説明

結像光学装置及び画像形成装置

【課題】被写界深度を深くすることができる結像光学装置及び画像形成装置を提供する。
【解決手段】実施形態に係る結像光学装置は、光軸と直交する方向に入射面と出射面が配置されたレンズ素子と、レンズ素子の出射面から出射した光の光軸上に配置され、レンズ素子からの出射光を複数の異なる光路長を有する光路に分光し、光路長の異なる複数の光路を形成する光分岐素子と、を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、原稿の読取装置等に使用される結像光学装置及び結像光学装置を用いた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スキャナ、プリンタ、複写機、複合機(MFP)等の画像形成装置では、レンズアレイを組み込んだ密着型のイメージセンサを用いて原稿の画像を読み取るようにしたものがある。ところで、密着型のイメージセンサを用いた場合、原稿の浮きによって解像度が低下する。例えば本を開いて原稿台に載せた場合に、原稿の浮きを生じてしまう。
【0003】
レンズアレイの被写界深度を深くすれば、原稿の浮きに或る程度対処することができる。特許文献1には、被写界深度を深くするため、複屈折プレート(birefringent element)をレンズとセンサ間に配置する例が開示されている。特許文献1の例では、縮小光学系のレンズ(アレイではない)と、センサの間に複屈折プレートを挿入して被写界深度を深くすることを実現している。
【0004】
しかしながら、十分小さな倍率の縮小光学系では、複屈折プレートを挿入することで対処できるが、倍率が大きいレンズの場合には、複屈折プレートの厚みを厚くする必要があり、レンズとセンサ面との距離が大きくないと実装できないため、装置全体が大きくなってしまい、コストが上がるという問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国公開特許、US2009/0116096A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
発明が解決しようとする課題は、被写界深度を深くすることができる結像光学装置及び画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態に係る結像光学装置は、光軸と直交する方向に入射面と出射面が配置されたレンズ素子と、前記レンズ素子の前記出射面から出射した光の光軸上に配置され、前記レンズ素子からの出射光を複数の異なる光路長を有する光路に分光し、前記光路長の異なる複数の光路を形成する光分岐素子と、を具備する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】一実施形態に係る画像形成装置の構成図。
【図2】一実施形態におけるイメージセンサの構成を示す正面図。
【図3】一実施形態におけるレンズアレイとアパーチャの構成を概略的に示す斜視図。
【図4】一実施形態に係る結像光学装置の詳細を示す構成図。
【図5】一実施形態における結像光学装置のMTFを示す光学特性図。
【図6】図4における光路1と光路2のMTFを示す光学特性図。
【図7】第2の実施形態に係る結像光学装置の詳細を示す構成図。
【図8】第2の実施形態における結像光学装置のMTFを示す光学特性図。
【図9】第2の実施形態における結像光学装置の変形例を示す構成図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、発明を実施するための実施形態について、図面を参照して説明する。尚、各図において同一箇所については同一の符号を付す。
【0010】
(第1の実施形態)
図1は、一実施形態に係る画像形成装置の構成図である。図1において、画像形成装置10は、例えば複合機であるMFP(Multi-Function Peripherals)や、スキャナ、プリンタ、複写機等である。以下の説明ではMFPを例に説明する。
【0011】
MFP10の本体11の上部には透明ガラスの原稿台12があり、原稿台12上には自動原稿搬送部(ADF)13を開閉自在に設けている。また本体11の上部には操作パネル14を設けている。操作パネル14は、各種のキーとタッチパネル式の表示部を有している。
【0012】
本体11内のADF13の下部には、画像読取部であるスキャナ部15を設けている。スキャナ部15は、ADF13によって送られる原稿または原稿台上に置かれた原稿を読み取って画像データを生成するもので、密着型イメージセンサ16(以下、単にイメージセンサと呼ぶ)を備えている。イメージセンサ16は、主走査方向(図1では奥行方向)に配置されている。
【0013】
イメージセンサ16は、原稿台12に載置された原稿の画像を読み取る場合は原稿台12に沿って移動し、原稿画像を1ライン分ずつ読み取る。1ラインの読み取りが終了すると、主走査方向と直交する副走査方向に移動し次の1ライン分を読み取る。これを原稿サイズ全体にわたって実行し1ページ分の原稿の読み取りを行う。またADF13によって送られる原稿の画像を読み取る場合、イメージセンサ16は、固定位置(図示の位置)にある。
【0014】
さらに本体11内の中央部にはプリンタ部17を有し、本体11の下部には、各種サイズの用紙を収容する複数のカセット18を備えている。プリンタ部17は、感光体ドラムと露光部等を有する。露光部は発光素子であるLEDを含む走査ヘッド19を有し、走査ヘッド19からの光線によって感光体ドラムを走査して画像を生成する。
【0015】
プリンタ部17は、スキャナ部15で読み取った画像データや、PC(Personal Computer)などで作成された画像データを処理して記録媒体である用紙に画像を形成する。プリンタ部17は、例えばタンデム方式によるカラーレーザプリンタであり、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色の画像形成部20Y,20M,20C,20Kを含む。画像形成部20Y,20M,20C,20Kは、中間転写ベルト21の下側に、上流から下流側に沿って並列に配置している。また、走査ヘッド19も画像形成部20Y,20M,20C,20Kに対応して複数の走査ヘッド19Y、19M、19C、19Kを主走査方向(図1の奥行方向)に設けている。
【0016】
画像形成部20Y,20M,20C,20Kは同じ構成であるため、画像形成部20Kを代表に説明する。画像形成部20Kは、像担持体である感光体ドラム22Kを有する。感光体ドラム22Kの周囲には、回転方向tに沿って帯電チャージャ23K、現像器24K、1次転写ローラ25K、クリーナ26K、ブレード27K等を配置している。感光体ドラム22Kの露光位置には、走査ヘッド19Kから光を照射し、感光体ドラム22K上に静電潜像を担持する。
【0017】
画像形成部20Kの帯電チャージャ23Kは、感光体ドラム22Kの表面を一様に全面帯電する。現像器24Kは、現像バイアスが印加される現像ローラによりブラックのトナー及びキャリアを含む二成分現像剤を感光体ドラム22Kに供給し、感光体ドラム22K上にトナー像を形成する。クリーナ26Kは、ブレード27Kを用いて感光体ドラム22K表面の残留トナーを除去する。
【0018】
また、画像形成部20Y〜20Kの上部には、現像器24Y〜24Kにトナーを供給するトナーカートリッジ28を設けている。トナーカートリッジ28は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色のトナーカートリッジを含む。
【0019】
中間転写ベルト21は、駆動ローラ31及び従動ローラ32に張架され循環的に移動する。また中間転写ベルト21は感光体ドラム22Y〜22Kに対向して接触している。中間転写ベルト21の感光体ドラム22Kに対向する位置には、1次転写ローラ25Kにより1次転写電圧が印加され、感光体ドラム22K上のトナー像を中間転写ベルト21に1次転写する。
【0020】
中間転写ベルト21を張架する駆動ローラ31には、2次転写ローラ33を対向して配置している。駆動ローラ31と2次転写ローラ33間を用紙Sが通過する際に、2次転写ローラ33により2次転写電圧が用紙Sに印加される。そして中間転写ベルト21上のトナー像を用紙Sに2次転写する。中間転写ベルト21の従動ローラ32付近には、ベルトクリーナ34を設けている。
【0021】
また走査ヘッド19Kは、感光体ドラム22Kと対向し露光部として機能する。感光体ドラム22Kは、予め設定した回転速度で回転し、表面に電荷を蓄えることができ、走査ヘッド19Kからの光を感光体ドラム22Kに照射して露光し、感光体ドラム22Kの表面に静電潜像を形成する。
【0022】
走査ヘッド19Kは、レンズアレイ191と、発光素子であるLED素子192を有し、LED素子192から出射した光線は、レンズアレイ191に入射し、レンズアレイ192を通過して感光体ドラム22K上に結像し、像を感光体ドラム22K上に形成する。また走査ヘッド19Y、19M、19Cは、同様にして対応する画像形成部20Y,20M,20Cの感光体ドラムに像を形成する。
【0023】
なお、感光体ドラム22の露光部としては、半導体レーザ素子から出射されたレーザビームを、ポリゴンミラーを用いて感光体ドラム22K〜22Cの主走査方向に走査するレーザ露光装置を用いてもよい。
【0024】
また図1で示すように、給紙カセット18から2次転写ローラ33に至る間には、給紙カセット18内から取り出した用紙Sを搬送する搬送ローラ35を設けている。さらに2次転写ローラ33の下流には定着器36を設けている。また定着器36の下流には搬送ローラ37を設けている。搬送ローラ37は用紙Sを排紙部38に排出する。さらに、定着器36の下流には、反転搬送路39を設けている。反転搬送路39は、用紙Sを反転させて2次転写ローラ33の方向に導くもので、両面印刷を行う際に使用する。
【0025】
次にイメージセンサ16の構成を説明する。図2は、スキャナ部15のイメージセンサ16の構成を示す正面図である。イメージセンサ16は、原稿台12上に載置された原稿Dの画像、またはADF13によって給紙された原稿の画像を、操作パネル14の操作に従って読み取る。イメージセンサ16は、主走査方向に配置された1次元のセンサであり、筐体41を有する。
【0026】
筐体41の底部には基板42を配置し、筐体41の原稿台12側の上面には、原稿の方向に光を照射する2つのLEDライン照明部43,44を主走査方向(図の奥行方向)に延びるように設けている。LEDライン照明部43,44は、LEDアレイと導光体を備える。なお、光源はLEDに限定されず、蛍光管、キセノン管、冷陰極管又は有機EL等であってもよい。
【0027】
筐体41上部のLEDライン照明部43と44の間には、結像光学装置50が支持されている。LEDライン照明部43,44は原稿台12上の原稿の画像読み取り位置を照射し、画像読み取り位置で反射した光は、結像光学装置50に入射する。結像光学装置50は、詳しくは図3にて説明するが、レンズ素子であるレンズアレイ51,52と、光分岐素子であるプリズム53,54と、基板42に実装したCCDやCMOSなどで構成されるセンサ61,62を含む。プリズム53,54から出射した光は、センサ61,62に結像し、結像した光は、センサ61,62によって電気信号に変換され、電気信号は、基板42のメモリ部(図示せず)に転送される。また基板42にはセンサ61,62からの出力信号を比較し、最も大きい出力信号を選択出力する比較器を有する。
【0028】
図3に示すように、レンズアレイ51は、例えば複数のレンズ511…を配列したシートで構成し、レンズアレイ52も同様に複数のレンズ521…を配列したシートで構成している。またレンズアレイ51と52の間にはアパーチャ55,56を配置している。アパーチャ55は、レンズアレイ51の出射面の近傍に配置され、複数のレンズ511に対応する位置に丸孔を形成している。また、アパーチャ56は、レンズアレイ52の入射面の近傍に配置され、複数のレンズ521に対応する位置に丸孔を形成している。図2は、図3の矢印A方向から見た図である。なお、レンズアレイ51,52としては、屈折率分布型のロッドレンズを複数配列したものを使用することもできる。
【0029】
次に、図4を参照して結像光学装置50の詳細な構成について説明する。結像光学装置50は、図4(a)で示すように、レンズアレイ51,52を含む正立等倍光学系と、ロンボイドプリズム(平行四辺形プリズム)53と三角プリズム54、及びセンサ61,62が一体になったユニットであり、主走査方向(図の奥行方向)に長く伸びている。奥行方向は、原稿分の幅を持つため、レンズアレイ51,52のレンズの並びも奥行き方向に長く配列されており、主走査方向と直交する副走査方向は短くなっている。
【0030】
レンズアレイ51,52は、原稿台12からの光の光軸と直交するように配置され、原稿台12からの光は、レンズアレイ51に入射し、アパーチャ55,56を通過してレンズアレイ52に入射する。アパーチャ55,56は、レンズアレイ51から出射してレンズアレイ52に入射する光線が隣接する他のレンズに入射するのを防ぐ役割を有する。レンズアレイ52から出射した光の光軸上には、光分岐素子であるロンボイドプリズム53と三角プリズム54を配置している。
【0031】
図4(b)は、ロンボイドプリズム53と三角プリズム54の構成を説明する斜視図であり、説明を分かりやすくするため分離した状態を示している。ロンボイドプリズム53は、偏光分離膜を有する偏光分離面又はハーフミラーの面531を有し、面531に対向する部分に反射面532を有している。ロンボイドプリズム53に入射した光L0は、面531で一部の光が透過し、三角プリズム54を透過して出射する(出射光をL1とする)。また、面531で残りの光が反射し、かつ反射面532で反射して出射する(出射光をL2とする)。上記したように、ロンボイドプリズム53は、偏光分離面531で反射した光を反射する反射経路を有する。
【0032】
出射光L1,L2はそれぞれセンサ61,62に結像する。光L1が通る光路を光路1とし、光L2が通る光路を光路2とすると、レンズアレイ52からセンサ61に至る光路1の光路長と、レンズアレイ52からセンサ62に至る光路2の光路長は異なり、センサ62に至る光路長の方が、距離H1×nだけ長くなる。この距離の間は、屈折率はnのため、空気換算量でいうとH1となる。即ち、ロンボイドプリズム53と三角プリズム54は、レンズアレイ52からの出射光を複数の異なる光路長を有する光路に分光し、それぞれの光路を通った光を像面(センサ61,62)に結像する光分岐素子を構成する。
【0033】
センサ61,62に結像した光は、センサ61,62によって電気信号に変換され、2つのセンサ61,62からの出力信号を比較器によって比較して、出力信号の大きい方を選択出力する。即ち、予め設定した或る範囲内での信号の振れ幅が大きい方の信号か、最大値が大きい方、もしくは最小値が小さい方の信号を選択出力する。
【0034】
例えば、1mm当たり6サイクルの濃淡パターンを正立等倍結像したときの光の変調度を求め、変調度が所定の値以上の信号のうち、変調度の大きい方の信号を選択する。変調度(m)は、変調を受けた光強度の最大値をImax、最小値をIminとすると、変調度(m)=(Imax−Imin)/(Imax+Imin)で表すことができる。
【0035】
センサ61とセンサ62の出力信号のうち、大きい方の出力信号を選択することにより、原稿面の原稿が原稿台12から浮いた場合でも、図5に示すように、幅広い範囲でMTFを所定の値以上に保つことができる。MTFは、Modulation Transfer Functionの略であり、振幅伝達関数である。
【0036】
即ち、原稿Dが図4(a)に示す距離H1だけ、原稿台12から浮いた場合、正立等倍結像させるには、センサ61の位置も距離H1だけずらした位置に移動する必要があるが、センサ61の位置は固定であるため、センサ61に結像した像はボケを生じる。一方、センサ62への光路長は、ロンボイドプリズム53の反射経路を通過する分だけ光路長が長くなる。センサ61への光路長とセンサ62への光路長の差をH1×n(nは、プリズムの屈折率)とすると、センサ62ではボケを生じることなく結像することができる。ここで、nをかけるのは、空気換算光路長を同じにするためである。
【0037】
図5は、原稿の設計値からの浮き量に対するMTFの変化を示す光学特性図である。図5の横軸は原稿の設計物体面からの浮き量を示し、縦軸は6サイクル/mmの濃淡パターンを結像したときのMTFを示す。凡例の値(0〜1.8)は、図4のセンサ61に至る光路(光路1)とセンサ62に至る光路(光路2)の光路長差を示す。なお、光路1と光路2の光路長差は、空気換算光路長(ガラス内の光路長を等価な空気中での光路長で表わしたもの)の差であり、光路長差/プリズムの屈折率の値である。空気換算光路長を適切に選ぶことで、MTFが所定の値以上になる範囲を広げることができる。
【0038】
図6は、光路1のMTFと、光路2のMTFを示した図である。2つのセンサ61,62の出力の内、MTFの大きい方の出力を採用するのであるから、空気換算光路長差は、図6の光路1と光路2の各MTFの交点の縦軸の値が、仕様の最低値となるようにするのが望ましい(図6の場合、最低値は0.37とする)。
【0039】
例えば、図5において、MTFが55%(0.55)以上の広い範囲になるようにしたければ、光路1と光路2のMTFをプロットした場合の交点のMTFが0.55となる光路長差1.2とすればよい。したがって、ロンボイドプリズム53の長さを1.2mm×ロンボイドプリズムの屈折率に設定すればよい。この条件を満たすことで、例えば被写界深度を1.2mmから、2.45mmに深くすることができる。空気換算光路長差1.2×ロンボイドプリズムの屈折率がプリズム53の反射点を結ぶ距離H1×nとなる。
【0040】
またMTFが40%(0.4)以上の広い範囲になるようにしたければ、光路1と光路2の各MTFをプロットした場合の交点のMTFが0.4となる空気換算光路長差1.8とすればよく、ロンボイドプリズム53の長さを1.8mm×ロンボイドプリズムの屈折率に設定すればよい。この条件を満たすことで、例えば被写界深度を1.7mmから、3.6mmと深くすることができる。光路長差1.8×ロンボイドプリズムの屈折率がプリズム53の反射点を結ぶ距離H1×nとなる。
【0041】
従来のようにセンサを1セット使った場合には、原稿が浮いたときのMTFが落ちてしまう。しかしながら、第1の実施形態のように、センサを2セット(61と62)使うことで、原稿が浮いた場合でもMTFを所定の値以上にすることができる。
【0042】
なお、カラー画像を読み取る場合、センサ61,62は、R(赤),G(緑),B(青)用、もしくはY(イエロー),M(マゼンタ),C(シアン),K(ブラック)のセンサを配列することになる。
【0043】
また、2セットのセンサ61,62を用いた例を説明したが、センサが複数あることが重要であり、センサを3セット、4セットとすることにより、より高いMTFを保った状態で被写界深度を深くすることができる。例えば、ロンボイドプリズム53からの光路2上に、もう1組のロンボイドプリズム53と三角プリズム54を追加し、光路2の光をさらに分光して第3のセンサに結像するようにしてもよい。
【0044】
(第2の実施形態)
図7は、第2の実施形態に係る結像光学装置50の構成図である。図7において、結像光学装置50は、レンズアレイ51,52を含む正立等倍光学系と、ロンボイドプリズム57,58と三角プリズム59からなるプリズム、及びセンサ61が一体になったユニットであり、主走査方向(図の奥行方向)に長く伸びている。
【0045】
図7(a)に示すように、原稿台12からの光は、レンズアレイ51に入射し、アパーチャ55,56を通過してレンズアレイ52に入射する。レンズアレイ52から出射した光は、光分岐素子であるロンボイドプリズム57,58と三角プリズム59からなるプリズムに入射する。
【0046】
図7(b)は、ロンボイドプリズム57,58と三角プリズム59の構成を説明する斜視図であり、説明を分かりやすくするため分離した状態で示している。ロンボイドプリズム57は、偏光分離膜を有する偏光分離面又はハーフミラーの面571を有し、面571に対向する部分に反射面572を有している。またロンボイドプリズム58は、反射面581と582を有している。
【0047】
ロンボイドプリズム57に入射した光L0は、面571で一部の光L1が透過し、さらに三角プリズム59を透過してロンボイドプリズム58に入射し、面582を透過して出射する。また、面571で残りの光L2が反射し、かつ反射面572で反射して、ロンボイドプリズム58に入射する。さらにロンボイドプリズム58に入射した光は、反射面581と反射面582で反射して出射する。そして、ロンボイドプリズム57,58と三角プリズム59から出射した光L1,L2はセンサ61に結像する。
【0048】
図7のプリズム(57,58,59)では、ロンボイドプリズム57の面571で反射した光を、反射面572,581,582で計3回反射する反射経路を有することになる。光L1が通る光路を光路1、光L2が通る光路を光路2とすると、レンズアレイ52から出射してセンサ61に至る光路1の光路長と、レンズアレイ52から出射してセンサ61に至る光路2の光路長は異なり、センサ61には、光路L1と光路L2を経由した光がセンサ61で合成される。光路長に差を持った光線が1つに合成されて、1セットのセンサに入力するため、MTFは低くなるが、ピークMTFの半分くらいのMTFの範囲は広くすることができる。
【0049】
図8に第2の実施形態で得られるMTFの光学特性を示す。図8の横軸は、原稿の設計物体面からの浮き量を示し、縦軸は6サイクル/mmの濃淡パターンを結像したときのMTFを示す。凡例の値(0〜2.2)は、図7のセンサ61に至る光路1と光路2の空気換算光路長差を示す。なお、光路1と光路2の光路長差は、空気換算光路長(ガラス内の光路長を等価な空気中での光路長で表わしたもの)の差であり、光路長差/プリズムの屈折率の値である。空気換算光路長を適切に選ぶことで、MTFが所定の値以上である範囲を広げることができる。
【0050】
例えば、空気換算光路長差を1.8にしたときは、光路が1つだけである場合のMTFのピーク値の半分以上で被写界深度を深くすることができる。即ち、原稿が浮いたときにMTFのピークは低くなるが、原稿を読み取ることができる。
【0051】
空気換算光路長差が1.8のときの、光路1と光路2の光線による単体でのMTFの様子を図6に示している。図6を見てわかるように、光路1のMTFがほぼ0になる位置に光路2のMTFが最大になるような、空気換算光路長差を与えるときが最適となる。
【0052】
なお、図7の例においても、カラー画像を読み取る場合は、センサ61,62は、R(赤),G(緑),B(青)用、もしくはY(イエロー),M(マゼンタ),C(シアン),K(ブラック)のセンサを配列することになる。
【0053】
また、ロンボイドプリズム57,58と三角プリズム59の後段にもう1組のロンボイドプリズム57,58と三角プリズム59を追加し、光路長の異なる光線をセンサ61に結像するようにしてもよい。
【0054】
図9は、第2の実施形態における結像光学装置50の変形例を示す構成図である。図9は、レンズアレイ51,52を含む正立等倍光学系と、ロンボイドプリズム53と三角プリズム54、及びセンサ61が一体になったユニットであり、主走査方向(図の奥行方向)に長く伸びている。プリズム53,54の構成は図4の例に類似するが、ロンボイドプリズム53からの出射光が屈折してセンサ61に結像するようにした点で異なる。
【0055】
図9に示すように、原稿台12からの光は、レンズアレイ51に入射し、アパーチャ55,56を通過してレンズアレイ52に入射する。レンズアレイ52から出射した光は、ロンボイドプリズム53と三角プリズム54に入射する。
【0056】
ロンボイドプリズム53に入射した光L0は、面531で一部の光が透過し、三角プリズム54を透過して出射する(出射光をL1とする)。また、面531で残りの光が反射し、かつ反射面532で反射して出射する(出射光をL2とする)。
【0057】
出射光L1,L2はそれぞれセンサ61に結像する。光L1が通る光路を光路1とし、光L2が通る光路を光路2とすると、レンズアレイ52から出射してセンサ61に至る光路1の光路長と、レンズアレイ52から出射してセンサ61に至る光路2の光路長は異なり、光路2を通る光路長の方が長くなる。図9での光路長差は、第2の実施例と同じであるが、光路長差の与え方が異なる。また光学特性は第2の実施例とほぼ同じである。
【0058】
以上説明した実施形態によれば、MTFや集光特性を向上させた上で、光量を最大限に得ることができる。また原稿が浮いた場合でもセンサではボケを低減して結像することができる。
【0059】
なお、以上述べた実施形態の例では、複数のレンズ面を持つレンズアレイ51,52を使った例について説明しているが、屈折率分布型のレンズを複数並べたものを用いてもよい。また必ずしもレンズアレイを用いる必要はなく、単一のレンズ、又は光路上に複数のレンズを組み合わせたレンズ素子で構成してもよい。さらにセンサはラインセンサに限らずエリアセンサであってもよい。
【0060】
また本実施形態として、読取装置であるスキャナ部15を画像形成装置の一部として包含する例を説明したが、これに限定されず、スキャナ部15自身が画像形成装置を構成するものであってもよい。
【0061】
また光分岐素子はスキャナ部15に配置することに限定されず、プリンタ部17の走査ヘッド19の内部にある場合でもよい。即ち、発光素子からの出射光を光分岐素子によって複数の異なる光路長を有する光路に分光し、光分岐素子を通った光に基づいて像担持体を露光し、静電潜像を担持するようにしてもよい。
【0062】
尚、本発明のいくつかの実施形態を述べたが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0063】
10…画像形成装置
12…原稿台
15…画像読取部(スキャナ部)
16…イメージセンサ
17…プリンタ部
19…走査ヘッド
43,44…照明部
51,52…レンズアレイ
53,54,57,58,59…プリズム
55,56…アパーチャ
61,62…センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光軸と直交する方向に入射面と出射面が配置されたレンズ素子と、
前記レンズ素子の前記出射面から出射した光の光軸上に配置され、前記レンズ素子からの出射光を複数の異なる光路長を有する光路に分光し、前記光路長の異なる複数の光路を形成する光分岐素子と、
を具備する結像光学装置。
【請求項2】
前記光分岐素子は、前記レンズ素子からの出射光の一部を透過し前記出射光の残りを反射する偏光分離面と、前記偏光分離面で反射した光を少なくとも1回反射する反射経路とを有するプリズムを備え、前記偏光分離面を透過した光及び前記反射経路を介して出射した光を像面に結像する請求項1記載の結像光学装置。
【請求項3】
前記光分岐素子は、前記レンズ素子からの出射光の一部を透過し前記出射光の残りを反射するハーフミラー面と、前記ハーフミラー面で反射した光を少なくとも1回反射する反射経路とを有するプリズムを備え、前記ハーフミラー面を透過した光及び前記反射経路を介して出射した光を像面に結像する請求項1記載の結像光学装置。
【請求項4】
前記光路長の異なる複数の光路を通った光をそれぞれ結像する複数のセンサを設け、前記複数のセンサの出力信号の内、最も大きい出力信号を選択出力する比較器を備える請求項1記載の結像光学装置。
【請求項5】
前記光路長の異なる複数の光路を通った光を合成して結像するセンサを設けた請求項1記載の結像光学装置。
【請求項6】
前記レンズ素子は、複数のレンズを配列したレンズアレイを複数個並べてなる請求項1記載の結像光学装置。
【請求項7】
前記レンズ素子は、複数の屈折率分布型レンズを配列したレンズアレイを複数個並べてなる請求項1記載の結像光学装置。
【請求項8】
原稿台上にある原稿の主走査方向に配置し、前記原稿に光を照射する照明部と、
前記原稿面からの光の光軸と直交する方向に入射面と出射面が配置されたレンズ素子と、前記レンズ素子の前記出射面から出射した光の光軸上に配置され、前記レンズ素子からの出射光を複数の異なる光路長を有する光路に分光し、前記光路長の異なる複数の光路を形成する光分岐素子と、
前記光分岐素子を通った光を結像するセンサと、
を備える画像形成装置。
【請求項9】
前記センサによって結像されて生成された画像データに基づいて像担持体の主走査方向に光を照射し、前記像担持体を露光する露光部と、
前記像担持体に現像剤を供給し、前記像担持体にトナー像を形成する現像器と、
を備える請求項8記載の画像形成装置。
【請求項10】
光を出射する発光素子と、
前記発光素子から出射した光の光軸上に配置され、前記出射光を複数の異なる光路長を有する光路に分光し、前記光路長の異なる複数の光路を形成する光分岐素子と、
前記光分岐素子を通った光に基づいて静電潜像を担持する像担持体と、
を備える画像形成装置。
【請求項11】
前記光分岐素子はプリズムである請求項8乃至10いずれか一に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−90198(P2013−90198A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−229870(P2011−229870)
【出願日】平成23年10月19日(2011.10.19)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】