説明

絞り駆動装置及び投写型画像表示装置

【課題】閉ループ制御の際の振動を抑制することができる絞り駆動装置を提供する。
【解決手段】絞り駆動装置は、光束の一部を遮る絞り板と、ボイスコイルモータを構成するコイルと、絞り板とコイルとの間に軸受部を有する揺動アームとを有する揺動ユニットを備えている。さらに、絞り駆動装置は、アームを揺動可能に支持する揺動軸と、コイルと共にボイスコイルモータを構成する磁石及びヨークとを有する固定ユニットを備えている。揺動軸の方向において、揺動ユニットの重心の位置が、コイルにおける駆動力の作用位置と略一致するよう構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボイスコイルモータを用いた絞り駆動装置と、それを用いた投写型画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
撮像装置では、光量を調整するために絞り駆動装置が用いられている。近年、絞り駆動装置は、撮像装置のみならず、光束を光変調手段(例えば液晶パネルやデジタルマイクロミラーデバイス)により変調してスクリーンに投写する投写型画像表示装置でも用いられている。一般的な絞り駆動装置は、V字型の切り欠きが形成された金属製の絞り板を有しており、このV字型の切り欠き部分で光束の一部を遮光することにより光量を変化させている。
【0003】
絞り駆動装置のアクチュエータとしては、ボイスコイルモータが一般に用いられる(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載されたボイスコイルモータでは、絞り板と一体に揺動する可動部にコイルが取り付けられており、当該コイルは、巻き軸方向が揺動軸方向と一致するように扇形状に巻かれている。また、揺動軸方向においてコイルを両側から挟むように、一対の磁石が配置されている。
【0004】
【特許文献1】特開2006−284995号公報(段落0032〜0034、図5)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した絞り駆動装置では、扇形状のコイルの揺動方向(揺動軸に直交する方向)の寸法が大きくなるという問題がある。そこで、コイルを、巻き軸方向が揺動軸に略直交するように矩形状に巻き、その内側の中空部分に金属製のヨーク(センターヨーク)を配置すると共に、揺動軸方向におけるコイルの両側に一対の磁石を対称に配置し、これら磁石のさらに外側(背面側)に一対のバックヨークを配置した構成のボイスコイルモータが用いられる場合がある。センターヨーク、バックヨーク及び磁石により磁路を形成することで、ボイスコイルモータの効率を高くすることができる。
【0006】
しかしながら、この構成では、揺動方向の寸法を小さくすることはできるが、揺動軸方向においてコイルの両側に一対の磁石を配置しているため、揺動軸方向の寸法が大きくなるという問題がある。
【0007】
絞り駆動装置の揺動軸方向の寸法を小さくするために、揺動軸方向においてコイルの一方の側にだけ磁石を配置する構成が考えられる。
【0008】
しなしながら、この構成では、磁石が、揺動軸方向においてコイルの一方の側にだけ配置された非対称な構成となるため、可動部を揺動させる方向以外の不要なトルクが発生する。そのため、絞り板の位置を閉ループ制御した場合に、振動が発生するという問題があった。
【0009】
本発明は、上記のような問題を解決するためになされたものであり、閉ループ制御の際の振動を抑制することができる絞り駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る絞り駆動装置は、光束の一部を遮る絞り板と、絞り板を移動させる駆動力を得るためのボイスコイルモータを構成するコイルと、絞り板とコイルとを支持し、さらに、絞り板とコイルとの間に軸受部を有する揺動アームとを有する揺動ユニットと、軸受部に係合して揺動アームを揺動可能に支持する揺動軸と、コイルと共にボイスコイルモータを構成する磁石及びヨークとを有する固定ユニットとを備える。揺動軸の方向において、揺動ユニットの重心の位置が、コイルにおける駆動力の作用位置と略一致するよう構成されている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、揺動軸の方向において、揺動ユニットの重心の位置と、コイルにおける駆動力の作用位置とを略一致させているため、揺動アームを揺動させる方向以外のトルクの発生を抑制することができる。その結果、閉ループ制御を行った場合であっても、振動の発生を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の各実施の形態について、図面を参照して説明する。
実施の形態1.
図1及び図2は、本実施の形態1における絞り駆動装置10の構成を示す斜視図及び分解斜視図である。図3は、絞り駆動装置10における揺動ユニット2の構成を示す斜視図である。図1及び図2に示すように、絞り駆動装置10は、光束の一部を遮って光量を変化させる絞り板1と、この絞り板1が取り付けられた揺動アーム20と、これらを支持する筐体7とを有している。絞り板1は、図示しない光束を遮蔽する絞り羽根1aを先端部に有しており、末端部1bにおいて揺動アーム20に固定されている。
【0013】
図3に示すように、揺動アーム20は、一方向に長い形状を有しており、その長手方向の一端に上記の絞り板1が、ねじ2cにより固定されている。揺動アーム20の長手方向の他端には、ボイスコイルモータを構成するコイル4が、接着剤9(図5)により固定されている。揺動アーム20は、また、絞り板1とコイル4との間に、後述する揺動軸3と係合する軸受部2bを有している。軸受部2bは、揺動アーム20と一体形成されていてもよく、また、別部材の玉軸受や滑り軸受を揺動アーム20の円筒状部分21に装着したものであってもよい。
【0014】
なお、揺動アーム20の軸受部2bには、円筒状部材であるバランサ8が取り付けられている。このバランサ8の機能については、後述する。これら揺動アーム20、絞り板1、コイル4及びバランサ8により、可動部である揺動ユニット2が構成されている。
【0015】
図2に示すように、筐体7には、揺動アーム20を揺動可能に支持し、揺動アーム20の揺動中心を規定する揺動軸3が設けられている。揺動軸3は、その軸方向一端が筐体7に固定されている。また、この筐体7には、上述したコイル4と共にボイスコイルモータを構成する磁石6及びヨーク5a,5bが取り付けられている。これら筐体7、磁石6、ヨーク5a,5b、及び揺動軸3により、固定ユニットが構成されている。
【0016】
筐体7は、絞り駆動装置10が組み込まれている装置(例えば、投写型画像表示装置)の所定の個所に固定される固定板71と、この固定板71の一方の面側に突出形成された支持部72とを有している。上述した揺動軸3は、筐体7の支持部72に固定されている。また、ヨーク5aは、略板状であり、その両側端(揺動軸3を中心とした円周方向における端部)において、筐体7の支持部72の両側壁73に固定されている。揺動アーム20は、筐体7の固定板71に形成された開口部71aを貫通して、支持部72とは反対の側(図示しない光路側)に突出している。
【0017】
図4は、コイル4、ヨーク5a,5b、及び磁石6からなるボイスコイルモータの構成を示す概略図である。コイル4は、その巻き軸方向が揺動軸3に対して直交するように、矩形状に巻かれている。より具体的には、コイル4は、揺動軸3を中心とした揺動半径の方向に延在する2つのコイル部分4a,4cと、揺動軸3の方向に延在する2つのコイル部分4b,4dとを有している。
【0018】
コイル4の矩形状に巻き回された内側の中空部分(矩形状の穴)には、コイル4と接触しないように、上述した平板状のヨーク(センターヨーク)5aが配置されている。また、コイル4に対し、揺動軸3の方向の一方の側には、ヨーク(バックヨーク)5bが配置されている。このヨーク5bは、ヨーク5aと平行な平板部51と、この平板部51の両側端からヨーク5aに向かって延在する一対の延在部52とを有し、コの字状に構成されている。ヨーク5bの延在部52は、それぞれヨーク5aの両端部に固定されている。
【0019】
ヨーク5bのヨーク5aと対向する側(すなわちコイル4と対向する側)の面には、磁石6が固定されている。この磁石6は、例えば、ヨーク5bと対向する側の面がS極で、ヨーク5aと対向する面がN極となるように着磁されている。そのため、磁石6のN極から出た磁力線は、コイル4を通過してヨーク5aに達し、ヨーク5aからさらに延在部52を介してヨーク5bに達し、磁石6のS極に戻る。なお、磁石6の着磁方向は、例えば、N極とS極とが逆であっても良い。
【0020】
図5は、ボイスコイルモータの作用を説明する模式図であり、図1に矢印Vで示した方向から見た図に対応している。コイル4に、図中反時計回りの方向に電流Iが流れた場合、磁界は磁石6のN極(ヨーク5aに対向する面)からヨーク5aに向かっているため、コイル4の磁石6とヨーク5aとに挟まれたコイル部分4aには、図5の紙面に垂直で手前側に向かう方向(すなわち揺動軸3を中心とした円周方向)の駆動力が作用する。これにより、揺動アーム20は、揺動軸3を中心として揺動する。すなわち、揺動アーム20と、この揺動アーム20に取り付けられた各構成部品とを含む揺動ユニット2が、揺動軸3を中心として揺動する。
【0021】
一方、揺動アーム20は、図示しないリターンスプリングにより、基準位置からの揺動変位量に応じた付勢力で、基準位置に戻る方向(コイル4に生ずる駆動力と反対の方向)に付勢されている。そのため、揺動アーム20は、コイル4に生じた駆動力(電磁力)と、リターンスプリングによる力とが釣り合う位置で停止する。
【0022】
コイル4に流れる電流を制御することにより、揺動アーム20の停止位置を決定し、これにより絞り板1が光束を遮光する量を制御し、光量(投写光量)を調整することができる。なお、絞り板1の移動量の検知は、角度センサ102(図6)により揺動アーム20の揺動角度を検知することで実現できる。
【0023】
図6は、絞り駆動装置10を駆動制御する制御システムを示すブロック図である。この制御システムには、上述したボイスコイルモータであるアクチュエータ101と、揺動アーム20の揺動角度を検知する角度センサ102と、投写型画像表示装置における照明光束の輝度を評価する輝度レベル評価部103と、制御ユニット100とが設けられている。制御ユニット100は、輝度レベル評価部103から出力された輝度値データを受け取り、揺動アーム20の揺動角度を示す角度センサ102の出力と比較することで、コイル4に流す電流値を決定する。コイル4に電流が流れると、上述した駆動力が発生し、揺動アーム20を含む揺動ユニット2は、当該駆動力と図示しないリターンスプリングによる力とが釣り合う位置で停止する。
【0024】
ここで、揺動ユニット2に生じる振動について説明する。図6に示した制御システムでは、閉ループ制御が行われている。すなわち、揺動ユニット2が、コイル4に流した電流値に対応する角度以上に揺動した場合には、制御ユニット100が、角度センサ102により検知された角度に基づき、揺動ユニット2を行き過ぎた分だけ戻すよう、コイル4に電流を流す。このとき、揺動ユニット2が、電流値に応じた角度以上に揺動すると、再び、制御ユニット100が、角度センサ102により検知された揺動ユニット2の揺動位置に基づいて、揺動ユニット2を行き過ぎた分だけ戻すようにコイル4に電流を流す。
【0025】
揺動軸3と軸受部2bとの隙間が大きいほど、コイル4に流した電流値に対応する角度以上に揺動ユニット2が揺動しやすくなり、上記の閉ループ制御に伴う振動が発生しやすくなる。そのため、揺動軸3と軸受部2bとの隙間は、できるだけ小さいことが好ましい。
【0026】
ここで、揺動ユニット2の揺動時に、揺動方向以外の力が作用すると、揺動ユニット2の振動を助長する原因となる。本実施の形態では、揺動ユニット2の振動を助長する要因を以下のようにして取り除いている。
【0027】
一般的な揺動アーム20は、揺動軸3の方向における中心位置に対し、ほぼ対称な形状を有している。従って、図5において、揺動アーム20を含む揺動ユニット2の重心2gは、揺動アーム20の揺動軸3の方向における中心位置を通る中心線2e上にあるのが一般的である。一方、磁石6は、コイル4に対し、揺動軸3の方向の一方の側にしか存在しておらず、コイル4のコイル部分4a〜4dのうち駆動力が作用するのはコイル部分4aのみである。従って、コイル4における駆動力(電磁力)の作用位置4gは、揺動軸3の方向において、上記の重心2gから距離Zだけずれていることになる。そのため、コイル4に電流を流し、電磁力を生じさせると、揺動軸3から駆動力作用位置4gまでの距離を腕の長さYとするトルク(揺動ユニット2を揺動軸3を中心として揺動させる方向のトルク)に加えて、揺動ユニット2の重心位置2gからコイル4の駆動力作用位置4gまでの距離を腕の長さZとする不要なトルクが発生する。この不要トルクは、上述した振動を助長する要因となる。
【0028】
そこで、本実施の形態では、揺動ユニット2の重心位置2gを、揺動軸3の方向において、コイル4における駆動力作用位置4gと略一致させる(すなわち腕の長さZをほぼ0にする)ことで、揺動ユニット2を揺動軸3を中心として揺動させる方向以外の不要なトルクの発生を抑制している。
【0029】
図1〜図3に示すように、揺動アーム20には、揺動ユニット2の重心位置2gを、揺動軸3の方向においてコイル4の駆動力作用位置4gと略一致させるためのバランサ8が取り付けられている。このバランサ8は、揺動アーム20の揺動軸3の近傍に、なお且つ、揺動軸3の方向において磁石6が配置された側と同じ側に取り付けられている。また、バランサ8は、例えば円筒状の部材であって、揺動アーム20の揺動中心をなす軸線を囲むように取り付けられている。バランサ8を揺動アーム20の揺動軸3の近傍に取り付けた理由は、バランサ8を取り付けたことで、揺動アーム20を含む揺動ユニット2の慣性モーメントが大きくならないようにするためである。
【0030】
なお、上記の説明において、ボイスコイルモータの駆動力(電磁力)は、コイル4の磁石6に対向するコイル部分4aの全体に亘って作用しているが、一点(コイル部分4aの揺動軸3方向における中心で、且つ、揺動軸3を中心とする半径方向の中心にある点)に集中していると考えることができる。この点を、図5に示したように、コイル4における駆動力の作用位置4gと定義している。
【0031】
以上説明したように、本実施の形態では、揺動アーム20にバランサ8を取り付けることで、揺動ユニット2の重心位置2gを、揺動軸3の方向において、コイル4における駆動力作用位置4gと略一致させている。これにより、不要なトルクの発生を抑制し、絞り板1の位置を閉ループ制御した場合の振動を助長する要因を取り除くことができる。
【0032】
また、磁石6を、コイル4に対して揺動軸3の方向における一方の側のみに配置することで、絞り駆動装置10を揺動軸3の方向に小型化することができる。
【0033】
さらに、バランサ8を、揺動アーム20に対し、揺動軸3の方向において磁石6と同じ側に取り付けることにより、揺動ユニット2の重心位置2gとコイル4における駆動力作用位置4gとを略一致させる構成を容易に実現することができる。
【0034】
加えて、バランサ8を、揺動アーム20の揺動軸3の近傍に設けた円筒状の部材とすることにより、揺動ユニット2の慣性モーメントを小さく抑制することができる。
【0035】
また、コイル4を、揺動軸3に直交する方向に延在するコイル部分4a,4bを有するように巻き回すと共に、これらコイル部分4a,4bの間にヨーク5aを配置し、さらにコイル部分4aとの間で磁石6を挟み込むようにヨーク5bを配置したことにより、絞り駆動装置10を、揺動方向にも揺動軸方向にも小型化することができる。
【0036】
なお、図1及び図2に示した絞り駆動装置10では、筐体7のヨーク5b側の面に覆い(カバー)がなく、露出している構造となっているが、図7に示すように、ヨーク5bが筐体7のカバーを兼用する形状を有していてもよい。図7に示す構造を採用した場合も、ボイスコイルモータの性能には影響がなく、ヨーク5bとは別にカバーを設けた場合よりも部品点数を削減することができる。なお、図7において、ヨーク5bには、バランサ8に対応する部分に穴が形成されているが、バランサ8及びヨーク5bが互いに干渉し合わない形状・寸法を有している場合には、穴を設けなくてもよい。また、ヨーク5bにおける穴の有無は、ボイスコイルモータの性能には特に影響しない。
【0037】
実施の形態2.
次に、本発明の実施の形態2について説明する。上述した実施の形態1では、揺動アーム20にバランサ8を取り付けた構成について説明したが、この実施の形態2では、揺動アーム22の形状によって、揺動ユニット2の重心位置を、揺動軸3の方向において、コイル4における駆動力作用位置と略一致させている。
【0038】
図8は、本実施の形態2における絞り駆動装置の構成を示す斜視図である。図8において、実施の形態1(図1〜図6)で説明した絞り駆動装置の構成要素と同様の構成要素には、同一符号を付す。また、図8において、筐体7の固定板71は、一部を切り欠いた状態で示されている。
【0039】
図8に示すように、この実施の形態2における絞り駆動装置11の揺動アーム22では、軸受部2bを構成する軸受23及び円筒状部分21のうち、円筒状部分21が、揺動軸3の方向において磁石6と同じ側に突出した形状を有している。また、絞り板1を保持する保持部22aは、円筒状部分21の磁石6側に突出した部分に形成されている。すなわち、揺動ユニット2(揺動アーム22、軸受23、絞り板1及びコイル4)において、揺動アーム22の円筒状部分21から絞り板1に至る部分が、磁石6の配置された側に突出している。
【0040】
このように、揺動ユニット2において、揺動アーム22の円筒状部分21から絞り板1に至る部分が磁石6側に突出している構成により、揺動ユニット2の重心位置を、揺動軸3の方向において、コイル4における駆動力作用位置と略一致させることができる。他の構成は、実施の形態1と同様である。なお、軸受部2bを構成している軸受23及び円筒状部分21は、一体に形成されていてもよい。また、図7の構成を採用してもよい。
【0041】
このように、本実施の形態においても、揺動ユニット2の重心位置を、揺動軸3の方向において、コイル4における駆動力作用位置と略一致させることができ、絞り板1の位置を閉ループ制御した場合の振動を抑制することができる。加えて、この実施の形態2では、揺動アームに、別部材としてバランサ8(図1等)を取り付ける必要がないため、実施の形態1と比較して、組立工程が簡単になる。
【0042】
実施の形態3.
次に、本発明の実施の形態3について説明する。上述した実施の形態1では、揺動アーム20にバランサ8を取り付ることにより、また、上述した実施の形態2では、揺動アーム22の形状により、揺動ユニット2の重心位置を駆動力作用位置と略一致させていた。これに対し、この実施の形態3では、揺動アーム32に取り付けられた軸受の取付位置により、揺動ユニット2の重心位置を駆動力作用位置と略一致させるようにしている。
【0043】
図9は、実施の形態3に係る絞り駆動装置における揺動アームの軸受部及びコイルを含む部分を拡大して示す断面図である。図9において、実施の形態1で説明した絞り駆動装置の構成要素と同一の構成要素には、同一の符号を付す。
【0044】
図9に示すように、この実施の形態3における絞り駆動装置12では、揺動アーム32の軸受32eを装着する軸受装着部32bが、磁石6が配置された側に突出する形状を有している。さらに、揺動アーム32の軸受装着部32bの磁石6側に突出した部分の内側に、軸受32eが取り付けられている。
【0045】
揺動アーム32を含む揺動ユニット2の構成部品の中で、最も重量の重い部品は、一般に銅で形成されるコイルである。しかしながら、軸受32eとして、金属製の軸受(例えば、玉軸受、含油軸受等)を用いた場合は、その軸受32eを磁石6側に寄せた位置に配置することで、揺動ユニット2の重心位置32dをコイル4における駆動力作用位置4gと略一致させることが可能となる。
【0046】
すなわち、図9において、軸受32eの重心位置32fを、揺動ユニット2の軸受32eを除く部分の重心位置32gよりも磁石6側に位置させることで、揺動ユニット2の重心位置32dを、揺動軸3の方向において、コイル4における駆動力作用位置4gと略一致させている。実施の形態3の絞り駆動装置の他の構成は、実施の形態1の絞り駆動装置と同様である。また、図7の構成を採用してもよい。
【0047】
このように、本実施の形態においても、揺動アーム32の軸受装着部32bの形状及び軸受32eの配置により、揺動ユニット2(揺動アーム32、軸受32e、絞り板1及びコイル4)の重心位置32dを、揺動軸3の方向において、コイル4における駆動力作用位置4gと略一致させている。従って、実施の形態1及び2と同様、揺動アーム32を閉ループ制御した場合の振動を抑制することができる。
【0048】
なお、上述した実施の形態1〜3において、揺動ユニット2の重心位置2gが、揺動軸3の方向において、コイル4の駆動力作用位置4gと「略一致」すると説明したが、この「略一致」とは、完全に一致していなくても、閉ループ制御の際に揺動ユニット2の振動の発生が助長されないような範囲のずれを含むものである。
【0049】
実施の形態4.
次に、本発明の実施の形態4について説明する。実施の形態4は、実施の形態1、2又は3に係る絞り駆動装置を、投写型画像表示装置としての液晶プロジェクタに適用したものである。
【0050】
図10は、実施の形態4に係る液晶プロジェクタの基本構成を示す図である。この液晶プロジェクタは、光源であるランプ60を備えている。また、ランプ60の出射光束の進行方向に沿って、第1レンズアレイ61と、実施の形態1,2又は3に係る絞り駆動装置10(11,12)と、第2レンズアレイ62と、偏向変換素子63と、重畳レンズ64と、ダイクロイックミラー66Rとが配置されている。
【0051】
また、ダイクロイックミラー66Rの反射光の進行方向に沿って、全反射ミラー67Rと、フィールドレンズ69Rと、液晶パネル65Rとが配置されている。また、ダイクロイックミラー66Rの透過光の進行方向に、ダイクロイックミラー66Gが配置されており、このダイクロイックミラー66Gの反射光の進行方向に沿って、フィールドレンズ69Gと、液晶パネル65Gとが配置されている。このダイクロイックミラー66Gの透過光の進行方向に沿って、リレーレンズ68Baと、全反射ミラー67Baと、リレーレンズ68Bbと、全反射ミラー67Bbと、フィールドレンズ69Bと、液晶パネル65Bとが配置されている。
【0052】
液晶パネル65R,65G,65Bの出射側には、これらの出射光束を合成するクロスプリズム70が配置されている。さらにクロスプリズム70の出射側には、クロスプロズム70で合成された光束を図示しないスクリーンに投影する投写光学系(投写手段)71が配置されている。
【0053】
このように構成された液晶プロジェクタにおいて、ランプ60から出射された光束は、第1レンズアレイ61によって複数の光束に分割され、その分割された光束は第2レンズアレイ62を介して偏光変換素子63に入射する。偏光変換素子63により、各光束は偏光方向がそろった直線偏光となって重畳レンズ64に入射し、さらにダイクロイックミラー66Rに入射する。ダイクロイックミラー66Rは、赤色成分の光束のみを反射し、その他の光を透過する。反射された赤色成分の光束は、全反射ミラー67Rで反射された後、フィールドレンズ69Rを透過して、液晶パネル65Rに入射する。
【0054】
同様に、ダイクロイックミラー66Gは、緑色成分の光束のみを反射し、その他の光束、即ち青色成分の光束を透過する。反射された緑色成分の光束は、フィールドレンズ69Gを透過して液晶パネル65Gに入射する。青色成分の光束は、リレーレンズ68Baを透過して全反射ミラー67Baで反射された後、リレーレンズ68Bbを透過し、さらに全反射ミラー67Bbで反射されてフィールドレンズ69Bを透過し、液晶パネル65Bに入射する。液晶パネル65R,65G,65Bは、光変調手段として機能する。
【0055】
液晶パネル65R,65G,65Bから出射された3色の光束は、クロスプリズム70で合成され、投写レンズ71を介して矢印72方向に投写される。
【0056】
この液晶プロジェクタにおいて、絞り駆動装置10(11,12)は、第1レンズアレイ61の出射側に配置されており、ランプ60からの出射された光束の光量を調整するために使用される。絞り駆動装置10(11,12)を用いて光量を調整することにより、明るいシーンから暗いシーンまで、適切にスクリーン上に投影することができる。
【0057】
実施の形態5.
次に、本発明の実施の形態5について説明する。実施の形態5は、実施の形態1、2又は3に係る絞り駆動装置を、投写型画像表示装置(背面投写型画像表示装置)であるリアプロジェクション装置に適用したものである。
【0058】
図11は、実施の形態5に係るリアプロジェクション装置の基本構成を示す図である。このリアプロジェクション装置(例えば、リアプロジェクションテレビ)は、筐体89の内部に、光源であるランプ80を備えており、このランプ80の出射光束の進行方向に沿って、照明光学系81と、折り返しミラー群M1と、反射型画像形成素子の一例であるデジタルマイクロミラーデバイス(DMD)82と、投写光学系83と、折り返しミラーM4と、非球面ミラー84と、スクリーン85とを備えている。
【0059】
ランプ80より放出された光束は、照明光学系81を透過した後、デジタルマイクロミラーデバイス82の表面に照射される。DMD82は、多数の微小なミラーを平面的に配列したものであり、各微小ミラー(画素)における反射角度を2方向に切り替えることで入射光束を変調する光変調手段として機能する。DMD82から出射された光束は、投写光学系83を透過し、非球面ミラー84で反射され、スクリーン85に背面側から拡大投影される。
【0060】
このリアプロジェクション装置において、絞り駆動装置10(11,12)は、投写光学系83内に配置されており、DMD82から出射されてスクリーン85に向かう光束(画像光)の光量を調整するために使用される。絞り駆動装置10により光量を調整することにより、明るいシーンから暗いシーンまで、適切にスクリーン85に投影することができる。
【0061】
上述した実施の形態1〜3で説明した絞り駆動装置は、実施の形態4,5で説明した投写型画像表示装置に限らず、他の投写型画像表示装置に適用することもできる。また、投写型画像表示装置以外の装置、例えば、撮像装置等において、光量を調整するために使用することもできる。
【0062】
また、上述した実施の形態1〜3では、揺動アーム2(22,32)と絞り板1とを別部材として説明したが、これらが一体に形成されていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の実施の形態1に係る絞り駆動装置の構成を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係る絞り駆動装置の構成を示す分解斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係る絞り駆動装置の揺動アームの構成を示す分解斜視図である。
【図4】本発明の実施の形態1に係る絞り駆動装置のボイスコイルモータの構成を示す模式図である。
【図5】本発明の実施の形態1に係る絞り駆動装置のボイスコイルモータの発生する駆動力を説明するための模式図である。
【図6】本発明の実施の形態1に係る絞り駆動装置の制御システムを示すブロック図である。
【図7】本発明の実施の形態1に係る絞り駆動装置の一構成例を示す斜視図である。
【図8】本発明の実施の形態2に係る絞り駆動装置の構成を示す斜視図である。
【図9】本発明の実施の形態3に係る絞り駆動装置の構成を示す斜視図である。
【図10】本発明の実施の形態4に係る液晶プロジェクタの基本構成を示す図である。
【図11】本発明の実施の形態5に係るリアプロジェクション装置の基本構成を示す図である。
【符号の説明】
【0064】
1 絞り板、 2 揺動ユニット、 2a 軸受装着部、 2b 軸受部、 2c ねじ、 2g 可動部の重心位置、 3 揺動軸、 4 コイル、 4a,4b,4c,4d コイル部分、 4g 電磁力の作用位置、 5a,5b ヨーク、 6 磁石、 7 筐体、 8 バランサ、 10,11 絞り駆動装置、 20 揺動アーム、 21 円筒状部分、 22 揺動アーム、 22a 保持部、 32 揺動アーム、 32b 軸受装着部、 32e 軸受、 60 ランプ、 61 第1レンズアレイ、 62 第2レンズアレイ、 63 偏光変換素子、 64 重畳レンズ、 65R,65G,65B 液晶パネル、 66R,66G ダイクロイックミラー、 69R,69G,69B リレーレンズ、 70 クロスプリズム、 71 投写レンズ、 80 ランプ、 81 照明光学系、 82 DMD、 83 投写光学系、 84 非球面ミラー、 85 スクリーン、 89 筐体、 100 制御ユニット、 101 アクチュエータ、 102 角度センサ、 103 輝度レベル評価部。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
光束の一部を遮る絞り板と、
前記絞り板を移動させる駆動力を得るためのボイスコイルモータを構成するコイルと、
前記絞り板と前記コイルとを支持し、さらに、前記絞り板と前記コイルとの間に軸受部を有する揺動アームと
を有する揺動ユニットと、
前記軸受部に係合して前記揺動アームを揺動可能に支持する揺動軸と、前記コイルと共に前記ボイスコイルモータを構成する磁石及びヨークとを有する固定ユニットと
を備え、
前記揺動軸の方向において、前記揺動ユニットの重心の位置が、前記コイルにおける前記駆動力の作用位置と略一致することを特徴とする絞り駆動装置。
【請求項2】
前記磁石は、前記コイルに対し、前記揺動軸の方向における一方の側に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の絞り駆動装置。
【請求項3】
前記揺動アームには、前記揺動軸の方向において前記磁石が配置された側に、前記重心の位置と前記駆動力の作用位置とを略一致させるためのバランサが取り付けられていることを特徴とする請求項2に記載の絞り駆動装置。
【請求項4】
前記バランサは、前記揺動アームの前記揺動軸の近傍に取り付けられた筒状部材であることを特徴とする請求項3に記載の絞り駆動装置。
【請求項5】
前記揺動アームにおいて、前記軸受部から前記絞り板までの部分が、前記磁石の配置された側に突出していることを特徴とする請求項2に記載の絞り駆動装置。
【請求項6】
前記揺動アームの前記軸受部は、軸受と、この軸受が装着される軸受装着部とを有し、
前記軸受装着部内において、前記軸受が、前記磁石の配置された側に突出した位置に取り付けられていることを特徴とする請求項2に記載の絞り駆動装置。
【請求項7】
前記軸受が、金属製軸受であることを特徴とする請求項6に記載の絞り駆動装置。
【請求項8】
前記コイルは、前記揺動軸に直交する方向に延在する互いに平行な第1及び第2のコイル部分を有し、当該第1及び第2のコイル部分は前記揺動軸の方向に対向しており、
前記駆動力の作用位置は、前記第1及び第2のコイル部分のうち、より前記磁石に近い第1のコイル部分にあることを特徴とする請求項2から7までのいずれか1項に記載の絞り駆動装置。
【請求項9】
前記ヨークは、
前記第1及び第2のコイル部分の間に配置されたセンターヨークと、
前記第1のコイル部分との間で前記磁石を挟み込むように配置されたバックヨークと
を有することを特徴とする請求項8に記載の絞り駆動装置。
【請求項10】
請求項1から9までのいずれか1項に記載の前記絞り駆動装置と、
前記絞り駆動装置により光量が調節された光束を、画像情報に応じて変調する光変調手段と、
前記変調手段により変調された光束を投写する投写手段と
を備えたことを特徴とする投写型画像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−224822(P2008−224822A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−59885(P2007−59885)
【出願日】平成19年3月9日(2007.3.9)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】