説明

結合タンパク質

【課題】約24kDの分子量を有しそしてC型肝炎ウイルスのタンパク質に特異的に結合し得
るタンパク質、あるいはその機能的に等価な改変体またはフラグメントを提供すること。
【解決手段】ヒト細胞に遍在しそしてC型肝炎ウイルスと同一の種特異性を示す約24kdの
分子量を有する、機能的にグリコシル化されていない膜貫通タンパク質。このタンパク質
は、HCV表面タンパク質に結合し得、そして推定HCV細胞性レセプターである。このように
、HCV感染の診断および処置の分野に、およびHCV治療の設計に、多くの適用を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、C型肝炎ウイルス(HCV)のE2エンベロープタンパク質を結合し得るタンパ
ク質、ならびに産生および精製のためのプロセスに関する。
【0002】
本発明はまた、治療および診断におけるタンパク質の使用、ならびにこのような使用の
ための薬学的組成物および診断キットに関する。本発明はまた、レセプター結合に関する
HCVとの競合についての推定分子をスクリーニングするためのプロセスに関する。本発明
はまた、HCV感染についての動物モデルに関する。
【背景技術】
【0003】
(先行技術の簡単な説明)
HCV(非A非B肝炎−NANBV−として以前は知られていた)は、約3000アミノ酸のポリタ
ンパク質をコードする単一のオープンリーディングフレームを有する約10000ヌクレオチ
ドのポジティブセンスRNAウイルスである。ウイルスの構造は組換えDNA技法によって解明
されているが(特許文献1、特許文献2)、ウイルス自体は単離されておらず、そしてポ
リタンパク質のタンパク質分解によって産生された種々のウイルスタンパク質の機能は、
同様のゲノム編成の他の同様のウイルスとの類似によって推論されるのみであった(非特
許文献1)。
【0004】
ウイルスタンパク質は、すべて組換え形態で利用可能であり、酵母、細菌、昆虫、およ
び哺乳動物細胞を含む種々の細胞および細胞タイプにおいて発現される(非特許文献2、
非特許文献3)。
【0005】
E1およびE2と命名された2つのタンパク質(それぞれアミノ酸192〜383および384〜750
に対応する)は、標的細胞へのウイルスの結合を担うウイルスエンベロープの外部タンパ
ク質であることが示唆されている(非特許文献1)。
【0006】
HCV調査は、ウイルスの限定された宿主範囲によって非常に妨害される。HCV感染につい
ての唯一の信頼のおける動物モデルはチンパンジーであり、そして組織培養物中でHCVを
増殖させることは可能ではない。
【0007】
本発明者らの同時係属中の国際特許出願PCT/IB95/00692において、本発明者らは、HCV
レセプターを有する細胞を同定するためにフローサイトメトリーを用いる方法を記載して
いる。本発明者らは、組換えE2エンベロープタンパク質で細胞を標識することによって、
フローサイトメトリーを使用して細胞を分類すること、E2へ特異的に結合し得、そしてそ
れゆえHCVレセプターを潜在的に有する細胞を単離することが可能であることを示してい
る。この技法を用いて、本発明者らは、HCVに対するレセプターであると本発明者らが考
えるHCVのE2エンベロープタンパク質に結合し得るタンパク質を同定した。これにより当
該技術分野における多くの問題を克服可能とする。
【特許文献1】欧州特許出願公開第0318216号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第0388232号明細書
【非特許文献1】Chooら PNAS USA (1991年) 88 p.2451-2455
【非特許文献2】Chien, D.Y.ら PNAS USA (1992年) p.89 10011-10015
【非特許文献3】Spaete, R.R.ら Virology (1992年) p.188 819-830
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0008】
(発明の要旨)
本発明により、以下が提供される。
(項目1) 約24kDの分子量を有しそしてC型肝炎ウイルスのタンパク質に特異的に結合
し得るタンパク質、あるいはその機能的に等価な改変体またはフラグメント。
(項目2) 機能的にグリコシル化されていない、項目1に記載のタンパク質あるいはそ
の機能的に等価な改変体またはフラグメント。
(項目3) 前記タンパク質が膜貫通タンパク質である、項目1または2に記載のタンパ
ク質あるいはその機能的に等価な改変体またはフラグメント。
(項目4) 項目1〜3のいずれか一項に記載のタンパク質あるいはその機能的に等価な
改変体またはフラグメントの調製のためのプロセスであって、HCVタンパク質への結合を
示す細胞を培養する工程、および項目1〜3のいずれか一項に記載のタンパク質を細胞調
製物から精製する工程を包含する、プロセス。
(項目5) 前記細胞調製物が形質細胞膜調製物である、項目4に記載のプロセス。
(項目6) 前記細胞が、項目1〜3のいずれか一項に記載のタンパク質の過剰発現を提
供するように選択およびクローニングされる、項目4または5に記載のプロセス。
(項目7) 前記細胞調製物が、33%と55%との間で硫酸アンモニウムを用いる硫酸アン
モニウム沈殿精製工程に供される、項目4〜6のいずれか一項に記載のプロセス。
(項目8) 前記精製が、疎水性相互作用クロマトグラフィーの少なくとも1つの工程を
包含する、項目4〜7のいずれか一項に記載のプロセス。
(項目9) 前記プロセスが、アセトン沈殿の少なくとも1つの工程を包含する、項目4
〜8のいずれか一項に記載のプロセス。
(項目10) 項目4〜8のいずれか一項に記載のプロセスであって、以下の工程:
i)本発明の24kdタンパク質の過剰発現のために選択された哺乳動物細胞の形質細胞膜
調製物を調製する工程、
ii)該調製物を33%飽和未満で硫酸アンモニウム沈殿に供し、そして上清を保持する工
程、
iii)該上清を33%と50%との間の飽和で硫酸アンモニウム沈殿に供し、そして沈殿物
を保持する工程、および
iv)該沈殿物を再懸濁し、そしてそれを疎水性相互作用クロマトグラフィーに供する工
程、
を包含する、プロセス。
(項目11) HCVの感染を処置するための方法であって、項目1〜3のいずれか一項に
記載のタンパク質あるいはその機能的に等価な改変体またはフラグメントの、ウイルスの
感染性を低減するために有効な量を患者に投与する工程を包含する、方法。
(項目12) 項目1〜3のいずれか一項に記載のタンパク質あるいはその機能的に等価
な改変体またはフラグメントを、必要に応じて薬学的に受容可能な塩として、薬学的に受
容可能なキャリアと組み合わせて含む、薬学的組成物。
(項目13) 薬学的組成物を調製するためのプロセスであって、ここで、項目1〜3の
いずれか一項に記載のタンパク質あるいはその機能的に等価な改変体またはフラグメント
が薬学的に受容可能なキャリアと会合される、プロセス。
(項目14) 製薬としての使用のための項目1〜3のいずれか一項に記載のタンパク質
あるいはその機能的に等価な改変体またはフラグメント。
(項目15) HCV感染の処置のための医薬品の製造における、項目1〜3のいずれか一
項に記載のタンパク質あるいはその機能的に等価な改変体またはフラグメントの使用。
(項目16) 血清試料におけるHCV抗体についてのアッセイであって、該試料中の抗体
と、項目1〜3のいずれか一項に記載のタンパク質あるいはその機能的に等価な改変体ま
たはフラグメントへの結合についての既知量のHCVタンパク質とを競合結合させる工程、
および結合した既知のHCVタンパク質の量を測定する工程を包含する、アッセイ。
(項目17) 項目1〜3のいずれか一項に記載のタンパク質あるいはその機能的に等価
な改変体またはフラグメントを含む、診断キット。
(項目18) 宿主細胞への結合を担うHCVの領域に結合する能力について化学化合物を
スクリーニングする方法であって、項目1〜3のいずれか一項に記載のタンパク質あるい
はその機能的に等価な改変体またはフラグメントへの、スクリーニングされるべき化学化
合物の結合を測定する工程を包含する、方法。
(項目19) 項目1〜3のいずれか一項に記載のタンパク質あるいはその機能的に等価
な改変体またはフラグメントをコードする導入遺伝子を有する、トランスジェニック非ヒ
ト哺乳動物。
(項目20) トランスジェニック動物を生成するプロセスであって、項目1〜3のいず
れか一項に記載のタンパク質あるいはその機能的に等価な改変体またはフラグメントをコ
ードするDNAを、非ヒト哺乳動物、好ましくはマウスの胚に導入する工程を包含する、プ
ロセス。
【0009】
本発明によれば、約24kDの分子量を有しそしてC型肝炎ウイルスのタンパク質に特異的
に結合し得るタンパク質、あるいはその機能的に等価な改変体またはフラグメントが提供
される。
【0010】
電気泳動を使用して以下に記載のように測定した分子量は、標準分子量マーカーに比較
して測定されるので、本質的に解釈に供されることが当業者によって理解される。しかし
、本明細書の文脈においては、唯一のこのようなタンパク質が、以下に記載のプロセスに
従ってC型肝炎ウイルスへ結合するという規定された特徴を有して得られるので、「24kd
」という表現は、文脈において読まれる場合、明確である。
【0011】
本発明のタンパク質の顕著な特色のある特徴は、HCVタンパク質、好ましくはエンベロ
ープタンパク質、特にE2タンパク質に特異的に結合する能力である。
【0012】
この特異性および以下に記載される他の特徴に基づいて、本発明者らは、本発明の24kd
タンパク質がHCVに対する細胞性レセプターであることを推論する。
【0013】
本発明者らは、タンパク質が、本発明者らが試験した細胞タイプの中でヒトにおいて遍
在し、このタイプ(例えば、ワクシニアウイルスおよびインフルエンザウイルス)の多く
の他のウイルスについて見られる状況に似ていることを示した。
【0014】
本発明者らは、タンパク質が、HCV自体の種特異性に適合する様式で特異的な種である
ことを示した。
【0015】
本発明者らの実験は、24kdタンパク質が機能的にグリコシル化されないことを示した。
グリコシダーゼでの処理は、E2タンパク質に結合する24kdタンパク質の能力に影響を与え
ず、そして分子量を著しく低下させるようではない。したがって、本発明者らは、タンパ
ク質が少しでもグリコシル化されるならば、グリコシル化は少数の糖部分に制限されなけ
ればならず、そしてタンパク質の機能的活性に必要ではないことを推論する。
【0016】
本発明者らの実験はまた、タンパク質が膜貫通タンパク質であることを示しており、ま
た細胞性レセプターであることを示唆する。
【0017】
最後に、タンパク質を過剰発現する細胞株での実験は、このような細胞が凝集しやすい
ことを示し、タンパク質がいくつかの形態の接着分子であり得ることを示唆する。
【0018】
24kdタンパク質は、たとえその元の環境から単離されていても、その天然に存在する形
態であり得、または、少なくともHCVのE2タンパク質に結合する機能的特徴を保持するな
らば、改変され得る。例えば、24kdタンパク質は、アミノ酸構造への1つ以上の化学的改
変を導入するために化学的に改変され得る。1つ以上の挿入、欠失、または置換したアミ
ノ酸を含むアミノ酸配列の改変を包含し得る。例えば、適切な哺乳動物宿主細胞における
組換えDNA手段による迅速な産生を容易にするために、膜貫通ドメインの機能的部分の除
去によって短縮され得る。(6)。
【0019】
本発明のタンパク質は、E2タンパク質のようなHCVタンパク質への結合を示す細胞から
精製され得る。
【0020】
本発明によれば、本発明のタンパク質あるいはその機能的に等価な改変体またはフラグ
メントの調製のためのプロセスが提供され、このプロセスは、HCVタンパク質への結合を
示す細胞を培養する工程および本発明のタンパク質を細胞調製物から精製する工程を包含
する。
【0021】
細胞は、形質転換したかまたは形質転換されてない哺乳動物細胞であり得、そして適切
にはヒト細胞である。
【0022】
細胞は、蛍光フローサイトメトリーまたは任意の他の適切なアッセイを使用して、HCV
タンパク質への結合についてスクリーニングされ得る。例えば、本明細書は、24kdタンパ
ク質あるいはその機能的に等価な改変体またはフラグメントを産生するために必要な情報
を提供し、これらは、次いでこれら自体がこのタンパク質を有するさらなる細胞について
アッセイするために使用される。
【0023】
細胞調製物は、細胞膜調製物であり得るが、好ましくは形質細胞膜調製物である。
【0024】
好ましくは、細胞は、本発明のタンパク質の過剰発現を提供するように選択およびクロ
ーニングされる。
【0025】
本発明者らは、タンパク質が33%と50%との間の飽和での硫酸アンモニウムによって沈
殿されることを発見した。
【0026】
したがって、好ましくは、細胞調製物は、33%と50%との間の硫酸アンモニウムを用い
る硫酸アンモニウム沈殿精製工程に供される。適切には、第1の沈殿は、33%未満で行わ
れ、そして沈殿した物質は捨てられ、次いで33%と50%との間で、最も好ましくは50%で
所望の物質を沈殿する。
【0027】
好ましくは、精製は、疎水性相互作用クロマトグラフィーの少なくとも1つの工程を包
含する。
【0028】
本発明者らはまた、タンパク質がアセトン沈殿に対して安定であり、それによってなお
さらなる特徴付けおよび有用な精製プロセス工程を提供することを発見した。
【0029】
最も好ましくは、最適化した形態において、精製のプロセスは以下の工程を包含する:
i)本発明の24kdタンパク質の過剰発現について選択された哺乳動物細胞の形質細胞膜
調製物を調製する工程、
ii)上記調製物を33%飽和未満で硫酸アンモニウム沈殿に供し、そして上清を保持する
工程、
iii)上記上清を33%と50%との間の飽和で硫酸アンモニウム沈殿に供し、そして沈殿
物を保持する工程、および
iv)上記沈殿物を再懸濁し、そしてそれを疎水性相互作用クロマトグラフィーに供する
工程。
【0030】
野生型細胞株からの精製の代替として、本発明のタンパク質あるいはその機能的に等価
な改変体またはフラグメントは、化学合成を包含する任意の適切な合成プロセスによって
作成され得る。適切には、タンパク質あるいはその機能的に等価な改変体またはフラグメ
ントは、適切な宿主細胞または動物においてタンパク質をコードする遺伝子の発現によっ
て作成される。
【0031】
本発明のさらなる局面によれば、ウイルスの感染性を低減させるために有効な量の本発
明のタンパク質あるいはその機能的に等価な改変体またはフラグメントを患者に投与する
工程を包含する、HCVの感染を処置するための方法が提供される。
【0032】
HCVの感染メカニズムは、一部、細胞表面レセプターの利用可能性に依存するようなの
で、本発明のタンパク質の可溶性形態を利用可能にすることは、細胞性レセプターへのHC
Vの結合のアンタゴニストとして作用し、そうして感染プロセスを低減または抑制し、そ
してそれによって疾患を処置する。
【0033】
本発明のタンパク質の適切な可溶性形態は、例えば、化学的合成または組換えDNA合成
におけるタンパク質切断工程、または設計のいずれかによって、膜貫通ドメインが除去さ
れているタンパク質の短縮形態を含み得る。
【0034】
あるいは、B型肝炎表面抗原またはその粒子形成フラグメントのような少なくとも1つ
の粒子形成タンパク質を、本発明のタンパク質あるいはその機能的に等価な改変体または
フラグメントを組み合わせて含むハイブリッド粒子は、細胞性レセプターへのHCVの結合
のアンタゴニストとして使用され得る。
【0035】
本発明のさらなる局面によれば、本発明のタンパク質あるいはその機能的に等価な改変
体またはフラグメントを、必要に応じて薬学的に受容可能な塩として、薬学的に受容可能
なキャリアと組み合わせて含む薬学的組成物が提供される。
【0036】
薬学的組成物は、経口および非経口組成物を含む投与のための任意の適切な形態であり
得る。
【0037】
薬学的組成物を製造するためのプロセスがまた提供され、ここで、本発明のタンパク質
あるいはその機能的に等価な改変体またはフラグメントは、薬学的に受容可能なキャリア
と会合される。
【0038】
本発明のさらなる局面によれば、製薬としての使用のための本発明のタンパク質あるい
はその機能的に等価な改変体またはフラグメントが提供される。
【0039】
本発明のさらなる局面によれば、HCV感染の処置のための医薬品の製造における本発明
のタンパク質あるいはその機能的に等価な改変体またはフラグメントの使用が提供される。
【0040】
本発明のタンパク質あるいはその機能的に等価な改変体またはフラグメントのHCVへ結
合する能力は、HCV感染についての診断薬として、例えば、ELISAまたはRIAにおいて、本
発明のタンパク質あるいはその機能的に等価な改変体またはフラグメントの使用を可能に
する。
【0041】
タンパク質の可溶性形態は、例えば、血清中の中和抗体を測定するためのアッセイのEL
ISA形態で使用され得る。
【0042】
本発明のさらなる局面によれば、血清試料中のHCV抗体についてのアッセイが提供され
、これは、試料中の抗体と、本発明のタンパク質あるいはその機能的に等価な改変体また
はフラグメントへの結合のための既知量のHCVタンパク質との間で競合結合させる工程、
および結合した既知HCVタンパク質の量を測定する工程を包含する。
【0043】
好ましくは、本発明のタンパク質あるいはその機能的に等価な改変体またはフラグメン
トは、固相支持体に固定され、そしてHCVタンパク質は、適切にはE2 HCVエンベロープタ
ンパク質、必要に応じて組換えE2タンパク質であり得、これは標識され、適切には酵素標
識される。
【0044】
この形態のアッセイにおいて、本発明のタンパク質への結合についての抗体とHCVタン
パク質との間の競合結合は、血清試料中の抗体の尺度である結合したHCVタンパク質、最
も特定的には血清試料中の中和抗体を生じる。
【0045】
このアッセイの顕著な利点は、測定が中和抗体(すなわち、細胞性レセプターへのHCV
エンベロープタンパク質の結合を妨害するもの)で行われることである。このようなアッ
セイは、特にELISA試験の形態において、臨床的環境および日常的血液スクリーニングに
おいてかなりの適用を有する。
【0046】
また、このアッセイは中和抗体力価を測定するので、アッセイは、中和抗体力価が宿主
防御に相関された推定ワクチン効率の容易な測定を形成する。
【0047】
本発明のさらなる局面では、本発明のタンパク質あるいはその機能的に等価な改変体ま
たはフラグメントを含む診断キットが提供される。好ましくは、このキットはまた、必要
に応じて酵素標識された、少なくとも1つのHCV標識したHCVタンパク質を含む。
【0048】
本発明のタンパク質あるいはその機能的に等価な改変体またはフラグメントは、HCVレ
セプターへの結合を担うHCV表面構造に類似する化学化合物についてのスクリーニングの
ために使用され得る。
【0049】
本発明のさらなる局面によれば、宿主細胞への結合を担うHCVの領域に結合する能力に
ついて化学化合物をスクリーニングする方法が提供され、これは、本発明のタンパク質あ
るいはその機能的に等価な改変体またはフラグメントへのスクリーニングされるべき化学
化合物の結合を測定する工程を包含する。
【0050】
本発明のこの局面は、スクリーニングプロセスの産物を、単独で、薬学的に受容可能な
塩の形態で、1つ以上の他の活性化合物と組み合わせて、および/または1つ以上の薬学
的に受容可能なキャリアと組み合わせてのいずれの形態でも包含する。薬学的組成物を製
造するためのプロセスがまた提供され、ここでは、本発明のプロセスによって同定された
化学化合物が薬学的に受容可能なキャリアと会合される。
【0051】
化学化合物は、有機化合物であり得、そしてアミノ酸またはアミノ酸アナログを含み得
る。しかし、好ましくは、化学化合物は、ポリペプチド、またはその特定の特性(例えば
、本発明のタンパク質あるいはその機能的に等価な改変体またはフラグメントへの結合親
和性あるいはそのインビボ安定性)を変更するように化学的に改変されているポリペプチ
ドである。
【0052】
現在、唯一の利用可能な動物モデルはチンパンジーであり、これは保護種である。この
ような動物での実験は、多くの困難があり、同時にかなりの出費を生じる(1匹のチンパ
ンジーでの1年の実験は70,000ドル要し得る)。これに比べて、マウスモデルははるかに
より受容可能である。不運にも、以下に記載のように、HCVレセプターは、ヒトで遍在し
そしてチンパンジーで見いだされるが、他の哺乳動物には不在である。細胞表面にHCVレ
セプターを有するトランスジェニック哺乳動物、例えばマウスは、HCV研究およびワクチ
ン開発に非常に有益である。
【0053】
本発明のさらなる局面によれば、本発明のタンパク質あるいはその機能的に等価な改変
体またはフラグメントをコードする導入遺伝子を有する、トランスジェニック非ヒト哺乳
動物、適切にはマウスが提供される。
【0054】
本発明のトランスジェニック動物は、HCV感染を維持することを助ける1つ以上の他の
導入遺伝子を有し得る。
【0055】
本発明のタンパク質あるいはその機能的に等価な改変体またはフラグメントをコードす
るDNAを、非ヒト哺乳動物、好ましくはマウスの胚に導入する工程を包含する、トランス
ジェニック動物を生産するプロセスも提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0056】
(発明の詳細な説明)
詳細な記載の配置は以下のとおりである:
1.一般的説明 段落番号0057
2.細胞アッセイ 段落番号0061
2.1. E2への細胞結合のFACS分析 段落番号0061
2.2. 結合に対するE2改変の効果 段落番号0069
2.2.1. E2還元 段落番号0070
2.2.2. E2脱グリコシル化 段落番号0073
2.3. モノクローナル抗体産生 段落番号0075
3.24kd推定レセプターの調製 段落番号0076
3.1. MOLT-4細胞からの24kdタンパク質の調製 段落番号0076
3.1.1. 膜精製 段落番号0077
3.1.2. 形質膜精製 段落番号0088
3.2. 過剰発現するMOLT-4細胞 段落番号0096
4.レセプターの特徴付け 段落番号0097
4.1. ウエスタンブロットプロトコル 段落番号0097
4.1.1. 膜タンパク質 段落番号0102
4.1.2. 形質膜タンパク質 段落番号0108
4.1.3. PBMC細胞のウエスタンブロット 段落番号0113
4.2. レセプターの細胞表面発現 段落番号0116
4.3. 24kdタンパク質結合に対する酵素の効果 段落番号0119
4.3.1. フローサイトメトリー 段落番号0119
4.3.2. MOLT-4/N-グリコシダーゼFでのウエスタンブロット 段落番号0125
4.4. 結合に対する還元条件の効果 段落番号0129
5.最適化した精製 段落番号0133
5.1. 免疫沈降 段落番号0133
5.2. 硫酸アンモニウム画分化 段落番号0145
5.3. 疎水性相互作用クロマトグラフィー 段落番号0152
5.4. アセトン沈殿 段落番号0157
6.配列決定およびクローニング 段落番号0162
6.1. アミノ酸配列 段落番号0162
6.2. DNA配列クローニングおよび配列決定 段落番号0163
【0057】
(1.一般的説明)
本発明の実施は、他に指示がない限り、当該技術分野の範囲内である免疫学、細胞蛍光
定量法(cytofluorimetry)、および分子生物学の従来の技法を用いる。このような技法は
、文献(7)に十分に説明される。
【0058】
当業者は、アッセイ設計および実施の一般的方法および技法を理解しそして熟知してい
る。本発明は、当業者が開示された実験を理解し、そして繰り返すために十分に詳細に本
明細書中に記載される。
【0059】
ウイルスおよびタンパク質の標準的略号が本明細書中で使用される。本明細書中に引用
されるすべての刊行物、特許、および特許出願が、参考として援用される。HCVのエンベ
ロープ1(E1)およびエンベロープ2(E2)は、タンパク質およびそのフラグメントをい
い、そのヌクレオチド配列は公開されている(上で引用したEP-A-0318216およびEP-A-038
8232)。E1およびE2遺伝子のヌクレオチド、ならびにコードされるタンパク質のそれは、
種々のHCV単離物で異なる。したがって、任意のHCV単離物についてのE1およびE2は、それ
ぞれアミノ酸配列192〜383および384〜750に含むものとして、同定される。
【0060】
E1およびE2は、種々の発現系を使用して組換えDNA技法によって産生されている(上で
引用されるSpaeteらおよびChienら)。
【0061】
(2.細胞アッセイ)
(2.1. E2への細胞結合のFACS分析)
実験を、推定HCVレセプターを有するはずである種々の細胞型に結合するHCVタンパク質
の能力を測定する目的で行った。
【0062】
ヒトT細胞リンパ腫、Molt-4(市販されており、そしてアメリカンタイプカルチャーコ
レクションから入手可能)由来の細胞(10/ウェル)を、4℃で200×gにて5分間の遠
心分離によって96 U底マイクロプレート(Costar)中にペレット化した。種々の濃度(1
0μg/ml〜0.001μg/ml)のPBSで希釈したHCVタンパク質(CHOで発現させた組換えE2タン
パク質)の20マイクロリットルを、Molt-4細胞のペレットと混合し、そして4℃で60分間
インキュベートした。結合していないHCVタンパク質を、200×gで5分間、4℃で、PBS中
の2回の遠心分離により除去した。
【0063】
次いで、細胞を、HCVで感染させたか、あるいはコントロールとしてHCV組換えタンパク
質で、または対応する予め免疫した血清で免疫しているかのいずれかのヒト、チンパンジ
ー、ウサギ、またはマウス由来の血清の種々の希釈(1/10〜1/300000)とともに、4℃で
30分間インキュベートした。
【0064】
細胞をPBS中で2回洗浄し、そしてフルオレセイン−イソチオシアネート結合抗血清(
ヒトIgG、またはウサギIgG、またはマウスIgGのいずれかに対する)の適切な希釈ととも
に30分間インキュベートした。
【0065】
次いで、細胞を4℃にてPBS中で洗浄し、100μlのPBSに再懸濁し、そして細胞に結合し
た蛍光を、FCScanフローサイトメーター(Becton & Dickinson)で分析した。前方およ
び側方散乱のドットプロット表示を使用することによって、機械は、生存単一細胞を含む
ように、ならびに細胞破片および細胞の固まりを排除するようにゲートを開ける(gate)。
5000事象の合計を採集し、そしてデータの分析を、Becton & DickinsonからのLysis I
Iソフトウエアプログラムを使用することによって行った。このプログラムは、各細胞試
料のヒストグラムを生成し、そして細胞集団の平均チャンネル蛍光を算出し、これは細胞
に結合した蛍光標識したHCVタンパク質の表面密度に直接関連する。
【0066】
HCVタンパク質とともにまたはHCVタンパク質なしでおよび免疫または予め免疫した血清
とともにインキュベートした細胞の平均蛍光値(平均チャンネル数)を比較した。陽性の
閾値は、HCVタンパク質に対する抗血清およびFITC標識した二次抗体とともにインキュベ
ートした結合したHCVタンパク質を含まない細胞のフローサイトメトリー分析によって各
実験について設定した。代表的な結合実験を図1に示し、これはフローサイトメトリー分
析によって達成される分離を示す。
【0067】
実験はまた、種々の細胞株(例えば、Jurkat、K562、Daudi、EBV-B(エプスタイン・バ
ーウイルスで形質転換されたB細胞株)のようなMOLT-4以外の造血細胞、ならびにHela、
腺ガン、およびHuh 7のような上皮細胞)で行われて、HCVタンパク質を結合し得る細胞
、およびそれによりHCVについての推定レセプターを有する細胞を、上記のプロトコルに
従って同定した。この実験の反復は、本発明の実施に必ずしも必要ではないが、推定レセ
プターの遍在性質を証明するために用いられることが理解される(ほとんどの細胞はいず
れにしても通常利用可能であり、そして実際ATCCから得られた)。この結果を、MOLT-4の
結果とともに図2に示し、そしてこれは、細胞へのE2の特異的結合が広範囲であることを
示し、このことはHCVレセプターが遍在することを示唆する。
【0068】
同様の一連の実験において、精製したRA、精製したRO、臍帯血精製したRA、臍帯血RA
pha stim.、KC3 TCC、およびSAG S9 TCCを、CHO細胞で発現させた組換えHCV E2タン
パク質(E2-CHO)への結合について試験し、結合することを見いだし、この結合が非形質
転換細胞株に対して生じることを確認した。結果を図3に示す。
【0069】
(2.2. 結合に対するE2改変の効果)
MOLT-4細胞への結合に対する、CHO細胞で発現させた組換えHCVタンパク質E2(E2-CHO)
の改変の効果を、還元剤および脱グリコシル化酵素を使用して研究した。
【0070】
(2.2.1. E2還元)
20mM リン酸カリウム、0.1M NaCl、pH 6.0中の25μlのE2-CHO SMC-PC(130μg/ml
)を、1M Tris塩基でpH 8.0に緩衝化し(合計1μl)、次いでBSH(βメルカプトエタ
ノール)を添加して500mMの最終濃度にした;チューブを窒素でフラッシュし、そして反
応は37℃で100分間行った。
【0071】
上記からの試料をRPMI培地で1:20に希釈し、そして上記のようにMOLT-4細胞とのFACS結
合アッセイに使用した。FACSアッセイにおけるBSHの最終濃度は12.5mMであり、そしてこ
れらの条件下で細胞が生存していることを先の予備実験で確認した(50 mM BSHで90%
以上の細胞がなお生存する)。
【0072】
図4の結果は、組換えE2へのMOLT-4細胞の結合が、βメルカプトエタノールでの還元の
際に実質的に減少したことを示し、これはS-S架橋によって維持される正確なE2コンフォ
メーションの必要性を示す。
【0073】
(2.2.2. E2脱グリコシル化)
20mM リン酸カリウム、0.1 M NaCl、pH 6.0中の25μlのE2-CHO SMC-PC(130μg/m
l)を、30μlの0.2M NaHPOに添加し、最終pHを5.5、そして最終SDS濃度を0.01%に
した。次いで、10μlのEndo-Hストックを添加してpHを一定に保ちながら200mU/mlの最終
濃度にし、そして得られた試料を37℃で20時間保った。次いで、試料をRPMIで1:20に希釈
し、そして上記のようにFACS結合アッセイで使用した。
【0074】
図5の結果は、組換えE2へのMOLT-4細胞の結合がEndo-Hでの脱グリコシル化の際に実質
的に減少することを示し、これは結合のためのE2のグリコシル化の必要性を示す。
【0075】
(2.3. モノクローナル抗体産生)
モノクローナル抗体を、標準的な手順を使用して、そしてCHO細胞で産生させた組換えH
CV E2(E2-CHO)でマウスを免疫することによって調製した。いくつかの細胞株を樹立し、
これらは、MOLT-4細胞に結合したE2に結合し得る細胞株と同様にE2-CHOに結合し得、そし
てMOLT-4細胞へのE2-CHOの結合を中和し得る細胞株であった。
【0076】
(3.24kd推定レセプターの調製)
(3.1. MOLT-4細胞からの24kdタンパク質の調製)
24kdタンパク質を、膜精製によっておよび形質膜精製によってMOLT-4細胞から精製した
。後者はタンパク質のより良好な収率を生じた。
【0077】
(3.1.1. 膜精製)
MOLT-4細胞を、ウシ胎児血清(FCS−最終濃度5%)、1mMグルタミン、100μg/mlカナ
マイシン、MEMビタミン(Gibco)、1mMピルビン酸ナトリウム、MEM非必須アミノ酸(Gib
co)、5×10-5M β-メルカプトエタノールを含む増殖培地中25mM Hepesで緩衝化したR
PMI中で、37℃、5%COにて増殖させた。
【0078】
1ml当たり750,000〜1,000,000細胞の密度に達した後、細胞を採取した。
【0079】
細胞を含む増殖培地を、300gで10分間遠心分離して細胞を落としてペレット化した。ペ
レット化した細胞をPBS緩衝液で3回洗浄した(再懸濁および再遠心分離した)。
【0080】
細胞ペレットを、低張溶液に再懸濁して、100×10細胞当たり1mlの低張溶液にした。
【0081】
低張溶液は、Tris(10mM)、NaCl(10mM)、CaCl(0.2mM)、MgCl(1.5mM)、PMSF
(1.0mM)、アプロチニン(2.0μg/ml)、ペプスタチン(0.7μg/ml)、およびロイペプ
チン(0.5μg/ml)を含んだ。
【0082】
細胞を、20分間穏やかな振盪下に4℃にて放置し、次いでPotter手動ホモジナイザーの
25ストロークで破砕した。
【0083】
膜を、100gで7分間、3500gで10分間、および40,000gで60分間の上清の連続的な遠心分
離後に回収した。上記から得られたペレットを、適切な緩衝液に溶解した。
【0084】
40,000gでの膜ペレットの溶解に使用した緩衝液は、PBS緩衝液pH7.4中の1%Triton X
-100、PBS緩衝液pH7.4中の8mM Chaps、およびリン酸ナトリウム緩衝液pH7.4中の4M尿
素を含んでいた。
【0085】
膜可溶化に使用したすべての緩衝液は、低張溶液について上記の濃度でプロテアーゼイ
ンヒビターを含んでおり、5×10細胞当たり200μlの緩衝液の割合で使用した。
【0086】
可溶化した物質を100,000gで60分間遠心分離し、そして上清をBCA法によるタンパク質
含量の評価後にさらなる使用のために保存した。
【0087】
得られた物質を、以下に記載のように分析に供した。
【0088】
(3.1.2. 形質膜精製)
形質膜精製の手順は、Morre’ D.J.ら(8)に基づいた。
【0089】
MOLT-4細胞を、ウシ胎児血清(FCS−最終濃度5%)、1mMグルタミン、100μl/mlカナ
マイシン、MEMビタミン(Gibco)、1mMピルビン酸ナトリウム、MEM非必須アミノ酸(Gib
co)、5×10-5M β-メルカプトエタノールを含む増殖培地中25 mM Hepesで緩衝化し
たRPMI中で、37℃、5%COで増殖させた。
【0090】
細胞を、培養培地からペレット化し、PBSで3回洗浄した。
【0091】
ペレット化した細胞を、以下のプロテアーゼインヒビターを含む0.2mM EDTA、1mM
NaHCOで再懸濁した:各10細胞当たり2mlの緩衝液と細胞との割合でPMSF(1.0mM)、
アプロチニン(2.0μg/ml)、ペプスタチン(0.7μg/ml)、およびロイペプチン(0.5μg
/ml)。
【0092】
再懸濁した細胞を、9500rpmで40秒間S25 N10 Gプローブを使用してPolytronホモジナ
イザーで破砕した。細胞破砕を光学顕微鏡によって確認した。ホモジネートを300gで遠心
分離し、そして得られる上清をさらに23,500gで60分間遠心分離した。得られるペレット
を上記の割合でプロテアーゼインヒビターを含む0.2M リン酸カリウムpH7.2で再懸濁し
た。緩衝液容量は5×10細胞につき1mlであった。
【0093】
膜懸濁液を以下の2相系を通じて分割した:
20%(w/w)T500 Dextran 13.2g
40%(w/w)PEG 3350 6.6g
0.2KP、pH7.2 0.8 ml
膜上清 5.0g
蒸留水 35gまで
試料を4℃に冷却し、そしてチューブを、温度を一定に保ちながら30〜40回逆さにした
。次いで、試料を、4℃で150〜200gで5分間スイングバケットローターで遠心分離した。
上相を取り出し、そしてプロテアーゼインヒビターを含む1mM 重炭酸ナトリウムで5
倍希釈した。膜を、30分間30,000gでの遠心分離によって採集した。
【0094】
ペレットを適切な緩衝液に溶解し、そして100,000gで60分間遠心分離して不溶解物質を
除去した。
【0095】
得られた物質を以下に記載のような分析に供した。
【0096】
(3.2. 過剰発現するMOLT-4細胞)
E2について特徴的結合能力を過剰発現し得るさらなる細胞株を、E2を強く結合するMOLT
-4細胞を選択および再クローニングすることによって調製した。得られた細胞株は、野生
型株よりもE2に対して顕著により大きな結合親和性を示した。
【0097】
(4.レセプターの特徴付け)
(4.1. ウエスタンブロットプロトコル)
以下の実験は、膜および形質膜および末梢血単核細胞(PBMC)から精製したMOLT-4細胞
由来のタンパク質のウエスタンブロットにおける、精製した24kdタンパク質へのE2の結合
を示す。
【0098】
他に指示がない限り、すべてのSDS-PAGE実験を、Laemmliら(9)に従って行い、可溶化
した膜の試料を、非還元条件下およびそれぞれの電気泳動を流す前に煮沸することなく泳
動した。
【0099】
25mM Tris、192mM グリシン、20%メタノールを含む緩衝液中で10ボルト/cmの一定の
電場での電気泳動トランスファー(ウエスタンブロット)後、ブロットしたトランスファ
ー支持体を、0.05% Tween 20および10%粉末スキムミルクを含むPBS緩衝液 pH7.4中
で室温で2時間飽和させた。1×15分および2×5分の、1%粉末スキムミルクを含むPB
S、0.05% Tween 20での洗浄の後に、トランスファー支持体を、0.05% Tween 20、
1%ミルク、0.02%アジ化ナトリウムを含むPBS緩衝液に溶解した1〜2μg/mlの濃度でE
2-CHO組換えタンパク質とともに一晩インキュベートした。ネガティブコントロールトラ
ンスファー支持体(同じ試料でブロットした)を、E2-CHOタンパク質を含まない同じ緩衝
液中で同じ時間インキュベートした。
【0100】
トランスファー支持体に結合したE2-CHO組換えタンパク質を検出するために、これらを
、291A2と命名したハイブリドーマ(その推定レセプターに結合した場合、E2上に露出し
たエピトープを認識するモノクローナル抗体)の培養上清とともに、 PBS、Tween 0.05
%、ミルク1%での1:500希釈で2時間、インキュベートした。
【0101】
この工程の後、トランスファー支持体を、PBS、Tween 0.05%、ミルク 1%溶液で1
×15分および2×5分洗浄した。次いで、トランスファー支持体を、市販の供給源(Phar
Mingen、San Diego、CA、USA)のビオチン結合ヤギ抗マウス免疫グロブリン特異的ポリ
クローナル抗体とともに、上記のPBS/Tween/ミルク溶液で1:2000希釈で1時間インキュベ
ートした。この工程の後、トランスファー支持体を、PBS/Tween/ミルクで1×15分および
2×5分洗浄した。最後に、トランスファー支持体を、Extravidin(登録商標)-Peroxid
ase(Sigma Immunochemicals Co.、St Louis、MO、USA)とともにPBS/Tween/ミルクで
の1:2500希釈で1時間インキュベートした。次いで、トランスファー支持体を、0.05%
Tween 20を含むPBS緩衝液pH7.4で1×15分および4×5分洗浄した。化学発光染色を、E
CLTMウエスタンブロッティング検出試薬(Amersham、UK)を使用して行った。
【0102】
(4.1.1. 膜タンパク質)
膜調製物を上記のように調製した。
【0103】
40,000gの遠心分離から得られる膜ペレットを、以下に記載の緩衝液に溶解し、そして1
00,000gで遠心分離して溶解しない物質を取り出した。ペレットをPBS pH 7.4中1% T
riton X-100で再抽出した。
【0104】
SDS-PAGE(15μg/レーン)およびブロッティングの後、トランスファー支持体を、上記
のようにE2-CHO組換えタンパク質とともにインキュベートした。
【0105】
結果を図6に示す。
レーン 説明
1A 50 mMリン酸ナトリウム pH 7.2中 4M 尿素
2A PBS pH7.4中1% Triton X-100に可溶化したレーン1A試料からのペレット
3A PBS pH7.4中1% Triton X-100
4A PBS pH7.4中1% Triton X-100に可溶化したレーン3A試料からのペレット
5A PBS pH7.4中0.01% Triton X-100
6A PBS pH7.4中1% Triton X-100に可溶化したレーン5A試料からのペレット。
【0106】
1B〜6Bは、レーン1A〜6Aの対応する試料についてのネガティブコントロールである。
【0107】
24kdでのタンパク質バンドは明らかに見える。
【0108】
(4.1.2. 形質膜タンパク質)
形質膜調製物を上記のように調製した。
【0109】
形質膜を、1% Triton X-100を含むPBS pH7.4に可溶化し、そしてLaemmli SDS-PA
GEに供した。トランスファー支持体を、E2-CHO組換えタンパク質とともにインキュベート
した。
【0110】
結果を図7に示す。
レーン 説明
1A 形質膜、10μg 総タンパク質含量
2A 形質膜、5μg 総タンパク質含量。
【0111】
レーン1Bおよび2Bは、レーン1Aおよび2Aの対応する試料についてのネガティブコントロ
ールである。
【0112】
24kdでのタンパク質バンドは明らかに見える。
【0113】
(4.1.3. PBMC細胞のウエスタンブロット)
24kdタンパク質が正常細胞において同定され得るかどうかを評価するために、末梢血単
核細胞の試料を、上記の手順を使用して精製しそして上記のようにウエスタンブロットに
供した。
【0114】
結果を図8に示す。
レーン 説明
1/2 Molt-4膜タンパク質
3 PBMC膜タンパク質(22μg/ml)
4 PBMC膜タンパク質(44μg/ml)。
【0115】
ネガティブコントロールレーンは、「-E2 CHO」を印した。
【0116】
(4.2. レセプターの細胞表面発現)
上記のプロトコルを用いて、種々の細胞タイプを、24kdタンパク質推定HCVレセプター
の存在についてFACscanおよびウエスタンブロットを使用して分析した。
【0117】
結果を以下に示す:
【0118】
【数1】


これらの結果は、24kdタンパク質の種の分布がHCV感染の感受性の分布と一致すること
を示す。
【0119】
(4.3. 24kdタンパク質結合に対する酵素の効果)
(4.3.1. フローサイトメトリー)
E2 CHOエンベロープタンパク質のMolt 4細胞への接着を媒介する細胞表面成分(レセ
プター)の生化学的性質を研究した。V.Choleraeノイラミニダーゼ(これは、α-2,3特
異性を有する)でMolt 4細胞を前処理することによっては、E2 CHO結合は低下しない。
【0120】
プロテアーゼで前処理した細胞がE2 CHOの結合能力を消滅させた一方で、細胞のホス
ホリパーゼ処理は結合に影響しなかったことから、このレセプターのタンパク質性性質が
示され、これにより細胞接着タンパク質がグリコシルホスファチリルイノシトールアンカ
ー連結しなかったことが示唆される。Molt 4細胞上のE2結合部位は、使用したすべての
プロテアーゼに感受性であり、これにはトリプシンのようなセリンプロテアーゼと、パパ
インのようなチオールプロテアーゼとの両方を含まれていた。
【0121】
タンパク質分解処理の結果は、エンベロープタンパク質結合における膜タンパク質の関
与を示し、そして以下のようであった:
【0122】
【数2】


細胞(10ml−1)を、上記の酵素を加えたRPMI 1640/Hepes培地中で37℃で60分間イ
ンキュベートした。細胞を遠心分離し、新鮮な培地中で再懸濁し、そしてE2 CHOタンパ
ク質(3μg/ml)とともにインキュベートした。精製した抗E2 CHOモノクローナル抗体
(1.5μg/ml)を第2工程として使用した。精製したフィコエリトリン標識したウサギ抗
マウス抗体(5μg/ml)を第3の工程試薬として使用した。試料当たり合計5000細胞をFA
CScanフローサイトメーターで評価した。
【0123】
酵素を、FACS分析の間にヨウ化プロピジウム排斥法によって測定したときに細胞生存能
力に影響しない濃度で使用した。
【0124】
蛍光を、対数スケールおよび決定した中間強度に対して任意の単位(チャンネル数)と
して記録した。個々の実験からのデータを、染色していないコントロール試料の蛍光に関
して標準化して、そして値は染色したコントロール試料における蛍光強度のパーセントと
して表す。
【0125】
(4.3.2. MOLT-4/N-グリコシダーゼFでのウエスタンブロット)
ペプチドN-グリコシダーゼF処理を、25mM EDTAおよび酵素(50 U/ml)を加えたリン
酸緩衝液(pH 7.4)中で37℃にて一晩、膜タンパク質(50μg)をインキュベートするこ
とによって行い、そして続いて12%SDS PAGEにロードした。
【0126】
N-グリコシダーゼF酵素(PNGase F)の活性を示すために、コントロールとして、gp
120ポリペプチドを同じ実験で使用した(データを示さず)。
【0127】
結果を図9に示す。
レーン 説明
1 +/ve コントロール
2 処理して煮沸した膜
3 未処理の煮沸した膜
4 処理した膜
5 未処理の膜。
【0128】
これらの結果は、すべてのN-連結グリカンを加水分解するペプチド-N-グリコシダーゼF
でのMOLT 4膜調製物の処理が、E2 CHO結合を消滅させないことを示す。
【0129】
(4.4. 結合に対する還元条件の効果)
上記のように調製したMOLT-4およびCOS-7膜のウエスタンブロットを還元条件および非
還元条件で電気泳動して、トランスファー支持体へのE2-CHOの結合を測定することによっ
て、24kdタンパク質におけるジスルフィド架橋についての必要性またはその逆を確立した。
【0130】
トランスファー支持体を、上記のようにE2-CHO組換えタンパク質とともにインキュベー
トした。
【0131】
結果を図10に示す。
レーン 説明
1A 非還元SDS Laemmli緩衝液中のCOS-7膜
2A 非還元SDS Laemmli緩衝液中のMOLT-4膜
3A 5%β-SHを含むSDS Laemmli緩衝液中のCOS-7膜
4A 5%β-SHを含むSDS Laemmli緩衝液中のMOLT-4膜。
【0132】
1B〜4Bは、対応するレーン1A〜4Aについてのネガティブコントロールである。
【0133】
(5.最適化した精製)
(5.1. 免疫沈降)
(膜タンパク質可溶化)
4億個のMOLT-4細胞(A2A6サブクローン)由来の膜調製物を、CHAPS 7.5 mMおよび以
下のプロテアーゼインヒビターを含む200μlのPBS緩衝液(pH 7.4)で処理した:μl/ml
で、PMSF 35、アプロチニン 2、ペプスタチン 0.7、ロイペプチン 0.5。上記の緩衝
液での処理後、得られる懸濁液を、100,000gで1時間遠心分離し、そして澄明な上清を免
疫沈降実験に供した。BCAタンパク質アッセイ(Pierce、USA)に基づく最終タンパク質濃
度は、2.7 mg/mlであった。
【0134】
(E2組換えエンベロープタンパク質とのインキュベーション)
PBS-CHAPS中の200μlの膜タンパク質溶液(2.7 mg/ml)を、15μlのCHOが産生したE2
(バッチP4)溶液に添加した。E2-P4タンパク質のストック濃度は130μl/mlであり、そし
てタンパク質膜溶液中のその最終濃度は9.75μg/mlであった。
【0135】
混合物を、4℃にて撹拌しながらで一晩保った。
【0136】
(ウサギ抗E2抗血清とのインキュベーション)
得られる溶液を、100μlに2等分し、そしてそれぞれを、E2タンパク質で予め免疫する
前およびした後のウサギ(R#1)由来の抗血清5μlと混合した。抗血清の最終希釈は1:20
であった。インキュベーションを、4℃にて1時間行った。
【0137】
(プロテインAセファロースCL-4Bの添加)
プロテインAセファロースCL-4B樹脂(Pharmacia、Sweden)を、pH 7.4で7.5 mM CH
APSを含むPBSで広範囲に洗浄し、そして30μlの密集したスラリー(マトリクスの受容力
は1mlのスラリー当たり20 mgのヒトIgGである)を、上記の工程から得られる各100μl
の試料に添加した。インキュベーションを、4℃にて1時間、撹拌しながら行った。
【0138】
試料を遠心分離して樹脂を落としてペレットにし、そして上清を取り出し、Laemmli緩
衝液(還元剤を含まない)と混合し、そしてSDS-PAGEのために保存した。樹脂ペレットを
、500μlのPBS-CHAPSで2回洗浄し(4℃にて10分の各洗浄)、次いで、ペレットを5M
尿素を含む50μlのLaemmli緩衝液で処理した。得られる上清をSDS-PAGEに供した。
【0139】
(SDS-PAGEおよびイムノブロット)
上記の工程からの試料、すなわち、プロテインAマトリクス上に吸着しない物質(SN)
ならびに免疫前および免疫後の両方の抗血清からのプロテインAマトリクスから脱着した
物質(ProtA)を含む上清を、非還元緩衝液中で加熱せずにSDS-PAGEゲル上でロードした
。泳動後、ゲルを、20%メタノールTris-グリシン緩衝液中でニトロセルロース紙上にエ
レクトロブロットし、そして上記のように免疫染色に供した。E2タンパク質とのインキュ
ベーションを、PBS 0.05% Tween 20.1%ミルク中1.73μg/mlのE2 SMC-PCを使用して
一晩行った。
【0140】
SDS-PAGE上にロードした試料は以下の通りであった:
A) 免疫前抗血清からの上清(Prot-Aに保持されない物質)、
B) 免疫前抗血清からのProt-A脱着した物質、
C) 免疫後抗血清からの上清、および
D) 免疫後抗血清からのProt-A脱着した物質。
【0141】
これらの試料の3つのセットをゲル上にロードし、1つはゲル上で直接染色し、そして
他の2つは免疫染色し、その1つはE2とインキュベートしそして他方はネガティブコント
ロールとした。
【0142】
ニトロセルローストランスファーした支持体を、1.73μg/mlでE2-CHO SMC-PC組換えタ
ンパク質とともにインキュベートし、次いで291A2ハイブリドーマ培養上清(推定レセプ
ターに結合した場合にE2上に露出したエピトープを認識するモノクローナル抗体を含む)、
ビオチン化ポリクローナル抗マウスIg抗体、およびペルオキシダーゼ標識したExtravid
inTM(Sigma Immunochemicals、USA)とともにインキュベートした。化学発光染色は、
ECL-Luminol(Amersham、GB)、1分の露出で得た。
【0143】
結果を図11に示す。
レーン 説明
1A 分子量標準
2A 空
3A 免疫前ウサギ血清−上清とインキュベートした試料
4A 免疫前ウサギ血清−プロテインA結合とインキュベートした試料
5A 免疫後ウサギ血清−上清とインキュベートした試料
6A 免疫後ウサギ血清−プロテインA結合とインキュベートした試料。
【0144】
ネガティブコントロールは、291A2ハイブリドーマ培養上清とともにインキュベートし、
次いでビオチン化ポリクローナル抗マウスIg抗体およびペルオキシダーゼ標識したスト
レプトアビジンとともにインキュベートしたニトロセルロース膜を用いた。1B〜4Bは、そ
れぞれ3A〜6Aに対応する。
【0145】
(5.2. 硫酸アンモニウム画分化)
膜を、膜調製プロトコルに記載のようにMOLT-4細胞から調製し、そして8mM CHAPSを
含むPBS緩衝液(pH 7.4)で可溶化した。BCAアッセイに基づいて見積もったタンパク質
濃度は、1.8〜2.5 mg/mlの範囲である。
【0146】
可溶化した膜を、硫酸アンモニウム(AS)の25%飽和(すなわち、ASの最終濃度が最初
の飽和溶液の25%である)を得るために十分な容量で、硫酸アンモニウム飽和溶液と混合
した。試料を溶けている氷中に2時間放置し、次いで15800gで30分間遠心分離した。
【0147】
上清をAS飽和溶液と混合して50%の最終飽和にした。試料を溶けている氷中に2時間放
置し、次いでSpin-XTM遠心分離フィルターユニット(Costar、Cambridge、MA、USA)で
、4℃にて15分間濾過した。
【0148】
上記で得た沈殿を適切な緩衝液に溶解し、そしてさらなる処理に供した。
【0149】
ペレットを10M尿素を含むPBS(pH 7.4)で再溶解し、そしてLaemmli SDS-PAGEを行
った。AS画分の容量を、推定レセプターの量が種々の試料に匹敵するようにロードした。
【0150】
トランスファー支持体を、上記のようにE2-CHO組換えタンパク質とインキュベートした。
【0151】
結果を図12に示し、そしてp24の沈殿が33〜50%の範囲の飽和になることが示される。
レーン 説明
1A 最初の膜
2A 20% AS画分
3A 33% AS画分
4A 43% AS画分
5A 50% AS画分
6A 60% AS画分。
【0152】
(5.3. 疎水性相互作用クロマトグラフィー)
MOLT-4細胞由来の1.5 mlの可溶化した膜(タンパク質濃度2.5 mg/ml)を、25%飽和
の硫酸アンモニウムで予め分画し、そしてこの工程からの上清を50%飽和のASに移した。
得られた沈殿を、25%飽和で硫酸アンモニウムを含む200μlのPBSに再懸濁した。不溶解
物質を、15800gで30分間の遠心分離によってペレット化した。得られた上清を、25%飽和
でASを含むPBS(pH 7.2)中で予め平衡化した200μlのフェニル−セファロースマトリク
ス(Pharmacia、Uppsala、Sweden)と、室温で2時間インキュベートした。
【0153】
保持されない物質を、Spin-XTM遠心分離フィルターユニット(Costar、 USA)で濾
過することによって回収した。
【0154】
フェニル−セファロースのマトリクスを、100μlのPBS、25%飽和のASで2回、および3
00mlの同じ緩衝液で1回洗浄した。次いで、マトリクスを、 PBS(pH 7.4)(200μl)
で溶出し、次いで20% MeOHを含むPBS(pH 7.4)で溶出した。最後に、マトリクスを、
40μlの非還元Laemmli緩衝液で処理した。
【0155】
硫酸アンモニウムを含む試料(すなわち、保持されずに洗浄された物質)を、 PBS(p
H 7.4)中の8M尿素に対して透析した。
【0156】
すべての試料は、SDS-PAGE分析およびウエスタンブロットを行った。
【0157】
(5.4. アセトン沈殿)
PBS(pH 7.4)中の8mM CHAPS中で可溶化したMOLT-4細胞由来の50μlの膜を、200μl
のアセトンと混合した。
【0158】
試料を15800gで15分間遠心分離し、そして上清を捨てた。得られた沈殿を、非還元Laem
mli試料緩衝液に溶解し、そしてSDS-PAGEおよびウエスタンブロットを行った。トランス
ファー支持体は、上記のようにE2-CHO組換えタンパク質とともにインキュベートした。
【0159】
組み合わせたHICおよびアセトン沈殿実験の結果を図13に示す。
レーン 説明
1A 最初の膜(16μlの総タンパク質含量)
2A マトリクスに保持されない物質
3A 洗浄
4A PBS(pH 7.4)で溶出した物質
5A 20%メタノールを含むPBS(pH 7.4)で溶出した物質
6A Laemmli緩衝液で溶出した物質
7A Triton1%PBS(pH 7.4)中で可溶化した膜(26μgの総タンパク質)
8A 試料7Aからのアセトン沈殿
1B〜8Bの試料は1A〜8Aの試料に対応する。
【0160】
これらの実験から、硫酸アンモニウム沈殿した物質が、適切な条件で再溶解され得、そ
して疎水性相互作用クロマトグラフィーを受けることを示す。24kd HCV推定レセプター
タンパク質は、フェニルセファロースに結合し、そしてこのマトリクスから回収され得る。
【0161】
膜抽出物は、HCV推定レセプターの結合能力を失うことなくアセトンで沈殿され得る。
【0162】
(6.配列決定およびクローニング)
(6.1. アミノ酸配列)
24kdタンパク質のアミノ酸配列は、クローニングしたDNAから推理するか、または上記
のプロセスの1つにより調製されたタンパク質をミクロ配列決定するかのいずれかによっ
て解明し得る。タンパク質の分子量(および、グリコシル化される場合は小さな範囲にグ
リコシル化されるのみであることの知見)に基づき、このタンパク質が約210〜230アミノ
酸(アミノ酸当たり平均110ダルトンを与える)を有することが期待される。
【0163】
(6.2. DNA配列クローニングおよび配列決定)
24kdタンパク質のDNA配列は、当該分野で公知の多数の技法(例えば、過剰発現してい
る細胞株(上記を参照のこと)から適切にDNAライブラリーを作製するλgt11「ショット
ガン」クローニング)の1つによって決定され得る。DNAのフラグメントは、原核生物ま
たは真核生物の細胞での発現をもたらした。産物は24kdタンパク質に対する抗体を使用し
て、あるいは組換えE2-CHOへの結合によって、スクリーニングされる。
【0164】
一旦同定されると、この24kdタンパク質をコードするDNAは、大量のタンパク質を産生
するために使用され得る。このタンパク質は、そのHCVへの結合の結果として、HCV感染に
ついてのアッセイに、またはHCV感染を処置するための医薬品の製造に有用であることが
示され得る。
【0165】
あるいは、このDNAは、HCV感染のための動物モデルとして役立ち得る、この24kdタンパ
ク質を有するトランスジェニック動物を作製するために使用され得る。
【0166】
本発明が上で例示によって記載され、そして本発明の範囲および精神内の改変が、過度
の実験または発明の工夫の実行の必要なく行われ得ることが理解される。
【0167】
(参考文献)
1.ヨーロッパ特許出願EP-A-0318216
2.ヨーロッパ特許出願EP-A-0388232
3.Chooら PNAS USA (1991) 88 2451-2455
4.Chien, D.Y.ら PNAS USA (1992) 89 10011-10015
5.Spaete, R.R.ら Virology (1992) 188 819-830
6.Gethingら Nature [完全な参考文献を必要とする]
7.「フローサイトメトリー」Methods of Cell Biology, 1990 33巻Academic Pre
ss San Diego
8.Morre’ D.J.ら, Methods Enzymol. (1994) 228, 448-450
9.Laemmliら Nature (1970) 27 680。
【図面の簡単な説明】
【0168】
【図1】図1は、アッセイを記載する概略図であり、ここで、HCVレセプター−結合リガンドは、HCVレセプター標的細胞上のレセプターに結合し、そして最初にウサギ抗HCV抗体を結合し、次いでFACScan分析による細胞分離前に標識した抗ウサギIgG-FITC F(ab’)フラグメントを結合することによって測定される。
【図2−A】図2は、HCVタンパク質との結合から生じる造血細胞(MOLT-4、Jurkat、K562、Daudi、EBV-B)および上皮細胞(Hela、腺ガン、およびHuh 7)へのHCVタンパク質の結合のFACScan分析の結果を示すコンピューター生成ヒストグラムである(斜線で塗られた曲線は非標識コントロール、白抜きの曲線は標識したもの)。プロットは、蛍光強度に対する細胞集団である。
【図2−B】図2は、HCVタンパク質との結合から生じる造血細胞(MOLT-4、Jurkat、K562、Daudi、EBV-B)および上皮細胞(Hela、腺ガン、およびHuh 7)へのHCVタンパク質の結合のFACScan分析の結果を示すコンピューター生成ヒストグラムである(斜線で塗られた曲線は非標識コントロール、白抜きの曲線は標識したもの)。プロットは、蛍光強度に対する細胞集団である。
【図2−C】図2は、HCVタンパク質との結合から生じる造血細胞(MOLT-4、Jurkat、K562、Daudi、EBV-B)および上皮細胞(Hela、腺ガン、およびHuh 7)へのHCVタンパク質の結合のFACScan分析の結果を示すコンピューター生成ヒストグラムである(斜線で塗られた曲線は非標識コントロール、白抜きの曲線は標識したもの)。プロットは、蛍光強度に対する細胞集団である。
【図2−D】図2は、HCVタンパク質との結合から生じる造血細胞(MOLT-4、Jurkat、K562、Daudi、EBV-B)および上皮細胞(Hela、腺ガン、およびHuh 7)へのHCVタンパク質の結合のFACScan分析の結果を示すコンピューター生成ヒストグラムである(斜線で塗られた曲線は非標識コントロール、白抜きの曲線は標識したもの)。プロットは、蛍光強度に対する細胞集団である。
【図2−E】図2は、HCVタンパク質との結合から生じる造血細胞(MOLT-4、Jurkat、K562、Daudi、EBV-B)および上皮細胞(Hela、腺ガン、およびHuh 7)へのHCVタンパク質の結合のFACScan分析の結果を示すコンピューター生成ヒストグラムである(斜線で塗られた曲線は非標識コントロール、白抜きの曲線は標識したもの)。プロットは、蛍光強度に対する細胞集団である。
【図2−F】図2は、HCVタンパク質との結合から生じる造血細胞(MOLT-4、Jurkat、K562、Daudi、EBV-B)および上皮細胞(Hela、腺ガン、およびHuh 7)へのHCVタンパク質の結合のFACScan分析の結果を示すコンピューター生成ヒストグラムである(斜線で塗られた曲線は非標識コントロール、白抜きの曲線は標識したもの)。プロットは、蛍光強度に対する細胞集団である。
【図2−G】図2は、HCVタンパク質との結合から生じる造血細胞(MOLT-4、Jurkat、K562、Daudi、EBV-B)および上皮細胞(Hela、腺ガン、およびHuh 7)へのHCVタンパク質の結合のFACScan分析の結果を示すコンピューター生成ヒストグラムである(斜線で塗られた曲線は非標識コントロール、白抜きの曲線は標識したもの)。プロットは、蛍光強度に対する細胞集団である。
【図2−H】図2は、HCVタンパク質との結合から生じる造血細胞(MOLT-4、Jurkat、K562、Daudi、EBV-B)および上皮細胞(Hela、腺ガン、およびHuh 7)へのHCVタンパク質の結合のFACScan分析の結果を示すコンピューター生成ヒストグラムである(斜線で塗られた曲線は非標識コントロール、白抜きの曲線は標識したもの)。プロットは、蛍光強度に対する細胞集団である。
【図3−A】図3は、CHO細胞で発現される組換えHCV E2タンパク質への結合について試験された精製したRA、精製したRO、臍帯血精製したRA、臍帯血RA pha stim.、KC3 T細胞クローン(TCC)、およびSAG S9 TCCのFACScan分析の結果を示す、コンピューター生成ヒストグラムである(斜線で塗られた曲線は非標識コントロール、白抜きの曲線は標識したもの)。プロットは、蛍光強度に対する細胞集団である。
【図3−B】図3は、CHO細胞で発現される組換えHCV E2タンパク質への結合について試験された精製したRA、精製したRO、臍帯血精製したRA、臍帯血RA pha stim.、KC3 T細胞クローン(TCC)、およびSAG S9 TCCのFACScan分析の結果を示す、コンピューター生成ヒストグラムである(斜線で塗られた曲線は非標識コントロール、白抜きの曲線は標識したもの)。プロットは、蛍光強度に対する細胞集団である。
【図3−C】図3は、CHO細胞で発現される組換えHCV E2タンパク質への結合について試験された精製したRA、精製したRO、臍帯血精製したRA、臍帯血RA pha stim.、KC3 T細胞クローン(TCC)、およびSAG S9 TCCのFACScan分析の結果を示す、コンピューター生成ヒストグラムである(斜線で塗られた曲線は非標識コントロール、白抜きの曲線は標識したもの)。プロットは、蛍光強度に対する細胞集団である。
【図3−D】図3は、CHO細胞で発現される組換えHCV E2タンパク質への結合について試験された精製したRA、精製したRO、臍帯血精製したRA、臍帯血RA pha stim.、KC3 T細胞クローン(TCC)、およびSAG S9 TCCのFACScan分析の結果を示す、コンピューター生成ヒストグラムである(斜線で塗られた曲線は非標識コントロール、白抜きの曲線は標識したもの)。プロットは、蛍光強度に対する細胞集団である。
【図3−E】図3は、CHO細胞で発現される組換えHCV E2タンパク質への結合について試験された精製したRA、精製したRO、臍帯血精製したRA、臍帯血RA pha stim.、KC3 T細胞クローン(TCC)、およびSAG S9 TCCのFACScan分析の結果を示す、コンピューター生成ヒストグラムである(斜線で塗られた曲線は非標識コントロール、白抜きの曲線は標識したもの)。プロットは、蛍光強度に対する細胞集団である。
【図3−F】図3は、CHO細胞で発現される組換えHCV E2タンパク質への結合について試験された精製したRA、精製したRO、臍帯血精製したRA、臍帯血RA pha stim.、KC3 T細胞クローン(TCC)、およびSAG S9 TCCのFACScan分析の結果を示す、コンピューター生成ヒストグラムである(斜線で塗られた曲線は非標識コントロール、白抜きの曲線は標識したもの)。プロットは、蛍光強度に対する細胞集団である。
【図4】図4は、βメルカプトエタノール(BSH)(S-S結合還元剤)での処理ありおよびなしでの、MOLT-4細胞へのE2 CHOの結合のFACScan分析の結果を示す、コンピュータ生成ヒストグラムのセットである(斜線で塗られた曲線は非標識コントロール、白抜きの曲線は標識したもの)。プロットは、蛍光強度に対する細胞集団である。
【図5】図5は、Endo-H(脱グリコシル化酵素)での処理ありおよびなしでの、MOLT-4細胞へのE2 CHOの結合のFACScan分析の結果を示すコンピューター生成ヒストグラムのセットである(斜線で塗られた曲線は非標識コントロール、白抜きの曲線は標識したもの)。プロットは、蛍光強度に対する細胞集団である。
【図6】図6は、MOLT-4細胞から調製されそして異なる緩衝液で可溶化された膜のウエスタンブロットである(レーンの記載については18頁を参照のこと)。
【図7】図7は、MOLT-4細胞からの形質膜のウエスタンブロットである(レーンの記載については19頁を参照のこと)。
【図8】図8は、MOLT-4およびPBMC膜タンパク質のウエスタンブロットである(レーンの記載については19頁を参照のこと)。
【図9】図9は、N-グリコシダーゼFで処理したMOLT 4細胞膜タンパク質のウエスタンブロットである(レーンの記載については22頁を参照のこと)。
【図10】図10は、還元および非還元条件で電気泳動したMOLT-4およびCOS-7膜のウエスタンブロットである(レーンの記載については22頁を参照のこと)。
【図11】図11は、E2-CHO/推定レセプター複合体の免疫沈降を示す実験のウエスタンブロットである(レーンの記載については25頁を参照のこと)。
【図12】図12は、MOLT-4細胞膜からの硫酸アンモニウム画分のウエスタンブロットである(レーンについては26頁を参照のこと)。
【図13】図13は、アセトン沈殿工程での疎水性相互作用クロマトグラフィー実験からの試料のウエスタンブロットである(レーンについては27頁を参照のこと)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
HCVの感染を処置するための方法。

【図1】
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【図2−A】
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【図2−B】
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【図2−C】
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【図2−D】
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【図2−E】
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【図2−F】
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【図2−G】
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【図2−H】
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【図3−A】
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【図3−B】
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【図3−C】
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【図3−D】
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【図3−E】
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【図3−F】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−79613(P2008−79613A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−252724(P2007−252724)
【出願日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【分割の表示】特願平9−511034の分割
【原出願日】平成8年8月30日(1996.8.30)
【出願人】(592243793)カイロン ソチエタ ア レスポンサビリタ リミタータ (107)
【Fターム(参考)】