説明

結束用ナイロンバンド及びその結束方法

【課題】配線工事や配管工事全体を通して結束作業の効率を上げることが可能になる結束用ナイロンバンド及びその結束方法を提供する。
【解決手段】基端部に連結孔20を有し、該基端部から片面に係止溝11を設けたバンド片10が延長され、該バンド片10を連結孔20に挿入して連結孔20内部の係止片21に係止溝11を係止する結束用ナイロンバンドを設ける。バンド片10の先端部分を屈曲して屈曲部12を形成する。該屈曲部12の先端を上方に向けてバンド片の側面全体がJ字状を成すように形成する。屈曲部12の先端部分にバンド片10の方向を向く触角部13を形成する。該触角部13が被固定部材Pの裏側から側面にかけて触れるように形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線や配管をラックの子桁等に固定する際に使用する結束用ナイロンバンド及びその結束方法に係り、特に、ラックの表面に網状物が敷設されている場合でもナイロンバンドの結束が容易に行うことができる結束用ナイロンバンド及びその結束方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
配線工事や配管工事において、ケーブルラックやパイプ支持具等にケーブルやパイプを固定する際に、ナイロンバンドが使用されている。このナイロンバンドは、針金等の金属製の結束具に比べて耐錆効果に優れ、結束強度も高く、しかも一端部に形成された連結孔に他端部を挿入するだけの操作で連結できることから、多くの作業に使用されている。
【0003】
例えば、ケーブルラックにケーブルを配線する工事では、ケーブル側からケーブルラックの子桁にナイロンバンドを絡めてケーブルを固定する作業が行われる。この際、合成樹脂製のナイロンバンドの先端をケーブル側から子桁の裏に回し、再びナイロンバンド先端をケーブル側に戻してから連結する作業となる。この合成樹脂製のナイロンバンドは、可撓性に優れる反面、通常は直線状を成しているので、このナイロンバンドを子桁の裏に巻き付ける作業が困難であった。そのため、直線状のナイロンバンドを子桁の裏に回す作業を容易にするために、特許文献1のような固定具を使用することがある。
【0004】
特許文献1の固定具は、ナイロンバンドを予め結束し易い屈曲状態で一体形成し、あるいは後から曲げた状態で取り付けるように構成したものである。このように、合成樹脂製のナイロンバンドを予め曲げた状態で取り付けておき、この固定具を子桁の裏側に配置することで、子桁に結束する作業が容易になるものである。
【0005】
ところが、このような固定具等を使用できない場合に、直線的なナイロンバンドを子桁の裏側に巻き付ける作業が困難になる。そこで従来では、特許文献2や特許文献3の如き丸み形状を付けた合成樹脂製の結束バンドが提案されている。
【0006】
特許文献2の結束バンドは、特にケーブルの分岐部分に使用するもので、結束バンドの形状を予め分岐部分の形状に合わせて屈曲形成したものである。また、特許文献3の結束バンドは、結束バンドのヘッドに形成してある連結孔に予め結束バンドの先端を挿入した状態で熱を加え、合成樹脂製の結束バンド全体の形状に丸みを付けたものである。
【0007】
ところが、これら従来の丸みを付けた結束バンドは、もともとの直線状を成したナイロンバンドと比較して、使用可能な作業が限定される不都合がある。すなわち、特許文献2の結束バンドはケーブルの分岐部分専用に形成されているため、分岐部分への巻き付け作業が容易になっても、子桁等の部材にケーブルを固定するような一般的な結束作業をすることは困難である。
【0008】
一方、特許文献3のような丸みを帯びた結束バンドは、パイプのような径の太い部材に巻き付け易くなっているが、ケーブルのように細い部材や隙間を通して子桁に絡めて結束する作業などには向いていない。特に、ケーブルの配線作業は、何本ものケーブルを隣接した状態でそれぞれ結束する作業になるため、ケーブル間の狭い隙間から子桁に絡ませた結束バンドを再び狭い隙間からケーブル側に戻す作業が不可欠になる。このような作業には、特許文献3のような全体に丸みを帯びた結束バンドは、従来の直線状のナイロンバンドに比べて操作性が悪くなる。
【0009】
そのため、ケーブルと子桁との結束作業を容易にする手段として、特許文献4に記載の結束バンド取付具が提案されている。この取付具は、直線状のナイロンバンドの先端に装着してこの先端部の形状を半月状に強制的に曲げることで、隙間を通す作業を容易にしようとしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第3281578号公報
【特許文献2】特許第4179072号公報
【特許文献3】特開2005‐324857号公報
【特許文献4】特開2005‐312281号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところが、特許文献4では、ナイロンバンドの先端に取付具を装着して隙間に挿入し、その後、ナイロンバンドの先端から取付具を外して結束する作業になるので、隙間への挿入作業を容易にすることは可能でも、ナイロンバンドによるケーブル固定作業全体が極めて面倒な作業になってしまう。しかも、ナイロンバンドの先端部が半月状に屈曲されているので、隙間を通した後に、再びケーブル側に戻す作業が容易になるのは、この半月状の先端部を操作する余裕のある隙間に限られる。すなわち、半月状の先端部を隙間に挿入することは容易であっても、その後、子桁の裏から再びケーブル側に戻す際に、ナイロンバンドに固定した半月状の取付具ごと手前に戻す作業になる。そのため、この取付具の向きを変える余裕のない隙間では、結束ケーブルをケーブル側に再び戻すことができなくなるおそれがある。
【0012】
また、ケーブルラックでは、多数のケーブルを密接した状態で次々と固定する作業になるので、ナイロンバンドを通す隙間は自然と狭くならざるを得ない。したがって、特許文献3や特許文献4のナイロンバンドでは、ナイロンバンドを通す隙間に余裕のある初期状態など、限られた条件で使用できるとしても、配線工事全体を通して結束作業の効率を上げることは極めて困難であった。
【0013】
更に、人目に触れる場所に設置されたケーブルラックなどでは、網目状の遮蔽板でケーブルを覆うこともある。この場合の遮蔽板は、ケーブルラックとケーブルとの間に介されるので、ケーブルを子桁に固定するには、この遮蔽板の網目にナイロンバンドを通して行われる。したがって、網目状の遮蔽板を介したケーブルの配線工事では、特許文献3や特許文献4の如きナイロンバンドによってケーブルを結束することは不可能になる。
【0014】
そこで本発明は、上述の課題を解消するために創出されたもので、配線工事や配管工事全体を通して結束作業の効率を上げることが可能になり、たとえ、網目状の遮蔽板が装着された状態でも極めて容易に結束することができる結束用ナイロンバンド及びその結束方法の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上述の目的を達成すべく本発明における第1の手段は、基端部に連結孔20を有し、該基端部から係止溝11を設けたバンド片10が延長され、該バンド片10を連結孔20に挿入して連結孔20内部の係止片21に係止溝11を係止する結束用ナイロンバンドにおいて、連結孔20が上部にあるときに下部にあるバンド片10の先端部分を屈曲して屈曲部12を形成し、該屈曲部12の先端を上方に向けてバンド片の側面全体がJ字状を成すように形成されたことにある。
【0016】
第2の手段は、前記屈曲部12の先端部分に前記バンド片10の方向を向く触角部13が形成され、該触角部13が被固定部材Pの裏側から側面にかけて触れるように形成されたものである。
【0017】
第3の手段の前記触角部13は、該触角部13の先端と前記バンド片10の内側との間隔を、前記被固定部材の幅と同一又は僅かに狭くなるように形成されている。
【0018】
第4の手段は、基端部に連結孔20を有し、該基端部から係止溝11を設けたバンド片10が延長され、該バンド片10を連結孔20に挿入して連結孔20内部の係止片21に係止溝11を係止する結束用ナイロンバンドにおいて、連結孔20が上部にあるときに、下部にあるバンド片10の先端部分を屈曲して屈曲部12を形成し、該屈曲部12の先端を上方に向けてバンド片の側面全体がJ字状を成すように形成された結束用ナイロンバンドの使用方法であって、
バンド片10の先端部分の最先端が連結孔20方向を向くように更に屈曲されて形成した触角部13を被固定部材Pの裏側に触れるように配し、該触角部13を被固定部材Pの裏側から被固定部材Pの側面に沿って接触させながら被固定部材Pに近接する隙間に移動し、該隙間からケーブルQ又はパイプがわに戻した触角部13の最先端を連結孔20に挿入して連結することを課題解消のための手段とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明のナイロンバンドによると、バンド片10の最先端が上方を向いてバンド片10の側面全体がJ字状を成すように形成したことで、ケーブル間の狭い隙間から子桁等に絡ませたナイロンバンドを再び狭い隙間からケーブル側に戻す作業を極めて容易に行うことができる。しかも、特許文献4のようにナイロンバンドの先端に取付具を着脱する作業は必要ないので、配線工事や配管工事全体を通して結束作業の効率を上げることができる。
【0020】
また、多数のケーブルを密接した状態で次々と固定する作業などのように、ナイロンバンドを通す隙間が自然と狭くならざるを得ない状況でも、作業効率を下げずに結束することができる。この結果、特許文献3や特許文献4のナイロンバンドのように、使用可能な状況として余裕のある隙間に限られるといった従来の課題を解消することができた。
【0021】
更に、本発明の触角部13により、被固定部材Pの裏側の位置を確認しながら絡めることができるので、作業性に優れ、僅かな隙間を利用してこれまで実現できなかった効率的な結束作業が行える。
【0022】
しかも、触角部13の先端と前記バンド片10の内側との間隔を、前記被固定部材の幅と同一又は僅かに狭くなるように形成することで、被固定部材とケーブルとの間に網目状の遮蔽板が装着された状態でも、被固定部材の側面に近接する位置の網目を検索して触角部13を通すことができる。この結果、従来の結束具では困難であった遮蔽板を介したケーブル配線工事にも使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施例を示す側面図である。
【図2】本発明の一実施例を示す正面図である。
【図3】本発明の触角部の動きを示す側面図である。
【図4】(イ)乃至(ハ)は本発明の操作状態を示す側面図である。
【図5】(イ)乃至(ホ)は本発明の実施例を示す要部側面図である。
【図6】本発明の使用状態を示す斜視図である。
【図7】本発明の他の使用状態を示す斜視図である。
【図8】本発明の他の使用状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明によると、配線工事や配管工事全体を通して結束作業の効率を上げることが可能になり、たとえ、網目状の遮蔽板が装着された状態でも極めて容易に結束することができるなどといった当初の目的を達成した。
【実施例】
【0025】
以下、本発明の実施例を説明する。本発明は、一般的に使用されている結束用のナイロンバンドを改良したものである。すなわち、基端部に連結孔20を有し、該基端部から片面に係止溝11を設けたバンド片10が延長され、該バンド片10を連結孔20に挿入し、連結孔20内部の係止片21に係止溝11を係止して連結するナイロンバンドを使用する(図1、図2、図3参照)。
【0026】
便宜上、連結孔20を上部にしてバンド片10を下部にした状態で説明すると、バンド片10の先端部分を屈曲して屈曲部12を形成する。このとき、屈曲部12の先端が上方を向いてバンド片10の側面全体がJ字状を成すように形成されている(図1参照)。また、図示例では、バンド片10の係止溝11が内側になるように形成しているが、この係止溝11は、連結孔20内部の係止片21の位置に対応して形成されるものである。
【0027】
バンド片10は、屈曲部12の先端部が鉛直上方を向いた形状でも十分使用可能であるが、特に、バンド片10の屈曲部12に触角部13を形成することで、後述する結束方法が可能になる。
【0028】
この触角部13は、先端部分からバンド片10の最先端がバンド片10の方向を向くように形成されたもので、被固定部材Pの裏側から側面にかけて触れ易くする部材である。このとき、触角部13の先端とバンド片10の内側との間隔を、子桁等の被固定部材Pの幅と同一又は僅かに狭くなるように形成することで、更に触角部13の操作性を高め、被固定部材PとケーブルQとの間に遮蔽板Rを介した工事でも、被固定部材Pに近接した遮蔽板Rの網目を探索して挿通させることができる。
【0029】
尚、本発明で側面全体がJ字状を成すとは、直線状のバンド片10に屈曲部12を形成した状態を示している。更に、本発明では、図5(イ)乃至(ホ)に示す各形状を全て含むものとする。すなわち、同図(イ)は、円弧状の屈曲部12に直線状の触角部13を設けた形状である。また、同図(ロ)は、屈曲部12と触角部13とが連続して釣り針形状を成し、同図(ハ)は、屈曲部12と触角部13とが円形を成しているものである。更に、同図(ニ)や(ホ)のように、角部を有する屈曲部12と直線状の触角部13とを組み合わせた形状である。本発明では、このような各種の形状を全て含めて、バンド片10の側面全体がJ字状を成すと称するものである。
【0030】
次に、図3及び図4にて本発明結束方法を説明する。この結束方法では、特に、網目状の遮蔽板Rを被固定部材Pに配し、結束作業が最も困難な状態で説明する。始めに、図3に示す如く、屈曲部12に形成した触角部13を遮蔽板Rの網目R1を通して被固定部材Pの裏側に触れるように配置する(同図の実線部分参照)。この状態で、バンド片10を上方に引き上げると、屈曲部12が変形して広がり、触角部13が被固定部材Pの裏側に沿って移動して行く(同図の一点鎖線部分参照)。そして、この触角部13が被固定部材Pの裏側から被固定部材Pの側面に沿って移動した後は、図4(イ)の如く、バンド片10の位置を垂直にする。次に、同図(ロ)の如く、この状態からバンド片10を上方に引き上げると、屈曲部12が変形して広がり、触角部13に開こうとする力が働く。この結果、触角部13が被固定部材Pに最も近い網目R1まで移動し、同図(ハ)の如く、この網目R1からケーブルQがわに簡単に戻すことができる。このように戻された触角部13の先端を連結孔20に挿入して緊締すると結束作業が終了する。
【0031】
図6乃至図8は、本発明ナイロンバンドの使用状態の例を示している。すなわち、図6は、被固定部材PであるケーブルラックとケーブルQとの間に網目状の遮蔽板Rを配した使用状態である。また、図7は、壁面に装着されたラックの子桁を被固定部材Pとして本発明ナイロンバンドを巻き付けた状態を示している。更に、図8は、本発明ナイロンバンドを使用してケーブルラックに遮蔽板Rを固定した状態を示している。この作業の場合、ケーブルラックの下面側から本発明ナイロンバンドを取り付けることができる。このように、本発明ナイロンバンドは、あらゆる場面で各種の部材を結束し、固定することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明の実施例において、本発明ナイロンバンドの材質や各構成は図示例に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲で自由な変更が可能である。例えば、結束用のナイロンバンドが他の合成樹脂材の結束バンドに変更されたり、金属材等を芯材として内包した結束バンドに変更されたりしても、本発明の屈曲部12や触角部13を利用することが可能である。
【符号の説明】
【0033】
P 被固定部材
Q ケーブル
R 遮蔽板
R1 網目
10 バンド片
11 係止溝
12 屈曲部
13 触角部
20 連結孔
21 係止片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基端部に連結孔を有し、該基端部から係止溝を設けたバンド片が延長され、該バンド片を連結孔に挿入して連結孔内部の係止片に係止溝を係止する結束用ナイロンバンドにおいて、連結孔が上部にあるときに、下部にあるバンド片の先端部分を屈曲して屈曲部を形成し、該屈曲部の先端を上方に向けてバンド片の側面全体がJ字状を成すように形成されたことを特徴とする結束用ナイロンバンド。
【請求項2】
前記屈曲部の先端部分に前記バンド片の方向を向く触角部が形成され、該触角部が被固定部材の裏側から側面にかけて触れるように形成された請求項1記載の結束用ナイロンバンド。
【請求項3】
前記触角部の先端と前記バンド片の内側との間隔を、前記被固定部材の幅と同一又は僅かに狭くなるように形成された請求項2記載の結束用ナイロンバンド。
【請求項4】
基端部に連結孔を有し、該基端部から係止溝を設けたバンド片が延長され、該バンド片を連結孔に挿入して連結孔内部の係止片に係止溝を係止する結束用ナイロンバンドにおいて、連結孔が上部にあるときに、下部にあるバンド片の先端部分を屈曲して屈曲部を形成し、該屈曲部の先端を上方に向けてバンド片の側面全体がJ字状を成すように形成された結束用ナイロンバンドの使用方法であって、
バンド片の先端部分の最先端が連結孔方向を向くように更に屈曲されて形成した触角部を被固定部材の裏側に触れるように配し、該触角部を被固定部材の裏側から被固定部材の側面に沿って接触させながら被固定部材に近接する隙間に移動し、該隙間からケーブル又はパイプがわに戻した触角部の最先端を連結孔に挿入して連結することを特徴とするナイロンバンドの結束方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−259603(P2011−259603A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−131633(P2010−131633)
【出願日】平成22年6月9日(2010.6.9)
【出願人】(000136686)株式会社ブレスト工業研究所 (74)
【Fターム(参考)】