接触しない。
【0063】
プッシュボタンスイッチ22、回路板アセンブリ18上の電子回路およびバッテリー32を上方のハウジング16と下方のハウジング20の間に位置させて接着剤で「密封する」。上方のハウジング16を好適にはゴムまたは他の弾性重合体材料で構成させる。下方のハウジング20を、くぼみ20、25’を生じるように容易に成形可能でありかつ開口部23、23’を形成するように切断可能な重合体シート材料で構成させる。下方のハウジング、特に陽極貯留層26および陰極貯留層28が入っている部分を重合体材料で構成させる。そのような重合体材料は、化学品がその高分子量材料に実質的に吸収されないように、貯留層の中の化学品と適合する材料である。適切な重合体材料には、ポリエチレンテレフタレート、重合体がより非晶質になるようにシクロヘキサンジメチロールによる修飾を受けさせたポリエチレンテレフタレート(ポリエチレンテレフタレートグリコールまたはPETGと呼ばれる)、ポリプロピレンおよびこれらの混合物が含まれる。好適な重合体材料はポリエチレンテレフタレートおよびPETGであり、これらは両方とも商業的に入手可能であるが、PETGの方が好適である。適切なPETGをEastman Chemical Products,Inc.から商標KODAR−PETGコポリエステル6763の下で入手することができる。
【0064】
組み立てたデバイス10は好適には耐水性(即ち防滴性、最も好適には防水性)である。このシステムは低プロファイルを示すことで体に容易に柔順し、それによって、装着部位およびその回りの動きは自由である。陽極薬剤貯留層26および陰極貯留層28をデバイス10の皮膚接触面上に位置させ、そして通常の取り扱いおよび使用中に偶発的に電気的ショートが起こらないほど充分に分離させる。
【0065】
デバイス10を上面34と体接触面36を有する周囲接着片30で患者の体表面(例えば皮膚)に接着させる。接着面36に、使用者が通常に活動している時にデバイス10が体の適切な場所に存在したままであるが前以て決めておいた(例えば24時間の)装着期間の後に妥当に除去可能であることを確保する接着特性を持たせる。上方の接着面34を下方のハウジング20に接着させることで、電極および薬剤貯留層がハウジングのくぼみ25、25’の中に存在したままであるようにするばかりでなく下方のハウジング20が上方のハウジング16と結合したままであるようにする。前記デバイスにまた通常は剥離ライナー(示していない)も与えておくが、それを最初に接着片30の体接触面36に付
着させそして患者に取り付ける前にそれを剥がす。その剥離ライナーは典型的にはシリコーン被覆ポリエチレンエチレンである。
【0066】
プッシュボタンスイッチ12をデバイス10の上面に位置させ、そして衣服を通して容易に起動させることができるようにする。好適には、プッシュボタンスイッチ12を短時間、例えば3秒間内に2回押すとデバイス10が起動して薬剤が送達されるようにすることで、デバイス10が不注意に起動する可能性を最小限にする。
【0067】
スイッチを起動させると可聴式アラームが薬剤送達開始のシグナルを発し、その時点で回路は前以て決めておいたレベルのDC電流を電極/貯留層に前以て決めておいた(例えば10分間)送達間隔で供給する。LED14は送達間隔全体に渡って「オン」のままであり、それによって、デバイス10が積極的薬剤送達モードであることを示す。バッテリーの容量は好適にはデバイス10に電力を装着期間全体(例えば24時間)に渡って前以て決めておいたレベルのDC電流で連続的に供給するに充分な容量である。一体型回路19をデザインする時、前以て決めておいた量の薬剤が患者に前以て決めておいた時間送達された後にスイッチを再び起動させると送達が止まりそして前以て決めておいた数の投薬が投与された後には追加的薬剤が供与体貯留層の中に存在するにも拘らずさらなる送達が起こり得ないようにデザインしてもよい。
【0068】
この上に示したように、陰極貯留層の壁を生じさせる時に用いることができる適切な重合体材料には、ポリエチレンテレフタレート、シクロヘキサンジメチロールによる修飾を受けさせたポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンおよびこれらの混合物が含まれる。この材料は好適にはポリエチレンテレフタレートまたはシクロヘキサンジメチロールによる修飾を受けさせたポリエチレンテレフタレートである。この重合体材料を熱成形または他の適切な技術のいずれかを用いて所望の形状(例えば下方ハウジングの形態)に成形してもよい。感熱性マトリクス、例えば感熱性ヒドロゲルなどを前記貯留層の中に入れ、そしてペルチェデバイスを用いてそれからの薬剤送達を制御してもよい。
【0069】
陽極貯留層の中に入れるべき水性媒体の調製は通常技術のいずれかに従って実施可能である。例えば、水性媒体がヒドロゲル配合の場合、それの約10から約30重量%を疎水性重合体材料で構成させ、約0.1から約0.4重量%の緩衝液で構成させかつ所望量の薬剤で構成させてもよい。その残りは水および他の通常材料である。
【0070】
この上で述べたように、伝統的な経皮薬剤送達用パッチ、例えば米国特許第5,512,292号に示されている如きパッチなどに本発明に従う熱制御を含める目的で、それを適合させてもよい。そのような典型的な経皮薬剤送達用パッチを以下に記述する。本発明の経皮送達デバイスの1つの態様を図6に示す。図6では、デバイス301に薬剤と透過促進剤が入っている貯留層(「薬剤貯留層」)302を含有させるが、その貯留層302は、好適には、薬剤と促進剤が中に分散しているマトリクスの形態である。支持層303を薬剤貯留層302が有する1つの表面に隣接して位置させる。接着性オーバーレイ304でデバイス301を皮膚の上に保持させるが、これを前記デバイスの残りの構成要素と一緒に加工してもよいか或は個別に与えてもよい。特定の配合を用いるならば、接着性オーバーレイ304は好適にはインライン接触接着剤、例えば図8に示す如き接着性層328などであってもよい。好適には、支持層303を薬剤貯留層302よりも若干大きくし、そのようにして、薬剤貯留層302の中の材料がオーバーレイ304の中の接着剤と不利な相互作用を起こさないようにする。貯留層302に入れる薬剤の量は飽和状態、不飽和状態または過飽和状態であってもよい。また、剥離もしくは除去可能なライナー305もデバイス301に与え、それをデバイス301を皮膚に取り付ける直前に剥がす。
【0071】
図7に、本発明の別の態様を示し、デバイス310が皮膚317の上に位置する状態で
示す。この態様における経皮送達デバイス310は、少なくとも2つのゾーン312および314を有する多積層薬剤配合/促進剤貯留層311を含んで成る。ゾーン312を図6に関して実質的に記述した如き薬剤貯留層で構成させる。ゾーン314は透過促進剤貯留層を含んで成り、これを好適にはゾーン312を生じさせる時に用いるマトリクスと実質的に同じマトリクスで構成させる。ゾーン314には透過促進剤が全体に渡って分散しており、好適には過飽和状態で分散している。透過促進剤がゾーン314からゾーン312に放出される速度を制御する目的で、速度制御用膜313を前記2つのゾーンの間に位置させる。場合により、また、促進剤および/または薬剤がゾーン312から皮膚に放出される速度を制御するための速度制御用膜(示していない)を用いることも可能であり、その場合には、皮膚317とゾーン312の間に存在させることになるであろう。
【0072】
そのような速度制御用膜は、薬剤が送達用デバイスの中に入る速度およびそれから出る速度を調節しかつ透過促進剤が透過する度合がそれがゾーン312を透過する度合よりも低いことが本技術分野で知られている透過性、半透過性または微孔性材料を用いて加工可能である。適切な材料には、これらに限定するものでないが、ポリエチレン、ポリ酢酸ビニルおよびエチレン酢酸ビニル共重合体が含まれる。
【0073】
デバイス310の薬剤配合/促進剤貯留送達311の上に支持体315および接着性オーバーレイ316を図6に関してこの上に記述したようにして位置させる。加うるに、剥離可能ライナー(示していない)も好適には図6に関して記述したように使用前のデバイスに与えておいてもよく、そしてデバイス310を皮膚317に取り付ける前に剥がしてもよい。
【0074】
図6および7に示した態様における担体またはマトリクス材料は、滲出も流れも無しに形状を維持するに充分な粘度を有する。しかしながら、マトリクスまたは担体が低粘度で流動し得る材料の場合には、そのような組成物を本技術分野で公知、例えば米国特許第4,379,454号で公知の如き濃密な無孔性もしくは微孔性の皮膚接触膜の中に完全に封じ込めてもよい。
【0075】
現在のところ好適な経皮送達デバイスの例を図8に示す。図8に示した経皮送達デバイス320は、薬剤と一緒に透過促進剤が入っている薬剤貯留層322を含んで成る。貯留層322の形態は好適には薬剤と促進剤が中に分散しているマトリクスの形態である。貯留層322を支持層324(これは薬剤と促進剤の両方とも透過しない)とインライン接触接着層328の間に挟み込む。図8では、薬剤貯留層322を形状を維持するに充分な粘度を有する材料、例えばゴム弾性重合体材料などで構成させる。デバイス320を皮膚317の表面に接触接着層328で接着させる。層328用の接着剤の選択では、それが薬剤または特に透過促進剤のいずれとも適合しかつ相互作用しないように選択すべきである。その接着剤層328に場合により透過促進剤および/または薬剤を含有させてもよい。通常は剥離可能ライナー(示していない)を接着剤層328の露出表面に沿って与え、そしてデバイス320を皮膚317に取り付ける前に剥がす。代替態様では、速度制御用膜(示していない)を存在させ、そして薬剤貯留層322を支持層324と前記速度制御用膜の間に接着剤層328が前記速度制御用膜の皮膚接触面側に存在するように挟み込む。
【0076】
この上に示した図の経皮デバイスのいろいろな層の加工に適したいろいろな材料は本技術分野で公知であるか或はこの上で引用することによって本明細書に組み入れた前記経皮デバイス特許に開示されている。
【0077】
薬剤貯留層を構成するマトリクスはゲルまたは重合体であってもよい。適切な材料は当該システム内の薬剤および促進剤および他の任意成分と適合すべきである。そのようなマ
トリクスはこのマトリクスが本発明に従って機能し得る限り水性または非水性が基になったマトリクスであってもよい。水性配合物は典型的に水または水/エタノールを含んで成り、約1−90重量%、より好適には約1−40重量%がゲル化剤であるが、それは感熱性であるか或は感熱性でなくてもよく、その例はキシログルカン、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)アクリルアミド共重合体またはこの上に挙げた他の例である。水が基になった配合物を用いる場合、それのpHを有効薬剤が充分な安定性を維持するか或はヒドロゲルが示す適切な感熱ゲル化特性が維持されるような値に維持するのが好適である。サーモエフェクターを用いてそれを薬剤貯留層と接触させて感熱性マトリクスが有効な薬剤送達を行うようにそれを制御してもよい。
【0078】
送達が治療的に有効な速度で達成されるように薬剤1種または2種以上が示す皮膚透過性を向上させる目的で透過促進剤を用いてもよい。そのような透過促進剤を前処理でか或は薬剤と同時、例えば貯留層の中に組み込むことなどで皮膚に付着させてもよい。透過促進剤は、1種以上の薬剤または他の生物学的に有効な作用剤が皮膚を透過する度合を向上させる能力を有するべきである。有用な透過促進剤は、所望の薬剤または生物学的に有効な作用剤が妥当な大きさ(例えば約5から50cm)のパッチから治療的濃度に充分な速度で透過するようにそれを向上させるであろう。透過促進剤は薬剤と適合すべきであり、インライン接触接着層を存在させる場合にはそれの接着剤と不利な相互作用を示すべきではない。透過促進剤の例がこの上で引用することで組み入れた以前のALZA特許に開示されており、これらに限定するものでないが、脂肪酸、脂肪酸のモノグリセリド、例えばグリセロールモノラウレート、グリセロールモノオレエート、グリセロールモノカプレート、グリセロールモノカプリレートまたはグリセロールモノリノレートなど、脂肪酸である乳酸のエステル、例えば乳酸ラウリル、乳酸セチルおよび乳酸ミリスチルなど、アシルラクチレート、例えばカプロイルラクチリックアシッド(lactylic acid)など、炭素原子数が約10から約20の脂肪酸のエステル(これらに限定するものでないが、ミリスチン酸イソプロピルおよびパルミチン酸エチルを包含)、アルキルラウレート、例えばラウリン酸メチルなど、ジメチルラウラミド、酢酸ラウリル、ポリエチレングリコールのモノアルキルエーテルおよびそれらのアルキルもしくはアリールカルボン酸エステル、およびカルボキシメチルエーテル、例えばポリエチレングリコール−4ラウリルエーテル(ラウレス−4)およびポリエチレングリコール−2ラウリルエーテル(ラウレス−2)など、ポリエチレングリコールモノラウレート、ミリスチルサルコシン、ミレス−3、および低級C1−4アルコール、例えばイソプロパノールおよびエタノールなどの単独または1種以上の組み合わせから選択可能である。
【0079】
本発明に従う好適な透過促進剤は、脂肪酸のモノグリセリドに加えて適切な共溶媒(これらに限定するものでないが、WO 96/40259に開示されている如き酢酸ラウリル、およびC10−C20脂肪酸のエステル、例えば乳酸ラウリル、パルミチン酸エチルおよびラウリン酸メチルなどが含まれる)を含んで成る。パルミチン酸エチルは高純度で入手可能であることで純度がより高くかつより良好に限定された透過促進剤を生じさせかつより容易に特徴付けされるシステムをもたらすことから特に望ましいことを見いだした。特に好適な態様に従う透過促進剤は、グリセロールモノラウレート(GML)およびパルミチン酸エチルをそれぞれ1−25重量%および1−20重量%の範囲内でGML/パルミチン酸エチルの比率が0.5−5.0、好適には1.0−3.5の範囲内の比率になるように含んで成る。特に好適な態様はGMLを20重量%およびパルミチン酸エチルを12重量%含んで成る。
【0080】
そのような透過促進混合物を前記マトリクスまたは担体の中に好適には前記貯留層の中の透過促進量の促進剤が予期した投与期間全体に渡って与えられるに充分な濃度で分散させる。図3および4に示すように、追加的に個別の透過促進剤マトリクス層も同様に存在
させる場合には、そのような透過促進剤を通常は個別の貯留層の中に過飽和の状態で存在させる。
【0081】
本治療用デバイスに存在させる薬剤が治療効果を達成するに必要な量はいろいろな要因、例えば個々の薬剤の必要な最低投薬量、当該マトリクス、接着層および速度制御用膜(存在させる場合)の透過性、および本デバイスを皮膚に固着させる時間などに依存する。実際、本デバイスに存在させる薬剤の最大量には上限がない。各薬剤の最低量は、本デバイスに存在させる薬剤の量が所定の付着期間に渡って所望の放出速度を維持するに充分な量であるべきであると言った要求によって決まる。
【0082】
必要ならば、単位活性が投与期間全体に渡って維持されるように薬剤をマトリクス全体に過飽和濃度で分散させてもよい。過剰量はそのシステムの意図した有効寿命によって決まる。しかしながら、薬剤を本発明から逸脱することなく飽和未満の初期濃度で存在させることも可能である。一般的には、薬剤を1)薬剤が皮膚を貫通する流量が貯留層の薬剤枯渇が遅くかつ小さいほど充分に低い時、2)薬剤の一定ではない送達が望まれるか或は受け入れられる時、そして/または3)使用時の薬剤溶解度を変える共溶媒効果、例えば共溶媒の損失または水が貯留層の中に移行することなどで貯留層の飽和または過飽和が使用時に達成される時に、薬剤を最初に飽和未満の濃度で存在させてもよい。
【0083】
本発明では、前以て決めておいた期間に渡って薬剤が皮膚または他の体表面を治療的に有効な速度(即ち有効な治療結果をもたらす速度)で貫通するように送達されかつ透過促進剤が透過促進速度(即ち薬剤が塗布部位で示す透過性が向上するような速度)で送達される。
【0084】
本発明の好適な態様は、多層積層物、例えば図8に示す如き積層物(速度制御用膜を伴うか或は伴わない)であり、この場合、貯留層22に重合体を1から90重量%(好適には40重量%)、薬剤を0.01−40重量%、および1種以上の透過促進剤を1−70重量%含有させる。インライン接着層28に、前記透過促進剤と適合し得る接着剤を含有させる。本発明の別の好適な態様では、図8に示した如き多積層物に含める貯留層22に重合体を5から90重量%(好適には20重量%)、薬剤を0.01−40重量%、1種以上の透過促進剤を1−70重量%含有させる。
【0085】
本発明のデバイスは、薬剤が7日間以上に及ぶ長時間に渡って有効に送達されるようにデザイン可能である。単一のデバイスを付着させた場合の最大時間限界は一般に7日間である、と言うのは、体表面(例えば皮膚)部位は閉塞期間が7日間を超えると悪影響を受ける可能性があるか、或は他の問題、例えばそのような長期間付着させておくとシステムまたはシステムの縁が皮膚から上方に剥がれることなどに直面する可能性がある。薬剤送達を7日間を超えて行う必要がある場合(例えばホルモンを避妊効果の目的で投与すべき場合など)に、1個のデバイスを皮膚の上の適切な場所に有効な時間に渡って置いたままにしておく時には、それを新しいデバイスに置き換え、好適には異なる皮膚部位の上に位置させる。
[実施例]
【実施例1】
【0086】
ヒドロゲルの調製
ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)(PNIPA)ゲルの合成は、PNIPA単量体を溶液の状態でフリーラジカル共重合させ/架橋させることで実施可能である。架橋剤であるN,N’−メチレンビスアクリルアミド0.4g当たり約9.6gのNIPA単量体を100mLの蒸留水に溶解させてもよい。試薬品質の過硫酸アンモニウム(「APS」)を用いて反応を開始させてもよく、そして試薬品質のN,N,N’,N’−テトラ
メチルエチレンジアミン(「TEMED」)を促進剤として添加してもよい。その溶液に新しく調製した開始剤溶液を結果として単量体溶液1mL当たり0.30mgのAPS濃度および単量体溶液1mL当たり0.15mgのTEMED濃度になるように加えるべきである。全ての溶液に脱気を24インチHgの真空下で約15分間受けさせる。ゲルの合成を酸素含有量が2%未満の窒素雰囲気下のグローブボックス内で実施する。前記開始剤を前記単量体溶液に添加してもよく、そしてその溶液を磁気撹拌子で撹拌しながらそれに脱気を真空下で10−15分間受けさせてもよい。ゲル溶液を高純度のシリコーンゴムガスケット、管または長方形パイプで分離しておいたガラス板の間に流し込むことを通して、結合したゲル膜を生じさせる。ゲルの流し込み成形を行う前に、厚みが約0.2−0.6mmの不透過性プラスチック基質[FMC BioProducts、Rockland Me.が製造しているGELBOND(商標)ポリアクリルアミド支持媒体]を前記ガラス板の1つの内側面に位置させておいてもよい。ゲル化は典型的に1−2時間以内に起こり、その後、鋳型をグローブボックスから取り出した後、反応が完了近くになるように、32℃の冷蔵庫の中に24時間入れて置いてもよい。その結果として得るPNIPAゲルの厚みは、それを25℃の水または他の水性溶媒中で膨張させる時には約0.2mmから1mmの範囲であってもよい。流し込み成形後の膜サンプルを蒸留水に約72時間浸漬することでいくらか存在する未反応の化合物を除去する。
【実施例2】
【0087】
拡散による受動的薬剤送達
本発明は、本発明を用いない時には速度制限用膜を貫通する拡散係数または透過係数が充分ではない薬剤を経皮投与する目的で使用可能である。使用者は薬剤が入っている熱調節可能マトリクスが備わっているパッチを患者の皮膚の上に置きそして前記マトリクスに取り付けられているペルチェデバイスを用いて可逆的加熱特徴を調節することで薬剤が多い量で吸収されるようにする。ペルチェデバイスを用いて温度を上昇させると、例えば、当該配合物に入っている有効成分の拡散係数が高くなりそして/またはパッチの速度制限用膜を通った後に皮膚を貫通する薬剤の透過係数が高くなる。それによってまた有効成分が体の中に入る速度も速くなり、そして次に、患者の血流中の有効成分の濃度が高くなる。血流中で有効成分の充分な濃度が達成された時点で、その使用者または患者は前記ペルチェデバイスを用いてパッチを冷却することで薬剤の送達を止めることができる。
【実施例3】
【0088】
拡散による受動的薬剤送達
本発明は、使用者または患者が薬剤を必要を基にして可逆的に経皮投与する目的で使用可能である。そのような場合には、皮膚を通して血流の中に断続的に送達する必要があるであろう。使用者は薬剤が入っているヒドロゲルが備わっているパッチを患者の皮膚の上に置きそして前記薬剤が入っている感熱性ヒドロゲルマトリクスを加熱または冷却することで可逆的経皮流れおよび送達を調節する。ペルチェ素子を用いて温度を高くすると前記ヒドロゲルが収縮することで遊離薬剤が前記マトリクスから放出され、それによって、前記薬剤が速度制限用膜に続いて皮膚を貫通して流れることで利用される量がより多くなる。温度を高くするとまた皮膚を貫通する拡散速度も速くなる。その使用者が薬剤のさらなる送達を止めるか或は停止する必要がある時には、ペルチェ素子を調節して前記ヒドロゲルマトリクスが膨張するようにそれを冷却することで、遊離薬剤および配合物を再吸収させる。このように、その使用者または患者は必要を基に前記ペルチェ素子を用いて前記パッチを加熱または冷却することで血流中に有効成分の充分な濃度を達成することができる。本発明によって利益を受けるであろう薬剤の例は、渇望を起こし得る薬剤、例えばニコチン、断続的または突出痛用の鎮痛剤、運動合併症を制御する抗パーキンソン病薬などである。
【実施例4】
【0089】
電気輸送(積極的)薬剤送達
ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)アクリルアミド共重合体(pNIPAA−AA)ヒドロゲルを用いてフェンタニルが2%のマトリクスを調製する。厚みが20−30ミル(508−676ミクロン)の感熱性ヒドロゲルの2cm膜をダイスで切り取った後、重量を測定する。その膜を米国特許第6,216,033号に示されている如きイオン導入経皮薬剤送達デバイスの供与体ハウジングの中に入れた後、この上に記述した如き薬剤溶液の中で重量が2.5倍になるように水和させる。ヒドロゲル中の最終的薬剤濃度が2重量%になるに充分な量のフェンタニルHClを用いてフェンタニル溶液を調製することができる。また、そのヒドロゲルマトリクスにこの上に記述した如き適切な透過促進剤も入れることも可能である。別法として、前記ヒドロゲルの膜にフェンタニルをこの上に記述した如き飽和吸収によって2%充填した後、前記イオン導入経皮薬剤送達デバイスの供与体ハウジングの中に入れることも可能である。そのようなデバイスの陽極室(2cm)に350−450mlのヒドロコルチゾンゲルを詰め込んで、その残りの部分に膨張させたゲルを入れてもよい。陰極室(2cm)に340−450mlの塩化ナトリウムpNIPAA−AAゲルを充填する。そのシステムと制御装置を適切な接着剤で皮膚にしっかりと固定してもよい。前記制御装置のスイッチを入れることで、ペルチェ素子による加熱または冷却を伴わせるか或は伴わせないで200MA/cmを送達することができる。前記ペルチェ素子を用いて薬剤貯留層をLCST以上に加熱することで前記マトリクスを収縮させかつ薬剤を前記マトリクスから放出させることによって、経皮流れを開始させることができる。次に、イオン導入および単位面積当たり適切な電流を掛けることで配合物に入っている遊離薬剤を追い出すことができる。フェンタニルの送達を止めるべき時には、前記ペルチェ素子を用いて前記ヒドロゲルマトリクスをLCST未満の温度にまで冷却することでゲルを膨張させると、それによって、フェンタニル配合物が再吸収されることで、皮膚を貫通する流れで利用されなくなる。
【0090】
本資料に引用または記述した特許、特許出願および公開の各々の開示は引用することによって全体が本明細書に組み入れられる。本発明の態様を具体的に記述してきた。本分野の技術者は本明細書に開示したスキームのいろいろな部分および構成要素のいろいろな組み合わせおよび置換を本発明の範囲から逸脱することなく実施することができると理解されるべきである。更に、ある物体または材料を1つの態様で述べる時、その物体または材料の複数または組み合わせもまた特に明記しない限り有効であると考えることも理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0091】
本発明を例として添付図の図形で具体的に例示するが、それで限定するものでなく、本図中の同様な参照番号は同様な要素を示す。
【図1】図1は、本発明の熱制御薬剤送達デバイスの1つの態様を断面図で示す図式図である。
【図2】図2は、図1に示した態様の部分を平面図で示す図式図である。
【図3】図3は、本発明の熱制御薬剤送達デバイスの1つの態様のサーモエフェクターの一部を示す図である。
【図4】図4は、本発明に従うイオン導入薬剤送達システムの1つの態様を部分的に断面図で示す図式図である。
【図5】図5は、本発明に従う温度制御を持つように適合可能な電気輸送薬剤送達デバイスの等尺分解図である。
【図6】図6は、本発明に従って使用可能な経皮治療薬送達デバイスの1つの態様を示す断面図である。
【図7】図7は、本発明に従って使用可能な経皮治療薬送達デバイスの別の態様を示す断面図である。
【図8】図8は、本発明に従って使用可能な経皮治療薬送達デバイスの更に別の態様を示す断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
医薬品を個人に体表面を貫通させて治療的に有効な速度で投与するためのデバイスであって、医薬品が入っている貯留層および前記貯留層に隣接して位置する1番目の表面を有するサーモエフェクターを含んで成っていて、前記1番目の表面が、前記医薬品が前記体表面を貫通する速度に影響を与えるように、前記貯留層の加熱および冷却の少なくとも一方を制御し得るデバイス。
【請求項2】
前記1番目の表面が前記貯留層に面していて可逆的加熱または冷却を制御し得る請求項1記載のデバイス。
【請求項3】
熱流が前記貯留層に逆流するように前記サーモエフェクターを制御することができ、それによって、前記貯留層からの前記医薬品の送達を調節する請求項1−2のいずれか記載のデバイス。
【請求項4】
前記1番目の表面が前記貯留層に面していて可逆的加熱または冷却を制御する能力を有し、そして、前記1番目の表面が冷えている間には加熱しそして前記1番目の表面が熱い間には冷却する2番目の表面を有する請求項1−3のいずれか記載のデバイス。
【請求項5】
前記サーモエフェクターがプレートを含有していて前記プレートが前記貯留層に隣接して位置する1番目の表面と前記貯留層から見て外方に向いた2番目の表面を有しかつ前記貯留層の厚みより薄い厚みを有する請求項4記載のデバイス。
【請求項6】
前記サーモエフェクターのプレートが多数の層を含有していて、前記層の中の少なくとも1層が、その中を流れる電流の方向に応じて加熱または冷却のいずれかを行い得る接合を有する半導体材料を含有する請求項5記載のデバイス。
【請求項7】
前記サーモエフェクターのプレートが絶縁層を2層含有していて、前記絶縁層の間にずらりと並んだビスマス含有半導体素子が位置する請求項6記載のデバイス。
【請求項8】
前記サーモエフェクターのプレートの厚みが4mm未満である請求項7記載のデバイス。
【請求項9】
前記貯留層の温度を制御するフィードバック制御を含んで成る請求項6−8のいずれか記載のデバイス。
【請求項10】
更に前記貯留層の中に感熱性重合体を有するマトリクスも含んで成っていて、前記感熱性重合体が温度の関数として膨張または収縮することで前記マトリクスの大きさが変化し、その結果として、前記マトリクスが膨張した時には前記マトリクスが液体を保持する容量が高くなりかつ収縮した時には液体を保持する容量が低くなる請求項6−9のいずれか記載のデバイス。
【請求項11】
ヒドロゲルがポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)含有共重合体およびポリペプチド含有重合体から成る群から選択される重合体を含有する請求項10記載のデバイス。
【請求項12】
ヒドロゲルがポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)ホモ重合体、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)アクリルアミド共重合体、[3−(メタアクリロイルオキシ)プロピル]トリメトキシシラン、[2−(メタアクリロイルオキシ)エトキシ]トリメチルシランおよびメタアクリロイルオキシ)トリメチルシランから選択されるシラン単量体を
含有するポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)共重合体、ポリ(ヒドロキシプロピルメタアクリルアミド)の共重合体、蛋白質部分を有するジカルボキシメチルアミノプロピルメタアクリルアミド、キシログルカン、エチル(ヒドロキシエチル)セルロース、ポリ(エチレンオキサイド−b−プロピレンオキサイド−b−エチレンオキサイド)およびこれの共重合体、ポリ(エチレンオキサイド)/(D,L−乳酸−コ−グリコール酸)共重合体、キトサンとポリオール塩の組み合わせ、ポリ(シラミン)およびポリ(オルガノホスファゼン)誘導体から成る群から選択される重合体を含有する請求項10−11のいずれか記載のデバイス。
【請求項13】
前記マトリクスを収縮させそして次に特定時間に到達することおよび前記貯留層が特定温度に到達することの中の少なくとも1つが起こった後に膨張させる回路を含んで成る請求項10−12のいずれか記載のデバイス。
【請求項14】
体表面に穴を開けて体表面の下に位置する組織の中に入り込む鋭利な物体を含有しない請求項10−13のいずれか記載のデバイス。
【請求項15】
更に、前記医薬品が電気輸送で体表面を貫通して送達されるように電位を与える電極も前記貯留層の上に含んで成る請求項14記載のデバイス。
【請求項16】
医薬品を体表面貫通送達するためのデバイスを製造する方法であって、医薬品が入っている貯留層を形成し、そして、前記医薬品の体表面貫通速度に影響を与えるように、前記貯留層の加熱または冷却の少なくとも一方を制御し得る1番目の表面を有するサーモエフェクターを前記貯留層に隣接して位置させることを含んで成る方法。
【請求項17】
前記1番目の表面を前記貯留層に対して位置させることを含んで成り、そして前記サーモエフェクターが可逆的に加熱または冷却を行うように制御可能であり、かつ、前記デバイスが前記1番目の表面が冷えている間には加熱しそして前記1番目の表面が熱い間には冷却する2番目の表面を有する請求項16記載の方法。
【請求項18】
前記サーモエフェクターが1番目の表面と2番目の表面を有するプレートを含有し、そして前記プレートを前記1番目の表面が前記貯留層に隣接しかつ前記2番目の表面が前記貯留層から見て外方に向くように位置させることを含んで成る請求項17記載の方法。
【請求項19】
前記プレートがその中を流れる電流の方向に応じて加熱または冷却のいずれかを行い得る接合を有する半導体材料を含有し、そして2層の絶縁層の間にずらりと並んだビスマス含有半導体素子を位置させることを包含する請求項18記載の方法。
【請求項20】
更にマトリクスを前記貯留層の中に含有させることも含んで成り、前記マトリクスが、前記マトリクスを温度の関数として膨張および収縮させる感熱性重合体を有する請求項19記載の方法。
【請求項21】
ヒドロゲルにポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)ホモ重合体、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)アクリルアミド共重合体、[3−(メタアクリロイルオキシ)プロピル]トリメトキシシラン、[2−(メタアクリロイルオキシ)エトキシ]トリメチルシランおよびメタアクリロイルオキシ)トリメチルシランを包含するシラン単量体を含有するポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)共重合体、ポリ(ヒドロキシプロピルメタアクリルアミド)と蛋白質部分を有するジカルボキシメチルアミノプロピルメタアクリルアミドの共重合体、キシログルカン、エチル(ヒドロキシエチル)セルロース、ポリ(エチレンオキサイド−b−プロピレンオキサイド−b−エチレンオキサイド)およびこれの共重合体、ポリ(エチレンオキサイド)/(D,L−乳酸−コ−グリコール酸)共重合体
、キトサンとポリオール塩の組み合わせ、ポリ(シラミン)およびポリ(オルガノホスファゼン)誘導体から成る群から選択した重合体を含有させることを含んで成る請求項20記載の方法。
【請求項22】
医薬品を体表面貫通送達する方法であって、医薬品が入っている貯留層を生じさせそして前記医薬品の通過率に影響を与えるように前記貯留層を積極的に可逆的加熱することを含んで成る方法。
【請求項23】
サーモエフェクターが1番目の表面と2番目の表面を有し、そして前記サーモエフェクターの1番目の表面を前記貯留層に熱伝導的に隣接して位置させそしてそれが前記1番目の表面上の温度を変化させると同時に前記1番目の表面の反対側に位置する2番目の表面上の温度を変化させることを含んで成る請求項22記載の方法。
【請求項24】
前記サーモエフェクターがその中を流れる電流の方向に応じて加熱または冷却のいずれかを行い得る接合を有する半導体材料を含有し、そして2枚の絶縁プレートの間にずらりと並んで位置するビスマス含有半導体素子の中に電流を流すことを包含する請求項23記載の方法。
【請求項25】
体表面に穴を開けて体表面の下に位置する組織の中に入り込む鋭利な物体を用いることなく医薬品を送達することを含んで成る請求項22−24のいずれか記載の方法。
【請求項26】
薬剤を担体と一緒に含んで成っていて前記薬剤を経時的に制御可能な投薬量で放出する組成物の使用であって、前記担体が前記組成物が入っている貯留層を有しかつ前記貯留層に隣接して位置するサーモエフェクターを有していて前記サーモエフェクターが前記貯留層を可逆的に加熱するように制御可能であり、それによって、前記薬剤が患者に制御放出される使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2008−523918(P2008−523918A)
【公表日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−546961(P2007−546961)
【出願日】平成17年12月14日(2005.12.14)
【国際出願番号】PCT/US2005/045744
【国際公開番号】WO2006/066117
【国際公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【出願人】(503073787)アルザ・コーポレーシヨン (113)
【Fターム(参考)】