説明

結核についての併用療法

本発明は、多剤耐性変種及び潜在性結核を含む、結核を治療する方法に関する。より特には、本発明は、哺乳動物における結核を治療する方法であって、結核の治療において有用な少なくとも2つの薬剤と組み合わせて、有効量の式(I)の化合物、(S)−N−[[3−[3−フルオロ−4−(4−チオモルホリニル)フェニル]−2−オキソ−5−オキサゾリジニル]メチル]アセトアミド、又はその薬学的に許容される塩を、その必要がある該哺乳動物へ投与することを含む方法に関する。本発明はまた、治療有効量の式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物、(ii)治療有効量の結核の治療において有用な少なくとも1つの薬剤、及び(iii)1つ又はそれ以上の薬学的に許容される担体又はビヒクルを含む薬学的組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多剤耐性変種及び潜在性結核を含む、結核を治療する方法に関する。より特には、本発明は、哺乳動物における結核を治療する方法であって、結核の治療において有用な少なくとも2つの薬剤と組み合わせて、有効量の式(I)の化合物、(S)−N−[[3−[3−フルオロ−4−(4−チオモルホリニル)フェニル]−2−オキソ−5−オキサゾリジニル]メチル]アセトアミド、又はその薬学的に許容される塩を、その必要がある該哺乳動物へ投与することを含む方法に関する。本発明はまた、i)治療有効量の式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩、(ii)治療有効量の結核の治療において有用な少なくとも1つの薬剤、及び(iii)1つ又はそれ以上の薬学的に許容される担体又はビヒクルを含む薬学的組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
結核(TB)は、毎年世界中で約160万人を死に至らしめ、このため、それは、HIVに次いで成人の第2の主要な死亡原因である。多剤耐性(MDR)TBのおよそ500,000の新たな症例が毎年生じ、広範囲薬剤耐性(XDR−TB)TBの最近の出現は、治療不可能なTBの新たな流行の前兆である(非特許文献1及び2を参照のこと)。特に非増殖性存続生物に対して、強力な抗結核活性を有する新規の薬物が、TBについての治療期間を短縮しそれによって直接観察下療法の世界的規模の実施を容易にするために必要とされている(非特許文献3を参照のこと)。
【0003】
現在、薬剤感受性結核の治療は、少なくとも次の薬物、イソニアジド、リファンピン、及びピラジナミドの組み合わせを投与することからなる。有効な治療のためには、上述の薬物が、8週間の治療初期段階に患者へ提供され、この間に、薬物は、マイコバクテリウム・ツベルクローシス(Mycobacterium tuberculosis)の急速に増殖する集団を死滅させ同時に薬剤耐性の出現を防止するために、組み合わせて使用される。治療初期段階に、18週間の継続段階又は殺菌段階が続き、この間に、2つ又はそれ以上の殺菌剤(例えば、イソニアジド及びリファンピン)が、マイコバクテリウム・ツベルクローシスの断続的に分裂する集団(非増殖性存続生物)を死滅させるために提供される。
【0004】
上述の薬物の組み合わせは、4〜6ヶ月で感受性マイコバクテリウム・ツベルクローシス感染症に対する治療を協力して提供する一方、このような併用療法は、特に薬剤耐性株を保有している患者において、必ずしも成功するとは限らない。また、6ヶ月からなる長い治療期間は、不快な副作用をもたらし得る。さらに、比較的長いコースの治療のコンプライアンスは、一般的に不十分である。このようなノンコンプライアンスは、薬剤耐性を発生させる治療不成功をもたらし得る。
【0005】
オキサゾリジノン類は、開始複合体の形成を妨げることによって翻訳を遮断するタンパク質合成阻害剤のクラスを構成する(機構については、非特許文献4を参照のこと)。唯一の市販のオキサゾリジノンである、リネゾリド(LZD、Zyvox(登録商標))は、グラム陽性菌に対して活性を有し、皮膚・皮膚組織合併感染症及び院内感染性肺炎における使用について現在認可されている(Zyvox(登録商標)添付文書))。しかし、それはまた、マイコバクテリウム・ツベルクローシスを含む、多くのマイコバクテリア種に対して活性であり、これについてのそのMICは、0.125〜1μg/mLの範囲にあり、MIC50は0.5μg/mLであり、MIC90は1μg/mLである(非特許文献5、6及び7を参照のこと)。結果として、表示された適応症以外に、MDR−及びXDR−TBの治療抵抗性の症例を治療するために、LZDが使用されてきた。いくつかの症例シリーズは、LZDがこのような症例における痰培養変換の成功に寄与し得ることを示唆しているが、TB患者におけるその個々の活性及び併用レジメンへのその正確な寄与は不明のままである。これらの研究はまた、LZD投与期間が、長期投与で生じ得る血液及び神経毒性によって制限され得ることを示している(非特許文献2、8及び9を参照のこと)。従って、マイコバクテリウム・ツベルクローシスに対してより強力なインビボ活性を有しかつ長期投与に伴う毒性の危険性がより低い新規のオキサゾリジノン類が望ましい。
【0006】
マイコバクテリウム・ツベルクローシスに対してより強力な活性を有するオキサゾリジノン類が、以前に記載されている(非特許文献10及び11を参照のこと)。式(I)の化合物、(S)−N−[[3−[3−フルオロ−4−(4−チオモルホリニル)フェニル]−2−オキソ−5−オキサゾリジニル]メチル]アセトアミドの抗結核活性は、1996年に初めて記載された(非特許文献10を参照のこと)。マウスモデルにおけるその後の実験によって、薬物を両方とも100mg/kgで投与した場合、式(I)の化合物はLZDよりも活性が高いことが分かったが、このLZD用量の臨床的意義は確立されず、式(I)の化合物及びLZDの活性は、より低い用量で比較した場合、明確には相違しなかった(非特許文献6を参照のこと)。さらに、式(I)の化合物は、急性(初期)感染症モデルにおいて、リファンピン(RIF)と組み合わせた場合、適度な活性を有するようであったが、式(I)の化合物は、イソニアジド(INH)と組み合わせた場合、追加の活性は有さなかった(非特許文献6)。最も重要なことには、式(I)の化合物の活性は、単独又はRIF若しくはINHとの組み合わせに関わらず、治療の最初の4週間にわたってしか評価されず、これは、非増殖性存続生物に対する化合物又は薬剤の組み合わせの活性を評価し、次に、治癒(即ち、治療の完了後の再発の予防)のために必要な治療期間を最終的に決定するには不十分である。
【0007】
従って、結核を予防する、治療する及び/又は減退させるため、及び/又は、多剤耐性結核の脅威を排除するため、又は治療期間を短縮するために使用され得るより新しいレジメンを開発する差し迫った必要性が存在する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Dorman, S. E. et al., Nat.Med 13:295−298 2007
【非特許文献2】Zignol, M. et al., J Infect.Dis 194:479−485, 2006
【非特許文献3】O'Brien, R. J. et al., Am.J.Respir. Crit Care Med. 163:1055−1058, 2001
【非特許文献4】K. Leach et al., Molecular Cell, 26:4, 460−462, 2007
【非特許文献5】Alcala, L., et al., Antimicrob Agents Chemother 47:416−417, 2003
【非特許文献6】Cynamon, M. H., et al., Antimicrob Agents Chemother 43:1189−1191, 1999
【非特許文献7】Fattorini, L., et al., Antimicrob Agents Chemother 47:360−362, 2003
【非特許文献8】Fortun, J., et al., 56:180−185, 2005
【非特許文献9】Park, I. N., et al., Antimicrob Chemother 58:701−704, 2006
【非特許文献10】Barbachyn, M. R. et al., J Med Chem. 39:680−685, 1996
【非特許文献11】Sood, R., et al., Antimicrob Agents Chemother 49:4351−4353, 2005
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、哺乳動物における結核を治療する方法であって、結核の治療において有用な少なくとも2つの薬剤と組み合わせて、有効量の式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩:
【化1】

をその必要がある該哺乳動物へ投与することを含む方法に関する。
【0010】
一実施態様において、少なくとも2つの薬剤は、イソニアジド、リファンピン、リファペンチン、リファブチン、ピラジナミド、エタンブトール、ストレプトマイシン、カナマイシン、アミカシン、モキシフロキサシン、ガチフロキサシン、レボフロキサシン、オフロキサシン、シプロフロキサシン、カプレオマイシン、エチオナミド、サイクロセリン、パラアミノサリチル酸、チアセタゾン、クラリスロマイシン、アモキシシリン−クラブラン酸、イミペネム、メロペネム、バイオマイシン、テリジドン、クロファジミン、TMC207、PA−824、OPC−7683、LL−3858及びSQ−109からなる群より選択される。
【0011】
別の実施態様において、前記少なくとも2つの薬剤のうちの1つは、イソニアジド、リファンピン、リファペンチン、リファブチン、ピラジナミド、モキシフロキサシン、ガチフロキサシン、レボフロキサシン、オフロキサシン、シプロフロキサシン、クロファジミン及びエタンブトールからなる群より選択される。
【0012】
さらに別の実施態様において、前記少なくとも2つの薬剤のうちの1つは、ピラジナミドである。
【0013】
さらに別の実施態様において、前記少なくとも2つの薬剤のうちの1つは、リファンピンである。
【0014】
さらに別の実施態様において、前記少なくとも2つの薬剤のうちの1つは、リファペンチンである。
【0015】
さらに別の実施態様において、前記少なくとも2つの薬剤のうちの1つは、PA−824である。
【0016】
さらに別の実施態様において、前記少なくとも2つの薬剤のうちの1つは、OPC−67683である。
【0017】
さらに別の実施態様において、前記少なくとも2つの薬剤のうちの1つは、TMC−207である。
【0018】
さらに別の実施態様において、前記少なくとも2つの薬剤のうちの1つは、モキシフロキサシン、ガチフロキサシン、レボフロキサシン、及びオフロキサシンからなる群より選択される。
【0019】
さらに別の実施態様において、前記少なくとも2つの薬剤のうちの1つは、モキシフロキサシンである。
【0020】
特定の実施態様において、前記少なくとも2つの薬剤は、ピラジナミド及びリファンピンである。
【0021】
さらに別の特定の実施態様において、前記少なくとも2つの薬剤は、ピラジナミド、リファンピン及びイソニアジドである。
【0022】
さらに別の特定の実施態様において、前記少なくとも2つの薬剤は、ピラジナミド及びリファペンチンである。
【0023】
さらに別の特定の実施態様において、前記少なくとも2つの薬剤は、ピラジナミド、リファペンチン、及びイソニアジドである。
【0024】
特定の実施態様において、前記少なくとも2つの薬剤は、ピラジナミド及びモキシフロキサシンである。
【0025】
さらに別の特定の実施態様において、前記少なくとも2つの薬剤は、ピラジナミド、モキシフロキサシン、及びリファンピンである。
【0026】
さらに別の特定の実施態様において、前記少なくとも2つの薬剤は、ピラジナミド、モキシフロキサシン、及びリファペンチンである。
【0027】
さらに別の特定の実施態様において、前記少なくとも2つの薬剤は、PA−824及びピラジナミドである。
【0028】
さらに別の特定の実施態様において、前記少なくとも2つの薬剤は、PA−824、ピラジナミド、並びにストレプトマイシン、カナマイシン、アミカシン及びカプレオマイシンからなる群より選択される薬剤である。
【0029】
さらに別の特定の実施態様において、前記少なくとも2つの薬剤は、PA−824及びモキシフロキサシンである。
【0030】
さらに別の特定の実施態様において、前記少なくとも2つの薬剤は、PA−824、モキシフロキサシン、並びにストレプトマイシン、カナマイシン、アミカシン及びカプレオマイシンからなる群より選択される薬剤である。
【0031】
さらに別の特定の実施態様において、前記少なくとも2つの薬剤は、OPC−67683及びピラジナミドである。
【0032】
さらに別の特定の実施態様において、前記少なくとも2つの薬剤は、OPC−67683、ピラジナミド、並びにストレプトマイシン、カナマイシン、アミカシン及びカプレオマイシンからなる群より選択される薬剤である。
【0033】
さらに別の特定の実施態様において、前記少なくとも2つの薬剤は、OPC−67683及びモキシフロキサシンである。
【0034】
さらに別の特定の実施態様において、前記少なくとも2つの薬剤は、OPC−67683、モキシフロキサシン、並びにストレプトマイシン、カナマイシン、アミカシン及びカプレオマイシンからなる群より選択される薬剤である。
【0035】
さらに別の特定の実施態様において、前記少なくとも2つの薬剤は、TMC−207及びピラジナミドである。
【0036】
さらに別の特定の実施態様において、前記少なくとも2つの薬剤は、TMC−207、ピラジナミド及びモキシフロキサシン又はイソニアジドである。
【0037】
さらに別の実施態様において、前記結核は、活動性結核又は潜在性結核を含む。
【0038】
さらに別の実施態様において、前記活動性結核は、薬剤感受性結核、単剤耐性結核、多剤耐性結核(MDR)又は広範囲薬剤耐性結核(XDR)を含む。
【0039】
さらに別の実施態様において、本発明の方法は、治療の完了時に、薬剤感受性結核、単剤耐性結核、多剤耐性結核、及び広範囲薬剤耐性結核(XDR)を完全に根絶している。
【0040】
さらに別の実施態様において、前記結核は、マイコバクテリウム・ツベルクローシス、マイコバクテリウム・ボビス(Mycobacterium bovis)又は他の関連のマイコバクテリア種からなる群より選択されるマイコバクテリウム感染症によって引き起こされる。
【0041】
さらに別の実施態様において、本発明の方法は、治療の完了後のマイコバクテリウム感染症の再発を予防する。
【0042】
さらに別の実施態様において、式(I)の化合物及びその薬学的に許容される塩は、経口投与される。
【0043】
さらに別の実施態様において、前記少なくとも2つの薬剤は、各々、経口投与される。
【0044】
さらに別の実施態様において、前記少なくとも2つの薬剤は、一つの組成物で一緒に投与される。
【0045】
さらに別の実施態様において、前記少なくとも2つの薬剤は、別々に投与される。
【0046】
さらに別の実施態様において、前記少なくとも2つの薬剤は一緒に投与され、結核の治療に有用な別の薬剤が別々に投与される。
【0047】
さらに別の実施態様において、式(I)の化合物及びその薬学的に許容される塩は、1日1回(QD)又は1日2回(BID)投与される。
【0048】
さらに別の実施態様において、式(I)の化合物及びその薬学的に許容される塩は、週1回、週2回、週3回又は一日おきに投与される。
【0049】
一実施態様において、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩は、約10mg〜約2000mg投与される。
【0050】
さらに別の実施態様において、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩は、約250mg〜約1000mg投与される。
【0051】
さらに別の実施態様において、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩は、約600mg〜約1000mg投与される。
【0052】
さらに別の実施態様において、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩は、約25mg〜約1000mg投与される。
【0053】
さらに別の実施態様において、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩は、約50mg〜約500mg投与される。
【0054】
さらに別の実施態様において、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩は、約100mg〜約500mg投与される。
【0055】
本発明はまた、哺乳動物が治療初期段階を受けた後に哺乳動物における結核を治療する方法であって、結核の治療において有用な少なくとも1つの薬剤と組み合わせて、有効量の式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩:
【化2】

をその必要がある該哺乳動物へ投与する工程を含む方法に関する。
【0056】
一実施態様において、前記少なくとも1つの薬剤は、リファンピン、リファペンチン、リファブチン、ピラジナミド、エタンブトール、ストレプトマイシン、カナマイシン、アミカシン、モキシフロキサシン、ガチフロキサシン、レボフロキサシン、オフロキサシン、シプロフロキサシン、カプレオマイシン、エチオナミド、サイクロセリン、パラアミノサリチル酸、チアセタゾン、クラリスロマイシン、アモキシシリン−クラブラン酸、イミペネム、メロペネム、クロファジミン、バイオマイシン、テリジドン、TMC207、PA−824、OPC−7683、LL−3858及びSQ−109からなる群より選択される。
【0057】
さらに別の実施態様において、前記少なくとも1つの薬剤は、リファンピン、リファペンチン、リファブチン、ピラジナミド、モキシフロキサシン、ガチフロキサシン、レボフロキサシン、オフロキサシン、及びエタンブトールからなる群より選択される。
【0058】
特定の実施態様において、前記少なくとも1つの薬剤は、ピラジナミドである。
【0059】
特定の実施態様において、前記少なくとも1つの薬剤は、リファンピンである。
【0060】
特定の実施態様において、前記少なくとも1つの薬剤は、リファペンチンである。
【0061】
特定の実施態様において、前記少なくとも1つの薬剤は、PA−824である。
【0062】
特定の実施態様において、前記少なくとも1つの薬剤は、OPC−7683である。
【0063】
特定の実施態様において、前記少なくとも1つの薬剤は、TMC−207である。
【0064】
特定の実施態様において、前記少なくとも1つの薬剤は、モキシフロキサシン、ガチフロキサシン、レボフロキサシン、及びオフロキサシンからなる群より選択される。
【0065】
特定の実施態様において、前記少なくとも1つの薬剤は、モキシフロキサシンである。
【0066】
さらに別の実施態様において、前記結核は、活動性結核又は潜在性結核を含む。
【0067】
さらに別の実施態様において、前記活動性結核は、薬剤感受性結核、単剤耐性結核、多剤耐性結核(MDR)又は広範囲薬剤耐性結核(XDR)を含む。
【0068】
さらに別の実施態様において、本発明の方法は、治療の完了時に、薬剤感受性結核、単剤耐性結核、多剤耐性結核、及び広範囲薬剤耐性結核(XDR)を完全に根絶している。
【0069】
さらに別の実施態様において、前記結核は、マイコバクテリウム・ツベルクローシス、マイコバクテリウム・ボビス又は他の関連のマイコバクテリア種からなる群より選択されるマイコバクテリウム感染症によって引き起こされる。
【0070】
さらに別の実施態様において、本発明の方法は、治療の完了後のマイコバクテリウム感染症の再発を予防する。
【0071】
さらに別の実施態様において、式(I)の化合物及びその薬学的に許容される塩は、経口投与される。
【0072】
さらに別の実施態様において、前記少なくとも1つの薬剤は、経口投与される。
【0073】
さらに別の実施態様において、式(I)の化合物及びその薬学的に許容される塩並びに前記少なくとも1つの薬剤は、一つの組成物で一緒に投与される。
【0074】
さらに別の実施態様において、式(I)の化合物及びその薬学的に許容される塩並びに前記少なくとも1つの薬剤は、別々に投与される。
【0075】
さらに別の実施態様において、式(I)の化合物及びその薬学的に許容される塩は、1日1回(QD)又は1日2回(BID)投与される。
【0076】
さらに別の実施態様において、式(I)の化合物及びその薬学的に許容される塩は、週1回、週2回、週3回又は一日おきに投与される。
【0077】
一実施態様において、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩は、約10mg〜約2000mg投与される。
【0078】
さらに別の実施態様において、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩は、約25mg〜約1000mg投与される。
【0079】
さらに別の実施態様において、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩は、約50mg〜約500mg投与される。
【0080】
さらに別の実施態様において、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩は、約100mg〜約500mg投与される。
【0081】
本発明はまた、
(i)治療有効量の式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩:
【化3】

(ii)治療有効量の結核の治療において有用な少なくとも1つの薬剤、及び
(iii)1つ又はそれ以上の薬学的に許容される担体又はビヒクル
を含む薬学的組成物に関する。
【0082】
さらに別の実施態様において、前記少なくとも1つの薬剤は、イソニアジド、リファンピン、リファペンチン、リファブチン、ピラジナミド、エタンブトール、ストレプトマイシン、カナマイシン、アミカシン、モキシフロキサシン、ガチフロキサシン、レボフロキサシン、オフロキサシン、シプロフロキサシン、カプレオマイシン、エチオナミド、サイクロセリン、パラアミノサリチル酸、チアセタゾン、クラリスロマイシン、クロファジミン、アモキシシリン−クラブラン酸、イミペネム、メロペネム、バイオマイシン、テリジドン、クロファジミン、TMC207、PA−824、OPC−7683、LL−3858及びSQ−109からなる群より選択される。
【0083】
さらに別の実施態様において、前記少なくとも1つの薬剤は、イソニアジド、リファンピン、リファペンチン、リファブチン、ピラジナミド、モキシフロキサシン、ガチフロキサシン、レボフロキサシン、オフロキサシン、及びエタンブトールからなる群より選択される。
【0084】
特定の実施態様において、前記少なくとも1つの薬剤は、ピラジナミドである。
【0085】
特定の実施態様において、前記少なくとも1つの薬剤は、リファンピンである。
【0086】
特定の実施態様において、前記少なくとも1つの薬剤は、リファペンチンである。
【0087】
特定の実施態様において、前記少なくとも1つの薬剤は、イソニアジドである。
【0088】
特定の実施態様において、前記少なくとも1つの薬剤は、PA−824である。
【0089】
特定の実施態様において、前記少なくとも1つの薬剤は、OPC−7683である。
【0090】
特定の実施態様において、前記少なくとも1つの薬剤は、TMC−207である。
【0091】
特定の実施態様において、前記少なくとも1つの薬剤は、モキシフロキサシン、ガチフロキサシン、レボフロキサシン、及びオフロキサシンからなる群より選択される
【0092】
特定の実施態様において、前記少なくとも1つの薬剤は、モキシフロキサシンである。
【0093】
さらに別の実施態様において、薬学的組成物は、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩を約10mg〜約2000mg含む。
【0094】
さらに別の実施態様において、薬学的組成物は、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩を約250mg〜約1000mg含む。
【0095】
さらに別の実施態様において、薬学的組成物は、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩を約600mg〜約1000mg含む。
【0096】
さらに別の実施態様において、薬学的組成物は、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩を約25mg〜約1000mg含む。
【0097】
さらに別の実施態様において、薬学的組成物は、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩を約50mg〜約500mg含む。
【0098】
さらに、以下の組み合わせを含む、任意の製剤が、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩を250mg〜1000mg、又は式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩を600mg〜1000mg含有し得る。
【0099】
さらに別の実施態様において、薬学的組成物は、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩を約100mg〜約500mg含む。
【0100】
さらに別の実施態様において、薬学的組成物は、(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩約100mg〜約500mg、及びリファンピン約600mgを含む。
【0101】
さらに別の実施態様において、薬学的組成物は、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩約100mg〜約500mg、及びイソニアジド約300mgを含む。
【0102】
さらに別の実施態様において、薬学的組成物は、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩約100mg〜約500mg、及びイソニアジド約300mg、及びリファンピン約600mgを含む。
【0103】
さらに別の実施態様において、薬学的組成物は、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩約100mg〜約500mg、イソニアジド約300mg、リファンピン約600mg、及びピラジナミド約20−25mg/kg〜約50−70mg/kgを含む。
【0104】
さらに別の実施態様において、薬学的組成物は、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩約100mg〜約500mg、及びイソニアジド約10−15mg/kg〜約20−30mg/kgを含む。
【0105】
さらに別の実施態様において、薬学的組成物は、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩約100mg〜約500mg、及びイソニアジド約10−15mg/kg〜約20−30mg/kg、及びリファンピン約10mg/kg〜約20mg/kgを含む。
【0106】
さらに別の実施態様において、薬学的組成物は、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩約100mg〜約500mg、イソニアジド約10−15mg/kg〜約20−30mg/kg、リファンピン約10mg/kg〜約20mg/kg、及びピラジナミド約15−30mg/kg〜約50mg/kgを含む。
【0107】
さらに別の実施態様において、薬学的組成物は、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩約50mg〜約250mg、イソニアジド約75mg、リファンピン約150mg、及びピラジナミド約400mgを含む。
【0108】
さらに別の実施態様において、薬学的組成物は、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩約25mg〜約250mg、リファンピン約300mgを含む。
【0109】
本発明はまた、以下を含む製品に関する:
以下を含む包装された組成物:
(a)
(i)治療有効量の式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩:
【化4】

(ii)治療有効量の結核の治療において有用な少なくとも1つの薬剤、及び
(iii)1つ又はそれ以上の薬学的に許容される担体又はビヒクル
(b)結核を治療するための(a)の包装された組成物の投与についての説明を提供する挿入物;並びに
(c)(a)及び(b)についての容器。
【0110】
本発明はまた、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩:
【化5】

及び、結核の治療において有用な少なくとも1つの薬剤と組み合わせて該組成物を投与するための指示を提供する添付文書を含む哺乳動物における結核を治療するための薬学的パッケージに関する。
【0111】
本発明のこれら及び他の局面、利点、及び特徴は、以下の本発明の詳細な説明から明らかとなる。
【発明を実施するための形態】
【0112】
発明の詳細な説明
本発明は、哺乳動物における結核を治療する方法であって、結核の治療において有用な少なくとも2つの薬剤と組み合わせて、有効量の式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩:
【化6】

を該哺乳動物へ投与する工程を含む方法に関する。
【0113】
本発明の式(I)の化合物は、米国特許第5,880,118号(参照によりその全体が本明細書に組み入れられる)の実施例1に開示されている;(S)−N−[[3−[3−フルオロ−4−(4−チオモルホリニル)フェニル]−2−オキソ−5−オキサゾリジニル]メチル]アセトアミド。下記により詳細に説明されるように、本発明の式(I)の化合物は、遊離塩基として又はその塩の形態で投与され得る。
【0114】
本明細書において使用される場合、句「薬学的に許容される塩」は、特に記載されない限り、式(I)の化合物中に存在し得る酸性基又は塩基性基の塩を含む。
【0115】
例えば、塩基性である式(I)の化合物は、種々の無機酸及び有機酸と共に様々な塩を形成することができる。このような塩基性化合物の薬学的に許容される酸付加塩を製造するために使用され得る酸は、非毒性酸付加塩、即ち、薬理学的に許容されるアニオンを含む塩、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硝酸塩、硫酸塩、硫酸水素塩、リン酸塩、酸性リン酸塩、イソニコチン酸塩、乳酸塩、サリチル酸塩、クエン酸塩、酸性クエン酸塩、酒石酸塩、パントテン酸塩、酒石酸水素塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、グルクロン酸塩、糖酸塩、ギ酸塩、安息香酸塩、グルタミン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩及びパモ酸塩[即ち、1,1'−メチレン−ビス−(2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸塩)]を形成するものである。
【0116】
塩の例としては、酢酸塩、アクリル酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩(例えば、クロロ安息香酸塩、メチル安息香酸塩、ジニトロ安息香酸塩、ヒドロキシ安息香酸塩、及びメトキシ安息香酸塩)、炭酸水素塩、硫酸水素塩、亜硫酸水素塩、酒石酸水素塩、ホウ酸塩、臭化物、ブチン−1,4−ジオアート、エデト酸カルシウム、カンシル酸塩、塩化物、カプロン酸塩、カプリル酸塩、クエン酸塩、デカン酸塩、リン酸二水素塩、エデト酸塩、エジスリアート(edislyate)、エストラート(estolate)、エシラート(esylate)、エチルコハク酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルセプト酸塩、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、グリコール酸塩、グリコリルアルサニル酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキシン−1,6−ジオアート、ヘキシルレゾルシン酸塩、ヒドラバミン、臭化水素酸塩、塩酸塩、γ−ヒドロキシ酪酸塩、ヨウ化物、イソ酪酸塩、イソチオン酸塩、乳酸塩、ラクトビオン酸塩、ラウリン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、マンデル酸塩、メシラート、メタリン酸塩、メタンスルホン酸塩、メチル硫酸塩、リン酸一水素塩、粘液酸塩、ナプシル酸塩、ナフタレン−1−スルホン酸塩、ナフタレン−2−スルホン酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パモ酸塩(エンボナート)、パルミチン酸塩、パントテン酸塩、フェニル酢酸塩、フェニル酪酸塩、フェニルプロピオン酸塩、フタル酸塩、リン酸塩(phospate)/二リン酸塩、ポリガラクツロン酸塩、プロパンスルホン酸塩、プロピオン酸塩、プロピオル酸塩、ピロリン酸塩、ピロ硫酸塩、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、塩基性酢酸塩、スベリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、スルホン酸塩、亜硫酸塩、タンニン酸塩、酒石酸塩、テオクル酸塩、トシラート、トリエチオドード(triethiodode)、及び吉草酸塩が挙げられるが、これらに限定されない。
【0117】
本発明はまた、式(I)の化合物の塩基付加塩に関する。酸性である式(I)の化合物の薬学的に許容される塩基塩を製造するために試薬として使用され得る化学的塩基は、このような化合物と共に非毒性塩基塩を形成するものである。このような非毒性塩基塩としては、薬理学的に許容されるカチオン、例えば、アルカリ金属カチオン(例えば、カリウム及びナトリウム)及びアルカリ土類金属カチオン(例えば、カルシウム及びマグネシウム)から誘導されるもの、アンモニウム又は水溶性アミン付加塩、例えば、N−メチルグルカミン−(メグルミン)、及び低級アルカノールアンモニウム、並びに薬学的に許容される有機アミンの他の塩基塩が挙げられるが、これらに限定されない。
【0118】
酸及び塩基の半塩(hemisalt)、例えば、半硫酸塩(hemisulphate)及び半カルシウム塩(hemicalcium salt)もまた形成され得る。
【0119】
好適な塩についての概説に関しては、Stahl and WermuthによるHandbook of Pharmaceutical Salts: Properties, Selection, and Use (Wiley−VCH, 2002)を参照のこと。本発明の式(I)の化合物の薬学的に許容される塩を製造するための方法は、当業者に公知である。
【0120】
本明細書において使用される場合、用語「「式(I)」及び「式(I)又はその薬学的に許容される塩」」は、その異性体、結晶形態及び非晶質形態、同形体、多形体、代謝産物、溶媒和物、水和物及びプロドラッグを含む、式(I)の化合物の全ての形態を含むように定義される。
【0121】
用語「溶媒和物」は、溶媒と溶質との、又は分散手段と分散相との、非共有結合的な又は容易に可逆的な組み合わせを記載するために本明細書において使用される。溶媒和物は、固体、スラリー(例えば、懸濁液又はディスパージョン)、又は溶液の形態であり得ることが、理解される。溶媒の非限定的な例としては、エタノール、メタノール、プロパノール、アセトニトリル、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(tetrahydrofuan)、塩化メチレン、及び水が挙げられる。用語「水和物」は、前記溶媒が水である場合に用いられる。
【0122】
有機水和物に関して現在認められている分類体系は、隔離部位(isolated site)又はチャネル水和物を定義するものである−K. R. MorrisによるPolymorphism in Pharmaceutical Solids (Ed. H. G. Brittain, Marcel Dekker, 1995) を参照のこと。隔離部位水和物は、水分子が、介在する有機分子によって互いとの直接的な接触から隔離されている水和物である。チャネル水和物においては、水分子は格子チャネル内に存在し、ここでそれらは他の水分子に隣接している。
【0123】
溶媒又は水が強く結合している場合、複合体は、湿度とは無関係に、十分に規定された化学量論を有する。しかし、チャネル溶媒和物及び吸湿性化合物におけるように、溶媒又は水が弱く結合している場合、水/溶媒含有量は、湿度及び乾燥状態に左右される。このようなケースでは、非化学量論が標準である。
【0124】
本発明はまた、式(I)の化合物のプロドラッグに関する。従って、それ自体はほとんど又は全く薬理学的活性を有しない場合がある式(I)の化合物のある誘導体は、身体中へ又は身体上へ投与されると、例えば加水分解によって、所望の活性を有する式(I)の化合物へ変換され得る。このような誘導体は、「プロドラッグ」と呼ばれる。プロドラッグの使用についてのさらなる情報は、Pro−drugs as Novel Delivery Systems, Vol. 14,
ACS Symposium Series (T. Higuchi and W. Stella) 及びBioreversible Carriers in Drug Design, Pergamon Press, 1987 (Ed. E. B. Roche, American Pharmaceutical Association) において見られ得る。
【0125】
本発明に従うプロドラッグは、例えば、例えばH. BundgaardによるDesign of Prodrugs
(Elsevier, 1985) に記載されるように、「プロ部分」として当業者に公知のある部分で式(I)の化合物中に存在する適切な官能性を置き換えることによって、製造され得る。
【0126】
本発明に従うプロドラッグのいくつかの非限定的な例としては、以下が挙げられる:
(i)式(I)の化合物が、適切に代謝的に不安定な基(エステル、カルバマートなど)へ官能化されているカルボン酸官能性を含む場合の、式(I)の化合物;
(ii)式(I)の化合物が、適切に代謝的に不安定な基(エーテル、エステル、カルバマート、アセタール、ケタールなど)へ官能化されているアルコール酸官能性を含む場合の、式(I)の化合物;並びに
(iii)式(I)の化合物が、適切に代謝的に不安定な基、例えば、加水分解性基(アミド、カルバマート、尿素、ホスホナート、スルホナートなど)へ官能化されている第1級若しくは第2級アミノ官能性、又はアミドを含む場合の、式(I)の化合物。
【0127】
上述の例及び他のプロドラッグタイプの例に従う置換基のさらなる例は、前述の参考文献において見られ得る。
【0128】
本発明の式(I)の化合物は、互変異性及び構造異性の現象を示し得る。例えば、本発明の式(I)の化合物は、エノール及びイミン形態、並びにケト及びエナミン形態、並びにそれらの幾何異性体及び混合物を含む、いくつかの互変異性形態で存在し得る。このような互変異性形態の全てが、本発明の式(I)の化合物の範囲内に含まれる。互変異性体は、溶液中において互変異性体のセットの混合物として存在する。固体形態では、通常、1つの互変異性体が優勢である。1つの互変異性体が記載される場合があるとしても、本発明は、本発明の式(I)の化合物の全ての互変異性体を含む。
【0129】
本発明はまた、同位体で標識された化合物を含み、これらは、1つ又はそれ以上の原子が、天然において通常見られる原子質量又は質量数とは異なる原子質量又は質量数を有する原子によって置き換えられているという事実を除いては、上記の式(I)に記載のものと同一である。式(I)の化合物へ組み込まれ得る同位体の例としては、水素、炭素、窒素、酸素、リン、フッ素及び塩素の同位体、例えば、これらに限定されないが2H、3H、13C、14C、15N、18O、17O、35S及び18Fが挙げられる。ある同位体で標識された本発明の式(I)の化合物、例えば、3H及び14Cなどの放射性同位体が組み込まれているものは、薬物及び/又は基質組織分布アッセイにおいて有用である。トリチウム化、即ち3H、及び炭素−14、即ち14C、同位体が、それらの製造の容易さ及び検出性のために特に好ましい。さらに、より重い同位体、例えば、重水素、即ち2Hでの置換は、より大きな代謝安定性から生じるある治療的利点、例えば、インビボ半減期の増加又は投薬量要求の減少を与え得、従って、ある状況において好ましい場合がある。同位体で標識された本発明の式(I)の化合物は、同位体で標識されていない試薬の代わりに同位体で標識された試薬を使用することによって、下記のスキーム及び/又は実施例及び調製物に開示される手順を行なうことにより、一般的に作製され得る。
【0130】
本発明の式(I)の化合物は、多形性を示し得る。本発明の式(I)の化合物の多形体は、種々の条件下での本発明の式(I)の化合物の結晶化によって製造され得る。例えば、再結晶のための様々な溶媒(水を含む)又は種々の溶媒混合物;種々の温度での結晶化;結晶化の間の非常に速い冷却から非常に遅い冷却に及ぶ様々な冷却様式が、使用され得る。多形体はまた、本発明の式(I)の化合物を加熱又は融解し、続いて徐々に又は迅速に冷却することによって、得ることができる。多形体の存在は、固体プローブNMR分光法、IR分光法、示差走査熱量測定、粉末X線回折、又は他のこのような技術によって測定され得る。
【0131】
投与される本発明の式(I)の化合物の最小量が、有効量である。用語「有効量」は、哺乳動物、例えばヒトにおいて、TB感染症の発症を予防する、その症状を緩和する、その進行を止める、及び/又はそれを排除する本発明の式(I)の化合物の量を意味する。
【0132】
治療有効量の本発明の式(I)の化合物は、以下に記載の所望の抗結核性を有することがわかった。しかし、結核の治療において有用な少なくとも2つの薬剤と組み合わせて本発明の式(I)の化合物を投与する場合、相乗効果が観察される。
【0133】
相乗効果によって、本発明の式(I)の化合物及び結核の治療において有用な少なくとも2つの薬剤を投与する治療効果が、有効量の本発明の式(I)のいずれかの化合物の単独の投与、又は個々に又は組み合わせて投与される治療有効量の結核の治療において有用な少なくとも2つの薬剤の投与で得られる治療効果よりも大きいことが意味される。
【0134】
このような相乗効果は、個々に投与される場合に必要とされる量よりも少ない量での組み合わせ中の成分の各々の投与を可能にし得、このために、有害事象又は不快な副作用の可能性が低下し得る点で有利である。あるいは、このような相乗効果は、TBについての治療期間を短縮し得る。
【0135】
従って、本発明の式(I)の化合物と、結核の治療において有用な少なくとも2つの薬剤、例えば、イソニアジド、リファンピン、リファペンチン、リファブチン、ピラジナミド、モキシフロキサシン、ガチフロキサシン、レボフロキサシン、オフロキサシン、シプロフロキサシン、及びエタンブトールからなる群より選択される化合物のうちの少なくとも2つとの両方の投与は、本発明の式(I)の化合物単独が投与される場合、結核の治療において有用な少なくとも2つの薬剤が個々に投与される場合、又は結核の治療において有用な少なくとも2つの薬剤が互いに組み合わせて投与される場合の効果と比較して、結核の治療の改善をもたらす効果を生じさせることがわかった。
【0136】
本発明の一実施態様において、本発明の式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩と、イソニアジド、リファンピン、リファペンチン、リファブチン、ピラジナミド、モキシフロキサシン、ガチフロキサシン、レボフロキサシン、オフロキサシン、シプロフロキサシン、及びエタンブトールからなる群より選択される化合物のうちの少なくとも2つとの両方の投与は、本発明の式(I)の化合物又は結核の治療において有用な少なくとも2つの薬剤が個々に又は互いに組み合わせて投与される場合の不完全な根絶と比較して、結核の完全な根絶をもたらす効果を生じさせることがわかった。
【0137】
用語「完全な根絶」は、本発明の組み合わせでの治療レジメン後に、培養可能なマイコバクテリウムが、標的器官、即ち、感染哺乳動物の肺において観察され得ないことを意味する。既存の薬物レジメン、即ち、結核の治療において有用な薬剤、イソニアジド、ピラジナミド及びリファンピンの少なくとも2つの組み合わせでの感染哺乳動物の治療の終了時には、顕著な培養可能な量の結核菌が、標的器官、即ち肺から回収されることが、認められる。これは下記表3のデータから明らかである。2ヶ月間のイソニアジド、ピラジナミド及びリファンピン、続いて2ヶ月間のイソニアジド及びリファンピンの、標準治療での4ヶ月間の治療後でさえ、90%のマウスが治療の完了後に再発することがさらに認められ、このことは、治療完了時に培養され得ない場合でさえ、生存可能な細菌が治療の完了時に残存していることを意味し、このことは、表4のデータから明らかである。
【0138】
本発明の一実施態様において、本明細書に記載される本発明の式(I)の化合物及び薬学的組成物と組み合わせて使用される、結核の治療において有用な少なくとも2つの薬剤は、以下の通りである:イソニアジド、リファンピン、リファペンチン、リファブチン、ピラジナミド、エタンブトール、ストレプトマイシン、カナマイシン、アミカシン、モキシフロキサシン、ガチフロキサシン、レボフロキサシン、オフロキサシン、シプロフロキサシン、カプレオマイシン、エチオナミド、サイクロセリン、パラアミノサリチル酸、チアセタゾン、クラリスロマイシン、アモキシシリン−クラブラン酸、イミペネム、メロペネム、クロファジミン、バイオマイシン、テリジドン、TMC207、PA−824、OPC−7683、LL−3858及びSQ−109。
【0139】
別の実施態様において、前記少なくとも2つの薬剤のうちの1つは、イソニアジド、リファンピン、リファペンチン、リファブチン、ピラジナミド、モキシフロキサシン、ガチフロキサシン、レボフロキサシン、オフロキサシン、シプロフロキサシン、及びエタンブトールからなる群より選択される。
【0140】
さらに別の実施態様において、前記少なくとも2つの薬剤のうちの1つは、ピラジナミドである。
【0141】
さらに別の実施態様において、前記少なくとも2つの薬剤のうちの1つは、リファンピンである。
【0142】
さらに別の実施態様において、前記少なくとも2つの薬剤のうちの1つは、リファペンチンである。
【0143】
さらに別の実施態様において、前記少なくとも2つの薬剤のうちの1つは、PA−824である。
【0144】
さらに別の実施態様において、前記少なくとも2つの薬剤のうちの1つは、OPC−67683である。
【0145】
さらに別の実施態様において、前記少なくとも2つの薬剤のうちの1つは、TMC−207である。
【0146】
さらに別の実施態様において、前記少なくとも2つの薬剤のうちの1つは、モキシフロキサシン、ガチフロキサシン、レボフロキサシン、及びオフロキサシンからなる群より選択される。
【0147】
さらに別の実施態様において、前記少なくとも2つの薬剤のうちの1つは、モキシフロキサシンである。
【0148】
特定の実施態様において、前記少なくとも2つの薬剤は、ピラジナミド及びリファンピンである。
【0149】
さらに別の特定の実施態様において、前記少なくとも2つの薬剤は、ピラジナミド、リファンピン及びイソニアジドである。
【0150】
さらに別の特定の実施態様において、前記少なくとも2つの薬剤は、ピラジナミド及びリファペンチンである。
【0151】
さらに別の特定の実施態様において、前記少なくとも2つの薬剤は、ピラジナミド、リファペンチン、及びイソニアジドである。
【0152】
特定の実施態様において、前記少なくとも2つの薬剤は、ピラジナミド及びモキシフロキサシンである。
【0153】
さらに別の特定の実施態様において、前記少なくとも2つの薬剤は、ピラジナミド、モキシフロキサシン、及びリファンピンである。
【0154】
さらに別の特定の実施態様において、前記少なくとも2つの薬剤は、ピラジナミド、モキシフロキサシン、及びリファペンチンである。
【0155】
さらに別の特定の実施態様において、前記少なくとも2つの薬剤は、PA−824及びピラジナミドである。
【0156】
さらに別の特定の実施態様において、前記少なくとも2つの薬剤は、PA−824、ピラジナミド、並びにストレプトマイシン、カナマイシン、アミカシン及びカプレオマイシンからなる群より選択される薬剤である。
【0157】
さらに別の特定の実施態様において、前記少なくとも2つの薬剤は、PA−824及びモキシフロキサシンである。
【0158】
さらに別の特定の実施態様において、前記少なくとも2つの薬剤は、PA−824、モキシフロキサシン、並びにストレプトマイシン、カナマイシン、アミカシン及びカプレオマイシンからなる群より選択される薬剤である。
【0159】
さらに別の特定の実施態様において、前記少なくとも2つの薬剤は、OPC−67683及びピラジナミドである。
【0160】
さらに別の特定の実施態様において、前記少なくとも2つの薬剤は、OPC−67683、ピラジナミド、並びにストレプトマイシン、カナマイシン、アミカシン及びカプレオマイシンからなる群より選択される薬剤である。
【0161】
さらに別の特定の実施態様において、前記少なくとも2つの薬剤は、OPC−67683及びモキシフロキサシンである。
【0162】
さらに別の特定の実施態様において、前記少なくとも2つの薬剤は、OPC−67683、モキシフロキサシン、並びにストレプトマイシン、カナマイシン、アミカシン及びカプレオマイシンからなる群より選択される薬剤である。
【0163】
さらに別の特定の実施態様において、前記少なくとも2つの薬剤は、TMC−207及びピラジナミドである。
【0164】
さらに別の特定の実施態様において、前記少なくとも2つの薬剤は、TMC−207、ピラジナミド及びモキシフロキサシン又はイソニアジドである。
【0165】
非増殖性存続細菌が一般的である(治療初期段階の後の)治療継続(殺菌)段階の間に、本発明の式(I)の化合物が、結核の治療において有用な少なくとも1つの薬剤、例えばリファンピンと組み合わせて投与される場合に、相乗効果が観察されることが、さらに分かった。このような相乗効果は、TBについての治療期間を短縮し得る点で有利である。より顕著なことに、下記のデータは、TBの治療に有用な少なくとも2つの薬剤と組み合わせての式(I)の化合物の投与は、薬剤感受性TB、単剤耐性TB及び多剤耐性TBについての治療の期間を短縮し得ることを示している。
【0166】
本発明の一実施態様において、本発明の方法は、式(I)の化合物と組み合わせて使用される結核の治療において有用な少なくとも1つの薬剤を含む治療初期段階を哺乳動物が受けた後の哺乳動物の治療を提供する。
【0167】
別の実施態様において、結核の治療において有用な少なくとも1つの薬剤は、リファンピン、リファペンチン、リファブチン、ピラジナミド、エタンブトール、ストレプトマイシン、カナマイシン、アミカシン、モキシフロキサシン、ガチフロキサシン、レボフロキサシン、オフロキサシン、シプロフロキサシン、カプレオマイシン、エチオナミド、サイクロセリン、パラアミノサリチル酸、チアセタゾン、クラリスロマイシン、アモキシシリン−クラブラン酸、イミペネム、メロペネム、クロファジミン、バイオマイシン、テリジドン、TMC207、PA−824、OPC−7683、LL−3858及びSQ−109からなる群より選択される。
【0168】
さらに別の実施態様において、前記少なくとも1つの薬剤は、リファンピン、リファペンチン、リファブチン、ピラジナミド、モキシフロキサシン、ガチフロキサシン、レボフロキサシン、オフロキサシン、及びエタンブトールからなる群より選択される。
【0169】
特定の実施態様において、前記少なくとも1つの薬剤は、ピラジナミドである。
【0170】
特定の実施態様において、前記少なくとも1つの薬剤は、リファンピンである。
【0171】
特定の実施態様において、前記少なくとも1つの薬剤は、リファペンチンである。
【0172】
特定の実施態様において、前記少なくとも1つの薬剤は、PA−824である。
【0173】
特定の実施態様において、前記少なくとも1つの薬剤は、OPC−7683である。
【0174】
特定の実施態様において、前記少なくとも1つの薬剤は、TMC−207である。
【0175】
特定の実施態様において、前記少なくとも1つの薬剤は、モキシフロキサシン、ガチフロキサシン、レボフロキサシン、及びオフロキサシンからなる群より選択される。
【0176】
特定の実施態様において、前記少なくとも1つの薬剤は、モキシフロキサシンである。
【0177】
本発明の方法及び組成物は、活動性結核及び潜在性結核を含む結核に対して特に有効である。一例において、活動性結核は、薬剤感受性結核、単剤耐性結核、多剤耐性結核及び広範囲薬剤耐性結核を含む。別の例において、本発明は、治療の完了時に薬剤感受性結核、単剤耐性結核、多剤耐性結核、及び広範囲薬剤耐性結核(XDR)を完全に根絶している方法を提供する。
【0178】
さらに、本発明の方法及び組成物は、当業者に公知である哺乳動物において結核を同定するための診断検査と併用して使用され得る。例えば、本発明の方法及び組成物は、いわゆるラインプローブアッセイ(Hain Life−science GmbH)と併用して使用され得、これは、リファンピン及びイソニアジドに対する耐性に関連する遺伝子を同定し、多剤耐性結核及び/又は広範囲薬剤耐性結核を指摘するために使用され得る。他のアッセイも本発明の方法及び組成物と併用して使用され得、これらは当業者に公知である。
【0179】
別の実施態様において、本発明の方法及び組成物は、当業者に公知である、マイコバクテリウム・ツベルクローシス、マイコバクテリウム・ボビス又は他の関連のマイコバクテリア種からなる群より選択されるマイコバクテリウム感染症によって引き起こされる結核に対して特に有効である。一例において、本発明は、治療の完了後のマイコバクテリウム感染症の再発を予防するための方法及び組成物を提供する。
【0180】
このような組み合わせは、同時、分離又は逐次使用についてであり得る。一実施態様において、結核の治療に有用な少なくとも2つの薬剤(又は少なくとも1つの薬剤)は、本発明の式(I)の化合物の投与前に投与される。別の実施態様において、結核の治療に有用な少なくとも2つの薬剤(又は少なくとも1つの薬剤)は、本発明の式(I)の化合物の投与後に投与される。別の実施態様において、結核の治療に有用な少なくとも2つの薬剤(又は少なくとも1つの薬剤)は、本発明の式(I)の化合物の投与とほぼ同時に投与される。
【0181】
異なる時点での及び異なる経路での、各化合物の分離投与が、場合によっては有利である。従って、組み合わせ中の成分、即ち、本発明の式(I)の化合物及び結核の治療における少なくとも2つの薬剤(又は少なくとも1つの薬剤)は、本質的に同時に又はいずれかの順序で必ずしも投与される必要はない。一方の化合物のピーク薬物動態効果が他方のピーク薬物動態効果と一致するように、投与タイミングが合わせられ得る。
【0182】
全ての有効成分は、分離した又は個々の投薬形態に処方され得、これらは、次々に同時投与され得る。別の選択肢は、投与経路が同一(例えば、経口)である場合、2つ又はそれ以上の活性化合物が、同時投与用の単一形態に処方され得ることであり、しかし、両方の同時投与方法が、同一の治療的処置又はレジメンの一部である。
【0183】
結核の治療に有用な好ましい薬剤は、以下の通りであり得る:イソニアジド、リファンピン、リファペンチン、リファブチン、ピラジナミド、エタンブトール、ストレプトマイシン、カナマイシン、アミカシン、モキシフロキサシン、ガチフロキサシン、レボフロキサシン、オフロキサシン、シプロフロキサシン、カプレオマイシン、エチオナミド、サイクロセリン、パラアミノサリチル酸、チアセタゾン、クラリスロマイシン、アモキシシリン−クラブラン酸、イミペネム、メロペネム、クロファジミン、バイオマイシン、テリジドン、TMC207、PA−824、OPC−7683、LL−3858及びSQ−109。結核の治療に有用な薬剤は、酸形態、塩形態、ラセミ体、エナンチオマー、溶媒和物、及び互変異性体を含む、様々な形態で、本発明において使用され得る。結核の治療に有用な薬剤は、前記薬剤を投与するに有用な任意の経路によって投与され得、これらは当業者に公知である。
【0184】
本発明はまた、(i)治療有効量の式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩、(ii)結核の治療において有用な少なくとも1つの薬剤、及び(iii)薬学的に許容される担体又はビヒクルを含む、本発明の組成物(本明細書以下において、「本発明の組成物」)に関する。
【0185】
その必要がある患者(例えば、ヒト)への投与に適している本発明の組成物はまた、本明細書において「本発明の薬学的組成物」と呼ばれる。
【0186】
本発明の薬学的組成物は、患者への投薬に好適な任意の形態であり得る。例えば、本発明の薬学的組成物は、経口投与に好適な形態、例えば、錠剤、カプセル剤、丸剤、散剤、徐放性製剤、液剤、及び懸濁剤;非経口注射に好適な形態、例えば、滅菌液剤、懸濁剤又は乳剤;局所投与に好適な形態、例えば、軟膏剤又はクリーム剤;又は、直腸投与に好適な形態、例えば、坐剤であり得る。本発明の薬学的組成物は、正確な投薬量の単回投与に好適な単位投薬形態であり得る。
【0187】
例示的な非経口投与形態としては、滅菌水溶液中の、例えば、プロピレングリコール又はデキストロース水溶液中の、活性化合物の液剤又は懸濁剤が挙げられる。このような投薬形態は、必要に応じて、適切に緩衝化され得る。
【0188】
一実施態様において、本発明の薬学的組成物は、経口投薬形態の形態であり得る。経口投薬形態の非限定的な例としては、例えば、標準的な薬学的プラクティスに従う、チュアブル錠、カプセル剤、丸剤、ロゼンジ剤、トローチ剤、サシェ剤、散剤、シロップ剤、エリキシル剤、液剤及び懸濁剤などが挙げられる。別の実施態様において、本発明の薬学的組成物はまた、経鼻胃管を介して患者の胃腸管へ直接送達され得る。
【0189】
本発明の式(I)の化合物は、本明細書に記載の範囲内の所望の投薬量を提供するに十分な量で本発明の薬学的組成物中に存在する。本発明の式(I)の化合物と賦形剤との比率は、当然ながら、有効成分の化学的性質、溶解性及び安定性、並びに意図される投薬形態に依存する。典型的に、本発明の薬学的組成物は、本発明の式(I)の化合物を約20質量%〜約99質量%含有し得る。
【0190】
一実施態様において、式(I)の化合物及びその薬学的に許容される塩は、約10mg〜約2000mg投与される。さらに別の実施態様において、式(I)の化合物及びその薬学的に許容される塩は、約25mg〜約1000mg投与される。
【0191】
さらに別の実施態様において、式(I)の化合物及びその薬学的に許容される塩は、約50mg〜約500mg投与される。
【0192】
さらに別の実施態様において、式(I)の化合物及びその薬学的に許容される塩は、約100mg〜約500mg投与される。
【0193】
本発明の式(I)の化合物及び本発明の組成物の処方及び投与のための技術は、Remington: the Science and Practice of Pharmacy, 19th ed., Mack Pub. Co., Easton, Pa. (1995) において見られ得る。
【0194】
用語「賦形剤」は、薬学的組成物又は経口薬投薬形態を製造するために式(I)の化合物と混合される不活性物質を意味する。
【0195】
用語「薬学的に許容される賦形剤」は、賦形剤が、組成物の他の成分と適合性でなければならずかつその受容者に有害であってはならないことを意味する。薬学的に許容される賦形剤は、意図される投薬形態に基づいて選択される。
【0196】
錠剤、丸剤、カプセル剤などは、結合剤、例えば、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、スクロース、ゼラチン、アラビアゴム、トラガカントゴム、又はトウモロコシデンプン;充填剤、例えば、微結晶性セルロース、ラクトース、クエン酸ナトリウム、炭酸カルシウム、二塩基性リン酸カルシウム、グリシン及びデンプン;崩壊剤、例えば、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、アルギン酸、デンプングリコール酸ナトリウム、クロスカルメロースナトリウム及びある特定の複合ケイ酸塩;滑沢剤、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウム及びタルク;並びに甘味剤、例えば、スクロース ラクトース又はサッカリンより選択される賦形剤を含有し得る。投薬単位形態がカプセル剤である場合、それは、上記のタイプの物質に加えて、脂肪油などの液体担体を含有し得る。種々の他の物質が、投薬単位の物理的形態を改変するために又はコーティングとして存在し得る。例えば、錠剤は、シェラック、砂糖又は両方でコーティングされ得る。
【0197】
小児用経口懸濁剤及びサシェ剤の場合、これらの賦形剤は、懸濁化助剤、例えば、キサンタンガム又はヒドロキシプロピルメチルセルロース、流動促進剤、例えば、コロイドシリカ、希釈剤、並びに増量剤、例えば、二酸化ケイ素、フレーバー、例えば、バブルガム、オレンジ、バナナ、ラズベリー及びゴールデンシロップ又はそれらの混合物、甘味剤、例えば、アスパルテーム又は砂糖、並びに安定剤、例えば、コハク酸を含み得る。散剤又は顆粒剤、例えば、小児用懸濁剤及びサシェ剤は、薬学的製剤の製造の分野において及びこのような懸濁剤への再構築用の乾燥製剤の製造において一般的である技術を使用して製造され得る。例えば、好適な技術は、乾燥粉末状又は顆粒状成分を混合するものである。
【0198】
典型的に、成人についての本発明の式(I)の化合物の有効な日用量(即ち、約24時間にわたる総投薬量)は、食物を摂取して又は摂取せずに、約10mg〜約2000mg;約25mg〜約1000mg;約50mg〜約500mg;及び100mg〜約500mgである。場合によっては、これらの範囲外の投薬量を使用することが、必要であり得る。
【0199】
本発明の式(I)の化合物の一日投薬量は、通常、等しい用量で毎日1〜4回投与される。
【0200】
一実施態様において、1日当たり単回用量の本発明の式(I)の化合物を投与し(即ち、約24時間間隔)(即ち、QD);別の実施態様において、1日当たり2回用量の本発明の式(I)の化合物を投与し(即ち、BID);別の実施態様において、1日当たり3回用量の本発明の式(I)の化合物を投与し(即ち、TID);別の実施態様において、1日当たり4回用量の本発明の式(I)の化合物を投与し(即ち、QID);別の実施態様において、単回用量の本発明の式(I)の化合物を、一日おきに投与し(即ち、約48時間間隔)、別の実施態様において、単回用量の本発明の式(I)の化合物を、週2回投与し;別の実施態様において、単回用量の本発明の式(I)の化合物を、週3回投与する。
【0201】
一実施態様において、有効用量の本発明の式(I)の化合物を、約12時間間隔でBID投与する。
【0202】
別の実施態様において、有効用量の本発明の式(I)の化合物を、約8時間間隔でTID投与する。
【0203】
別の実施態様において、有効用量の本発明の式(I)の化合物を、約6時間間隔でQID投与する。
【0204】
一実施態様において、本発明の式(I)の化合物の有効用量は、約25mg〜約1000mgであり、これを約12時間間隔でBID投与する。
【0205】
経口投与が好ましい。
【0206】
本発明の式(I)の化合物及び結核の治療に有用な少なくとも1つの薬剤及び薬学的に許容される担体を含む固定用量組み合わせでの本発明の薬学的組成物は、当技術分野における通常の方法によって調製され得る。例えば、組み合わせの錠剤形態が、当業者によって調製され得る。
【0207】
本発明の一部の例は、以下の非限定的な混合物を含む組み合わせ及び薬学的組成物である:
a)式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩及びピラジナミド;
b)式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩及びリファンピン;
c)式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩及びリファペンチン;
d)式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩、及びPA−824;
e)式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩、及びTMC−207;
f)式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩、並びにモキシフロキサシン、ガチフロキサシン、レボフロキサシン、オフロキサシン モキシフロキサシンからなる群より選択される薬剤;
g)式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩、イソニアジド及びリファンピン;
h)式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩、イソニアジド、リファンピン及びピラジナミド;並びに
i)式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩、リファンピン及びピラジナミド。
【0208】
本発明の他の例は、以下の非限定的な混合物を含む組み合わせ及び薬学的組成物である:
j)式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩約100mg〜約500mg、及びリファンピン約600mg;
k)式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩約100mg〜約500mg、及びイソニアジド約300mg;
l)式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩約100mg〜約500mg、及びイソニアジド約300mg、及びリファンピン約600mg;
m)式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩約100mg〜約500mg、イソニアジド約300mg、リファンピン約600mg、及びピラジナミド約20−25mg/kg〜約50−70mg/kg;
n)式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩約100mg〜約500mg、及びリファンピン約10mg/kg〜約20mg/kg;
o)式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩約100mg〜約500mg、及びイソニアジド約10−15mg/kg〜約20−30mg/kg;
p)式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩約100mg〜約500mg、及びイソニアジド約10−15mg/kg〜約20−30mg/kg、及びリファンピン約10mg/kg〜約20mg/kg;
q)式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩約100mg〜約500mg、イソニアジド約10−15mg/kg〜約20−30mg/kg、リファンピン約10mg/kg〜約20mg/kg、及びピラジナミド約15−30mg/kg〜約50mg/kg;
r)式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩約50mg〜約250mg、イソニアジド約75mg、リファンピン約150mg、及びピラジナミド約400mg;並びに
s)式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩約25mg〜約250mg、及びリファンピン約300mg。
【0209】
本発明の式(I)の化合物は、当業者によく知られている合成法に従って容易に製造される。本発明の式(I)の化合物は、米国特許第5,880,118号の実施例セクションに記載の実施例1の製造について記載されるものと同様の方法で製造され得る。さらに、式(I)の化合物は、国際公開公報WO97/37980及びWO99/24393に記載の方法によって製造され得、これらは両方とも参照により本明細書に組み入れられる。
【0210】
(S)−N−[[3−[3−フルオロ−4−(4−チオモルホリニル)フェニル]−2−オキソ−5−オキサゾリジニル]メチル]アセトアミドの製造の別の例は、以下の通りである:
【0211】
スキーム1は、本発明の化合物を製造するための一般的な合成順序を示す。
【0212】
【化7】

【0213】
スキーム1は、式6の化合物を介する多段階合成で本発明の式(I)の化合物を合成する方法を示す。スキームIを参照して、合成は、(S)−エピクロロヒドリン(1)と、適切に置換されたベンズアルデヒド誘導体(2)(好ましくは0.5〜2eq、最も好ましくは1eq)及びアンモニア水(好ましくは0.5〜3eq、最も好ましくは1.5eq)の混合物とを反応させることによる中間体(3)の形成から始まる。反応は、プロトン性及び非プロトン性非求核性不活性溶媒の両方、例えば、アルコール(C1−C6分枝鎖及び直鎖アルコール及びポリオールを含む)、エーテル(MTBE、THF、及び他のC1−C6直鎖、分枝鎖及び環状エーテルを含む)並びに塩素化溶媒、例えば、塩化メチレン中において、最も良く行なわれる。MTBEが好ましい溶媒である。約15〜約60℃の範囲内の温度が好ましく、最も好ましくは30〜50℃である。抽出単離及び濃縮後、イミン部分(3)が得られる。次いで、それは、無極性炭化水素溶媒、例えば、これらに限定されないが、アルカン、アルカンの混合物(ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン及び市販のアルカン混合物)の存在下で、場合により非プロトン性極性溶媒、好ましくはエーテル溶媒、例えば、MTBE、又は芳香族溶媒、例えば、トルエン、又は塩素化溶媒、例えば、塩化メチレン、又はそれらの混合物の存在下で、第2の液相から結晶化される。好ましい溶媒は、MTBE及びヘプタンの混合物、又はトルエン及びヘプタンの混合物である。結晶化プロセスは、周囲温度(約18−25℃)〜約55℃の範囲内、好ましくは30〜50℃の範囲内、より好ましくは38〜45℃の範囲内の温度で行なわれ得る。この結晶化は、驚くほど高い収率を提供し、濾過による単離後に、顕著に改善されたエナンチオマー純度を与える。(S)−エピクロロヒドリン(1)及びベンズアルデヒド誘導体(2)は、市販されており、又は当業者に周知の方法によって製造され得る。
【0214】
置換イミン部分(3)は、カルバマート(4)とカップリングされ(これは、当業者に公知である;例えば、J. Med. Chem., 1996, 39, (3), 680−685、及びまた下記の実施例2を参照のこと(好ましくは1〜3eq、最も好ましくは1.5〜2eq))、対応の(S)−オキサゾリジノンイミン(5)が得られる。反応は、好ましくは、周囲温度〜約65℃の範囲内の温度で、12を超えるpKaを有する塩基、好ましくは第3級アルコキシド塩基、最も好ましくはリチウムtert−ブトキシド、及び非プロトン性非求核性溶媒(好ましくは、DMF、DMAc、アセトニトリル、C1−C6直鎖、分枝鎖及び環状エーテル、及び/又は塩素化溶媒、及び/又はこれらの溶媒の混合物、最も好ましくはMTBE又は塩化メチレン)の存在下で、行なわれる。最も好ましくは、温度は約30〜60℃であり、反応時間は2〜24時間である。好ましくは、(S)−オキサゾリジノンイミン(5)は、水性抽出後処理後に、エーテル(MTBE、THF、並びに他のC1−C6直鎖、分枝鎖及び環状エーテルを含む)及び水の1:1混合物、最も好ましくはMTBEから、濾過によって単離される。あるいは、(5)は、アルコール(C1−C6直鎖、分岐鎖アルコール及びポリオールを含む);最も好ましくはイソプロパノールからの結晶化又は濾過による、水性抽出後処理後に、単離される。酸性水溶液での化合物(5)の加水分解は、化合物(6)を与え、その後のアシル化は、粗製化合物(7)を与える。化合物(5)は、水と塩酸などの強酸との混合物で最も良く加水分解され、置換ベンズアルデヒド副生成物は、水非混和性有機溶媒(好ましくは、トルエン、MTBE、塩化メチレン又は酢酸エチル)、最も好ましくは酢酸エチルでの抽出によって除去される。アミン塩酸塩(6)の得られる水溶液は、好ましくは水及び水非混和性有機溶媒(最も好ましくは、塩化メチレン)の存在下にて、無水酢酸で好ましくはアシル化される。化合物(7)へのアミン塩酸塩(6)の変換は、文献において周知である。(Brickner, S.J. et. al. J. Med. Chem. 1996 39 (3) 673−679、米国特許第5,837,870号、米国特許第5,688,792号を参照のこと)。
【0215】
下記に提供される実施例は、本発明の式(I)の化合物、本発明の組成物、及び本発明の化合物を使用する方法をさらに説明及び例示する。本発明の範囲は、下記の実施例及び調製物の範囲によって決して限定されないことが、理解される。
【実施例】
【0216】
実施例1
(S)−1−クロロ−3−[(4−クロロ−E−ベンジリデン)−アミノ]−プロパン−2−オールの製造
方法A
メカニカルスターラー、熱電対、還流冷却器及び加熱マントルが備えられ5L三つ口丸底フラスコに、4−クロロベンズアルデヒド(351.0g, 2.5mol, 1.0eq.)を加えた。次いで、MTBE(1.5 L)を丸底フラスコへ加え、均一溶液を得た。アンモニア水(28wt%, 252.98mL, 3.75mol, 1.5eq.)を、一度に添加し、白色沈殿物が得られ、これは、撹拌15分以内に薄いスラリーへ変化した。次いで、(S)−(+)−エピクロロヒドリン(>99% ee, 196.0mL, 2.5mol, 1.0eq.)を、容器へ徐々に加えた。40分後、内容物を次いで徐々に43℃へ加熱した。反応物を40℃で18時間撹拌し、この時点で、エピクロロヒドリン(epichorohydrin)の8.4%領域がGCによって残っていた。冷却後、反応混合物を分液漏斗へ移し、層を分離させた。下部の水層を捨てた。有機層を3L丸底フラスコへ移し、真空下で約半分の体積(800−900mL)へ濃縮し、この時点で、濁りが観察されるまで、イソオクタンを供給管から徐々に添加した(約750mL)。二相混合物に表題化合物約4mgを播種した。撹拌しながら45分間氷浴で反応物を冷却した。沈殿物を集め、冷イソオクタン(500mL)でリンスした。固体を真空下において50℃で18時間乾燥し、白色固体として表題化合物が345.19g(収率59%)得られた。GCアッセイ:100%、99.7%ee キラルSFCによる)。GC(条件:カラム−30メートルHP−1、0.25mm ID及び0.25ミクロンフィルム、及び15psi上部圧力、1.0μl 注入サイズ;Tini=70℃、20℃/分のランプ)TR(エピクロロヒドリン)=2.4分、TR(4−クロロベンズアルデヒド)=4.8分及びTR(表題化合物)=9.7分;HPLC条件:Chiralpak AD−H 250mm X 4.6mm カラム、3.0mL/分にて70%CO2/30%MeOHで溶出、255nmで検出。TR[表題化合物]=3.9分;TR(表題化合物のエナンチオマー)=2.8分;1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ3.69 (bs, 2 H), 3.80 (m, 2 H), 4.15 (s, 1 H), 7.41 (d, J = 8 Hz, 2 H), 7.69 (d, J = 8 Hz, 2 H), 8.33 (s, 1 H); 13C NMR (CDCl3) δ47.05, 63.09, 70.82, 128.93, 129.39, 134.08, 137.07, 162.30; IR (KBr ペレット) 1630
cm-1.
【0217】
方法B
メカニカルスターラー、熱電対、還流冷却器及び加熱マントルが備えられた5L三つ口丸底フラスコに、4−クロロベンズアルデヒド(375g, 2.67mol, 1.0eq.)を加えた。メタノール(0.75 L)を添加し、10℃から23℃へ加温した後に、均一溶液が得られた。アンモニア水(28.4wt%, 264mL, 3.95mol, 1.5eq.)を一度に添加し、23〜26℃で15分間撹拌した後に、二相溶液が形成された。次いで、(S)−(+)−エピクロロヒドリン(99.3% ee, 207mL, 2.64mol, 1.0eq.)を一回で添加した。反応混合物を、23〜24℃で18時間撹拌し、次いで、40〜45℃へ加温し、2.5時間撹拌し、この時点で、(S)−エピクロロヒドリン((S)−epichorohydrin)の0.26%領域がGCによって残っていた(GC条件、1mL アセトニトリル中0.050mL反応混合物、1マイクロリットルを注入;15 M DB−1カラム、0.25mm ID及び0.25ミクロンフィルム、及び15 psi上部圧力、1.0μl 注入サイズ;Tini=38℃、10℃/分のランプ) TR(エピクロロヒドリン)=1.1分、TR(4−クロロベンズアルデヒド=6.9分及びTR(表題化合物)=16.0分)。混合物を総体積1250mLへ真空下で濃縮した。トルエン(250mL)を添加し、混合物を総体積1250mLへ真空下で濃縮した。トルエン(250mL)を添加し、混合物を総体積1145mLへ真空下で濃縮した。トルエン(355mL)を添加し、混合物を総体積900mLへ真空下で濃縮した。トルエン(600mL)を添加し、混合物を総体積1120mLへ真空下で濃縮した。45〜50℃に維持した後、ヘプタン(1500mL)を添加した。得られた二相溶液を45℃へ冷却し、これに播種した。次いで、各1℃の冷却後に播種しながら、混合物を1/2時間にわたって38℃へさらに冷却した。次いで、混合物を16時間にわたって徐々に23℃へさらに冷却した。次いで、白色結晶を真空濾過によって集め、室温ヘプタン(180mL)で洗浄した。生成物を窒素流中において乾燥し、表題化合物(431.57g, 70.4%)が得られた。HPLC 95領域%[Kromasil 150mm X 4.6mm カラム、254nm、流速1.5mL/分;A=水1000mL+トリフルオロ酢酸0.52mL+トリエチルアミン1.20mL;B=アセトニトリル;5分間無勾配(isocratic)47:53 A:B、次いで、5分間にわったって100%Bへの勾配 TR[表題化合物]=2.1分;TR(4−クロロベンズアルデヒド)=2.3分];キラルSFCによって99.72% ee。キラルHPLC条件:Chiralpak AD−H 250mm X 4.6mm カラム、3.0mL/分にて70%CO2/30%MeOHで溶出、255nmで検出。TR[表題化合物]=3.9分;TR(表題化合物のエナンチオマー)=2.8分。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ3.69 (bs, 2 H), 3.80 (m, 2 H), 4.15 (s, 1 H), 7.41 (d, J = 8 Hz, 2 H), 7.69 (d, J = 8 Hz, 2 H), 8.33 (s, 1 H); 13C NMR (CDCl3) δ47.05, 63.09, 70.82, 128.93, 129.39, 134.08, 137.07, 162.30.
【0218】
方法C
メカニカルスターラー、熱電対、還流冷却器及び加熱マントルが備えられた5L三つ口丸底フラスコに、4−クロロベンズアルデヒド(375g, 2.67mol, 1.0eq.)を加えた。次いで、MTBE(1.50 L)を加え、9℃から24℃へ加温した後に、均一溶液が得られた。アンモニア水(28.4wt%, 265mL, 3.97mol, 1.5eq.)を一度に添加し、23〜26℃で15分間撹拌した後に、二相溶液が形成された。次いで、(S)−(+)−エピクロロヒドリン(99.3% ee, 209mL, 2.67mol, 1.0eq.)を一回で添加した。反応混合物を23〜24℃で3日間撹拌した。相を分離し、上相を大気圧下で2000mLから1000mL総体積へ濃縮した(沸点58〜67℃)。45〜50℃に維持しながら、ヘプタン(1700mL)を添加した。得られた二相溶液を45℃へ冷却し、これに播種した。次いで、各1℃の冷却後に播種しながら、混合物を1/2時間にわたって38℃へさらに冷却した。次いで、混合物を1時間にわたって徐々に23℃へさらに冷却した。次いで、真っ白な重い結晶を真空濾過によって集め、室温ヘプタン(180mL)で洗浄した。生成物を窒素流中において乾燥し、表題化合物(462.43g, 74.7%)が得られた。HPLC 94領域%[Kromasil 150mm X 4.6mm カラム、254nm、流速 1.5mL/分;A=水1000mL+トリフルオロ酢酸0.52mL+トリエチルアミン1.20mL;B=アセトニトリル;5分間無勾配47:53 A:B、次いで、5分間にわったって100%Bへの勾配。TR[表題化合物]=2.1分;TR(4−クロロベンズアルデヒド)=2.3分];キラルSFCによって99.92% ee。キラルHPLC条件:Chiralpak AD−H 250mm X 4.6mm カラム、3.0mL/分にて70%CO2/30%MeOHで溶出、255nmで検出。TR[表題化合物]=3.9分;TR(表題化合物のエナンチオマー)=2.8分;1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ3.69 (bs, 2 H), 3.80 (m, 2 H), 4.15 (s, 1 H), 7.41 (d, J = 8 Hz, 2 H), 7.69 (d, J = 8 Hz, 2 H), 8.33 (s, 1 H); 13C NMR (CDCl3) δ47.05, 63.09, 70.82, 128.93, 129.39, 134.08, 137.07, 162.30.
【0219】
実施例2
(3−フルオロ−4−モルホリン−4−イル−フェニル)−カルバミン酸ベンジルエステルの製造
J. Med. Chem., 1996, 39, (3), 680−685に記載されスキームIIに示される方法に従って、表題化合物を製造することができた。
【化8】

3−フルオロ−4−チオモルホリン−4−イルアニリン(B)への中間体Aの変換のためのさらなる方法を提供する。
【0220】
方法A
4−(2−フルオロ−4−ニトロフェニル)チオモルホリン(A、250g, 1.03モル)を、メカニカルスターラーが備えられた5000mL三つ口丸底フラスコ中の、オキサン(1400mL)、EtOH(1000mL)及び水(600mL)の混合物へ加えた。撹拌混合物中へ、塩化アンモニウム(166g, 3.1モル)続いて鉄粉(247g, 4.25モル)を、各々一度に加えた。反応物を、激しく撹拌しながら加熱還流した。反応物を計16時間加熱還流し、次いで室温へ冷却した。暗色混合物をEtOAc(800mL)で希釈し、セライトのパッドで濾過し、ペースト状残留物へ真空下で濃縮した。残留物を鹹水(1000mL)及びジクロロメタン(750mL)に分配した。セライトでの1回の濾過によって、相分離を妨げていた粒子を除去した。次いで、水層をさらなるジクロロメタン(750mL)で抽出した。合わせた有機層を無水炭酸カリウムで乾燥し、真空下で濃縮し、暗色固体225gが得られた。この粗製物質をジクロロメタン(1000mL)に溶解し、シリカゲル200g(230−400メッシュ)で処理し、混合物を濃縮乾固した。20−30% EtOAc/ヘキサンで溶出して、プラグをシリカゲル500g(230−400メッシュ、20% EtOAc/ヘキサンを含むスラリーとして充填)で濾過し、その間にフラクション1000mLを集めた。フラクション3〜11を合わせ、濃縮し、3−フルオロ−4−チオモルホリン−4−イルアニリン(B、232g、収率106%)がオフホワイト色固体として得られた。1H NMRは、微量の残留する溶媒と共に所望の物質を示し、これによって、理論よりも多い回収率が説明された。1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ2.8 (m, 4H), 3.2 (m, 4H), 3.6 (s, 2H), 6.4 (m, 2H), 6.8 (m, 1H).
【0221】
方法B
2000mL Parr振盪フラスコに、5%炭素担持スルフィディッドパラジウム(sulfided palladium on carbon)(Johnson MattheyタイプA103038−5、18g)及び4−(2−フルオロ−4−ニトロフェニル)チオモルホリン(A、60g, 0.25モル)を加えた。混合物をMeOH(1050mL)に懸濁し、反応物を50 PSIで7時間水素化した。触媒をセライトでの濾過によって除去し、濾過ケークを新たなMeOHで十分に洗浄した。透明な灰色の濾液を真空下で濃縮し、3−フルオロ−4−チオモルホリン−4−イルアニリン(B、51.3g、収率98%)が灰色固体として得られた。1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ2.8 (m, 4H), 3.2 (m, 4H), 3.6 (s, 2H), 6.4 (m, 2H), 6.8 (m, 1H).
【0222】
実施例3
(5S)−5−{[(4−クロロベンジリデン)アミノ]メチル}−3−(3−フルオロ−4−チオモルホリン−4−イルフェニル)−1,3−オキサゾリジン−2−オンの製造
実施例2の表題化合物(194g, 0.56モル)、及び実施例1の表題化合物(195g, 0.84モル)、及びリチウムtert−ブトキシド(116g, 1.4モル)を、窒素下で3000mL三つ口丸底フラスコ中へ加えた。反応物をメチルtert−ブチルエーテル(1200mL)でスラリー化し、混合物を56℃へ加温し、2時間撹拌し、その間に黄色固体が徐々に形成された。反応物を室温へ冷却し、水1200mLで希釈した。次いで、混合物を60分にわたって激しく撹拌し、その間に固体が暗黄色からより淡黄色の固体へ変化した。混合物を10℃へ冷却し、濾過し、濾過ケークを氷冷メチルtert−ブチルエーテル(450mL)で洗浄した。得られた淡黄色固体を30分間空気中で乾燥し、次いで真空オーブン中に置き、40℃で一晩乾燥し、表題化合物(243g、収率99%)が得られた。1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ2.8 (m, 4H), 3.2 (m, 4H), 3.9 (m, 2H), 4.1 (m, 2H), 5.0 (m, 1H), 6.9 (m, 1H), 7.2 (m, 1H), 7.4 (m, 3H), 7.6 (m, 2H), 8.4 (s, 1H).
【0223】
実施例4
N−{[(5S)−3−(3−フルオロ−4−チオモルホリン−4−イルフェニル)−2−オキソ−1,3−オキサゾリジン−5−イル]メチル}アセトアミドの製造
実施例3の表題化合物(243g, 0.56モル)を、メカニカルスターラーが備えられた5000mL三つ口丸底フラスコ中において、EtOAc(1300mL)及び水(1300mL)と合わせた。混合物を12N HCl(140mL, 1.68モル)で滴下処理し、混合物を室温で1時間激しく撹拌した。層を分離し、水層をEtOAc(1x500mL)で洗浄した。(S)−5−(アミノメチル)−3−(3−フルオロ−4−チオモルホリノフェニル)オキサゾリジン−2−オン塩酸塩を含有する得られた水溶液を、ジクロロメタン(1800mL)及びMeOH(120mL)の混合物を合わせ、激しく撹拌された混合物に無水酢酸(132mL, 1.4モル)を一回で加え、続いて15分間にわたって10 N NaOH(200mL, 2.0モル)で滴下処理した。非常に濃い反応混合物が塩基の添加から生じ、これは、pHが上昇しアシル化が迅速に進行するにつれて、徐々に薄くなった。混合物が2つの相へ分離した後、反応物を1時間激しく撹拌した。その時に、pHが7で安定になるまで、10 M NaOH(160mL, 1.6モル)を混合物へ滴下した。層を分離し、水層をジクロロメタン(250mL)で抽出し、合わせた有機層を無水炭酸カリウムで乾燥した。揮発性物質を真空下で除去し、オフホワイト色固体が得られ、これをメチルtert−ブチルエーテル(250mL)で滴定し、回収し、真空下で乾燥し、表題化合物(5)(186.1g, 収率94%)が、98%を超えるHPLC純度(保持時間=3.93分、下記に報告されるHPLC条件)で、微細な白色固体として得られた。
【0224】
粗製固体を、メカニカルスターラーが備えられた5000mL三つ口丸底フラスコ中におけるジクロロメタン(1250mL)中の温かい6%メタノールに溶解した。溶液を加熱還流し、イソプロパノール(IPA)2500mLを一部ずつ(500mL)添加することによって希釈し、還流を維持するために、温度を50−70℃にランプ制御した。このIPA添加の完了後、還流冷却器を短経路蒸留ヘッドに置き換え、蒸留を冷却されたフラスコ中へ継続した。蒸留の間、蒸留物500mLを回収した後に500mL部分の新たなIPAを添加し、全ての時点で存在するIPAを2000〜2500mLに維持した。この添加の後(内部フラスコ温度は60℃へ低下した)、混合物は僅かに濁り、蒸留の残りについてそのままであり、蒸留物温度が70℃を超えるにつれてますます濁り;蒸留物温度が75℃を超えるにつれて粒状物質が現れた。温度コントローラーを85℃にランプ制御し、蒸留の終了までそこに維持した。蒸留物が明らかにイソプロパノールのみ(82−83℃)になったら、体積を2500mL熱IPAへ減らし、加熱マントルを取り除き、撹拌を停止し、パドルをフラスコから取り除いた。フラスコが冷える間、混合物を結晶化し続けさせた。次いで、白色結晶固体を濾過によって回収し、メチルtert−ブチルエーテル(250mL)で洗浄し、40℃で真空下にて乾燥し、99%を超えるHPLC純度の(保持時間=3.93分、下記に報告されるHPLC条件)、表題化合物180g(収率91%)が得られた。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ1.8 (s, 3H), 2.7 (m, 4H), 3.2 (m, 4H), 3.4 (m, 2H), 3.7 (m, 1H), 4.7 (m, 1H), 7.1 (m, 1H), 7.15 (m, 1H), 7.2 (m, 1H), 8.2 (m, 1H). 質量分析 C16H20FN3O3S: m/z 354.1 (M+1).
本文に記載の分析についてのHPLC条件:HP Series 1100;カラム:Symmetry C8 5uM 4.6 x 50mm;流速1.2mL/分;溶媒A:0.1%ギ酸を含む水、溶媒B:0.1%ギ酸を含むアセトニトリル;注入体積=1mg/mL(アセトニトリル)10uL;勾配:溶媒B 7分間にわたって0−100%、次いで1分間100%B;波長=254nm。
【0225】
生物学的実施例
以下の略語が、下記の実施例において使用され、特に断りのない限り、記載の定義を有する:CFUはコロニー形成単位であり;INHはイソニアジドであり;RIFはリファンピンであり;PZAはピラジナミドであり;MXFはモキシフロキサシンであり、LZDはリネゾリドである。
【0226】
細菌株、マイコバクテリウム・ツベルクローシスH37Rvをマウスにおいて継代し、1mLアリコートで凍結し、使用前に−80℃で保存した。各感染のために、アリコートを解凍し、10%オレイン酸−アルブミン−デキストロース−カタラーゼ(OADC)(Difco, Detroit, MI)及び0.05%Tween 80(Sigma, St. Louis MO)が補われたMiddlebrook 7H9ブロス中において継代培養した。4〜6週齢の、雌性BALB/cマウス(Charles River, Wilmington, MA)を、600nmで約1.0の光学密度を有する対数期ブロス培養物及びInhalation Exposure System(Glas−col Inc, Terre Haute, IN)を使用するエアロゾルによって感染させた。エアロゾル感染後に、マウスを処置群(1時点1群当たり5匹のマウス)へ無作為化した。未処置マウスを、(i)肺に植え付けられたCFUの数を測定するために感染後の日に、及び(ii)処置前のCFUカウントを測定するために処置開始の日に、型通りに屠殺した。
【0227】
下記に記載のテストにおいて使用した本発明の式(I)の化合物及びLZD(Pfizer Inc.
Ann Arbor, MI及びGroton, CT.から得た)を、蒸留水中の95%メチルセルロース(0.5%)及び5%ポリエチレングリコール−200(PEG−200)から構成される溶液中に懸濁した。MXFをBayer(Rolling Meadows, IL)から得、PZAをFisherから得、INH及びRIFをSigmaから得た。蒸留水を使用してストック溶液を毎週調製した。全ての抗生物質溶液を4℃で保存した。
【0228】
特に記載される場合を除いて、抗生物質を、胃管栄養法によって0.2mlで週5日、1日1回投与した。両方のオキサゾリジノン懸濁液を使用前に短時間超音波処理し、投与間に振盪した。RIFを他の薬物の投与の1時間前に提供し、有害な薬物動態学的相互作用を回避した。
【0229】
実施例5
式(I)の化合物のインビトロ活性
式(I)の化合物及びLZDのMICを、10%OADC(Becton−Dickinson, Sparks, MD)が補われたMiddlebrook 7H11寒天上において、寒天希釈法によって測定した。0.125〜4μg/mLの範囲の連続二倍濃度の式(I)の化合物及びLZDを含有するプレートに、マイコバクテリウム・ツベルクローシスH37Rv約5x105 CFUを接種した。37℃で5%周囲CO2にて28日間インキュベートした後に、CFUをカウントした。MICは、細菌増殖の少なくとも99%を阻害するための最小濃度として定義された。
【0230】
マイコバクテリウム・ツベルクローシスH37Rvに対する式(I)の化合物及びLZDのMICは、0.25μg/mLであった。
【0231】
確立された感染症モデルにおける式(I)の化合物及びLZDの用量範囲活性
マウスに4.44±0.04 log10 CFUをエアロゾル経路によって感染させた。平均肺CFUカウントが7.49±0.11 log10であり、平均脾臓質量が105±11mgであった、エアロゾル感染の13日後に開始して、コントロールマウスに以下の処置のうちの1つを受けさせた:INH 25mg/kg、LZD 25mg/kg〜260mg/kg(単回投与及び130mg/kg 1日2回)、及び式(I)の化合物25mg/kg〜100mg/kgの用量。28日後である、処置期間の終了時に、5匹の未処置マウスのうち2匹のみが生存していた。生存しているマウスの平均脾臓質量は、237±16mgへ増加した。
【0232】
対照的に、INH 25mg/kgでの単剤療法は、脾腫(平均脾臓質量=100±1mg)及び死を予防した。未処置コントロールと比較しての脾臓質量の用量依存的減少が、25mg/kg(200±47mg)〜130mg/kg(102±5mg)のLZDの漸増用量で観察された。しかし、LZD 260mg/kg(単回投与として又は130mg/kg 1日2回にかかわらない)で処置されたマウス由来の脾臓は、予想よりも大きく(190±52mg)、LZD 25mg/kg/日で処置されたマウス由来の脾臓とサイズが同様であった。肺病巣の数及びサイズは、260mg/kgを含むLZDの日用量の増加と共に減少したので、260mg/kg/日を受容したマウスにおいて観察された脾腫は、抗結核活性の低下に起因するとは考えられなかった。式(I)の化合物での処置は、25mg/kg用量を含む投与した全ての用量で脾腫を予防した(平均脾臓質量=113±17mg)。
【0233】
生き残った未処置マウスは、ほぼ8 log10へのCFUカウントの増加を経験した。INHでの処置は、平均肺CFUカウントを5.62 log10へ減少させ、ベースライン値と比較して1.87のlog低下を生じさせた。式(I)の化合物を含む全てのレジメンは、25mg/kgでの0.78 log10減少から始まって、ベースラインからの平均CFUカウントの有意な減少をもたらした(p<0.01)。50mg/kgで、式(I)の化合物は、5.28 log10へ平均CFUカウントを減少させることによって殺菌活性(2−log減少基準によって定義される)を示し、INHで観察されたものよりも大きな、2.21のlog低下を生じさせた。LZDもまた用量依存的活性を示したが、その活性は、式(I)の化合物のものよりもより限定的であった。≧100mg/kgのLZD用量でのみ、ベースラインCFUカウントからの有意な減少が示された(p<0.01)。テストした最も高い用量である260mg/kgにおいてでさえ、LZDは、殺菌活性を定義する2−log減少基準を満たさず、僅か1.46のlog低下をもたらした。式(I)の化合物は、テストした各用量で、LZDよりも有意により活性であった。
【0234】
式(I)の化合物25mg/kgでの処置は、LZD 25又は50mg/kgでの処置後に観察されたものよりも低いCFUカウントを生じさせ(p<0.01)、LZD 100又は130mg/kgでの処置後に観察されたものと有意には相違しなかった。50及び100mg/kgで、式(I)の化合物は、いかなる用量のLZDよりも活性であった(p<0.001)。式(I)の化合物及びLZDの総1日量を2つの1日量へ分割することによって、活性に対して明らかな効果(即ち、プラス又はマイナス)は生じなかった(表1)。
【0235】
【表1】

【0236】
従って、式(I)の化合物は、それがヒト等価用量(即ち、100mg/kg)のLZDよりも顕著に活性であることを示し、LZDは、MDR−及びXDR−TBの治療について適応外使用されている、唯一の臨床的に利用可能なオキサゾリジノンである。
【0237】
式(I)の化合物の薬物動態
マウスモデルにおいて式(I)の化合物及びLZDの単回投与及び定常状態薬物動態プロフィールを測定するために、1日1回100mg/kgで式(I)の化合物によって又は1日1回若しくは2回130mg/kgでLZDによって処置されたマウスを使用して、サブ研究を上記の用量範囲研究にネストした(nest)。1群当たり3匹のマウスを、処置の第1投与(D1)後の0.5、1、2、4、8及び24時間で、並びに処置の第24日の(D24)9時間時点(即ち、第2の日用量の1時間後)を加えた上述の時点で、屠殺した。マウスをクロロホルムで麻酔し、心穿刺によって全血を採った。全血を氷上に集め、次いで、遠心分離し、血清を得た。アセトニトリルをサンプルへ添加し、その後、−20℃でガスケット付きスクリューキャップ中に保存した。D24サンプルを集め、同一の様式で処理し、−20℃で保存し、その後、薬物濃度測定のためにD1サンプルと共にPfizer(Groton, CT)へ送った。Hypersil
C18カラム(5μm, 50 x 2.1mm, Thermo Electron Corp, Waltham, MA)並びに移動相A:0.05%5mMギ酸アンモニウムを含む水及びB:アセトニトリル/水/5mMギ酸アンモニウム(80:20:0.05%)からなる段階勾配を使用する、LC(Shimadzu SCL−10A, Kyoto, Japan)−MS/MS(Sciex API 3000, Applied Biosystems Group, Foster City, CA)上へ上澄みを注入した(注入体積10μL)。イオン化はエレクトロスプレーポジティブイオンモードであった。Analyst(Version 1.4.1, Applied Biosystems Group, Foster City, CA)を使用して、生物分析データをキャプチャーした。薬物動態計算は平均血清濃度に基づき、これをノンコンパートメンタルアプローチ(Watson 7.2 Bioanalytical LIMS[The
rmo Electron Corp, Waltham, MA]の助けを借りてのAUC計算についての線形台形公式)を使用して行なった。D24についてのAUC計算において、時間ゼロでの分析物の血漿中濃度を、24時間濃度へ設定した。定量化の下限値(5ng/mL)未満の全ての結果については、動態計算のために、0の濃度を使用した。
【0238】
式(I)の化合物及びLZDについての選択した薬物動態パラメーター値を表2に示す。130mg/kg1日量のLZDは、1日2回600〜625mgを経口投与されたヒトにおいて観察された予想定常状態AUCである215〜294μg−h/mlよりも約50%高い、379μg−h/mlの定常状態を生じさせた(Gee, T. et a; . Antimicrob Agents Chemother 45:1843−1846, 2001;Stalker DJ et al, J Antimicrob Chemother 51:1239−46, 2003を参照のこと)。この用量範囲での線形動態に基づいて、マウスにおけるLZDの100mg/kg用量は、ヒトにおいて得られたそれよりも約3倍高いCmaxを有するにもからわらず、ヒトにおける定常状態AUC範囲の上限を示した。予想通りに、主要なスルホキシド代謝産物及びより少ないスルホン代謝産物への式(I)の化合物の顕著な初回通過代謝が存在した(Barbachyn et al. J Med Chem. 39:680−685, 1996)。これらの代謝産物の各々は、式(I)の化合物についての0.25μg/mLのMIC90に近い、M.ツベルクローシスに対しての0.5μg/mLのMIC90を有するので、各代謝産物の濃度を、薬物動態分析について親の濃度へ加えた。100mg/kg1日量で観察された式(I)の化合物及びその代謝産物についての定常状態AUCは、LZD 130mg/kgで観察されたものよりも約3倍低かった。25mg/kg用量の式(I)の化合物がこの用量のLZDと同じぐらい活性であったという事実は、式(I)の化合物が、両方の化合物についての同様のMICにもかかわらず、LZDよりもインビボで12倍より強力であることを示唆している。
【0239】
【表2】

【0240】
実施例6
組み合わせのインビボ活性
マウスに3.89±0.19 log10 CFUをエアロゾル感染させた。平均肺CFUカウントが7.37±0.05 log10であった、エアロゾル感染の14日後に開始して、コントロールマウスに以下の処置のうちの1つを受けさせた:INH(25mg/kg)単独、RIF(10mg/kg)単独、RIF+PZA(150mg/kg)、RIF+INH+PZA、MXF(100mg/kg)+PZA又はRIF+MXF+PZA。テストマウスに、式(I)の化合物(100mg/kg)単独を受容させたか、又はコントロールレジメンの各々へ追加した。さらなるマウスは未処置であり、ネガティブコントロールとして役立った。脾臓質量及び肺CFUカウントの評価のために、処置の4及び8週間後に、マウスを屠殺した。未処置コントロールマウスは、実験の第2月の間に死んだ。
【0241】
様々な1−、2−及び3−薬物レジメンへの式(I)の化合物の追加の肺CFUカウントに対する相乗効果が、表3において明らかである。
【0242】
【表3】

【0243】
本発明の式(I)の化合物での単剤療法は、最初の28日にわたってベースラインから4.72 log10へのCFUカウントの2.65 log10減少をもたらし、一方、INH及びRIF単剤療法は、それぞれ、5.79及び5.74 log10へ1.58及び1.63 log10だけ、肺CFUカウントを減少させた。著しいことに、本発明の式(I)の化合物は、処置の第2月の間殺菌活性を発揮し続け、2.70 log10 CFUへCFUカウントを減少させ、これは、INH又はRIF単独の活性よりも大きく、かつ、CFUカウントを2.47 log10へ減少させたRIF−INH−PZAの標準第一選択組み合わせレジメンで処置されたマウスにおけるCFUカウントと同様であった。INH及び本発明の式(I)の化合物の組み合わせは、式(I)の化合物単独よりも活性ではなく、一方、RIFと式(I)の化合物とを組み合わせることは、乗法的効果を有し、式(I)の化合物単独で観察されたものよりもほぼ30倍低い平均肺CFUカウントを生じさせた。RIF−PZAの組み合わせは、平均肺CFUカウントを1.05へ減少させた活性を有した。
【0244】
この実施例において、RIF−PZAへのINHの追加は、顕著な拮抗効果を有し、RIF−PZA及びRIF−INH−PZAでの処置の2ヶ月に、それぞれ、1.05±0.44及び2.47±0.18の平均肺CFUカウントがもたらされた。この効果は、RIF−INH−PZAレジメンにおいてINHの代わりに新しい薬物を使用することは、単にINHの拮抗効果が除去されるために、新しい薬物がそれ自体完全に不活性であったとしても、顕著な有利な効果を有するということを誤って示唆し得た。しかし、この実施例において、本発明の式(I)の化合物は、RIF−INH−PZAへ添加されたか又はINHの代わりに使用されたか(即ち、RIF−PZA−式(I)の化合物として)にかかわらず、同様に強力な効果を有した。処置の2ヶ月後、平均肺CFUカウントは、RIF−INH−PZA−式(I)の化合物及びRIF−PZA−式(I)の化合物で処置したマウスにおいて、それぞれ、0.47±0.20及び0.50±0.33であり、RIF−PZA単独を受容したマウスにおける平均肺CFUカウントよりも約3.5倍低い平均肺CFUカウントがもたらされ(p<0.05)、このことは、INHの代わりに本発明の式(I)の化合物を使用することの利益が、INHの拮抗影響の除去に起因しないというさらなる証拠を提供した。本発明の式(I)の化合物はまた、RIF−MXF−PZAレジメンの活性を改善した。2ヶ月間のRIF−MXF−PZAでの処置によって、0.61±0.38の平均肺CFUカウントが生じ、5匹のマウスうちの1匹が培養陰性となり、一方、RIF−MXF−PZA−及び式(I)の化合物での処置によって、0.12±0.27の平均CFUカウントが生じ、5匹のマウスうちの4匹が培養陰性(完全な根絶)となった(平均CFUカウントの差異についてp=0.05)。差異は、低いCFUカウントに恐らく起因して、僅かに統計的に有意であったが、本発明の式(I)の化合物が、レジメンの殺菌活性をさらに改善し再発を予防し得ることを意味している。最後に、2ヶ月のMXF−PZA−式(I)の化合物での処置によって、0.93±0.34の平均肺CFUカウントが生じ、式(I)の化合物無しで観察されたものよりもほぼ175倍低い平均肺CFUカウントが生じ、このことは、本発明の式(I)の化合物が、レジメンの活性を減らすことなく、治療短縮RIF−MXF−PZAレジメンにおいてRIFに取って代わり得ることを示している。
【0245】
実施例7
長期投与及び経過観察後の組み合わせのインビボ活性
マウスに4.45±0.05 log10 CFUをエアロゾル感染させた。平均肺CFUカウントは7.92±0.15 log10であった、エアロゾル感染の14日後に開始して、コントロールマウスに、RIF−INH−PZAを8週間、続いてRIF−INHを8週間受けさせた。テストマウスの1コホートに同一のレジメンを受けさせ、ここへ、式(I)の化合物(160mg/kg)を、16週間の全期間について追加したか、最初の8週間についてのみ追加したか、又は最初の8週間の後のINHの除去を伴って16週間の全期間について追加した。テストマウスの別のコホートにコントロールレジメンを受けさせ、ここへ、LZDを16週間の全期間について追加したか又は最初の8週間についてのみ追加した。さらなるマウスは未処置であり、ネガティブコントロールとして役立った。肺CFUカウントの評価のために、処置の8、12及び16週間後に、マウスを犠牲にした。12又は16週間の処置を完了した後、さらなるマウスを12週間処置無しの状態で維持した。未処置コントロールマウスは、実験の第2月の間に死んだ。
【0246】
最初の8週間の間にコントロールレジメンへ式(I)の化合物(「U」と省略する)を追加することによる肺CFUカウントに対する相乗効果は、表4において明らかである。コントロールレジメンの殺菌効果は、2桁増加した。この効果は、LZDを追加することの拮抗効果とは、量的及び質的に相違する。
【0247】
【表4】

【0248】
式(I)の化合物(表4において「U」と省略する)を含むレジメンでの処置は、他のレジメンを受容したマウスと比較して、12及び16週間の処置の完了後の再発(完全な根絶のゴールドスタンダード基準)の可能性がより低かった。コントロールレジメンでの処置の12週間後、全てのマウスが培養陽性のままであり、100%再発率を示すと予想された。これは、16週間の処置後の90%再発率によってさらに支持される。
【0249】
対照的に、全16週間について式(I)の化合物を含むレジメンを受容した群は、12週間後に40%及び16週間に5%の平均再発率を有した。式(I)の化合物が最初の8週間についてのみコントロールレジメンへ追加された場合、12及16週間の総処置期間の後、それぞれ、85%及び35%のマウスが再発した。他方では、LZDの追加は、拮抗的であり、いずれのマウスにおいても完全な根絶を妨げた。全体として、これらのデータは、式(I)の化合物は、標準第一選択レジメンと組み合わされた場合に相乗効果を有し、効能を犠牲にすることなく1〜2ヶ月治療期間を短縮することができることを示している。
【0250】
従って、式(I)の化合物は、結核の治療に有用な少なくとも2つの薬剤と組み合わされる場合に相乗効果を有する。最も重要なことには、式(I)の化合物と結核の治療用の少なくとも2つの薬剤とを組み合わせることによって殺菌活性が劇的に増加し、このことは、それが薬剤感受性TB並びにMDR−TBについての化学療法の期間を短縮し得ることを示唆している。
【0251】
実施例8
実施例8A
標準第一選択薬剤であるリファンピン、イソニアジド、及びピラジナミドと組み合わせての4週間用量範囲研究
実施例8は、上記実施例6に記載の様式と同様のマイコバクテリウム・ツベルクローシスをマウスに感染させた研究の結果を示す。コントロール以外の、全てのマウスを以下の3つの薬物で処置した:
1)リファンピン、10mg/kg(R)、
2)イソニアジド、25mg/kg(H)、及び
3)ピラジナミド、150mg/kg(Z)。
【0252】
マウスを8つグループに分割し、6つのグループに種々の用量の式Iの化合物(「U」)を受容させた。12.5mg/kg〜160mg/kgの範囲の用量を下記表5に列挙する。
【0253】
研究を下記の様式で行なった。6週齢雌性BALB/cマウスにエアロゾル経路によってマイコバクテリウム・ツベルクローシスH37Rvを感染させた。その日に(D−17)、5匹のマウスを屠殺し、肺に植え付けられたCFUの数を測定した。17日後(D0)に、5匹のさらなるマウスを屠殺し、肺中のベースラインCFUカウントを測定した。残りのマウスを、表5に示される通りに処置群へ無作為化し、指定の薬物レジメンを開始した。その間ずっと(throughout)週3回の処置(3/7)を受容したグループ8を除いて、処置を週5日、1日1回施した。4週間テスト期間の終わりに、下記のグループ4の80匹の動物を除いて、全ての動物を肺CFUカウントのために屠殺した。これらの動物を、下記実施例8Bにおいて記載される8週間プロトコルにおいて使用した。
【0254】
【表5】

【0255】
上述したように、式Iの化合物は、CFU数に対して用量依存的効果を示した。RHZの標準レジメンへのこの化合物の追加は、肺内に含まれるTBコロニーの数をさらに減少させた。
【0256】
実施例8B
8週間用量範囲研究
リファンピン(R)、イソニアジド(H)、及びピラジナミド(Z)と共に式Iの化合物(U)25mg/kgを受容させたグループ4(実施例8A)のマウス80匹を、研究の第2段階において評価した。それらを下記表6に記載のグループのうちの1つへ割り当て、研究をさらに4週間継続した(即ち、8週間の結果)。
【0257】
【表6】

【0258】
上述したように、5匹の動物はコントロールとして役立ち、これらにはさらなる薬物を与えなかった。5匹にリファンピン(R)及びイソニアジド(H)の組み合わせを与え、5匹にイソニアジド(H)又はリファンピン(R)のみを与えた。12の残りのグループのうち、12.5mg/kg〜160mg/kgの範囲の用量の式(I)の化合物を全てに与えた。これらのグループのうちの6つにさらにリファンピン(R)を投与した。リファンピン及びイソニアジドを、実施例8Aにおけるのと同一の様式及び同一の量で投与した。
【0259】
8週間実験の終わりに、全ての動物を屠殺し、CFU肺カウントを得た。以下の結果が得られた:
【0260】
【表7】

【0261】
この第2段階の開始に、80匹の動物は、4.19+0.26の平均を有した(犠牲にしたグループ4の他のマウスに基づく)。表7は、コントロール群、リファンピン(R)のみ、イソニアジド(H)のみ、並びにイソニアジド(H)及びリファンピン(R)の両方の組み合わせで得られた結果を示す。
【0262】
表8は、式(I)の化合物(U)を単独で又はリファンピン(R)と組み合わせて受容させたマウスで得られた結果を示す。
【0263】
【表8】

【0264】
式Iの化合物(U)は、RHZU25での処置の最初の4週間後に生存可能なままであった存続結核菌に対して用量依存的殺菌活性を示した。以下の効果がU単剤療法で観察された:12.5mg/kgで増殖阻害効果、25mg/kgで静菌効果、50mg/kgで>0.5 log減少、100mg/kgで>1 log減少、及び160mg/kgで約2 log減少。リファンピン(R)及び式(I)の化合物Uの組み合わせは、相乗的であり、存続生物に対して強力な殺菌活性を有することがわかった。式(I)の化合物Uを≧25mg/kgの用量で投与した場合、それとリファンピンRとの組み合わせは、リファンピン(R)及びイソニアジド(H)の標準レジメンよりも有効であった。U単独での結果は、U含有レジメンは、多剤耐性結核及び広範囲薬剤耐性結核の両方について治療期間を顕著に短縮することができる場合があるという結論を支持している。
【0265】
実施例8C
追加の用量範囲研究
上記実施例8A及び8Bに記載のプロトコルを、代替の場合において行なった。唯一の本質的な変更は、1群当たりの動物数及び最初のインキュベーション期間であった。表9は、得られた結果を提供する。
【0266】
【表9】

【0267】
直前のテスト群2のマウス60匹を用いてさらに4週間、テストを継続した。マウスに、種々の用量で、U単独を受容させたか、又はU及びRの組み合わせを受容させた。以下の結果が得られた。
【0268】
【表10】

【0269】
上述したように、式Iの化合物は、CFU数に対する用量依存的効果を示した。リファンピン(R)及びイソニアジド(H)の標準レジメン並びにリファンピン(R)単独へのこの化合物の追加によって、4週間及び8週間の両方で、肺内に含まれるTBコロニー数がさらに減少した。
【0270】
実施例9
実施例9において、既存の第一及び第二選択抗結核薬に対する式Iの化合物の効果を評価した。化合物の2つの用量、25mg/kg及び100mg/kgを評価した。以下の標準抗結核薬を指定の用量で評価した:
1)イソニアジド、10mg/kg(H)
2)リファンピン、10mg/kg(R)
3)ピラジナミド、150mg/kg(Z)
4)エタンブトール 100mg/kg(Eb)
5)モキシフロキサシン 100mg(M)
6)エチオナミド 50mg/kg(Et)
7)アミカシン 150mg/kg皮下に(A)
8)サイクロセリン 250mg/kg 1日2回(Cs)
9)パラアミノサリチル酸 750mg/kg(Ps)
10)カプレオマイシン 125mg/kg皮下に(Cap)
11)クロファジミン 20mg/kg(C)
【0271】
研究を以下の方法で行なった:
方法
マウス:雌性BALB/c、6週齢
感染:約104 CFU M.ツベルクローシスH37Rvでのエアロゾル感染、続いての処置群への無作為化
処置:感染の14日後に開始し(D0)、このとき、マウス肺中のCFUカウントは108 CFUであった。
全ての薬物を、週5日、経口経路によって(アミカシン及びカプレオマイシン−皮下注射を除く)、1日1回(サイクロセリン−1日2回を除く)与えた。
肺中のCFUカウントのためのマウスの屠殺:実験スキームに従って、感染後の日(D−13)及び2週間後(D0)に、4匹のマウスを屠殺し、それぞれ、植え付けられたCFUの数、及び処置開始時のベースラインCFUカウントを評価した。各レジメンの活性を、処置の4週間後に肺CFUカウントによって評価した。
【0272】
結果
マウスに約4.5 log10 CFUを感染させた。14日後、第0日の処置開始時の肺CFUカウントは、約8.3 log10であった。未処置マウスは、感染の最初の3週間内に死んだ(表11)。ピラジナミド(Z)、サイクロセリン(Cs)、及びカプレオマイシン(Cap)で処置したマウスの生存は、未処置コントロールは顕著には相違しなかった。パラアミノサリチル酸(Ps)での処置は、死を遅らせたが、死を妨げなかった。エタンブトール(Eb)及びクロファジミン(C)での処置は、一部の死を妨げたが、全ての死を妨げるわけではなかった。イソニアジド(H)、リファンピン(R)、モキシフロキサシン(M)、アミカシン(A)及びエチオナミド(Et)での処置は死を妨げ、式Iの化合物(U)での処置は、いずれの用量でも、単独又は他の薬物との併用に関わらず、死を妨げた。
【0273】
【表11】

【0274】
生存の測定に加えて、さらに肺CFUカウントを、上述のように測定し、下記表12において報告する。
【0275】
【表12】

N/A、W4の前に4匹のマウスのうちの4匹が死んだために得ることができなかった;
* 4匹のマウスのうち2匹が生き残った;
** 4匹のマウスのうち3匹が生き残った;
*** CFUカウントは、4匹のマウスのうちの2匹について3.40の検出下限値未満であった。
【0276】
データのレビューは、式Iの化合物(U)の追加が、標準抗結核薬へ追加した場合、用量依存的様式で細菌負荷を顕著に減少させたことを示している。これらの結果は、式Iの化合物は、薬剤耐性結核(多剤耐性又は広範囲薬剤耐性)についての治療レジメンの効能を改善するために使用され得ることを示唆している。
【0277】
本明細書に引用される全ての特許、出願、刊行物、試験方法、文献、及び他の資料は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み入れられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結核の治療用の医薬の製造における少なくとも2つの抗結核剤と組み合わせての式:
【化1】

の化合物又はその薬学的に許容される塩の使用。
【請求項2】
少なくとも2つの薬剤が、イソニアジド、リファンピン、リファペンチン、リファブチン、ピラジナミド、エタンブトール、ストレプトマイシン、カナマイシン、アミカシン、モキシフロキサシン、ガチフロキサシン、レボフロキサシン、オフロキサシン、シプロフロキサシン カプレオマイシン、エチオナミド、サイクロセリン、パラアミノサリチル酸、チアセタゾン、クラリスロマイシン、アモキシシリン−クラブラン酸、イミペネム、メロペネム、バイオマイシン、テリジドン、TMC207、PA−824、OPC−7683、LL−3858及びSQ−109からなる群より選択される、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
少なくとも2つの薬剤のうちの1つが、イソニアジド、リファンピン、リファペンチン、リファブチン、ピラジナミド、モキシフロキサシン、ガチフロキサシン、レボフロキサシン、オフロキサシン、シプロフロキサシン、及びエタンブトールからなる群より選択される、請求項1に記載の使用。
【請求項4】
少なくとも2つの薬剤のうちの1つが、ピラジナミド、リファンピン、リファペンチン及びイソニアジドからなる群より選択される、請求項1に記載の使用。
【請求項5】
結核についての、治療初期段階を被験体が受けた後に結核を治療するための医薬の製造における少なくとも1つの抗結核剤と組み合わせての式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩の使用:
【化2】

【請求項6】
少なくとも1つの薬剤が、リファンピン、リファペンチン、リファブチン、ピラジナミド、エタンブトール、ストレプトマイシン、カナマイシン、アミカシン、モキシフロキサシン、ガチフロキサシン、レボフロキサシン、オフロキサシン、シプロフロキサシン、カプレオマイシン、エチオナミド、サイクロセリン、パラアミノサリチル酸、チアセタゾン、クラリスロマイシン、アモキシシリン−クラブラン酸、イミペネム、メロペネム、バイオマイシン、テリジドン、TMC207、PA−824、OPC−7683、LL−3858及びSQ−109からなる群より選択される、請求項5に記載の医薬。
【請求項7】
活動性結核が、薬剤感受性結核、単剤耐性結核、多剤耐性結核(MDR)及び広範囲薬剤耐性結核(XDR)からなる群より選択される、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
i)治療有効量の式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩:
【化3】

(ii)治療有効量の結核の治療において有用な少なくとも1つの薬剤、及び
(iii)1つ又はそれ以上の薬学的に許容される担体又はビヒクル
を含む、薬学的組成物。
【請求項9】
少なくとも1つの薬剤が、イソニアジド、リファンピン、リファペンチン、リファブチン、ピラジナミド、エタンブトール、ストレプトマイシン、カナマイシン、アミカシン、モキシフロキサシン、ガチフロキサシン、レボフロキサシン、オフロキサシン、シプロフロキサシン、カプレオマイシン、エチオナミド、サイクロセリン、パラアミノサリチル酸、チアセタゾン、クラリスロマイシン、アモキシシリン−クラブラン酸、イミペネム、メロペネム、バイオマイシン、テリジドン、TMC207、PA−824、OPC−7683、LL−3858及びSQ−109からなる群より選択される、請求項8に記載の薬学的組成物。
【請求項10】
少なくとも1つの薬剤が、イソニアジド、リファンピン、リファペンチン、リファブチン、ピラジナミド、モキシフロキサシン、ガチフロキサシン、レボフロキサシン、オフロキサシン、及びエタンブトールからなる群より選択される、請求項8又は9に記載の薬学的組成物。

【公表番号】特表2012−502017(P2012−502017A)
【公表日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−525657(P2011−525657)
【出願日】平成21年8月31日(2009.8.31)
【国際出願番号】PCT/IB2009/053796
【国際公開番号】WO2010/026526
【国際公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【出願人】(593141953)ファイザー・インク (302)
【出願人】(504457614)ザ・ジョンズ・ホプキンス・ユニバーシティ (2)
【Fターム(参考)】