結腸洗浄装置
本発明は、主に、チャネル、開口部および/またはノズルによって穴が開けられた少なくとも1つの弾性変形可能な遠位プラグを備える体内通路洗浄装置であって、前記プラグは、駆動要素の遠位端に接続され、前記装置はさらに、同軸状に駆動要素を取り囲む部分長さのインナーチューブと、同軸状に前記インナーチューブを取り囲む部分長さのアウターチューブとを備える、体内通路洗浄装置を対象とする。本発明はさらに、上述の洗浄装置と共に使用するのに適した近位制御ハンドルを包含する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、国際出願PCT/IL2009/000346号明細書(国際公開第2009125387号として公開)に記載され請求されている結腸洗浄装置の改良を提供する。これらの改良は、以下の2つの要素に関する。
(a)上述した結腸洗浄装置のインナーチューブ、ガイドワイヤ、および遠位噴霧ヘッドを取り囲むように配置されるアウターチューブ。
(b)結腸洗浄装置をポンプや制御装置のような適切な補助装置に接続したときに、吸引、パワー吸引、および灌注の3つのモードで使用できるようにする改良型近位ハンドル。
【背景技術】
【0002】
概して、ここで開示される改良は、(とりわけ)、結腸内腔などの体腔もしくは体内通路の内腔および内壁を洗浄するための内視鏡ワーキングチャネルでの使用に適した装置に関する。本装置は、固形および半固形の残屑を効果的に軟らかくすることができる流体噴霧部と、噴霧流体を(剥がれた固形および半固形残屑と一緒に)除去するための吸引システムとを提供する。前記装置は、ガイドワイヤの遠位端に取り付けられる遠位のプラグ/噴霧ヘッドを備える。本発明の装置はさらに、ガイドワイヤの近位端から伸びて前記ガイドワイヤの遠位端から数センチメートルの位置で終端する、非折り畳み式部分長さのカテーテルもしくはチューブを備える。この固有の構造により、この構造でなければ洗浄工程で生じるであろう内視鏡のワーキングチャネルの閉塞を防いで取り除く能力によって、処理または洗浄される体腔を最適に灌注および吸引することができる。さらに、(上述した)本発明の装置は、同軸状にインナーチューブを取り囲む第2のアウターチューブを備える。このアウターチューブの存在が、洗浄装置に多数の明白な利点をもたらすが、この利点の全てについて以下に説明する。これらの利点の最も重要な利点の1つは、機能的に、アウターチューブは、共有特許の国際出願PCT/IL2009/000346号明細書(国際公開第2009125387号として公開)に開示されている装置が内部で機能するように設計されている内視鏡ワーキングチャネルに代替するものと見なすことができるということである。すなわち、アウターチューブの存在により、本明細書に記載されている洗浄装置はワーキングチャネル(または任意の他の器具の内腔)か、自然のチャネルもしくは通路(例えば、結腸内腔)のいずれかの内部で機能することができる。したがって、便宜上、以下の説明の大部分は、本発明の装置が内視鏡ワーキングチャネル内に配置されることを想定したものであるが、同時に、前記装置は結腸などの自然の体内通路内で直接使用されてもよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2009/125387号
【特許文献2】国際公開第2009/095915号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、通路(例えば、内視鏡ワーキングチャネルまたは自然の体内通路)の遠位端の先端に位置する結腸または他の体腔を、外傷や組織損傷を生じることなく効果的に洗浄することができるジェット噴霧を発生させるために、十分に高い圧力で洗浄流体を前記通路の遠位端に位置する噴霧ヘッドまたはノズルに供給するための手段および技術を提供することである。この目的を達成するのに解決すべき重要な技術的課題は、灌注流体を噴霧ヘッドに供給するための別のカテーテルを必要とせずに、ジェット噴霧が形成されるように十分に高い圧力および高い流量のヘッドを創出することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明により提供される解決策は、最も一般的な形では、1本のコアワイヤまたはマルチコアストランドまたは(いくつかの実施形態では)非常に小さい直径のチューブ(例えば、直径が約0.4mm〜1.5mm)から成る細いガイドワイヤ(例えば、直径が約0.3mm〜0.8mm)に取り付けられる遠位噴霧ヘッドユニットまたはプラグを備える。この噴霧ヘッドは、ワーキングチャネルの遠位出口を部分的または完全に塞ぐようにできる有孔プラグとして有効に機能する。したがって、前記遠位出口を部分的に塞ぐ場合には、灌注流体はワーキングチャネルを通って供給され、前記流体は、前記ワーキングチャネルの遠位端のすぐ遠位に位置する体腔(例えば、結腸)の領域に向けてジェット散乱の形で、より高い圧力で噴霧ヘッドから放出される。
【0006】
灌注流体は、以下のようにして噴霧ヘッドユニットに供給され得る。灌注流体は、正圧送水ポンプ(蠕動ポンプ、遠心ポンプ、投与ポンプ、歯車ポンプなど)を使用して、ポンプ出口圧力が2〜10気圧ひいては出口ノズル圧力が2〜8気圧で、内視鏡ワーキングチャネル(または他の通路)へと供給される。流量は、0.2〜2リットル/分とすることができる。標準的なLuer部品を使用した封止要素、アダプタ、およびコネクタを使用してもよい。上述した圧力および流量のパラメータは単に例示のために示されているのであって、決して本発明を限定するものではないことが強調される。
【0007】
したがって、本発明は、主として、内視鏡チャネルを通すのに適し、近位端と遠位端とを有する少なくとも1つの遠位プラグを備え、前記少なくとも1つのプラグは、前記近位端から前記遠位端に流体を通すことができるチャネル、開口部およびまたはノズルを備える体内通路洗浄装置であって、
前記プラグは、駆動要素(例えば、ワイヤ、チューブ、コードまたはロッド)の遠位端に接続され、
前記遠位プラグの少なくとも外側部は、その外側輪郭または直径がそこに作用する内向きの圧縮力に応じて小さくなるように弾性変形可能であり、
前記チャネル、開口部および/またはノズルは、前記遠位プラグが前記圧縮力を受けているときは閉鎖形態になり、前記プラグが前記圧縮力を受けていないときには開放形態になり、
前記装置はさらに、同軸状に駆動要素を取り囲む部分長さのインナーチューブを備え、前記チューブは前記駆動要素の近位端から伸び、前記駆動要素の遠位領域の一部が前記チューブによって囲まれない状態になるように前記チューブの長さは前記駆動要素の長さより短く、
前記装置はさらに、同軸状に前記インナーチューブを取り囲む部分長さのアウターチューブを備える、洗浄装置を対象とする。
【0008】
本発明の装置の特に好適な一実施形態では、駆動要素はワイヤ(本明細書では、ガイドワイヤとも言う)である。
【0009】
本発明の開示のために、用語「遠位噴霧ヘッドユニット」および同等の用語は、用語「遠位プラグ」と同じ意味で使用される場合があることに留意されたい。さらに、用語「遠位」は、操作者から離れた方向で患者の身体の中心の方向を指すことに留意されたい。したがって、用語「近位」は、その反対方向を指すと見なされる。
【0010】
本発明の一部として使用できる適切な遠位噴霧ヘッドユニットの例は、共有特許の国際出願PCT/IL2009/000346号明細書(国際公開第2009125387号として公開)ならびに共有特許の国際出願PCT/IL2009/000112号明細書(国際公開第2009/095915号として公開)に開示され、詳細に記載されている。これらの特許内容全体を両方とも本参照によって本明細書に組み込まれたものとする。
【0011】
本発明の好適な一実施形態では、内向きの圧縮力を受けていないときの遠位プラグの外径は、内視鏡ワーキングチャネルの内径よりわずかに大きい。多くの場合、結腸内視鏡のワーキングチャネルの内径は3.8mmであり、通常、2mm〜4mmである。
【0012】
装置の特に好適な一実施形態では、遠位プラグはOリングを備える。
【0013】
上述した追加のアウターチューブにより、結腸洗浄装置は以下のさらなる利点が得られる:
独立構成により、内視鏡ワーキングチャネルを含む任意の内腔(自然または器具)内で本装置を使用することができる。
本装置は、ワーキングチャネルおよび/または他の自然もしくは器具の内腔の遠位端を超えて伸びることができる。
このアウターチューブ上にカメラが含まれ、このカメラにより洗浄時により遠くの領域を見ることができる。
吸引および灌注は、このアウターチューブとインナーチューブとの間の隙間を通って行われる。
このアウターチューブは、可撓性、半剛性もしくは剛性の構造にすることができる。
【0014】
図1に、本発明の装置10の典型的な実施例が示されている。遠位噴霧ヘッド12は、可撓性ガイドワイヤ14に取り付けられた状態で示されており、このガイドワイヤ14は部分長さのインナーチューブ16の内腔内に同軸状に(および可動に)配置される。前記インナーチューブは、アウターチューブ18によって囲まれ、このアウターチューブ18自身は、一部が内視鏡ワーキングチャネル20の内腔または何らかの他の器具もしくは自然の内腔内に含まれる。本装置が内視鏡ワーキングチャネル(もしくは同様の器具の内腔)で使用される場合には、前記ワーキングチャネルへの近位入口にある装置の周囲に付着封止部が挿入されることに留意されたい。生体適合性のあるゴム、プラスチック、もしくは金属のような可撓性材料で構成され得るこの封止要素は、操作者側に灌注流体および残屑が噴霧されるのを防ぐ。さらに、封止要素の存在は、本装置のインナーチューブとアウターチューブとの間の空間に印加される吸引負圧の完全性を維持するのに必要である。
【0015】
本発明の装置内に上述のアウターチューブがあることで、液体および残屑の吸引がワーキングチャネル自身ではなく、(インナーチューブとアウターチューブとの間の空間にある)前記装置によって行うことが可能になる。したがって、この構造は、収集容器への廃棄ラインに沿って、一方向弁を介して、吸引された液体および固形材料を案内するために、ワーキングチャネルの近位端にYコネクタを含むことが必要である。
【0016】
別の態様では、本発明はさらに、本発明の装置などの内視鏡を操作するのに使用できる近位ハンドルを提供する。前記ハンドルは、さまざまな内腔および導管に流れを方向付けるための新奇な機構を組み込む。また、前記ハンドルは、上述の部分長さのアウターチューブを組み込んだ結腸洗浄装置と共に使用する以外に、この装置の変形形態(例えば、アウターチューブを備えない)と共に使用してもよく、実際には他の内視鏡と共に使用してもよいことが強調される。
【0017】
したがって、上述した体内通路洗浄装置の特に好適な実施形態では、前記装置はさらに近位制御ハンドルを備え、
インナーチューブとアウターチューブの両方の近位端は前記ハンドルに接続され、
駆動要素(例えば、ガイドワイヤ、コード、ロッド、チューブなど)の近位端は、前記ハンドルに可動に接続され、
前記ハンドルは、前記ハンドルと前記駆動要素の遠位端との間の間隔を変更する手段を備え、
前記ハンドルは、流体供給チャネルの出口を1つまたは複数の流体出口チャネルに向けるための切り替える手段を備え、
前記ハンドルは、流体出口チャネル間の前記切り替えを、前記ハンドルと駆動要素の遠位端との間の間隔を変更する前記手段と連携させるための結合手段を備える。
【0018】
この態様の本発明の好適な一実施形態では、駆動要素はワイヤである。
【0019】
この態様の本発明の好適な一実施形態では、近位ハンドルとガイドワイヤの遠位端との間の間隔を変更する手段は、前記ハンドルの外表面に可動に装着されるスライダ機構を備え、前記ガイドワイヤの近位端は前記スライダ機構に接続される。適切なスライダ機構の詳細については、共有特許の国際出願PCT/IL2009/000346号明細書(国際公開第2009125387号として公開)に記載されている。この特許内容全体を本参照によって本明細書に組み込まれたものとする。
【0020】
この態様の本発明の好適な一実施形態では、上述の切り替える手段は、多方向流体弁を備える。
【0021】
好適な一実施形態では、結合手段は、上述したスライダ機構と前記切り替える手段の両方に接続される機械的アクチュエータ(例えば、細長いストリップ、ロッドまたはバーの形)を備える。
【0022】
好ましくは、すぐ上で説明した近位ハンドルは、部分長さのインナーチューブの内腔と流体連通した1つの流体出口チャネルと、前記インナーチューブの外表面とアウターチューブの内壁との間にある空間と流体連通した第2の流体出口チャネルとを備える。
【0023】
上述の近位制御ハンドルにより、洗浄装置を以下の3つの動作モードで切り替えることができる。
1.灌注モード:ノズル(噴霧ヘッドユニット)は、実質的なノズル噴霧を形成するワーキングチャネルの遠位縁部に配置される。灌注流体(例えば、生理食塩水)は、上述した洗浄装置のインナーチューブとアウターチューブとの間の空間にあるワーキングチャネル(または他の器具もしくは自然の内腔)を通って流される。流れの制御は、半自動的に所定の流れおよび圧力レベルのボタンを押すこと、あるいはペダルスイッチを押すことのいずれかによって行われる。
2.吸引モード:ノズルは、ワーキングチャネルの外側、好ましくは、ワーキングチャネルの遠位側5mm〜20mmの位置に配置される。真空圧力が印加されて、液体および糞便の残りがインナーチューブとアウターチューブとの間の空間を通って吸引されるが、この装置はまだ洗浄される体腔内にある。
3.パワー吸引モード:遠位ヘッドは、内視鏡ワーキングチャネルの遠位出口を完全に封止するように位置決めされる。真空圧力の他に遠位に向かう流れの正圧が、部分長さのインナーチューブの内腔を通って印加されて、吸引プロセスを助けて、残屑によるワーキングチャネルの閉塞を防ぎまたは除去する。
【0024】
したがって、上述した3つの異なる動作モードの概要から、近位ハンドルが以下の2つの重要な機能を果たすことができる要素を有することが理解され得る:
a)上述したさまざまな位置間で遠位噴霧ヘッドを移動させる機能。
b)灌注流体を所望の経路に(すなわち、ワーキングチャネルをきれいにする際には部分長さのインナーチューブの内腔に、通常の灌注の際にはインナーチューブとアウターチューブとの間の空間に)に迂回させる機能。
【0025】
特に、本発明の灌注/吸引装置と共に使用する際には、近位制御ハンドルは、内視鏡手術時には他の目的、例えば、結腸内腔にインクまたは他のマーカー材料を注入するために使用することもできることに留意されたい。
【0026】
本発明の近位ハンドルの種々の好適な実施形態について、添付の図面を参照しながら説明する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の装置の典型的な例を示す図である。
【図2】本発明の近位ハンドルの第1の実施形態の全体図である。
【図3】近位ハンドルの第1の実施形態の弁アクチュエータ機構の拡大図である。
【図4】本発明のウォータボックス(マニホールド)の第1の実施形態を示す図であり、前記ウォータボックスを使用してそれに接続される結腸洗浄装置を異なる動作モード間で切り替える方法を示す図である。
【図5A】本発明のウォータボックス(マニホールド)の第1の実施形態を示す図であり、前記ウォータボックスを使用してそれに接続される結腸洗浄装置を異なる動作モード間で切り替える方法を示す図である。
【図5B】本発明のウォータボックス(マニホールド)の第1の実施形態を示す図であり、前記ウォータボックスを使用してそれに接続される結腸洗浄装置を異なる動作モード間で切り替える方法を示す図である。
【図6】本発明のウォータボックス(マニホールド)の第1の実施形態を示す図であり、前記ウォータボックスを使用してそれに接続された結腸洗浄装置を異なる動作モード間で切り替える方法を示す図である。
【図7】外スライダを使用して、接続された結腸洗浄装置を異なる動作モード間で切り替える方法を示す図である。
【図8】本発明の近位ハンドルの第2の実施形態であり、外スライダが遠位に押されることで、接続された洗浄装置が灌注モードで動作することができる形態を示す図である。
【図9】本発明の近位ハンドルの第2の実施形態であり、外スライダが近位に引き寄せられることで、接続された洗浄装置がパワー吸引モードで動作することができる形態を示す図である。
【図10】近位ハンドルの第2の実施形態のウォータボックス(マニホールド)の拡大図であり、接続された結腸洗浄装置のインナーチューブの内腔およびインナーチューブとアウターチューブとの間の空間の両方に流体を流すことができる形態を示す図である。
【図11】近位ハンドルの第2の実施形態のウォータボックス(マニホールド)の拡大図であり、接続された結腸洗浄装置のインナーチューブの内腔にのみ流体を流すことができる形態を示す図である。
【図12】外スライダの位置を変えることによりマニホールドの弁レバーの位置を制御するのに使用される種々の要素を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
近位ハンドル:第1の実施形態
図2に本発明の近位制御ハンドルの好適な一実施形態が概略的に示されている。この実施形態では、ハンドルは、ハンドルシェルから成る本体と、ガイドワイヤの軸方向(遠位−近位)の移動を制御することによって遠位噴霧ヘッドユニットの位置を制御するのに使用されるスライダとを備える。図2からわかるように、近位ハンドルは、ハンドル機構22の外から見える部分の他に、その遠位部に、ウォータボックス24も備える。このウォータボックス24は、灌注流体の流れをポンプから本装置の遠位端の方に関連経路に沿って方向付けるのに必要な要素を含む。特に、ウォータボックスに収容される機構により、灌注流体を灌注モードとウォータチャネル清浄モード(パワー吸引)モードとで経路選択できるようになる。
【0029】
図示されているように、ウォータボックスの出口は、(ガイドワイヤによって)遠位噴霧ヘッド26に接続される。
【0030】
図3は、内部にあるスライダ34に接続された外スライダ32を含む近位ハンドルの作動部品のより詳細な図である。このスライダ34は、ウォータ弁30を回転させるアクチュエータを移動させるためのものである。この図に示されている例では、この弁は、最先端のストップコック弁に似ている。スライダが移動するチャネルは、操作者がスライダの位置(ひいては、装置の今の動作モード)に関する触覚フィードバックを受け取ることができるように刻み目が入れられてもよい。
【0031】
図4は、ウォータボックス24および本発明の洗浄装置の他の重要な部品との関係を詳細に示す図である。したがって、ウォータ弁30は、流体溜めまたは他の外部流体源から送られた灌注流体を受け取る灌注流体入口42の近くに示されている。この流体の流入は、その後、(ウォータ弁レバーの位置に応じて)2つの流体チャネル経路の一方または両方、つまり、インナーチューブ16とアウターチューブ18との間の空間および/または前記インナーチューブ16の内腔に方向付けされる。最後に、この図4は、インナーチューブ16の内腔内のガイドワイヤ14の位置も示している。ガイドワイヤ封止要素44(例えば、Oリング)は、ガイドワイヤ14の周囲の流体の喪失を防ぐと同時に、前記ガイドワイヤがウォータボックス24の中を軸方向に移動するのを円滑にするために本装置に組み込まれる。
【0032】
チュウービングおよびウォータ経路は、主な2つのモードで構成される:
1)常に開放しているインナーチューブ内腔を通る灌注。
2)開放しているか閉鎖しているインナーチューブ内腔を通る灌注。
【0033】
これらの2つのモードのうちの第1のモード(「常に開放しているモード」)は、図5Aおよび図5Bに示されている。したがって、図5Aでは、ウォータ弁レバーは、灌注流体が同時に2つのチャネル、つまり、インナーチューブの内腔(チャネルA)とインナーチューブとアウターチューブとの間の空間(チャネルB)とを通って流されるように位置決めされる。この灌注モードは、遠位噴霧ヘッドが内視鏡ワーキングチャネルの遠位出口に来て静止するように、操作者がスライダを前方に(遠位に)押して、その後わずかに引き寄せることで行われる。同時に、スライダに接続されたアクチュエータがウォータ弁を所望の位置に移動させ、そのことでチャネルAとチャネルBの両方は灌注流体源と流体連通することになる。この状態で、チャネルAおよびチャネルBを通って遠位に送られる灌注流体は、ワーキングチャネルの遠位端を越えてすぐの位置にある体腔(例えば、結腸)の領域を洗浄するのに使用できる流体噴霧状で遠位噴霧ヘッドの開口部を通過する。
【0034】
次に、本装置は、操作者がスライダをさらに引き寄せること(すなわち、近位移動)により灌注モードからパワー吸引モード(図5Bに示されている)に切り替えられ、その結果、遠位噴霧ヘッドが遠位ワーキングチャネル出口に対してより強く圧縮され、そのことにより、遠位ヘッド開口部を閉鎖して、これ以上流体が前記遠位ヘッドに移動するのを防ぐ。アクチュエータがそれに対応して移動することで弁はチャネルBが閉鎖される位置まで回転されるが、チャネルAは開放位置のままである。このモードでは、送られた流体はインナーチューブの内腔(すなわち、チャネルA)を通過する。その後、(このモードでは)チャネルBと流体接触する近位ハンドルの吸引口に負圧が印加される。このようにして、インナーチューブ内腔の遠位端を出る灌注流体は、インナーチューブとアウターチューブとの間の空間(チャネルB)を通って近位で吸引される。
【0035】
上述した主なモードの2つ目のモード、すなわち、ウォータ弁レバーの位置に応じて、インナーチューブ内腔が(灌注流体入口に対して)閉鎖または開放のいずれかの状態であるモードが図6に示されている。図6の左側のパネルでは、チャネルAが開放している状態を示しており、灌注流体がインナーチューブの内腔を遠位に向かって通過することができる。しかし、右側のパネルでは、チャネルAが閉鎖されてチャネルBが開放しており、この状態では、灌注流体入口はインナーチューブとアウターチューブとの間の空間とのみ流体接触する。
【0036】
図7に、本発明の洗浄装置の動作モードを変更するのに使用される、操作者によるスライダの操作方法を示している。したがって、パネルAでは、本装置は吸引モードであり、スライダが最も前方位置にあり、インナーチューブとアウターチューブとの間の空間に吸引負圧が印加される。スライダをより近位位置に移動させることで、本装置を灌注モードにすることができる。この灌注モードでは、灌注流体はインナーチューブとアウターチューブとの間の空間を通って(さらに、「常に開放している」モードでは、インナーチューブの内腔も通って)遠位に送られる。最後に、スライダをさらに近位移動させることで、本装置をパワー吸引モードにすることができる。このパワー吸引モードでは、灌注流体は、完全に封止された遠位ヘッドユニットにぶつかってインナーチューブ内腔を通って遠位に送られ、その後、インナーチューブとアウターチューブとの間の空間を通って近位で吸引される。
【0037】
近位ハンドル:第2の実施形態
本発明の近位ハンドルの第2の好適な実施形態を、図8〜図11を参照して詳細に説明する。第2の実施形態のハンドルは、上述した第1の実施形態と同様の外形を有し、接続されている装置の操作を同様の方法で制御するのに使用される。しかし、2つの実施形態には、まず第一に、弁アクチュエータに関して、第二に、ウォータボックス(本明細書では、マニホールドとも言う)の内部構造に関して、いくつかの重要な違いがある。
【0038】
図8は、本発明の近位ハンドルの第2の好適な実施形態の側面図であり、近位ハンドルは遠位端に位置するマニホールド48と、最遠位位置に示されている外スライダ52とを有する。さらに、外側に配置される弁アクチュエータロッド46(上述した第1の実施形態の図3の部品番号34で表わされる内部スライダアクチュエータに代わるもの)が示されている。このアクチュエータロッドは、図12でより詳細に示されている。図12からわかるように、前記ロッドには遠位ストップ要素66と近位ストップ要素68とが取り付けられ、前記ストップ要素は、それぞれ外スライダ52によって押したり引き寄せたりできるように設計されている。また、弁アクチュエータロッド46の遠位端には、弁レバー50の可動端部を把持するのに使用される一対のジョー70(アクチュエータロッド自身に対して直角に配向される)が取り付けられるのがわかる。したがって、外スライダ2が遠位方向に押されると、弁レバー50の可動端部は同じように遠位方向に移動される(図8)。反対に、図9に示されるように、スライダ52が操作者によって近位方向に引き寄せられると、弁レバー50の可動端部は反時計回りに回転されて、近位位置に移動される。また、結腸洗浄装置のガイドワイヤ53はスライダ52に接続されるので、前記スライダの遠位方向または近位方向の移動がそれぞれ、前記ガイドワイヤに接続される遠位プラグを遠位方向に前進させるまたは近位方向に後退させることにも留意されたい。このように、外スライダ52の移動は、2つの機能、つまり、接続されている洗浄装置を遠位プラグの遠位近位に位置決めする機能および灌注流体をマニホールド48に通す機能を制御することができる。
【0039】
上記に開示され説明された近位ハンドルの第1の実施形態の場合と同様に、第2の実施形態のハンドルは、前記ハンドルに接続された結腸洗浄装置に対して、以下の2つの主なモードの一方または他方を操作する構造にすることができる:
1)常に開放されているインナーチューブ内腔を通る灌注。
2)開放しているか閉鎖しているインナーチューブ内腔を通る灌注。
【0040】
これらの2つのモードのうちの第1のモード(「常に開放しているモード」)は、図10および図11に示されている。したがって、図10では、ウォータ弁レバー50は、灌注流体(入口54を介して導入される)が同時に2つのチャネル、つまり、インナーチューブの内腔(チャネルA:附番56)とインナーチューブとアウターチューブとの間の空間(チャネルB:附番64)とを通って流されるように位置決めされる。この灌注モードは、遠位噴霧ヘッドが内視鏡ワーキングチャネルの遠位出口に来て静止するように、操作者が外スライダを前方に(すなわち、遠位に)押して、その後わずかに引き寄せることで行われる。同時に、スライダに接続されたアクチュエータがウォータ弁を所望の位置に移動させ、そのことでチャネルAとチャネルBの両方は(ウォータ弁レバーの旋回で形成されたチャネルを介して)灌注流体入口と流体連通することになる。この状態で、チャネルAおよびチャネルBを通って遠位に送り込まれる灌注流体は、ワーキングチャネルの遠位端を越えてすぐの位置にある体腔(例えば、結腸)の領域を洗浄するのに使用できる流体噴霧状で遠位噴霧ヘッドの開口部を通過する。
【0041】
次に、本装置は、操作者が外スライダをさらに引き寄せること(すなわち、近位移動)により灌注モードからパワー吸引モード(図11に示されている)に切り替えられ、その結果、遠位噴霧ヘッドが遠位ワーキングチャネル出口に対してより強く圧縮され、そのことにより、遠位ヘッド開口部を閉鎖して、これ以上流体が前記遠位ヘッドに移動するのを防ぐ。アクチュエータがそれに対応して移動することで弁はチャネルB(図10の附番64)が閉鎖される位置まで反時計回りに回転されるが、チャネルA(56)は開放位置のままである。このモードでは、流体入口54を通ってマニホールドに入る送り込まれる流体はインナーチューブの内腔(すなわち、チャネルA)のみを通過する。その後、(このモードでは)チャネルBと流体接触している近位ハンドルの吸引口に負圧が印加される。このようにして、インナーチューブ内腔の遠位端を出る灌注流体は、インナーチューブとアウターチューブとの間の空間(チャネルB)を通って近位で吸引される。近位ハンドルの好適な実施形態で使用されるマニホールドは、マニホールドに接続される種々の部品、例えば、インナーチューブ58、アウターチューブ60、およびガイドワイヤ(図示せず)を流体封止するのに使用される複数のOリング62を組み込んでいることに留意されたい。
【0042】
すぐ上で説明したモード(すなわち、「インナーチューブが常に開放している」モード)は多くの用途に対して好適なモードであるが、マニホールドをウォータ弁レバーの位置に応じてインナーチューブ内腔が(灌注流体入口に対して)閉鎖または開放している状態にできるような構造にすることも可能である。
【0043】
第2の好適な実施形態のマニホールド(ウォータボックス)は第1の実施形態の同等の要素と機能的には非常に似ているが、前記マニホールド内の種々のチャネルの構造に関して多くの違いがあることに留意されたい。本発明者は、第2の実施形態で使用されるチャネル構造が、本装置の製造時に必要とされるツーリングに関して、特に有利であることに気付いた。つまり、第1の実施形態のマニホールドの製造には複数の工具が必要であるが、第2の実施形態では、必要とされる工具は1つのみである。
【0044】
上述したように、本明細書で開示および説明されている(種々の異なる実施形態の)近位ハンドルは、体内通路(例えば、結腸)に挿入するように設計された複数のさまざまな細長い器具と併用されてもよいことにも留意されたい。したがって、近位ハンドルのマニホールド(ウォータボックス)内に流体を通すことに関する上述の説明において、「アウターチューブ」は、体内通路(例えば、結腸または消化管の他の部分)の内壁と内視鏡チャネル(例えば、結腸内視鏡のワーキングチャネル)の内壁などの非自然的な管状要素とを含む(これらに限定されない)他の管状構造体もその範囲に含むものと理解すべきである。
【0045】
上述したように、本発明の装置は、結腸内視鏡などの内視鏡のワーキングチャネルを介して体内通路に挿入され得る。この場合の好適な一実施形態では、ガイドワイヤ、インナーチューブおよびアウターチューブの長さは、上述の近位ハンドルが内視鏡の近位端から約70cmの位置にくるように決められる。この構造により、本装置を内視鏡から上述の距離の場所に立っているまたは座っている助手(例えば、看護師、技術者または医師助手)(したがって患者)が持って操作できるようになり、主な操作者は自身が行う処置を妨げられることなく実行することができる。
【0046】
近位ハンドルシェルは、ABS、ポリカーボネート、デルリン(Delrin)、および使用される滅菌法(オートクレーブ、ガンマ線照射またはETO)に適合する他のプラスチック樹脂から、好ましくは、大量生産で注入成形によって製造されてよい。ハウジングの長さは、通常、約80mm〜120mm、ハウジング内の流体通路の直径は、通常、約2mm〜4mmとすることができる。部分長さのインナーチューブとアウターチューブは共に、ETFE、PTFE、または摩擦係数が小さく、装置を壊さずに支持するのに十分な剛性を有して、適用される滅菌法に適合する他のプラスチック樹脂で製造されてよい。代替の可撓性構造では、インナーチューブは、ガイドワイヤとチューブとの摩擦およびチューブとワーキングチャネルとの摩擦を小さくするために、シリコンまたはゴム樹脂、好ましくは、PTFEで製造され、インナーチューブの長さは、使用される内視鏡の長さならびに外部延長管材の長さに応じて約150cm〜210cm、その内径は、通常、ヒステリシス効果を低減するために1mm、好ましくはそれより小さい範囲(およそAWG16)、壁の厚さは、約0.25mm〜0.4mmとすることができる。ガイドワイヤは、好ましくは、ガイドワイヤとPTFEインナーチューブとの摩擦の可能性を低減するために、オプション形態のPTFEコーティングされたステンレス鋼304V製であり、ガイドワイヤの直径は、通常、0.5mm〜0.7mm、好ましくは、約0.6mmとすることができる。
【0047】
部分長さのインナーチューブは、通常、使用される装置の滅菌法に応じて、PTFEの管材(低摩擦にするため)またはETFEで構成され、その外径は約1mm〜1.6mmであり、壁の厚さは約0.25mmである。さらに、アウターチューブも同様に、上述の材料で構成されてよく、その外径は、通常、2mm〜4mmとすることができる。しかし、インナーチューブおよびアウターチューブは共に、特に、それらが組み込まれた装置が結腸内視鏡ワーキングチャネル以外の自然の内腔または器具の内腔で使用するためのものである場合、上述の例示的な値とはかなり異なる直径を有する場合がある。いずれにしても、上述の測定値の全ては単に一般的な指針として示されているのであって、決して本発明の範囲を限定するものではないことを理解されたい。
【0048】
本発明の装置は、他に制御コンソール、灌注流体ポンプ(例えば、ダイヤフラムポンプ、蠕動ポンプ、または歯車ポンプ)、真空ポンプ(例えば、THOMASダイヤフラムポンプ、ピストンポンプ)、変圧器(医療グレードの変圧器、Mean well/200W Medical series)、安全タイマー、灌注ポンプリレー、および真空ポンプリレーを含むシステムの一部を形成してもよく、これらの装置の全ては当業者によく知られている。
【0049】
本開示の装置と共に使用できる上述の追加の機器は、便宜上、別々のハウジング内に収容されてもよい。このハウジングは、適切な管材により、本発明の洗浄装置に灌注流体を供給するのに使用されるウォータタンクに接続される。本発明の装置の好適な実施形態は、最高で10気圧の灌注圧力および約1リットル/分の流量に耐えられるものである。流れる洗浄流体は、操作者によって、コンソールに電気接続されたペダルスイッチを使用して制御されてもよい。このコンソールはさらに、真空ポンプによって結腸内視鏡のワーキングチャネルを真空にして、残屑、糞便物質、および他の粒状物質を廃棄タンクへ吸引するために、結腸内視鏡のワーキングチャネルに接続される。
【技術分野】
【0001】
本発明は、国際出願PCT/IL2009/000346号明細書(国際公開第2009125387号として公開)に記載され請求されている結腸洗浄装置の改良を提供する。これらの改良は、以下の2つの要素に関する。
(a)上述した結腸洗浄装置のインナーチューブ、ガイドワイヤ、および遠位噴霧ヘッドを取り囲むように配置されるアウターチューブ。
(b)結腸洗浄装置をポンプや制御装置のような適切な補助装置に接続したときに、吸引、パワー吸引、および灌注の3つのモードで使用できるようにする改良型近位ハンドル。
【背景技術】
【0002】
概して、ここで開示される改良は、(とりわけ)、結腸内腔などの体腔もしくは体内通路の内腔および内壁を洗浄するための内視鏡ワーキングチャネルでの使用に適した装置に関する。本装置は、固形および半固形の残屑を効果的に軟らかくすることができる流体噴霧部と、噴霧流体を(剥がれた固形および半固形残屑と一緒に)除去するための吸引システムとを提供する。前記装置は、ガイドワイヤの遠位端に取り付けられる遠位のプラグ/噴霧ヘッドを備える。本発明の装置はさらに、ガイドワイヤの近位端から伸びて前記ガイドワイヤの遠位端から数センチメートルの位置で終端する、非折り畳み式部分長さのカテーテルもしくはチューブを備える。この固有の構造により、この構造でなければ洗浄工程で生じるであろう内視鏡のワーキングチャネルの閉塞を防いで取り除く能力によって、処理または洗浄される体腔を最適に灌注および吸引することができる。さらに、(上述した)本発明の装置は、同軸状にインナーチューブを取り囲む第2のアウターチューブを備える。このアウターチューブの存在が、洗浄装置に多数の明白な利点をもたらすが、この利点の全てについて以下に説明する。これらの利点の最も重要な利点の1つは、機能的に、アウターチューブは、共有特許の国際出願PCT/IL2009/000346号明細書(国際公開第2009125387号として公開)に開示されている装置が内部で機能するように設計されている内視鏡ワーキングチャネルに代替するものと見なすことができるということである。すなわち、アウターチューブの存在により、本明細書に記載されている洗浄装置はワーキングチャネル(または任意の他の器具の内腔)か、自然のチャネルもしくは通路(例えば、結腸内腔)のいずれかの内部で機能することができる。したがって、便宜上、以下の説明の大部分は、本発明の装置が内視鏡ワーキングチャネル内に配置されることを想定したものであるが、同時に、前記装置は結腸などの自然の体内通路内で直接使用されてもよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2009/125387号
【特許文献2】国際公開第2009/095915号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、通路(例えば、内視鏡ワーキングチャネルまたは自然の体内通路)の遠位端の先端に位置する結腸または他の体腔を、外傷や組織損傷を生じることなく効果的に洗浄することができるジェット噴霧を発生させるために、十分に高い圧力で洗浄流体を前記通路の遠位端に位置する噴霧ヘッドまたはノズルに供給するための手段および技術を提供することである。この目的を達成するのに解決すべき重要な技術的課題は、灌注流体を噴霧ヘッドに供給するための別のカテーテルを必要とせずに、ジェット噴霧が形成されるように十分に高い圧力および高い流量のヘッドを創出することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明により提供される解決策は、最も一般的な形では、1本のコアワイヤまたはマルチコアストランドまたは(いくつかの実施形態では)非常に小さい直径のチューブ(例えば、直径が約0.4mm〜1.5mm)から成る細いガイドワイヤ(例えば、直径が約0.3mm〜0.8mm)に取り付けられる遠位噴霧ヘッドユニットまたはプラグを備える。この噴霧ヘッドは、ワーキングチャネルの遠位出口を部分的または完全に塞ぐようにできる有孔プラグとして有効に機能する。したがって、前記遠位出口を部分的に塞ぐ場合には、灌注流体はワーキングチャネルを通って供給され、前記流体は、前記ワーキングチャネルの遠位端のすぐ遠位に位置する体腔(例えば、結腸)の領域に向けてジェット散乱の形で、より高い圧力で噴霧ヘッドから放出される。
【0006】
灌注流体は、以下のようにして噴霧ヘッドユニットに供給され得る。灌注流体は、正圧送水ポンプ(蠕動ポンプ、遠心ポンプ、投与ポンプ、歯車ポンプなど)を使用して、ポンプ出口圧力が2〜10気圧ひいては出口ノズル圧力が2〜8気圧で、内視鏡ワーキングチャネル(または他の通路)へと供給される。流量は、0.2〜2リットル/分とすることができる。標準的なLuer部品を使用した封止要素、アダプタ、およびコネクタを使用してもよい。上述した圧力および流量のパラメータは単に例示のために示されているのであって、決して本発明を限定するものではないことが強調される。
【0007】
したがって、本発明は、主として、内視鏡チャネルを通すのに適し、近位端と遠位端とを有する少なくとも1つの遠位プラグを備え、前記少なくとも1つのプラグは、前記近位端から前記遠位端に流体を通すことができるチャネル、開口部およびまたはノズルを備える体内通路洗浄装置であって、
前記プラグは、駆動要素(例えば、ワイヤ、チューブ、コードまたはロッド)の遠位端に接続され、
前記遠位プラグの少なくとも外側部は、その外側輪郭または直径がそこに作用する内向きの圧縮力に応じて小さくなるように弾性変形可能であり、
前記チャネル、開口部および/またはノズルは、前記遠位プラグが前記圧縮力を受けているときは閉鎖形態になり、前記プラグが前記圧縮力を受けていないときには開放形態になり、
前記装置はさらに、同軸状に駆動要素を取り囲む部分長さのインナーチューブを備え、前記チューブは前記駆動要素の近位端から伸び、前記駆動要素の遠位領域の一部が前記チューブによって囲まれない状態になるように前記チューブの長さは前記駆動要素の長さより短く、
前記装置はさらに、同軸状に前記インナーチューブを取り囲む部分長さのアウターチューブを備える、洗浄装置を対象とする。
【0008】
本発明の装置の特に好適な一実施形態では、駆動要素はワイヤ(本明細書では、ガイドワイヤとも言う)である。
【0009】
本発明の開示のために、用語「遠位噴霧ヘッドユニット」および同等の用語は、用語「遠位プラグ」と同じ意味で使用される場合があることに留意されたい。さらに、用語「遠位」は、操作者から離れた方向で患者の身体の中心の方向を指すことに留意されたい。したがって、用語「近位」は、その反対方向を指すと見なされる。
【0010】
本発明の一部として使用できる適切な遠位噴霧ヘッドユニットの例は、共有特許の国際出願PCT/IL2009/000346号明細書(国際公開第2009125387号として公開)ならびに共有特許の国際出願PCT/IL2009/000112号明細書(国際公開第2009/095915号として公開)に開示され、詳細に記載されている。これらの特許内容全体を両方とも本参照によって本明細書に組み込まれたものとする。
【0011】
本発明の好適な一実施形態では、内向きの圧縮力を受けていないときの遠位プラグの外径は、内視鏡ワーキングチャネルの内径よりわずかに大きい。多くの場合、結腸内視鏡のワーキングチャネルの内径は3.8mmであり、通常、2mm〜4mmである。
【0012】
装置の特に好適な一実施形態では、遠位プラグはOリングを備える。
【0013】
上述した追加のアウターチューブにより、結腸洗浄装置は以下のさらなる利点が得られる:
独立構成により、内視鏡ワーキングチャネルを含む任意の内腔(自然または器具)内で本装置を使用することができる。
本装置は、ワーキングチャネルおよび/または他の自然もしくは器具の内腔の遠位端を超えて伸びることができる。
このアウターチューブ上にカメラが含まれ、このカメラにより洗浄時により遠くの領域を見ることができる。
吸引および灌注は、このアウターチューブとインナーチューブとの間の隙間を通って行われる。
このアウターチューブは、可撓性、半剛性もしくは剛性の構造にすることができる。
【0014】
図1に、本発明の装置10の典型的な実施例が示されている。遠位噴霧ヘッド12は、可撓性ガイドワイヤ14に取り付けられた状態で示されており、このガイドワイヤ14は部分長さのインナーチューブ16の内腔内に同軸状に(および可動に)配置される。前記インナーチューブは、アウターチューブ18によって囲まれ、このアウターチューブ18自身は、一部が内視鏡ワーキングチャネル20の内腔または何らかの他の器具もしくは自然の内腔内に含まれる。本装置が内視鏡ワーキングチャネル(もしくは同様の器具の内腔)で使用される場合には、前記ワーキングチャネルへの近位入口にある装置の周囲に付着封止部が挿入されることに留意されたい。生体適合性のあるゴム、プラスチック、もしくは金属のような可撓性材料で構成され得るこの封止要素は、操作者側に灌注流体および残屑が噴霧されるのを防ぐ。さらに、封止要素の存在は、本装置のインナーチューブとアウターチューブとの間の空間に印加される吸引負圧の完全性を維持するのに必要である。
【0015】
本発明の装置内に上述のアウターチューブがあることで、液体および残屑の吸引がワーキングチャネル自身ではなく、(インナーチューブとアウターチューブとの間の空間にある)前記装置によって行うことが可能になる。したがって、この構造は、収集容器への廃棄ラインに沿って、一方向弁を介して、吸引された液体および固形材料を案内するために、ワーキングチャネルの近位端にYコネクタを含むことが必要である。
【0016】
別の態様では、本発明はさらに、本発明の装置などの内視鏡を操作するのに使用できる近位ハンドルを提供する。前記ハンドルは、さまざまな内腔および導管に流れを方向付けるための新奇な機構を組み込む。また、前記ハンドルは、上述の部分長さのアウターチューブを組み込んだ結腸洗浄装置と共に使用する以外に、この装置の変形形態(例えば、アウターチューブを備えない)と共に使用してもよく、実際には他の内視鏡と共に使用してもよいことが強調される。
【0017】
したがって、上述した体内通路洗浄装置の特に好適な実施形態では、前記装置はさらに近位制御ハンドルを備え、
インナーチューブとアウターチューブの両方の近位端は前記ハンドルに接続され、
駆動要素(例えば、ガイドワイヤ、コード、ロッド、チューブなど)の近位端は、前記ハンドルに可動に接続され、
前記ハンドルは、前記ハンドルと前記駆動要素の遠位端との間の間隔を変更する手段を備え、
前記ハンドルは、流体供給チャネルの出口を1つまたは複数の流体出口チャネルに向けるための切り替える手段を備え、
前記ハンドルは、流体出口チャネル間の前記切り替えを、前記ハンドルと駆動要素の遠位端との間の間隔を変更する前記手段と連携させるための結合手段を備える。
【0018】
この態様の本発明の好適な一実施形態では、駆動要素はワイヤである。
【0019】
この態様の本発明の好適な一実施形態では、近位ハンドルとガイドワイヤの遠位端との間の間隔を変更する手段は、前記ハンドルの外表面に可動に装着されるスライダ機構を備え、前記ガイドワイヤの近位端は前記スライダ機構に接続される。適切なスライダ機構の詳細については、共有特許の国際出願PCT/IL2009/000346号明細書(国際公開第2009125387号として公開)に記載されている。この特許内容全体を本参照によって本明細書に組み込まれたものとする。
【0020】
この態様の本発明の好適な一実施形態では、上述の切り替える手段は、多方向流体弁を備える。
【0021】
好適な一実施形態では、結合手段は、上述したスライダ機構と前記切り替える手段の両方に接続される機械的アクチュエータ(例えば、細長いストリップ、ロッドまたはバーの形)を備える。
【0022】
好ましくは、すぐ上で説明した近位ハンドルは、部分長さのインナーチューブの内腔と流体連通した1つの流体出口チャネルと、前記インナーチューブの外表面とアウターチューブの内壁との間にある空間と流体連通した第2の流体出口チャネルとを備える。
【0023】
上述の近位制御ハンドルにより、洗浄装置を以下の3つの動作モードで切り替えることができる。
1.灌注モード:ノズル(噴霧ヘッドユニット)は、実質的なノズル噴霧を形成するワーキングチャネルの遠位縁部に配置される。灌注流体(例えば、生理食塩水)は、上述した洗浄装置のインナーチューブとアウターチューブとの間の空間にあるワーキングチャネル(または他の器具もしくは自然の内腔)を通って流される。流れの制御は、半自動的に所定の流れおよび圧力レベルのボタンを押すこと、あるいはペダルスイッチを押すことのいずれかによって行われる。
2.吸引モード:ノズルは、ワーキングチャネルの外側、好ましくは、ワーキングチャネルの遠位側5mm〜20mmの位置に配置される。真空圧力が印加されて、液体および糞便の残りがインナーチューブとアウターチューブとの間の空間を通って吸引されるが、この装置はまだ洗浄される体腔内にある。
3.パワー吸引モード:遠位ヘッドは、内視鏡ワーキングチャネルの遠位出口を完全に封止するように位置決めされる。真空圧力の他に遠位に向かう流れの正圧が、部分長さのインナーチューブの内腔を通って印加されて、吸引プロセスを助けて、残屑によるワーキングチャネルの閉塞を防ぎまたは除去する。
【0024】
したがって、上述した3つの異なる動作モードの概要から、近位ハンドルが以下の2つの重要な機能を果たすことができる要素を有することが理解され得る:
a)上述したさまざまな位置間で遠位噴霧ヘッドを移動させる機能。
b)灌注流体を所望の経路に(すなわち、ワーキングチャネルをきれいにする際には部分長さのインナーチューブの内腔に、通常の灌注の際にはインナーチューブとアウターチューブとの間の空間に)に迂回させる機能。
【0025】
特に、本発明の灌注/吸引装置と共に使用する際には、近位制御ハンドルは、内視鏡手術時には他の目的、例えば、結腸内腔にインクまたは他のマーカー材料を注入するために使用することもできることに留意されたい。
【0026】
本発明の近位ハンドルの種々の好適な実施形態について、添付の図面を参照しながら説明する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の装置の典型的な例を示す図である。
【図2】本発明の近位ハンドルの第1の実施形態の全体図である。
【図3】近位ハンドルの第1の実施形態の弁アクチュエータ機構の拡大図である。
【図4】本発明のウォータボックス(マニホールド)の第1の実施形態を示す図であり、前記ウォータボックスを使用してそれに接続される結腸洗浄装置を異なる動作モード間で切り替える方法を示す図である。
【図5A】本発明のウォータボックス(マニホールド)の第1の実施形態を示す図であり、前記ウォータボックスを使用してそれに接続される結腸洗浄装置を異なる動作モード間で切り替える方法を示す図である。
【図5B】本発明のウォータボックス(マニホールド)の第1の実施形態を示す図であり、前記ウォータボックスを使用してそれに接続される結腸洗浄装置を異なる動作モード間で切り替える方法を示す図である。
【図6】本発明のウォータボックス(マニホールド)の第1の実施形態を示す図であり、前記ウォータボックスを使用してそれに接続された結腸洗浄装置を異なる動作モード間で切り替える方法を示す図である。
【図7】外スライダを使用して、接続された結腸洗浄装置を異なる動作モード間で切り替える方法を示す図である。
【図8】本発明の近位ハンドルの第2の実施形態であり、外スライダが遠位に押されることで、接続された洗浄装置が灌注モードで動作することができる形態を示す図である。
【図9】本発明の近位ハンドルの第2の実施形態であり、外スライダが近位に引き寄せられることで、接続された洗浄装置がパワー吸引モードで動作することができる形態を示す図である。
【図10】近位ハンドルの第2の実施形態のウォータボックス(マニホールド)の拡大図であり、接続された結腸洗浄装置のインナーチューブの内腔およびインナーチューブとアウターチューブとの間の空間の両方に流体を流すことができる形態を示す図である。
【図11】近位ハンドルの第2の実施形態のウォータボックス(マニホールド)の拡大図であり、接続された結腸洗浄装置のインナーチューブの内腔にのみ流体を流すことができる形態を示す図である。
【図12】外スライダの位置を変えることによりマニホールドの弁レバーの位置を制御するのに使用される種々の要素を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
近位ハンドル:第1の実施形態
図2に本発明の近位制御ハンドルの好適な一実施形態が概略的に示されている。この実施形態では、ハンドルは、ハンドルシェルから成る本体と、ガイドワイヤの軸方向(遠位−近位)の移動を制御することによって遠位噴霧ヘッドユニットの位置を制御するのに使用されるスライダとを備える。図2からわかるように、近位ハンドルは、ハンドル機構22の外から見える部分の他に、その遠位部に、ウォータボックス24も備える。このウォータボックス24は、灌注流体の流れをポンプから本装置の遠位端の方に関連経路に沿って方向付けるのに必要な要素を含む。特に、ウォータボックスに収容される機構により、灌注流体を灌注モードとウォータチャネル清浄モード(パワー吸引)モードとで経路選択できるようになる。
【0029】
図示されているように、ウォータボックスの出口は、(ガイドワイヤによって)遠位噴霧ヘッド26に接続される。
【0030】
図3は、内部にあるスライダ34に接続された外スライダ32を含む近位ハンドルの作動部品のより詳細な図である。このスライダ34は、ウォータ弁30を回転させるアクチュエータを移動させるためのものである。この図に示されている例では、この弁は、最先端のストップコック弁に似ている。スライダが移動するチャネルは、操作者がスライダの位置(ひいては、装置の今の動作モード)に関する触覚フィードバックを受け取ることができるように刻み目が入れられてもよい。
【0031】
図4は、ウォータボックス24および本発明の洗浄装置の他の重要な部品との関係を詳細に示す図である。したがって、ウォータ弁30は、流体溜めまたは他の外部流体源から送られた灌注流体を受け取る灌注流体入口42の近くに示されている。この流体の流入は、その後、(ウォータ弁レバーの位置に応じて)2つの流体チャネル経路の一方または両方、つまり、インナーチューブ16とアウターチューブ18との間の空間および/または前記インナーチューブ16の内腔に方向付けされる。最後に、この図4は、インナーチューブ16の内腔内のガイドワイヤ14の位置も示している。ガイドワイヤ封止要素44(例えば、Oリング)は、ガイドワイヤ14の周囲の流体の喪失を防ぐと同時に、前記ガイドワイヤがウォータボックス24の中を軸方向に移動するのを円滑にするために本装置に組み込まれる。
【0032】
チュウービングおよびウォータ経路は、主な2つのモードで構成される:
1)常に開放しているインナーチューブ内腔を通る灌注。
2)開放しているか閉鎖しているインナーチューブ内腔を通る灌注。
【0033】
これらの2つのモードのうちの第1のモード(「常に開放しているモード」)は、図5Aおよび図5Bに示されている。したがって、図5Aでは、ウォータ弁レバーは、灌注流体が同時に2つのチャネル、つまり、インナーチューブの内腔(チャネルA)とインナーチューブとアウターチューブとの間の空間(チャネルB)とを通って流されるように位置決めされる。この灌注モードは、遠位噴霧ヘッドが内視鏡ワーキングチャネルの遠位出口に来て静止するように、操作者がスライダを前方に(遠位に)押して、その後わずかに引き寄せることで行われる。同時に、スライダに接続されたアクチュエータがウォータ弁を所望の位置に移動させ、そのことでチャネルAとチャネルBの両方は灌注流体源と流体連通することになる。この状態で、チャネルAおよびチャネルBを通って遠位に送られる灌注流体は、ワーキングチャネルの遠位端を越えてすぐの位置にある体腔(例えば、結腸)の領域を洗浄するのに使用できる流体噴霧状で遠位噴霧ヘッドの開口部を通過する。
【0034】
次に、本装置は、操作者がスライダをさらに引き寄せること(すなわち、近位移動)により灌注モードからパワー吸引モード(図5Bに示されている)に切り替えられ、その結果、遠位噴霧ヘッドが遠位ワーキングチャネル出口に対してより強く圧縮され、そのことにより、遠位ヘッド開口部を閉鎖して、これ以上流体が前記遠位ヘッドに移動するのを防ぐ。アクチュエータがそれに対応して移動することで弁はチャネルBが閉鎖される位置まで回転されるが、チャネルAは開放位置のままである。このモードでは、送られた流体はインナーチューブの内腔(すなわち、チャネルA)を通過する。その後、(このモードでは)チャネルBと流体接触する近位ハンドルの吸引口に負圧が印加される。このようにして、インナーチューブ内腔の遠位端を出る灌注流体は、インナーチューブとアウターチューブとの間の空間(チャネルB)を通って近位で吸引される。
【0035】
上述した主なモードの2つ目のモード、すなわち、ウォータ弁レバーの位置に応じて、インナーチューブ内腔が(灌注流体入口に対して)閉鎖または開放のいずれかの状態であるモードが図6に示されている。図6の左側のパネルでは、チャネルAが開放している状態を示しており、灌注流体がインナーチューブの内腔を遠位に向かって通過することができる。しかし、右側のパネルでは、チャネルAが閉鎖されてチャネルBが開放しており、この状態では、灌注流体入口はインナーチューブとアウターチューブとの間の空間とのみ流体接触する。
【0036】
図7に、本発明の洗浄装置の動作モードを変更するのに使用される、操作者によるスライダの操作方法を示している。したがって、パネルAでは、本装置は吸引モードであり、スライダが最も前方位置にあり、インナーチューブとアウターチューブとの間の空間に吸引負圧が印加される。スライダをより近位位置に移動させることで、本装置を灌注モードにすることができる。この灌注モードでは、灌注流体はインナーチューブとアウターチューブとの間の空間を通って(さらに、「常に開放している」モードでは、インナーチューブの内腔も通って)遠位に送られる。最後に、スライダをさらに近位移動させることで、本装置をパワー吸引モードにすることができる。このパワー吸引モードでは、灌注流体は、完全に封止された遠位ヘッドユニットにぶつかってインナーチューブ内腔を通って遠位に送られ、その後、インナーチューブとアウターチューブとの間の空間を通って近位で吸引される。
【0037】
近位ハンドル:第2の実施形態
本発明の近位ハンドルの第2の好適な実施形態を、図8〜図11を参照して詳細に説明する。第2の実施形態のハンドルは、上述した第1の実施形態と同様の外形を有し、接続されている装置の操作を同様の方法で制御するのに使用される。しかし、2つの実施形態には、まず第一に、弁アクチュエータに関して、第二に、ウォータボックス(本明細書では、マニホールドとも言う)の内部構造に関して、いくつかの重要な違いがある。
【0038】
図8は、本発明の近位ハンドルの第2の好適な実施形態の側面図であり、近位ハンドルは遠位端に位置するマニホールド48と、最遠位位置に示されている外スライダ52とを有する。さらに、外側に配置される弁アクチュエータロッド46(上述した第1の実施形態の図3の部品番号34で表わされる内部スライダアクチュエータに代わるもの)が示されている。このアクチュエータロッドは、図12でより詳細に示されている。図12からわかるように、前記ロッドには遠位ストップ要素66と近位ストップ要素68とが取り付けられ、前記ストップ要素は、それぞれ外スライダ52によって押したり引き寄せたりできるように設計されている。また、弁アクチュエータロッド46の遠位端には、弁レバー50の可動端部を把持するのに使用される一対のジョー70(アクチュエータロッド自身に対して直角に配向される)が取り付けられるのがわかる。したがって、外スライダ2が遠位方向に押されると、弁レバー50の可動端部は同じように遠位方向に移動される(図8)。反対に、図9に示されるように、スライダ52が操作者によって近位方向に引き寄せられると、弁レバー50の可動端部は反時計回りに回転されて、近位位置に移動される。また、結腸洗浄装置のガイドワイヤ53はスライダ52に接続されるので、前記スライダの遠位方向または近位方向の移動がそれぞれ、前記ガイドワイヤに接続される遠位プラグを遠位方向に前進させるまたは近位方向に後退させることにも留意されたい。このように、外スライダ52の移動は、2つの機能、つまり、接続されている洗浄装置を遠位プラグの遠位近位に位置決めする機能および灌注流体をマニホールド48に通す機能を制御することができる。
【0039】
上記に開示され説明された近位ハンドルの第1の実施形態の場合と同様に、第2の実施形態のハンドルは、前記ハンドルに接続された結腸洗浄装置に対して、以下の2つの主なモードの一方または他方を操作する構造にすることができる:
1)常に開放されているインナーチューブ内腔を通る灌注。
2)開放しているか閉鎖しているインナーチューブ内腔を通る灌注。
【0040】
これらの2つのモードのうちの第1のモード(「常に開放しているモード」)は、図10および図11に示されている。したがって、図10では、ウォータ弁レバー50は、灌注流体(入口54を介して導入される)が同時に2つのチャネル、つまり、インナーチューブの内腔(チャネルA:附番56)とインナーチューブとアウターチューブとの間の空間(チャネルB:附番64)とを通って流されるように位置決めされる。この灌注モードは、遠位噴霧ヘッドが内視鏡ワーキングチャネルの遠位出口に来て静止するように、操作者が外スライダを前方に(すなわち、遠位に)押して、その後わずかに引き寄せることで行われる。同時に、スライダに接続されたアクチュエータがウォータ弁を所望の位置に移動させ、そのことでチャネルAとチャネルBの両方は(ウォータ弁レバーの旋回で形成されたチャネルを介して)灌注流体入口と流体連通することになる。この状態で、チャネルAおよびチャネルBを通って遠位に送り込まれる灌注流体は、ワーキングチャネルの遠位端を越えてすぐの位置にある体腔(例えば、結腸)の領域を洗浄するのに使用できる流体噴霧状で遠位噴霧ヘッドの開口部を通過する。
【0041】
次に、本装置は、操作者が外スライダをさらに引き寄せること(すなわち、近位移動)により灌注モードからパワー吸引モード(図11に示されている)に切り替えられ、その結果、遠位噴霧ヘッドが遠位ワーキングチャネル出口に対してより強く圧縮され、そのことにより、遠位ヘッド開口部を閉鎖して、これ以上流体が前記遠位ヘッドに移動するのを防ぐ。アクチュエータがそれに対応して移動することで弁はチャネルB(図10の附番64)が閉鎖される位置まで反時計回りに回転されるが、チャネルA(56)は開放位置のままである。このモードでは、流体入口54を通ってマニホールドに入る送り込まれる流体はインナーチューブの内腔(すなわち、チャネルA)のみを通過する。その後、(このモードでは)チャネルBと流体接触している近位ハンドルの吸引口に負圧が印加される。このようにして、インナーチューブ内腔の遠位端を出る灌注流体は、インナーチューブとアウターチューブとの間の空間(チャネルB)を通って近位で吸引される。近位ハンドルの好適な実施形態で使用されるマニホールドは、マニホールドに接続される種々の部品、例えば、インナーチューブ58、アウターチューブ60、およびガイドワイヤ(図示せず)を流体封止するのに使用される複数のOリング62を組み込んでいることに留意されたい。
【0042】
すぐ上で説明したモード(すなわち、「インナーチューブが常に開放している」モード)は多くの用途に対して好適なモードであるが、マニホールドをウォータ弁レバーの位置に応じてインナーチューブ内腔が(灌注流体入口に対して)閉鎖または開放している状態にできるような構造にすることも可能である。
【0043】
第2の好適な実施形態のマニホールド(ウォータボックス)は第1の実施形態の同等の要素と機能的には非常に似ているが、前記マニホールド内の種々のチャネルの構造に関して多くの違いがあることに留意されたい。本発明者は、第2の実施形態で使用されるチャネル構造が、本装置の製造時に必要とされるツーリングに関して、特に有利であることに気付いた。つまり、第1の実施形態のマニホールドの製造には複数の工具が必要であるが、第2の実施形態では、必要とされる工具は1つのみである。
【0044】
上述したように、本明細書で開示および説明されている(種々の異なる実施形態の)近位ハンドルは、体内通路(例えば、結腸)に挿入するように設計された複数のさまざまな細長い器具と併用されてもよいことにも留意されたい。したがって、近位ハンドルのマニホールド(ウォータボックス)内に流体を通すことに関する上述の説明において、「アウターチューブ」は、体内通路(例えば、結腸または消化管の他の部分)の内壁と内視鏡チャネル(例えば、結腸内視鏡のワーキングチャネル)の内壁などの非自然的な管状要素とを含む(これらに限定されない)他の管状構造体もその範囲に含むものと理解すべきである。
【0045】
上述したように、本発明の装置は、結腸内視鏡などの内視鏡のワーキングチャネルを介して体内通路に挿入され得る。この場合の好適な一実施形態では、ガイドワイヤ、インナーチューブおよびアウターチューブの長さは、上述の近位ハンドルが内視鏡の近位端から約70cmの位置にくるように決められる。この構造により、本装置を内視鏡から上述の距離の場所に立っているまたは座っている助手(例えば、看護師、技術者または医師助手)(したがって患者)が持って操作できるようになり、主な操作者は自身が行う処置を妨げられることなく実行することができる。
【0046】
近位ハンドルシェルは、ABS、ポリカーボネート、デルリン(Delrin)、および使用される滅菌法(オートクレーブ、ガンマ線照射またはETO)に適合する他のプラスチック樹脂から、好ましくは、大量生産で注入成形によって製造されてよい。ハウジングの長さは、通常、約80mm〜120mm、ハウジング内の流体通路の直径は、通常、約2mm〜4mmとすることができる。部分長さのインナーチューブとアウターチューブは共に、ETFE、PTFE、または摩擦係数が小さく、装置を壊さずに支持するのに十分な剛性を有して、適用される滅菌法に適合する他のプラスチック樹脂で製造されてよい。代替の可撓性構造では、インナーチューブは、ガイドワイヤとチューブとの摩擦およびチューブとワーキングチャネルとの摩擦を小さくするために、シリコンまたはゴム樹脂、好ましくは、PTFEで製造され、インナーチューブの長さは、使用される内視鏡の長さならびに外部延長管材の長さに応じて約150cm〜210cm、その内径は、通常、ヒステリシス効果を低減するために1mm、好ましくはそれより小さい範囲(およそAWG16)、壁の厚さは、約0.25mm〜0.4mmとすることができる。ガイドワイヤは、好ましくは、ガイドワイヤとPTFEインナーチューブとの摩擦の可能性を低減するために、オプション形態のPTFEコーティングされたステンレス鋼304V製であり、ガイドワイヤの直径は、通常、0.5mm〜0.7mm、好ましくは、約0.6mmとすることができる。
【0047】
部分長さのインナーチューブは、通常、使用される装置の滅菌法に応じて、PTFEの管材(低摩擦にするため)またはETFEで構成され、その外径は約1mm〜1.6mmであり、壁の厚さは約0.25mmである。さらに、アウターチューブも同様に、上述の材料で構成されてよく、その外径は、通常、2mm〜4mmとすることができる。しかし、インナーチューブおよびアウターチューブは共に、特に、それらが組み込まれた装置が結腸内視鏡ワーキングチャネル以外の自然の内腔または器具の内腔で使用するためのものである場合、上述の例示的な値とはかなり異なる直径を有する場合がある。いずれにしても、上述の測定値の全ては単に一般的な指針として示されているのであって、決して本発明の範囲を限定するものではないことを理解されたい。
【0048】
本発明の装置は、他に制御コンソール、灌注流体ポンプ(例えば、ダイヤフラムポンプ、蠕動ポンプ、または歯車ポンプ)、真空ポンプ(例えば、THOMASダイヤフラムポンプ、ピストンポンプ)、変圧器(医療グレードの変圧器、Mean well/200W Medical series)、安全タイマー、灌注ポンプリレー、および真空ポンプリレーを含むシステムの一部を形成してもよく、これらの装置の全ては当業者によく知られている。
【0049】
本開示の装置と共に使用できる上述の追加の機器は、便宜上、別々のハウジング内に収容されてもよい。このハウジングは、適切な管材により、本発明の洗浄装置に灌注流体を供給するのに使用されるウォータタンクに接続される。本発明の装置の好適な実施形態は、最高で10気圧の灌注圧力および約1リットル/分の流量に耐えられるものである。流れる洗浄流体は、操作者によって、コンソールに電気接続されたペダルスイッチを使用して制御されてもよい。このコンソールはさらに、真空ポンプによって結腸内視鏡のワーキングチャネルを真空にして、残屑、糞便物質、および他の粒状物質を廃棄タンクへ吸引するために、結腸内視鏡のワーキングチャネルに接続される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
近位端と遠位端とを有する少なくとも1つの遠位プラグを備え、前記少なくとも1つのプラグは、前記近位端から前記遠位端に流体を通すことができるチャネル、開口部および/またはノズルを備える体内通路洗浄装置であって、
前記プラグは、駆動要素の遠位端に接続され、
前記遠位プラグの少なくとも外側部は、その外側輪郭または直径がそこに作用する内向きの圧縮力に応じて小さくなるように弾性変形可能であり、
前記チャネル、前記開口部および/または前記ノズルは、前記遠位プラグが前記圧縮力を受けているときは閉鎖形態になり、前記プラグが前記圧縮力を受けていないときには開放形態になり、
前記装置はさらに、同軸状に駆動要素を取り囲む部分長さのインナーチューブを備え、前記チューブは前記駆動要素の近位端から伸び、前記駆動要素の遠位領域の一部が前記チューブによって囲まれない状態になるように前記チューブの長さは前記駆動要素の長さより短く、
前記装置はさらに、同軸状に前記インナーチューブを取り囲む部分長さのアウターチューブを備える、体内通路洗浄装置。
【請求項2】
駆動要素が、ワイヤ、チューブ、コード、およびロッドからなる群から選択される、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
駆動要素がワイヤである、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
請求項1に記載の装置と共に使用するのに適した近位制御ハンドルであって、
前記装置のインナーチューブとアウターチューブの両方の近位端は前記ハンドルに接続され、
駆動要素の近位端は、前記ハンドルに可動に接続され、
前記ハンドルは、前記ハンドルと前記駆動要素の遠位端との間の間隔を変更する手段を備え、
前記ハンドルは、流体供給チャネルの出口を1つまたは複数の流体出口チャネルに向けるための切り替える手段を備え、
前記ハンドルは、上述の流体出口チャネル間の前記切り替えを、前記ハンドルと駆動要素の遠位端との間の間隔を変更する前記手段と連携させるための結合する手段を備える、近位制御ハンドル。
【請求項5】
前記切り替える手段が、多方向流体弁を備える、請求項4に記載の近位ハンドル。
【請求項6】
近位ハンドルと駆動要素の遠位端との間の間隔を変更する手段が、前記ハンドルの外表面に可動に装着されるスライダ機構を備え、前記駆動要素は前記スライダ機構に接続される、請求項4に記載の近位ハンドル。
【請求項7】
結合する手段が、スライダ機構および切り替える手段の両方に接続される機械的アクチュエータを備える、請求項6に記載の近位ハンドル。
【請求項8】
機械的アクチュエータが、細長いストリップ、ロッド、またはバーである、請求項7に記載の近位ハンドル。
【請求項1】
近位端と遠位端とを有する少なくとも1つの遠位プラグを備え、前記少なくとも1つのプラグは、前記近位端から前記遠位端に流体を通すことができるチャネル、開口部および/またはノズルを備える体内通路洗浄装置であって、
前記プラグは、駆動要素の遠位端に接続され、
前記遠位プラグの少なくとも外側部は、その外側輪郭または直径がそこに作用する内向きの圧縮力に応じて小さくなるように弾性変形可能であり、
前記チャネル、前記開口部および/または前記ノズルは、前記遠位プラグが前記圧縮力を受けているときは閉鎖形態になり、前記プラグが前記圧縮力を受けていないときには開放形態になり、
前記装置はさらに、同軸状に駆動要素を取り囲む部分長さのインナーチューブを備え、前記チューブは前記駆動要素の近位端から伸び、前記駆動要素の遠位領域の一部が前記チューブによって囲まれない状態になるように前記チューブの長さは前記駆動要素の長さより短く、
前記装置はさらに、同軸状に前記インナーチューブを取り囲む部分長さのアウターチューブを備える、体内通路洗浄装置。
【請求項2】
駆動要素が、ワイヤ、チューブ、コード、およびロッドからなる群から選択される、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
駆動要素がワイヤである、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
請求項1に記載の装置と共に使用するのに適した近位制御ハンドルであって、
前記装置のインナーチューブとアウターチューブの両方の近位端は前記ハンドルに接続され、
駆動要素の近位端は、前記ハンドルに可動に接続され、
前記ハンドルは、前記ハンドルと前記駆動要素の遠位端との間の間隔を変更する手段を備え、
前記ハンドルは、流体供給チャネルの出口を1つまたは複数の流体出口チャネルに向けるための切り替える手段を備え、
前記ハンドルは、上述の流体出口チャネル間の前記切り替えを、前記ハンドルと駆動要素の遠位端との間の間隔を変更する前記手段と連携させるための結合する手段を備える、近位制御ハンドル。
【請求項5】
前記切り替える手段が、多方向流体弁を備える、請求項4に記載の近位ハンドル。
【請求項6】
近位ハンドルと駆動要素の遠位端との間の間隔を変更する手段が、前記ハンドルの外表面に可動に装着されるスライダ機構を備え、前記駆動要素は前記スライダ機構に接続される、請求項4に記載の近位ハンドル。
【請求項7】
結合する手段が、スライダ機構および切り替える手段の両方に接続される機械的アクチュエータを備える、請求項6に記載の近位ハンドル。
【請求項8】
機械的アクチュエータが、細長いストリップ、ロッド、またはバーである、請求項7に記載の近位ハンドル。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公表番号】特表2013−517884(P2013−517884A)
【公表日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−550563(P2012−550563)
【出願日】平成23年1月25日(2011.1.25)
【国際出願番号】PCT/IL2011/000086
【国際公開番号】WO2011/092689
【国際公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【出願人】(512194307)ジエツトプレツプ・リミテツド (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月25日(2011.1.25)
【国際出願番号】PCT/IL2011/000086
【国際公開番号】WO2011/092689
【国際公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【出願人】(512194307)ジエツトプレツプ・リミテツド (1)
【Fターム(参考)】
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