説明

経路維持部材付コルゲートチューブ及びワイヤーハーネス

【課題】より低コストで、電線を覆いつつその経路を一定に維持できるようにすること。
【解決手段】経路維持部材付コルゲートチューブCは、コルゲートチューブ20と、経路維持部材30とを備える。コルゲートチューブ20は、長手方向に沿って環状凸部と環状凹部とが交互に形成され、その長手方向に沿ってスリット24が形成されている。経路維持部材30は、塑性変形可能な長尺部材に形成され、コルゲートチューブ20のうち前記スリット24が形成された部分に取付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電線を覆いつつその経路を一定に維持する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、特許文献1〜4に開示のように、車両等に敷設されるワイヤーハーネスを、屈曲性良好なコルゲートチューブにて覆う技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4−86022号公報
【特許文献2】特開2000−184551号公報
【特許文献3】特開2002−64917号公報
【特許文献4】特開2006−296166号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、コルゲートチューブ自体は、屈曲性に優れるもの故、ワイヤーハーネスの経路を一定に維持することはできない。このため、ワイヤーハーネス或はコルゲートチューブに取付けられたクランプ部材を車両の一定位置に固定することで、ワイヤーハーネスの経路を一定に維持する必要がある。クランプ部材の固定箇所が多くなると、部品コスト増、取付けコスト増等を招く恐れがある。
【0005】
ここで、ワイヤーハーネスの敷設箇所に合わせて3次元形状に形成した樋状の樹脂成型品(プロテクタ)によれば、ワイヤーハーネスを保護しつつその経路を一定に維持することができる。
【0006】
しかしながら、ワイヤーハーネスを保護可能な樹脂成型品を、ワイヤーハーネスの敷設箇所に合わせて3次元形状に形成するためには、その金型形状が複雑化してしまう。このため、製造コストが高くなる。
【0007】
そこで、本発明は、より低コストで、電線を覆いつつその経路を一定に維持できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、第1の態様に係る経路維持部材付コルゲートチューブは、長手方向に沿って環状凸部と環状凹部とが交互に形成され、その長手方向に沿ってスリットが形成されたコルゲートチューブと、塑性変形可能な長尺部材に形成され、前記コルゲートチューブのうち前記スリットが形成された部分に取付けられた経路維持部材とを備える。
【0009】
第2の態様は、第1の態様に係る経路維持部材付コルゲートチューブであって、前記経路維持部材は、前記コルゲートチューブのうち前記スリットが形成された部分に取付け可能な形状に形成された弾性装着部と、前記弾性装着部に埋設された形状維持線とを含む。
【0010】
第3の態様は、第1又は第2の態様に係る経路維持部材付コルゲートチューブであって、前記経路維持部材は、前記コルゲートチューブのうち前記スリットの両側の端縁部が収容される一対の凹溝部が形成された部分を含む。
【0011】
第4の態様は、第1又は第2の態様に係る経路維持部材付コルゲートチューブであって、前記経路維持部材は、前記コルゲートチューブのうち前記スリットの外側部分を覆う蓋部と、前記蓋部の幅方向中央部に突出され前記スリット内に配設される突条部とを有する部分を含む。
【0012】
第5の態様に係るワイヤーハーネスは、第1〜第4のいずれか1つの態様に係る経路維持部材付コルゲートチューブと、少なくとも1本の電線を有し、前記経路維持部材付コルゲートチューブ内に挿通されたワイヤーハーネス本体部とを備える。
【発明の効果】
【0013】
第1の態様に係る経路維持部材付コルゲートチューブによると、コルゲートチューブによって電線を覆うことができる。また、そのコルゲートチューブに取付けられた経路維持部材を、電線の敷設経路に応じて塑性変形させることによって、電線の経路を一定に維持できるため、種々形状の敷設経路に対する経路維持が可能となる。従って、より低コストで、電線を覆いつつその経路を一定に維持できる。
【0014】
第2の態様によると、弾性装着部によって経路維持部材をスリット部分に取付けた状態を維持できる。また、金属製によって敷設経路に応じて塑性変形させた後の経路維持を行うことができる。
【0015】
第3の態様によると、前記コルゲートチューブのうち前記スリットの両側の端縁部が一対の凹溝部にそれぞれ収容された状態で、経路維持部材がコルゲートチューブに取付けられるため、経路維持部材がコルゲートチューブから外れることが抑制される。
【0016】
第4の態様によると、コルゲートチューブの外周側から突条部をスリット内に配設して、経路維持部材をコルゲートチューブに装着すればよいため、経路維持部材の装着作業を容易に行える。
【0017】
第5の態様に係る経路維持部材付コルゲートチューブによると、コルゲートチューブによってワイヤーハーネス本体部を覆うことができる。また、そのコルゲートチューブに取付けられた経路維持部材を、ワイヤーハーネス本体部の敷設経路に応じて塑性変形させることによって、ワイヤーハーネス本体部の経路を一定に維持できるため、種々形状の敷設経路に対する経路維持が可能となる。従って、より低コストで、ワイヤーハーネス本体部を覆いつつその経路を一定に維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1実施形態に係るワイヤーハーネスのうちコルゲートチューブの装着部分を示す概略斜視図である。
【図2】図1のII−II線概略断面図である。
【図3】コルゲートチューブに経路維持部材を取付ける工程を示す説明図である。
【図4】第2実施形態に係るワイヤーハーネスのうちコルゲートチューブの装着部分を示す概略斜視図である。
【図5】図1のV−V線概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
{第1実施形態}
以下、第1実施形態に係るワイヤーハーネス及び経路維持部材付コルゲートチューブについて説明する。図1はワイヤーハーネス10のうちコルゲートチューブ20の装着部分を示す概略斜視図であり、図2は図1のII−II線概略断面図であり、図3はコルゲートチューブ20に経路維持部材30を取付ける工程を示す説明図である。
【0020】
このワイヤーハーネス10は、ワイヤーハーネス本体部12と、コルゲートチューブ20と、経路維持部材30とを備える。
【0021】
ワイヤーハーネス本体部12は、複数の電線が結束された構成とされている。より具体的には、ワイヤーハーネス本体部12は、複数の電線が配設対象となる車両への配線形態に応じて分岐しつつ結束された構成とされている。ワイヤーハーネス本体部12は、必ずしも分岐している必要はないし、また、単一の電線によって構成されていてもよい。また、ワイヤーハーネス本体部12に、他の光ケーブル等が結束されていてもよい。
【0022】
上記ワイヤーハーネス本体部12を、車両等に配設する際、ワイヤーハーネス本体部12はその配設形態に沿って曲げられる。ワイヤーハーネス本体部12が周辺部分に干渉すること等を抑制するため、ワイヤーハーネス本体部12はその配線形態に沿って曲げられた形状に維持されることがある。このような場合に、本経路維持部材付コルゲートチューブCがワイヤーハーネス本体部12に装着され、当該ワイヤーハーネス本体部12を一定の曲げ形状に維持する。なお、ワイヤーハーネス本体部12に対して本経路維持部材付コルゲートチューブCが装着される部分は、ワイヤーハーネス本体部12の少なくとも一部であればよく、ワイヤーハーネス本体部12の一部であっても、ほぼ全体であってもよい。
【0023】
コルゲートチューブ20は、長手方向に沿って環状凸部21と環状凹部22とが交互に形成された筒状部材であり(図3参照)、樹脂等で形成されている。かかるコルゲートチューブ20は、環状凸部21と環状凹部22との間の段部等で容易に弾性変形するため、それ自体では全体として曲げ変形容易な性質を有している。通常、コルゲートチューブ20としては、装着対象となるワイヤーハーネス本体部12の部分の外径よりも大きい(通常は多少大きい程度)内径を有するものが用いられる。
【0024】
また、コルゲートチューブ20の一側部にその長手方向に沿ってスリット24が形成されている。そして、当該スリット24で割開くようにして、ワイヤーハーネス本体部12をコルゲートチューブ20内に容易に配設できるようになっている。
【0025】
経路維持部材30は、塑性変形可能な長尺部材に形成され、コルゲートチューブ20のうちスリット24が形成された部分に取付け可能に構成されている。
【0026】
より具体的には、経路維持部材30は、弾性装着部35と、形状維持線38とを備えている。
【0027】
弾性装着部35は、コルゲートチューブ20のうちスリット24が形成された部分に取付装着可能な形状に形成されている。より具体的には、弾性装着部35は、ゴム等のエラストマーによって金型成形された部品である。本実施形態では、弾性装着部35は、コルゲートチューブ20のうちスリット24が形成された部分に取付けるため、次の形状に形成されている。
【0028】
すなわち、弾性装着部35は、コルゲートチューブ20のうちスリット24の両側の端縁部を収容可能な一対の凹溝部36gが形成された部分を有している。換言すれば、経路維持部材30は、長尺状の連結部31の一方側(外周側)縁部に外周側突起部32が配設されると共に、連結部31の他方側(内周側)縁部に内周側突起部33が配設された構成とされ、その長手方向に対して直交する面における断面形状が略H字状を呈している。上記外周側突起部32の外側面は、コルゲートチューブ20の外周面に沿った弧状曲面を呈している。凹溝部36gの幅寸法は、コルゲートチューブ20の厚み寸法(より具体的には、コルゲートチューブ20の径方向において環状凸部21の最外周部分と環状凹部22の最内周部分との差)と略同じかそれよりも大きい(僅かに大きい)程度の寸法に設定されている。凹溝部36gの深さ寸法は、コルゲートチューブ20の端縁部をその径方向に位置決めした状態で収容できる程度であればよく、特に限定はない。
【0029】
上記経路維持部材30のうち上記一対の凹溝部36gが形成された部分は、経路維持部材30の長手方向全体であってもよいし、その長手方向に沿った一部であってもよい。本実施形態では、一対の凹溝部36gが経路維持部材30の長手方向全体に亘って形成された例で説明する。
【0030】
形状維持線38は、上記弾性装着部35に埋設されている。形状維持線38は、塑性変形可能で、かつ、塑性変形後にワイヤーハーネス本体部12及びコルゲートチューブ20を一定の経路に沿った形状に維持する部材に形成されている。形状維持線38としては、鉄線、銅線、ステンレス線、或はこれらの合金線等の金属線、或は、塑性変形後にある程度の剛性を呈する樹脂等を用いることができる。形状維持線38は、少なくとも1本あればよく、本実施形態では、弾性装着部35に1本の形状維持線38が埋設されている。
【0031】
形状維持線38は、上記弾性装着部35を金型成形する際に、インサート物として埋設されたものであってもよいし、弾性装着部35を形成した後に弾性装着部35に形成された孔又は凹部に嵌め込まれたものであってもよい。ここでは、形状維持線38は、弾性装着部35を金型成形する際に、連結部31内にインサート物としてインサートされている。形状維持線38は、外周側突起部32或は内周側突起部33に埋設されていてもよいし、また、外周の一部が弾性装着部35から露出していてもよい。
【0032】
上記経路維持部材30は、コルゲートチューブ20にその長手方向に沿って取付けられる。ここでは、経路維持部材30は、次のようにして、スリット24に配設した状態で、コルゲートチューブ20に取付けられる。
【0033】
すなわち、コルゲートチューブ20を前記スリット24で開くことで、コルゲートチューブ20内にワイヤーハーネス本体部12を収容する。この状態で、コルゲートチューブ20をスリット24で開いて、コルゲートチューブ20のうちスリット24の両側の端縁部を一対の凹溝部36g内に嵌め込む。この状態では、連結部31がスリット24内に配設され、外周側突起部32がスリット24の外側でコルゲートチューブ20の外周面に沿って配設され、内周側突起部33がスリット24の内側でコルゲートチューブ20内周面に沿って配設される。この後、必要に応じて、タイバンド、粘着テープ等がコルゲートチューブ20の外周に巻付けられ、コルゲートチューブ20の閉状態が維持されると共に、コルゲートチューブ20と経路維持部材30との一体化状態が維持される。なお、上記の他、コルゲートチューブ20自体に設けられたロック構造等によってコルゲートチューブ20の閉状態が維持されてもよい。
【0034】
この後、経路維持部材30を、コルゲートチューブ20及びその内部のワイヤーハーネス本体部12と共に曲げる。この際の曲げ形状は、ワイヤーハーネス本体部12のうちコルゲートチューブ20が装着される部分の敷設経路に応じた形状である。これにより、ワイヤーハーネス本体部12は、経路維持部材30によって所定の敷設経路に沿った曲げ形状に維持される。
【0035】
なお、経路維持部材30の曲げ変形は、経路維持部材30をコルゲートチューブ20に取付ける前に行われてもよいし、或は、ワイヤーハーネス本体部12を敷設する際に行われてもよい。
【0036】
このように構成された経路維持部材付コルゲートチューブC及びワイヤーハーネス10によると、ワイヤーハーネス本体部12はコルゲートチューブ20によって覆われて保護されると共に、経路維持部材30によって所定の形状に曲った経路を描くように維持されている。このため、経路維持部材30をワイヤーハーネス本体部12の敷設箇所に合わせた形状に曲げることで、ワイヤーハーネス本体部12を当該敷設箇所に合わせた一定の経路に維持できる。経路維持部材30自体は、多様な経路に応じて曲げられるため、多様な経路に応じた曲げ形状の維持が可能となる。このため、より低コストでワイヤーハーネス本体部12を覆いつつその経路を一定に維持できる。特に、ワイヤーハーネス本体部12が3次元的に曲げられた状態で敷設される場合には、その経路規制用の部材が複雑な形状となるため、本実施形態はそのような場合に有効である。
【0037】
また、ワイヤーハーネス本体部12を曲げた状態に維持できる結果、当該ワイヤーハーネス本体部12を車両等に組付ける際に、車両に対する取付箇所を少なくすることができる。換言すれば、経路維持部材付コルゲートチューブCの取付箇所が少なくとも、ワイヤーハーネス本体部12を一定の曲げ形状に維持できる。このため、ワイヤーハーネス本体部12を取付固定するためのクランプ部材等の使用個数、取付作業を少なくすることができ、この観点からも、経路維持部材付コルゲートチューブCの製造コスト、取付作業コストの低減を図ることができる。
【0038】
また、経路維持部材30をスリット24に配設した状態で、コルゲートチューブ20に取付けているため、コルゲートチューブ20と経路維持部材30との取付位置関係が安定化する。このため、コルゲートチューブ20を、経路維持部材30の形状に沿った所期の形状に維持し易い。
【0039】
弾性装着部35内に形状維持線38を埋設した構成としているため、弾性装着部35によってコルゲートチューブ20へ取付けるための形状を実現し、形状維持線38によって曲げ形状を維持するための性能を得ることができる。
【0040】
また、コルゲートチューブ20のうちスリット24の両側の端縁部が一対の凹溝部36gにそれぞれ収容されているため、経路維持部材30がコルゲートチューブ20から外れることが抑制される。
【0041】
また、スリット24は経路維持部材30によって閉塞されているため、コルゲートチューブ20内のワイヤーハーネス本体部12がスリット24から外部に脱してしまうといった事態が抑制される。
【0042】
また、弾性装着部35はゴム等のエラストマーによって形成されているため、コルゲートチューブ20内のワイヤーハーネス本体部12と経路維持部材30との磨耗を低減させることができる。
【0043】
{第2実施形態}
第2実施形態に係るワイヤーハーネス及び経路維持部材付コルゲートチューブについて説明する。図4はワイヤーハーネス110のうちコルゲートチューブ20の装着部分を示す概略斜視図であり、図5は図1のV−V線概略断面図である。なお、本実施の形態の説明において、第1実施形態で説明したものと同様構成要素については同一符号を付してその説明を省略する。
【0044】
このワイヤーハーネス110は、ワイヤーハーネス本体部12と、コルゲートチューブ20と、経路維持部材130とを備える。
【0045】
ワイヤーハーネス本体部12及びコルゲートチューブ20は、上記実施形態で説明したものと同じである。
【0046】
経路維持部材130は、塑性変形可能な長尺部材に形成され、コルゲートチューブ20のうちスリット24が形成された部分に取付け可能に構成されている。
【0047】
より具体的には、経路維持部材130は、弾性装着部135と、形状維持線38とを備えている。
【0048】
弾性装着部135は、コルゲートチューブ20のうちスリット24が形成された部分に取付装着可能な形状に形成されている。より具体的には、弾性装着部135は、ゴム等のエラストマーによって金型成形された部品である。本実施形態では、弾性装着部135は、コルゲートチューブ20のうちスリット24が形成された部分に取付けるため、次の形状に形成されている。
【0049】
すなわち、経路維持部材130は、蓋部132と突条部134とを有しており、その長手方向に対して直交する面における断面形状が略H字状を呈している。より具体的には、蓋部132は、コルゲートチューブ20のうちスリット24の外側部分を覆う長尺板形状に形成されている。蓋部132の外側面は、コルゲートチューブ20の外周面に沿った弧状曲面を呈している。突条部134は、蓋部132の幅方向中央部に突出された突条形状に形成されている。突条部134の先端部には、その幅方向に突出する部材は設けられていない。突条部134の先端部はその先端側に向けて徐々に細くなる形状に形成されていてもよい。突条部134の突出寸法は、コルゲートチューブ20の厚み寸法(より具体的には、コルゲートチューブ20の径方向において環状凸部21の最外周部分と環状凹部22の最内周部分との差)と略同じかそれよりも大きい(僅かに大きい)程度の寸法に設定されている。もっとも、突条部134の突出寸法は、コルゲートチューブ20の厚み寸法より小さくてもよい。
【0050】
上記経路維持部材130のうち蓋部132と突条部134と有する部分は、経路維持部材130の長手方向全体であってもよいし、その長手方向に沿った一部であってもよい。本実施形態では、蓋部132と突条部134と有する部分が経路維持部材130の長手方向全体亘って形成された例で説明する。
【0051】
形状維持線38は、上記第1実施形態で説明したものと同様の部材であり、上記弾性装着部135に埋設されている。ここでは、形状維持線38は、弾性装着部135の突条部134に埋設されている。形状維持線38は、上記第1実施形態で述べたのと同様に、弾性装着部135を金型成形する際にインサート物として当該弾性装着部135にインサートされたものであってもよいし、弾性装着部135を金型成形した後に当該弾性装着部135に嵌め込まれたものであってもよい。また、形状維持線38は、蓋部132に埋設されていてもよいし、また、外周の一部が弾性装着部135から露出していてもよい。
【0052】
上記経路維持部材130は、コルゲートチューブ20にその長手方向に沿って取付けられる。ここでは、経路維持部材130は、次のようにして、スリット24に配設した状態で、コルゲートチューブ20に取付けられる。
【0053】
すなわち、コルゲートチューブ20を前記スリット24で開くことで、コルゲートチューブ20内にワイヤーハーネス本体部12を収容する。この状態で、コルゲートチューブ20をスリット24で開いて、経路維持部材130の突条部134をスリット24内に嵌め込む。すると、突条部134がスリット24内に配設されると共に、蓋部132がスリット24の外側でコルゲートチューブ20の外周面に沿って配設されるようになる。
【0054】
この後、必要に応じて、タイバンド、粘着テープ等がコルゲートチューブ20の外周に巻付けられ、コルゲートチューブ20の閉状態が維持されると共に、コルゲートチューブ20と経路維持部材130との一体化状態が維持される。なお、上記の他、コルゲートチューブ20自体に設けられたロック構造等によってコルゲートチューブ20の閉状態が維持されてもよい。
【0055】
この後、経路維持部材130を、コルゲートチューブ20及びその内部のワイヤーハーネス本体部12と共に曲げる。この際の曲げ形状は、ワイヤーハーネス本体部12のうちコルゲートチューブ20が装着される部分の敷設経路に応じた形状である。これにより、ワイヤーハーネス本体部12は、経路維持部材130によって所定の敷設経路に沿った曲げ形状に維持される。
【0056】
なお、経路維持部材130の曲げ変形は、経路維持部材130をコルゲートチューブ20に取付ける前に行われてもよいし、或は、ワイヤーハーネス本体部12を敷設する際に行われてもよい。
【0057】
このように構成された経路維持部材付コルゲートチューブC2及びワイヤーハーネス110によると、上記第1実施形態で述べたのと同様の理由によって、より低コストでワイヤーハーネス本体部12を覆いつつその経路を一定に維持できる。特に、ワイヤーハーネス本体部12が3次元的に曲げられた状態で敷設される場合には、その経路規制用の部材が複雑な形状となるため、本実施形態はそのような場合に有効である。
【0058】
また、ワイヤーハーネス本体部12を曲げた状態に維持できる結果、当該ワイヤーハーネス本体部12を車両等に組付ける際に、車両に対する取付箇所を少なくすることができる。換言すれば、経路維持部材付コルゲートチューブC2の取付箇所が少なくとも、ワイヤーハーネス本体部12を一定の曲げ形状に維持できる。このため、ワイヤーハーネス本体部12を取付固定するためのクランプ部材等の使用個数、取付作業を少なくすることができ、この観点からも、経路維持部材付コルゲートチューブC2の製造コスト、取付作業コストの低減を図ることができる。
【0059】
また、経路維持部材130をスリット24に配設した状態で、コルゲートチューブ20に取付けているため、コルゲートチューブ20と経路維持部材130との取付位置関係が安定化する。このため、コルゲートチューブ20を、経路維持部材130の形状に沿った所期の形状に維持し易い。
【0060】
弾性装着部135内に形状維持線38を埋設した構成としているため、弾性装着部135によってコルゲートチューブ20へ取付けるための形状を実現し、形状維持線38によって曲げ形状を維持するための性能を得ることができる。
【0061】
また、コルゲートチューブ20の外周側から突条部134をスリット24内に配設して、経路維持部材130をコルゲートチューブ20に装着すればよいため、経路維持部材130の装着作業を容易に行える。
【0062】
また、弾性装着部135はゴム等のエラストマーによって形成されているため、コルゲートチューブ20内のワイヤーハーネス本体部12と経路維持部材130との磨耗を低減させることができる。
【0063】
{変形例}
なお、1つの経路維持部材において、第1実施形態で説明したように、一対の凹溝部36gを有する部分と、第2実施形態で説明したように、蓋部132と突条部134とを有する部分とが混在していてもよい。
【0064】
また、経路維持部材は、塑性変形可能な単一の材料によって形成されていてもよい。
【0065】
また、形状維持線38が、経路維持部材30、130の長手方向全体において存在している必要はなく、経路維持部材30の一部に設けられていてもよい。
【0066】
また、1つのワイヤーハーネス本体部12に対して、上記各実施形態で説明した経路維持部材30、130等が混在して用いられていてもよい。
【0067】
上記各実施形態及び各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組合わせることができる。
【0068】
以上のようにこの発明は詳細に説明されたが、上記した説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。
【符号の説明】
【0069】
10、110 ワイヤーハーネス
12 ワイヤーハーネス本体部
20 コルゲートチューブ
21 環状凸部
22 環状凹部
24 スリット
30、130 経路維持部材
35、135 弾性装着部
36g 凹溝部
38 形状維持線
132 蓋部
134 突条部
C、C2 経路維持部材付コルゲートチューブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に沿って環状凸部と環状凹部とが交互に形成され、その長手方向に沿ってスリットが形成されたコルゲートチューブと、
塑性変形可能な長尺部材に形成され、前記コルゲートチューブのうち前記スリットが形成された部分に取付けられた経路維持部材と、
を備える経路維持部材付コルゲートチューブ。
【請求項2】
請求項1記載の経路維持部材付コルゲートチューブであって、
前記経路維持部材は、前記コルゲートチューブのうち前記スリットが形成された部分に取付け可能な形状に形成された弾性装着部と、前記弾性装着部に埋設された形状維持線とを含む経路維持部材付コルゲートチューブ。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の経路維持部材付コルゲートチューブであって、
前記経路維持部材は、前記コルゲートチューブのうち前記スリットの両側の端縁部が収容される一対の凹溝部が形成された部分を含む、経路維持部材付コルゲートチューブ。
【請求項4】
請求項1又は請求項2記載の経路維持部材付コルゲートチューブであって、
前記経路維持部材は、前記コルゲートチューブのうち前記スリットの外側部分を覆う蓋部と、前記蓋部の幅方向中央部に突出され前記スリット内に配設される突条部とを有する部分を含む、経路維持部材付コルゲートチューブ。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか1つに記載の経路維持部材付コルゲートチューブと、
少なくとも1本の電線を有し、前記経路維持部材付コルゲートチューブ内に挿通されたワイヤーハーネス本体部と、
を備えるワイヤーハーネス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−5606(P2013−5606A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−134792(P2011−134792)
【出願日】平成23年6月17日(2011.6.17)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】