説明

絞り通路形成方法、絞り通路付き膨張弁および絞り通路付き配管

【課題】冷凍サイクルの冷媒通路に容易かつ安価に絞り通路を形成する。
【解決手段】冷凍サイクルの冷媒通路6の開口端側を拡管して内部に段部7を設け、そこに、絞り通路部材1を載せ、これを柱状圧壊治具8で押しつぶすことにより外周縁部が広がり、冷媒通路6の内壁に係止させることによって絞り通路を形成する。絞り通路部材1は、中央に円孔3のあいた円板2を截頭円錐形状にしただけの単純な形状なので安価に製作することができ、それを押しつぶして冷媒通路6に係止するだけなので絞り通路を容易に形成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は絞り通路形成方法、絞り通路付き膨張弁および絞り通路付き配管に関し、特に自動車用空調装置の冷凍サイクル内を循環する冷媒に対し冷媒流れの乱れを抑制する絞り通路の形成方法、そのような絞り通路を備えた膨張弁および配管に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用空調装置は、コンプレッサ、コンデンサ、膨張弁およびエバポレータが環状に接続されて冷凍サイクルを構成している。コンプレッサは、ガス冷媒を断熱圧縮して高温・高圧のガス冷媒にし、それをコンデンサが車室外空気との熱交換により冷却して凝縮する。凝縮した液冷媒は、膨張弁により断熱膨張されることで低温・低圧の蒸気冷媒になり、その蒸気冷媒は、エバポレータにて車室内空気から熱を吸収することで蒸発してガス冷媒となり、コンプレッサに供給される。以上の動作を連続して行うことで、車室内の空気温度が冷却される。
【0003】
自動車用空調装置のコンプレッサは、走行状態によって回転数が大幅に変化する内燃機関によって駆動されているため、走行状態によらずに一定の容量の冷媒を吐出することができる可変容量コンプレッサが採用されている。それでも、コンデンサおよびエバポレータでの熱交換の状況によっては、冷凍サイクル内の圧力変動が激しく、また、冷媒の状態変化も大きい。たとえば、エバポレータの蒸発能力が小さい状況で、膨張弁に流入する高圧冷媒の状態が気液二相状態であった場合、膨張弁出口の冷媒状態も気液二相状態になる。このとき、膨張弁の弁部を通過する冷媒は、ガスであったり液体であったりするため、冷媒の流れ状態に大きな圧力変動を生じる。この冷媒の圧力変動は、冷凍サイクル内で溜った液冷媒の液面を上下させることになる。配管のレイアウトによってはガス冷媒が通過する通路を液冷媒で遮断してしまうことがあるが、このような状態でガス冷媒が液冷媒を無理に通過しようとすると、大きな泡が発生し、この泡が破裂するときに、大きな音が発生してしまう。
【0004】
以上のような冷媒の圧力変動を抑制する方法として、膨張弁の入口または出口側に絞り通路を配置することが知られている(たとえば、特許文献1,2参照)。膨張弁に絞り通路を設けることで、冷凍サイクル内の圧力変動を抑制することができるだけでなく、膨張弁に入る冷媒の気泡が細分化されることにより、膨張弁の冷媒通過音を低減することができる。また、膨張弁の出口に設けた場合は、膨張弁の弁部と絞り通路とで、2回の減圧が行われることになる。これにより、膨張弁の弁部における差圧は、小さくなるので、気泡の発生が抑制され、膨張弁の冷媒通過音を低減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−200844号公報
【特許文献2】実公平7−52538号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の絞り通路は、軸線方向に貫通孔が形成された円柱状の絞り通路部材を配管内に圧入したり膨張弁のボディ内にねじ止めしたりして構成しているので、精密に作られる絞り通路部材のコストが高く、絞り通路部材を圧入またはねじ止めにより固定していることで、圧入部またはねじ止め部の摺動面から異物が発生したり圧入部に傷が付いたりしてしまうという問題点があった。
【0007】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、冷凍サイクルの冷媒通路に容易かつ安価に絞り通路を形成することを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明では上記の課題を解決するために、冷凍サイクルの冷媒が流れる冷媒通路内に絞り通路を形成する絞り通路形成方法であって、前記冷媒通路が拡径されることにより形成された段部に、中央に孔のあいた円板を截頭円錐形状に加工して外径が前記段部より外側の内径と内側の内径との間の大きさを有している絞り通路部材を、その外周を含む平面から膨出されている側を前記冷媒通路の外側の開口端側にして載置し、前記絞り通路部材を前記段部に押し当てながら前記冷媒通路の拡径側から押しつぶし、前記絞り通路部材の外周が広がるように変形することによって前記絞り通路部材を前記冷媒通路の内壁に係止する、ことからなる絞り通路形成方法が提供される。
【0009】
また、本発明では、冷凍サイクル内を循環する冷媒に対して絞り膨張させる膨張弁であって、絞り膨張された冷媒が導出される低圧出口ポートの内部に外側の内径を内側の内径より大きくすることによって形成した段部と、前記段部よりも外側の前記低圧出口ポートの内壁に係止された絞り通路部材と、を備え、前記絞り通路部材は、中央に孔のあいた円板を截頭円錐形状に加工して外径が前記低圧出口ポートの前記段部より外側の内径と内側の内径との間の大きさを有しているものを、前記段部に押し当てながら押しつぶして外周が広がるように変形させることにより外周縁部が冷媒通路の内壁に係止されて絞り通路を形成している絞り通路付き膨張弁が提供される。
【0010】
さらに、本発明では、冷凍サイクル内の冷媒を循環させる配管であって、開口端近傍を拡管して境界部に段部を形成した大径部と、前記段部よりも開口端側の前記大径部の内壁に係止された絞り通路部材と、を備え、前記絞り通路部材は、中央に孔のあいた円板を截頭円錐形状に加工して外径が前記大径部の内径と前記段部より内側の内径との間の大きさを有しているものを、前記段部に押し当てながら押しつぶして外周が広がるように変形させることにより前記大径部の内壁に係止されて絞り通路を形成している絞り通路付き配管が提供される。
【0011】
このような絞り通路形成方法、絞り通路付き膨張弁および絞り通路付き配管によれば、冷凍サイクルの冷媒通路に形成する絞り通路を、冷媒通路内に形成した段部に、単純な形状の絞り通路部材を押し当てながら単に押しつぶして冷媒通路の内壁に係止することで形成している。これにより、冷媒通路内に絞り通路を容易かつ安価に形成することを可能にしている。
【発明の効果】
【0012】
上記構成の絞り通路形成方法、絞り通路付き膨張弁および絞り通路付き配管では、ワッシャのような単純な形状の絞り通路形成部材を冷媒通路内で変形して係止することにより絞り通路を形成するようにしたので、軸線方向に貫通孔が形成された円柱状の絞り通路部材を冷媒通路に圧入したりねじ止めしたりして構成する場合に比較して絞り通路を容易かつ安価に形成できるという利点がある。
【0013】
また、絞り通路部材は、冷媒通路の内径よりも外径が小さく形成されているので、冷媒通路に挿入するときに冷媒通路の内壁に傷が付くことがなく、そのため、絞り通路部材を挿入する冷媒通路の内壁をOリングのようなシール部材が配置されるシール面とすることができる。
【0014】
さらに、絞り通路部材を冷媒通路に圧入したりねじ止めしたりすることがないので、それにより絞り通路部材を挿入する冷媒通路の内壁の表面が剥離して冷凍サイクル内に異物が出てしまうということがない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る絞り通路の形成を説明する原理図であって、(A)は絞り通路の形成前を示す要部部分断面、(B)は絞り通路の形成後を示す要部部分断面である。
【図2】絞り通路部材を示す図であって、(A)は絞り通路部材の平面図、(B)は絞り通路部材の断面図である。
【図3】第1の実施の形態に係る絞り通路付き膨張弁を示す断面図である。
【図4】第2の実施の形態に係る絞り通路付き配管および膨張弁を示す断面図である。
【図5】第3の実施の形態に係る絞り通路付き配管を示す図であって、(A)は絞り通路付き配管の断面図、(B)は絞り通路付き配管の接続構造例を示す断面図である。
【図6】絞り通路部材の変形例を示す図であって、(A)は絞り通路部材の平面図、(B)は絞り通路部材の突起部分における部分拡大図である。
【図7】第4の実施の形態に係る絞り通路付き膨張弁を示す要部部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、自動車用空調装置の冷凍サイクルにて冷媒が流れる通路としての膨張弁の配管継手部分および冷媒配管の中に絞り通路を形成する場合を例に図面を参照して詳細に説明する。
【0017】
図1は本発明に係る絞り通路の形成を説明する原理図であって、(A)は絞り通路の形成前を示す要部部分断面、(B)は絞り通路の形成後を示す要部部分断面であり、図2は絞り通路部材を示す図であって、(A)は絞り通路部材の平面図、(B)は絞り通路部材の断面図である。
【0018】
絞り通路部材1は、図2に示したように、円板2の中央に円孔3があけられ、かつ、プレス加工により、円錐の先端部を切断したような截頭円錐形状を有している。この絞り通路部材1の材質としては、ばね性がなく、展性に富んだ塑性を有する材料がよく、たとえば、純アルミニウムまたは冷間圧延後、焼鈍、酸洗および調質圧延を施しただけのステンレス鋼とすることができる。
【0019】
絞り通路は、冷凍サイクル内の任意の冷媒通路において段差のある部分に絞り通路部材1を用いて形成することができる。すなわち、図1の(A)に示したように、冷媒通路構成部材5に冷媒通路6が形成され、その開口端側の一部を拡管することによって段部7が形成されている。絞り通路部材1は、その外径が冷媒通路6の内径と拡管された部分の内径との間の大きさを有している。
【0020】
絞り通路の形成においては、まず、絞り通路部材1が冷媒通路6の開口端から落とし込まれて段部7に載置される。このとき、絞り通路部材1は、その外周を含む平面から膨出されている側を冷媒通路6の開口端側に向けて載置される。
【0021】
次に、柱状圧壊治具8が拡管された冷媒通路6に挿入され、絞り通路部材1を押しつぶす。この押しつぶしの過程で、絞り通路部材1は、まず、その中央部分が押されることで外周縁が外側へ広げられていき、拡管された冷媒通路6の内壁にぶつかる。その後、絞り通路部材1は、冷媒通路6の内壁に阻まれて広がることができないので、円孔3の周りが内側に倒れ込むようにして変形される。最終的には、絞り通路部材1が、図1の(B)に示したように、段部7のところで冷媒通路6の内壁に係止されて保持されることにより、絞り通路が形成される。
【0022】
図3は第1の実施の形態に係る絞り通路付き膨張弁を示す断面図である。
この第1の実施の形態に係る膨張弁10は、ボディ11を有し、その下端部には、弁室12が形成され、図3の面に垂直な方向に高圧の冷媒を導入する図示しない入口ポートが接続されている。弁室12には、弁体13が弁孔14に対して開閉自在に配置され、スプリング15によって弁孔14を閉じる方向に付勢されている。弁孔14は、ボディ11に横設された出口ポート16に連通している。出口ポート16には、段部17が形成され、そこに絞り通路部材1が変形を受けることによって係止されている。
【0023】
ボディ11の上部には、エバポレータを出た冷媒が通過する戻り通路18を有している。戻り通路18は、ボディ11内で直角に曲げられ、出口ポート16が形成された同じボディ11の側面に入口ポート19が並設され、高圧の冷媒を導入する入口ポートが形成された同じボディ11の側面に出口ポートが並設されている。
【0024】
ボディ11の上端部には、戻り通路18を流れる冷媒の温度および圧力を検出するパワーエレメント20が設けられている。このパワーエレメント20による冷媒の温度および圧力の検出結果は、ボディ11内に設置されたシャフト21によって弁体13に伝達されるようになっている。これにより、エバポレータを出た冷媒の温度および圧力に応じて弁体13がリフト制御されることになる。
【0025】
以上の構成の膨張弁10において、自動車用空調装置が停止しているとき、パワーエレメント20は、弁体13を駆動するだけの力はなく、弁孔14がスプリング15により付勢される弁体13によって閉じられているので、膨張弁10は全閉状態にある。
【0026】
ここで、自動車用空調装置が起動すると、コンプレッサによって冷媒が吸引されるので、コンプレッサの入口に繋がる戻り通路18の圧力が低下し、これがパワーエレメント20により感知され、弁体13をリフトさせるようになる。一方、コンプレッサによって圧縮された冷媒はコンデンサにて凝縮され、レシーバにて気液分離された液冷媒が高圧配管を通じて膨張弁10の入口ポートに供給されるようになる。高温・高圧の液冷媒は、膨張弁10を通過するとき膨張され、低温・低圧の気液混合冷媒となって出口ポート16を出る。その冷媒は、エバポレータに供給され、その内部で車室内の空気との熱交換により蒸発される。蒸発された冷媒は、膨張弁10の入口ポート19に戻され、戻り通路18を通過してコンプレッサの入口に戻される。そのとき、パワーエレメント20は、戻り通路18を通過する冷媒の温度および圧力を感知する。
【0027】
車室内の空気温度が高い状態で自動車用空調装置を起動したときの初期段階では、車室内の高温の空気との熱交換により、エバポレータから戻ってくる冷媒の温度は高くなっており、パワーエレメント20はその温度を感知し、弁体13を駆動して、膨張弁10を全開状態にする。
【0028】
車室内の空気温度が低下して、エバポレータから戻ってくる冷媒の温度が低下してくると、パワーエレメント20は、弁体13を閉弁方向に作用させ、膨張弁10を通過する冷媒の流量を制御するようになる。このとき、膨張弁10は、エバポレータ出口の冷媒温度を感知して、その冷媒が所定の過熱度を保持するようにエバポレータに供給する冷媒の流量を制御することになる。
【0029】
膨張弁10が全開または流量制御をしているとき、弁孔14から出る冷媒が気液二相状態になることがあり、これが冷媒の圧力変動の要因になる。しかし、出口ポート16に絞り通路部材1を係止させて絞り通路を形成したことにより、弁孔14の直後に部屋が形成されることになり、この部屋が圧力の変動を緩和させるバッファの役目をし、冷媒流れの乱れを抑制することになる。また、気液二相の冷媒が絞り通路を通過することにより、ガス冷媒と液冷媒とが混合されるため、気液二相冷媒の湿り度が大きくなり、溜っている液冷媒の液面を低く抑えることができる。この結果、液冷媒は配管通路内を遮断することが少なくなり、音の発生を抑えることができる。
【0030】
なお、絞り通路部材1は、出口ポート16の段部17の下流側に係止させて絞り通路を形成しているが、使用時は、出口ポート16に配管が挿入される。したがって、たとえ、出口ポート16の内壁への絞り通路部材1の係止力が小さくても、その配管の端面が邪魔をしていることにより、使用中に、絞り通路部材1が出口ポート16から離脱してしまうことはない。
【0031】
図4は第2の実施の形態に係る絞り通路付き配管および膨張弁を示す断面図である。
この第2の実施の形態では、絞り通路を膨張弁10の継手部に配置される配管に形成している。膨張弁10の出口ポート16および入口ポート19に接続される配管22,23は、先端近傍にフランジ22a,23aが形成されている。配管22,23は、そのフランジ22a,23aを膨張弁10のボディ11にボルトによって固定される固定プレート24が押え付けることによって、膨張弁10に接続され、その接続部は、Oリング25,26によってシールされている。
【0032】
配管22のフランジ22aは、開口端近傍を拡管した大径部27との境界部を半径方向外側へ膨出した形に形成されている。フランジ22aの内側は、折り重なった状態になっていて、内径の違いにより段部28が形成され、その段部28と大径部27の基部29との間には環状の隙間ができている。絞り通路部材1が段部28に向けて押しつぶされてその外周が広げられたときに、その外周縁部がフランジ22aの内側にある隙間に潜り込むことで配管22内に係止される。この場合、絞り通路部材1は、段部28の上流側にて係止されているので、冷媒が流れる力によって動いてしまうこともない。
【0033】
図5は第3の実施の形態に係る絞り通路付き配管を示す図であって、(A)は絞り通路付き配管の断面図、(B)は絞り通路付き配管の接続構造例を示す断面図である。
この第3の実施の形態では、絞り通路をたとえば膨張弁10とエバポレータとを接続する配管の中に形成している。絞り通路部材1を取り付ける配管30は、その開口端近傍を拡管して大径部31を形成し、その大径部31との境界部に段部32を形成している。絞り通路部材1は、配管30の大径部31に入れられ、段部32に向けて押しつぶされることにより、図5の(A)に示したように、配管30の内部に係止される。
【0034】
以上のようにして内部に絞り通路が形成された配管30は、図5の(B)に示したように、別の配管33と接続される。配管33の先端は、配管30の大径部31に挿入され、配管33に周設されたOリング34によってシールされている。配管30および配管33は、それぞれに設けられた固定プレート35,36をたとえば互いにボルトで締結することにより接続されてシール状態で固定される。
【0035】
図6は絞り通路部材の変形例を示す図であって、(A)は絞り通路部材の平面図、(B)は絞り通路部材の突起部分における部分拡大図である。
この絞り通路部材1aは、図2に示した絞り通路部材1と同様に、全体的には中央に円孔3があけられた円板2を截頭円錐形状に加工されており、さらに、外周縁部には、円周方向に均等配置された複数の突起37が突設されている。絞り通路部材1aは、図3の膨張弁10に装着する場合、突起37を含む外径が出口ポート16の段部17より外側の内径と内側の内径との間の大きさに形成されている。
【0036】
突起37は、図示の例では、円弧状に形成されているが、この形状に限定されるものではなく、たとえば、冷媒通路6の内壁により食い込み易くするために突起37の先端が尖った形状になっていてもよい。
【0037】
外周に突起37を設けたことによって、絞り通路部材1aを押しつぶして冷媒通路6の中に係止させるときに、絞り通路部材1の全周を冷媒通路6の内壁に食い込ませる場合よりも突起37への応力集中が大きく、突起37の変形および食い込みを容易にしている。しかも、押しつぶしによる絞り通路部材1aの変形時においては、接触面積の少ない突起37だけがつぶれて冷媒通路6の内壁に食い込むような形になるので、絞り通路部材1aを押しつぶす加工のための荷重を低減することができる。
【0038】
図7は第4の実施の形態に係る絞り通路付き膨張弁を示す要部部分拡大断面図である。なお、この図7において、図3に示した構成要素と同じまたは均等の構成要素については同じ符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0039】
この第4の実施の形態に係る膨張弁10は、ボディ11に形成された出口ポート16内において、段部17の外側の開口端側に隣接して出口ポート16内に環状の係止用溝38が形成され、そこに絞り通路部材1が変形を受けることによって係止されている。図示の例では、係止用溝38には絞り通路部材1が係止されているが、図6に示した絞り通路部材1aが係止されていてもよい。
【0040】
この膨張弁10によれば、エバポレータへの配管を取り付ける前に、膨張弁10が熱的または物理的な衝撃を受けて絞り通路部材1のボディ11への係止力が弱まったとしても、出口ポート16からの絞り通路部材1の脱落を確実に防止することができる。また、絞り通路部材1は、食い込みによる係止のみならず、変形による軽い突っ張り力で係止用溝38内に係止させてもよい。この突っ張り力による係止の場合、絞り通路部材1が係止用溝38内を移動することはあっても、係止用溝38を乗り越えて出口ポート16の開口端側へ移動してしまうことはないからである。
【符号の説明】
【0041】
1,1a 絞り通路部材
2 円板
3 円孔
5 冷媒通路構成部材
6 冷媒通路
7 段部
8 柱状圧壊治具
10 膨張弁
11 ボディ
12 弁室
13 弁体
14 弁孔
15 スプリング
16 出口ポート
17 段部
18 戻り通路
19 入口ポート
20 パワーエレメント
21 シャフト
22,23 配管
22a,23a フランジ
24 固定プレート
25,26 Oリング
27 大径部
28 段部
29 基部
30 配管
31 大径部
32 段部
33 配管
34 Oリング
35,36 固定プレート
37 突起
38 係止用溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷凍サイクルの冷媒が流れる冷媒通路内に絞り通路を形成する絞り通路形成方法であって、
前記冷媒通路が拡径されることにより形成された段部に、中央に孔のあいた円板を截頭円錐形状に加工して外径が前記段部より外側の内径と内側の内径との間の大きさを有している絞り通路部材を、その外周を含む平面から膨出されている側を前記冷媒通路の外側の開口端側にして載置し、
前記絞り通路部材を前記段部に押し当てながら前記冷媒通路の拡径側から押しつぶし、前記絞り通路部材の外周が広がるように変形することによって前記絞り通路部材を前記冷媒通路の内壁に係止する、
ことからなる絞り通路形成方法。
【請求項2】
前記絞り通路部材は、塑性を有する材料にして押しつぶしによる変形後の戻りを抑制した請求項1記載の絞り通路形成方法。
【請求項3】
冷凍サイクル内を循環する冷媒に対して絞り膨張させる膨張弁であって、
絞り膨張された冷媒が導出される低圧出口ポートの内部に外側の内径を内側の内径より大きくすることによって形成した段部と、
前記段部よりも外側の前記低圧出口ポートの内壁に係止された絞り通路部材と、
を備え、
前記絞り通路部材は、中央に孔のあいた円板を截頭円錐形状に加工して外径が前記低圧出口ポートの前記段部より外側の内径と内側の内径との間の大きさを有しているものを、前記段部に押し当てながら押しつぶして外周が広がるように変形させることにより外周縁部が冷媒通路の内壁に係止されて絞り通路を形成している絞り通路付き膨張弁。
【請求項4】
冷凍サイクル内を循環する冷媒に対して絞り膨張させる膨張弁であって、
絞り膨張された冷媒が導出される低圧出口ポートの内部に外側の内径を内側の内径より大きくすることによって形成した段部と、
前記段部よりも外側の前記低圧出口ポートの内壁に係止された絞り通路部材と、
を備え、
前記絞り通路部材は、中央に孔があいていて外周に複数の突起を有する円板を截頭円錐形状に加工して前記突起を含む外径が前記低圧出口ポートの前記段部より外側の内径と内側の内径との間の大きさを有しているものを、前記段部に押し当てながら押しつぶして外周が広がるように変形させることにより前記突起が冷媒通路の内壁に係止されて絞り通路を形成している絞り通路付き膨張弁。
【請求項5】
冷凍サイクル内を循環する冷媒に対して絞り膨張させる膨張弁であって、
絞り膨張された冷媒が導出される低圧出口ポートの内部に外側の内径を内側の内径より大きくすることによって形成した段部と、
前記段部の外側に隣接して前記低圧出口ポートに内設された環状の係止用溝と、
前記係止用溝に係止された絞り通路部材と、
を備え、
前記絞り通路部材は、中央に孔のあいた円板を截頭円錐形状に加工して外径が前記低圧出口ポートの前記段部より外側の内径と内側の内径との間の大きさを有しているものを、前記段部に押し当てながら押しつぶして外周が広がるように変形させることにより外周縁部が前記係止用溝に係止されて絞り通路を形成している絞り通路付き膨張弁。
【請求項6】
前記絞り通路部材は、塑性を有する純アルミニウムまたはステンレス鋼とした請求項3ないし5のいずれか1項に記載の絞り通路付き膨張弁。
【請求項7】
冷凍サイクル内の冷媒を循環させる配管であって、
開口端近傍を拡管して境界部に段部を形成した大径部と、
前記段部よりも開口端側の前記大径部の内壁に係止された絞り通路部材と、
を備え、
前記絞り通路部材は、中央に孔のあいた円板を截頭円錐形状に加工して外径が前記大径部の内径と前記段部より内側の内径との間の大きさを有しているものを、前記段部に押し当てながら押しつぶして外周が広がるように変形させることにより前記大径部の内壁に係止されて絞り通路を形成している絞り通路付き配管。
【請求項8】
前記絞り通路部材は、塑性を有する純アルミニウムまたはステンレス鋼とした請求項7記載の絞り通路付き配管。
【請求項9】
前記境界部を半径方向外側へ膨出したフランジを有し、前記フランジの内側にできる前記段部と前記大径部の基部との間の隙間に前記絞り通路部材を固定した請求項7記載の絞り通路付き配管。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−245549(P2011−245549A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−6252(P2011−6252)
【出願日】平成23年1月14日(2011.1.14)
【出願人】(000133652)株式会社テージーケー (280)
【Fターム(参考)】