説明

結晶性炭化水素誘導体

実質的にβ−ラクトサミン塩酸塩が含まれない、α−ラクトサミン塩酸塩;ラクトサミン塩酸塩のアノマー混合物からα−ラクトサミン塩酸塩一水和物を調製する方法であって:0〜100℃の温度において、上記ラクトサミン塩酸塩のアノマー混合物と、水と、少なくとも一つの水混和性有機溶媒とを含有する溶液を調製し、上記溶液を冷却し、α−ラクトサミン塩酸塩一水和物の結晶化をすること、を含む方法;無水α−ラクトサミン塩酸塩を調製する方法;機能性食品サプリメントまたは合成における中間物としての、α−ラクトサミン塩酸塩の使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結晶性α−ラクトサミン塩酸塩一水和物、および、この化合物の製造方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
オリゴ糖類は、それらの多価特性およびそれらの末端カルボニル基によって、いくつもの構造形態を有する。アルドースおよびケトースの両方は、ピラノース、フラノース、および開鎖形態において存在し得る。さらに、オリゴ糖のヘミアセタール/ヘミケタールは、αおよびβの両方のアノマー結合によって特徴づけることができる。上述した構造の多様性は、単独の化学物質としての単糖類おびオリゴ糖の単離を困難にする。炭水化物のアノマー混合物の選択的な結晶化はかなり難しいことがあり、両方のアノマー類はしばしば結晶構造において存在する。これらの困難は、重要な炭水化物の結晶化による精製を度々妨げる。本発明は、アノマーの選択的な結晶化による、ラクトサミン炭水化物の精製のための、手軽なやり方を提供する。
【0003】
ラクトサミン塩酸塩は、多くの自然のオリゴ糖構造内に存在する基幹的二糖類である。本発明者らが知る限り、単独のアノマー形態のα−ラクトサミン塩酸塩は、これまで合成され、特徴づけられたことがない。今まで、α−ラクトサミン塩酸塩のアノマー混合物のみが、クロマトグラフィーまたは沈殿のいずれかを介して調製された(特許文献1、非特許文献1〜5)。ラクトサミン塩酸塩の特徴づけは、製品のアノマー混合物の特質のため、これらの刊行物においては、どちらかと言えばささやかである。そのようなラクトサミン塩酸塩製品は、αおよびβの両方のアノマー類を含む、分離不可能なアノマー混合物として常に記載されてきた。
【0004】
結晶化を介してラクトサミン塩酸塩のアノマー混合物をもたらす本当に最初の手順は、最近記載された(特許文献2)。その結果得られた製品は、1Hおよび13CのNMRによって特徴づけられた。上記製品のアノマー混合物特質は、以下の特徴化学シフトによって示される:H NMR(DO)δ=5.23(d、1H、H−1α、J1、2=3.1Hz);δ=4.75(d、0.4H、H−1β、J1、2=8.43Hz);13C NMR(DO)δ=103.13(C−1´ β)、103.08(C−1´ α)、92.67(C−1 α)、88.99(C−1 β)。
【0005】
オーストリアの特許出願(特許文献3)にも、これもまたラクトサミン塩酸塩のアノマー混合物をもたらす、沈殿/結晶化のやり方が記載されている。上記記載されているプロセスは、H NMR(DO)(δ=5.28(d、0.6H、H−1α、J1、2=3.6Hz);δ=4.81(d、0.4H、H−1β、J1、2=8.6Hz)の2つの異なる化学物質の化学シフトによって証明された、60%のα−ラクトサミン塩酸塩および40%のβ−ラクトサミン塩酸塩を含む、分離不可能な混合物としてのラクトサミン塩酸塩を与えた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】「抗癌剤及びそれを含有する飲食品」、三澤 義知;菊地 数晃;細見 修(焼津水産化学工業株式会社)、日本公開特許公報(2004)、16ページ CODEN:JKXXAF 特開2004−352673号
【特許文献2】「Process for the large-scale preparation of N-acetyllactosamine, lactosamine, lactosamine salts and lactosamine-containing oligosaccharides」 Dekany, Gyula; Agoston, Karoly; Bajza, Istvan; Boejstrup, Marie; Kroeger, Lars. (Glycom Aps, Den.). PCT Int. Appl. (2007), 44pp. CODEN : PIXXD2 WO 2007104311
【特許文献3】「Method for the preparation of aminosugars」 Spreitz, Josef; Sprenger, Friedrich. (Austria). Austrian Pat. Appl. [Pre-Grant] (2007), 23pp. CODEN : ATXXAD AT 503400 Al 20071015
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】「An Exceptionally Simple Chemical Synthesis of O-Glycosylated D-Glucosamine Derivatives by Heyns Rearrangement of the Corresponding O-Glycosyl Fructoses」 Stuetz, Arnold E.; Dekany, Gyula; Eder, Brigitte; Illaszewicz, Carina; Wrodnigg, Tanja M. Institut fuer Organische Chemie, Glycogroup, Technische Universitaet Graz, Graz, Austria. Journal of Carbohydrate Chemistry (2003), 22(5), 253-265.
【非特許文献2】A Unique Chemoenzymic Synthesis of α-Galactosyl Epitope Derivatives Containing Free Amino Groups: Efficient Separation and Further Manipulation」 Fang, Jianwen; Chen, Xi; Zhang, Wei; Wang, Jianqiang; Andreana, Peter R.; Wang, Peng George. Department of Chemistry, Wayne State University, Detroit, MI, USA. Journal of Organic Chemistry (1999), 64(11), 4089-4094.
【非特許文献3】「The Heyns rearrangement revisited : an exceptionally simple two-step chemical synthesis of D-lactosamine from lactulose」 Wrodnigg, Tanja M.; Stutz, Arnold E. Institut fur Organische Chemie der Technischen Universitat, Graz, Austria. Angewandte Chemie, International Edition (1999), 38(6), 827-828.
【非特許文献4】「Chemical and enzymic synthesis of glycoconjugates 3 : synthesis of lactosamine by thermophilic galactosidase catalyzed galactosylation on a multigram scale」 Fang, Jianwen; Xie, Wenhua; Li, Jun; Wang, Peng George. Department Chemistry, Wayne State University, Detroit, MI, USA. Tetrahedron Letters (1998), 39(9), 919-922.
【非特許文献5】「Synthesis of 2-acetamidolactose」 Kuhn, Richard; Kirschenlohr, Werner. Univ. Heidelberg, Germany. Chemische Berichte (1954), 87 1547-52
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、単独の化学物質としての、X線結晶学およびH NMR分光法によって立証された、結晶α−ラクトサミン塩酸塩一水和物を提供する。さらに、本発明は、排他的にα−ラクトサミン塩酸塩一水和物を製造する、ラクトサミン塩酸塩用のアノマー選択結晶化方法を提供する。最もパワフルな分析手順を用いて、上記結晶製品中にβ−ラクトサミン塩酸塩は検出されなかった。本発明は、いかなる他の公知の精製方法によっても達成することができなかった、高純度の製品を提供するラクトサミン塩酸塩の大規模製造において、大きな商業的な価値を有する。
【0009】
従って、本発明の第一態様は、実質的にβ−ラクトサミン塩酸塩が含まれない、式2に示すα−ラクトサミン塩酸塩を提供する。
【0010】
【化1】

【0011】
本発明者等が知る限り、この製品は以前に調製され、特徴付けられたことがない。好ましくは、上記α−ラクトサミン塩酸塩は5重量%未満のβ−ラクトサミン塩酸塩を含み、例えば2重量%未満、好ましくは1重量%未満、例えば0.5重量%、そして、最も好ましくは0.1重量%未満である。
【0012】
本発明者等は、ラクトサミン塩酸塩のアノマー混合物から、α−形態を選択的に結晶化し、X線結晶学の手法によって、上記結晶製品がα−ラクトサミン塩酸塩一水和物であることの同一性を確認した。加えて、本発明者等は、無水α−ラクトサミン塩酸塩を調製した。
【0013】
0〜1重量%の範囲内の水分を含有する無水α−ラクトサミン塩酸塩は、好ましくは真空下で、および/または、乾燥剤の存在下で、α−ラクトサミン塩酸塩一水和物を加熱することなどの、この技術において公知の数々の方法を介して、結晶の水を除去することにより、α−ラクトサミン塩酸塩一水和物から作ることができる。
【0014】
本発明の第二態様は、ラクトサミン塩酸塩のアノマー混合物からα−ラクトサミン塩酸塩一水和物を調製する方法であって、
0〜100℃の温度において、上記ラクトサミン塩酸塩のアノマー混合物と、水と、少なくとも一つの水混和性有機溶媒とを含有する溶液を調製することと;
上記溶液を冷却し、α−ラクトサミン塩酸塩一水和物の結晶化をすることと、を含む方法を提供する。
【0015】
ふさわしくは、上記溶液が、40〜100℃の温度において、上記ラクトサミン塩酸塩のアノマー混合物を水に溶解し、その後、上記少なくとも一つの水混和性有機溶媒を添加することによって調製される。
【0016】
ふさわしくは、上記ラクトサミン塩酸塩のアノマー混合物を水に溶解する工程と;上記溶液を、上記水溶液の体積に比べてアセトンの体積が10倍など、多量のアセトンに添加して、白い粉を沈殿させる工程と、の予備的な工程をさらに上記方法が含んでもよく、上記白い粉がその後、アノマー混合物と、水と、少なくとも一つの水混和性有機溶媒とを含有する溶液の調製において、上記アノマー混合物として用いられてもよい。上記予備的な工程は、この水/アセトン混合物に不溶のアノマー混合物のアセトン付加物を形成し、他の不純物を溶液内に残し、白い粉として沈殿する。
【0017】
ふさわしくは、上記少なくとも一つの水混和性有機溶媒が、アセトン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、ジオキサン、脂肪族アルコール類、および、1、2−ジメトキシエタンから成る群から選択される。ふさわしくは、アセトンが上記少なくとも一つの水混和性有機溶媒として用いられ、上記溶媒混合物におけるアセトンの体積は、上記溶媒混合物における水の体積の2〜3倍程度までなど、上記アセトン付加物を作り出すのに用いられるアセトンの体積よりも遥かに少ない。
【0018】
ふさわしくは、上記少なくとも一つの水混和性有機溶媒は、用いられる水の体積よりも大きい体積において用いられる。ふさわしくは、上記水混和性溶媒は、用いられる水の量の少なくとも2.5または3倍など、用いられる水の体積の少なくとも2倍において存在する。
【0019】
好ましくは、上記少なくとも一つの水混和性有機溶媒は、少なくとも一つの脂肪族アルコールROHであり、Rが、メチル、エチル、イソプロピル、イソブチル、および、n−ブチルから選択される。好ましくは、上記少なくとも一つの脂肪族アルコールは、イソプロピルアルコールまたはイソブチルアルコールである。最も好ましくは、イソプロピルアルコールが用いられる。
【0020】
好ましくは、上記溶液は、結晶化するために、−5〜30℃の間まで冷却される。好ましくは、上記溶液は、不純物を捕捉し得る大きな結晶の形成を妨げるために、冷却中撹拌されてもよい。これは、撹拌なしでのとても大きな結晶の形成は、器から結晶を回収する際に取り扱い上の問題や結晶化器の部品への損傷を引き起こし得るため、α−ラクトサミン塩酸塩を大規模に結晶化する際に特に好ましい。ガラスの棒で上記結晶化器の側面をひっかく、または、上記結晶化器に種晶を供給するなど、当業者に知られる結晶化を誘発する方法も採用することができる。より良い結晶純度およびより迅速な結晶化を提供するため、結晶化を誘発する種晶を用いることが特に好ましく、用いられる種晶は、本発明の方法によって作られた、α−ラクトサミン塩酸塩一水和物の結晶が好ましい。
【0021】
始動するラクトサミン塩酸塩のアノマー混合物の純度は、α−アノマーの5%〜100%の間で変化することができる。
【0022】
本発明の第三態様は、ラクトサミンからα−ラクトサミン塩酸塩一水和物を調製する方法であって、
40〜100℃において、塩酸水溶液にラクトサミンを溶解することと;
上記溶液を冷却し、α−ラクトサミン塩酸塩一水和物の結晶化をすることと、を含む方法を提供する。
【0023】
ふさわしくは、HCl水溶液の上記濃度は、0.1%から38%まで変化してもよい。
【0024】
好ましくは、上記HCl水溶液は、少なくとも一つの水混和性有機溶媒を含む。ふさわしくは、アセトン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、ジオキサン、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、または、1、2−ジメトキシエタンなどの有機溶媒が上記HCl溶液に含まれていてもよい。好ましくは、上記少なくとも一つの水混和性有機溶媒は、少なくとも一つの脂肪族アルコールROHであり、Rが、メチル、エチル、イソプロピル、イソブチル、および、n−ブチルから選択される。より好ましくは、上記少なくとも一つの脂肪族アルコールは、イソプロピルアルコールまたはイソブチルアルコールである。最も好ましくは、上記少なくとも一つの脂肪族アルコールは、イソプロピルアルコールである。
【0025】
ふさわしくは、上記溶液は、結晶化するために、−5〜30℃の間まで冷却される。好ましくは、上記溶液は、不純物を捕捉し得る大きな結晶の形成を妨げるために、冷却中撹拌されてもよい。上述したように、これは、大規模に結晶化する際に特に好ましい。ガラスの棒で上記結晶化器の側面をひっかく、または、上記結晶化器に種晶を供給するなど、当業者に知られる結晶化を誘発する方法も採用することができる。より良い結晶純度およびより迅速な結晶化を提供するため、結晶化を誘発する種晶を用いることが特に好ましく、用いられる種晶は、本発明の方法によって作られた、α−ラクトサミン塩酸塩一水和物の結晶が好ましい。
【0026】
本発明の第四態様は、0〜1重量%の水分を含有する無水α−ラクトサミン塩酸塩を調製する方法であって、結晶の実質的に全ての水を熱的に除去するために、α−ラクトサミン塩酸塩一水和物を加熱することを含む方法を提供する。
【0027】
ふさわしくは、上記加熱温度は、20℃〜172℃まで変化してもよい。
【0028】
好ましくは、上記方法は、上記一水和物の加熱が真空下で行われることを含む。ふさわしくは、上記方法は、結晶の水の除去を支援するために、乾燥剤の使用を含む。
【0029】
さらに、本発明は、食品または飲料における、または、機能性食品サプリメントとしての、実質的にβ−ラクトサミン塩酸塩が含まれない、α−ラクトサミン塩酸塩の使用を含む。
【0030】
さらに、本発明は、特に人間の乳オリゴ糖類の合成における、有機合成のための中間物/前駆体としての、実質的にβ−ラクトサミン塩酸塩が含まれない、α−ラクトサミン塩酸塩の使用を含む。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】図1は、α−ラクトサミン塩酸塩一水和物のX線構造を示す。
【図2】図2は、α−ラクトサミン塩酸塩一水和物のX線回折の研究から得られたデータを示す。
【図3】図3は、上記試料の調製直後(3A)、および、1日後(3B)の、DO中のα−ラクトサミン塩酸塩一水和物のH NMRスペクトルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
全般的な手順
ラクトサミン塩酸塩のアノマー混合物の粗製品は、文献(特許文献1〜2、および、非特許文献1〜5)に記載された方法を用いることにより、調製することができる。異なる調製方法は、異なる純度の混合物の粗製品を提供する。しかしながら、上記異なる方法によって得られた上記反応混合物内に存在する全ての予期された不純物、および、副生物は、40〜100℃の温度において水性アルコール類に溶解することがわかっている。−5および30℃の間で、上述した設定のように溶媒または溶媒類の混合物中で混合物の粗製品の溶液を撹拌することは、α−ラクトサミン塩酸塩の結晶化を開始させる。ろ過、EtOHまたはイソプロパノールでの結晶の洗浄、その後の室温またはそれ以上の温度における乾燥工程は、融点174℃の高純度α−ラクトサミン塩酸塩一水和物を提供する。
【0033】
また、ラクトサミン塩酸塩の粗製品は、40〜100℃の水に溶解され、その後、上記少なくとも一つの水混和性有機溶媒が添加されてもよい。α−ラクトサミン塩酸塩の結晶化は、冷却および撹拌すると開始する。
【実施例】
【0034】
手順1:
文献(特許文献2)に開示された手順に従って得られた1.5kgのラクトサミン塩酸塩のアノマー混合物の粗製品は、暖かい水(1.5L、50℃)に溶解された。上記混合物に、30分かけてエタノール(4L)が添加された。その後、上記混合物は0℃まで冷却され、8時間撹拌された。ろ過、および、エタノール(200mL)での洗浄によって、白い結晶が集められた。収率:純アルファアノマー1.3kg。
【0035】
手順2:
文献(特許文献2)に開示された手順に従って得られた100gのラクトサミン塩酸塩のアノマー混合物の粗製品は、暖かい水(100mL、50℃)に溶解された。上記混合物に、10分かけてi−プロパノール(250mL)が添加された。その後、上記混合物は0℃まで冷却され、8時間撹拌された。ろ過、および、i−プロパノール(20mL)での洗浄によって、白い結晶が集められた。収率:純アルファアノマー85g。
【0036】
手順3:
文献(特許文献2)に開示された手順に従って得られた100gのラクトサミン塩酸塩のアノマー混合物の粗製品は、暖かい水(100mL、50℃)に溶解された。上記溶液はアセトン(1L)へ添加され、白い沈殿物を得た。この粉は、上記混合物に10分かけて添加された水(90mL)およびi−プロパノール(220mL)中に再溶解された。その後、上記混合物は0℃まで冷却され、8時間撹拌された。ろ過、および、i−プロパノール(20mL)での洗浄によって、白い結晶が集められた。収率:純アルファアノマー82g。
【0037】
手順4:
文献(特許文献2)に開示された手順に従って得られた100gのラクトサミン塩酸塩のアノマー混合物の粗製品は、暖かい水(100mL、50℃)に溶解された。上記溶液はアセトン(1L)へ添加され、白い沈殿物を得た。この粉は、上記混合物に10分かけて添加された水(90mL)およびエタノール(300mL)中に再溶解された。その後、上記混合物は0℃まで冷却され、8時間撹拌された。ろ過、および、エタノール(20mL)での洗浄によって、白い結晶が集められた。収率:純アルファアノマー78g。
【0038】
手順5:
文献(特許文献2)に開示された手順に従って得られた100gのラクトサミン塩酸塩のアノマー混合物の粗製品は、暖かい水(100mL、50℃)に溶解された。上記溶液はアセトン(1L)へ添加され、白い沈殿物を得た。この粉は、上記混合物に10分かけて添加された水(90mL)、および、エタノールおよびi−プロパノールの混合物(8%i−プロパノール、220mL)中に再溶解された。その後、上記混合物は0℃まで冷却され、8時間撹拌された。ろ過、および、混合溶媒(20mL)での洗浄によって、白い結晶が集められた。収率:純アルファアノマー80g。
【0039】
手順6:
文献(特許文献2)に開示された手順に従って得られた100gのラクトサミン塩酸塩のアノマー混合物の粗製品は、暖かい水(100mL、50℃)に溶解された。上記混合物へ、10分かけて、エタノールおよびi−プロパノール(8%i−プロパノール、250mL)の混合物が添加された。その後、上記混合物は0℃まで冷却され、8時間撹拌された。ろ過、および、混合溶媒(20mL)での洗浄によって、白い結晶が集められた。収率:純アルファアノマー88g。
【0040】
手順7:
上述した手順に従って得られた100gのアルファラクトサミン塩酸塩は、55℃の温度において、高真空(1〜10mbar)下で脱水され、95gの脱水純アルファアノマーを得た。
【0041】
手順8:
上述した手順に従って得られた100gのアルファラクトサミン塩酸塩は、75℃の温度において、高真空(1〜10mbar)下で脱水され、95gの脱水純アルファアノマーを得た。
【0042】
手順9:
上述した手順に従って得られた100gのアルファラクトサミン塩酸塩は、40℃の温度において、高真空(10〜15mbar)下で脱水され、95gの脱水純アルファアノマーを得た。
【0043】
手順10:
上述した手順に従って得られた100gのアルファラクトサミン塩酸塩は、75℃の温度において、高真空(10〜15mbar)下で脱水され、95gの脱水純アルファアノマーを得た。
【0044】
手順11:
上述した手順に従って得られた100gのアルファラクトサミン塩酸塩は、95℃の温度において、高真空(20〜25mbar)下で脱水され、94gの脱水純アルファアノマーを得た。
【0045】
手順12:
上述した手順に従って得られた100gのアルファラクトサミン塩酸塩は、120℃の温度において、高真空(50〜100mbar)下で脱水され、94gの脱水純アルファアノマーを得た。
【0046】
X線結晶学
単結晶X線回折の研究のために、本発明に従ってラクトサミン塩酸塩試料が作られた。今まで、ラクトサミン塩酸塩の結晶構造は出版されていない。しかしながら、N−アセチルラクトサミンのX線構造は公知である。
【0047】
応用研究
i、単結晶成長
ii、単結晶X線回折データ収集
iii、上記構造の溶液
iv、構造および水素結合ネットワークの分析
v、粉の回折データの計算
vi、粉のデータ収集
【0048】
X線回折測定に適した単結晶は、ラクトサミン塩酸塩の水溶液上にメタノールを層にすることにより、成長させることができた。これは、ラクトサミン塩酸塩の飽和水溶液を調製し、上記溶液を濾過して残留するラクトサミン塩酸塩固形物を除去し、その後、少量の水を添加した後に慎重にメタノールを添加することによって行われた。
【0049】
比較的小さい無色のプリズム結晶が上記測定のために選択され、パーフルオロ化パラフィンオイルを用いて、ループ上へ固定された。構造データは信頼性があり、上記結果は科学的な出版および/または特許のために許容できるものであった。
【0050】
X線構造決定
1226Cl11の無色のプリズム結晶(0.08×0.05×0.02mm)、M=395.79、単斜晶系、a=4.7931(8)Å、b=13.5508(19)Å、c=13.2816(19)Å、β=93.97(1)°、V=860.6(2)Å、Z=2、空間群:P2、ρcalc=1.527gcm−3。データは、110(1)Kにおいて、Bruker−GADDSマルチワイヤー比例回折計で、Cu Kα放射λ=1.54184Å、θmax=63.3°で集められ、6882の測定がされ、2059の独立の反射のうちの1793の反射がI>2σ(I)に独特であった。生データはFRAMBOソフトウェアを用いて評価され、上記構造はSIR−92ソフトウェアを用いて解かれ、SHELX−97プログラムを用いてF上で精製され(refined)、出版物はWINGX−97スイート、R(F)=0.061およびwR(F)=0.156、2509反射用、254パラメータ、10制限(restraints)で調製された。剰余電子密度:0.33/−0.33e/Å。他の水素原子は電子密度差の分布図(difference electron density map)で見られた一方で、炭素原子における水素原子は、幾何学的位置へ配置された。これらの水素原子の、各酸素または窒素までの距離は、制約された(constrained)。水素原子のコーディネートは、短い範囲において上記ドナー原子へ精製することを許容された。アミノ基上の水素の位置は、ライディングモデル(riding model)を用いて発見され、窒素原子へのそれらの距離は固定された。広い水素結合ネットワークのため、これらの水素原子の一部のための、代わりの位置が可能である。図1および図2に、フルデータ、および、それから決定された構造を示す。
【0051】
1H−NMR構造決定
10mgの純α−ラクトサミン塩酸塩が、700μLのDOに溶解され、その後すぐに1H−NMRスペクトルが記録された。第二の1H−NMRスペクトルが、1日後に記録され、その時までに、クリーンな物質は既にアノマー化された。第一のスペクトル(図3、上)では、5.26ppmにおいてH−1が、4.29ppmにおいてH−1´が見られた。第二のスペクトル(図3、下)では、上記アルファアノマーの隣に、上記ベータが既に現れている。4.78ppmにおいてH−1−ベータが、2.85ppmにおいてH−2−ベータが見られる。この実験は、開始物質は、1日以内に室温においてアノマー化される、クリーンなアノマーであることを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
実質的にβ−ラクトサミン塩酸塩が含まれない、式2に示すα−ラクトサミン塩酸塩。
【化1】

【請求項2】
5重量%未満のβ−ラクトサミン塩酸塩を含む、請求項1に記載のα−ラクトサミン塩酸塩。
【請求項3】
1重量%未満のβ−ラクトサミン塩酸塩を含む、請求項1に記載のα−ラクトサミン塩酸塩。
【請求項4】
0.1重量%未満のβ−ラクトサミン塩酸塩を含む、請求項1に記載のα−ラクトサミン塩酸塩。
【請求項5】
式1に示す、結晶性一水和物の形態における、請求項1から請求項4までのいずれかの請求項に記載のα−ラクトサミン塩酸塩。
【化2】

【請求項6】
0〜1重量%の水分を含有する、請求項1から請求項4までのいずれかの請求項に記載のα−ラクトサミン塩酸塩。
【請求項7】
実質的にβ−ラクトサミン塩酸塩が含まれない、式2に示すα−ラクトサミン塩酸塩を含む組成物。
【請求項8】
ラクトサミン塩酸塩のアノマー混合物からα−ラクトサミン塩酸塩一水和物を調製する方法であって、
0〜100℃の温度において、前記ラクトサミン塩酸塩のアノマー混合物と、水と、少なくとも一つの水混和性有機溶媒とを含有する溶液を調製することと;
前記溶液を冷却し、α−ラクトサミン塩酸塩一水和物の結晶化をすることと、を含む方法。
【請求項9】
前記溶液が、40〜100℃の温度において、前記ラクトサミン塩酸塩のアノマー混合物を水に溶解し、その後、前記少なくとも一つの水混和性有機溶媒を添加することによって調製されることを特徴とする、請求項8に記載のα−ラクトサミン塩酸塩一水和物を調製する方法。
【請求項10】
前記ラクトサミン塩酸塩のアノマー混合物を水に溶解する工程と;
前記溶液をアセトンに添加して、白い粉を沈殿させる工程と、の予備的な工程をさらに含み、
前記白い粉が、請求項8または請求項9の前記溶液の調製において、前記アノマー混合物として用いられることを特徴とする、請求項8または請求項9に記載の方法。
【請求項11】
ラクトサミンからα−ラクトサミン塩酸塩一水和物を調製する方法であって、
40〜100℃において、HCl水溶液におけるラクトサミンの溶液を調製することと;
前記溶液を冷却し、α−ラクトサミン塩酸塩一水和物の結晶化をすることと、を含む方法。
【請求項12】
前記溶液が、少なくとも一つの水混和性有機溶媒をさらに含むことを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記少なくとも一つの水混和性有機溶媒が、アセトン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、ジオキサン、脂肪族アルコール類、および、1、2−ジメトキシエタンから成る群から選択されることを特徴とする、請求項8から請求項12のいずれかの請求項に記載の方法。
【請求項14】
前記少なくとも一つの水混和性有機溶媒が、少なくとも一つの脂肪族アルコールROHであり、
Rが、メチル、エチル、イソプロピル、イソブチル、および、n−ブチルから選択されることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
Rが、イソプロピルであることを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記溶液は、結晶化するために、−5〜30℃の間まで冷却されることを特徴とする、請求項8から請求項15までのいずれかの請求項に記載の方法。
【請求項17】
前記溶液は、冷却中撹拌されることを特徴とする、請求項8から請求項16までのいずれかの請求項に記載の方法。
【請求項18】
結晶化の誘発を支援するため、α−ラクトサミン塩酸塩一水和物の種晶が冷却中に供給されることを特徴とする、請求項8から請求項17までのいずれかの請求項に記載の方法。
【請求項19】
0〜1重量%の水分を含有する無水α−ラクトサミン塩酸塩を調製する方法であって、
結晶の実質的に全ての水を熱的に除去するために、α−ラクトサミン塩酸塩一水和物を加熱することを含む方法。
【請求項20】
20℃〜172℃の温度まで加熱することを含む、請求項19に記載の無水α−ラクトサミン塩酸塩を調製する方法。
【請求項21】
前記加熱が、真空下で行われることを特徴とする、請求項19または請求項20に記載の無水α−ラクトサミン塩酸塩を調製する方法。
【請求項22】
前記加熱が、乾燥剤の存在下で行われることを特徴とする、請求項19、請求項20、または請求項21に記載の無水α−ラクトサミン塩酸塩を調製する方法。
【請求項23】
食品または飲料における、または、機能性食品サプリメントとしての、実質的にβ−ラクトサミン塩酸塩が含まれない、α−ラクトサミン塩酸塩の使用。
【請求項24】
有機合成のための中間物/前駆体としての、実質的にβ−ラクトサミン塩酸塩が含まれない、α−ラクトサミン塩酸塩の使用。
【請求項25】
人間の乳オリゴ糖類の合成における、請求項24に記載のα−ラクトサミン塩酸塩の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2011−528023(P2011−528023A)
【公表日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−517916(P2011−517916)
【出願日】平成21年7月15日(2009.7.15)
【国際出願番号】PCT/EP2009/059059
【国際公開番号】WO2010/007090
【国際公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【出願人】(510124401)
【氏名又は名称原語表記】Glycom A/S
【住所又は居所原語表記】DTU, Building 201, DK−2800 Kgs. Lyngby Denmark
【Fターム(参考)】