説明

給湯システム

【課題】貯湯タンク内の水を沸き上げる際に発生する膨張水を有効利用することが可能な給湯システムを提供する。
【解決手段】給湯システムS1は、水の元供給源からの水が流通する水供給系統20,21,24と、所定の熱源61で加熱水WH1を生成して該加熱水WH1を貯留する一方で、加熱水WH1を生成する際に膨張水Eが発生する第1貯留タンク10と、第1貯留タンク10で発生した膨張水Eを貯留する第2貯留タンク71と、第1貯留タンク10内の加熱水WH1が流通する加熱水供給系統23と、水供給系統24からの水WL1と加熱水供給系統23からの加熱水WH1とが混合されて生成された所定温度の湯WH2を出水させる給湯栓B,Z1,Z2とを含む。水供給系統20,21,24の一部は、該水供給系統によって流通する水WL,WL1,WL2が、第2貯留タンク71内の膨張水Wと熱交換可能に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の熱源により水を沸き上げ、貯湯する一方で、水を沸き上げる際に膨張水が発生する貯湯方式の給湯システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、料金の割安な深夜時間帯に、所定の熱源、例えば電気ヒータにより貯湯タンク内の水を沸き上げて温水(例えば60〜90℃)を生成し、その温水を貯湯する貯湯方式の電気給湯システム(例えば、特許文献1)が知られている。このような電気給湯システムでは、貯湯タンク内の水の沸き上げに伴い、水が膨張して体積が増加する。その結果、所謂膨張水が発生する。一般に、貯湯タンクの破損を防止するため、この膨張水は貯湯タンク内から外部へ逃している。
【特許文献1】特開2002−286297号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
膨張水は、貯湯タンク内の水を沸き上げる度に発生する高温の湯であるため、熱エネルギーが大きく、したがって、膨張水を外部に捨てるのではなく有効利用することが求められている。
【0004】
膨張水を有効利用するために、例えば、上記特許文献1では、膨張水を逃がす逃がし管を、台所や風呂等の給湯栓に接続された給湯管に直接接続し、給湯栓が開栓されると、膨張水を利用した温水が供給されるようになっている。
【0005】
しかしながら、上記特許文献1では、逃がし管は給湯管に直接接続されているため、高温の膨張水が給湯栓から直接供給される可能性があり、安全面から実用化が難しい。
【0006】
そこで、本発明は、上記事情に鑑み、貯湯タンク内の水を沸き上げる際に発生する膨張水を有効利用することが可能な給湯システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る給湯システムは、所定温度の湯を給湯する機能を備えた給湯システムであって、水の元供給源からの水が流通する水供給系統と、所定の熱源で加熱水を生成して該加熱水を貯留する一方で、前記加熱水を生成する際に膨張水が発生する第1貯留タンクと、前記第1貯留タンクで発生した前記膨張水を貯留する第2貯留タンクと、前記第1貯留タンク内の前記加熱水が流通する加熱水供給系統と、前記水供給系統からの前記水と前記加熱水供給系統からの前記加熱水とが混合されて生成された前記所定温度の湯を出水させる給湯栓とを含む。前記水供給系統の一部は、該水供給系統によって流通する前記水が、前記第2貯留タンク内の前記膨張水と熱交換可能に配置されている。
【0008】
本発明に係る給湯システムによれば、水供給系統によって流通される水は、第2貯留タンク内の膨張水から熱エネルギーを得て温められるので、所定温度の湯を生成するために給湯システムが消費する熱量を低減することが可能である。
【0009】
本発明の好ましい実施形態では、給湯システムは、さらに、前記加熱水供給系統および水供給系統に接続され、前記加熱水供給系統からの前記加熱水および前記水供給系統からの前記水の各流量を調整することにより、前記所定温度の湯を生成して前記給湯栓に供給する弁体と、前記弁体の動作を制御する制御部とを含む。前記水供給系統は、前記水の元供給源から前記弁体に水を供給する第1配管を含み、前記第1配管は、該第1配管を通る水が、前記第2貯留タンク内の前記膨張水と熱交換可能に配置されている。
【0010】
この構成によれば、膨張水から得た熱エネルギーによって温められた水が弁体に供給されるので、所定温度の湯を生成するために弁体において前記水と混合される加熱水の量を抑えることができる。その分、第1貯留タンクにおいて所定の熱源によって加熱水を生成するために必要な熱量、ひいては給湯システムが消費する熱量を低減することができる。この構成において、第1配管に、第2貯留タンク内を通る熱交換部を設けることで、第1配管を通る水と膨張水とを熱交換させて前記水を温めることが好ましい。
【0011】
本発明の他の好ましい実施形態では、前記水供給系統は、前記水の元供給源から前記第1貯留タンクに水を供給する第2配管を含み、前記第2配管は、該第2配管を通る水が、前記第2貯留タンク内の前記膨張水と熱交換可能に配置されている。
【0012】
この構成によれば、膨張水から得た熱エネルギーで温められた水が第1貯留タンクに供給されるので、第1貯留タンクにおいて所定の熱源によって加熱水を生成するために必要な熱量、ひいては給湯システムから持ち出される熱量を低減することができる。この構成では、第2配管に、第2貯留タンク内を通る熱交換部を設けることで、第2配管を通る水と膨張水とを熱交換させて前記水を温めることが好ましい。
【0013】
本発明のさらに他の好ましい実施形態では、給湯システムは、さらに、前記加熱水供給系統および水供給系統に接続され、前記加熱水供給系統からの前記加熱水および前記水供給系統からの前記水の各流量を調整することにより、前記所定温度の湯を生成して前記給湯栓に供給する弁体と、前記弁体の動作を制御する制御部とを含み、前記水供給系統は、前記水の元供給源に直接接続されると共に、前記弁体および前記第1貯留タンクに水を供給可能に該弁体および該第1貯留タンクに接続された元配管を含み、前記元配管は、該元配管を通る水が、前記第2貯留タンク内の前記膨張水と熱交換可能に配置されている。
【0014】
この構成によれば、膨張水から得た熱エネルギーで温められた水が元配管を介して弁体および第1貯留タンクに供給されるので、弁体においては、所定温度の湯を生成するために前記水と混合される加熱水の量を抑えることができると共に、第1貯留タンクにおいては、前記温められた水から加熱水を生成することができる。これにより、第1貯留タンクにおいて所定の熱源によって加熱水を生成するために必要な熱量、ひいては給湯システムが消費する熱量を低減することができる。この構成では、元配管に、第2貯留タンク内を通る熱交換部を設けることで、元配管を通る水と膨張水とを熱交換させて前記水を温めることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る給湯システムによれば、貯湯タンク内の水を沸き上げる際に発生する膨張水を有効利用することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0017】
まず、本実施形態に係る給湯システムの説明に先立ち、図1を参照して一般的な給湯システムの構成について説明する。給湯システムS100は、浴槽B、シングルレバー式の混合栓Z1およびサーモスタット式の混合栓Z2に給湯する貯湯タンクユニットU1として構成された、貯湯式の電気給湯器である。貯湯タンクユニットU1は、貯湯タンク(第1貯留タンク)10、元配管20、第1配管24、第2配管21、第3配管23、第4配管25、湯水混合三方弁30、給湯制御部40およびリモコン装置50を含む。
【0018】
シングルレバー式混合栓Z1は、例えば開栓頻度が高い台所に配置され、ひとつのレバー操作で出水・止水が可能な混合栓であり、ユーザは、レバー位置を「水」から「湯」への移動レンジの適宜な位置に設定して、好みの湯温で出水させることが可能である。また、サーモスタット式混合栓Z2は、例えば浴室に配置され、内蔵のサーモスタットエレメントにより湯と水の量を調節して一定温度に保つ混合栓であり、ユーザは、温度調整ハンドルを好みの温度に設定して、温水を出水させることが可能である。なお、シングルレバー式混合栓Z1およびサーモスタット式混合栓Z2に代えて、湯側と水側とが独立した単水栓を用いてもよい。
【0019】
貯湯タンク(第1貯留タンク)10は、300〜560リットル程度の内容量を有する加熱水(温水)の貯留タンクであって、タンク内には水を加熱するための電気ヒータ61が取り付けられている。電気ヒータ61は、ON/OFFに切り換え可能であり、給湯制御部40に制御されてONの状態とされると貯湯タンク10内の水をジュール熱で加熱する。例えば、深夜電力時間帯の終了時刻に合わせて、貯湯タンク10内の水の全量が所定温度(例えば60〜90℃)に昇温されるように、電気ヒータ61は通電制御される。また、昼間時間帯(深夜電力時間帯外)でも、貯湯タンク10内の加熱水が所定温度以下になると、追い炊きのために電気ヒータ61に通電され、貯湯タンク10内の水が加熱される。
【0020】
貯湯タンク10内部には、サーミスタ等からなる5つの温度センサ11〜15が上下方向に並ぶように配置されている。これらの温度センサ11〜15は、貯湯タンク10内に貯留されている加熱水の量を計測するために利用される。すなわち、深夜電力時間帯に貯湯タンク10内の水を沸き上げる場合に、温度センサ11〜15の全てが所定の湯温を検知したときに、水の全量が昇温されたと判定する。また、昼間時間帯に貯湯タンク10内の加熱水が使用されると、タンク下層部から徐々に水に入れ替わっていくことになるが、温度センサ11〜15の検知結果に基づくタンク上下方向の温度分布により、貯湯タンク10内に残存している加熱水量を推定することができる。
【0021】
元配管20は、商用の水の元供給源に接続され、水WLが流通する配管である。第1配管24は、元配管20から分流される水WL1を、浴槽B、シングルレバー式混合栓Z1およびサーモスタット式混合栓Z2に導くための配管である。第2配管21は、貯湯タンク10の底部に接続され、元配管20から分流される水WL2を貯湯タンク10へ供給するための配管である。元配管20には、減圧弁35が配置されており、この減圧弁35により、水WLは第1配管24および第2配管21に供給される前に、例えば0.17Mpa以下に減圧される。元配管20と第1配管24と第2配管21とで、水が流通する水供給系統が構成される。
【0022】
第3配管23は、貯湯タンク10の上部に接続され、貯湯タンク10内の加熱水(温水)WH1を、浴槽B、シングルレバー式混合栓Z1およびサーモスタット式混合栓Z2に導くための、加熱水供給系統を構成する配管である。第4配管25は、第1配管24からの水WL1および第3配管23からの加熱水WH1を、浴槽B、シングルレバー式混合栓Z1およびサーモスタット式混合栓Z2に導くための配管である。第1配管24の下流端、第3配管23の下流端および第4配管25の上流端には、湯水混合三方弁30が接続されている。
【0023】
なお、元配管20には、貯湯タンクユニットU1に含まれない、第1分岐管221および第2分岐管222からなる分岐管22が接続されている。第1分岐管221は、シングルレバー式混合栓Z1に接続され、元配管20から分流される水WL3をシングルレバー式混合栓Z1に直接供給する。第2分岐管222は、サーモスタット式混合栓Z2に接続され、元配管20から分流される水WL4をサーモスタット式混合栓Z2に直接供給する。
【0024】
湯水混合三方弁30は、第1入力ポート31、第2入力ポート32および出力ポート33を有し、第1入力ポート31および第2入力ポート32の開度調整が可能な三方弁である。第1入力ポート31には、第3配管23の下流端が接続され、第2入力ポート32には、第1配管24の下流端が接続され、出力ポート33には、第4配管25の上流端が接続されている。第1入力ポート31および第2入力ポート32の開度が適宜調整されることにより、貯湯タンク10から第3配管23で導出される加熱水WH1に、第1配管24から供給される水WL1が設定温度に応じて適量加えられると、前記設定温度の湯WH2が出力ポート33から第4配管25に導出される。
【0025】
第4配管25は、第1分岐管251および第2分岐管252に分岐される。第1分岐管251は、湯水混合三方弁30の出力ポート33から導出された湯WH2を浴槽Bに供給するための配管であり、第1分岐管251の開閉を行うことが可能な風呂湯張り電磁弁26、および第1分岐管251を通る湯の量、つまり浴槽Bに張られた湯の量を測定する風呂湯張りカウンター27が設けられている。第2分岐管252の下流端には、シングルレバー式混合栓Z1に湯WH2を供給する第3分岐管253と、サーモスタット式混合栓Z2に湯WH2を供給する第4分岐管254とが接続されている。
【0026】
給湯制御部40は、マイクロプロセッサや各種回路を含み、貯湯タンクユニットU1の各部の動作、例えば、湯水混合三方弁30の第1入力ポート31および第2入力ポート32の動作を制御するものである。
【0027】
リモコン装置50は、浴室に設置される第1リモコン51と、台所に設置される第2リモコン52とを含む。第1リモコン51および第2リモコン52は、複数の操作ボタンを有するリモコンパネルである。操作ボタンは、ユーザが、例えば、浴槽Bの湯張り開始の指示を与えたり、台所のシングルレバー式混合栓Z1から出水される湯WH2の給湯温度、浴槽Bに張られる湯WH2の風呂温度、浴槽Bに張られる湯WH2の湯量等の設定を行ったりするためのボタンである。給湯制御部40は、そのような指示や設定に従い、貯湯タンクユニットU1を制御する。
【0028】
このように構成された給湯システムS100において、シングルレバー式混合栓Z1から給湯を行う場合の給湯経路は次の通りとなる。ユーザが、リモコン装置50によって、例えば温度39℃の温水を設定すると、給湯制御部40は、湯水混合三方弁30の第1入力ポート31および第2入力ポート32の開度を調整して、第3配管23からの加熱水WH1と第1配管24からの水WL1とを混合させることにより、前記設定温度(39℃)の湯WH2を生成させる。湯WH2は、湯水混合三方弁30の出力ポート33から導出され、第4配管25の第2分岐管252、第3分岐管253を通ってシングルレバー式混合栓Z1から出水される。なお、出力ポート33から導出された湯WH2は、第4配管25における出力ポート33の近傍箇所に配置された給湯温度センサ37によって常時温度測定され、給湯制御部40は、給湯温度センサ37が測定した温度と、ユーザがリモコン装置50により設定した設定温度との偏差に基づき、湯WH2の温度が前記設定温度(39℃)となるように湯水混合三方弁30の第1入力ポート31および第2入力ポート32の開度を制御する。
【0029】
また、給湯システムS100において、浴槽Bに湯を張る場合の給湯経路は次の通りとなる。ユーザが、リモコン装置50によって、例えば温度42℃、湯量200リットルの湯を張るように設定すると、給湯制御部40は、湯水混合三方弁30の第1入力ポート31および第2入力ポート32の開度を調整して、第3配管23からの加熱水WH1と第1配管24からの水WL1とを混合させることにより、前記設定温度(42℃)の湯WH2を生成させる。湯WH2は、湯水混合三方弁30の出力ポート33から第4配管25の第1分岐管251に導入され、給湯制御部40によって開状態とされた湯張り電磁弁26および湯張りカウンター27を通って浴槽Bに供給される。湯WH2は、浴槽Bに所定湯量である200リットルの湯が張られるまで供給され続ける。湯張りカウンター27によって浴槽Bに所定湯量の湯が張られたことが検知されると、湯張り電磁弁26が閉止されて、湯WH2の浴槽Bへの供給は停止される。これにより、湯張りは完了する。
【0030】
ところで、貯湯式の電気給湯システムS100では、第2配管21から貯湯タンク10内に導入された水WL2を電気ヒータ61によって加熱して沸き上げるとき、水WL2は膨張してその体積が増加し、これに伴い、貯湯タンク10内の圧力が上昇する。電気温水システムS100の貯湯タンク最高使用圧力は、労働安全衛生法の規制緩和により、従来の0.1Mpaの2倍の0.2Mpaまでの使用が認められている。一般的に、商業用の市水圧力は0.2Mpa以上の水圧を有するため、水WL2は、貯湯タンク10に導入される前に減圧弁35で0.2Mpa以下に減圧される。これに応じて、貯湯タンク10の耐圧も設定されているので、水WL2の沸き上げ時にタンク内の圧力が0.2Mpa以上に上昇した場合、貯湯タンク10が破損する可能性がある。
【0031】
給湯システムS100では、貯湯タンク10の破損を防止するために、貯湯タンク10の上部に逃し弁配管28を接続し、この逃し弁配管28に逃し弁29を配置している。逃し弁29は、貯湯タンク10内の圧力が所定値(例えば0.19Mpa)以上になると、機械的に開弁して、沸き上げられて生成された加熱水WH1の一部を外部に排水する。これにより、貯湯タンク10内の圧力を前記所定値以下に維持している。この排水された温水が、所謂膨張水Eである。
【0032】
膨張水Eは、貯湯タンク10内の水WL2を沸き上げる度に発生する高温の湯であるため、熱エネルギーが大きく、したがって、膨張水Eをそのまま外部に捨てる行為は、エネルギーロスを発生させていることになる。そこで、本発明は、以下に示す第1〜第3態様(給湯システムS1〜S3)により、膨張水Eが保有する熱エネルギーを有効に活用する方策を提供する。
【0033】
(第1態様)
まず、第1態様による給湯システムS1について図2を参照しながら説明する。給湯システムS1は、逃し弁配管28を流れる膨張水Eと第1配管24を流れる水WL1とを熱交換させる熱交換器70を用いている点において図1に示す給湯システムS100と異なる。なお、給湯システムS1のその他の構成は、給湯システムS100と同一であるので、その説明を省略する。
【0034】
熱交換器70は、具体的には、逃し弁配管28に接続され、逃し弁配管28からの膨張水Eを貯留する膨張水貯留タンク(第2貯留タンク)71と、膨張水貯留タンク71内に配置された熱交換部72とを含む。熱交換部72は、第1配管24の上流側配管241に接続された流入口72aおよび第1配管24の下流側配管242に接続された流出口72bを有する、例えば螺旋状の配管であり、第1配管24からの水WL1が導入可能に構成されている。熱交換部72は、第1配管24の一部を構成する配管として用いてもよい。膨張水貯留タンク71は、好ましくは、断熱性能に優れた真空断熱材等から形成しており、膨張水Eを高温の状態で長時間維持できる。また、膨張水貯留タンク71には、通気管73が接続されており、この通気管73により膨張水貯留タンク71内の空間と外部とを連通させて膨張水貯留タンク71の内圧を大気圧とほぼ等しくしている。
【0035】
また、熱交換器70の膨張水貯留タンク71内には、膨張水Eの水位を検出する2つの高水位検出ロッド76および低水位検出ロッド77が配置されている。さらに、膨張水貯留タンク71の底部には、膨張水Eを排出させる排水電磁弁74が設けられている。膨張水Eは、貯湯タンク10の沸き上げ動作中、膨張水貯留タンク71内に常に流入してくるが、膨張水貯留タンク71の容量には限りがあるので排水が必要である。水が温度の低下および密度の上昇に伴って下方に移動する特性を利用し、高水位検出ロッド76により膨張水Eの水位が検出されると、給湯制御部40によって排水電磁弁74が開かれ、膨張水貯留タンク71の底部付近に溜まった、温度が低く密度が大きい膨張水Eが排水電磁弁74を介して外部に排水される。一方、膨張水Eが排水されて膨張水貯留タンク71に新たな膨張水Eを受け入れるための容量が確保できたことを、低水位検出ロッド77が膨張水Eの水位を検出できなくなったことで検知すると、給湯制御部40によって排水電磁弁74が閉鎖される。このようにして、膨張水貯留タンク71内の膨張水Eの水位を一定に制御している。
【0036】
給湯システムS1では、次のようにして膨張水Eの熱エネルギーが有効利用される。すなわち、ユーザの給湯行為に伴い、元配管20から分流されて第1配管24の上流側配管241に導入された水WL1は、熱交換器70の熱交換部72の流入口72aから熱交換部(螺旋状配管)72内に流入する。水WL1は、熱交換部72を通過する際に、膨張水貯留タンク71内の膨張水Eとの熱交換により膨張水Eから熱エネルギーを得て昇温する。昇温した水WL1は、熱交換部72の流出口72bを介して第1配管24の下流側配管242に温水WL11として導入される。
【0037】
温水WL11は、湯水混合三方弁30の第2入力ポート32に導入されるので、ユーザによって設定された温度の湯WH2を生成するために湯水混合三方弁30において温水WL11と混合される加熱水WH1の量を抑えることができる。つまり、第2入力ポート32の開度を大きくして温水WL11の流量を増加させると共に、第1入力ポート31の開度を小さくして加熱水WH1の流量を低減することにより、前記設定温度の湯WH2を生成できる。このように加熱水WH1の量を低減できた分、貯留タンク10において電気ヒータ61によって加熱水WH1を生成するために必要な熱量、ひいては給湯システムS1が消費する熱量を低減することができる。給湯システムS1では、このようにして膨張水Eの有効利用を図っている。なお、温水WL11と加熱水WH1との混合によって生成される湯WH2は、上述のように、ユーザによるリモコン装置50を介しての指示および設定に従い、浴槽B、シングルレバー式混合栓Z1およびサーモスタット式混合栓Z2に供給される。
【0038】
(第2態様)
次に、第2態様による給湯システムS2について図3を参照しながら説明する。給湯システムS2は、熱交換器70を第2配管21に配置している点において図2の給湯システムS1とは異なる。給湯システムS2のその他の構成は、給湯システムS100と同一であるので、その説明を省略する。
【0039】
具体的には、熱交換器70の熱交換部72の流入口72aには、第2配管21の上流側配管211が接続されていると共に、熱交換部72の流出口72bには、第2配管21の下流側配管212が接続されている。なお、熱交換部72は、第2配管の一部を構成する配管として用いてもよい。熱交換器70のその他の構成は、給湯システムS1の熱交換器70と同一である。
【0040】
給湯システムS2では、次のようにして膨張水Eの熱エネルギーが有効利用される。すなわち、ユーザの給湯行為に伴い、元配管20から分流されて第2配管21の上流側配管211に導入された水WL2は、熱交換器70の熱交換部72の流入口72aから熱交換部(螺旋状配管)72内に流入する。水WL2は、熱交換部72を通過する際に、膨張水貯留タンク71内の膨張水Eとの熱交換により膨張水Eから熱エネルギーを得て昇温する。昇温した水WL2は、熱交換部72の流出口72bを介して第2配管21の下流側配管212に温水WL22として導入される。
【0041】
温水WL22は、貯湯タンク10に導入されるので、膨張水Eの熱エネルギーを貯留タンク10の蓄熱として回収でき、したがって、貯留タンク10において電気ヒータ61によって所定温度(60〜90℃)の加熱水WH1を生成するために必要な熱量、ひいては給湯システムS2が消費する熱量を低減することができる。給湯システムS2では、このようにして膨張水Eの有効利用を図っている。
【0042】
(第3態様)
次に、第3態様による給湯システムS3について図4を参照しながら説明する。給湯システムS3は、熱交換器70を元配管20に配置している点において図2の給湯システムS1および図3の給湯システムS2とは異なる。給湯システムS3のその他の構成は、給湯システムS100と同一であるので、その説明を省略する。
【0043】
具体的には、熱交換器70の熱交換部72の流入口72aには、元配管20の上流側配管201が接続されていると共に、熱交換部72の流出口72bには、元配管20の下流側配管202が接続されている。なお、熱交換部72は、元配管20の一部を構成する配管として用いてもよい。熱交換器70のその他の構成は、給湯システムS1の熱交換器70と同一である。
【0044】
給湯システムS3では、次のようにして膨張水Eの熱エネルギーが有効利用される。すなわち、ユーザの給湯行為に伴い、元配管20の上流側配管201を流れる水WLは、減圧弁35によって例えば0.17Mpa以下に減圧された後、熱交換器70の熱交換部72の流入口72aから熱交換部(螺旋状配管)72内に流入する。水WLは、熱交換部72を通過する際に、膨張水貯留タンク71内の膨張水Eとの熱交換により膨張水Eから熱エネルギーを得て昇温する。昇温した水WLは、熱交換部72の流出口72bを介して元配管20の下流側配管202に温水WL′として導入される。
【0045】
温水WL′は、第1配管24を介して湯水混合三方弁30に供給されると共に、第2配管21を介して貯留タンク10に供給される。湯水混合三方弁30においては、上述の給湯システムS1と同様に、ユーザによって設定された温度の湯WH2を生成するために温水WL11と混合される加熱水WH1の量を抑えることができる。このように加熱水WH1の量を低減できた分、貯留タンク10において電気ヒータ61によって加熱水WH1を生成するために必要な熱量を低減することができる。また、貯留タンク10においては、上述の給湯システムS2と同様に、電気ヒータ61によって所定温度(60〜90℃)の加熱水WH1を生成するために必要な熱量を低減することができる。これにより、給湯システムS3が消費する熱量を低減することができる。給湯システムS3では、このようにして膨張水Eの有効利用を図っている。
【0046】
以上説明したように、給湯システムS1〜S3は、ユーザが浴槽B、シングルレバー式混合栓Z1、サーモスタット式混合栓Z2に対して給湯行為を行ったとき、熱交換器70によって膨張水Eから熱エネルギーを回収して給湯システムS1〜S3が消費する熱量を低減させるものである。貯湯タンク10内で加熱水WH1が深夜に生成され、その際に発生する膨張水Eが、早朝の時点では高い熱エネルギーを保有していることを考慮すると、膨張水からの熱エネルギーの回収は、例えば、ユーザが早朝に行う炊事・洗面等による給湯行為の際に行うことができる。また、浴槽Bに湯を張るときなど、一度に大量の湯WH2を使用する場合、温度センサ11〜15からの検出に基づいて加熱水WH1を部分的に沸き増しすることがある。この時にも、膨張水Eが発生するので、ユーザによる入浴時のシャワー等の給湯行為で膨張水Eから熱エネルギーを回収することができる。また、膨張水Eからの熱エネルギーの回収は、湯水混合三方弁30の上流側で行っているため、高温の湯WH2が、シングルレバー式混合栓Z1やサーモスタット式混合栓Z1に直接供給されることを防止できる。
【0047】
一概には言えないが、貯湯タンク10において沸き上げ前の温度が20℃の水を85℃まで沸き上げるために、毎日3%程度の膨張水が発生していると推定される。また、水温が低い冬季では、3%を超える膨張水が発生していると推定される。一家庭における給湯システムの月間使用電力量を540Kwhと仮定すると、一年間で、
540Kwh×3%×12ヶ月=194Kwh
のエネルギー損失が発生している。給湯システムS1〜S3により膨張水Eの持つ熱エネルギーのうちの10%程度が回収できると仮定すると、給湯システムS1〜S3は、一年間で
194Kwh×10%=19.4Kwh
のエネルギー損失の発生を防ぐことが可能であり、したがって、環境および経済の両面から好ましい。このエネルギー損失の発生防止を全国数百万の家庭で行うことができれば、環境および経済の両面において影響は大きい。
【0048】
以上、図2〜4を参照しながら、本実施形態に係る給湯システムS1〜S3を貯湯式の電気給湯システムとして構成した場合につき説明してきたが、給湯システムS1〜S3は、貯湯式の給湯システムであって膨張水が発生するものであれば適用でき、例えば、HFCやCO等の冷媒を用いるヒートポンプ給湯システムとして構成してもよい。また、給湯システムS1〜S3は、燃焼ガスを熱源とする貯湯式給湯システムとして構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】一般的な給湯システムを示す構成図である。
【図2】本発明に係る給湯システムを示す構成図である。
【図3】本発明に係る他の給湯システムを示す構成図である。
【図4】本発明に係るさらに他の給湯システムを示す構成図である。
【符号の説明】
【0050】
10 貯湯タンク
20 元配管
21 第2配管
23 第3配管
24 第1配管
25 第4配管
28 逃し弁配管
29 逃し弁
30 湯水混合三方弁
40 給湯制御部
50 リモコン装置
70 熱交換器
71 膨張水貯留タンク
72 熱交換部
74 膨張水電磁弁
B 浴槽
WL,WL1〜WL4 水
WL11,WL22 温水
WH1 加熱水
WH2 湯
S1〜S3 給湯システム
S100 給湯システム
Z1 シングルレバー式混合栓
Z2 サーモスタット式混合栓

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定温度の湯を給湯する機能を備えた給湯システムであって、
水の元供給源からの水が流通する水供給系統と、
所定の熱源で加熱水を生成して該加熱水を貯留する一方で、前記加熱水を生成する際に膨張水が発生する第1貯留タンクと、
前記第1貯留タンクで発生した前記膨張水を貯留する第2貯留タンクと、
前記第1貯留タンク内の前記加熱水が流通する加熱水供給系統と、
前記水供給系統からの前記水と前記加熱水供給系統からの前記加熱水とが混合されて生成された前記所定温度の湯を出水させる給湯栓と、
を備え、
前記水供給系統の一部は、該水供給系統によって流通する前記水が、前記第2貯留タンク内の前記膨張水と熱交換可能に配置されている給湯システム。
【請求項2】
請求項1に記載の給湯システムにおいて、さらに、前記加熱水供給系統および水供給系統に接続され、前記加熱水供給系統からの前記加熱水および前記水供給系統からの前記水の各流量を調整することにより、前記所定温度の湯を生成して前記給湯栓に供給する弁体と、
前記弁体の動作を制御する制御部と、
を備え、
前記水供給系統は、前記水の元供給源から前記弁体に水を供給する第1配管を含み、
前記第1配管は、該第1配管を通る水が、前記第2貯留タンク内の前記膨張水と熱交換可能に配置されている給湯システム。
【請求項3】
請求項2に記載の給湯システムにおいて、前記第1配管は、前記第2貯留タンク内を通る熱交換部を有する給湯システム。
【請求項4】
請求項1に記載の給湯システムにおいて、前記水供給系統は、前記水の元供給源から前記第1貯留タンクに水を供給する第2配管を含み、
前記第2配管は、該第2配管を通る水が、前記第2貯留タンク内の前記膨張水と熱交換可能に配置されている給湯システム。
【請求項5】
請求項4に記載の給湯システムにおいて、前記第2配管は、前記第2貯留タンク内を通る熱交換部を有する給湯システム。
【請求項6】
請求項1に記載の給湯システムにおいて、さらに、前記加熱水供給系統および水供給系統に接続され、前記加熱水供給系統からの前記加熱水および前記水供給系統からの前記水の各流量を調整することにより、前記所定温度の湯を生成して前記給湯栓に供給する弁体と、
前記弁体の動作を制御する制御部と、
を備え、
前記水供給系統は、前記水の元供給源に直接接続されると共に、前記弁体および前記第1貯留タンクに水を供給可能に該弁体および該第1貯留タンクに接続された元配管を含み、
前記元配管は、該元配管を通る水が、前記第2貯留タンク内の前記膨張水と熱交換可能に配置されている給湯システム。
【請求項7】
請求項6に記載の給湯システムにおいて、前記元配管は、前記第2貯留タンク内を通る熱交換部を有する給湯システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−293868(P2009−293868A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−148239(P2008−148239)
【出願日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【出願人】(000156938)関西電力株式会社 (1,442)
【Fターム(参考)】